JP2004202815A - ストランド冷却装置及び冷却方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ストランドを冷却液とともに案内溝を流下させながら冷却するとともに、ストランドの冷却温度及び冷却速度の制御を精密に行うことが可能なストランド冷却装置を提供する。
【解決手段】ダイヘッド2から押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂のストランドSを、冷却液とともに案内溝4を流下させながら冷却するストランド冷却装置1において、ストランドSの流線に沿った少なくとも3箇所において、ストランドSの表面温度を検出し、ストランドSの径、熱可塑性樹脂の熱伝導率、及び検出されたストランドSの表面温度からストランドSの内部温度を推定し、この内部温度に基づき、冷却液の流量又は冷却液の温度を制御することにより、冷却後のストランドの温度を制御する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融した熱可塑性樹脂からなるストランドの冷却技術に関し、特にストランドを冷却液とともに案内溝を流下させながら冷却するストランドの冷却技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂をペレット化する際には、溶融した熱可塑性樹脂をダイヘッドから押し出してストランド(細条体)を生成し、このストランドを細断してペレット化する。このように、溶融した熱可塑性樹脂から押出成型されるストランドを冷却する装置として、ストランド冷却装置が使用される。
【0003】
ストランド冷却装置においては、ストランドを冷却しすぎるとストランドのゴム弾性が失われ、ヒゲ状物が発生したり、ストランドが案内溝から外れたりする不都合が生じる。一方、ストランドの冷却が足りないと、ストランド同士が融着を起こしたり、ストランドの裁断時に裁断機の刃にストランドが付着してトラブルを生じる。従って、ストランド冷却装置においては、ストランドの温度管理は極めて重要な技術課題である。
【0004】
従来のストランド冷却装置としては、特許文献1〜3に、ストランドの案内溝の溝底部の複数箇所に測温抵抗、熱電対、サーミスタ等の温度センサを設け、温度を検出し、検出温度によって冷却液の流量又は冷却液の温度を制御するストランド冷却装置が記載されている。
【0005】
また、特許文献4には、ストランドの案内溝上端のシュート板の上面近傍及びストランドの案内溝下端の裁断機直前の案内溝の上面近傍に温度検出手段を設けたストランド冷却装置が記載されている。
【0006】
更に、特許文献5には、ストランドの案内溝上端のストランドガイド板の上部に放射温度計を設けて、ストランドの温度を監視するストランド冷却装置が記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特許第2736732号公報
【特許文献2】
実用新案登録第3038081号公報
【特許文献3】
実用新案登録第3062040号公報
【特許文献4】
特開平11−300738号公報
【特許文献5】
特開平7−232322号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
実際のストランドの性状は、温度に対して極めて敏感である。すなわち、例えば、ストランドの冷却速度が僅かに遅いとストランド内に熱可塑性樹脂の結晶が生じて白濁し、ストランドの品質が低下する。また、裁断機手前において、ストランド表面はガラス転移温度以下に冷却されていても、ストランド内部は溶融状態にある場合もある。逆に、ストランドの冷却速度が僅かに速いと、ストランド表面が早期に固化し、内部が除冷されてストランド内部に気泡が生じる場合がある。また、ストランドの収縮により、ストランドが案内溝に沿って滑らかに移送されず、案内溝から飛び出す、いわゆる「暴れ」現象が生じる場合もある。このように、ストランドの温度管理は高い精度が要求される。特に、近年は、プラスチック製品の高品質化の要求に伴い、プラスチックペレットにも高い品質や均質性が求められるようになってきており、ストランドの温度管理もより厳しく要求されてきている。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1〜5に記載のストランド冷却装置は、大まかなストランドの温度管理はできるものの、その温度管理の精度に限界がある。
【0010】
特許文献1〜3に記載のストランド冷却装置では、ストランドの案内溝の底部に温度センサを設けて温度検出を行っている。この場合、検出される温度は、ストランドを冷却する冷却液の温度に近く、ストランドの温度を直接検出することはできない。従って、ストランドの温度制御の精度には限界がある。
【0011】
特許文献4記載のストランド冷却装置では、ダイヘッドからストランドが吐出された直後の温度と、ストランドが裁断機に入る手前のストランド近傍の雰囲気温度を検出している。これは、主としてストランドの流動が滞り堆積するといった異常の発生を検知することを目的としており、ストランドの温度を直接検出するものではない。
【0012】
特許文献5に記載のストランド冷却装置では、ストランドガイド板の上方から、放射温度計によりストランドの温度を検出するものであるが、これは、ストランド同士が融着を起こす等の異常を検出するためのものであり、ストランドの精密な温度管理は行うことができない。
【0013】
従って、従来は、結局、最終的なストランドの微妙な温度管理は、作業者が、経験と勘にたよって、冷却液の流量を調節し、又は冷却液の温度を調節することにより行わざるを得ないのが実情であった。
【0014】
そこで、本発明の解決すべき課題は、ストランドを冷却液とともに案内溝を流下させながら冷却するとともに、ストランドの冷却温度及び冷却速度の制御を精密に行うことが可能なストランド冷却技術を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るストランド冷却装置は、ダイヘッドから押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂からなるストランドを、冷却液とともに案内溝を流下させながら冷却するストランド冷却装置において、前記ストランドの流線に沿った少なくとも3つの離隔した点において、前記ストランドの表面温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出するストランドの表面温度に基づき前記冷却液の流量又は前記冷却液の温度を制御することで、冷却後のストランドの温度を制御する温度制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0016】
この構成により、温度検出手段がストランドの表面温度を直接検出し、その表面温度に基づき、温度制御手段が冷却液の流量又は冷却液の温度を制御するため、ストランドの温度制御を精度よく行うことが可能となる。
【0017】
また、ストランドの流線方向に沿った少なくとも3箇所においてストランドの表面温度を検出することで、ストランドの流線方向に沿ったストランドの温度変化の勾配、すなわち冷却速度を検出することができる。従って、ストランドの流線に沿った各点の温度変化(冷却速度)を精度よく予測することができるため、温度制御手段により冷却速度の精密な制御が可能となる。
【0018】
尚、ここで冷却液には、一般に、水や有機溶媒等が使用される。
【0019】
また、本発明においては、前記温度制御手段は、ストランドの径、前記熱可塑性樹脂の熱伝導率、及び前記温度検出手段の検出するストランドの表面温度からストランドの内部温度を推定する内部温度推定手段と、前記ストランドの内部温度に基づき前記冷却液の流量を調節する流量調節手段、又は前記ストランドの内部温度に基づき前記冷却液の温度を調節する温度調節手段とを具備する構成とすることができる。
【0020】
ストランドを構成する熱可塑性樹脂の種類によって、熱伝導率が異なるため、ストランドの表面温度の検出のみではストランドの過冷又は冷却不足が生じ得る。しかし、内部温度推定手段により、ストランドの表面温度の実測値及び熱可塑性樹脂の熱伝導率からストランドの内部温度を推定することで、ストランド冷却装置で冷却されるストランドの品質をより正確に管理することが可能となる。
【0021】
また、本発明においては、前記案内溝の溝底面を、1つ以上の段差を有する傾斜面状に形成するとともに、前記溝底面の段差付近の下流側においてストランドに気体を吹き付ける第1の気体噴射手段と、前記第1の気体噴射手段により気体が吹き付けられる部分近傍の下流側のストランドの表面温度を非接触で検出する温度センサとを具備する構成とすることができる。
【0022】
これにより、溝底面の段差部分においては、ストランドは段差に追従せずに、滑らかな曲線を描いて案内溝の下流方向に流下する。一方、冷却液は、液体であるため、溝底面の段差部分で滝状に段差下方に流れ落ちる。更に、第1の気体噴射手段が、ストランドを伝わって流下しようとする冷却液を段差の下部に吹き落とすため、第1の気体噴射手段により気体が吹き付けられる部分近傍の下流側においては、ストランドが空気中に露出する。温度センサは、この露出したストランドの表面温度を検出する。従って、冷却液の影響を受けることなく、ストランドの表面温度を精度よく検出することが可能となる。
【0023】
ここで、ストランドに吹き付ける「気体」としては、空気(エア)、窒素ガス、不活性ガス等の気体が使用される。尚、気体がストランドと反応せず安定であるという点からは、窒素ガスや不活性ガスを使用することが好ましい。但し、ストランドと気体との反応が問題とされない場合には、経済性の点から、空気(エア)を用いるのが好ましい。
【0024】
また、本発明においては、前記案内溝の溝底面に設けられ、多数の孔が形成された冷却液排出部と、前記冷却液排出部の上方から前記ストランドに気体を吹き付ける第2の気体噴射手段と、前記第2の気体噴射手段により気体が吹き付けられる部分近傍の下流側のストランドの表面温度を非接触で検出する温度センサとを具備する構成とすることができる。
【0025】
この構成により、冷却液排出部においては、ストランドは溝底面に沿って案内溝の下流方向に流下する。一方、冷却液は、液体であるため、冷却液排出部に形成された多数の孔から下方へ排出される。更に、第2の気体噴射手段が、ストランドを伝わって流下しようとする冷却液を冷却液排出部の孔に吹き落とすため、第2の気体噴射手段により気体が吹き付けられる部分よりも下流側においては、ストランドが空気中に露出する。温度センサは、この露出したストランドの表面温度を検出する。従って、冷却液の影響を受けることなく、ストランドの表面温度を精度よく検出することが可能となる。
【0026】
ここで、冷却液排出部としては、多数の開口が穿孔されたパンチングメタルや、格子網等が使用される。
【0027】
本発明に係るストランド冷却方法は、ダイヘッドから押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂からなるストランドを、冷却液とともに案内溝を流下させながら冷却するストランド冷却方法において、ストランドの流線に沿った少なくとも3箇所において、ストランドの表面温度を検出し、ストランドの径、前記熱可塑性樹脂の熱伝導率、及び検出されたストランドの表面温度からストランドの内部温度を推定し、前記ストランドの内部温度に基づき、前記冷却液の流量又は前記冷却液の温度を制御することにより、冷却後のストランドの温度を制御することを特徴とする。
【0028】
このように、ストランドの流線方向に沿った3点以上の位置におけるストランドの表面温度からストランド内部温度を推定して冷却液の流量又は温度を制御することで、上述したように、ストランドの品質を正確に管理することが可能となる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1は本実施形態に係るストランド冷却装置の構成図、図2は案内溝の上流側端部付近の斜視図、図3は案内溝の下流側端部付近の斜視図である。
【0031】
図1〜3において、本実施形態のストランド冷却装置1は、溶融状態の熱可塑性樹脂を押し出してストランドSを形成するダイヘッド2、ダイヘッド2の下部に設けられたシュート板3、シュート板3の下流側に傾斜して設けられた案内溝4を有する。
【0032】
ダイヘッド2は、溶融状態の熱可塑性樹脂を、一列に配列された小孔から押し出すことにより、複数本の溶融状態のストランドSを形成する。シュート板3は、ダイヘッド2から押し出された溶融状態のストランドSを受け、案内溝4の方向へ誘導する。案内溝4の上流側端部付近は、段差Aが形成されている。段差Aの上部は段差上部板4aが傾斜状に配設されており、段差上部板4aの上面にはストランドSが通る複数の軌道調整溝4bが形成されている。この軌道調整溝4bは、一列に配列された複数本の溶融状態のストランドS同士が、互いに融着することがないように、ストランドS同士を適当な間隔となるように調整する。案内溝4の下流側端部付近には、多数の打抜孔が形成された冷却液排出部4cが形成されている。この冷却液排出部4cの溝底面は、パンチングメタル(打抜金網)からなる液切板4dによって構成されている。
【0033】
案内溝4の下流側には、案内溝4で冷却されたストランドSをペレット(チップ)Pに裁断する裁断機10が設けられている。この裁断機10は、案内溝4を移送されるストランドSを引っ張り下げるニップロール装置5、並びにニップロール装置5により引っ張り下げられたストランドSをペレットPに裁断する固定刃6a及び回転刃6bから構成されている。また、ニップロール装置5は、アッパーロール5aとフィードロール5bとからなり、この2つのロール間にストランドSを挟んで、ストランドSを引っ張り下げる。裁断機10で生成されたペレットPは、搬出シュート7へ搬出され、ペレットPと冷却液が分離される。
【0034】
シュート板3の上流側には、冷却液供給ノズル8が設けられており、また、案内溝4の上部には、冷却液散布管9が設けられている。冷却液散布管9は、案内溝4に沿って、複数の箇所から、案内溝4の溝底部にあるストランドSに冷却水を噴射散布する。また、ニップロール装置5の下部には、コンベヤ液供給ノズル11が設けられておる。このコンベヤ液供給ノズル11からは、裁断機10で生成されたペレットPを搬出シュート7へ搬送するためのコンベヤ液(冷却液と兼用される。)が供給される。
【0035】
冷却液は冷却液供給タンク12に貯留されている。循環ポンプ13は、冷却液供給タンク12から冷却液を汲み上げて、熱交換器14に送る。熱交換器で冷却された冷却液は、分岐管15で分岐され、それぞれ、冷却液供給ノズル8、冷却液散布管9、及びコンベヤ液供給ノズル11へ送られる。なお、冷却液供給ノズル8、冷却液散布管9、及びコンベヤ液供給ノズル11へ送られる冷却液の流量は、それぞれ、流量調節弁16,17,18により調節される。
【0036】
また、熱交換器14は、冷却液と冷媒との熱交換を行って冷却液を降温させるものであるが、流量調節弁19によって冷媒の流量を調節することにより、熱交換器14から流出する冷却液の液温を調節することが可能とされている。
【0037】
案内溝4の上流側の段差A付近の下流側には、ストランドSにエアを吹き付ける気体噴射手段20が設けられている。また、冷却液排出部4cの上方には、ストランドSにエアを吹き付ける気体噴射手段21が設けられている。これらの気体噴射手段20,21には、送風機25から加圧されたエアが供給される。
【0038】
また、気体噴射手段20,21によりエアが吹き付けられる部分近傍の下流側には、ストランドSの表面温度を非接触で検出する温度センサ22,23がそれぞれ設けられている。更に、ダイヘッド2の下部から押し出される溶融状態のストランドSの表面温度を非接触で検出する温度センサ24が設けられている。尚、温度センサ22,23,24には、例えば、赤外線温度センサなどの非接触型温度センサが使用される。
【0039】
これらの温度センサ22,23,24により検出されたストランドSの表面温度の検出値は、電気信号として制御部26に送信される。制御部26は、各温度センサ22,23,24から送信されるストランドSの温度検出値の値に基づき、流量調節弁16,17,18の開度を制御して、冷却液の流量制御を行い、又は、流量調節弁19の開度を制御して冷却液の温度を制御する。
【0040】
以上のように構成された本実施形態に係るストランド冷却装置において、以下そのストランド冷却方法の説明をする。
【0041】
運転開始時においては、まず、制御部26は、循環ポンプ13を起動して冷却液を冷却液供給ノズル8、冷却液散布管9、及びコンベヤ液供給ノズル11へ供給する。この状態で、ダイヘッド2から、溶融状態のストランドSが押し出される。このとき、ダイヘッド2から押し出された直後のストランドSの温度、すなわち、冷却液により冷却される前のストランドSの温度は、温度センサ24により検出されて、制御部26に送信される。
【0042】
ダイヘッド2から押し出されたストランドSは、冷却液の流れにより、シュート板3から案内溝4を通って、裁断機10に冷却されながら搬送される。そして、ストランドSは裁断機10の先端はニップロール装置5に達して、下流側に引っ張られる。ニップロール装置5を通過したストランドSは、固定刃6a及び回転刃6bによりペレットPに裁断される。ペレットPは、コンベヤ液供給ノズル11から供給される冷却液によって、搬出シュート7に搬出される。搬出シュート7では、ペレットPと冷却液とが分離され、冷却液は、再び冷却液供給タンク12に戻される。このとき同時に、気体噴射手段20,21には、送風機25から加圧されたエアが供給される。そして、気体噴射手段20,21より、ストランドにエアが噴射される。
【0043】
案内溝4の上流側端部の段差Aにおいては、段差上部板4aに達したストランドSは、冷却液によって表面が冷却され、或る程度のゴム弾性を有する弾性体である。従って、段差上部板4aを通過するストランドSは、段差Aに追随して折れ曲がることはなく、緩やかな曲線を描いて段差Aの下部の案内溝の溝底部に達する。一方、冷却液は、液体であるため、段差Aにおいては大部分は、滝のように段差の下部に流れ落ちる。但し、一部の冷却液は、ストランドSを伝って流れようとする。しかしながら、気体噴射手段20により、ストランドSの表面にはエアが吹き付けられるため、ストランドSを伝って流れる冷却液は、ストランドSから吹き落とされる。従って、気体噴射手段20の下流側の短い区間においては、ストランドSが空気中に露出する。温度センサ22はこのストランドSが露出した部分において、ストランドSの表面温度を検出する。このため、温度センサ22は、冷却液に影響されることなくストランドSの表面温度を精度よく検出することができる。
【0044】
更に、案内溝4の下流側端部付近においては、冷却液排出部4aに達したストランドSは、液切板4dの上面を通過してニップロール装置5に搬送される。一方、ストランドSと共に案内溝4を流下した冷却液の大部分は、液切板4dの打抜孔から液切板4dの下部に流れ落ちる。しかし、冷却液の一部は、ストランドSを伝って流れようとする。しかしながら、気体噴射手段21により、ストランドSの表面にはエアが吹き付けられるため、ストランドSを伝って流れる冷却液は、ストランドSから液切板4dの下方に吹き落とされる。従って、気体噴射手段21の下流側からニップロール装置5までの区間においては、ストランドSが空気中に露出する。温度センサ23はこのストランドSが露出した部分において、ストランドSの表面温度を検出する。このため、温度センサ23は、冷却液に影響されることなくストランドSの表面温度を精度よく検出することができる。
【0045】
以上のようにして温度センサ22,23により検出されたストランドSの表面温度は、電気信号として制御部26に送信される。
【0046】
制御部26は、温度センサ24,22,23から送信されたストランドSの表面温度の値に基づいて、ストランドの中心温度を推定する。ストランドSの中心温度の推定は、例えば以下のようにして行われる。
【0047】
まず、ストランドの表面温度は、検出された3点におけるストランドの表面温度の値を補間又は補外して求められる。実際には、補間又は補外曲線は、理論計算により求めることも可能であるが、ストランド冷却装置に合わせて、予め実験式を用意しておくことが好ましい。
【0048】
次に、このようにして得られたストランド表面温度の変化曲線から、ストランドの内部温度を推定する。この内部温度の推定のためには、熱伝導モデルを用いる。最も単純なモデルとして、ストランド内の熱伝導率は一様であり、ストランドの流線方向への熱伝導は無視することができる(すなわち、ストランドの半径方向への熱伝導のみを考える。)と仮定すれば、ストランド内部の熱伝導は、以下の(数1)で表される。
【数1】
Figure 2004202815
ここで、qは伝熱量〔W/m〕、λは熱伝導率〔W/mK〕、rはストランド中心からの距離〔m〕、Tは半径rにおけるストランドの内部温度〔K〕である。
【0049】
一方、伝熱量qの境界条件として、ストランド表面と大気又は冷却液間の伝熱量q〔W/m〕は、次の(数2)で表される。
【数2】
Figure 2004202815
ここで、hはストランドと空気又は冷却液間の熱伝達率〔W/mK〕、Tはストランドの表面温度〔K〕、Tは空気又は冷却液の温度〔K〕である。更に、初期条件として、ダイヘッド2から押し出された直後のストランドの内部温度は一様であると仮定する。すなわち、温度センサ24の検出する温度を初期のストランドの内部温度とする。
【0050】
以上の条件の下で、上記(数1)を数値積分により解けば、各時刻におけるストランドの内部温度を求めることができる。尚、ストランドを構成する熱可塑性樹脂の相転移時における潜熱は、内部温度の変化に大きく影響を与えるため、計算にあたってはこれを考慮する必要がある。
【0051】
図4は温度センサの検出値から補間及び補外されたストランドの表面温度及び推定されたストランド中心部の温度の変化の一例を示した図である。熱可塑性樹脂としてはナイロンを使用した。尚、図4の実験例において使用したストランド冷却装置は、図1の構成とは一部異なり、ストランドSが冷却液排出部4cを通過してからニップロール装置5に到達するまでの区間においても、所定の長さの冷却区間を設けてある。
【0052】
図4において、横軸はストランドSがダイヘッド2から押し出されてから経過した時間(すなわち、ストランドSが移送された距離に比例)、縦軸は温度を表す。また、TはストランドSの表面温度、TはストランドSの中心温度を表す。点xは、温度センサ24が検出する温度、点xは温度センサ22が検出する温度、点xは温度センサ23が検出する温度である。また、時刻tは、ストランドSは裁断機10により裁断される時点を表している。
【0053】
ダイヘッド2から押し出されたストランドSは、冷却液により冷却され、表面温度Tは早期に降温するが、ストランドSの中心温度はなかなか降温せず、或る時間までは溶融状態に近い状態を保つ。そして、一定の時間が経過すると、ストランドSの中心温度は急速に下降し始める。従って、ストランドSの中心温度が急速な下降を始める前にストランドSを裁断すると、ペレット同士が融着を起こしたり、裁断機10の固定刃6aや回転刃6bに熱可塑性樹脂が付着して切断できなくなる等のトラブルが発生する。また、逆に、ストランドの冷却速度が速すぎると、例えば、ポリカーボネートのような樹脂では、熱収縮の影響によりストランド内部に気泡が生じたり、ストランドがいわゆる「暴れ」現象をおこしたりする。
【0054】
そこで、制御部26は、ストランドSが裁断機10により裁断される時点におけるストランドSの中心温度T(t)を推定し、このT(t)の値が目標値Tに達するように流量調節弁16,17,18,19の開度を制御する。
【0055】
すなわち、ストランドSの中心温度T(t)が目標値Tよりも高い場合には、流量調節弁16,17,18の開度を大きくし、冷却液の流量を増加させるか、又は、流量調節弁19の開度を大きくし、冷却液の温度を下げる。逆に、ストランドSの中心温度T(t)が目標値Tよりも低い場合には、流量調節弁16,17,18の開度を小さくし、冷却液の流量を減少させるか、又は、流量調節弁19の開度を小さくし、冷却液の温度を上げる。尚、制御部26による温度制御の方式としては、一般に広く用いられているP制御、PI制御、PID制御等の方式を用いることができる。
【0056】
このように、裁断機10による裁断直前のストランドSの中心温度を制御することによって、ストランドSの温度管理を極めて精密に行うことが可能となり、高品質の熱可塑性樹脂ストランド及び熱可塑性樹脂ペレットを得ることが可能となる。また、従来、作業者が経験的に行っていた微妙な冷却水の流量及び温度の管理を、自動化することも可能となる。
【0057】
また、裁断直前のストランドSの中心温度を管理することで、同時に、ストランドSの冷却速度も管理することができるが、より厳密な冷却速度の管理が要求される場合には、冷却液散布管9を複数の区間ごとに分けて、各区間ごとに冷却液の流量制御を行うようにしてもよい。
【0058】
尚、本実施形態においては、ストランド冷却装置を、ストランドを裁断してペレット化する装置に応用した例について説明したが、本発明のストランド冷却装置は、熱可塑性樹脂の繊維、光ファイバー等の製造にも応用することが可能である。
【0059】
また、本実施形態においては、ストランドの表面温度の検出は3点で行うこととしたが、本発明はこれに限るものではなく、ストランドの流線に沿った4点以上の位置においてストランドの表面温度を検出するように構成してもよい。検出点の数は多いほど、ストランドの中心温度の推定精度が向上し、より精密な温度管理が可能となる。
【0060】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、冷却されるストランドの温度及び冷却速度の制御を精度よく行うことができるため、従来、作業者が経験的に行っていた冷却液の温度管理を、自動的に行うことが可能となる。また、冷却により製造されるストランドの品質を常に一定のものとすることが可能となる。更に、ストランド内部の結晶の発生の抑制及び気泡生成の抑制ができるため、高品質のプラスチック原料の製造が可能となる。
【0061】
また、温度変動によるストランドの不良の発生が抑えられ、製品歩留まりの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係るストランド冷却装置の構成図である。
【図2】案内溝の上流側端部付近の斜視図である。
【図3】案内溝の下流側端部付近の斜視図である。
【図4】温度センサの検出値から補間されたストランドの表面温度及び推定されたストランド中心部の温度の変化の一例を示した図である。
【符号の説明】
1 ストランド冷却装置
2 ダイヘッド
3 シュート板
4 案内溝
4a 段差上部板
4b 軌道調整溝
4c 冷却液排出部
4d 液切板
5 ニップロール装置
5a アッパーロール
5b フィードロール
6a 固定刃
6b 回転刃
8 冷却液供給ノズル
9 冷却液散布管
10 裁断機
11 コンベヤ液供給ノズル
12 冷却液供給タンク
13 循環ポンプ
14 熱交換器
15 分岐管
16,17,18,19 流量調節弁
20,21 気体噴射手段
22,23,24 温度センサ
25 送風機
26 制御部
A 段差
S ストランド
P ペレット

Claims (5)

  1. ダイヘッドから押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂からなるストランドを、冷却液とともに案内溝を流下させながら冷却するストランド冷却装置において、
    前記ストランドの流線に沿った少なくとも3つの離隔した点において、前記ストランドの表面温度を検出する温度検出手段と、
    前記温度検出手段の検出するストランドの表面温度に基づき前記冷却液の流量又は前記冷却液の温度を制御することで、冷却後のストランドの温度を制御する温度制御手段と、
    を備えていることを特徴とするストランド冷却装置。
  2. 前記温度制御手段は、ストランドの径、前記熱可塑性樹脂の熱伝導率、前記温度検出手段の検出するストランドの表面温度からストランドの内部温度を推定する内部温度推定手段と、
    前記ストランドの内部温度に基づき前記冷却液の流量を調節する流量調節手段、又は前記ストランドの内部温度に基づき前記冷却液の温度を調節する温度調節手段と、
    を備えていることを特徴とする請求項1記載のストランド冷却装置。
  3. 前記案内溝の溝底面は、1つ以上の段差を有する傾斜面状に形成されており、
    前記溝底面の段差付近の下流側においてストランドに気体を吹き付ける第1の気体噴射手段と、
    前記第1の気体噴射手段により気体が吹き付けられる部分近傍の下流側のストランドの表面温度を非接触で検出する温度センサと、
    を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のストランド冷却装置。
  4. 前記案内溝の溝底面に設けられ、多数の孔が形成された冷却液排出部と、
    前記冷却液排出部の上方から前記ストランドに気体を吹き付ける第2の気体噴射手段と、
    前記第2の気体噴射手段により気体が吹き付けられる部分近傍の下流側のストランドの表面温度を非接触で検出する温度センサと、
    を備えたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載のストランド冷却装置。
  5. ダイヘッドから押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂からなるストランドを、冷却液とともに案内溝を流下させながら冷却するストランド冷却方法において、
    ストランドの流線に沿った少なくとも3箇所において、ストランドの表面温度を検出し、
    ストランドの径、前記熱可塑性樹脂の熱伝導率、及び検出されたストランドの表面温度からストランドの内部温度を推定し、
    前記ストランドの内部温度に基づき、前記冷却液の流量又は前記冷却液の温度を制御することにより、冷却後のストランドの温度を制御すること
    を特徴とするストランド冷却方法。
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