JP2004204025A - 共重合ポリアミドの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】共重合ポリアミドを安定に生産効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】(1) 炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸の融点以上かつ融点よりも50℃高い温度以下の温度で溶融された脂肪族ジカルボン酸中に芳香族ジカルボン酸が分散されたスラリー(芳香族/脂肪族モル比=1/99以上20/80未満)を得る工程と、(2) 得られたスラリーにキシリレンジアミンを主成分として含むジアミンを、ジカルボン酸に対するジアミンのモル比が0.97〜1.03の範囲の所定値となるまで添加しながら、添加の間に反応系を昇温し、水を分離除去しつつ重縮合反応を行い、さらに、ジアミン添加終了時の反応系の温度を、最終的に得られる共重合ポリアミドの融点以上の温度として重合度を高める重合工程とを含む、共重合ポリアミドの製造方法。
【選択図】なし
【解決手段】(1) 炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸の融点以上かつ融点よりも50℃高い温度以下の温度で溶融された脂肪族ジカルボン酸中に芳香族ジカルボン酸が分散されたスラリー(芳香族/脂肪族モル比=1/99以上20/80未満)を得る工程と、(2) 得られたスラリーにキシリレンジアミンを主成分として含むジアミンを、ジカルボン酸に対するジアミンのモル比が0.97〜1.03の範囲の所定値となるまで添加しながら、添加の間に反応系を昇温し、水を分離除去しつつ重縮合反応を行い、さらに、ジアミン添加終了時の反応系の温度を、最終的に得られる共重合ポリアミドの融点以上の温度として重合度を高める重合工程とを含む、共重合ポリアミドの製造方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、キシリレンジアミンを主成分として含むジアミンと、芳香族ジカルボン酸及び炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を1/99以上20/80未満の芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸のモル比で含むジカルボン酸とから主として構成される共重合ポリアミドの製造方法に関する。この共重合ポリアミドは、ガスバリア性、燃料バリア性、耐溶剤性に優れ、ガソリンタンク材、飲料用ボトルをはじめとする中空成形容器、フィルム、シートなどの成形体の素材として好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂は物理的、機械的性質に優れていることから、フィルム、シート、包装袋、エンジニアリングプラスチック、繊維などの用途に広く使用されている。
【0003】
従来は、これらの用途にナイロン6やナイロン66などの脂肪族ポリアミドが主として使用されてきた。ところが、脂肪族ポリアミドは、概して、吸水・吸湿時と乾燥時との間の寸法変化が大きく、また、脂肪族ゆえに弾性率が小さく軟らかすぎるといった欠点があり、更に高性能のポリアミド樹脂が求められている。かかる背景のもとに、従来の脂肪族ポリアミドにTPA(テレフタル酸)やIPA(イソフタル酸)などの芳香族ジカルボン酸を共重合することにより、ポリアミド樹脂の高性能化が達成されている。例えば、特開昭59−155426号や特開昭62−156130号公報では、TPAあるいはIPAを共重合したポリアミド樹脂が開示されている。
【0004】
例えば、特開平8−259691号公報には、メタキシリレンジアミン35〜70モル%とパラキシリレンジアミン30〜65モル%からなる混合ジアミンと、アジピン酸40〜80モル%とテレフタル酸20〜60モル%からなる混合ジカルボン酸とを直接重合させる共重合ポリアミドの製造方法が開示されている。この方法では、アジピン酸とテレフタル酸とを、アジピン酸の融点以上の温度且つポリアミドの融点より30℃低い温度よりも低い温度で流動状態として、ジアミンを滴下する。しかしながら、テレフタル酸は融点が高く分解点に近いため、溶融アジピン酸には溶解せず、20〜60モル%という量のテレフタル酸を用いたのでは、均質な流動状態は得られない。そのため、テレフタル酸の良好な反応性が得られず、所望のアジピン酸/テレフタル酸の共重合比の均質なポリアミドは得られない。また、20〜60モル%のテレフタル酸が導入されたポリアミドは溶融時の粘度が非常に高くなり、通常使用される成形時温度では流動性が著しく低下し、成形品の生産性が悪いという問題がある。
【0005】
ポリアミド樹脂の製造原料として、実質的に融点を持たないか、又は300℃以上の融点を持つジカルボン酸成分(例えばフタル酸)を共重合する場合、ジアミン酸成分とジカルボン酸成分とからナイロン塩水溶液を一旦形成し、このナイロン塩水溶液を用いて重合を行うことが一般的である。このナイロン塩水溶液を用いたときのポリアミド樹脂の製造プロセスは、回分式とすることもできるし、連続式とすることもできる。
【0006】
例えば、回分式の場合では、1つの回分式重合槽中で、ナイロン塩水溶液を加圧下加熱し、ジアミン成分の留出を抑えながら均一相で重合を進める。そして、ジアミン成分を固定化した後、系内の水蒸気を徐々に放圧し、最終的に常圧もしくは減圧として、重合を完結させる。連続式の場合では、上記工程をそれぞれ担う2基以上の連続式重合装置を順次使用し、ナイロン塩水溶液を連続的に重合装置に供給し、重縮合が完結したポリアミド樹脂を連続的に排出する。しかしながら、これらの製造方法では溶媒である水の除去に多くの時間と多量の熱量を要し、工業的観点から経済的な方法ではない。また、水を多量に用いるために、反応容器の容量当たりの生産効率も悪い。
【0007】
【特許文献1】
特開昭59−155426号公報
【特許文献2】
特開昭62−156130号公報
【特許文献3】
特開平8−259691号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、キシリレンジアミンを主成分として含むジアミンと、芳香族ジカルボン酸及び炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を1/99以上20/80未満の芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸のモル比で含むジカルボン酸とから主として構成される共重合ポリアミドを安定に生産効率よく製造する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、キシリレンジアミンを主成分として含むジアミンと、芳香族ジカルボン酸及び炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を1/99以上20/80未満の芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸のモル比で含むジカルボン酸とから共重合ポリアミドを製造する方法であって、
(1) 炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸の融点以上かつ融点よりも50℃高い温度以下の温度で溶融された前記脂肪族ジカルボン酸中に芳香族ジカルボン酸が分散されたスラリーを得るスラリー調製工程と、
(2) 得られたスラリーにキシリレンジアミンを主成分として含むジアミンを、ジカルボン酸に対するジアミンのモル比が0.97〜1.03の範囲の所定値となるまで添加しながら、添加の間に反応系を昇温し、水を分離除去しつつ重縮合反応を行い、さらに、ジアミン添加終了時の反応系の温度を、最終的に得られる共重合ポリアミドの融点以上の温度として重合度を高める重合工程とを含む、共重合ポリアミドの製造方法である。
【0010】
本発明は、(2) 重合工程において、常圧下、加圧下又は減圧下において、あるいは窒素気流下において重合度を高める、前記の共重合ポリアミドの製造方法である。
【0011】
本発明は、芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸である、前記の共重合ポリアミドの製造方法である。本発明は、脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸である、前記の共重合ポリアミドの製造方法である。
【0012】
本発明は、ジアミンは、ジアミンを基準としてキシリレンジアミンを70〜100モル%含む、前記の共重合ポリアミドの製造方法である。本発明は、キシリレンジアミンは、キシリレンジアミンを基準として80〜100モル%のメタキシリレンジアミンを含む、前記の共重合ポリアミドの製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の製造方法で製造される共重合ポリアミドについて説明する。共重合ポリアミドは、キシリレンジアミンを主成分として含むジアミンと、芳香族ジカルボン酸及び炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を1/99以上20/80未満の芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸のモル比で含むジカルボン酸とから主として構成される。
【0014】
ジカルボン酸成分としての炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸としては、溶融状態が得られるものであればよく、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、セバシン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカジオン酸、ダイマー酸等が挙げられる。これらのうちの1種又は2種以上の脂肪族ジカルボン酸成分を用いることができる。また、脂環式ジカルボン酸も、溶融状態が得られるものであれば用いることができる。
【0015】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸類等が挙げられる。これらのうちの1種又は2種以上の芳香族ジカルボン酸成分を用いることができる。好ましくはフタル酸、特にテレフタル酸を用いる。
【0016】
本発明において、芳香族ジカルボン酸と炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸のモル比を、芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸のモル比で表して、1/99以上20/80未満とする。この範囲のモル比によって、例えばガスバリア性、燃料バリア性、耐溶剤性について良好な性能を有する共重合ポリアミドが得られる。また、製造時においても、後述するスラリー調製工程において、溶融状態の脂肪族ジカルボン酸中に芳香族ジカルボン酸が均一に分散されたスラリーが得られ、その結果、好ましい重縮合反応が行われる。芳香族ジカルボン酸が上記範囲よりも少ないと、芳香族ジカルボン酸添加の効果が少なく、良好な物性の共重合ポリアミドが得られにくい。一方、芳香族ジカルボン酸が上記範囲よりも多いと、得られる共重合ポリアミドの溶融時の粘度が非常に高くなり、通常使用される成形時温度では流動性が著しく低下し、生産性が悪くなってしまう。また、製造時においても、スラリー調製工程において、不溶状態の芳香族ジカルボン酸が多くなり過ぎ均一分散されたスラリーが得られにくく、良好な重縮合反応が行われない。好ましいモル比は、共重合ポリアミドの目的にもよるが特に燃料バリア性を考慮すると、芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸=3/97以上20/80未満であり、さらに好ましいモル比は、5/95以上20/80未満である。
【0017】
ジアミン成分には、キシリレンジアミンが主成分として含まれる。キシリレンジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等が挙げられる。本発明において、キシリレンジアミンは、ジアミンを基準として70〜100モル%含まれることが好ましい。さらに、キシリレンジアミンを基準として80〜100モル%のメタキシリレンジアミンが含まれることが好ましい。このような割合のキシリレンジアミン、特にメタキシリレンジアミンが含まれることによって、酸素バリア性に優れ、吸水率が小さい共重合ポリアミドが得られる。
【0018】
上記キシリレンジアミン以外のジアミン成分として、エチレンジアミン、1−メチルエチルジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン類、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4−アミノヘキシル)メタン、パラキシリレンジアミン等の脂環式ジアミン類、パラ−ビス−(2−アミノエチル)ベンゼンのような芳香族ジアミン類が挙げられる。これらのうちの1種又は2種以上のジアミン成分を任意の割合で適宜用いることができる。
【0019】
本発明の共重合ポリアミド製造において、ポリアミドに要求される性能の点から必要に応じて前記したジアミン、ジカルボン酸以外のポリアミド形成能のある原料を共重合することも可能である。ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等も共重合成分として使用できる。とりわけ、ε−カプロラクタムの使用が望ましい。
【0020】
これら共重合体の例としては、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスペラミド等のような単独重合体、及びメタキシリレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピペラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体等が挙げられる。
【0021】
共重合ポリアミド樹脂の相対粘度[RV]は、得られる成形体の物理的、機械的性質、並びに操業安定性の点からも、1.6〜4.0の範囲が好ましい。[RV]が1.6未満の場合、得られる成形体が機械的性質に劣るだけでなく、ベントアップを生じたり、ポリマーのストランド取り出しが難しくなり、チップ化時に割れが発生するなど操業面における影響が大きくなる傾向がある。逆に、[RV]が4.0を超える場合、溶融粘度が高くなり、成形条件がより過酷なものとなることから、安定した品質の成形品が得られにくくなる傾向があり、また、それに要する労力に見合うだけの製品物性が期待できない。また、4.0を超える高い[RV]化を達成するためには、重合工程において、不活性ガスのパージ量を増やしたり、高真空度の適用が必要となり、コストアップやベントアップなど操業不安定を招き好ましくない。より望ましい[RV]は1.9〜3.8である。
【0022】
次に、本発明の共重合ポリアミドの製造方法について説明する。
(ジカルボン酸スラリー調製工程)
この工程において、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸をその融点以上かつ融点+50℃(融点よりも50℃高い温度)以下に加熱して溶融し、溶融状態の脂肪族ジカルボン酸中に芳香族ジカルボン酸が分散されたスラリーを得る。
【0023】
重合反応槽中に脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の両方を仕込み、その後加熱して脂肪族ジカルボン酸を溶融してもよいが、重合反応槽中に脂肪族ジカルボン酸を仕込み、その後加熱して脂肪族ジカルボン酸を溶融し、溶融状態の脂肪族ジカルボン酸中に芳香族ジカルボン酸を添加することが、より均質なスラリー状態が得られるため好ましい。
【0024】
ジカルボン酸スラリー調製工程は、重合反応槽中において行ってよい。又は専用の溶融槽中においてスラリーを調製し、そのスラリーを重合反応槽中に移送してもよい。
【0025】
脂肪族ジカルボン酸の溶融温度はその融点以上かつ融点+50℃(融点よりも50℃高い温度)以下とする。溶融温度を必要以上に高温にすることは、脂肪族ジカルボン酸の熱分解や劣化を誘発し好ましくない。逆に低温すぎると、不均一溶融となり好ましくない。望ましい溶融温度は、融点+5℃以上融点+25℃以下である。
【0026】
溶融状態の脂肪族ジカルボン酸中に、所定量の芳香族ジカルボン酸を添加して、所定の芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸モル比とされたジカルボン酸のスラリーを得る。この際にも、上記溶融温度を維持するとよい。
【0027】
また、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の熱酸化分解や熱分解を抑制するために、溶融時の溶融槽又は重合反応槽内を不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素ガス雰囲気下におくことが好ましい。この際、0.05〜0.8MPa、望ましくは0.1〜0.6MPaの加圧下の不活性ガス雰囲気下におくことが、外気の混入を防ぐ意味で好ましい。
【0028】
脂肪族ジカルボン酸溶融時やスラリー調製時の雰囲気酸素濃度は得られるポリアミドの色調に大きく影響する。特に、メタキシリレンジアミンを原料とするポリアミドについては、この傾向が著しい。脂肪族ジカルボン酸溶融時の雰囲気酸素濃度は10ppm以下であれば問題ないが、酸素濃度が10ppm以上となると、得られるポリアミドの黄色味が強くなり製品の品位が悪くなる傾向がある。一方、酸素濃度の下限は特に定められないが、例えば、0.05ppm以上である。ポリアミドの製造において、酸素濃度が0.05ppm未満であることは何ら問題はないが、0.05ppm未満を達成するためには酸素の除去工程が必要以上に煩雑となるだけで、色調をはじめその他の物性にほとんど影響は見られない。望ましい酸素濃度の範囲は0.05ppm以上9ppm以下であり、更に望ましくは0.05ppm以上8ppm以下である。
【0029】
本発明において、予め酸素を除去し酸素濃度10ppm以下とした溶融槽又は重合反応槽にジカルボン酸原料を供給するか、又はジカルボン酸原料を溶融槽又は重合反応槽に投入した後に酸素を除去し溶融槽又は重合反応槽内の雰囲気を酸素濃度10ppm以下とするか、又は両者を併用するとよい。このことは、設備的あるいは操業面から選択すればよい。
【0030】
酸素の除去方法としては、真空置換法、加圧置換法あるいはその併用がある。置換に適用する真空度あるいは加圧度及び置換回数は所望する酸素濃度達成に最も効率のよい条件を選べばよい。
【0031】
ジカルボン酸溶融工程において、ポリアミドの分解抑制の目的や重合触媒としてアルカリ金属化合物やリン化合物を溶融槽又は重合槽に添加することも可能である。
【0032】
用いられるアルカリ金属化合物は、リチウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物などであるが、ナトリウム化合物が最も好ましい。また、リン化合物としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸及びそれらの塩が用いられる。
【0033】
(重合工程)
重合工程において、得られたスラリーにキシリレンジアミンを主成分として含むジアミンを、ジカルボン酸に対するジアミンのモル比が0.97〜1.03の範囲の所定値となるまで添加しながら、添加の間に反応系を昇温し、水を分離除去しつつ重縮合反応を行い、さらに、ジアミン添加終了時の反応系の温度を、最終的に得られる共重合ポリアミドの融点以上の温度として重合度を高める。
【0034】
重合工程は、ジアミンの添加装置、水の分離除去装置、窒素ガス導入管等が備えられている重合反応槽を用いて行うとよい。
【0035】
重合工程において、まず、得られたスラリーにキシリレンジアミンを主成分として含むジアミンを、ジカルボン酸に対するジアミンのモル比が0.97〜1.03の範囲の所定値となるまで添加しながら、添加の間に反応系を昇温し、水を分離除去しつつ重縮合反応を行う。
【0036】
脂肪族ジカルボン酸の融点以上かつ融点よりも50℃高い温度以下の温度の混合ジカルボン酸スラリーに、攪拌しながら、好ましくは常圧で、ジアミンの添加(滴下)を継続的に行う。添加の際、ジカルボン酸は、実質的にアミド化反応が進行する温度である160℃以上の温度とされていることが望ましく、かつ中間体として生成するオリゴマー及び/又は低分子量ポリアミドが溶融状態となって反応系全体が均一な流動状態を保持しうる温度とされていることが望ましい。スラリー調製工程において、均質なジカルボン酸スラリーが得られており、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸双方についてアミド化反応が良好に進行する。
【0037】
ジアミンの添加量は、ジカルボン酸に対するジアミンのモル比が0.97〜1.03の範囲の所定値とする。ジアミンの添加速度は、アミド化反応の生成熱、縮合生成水の留去に消費される熱量、水の分離除去装置(分縮器や冷却器)の構造等を考慮し、反応系を均一な流動状態に保持し得る温度を考慮して適宜選択するとよい。通常、ジアミンの添加に要する時間は、重合槽の規模によって変化するが、0.5時間から10時間の範囲内である。この間、反応の進行と共に生成する縮合水は、塔頂部の蒸気の温度が100〜120℃の温度に制御されている分縮器と冷却器を通して反応系外に留去される。飛散するジアミン、ジカルボン酸等の原料は、分縮器で回収され、反応缶に再度戻してもよい。
【0038】
ジアミンの添加の間に反応系を逐次昇温する。混合ジカルボン酸の反応率が80%に達する以前に、反応系の温度を最終的に生成するポリアミドの融点(Tm)よりも30℃低い温度(Tm−30℃)以上に昇温する。重縮合反応において生成するオリゴアミドまたはポリアミドは、反応の進行に伴い分子量が高くなると、反応生成物の融点が高くなり、反応混合物の粘度が上昇して内容物の昇温が妨げられ、結果として反応混合物は固化し易くなる。従って、反応温度は、反応の進行に合わせて昇温するように制御し、反応率が80%以上では反応生成物を常に均一な流動状態とする必要がある。
【0039】
ここで反応率は、最初に存在した官能基の内、反応を起こしたものの割合で表される。反応率は重縮合反応により生成する水の量で確認することができる。また、添加されたジアミンは反応系で短時間の内に反応するので、実質的には、反応率はジアミンの滴下割合からも推定できる。
【0040】
制御されるべき反応系の温度の上限は、特に限定される必要はないが、生成物に与える熱履歴を考慮すると、最終的に生成するポリアミドの融点(Tm)より50℃を超えない温度が望ましい。反応率が80%を超えてから反応温度を上記所定の温度に設定すると、昇温前に反応生成物であるポリアミドは一部結晶化を見せ始め、反応生成物を均一な流動状態にすることを極めて困難にする。反応生成物に生ずる固化現象は、反応系の増粘、熱伝導性低下を招き、時として反応生成物全体を固化させる危険すら有り、このような条件下では、工業的規模でポリアミドを製造することは実質的に不可能である。
【0041】
重合工程において、ジアミン添加の間に反応混合物の温度を逐次昇温させ、ジアミン添加終了時の反応系の温度を、最終的に得られる共重合ポリアミドの融点(Tm)以上の所定の重合反応温度として重合度を高める。
【0042】
アミド化反応が開始するジアミン添加の当初から、反応系を最終的に得られる共重合ポリアミドの融点(Tm)以上の所定の重合反応温度とすることも考えられるが、反応生成物の熱履歴の観点から、また熱エネルギーの観点からも、反応初期から反応系を高温に保持することは好ましくない。
【0043】
ジアミンの添加終了時の反応系温度を、最終的に生成する共重合ポリアミドの融点(Tm)以上の温度、例えば融点以上Tm+80℃以下、望ましくは融点以上Tm+70℃以下とし、反応が完結するまでの間、共重合ポリアミドを含む反応生成物が実質的に均一な流動状態を保ち得るようにする。温度がTm+80℃以上となると、ポリアミドの劣化が加速されやすく、物性低下や着色の原因となる。逆に、Tm以下では、ポリアミドが固化し、反応装置の損傷を招く危険性がある。ジアミンの添加終了後に、好ましくはさらに、例えば5分間以上、好ましくは10分間以上重合反応を続け、重合度を高める。このジアミン添加終了後の重合反応は、4時間程度以内とするとよい。4時間を超えて重合反応を行っても、ポリアミドの相対粘度の上昇はあまり得られない。このようにして、相対粘度[RV]1.6〜4.0の共重合ポリアミドを得る。
【0044】
本発明の方法を実施した場合、ナイロン塩水溶液法の場合と同様に、ジアミンの反応系外への留出は避け難く、従って、重合反応槽には分縮器を備えることが必要である。分縮器を備えることにより、反応中にジアミンの留出を効果的に防ぎ得、その結果、ジカルボン酸に対するジアミンの仕込みモル比を、到達分子量を考慮した上で、0.97〜1.03の範囲に設定することにより、再現性よく、一定の分子量を有するポリアミドを製造することができる。
【0045】
本発明の方法で用いられる重合反応槽は、耐圧容器であることを要しないため、極めて安価に設置できる。さらに、ナイロン塩水溶液法では溶媒である水の除去に多くの時間と多量の熱量を要していたが、本発明の方法では、このような時間と多量の熱量を必要としない。ナイロン塩水溶液法では水を多量に用いるために、反応容器の容量当たりの生産効率も悪かったが、本発明の方法では、生産効率もよく、工業的観点から経済的な方法である。
【0046】
本発明の方法において、重合工程において、相対粘度[RV]の制御を行うこともできる。[RV]の制御方法としては▲1▼不活性ガスのパージ、▲2▼真空度、▲3▼不活性ガスのパージと真空度の併用がある。不活性ガスパージは重合反応を促進する一方で、パージ量を調整することで[RV]の制御ができる。また、真空度によっても重合反応を促進し、反応速度が制御できる。ポリアミドの生成反応はカルボン酸とアミンの縮合反応であり、生成する水を除去することで、重合反応は促進される。
【0047】
アジピン酸/フタル酸/メタキシリレンジアミンを主原料とするポリアミドにおいて望ましい[RV]の制御方法は、不活性ガスパージと真空度の併用である。この方法の利点は、不活性ガス、又は真空度単独では達し得なかった高[RV]のポリアミドの製造が容易なこと、また、[RV]の制御が一定真空度下では不活性ガスのパージ量の調整で可能となり、あるいは逆に不活性ガス量一定下では真空度の調整で可能となり、[RV]制御がより柔軟に行える利点がある。
【0048】
望ましい条件は、不活性ガスパージ量が0.005〜9.5L/kg、真空度は200〜1150hPa、更に望ましくは0.01〜9L/kg、250〜1100hPaである。不活性ガスパージ量が0.005L/kg未満であるか、又は真空度が1150hPaを超えると、重合速度が遅くなる。逆に、不活性ガスパージ量が9.5L/kgを超えるか、又は真空度が200hPa未満となると、不活性ガスの使用量が増加してコストアップ要因となり、また、重合速度が遅くなって生産性が低下するなどの不利を生じる。
【0049】
一方、重合反応を抑制したい場合には、酸無水物化合物の添加によって重合反応を制御できる。酸無水物化合物の添加により、ポリマーの末端アミノ基が封鎖されるので、重合反応を抑制できると考えられる。使用できる酸無水物化合物としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HOPA)、無水フタル酸、無水トリメット酸、無水ピロメリット酸、無水コハク酸などが挙げられ、ポリアミドの色調の点からHOPAの使用が望ましい。酸無水化合物の添加量は、所望する[RV]によって特に限定されるものではないが、通常はポリマー1kgあたり150meq/kg以下が望ましい。添加量が150meq/kgを超えると、重合速度が遅くなったり、また、未反応の酸無水物化合物がポリマー中に残留しポリアミドの品質低下の原因になる。
【0050】
[RV]の制御方法は前記の方法に限定されるものではなく、アルカリ金属化合物の添加や、従来公知の各種の手段を実施可能である。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例において用いたポリアミド樹脂の特性値の評価方法は以下の通りである。
【0052】
(1)相対粘度[RV]
ポリアミド樹脂0.25gを96%硫酸25mlに溶解し、オストワルド粘度管にて測定した。
【0053】
(2)融点
島津製作所DSC50を用いて測定した。ポリアミド樹脂試料5〜10mgをアルミ製のパンに充填し、窒素雰囲気下20℃/minで昇温し、昇温時に出現する吸熱ピークの最も高温域にあるピーク温度を融点とした。
【0054】
[実施例1]
攪拌機、分縮器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた内容積3Lのフラスコに、アジピン酸264.4g及びテレフタル酸33.4gを入れ、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下に160℃でアジピン酸を溶解させ、ジカルボン酸のスラリーを得た。このスラリーに、メタキシリレンジアミン274.0gを攪拌下に120分間にわたって滴下した。滴下開始と共に内温を120分間かけて255℃まで連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下と共に留出する水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。
【0055】
メタキシリレンジアミン滴下終了後、内温を260℃まで昇温し、この温度で100分間反応を継続した。反応の全過程で、反応系が均一な流動状態を保っていた。またスラリー状態であったテレフタル酸は反応し、均一のポリマーが得られた。共重合ポリアミドの相対粘度は1.95、融点は232℃であった。
【0056】
[実施例2]
攪拌機、分縮器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた内容積3Lのフラスコに、アジピン酸249.0g及びテレフタル酸50.0gを入れ、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下に160℃でアジピン酸を溶解させ、ジカルボン酸のスラリーを得た。このスラリーに、メタキシリレンジアミン273.2gを攪拌下に90分間にわたって滴下した。滴下開始と共に内温を90分間かけて260℃まで連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下と共に留出する水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。
【0057】
メタキシリレンジアミン滴下終了後、内温を260℃まで昇温し、この温度で60分間反応を継続した。その後、反応系内圧を500torrまで20分間かけて減圧し、30分間反応を継続した。この間、反応系内温度は260℃一定とした。反応の全過程で、反応系が均一な流動状態を保っていた。得られた共重合ポリアミドの相対粘度は2.16、融点は226℃であった。
【0058】
[比較例1]
攪拌機、分縮器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた内容積3Lのフラスコに、アジピン酸142.5g及びテレフタル酸162.0gを入れ、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下に160℃でアジピン酸を溶解させたが、反応が均一となるような十分なスラリーが得られなかった。これに、メタキシリレンジアミン265.7gを攪拌下に90分間にわたって滴下した。滴下開始と共に内温を260℃まで連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下と共に留出する水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。
【0059】
メタキシリレンジアミン滴下終了後、内温を285℃まで昇温し、この温度で21分間反応を継続した。この間、生成ポリアミドの粘度の増大が激しくなり、内容物の攪拌ができなくなった。内容物を96%硫酸に溶解させようと試みたが、不溶分が多かった。
【0060】
[比較例2]
内容積3Lの耐圧容器に、アジピン酸249.0g及びテレフタル酸50.0gを入れ、メタキシリレンジアミン273.2g及び水858.3gを加え、135℃の0.25MPaの加圧下で40%のポリアミド塩水溶液とし、完全に塩が溶解した後、昇温し、内部圧力1MPaで保持した状態で徐々に水を抜き出した。内温が235℃に到達したと同時に、内部圧力を1時間かけて常圧まで下げ、常圧になったところで、ポリアミドを抜き出した。得られたポリマー量は実施例2とほぼ同等であった。しかしながら、この例では、大量の水を必要とするため仕込みの原料の量が多く、工程が増え、長時間を要した。経済的な方法ではない。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、キシリレンジアミンを主成分として含むジアミンと、芳香族ジカルボン酸及び炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を1/99以上20/80未満の芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸のモル比で含むジカルボン酸とから主として構成される共重合ポリアミドを、品質良好に生産効率良く製造することができる。この共重合ポリアミドは、ガスバリア性、燃料バリア性、耐溶剤性に優れ、ガソリンタンク材、飲料用ボトルをはじめとする中空成形容器、フィルム、シートなどの成形体の素材として好適に用いられる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、キシリレンジアミンを主成分として含むジアミンと、芳香族ジカルボン酸及び炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を1/99以上20/80未満の芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸のモル比で含むジカルボン酸とから主として構成される共重合ポリアミドの製造方法に関する。この共重合ポリアミドは、ガスバリア性、燃料バリア性、耐溶剤性に優れ、ガソリンタンク材、飲料用ボトルをはじめとする中空成形容器、フィルム、シートなどの成形体の素材として好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミド樹脂は物理的、機械的性質に優れていることから、フィルム、シート、包装袋、エンジニアリングプラスチック、繊維などの用途に広く使用されている。
【0003】
従来は、これらの用途にナイロン6やナイロン66などの脂肪族ポリアミドが主として使用されてきた。ところが、脂肪族ポリアミドは、概して、吸水・吸湿時と乾燥時との間の寸法変化が大きく、また、脂肪族ゆえに弾性率が小さく軟らかすぎるといった欠点があり、更に高性能のポリアミド樹脂が求められている。かかる背景のもとに、従来の脂肪族ポリアミドにTPA(テレフタル酸)やIPA(イソフタル酸)などの芳香族ジカルボン酸を共重合することにより、ポリアミド樹脂の高性能化が達成されている。例えば、特開昭59−155426号や特開昭62−156130号公報では、TPAあるいはIPAを共重合したポリアミド樹脂が開示されている。
【0004】
例えば、特開平8−259691号公報には、メタキシリレンジアミン35〜70モル%とパラキシリレンジアミン30〜65モル%からなる混合ジアミンと、アジピン酸40〜80モル%とテレフタル酸20〜60モル%からなる混合ジカルボン酸とを直接重合させる共重合ポリアミドの製造方法が開示されている。この方法では、アジピン酸とテレフタル酸とを、アジピン酸の融点以上の温度且つポリアミドの融点より30℃低い温度よりも低い温度で流動状態として、ジアミンを滴下する。しかしながら、テレフタル酸は融点が高く分解点に近いため、溶融アジピン酸には溶解せず、20〜60モル%という量のテレフタル酸を用いたのでは、均質な流動状態は得られない。そのため、テレフタル酸の良好な反応性が得られず、所望のアジピン酸/テレフタル酸の共重合比の均質なポリアミドは得られない。また、20〜60モル%のテレフタル酸が導入されたポリアミドは溶融時の粘度が非常に高くなり、通常使用される成形時温度では流動性が著しく低下し、成形品の生産性が悪いという問題がある。
【0005】
ポリアミド樹脂の製造原料として、実質的に融点を持たないか、又は300℃以上の融点を持つジカルボン酸成分(例えばフタル酸)を共重合する場合、ジアミン酸成分とジカルボン酸成分とからナイロン塩水溶液を一旦形成し、このナイロン塩水溶液を用いて重合を行うことが一般的である。このナイロン塩水溶液を用いたときのポリアミド樹脂の製造プロセスは、回分式とすることもできるし、連続式とすることもできる。
【0006】
例えば、回分式の場合では、1つの回分式重合槽中で、ナイロン塩水溶液を加圧下加熱し、ジアミン成分の留出を抑えながら均一相で重合を進める。そして、ジアミン成分を固定化した後、系内の水蒸気を徐々に放圧し、最終的に常圧もしくは減圧として、重合を完結させる。連続式の場合では、上記工程をそれぞれ担う2基以上の連続式重合装置を順次使用し、ナイロン塩水溶液を連続的に重合装置に供給し、重縮合が完結したポリアミド樹脂を連続的に排出する。しかしながら、これらの製造方法では溶媒である水の除去に多くの時間と多量の熱量を要し、工業的観点から経済的な方法ではない。また、水を多量に用いるために、反応容器の容量当たりの生産効率も悪い。
【0007】
【特許文献1】
特開昭59−155426号公報
【特許文献2】
特開昭62−156130号公報
【特許文献3】
特開平8−259691号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、キシリレンジアミンを主成分として含むジアミンと、芳香族ジカルボン酸及び炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を1/99以上20/80未満の芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸のモル比で含むジカルボン酸とから主として構成される共重合ポリアミドを安定に生産効率よく製造する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、キシリレンジアミンを主成分として含むジアミンと、芳香族ジカルボン酸及び炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を1/99以上20/80未満の芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸のモル比で含むジカルボン酸とから共重合ポリアミドを製造する方法であって、
(1) 炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸の融点以上かつ融点よりも50℃高い温度以下の温度で溶融された前記脂肪族ジカルボン酸中に芳香族ジカルボン酸が分散されたスラリーを得るスラリー調製工程と、
(2) 得られたスラリーにキシリレンジアミンを主成分として含むジアミンを、ジカルボン酸に対するジアミンのモル比が0.97〜1.03の範囲の所定値となるまで添加しながら、添加の間に反応系を昇温し、水を分離除去しつつ重縮合反応を行い、さらに、ジアミン添加終了時の反応系の温度を、最終的に得られる共重合ポリアミドの融点以上の温度として重合度を高める重合工程とを含む、共重合ポリアミドの製造方法である。
【0010】
本発明は、(2) 重合工程において、常圧下、加圧下又は減圧下において、あるいは窒素気流下において重合度を高める、前記の共重合ポリアミドの製造方法である。
【0011】
本発明は、芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸である、前記の共重合ポリアミドの製造方法である。本発明は、脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸である、前記の共重合ポリアミドの製造方法である。
【0012】
本発明は、ジアミンは、ジアミンを基準としてキシリレンジアミンを70〜100モル%含む、前記の共重合ポリアミドの製造方法である。本発明は、キシリレンジアミンは、キシリレンジアミンを基準として80〜100モル%のメタキシリレンジアミンを含む、前記の共重合ポリアミドの製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の製造方法で製造される共重合ポリアミドについて説明する。共重合ポリアミドは、キシリレンジアミンを主成分として含むジアミンと、芳香族ジカルボン酸及び炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を1/99以上20/80未満の芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸のモル比で含むジカルボン酸とから主として構成される。
【0014】
ジカルボン酸成分としての炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸としては、溶融状態が得られるものであればよく、アジピン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、セバシン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、ウンデカン酸、ウンデカジオン酸、ドデカジオン酸、ダイマー酸等が挙げられる。これらのうちの1種又は2種以上の脂肪族ジカルボン酸成分を用いることができる。また、脂環式ジカルボン酸も、溶融状態が得られるものであれば用いることができる。
【0015】
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、キシリレンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸類等が挙げられる。これらのうちの1種又は2種以上の芳香族ジカルボン酸成分を用いることができる。好ましくはフタル酸、特にテレフタル酸を用いる。
【0016】
本発明において、芳香族ジカルボン酸と炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸のモル比を、芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸のモル比で表して、1/99以上20/80未満とする。この範囲のモル比によって、例えばガスバリア性、燃料バリア性、耐溶剤性について良好な性能を有する共重合ポリアミドが得られる。また、製造時においても、後述するスラリー調製工程において、溶融状態の脂肪族ジカルボン酸中に芳香族ジカルボン酸が均一に分散されたスラリーが得られ、その結果、好ましい重縮合反応が行われる。芳香族ジカルボン酸が上記範囲よりも少ないと、芳香族ジカルボン酸添加の効果が少なく、良好な物性の共重合ポリアミドが得られにくい。一方、芳香族ジカルボン酸が上記範囲よりも多いと、得られる共重合ポリアミドの溶融時の粘度が非常に高くなり、通常使用される成形時温度では流動性が著しく低下し、生産性が悪くなってしまう。また、製造時においても、スラリー調製工程において、不溶状態の芳香族ジカルボン酸が多くなり過ぎ均一分散されたスラリーが得られにくく、良好な重縮合反応が行われない。好ましいモル比は、共重合ポリアミドの目的にもよるが特に燃料バリア性を考慮すると、芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸=3/97以上20/80未満であり、さらに好ましいモル比は、5/95以上20/80未満である。
【0017】
ジアミン成分には、キシリレンジアミンが主成分として含まれる。キシリレンジアミンとしては、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン等が挙げられる。本発明において、キシリレンジアミンは、ジアミンを基準として70〜100モル%含まれることが好ましい。さらに、キシリレンジアミンを基準として80〜100モル%のメタキシリレンジアミンが含まれることが好ましい。このような割合のキシリレンジアミン、特にメタキシリレンジアミンが含まれることによって、酸素バリア性に優れ、吸水率が小さい共重合ポリアミドが得られる。
【0018】
上記キシリレンジアミン以外のジアミン成分として、エチレンジアミン、1−メチルエチルジアミン、1,3−プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン類、シクロヘキサンジアミン、ビス−(4,4−アミノヘキシル)メタン、パラキシリレンジアミン等の脂環式ジアミン類、パラ−ビス−(2−アミノエチル)ベンゼンのような芳香族ジアミン類が挙げられる。これらのうちの1種又は2種以上のジアミン成分を任意の割合で適宜用いることができる。
【0019】
本発明の共重合ポリアミド製造において、ポリアミドに要求される性能の点から必要に応じて前記したジアミン、ジカルボン酸以外のポリアミド形成能のある原料を共重合することも可能である。ε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸類、パラ−アミノメチル安息香酸のような芳香族アミノカルボン酸等も共重合成分として使用できる。とりわけ、ε−カプロラクタムの使用が望ましい。
【0020】
これら共重合体の例としては、ポリメタキシリレンアジパミド、ポリメタキシリレンセバカミド、ポリメタキシリレンスペラミド等のような単独重合体、及びメタキシリレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアジパミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンピペラミド共重合体、メタキシリレン/パラキシリレンアゼラミド共重合体等が挙げられる。
【0021】
共重合ポリアミド樹脂の相対粘度[RV]は、得られる成形体の物理的、機械的性質、並びに操業安定性の点からも、1.6〜4.0の範囲が好ましい。[RV]が1.6未満の場合、得られる成形体が機械的性質に劣るだけでなく、ベントアップを生じたり、ポリマーのストランド取り出しが難しくなり、チップ化時に割れが発生するなど操業面における影響が大きくなる傾向がある。逆に、[RV]が4.0を超える場合、溶融粘度が高くなり、成形条件がより過酷なものとなることから、安定した品質の成形品が得られにくくなる傾向があり、また、それに要する労力に見合うだけの製品物性が期待できない。また、4.0を超える高い[RV]化を達成するためには、重合工程において、不活性ガスのパージ量を増やしたり、高真空度の適用が必要となり、コストアップやベントアップなど操業不安定を招き好ましくない。より望ましい[RV]は1.9〜3.8である。
【0022】
次に、本発明の共重合ポリアミドの製造方法について説明する。
(ジカルボン酸スラリー調製工程)
この工程において、炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸をその融点以上かつ融点+50℃(融点よりも50℃高い温度)以下に加熱して溶融し、溶融状態の脂肪族ジカルボン酸中に芳香族ジカルボン酸が分散されたスラリーを得る。
【0023】
重合反応槽中に脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の両方を仕込み、その後加熱して脂肪族ジカルボン酸を溶融してもよいが、重合反応槽中に脂肪族ジカルボン酸を仕込み、その後加熱して脂肪族ジカルボン酸を溶融し、溶融状態の脂肪族ジカルボン酸中に芳香族ジカルボン酸を添加することが、より均質なスラリー状態が得られるため好ましい。
【0024】
ジカルボン酸スラリー調製工程は、重合反応槽中において行ってよい。又は専用の溶融槽中においてスラリーを調製し、そのスラリーを重合反応槽中に移送してもよい。
【0025】
脂肪族ジカルボン酸の溶融温度はその融点以上かつ融点+50℃(融点よりも50℃高い温度)以下とする。溶融温度を必要以上に高温にすることは、脂肪族ジカルボン酸の熱分解や劣化を誘発し好ましくない。逆に低温すぎると、不均一溶融となり好ましくない。望ましい溶融温度は、融点+5℃以上融点+25℃以下である。
【0026】
溶融状態の脂肪族ジカルボン酸中に、所定量の芳香族ジカルボン酸を添加して、所定の芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸モル比とされたジカルボン酸のスラリーを得る。この際にも、上記溶融温度を維持するとよい。
【0027】
また、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸の熱酸化分解や熱分解を抑制するために、溶融時の溶融槽又は重合反応槽内を不活性ガス雰囲気下、例えば、窒素ガス雰囲気下におくことが好ましい。この際、0.05〜0.8MPa、望ましくは0.1〜0.6MPaの加圧下の不活性ガス雰囲気下におくことが、外気の混入を防ぐ意味で好ましい。
【0028】
脂肪族ジカルボン酸溶融時やスラリー調製時の雰囲気酸素濃度は得られるポリアミドの色調に大きく影響する。特に、メタキシリレンジアミンを原料とするポリアミドについては、この傾向が著しい。脂肪族ジカルボン酸溶融時の雰囲気酸素濃度は10ppm以下であれば問題ないが、酸素濃度が10ppm以上となると、得られるポリアミドの黄色味が強くなり製品の品位が悪くなる傾向がある。一方、酸素濃度の下限は特に定められないが、例えば、0.05ppm以上である。ポリアミドの製造において、酸素濃度が0.05ppm未満であることは何ら問題はないが、0.05ppm未満を達成するためには酸素の除去工程が必要以上に煩雑となるだけで、色調をはじめその他の物性にほとんど影響は見られない。望ましい酸素濃度の範囲は0.05ppm以上9ppm以下であり、更に望ましくは0.05ppm以上8ppm以下である。
【0029】
本発明において、予め酸素を除去し酸素濃度10ppm以下とした溶融槽又は重合反応槽にジカルボン酸原料を供給するか、又はジカルボン酸原料を溶融槽又は重合反応槽に投入した後に酸素を除去し溶融槽又は重合反応槽内の雰囲気を酸素濃度10ppm以下とするか、又は両者を併用するとよい。このことは、設備的あるいは操業面から選択すればよい。
【0030】
酸素の除去方法としては、真空置換法、加圧置換法あるいはその併用がある。置換に適用する真空度あるいは加圧度及び置換回数は所望する酸素濃度達成に最も効率のよい条件を選べばよい。
【0031】
ジカルボン酸溶融工程において、ポリアミドの分解抑制の目的や重合触媒としてアルカリ金属化合物やリン化合物を溶融槽又は重合槽に添加することも可能である。
【0032】
用いられるアルカリ金属化合物は、リチウム化合物、ナトリウム化合物、カリウム化合物などであるが、ナトリウム化合物が最も好ましい。また、リン化合物としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ポリリン酸及びそれらの塩が用いられる。
【0033】
(重合工程)
重合工程において、得られたスラリーにキシリレンジアミンを主成分として含むジアミンを、ジカルボン酸に対するジアミンのモル比が0.97〜1.03の範囲の所定値となるまで添加しながら、添加の間に反応系を昇温し、水を分離除去しつつ重縮合反応を行い、さらに、ジアミン添加終了時の反応系の温度を、最終的に得られる共重合ポリアミドの融点以上の温度として重合度を高める。
【0034】
重合工程は、ジアミンの添加装置、水の分離除去装置、窒素ガス導入管等が備えられている重合反応槽を用いて行うとよい。
【0035】
重合工程において、まず、得られたスラリーにキシリレンジアミンを主成分として含むジアミンを、ジカルボン酸に対するジアミンのモル比が0.97〜1.03の範囲の所定値となるまで添加しながら、添加の間に反応系を昇温し、水を分離除去しつつ重縮合反応を行う。
【0036】
脂肪族ジカルボン酸の融点以上かつ融点よりも50℃高い温度以下の温度の混合ジカルボン酸スラリーに、攪拌しながら、好ましくは常圧で、ジアミンの添加(滴下)を継続的に行う。添加の際、ジカルボン酸は、実質的にアミド化反応が進行する温度である160℃以上の温度とされていることが望ましく、かつ中間体として生成するオリゴマー及び/又は低分子量ポリアミドが溶融状態となって反応系全体が均一な流動状態を保持しうる温度とされていることが望ましい。スラリー調製工程において、均質なジカルボン酸スラリーが得られており、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸双方についてアミド化反応が良好に進行する。
【0037】
ジアミンの添加量は、ジカルボン酸に対するジアミンのモル比が0.97〜1.03の範囲の所定値とする。ジアミンの添加速度は、アミド化反応の生成熱、縮合生成水の留去に消費される熱量、水の分離除去装置(分縮器や冷却器)の構造等を考慮し、反応系を均一な流動状態に保持し得る温度を考慮して適宜選択するとよい。通常、ジアミンの添加に要する時間は、重合槽の規模によって変化するが、0.5時間から10時間の範囲内である。この間、反応の進行と共に生成する縮合水は、塔頂部の蒸気の温度が100〜120℃の温度に制御されている分縮器と冷却器を通して反応系外に留去される。飛散するジアミン、ジカルボン酸等の原料は、分縮器で回収され、反応缶に再度戻してもよい。
【0038】
ジアミンの添加の間に反応系を逐次昇温する。混合ジカルボン酸の反応率が80%に達する以前に、反応系の温度を最終的に生成するポリアミドの融点(Tm)よりも30℃低い温度(Tm−30℃)以上に昇温する。重縮合反応において生成するオリゴアミドまたはポリアミドは、反応の進行に伴い分子量が高くなると、反応生成物の融点が高くなり、反応混合物の粘度が上昇して内容物の昇温が妨げられ、結果として反応混合物は固化し易くなる。従って、反応温度は、反応の進行に合わせて昇温するように制御し、反応率が80%以上では反応生成物を常に均一な流動状態とする必要がある。
【0039】
ここで反応率は、最初に存在した官能基の内、反応を起こしたものの割合で表される。反応率は重縮合反応により生成する水の量で確認することができる。また、添加されたジアミンは反応系で短時間の内に反応するので、実質的には、反応率はジアミンの滴下割合からも推定できる。
【0040】
制御されるべき反応系の温度の上限は、特に限定される必要はないが、生成物に与える熱履歴を考慮すると、最終的に生成するポリアミドの融点(Tm)より50℃を超えない温度が望ましい。反応率が80%を超えてから反応温度を上記所定の温度に設定すると、昇温前に反応生成物であるポリアミドは一部結晶化を見せ始め、反応生成物を均一な流動状態にすることを極めて困難にする。反応生成物に生ずる固化現象は、反応系の増粘、熱伝導性低下を招き、時として反応生成物全体を固化させる危険すら有り、このような条件下では、工業的規模でポリアミドを製造することは実質的に不可能である。
【0041】
重合工程において、ジアミン添加の間に反応混合物の温度を逐次昇温させ、ジアミン添加終了時の反応系の温度を、最終的に得られる共重合ポリアミドの融点(Tm)以上の所定の重合反応温度として重合度を高める。
【0042】
アミド化反応が開始するジアミン添加の当初から、反応系を最終的に得られる共重合ポリアミドの融点(Tm)以上の所定の重合反応温度とすることも考えられるが、反応生成物の熱履歴の観点から、また熱エネルギーの観点からも、反応初期から反応系を高温に保持することは好ましくない。
【0043】
ジアミンの添加終了時の反応系温度を、最終的に生成する共重合ポリアミドの融点(Tm)以上の温度、例えば融点以上Tm+80℃以下、望ましくは融点以上Tm+70℃以下とし、反応が完結するまでの間、共重合ポリアミドを含む反応生成物が実質的に均一な流動状態を保ち得るようにする。温度がTm+80℃以上となると、ポリアミドの劣化が加速されやすく、物性低下や着色の原因となる。逆に、Tm以下では、ポリアミドが固化し、反応装置の損傷を招く危険性がある。ジアミンの添加終了後に、好ましくはさらに、例えば5分間以上、好ましくは10分間以上重合反応を続け、重合度を高める。このジアミン添加終了後の重合反応は、4時間程度以内とするとよい。4時間を超えて重合反応を行っても、ポリアミドの相対粘度の上昇はあまり得られない。このようにして、相対粘度[RV]1.6〜4.0の共重合ポリアミドを得る。
【0044】
本発明の方法を実施した場合、ナイロン塩水溶液法の場合と同様に、ジアミンの反応系外への留出は避け難く、従って、重合反応槽には分縮器を備えることが必要である。分縮器を備えることにより、反応中にジアミンの留出を効果的に防ぎ得、その結果、ジカルボン酸に対するジアミンの仕込みモル比を、到達分子量を考慮した上で、0.97〜1.03の範囲に設定することにより、再現性よく、一定の分子量を有するポリアミドを製造することができる。
【0045】
本発明の方法で用いられる重合反応槽は、耐圧容器であることを要しないため、極めて安価に設置できる。さらに、ナイロン塩水溶液法では溶媒である水の除去に多くの時間と多量の熱量を要していたが、本発明の方法では、このような時間と多量の熱量を必要としない。ナイロン塩水溶液法では水を多量に用いるために、反応容器の容量当たりの生産効率も悪かったが、本発明の方法では、生産効率もよく、工業的観点から経済的な方法である。
【0046】
本発明の方法において、重合工程において、相対粘度[RV]の制御を行うこともできる。[RV]の制御方法としては▲1▼不活性ガスのパージ、▲2▼真空度、▲3▼不活性ガスのパージと真空度の併用がある。不活性ガスパージは重合反応を促進する一方で、パージ量を調整することで[RV]の制御ができる。また、真空度によっても重合反応を促進し、反応速度が制御できる。ポリアミドの生成反応はカルボン酸とアミンの縮合反応であり、生成する水を除去することで、重合反応は促進される。
【0047】
アジピン酸/フタル酸/メタキシリレンジアミンを主原料とするポリアミドにおいて望ましい[RV]の制御方法は、不活性ガスパージと真空度の併用である。この方法の利点は、不活性ガス、又は真空度単独では達し得なかった高[RV]のポリアミドの製造が容易なこと、また、[RV]の制御が一定真空度下では不活性ガスのパージ量の調整で可能となり、あるいは逆に不活性ガス量一定下では真空度の調整で可能となり、[RV]制御がより柔軟に行える利点がある。
【0048】
望ましい条件は、不活性ガスパージ量が0.005〜9.5L/kg、真空度は200〜1150hPa、更に望ましくは0.01〜9L/kg、250〜1100hPaである。不活性ガスパージ量が0.005L/kg未満であるか、又は真空度が1150hPaを超えると、重合速度が遅くなる。逆に、不活性ガスパージ量が9.5L/kgを超えるか、又は真空度が200hPa未満となると、不活性ガスの使用量が増加してコストアップ要因となり、また、重合速度が遅くなって生産性が低下するなどの不利を生じる。
【0049】
一方、重合反応を抑制したい場合には、酸無水物化合物の添加によって重合反応を制御できる。酸無水物化合物の添加により、ポリマーの末端アミノ基が封鎖されるので、重合反応を抑制できると考えられる。使用できる酸無水物化合物としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HOPA)、無水フタル酸、無水トリメット酸、無水ピロメリット酸、無水コハク酸などが挙げられ、ポリアミドの色調の点からHOPAの使用が望ましい。酸無水化合物の添加量は、所望する[RV]によって特に限定されるものではないが、通常はポリマー1kgあたり150meq/kg以下が望ましい。添加量が150meq/kgを超えると、重合速度が遅くなったり、また、未反応の酸無水物化合物がポリマー中に残留しポリアミドの品質低下の原因になる。
【0050】
[RV]の制御方法は前記の方法に限定されるものではなく、アルカリ金属化合物の添加や、従来公知の各種の手段を実施可能である。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例において用いたポリアミド樹脂の特性値の評価方法は以下の通りである。
【0052】
(1)相対粘度[RV]
ポリアミド樹脂0.25gを96%硫酸25mlに溶解し、オストワルド粘度管にて測定した。
【0053】
(2)融点
島津製作所DSC50を用いて測定した。ポリアミド樹脂試料5〜10mgをアルミ製のパンに充填し、窒素雰囲気下20℃/minで昇温し、昇温時に出現する吸熱ピークの最も高温域にあるピーク温度を融点とした。
【0054】
[実施例1]
攪拌機、分縮器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた内容積3Lのフラスコに、アジピン酸264.4g及びテレフタル酸33.4gを入れ、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下に160℃でアジピン酸を溶解させ、ジカルボン酸のスラリーを得た。このスラリーに、メタキシリレンジアミン274.0gを攪拌下に120分間にわたって滴下した。滴下開始と共に内温を120分間かけて255℃まで連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下と共に留出する水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。
【0055】
メタキシリレンジアミン滴下終了後、内温を260℃まで昇温し、この温度で100分間反応を継続した。反応の全過程で、反応系が均一な流動状態を保っていた。またスラリー状態であったテレフタル酸は反応し、均一のポリマーが得られた。共重合ポリアミドの相対粘度は1.95、融点は232℃であった。
【0056】
[実施例2]
攪拌機、分縮器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた内容積3Lのフラスコに、アジピン酸249.0g及びテレフタル酸50.0gを入れ、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下に160℃でアジピン酸を溶解させ、ジカルボン酸のスラリーを得た。このスラリーに、メタキシリレンジアミン273.2gを攪拌下に90分間にわたって滴下した。滴下開始と共に内温を90分間かけて260℃まで連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下と共に留出する水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。
【0057】
メタキシリレンジアミン滴下終了後、内温を260℃まで昇温し、この温度で60分間反応を継続した。その後、反応系内圧を500torrまで20分間かけて減圧し、30分間反応を継続した。この間、反応系内温度は260℃一定とした。反応の全過程で、反応系が均一な流動状態を保っていた。得られた共重合ポリアミドの相対粘度は2.16、融点は226℃であった。
【0058】
[比較例1]
攪拌機、分縮器、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた内容積3Lのフラスコに、アジピン酸142.5g及びテレフタル酸162.0gを入れ、十分窒素置換し、さらに少量の窒素気流下に160℃でアジピン酸を溶解させたが、反応が均一となるような十分なスラリーが得られなかった。これに、メタキシリレンジアミン265.7gを攪拌下に90分間にわたって滴下した。滴下開始と共に内温を260℃まで連続的に昇温した。メタキシリレンジアミンの滴下と共に留出する水は分縮器及び冷却器を通して系外に除いた。
【0059】
メタキシリレンジアミン滴下終了後、内温を285℃まで昇温し、この温度で21分間反応を継続した。この間、生成ポリアミドの粘度の増大が激しくなり、内容物の攪拌ができなくなった。内容物を96%硫酸に溶解させようと試みたが、不溶分が多かった。
【0060】
[比較例2]
内容積3Lの耐圧容器に、アジピン酸249.0g及びテレフタル酸50.0gを入れ、メタキシリレンジアミン273.2g及び水858.3gを加え、135℃の0.25MPaの加圧下で40%のポリアミド塩水溶液とし、完全に塩が溶解した後、昇温し、内部圧力1MPaで保持した状態で徐々に水を抜き出した。内温が235℃に到達したと同時に、内部圧力を1時間かけて常圧まで下げ、常圧になったところで、ポリアミドを抜き出した。得られたポリマー量は実施例2とほぼ同等であった。しかしながら、この例では、大量の水を必要とするため仕込みの原料の量が多く、工程が増え、長時間を要した。経済的な方法ではない。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、キシリレンジアミンを主成分として含むジアミンと、芳香族ジカルボン酸及び炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を1/99以上20/80未満の芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸のモル比で含むジカルボン酸とから主として構成される共重合ポリアミドを、品質良好に生産効率良く製造することができる。この共重合ポリアミドは、ガスバリア性、燃料バリア性、耐溶剤性に優れ、ガソリンタンク材、飲料用ボトルをはじめとする中空成形容器、フィルム、シートなどの成形体の素材として好適に用いられる。
Claims (6)
- キシリレンジアミンを主成分として含むジアミンと、芳香族ジカルボン酸及び炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸を1/99以上20/80未満の芳香族ジカルボン酸/脂肪族ジカルボン酸のモル比で含むジカルボン酸とから共重合ポリアミドを製造する方法であって、
(1) 炭素数6〜12の脂肪族ジカルボン酸の融点以上かつ融点よりも50℃高い温度以下の温度で溶融された前記脂肪族ジカルボン酸中に芳香族ジカルボン酸が分散されたスラリーを得るスラリー調製工程と、
(2) 得られたスラリーにキシリレンジアミンを主成分として含むジアミンを、ジカルボン酸に対するジアミンのモル比が0.97〜1.03の範囲の所定値となるまで添加しながら、添加の間に反応系を昇温し、水を分離除去しつつ重縮合反応を行い、さらに、ジアミン添加終了時の反応系の温度を、最終的に得られる共重合ポリアミドの融点以上の温度として重合度を高める重合工程とを含む、共重合ポリアミドの製造方法。 - (2) 重合工程において、常圧下、加圧下又は減圧下において、あるいは窒素気流下において重合度を高める、請求項1に記載の共重合ポリアミドの製造方法。
- 芳香族ジカルボン酸がテレフタル酸である、請求項1又は2に記載の共重合ポリアミドの製造方法。
- 脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸である、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の共重合ポリアミドの製造方法。
- ジアミンは、ジアミンを基準としてキシリレンジアミンを70〜100モル%含む、請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の共重合ポリアミドの製造方法。
- キシリレンジアミンは、キシリレンジアミンを基準として80〜100モル%のメタキシリレンジアミンを含む、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の共重合ポリアミドの製造方法。
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