JP2004204982A - 内面被覆鋼管 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、ガラス繊維強化ポリエステル樹脂で被覆したモルタル管より強度及び耐水性に優れ、従来の農業用水輸送用鋼管より耐摩耗性が良く、且つ管径の小さい内面被覆鋼管を提供することを目的としている。
【解決手段】鋼管の内面を繊維強化樹脂層で覆うようにした内面被覆鋼管である。この場合、前記繊維強化樹脂層の端部位置を、鋼管の端部より溶接時の熱影響を受ける距離だけ離れたところとし、且つ断面視で、該繊維強化樹脂層の両端周辺部を鋼管面に対し45゜以下(0°を除く)で傾斜させるのが良い。
【選択図】 図1
【解決手段】鋼管の内面を繊維強化樹脂層で覆うようにした内面被覆鋼管である。この場合、前記繊維強化樹脂層の端部位置を、鋼管の端部より溶接時の熱影響を受ける距離だけ離れたところとし、且つ断面視で、該繊維強化樹脂層の両端周辺部を鋼管面に対し45゜以下(0°を除く)で傾斜させるのが良い。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内面を被覆した鋼管に係わり、特に、内面に防食処理が施され、農業用水、下水等、飲用水以外の水等を輸送するのに有効な内面被覆鋼管に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、農業用水等の水輸送管として、モルタルで形成した管の内外面をガラス繊維強化ポリエステル樹脂(FRP:Fiber Reinforced Plasticの略)で被覆した管(FRPMと称する)が多用されている(例えば、特許文献1参照)。このFRPMは、FRPで被覆しているので、内外面の耐食性に優れるが、本体の材質がモルタルであり、強度的に問題があった。つまり、地震等で曲げや引張力がかかると、破損する恐れがある。また、FRPM同士の接続は、端部にゴム製のメカニカル継手を嵌め込むことで行われるが、水圧が1MPaより大きくなると、該継手が破損したり、抜けたりする。つまり、耐水圧性にも問題がある。
【0003】
そのため、強度があり、構造的に強い溶接継手が可能な鋼管を本体に用いることが望まれ、内面防食材料として、「タールエポキシ樹脂塗料」(日本水道協会の規格:JWWA K115)や一部で「モルタル・ライニング」(JWWA A109)等を採用した農業用水輸送用鋼管が使用されるようになった。また、現在では、上水用鋼管の内面防食に採用されている「水道用液状エポキシ樹脂塗料」(JWWA K135)を塗装した鋼管も一般に使用されるようになっている。なお、それらの塗装膜厚は、農業用の場合0.5mm以上とされている。
【0004】
ところが、これらの農業用水輸送用鋼管は、前記したFRPMとは別の問題を抱えていた。
【0005】
すなわち、農業用水輸送用パイプラインを水理設計するに際しては、目標とする水量と管のサイズ及び摩擦抵抗との関係をHazen−Williams式に従って求める。
【0006】
【数1】
【0007】
ここに、
Q:流量(m3/s)
C:流速係数(−)
D:管内径(m)
hf:管摩擦損失水頭(mAq)
L:管路長(m)
そして、(1)式の流速係数Cの値は、農林水産省構造改善局が平成10年3月に発行した“土地改良事業計画設計基準 設計「パイプライン」技術書”に記載された表1により、管種毎に定められる。なお、液状エポキシ樹脂塗料を内面に施した鋼管の場合は、表1中の「タールエポキシ塗装管(鋼管)」に準ずる。
【0008】
なお、この設計基準では、パイプラインの内面塗装の劣化やそれに伴う管内面の腐食、錆こぶの発生による通水断面積の減少等を考慮して、塗装鋼管の流速係数Cを定めているものと考えられる。なお、Cの値が大きいほど、送水時の圧力損失が少ない。
【0009】
【表1】
【0010】
表1より明らかなように、流速係数Cの値は、管種や内面塗装の種類によって異なり、所要の設計流量に対して(1)式より求めた必要管内径には差異が生ずる。例えば、強化プラスチック複合管(FRPM管の1種:モルタルをFRPでコーティングした管)の流速係数Cは150であり、一方、水道用液状エポキシ樹脂塗料を塗装した鋼管の流速係数Cは130である。そのため、同一設計流量で鋼管を本体とすると、FRPMに比べて内径が100mm〜150mm程度大きくする必要が生じ、建設コストが著しく大きくなる。
【0011】
また、タールエポキシ樹脂やモルタル、あるいは不飽和ポリエステルからなる樹脂等を鋼管の内面にコーティングした場合は、輸送中の農業用水中に含まれる泥土や砂礫の摺動による損傷が大きい。つまり、管内面の耐摩耗性が低いという問題もあった。
【0012】
【特許文献1】
特開2001−205712号公報(2頁の段落[0008])
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑み、繊維強化ポリエステル樹脂で被覆したモルタル管より強度及び耐水性に優れ、従来の農業用水輸送用鋼管より耐摩耗性が良く、且つ管径の小さい、少なくとも内面を被覆した鋼管を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
【0015】
すなわち、本発明は、鋼管の内面を繊維強化樹脂層で覆ってなることを特徴とする内面被覆鋼管である。この場合、前記繊維強化樹脂層の端部位置を、鋼管の端部より溶接時の熱影響を受ける距離だけ離れたところとし、且つ断面視で、該繊維強化樹脂層の両端周辺部を鋼管面に対し45゜以下(0°を除く)で傾斜させるのが良い。
【0016】
本発明では、鋼管の内面を繊維強化樹脂層で被覆するようにしたので、従来のモルタル管より強度及び耐水性に優れるばかりでなく、耐摩耗性が良く、且つ管径が小さくて安価な農業用水輸送用管を提供できるようになった。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、発明をなすに至った経緯をまじえ、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
鋼管内面を繊維強化樹脂で被覆した農業用水輸送用管が存在しない理由は、該繊維強化樹脂がタールエポキシ樹脂やモルタル、あるいは不飽和ポリエステルからなる樹脂等に比べて高価であるからである。しかしながら、発明者は、本体のモルタル管を径が細い鋼管で置き換えて同一流量の水を流すことができれば、繊維強化樹脂が高価であるという欠点を、鋼管の価格が安価であることで補い得ると考えた。そして、この考えに基づき、種々の繊維強化樹脂層で被覆した鋼管を鋭意試作し、それらの特性を調査したところ良好な結果が得られたので、そのような繊維強化樹脂で内面を被覆した鋼管を本発明としたのである。
【0019】
まず、本発明では、鋼管の鋼種は特に限定しない。ただし、経済的な観点では、日本工業規格(JIS G 3443)で規定されているSTW290,STW370,STW400,STW490等と同等の組成であるものが好ましい。
【0020】
また、上記鋼管の内面を被覆する防食層の主材料としては、表2に示すようなポリエステル樹脂及びガラス繊維を標準とする。しかし、繊維は、ガラス繊維に代え、炭素繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維等を利用しても良く、樹脂は、ポリエステル樹脂に代え、エポキシ、フェノール、ポリイミド等を利用しても良い。さらに、これらの樹脂には、硬化触媒、硬化促進剤、炭酸力ルシウム等の充填剤、顔料空気硬化剤、膨張剤等を添加しても良い。 なお、表2のポリエステル樹脂の材料特性を、表3に示しておくが、この樹脂の硬化条件は、20℃で24時間後、又は80℃で3時間後である。
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
次に、鋼管内面へ繊維強化樹脂層を形成させる方法は、予め製管工場で行われる。例えば、図2に示すような専用のスプレーポンプ1を用い、鋼管2をターニング・テ−ブル3上で回転させ、その内部に挿入したランス・ノズル4を介して、例えばポリエステル樹脂5とガラス繊維6との混合したものを噴射することで行う。
【0024】
内面に形成する被覆層は、ある程度厚い方が、耐磨耗性あるいは耐食性の観点からも有利である。ただし、厚くなり過ぎると、通水断面の減少や生産コスト増になるため、膜厚は1〜3mm程度にすることが好ましい。
【0025】
また、被覆に際しては、硬化を促進させるため、硬化触媒・硬化促進剤の添加以外に被覆層を加熱しても良い。また、鋼管2の両端部は、溶接時における熱影響を防ぐため、被覆層の端部位置を鋼管の端部より溶接時の熱影響を受ける距離だけ離れたところとし、図1のように塗り残し部8を設けるのが良い。塗り残し部8は、溶接条件にもよるが、例えば、100〜150mm程度とすれば良い。さらに、膜厚がある程度厚くなるため、鋼管同士を溶接した後に上記溶接部近傍の塗り残し部分8をライニングする際に、予め製管工場内で被覆された被膜と溶接後に被覆する被膜とのなじみを良くする必要がある。そのため、本発明では、被膜層7の端部周辺を鋼管面に対し、断面視で45゜以下の角度で傾斜させることが好ましい。45°を超えると、接合が円滑に行い難いからである。より好ましくは、30〜40°の角度とする。
【0026】
なお、鋼管の外面の被覆は、特に規定されず、従来行われている被覆、あるいは塗装とすれば良く、防食のため、プラスチック樹脂やプラスチック・シート等を用いて被覆すれば良い。
【0027】
【実施例】
管種が前記STW400で、サイズが内径800mm、肉厚7.0mmの鋼管の内面に、繊維をガラス繊維、樹脂をポリエステル樹脂とした被覆層(厚さ2.0mm)を形成させ、本発明に係る被覆鋼管を製造した。被覆層の形成は、図2に示したスプレーポンプ1を用いたが、その被覆層7の形成手順は下記の通りである。
(a)被覆する鋼管表面の下地処理
(b)ポリエステル樹脂の調合
<調合例>ポリエステル:充填剤:着色顔料=100:50:2(質量比)
(c)鋼管端部のマスキング(被覆塗料がかからないようにする)
(d)鋼管の一次防錆(プライマー)塗装
(e)スプレーポンプ等のセット
(f)吐出量の調整
<調整例>
ポリエステル樹脂:ガラス繊維=3.5:1.2(kg/min)
ポリエステル樹脂:硬化触媒=100:1.5(重量比)
(g)ランス・ノズルによる塗布作業
(h)ガラス繊維の供給停止による表面仕上げ塗布作業
(i)端部のマスキング剥がし及び平滑仕上げ
(j)硬化養生
(k)外観、膜厚、ピンホール等検査
得られた被覆鋼管は、前記設計用C値が従来のモルタル管と同じ150である。また、鋼管の両端部は約100mm程度の長さにわたり、被覆層を形成させず、溶接時の熱影響を回避するようにした。さらに、該被覆層の端部周辺は、断面視で35°の角度で傾斜させた。
【0028】
次に、この被覆鋼管の接合・布設試験を行った。なお、内面防食層の形成は、鋼管同士の溶接後に次のようにして行った。
(1)溶接部の成形および清掃
(2)塗り残し部へのプライマー塗布
(3)ポリエステル樹脂の調合
(4)塗り残し部のマスキング
(5)スプレーポンプ(現場:管外に設置)の調整
(6)ランス・ノズルによる塗布作業
(7)ガラス繊維の供給停止による表面仕上げ塗布作業
(8)端部のマスキング剥がし及び平滑仕上げ
(9)硬化養生
(10)外観膜厚、ピンホール等検査
この時の溶接部の被覆状況は、図3に示す通りである。また、鋼管2の外面には、図3に示すように、予め溶接部近傍を残してプラスチック被覆11を形成し、溶接後にジョイントコート12として、厚み1.5mmのプラスチック・シートを巻き、溶着して被覆した。
【0029】
このようにして施工した被覆鋼管の接合は溶接継手であるので、モルタル管のゴム製メカニカル継手に比べて、耐水圧性が著しく向上するばかりでなく、本体の強度が高いので耐震性が向上することも明らかである。
【0030】
ただし、以上の実施例では、被覆層の耐摩耗性に関する評価がされていない。そこで、鋼管の表面に前記鋼管の内面に形成したのと同じ被覆層(厚さ3.5mm)を塗布し、砕石、土壌中を推進させて、その耐摩耗性を測定する試験を行った。
【0031】
▲1▼ 試験条件
・土壌:砕石 JIS 5号(粒径13φ〜20φ)100%
・土被り:10m
・作用土圧:7.4 ton/m2
・供試管:外径200mm×長さ2000mm
・推進総延長:200m
▲2▼ 試験結果
試験結果を図4に示す。図4より、約50m程度の推進させると、それ以降の摩耗量の増加が抑制され、200mの推進させても1.2〜1.7mm程度の非常に小さい摩耗量であった。この結果から、本発明に係る被覆鋼管の内面が水中に含まれる土砂による磨耗に対しても十分に耐え得ることが明らかである。
【0032】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、従来のモルタル管より強度及び耐水性に優れるばかりでなく、耐摩耗性が良く、且つ管径が小さくて安価な農業用水輸送用管を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る被覆鋼管の横断面を示す図である。
【図2】鋼管内面に繊維強化樹脂の被覆層を形成させる方法の一例を示す図である。
【図3】鋼管溶接部の被覆状況を示す横断面図である。
【図4】本発明に係る被覆層の耐磨耗性を評価する試験結果を示す図である。
【符号の説明】
1 スプレーポンプ
2 鋼管
3 ターニング・テーブル
4 ランス・ノズル(ガン)
5 ポリエステル樹脂タンク
6 ガラス繊維タンク
7 被覆層
8 塗り残し部
9 現地での被覆部
10 溶接ビード
11 プラスチック被覆
12 ジョイントコート
【発明の属する技術分野】
本発明は、内面を被覆した鋼管に係わり、特に、内面に防食処理が施され、農業用水、下水等、飲用水以外の水等を輸送するのに有効な内面被覆鋼管に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、農業用水等の水輸送管として、モルタルで形成した管の内外面をガラス繊維強化ポリエステル樹脂(FRP:Fiber Reinforced Plasticの略)で被覆した管(FRPMと称する)が多用されている(例えば、特許文献1参照)。このFRPMは、FRPで被覆しているので、内外面の耐食性に優れるが、本体の材質がモルタルであり、強度的に問題があった。つまり、地震等で曲げや引張力がかかると、破損する恐れがある。また、FRPM同士の接続は、端部にゴム製のメカニカル継手を嵌め込むことで行われるが、水圧が1MPaより大きくなると、該継手が破損したり、抜けたりする。つまり、耐水圧性にも問題がある。
【0003】
そのため、強度があり、構造的に強い溶接継手が可能な鋼管を本体に用いることが望まれ、内面防食材料として、「タールエポキシ樹脂塗料」(日本水道協会の規格:JWWA K115)や一部で「モルタル・ライニング」(JWWA A109)等を採用した農業用水輸送用鋼管が使用されるようになった。また、現在では、上水用鋼管の内面防食に採用されている「水道用液状エポキシ樹脂塗料」(JWWA K135)を塗装した鋼管も一般に使用されるようになっている。なお、それらの塗装膜厚は、農業用の場合0.5mm以上とされている。
【0004】
ところが、これらの農業用水輸送用鋼管は、前記したFRPMとは別の問題を抱えていた。
【0005】
すなわち、農業用水輸送用パイプラインを水理設計するに際しては、目標とする水量と管のサイズ及び摩擦抵抗との関係をHazen−Williams式に従って求める。
【0006】
【数1】
【0007】
ここに、
Q:流量(m3/s)
C:流速係数(−)
D:管内径(m)
hf:管摩擦損失水頭(mAq)
L:管路長(m)
そして、(1)式の流速係数Cの値は、農林水産省構造改善局が平成10年3月に発行した“土地改良事業計画設計基準 設計「パイプライン」技術書”に記載された表1により、管種毎に定められる。なお、液状エポキシ樹脂塗料を内面に施した鋼管の場合は、表1中の「タールエポキシ塗装管(鋼管)」に準ずる。
【0008】
なお、この設計基準では、パイプラインの内面塗装の劣化やそれに伴う管内面の腐食、錆こぶの発生による通水断面積の減少等を考慮して、塗装鋼管の流速係数Cを定めているものと考えられる。なお、Cの値が大きいほど、送水時の圧力損失が少ない。
【0009】
【表1】
【0010】
表1より明らかなように、流速係数Cの値は、管種や内面塗装の種類によって異なり、所要の設計流量に対して(1)式より求めた必要管内径には差異が生ずる。例えば、強化プラスチック複合管(FRPM管の1種:モルタルをFRPでコーティングした管)の流速係数Cは150であり、一方、水道用液状エポキシ樹脂塗料を塗装した鋼管の流速係数Cは130である。そのため、同一設計流量で鋼管を本体とすると、FRPMに比べて内径が100mm〜150mm程度大きくする必要が生じ、建設コストが著しく大きくなる。
【0011】
また、タールエポキシ樹脂やモルタル、あるいは不飽和ポリエステルからなる樹脂等を鋼管の内面にコーティングした場合は、輸送中の農業用水中に含まれる泥土や砂礫の摺動による損傷が大きい。つまり、管内面の耐摩耗性が低いという問題もあった。
【0012】
【特許文献1】
特開2001−205712号公報(2頁の段落[0008])
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑み、繊維強化ポリエステル樹脂で被覆したモルタル管より強度及び耐水性に優れ、従来の農業用水輸送用鋼管より耐摩耗性が良く、且つ管径の小さい、少なくとも内面を被覆した鋼管を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。
【0015】
すなわち、本発明は、鋼管の内面を繊維強化樹脂層で覆ってなることを特徴とする内面被覆鋼管である。この場合、前記繊維強化樹脂層の端部位置を、鋼管の端部より溶接時の熱影響を受ける距離だけ離れたところとし、且つ断面視で、該繊維強化樹脂層の両端周辺部を鋼管面に対し45゜以下(0°を除く)で傾斜させるのが良い。
【0016】
本発明では、鋼管の内面を繊維強化樹脂層で被覆するようにしたので、従来のモルタル管より強度及び耐水性に優れるばかりでなく、耐摩耗性が良く、且つ管径が小さくて安価な農業用水輸送用管を提供できるようになった。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、発明をなすに至った経緯をまじえ、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
鋼管内面を繊維強化樹脂で被覆した農業用水輸送用管が存在しない理由は、該繊維強化樹脂がタールエポキシ樹脂やモルタル、あるいは不飽和ポリエステルからなる樹脂等に比べて高価であるからである。しかしながら、発明者は、本体のモルタル管を径が細い鋼管で置き換えて同一流量の水を流すことができれば、繊維強化樹脂が高価であるという欠点を、鋼管の価格が安価であることで補い得ると考えた。そして、この考えに基づき、種々の繊維強化樹脂層で被覆した鋼管を鋭意試作し、それらの特性を調査したところ良好な結果が得られたので、そのような繊維強化樹脂で内面を被覆した鋼管を本発明としたのである。
【0019】
まず、本発明では、鋼管の鋼種は特に限定しない。ただし、経済的な観点では、日本工業規格(JIS G 3443)で規定されているSTW290,STW370,STW400,STW490等と同等の組成であるものが好ましい。
【0020】
また、上記鋼管の内面を被覆する防食層の主材料としては、表2に示すようなポリエステル樹脂及びガラス繊維を標準とする。しかし、繊維は、ガラス繊維に代え、炭素繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維等を利用しても良く、樹脂は、ポリエステル樹脂に代え、エポキシ、フェノール、ポリイミド等を利用しても良い。さらに、これらの樹脂には、硬化触媒、硬化促進剤、炭酸力ルシウム等の充填剤、顔料空気硬化剤、膨張剤等を添加しても良い。 なお、表2のポリエステル樹脂の材料特性を、表3に示しておくが、この樹脂の硬化条件は、20℃で24時間後、又は80℃で3時間後である。
【0021】
【表2】
【0022】
【表3】
【0023】
次に、鋼管内面へ繊維強化樹脂層を形成させる方法は、予め製管工場で行われる。例えば、図2に示すような専用のスプレーポンプ1を用い、鋼管2をターニング・テ−ブル3上で回転させ、その内部に挿入したランス・ノズル4を介して、例えばポリエステル樹脂5とガラス繊維6との混合したものを噴射することで行う。
【0024】
内面に形成する被覆層は、ある程度厚い方が、耐磨耗性あるいは耐食性の観点からも有利である。ただし、厚くなり過ぎると、通水断面の減少や生産コスト増になるため、膜厚は1〜3mm程度にすることが好ましい。
【0025】
また、被覆に際しては、硬化を促進させるため、硬化触媒・硬化促進剤の添加以外に被覆層を加熱しても良い。また、鋼管2の両端部は、溶接時における熱影響を防ぐため、被覆層の端部位置を鋼管の端部より溶接時の熱影響を受ける距離だけ離れたところとし、図1のように塗り残し部8を設けるのが良い。塗り残し部8は、溶接条件にもよるが、例えば、100〜150mm程度とすれば良い。さらに、膜厚がある程度厚くなるため、鋼管同士を溶接した後に上記溶接部近傍の塗り残し部分8をライニングする際に、予め製管工場内で被覆された被膜と溶接後に被覆する被膜とのなじみを良くする必要がある。そのため、本発明では、被膜層7の端部周辺を鋼管面に対し、断面視で45゜以下の角度で傾斜させることが好ましい。45°を超えると、接合が円滑に行い難いからである。より好ましくは、30〜40°の角度とする。
【0026】
なお、鋼管の外面の被覆は、特に規定されず、従来行われている被覆、あるいは塗装とすれば良く、防食のため、プラスチック樹脂やプラスチック・シート等を用いて被覆すれば良い。
【0027】
【実施例】
管種が前記STW400で、サイズが内径800mm、肉厚7.0mmの鋼管の内面に、繊維をガラス繊維、樹脂をポリエステル樹脂とした被覆層(厚さ2.0mm)を形成させ、本発明に係る被覆鋼管を製造した。被覆層の形成は、図2に示したスプレーポンプ1を用いたが、その被覆層7の形成手順は下記の通りである。
(a)被覆する鋼管表面の下地処理
(b)ポリエステル樹脂の調合
<調合例>ポリエステル:充填剤:着色顔料=100:50:2(質量比)
(c)鋼管端部のマスキング(被覆塗料がかからないようにする)
(d)鋼管の一次防錆(プライマー)塗装
(e)スプレーポンプ等のセット
(f)吐出量の調整
<調整例>
ポリエステル樹脂:ガラス繊維=3.5:1.2(kg/min)
ポリエステル樹脂:硬化触媒=100:1.5(重量比)
(g)ランス・ノズルによる塗布作業
(h)ガラス繊維の供給停止による表面仕上げ塗布作業
(i)端部のマスキング剥がし及び平滑仕上げ
(j)硬化養生
(k)外観、膜厚、ピンホール等検査
得られた被覆鋼管は、前記設計用C値が従来のモルタル管と同じ150である。また、鋼管の両端部は約100mm程度の長さにわたり、被覆層を形成させず、溶接時の熱影響を回避するようにした。さらに、該被覆層の端部周辺は、断面視で35°の角度で傾斜させた。
【0028】
次に、この被覆鋼管の接合・布設試験を行った。なお、内面防食層の形成は、鋼管同士の溶接後に次のようにして行った。
(1)溶接部の成形および清掃
(2)塗り残し部へのプライマー塗布
(3)ポリエステル樹脂の調合
(4)塗り残し部のマスキング
(5)スプレーポンプ(現場:管外に設置)の調整
(6)ランス・ノズルによる塗布作業
(7)ガラス繊維の供給停止による表面仕上げ塗布作業
(8)端部のマスキング剥がし及び平滑仕上げ
(9)硬化養生
(10)外観膜厚、ピンホール等検査
この時の溶接部の被覆状況は、図3に示す通りである。また、鋼管2の外面には、図3に示すように、予め溶接部近傍を残してプラスチック被覆11を形成し、溶接後にジョイントコート12として、厚み1.5mmのプラスチック・シートを巻き、溶着して被覆した。
【0029】
このようにして施工した被覆鋼管の接合は溶接継手であるので、モルタル管のゴム製メカニカル継手に比べて、耐水圧性が著しく向上するばかりでなく、本体の強度が高いので耐震性が向上することも明らかである。
【0030】
ただし、以上の実施例では、被覆層の耐摩耗性に関する評価がされていない。そこで、鋼管の表面に前記鋼管の内面に形成したのと同じ被覆層(厚さ3.5mm)を塗布し、砕石、土壌中を推進させて、その耐摩耗性を測定する試験を行った。
【0031】
▲1▼ 試験条件
・土壌:砕石 JIS 5号(粒径13φ〜20φ)100%
・土被り:10m
・作用土圧:7.4 ton/m2
・供試管:外径200mm×長さ2000mm
・推進総延長:200m
▲2▼ 試験結果
試験結果を図4に示す。図4より、約50m程度の推進させると、それ以降の摩耗量の増加が抑制され、200mの推進させても1.2〜1.7mm程度の非常に小さい摩耗量であった。この結果から、本発明に係る被覆鋼管の内面が水中に含まれる土砂による磨耗に対しても十分に耐え得ることが明らかである。
【0032】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明により、従来のモルタル管より強度及び耐水性に優れるばかりでなく、耐摩耗性が良く、且つ管径が小さくて安価な農業用水輸送用管を提供できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る被覆鋼管の横断面を示す図である。
【図2】鋼管内面に繊維強化樹脂の被覆層を形成させる方法の一例を示す図である。
【図3】鋼管溶接部の被覆状況を示す横断面図である。
【図4】本発明に係る被覆層の耐磨耗性を評価する試験結果を示す図である。
【符号の説明】
1 スプレーポンプ
2 鋼管
3 ターニング・テーブル
4 ランス・ノズル(ガン)
5 ポリエステル樹脂タンク
6 ガラス繊維タンク
7 被覆層
8 塗り残し部
9 現地での被覆部
10 溶接ビード
11 プラスチック被覆
12 ジョイントコート
Claims (2)
- 鋼管の内面を繊維強化樹脂層で覆ってなることを特徴とする内面被覆鋼管。
- 前記繊維強化樹脂層の端部位置を、鋼管の端部より溶接時の熱影響を受ける距離だけ離れたところとし、且つ断面視で、該繊維強化樹脂層の両端周辺部を鋼管面に対し45゜以下(0°を除く)で傾斜してなることを特徴とする請求項1記載の内面被覆鋼管。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002375868A JP2004204982A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 内面被覆鋼管 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002375868A JP2004204982A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 内面被覆鋼管 |
Publications (1)
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ID=32813467
Family Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2002375868A Withdrawn JP2004204982A (ja) | 2002-12-26 | 2002-12-26 | 内面被覆鋼管 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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- 2002-12-26 JP JP2002375868A patent/JP2004204982A/ja not_active Withdrawn
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