JP2004098376A - 印刷版材料及び印刷方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】印刷性能、特に刷り出し性や汚し回復性、及び画像形成前の印刷版材料の保存性が改良された印刷版材料及びこれを用いた印刷方法を提供すること。
【解決手段】粗面化処理及び陽極酸化処理が施されたアルミニウム支持体上に、熱溶融性または熱融着性微粒子、及び親水性結合材を熱架橋しうる架橋剤を含有する画像形成機能層を少なくとも1層有することを特徴とする印刷版材料。
【選択図】 なし
【解決手段】粗面化処理及び陽極酸化処理が施されたアルミニウム支持体上に、熱溶融性または熱融着性微粒子、及び親水性結合材を熱架橋しうる架橋剤を含有する画像形成機能層を少なくとも1層有することを特徴とする印刷版材料。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷版材料及び印刷方法に関し、特にコンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能な印刷版材料及び印刷方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷データのデジタル化に伴い、安価で取扱いが容易でPS版と同等の印刷適性を有したCTPが求められている。特に近年、特別な薬剤による現像液処理が不要な、いわゆるプロセスレス印刷版への期待が高まっている。
【0003】
プロセスレス印刷版の画像形成方式の一つとして有力なのが、赤外線レーザー記録であり、これは大きく分けて、後述するアブレーションタイプと熱融着画像層機上現像タイプ及び熱溶融転写タイプの3種の記録方法が存在する。
【0004】
アブレーションタイプとしては、例えば、特開平8−507727号、同6−186750号、同6−199064号、同7−314934号、同10−58636号、同10−244773号に記載されているものである。これらは、例えば、支持体上に親水性層と親油性層とを有し、いずれかの層を表層として積層したものである。表層が親水性層であれば、画像様に露光し、親水性層をアブレートさせて画像様に除去して親油性層を露出することで画像部を形成することができる。ただし、アブレートした表層の飛散物による露光装置内部の汚染が問題となるため、親水性層上にさらに水溶性の保護層を設けて、アブレートした表層の飛散を防止し、印刷機上で保護層とともにアブレートした表層を除去する方式も提案されている。
【0005】
熱融着画像層機上現像タイプとしては、親水性層またはアルミ砂目上に、画像形成層に熱可塑性微粒子と水溶性の結合剤とを用いたものが挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。しかし、親水性支持体としてアルミ砂目を用いた場合には、光熱変換素材(一般的には可視光にも着色している)を画像形成層に添加する必要があり、現像した際に印刷機を汚染する懸念があるため、層構成としては支持体上に光熱変換素材を含有した親水性層を形成したものを使用して、画像形成層からは光熱変換素材を除いたものの方が有利である。
【0006】
また、熱溶融転写方式としては、例えば、マンローランド社のDICOwebのような熱転写リボンを用いて、アルミ砂目ではなく、繰り返し使用可能な親水性表面を有する金属スリーブに熱溶融素材を画像様に転写した後、加熱して画像を定着させる方法が挙げられる。
【0007】
しかしながらこれらの従来技術では印刷性能、特に刷り出し性や汚し回復性が不十分であり、画像形成前に印刷版材料を長期に保存する場合に性能が変化しやすいという欠点も有していた。
【0008】
【特許文献1】
特許2938397号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、印刷性能、特に刷り出し性や汚し回復性、及び画像形成前の印刷版材料の保存性が改良された印刷版材料及びこれを用いた印刷方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は下記構成により達成された。
【0011】
1.粗面化処理及び陽極酸化処理が施されたアルミニウム支持体上に、熱溶融性または熱融着性微粒子、及び親水性結合材を熱架橋しうる架橋剤を含有する画像形成機能層を少なくとも1層有することを特徴とする印刷版材料。
【0012】
2.アルミニウム支持体をさらにアルカリ金属珪酸塩で処理することを特徴とする上記1に記載の印刷版材料。
【0013】
3.アルミニウム支持体が、大きなうねりに小ピットが重畳された2重構造の粗面形状を有し、かつ小ピットの平均開孔径d1(μm)が0.1〜3μmで、小ピットの平均深さh(μm)と該平均開孔径d1(μm)の比h/d1が0.4以下であることを特徴とする上記1または2に記載の印刷版材料。
【0014】
4.アルミニウム支持体上に光熱変換素材を含有することを特徴とする上記1〜3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0015】
5.画像形成機能層の上層に親水性オーバーコート層を含有することを特徴とする上記1〜4のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0016】
6.上記1〜5のいずれか1項に記載の印刷版材料にサーマルヘッドまたはサーマルレーザーを用いて画像形成した後、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去する工程を有することを特徴とする印刷方法。
【0017】
7.上記1〜5のいずれか1項に記載の印刷版材料にサーマルヘッドまたはサーマルレーザーを用いて画像形成した後、印刷を行う印刷方法において、像形成後から、印刷機上で印刷版材料表面と水供給ローラーまたはインク供給ローラーとが接触するまでに、印刷版材料の表面を乾燥させる工程を有することを特徴とする印刷方法。
【0018】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明者は鋭意研究の結果、粗面化処理及び陽極酸化処理が施されたアルミニウム支持体上の、熱溶融性または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層に、親水性結合材を熱架橋しうる架橋剤を含有することにより、印刷性能、特に刷り出し性や汚し回復性、及び画像形成前の印刷版材料の保存性が改良された印刷版材料を得ることを見出した。
【0019】
これらの効果に対する本発明の親水性結合材を熱架橋しうる架橋剤の機能については十分には解明されていない。
【0020】
また、本発明の効果をより発現するためには、上記アルミニウム支持体をさらにアルカリ金属珪酸塩で処理すること、上記アルミニウム支持体の表面が特定の粗面形状を有すること、上記アルミニウム支持体上に光熱変換素材を含有すること、画像形成機能層の上層に親水性オーバーコート層を含有することが好ましい。
【0021】
本発明に係る熱溶融性または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層には、以下のような素材を含有させることができる。
【0022】
(熱溶融性微粒子)
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40〜120℃、融点60〜150℃であることが好ましく、軟化点40〜100℃、融点60〜120℃であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が300℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0023】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800〜10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基等の極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるために、これらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミドまたはこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミド等を添加することも可能である。また、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0024】
これらの中でも、ポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。また、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0025】
また、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0026】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、または異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0027】
画像形成機能層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0028】
(熱融着性微粒子)
本発明に用いられる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、熱可塑性疎水性高分子重合体粒子の軟化温度に特定の上限はないが、軟化温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000であることが好ましい。
【0029】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0030】
高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法または気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水または水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。
【0031】
また、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させてもよい。
【0032】
また、熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0033】
また、熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、または異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0034】
画像形成機能層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0035】
(水溶性素材)
本発明に係る熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層には、さらに水溶性素材を含有することができる。水溶性素材を含有することにより、印刷機上で湿し水やインクを用いて未露光部の画像形成機能層を除去する際に、その除去性を向上させることができる。
【0036】
水溶性素材としては、水溶性樹脂を用いることもできるが、本発明の画像形成機能層としては、糖類を用いることが好ましく、特にオリゴ糖を用いることが好ましい。オリゴ糖は水に速やかに溶解するため、印刷装置上での未露光部の画像形成機能層の除去も非常に速やかとなり、特別な除去操作を意識することなく、通常のPS版の刷出し操作と同様の操作で刷出すことで除去可能であり、刷出しの損紙が増加することもない。また、オリゴ糖は親水性層の親水性を低下させる懸念もなく、親水性層の良好な印刷適性を維持することができる。オリゴ糖は水に可溶の一般に甘みを有する結晶性物質で、数個の単糖がグリコシド結合によって脱水縮合したものである。オリゴ糖は糖をアグリコンとする一種のo−グリコシドであるから、酸で容易に加水分解されて単糖を生じ、生成する単糖の分子数によって二糖、三糖、四糖、五糖等に分類される。本発明におけるオリゴ糖とは、二糖〜十糖までのものをいう。
【0037】
これらのオリゴ糖は、還元基の有無によって、還元性オリゴ糖と非還元性オリゴ糖とに大別され、また単一の単糖から構成されているホモオリゴ糖と、2種類以上の単糖から構成されているヘテロオリゴ糖にも分類される。オリゴ糖は、遊離状または配糖類として天然に存在し、また多糖の酸または酵素による部分加水分解によっても得られる。この他酵素によるグリコシル転移によっても種々のオリゴ糖が生成する。
【0038】
オリゴ糖は通常雰囲気中では水和物として存在することが多い。また、水和物と無水物とでは融点が異なり、例を挙げると表1に示す通りである。
【0039】
【表1】
【0040】
本発明では、糖類を含有する層を水溶液で塗布形成することが好ましい。水溶液で塗布形成する場合は、層中に存在するオリゴ糖が水和物を形成するオリゴ糖であれば、その融点は水和物の融点であると考えられる。このように、比較的低融点を有しているため、熱溶融微粒子が溶融する温度範囲や熱融着微粒子が融着する温度範囲でオリゴ糖も溶融し、熱溶融微粒子の多孔質親水性層への溶融浸透や熱融着微粒子の融着といった画像形成を妨げることがない。
【0041】
オリゴ糖の中でもトレハロースは、比較的純度の高い状態のものが工業的に安価に入手可能であり、水への溶解度が高いにもかかわらず、吸湿性は非常に低く、機上現像性及び保存性共に非常に良好である。
【0042】
また、オリゴ糖水和物を熱溶融させて水和水を除去した後に凝固させると(凝固後短時間のうちは)無水物の結晶となるが、トレハロースは水和物よりも無水物の融点が100℃以上も高いことが特徴的である。これは赤外線露光で熱溶融し、再凝固した直後は露光済部は高融点で溶融しにくい状態となることを意味し、バンディング等の露光時の画像欠陥を起こしにくくする効果がある。本発明の目的を達成するには、オリゴ糖の中でも特にトレハロースが好ましい。
【0043】
画像形成機能層中のオリゴ糖の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がさらに好ましい。
【0044】
また本発明に係る画像形成機能層は、後述する光熱変換素材を含有させることが好ましい。
【0045】
画像形成機能層の乾燥塗布質量は好ましくは0.10〜0.75g/m2、より好ましくは0.15〜0.50g/m2である。
【0046】
(光熱変換素材)
本発明に係る画像形成機能層、親水性層及びその他に設けられる層には、光熱変換素材を含有することができる。
【0047】
光熱変換素材としては下記のような素材を添加することができる。
(赤外吸収色素)
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素等の有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体等が挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、同64−33547号、特開平1−160683号、同1−280750号、同1−293342号、同2−2074号、同3−26593号、同3−30991号、同3−34891号、同3−97589号、同3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
(顔料)
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては、特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0049】
(グラファイト)
グラファイトとしては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0050】
(金属)
金属としては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でもよい。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0051】
(金属酸化物)
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。前者としては、黒色酸化鉄(Fe3O4)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。後者としては、例えば、SbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)等が挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0052】
これらの光熱変換素材のうち、二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物がより好ましい素材として挙げられ、具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号、同9−25126号、同9−237570号、同9−241529号、同10−231441号等に開示されている方法により製造することができる。
【0053】
本発明に用いる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。
【0054】
これらの複合金属酸化物は、平均一次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均一次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。従って、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均一次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
【0055】
これらの複合金属酸化物の添加量としては、各層に対して0.1〜50質量%であり、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
【0056】
(親水性結合材)
本発明において、画像形成機能層に親水性結合材を含有することが特徴である。
【0057】
かかる親水性結合材は、親水性の天然高分子及び合成高分子から選ばれる。本発明に好ましく用いられる親水性結合材の具体例としては、天然高分子では、アラビアガム、水溶性大豆多糖類、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ等)、その変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等、合成高分子では、ポリビニルアルコール(好ましくは鹸化度70モル%以上のもの)、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリアクリル酸共重合体、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリアクリルアミド、その共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、その共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩またはアミン塩等を挙げることができる。また、目的に応じて、これらを二種以上混合して用いることもできる。しかし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0058】
(架橋剤)
本発明において、画像形成機能層に親水性結合材を熱架橋しうる架橋剤を含有することが特徴である。
【0059】
親水性結合材を熱架橋しうる架橋剤としては、架橋性を有する多官能性化合物が挙げられ、エポキシ化合物、ポリアミン化合物、イソシアネート化合物、シラン化合物、チタネート化合物、アルデヒド化合物、多価金属塩化合物、ヒドラジン等が挙げられる。
【0060】
エポキシ化合物の具体例としては、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール類またはそれらの水素添加物とエピハロヒドリンとのポリ縮合物等が挙げられる。また上記のうち水溶性エポキシ化合物は親水性結合材としても用いることができる。この場合の架橋剤は、架橋剤ハンドブック(大成社 昭和56年10月20日 初版第1刷)の352〜376頁に記載の化合物が好ましく用いることができる。
【0061】
ポリアミン化合物の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン等が挙げられる。
【0062】
イソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、液状ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、またポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物等が挙げられる。
【0063】
シラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。
【0064】
チタネート化合物としては、テトラエチルオルトシリケート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリアクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピル(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルトリインステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリジシルホスファイト)チタネート、テトラ(2、2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。
【0065】
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。
【0066】
多価金属塩化合物としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、コバルト、マンガン、ニッケル等の金属の水溶性塩が挙げられる。
【0067】
上記の挙げた架橋剤の中でも、特に、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、シラン化合物、アルデヒド化合物、多価金属塩化合物が好ましく用いられる。
【0068】
これらの架橋剤は単独または2種以上を混合して使用することが可能である。これらの架橋剤のうち特に好ましい架橋剤は、水溶性の架橋剤であるが、非水溶性のものは分散剤によって水に分散して使用することができる。
【0069】
特に好ましい親水性結合材と架橋剤の組み合わせとしては、カルボン酸含有親水性結合材/多価金属化合物、カルボン酸含有親水性結合材/エポキシ化合物、水酸基含有樹脂/ジアルデヒド類、水酸基含有樹脂/イソシアネート化合物が挙げられる。架橋剤の好適な添加量は、親水性結合材の1〜20質量%である。
【0070】
(親水性オーバーコート層)
本発明において、取り扱い時の傷付き防止のためには画像形成機能層の上層に親水性オーバーコート層を有することが好ましい。親水性オーバーコート層は画像形成機能層のすぐ上の層であってもよいし、また画像形成機能層と親水性オーバーコート層の間に中間層が設けられてもよい。親水性オーバーコート層は印刷機上で除去可能であることが好ましい。
【0071】
本発明において親水性オーバーコート層は、親水性結合材または架橋剤で部分的に架橋された親水性結合材を含有することが好ましい。好適な親水性結合材または架橋剤で部分的に架橋された親水性結合材としては、画像形成機能層中に添加されるものと同様である。
【0072】
本発明においては、親水性オーバーコート層は、前述の光熱変換素材を含有することが好ましい。
【0073】
その他、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。非イオン系界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることができる。上記非イオン系界面活性剤のオーバーコート層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
【0074】
本発明において、オーバーコート層の乾燥塗布量は、0.1〜0.4g/m2が好ましく、更に好ましくは0.15〜0.25g/m2である。この範囲内で、印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、良好な汚れ防止、傷付き防止、指紋跡付着防止及びアブレーションカスの発生低減ができる。
【0075】
(アルミニウム支持体)
本発明に用いられるアルミニウム支持体は、純アルミニウムを用いたアルミニウム支持体材料またはアルミニウム合金を用いたアルミニウム支持体材料から得られる。アルミニウム合金を用いたアルミニウム支持体材料には、例えば珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムとの合金が用いられ、アルミニウム支持体の表面は大きなうねりに小ピットが重畳された二重構造の粗面形状を有している。図1及び図2は上記アルミニウム支持体の一例を示す拡大断面図であり、図2は図1の一部をさらに拡大したものである。1は小ピット、2は大きなうねりを表し、d1(μm)は小ピット1の平均開孔径、h(μm)は平均深さ、d2(μm)は大きなうねり2の平均開孔径を表す。図中小ピットの平均開孔径d1(μm)が0.1〜3μmで、小ピットの平均深さh(μm)と平均開孔径d1(μm)の比が0.4以下であることが好ましい。更に好ましくはこの比が0.35以下である。本発明に用いられるアルミニウム支持体の表面を上記構成の粗面形状とすることにより、アルミニウム支持体上に画像形成機能層を設けて印刷版材料を形成し、画像形成したとき、良質の印刷画像が得られ、また、アルミニウム支持体の表面が上記粗面形状を有していない場合は上記効果が発揮されない。
【0076】
また、上記アルミニウム支持体の表面の大きなうねりの平均開孔径d2(μm)は3μmを越え、20μm以下とするのが好ましく、大きなうねりの平均開孔径が上記範囲外の場合は、指紋汚れを生じ易くなる。
【0077】
(支持体の処理)
アルミニウム支持体を得るための上記アルミニウム支持体材料は、強固な汚れや自然酸化皮膜を除去する等のため、苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いて溶解処理が行われ、溶解処理後の残留アルカリ成分を中和するため、燐酸、硝酸、硫酸、塩酸、クロム酸等の酸またはそれらの混酸に浸漬して中和処理が行われる。なお、必要により上記アルミニウム支持材料表面の油脂、錆、ごみ等を除去するため、トリクレン、シンナー等による溶剤脱脂、ケロシン、トリエタノール等のエマルジョンを用いてエマルジョン脱脂処理を行ってもよい。
【0078】
上記アルカリ水溶液を用いた溶解処理及び酸による中和処理の次には後記電気化学的粗面化処理が行われるが、中和処理に使用する酸の種類及び組成を電気化学的粗面化処理に使用する酸のそれに合わせることが特に好ましい。
【0079】
上記アルカリ水溶液を用いた溶解処理に先だって、機械的粗面化処理が行われてもよい。機械的粗面化処理の方法は特に限定されないが、ブラシ研磨、ホーニング研磨が好ましい。ブラシ研磨では、例えば毛径0.2〜1mmのブラシ毛を植毛した円筒状ブラシを回転し、研磨材を水に分散させたスラリーを接触面に供給しながらアルミニウム支持体材料表面に押しつけて粗面化処理を行う。ホーニング研磨では、研磨材を水に分散させたスラリーをノズルより圧力をかけて射出し、アルミニウム支持体材料表面に斜めから衝突させて粗面化処理を行う。さらに、予め粗面化処理されたシートをアルミニウム支持体材料表面に張り合わせ、圧力をかけて粗面パターンを転写することにより機械的粗面化処理を行うこともできる。
【0080】
なお、上記機械的粗面化処理を行う場合は、特に上記溶剤脱脂処理またはエマルジョン脱脂処理を省略することができる。
【0081】
上記(必要により脱脂処理)アルカリ溶解処理及び酸による中和処理を行った後、アルミニウム支持体材料の表面は酸性電解液中で交流電流を用いて電気化学的粗面化処理が行われる。本発明では酸性電解液中での電気化学的粗面化処理の過程で0.6〜5秒の休止時間を設け、かつ1回の電気化学的粗面化処理の電気量を100C/dm2以下とすることが好ましい。上記のように電気化学的粗面化処理を複数回に分けて行う場合は、上記休止時間が0.6秒未満で、かつ1回の電気化学的粗面化処理の電気量が150C/dm2を越えると開孔径が20μmより大きい粗大ピットの生成を抑制することができず、また、上記休止時間が5秒を越えるとアルミニウム支持体の製造に時間がかかり過ぎて生産性が悪くなる。
【0082】
上記電気化学的粗面化処理の電解液としては、塩酸、硝酸等が用いられるが、塩酸がより好ましい。電解液には、必要に応じて硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、蓚酸等を加えることができるが、酢酸が特に好ましい。電気化学的粗面化処理において印加される電圧は、1〜50Vが好ましく、5〜30Vが更に好ましい。電流密度(ピーク値)は、10〜200A/dm2が好ましく、20〜150A/dm2が更に好ましい。電気量は、全処理工程を合計して100〜2000C/dm2が好ましく、200〜1000C/dm2が更に好ましい。温度は、10〜50℃が好ましく、15〜45℃が更に好ましい。
【0083】
また、塩酸濃度は0.1〜5質量%が好ましく、電解に使用する電流波形は正弦波、矩形波、台形波、鋸歯状波等、求める粗面化形状により適宜選択されるが、特に正弦波が好ましい。電気化学的粗面化処理されたアルミニウム支持体材料は、表面のスマット等を除去したり、粗面のピット形状をコントロールする等のために酸またはアルカリの水溶液に浸漬して表面のエッチング処理が行われる。上記酸としては、例えば硫酸、過硫酸、フッ酸、燐酸、硝酸、塩酸等が含まれ、上記アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が含まれる。これらの中でも、アルカリの水溶液を用いるのが好ましく、アルカリの0.05〜40質量%水溶液を用い20〜90℃の液温において5秒〜5分処理するのがよく、アルカリの水溶液で表面をエッチングした後に、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、またはそれらの混酸に浸漬して中和処理が行なわれる。
【0084】
上記中和処理が行われたアルミニウム支持体材料はさらに陽極酸化処理されて本発明に用いられるアルミニウム支持体が得られる。ここで、中和に使用する酸の種類を陽極酸化処理に使用する酸のそれに合わせることが特に好ましい。
【0085】
上記陽極酸化処理に用いられる電解液としては多孔質酸化皮膜を形成するものであれば如何なる電解液でもよいが、一般には硫酸、燐酸、蓚酸、クロム酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等、またはこれらの2種類以上を組み合わせた混酸が用いられる。陽極酸化の処理条件は使用する電解液により種々変化するので一概に特定することはできないが、一般的には、電解液の濃度が1〜80質量%、温度5〜70℃、電流密度1〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲が適当である。好ましいのは硫酸法で、通常直流電流で処理が行われるが、交流を用いることもできる。ここで、硫酸の濃度は10〜50質量%、温度20〜50℃、電流密度1〜20A/dm2で10秒〜5分間電解処理されるのが好ましく、また電解液中にはアルミニウムイオンが含まれているのが好ましい。
【0086】
上記陽極酸化処理して得られたアルミニウム支持体は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム塩処理等の公知の方法を用いて行うことができる。特にアルカリ金属珪酸塩で封孔処理することが好ましい。
【0087】
(親水化処理)
上記陽極酸化処理あるいは陽極酸化処理に引き続いて封孔処理して得られたアルミニウム支持体には親水化処理を施してもよい。親水化処理には、米国特許第3,181,461号に記載のアルカリ金属珪酸塩、米国特許第1,860,426号明細書に記載の親水性セルロース、特公平6−94234号、同6−2436号に記載のアミノ酸及びその塩、同5−32238号に記載の水酸基を有するアミン類及びその塩、特開昭62−19494号に記載の燐酸塩、同59−101651号に記載のスルホ基を有するモノマー単位を含む高分子化合物等を用いることができる。
【0088】
(支持体裏面保護層)
さらに、複数のポジ型PS版を重ねたときの感光層への擦れ傷を防ぐために、また、現像時、現像液中へのアルミニウム成分の溶出を防ぐために、特開昭50−151136号、同57−63293号、同60−73538号、同61−67863号、特開平6−35174号等に記載されている、支持体裏面に保護層を設ける処理を行うことができる。
【0089】
(可視画性の付与)
通常、印刷業界においては、印刷版材料に画像形成した印刷版を印刷する前に、正しく画像が形成されているかを検査する検版という作業がある。検版をするためには、印刷前に形成された画像が版面上で見える性能、つまり可視画性がよいことが好ましい。本発明の印刷版材料は、現像処理なしに印刷可能なプロセスレス印刷版材料なので、露光することによる光または熱によって露光部分または未露光部分の光学濃度が変化することが好ましい。
【0090】
本発明において好ましく用いられる方法としては、露光することによる光または熱によって光学濃度が変化するシアニン系赤外線吸収色素を含む方法、光または熱酸発生剤とその酸により変色する化合物を用いる方法、ロイコ色素のような発色剤と顕色剤を組み合わせて用いる方法等がある。
【0091】
本発明において、露光することによる光または熱によって光学濃度が変化するシアニン系赤外線吸収色素としては、2つ以上のスルホン基を有するインドレニン系、または縮合環を有するインドレニン系の水溶性シアニン色素が好適である。特に好ましい色素の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0092】
【化1】
【0093】
【化2】
【0094】
上記シアニン系赤外線吸収色素の構成層への添加量は、構成成分の1質量%以上で本発明の効果が十分発揮できる。好ましい添加量は3〜50質量%である。
【0095】
本発明において光または熱酸発生剤とは、露光によってルイス酸やブレンステッド酸を生成する化合物を意味する。光または熱酸発生剤の具体例としては、ジアゾ化合物、オルトキノンジアジド化合物、ポリハロゲン化合物、オニウム塩化合物等が挙げられる。またこれらの構造をポリマーに組み込んだ化合物を用いることもできる。
【0096】
ジアゾ化合物としては、例えば、米国特許2063631号、同2667415号等に開示されているジアゾニウム塩とアルドールやアセタール等の反応性カルボニル基を含有する有機結合剤との反応生成物であるジフェニルアミン−p−ジアゾニウム塩とフォルムアルデヒド縮合生成物、またこれらの水溶性ジアゾニウム塩化合物を特開昭54−98613号に開示された方法により、BF4−、PF6−等のアニオン成分等で置換したハロゲン化ルイス酸塩、アリルジアゾニウム塩化合物等が挙げられる。
【0097】
オルトキノンジアジド化合物としては、1分子中に少なくともひとつのオルトキノンジアジド基を有する化合物で、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−エチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−イソブチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−α−ナフチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−ベンジルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−エチルアミド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルアミド等が挙げられる。
【0098】
ポリハロゲン化合物としては、ポリハロゲンを含むアセトフェノン、例えばトリブロモアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、o−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、p−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ブロモ−トリブロモアセトフェノン、p−ブロモ−トリブロモアセトフェノン等、また、ポリハロゲンを含むスルフォキサイド、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォキサイド、ジブロモメチル−トリブロモメチルスルフォキサイド、トリブロモメチル−フェニルスルフォキサイド等、またポリハロゲンを含むスルフォン、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォン、トリクロロメチル−フェニルスルフォン、トリブロモメチル−フェニルスルフォン、トリクロロメチル−p−クロロフェニルスルフォン、トリブロモメチル−p−ニトロフェニルスルフォン2−トリクロロメチルベンゾチアゾールスルフォン、2,4−ジクロロフェニル−トリクロロメチルスルフォン等、その他ポリハロゲンを含むピロン化合物、トリアジン化合物、オキサジアゾール化合物等が挙げられる。
【0099】
オニウム塩化合物及びその他の光または熱酸発生剤としては、S.P.Papas,et al.,Polym.Photochem.,5,1,p104〜115 (1984)に記載されているオニウム塩化合物、また色材,66(2),p104〜115(1993)に紹介されている、Ph2I+/SbF6−等のジアリルヨードニウム塩化合物に代表される光酸発生剤、トリアリルスルフォニウム塩化合物、トリアリルセレノニウム塩化合物、ジアルキルフェナシルスルフォニウム塩化合物、ジアルキル−4−フェナシルスルフォニウム塩化合物、α−ヒドロキシメチルベンゾインスルフォン酸エステル、N−ヒドロキシイミノスルフォネート、α−スルフォニロキシケトン、β−スルフォニロキシケトン、鉄−アレーン錯体化合物(ベンゼン−シクロペンタジエニル−鉄(II)ヘキサフルオロフォスフェート等)、o−ニトロベンジルシリルエーテル化合物、ベンゾイントシレート、トリ(ニトロベンジル)フォスフェート等が挙げられる。
【0100】
その他、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩、有機ハロゲン化合物、o−ニトロベンジル誘導体、イミノスルホネート及びジスルホン化合物等を挙げることができる。
【0101】
さらに具体的には、例えば、特開平9−244226号化7〜化9に記載のT−1〜T−15の式で示される化合物を挙げることができる。
【0102】
これらの内、より好ましいものはトリハロメチル基を2個以上有するs−トリアジン化合物であり、特に好ましくはトリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。これら光または熱酸発生剤の含有量は、印刷版材料の全固形分に対し、0.01〜40質量%、好ましくは0.1〜30質量%である。
【0103】
本発明において、酸によって変色する化合物としては、例えばジフェニルメタン、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0104】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH(保土ケ谷化学(株)製)、オイルブルー#603(オリエント化学工業(株)製)、オイルピンク#312(オリエント化学工業(株)製)、オイルレッド5B(オリエント化学工業(株)製)、オイルスカーレット#308(オリエント化学工業(株)製)、オイルレッドOG(オリエント化学工業(株)製)、オイルレッドRR(オリエント化学工業(株)製)、オイルグリーン#502(オリエント化学工業(株)製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土ケ谷化学工業(株)製)、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボステアリルアミノ−4−p−ジヒドロオキシエチルアミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等が挙げられる。
【0105】
また、酸で発色する化合物としてアリールアミン類の有機染料を用いることができる。この目的に適するアリールアミン類としては、第一級、第二級芳香族アミンのような単なるアリールアミンのほかにいわゆるロイコ色素も含まれ、これらの例としては、ジフェニルアミン、ジベンジルアニリン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、p−トルイジン、4,4′−ビフェニルジアミン、o−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、o−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、アニリン、2,5−ジクロロアニリン、N−メチルジフェニルアミン、o−トルイジン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメタン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、1,2−ジアニリノエチレン、p,p′,p″ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、p,p′−テトラメチルジアミノトリフェニルメタン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメチルイミン、p,p′,p″−トリアミノ−o−メチルトリフェニルメタン、p,p′,p″−トリアミノトリフェニルカルビノール、p,p′−テトラメチルアミノジフェニル−4−アニリノナフチルメタン、p,p′,p″−トリアミノフェニルメタン、p,p′,p″−ヘキサプロピルトリアミノトリフェニルメタン等が挙げられる。
【0106】
本発明において、顕色剤としては、感熱記録体において電子受容体として使用される酸性物質がいずれも使用でき、例えば酸性白土カオリン、ゼオライト等の無機酸、芳香族カルボン酸、その無水物またはその金属塩類、有機スルホン酸、その他の有機酸、フェノール系化合物、フェノール系化合物のメチロール化物、フェノール系化合物の塩または錯体等の有機系顕色剤等が挙げられ、なかでもフェノール系化合物のメチロール化物及びフェノール系化合物の塩(以下、特に断りのないかぎり錯塩も含む)が好ましい。
【0107】
これら顕色剤のうち、有機系顕色剤の具体例としては、フェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシアセトフェノン、2,2′−ジヒドロキシジフェニル、2,2′−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−イソプロピリデンジフェノール(別名ビスフェノールA)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4′エチレンビス(2−メチルフェノール)、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ヘプタン、4,4′−シクロヘキシリデンビス(2−イソプロピルフェノール)、4,4′−スルホニルジフェノール等のフェノール系化合物、フェノール系化合物のメチロール化物、フェノール系化合物の塩サリチル酸アニリド、ノボラック型フェノール樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
【0108】
本発明においては、顕色剤とともに用いられる発色剤としては、トリフェニルメタンラクトン型等のロイコ色素を用いることができる。このようなロイコ色素としては、例えば、クリスタルバイオレットラクトン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノフルオラン、マラカイトグリーンラクトン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルドール−3−イル)フタリド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等が挙げられる。
【0109】
上記発色剤と顕色剤は、顕色剤/発色剤の質量比が0.1/1〜5/1となる範囲で通常用いるが、なかでも質量比が0.5/1〜3/1となる範囲が好ましい。
【0110】
(露光)
本発明はまた、請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷版材料をサーマルヘッドまたはサーマルレーザーを用いて画像を形成した後に、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去する工程を含む印刷方法も提供するものである。
【0111】
本発明の印刷版材料の画像形成は熱により行うことができるため、感熱プリンタで用いられるようなサーマルヘッドによっても画像形成が可能であるが、特にサーマルレーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0112】
露光に関しては、より具体的には、赤外及び/または近赤外領域で発光する、すなわち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0113】
本発明の走査露光に好適な装置としては、半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0114】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本または複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本または複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本または複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式が挙げられる。
【0115】
本発明に関しては、特に(3)の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)の露光方式が用いられる。
【0116】
このようにして画像形成がなされた印刷版材料は、現像処理を行うことなく印刷を行うことができる。画像形成後の印刷版材料をそのまま印刷機の版胴に取り付けるか、あるいは印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けた後に画像形成を行い、版胴を回転させながら水供給ローラーまたはインク供給ローラーを印刷版材料に接触させることで画像形成層の非画像部を除去することが可能である。
【0117】
本発明の印刷版材料における上記の画像形成層非画像部の除去工程は、PS版を使用した通常の印刷シークエンスで行うことができるため、いわゆる機上現像処理による作業時間の延長の必要がないため、コストダウンにも有効である。
【0118】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0119】
実施例1
(支持体の調製)
厚さ0.24mmのJIS1050のアルミニウム支持体材料を、50℃に保たれた1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/m2になるように溶解処理を行い水洗した後、1L当たり塩酸10gを添加した水溶液に10秒間浸漬して中和処理した後、水洗した。
【0120】
次いでこのアルミニウム支持体材料を、電流密度50A/dm2、正弦波交流を用いて、1L当たり塩酸10gを添加した水溶液で1回当たりの処理電気量40C/dm2、休止時間4.0秒で電解処理回数12回の条件で、電気化学的粗面化処理を行った。電気化学的粗面化処理後は、50℃に保たれた1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、溶解量が2g/m2になるようにアルカリ溶解処理し、さらに水洗した後、25℃に保たれた10質量%硫酸水溶液中に10秒間浸漬して中和処理し、その後水洗した。
【0121】
次いで、20質量%硫酸水溶液中で、直流を用い、温度25℃、電流密度5A/dm2で陽極酸化皮膜質量が2.0g/m2となるよう陽極酸化処理した後、水洗、乾燥して7種類のアルミニウム支持体(支持体1〜7)を得た。こうして得られたアルミニウム支持体表面の、大きなうねりの平均開孔径d2(μm)、小ピットの平均開孔径d1(μm)及び小ピットの平均深さh(μm)と平均開孔径d1(μm)との比h/d1を後述の方法により測定したところ、大きなうねりの平均開孔径は4.8μm、小ピットの平均開孔径は0.6μm、小ピットの深さ/開孔径の比は0.18であった。
【0122】
その後、上記支持体を70℃の2.5質量%珪酸ナトリウム水溶液で1分間処理し、水洗乾燥して本発明に係るアルミニウム支持体を得た。
【0123】
(d2、d1及びh/d1の測定)
いずれもアルミニウム支持体表面のSEM写真を撮影して測定した。大きなうねりの平均開孔径d2(μm)については、1000倍のSEM写真を用い、輪郭が明確に判別できるうねり1個づつの長径と短径とを測定してその平均をうねりの開孔径とし、SEM写真中で測定した大きなうねりの開孔径の和を測定した大きなうねり数で割って求めた。また、小ピットの平均開孔径d1(μm)については5000倍のSEM写真を用い、大きなうねりの場合と同様の手法で求めた。小ピットの平均深さh(μm)と平均開孔径d1(μm)との比h/d1は、断面の5000〜20000倍のSEM写真を用いて、断面がピットのほぼ中央を分断しているピットを選んで測定した。
【0124】
(画像形成層の塗布)
表2の組成を十分に混合攪拌した後、濾過して画像形成層用塗布液を作製した。
【0125】
【表2】
【0126】
上記アルミニウム支持体上に、表2の画像形成層用塗布液をワイヤーバーで乾燥塗布質量が1.5g/m2になるように塗布した。乾燥条件は55℃、3分間行い、さらに55℃、24時間のエイジングを行った。
【0127】
(オーバーコート層の塗布)
上記画像形成機能層上に、下記組成のオーバーコート層塗布液をワイヤーバーで塗布し、100℃、90秒間乾燥した。オーバーコート層の乾燥塗布質量は0.3g/m2であった。さらに、55℃、24時間のエイジングを行い、オーバーコート層を有する印刷版材料1〜3を作製した。
【0128】
(画像形成)
上記作製した印刷版材料への画像形成は赤外線レーザー露光により行った。露光には波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、レーザービームの焦点を印刷版材料表面に合わせて、露光エネルギーを300mj/cm2とした条件で、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)、175線で画像を形成した。評価用の画像として、ベタ画像と1〜99%の網点画像を用いた。
【0129】
なお、露光された部分は色調が変化し、画像が目視で確認できた。その時の濃度変化を測定したところ0.2であった。
【0130】
(印刷性能の評価方法)
上記作製した印刷版材料を用いて下記の印刷試験を行い、性能を評価した。その結果を表3に示す。
【0131】
(印刷方法)
印刷機(三菱重工業(株)製DAIYA1F−1)の版胴に印刷版材料を取り付け、コート紙、湿し水(アストロマーク3(日研化学研究所製)2質量%)、インク(東洋インク(株)製トーヨーキングハイエコーM紅)を使用して印刷を行った。印刷開始のシークエンスはPS版の印刷シークエンスで行い、特別な機上現像操作は行わなかった。印刷後に版面を観察したところ、本発明に係る材料の非画像部は除去されていた。
【0132】
(刷り出し性評価)
刷り出し時、良好なS/N(非画像部に地汚れがなく、即ち、画像形成層の非画像部が印刷機上で除去され、かつ、画像部の濃度が適正範囲となっている)を有した印刷物が得られるまでの印刷枚数を評価した。枚数が少ないほど優れている。40枚以上では実用上問題がある。
【0133】
(汚し回復性評価)
湿し水の供給を停止し、版全面にインクを付ける。その後、湿し水を供給して非画像部のインク汚れが無くなる印刷枚数を求めた。枚数の少ないほど優れている。
【0134】
(耐刷性評価)
3%網点画像の点が半分以上欠落する印刷枚数を求めた(印刷は10万枚まで行った)。印刷枚数の多いほど優れている。
【0135】
【表3】
【0136】
実施例2
実施例1で作製したアルミニウム支持体上に下記組成の下塗り層をワイヤーバーで乾燥塗布質量が0.1gになるように塗布し、100℃、90秒間乾燥した。その上に表4記載の画像形成機能層塗布液を実施例1と同様にして塗布した。さらに実施例1の親水性オーバーコート層を塗布し、さらに、55℃、24時間のエイジングを行い、印刷版材料4〜6を作製した。
【0137】
【0138】
【表4】
【0139】
(保存性の評価方法)
上記作製した印刷版材料を、保存性の代用条件として50℃、RH80%のサーモ条件で3日間保管した。その試料を実施例1と同様にして露光を行った。露光された部分は色調が変化し、画像が目視で確認できた。その時の濃度変化を測定したところ0.25であった。さらに実施例1と同様にして印刷試験を行い、性能を評価した。その結果を表5に示す。
【0140】
【表5】
【0141】
実施例3
実施例2で作製した印刷版材料4を実施例1と同様にして露光し、露光後の下記の各タイミングで現像インクを用いて画像形成の状態をルーペを用いて評価した。その結果を表6に示す。このように、露光終了後になんらかの乾燥過程を設けることで、画像強度が安定することが分かる。
【0142】
【表6】
【0143】
【発明の効果】
本発明により、印刷性能、特に刷り出し性や汚し回復性、及び画像形成前の印刷版材料の保存性が改良された印刷版材料及びこれを用いた印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルミニウム支持体の一例を示す拡大断面図である。
【図2】アルミニウム支持体の一例を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
1 小ピット
2 大きなうねり
d1 小ピット1の平均開孔径
d2 大きなうねり2の平均開孔径
h 小ピットの平均深さ
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷版材料及び印刷方法に関し、特にコンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能な印刷版材料及び印刷方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷データのデジタル化に伴い、安価で取扱いが容易でPS版と同等の印刷適性を有したCTPが求められている。特に近年、特別な薬剤による現像液処理が不要な、いわゆるプロセスレス印刷版への期待が高まっている。
【0003】
プロセスレス印刷版の画像形成方式の一つとして有力なのが、赤外線レーザー記録であり、これは大きく分けて、後述するアブレーションタイプと熱融着画像層機上現像タイプ及び熱溶融転写タイプの3種の記録方法が存在する。
【0004】
アブレーションタイプとしては、例えば、特開平8−507727号、同6−186750号、同6−199064号、同7−314934号、同10−58636号、同10−244773号に記載されているものである。これらは、例えば、支持体上に親水性層と親油性層とを有し、いずれかの層を表層として積層したものである。表層が親水性層であれば、画像様に露光し、親水性層をアブレートさせて画像様に除去して親油性層を露出することで画像部を形成することができる。ただし、アブレートした表層の飛散物による露光装置内部の汚染が問題となるため、親水性層上にさらに水溶性の保護層を設けて、アブレートした表層の飛散を防止し、印刷機上で保護層とともにアブレートした表層を除去する方式も提案されている。
【0005】
熱融着画像層機上現像タイプとしては、親水性層またはアルミ砂目上に、画像形成層に熱可塑性微粒子と水溶性の結合剤とを用いたものが挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。しかし、親水性支持体としてアルミ砂目を用いた場合には、光熱変換素材(一般的には可視光にも着色している)を画像形成層に添加する必要があり、現像した際に印刷機を汚染する懸念があるため、層構成としては支持体上に光熱変換素材を含有した親水性層を形成したものを使用して、画像形成層からは光熱変換素材を除いたものの方が有利である。
【0006】
また、熱溶融転写方式としては、例えば、マンローランド社のDICOwebのような熱転写リボンを用いて、アルミ砂目ではなく、繰り返し使用可能な親水性表面を有する金属スリーブに熱溶融素材を画像様に転写した後、加熱して画像を定着させる方法が挙げられる。
【0007】
しかしながらこれらの従来技術では印刷性能、特に刷り出し性や汚し回復性が不十分であり、画像形成前に印刷版材料を長期に保存する場合に性能が変化しやすいという欠点も有していた。
【0008】
【特許文献1】
特許2938397号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、印刷性能、特に刷り出し性や汚し回復性、及び画像形成前の印刷版材料の保存性が改良された印刷版材料及びこれを用いた印刷方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は下記構成により達成された。
【0011】
1.粗面化処理及び陽極酸化処理が施されたアルミニウム支持体上に、熱溶融性または熱融着性微粒子、及び親水性結合材を熱架橋しうる架橋剤を含有する画像形成機能層を少なくとも1層有することを特徴とする印刷版材料。
【0012】
2.アルミニウム支持体をさらにアルカリ金属珪酸塩で処理することを特徴とする上記1に記載の印刷版材料。
【0013】
3.アルミニウム支持体が、大きなうねりに小ピットが重畳された2重構造の粗面形状を有し、かつ小ピットの平均開孔径d1(μm)が0.1〜3μmで、小ピットの平均深さh(μm)と該平均開孔径d1(μm)の比h/d1が0.4以下であることを特徴とする上記1または2に記載の印刷版材料。
【0014】
4.アルミニウム支持体上に光熱変換素材を含有することを特徴とする上記1〜3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0015】
5.画像形成機能層の上層に親水性オーバーコート層を含有することを特徴とする上記1〜4のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0016】
6.上記1〜5のいずれか1項に記載の印刷版材料にサーマルヘッドまたはサーマルレーザーを用いて画像形成した後、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去する工程を有することを特徴とする印刷方法。
【0017】
7.上記1〜5のいずれか1項に記載の印刷版材料にサーマルヘッドまたはサーマルレーザーを用いて画像形成した後、印刷を行う印刷方法において、像形成後から、印刷機上で印刷版材料表面と水供給ローラーまたはインク供給ローラーとが接触するまでに、印刷版材料の表面を乾燥させる工程を有することを特徴とする印刷方法。
【0018】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明者は鋭意研究の結果、粗面化処理及び陽極酸化処理が施されたアルミニウム支持体上の、熱溶融性または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層に、親水性結合材を熱架橋しうる架橋剤を含有することにより、印刷性能、特に刷り出し性や汚し回復性、及び画像形成前の印刷版材料の保存性が改良された印刷版材料を得ることを見出した。
【0019】
これらの効果に対する本発明の親水性結合材を熱架橋しうる架橋剤の機能については十分には解明されていない。
【0020】
また、本発明の効果をより発現するためには、上記アルミニウム支持体をさらにアルカリ金属珪酸塩で処理すること、上記アルミニウム支持体の表面が特定の粗面形状を有すること、上記アルミニウム支持体上に光熱変換素材を含有すること、画像形成機能層の上層に親水性オーバーコート層を含有することが好ましい。
【0021】
本発明に係る熱溶融性または熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層には、以下のような素材を含有させることができる。
【0022】
(熱溶融性微粒子)
本発明に用いられる熱溶融性微粒子とは、熱可塑性素材の中でも特に溶融した際の粘度が低く、一般的にワックスとして分類される素材で形成された微粒子である。物性としては、軟化点40〜120℃、融点60〜150℃であることが好ましく、軟化点40〜100℃、融点60〜120℃であることが更に好ましい。融点が60℃未満では保存性が問題であり、融点が300℃よりも高い場合はインク着肉感度が低下する。
【0023】
使用可能な素材としては、例えば、パラフィン、ポリオレフィン、ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、脂肪酸系ワックス等が挙げられる。これらは分子量800〜10000程度のものであり、また乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基等の極性基を導入することもできる。更には、軟化点を下げたり作業性を向上させるために、これらのワックスに、例えば、ステアロアミド、リノレンアミド、ラウリルアミド、ミリステルアミド、硬化牛脂肪酸アミド、パルミトアミド、オレイン酸アミド、米糖脂肪酸アミド、ヤシ脂肪酸アミドまたはこれらの脂肪酸アミドのメチロール化物、メチレンビスステラロアミド、エチレンビスステラロアミド等を添加することも可能である。また、クマロン−インデン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アクリル樹脂、アイオノマー、これらの樹脂の共重合体も使用することができる。
【0024】
これらの中でも、ポリエチレン、マイクロクリスタリン、脂肪酸エステル、脂肪酸の何れかを含有することが好ましい。これらの素材は融点が比較的低く、溶融粘度も低いため、高感度の画像形成を行うことができる。また、これらの素材は潤滑性を有するため、印刷版材料の表面に剪断力が加えられた際のダメージが低減し、擦りキズ等による印刷汚れ耐性が向上する。
【0025】
また、熱溶融性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0026】
また、熱溶融性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、または異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は、公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0027】
画像形成機能層中での熱溶融性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0028】
(熱融着性微粒子)
本発明に用いられる熱融着性微粒子としては、熱可塑性疎水性高分子重合体微粒子が挙げられ、熱可塑性疎水性高分子重合体粒子の軟化温度に特定の上限はないが、軟化温度は高分子重合体微粒子の分解温度より低いことが好ましい。また、高分子重合体の重量平均分子量(Mw)は10、000〜1、000、000であることが好ましい。
【0029】
高分子重合体微粒子を構成する高分子重合体の具体例としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−ブタジエン共重合体等のジエン(共)重合体類、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の合成ゴム類、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、メチルアクリレート−(N−メチロールアクリルアミド)共重合体、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−プロピオン酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体等のビニルエステル(共)重合体、酢酸ビニル−(2−エチルヘキシルアクリレート)共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン等及びそれらの共重合体が挙げられる。これらのうち、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸(共)重合体、ビニルエステル(共)重合体、ポリスチレン、合成ゴム類が好ましく用いられる。
【0030】
高分子重合体微粒子は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、気相重合法等、公知の何れの方法で重合された高分子重合体からなるものでもよい。溶液重合法または気相重合法で重合された高分子重合体を微粒子化する方法としては、高分子重合体の有機溶媒に溶解液を不活性ガス中に噴霧、乾燥して微粒子化する方法、高分子重合体を水に非混和性の有機溶媒に溶解し、この溶液を水または水性媒体に分散、有機溶媒を留去して微粒子化する方法等が挙げられる。
【0031】
また、熱溶融性微粒子、熱融着性微粒子は、何れの方法においても、必要に応じ重合あるいは微粒子化の際に分散剤、安定剤として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール等の界面活性剤やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いてもよい。また、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等を含有させてもよい。
【0032】
また、熱可塑性微粒子は水に分散可能であることが好ましく、その平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3μmである。平均粒径が0.01μmよりも小さい場合、熱溶融性微粒子を含有する層の塗布液を後述する多孔質な親水性層上に塗布した際に、熱溶融性微粒子が親水性層の細孔中に入り込んだり、親水性層表面の微細な凹凸の隙間に入り込んだりしやすくなり、機上現像が不十分になって、地汚れの懸念が生じる。熱溶融性微粒子の平均粒径が10μmよりも大きい場合には、解像度が低下する。
【0033】
また、熱可塑性微粒子は内部と表層との組成が連続的に変化していたり、または異なる素材で被覆されていてもよい。被覆方法は公知のマイクロカプセル形成方法、ゾルゲル法等が使用できる。
【0034】
画像形成機能層中の熱可塑性微粒子の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、5〜80質量%がさらに好ましい。
【0035】
(水溶性素材)
本発明に係る熱溶融性及びまたは熱融着性微粒子を含有する画像形成機能層には、さらに水溶性素材を含有することができる。水溶性素材を含有することにより、印刷機上で湿し水やインクを用いて未露光部の画像形成機能層を除去する際に、その除去性を向上させることができる。
【0036】
水溶性素材としては、水溶性樹脂を用いることもできるが、本発明の画像形成機能層としては、糖類を用いることが好ましく、特にオリゴ糖を用いることが好ましい。オリゴ糖は水に速やかに溶解するため、印刷装置上での未露光部の画像形成機能層の除去も非常に速やかとなり、特別な除去操作を意識することなく、通常のPS版の刷出し操作と同様の操作で刷出すことで除去可能であり、刷出しの損紙が増加することもない。また、オリゴ糖は親水性層の親水性を低下させる懸念もなく、親水性層の良好な印刷適性を維持することができる。オリゴ糖は水に可溶の一般に甘みを有する結晶性物質で、数個の単糖がグリコシド結合によって脱水縮合したものである。オリゴ糖は糖をアグリコンとする一種のo−グリコシドであるから、酸で容易に加水分解されて単糖を生じ、生成する単糖の分子数によって二糖、三糖、四糖、五糖等に分類される。本発明におけるオリゴ糖とは、二糖〜十糖までのものをいう。
【0037】
これらのオリゴ糖は、還元基の有無によって、還元性オリゴ糖と非還元性オリゴ糖とに大別され、また単一の単糖から構成されているホモオリゴ糖と、2種類以上の単糖から構成されているヘテロオリゴ糖にも分類される。オリゴ糖は、遊離状または配糖類として天然に存在し、また多糖の酸または酵素による部分加水分解によっても得られる。この他酵素によるグリコシル転移によっても種々のオリゴ糖が生成する。
【0038】
オリゴ糖は通常雰囲気中では水和物として存在することが多い。また、水和物と無水物とでは融点が異なり、例を挙げると表1に示す通りである。
【0039】
【表1】
【0040】
本発明では、糖類を含有する層を水溶液で塗布形成することが好ましい。水溶液で塗布形成する場合は、層中に存在するオリゴ糖が水和物を形成するオリゴ糖であれば、その融点は水和物の融点であると考えられる。このように、比較的低融点を有しているため、熱溶融微粒子が溶融する温度範囲や熱融着微粒子が融着する温度範囲でオリゴ糖も溶融し、熱溶融微粒子の多孔質親水性層への溶融浸透や熱融着微粒子の融着といった画像形成を妨げることがない。
【0041】
オリゴ糖の中でもトレハロースは、比較的純度の高い状態のものが工業的に安価に入手可能であり、水への溶解度が高いにもかかわらず、吸湿性は非常に低く、機上現像性及び保存性共に非常に良好である。
【0042】
また、オリゴ糖水和物を熱溶融させて水和水を除去した後に凝固させると(凝固後短時間のうちは)無水物の結晶となるが、トレハロースは水和物よりも無水物の融点が100℃以上も高いことが特徴的である。これは赤外線露光で熱溶融し、再凝固した直後は露光済部は高融点で溶融しにくい状態となることを意味し、バンディング等の露光時の画像欠陥を起こしにくくする効果がある。本発明の目的を達成するには、オリゴ糖の中でも特にトレハロースが好ましい。
【0043】
画像形成機能層中のオリゴ糖の含有量としては、層全体の1〜90質量%が好ましく、10〜80質量%がさらに好ましい。
【0044】
また本発明に係る画像形成機能層は、後述する光熱変換素材を含有させることが好ましい。
【0045】
画像形成機能層の乾燥塗布質量は好ましくは0.10〜0.75g/m2、より好ましくは0.15〜0.50g/m2である。
【0046】
(光熱変換素材)
本発明に係る画像形成機能層、親水性層及びその他に設けられる層には、光熱変換素材を含有することができる。
【0047】
光熱変換素材としては下記のような素材を添加することができる。
(赤外吸収色素)
一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素等の有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体等が挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、同64−33547号、特開平1−160683号、同1−280750号、同1−293342号、同2−2074号、同3−26593号、同3−30991号、同3−34891号、同3−97589号、同3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
(顔料)
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては、特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0049】
(グラファイト)
グラファイトとしては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0050】
(金属)
金属としては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でもよい。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0051】
(金属酸化物)
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材、または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。前者としては、黒色酸化鉄(Fe3O4)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。後者としては、例えば、SbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn2O3(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)等が挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al2O3・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0052】
これらの光熱変換素材のうち、二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物がより好ましい素材として挙げられ、具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号、同9−25126号、同9−237570号、同9−241529号、同10−231441号等に開示されている方法により製造することができる。
【0053】
本発明に用いる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。
【0054】
これらの複合金属酸化物は、平均一次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均一次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均一次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。従って、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均一次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
【0055】
これらの複合金属酸化物の添加量としては、各層に対して0.1〜50質量%であり、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
【0056】
(親水性結合材)
本発明において、画像形成機能層に親水性結合材を含有することが特徴である。
【0057】
かかる親水性結合材は、親水性の天然高分子及び合成高分子から選ばれる。本発明に好ましく用いられる親水性結合材の具体例としては、天然高分子では、アラビアガム、水溶性大豆多糖類、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ等)、その変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等、合成高分子では、ポリビニルアルコール(好ましくは鹸化度70モル%以上のもの)、ポリアクリル酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリアクリル酸共重合体、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリメタクリル酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ビニルアルコール/アクリル酸共重合体及びそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリアクリルアミド、その共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、その共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、そのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体、そのアルカリ金属塩またはアミン塩等を挙げることができる。また、目的に応じて、これらを二種以上混合して用いることもできる。しかし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0058】
(架橋剤)
本発明において、画像形成機能層に親水性結合材を熱架橋しうる架橋剤を含有することが特徴である。
【0059】
親水性結合材を熱架橋しうる架橋剤としては、架橋性を有する多官能性化合物が挙げられ、エポキシ化合物、ポリアミン化合物、イソシアネート化合物、シラン化合物、チタネート化合物、アルデヒド化合物、多価金属塩化合物、ヒドラジン等が挙げられる。
【0060】
エポキシ化合物の具体例としては、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール類またはそれらの水素添加物とエピハロヒドリンとのポリ縮合物等が挙げられる。また上記のうち水溶性エポキシ化合物は親水性結合材としても用いることができる。この場合の架橋剤は、架橋剤ハンドブック(大成社 昭和56年10月20日 初版第1刷)の352〜376頁に記載の化合物が好ましく用いることができる。
【0061】
ポリアミン化合物の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドアミン等が挙げられる。
【0062】
イソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、液状ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、またポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物等が挙げられる。
【0063】
シラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等が挙げられる。
【0064】
チタネート化合物としては、テトラエチルオルトシリケート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリアクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピル(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、イソプロピルトリインステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリジシルホスファイト)チタネート、テトラ(2、2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。
【0065】
アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、グリオキサール、グルタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。
【0066】
多価金属塩化合物としては、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム、コバルト、マンガン、ニッケル等の金属の水溶性塩が挙げられる。
【0067】
上記の挙げた架橋剤の中でも、特に、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、シラン化合物、アルデヒド化合物、多価金属塩化合物が好ましく用いられる。
【0068】
これらの架橋剤は単独または2種以上を混合して使用することが可能である。これらの架橋剤のうち特に好ましい架橋剤は、水溶性の架橋剤であるが、非水溶性のものは分散剤によって水に分散して使用することができる。
【0069】
特に好ましい親水性結合材と架橋剤の組み合わせとしては、カルボン酸含有親水性結合材/多価金属化合物、カルボン酸含有親水性結合材/エポキシ化合物、水酸基含有樹脂/ジアルデヒド類、水酸基含有樹脂/イソシアネート化合物が挙げられる。架橋剤の好適な添加量は、親水性結合材の1〜20質量%である。
【0070】
(親水性オーバーコート層)
本発明において、取り扱い時の傷付き防止のためには画像形成機能層の上層に親水性オーバーコート層を有することが好ましい。親水性オーバーコート層は画像形成機能層のすぐ上の層であってもよいし、また画像形成機能層と親水性オーバーコート層の間に中間層が設けられてもよい。親水性オーバーコート層は印刷機上で除去可能であることが好ましい。
【0071】
本発明において親水性オーバーコート層は、親水性結合材または架橋剤で部分的に架橋された親水性結合材を含有することが好ましい。好適な親水性結合材または架橋剤で部分的に架橋された親水性結合材としては、画像形成機能層中に添加されるものと同様である。
【0072】
本発明においては、親水性オーバーコート層は、前述の光熱変換素材を含有することが好ましい。
【0073】
その他、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。非イオン系界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることができる。上記非イオン系界面活性剤のオーバーコート層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
【0074】
本発明において、オーバーコート層の乾燥塗布量は、0.1〜0.4g/m2が好ましく、更に好ましくは0.15〜0.25g/m2である。この範囲内で、印刷機上でのオーバーコート層の除去性を損なうことなく、良好な汚れ防止、傷付き防止、指紋跡付着防止及びアブレーションカスの発生低減ができる。
【0075】
(アルミニウム支持体)
本発明に用いられるアルミニウム支持体は、純アルミニウムを用いたアルミニウム支持体材料またはアルミニウム合金を用いたアルミニウム支持体材料から得られる。アルミニウム合金を用いたアルミニウム支持体材料には、例えば珪素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ナトリウム、鉄等の金属とアルミニウムとの合金が用いられ、アルミニウム支持体の表面は大きなうねりに小ピットが重畳された二重構造の粗面形状を有している。図1及び図2は上記アルミニウム支持体の一例を示す拡大断面図であり、図2は図1の一部をさらに拡大したものである。1は小ピット、2は大きなうねりを表し、d1(μm)は小ピット1の平均開孔径、h(μm)は平均深さ、d2(μm)は大きなうねり2の平均開孔径を表す。図中小ピットの平均開孔径d1(μm)が0.1〜3μmで、小ピットの平均深さh(μm)と平均開孔径d1(μm)の比が0.4以下であることが好ましい。更に好ましくはこの比が0.35以下である。本発明に用いられるアルミニウム支持体の表面を上記構成の粗面形状とすることにより、アルミニウム支持体上に画像形成機能層を設けて印刷版材料を形成し、画像形成したとき、良質の印刷画像が得られ、また、アルミニウム支持体の表面が上記粗面形状を有していない場合は上記効果が発揮されない。
【0076】
また、上記アルミニウム支持体の表面の大きなうねりの平均開孔径d2(μm)は3μmを越え、20μm以下とするのが好ましく、大きなうねりの平均開孔径が上記範囲外の場合は、指紋汚れを生じ易くなる。
【0077】
(支持体の処理)
アルミニウム支持体を得るための上記アルミニウム支持体材料は、強固な汚れや自然酸化皮膜を除去する等のため、苛性ソーダ等のアルカリ水溶液を用いて溶解処理が行われ、溶解処理後の残留アルカリ成分を中和するため、燐酸、硝酸、硫酸、塩酸、クロム酸等の酸またはそれらの混酸に浸漬して中和処理が行われる。なお、必要により上記アルミニウム支持材料表面の油脂、錆、ごみ等を除去するため、トリクレン、シンナー等による溶剤脱脂、ケロシン、トリエタノール等のエマルジョンを用いてエマルジョン脱脂処理を行ってもよい。
【0078】
上記アルカリ水溶液を用いた溶解処理及び酸による中和処理の次には後記電気化学的粗面化処理が行われるが、中和処理に使用する酸の種類及び組成を電気化学的粗面化処理に使用する酸のそれに合わせることが特に好ましい。
【0079】
上記アルカリ水溶液を用いた溶解処理に先だって、機械的粗面化処理が行われてもよい。機械的粗面化処理の方法は特に限定されないが、ブラシ研磨、ホーニング研磨が好ましい。ブラシ研磨では、例えば毛径0.2〜1mmのブラシ毛を植毛した円筒状ブラシを回転し、研磨材を水に分散させたスラリーを接触面に供給しながらアルミニウム支持体材料表面に押しつけて粗面化処理を行う。ホーニング研磨では、研磨材を水に分散させたスラリーをノズルより圧力をかけて射出し、アルミニウム支持体材料表面に斜めから衝突させて粗面化処理を行う。さらに、予め粗面化処理されたシートをアルミニウム支持体材料表面に張り合わせ、圧力をかけて粗面パターンを転写することにより機械的粗面化処理を行うこともできる。
【0080】
なお、上記機械的粗面化処理を行う場合は、特に上記溶剤脱脂処理またはエマルジョン脱脂処理を省略することができる。
【0081】
上記(必要により脱脂処理)アルカリ溶解処理及び酸による中和処理を行った後、アルミニウム支持体材料の表面は酸性電解液中で交流電流を用いて電気化学的粗面化処理が行われる。本発明では酸性電解液中での電気化学的粗面化処理の過程で0.6〜5秒の休止時間を設け、かつ1回の電気化学的粗面化処理の電気量を100C/dm2以下とすることが好ましい。上記のように電気化学的粗面化処理を複数回に分けて行う場合は、上記休止時間が0.6秒未満で、かつ1回の電気化学的粗面化処理の電気量が150C/dm2を越えると開孔径が20μmより大きい粗大ピットの生成を抑制することができず、また、上記休止時間が5秒を越えるとアルミニウム支持体の製造に時間がかかり過ぎて生産性が悪くなる。
【0082】
上記電気化学的粗面化処理の電解液としては、塩酸、硝酸等が用いられるが、塩酸がより好ましい。電解液には、必要に応じて硝酸塩、塩化物、アミン類、アルデヒド類、燐酸、クロム酸、ホウ酸、酢酸、蓚酸等を加えることができるが、酢酸が特に好ましい。電気化学的粗面化処理において印加される電圧は、1〜50Vが好ましく、5〜30Vが更に好ましい。電流密度(ピーク値)は、10〜200A/dm2が好ましく、20〜150A/dm2が更に好ましい。電気量は、全処理工程を合計して100〜2000C/dm2が好ましく、200〜1000C/dm2が更に好ましい。温度は、10〜50℃が好ましく、15〜45℃が更に好ましい。
【0083】
また、塩酸濃度は0.1〜5質量%が好ましく、電解に使用する電流波形は正弦波、矩形波、台形波、鋸歯状波等、求める粗面化形状により適宜選択されるが、特に正弦波が好ましい。電気化学的粗面化処理されたアルミニウム支持体材料は、表面のスマット等を除去したり、粗面のピット形状をコントロールする等のために酸またはアルカリの水溶液に浸漬して表面のエッチング処理が行われる。上記酸としては、例えば硫酸、過硫酸、フッ酸、燐酸、硝酸、塩酸等が含まれ、上記アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が含まれる。これらの中でも、アルカリの水溶液を用いるのが好ましく、アルカリの0.05〜40質量%水溶液を用い20〜90℃の液温において5秒〜5分処理するのがよく、アルカリの水溶液で表面をエッチングした後に、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸等の酸、またはそれらの混酸に浸漬して中和処理が行なわれる。
【0084】
上記中和処理が行われたアルミニウム支持体材料はさらに陽極酸化処理されて本発明に用いられるアルミニウム支持体が得られる。ここで、中和に使用する酸の種類を陽極酸化処理に使用する酸のそれに合わせることが特に好ましい。
【0085】
上記陽極酸化処理に用いられる電解液としては多孔質酸化皮膜を形成するものであれば如何なる電解液でもよいが、一般には硫酸、燐酸、蓚酸、クロム酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等、またはこれらの2種類以上を組み合わせた混酸が用いられる。陽極酸化の処理条件は使用する電解液により種々変化するので一概に特定することはできないが、一般的には、電解液の濃度が1〜80質量%、温度5〜70℃、電流密度1〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲が適当である。好ましいのは硫酸法で、通常直流電流で処理が行われるが、交流を用いることもできる。ここで、硫酸の濃度は10〜50質量%、温度20〜50℃、電流密度1〜20A/dm2で10秒〜5分間電解処理されるのが好ましく、また電解液中にはアルミニウムイオンが含まれているのが好ましい。
【0086】
上記陽極酸化処理して得られたアルミニウム支持体は、必要に応じ封孔処理を施してもよい。封孔処理は、熱水処理、沸騰水処理、水蒸気処理、珪酸ソーダ処理、重クロム酸塩水溶液処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム塩処理等の公知の方法を用いて行うことができる。特にアルカリ金属珪酸塩で封孔処理することが好ましい。
【0087】
(親水化処理)
上記陽極酸化処理あるいは陽極酸化処理に引き続いて封孔処理して得られたアルミニウム支持体には親水化処理を施してもよい。親水化処理には、米国特許第3,181,461号に記載のアルカリ金属珪酸塩、米国特許第1,860,426号明細書に記載の親水性セルロース、特公平6−94234号、同6−2436号に記載のアミノ酸及びその塩、同5−32238号に記載の水酸基を有するアミン類及びその塩、特開昭62−19494号に記載の燐酸塩、同59−101651号に記載のスルホ基を有するモノマー単位を含む高分子化合物等を用いることができる。
【0088】
(支持体裏面保護層)
さらに、複数のポジ型PS版を重ねたときの感光層への擦れ傷を防ぐために、また、現像時、現像液中へのアルミニウム成分の溶出を防ぐために、特開昭50−151136号、同57−63293号、同60−73538号、同61−67863号、特開平6−35174号等に記載されている、支持体裏面に保護層を設ける処理を行うことができる。
【0089】
(可視画性の付与)
通常、印刷業界においては、印刷版材料に画像形成した印刷版を印刷する前に、正しく画像が形成されているかを検査する検版という作業がある。検版をするためには、印刷前に形成された画像が版面上で見える性能、つまり可視画性がよいことが好ましい。本発明の印刷版材料は、現像処理なしに印刷可能なプロセスレス印刷版材料なので、露光することによる光または熱によって露光部分または未露光部分の光学濃度が変化することが好ましい。
【0090】
本発明において好ましく用いられる方法としては、露光することによる光または熱によって光学濃度が変化するシアニン系赤外線吸収色素を含む方法、光または熱酸発生剤とその酸により変色する化合物を用いる方法、ロイコ色素のような発色剤と顕色剤を組み合わせて用いる方法等がある。
【0091】
本発明において、露光することによる光または熱によって光学濃度が変化するシアニン系赤外線吸収色素としては、2つ以上のスルホン基を有するインドレニン系、または縮合環を有するインドレニン系の水溶性シアニン色素が好適である。特に好ましい色素の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0092】
【化1】
【0093】
【化2】
【0094】
上記シアニン系赤外線吸収色素の構成層への添加量は、構成成分の1質量%以上で本発明の効果が十分発揮できる。好ましい添加量は3〜50質量%である。
【0095】
本発明において光または熱酸発生剤とは、露光によってルイス酸やブレンステッド酸を生成する化合物を意味する。光または熱酸発生剤の具体例としては、ジアゾ化合物、オルトキノンジアジド化合物、ポリハロゲン化合物、オニウム塩化合物等が挙げられる。またこれらの構造をポリマーに組み込んだ化合物を用いることもできる。
【0096】
ジアゾ化合物としては、例えば、米国特許2063631号、同2667415号等に開示されているジアゾニウム塩とアルドールやアセタール等の反応性カルボニル基を含有する有機結合剤との反応生成物であるジフェニルアミン−p−ジアゾニウム塩とフォルムアルデヒド縮合生成物、またこれらの水溶性ジアゾニウム塩化合物を特開昭54−98613号に開示された方法により、BF4−、PF6−等のアニオン成分等で置換したハロゲン化ルイス酸塩、アリルジアゾニウム塩化合物等が挙げられる。
【0097】
オルトキノンジアジド化合物としては、1分子中に少なくともひとつのオルトキノンジアジド基を有する化合物で、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−エチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−イソブチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−α−ナフチルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルフォン酸−ベンジルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルエステル、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−エチルアミド、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルフォン酸−フェニルアミド等が挙げられる。
【0098】
ポリハロゲン化合物としては、ポリハロゲンを含むアセトフェノン、例えばトリブロモアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、o−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、p−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ニトロ−トリブロモアセトフェノン、m−ブロモ−トリブロモアセトフェノン、p−ブロモ−トリブロモアセトフェノン等、また、ポリハロゲンを含むスルフォキサイド、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォキサイド、ジブロモメチル−トリブロモメチルスルフォキサイド、トリブロモメチル−フェニルスルフォキサイド等、またポリハロゲンを含むスルフォン、例えばビス(トリブロモメチル)スルフォン、トリクロロメチル−フェニルスルフォン、トリブロモメチル−フェニルスルフォン、トリクロロメチル−p−クロロフェニルスルフォン、トリブロモメチル−p−ニトロフェニルスルフォン2−トリクロロメチルベンゾチアゾールスルフォン、2,4−ジクロロフェニル−トリクロロメチルスルフォン等、その他ポリハロゲンを含むピロン化合物、トリアジン化合物、オキサジアゾール化合物等が挙げられる。
【0099】
オニウム塩化合物及びその他の光または熱酸発生剤としては、S.P.Papas,et al.,Polym.Photochem.,5,1,p104〜115 (1984)に記載されているオニウム塩化合物、また色材,66(2),p104〜115(1993)に紹介されている、Ph2I+/SbF6−等のジアリルヨードニウム塩化合物に代表される光酸発生剤、トリアリルスルフォニウム塩化合物、トリアリルセレノニウム塩化合物、ジアルキルフェナシルスルフォニウム塩化合物、ジアルキル−4−フェナシルスルフォニウム塩化合物、α−ヒドロキシメチルベンゾインスルフォン酸エステル、N−ヒドロキシイミノスルフォネート、α−スルフォニロキシケトン、β−スルフォニロキシケトン、鉄−アレーン錯体化合物(ベンゼン−シクロペンタジエニル−鉄(II)ヘキサフルオロフォスフェート等)、o−ニトロベンジルシリルエーテル化合物、ベンゾイントシレート、トリ(ニトロベンジル)フォスフェート等が挙げられる。
【0100】
その他、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩、有機ハロゲン化合物、o−ニトロベンジル誘導体、イミノスルホネート及びジスルホン化合物等を挙げることができる。
【0101】
さらに具体的には、例えば、特開平9−244226号化7〜化9に記載のT−1〜T−15の式で示される化合物を挙げることができる。
【0102】
これらの内、より好ましいものはトリハロメチル基を2個以上有するs−トリアジン化合物であり、特に好ましくはトリス(トリクロロメチル)−s−トリアジンである。これら光または熱酸発生剤の含有量は、印刷版材料の全固形分に対し、0.01〜40質量%、好ましくは0.1〜30質量%である。
【0103】
本発明において、酸によって変色する化合物としては、例えばジフェニルメタン、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0104】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH(保土ケ谷化学(株)製)、オイルブルー#603(オリエント化学工業(株)製)、オイルピンク#312(オリエント化学工業(株)製)、オイルレッド5B(オリエント化学工業(株)製)、オイルスカーレット#308(オリエント化学工業(株)製)、オイルレッドOG(オリエント化学工業(株)製)、オイルレッドRR(オリエント化学工業(株)製)、オイルグリーン#502(オリエント化学工業(株)製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土ケ谷化学工業(株)製)、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボステアリルアミノ−4−p−ジヒドロオキシエチルアミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等が挙げられる。
【0105】
また、酸で発色する化合物としてアリールアミン類の有機染料を用いることができる。この目的に適するアリールアミン類としては、第一級、第二級芳香族アミンのような単なるアリールアミンのほかにいわゆるロイコ色素も含まれ、これらの例としては、ジフェニルアミン、ジベンジルアニリン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、p−トルイジン、4,4′−ビフェニルジアミン、o−クロロアニリン、o−ブロモアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、o−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、1,2,3−トリフェニルグアニジン、ナフチルアミン、ジアミノジフェニルメタン、アニリン、2,5−ジクロロアニリン、N−メチルジフェニルアミン、o−トルイジン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメタン、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン、1,2−ジアニリノエチレン、p,p′,p″ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、p,p′−テトラメチルジアミノトリフェニルメタン、p,p′−テトラメチルジアミノジフェニルメチルイミン、p,p′,p″−トリアミノ−o−メチルトリフェニルメタン、p,p′,p″−トリアミノトリフェニルカルビノール、p,p′−テトラメチルアミノジフェニル−4−アニリノナフチルメタン、p,p′,p″−トリアミノフェニルメタン、p,p′,p″−ヘキサプロピルトリアミノトリフェニルメタン等が挙げられる。
【0106】
本発明において、顕色剤としては、感熱記録体において電子受容体として使用される酸性物質がいずれも使用でき、例えば酸性白土カオリン、ゼオライト等の無機酸、芳香族カルボン酸、その無水物またはその金属塩類、有機スルホン酸、その他の有機酸、フェノール系化合物、フェノール系化合物のメチロール化物、フェノール系化合物の塩または錯体等の有機系顕色剤等が挙げられ、なかでもフェノール系化合物のメチロール化物及びフェノール系化合物の塩(以下、特に断りのないかぎり錯塩も含む)が好ましい。
【0107】
これら顕色剤のうち、有機系顕色剤の具体例としては、フェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシアセトフェノン、2,2′−ジヒドロキシジフェニル、2,2′−メチレンビス(4−クロロフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4′−イソプロピリデンジフェノール(別名ビスフェノールA)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4′−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4′エチレンビス(2−メチルフェノール)、4,4′−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、2,2′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ヘプタン、4,4′−シクロヘキシリデンビス(2−イソプロピルフェノール)、4,4′−スルホニルジフェノール等のフェノール系化合物、フェノール系化合物のメチロール化物、フェノール系化合物の塩サリチル酸アニリド、ノボラック型フェノール樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル等が挙げられる。
【0108】
本発明においては、顕色剤とともに用いられる発色剤としては、トリフェニルメタンラクトン型等のロイコ色素を用いることができる。このようなロイコ色素としては、例えば、クリスタルバイオレットラクトン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノフルオラン、マラカイトグリーンラクトン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルドール−3−イル)フタリド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等が挙げられる。
【0109】
上記発色剤と顕色剤は、顕色剤/発色剤の質量比が0.1/1〜5/1となる範囲で通常用いるが、なかでも質量比が0.5/1〜3/1となる範囲が好ましい。
【0110】
(露光)
本発明はまた、請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷版材料をサーマルヘッドまたはサーマルレーザーを用いて画像を形成した後に、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去する工程を含む印刷方法も提供するものである。
【0111】
本発明の印刷版材料の画像形成は熱により行うことができるため、感熱プリンタで用いられるようなサーマルヘッドによっても画像形成が可能であるが、特にサーマルレーザーによる露光によって画像形成を行うことが好ましい。
【0112】
露光に関しては、より具体的には、赤外及び/または近赤外領域で発光する、すなわち700〜1500nmの波長範囲で発光するレーザーを使用した走査露光が好ましい。レーザーとしてはガスレーザーを用いてもよいが、近赤外領域で発光する半導体レーザーを使用することが特に好ましい。
【0113】
本発明の走査露光に好適な装置としては、半導体レーザーを用いてコンピュータからの画像信号に応じて印刷版材料表面に画像を形成可能な装置であればどのような方式の装置であってもよい。
【0114】
一般的には、
(1)平板状保持機構に保持された印刷版材料に一本または複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って印刷版材料全面を露光する方式、
(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された印刷版材料に、円筒内部から一本または複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式、
(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された印刷版材料に、円筒外部から一本または複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて印刷版材料全面を露光する方式が挙げられる。
【0115】
本発明に関しては、特に(3)の走査露光方式が好ましく、特に印刷装置上で露光を行う装置においては、(3)の露光方式が用いられる。
【0116】
このようにして画像形成がなされた印刷版材料は、現像処理を行うことなく印刷を行うことができる。画像形成後の印刷版材料をそのまま印刷機の版胴に取り付けるか、あるいは印刷版材料を印刷機の版胴に取り付けた後に画像形成を行い、版胴を回転させながら水供給ローラーまたはインク供給ローラーを印刷版材料に接触させることで画像形成層の非画像部を除去することが可能である。
【0117】
本発明の印刷版材料における上記の画像形成層非画像部の除去工程は、PS版を使用した通常の印刷シークエンスで行うことができるため、いわゆる機上現像処理による作業時間の延長の必要がないため、コストダウンにも有効である。
【0118】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0119】
実施例1
(支持体の調製)
厚さ0.24mmのJIS1050のアルミニウム支持体材料を、50℃に保たれた1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/m2になるように溶解処理を行い水洗した後、1L当たり塩酸10gを添加した水溶液に10秒間浸漬して中和処理した後、水洗した。
【0120】
次いでこのアルミニウム支持体材料を、電流密度50A/dm2、正弦波交流を用いて、1L当たり塩酸10gを添加した水溶液で1回当たりの処理電気量40C/dm2、休止時間4.0秒で電解処理回数12回の条件で、電気化学的粗面化処理を行った。電気化学的粗面化処理後は、50℃に保たれた1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、溶解量が2g/m2になるようにアルカリ溶解処理し、さらに水洗した後、25℃に保たれた10質量%硫酸水溶液中に10秒間浸漬して中和処理し、その後水洗した。
【0121】
次いで、20質量%硫酸水溶液中で、直流を用い、温度25℃、電流密度5A/dm2で陽極酸化皮膜質量が2.0g/m2となるよう陽極酸化処理した後、水洗、乾燥して7種類のアルミニウム支持体(支持体1〜7)を得た。こうして得られたアルミニウム支持体表面の、大きなうねりの平均開孔径d2(μm)、小ピットの平均開孔径d1(μm)及び小ピットの平均深さh(μm)と平均開孔径d1(μm)との比h/d1を後述の方法により測定したところ、大きなうねりの平均開孔径は4.8μm、小ピットの平均開孔径は0.6μm、小ピットの深さ/開孔径の比は0.18であった。
【0122】
その後、上記支持体を70℃の2.5質量%珪酸ナトリウム水溶液で1分間処理し、水洗乾燥して本発明に係るアルミニウム支持体を得た。
【0123】
(d2、d1及びh/d1の測定)
いずれもアルミニウム支持体表面のSEM写真を撮影して測定した。大きなうねりの平均開孔径d2(μm)については、1000倍のSEM写真を用い、輪郭が明確に判別できるうねり1個づつの長径と短径とを測定してその平均をうねりの開孔径とし、SEM写真中で測定した大きなうねりの開孔径の和を測定した大きなうねり数で割って求めた。また、小ピットの平均開孔径d1(μm)については5000倍のSEM写真を用い、大きなうねりの場合と同様の手法で求めた。小ピットの平均深さh(μm)と平均開孔径d1(μm)との比h/d1は、断面の5000〜20000倍のSEM写真を用いて、断面がピットのほぼ中央を分断しているピットを選んで測定した。
【0124】
(画像形成層の塗布)
表2の組成を十分に混合攪拌した後、濾過して画像形成層用塗布液を作製した。
【0125】
【表2】
【0126】
上記アルミニウム支持体上に、表2の画像形成層用塗布液をワイヤーバーで乾燥塗布質量が1.5g/m2になるように塗布した。乾燥条件は55℃、3分間行い、さらに55℃、24時間のエイジングを行った。
【0127】
(オーバーコート層の塗布)
上記画像形成機能層上に、下記組成のオーバーコート層塗布液をワイヤーバーで塗布し、100℃、90秒間乾燥した。オーバーコート層の乾燥塗布質量は0.3g/m2であった。さらに、55℃、24時間のエイジングを行い、オーバーコート層を有する印刷版材料1〜3を作製した。
【0128】
(画像形成)
上記作製した印刷版材料への画像形成は赤外線レーザー露光により行った。露光には波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、レーザービームの焦点を印刷版材料表面に合わせて、露光エネルギーを300mj/cm2とした条件で、2400dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す)、175線で画像を形成した。評価用の画像として、ベタ画像と1〜99%の網点画像を用いた。
【0129】
なお、露光された部分は色調が変化し、画像が目視で確認できた。その時の濃度変化を測定したところ0.2であった。
【0130】
(印刷性能の評価方法)
上記作製した印刷版材料を用いて下記の印刷試験を行い、性能を評価した。その結果を表3に示す。
【0131】
(印刷方法)
印刷機(三菱重工業(株)製DAIYA1F−1)の版胴に印刷版材料を取り付け、コート紙、湿し水(アストロマーク3(日研化学研究所製)2質量%)、インク(東洋インク(株)製トーヨーキングハイエコーM紅)を使用して印刷を行った。印刷開始のシークエンスはPS版の印刷シークエンスで行い、特別な機上現像操作は行わなかった。印刷後に版面を観察したところ、本発明に係る材料の非画像部は除去されていた。
【0132】
(刷り出し性評価)
刷り出し時、良好なS/N(非画像部に地汚れがなく、即ち、画像形成層の非画像部が印刷機上で除去され、かつ、画像部の濃度が適正範囲となっている)を有した印刷物が得られるまでの印刷枚数を評価した。枚数が少ないほど優れている。40枚以上では実用上問題がある。
【0133】
(汚し回復性評価)
湿し水の供給を停止し、版全面にインクを付ける。その後、湿し水を供給して非画像部のインク汚れが無くなる印刷枚数を求めた。枚数の少ないほど優れている。
【0134】
(耐刷性評価)
3%網点画像の点が半分以上欠落する印刷枚数を求めた(印刷は10万枚まで行った)。印刷枚数の多いほど優れている。
【0135】
【表3】
【0136】
実施例2
実施例1で作製したアルミニウム支持体上に下記組成の下塗り層をワイヤーバーで乾燥塗布質量が0.1gになるように塗布し、100℃、90秒間乾燥した。その上に表4記載の画像形成機能層塗布液を実施例1と同様にして塗布した。さらに実施例1の親水性オーバーコート層を塗布し、さらに、55℃、24時間のエイジングを行い、印刷版材料4〜6を作製した。
【0137】
【0138】
【表4】
【0139】
(保存性の評価方法)
上記作製した印刷版材料を、保存性の代用条件として50℃、RH80%のサーモ条件で3日間保管した。その試料を実施例1と同様にして露光を行った。露光された部分は色調が変化し、画像が目視で確認できた。その時の濃度変化を測定したところ0.25であった。さらに実施例1と同様にして印刷試験を行い、性能を評価した。その結果を表5に示す。
【0140】
【表5】
【0141】
実施例3
実施例2で作製した印刷版材料4を実施例1と同様にして露光し、露光後の下記の各タイミングで現像インクを用いて画像形成の状態をルーペを用いて評価した。その結果を表6に示す。このように、露光終了後になんらかの乾燥過程を設けることで、画像強度が安定することが分かる。
【0142】
【表6】
【0143】
【発明の効果】
本発明により、印刷性能、特に刷り出し性や汚し回復性、及び画像形成前の印刷版材料の保存性が改良された印刷版材料及びこれを用いた印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルミニウム支持体の一例を示す拡大断面図である。
【図2】アルミニウム支持体の一例を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
1 小ピット
2 大きなうねり
d1 小ピット1の平均開孔径
d2 大きなうねり2の平均開孔径
h 小ピットの平均深さ
Claims (7)
- 粗面化処理及び陽極酸化処理が施されたアルミニウム支持体上に、熱溶融性または熱融着性微粒子、及び親水性結合材を熱架橋しうる架橋剤を含有する画像形成機能層を少なくとも1層有することを特徴とする印刷版材料。
- アルミニウム支持体をさらにアルカリ金属珪酸塩で処理することを特徴とする請求項1に記載の印刷版材料。
- アルミニウム支持体が、大きなうねりに小ピットが重畳された2重構造の粗面形状を有し、かつ小ピットの平均開孔径d1(μm)が0.1〜3μmで、小ピットの平均深さh(μm)と該平均開孔径d1(μm)の比h/d1が0.4以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版材料。
- アルミニウム支持体上に光熱変換素材を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
- 画像形成機能層の上層に親水性オーバーコート層を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷版材料。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷版材料にサーマルヘッドまたはサーマルレーザーを用いて画像形成した後、画像形成層の非画像部を印刷機上で除去する工程を有することを特徴とする印刷方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷版材料にサーマルヘッドまたはサーマルレーザーを用いて画像形成した後、印刷を行う印刷方法において、像形成後から、印刷機上で印刷版材料表面と水供給ローラーまたはインク供給ローラーとが接触するまでに、印刷版材料の表面を乾燥させる工程を有することを特徴とする印刷方法。
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