JP2004204394A - 伸縮性に優れた人工皮革の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】長さ方向の伸縮性(伸長率15%以上、伸長回復率80%以上)を付与することのできる伸縮性に優れた人工皮革の製造方法を提供すること。
【解決手段】主として単繊維繊度0.9dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成された人工皮革の少なくとも片側の表面に、極細繊維の収縮剤を含む糊剤を塗布した後に、熱収縮処理および熱セット処理を施し、次いで、前記熱収縮処理および熱セット処理で熱収縮した極細繊維と糊剤を除去することを特徴とする伸縮性に優れた人工皮革の製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】主として単繊維繊度0.9dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成された人工皮革の少なくとも片側の表面に、極細繊維の収縮剤を含む糊剤を塗布した後に、熱収縮処理および熱セット処理を施し、次いで、前記熱収縮処理および熱セット処理で熱収縮した極細繊維と糊剤を除去することを特徴とする伸縮性に優れた人工皮革の製造方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、伸縮性に優れた人工皮革の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から極細繊維を含む不織布構造物からなる人工皮革は種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3など)。
【0003】
しかし、従来の不織布構造物からなる人工皮革は、伸縮性に乏しく、特に長さ方向については、殆ど伸縮性がないものであった。これは、製造工程において絶えず長さ方向に張力が加えられ、長さが伸びることが原因として挙げられる。
【0004】
幅方向については、製造工程において比較的リラックスした状態で加工されるので、長さ方向に比べると伸縮性を付与しやすく、極細繊維絡合体の内部に伸縮性織物が介在した積層絡合体中に高分子弾性体が充填された人工皮革により、幅方向に伸縮性を有する人工皮革が示されている(例えば、特許文献4)。しかし、長さ・幅方向ともに伸縮性を有する人工皮革を製造することは難しかった。
【0005】
一方、長さ方向の伸縮性を付与する方法として、長さを縮める手段として、染色前にオーバーフィードし熱処理する方法が示唆されている(例えば、特許文献5)。しかし、不織布の絡合体のみでは生機加工段階までに収縮処理が施されているため、更なる染色前での熱処理による長さ方向の収縮は難しく、伸長率5〜15%程度の低レベルなものを製造することは可能だが、伸長率15%を越えるような十分な伸縮性を得ることが難しいので、この方法は極めて限られたシートのみに有効であり、一般的とは言い難い。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−30579号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2000−220077号公報
【0008】
【特許文献3】
特許第3133159号公報
【0009】
【特許文献4】
特公平6−39747号公報
【0010】
【特許文献5】
特開2000−303365号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、伸縮性、特に従来の方法では安定して達成できなかった長さ方向の伸縮性(伸長率15%以上、伸長回復率80%以上)を付与することのできる伸縮性に優れた人工皮革の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために次のような構成を有する。即ち、主として単繊維繊度0.9dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成された人工皮革用基体の少なくとも片側の表面に、極細繊維の収縮剤を含む糊剤を塗布した後に、熱収縮処理および熱セット処理を施し、次いで、前記熱収縮処理および熱セット処理で熱収縮した極細繊維と糊剤を除去することを特徴とする伸縮性に優れた人工皮革の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明において、人工皮革用基体とは、主として単繊維繊度0.9dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成されたものであり、極細繊維もしくは極細化可能な複合繊維の短繊維をカーディング、抄紙などの手段によりウェブ化し、ニードルパンチ、ウォータージェットパンチなどの絡合手段によりシート化した後、極細化処理、高分子弾性体付与処理を行うなど、公知の方法により製造することができるが、特に限定されるものではない。
【0014】
繊維絡合体に含まれる極細繊維を形成するポリマーとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロンなどのポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよび/またはそれらの共重合体などのポリエステル類などを用いることができるが、特に限定されるものではない。
【0015】
本発明において用いられる極細繊維の繊度は、0.9dtex以下であり、好ましくは0.0001dtex以上0.9dtex以下である。極細繊維の繊度が0.9dtexを越えると、人工皮革特有の表面のソフトなタッチが得られ難いので好ましくない。極細繊維の繊度が0.0001dtex未満のときは、繊維強度が低くなるため好ましくない。
【0016】
繊維絡合体には編織物が絡合一体化されていても構わない。編織物としては、平織、紗織、トリコットなどを用いることができるが、特に限定されるものではない。編織物を絡合一体化させる方法としては、ニードルパンチ、ウォータージェットパンチなどの絡合手段を用いることができる。編織物を構成する織糸としては、ポリエステル、ポリアミドなどの合成繊維糸条が使用される。
【0017】
高分子弾性体としては、例えば、ポリウレタンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマーなどを用いることができるが、中でも、ポリウレタンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン・ポリウレアエラストマーなどのポリウレタン系エラストマーが実用性に優れている点で好ましい。
【0018】
高分子弾性体の付量は、製品の柔軟性、表面タッチ、染色均一性および伸縮性、特に伸長回復率の観点から、固形分として対極細繊維重量比で20〜70重量%の範囲が好ましい。付量が20重量%未満では、摩耗性および伸長回復率が低下しやすくなるので好ましくない。付量が70重量%を越えると風合が硬くなりやすいので好ましくない。
【0019】
高分子弾性体中に必要に応じて着色剤、酸化防止剤、制電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤などの添加剤を配合してもよい。
【0020】
本発明に用いる収縮剤は、極細繊維に塗布した後に熱収縮処理を行った時、極細繊維の繊維長を10%以上、好ましくは15%以上収縮させるものである。繊維収縮率が10未満だと、人工皮革用基体を十分収縮させることができず、人工皮革の伸縮性が乏しくなるため好ましくない。
【0021】
収縮剤は極細繊維の成分により適宜選択されればよい。特に、極細繊維が合成繊維であれば、膨潤剤あるいはキャリアーとして用いられ得る化合物を用いることができる。そのような化合物を用いれば、特に極細繊維を収縮させる能力が高いため、高い収縮率と収縮応力を与え、人工皮革用基体を長さ方向および/または幅方向に収縮させやすいという効果を得ることができるので、好ましい。
【0022】
極細繊維として、ポリエステル系極細繊維あるいはポリアミド系極細繊維を用いる場合、収縮剤としては、フェノール類(フェノール、クレゾール、クロロフェノール、ニトロフェノール、フェニルフェノール、オクチルフェノール、ナフトール)、安息香酸またはその誘導体(安息香酸メチル、エチル、ブチル、オクチル、フェニルあるいはベンジルエステル)、サリチル酸またはその誘導体(サリチル酸メチル、エチル、ブチル、オクチル、フェニルあるいはベンジルエステル)、ベンゼンジカルボン酸またはその誘導体(ベンゼンジカルボン酸ジメチル、ジエチル、ジオクチルあるいはジフェニルエステル)、炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタリン、ジフェニル、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、テトラヒドロナフタリン、トリクロロエチレン、ジエチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ジクロロトルエン、プロモベンゼン、ジプロモベンゼン)、フェニル安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸エステル、3−ヒドロオキシ−2−ナフトエ酸エステル、シクロヘキサン、ベンザルクロライド、アセチルジフェニル、ベンゾフェノン、フエネトール、ベンジルアルコール、パラサイメン、フルオレン、ジフェニルスルフォン、ナフチルメチルエーテル、ジフェニルアミン、NNジメチルアニリン、NNジエチルアニリンを単独または適宜配合して用いることができる。
【0023】
糊剤としては、収縮剤との相溶性が良好で、適度な粘度を与えられるものであればどのようなものを用いてよく、通常は捺染に用いる捺染糊剤から適宜選択することができる。本発明者らの知見によれば、糊剤の粘度は、人工皮革の厚み方向に適度に浸透し、厚みの1/10〜4/10の位置まで浸透することができる粘度であることが好ましく、人工皮革の密度や極細繊維ポリマー種、または糊剤の塗布量などにより異なるが、例えば、厚み0.7mm、密度0.3g/cm3 のポリエチレンテレフタレート系人工皮革である場合、常温で1000mPa・s以上50000mPa・s以下が良い。その場合50000mPa・sを越えると人工皮革の厚み方向に浸透しにくいため収縮剤に触れる極細繊維の量が少なくなり、熱収縮時に人工皮革を収縮させる応力が小さくなりやすいので好ましくない場合がある。1000mPa・s未満だと、浸透性が良すぎるため、後に除去しなければならない部分が多くなりやすいので好ましくない場合がある。
【0024】
極細繊維の収縮剤を含む糊剤は人工皮革の少なくとも片側の表面に、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、ナイフコーティング、スリットコーティング、あるいはスプレーなどの方法で塗布する。
【0025】
次いで、糊剤を塗布した人工皮革を熱収縮処理する。熱収縮処理としては、熱風、赤外線などによる乾熱収縮、または熱水、スチームなどによる湿熱収縮を行うことができる。
【0026】
以上の収縮処理を行ったとき、糊剤の塗布された極細繊維が収縮するのに引きつられて、糊剤が塗布されていない極細繊維は挫屈構造を形成する。
【0027】
次いで、加熱により極細繊維の挫屈構造を熱セットする。熱セットのための加熱温度は、人工皮革に含まれる繊維が製造工程で受けた熱履歴を考慮して選択するとよい。例えば、液流染色機などで湿熱120℃処理した人工皮革の場合、熱セットのために湿熱120℃以上、乾熱140℃以上が必要となる。熱セット処理時間は、人工皮革に含まれるポリマー種および熱セット温度によって異なるが、例えばポリエチレンテレフタレートの場合、1分から3分であることが、熱セット性、加工安定性の点で好ましい。
【0028】
続いて収縮した極細繊維を針布やサンドペーパーによる研削、またはスライスなどの方法で除去し、挫屈構造を有する極細繊維を残すことにより、伸長率15%以上、伸長回復率80%以上を満足するような伸縮性に優れた人工皮革を得ることができる。
【0029】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【0030】
実施例における伸長率および伸長回復率は、以下に示す方法で測定したものである。
(1)伸長率:
5cm×約30cmの人工皮革サンプルを長さ方向、幅方向にそれぞれ3枚ずつ採取し、定速伸長型引張試験機を用い、つかみ間隔を20cmとし、引張速度20cm/minで1.8kgまで引き伸ばし、そのときのつかみ間隔を測り、次の式により伸長率(%)を求め、3枚の平均値より求めた。
【0031】
伸長率=(L1−L)/L×100(%)
L :つかみ間隔
L1:1.8kgまで引き伸ばしたときのつかみ間隔
(2)伸長回復率:
5cm×約30cmの人工皮革サンプルを長さ方向、幅方向にそれぞれ3枚ずつ採取し、定速伸長型引張試験機を用い、つかみ間隔を20cmとし、次に上記の方法で求めた伸長率の80%の長さまで伸ばして、1分間放置した後、同じ速度で元の位置まで戻し3分間放置する。この動作を5回繰り返した後に、サンプルの重さと同等の荷重まで引き伸ばしたときの伸びを5回繰り返し伸長後の残留伸びとし、次の式により伸長回復率(%)を求め、3枚の平均値より求めた。
【0032】
伸長回復率(%)=(L2−L3)/L2×100
L2:伸長率の80%の伸びに相当するチャート上の長さ(cm)
L3:5回繰り返し伸長後の残留伸びに相当するチャート上の長さ(cm)
実施例1
極細繊維成分がポリエチレンテレフタレート、高分子弾性体がポリウレタンである厚み0.7mm、密度0.3g/cm3 の人工皮革の片側の表面に、収縮剤を含む糊剤を塗布した後、100℃の熱風中でシートを収縮させた。収縮剤としてはp−フェニルフェノールを用い、アルギン酸ナトリウム(7%)とp−フェニルフェノールを70:30の比率で混合したものを糊剤として塗布した。
【0033】
次いで、シートの糊剤を塗布した側の表面をサンドペーパーで厚さ0.2mm研削し、収縮した極細繊維を除去したところ、伸縮性の良好な人工皮革が得られた。かくして得られた人工皮革の評価結果を表1に示した。
実施例2
極細繊維成分がナイロン6であり、収縮剤がベンジルアルコールである以外は実施例1と同じ方法で人工皮革を得た。かくして得られた人工皮革の評価結果を表1に示した。
比較例1
収縮剤を含まない糊剤を塗布する以外は実施例1と同じ方法で人工皮革を得た。かくして得られた人工皮革の評価結果を表1に示した。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の方法では達成できなかった長さ方向の伸縮性(伸長率15%以上、伸長回復率80%以上)を付与することのできる伸縮性に優れた人工皮革の製造方法を提供することができる。
【0036】
特に、請求項2記載の本発明では、特に極細繊維を収縮させる能力が高いため、高い収縮率と収縮応力を与え、人工皮革用基体を長さ方向および/または幅方向に収縮させやすいという効果を得ることができるので、より高い伸縮性を達成することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、伸縮性に優れた人工皮革の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から極細繊維を含む不織布構造物からなる人工皮革は種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3など)。
【0003】
しかし、従来の不織布構造物からなる人工皮革は、伸縮性に乏しく、特に長さ方向については、殆ど伸縮性がないものであった。これは、製造工程において絶えず長さ方向に張力が加えられ、長さが伸びることが原因として挙げられる。
【0004】
幅方向については、製造工程において比較的リラックスした状態で加工されるので、長さ方向に比べると伸縮性を付与しやすく、極細繊維絡合体の内部に伸縮性織物が介在した積層絡合体中に高分子弾性体が充填された人工皮革により、幅方向に伸縮性を有する人工皮革が示されている(例えば、特許文献4)。しかし、長さ・幅方向ともに伸縮性を有する人工皮革を製造することは難しかった。
【0005】
一方、長さ方向の伸縮性を付与する方法として、長さを縮める手段として、染色前にオーバーフィードし熱処理する方法が示唆されている(例えば、特許文献5)。しかし、不織布の絡合体のみでは生機加工段階までに収縮処理が施されているため、更なる染色前での熱処理による長さ方向の収縮は難しく、伸長率5〜15%程度の低レベルなものを製造することは可能だが、伸長率15%を越えるような十分な伸縮性を得ることが難しいので、この方法は極めて限られたシートのみに有効であり、一般的とは言い難い。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−30579号公報
【0007】
【特許文献2】
特開2000−220077号公報
【0008】
【特許文献3】
特許第3133159号公報
【0009】
【特許文献4】
特公平6−39747号公報
【0010】
【特許文献5】
特開2000−303365号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、伸縮性、特に従来の方法では安定して達成できなかった長さ方向の伸縮性(伸長率15%以上、伸長回復率80%以上)を付与することのできる伸縮性に優れた人工皮革の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる課題を解決するために次のような構成を有する。即ち、主として単繊維繊度0.9dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成された人工皮革用基体の少なくとも片側の表面に、極細繊維の収縮剤を含む糊剤を塗布した後に、熱収縮処理および熱セット処理を施し、次いで、前記熱収縮処理および熱セット処理で熱収縮した極細繊維と糊剤を除去することを特徴とする伸縮性に優れた人工皮革の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明において、人工皮革用基体とは、主として単繊維繊度0.9dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成されたものであり、極細繊維もしくは極細化可能な複合繊維の短繊維をカーディング、抄紙などの手段によりウェブ化し、ニードルパンチ、ウォータージェットパンチなどの絡合手段によりシート化した後、極細化処理、高分子弾性体付与処理を行うなど、公知の方法により製造することができるが、特に限定されるものではない。
【0014】
繊維絡合体に含まれる極細繊維を形成するポリマーとしては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロンなどのポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレートおよび/またはそれらの共重合体などのポリエステル類などを用いることができるが、特に限定されるものではない。
【0015】
本発明において用いられる極細繊維の繊度は、0.9dtex以下であり、好ましくは0.0001dtex以上0.9dtex以下である。極細繊維の繊度が0.9dtexを越えると、人工皮革特有の表面のソフトなタッチが得られ難いので好ましくない。極細繊維の繊度が0.0001dtex未満のときは、繊維強度が低くなるため好ましくない。
【0016】
繊維絡合体には編織物が絡合一体化されていても構わない。編織物としては、平織、紗織、トリコットなどを用いることができるが、特に限定されるものではない。編織物を絡合一体化させる方法としては、ニードルパンチ、ウォータージェットパンチなどの絡合手段を用いることができる。編織物を構成する織糸としては、ポリエステル、ポリアミドなどの合成繊維糸条が使用される。
【0017】
高分子弾性体としては、例えば、ポリウレタンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン・ポリウレアエラストマー、ポリアクリル酸樹脂、アクリロニトリル・ブタジエンエラストマー、スチレン・ブタジエンエラストマーなどを用いることができるが、中でも、ポリウレタンエラストマー、ポリウレアエラストマー、ポリウレタン・ポリウレアエラストマーなどのポリウレタン系エラストマーが実用性に優れている点で好ましい。
【0018】
高分子弾性体の付量は、製品の柔軟性、表面タッチ、染色均一性および伸縮性、特に伸長回復率の観点から、固形分として対極細繊維重量比で20〜70重量%の範囲が好ましい。付量が20重量%未満では、摩耗性および伸長回復率が低下しやすくなるので好ましくない。付量が70重量%を越えると風合が硬くなりやすいので好ましくない。
【0019】
高分子弾性体中に必要に応じて着色剤、酸化防止剤、制電防止剤、分散剤、柔軟剤、凝固調整剤などの添加剤を配合してもよい。
【0020】
本発明に用いる収縮剤は、極細繊維に塗布した後に熱収縮処理を行った時、極細繊維の繊維長を10%以上、好ましくは15%以上収縮させるものである。繊維収縮率が10未満だと、人工皮革用基体を十分収縮させることができず、人工皮革の伸縮性が乏しくなるため好ましくない。
【0021】
収縮剤は極細繊維の成分により適宜選択されればよい。特に、極細繊維が合成繊維であれば、膨潤剤あるいはキャリアーとして用いられ得る化合物を用いることができる。そのような化合物を用いれば、特に極細繊維を収縮させる能力が高いため、高い収縮率と収縮応力を与え、人工皮革用基体を長さ方向および/または幅方向に収縮させやすいという効果を得ることができるので、好ましい。
【0022】
極細繊維として、ポリエステル系極細繊維あるいはポリアミド系極細繊維を用いる場合、収縮剤としては、フェノール類(フェノール、クレゾール、クロロフェノール、ニトロフェノール、フェニルフェノール、オクチルフェノール、ナフトール)、安息香酸またはその誘導体(安息香酸メチル、エチル、ブチル、オクチル、フェニルあるいはベンジルエステル)、サリチル酸またはその誘導体(サリチル酸メチル、エチル、ブチル、オクチル、フェニルあるいはベンジルエステル)、ベンゼンジカルボン酸またはその誘導体(ベンゼンジカルボン酸ジメチル、ジエチル、ジオクチルあるいはジフェニルエステル)、炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタリン、ジフェニル、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、テトラヒドロナフタリン、トリクロロエチレン、ジエチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ジクロロトルエン、プロモベンゼン、ジプロモベンゼン)、フェニル安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸エステル、3−ヒドロオキシ−2−ナフトエ酸エステル、シクロヘキサン、ベンザルクロライド、アセチルジフェニル、ベンゾフェノン、フエネトール、ベンジルアルコール、パラサイメン、フルオレン、ジフェニルスルフォン、ナフチルメチルエーテル、ジフェニルアミン、NNジメチルアニリン、NNジエチルアニリンを単独または適宜配合して用いることができる。
【0023】
糊剤としては、収縮剤との相溶性が良好で、適度な粘度を与えられるものであればどのようなものを用いてよく、通常は捺染に用いる捺染糊剤から適宜選択することができる。本発明者らの知見によれば、糊剤の粘度は、人工皮革の厚み方向に適度に浸透し、厚みの1/10〜4/10の位置まで浸透することができる粘度であることが好ましく、人工皮革の密度や極細繊維ポリマー種、または糊剤の塗布量などにより異なるが、例えば、厚み0.7mm、密度0.3g/cm3 のポリエチレンテレフタレート系人工皮革である場合、常温で1000mPa・s以上50000mPa・s以下が良い。その場合50000mPa・sを越えると人工皮革の厚み方向に浸透しにくいため収縮剤に触れる極細繊維の量が少なくなり、熱収縮時に人工皮革を収縮させる応力が小さくなりやすいので好ましくない場合がある。1000mPa・s未満だと、浸透性が良すぎるため、後に除去しなければならない部分が多くなりやすいので好ましくない場合がある。
【0024】
極細繊維の収縮剤を含む糊剤は人工皮革の少なくとも片側の表面に、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、ナイフコーティング、スリットコーティング、あるいはスプレーなどの方法で塗布する。
【0025】
次いで、糊剤を塗布した人工皮革を熱収縮処理する。熱収縮処理としては、熱風、赤外線などによる乾熱収縮、または熱水、スチームなどによる湿熱収縮を行うことができる。
【0026】
以上の収縮処理を行ったとき、糊剤の塗布された極細繊維が収縮するのに引きつられて、糊剤が塗布されていない極細繊維は挫屈構造を形成する。
【0027】
次いで、加熱により極細繊維の挫屈構造を熱セットする。熱セットのための加熱温度は、人工皮革に含まれる繊維が製造工程で受けた熱履歴を考慮して選択するとよい。例えば、液流染色機などで湿熱120℃処理した人工皮革の場合、熱セットのために湿熱120℃以上、乾熱140℃以上が必要となる。熱セット処理時間は、人工皮革に含まれるポリマー種および熱セット温度によって異なるが、例えばポリエチレンテレフタレートの場合、1分から3分であることが、熱セット性、加工安定性の点で好ましい。
【0028】
続いて収縮した極細繊維を針布やサンドペーパーによる研削、またはスライスなどの方法で除去し、挫屈構造を有する極細繊維を残すことにより、伸長率15%以上、伸長回復率80%以上を満足するような伸縮性に優れた人工皮革を得ることができる。
【0029】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
【0030】
実施例における伸長率および伸長回復率は、以下に示す方法で測定したものである。
(1)伸長率:
5cm×約30cmの人工皮革サンプルを長さ方向、幅方向にそれぞれ3枚ずつ採取し、定速伸長型引張試験機を用い、つかみ間隔を20cmとし、引張速度20cm/minで1.8kgまで引き伸ばし、そのときのつかみ間隔を測り、次の式により伸長率(%)を求め、3枚の平均値より求めた。
【0031】
伸長率=(L1−L)/L×100(%)
L :つかみ間隔
L1:1.8kgまで引き伸ばしたときのつかみ間隔
(2)伸長回復率:
5cm×約30cmの人工皮革サンプルを長さ方向、幅方向にそれぞれ3枚ずつ採取し、定速伸長型引張試験機を用い、つかみ間隔を20cmとし、次に上記の方法で求めた伸長率の80%の長さまで伸ばして、1分間放置した後、同じ速度で元の位置まで戻し3分間放置する。この動作を5回繰り返した後に、サンプルの重さと同等の荷重まで引き伸ばしたときの伸びを5回繰り返し伸長後の残留伸びとし、次の式により伸長回復率(%)を求め、3枚の平均値より求めた。
【0032】
伸長回復率(%)=(L2−L3)/L2×100
L2:伸長率の80%の伸びに相当するチャート上の長さ(cm)
L3:5回繰り返し伸長後の残留伸びに相当するチャート上の長さ(cm)
実施例1
極細繊維成分がポリエチレンテレフタレート、高分子弾性体がポリウレタンである厚み0.7mm、密度0.3g/cm3 の人工皮革の片側の表面に、収縮剤を含む糊剤を塗布した後、100℃の熱風中でシートを収縮させた。収縮剤としてはp−フェニルフェノールを用い、アルギン酸ナトリウム(7%)とp−フェニルフェノールを70:30の比率で混合したものを糊剤として塗布した。
【0033】
次いで、シートの糊剤を塗布した側の表面をサンドペーパーで厚さ0.2mm研削し、収縮した極細繊維を除去したところ、伸縮性の良好な人工皮革が得られた。かくして得られた人工皮革の評価結果を表1に示した。
実施例2
極細繊維成分がナイロン6であり、収縮剤がベンジルアルコールである以外は実施例1と同じ方法で人工皮革を得た。かくして得られた人工皮革の評価結果を表1に示した。
比較例1
収縮剤を含まない糊剤を塗布する以外は実施例1と同じ方法で人工皮革を得た。かくして得られた人工皮革の評価結果を表1に示した。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の方法では達成できなかった長さ方向の伸縮性(伸長率15%以上、伸長回復率80%以上)を付与することのできる伸縮性に優れた人工皮革の製造方法を提供することができる。
【0036】
特に、請求項2記載の本発明では、特に極細繊維を収縮させる能力が高いため、高い収縮率と収縮応力を与え、人工皮革用基体を長さ方向および/または幅方向に収縮させやすいという効果を得ることができるので、より高い伸縮性を達成することができる。
Claims (2)
- 主として単繊維繊度0.9dtex以下の極細繊維を含む繊維絡合体と高分子弾性体で構成された人工皮革用基体の少なくとも片側の表面に、極細繊維の収縮剤を含む糊剤を塗布した後に、熱収縮処理および熱セット処理を施し、次いで、前記熱収縮処理および熱セット処理で熱収縮した極細繊維と糊剤を除去することを特徴とする伸縮性に優れた人工皮革の製造方法。
- 極細繊維が合成繊維であり、収縮剤が該合成繊維の膨潤剤あるいはキャリアーとして用いられ得る化合物であることを特徴とする請求項1に記載の伸縮性に優れた人工皮革の製造方法。
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JP2002375389A JP2004204394A (ja) | 2002-12-25 | 2002-12-25 | 伸縮性に優れた人工皮革の製造方法 |
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2002
- 2002-12-25 JP JP2002375389A patent/JP2004204394A/ja active Pending
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WO2017082273A1 (ja) * | 2015-11-10 | 2017-05-18 | 株式会社クラレ | 人工皮革基材、人工皮革及びその製造方法 |
JPWO2017082273A1 (ja) * | 2015-11-10 | 2018-08-30 | 株式会社クラレ | 人工皮革基材、人工皮革及びその製造方法 |
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