JP2004202953A - 印刷版材料及び印刷版 - Google Patents
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Abstract
【課題】現像処理を行うことなく印刷することが出来る平版印刷用材料において耐刷性が良く、印刷開始時の損紙が少ない平版印刷用材料とそれを用いた印刷版を提供する。
【解決手段】粗面化処理および陽極酸化が施されたアルミニウム支持体上に、熱融着性または熱溶融性の微粒子分散体と、光熱変換剤を含む画像形成層を有し、該画像形成層に、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸とその金属塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びその塩、マレイン酸/アクリル酸共重合体及びその塩、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ポリビニルメチルエーテル、ポリスルホン酸、多糖類のいずれかを含有する印刷版材料。
【選択図】 なし
【解決手段】粗面化処理および陽極酸化が施されたアルミニウム支持体上に、熱融着性または熱溶融性の微粒子分散体と、光熱変換剤を含む画像形成層を有し、該画像形成層に、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸とその金属塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びその塩、マレイン酸/アクリル酸共重合体及びその塩、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ポリビニルメチルエーテル、ポリスルホン酸、多糖類のいずれかを含有する印刷版材料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷版材料及びそれから作製された印刷版に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
印刷版は一般に、親水性非画像部と親油性画像部から構成されている。
【0003】
そのなかでPS版として知られているものは、支持体の金属板(アルミニウム板や亜鉛板)の表面を研磨あるいは陽極酸化し親水性を付与して親水性面を形成してから、その上に親油性画像部を形成するための感光性樹脂層を塗設した印刷版材料を作製する。
【0004】
この感光性樹脂層を像露光後、アルカリ現像処理して露光領域は親油性画像部を形成させ、非露光領域は感光性樹脂層を除去して、支持体の親水性面を露出させて親水性非画像部とし印刷版を作製する。
【0005】
一方で、印刷データのデジタル化に伴い安価で取り扱いが容易でPS版と同等の印刷適性を有したCTP(コンピュータ・トゥ・プレート)が求められている。特に近年、特別な薬剤による現像処理が不要であって、ダイレクトイメージング(DI)機能を備えた印刷機にも適用可能な、いわゆるプロセスレスプレートへの期待が高まっており、種々の方式が提案されている。
【0006】
例えば、日本特許2938397号公報、特開平9−127683号公報及びWO99−10186号明細書には、親水性表面を有する基板上に、熱可塑性ポリマー微粒子を親水性樹脂などのマトリックス中に分散した親水性の画像形成層を有する感熱性平版印刷用材料が開示されている。これらの文献には、赤外線露光などによって画像形成層に熱を加えると、熱可塑性ポリマー微粒子が溶融合体して、親水性画像形成層表面が親油性画像部に変換され、この画像部が形成された平版印刷版を印刷機に装着し、版胴を回転しながら印刷版に湿し水とインキを供給することによって、未加熱部分をあたかも現像処理したように除去してしまう方法(機上現像法)の発明が記載されている。従って、従来行われていた自動現像機などを用いる現像処理を省略することが可能である。
【0007】
又、特開2000−238452号公報には、光または熱の少なくともいずれか一方のエネルギーにより分解する基を表面に有するミクロゲルと、赤外光吸収剤を画像形成層に含有する平版印刷用材料が、機上現像できることが記載されている。
【0008】
しかしながら、上記の機上現像型の無処理平版印刷用材料には、未露光部の除去が印刷機の運転開始条件によって左右されたり、親油性成分を多く含んだ除去物が湿し水ローラや湿し水を汚染するため、良好な印刷物を得るまでに数十〜数百枚の印刷が必要だったり、ローラの洗浄を必要とするなど、コストおよび手間がかかるという問題がある。
【0009】
上記問題を解決するため、1992年1月のResearch Disclosure No.33303号、特開平9−171250号公報等には、熱可塑性ポリマー微粒子を架橋した親水性樹脂中に分散した感熱層を有する感熱性平版印刷材料が記載されている。また、特開平7−1849号、同7−1850号、同10−6468号および同11−70756号の各公報には、架橋した親水性バインダーポリマー中に親油性微粒子として親油性成分を内包するマイクロカプセルを分散した親水層を有する感熱性平版印刷用材料が記載されている。これらの感熱性平版印刷用材料は、露光による熱で形成された親油性画像部と未露光部の親水性非画像部との表面構成を印刷面として用いることにより、機上現像を必要とせず、完全無処理で湿し水を使用する平版印刷を行えることが記載されている。
【0010】
【特許文献1】
特開平9−171250号公報(特許請求の範囲及び実施例項)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術の完全無処理の平版印刷用材料は、未だ印刷開始時の無駄な印刷(損紙)が多く、耐刷性が不十分という問題があった。
【0012】
本発明の目的は、上記問題を解決することであり、露光後、現像処理を行うことなく印刷することが出来る平版印刷用材料における、耐刷性が改良され、しかも印刷開始時の損紙が少ない平版印刷用材料とそれを用いた印刷版を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、本発明の目的は下記構成のいずれかを採ることにより達成されることがわかった。
【0014】
〔1〕 粗面化処理および陽極酸化が施されたアルミニウム支持体上に、熱融着性または熱溶融性の少なくともいずれかを有する微粒子分散体と、光熱変換剤を含む画像形成層を有する印刷版材料において、該画像形成層に、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸とその金属塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩またはアミン塩、マレイン酸/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ポリビニルメチルエーテル、ポリスルホン酸、多糖類よりなる群から選択される少なくとも1種の親水性重合体を含有することを特徴とする印刷版材料。
【0015】
〔2〕 前記親水性重合体の少なくとも一部を架橋し得る架橋剤により架橋されていることを特徴とする〔1〕に記載の印刷版材料。
【0016】
〔3〕 前記熱溶融性または熱融着性微粒子が脂肪酸アミドを含むことを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の印刷版材料。
【0017】
〔4〕 前記光熱変換剤が赤外吸収色素、カーボンブラック、金属ホウ化物、金属炭化物、金属窒化物、金属炭窒化物、金属酸化物からなる群から選択されることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の印刷版材料。
【0018】
〔5〕 前記アルミニウム支持体が陽極酸化後に、有機酸水溶液で後処理されていることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の印刷版材料。
【0019】
〔6〕 前記画像形成層のさらに上層に親水性オーバーコート層を有することを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載の印刷版材料。
【0020】
〔7〕 〔1〕〜〔6〕のいずれか1項記載の印刷版材料を露光し、特に現像処理することなしに作製されたことを特徴とする印刷版。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
〔画像形成層〕
本発明において画像形成層は特定の親水性重合体を含有することが特徴である。
【0023】
《親水性重合体》
本発明にかかわる水溶性重合体は、親水性の天然高分子及び合成高分子から選ばれる。
【0024】
本発明に好ましく用いられる水溶性重合体の具体例としては、天然高分子では、水溶性大豆多糖類の如き多糖類、合成高分子では、ポリビニルアルコール(好ましくは鹸化度70モル%以上のもの)、ポリ(メタ)アクリル酸とその金属塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩またはアミン塩、マレイン酸/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ポリビニルメチルエーテル、及び、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩またはアミン塩等のポリスルホン酸を挙げることができる。
【0025】
これらの中で好ましいのは、合成高分子であり、更に好ましいのはポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸である。また、目的に応じて、これらを二種以上混合して用いることもできる。
【0026】
水溶性重合体の好適な添加量は、画像形成層の全固形分の0.5〜40質量%であり、好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは1〜20質量%である。0.5質量%未満では水溶性重合体の効果が発揮できず、刷り出し損紙が多くなる。また40質量%より多いと耐刷性が劣化する。
【0027】
《架橋剤》
本発明において、印刷時の傷つき防止および画像強度を向上させるために、画像形成層に親水性重合体を熱架橋しうる架橋剤を含有することが好ましい。
【0028】
親水性重合体を熱架橋しうる架橋剤としては、架橋性を有する多官能性化合物が挙げられ、エポキシ化合物、ポリアミン化合物、イソシアネート化合物、シラン化合物、チタネート化合物、アルデヒド化合物、多価金属塩化合物、ヒドラジン等が挙げられる。
【0029】
エポキシ化合物の具体例としては、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール類またはそれらの水素添加物とエピハロヒドリンとのポリ縮合物等が挙げられる。
【0030】
ポリアミン化合物の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン等が挙げられる。
【0031】
イソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、液状ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、またポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物等が挙げられる。
【0032】
シラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
チタネート化合物としては、テトラエチルオルトシリケート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリアクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピル(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルトリインステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリジシルホスファイト)チタネート、テトラ(2、2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。
【0034】
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。
【0035】
多価金属塩化合物としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、コバルト、マンガン、ニッケル等の金属の水溶性塩が挙げられる。
【0036】
上記の挙げた架橋剤の中でも、特に、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、シラン化合物、アルデヒド化合物、多価金属塩化合物が好ましく用いられる。
【0037】
これらの架橋剤は単独または2種以上を混合して使用することが可能である。これらの架橋剤のうち特に好ましい架橋剤は、水溶性の架橋剤であるが、非水溶性のものは分散剤によって水に分散して使用することができる。
【0038】
特に好ましい親水性重合体と架橋剤の組み合わせとしては、カルボン酸含有親水性重合体/多価金属化合物、カルボン酸含有親水性重合体/エポキシ化合物、水酸基含有親水性重合体/ジアルデヒド類、水酸基含有親水性重合体/イソシアネート化合物が挙げられる。架橋剤の好適な添加量は、親水性重合体の1〜20質量%である。
【0039】
《熱溶融性微粒子、熱融着性粒子》
(熱溶融性微粒子)
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上150℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が150℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0040】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800〜10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0041】
これらの中でも、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス、脂肪酸アミドの何れかを含有することが好ましい。特に脂肪酸アミドが優れている。融点が80〜100℃、溶融粘度が5〜100mPa・S(25℃)で着肉感度が高い。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。又、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0042】
又、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な構造を有する親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0043】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0044】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0045】
(熱融着性微粒子)
本発明に係わる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
【0046】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0047】
高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法又は気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水又は水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。又、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0048】
又、熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱融着性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した場合には、熱融着性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱融着性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0049】
又、熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0050】
構成層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0051】
画像形成層の乾燥塗布質量は好ましくは0.10〜1.50g/m2、より好ましくは0.15〜1.00g/m2である。
【0052】
《光熱変換剤》
本発明に係る画像形成層には、光熱変換剤を含有する。
【0053】
光熱変換剤としては下記のような素材を添加することができる。
(赤外吸収色素)
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号の各公報等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
(顔料)
顔料としては、カーボンブラック、グラファイト、金属、金属ホウ化物、金属炭化物、金属窒化物、金属炭窒化物、金属酸化物等が挙げられる。
【0055】
カーボンブラックとしては、特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0056】
(グラファイト)
グラファイトとしては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0057】
(金属)
金属としては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0058】
(金属酸化物)
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。前者としては、黒色酸化鉄(Fe3O4)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。後者とては、例えば、SbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。又、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0059】
これらの光熱変換素材のうち、二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物がより好ましい素材として挙げられ、具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号公報、特開平9−25126号公報、特開平9−237570号公報、特開平9−241529号公報、特開平10−231441号公報等に開示されている方法により製造することができる。
【0060】
本発明に用いる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号公報に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。
【0061】
これらの複合金属酸化物は、平均一次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均一次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。したがって、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均一次粒子径が0.01μm未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
【0062】
これらの光熱変換剤の添加量としては、0.1〜50質量%であり、1〜30質量%が好ましく、1〜25質量%がより好ましい。0.1質量%未満では十分な熱量を発することが出来ず、50%質量%を越えると熱過剰となり画像形成層がアブレーション破壊されてしまうことがある。
【0063】
《可視画性の付与》
通常、印刷業界においては、印刷材料に画像形成した印刷版を印刷する前に、正しく画像が形成されているかを検査する検版という作業がある。検版をするためには、印刷前に形成された画像が版面上で見える性能、つまり可視画性が良いことが好ましい。本発明の印刷版材料は、現像処理なしに印刷可能なプロセスレス印刷版材料なので、露光することによる光または熱によって露光部分または未露光部分の光学濃度が変化することが好ましい。
【0064】
本発明において好ましく用いられる方法としては、露光することにより光学濃度が変化するシアニン系赤外線吸収色素を含有させる方法、光酸発生剤とその酸により変色する化合物を用いる方法、ロイコ色素のような発色剤と顕色剤を組み合わせて用いる方法などがある。なお、光酸発生剤とは、露光によってルイス酸やブレンステッド酸を生成する化合物を意味する。
【0065】
光酸発生剤の具体例としては、ジアゾ化合物、オルトキノンジアジド化合物、ポリハロゲン化合物、オニウム塩化合物などが挙げられる。またこれらの構造をポリマーに組み込んだ化合物を用いることもできる。
【0066】
ジアゾ化合物としては、例えば、米国特許2,063,631号明細書、米国特許2,667,415号明細書などに開示されているジアゾニウム塩とアルドールやアセタールなどの反応性カルボニル基を含有する有機結合剤との反応生成物であるジフェニルアミン−p−ジアゾニウム塩とフォルムアルデヒド縮合生成物、またこれらの水溶性ジアゾニウム塩化合物を特開昭54−98613号公報に開示された方法により、BF4 -、PF6 -などのアニオン成分などで置換したハロゲン化ルイス酸塩、アリルジアゾニウム塩化合物などが挙げられる。
【0067】
オルトキノンジアジド化合物としては、1分子中に少なくともひとつのオルトキノンジアジド基を有する化合物で、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−エチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−イソブチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−α−ナフチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−ベンジルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−エチルアミド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルアミドなどが挙げられる。
【0068】
ポリハロゲン化合物としては、ポリハロゲンを含むアセトフェノン、例えばトリブロモアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、o−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、p−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ブロモ−トリブロモアセトフェノン、p−ブロモ−トリブロモアセトフェノンなど、また、ポリハロゲンを含むスルフォキサイド、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォキサイド、ジブロモメチル−トリブロモメチルスルフォキサイド、トリブロモメチル−フェニルスルフォキサイドなど、またポリハロゲンを含むスルフォン、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォン、トリクロロメチル−フェニルスルフォン、トリブロモメチル−フェニルスルフォン、トリクロロメチル−p−クロロフェニルスルフォン、トリブロモメチル−p−ニトロフェニルスルフォン2−トリクロロメチルベンゾチアゾールスルフォン、2,4−ジクロロフェニル−トリクロロメチルスルフォンなど、その他ポリハロゲンを含むピロン化合物、トリアジン化合物、オキサジアゾール化合物などが挙げられる。
【0069】
オニウム塩化合物およびその他の光酸発生剤としては、S.P.Papas,et al.,Polym.Photochem.,5,1,p104〜115(1984)に記載されているオニウム塩化合物、また色材,66(2),p104〜115(1993)に紹介されている、Ph2I+/SbF6 -等のジアリルヨードニウム塩化合物に代表される光酸発生剤、トリアリルスルフォニウム塩化合物、トリアリルセレノニウム塩化合物、ジアルキルフェナシルスルフォニウム塩化合物、ジアルキル−4−フェナシルスルフォニウム塩化合物、α−ヒドロキシメチルベンゾインスルフォン酸エステル、N−ヒドロキシイミノスルフォネート、α−スルフォニロキシケトン、β−スルフォニロキシケトン、鉄−アレーン錯体化合物(ベンゼン−シクロペンタジエニル−鉄(II)ヘキサフルオロフォスフェートなど)、o−ニトロベンジルシリルエーテル化合物、ベンゾイントシレート、トリ(ニトロベンジル)フォスフェートなどが挙げられる。
【0070】
その他に、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩、有機ハロゲン化合物、o−ニトロベンジル誘導体、イミノスルホネート及びジスルホン化合物等を挙げることができる。
【0071】
さらに具体的には、例えば、特開平9−244226号公報「化7」〜「化9」に記載のT−1〜T−15の式で示される化合物を挙げることができる。
【0072】
これらの中、より好ましいものはトリハロメチル基を2個以上有するs−トリアジン化合物であり、特に好ましくはトリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。
【0073】
これら光酸発生剤の含有量は、印刷版材料の全固形分に対し、0.01〜40質量%、好ましくは0.1〜30質量%である。
【0074】
本発明において、酸によって変色する化合物としては、例えばジフェニルメタン、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0075】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH(保土ケ谷化学社製)、オイルブルー#603(オリエント化学工業社製)、オイルピンク#312(オリエント化学工業社製)、オイルレッド5B(オリエント化学工業社製)、オイルスカーレット#308(オリエント化学工業社製)、オイルレッドOG(オリエント化学工業社製)、オイルレッドRR(オリエント化学工業社製)、オイルグリーン#502(オリエント化学工業社製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土ケ谷化学工業社製)、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボステアリルアミノ−4−p−ジヒドロオキシエチルアミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等が挙げられる。
【0076】
また、酸で発色する化合物としてアリールアミン類の有機染料を用いることができる。この目的に適するアリールアミン類としては、第一級、第二級芳香族アミンのような単なるアリールアミンのほかにいわゆるロイコ色素も含まれ、これらの例としては次のようなものが挙げられる。
【0077】
ジフェニルアミン、ジベンジルアニリン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、p−トルイジン、4,4′−ビフェニルジアミン、o−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、o−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、アニリン、2,5−ジクロロアニリン、N−メチルジフェニルアミン、o−トルイジン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメタン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、1,2−ジアニリノエチレン、p,p′,p″ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、p,p′−テトラメチルジアミノトリフェニルメタン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメチルイミン、p,p′,p″−トリアミノ−o−メチルトリフェニルメタン、p,p′,p″−トリアミノトリフェニルカルビノール、p,p′−テトラメチルアミノジフェニル−4−アニリノナフチルメタン、p,p′,p″−トリアミノフェニルメタン、p,p′,p″−ヘキサプロピルトリアミノトリフェニルメタン等。
【0078】
本発明において、顕色剤としては、感熱記録体において電子受容体として使用される酸性物質がいずれも使用でき、例えば酸性白土カオリン、ゼオライト等の無機酸、芳香族カルボン酸、その無水物又はその金属塩類、有機スルホン酸、その他の有機酸、フェノール系化合物、該フェノール系化合物のメチロール化物、該フェノール系化合物の塩又は錯体等の有機系顕色剤などが挙げられ、なかでもフェノール系化合物のメチロール化物およびフェノール系化合物の塩(以下、特に断りのないかぎり錯塩も含む)が好ましい。
【0079】
これら顕色剤のうち、有機系顕色剤の具体例としては、フェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシアセトフェノン、2,2′−ジヒドロキシジフェニル、2,2′−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−イソプロピリデンジフェノール(別名ビスフェノールA)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4′エチレンビス(2−メチルフェノール)、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ヘプタン、4,4′−シクロヘキシリデンビス(2−イソプロピルフェノール)、4,4′−スルホニルジフェノール等のフェノール系化合物、該フェノール系化合物のメチロール化物、該フェノール系化合物の塩サリチル酸アニリド、ノボラック型フェノール樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
【0080】
本発明においては、顕色剤とともに用いられる発色剤としては、トリフェニルメタンラクトン型などのロイコ色素を用いることができる。このようなロイコ色素としては、例えば、クリスタルバイオレットラクトン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノフルオラン、マラカイトグリーンラクトン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルドール−3−イル)フタリド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなどが挙げられる。
【0081】
上記発色剤と顕色剤は、顕色剤/発色剤の質量比が0.1/1〜5/1となる範囲で通常用いるが、なかでも該質量比が0.5/1〜3/1となる範囲が好ましい。
【0082】
〔親水性オーバーコート層〕
本発明において、画像形成層の上層に親水性オーバーコート層を有することが好ましい。親水性オーバーコート層は画像形成層のすぐ上の層であってもよいし、また画像形成層と親水性オーバーコート層の間に中間層が設けられてもよい。親水性オーバーコート層は印刷機上で除去可能であることが好ましい。
【0083】
本発明において親水性オーバーコート層は、水溶性樹脂又は水溶性樹脂を部分的に架橋した水膨潤性樹脂を含有することが好ましい。
【0084】
かかる水溶性樹脂は、水溶性の天然高分子及び合成高分子から選ばれ、架橋剤とともに用い、塗布乾燥された皮膜がフィルム形成能を有するものである。本発明に好ましく用いられる水溶性樹脂の具体例としては、天然高分子では、アラビアガム、水溶性大豆多糖類、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ等)、その変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等、合成高分子では、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルの加水分解率65%以上のもの)、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリアクリル酸共重合体、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリアクリルアミド、その共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、その共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、等を挙げることができる。また、目的に応じて、これらの樹脂を二種以上混合して用いることもできる。しかし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0085】
水溶性樹脂の少なくとも1種以上を部分架橋し、親水層上にオーバーコート層を形成する場合、架橋は、水溶性樹脂の有する反応性官能基を用いて架橋反応することにより行われる。架橋反応は、共有結合性の架橋であっても、イオン結合性の架橋であってもよい。
【0086】
架橋により、オーバーコート層表面の粘着性が低下して取り扱い性がよくなるが、架橋が進み過ぎるとオーバーコート層が親油性に変化して、印刷機上におけるオーバーコート層の除去が困難になるので、適度な部分架橋が好ましい。好ましい部分架橋の程度は、25℃の水中に印刷用材料を浸したときに、30秒〜10分間では親水性オーバーコート層が溶出せず残存しているが、10分以上では溶出が認められる程度である。
【0087】
架橋反応に用いられる化合物(架橋剤)としては、架橋性を有する公知の多官能性化合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ポリアミン化合物、ポリイソシアネート化合物、シラン化合物、チタネート化合物、アルデヒド化合物、多価金属塩化合物、ヒドラジンなどが挙げられる。該架橋反応は公知の触媒を添加し、反応を促進することもできる。具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0088】
ポリエポキシ化合物の具体例としては、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール類もしくはそれらの水素添加物とエピハロヒドリンとのポリ縮合物、などが挙げられる。
【0089】
ポリアミン化合物の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミンなどが挙げられる。
【0090】
ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、液状ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、などの芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、またポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などが挙げられる。
【0091】
シラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、など。
【0092】
チタネート化合物としては、テトラエチルオルトシリケート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリアクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピル(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルトリインステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリジシルホスファイト)チタネート、テトラ(2、2ージアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、など。
【0093】
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、など。
【0094】
多価金属塩化合物としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、コバルト、マンガン、ニッケル等の金属の水溶性塩が挙げられる。
【0095】
これらの架橋剤は単独または2種以上を混合して使用することが可能である。これらの架橋剤のうち特に好ましい架橋剤は、水溶性の架橋剤であるが、非水溶性のものは分散剤によって水に分散して使用することができる。
【0096】
特に好ましい水溶性樹脂と架橋剤の組み合わせとしては、カルボン酸含有水溶性樹脂/多価金属化合物、カルボン酸含有水溶性樹脂/水溶性エポキシ樹脂、水酸基含有樹脂/ジアルデヒド類を挙げられる。
【0097】
架橋剤の好適な添加量は、水溶性樹脂の2〜10質量%である。この範囲内で印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、良好な耐水性が得られる。
【0098】
本発明においては、親水性オーバーコート層は、前記した光熱変換剤を含有することが出来る。
【0099】
その他、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。この様な非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることができる。上記非イオン界面活性剤のオーバーコート層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
【0100】
本発明において、オーバーコート層の乾燥塗布量は、0.1〜0.4g/m2が好ましく、更に好ましい範囲は0.15〜0.25g/m2である。この範囲内で、印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、良好な汚れ防止、傷付き防止、指紋跡付着防止およびアブレーションカスの発生低減ができる。
【0101】
〔画像形成〕
本発明の印刷版材料の態様においては、画像形成は、熱により行うことができるが、特に赤外線レーザによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0102】
本発明に関する露光に関し、より具体的には、赤外及び/又は近赤外領域で発光する、すなわち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザを使用した走査露光が好ましい。レーザとしてはガスレーザを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザを使用することが特に好ましい。
【0103】
走査露光に好適な装置としては、半導体レーザを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0104】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザビームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザビームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザビームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式があげられる。
【0105】
本発明に関しては、特に(3)記載の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)記載の露光方式が用いられる。
【0106】
〔支持体の構成〕
本発明に用いられるアルミニウム支持体は、純アルミニウムを用いたアルミニウム支持体材料又はアルミニウム合金を用いたアルミニウム支持体材料から得られる。該アルミニウム合金を用いたアルミニウム支持体材料には、例えば珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムとの合金が用いられ、該アルミニウム支持体の表面は大きなうねりに小ピットが重畳された二重構造の粗面形状を有しているものが好ましい。
【0107】
また、上記アルミニウム支持体の表面の大きなうねりの平均開孔径d2(μm)は3μmを越え、20μm以下とするのが好ましく、該大きなうねりの平均開孔径が上記範囲外の場合はやはり残膜や、指紋汚れを生じ易くなる。
【0108】
〈支持体の処理〉
アルミニウム支持体を得るための上記アルミニウム支持体材料は、強固な汚れや自然酸化皮膜を除去する等のため、苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いて溶解処理が行われ、溶解処理後の残留アルカリ成分を中和するため、燐酸、硝酸、硫酸、塩酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬して中和処理が行われる。なお、必要により上記アルミニウム支持材料表面の油脂、錆、ごみなどを除去するため、トリクレン、シンナー等による溶剤脱脂、ケロシン、トリエタノール等のエマルジョンを用いてエマルジョン脱脂処理を行ってもよい。
【0109】
上記アルカリ水溶液を用いた溶解処理及び酸による中和処理の次には後記電気化学的粗面化処理が行われるが、中和処理に使用する酸の種類および組成を電気化学的粗面化処理に使用する酸の種類に合わせることが特に好ましい。
【0110】
上記アルカリ水溶液を用いた溶解処理に先だって、機械的粗面化処理が行われてもよい。機械的粗面化処理の方法は特に限定されないが、ブラシ研磨、ホーニング研磨が好ましい。ブラシ研磨では、例えば毛径0.2〜1mmのブラシ毛を植毛した円筒状ブラシを回転し、接触面に研磨材を水に分散させたスラリーを供給しながらアルミニウム支持体材料表面に押しつけて粗面化処理を行う。ホーニング研磨では、研磨材を水に分散させたスラリーをノズルより圧力をかけて射出し、アルミニウム支持体材料表面に斜めから衝突させて粗面化処理を行う。さらに、予め粗面化処理されたシートをアルミニウム支持体材料表面に張り合わせ、圧力をかけて粗面パターンを転写することにより機械的粗面化処理を行うこともできる。
【0111】
なお、上記機械的粗面化処理を行う場合は、特に上記溶剤脱脂処理又はエマルジョン脱脂処理を省略することができる。
【0112】
上記(必要により脱脂処理)アルカリ溶解処理及び酸による中和処理を行った後、アルミニウム支持体材料の表面は酸性電解液中で交流電流を用いて電気化学的粗面化処理が行われる。本発明では該酸性電解液中での電気化学的粗面化処理の過程で0.6〜5秒の休止時間を設け、かつ1回の電気化学的粗面化処理の電気量を100C/dm2以下とすることを必須の要件としている。上記のように電気化学的粗面化処理を複数回に分けて行う場合は、上記休止時間が0.6秒未満で、かつ1回の電気化学的粗面化処理の電気量が150C/dm2を越えると開孔径が20μmより大きい粗大ピットの生成を抑制することができず、また、上記休止時間が5秒を越えるとアルミニウム支持体の製造に時間がかかり過ぎて生産性が悪くなる。
【0113】
上記電気化学的粗面化処理の電解液としては、塩酸、硝酸等が用いられるが、塩酸がより好ましい。電解液には、必要に応じて硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、蓚酸等を加えることができるが、酢酸が特に好ましい。電気化学的粗面化処理において印加される電圧は、1〜50Vが好ましく、5〜30Vが更に好ましい。電流密度(ピーク値)は、10〜200A/dm2が好ましく、20〜150A/dm2が更に好ましい。電気量は、全処理工程を合計して100〜2000C/dm2が好ましく、200〜1000C/dm2が更に好ましい。温度は、10〜50℃が好ましく、15〜45℃が更に好ましい。
【0114】
また、塩酸濃度は0.1〜5質量%が好ましく、電解に使用する電流波形は正弦波、矩形波、台形波、鋸歯状波等、求める粗面化形状により適宜選択されるが、特に正弦波が好ましい。電気化学的粗面化処理されたアルミニウム支持体材料は、表面のスマット等を除去したり、粗面のピット形状をコントロールする等のために酸またはアルカリの水溶液に浸漬して表面のエッチング処理が行われる。上記酸としては、例えば硫酸、過硫酸、フッ酸、燐酸、硝酸、塩酸等が含まれ、上記アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が含まれる。これらの中でも、アルカリの水溶液を用いるのが好ましく、該アルカリの0.05〜40%水溶液を用い20〜90℃の液温において5秒〜5分処理するのがよく、該アルカリの水溶液で表面をエッチングした後に、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬して中和処理が行なわれる。
【0115】
上記中和処理が行われたアルミニウム支持体材料はさらに陽極酸化処理されて本発明のアルミニウム支持体が得られる。ここで、中和に使用する酸の種類を陽極酸化処理に使用する酸のそれに合わせることが特に好ましい。
【0116】
上記陽極酸化処理に用いられる電解液としては多孔質酸化皮膜を形成するものであれば如何なる電解液でもよいが、一般には硫酸、燐酸、蓚酸、クロム酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等、或るいはこれらの2種類以上を組み合わせた混酸が用いられる。陽極酸化の処理条件は使用する電解液により種々変化するので一概に特定することはできないが、一般的には、電解液の濃度が1〜80質量%、温度5〜70℃、電流密度1〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲が適当である。好ましいのは硫酸法で、通常直流電流で処理が行われるが、交流を用いることもできる。ここで、硫酸の濃度は10〜50質量%、温度20〜50℃、電流密度1〜20A/dm2で10秒〜5分間電解処理されるのが好ましく、また電解液中にはアルミニウムイオンが含まれているのが好ましい。
【0117】
上記陽極酸化されたアルミニウム支持体を処理してその表面の親水性を改良してもよい。例えばアルミニウム支持体の表面をケイ酸ナトリウム溶液、リン酸塩溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、または有機酸で処理することで、支持体表面の親水性を改良でき、特に有機酸が優れた特性を示す。有機酸としてはクエン酸、シュウ酸、フタル酸、ギ酸、フィチン酸、ヘキサフルオロ燐酸アンモニウム等があげられるが、特に好ましくはクエン酸である。これらの酸を用いることにより印刷時に湿し水供給量を減らしても、汚れず良好な印刷物が得られる。処理は室温で行なってもよく、40〜70℃に加熱し処理しても良い。
【0118】
上記陽極酸化処理して得られたアルミニウム支持体は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム塩処理等の公知の方法を用いて行うことができる。
【0119】
これまの後処理は、単独で行なっても良いし、複数を組み合わせで行なっても良い。
【0120】
上記陽極酸化処理あるいは陽極酸化処理に引き続いて封孔処理して得られたアルミニウム支持体には親水性層を設けてもよい。親水性層の形成には、米国特許第3,181,461号明細書に記載のアルカリ金属珪酸塩、米国特許第1,860,426号明細書に記載の親水性セルロース、特公平6−94234号公報、特公平6−2436号公報に記載のアミノ酸及びその塩、特公平5−32238号公報に記載の水酸基を有するアミン類及びその塩、特開昭62−19494号公報に記載の燐酸塩、特開昭59−101651号公報に記載のスルホ基を有するモノマー単位を含む高分子化合物等を用いることができる。
【0121】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるわけではない。なお、文中「部」とは「質量部」を表す。
【0122】
実施例1
〈支持体作製〉
支持体の製造
0.25mm厚さのアルミニウム基材を、5g/lの水酸化ナトリウムを含有する水溶液中に50℃において浸漬することにより基材を脱脂し、そして脱塩水ですすいだ。
【0123】
次に基材を4g/lの塩酸、4g/lのヒドロホウ酸(Hydrohoricacid)および0.5g/lのアルミニウムイオンを含有する水溶液中で、35℃の温度および電流密度1200A/m2の交流電流を用いて、電気化学的に粒状化し、0.5μmの平均中心線粗さRaを有する表面トポロジーを形成した。
【0124】
アルミニウム基材を脱塩水ですすいだ後に、300g/lの硫酸を含有する水溶液で60℃において180秒間エッチングし、その後脱塩水で25℃において30秒間すすいだ。
【0125】
次に、基材を200g/lの硫酸を含有する水溶液中で、45℃の温度、約10Vの電圧および150A/m2の電流密度において、約300秒間にわたり陽極酸化にかけて、3g/m2のAl2O3の陽極酸化フィルムを形成した。
【0126】
続いて脱塩水で洗浄し、20g/lの炭酸水素ナトリウムを含有する溶液で40℃において30秒間にわたり後処理し、次に25℃の脱塩水で120秒間すすいで後乾燥した。
【0127】
得られた平版ベースを5質量%のクエン酸を含有する水溶液中に70℃、60秒間にわたり浸漬し、25℃の脱塩水ですすいだ後乾燥して支持体を作製した。
【0128】
上記画像形成層塗布液を、上記で作製したアルミニウム支持体(基材)に、ワイヤーバー#10を用いて乾燥付量が1.5g/m2となるように塗布し、30mの長さの60℃に設定された乾燥ゾーンを搬送スピード15m/分の速度で通過させ、更に、50℃で3分間乾燥して赤外線レーザ露光用である印刷版材料001〜012を各々作製した。
【0129】
【表1】
【0130】
(表中、「%」は固形分濃度を示す。)
【0131】
【化1】
【0132】
〈印刷版材料001〜012の評価〉
(a)赤外線レーザ方式による画像形成
上記の印刷版材料001〜012を各々露光ドラムに巻付け固定した。露光には、波長830nm、スポット径約18μmのレーザビームを用い、露光エネルギーを300mJ/cm2とした条件で、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成し、印刷版101〜112を各々作製した。
【0133】
(b)上記の印刷版101〜112について、下記の印刷方法により、印刷版としての諸特性を評価した。
【0134】
〈評価方法〉
印刷装置として、三菱重工業社製のDAIYA1F−1を用いて、コート紙と、湿し水としてアストロマーク3(日研化学研究所社製)の2質量%溶液、インクとして、東洋インク社製のトーヨーキングハイエコーM紅を使用して各水準それぞれ3万枚の印刷を行った。
【0135】
《刷りだし評価》
刷り出し時、良好なS/N比(非画像部に地汚れが無く、画像形成層の非画像部が印刷機上で除去され、かつ、画像部の濃度が適正範囲となっている)を有した印刷物が得られるまでの印刷枚数(損紙)を評価した。枚数が少ないほど優れている。40枚以上では実用上問題がある。
【0136】
《耐刷性の評価》
印刷した画像の3%の小点の欠落、またはベタ部の濃度低下のいずれかが確認された段階で耐刷終点としその枚数を求めた。
【0137】
以上により得られた結果を表2に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
表2から明らかな如く、本発明内のもの(印刷版No.103〜112)は、発明外のもの(印刷版No.101、102の比較)より格段に特性が良いことがわかる。
【0140】
【発明の効果】
本発明により、露光後、現像処理を行うことなく印刷することが出来る平版印刷用材料における、耐刷性が改良され、しかも印刷開始時の損紙が少ない平版印刷用材料とそれを用いた印刷版を提供することが出来る。
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷版材料及びそれから作製された印刷版に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
印刷版は一般に、親水性非画像部と親油性画像部から構成されている。
【0003】
そのなかでPS版として知られているものは、支持体の金属板(アルミニウム板や亜鉛板)の表面を研磨あるいは陽極酸化し親水性を付与して親水性面を形成してから、その上に親油性画像部を形成するための感光性樹脂層を塗設した印刷版材料を作製する。
【0004】
この感光性樹脂層を像露光後、アルカリ現像処理して露光領域は親油性画像部を形成させ、非露光領域は感光性樹脂層を除去して、支持体の親水性面を露出させて親水性非画像部とし印刷版を作製する。
【0005】
一方で、印刷データのデジタル化に伴い安価で取り扱いが容易でPS版と同等の印刷適性を有したCTP(コンピュータ・トゥ・プレート)が求められている。特に近年、特別な薬剤による現像処理が不要であって、ダイレクトイメージング(DI)機能を備えた印刷機にも適用可能な、いわゆるプロセスレスプレートへの期待が高まっており、種々の方式が提案されている。
【0006】
例えば、日本特許2938397号公報、特開平9−127683号公報及びWO99−10186号明細書には、親水性表面を有する基板上に、熱可塑性ポリマー微粒子を親水性樹脂などのマトリックス中に分散した親水性の画像形成層を有する感熱性平版印刷用材料が開示されている。これらの文献には、赤外線露光などによって画像形成層に熱を加えると、熱可塑性ポリマー微粒子が溶融合体して、親水性画像形成層表面が親油性画像部に変換され、この画像部が形成された平版印刷版を印刷機に装着し、版胴を回転しながら印刷版に湿し水とインキを供給することによって、未加熱部分をあたかも現像処理したように除去してしまう方法(機上現像法)の発明が記載されている。従って、従来行われていた自動現像機などを用いる現像処理を省略することが可能である。
【0007】
又、特開2000−238452号公報には、光または熱の少なくともいずれか一方のエネルギーにより分解する基を表面に有するミクロゲルと、赤外光吸収剤を画像形成層に含有する平版印刷用材料が、機上現像できることが記載されている。
【0008】
しかしながら、上記の機上現像型の無処理平版印刷用材料には、未露光部の除去が印刷機の運転開始条件によって左右されたり、親油性成分を多く含んだ除去物が湿し水ローラや湿し水を汚染するため、良好な印刷物を得るまでに数十〜数百枚の印刷が必要だったり、ローラの洗浄を必要とするなど、コストおよび手間がかかるという問題がある。
【0009】
上記問題を解決するため、1992年1月のResearch Disclosure No.33303号、特開平9−171250号公報等には、熱可塑性ポリマー微粒子を架橋した親水性樹脂中に分散した感熱層を有する感熱性平版印刷材料が記載されている。また、特開平7−1849号、同7−1850号、同10−6468号および同11−70756号の各公報には、架橋した親水性バインダーポリマー中に親油性微粒子として親油性成分を内包するマイクロカプセルを分散した親水層を有する感熱性平版印刷用材料が記載されている。これらの感熱性平版印刷用材料は、露光による熱で形成された親油性画像部と未露光部の親水性非画像部との表面構成を印刷面として用いることにより、機上現像を必要とせず、完全無処理で湿し水を使用する平版印刷を行えることが記載されている。
【0010】
【特許文献1】
特開平9−171250号公報(特許請求の範囲及び実施例項)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来技術の完全無処理の平版印刷用材料は、未だ印刷開始時の無駄な印刷(損紙)が多く、耐刷性が不十分という問題があった。
【0012】
本発明の目的は、上記問題を解決することであり、露光後、現像処理を行うことなく印刷することが出来る平版印刷用材料における、耐刷性が改良され、しかも印刷開始時の損紙が少ない平版印刷用材料とそれを用いた印刷版を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、本発明の目的は下記構成のいずれかを採ることにより達成されることがわかった。
【0014】
〔1〕 粗面化処理および陽極酸化が施されたアルミニウム支持体上に、熱融着性または熱溶融性の少なくともいずれかを有する微粒子分散体と、光熱変換剤を含む画像形成層を有する印刷版材料において、該画像形成層に、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸とその金属塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩またはアミン塩、マレイン酸/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ポリビニルメチルエーテル、ポリスルホン酸、多糖類よりなる群から選択される少なくとも1種の親水性重合体を含有することを特徴とする印刷版材料。
【0015】
〔2〕 前記親水性重合体の少なくとも一部を架橋し得る架橋剤により架橋されていることを特徴とする〔1〕に記載の印刷版材料。
【0016】
〔3〕 前記熱溶融性または熱融着性微粒子が脂肪酸アミドを含むことを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の印刷版材料。
【0017】
〔4〕 前記光熱変換剤が赤外吸収色素、カーボンブラック、金属ホウ化物、金属炭化物、金属窒化物、金属炭窒化物、金属酸化物からなる群から選択されることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載の印刷版材料。
【0018】
〔5〕 前記アルミニウム支持体が陽極酸化後に、有機酸水溶液で後処理されていることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれか1項記載の印刷版材料。
【0019】
〔6〕 前記画像形成層のさらに上層に親水性オーバーコート層を有することを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれか1項記載の印刷版材料。
【0020】
〔7〕 〔1〕〜〔6〕のいずれか1項記載の印刷版材料を露光し、特に現像処理することなしに作製されたことを特徴とする印刷版。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
〔画像形成層〕
本発明において画像形成層は特定の親水性重合体を含有することが特徴である。
【0023】
《親水性重合体》
本発明にかかわる水溶性重合体は、親水性の天然高分子及び合成高分子から選ばれる。
【0024】
本発明に好ましく用いられる水溶性重合体の具体例としては、天然高分子では、水溶性大豆多糖類の如き多糖類、合成高分子では、ポリビニルアルコール(好ましくは鹸化度70モル%以上のもの)、ポリ(メタ)アクリル酸とその金属塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩またはアミン塩、マレイン酸/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ポリビニルメチルエーテル、及び、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩またはアミン塩等のポリスルホン酸を挙げることができる。
【0025】
これらの中で好ましいのは、合成高分子であり、更に好ましいのはポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸である。また、目的に応じて、これらを二種以上混合して用いることもできる。
【0026】
水溶性重合体の好適な添加量は、画像形成層の全固形分の0.5〜40質量%であり、好ましくは1〜30質量%、更に好ましくは1〜20質量%である。0.5質量%未満では水溶性重合体の効果が発揮できず、刷り出し損紙が多くなる。また40質量%より多いと耐刷性が劣化する。
【0027】
《架橋剤》
本発明において、印刷時の傷つき防止および画像強度を向上させるために、画像形成層に親水性重合体を熱架橋しうる架橋剤を含有することが好ましい。
【0028】
親水性重合体を熱架橋しうる架橋剤としては、架橋性を有する多官能性化合物が挙げられ、エポキシ化合物、ポリアミン化合物、イソシアネート化合物、シラン化合物、チタネート化合物、アルデヒド化合物、多価金属塩化合物、ヒドラジン等が挙げられる。
【0029】
エポキシ化合物の具体例としては、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール類またはそれらの水素添加物とエピハロヒドリンとのポリ縮合物等が挙げられる。
【0030】
ポリアミン化合物の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン等が挙げられる。
【0031】
イソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、液状ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、またポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物等が挙げられる。
【0032】
シラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
チタネート化合物としては、テトラエチルオルトシリケート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリアクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピル(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルトリインステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリジシルホスファイト)チタネート、テトラ(2、2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。
【0034】
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。
【0035】
多価金属塩化合物としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、コバルト、マンガン、ニッケル等の金属の水溶性塩が挙げられる。
【0036】
上記の挙げた架橋剤の中でも、特に、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、シラン化合物、アルデヒド化合物、多価金属塩化合物が好ましく用いられる。
【0037】
これらの架橋剤は単独または2種以上を混合して使用することが可能である。これらの架橋剤のうち特に好ましい架橋剤は、水溶性の架橋剤であるが、非水溶性のものは分散剤によって水に分散して使用することができる。
【0038】
特に好ましい親水性重合体と架橋剤の組み合わせとしては、カルボン酸含有親水性重合体/多価金属化合物、カルボン酸含有親水性重合体/エポキシ化合物、水酸基含有親水性重合体/ジアルデヒド類、水酸基含有親水性重合体/イソシアネート化合物が挙げられる。架橋剤の好適な添加量は、親水性重合体の1〜20質量%である。
【0039】
《熱溶融性微粒子、熱融着性粒子》
(熱溶融性微粒子)
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40℃以上120℃以下、融点60℃以上150℃以下であることが好ましく、軟化点40℃以上100℃以下、融点60℃以上120℃以下であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が150℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0040】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800〜10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるためにこれらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミド又はこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミドなどを添加することも可能である。又、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0041】
これらの中でも、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス、脂肪酸アミドの何れかを含有することが好ましい。特に脂肪酸アミドが優れている。融点が80〜100℃、溶融粘度が5〜100mPa・S(25℃)で着肉感度が高い。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。又、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0042】
又、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な構造を有する親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0043】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0044】
構成層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0045】
(熱融着性微粒子)
本発明に係わる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、該熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子の軟化温度に特定の上限はないが、温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000の範囲であることが好ましい。
【0046】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0047】
高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法又は気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水又は水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。又、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させても良い。
【0048】
又、熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱融着性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した場合には、熱融着性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱融着性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0049】
又、熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、もしくは異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0050】
構成層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0051】
画像形成層の乾燥塗布質量は好ましくは0.10〜1.50g/m2、より好ましくは0.15〜1.00g/m2である。
【0052】
《光熱変換剤》
本発明に係る画像形成層には、光熱変換剤を含有する。
【0053】
光熱変換剤としては下記のような素材を添加することができる。
(赤外吸収色素)
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、特開昭64−33547号、特開平1−160683号、特開平1−280750号、特開平1−293342号、特開平2−2074号、特開平3−26593号、特開平3−30991号、特開平3−34891号、特開平3−36093号、特開平3−36094号、特開平3−36095号、特開平3−42281号、特開平3−97589号、特開平3−103476号の各公報等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
(顔料)
顔料としては、カーボンブラック、グラファイト、金属、金属ホウ化物、金属炭化物、金属窒化物、金属炭窒化物、金属酸化物等が挙げられる。
【0055】
カーボンブラックとしては、特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0056】
(グラファイト)
グラファイトとしては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0057】
(金属)
金属としては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0058】
(金属酸化物)
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。前者としては、黒色酸化鉄(Fe3O4)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。後者とては、例えば、SbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。又、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0059】
これらの光熱変換素材のうち、二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物がより好ましい素材として挙げられ、具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号公報、特開平9−25126号公報、特開平9−237570号公報、特開平9−241529号公報、特開平10−231441号公報等に開示されている方法により製造することができる。
【0060】
本発明に用いる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号公報に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。
【0061】
これらの複合金属酸化物は、平均一次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均一次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。したがって、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均一次粒子径が0.01μm未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
【0062】
これらの光熱変換剤の添加量としては、0.1〜50質量%であり、1〜30質量%が好ましく、1〜25質量%がより好ましい。0.1質量%未満では十分な熱量を発することが出来ず、50%質量%を越えると熱過剰となり画像形成層がアブレーション破壊されてしまうことがある。
【0063】
《可視画性の付与》
通常、印刷業界においては、印刷材料に画像形成した印刷版を印刷する前に、正しく画像が形成されているかを検査する検版という作業がある。検版をするためには、印刷前に形成された画像が版面上で見える性能、つまり可視画性が良いことが好ましい。本発明の印刷版材料は、現像処理なしに印刷可能なプロセスレス印刷版材料なので、露光することによる光または熱によって露光部分または未露光部分の光学濃度が変化することが好ましい。
【0064】
本発明において好ましく用いられる方法としては、露光することにより光学濃度が変化するシアニン系赤外線吸収色素を含有させる方法、光酸発生剤とその酸により変色する化合物を用いる方法、ロイコ色素のような発色剤と顕色剤を組み合わせて用いる方法などがある。なお、光酸発生剤とは、露光によってルイス酸やブレンステッド酸を生成する化合物を意味する。
【0065】
光酸発生剤の具体例としては、ジアゾ化合物、オルトキノンジアジド化合物、ポリハロゲン化合物、オニウム塩化合物などが挙げられる。またこれらの構造をポリマーに組み込んだ化合物を用いることもできる。
【0066】
ジアゾ化合物としては、例えば、米国特許2,063,631号明細書、米国特許2,667,415号明細書などに開示されているジアゾニウム塩とアルドールやアセタールなどの反応性カルボニル基を含有する有機結合剤との反応生成物であるジフェニルアミン−p−ジアゾニウム塩とフォルムアルデヒド縮合生成物、またこれらの水溶性ジアゾニウム塩化合物を特開昭54−98613号公報に開示された方法により、BF4 -、PF6 -などのアニオン成分などで置換したハロゲン化ルイス酸塩、アリルジアゾニウム塩化合物などが挙げられる。
【0067】
オルトキノンジアジド化合物としては、1分子中に少なくともひとつのオルトキノンジアジド基を有する化合物で、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−エチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−イソブチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−α−ナフチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−ベンジルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−エチルアミド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルアミドなどが挙げられる。
【0068】
ポリハロゲン化合物としては、ポリハロゲンを含むアセトフェノン、例えばトリブロモアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、o−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、p−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ブロモ−トリブロモアセトフェノン、p−ブロモ−トリブロモアセトフェノンなど、また、ポリハロゲンを含むスルフォキサイド、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォキサイド、ジブロモメチル−トリブロモメチルスルフォキサイド、トリブロモメチル−フェニルスルフォキサイドなど、またポリハロゲンを含むスルフォン、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォン、トリクロロメチル−フェニルスルフォン、トリブロモメチル−フェニルスルフォン、トリクロロメチル−p−クロロフェニルスルフォン、トリブロモメチル−p−ニトロフェニルスルフォン2−トリクロロメチルベンゾチアゾールスルフォン、2,4−ジクロロフェニル−トリクロロメチルスルフォンなど、その他ポリハロゲンを含むピロン化合物、トリアジン化合物、オキサジアゾール化合物などが挙げられる。
【0069】
オニウム塩化合物およびその他の光酸発生剤としては、S.P.Papas,et al.,Polym.Photochem.,5,1,p104〜115(1984)に記載されているオニウム塩化合物、また色材,66(2),p104〜115(1993)に紹介されている、Ph2I+/SbF6 -等のジアリルヨードニウム塩化合物に代表される光酸発生剤、トリアリルスルフォニウム塩化合物、トリアリルセレノニウム塩化合物、ジアルキルフェナシルスルフォニウム塩化合物、ジアルキル−4−フェナシルスルフォニウム塩化合物、α−ヒドロキシメチルベンゾインスルフォン酸エステル、N−ヒドロキシイミノスルフォネート、α−スルフォニロキシケトン、β−スルフォニロキシケトン、鉄−アレーン錯体化合物(ベンゼン−シクロペンタジエニル−鉄(II)ヘキサフルオロフォスフェートなど)、o−ニトロベンジルシリルエーテル化合物、ベンゾイントシレート、トリ(ニトロベンジル)フォスフェートなどが挙げられる。
【0070】
その他に、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩、有機ハロゲン化合物、o−ニトロベンジル誘導体、イミノスルホネート及びジスルホン化合物等を挙げることができる。
【0071】
さらに具体的には、例えば、特開平9−244226号公報「化7」〜「化9」に記載のT−1〜T−15の式で示される化合物を挙げることができる。
【0072】
これらの中、より好ましいものはトリハロメチル基を2個以上有するs−トリアジン化合物であり、特に好ましくはトリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。
【0073】
これら光酸発生剤の含有量は、印刷版材料の全固形分に対し、0.01〜40質量%、好ましくは0.1〜30質量%である。
【0074】
本発明において、酸によって変色する化合物としては、例えばジフェニルメタン、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0075】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH(保土ケ谷化学社製)、オイルブルー#603(オリエント化学工業社製)、オイルピンク#312(オリエント化学工業社製)、オイルレッド5B(オリエント化学工業社製)、オイルスカーレット#308(オリエント化学工業社製)、オイルレッドOG(オリエント化学工業社製)、オイルレッドRR(オリエント化学工業社製)、オイルグリーン#502(オリエント化学工業社製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土ケ谷化学工業社製)、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボステアリルアミノ−4−p−ジヒドロオキシエチルアミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等が挙げられる。
【0076】
また、酸で発色する化合物としてアリールアミン類の有機染料を用いることができる。この目的に適するアリールアミン類としては、第一級、第二級芳香族アミンのような単なるアリールアミンのほかにいわゆるロイコ色素も含まれ、これらの例としては次のようなものが挙げられる。
【0077】
ジフェニルアミン、ジベンジルアニリン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、p−トルイジン、4,4′−ビフェニルジアミン、o−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、o−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、アニリン、2,5−ジクロロアニリン、N−メチルジフェニルアミン、o−トルイジン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメタン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、1,2−ジアニリノエチレン、p,p′,p″ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、p,p′−テトラメチルジアミノトリフェニルメタン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメチルイミン、p,p′,p″−トリアミノ−o−メチルトリフェニルメタン、p,p′,p″−トリアミノトリフェニルカルビノール、p,p′−テトラメチルアミノジフェニル−4−アニリノナフチルメタン、p,p′,p″−トリアミノフェニルメタン、p,p′,p″−ヘキサプロピルトリアミノトリフェニルメタン等。
【0078】
本発明において、顕色剤としては、感熱記録体において電子受容体として使用される酸性物質がいずれも使用でき、例えば酸性白土カオリン、ゼオライト等の無機酸、芳香族カルボン酸、その無水物又はその金属塩類、有機スルホン酸、その他の有機酸、フェノール系化合物、該フェノール系化合物のメチロール化物、該フェノール系化合物の塩又は錯体等の有機系顕色剤などが挙げられ、なかでもフェノール系化合物のメチロール化物およびフェノール系化合物の塩(以下、特に断りのないかぎり錯塩も含む)が好ましい。
【0079】
これら顕色剤のうち、有機系顕色剤の具体例としては、フェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシアセトフェノン、2,2′−ジヒドロキシジフェニル、2,2′−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−イソプロピリデンジフェノール(別名ビスフェノールA)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4′エチレンビス(2−メチルフェノール)、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ヘプタン、4,4′−シクロヘキシリデンビス(2−イソプロピルフェノール)、4,4′−スルホニルジフェノール等のフェノール系化合物、該フェノール系化合物のメチロール化物、該フェノール系化合物の塩サリチル酸アニリド、ノボラック型フェノール樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
【0080】
本発明においては、顕色剤とともに用いられる発色剤としては、トリフェニルメタンラクトン型などのロイコ色素を用いることができる。このようなロイコ色素としては、例えば、クリスタルバイオレットラクトン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノフルオラン、マラカイトグリーンラクトン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルドール−3−イル)フタリド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオランなどが挙げられる。
【0081】
上記発色剤と顕色剤は、顕色剤/発色剤の質量比が0.1/1〜5/1となる範囲で通常用いるが、なかでも該質量比が0.5/1〜3/1となる範囲が好ましい。
【0082】
〔親水性オーバーコート層〕
本発明において、画像形成層の上層に親水性オーバーコート層を有することが好ましい。親水性オーバーコート層は画像形成層のすぐ上の層であってもよいし、また画像形成層と親水性オーバーコート層の間に中間層が設けられてもよい。親水性オーバーコート層は印刷機上で除去可能であることが好ましい。
【0083】
本発明において親水性オーバーコート層は、水溶性樹脂又は水溶性樹脂を部分的に架橋した水膨潤性樹脂を含有することが好ましい。
【0084】
かかる水溶性樹脂は、水溶性の天然高分子及び合成高分子から選ばれ、架橋剤とともに用い、塗布乾燥された皮膜がフィルム形成能を有するものである。本発明に好ましく用いられる水溶性樹脂の具体例としては、天然高分子では、アラビアガム、水溶性大豆多糖類、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ等)、その変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等、合成高分子では、ポリビニルアルコール(ポリ酢酸ビニルの加水分解率65%以上のもの)、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリアクリル酸共重合体、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリアクリルアミド、その共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、その共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩もしくはアミン塩、等を挙げることができる。また、目的に応じて、これらの樹脂を二種以上混合して用いることもできる。しかし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0085】
水溶性樹脂の少なくとも1種以上を部分架橋し、親水層上にオーバーコート層を形成する場合、架橋は、水溶性樹脂の有する反応性官能基を用いて架橋反応することにより行われる。架橋反応は、共有結合性の架橋であっても、イオン結合性の架橋であってもよい。
【0086】
架橋により、オーバーコート層表面の粘着性が低下して取り扱い性がよくなるが、架橋が進み過ぎるとオーバーコート層が親油性に変化して、印刷機上におけるオーバーコート層の除去が困難になるので、適度な部分架橋が好ましい。好ましい部分架橋の程度は、25℃の水中に印刷用材料を浸したときに、30秒〜10分間では親水性オーバーコート層が溶出せず残存しているが、10分以上では溶出が認められる程度である。
【0087】
架橋反応に用いられる化合物(架橋剤)としては、架橋性を有する公知の多官能性化合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ポリアミン化合物、ポリイソシアネート化合物、シラン化合物、チタネート化合物、アルデヒド化合物、多価金属塩化合物、ヒドラジンなどが挙げられる。該架橋反応は公知の触媒を添加し、反応を促進することもできる。具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0088】
ポリエポキシ化合物の具体例としては、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール類もしくはそれらの水素添加物とエピハロヒドリンとのポリ縮合物、などが挙げられる。
【0089】
ポリアミン化合物の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミンなどが挙げられる。
【0090】
ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、液状ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、などの芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、またポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などが挙げられる。
【0091】
シラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、など。
【0092】
チタネート化合物としては、テトラエチルオルトシリケート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリアクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピル(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルトリインステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリジシルホスファイト)チタネート、テトラ(2、2ージアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、など。
【0093】
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、など。
【0094】
多価金属塩化合物としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、コバルト、マンガン、ニッケル等の金属の水溶性塩が挙げられる。
【0095】
これらの架橋剤は単独または2種以上を混合して使用することが可能である。これらの架橋剤のうち特に好ましい架橋剤は、水溶性の架橋剤であるが、非水溶性のものは分散剤によって水に分散して使用することができる。
【0096】
特に好ましい水溶性樹脂と架橋剤の組み合わせとしては、カルボン酸含有水溶性樹脂/多価金属化合物、カルボン酸含有水溶性樹脂/水溶性エポキシ樹脂、水酸基含有樹脂/ジアルデヒド類を挙げられる。
【0097】
架橋剤の好適な添加量は、水溶性樹脂の2〜10質量%である。この範囲内で印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、良好な耐水性が得られる。
【0098】
本発明においては、親水性オーバーコート層は、前記した光熱変換剤を含有することが出来る。
【0099】
その他、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。この様な非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることができる。上記非イオン界面活性剤のオーバーコート層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
【0100】
本発明において、オーバーコート層の乾燥塗布量は、0.1〜0.4g/m2が好ましく、更に好ましい範囲は0.15〜0.25g/m2である。この範囲内で、印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、良好な汚れ防止、傷付き防止、指紋跡付着防止およびアブレーションカスの発生低減ができる。
【0101】
〔画像形成〕
本発明の印刷版材料の態様においては、画像形成は、熱により行うことができるが、特に赤外線レーザによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0102】
本発明に関する露光に関し、より具体的には、赤外及び/又は近赤外領域で発光する、すなわち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザを使用した走査露光が好ましい。レーザとしてはガスレーザを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザを使用することが特に好ましい。
【0103】
走査露光に好適な装置としては、半導体レーザを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0104】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザビームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザビームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザビームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式があげられる。
【0105】
本発明に関しては、特に(3)記載の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)記載の露光方式が用いられる。
【0106】
〔支持体の構成〕
本発明に用いられるアルミニウム支持体は、純アルミニウムを用いたアルミニウム支持体材料又はアルミニウム合金を用いたアルミニウム支持体材料から得られる。該アルミニウム合金を用いたアルミニウム支持体材料には、例えば珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムとの合金が用いられ、該アルミニウム支持体の表面は大きなうねりに小ピットが重畳された二重構造の粗面形状を有しているものが好ましい。
【0107】
また、上記アルミニウム支持体の表面の大きなうねりの平均開孔径d2(μm)は3μmを越え、20μm以下とするのが好ましく、該大きなうねりの平均開孔径が上記範囲外の場合はやはり残膜や、指紋汚れを生じ易くなる。
【0108】
〈支持体の処理〉
アルミニウム支持体を得るための上記アルミニウム支持体材料は、強固な汚れや自然酸化皮膜を除去する等のため、苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いて溶解処理が行われ、溶解処理後の残留アルカリ成分を中和するため、燐酸、硝酸、硫酸、塩酸、クロム酸等の酸或いはそれらの混酸に浸漬して中和処理が行われる。なお、必要により上記アルミニウム支持材料表面の油脂、錆、ごみなどを除去するため、トリクレン、シンナー等による溶剤脱脂、ケロシン、トリエタノール等のエマルジョンを用いてエマルジョン脱脂処理を行ってもよい。
【0109】
上記アルカリ水溶液を用いた溶解処理及び酸による中和処理の次には後記電気化学的粗面化処理が行われるが、中和処理に使用する酸の種類および組成を電気化学的粗面化処理に使用する酸の種類に合わせることが特に好ましい。
【0110】
上記アルカリ水溶液を用いた溶解処理に先だって、機械的粗面化処理が行われてもよい。機械的粗面化処理の方法は特に限定されないが、ブラシ研磨、ホーニング研磨が好ましい。ブラシ研磨では、例えば毛径0.2〜1mmのブラシ毛を植毛した円筒状ブラシを回転し、接触面に研磨材を水に分散させたスラリーを供給しながらアルミニウム支持体材料表面に押しつけて粗面化処理を行う。ホーニング研磨では、研磨材を水に分散させたスラリーをノズルより圧力をかけて射出し、アルミニウム支持体材料表面に斜めから衝突させて粗面化処理を行う。さらに、予め粗面化処理されたシートをアルミニウム支持体材料表面に張り合わせ、圧力をかけて粗面パターンを転写することにより機械的粗面化処理を行うこともできる。
【0111】
なお、上記機械的粗面化処理を行う場合は、特に上記溶剤脱脂処理又はエマルジョン脱脂処理を省略することができる。
【0112】
上記(必要により脱脂処理)アルカリ溶解処理及び酸による中和処理を行った後、アルミニウム支持体材料の表面は酸性電解液中で交流電流を用いて電気化学的粗面化処理が行われる。本発明では該酸性電解液中での電気化学的粗面化処理の過程で0.6〜5秒の休止時間を設け、かつ1回の電気化学的粗面化処理の電気量を100C/dm2以下とすることを必須の要件としている。上記のように電気化学的粗面化処理を複数回に分けて行う場合は、上記休止時間が0.6秒未満で、かつ1回の電気化学的粗面化処理の電気量が150C/dm2を越えると開孔径が20μmより大きい粗大ピットの生成を抑制することができず、また、上記休止時間が5秒を越えるとアルミニウム支持体の製造に時間がかかり過ぎて生産性が悪くなる。
【0113】
上記電気化学的粗面化処理の電解液としては、塩酸、硝酸等が用いられるが、塩酸がより好ましい。電解液には、必要に応じて硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、蓚酸等を加えることができるが、酢酸が特に好ましい。電気化学的粗面化処理において印加される電圧は、1〜50Vが好ましく、5〜30Vが更に好ましい。電流密度(ピーク値)は、10〜200A/dm2が好ましく、20〜150A/dm2が更に好ましい。電気量は、全処理工程を合計して100〜2000C/dm2が好ましく、200〜1000C/dm2が更に好ましい。温度は、10〜50℃が好ましく、15〜45℃が更に好ましい。
【0114】
また、塩酸濃度は0.1〜5質量%が好ましく、電解に使用する電流波形は正弦波、矩形波、台形波、鋸歯状波等、求める粗面化形状により適宜選択されるが、特に正弦波が好ましい。電気化学的粗面化処理されたアルミニウム支持体材料は、表面のスマット等を除去したり、粗面のピット形状をコントロールする等のために酸またはアルカリの水溶液に浸漬して表面のエッチング処理が行われる。上記酸としては、例えば硫酸、過硫酸、フッ酸、燐酸、硝酸、塩酸等が含まれ、上記アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が含まれる。これらの中でも、アルカリの水溶液を用いるのが好ましく、該アルカリの0.05〜40%水溶液を用い20〜90℃の液温において5秒〜5分処理するのがよく、該アルカリの水溶液で表面をエッチングした後に、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、或いはそれらの混酸に浸漬して中和処理が行なわれる。
【0115】
上記中和処理が行われたアルミニウム支持体材料はさらに陽極酸化処理されて本発明のアルミニウム支持体が得られる。ここで、中和に使用する酸の種類を陽極酸化処理に使用する酸のそれに合わせることが特に好ましい。
【0116】
上記陽極酸化処理に用いられる電解液としては多孔質酸化皮膜を形成するものであれば如何なる電解液でもよいが、一般には硫酸、燐酸、蓚酸、クロム酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等、或るいはこれらの2種類以上を組み合わせた混酸が用いられる。陽極酸化の処理条件は使用する電解液により種々変化するので一概に特定することはできないが、一般的には、電解液の濃度が1〜80質量%、温度5〜70℃、電流密度1〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲が適当である。好ましいのは硫酸法で、通常直流電流で処理が行われるが、交流を用いることもできる。ここで、硫酸の濃度は10〜50質量%、温度20〜50℃、電流密度1〜20A/dm2で10秒〜5分間電解処理されるのが好ましく、また電解液中にはアルミニウムイオンが含まれているのが好ましい。
【0117】
上記陽極酸化されたアルミニウム支持体を処理してその表面の親水性を改良してもよい。例えばアルミニウム支持体の表面をケイ酸ナトリウム溶液、リン酸塩溶液、炭酸水素ナトリウム溶液、または有機酸で処理することで、支持体表面の親水性を改良でき、特に有機酸が優れた特性を示す。有機酸としてはクエン酸、シュウ酸、フタル酸、ギ酸、フィチン酸、ヘキサフルオロ燐酸アンモニウム等があげられるが、特に好ましくはクエン酸である。これらの酸を用いることにより印刷時に湿し水供給量を減らしても、汚れず良好な印刷物が得られる。処理は室温で行なってもよく、40〜70℃に加熱し処理しても良い。
【0118】
上記陽極酸化処理して得られたアルミニウム支持体は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム塩処理等の公知の方法を用いて行うことができる。
【0119】
これまの後処理は、単独で行なっても良いし、複数を組み合わせで行なっても良い。
【0120】
上記陽極酸化処理あるいは陽極酸化処理に引き続いて封孔処理して得られたアルミニウム支持体には親水性層を設けてもよい。親水性層の形成には、米国特許第3,181,461号明細書に記載のアルカリ金属珪酸塩、米国特許第1,860,426号明細書に記載の親水性セルロース、特公平6−94234号公報、特公平6−2436号公報に記載のアミノ酸及びその塩、特公平5−32238号公報に記載の水酸基を有するアミン類及びその塩、特開昭62−19494号公報に記載の燐酸塩、特開昭59−101651号公報に記載のスルホ基を有するモノマー単位を含む高分子化合物等を用いることができる。
【0121】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明の態様はこれらに限定されるわけではない。なお、文中「部」とは「質量部」を表す。
【0122】
実施例1
〈支持体作製〉
支持体の製造
0.25mm厚さのアルミニウム基材を、5g/lの水酸化ナトリウムを含有する水溶液中に50℃において浸漬することにより基材を脱脂し、そして脱塩水ですすいだ。
【0123】
次に基材を4g/lの塩酸、4g/lのヒドロホウ酸(Hydrohoricacid)および0.5g/lのアルミニウムイオンを含有する水溶液中で、35℃の温度および電流密度1200A/m2の交流電流を用いて、電気化学的に粒状化し、0.5μmの平均中心線粗さRaを有する表面トポロジーを形成した。
【0124】
アルミニウム基材を脱塩水ですすいだ後に、300g/lの硫酸を含有する水溶液で60℃において180秒間エッチングし、その後脱塩水で25℃において30秒間すすいだ。
【0125】
次に、基材を200g/lの硫酸を含有する水溶液中で、45℃の温度、約10Vの電圧および150A/m2の電流密度において、約300秒間にわたり陽極酸化にかけて、3g/m2のAl2O3の陽極酸化フィルムを形成した。
【0126】
続いて脱塩水で洗浄し、20g/lの炭酸水素ナトリウムを含有する溶液で40℃において30秒間にわたり後処理し、次に25℃の脱塩水で120秒間すすいで後乾燥した。
【0127】
得られた平版ベースを5質量%のクエン酸を含有する水溶液中に70℃、60秒間にわたり浸漬し、25℃の脱塩水ですすいだ後乾燥して支持体を作製した。
【0128】
上記画像形成層塗布液を、上記で作製したアルミニウム支持体(基材)に、ワイヤーバー#10を用いて乾燥付量が1.5g/m2となるように塗布し、30mの長さの60℃に設定された乾燥ゾーンを搬送スピード15m/分の速度で通過させ、更に、50℃で3分間乾燥して赤外線レーザ露光用である印刷版材料001〜012を各々作製した。
【0129】
【表1】
【0130】
(表中、「%」は固形分濃度を示す。)
【0131】
【化1】
【0132】
〈印刷版材料001〜012の評価〉
(a)赤外線レーザ方式による画像形成
上記の印刷版材料001〜012を各々露光ドラムに巻付け固定した。露光には、波長830nm、スポット径約18μmのレーザビームを用い、露光エネルギーを300mJ/cm2とした条件で、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成し、印刷版101〜112を各々作製した。
【0133】
(b)上記の印刷版101〜112について、下記の印刷方法により、印刷版としての諸特性を評価した。
【0134】
〈評価方法〉
印刷装置として、三菱重工業社製のDAIYA1F−1を用いて、コート紙と、湿し水としてアストロマーク3(日研化学研究所社製)の2質量%溶液、インクとして、東洋インク社製のトーヨーキングハイエコーM紅を使用して各水準それぞれ3万枚の印刷を行った。
【0135】
《刷りだし評価》
刷り出し時、良好なS/N比(非画像部に地汚れが無く、画像形成層の非画像部が印刷機上で除去され、かつ、画像部の濃度が適正範囲となっている)を有した印刷物が得られるまでの印刷枚数(損紙)を評価した。枚数が少ないほど優れている。40枚以上では実用上問題がある。
【0136】
《耐刷性の評価》
印刷した画像の3%の小点の欠落、またはベタ部の濃度低下のいずれかが確認された段階で耐刷終点としその枚数を求めた。
【0137】
以上により得られた結果を表2に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
表2から明らかな如く、本発明内のもの(印刷版No.103〜112)は、発明外のもの(印刷版No.101、102の比較)より格段に特性が良いことがわかる。
【0140】
【発明の効果】
本発明により、露光後、現像処理を行うことなく印刷することが出来る平版印刷用材料における、耐刷性が改良され、しかも印刷開始時の損紙が少ない平版印刷用材料とそれを用いた印刷版を提供することが出来る。
Claims (7)
- 粗面化処理および陽極酸化が施されたアルミニウム支持体上に、熱融着性または熱溶融性の少なくともいずれかを有する微粒子分散体と、光熱変換剤を含む画像形成層を有する印刷版材料において、該画像形成層に、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸とその金属塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩またはアミン塩、マレイン酸/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ポリビニルメチルエーテル、ポリスルホン酸、多糖類よりなる群から選択される少なくとも1種の親水性重合体を含有することを特徴とする印刷版材料。
- 前記親水性重合体の少なくとも一部を架橋し得る架橋剤により架橋されていることを特徴とする請求項1に記載の印刷版材料。
- 前記熱溶融性または熱融着性微粒子が脂肪酸アミドを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の印刷版材料。
- 前記光熱変換剤が赤外吸収色素、カーボンブラック、金属ホウ化物、金属炭化物、金属窒化物、金属炭窒化物、金属酸化物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の印刷版材料。
- 前記アルミニウム支持体が陽極酸化後に、有機酸水溶液で後処理されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の印刷版材料。
- 前記画像形成層のさらに上層に親水性オーバーコート層を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の印刷版材料。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の印刷版材料を露光し、特に現像処理することなしに作製されたことを特徴とする印刷版。
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