JP2004209705A - 活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置及び記録方法とそれを用いた印刷物 - Google Patents

活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置及び記録方法とそれを用いた印刷物 Download PDF

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Abstract

【課題】画像形成装置の調整により、記録材料やインクの種類、作業環境による変動をあまり受けず、活性エネルギー線硬化型インクジェット記録方式の長所である良好な色調や階調性を常に保持し、銀塩写真に匹敵する画質を得ることが出来る活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置及び記録方法とそれを用いた印刷物を提供する。
【解決手段】活性エネルギー線硬化型インクを記録媒体に付与した後、該記録媒体上のインクに活性エネルギー線を照射してインクを硬化させ、記録媒体上にインクを固着させる活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置において、該活性エネルギー線照射の際の照度を調整する手段を有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置及び記録方法とそれを用いた印刷物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録方式は簡便・安価に画像を作成出来るため、写真、各種印刷、マーキング、カラーフィルター等の特殊印刷など、様々な印刷分野に応用されてきている。特に、微細なドットを出射、制御する記録装置や、色再現域、耐久性、出射適性等を改善したインク及びインクの吸収性、色材の発色性、表面光沢などを飛躍的に向上させた専用紙を用い、銀塩写真に匹敵する画質を得ることも可能となっている。今日のインクジェット記録方式の画質向上は、記録装置、インク、専用紙の全てが揃って初めて達成されている。
【0003】
しかしながら、専用紙を必要とするインクジェットシステムは、記録媒体が制限されることで、記録媒体のコストアップが問題となるのは勿論、その使用範囲を決定的に小さくしてしまう。そこで、専用紙と異なる記録媒体へインクジェット方式により記録する試みが多数なされている。具体的には、室温で固形のワックスインクを用いる相変化インクジェット方式、速乾性の有機溶剤を主体としたインクを用いるソルベント系インクジェット方式や、記録後活性エネルギー線により架橋させる活性エネルギー線硬化型インクジェット方式などである(代表的には紫外線(UV)光を用いるため紫外線硬化型インクジェット方式ということもある)。
【0004】
中でも、活性エネルギー線硬化型インクジェット方式は、ソルベント系インクジェット方式に比べ比較的低臭気であり、速乾性、インク吸収性の無い記録媒体への記録が出来る点で、近年注目されつつあり、例えば、特公平5−54667号公報、特開平6−200204号公報、特表2000−504778号公報において、そのインク技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらのインクを用いたとしても、記録媒体の種類や作業環境によって、着弾後のドット径が大きく変化してしまい、すべての記録媒体に対して、高精細な画像を形成することは極めて困難である。
【0006】
例えば、活性エネルギー線(紫外線)硬化型インクとしては、アクリル系組成物を中心としたラジカル重合型紫外線硬化型インクとカチオン重合型紫外線硬化型インクがある。
【0007】
ラジカル重合型紫外線硬化型インクは、その重合メカニズム上、酸素が介在した環境では酸素阻害作用を受けるため硬化性が低下する問題がある。一方、カチオン重合型紫外線硬化型インクは、酸素阻害作用をうけることがないが、重合反応の性質上、やや反応が遅く湿度の影響等により特性がバラツキやすいといった問題がある。
【0008】
活性エネルギー線硬化型インクジェット記録方式については、用いるインク、インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法等について、すでに多くの技術が知られている。しかし、例えば、特開平5−186725号、特開2001−158865号、特開2001−150794号の各公報には紫外線照射時間、露光量の記載はあるが、光量調整手段についての記載はない。また、特開平7−41712号、特開平10−250052号の各公報には、紫外線照射時の露光量、ランプの位置についての記載はあるが、光量調整手段についての具体的な記載はない。
【0009】
一方、特開2001−131452号公報には、紫外線下を搬送して照射する記録媒体の搬送速度を変えて、紫外線照射光量を調整できるとの記載がある。しかし、この方法だと、紫外線光量を増大させるには搬送速度を遅くする必要があり、生産性を低下させることは明らかであり、しかも、得られた画像が期待するほどには良好でない等の問題がある。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−150794号公報
【0011】
【特許文献2】
特開2001−131452号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題を解決することにある。
【0013】
即ち、本発明の目的は、画像形成装置の調整により、記録材料やインクの種類、作業環境による変動をあまり受けず、活性エネルギー線硬化型インクジェット記録方式の長所である良好な色調や階調性を常に保持し、銀塩写真に匹敵する画質を得ることが出来る活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置及び記録方法とそれを用いた印刷物を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明者等は鋭意検討した結果、本発明に係る活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置は、光源と記録媒体間に照度調整手段を設けることにより、インクや記録媒体の特性により活性エネルギー線の照度を適正に調整してやれば、インクと記録媒体の特性にあまり影響されず常に高画質な画像がえられることが判明した。
【0015】
即ち、本発明の目的は、下記構成のいずれかを採ることにより達成できることがわかった。
【0016】
〔1〕 活性エネルギー線硬化型インクを記録媒体に付与した後、該記録媒体上のインクに活性エネルギー線を照射してインクを硬化させ、記録媒体上にインクを固着させる活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置において、該活性エネルギー線照射の際の照度を調整する手段を有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置。
【0017】
〔2〕 活性エネルギー線の照度調整手段が、光源に付与する印加電圧、光源の数、光源と記録媒体間の距離、光源と記録媒体間に設けた絞り、シャッター、ルーバまたはフィルターの少なくとも一つからなることを特徴とする〔1〕記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置。
【0018】
〔3〕 23℃における粘度が50mPa・s以下である活性エネルギー線硬化型インクを用いることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置。
【0019】
〔4〕 光カチオン重合硬化型インクを記録媒体に付与した後、該記録媒体上のインクに活性エネルギー線を照射してインクを硬化させ、記録媒体上にインクを固着させる活性エネルギー線硬化型インクジェット記録方法において、該活性エネルギー線照射光源と記録媒体の間に、照度を調整する手段を設けることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェット記録方法。
【0020】
〔5〕 23℃における粘度が50mPa・s以下である光カチオン重合硬化型インクを用いて行うことを特徴とする〔4〕記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録方法。
【0021】
〔6〕 記録媒体に〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置により印刷したことを特徴とする印刷物。
【0022】
〔7〕 記録媒体に〔4〕記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録方法により印刷したこと特徴とする印刷物。
【0023】
従来の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置では、露光量の調整手段がないため、使用できる活性エネルギー線硬化型インクジェット用インクや記録媒体が制限されるという問題点があった。記録媒体の搬送速度を変化させて、光量を調整する試みはなされたことがあるが、生産性を低下させるという問題点の他に、画質の向上効果が充分には得られない。
【0024】
しかし、本発明の様に、活性エネルギー線照射時間ではなく、活性エネルギー線照射強度を変化させることにより、記録媒体とインクに適合した照射量に制御すれば、極めて多種類の記録媒体とインクの組み合わせにおいて、高画質画像が得られることがわかった。
【0025】
その理由は明らかではないが、活性エネルギー線硬化型インクジェット記録方式の良好な画質や仕上がり画像の高い堅牢性、耐久性といった特性を発揮するには、適正な硬化速度が必要であり、それには活性エネルギー線全体の光量ではなく、適正な照度(光強度)が必要なのであろう。
【0026】
本発明に係る活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置において、光強度をコントロールする手段は、特に限定はない。例えば、光源に付与する印加電圧、光源の数、光源と記録媒体間の距離、光源と記録媒体間に設けた絞り、シャッター、ルーバまたはフィルターの少なくとも一つであることが望ましい。これにより、使用できる活性エネルギー線硬化型インクジェット用インクや記録媒体の適用範囲が拡大し、さらに生産性を低下させることなく、インクジェット記録が行え、所望の印刷物を提供することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に用いられる光活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置とその光活性エネルギー線強度(照度)調整手段、用いられる活性エネルギー線硬化型インク、画像の記録媒体等について説明する。
【0028】
〔光活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置とその光活性エネルギー線強度調整手段〕
本発明に係る照度調整手段を有する活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置は、例えば光源に付与する印加電圧、光源の数、光源と記録媒体間の距離、光源と記録媒体間に設けたルーバまたはフィルターの少なくとも一つからなる照度調整手段を有するものであれば、特に制限はなく用いられる。
【0029】
図1に示すように、本発明の実施形態を示すインクジェットプリンタ1は、ヘッドキャリッジ2に搭載され、該ヘッドキャリッジ2の移動に伴い記録紙(記録媒体)Pに沿って走査しつつ該記録紙P上に紫外線硬化インクを射出して着弾させるヘッド3と、このヘッド3により記録紙P上に射出され着弾した紫外線硬化インクを硬化定着させるための紫外線を出力する紫外線光源4と、この紫外線光源4より出力される紫外線を誘導する光路系5(図2)と、ヘッドキャリッジ2を移動の際に長手方向に沿って(矢印A方向および矢印B方向に沿って)案内するガイドレール6と、記録紙Pを記録の際に搬送する搬送手段(図示略)と、ヘッド3のキャリッジ2(および各ヘッド3)の各部の制御を行う図示しない制御部等を備えて概略構成されている。
【0030】
このうち、ヘッドキャリッジ2には、光路系5を構成する構成要素(後述)の一部と、例えば印刷に用いる各色毎に1つずつのヘッド3(本実施形態の場合、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、B(ブラック)と4つのヘッド3)等が設けられている。
【0031】
各ヘッド3は、各々対応する色の紫外線硬化インクを射出するノズルの射出口(図示略)を、例えば各々の下面に備えている。
【0032】
また、紫外線光源4はヘッドキャリッジ2と別体に配されている。しかも、紫外線光源4は、ヘッドキャリッジ2の移動範囲外に照度を調整する手段7と共に配されている。
【0033】
次に、光路系5を説明する。
図2に示すように、光路系5には、平行変換手段として例示するコリメータレンズ51と、方向変更手段として例示するプリズム52と、集束手段として例示するシリンドリカルレンズ53とが、この順に、紫外線光源4より出力される紫外線の進行方向に沿って配され、照度調整手段7がその途中に配されている。
【0034】
このうち、コリメータレンズ51は、紫外線光源4からの紫外線を透過により平行光に変換する。ここで、コリメータレンズ51を透過後の紫外線の向きが、ヘッド3の走査の際の動線と略一致するように、コリメータレンズ51および紫外線光源4が配置されている。なお、コリメータレンズ51を透過後の紫外線の断面形状D1(進行方向と直交する平面による切断面形状)は、略楕円形又は略円形となる。
【0035】
プリズム52は、コリメータレンズ51を透過することにより平行光となった紫外線の向きを記録紙P側に変更する。すなわち、紫外線はプリズム52内に入射して反射し記録紙P側に向かう。なお、プリズム52は、例えば図2に示すように直角三角柱状に形成されたものである。このプリズム52は、▲1▼該プリズム52の斜面52a(プリズム52の外面の2つの直角三角形と一辺ずつを共有する矩形面)に対しコリメータレンズ51からの紫外線が斜めに入射し、▲2▼該プリズム52の斜面52aとは異なる1つの矩形面52bが記録紙P(シリンドリカルレンズ53)と逆を向くように配されている。従って、このプリズム52により向きを変更された紫外線の断面形状D2(進行方向と直交する平面による切断面形状)は、矩形状となる。
【0036】
シリンドリカルレンズ53は、プリズム52により記録紙P側に向きを変更された紫外線を記録紙P上に集束させる。このシリンドリカルレンズ53は、図2に示すように蒲鉾状の凸レンズであり、突出方向が記録紙Pと逆を向くように配されている。従って、シリンドリカルレンズ53を透過することにより紫外線は矢印C方向に集束する。
【0037】
なお、図1及び2では、照度調整手段7はコリメータレンズ51とプリズム52の間に配置されているが、配置される位置は、プリズム52とシリンドリカルレンズ53の間でも、シリンドリカルレンズ53と記録媒体Pの間でも本発明の目的を達成できるなら良いことは説明を要しないであろう。
【0038】
また、例えば図3に示すように、記録紙P上への紫外線硬化インクの着弾可能領域Tよりも幅広(例えば走査方向(矢印方向)と直交する方向において幅広)の紫外線光束Kを該記録紙P上に照射することができるように、紫外線光源4、コリメータレンズ51、プリズム52およびシリンドリカルレンズ53等の配置や寸法形状が設定されている。
【0039】
さらに、紫外線硬化インクの射出の際のヘッドキャリッジ2の移動方向において、紫外線光束Kの照射領域が、着弾可能領域Tよりも、後ろ、かつ、該着弾可能領域Tの近傍となるように、ヘッド3、紫外線光源4、コリメータレンズ51、プリズム52およびシリンドリカルレンズ53等が配置されている。
【0040】
なお、光路系5の構成要素のうち、例えばシリンドリカルレンズ53とプリズム52とは、図1に示すようにヘッドキャリッジ2に設けられている。
【0041】
このように、インクジェットプリンタ1では、紫外線光源4がヘッドキャリッジ2と別体に配され、紫外線光源4からの紫外線を、光路系5により空間を介して誘導して記録紙P上に照射するように構成されている。
【0042】
次に、本実施形態のインクジェットプリンタ1を用いて行う印刷の態様について説明する。
【0043】
実際の画像形成にあたっては、まず、例えば図4にフローを示す如き操作により、用いられるインクと記録媒体、周囲の環境条件等に鑑みて適正な紫外線照度を決める。その上で記録媒体上の照度が適正であるかをチェックし、修正を要する様であれば、更に照度調整手段たる照度調節機構を作動させて、記録媒体上で適正な照度となるようにする。この操作が完了すれば画像形成を開始することになる。
【0044】
画像形成(印刷)は、ヘッドキャリッジを図1の矢印A方向に移動させるのに伴わせてヘッド3を記録紙Pに沿って走査しつつ該ヘッド3より紫外線硬化インクを記録紙P上に射出し着弾させ、該着弾可能領域Tに光路系5を介して紫外線光源4からの紫外線(紫外線光束K)を照射し、硬化定着させて行う。また、この際、記録紙Pは、ヘッドキャリッジ2の移動に同期させて、例えば図1において手前から奥に向け搬送手段により搬送する。
【0045】
ここで、紫外線光束Kの照射領域が、紫外線硬化インクの射出の際のヘッドキャリッジ2の移動方向において、着弾可能領域T近傍となるので、紫外線硬化インクを記録紙P上に着弾させた後、紫外線照射により硬化定着するまでの時間を短縮できる。この結果、周囲環境や射出条件等に拘わらず画像色精度を良好にすることができる。
【0046】
また、記録紙P上への紫外線硬化インクの射出と紫外線照射とを同一工程で行うことができるため、インク射出後、別途、紫外線照射工程を設ける必要が無くなる。よって、全画像書き込みに要する処理時間を短縮することもできる。
【0047】
しかも、紫外線光源4がヘッドキャリッジ2と別体に配されているため、ヘッドキャリッジ2の駆動系を極力簡素に構成することができ、装置の大型化を抑制することができるとともにコスト高となることも防止できる。
【0048】
また、紫外線光源4が、ヘッドキャリッジ2の移動範囲外に配されているので、紫外線光源4がヘッドキャリッジ2の移動の妨げにならない。
【0049】
さらに、記録紙P上への紫外線硬化インクの着弾可能領域Tよりも幅広の紫外線光束を該記録媒体上に照射するので、確実に着弾可能領域Tの紫外線硬化インクを照射して記録紙P上に硬化定着させることができる。
【0050】
しかも、シリンドリカルレンズ53等の集束手段により紫外線を集束させるので、同じ光度の光源を用いた場合にも記録紙P上に高照度の紫外線を照射することができる。
【0051】
加えて、コリメータレンズ51を透過後の紫外線の向きが、ヘッド3の走査方向と略等しく設定されているので、該透過後の紫外線をヘッド3の走査位置に拘わらず確実にプリズム52により捕捉して記録紙P側に向きを変更することができる。
【0052】
活性エネルギー線としては、活性エネルギー線硬化型インク中に重合活性剤を発生させるエネルギーを有するものであればよく、紫外線、X線、γ線等の電磁波等が挙げられるが、紫外線が代表的なものといえる。具体的な光源として、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ブラックライト、高圧水銀ランプ、無電極UVランプ、UVレーザー、冷陰極管、LED等を好ましく用いることができる。また、ウシオ電機製オプティカルモデュレックス等の光ファイバー型光源を用いて、ファイバーをインクジェットヘッドの横に設置し、ヘッドの動きに連動可能にすれば、印字直後に紫外線を照射することもできる。
【0053】
本発明では、活性エネルギー線の照度調整手段には特に限定はないが、光源に付与する印加電圧、光源の数、光源と記録媒体間の距離、光源と記録媒体間に設けた絞り、シャッター、ルーバまたはフィルター等の照度調整手段が有効に用いられる。
【0054】
また、光源に付与する印加電圧のコントロール手段としては、例えば特開平10−172785号公報等に記載の装置および方法を用いることができる。光源の数としては、例えば特開平10−165885号公報等に記載の複数本の光源を設け、そのうち何本を点灯させるかをコントローラーで制御することができる。光源と記録媒体間の距離については、例えば特開平8−322914公報等に記載の装置および方法を用いることができる。
【0055】
さらに、光源と記録媒体間に設けた絞りとしては、例えば特開2002−214701号公報等に記載の装置および方法を用いることができる。光源と記録媒体間に設けたシャッターとしては、例えば実開平5−51930号公報等に記載の装置および方法を用いることができる。光源と記録媒体間に設けたルーバとしては、例えば特開平10−165885号公報等に記載の装置および方法を用いることができる。光源と記録媒体間に設けたフィルターとしては、例えば特開平5−88119号、特開平10−301516号公報等に記載の装置および方法を用いることができる。
【0056】
本発明における画像形成において、インクの吐出条件としては、記録ヘッド及びインクを30〜100℃に加熱し、吐出することが吐出安定性の点で好ましい。活性エネルギー線硬化型インクは、温度変動による粘度変動幅が大きく、粘度変動はそのまま液滴サイズ、液滴射出速度に大きく影響を与え、画質劣化を起こすため、インク温度を上げながらその温度を一定に保つことが必要である。インク温度の制御幅としては、設定温度±5℃、好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
【0057】
また、本発明では、各ノズルより吐出する液滴量が2〜15plであることが好ましい。高精細画像を形成するためには、液滴量がこの範囲であることが必要であるが、この液滴量で吐出する場合、前述した吐出安定性が特に厳しくなり、インクに酸増殖剤(後述)を添加するのが好ましい。
【0058】
本発明の画像記録方法においては、発生光線の照射条件として、インク着弾後0.001〜2.0秒の間に紫外線が照射されることが好ましく、より好ましくは0.001〜1.0秒である。高精細な画像を形成するためには、照射タイミングができるだけ早いことが特に重要となる。
【0059】
活性エネルギー線(紫外線)の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号公報にも開示されている。これによると、ヘッドユニットの両側に光源を設け、シャトル方式でヘッドと光源を走査する。照射は、インク着弾後、一定時間を置いて行われることになる。
【0060】
米国特許第6,145,979号明細書では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へ紫外線を照射する方法が開示されている。本発明の画像形成方法においては、これらのいずれの照射方法も用いることができる。
【0061】
本発明では、硬化に有効な波長域における最高照度が0.1〜50mW/cm2の低照度の紫外線を用いることが好ましい。従来、UVインクジェット方式では、インク着弾後のドット広がり、滲みを抑制のために、硬化に有効な波長域における最高照度が50mW/cm2を超える高照度の光源が用いられるのが通常であった。しかしながら、これらの光源を用いると、特にシュリンクラベルなどでは、記録媒体の収縮があまりにも大きく、実質上使用できないのが現状であった。本発明では、後述する酸増殖剤を用いることで、硬化に有効な波長域における最高照度が0.1〜50mW/cm2の低照度の紫外線を用いても、高精細な画像を形成でき、かつ、記録媒体の収縮もない。
【0062】
上述のように活性エネルギー線硬化型インクは、インクジェットー記録方式により記録媒体上に吐出、描画し、次いで適正照度の紫外線(活性エネルギー線)を照射されてインクは硬化されることになる。
【0063】
次にインクジェットプリンタとして上記とやや異なる態様のものを示す。
図5はインクジェットのヘッドが画像形成全幅にわたりライン状に並んでいる形態を有する画像形成装置の例を示している。この場合は、紫外線(活性エネルギー線)も画像形成全幅にわたり一期に照射されるよう活性エネルギー線(紫外線)照射装置8を配置した方が好ましく、そのようなインクジェットプリンタ1の概略構成図を示す。プリンタAは1個のインクジェットのヘッド3で印字した直後に紫外線を照射する紫外線照射装置8が配置されており、プリンタBはインクジェットのヘッド3と紫外線照射装置8が交互に配置され、多段に印字され、多段に照射が行われる配置となっており、プリンタCはインクジェットのヘッド3で多段に印字した後、最後に紫外線照射装置が配置されている。
【0064】
本発明の実施態様としては、これらのいずれのものにも適用できる。特にこの様な形態においては、紫外線照射装置の光源として小さな発光部材を用いれば、紫外線照射装置8に多数の光源をライン状に並べてしまうことも出来る。
【0065】
〔活性エネルギー線硬化型インク〕
本発明に係る活性エネルギー線硬化型インク(単に「インク」と記すこともある)は、従来公知のラジカル重合型やカチオン重合型のいずれのインクも用いられるが、カチオン重合型の活性エネルギー線硬化型インクがより好ましく用いられる。
【0066】
本発明に用いられるカチオン重合型活性エネルギー線硬化型インクの組成物としては、光カチオン重合性モノマー、カチオン性重合開始剤、色材(着色剤)等がある。
【0067】
例えば、光カチオン重合性モノマーとしては、各種公知のカチオン重合性のモノマーが使用できる。例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892号、特開2001−40068号、特開2001−55507号、特開2001−310938号、特開2001−310937号、特開2001−220526号の各公報に例示されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。本発明においては、インク硬化の際の記録媒体の収縮を抑える目的で、光重合性化合物として少なくとも1種のオキセタン化合物と、エポキシ化合物及びビニルエーテル化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物とを含有させることが好ましい。
【0068】
本発明のオキセタン化合物とは、オキセタン環を有する化合物で、特開2001−220526号、特開2001−310937号の各公報に紹介されている如き化合物である。但し、オキセタン環が5個以上である化合物は組成物の粘度が高くなる、硬化物の粘着性が十分でなくなる等で取り扱いが困難になりがちである。従って、オキセタン環が1〜4個である化合物が好ましい。
【0069】
本発明で使用する分子中に1個以上のオキセタン基を有する化合物は、種々のものが使用できる。1個のオキセタン環を有する化合物としては、具体的には下記一般式(4)で示される化合物等が挙げられる。
【0070】
【化1】
Figure 2004209705
【0071】
一般式(4)において、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基である。R2は、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基或いは3−ブテニル基等の炭素数2〜6個のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基或いはフェノキシエチル基等の芳香環を有する基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基或いはブチルカルボニル基等の炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基或いはブトキシカルボニル基等の炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、又はエチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基或いはペンチルカルバモイル基等の炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基等である。
【0072】
つぎに、2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(5)で示される化合物等が挙げられる。
【0073】
【化2】
Figure 2004209705
【0074】
一般式(5)において、R1は、前記一般式(4)におけるものと同様の基である。R3は、例えば、エチレン基、プロピレン基或いはブチレン基等の線状或いは分枝状アルキレン基、ポリ(エチレンオキシ)基或いはポリ(プロピレンオキシ)基等の線状或いは分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、プロペニレン基、メチルプロペニレン基或いはブテニレン基等の線状或いは分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基、カルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、又はカルバモイル基を含むアルキレン基等である。
【0075】
又、R3は、下記一般式(6)、(7)及び(8)で示される基から選択される多価基でもある。
【0076】
【化3】
Figure 2004209705
【0077】
一般式(6)において、R4は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基或いはブトキシ基等の炭素数1〜4個のアルコキシ基、塩素原子或いは臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基である。
【0078】
【化4】
Figure 2004209705
【0079】
一般式(7)において、R5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF32又はC(CH32である。
【0080】
【化5】
Figure 2004209705
【0081】
一般式(8)において、R6は、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基である。nは、0〜2000の整数である。R7はメチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基である。R7は、下記一般式(9)で示される基から選択される多価基でもある。
【0082】
【化6】
Figure 2004209705
【0083】
一般式(9)において、R8は、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基である。mは、0〜100の整数である。2個のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、下記構造式(10)及び(11)で示される化合物等が挙げられる。
【0084】
【化7】
Figure 2004209705
【0085】
構造式(10)で示される化合物は、一般式(5)において、R1がエチル基、R3がカルボキシル基である化合物である。
【0086】
【化8】
Figure 2004209705
【0087】
構造式(11)で示される化合物は、一般式(5)において、R1がエチル基、R3が一般式(8)でR6及びR7がメチル基、nが1である化合物である。
【0088】
2個のオキセタン環を有する化合物において、上記した化合物以外の好ましい例としては、下記一般式(12)で示される化合物がある。
【0089】
【化9】
Figure 2004209705
【0090】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(13)で示される化合物等が挙げられる。
【0091】
【化10】
Figure 2004209705
【0092】
一般式(13)において、R1は、前記一般式(4)におけるものと同様の基である。R9は、例えば下記一般式(14)又は構造式(15)、(16)で示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記一般式(17)で示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基又は下記構造式(18)で示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは、3又は4である。
【0093】
【化11】
Figure 2004209705
【0094】
〔一般式(14)において、R10はメチル基、エチル基又はプロピル基等の低級アルキル基である。〕
【0095】
【化12】
Figure 2004209705
【0096】
【化13】
Figure 2004209705
【0097】
【化14】
Figure 2004209705
【0098】
〔一般式(17)において、pは1〜10の整数である。〕
【0099】
【化15】
Figure 2004209705
【0100】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、下記構造式(19)で示される化合物等が挙げられる。
【0101】
【化16】
Figure 2004209705
【0102】
さらに、上記した以外の分子中に1個以上のオキセタン環を有する化合物の例としては、下記一般式(20)で示される化合物がある。
【0103】
【化17】
Figure 2004209705
【0104】
一般式(20)において、R8は一般式(9)におけるものと同様の基である。R11はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
【0105】
本発明で使用するオキセタン化合物のより好ましい例としては、以下に示す化合物がある。
【0106】
【化18】
Figure 2004209705
【0107】
又、これら以外にも、分子量1000〜5000程度の高分子量を有する、分子中に1個以上のオキセタン基を有する化合物も挙げられる。これらの例として、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0108】
【化19】
Figure 2004209705
【0109】
ここで、pは20〜200である。
【0110】
【化20】
Figure 2004209705
【0111】
ここで、qは15〜100である。
【0112】
【化21】
Figure 2004209705
【0113】
ここで、sは20〜200である。
芳香族エポキシドとして好ましいものは、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルであり、例えばビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、ならびにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0114】
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによつて得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。
【0115】
脂肪族エポキシドの好ましいものとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0116】
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0117】
ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
【0118】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0119】
カチオン性光重合開始剤としては、例えば、化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が用いられる(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)。本発明に好適な化合物の例を以下に挙げる。第1に、ジアゾニウム、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウムなど芳香族オニウム化合物のB(C654 -、PF6 -、AsF6 -、SbF6 -、CF3SO3 -塩を挙げることができる。対アニオンとしてボレート化合物をもつものが酸発生能力が高く好ましい。オニウム化合物の具体的な例を以下に示す。
【0120】
【化22】
Figure 2004209705
【0121】
第2に、スルホン酸を発生するスルホン化物を挙げることができる。具体的な化合物を以下に例示する。
【0122】
【化23】
Figure 2004209705
【0123】
第3に、ハロゲン化水素を光発生するハロゲン化物も用いることができる。以下に具体的な化合物を例示する。
【0124】
【化24】
Figure 2004209705
【0125】
第4に、鉄アレン錯体を挙げることができる。
【0126】
【化25】
Figure 2004209705
【0127】
本発明のインクは、特開平8−248561号、特開平9−34106号の各公報をはじめてとし、既に公知となっている活性エネルギー線の照射で発生した酸により新たに酸を発生する酸増殖剤を含有することが好ましい。酸増殖剤を用いることで、さらなる吐出安定性向上を可能とする。
【0128】
本発明に係るインクでは、対イオンとしてアリールボレート化合物を有するジアゾニウム、ヨードニウム又はスルホニウムの芳香族オニウム化合物、鉄アレン錯体から選ばれる少なくとも1種の光酸発生剤が含有されることが好ましい。
【0129】
上述の色材としては、重合性化合物の主成分に溶解または分散できる色材が使用出来るが、耐候性の点から顔料が好ましい。
【0130】
本発明で好ましく用いることのできる顔料を、以下に列挙する。
C.I Pigment Yellow−1、3、12、13、14、17、42、81、83、87、95、109
C.I Pigment Orange−16、36、38
C.I Pigment Red−5、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57:1、63:1、144、146、185、101
C.I Pigment Violet−19、23
C.I Pigment Blue−15:1、15:3、15:4、18、60、27、29
C.I Pigment Green−7、36
C.I Pigment White−6、18、21
C.I Pigment Black−7
また、本発明において、プラスチックフィルムのような透明な記録媒体での色の隠蔽性を上げる為に、白インクを用いることが好ましい。特に、軟包装画像形成、ラベル画像形成においては、白インクを用いることが好ましいが、吐出量が多くなるため、前述した吐出安定性、記録媒体Rのカール・しわの発生の観点から、自ずと使用量に関しては制限がある。
【0131】
上記顔料の分散には、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に、分散剤を添加することも可能である。分散剤としては、高分子分散剤を用いることが好ましく、高分子分散剤としてはAvecia社のSolsperseシリーズが挙げられる。
【0132】
また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、顔料100質量部に対し、1〜50質量部添加することが好ましい。分散媒体は、溶剤または重合性化合物を用いて行うが、本発明に用いる照射線硬化型インクでは、インク着弾直後に反応・硬化させるため、無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOC(揮発性有機化合物)の問題が生じる。よって、分散媒体は溶剤では無く重合性化合物、その中でも最も粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0133】
顔料の分散は、顔料粒子の平均粒径を0.08〜0.5μmとすることが好ましく、最大粒径は0.3〜10μm、好ましくは0.3〜3μmとなるよう、顔料、分散剤、分散媒体の選定、分散条件、ろ過条件を適宜設定する。この粒径管理によって、ヘッドノズルの詰まりを抑制し、インクの保存安定性、インク透明性および硬化感度を維持することができる。
【0134】
本発明に係るインクにおいては、色材濃度としては、インク全体の1〜10質量%であることが好ましい。
【0135】
本発明のインクには、酸増殖剤を添加することが好ましい。酸増殖剤は比較的強い酸の残基で置換された化合物であって、比較的容易に脱離反応を引き起こして、酸を発生する化合物である。従って、酸触媒反応によって、この脱離反応を大幅に活性化させることができ、酸の不存在下では安定であるが、酸の存在下では容易に酸を生成させることが可能となる。酸触媒反応によって分解して再び酸を発生する。一回の反応で1つ以上の酸が増えており、反応の進行に伴って加速的に反応が進む。発生した酸自体が自己分解を誘起するために、ここで発生する酸の強度は酸解離定数(pKa)で3以下であり、特に2以下であることが望ましい。これより弱い酸であれば、自己分解を引き起こすことができない。このような酸として、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、トリフェニルホスホン酸などを挙げることができる。具体的には、以下の化合物を例示することができる。第1に下記一般式(1)で表される有機酸エステル化合物を挙げることができる。
【0136】
【化26】
Figure 2004209705
【0137】
式中、A1は炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基を示し、A2は炭素数1〜6のアルキル基を示し、A3はビス(p−アルコキシフェニル)メチル基、2−アルキル−2−プロピル基、2−アリール−2−プロピル基、シクロヘキシル基またはテトラヒドロピラニル基を示し、Zは酸解離定数(pKa)が3以下である酸の残基を示す。
【0138】
この化合物に酸が作用すると、エステル基が分解してカルボン酸となり、これがさらに脱カルボン酸を起こし、酸(ZOH)が容易に脱離する。具体的化合物を以下に示す。
【0139】
【化27】
Figure 2004209705
【0140】
第2に下記一般式(2)で表されるアセタール基またはケタール基を持つ有機酸エステルを挙げることができる。
【0141】
【化28】
Figure 2004209705
【0142】
式中、Zは前記と同じ意味を持ち、B1は水素原子、アルキル基またはアリール基であり、B2、B3はメチル基もしくはエチル基、あるいは両者でエチレン基またはプロピレン基を形成し、B4は水素原子またはメチル基を示す。
【0143】
この化合物は酸の作用でアセタールまたはケタールが分解して、β−アルデヒドまたはケトンとなり、これからZOHが容易に脱離する。具体的化合物を以下に示す。
【0144】
【化29】
Figure 2004209705
【0145】
第3に下記一般式(3)で表される有機酸エステルを挙げることができる。
【0146】
【化30】
Figure 2004209705
【0147】
式中、Zは前記と同じ意味を持ち、D1、D2は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはアリール基を示し、D2、D3は炭素数1〜6のアルキル基、あるいは双方で脂環状構造を形成するアルキレン基または置換アルキレン基を示す。
【0148】
この化合物は酸触媒によって水酸基が脱離してカルボカチオンを形成し、水素移動してからZOHが発生するものと推定される。具体的化合物を以下に示す。
【0149】
【化31】
Figure 2004209705
【0150】
その他としては、有機過酸化物、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のアシルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド等も挙げられる。
【0151】
紫外線照射で用いる光源の例としては、低圧水銀ランプ、UVレーザー、キセノンフラッシュランプ、捕虫灯、ブラックライト、殺菌灯、冷陰極管、LEDをなどがあるが、これらに限定されない。
【0152】
本発明に係るインクには、上記説明した以外に様々な添加剤を用いることができる。例えば、インク組成物の保存性を高めるため、重合禁止剤を200〜20000ppm添加することができる。紫外線硬化型のインクは、加熱、低粘度化して射出することが好ましいので、熱重合によるヘッド詰まりを防ぐためにも重合禁止剤を入れることが好ましい。この他にも、必要に応じて、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することが出来る。
【0153】
記録媒体との密着性を改善するため、極微量の有機溶剤を添加することも有効である。この場合、耐溶剤性やVOCの問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その使用量は0.1〜5%の範囲であり、好ましくは0.1〜3%である。また、ラジカル重合性モノマーと開始剤を組み合わせ、ラジカル・カチオンのハイブリッド型硬化インクとすることも可能である。
【0154】
ここで、インクが着弾し、紫外線を照射して硬化した後の総インク膜厚が、2〜20μmであることが好ましい。スクリーン画像形成分野では、総インク膜厚が20μmを越えているのが現状であるが、記録媒体が薄いプラスチック材料であることが多い軟包装画像形成分野では、前述した記録媒体のカール・しわの問題でだけでなく、画像形成物全体のこしや質感が変わってしまうという問題が有るため使えない。
【0155】
本発明においては、23℃における粘度が50mPa・s以下である活性エネルギー線硬化型インクが好ましく用いられる。50mPa・sを超える粘度のインクでは、インクジェットヘッドをインクが熱変性を起こさない範囲での加熱では、ヘッドからのインクの吐出性が劣化してしまう。
【0156】
〔本発明に用いる記録媒体〕
本発明で用いることのできる記録媒体(基体、基材ともいう)としては、通常の非コート紙、コート紙などの他、いわゆる軟包装に用いられる各種非吸収性のプラスチックおよびそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、OPS(延伸ポリスチレン)フィルム、OPP(延伸ポリプロピレン)フィルム、ONy(延伸ナイロン)フィルム、PVC(延伸ポリ塩化ビニル)フィルム、PE(ポリエチレン)フィルム、TAC(トリアセチルセルロース)フィルムを挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンの共重合体)、ポリアセタール、PVA(ポロビニルアルコール)、ゴム類などが使用できる。
【0157】
また、金属類や、ガラス類にも適用可能である。これらの記録媒体の中でも、特に熱でシュリンク可能な、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、ONyフィルム、PVCフィルムへ画像を形成する場合に本発明の構成は、有効となる。これらの基材は、インクの硬化収縮、硬化反応時の発熱などにより、フィルムのカール、変形が生じやすいばかりでなく、インク膜が基材の収縮に追従し難い。
【0158】
これら、各種プラスチックフィルムの表面エネルギーは大きく異なり、記録媒体によってインク着弾後のドット径が変わってしまうことが、従来から問題となっていた。本発明の構成では、表面エネルギーの低いOPPフィルム、OPSフィルムや表面エネルギーの比較的大きいPETまでを含む、表面エネルギーが35〜60mN/mの広範囲の記録媒体に良好な高精細な画像を形成できる。
【0159】
本発明において、包装の費用や生産コスト等の記録媒体のコスト、プリントの作製効率、各種のサイズのプリントに対応できる等の点で、長尺(ウェブ)な記録媒体Rを使用する方が有利である。
【0160】
【実施例】
次に、本発明を実施例を示して説明するが、無論、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0161】
《インク組成物の調製》
下記の各組成物を混合、撹拌した後、得られた溶液をフィルターでろ過して、2種の色違いのインクを得た。23℃での粘度はそれぞれシアン色インクが40mPa・s、黒インクが45mPa・sであった。
【0162】
インク組成物
Figure 2004209705
《インクジェット記録》
図1に記載のインクジェット記録装置によって、表1に記載のUV光照射条件にて、各種記録媒体に画像形成を行った。
【0163】
《記録媒体》
下記3種類のものを用いた。
【0164】
記録媒体1:キャスコート紙
記録媒体2:ポリプロピレンフィルム
記録媒体3:ポリエチレンテレフタレートフィルム
《UV光照射光源》
基本的な照度を変えるため、下記2種類のものを用いた。
【0165】
UV光照射光源1:高圧水銀ランプ、80W(日本電池社製 HN−64NL)を3本並列にして用いた。
【0166】
UV光照射光源2:高圧水銀ランプ、80W(日本電池社製 HN−64NL)を1本用いた。
【0167】
これらを各組み合せて、下記表1に示す条件にて特性の評価を行った。
【0168】
【表1】
Figure 2004209705
【0169】
《評価項目と基準》
1.ドット径の形状、均一性
記録媒体に印字定着したドットの形状をルーペで拡大評価した。
【0170】
◎・・・ガサツキがなく、ドット形状が真円
○・・・僅かにガサツキが見えるが、ドット形状は真円
△・・・ガサツキが見え、ドット形状がやや乱れる(実用的には問題)
×・・・ガサツキが見え、ドット形状も悪い(実用的には問題)
2.記録媒体との接着性
ベタ画像表面に、剃刀で縦横6本ずつの記録媒体までは到達しない切り込みを入れ、25個の升目をつけた。この上に幅25mmのセロテープ(R)を張り付けて強く圧着した後、90°の剥離角度で素早く剥離し、剥離した升目数を計測し、下記の基準に則りA〜Eのランクに分けを行った。
【0171】
A:全ての升目が剥離しなかった
B:剥離した升目数が1〜5個であった
C:剥離した升目数が6〜10個であった
D:剥離した升目数が11〜20個であった(実用的には問題)
E:剥離した升目数が21個以上であった(実用的には問題)
結果は、下記表2に示す如くである。
【0172】
【表2】
Figure 2004209705
【0173】
本発明内の実施例1〜5のものは、搬送速度が速いので生産性は勿論良いが、その上、色の異なるインクおよび記録媒体の種類を変えた場合にも、記録媒体上に形成されるドットが真円に近く、かつ均一で、良好な画質が形成され、しかも、記録媒体とインクの接着性も良いことがわかる。
【0174】
【発明の効果】
本発明により、画像形成装置の調整により、記録媒体やインクの種類、作業環境による変動をあまり受けず、活性エネルギー線硬化型インクジェット記録方式の長所である良好な色調や階調性を常に保持し、銀塩写真に匹敵する画質を得ることが出来る活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置及び記録方法とそれを用いた印刷物を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェットプリンタを示す全体構成図
【図2】図1のインクジェットプリンタの光路系を示す概要斜視図。
【図3】記録媒体上への紫外線硬化インクの着弾可能領域および紫外線の照射態様を示す平面図。
【図4】インクと記録媒体、周囲の環境条件等に鑑みて適正な紫外線照度を決めるフローを示す図。
【図5】インクジェットのヘッドが画像形成全幅にわたりライン状に並んでいる画像形成装置の例を示す概要構成図。
【符号の説明】
1 インクジェットプリンタ
2 ヘッドキャリッジ
3 ヘッド
4 紫外線光源
7 照度を調整する手段(照度調整手段)
8 活性エネルギー線(紫外線)照射装置
51 コリメータレンズ(平行変換手段)
52 プリズム(方向変換手段)
53 シリンドリカルレンズ(集束手段)
P 記録媒体(記録紙)
T 着弾可能領域
K 紫外線光束

Claims (7)

  1. 活性エネルギー線硬化型インクを記録媒体に付与した後、該記録媒体上のインクに活性エネルギー線を照射してインクを硬化させ、記録媒体上にインクを固着させる活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置において、該活性エネルギー線照射の際の照度を調整する手段を有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置。
  2. 活性エネルギー線の照度調整手段が、光源に付与する印加電圧、光源の数、光源と記録媒体間の距離、光源と記録媒体間に設けた絞り、シャッター、ルーバまたはフィルターの少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置。
  3. 23℃における粘度が50mPa・s以下である活性エネルギー線硬化型インクを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置。
  4. 光カチオン重合硬化型インクを記録媒体に付与した後、該記録媒体上のインクに活性エネルギー線を照射してインクを硬化させ、記録媒体上にインクを固着させる活性エネルギー線硬化型インクジェット記録方法において、該活性エネルギー線照射光源と記録媒体の間に、照度を調整する手段を設けることを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェット記録方法。
  5. 23℃における粘度が50mPa・s以下である光カチオン重合硬化型インクを用いて行うことを特徴とする請求項4記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録方法。
  6. 記録媒体に請求項1、2又は3記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録装置により印刷したことを特徴とする印刷物。
  7. 記録媒体に請求項4記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録方法により印刷したことを特徴とする印刷物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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