JP2004202623A - スラリー調製方法およびスラリー調製装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】分散初期において前記粒状体が配管内に沈降・堆積することなく、所望の粒径分布や粒子濃度を有するスラリーが安定に調製できるスラリー調製方法およびスラリー調製装置の提供。
【解決手段】粒状体が分散媒中に分散したスラリーを調製するスラリー調製方法であって、連続式分散機を通過させて前記スラリーに剪断力を付与する分散工程を有してなるとともに、前記連続式分散機に前記スラリーを導入するスラリー導入管路、および前記連続式分散機から前記スラリーを導出するスラリー導出管路において、前記スラリーの流速を0.3m/秒以上に保持することを特徴とするスラリー調製方法、スラリー調製装置。
【選択図】 図1
【解決手段】粒状体が分散媒中に分散したスラリーを調製するスラリー調製方法であって、連続式分散機を通過させて前記スラリーに剪断力を付与する分散工程を有してなるとともに、前記連続式分散機に前記スラリーを導入するスラリー導入管路、および前記連続式分散機から前記スラリーを導出するスラリー導出管路において、前記スラリーの流速を0.3m/秒以上に保持することを特徴とするスラリー調製方法、スラリー調製装置。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スラリー調製方法およびスラリー調製装置に関し、特に、研磨剤粒子のように比較的比重の大きな粒子が安定に分散したスラリーを調製できるスラリー調製方法およびスラリー調製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビデオテープやオーディオテープなどの磁性記録媒体の磁気記録層には、磁気ヘッドの汚れを防止する目的で、通常、磁性粉の他に研磨剤が配合されている。
【0003】
このような磁気記録媒体を製造するのに使用される磁気記録媒体用塗料の製造方法としては、
(1)別分散した研磨剤スラリーのスラリーを、磁性粉体の分散終了時に添加する方法(特許文献1)、
(2)別々に調製した磁性粉体スラリーと研磨剤スラリーとを混合する方法(特許文献2)、
(3)表面処理剤によって研磨剤に表面処理を施して前記研磨剤を単独で分散媒中に分散させ、次いで得られたスラリーを磁性塗料に添加混合する方法(特許文献3)、および
(4)研磨剤を結合剤および有機溶剤とともに分散した研磨剤ペーストを、磁性粉を結合、添加剤、有機溶剤とともに分散した磁性塗料に添加する方法(特許文献4)
が提案されてきた。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−250666号公報
【特許文献2】
特開平7−98858号公報
【特許文献3】
特開平9−35263号公報
【特許文献4】
特開平7−14159号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
研磨剤スラリーは、通常、研磨剤を、結合剤の有機溶剤溶液である分散媒中に分散させることにより調製される。前記分散工程においては、各種の連続式分散機によって研磨剤と分散媒との混合物に剪断力を加えることが一般的であり、このための装置としては、従来、バッチ式分散機であるボールミルなどが使用されてきた。
【0006】
ボールミルは、予めボールがチャージされたベッセル内に研磨剤および分散媒を単独にそれぞれ計量・投入後、ベッセルを回転させることによって分散する分散機であり、ベッセルが回転するときのボールの落下による摩砕剪断および衝撃作用を利用している。ベッセル内に投入された研磨剤および分散媒などの内容物は更新されることなく、一定時間分散される。
【0007】
ボールミルは、所望の研磨剤粒径にもよるが、一般的には十数時間の分散時間を要するとともに、分散終了後のベッセルおよびボールの洗浄に多大な労力と時間とがかかるという欠点がある。また、ボールミルで分散され、高粘度になった研磨剤スラリーに、必要に応じて連続式分散機で仕上げ分散を施すことがあるが、このような場合には、2種類の分散装置を使用することになり、このことも、多大な労力と時間とを費やすのみならず、設備費が高くなる原因になる。
【0008】
そのため、研磨剤スラリーを連続的に供給するサンドグラインダやピンタイプミルなどの分散効率の高い連続式分散機による分散を試みたが、分散後の研磨剤粒径分布や研磨剤濃度にバラツキが生じるという問題があった。
【0009】
これらの問題の原因を鋭意検討した結果、前記研磨剤粒子が前記有機溶剤に比較して比重が著しく大きいので、分散初期には、前記連続式分散機に連通する配管の水平部に沈降・堆積することが根本原因であることが明らかになった。そして、この根本原因により、以下の現象が現れることも判った。
【0010】
前記混合物を前記連続式分散機に何度も循環させたり、連続式分散機を多段に接続したものに流通させたりして、前記研磨剤粒子の分散が進行すると、研磨剤スラリーの粘度が上昇するから、前記配管の水平部に沈降・堆積した研磨剤粒子は研磨剤スラリー中に徐々に流出する。しかし、前記沈降・堆積した研磨剤粒子は、分散終了時点でも前記研磨剤粒子が全部研磨剤スラリー中に分散することなく、前記配管の水平部に残存していることがある。
【0011】
したがって、所望の粒径分布や研磨剤粒子濃度を有する研磨剤スラリーが得られないことがあった。
【0012】
本発明は、前記研磨剤粒子などの粒状体が前記有機溶剤溶液などの分散媒に分散したスラリーを調製するスラリー調製方法およびスラリー調製装置であって、分散初期において粒状体がスラリー調製装置の配管内に沈降・堆積することなく、所望の粒径分布や粒子濃度を有するスラリーが安定に調製できるスラリー調製方法およびスラリー調製装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、粒状体が分散媒中に分散したスラリーを調製するスラリー調製方法であって、連続式分散機を通過させて前記スラリーに剪断力を付与する分散工程を有してなるとともに、前記連続式分散機に前記スラリーを導入するスラリー導入管路において、前記スラリーの流速を0.3m/秒以上に保持することを特徴とするスラリー調製方法に関する。
【0014】
前記流速の上限は、特に限定されないが、分散を必要とする研磨剤の種類および量、アジテータの回転数、分散機および配管での圧力損失、分散時の発熱量などに応じて適宜選択される。現実には、分散機には小型分散機から大型分散機まで存在するが、流速の上限としては1.5m/秒が好ましい。これ以上の流速になると、分散進行に伴う研磨剤スラリーの粘度上昇などにより、分散機および配管での圧力損失が増大し、分散機の液シール機構を破壊することがある。
【0015】
前記スラリー調製方法においては、前記スラリー導入管路をスラリーが高速で流通するから、粒状体の沈降や堆積の生じやすい分散初期においても、粒状体が分離してスラリー導入管路およびスラリー導出管路における配管の水平部分に沈降することが防止される。
【0016】
配管の材質としては、金属、プラスチックス、ガラスなどがあり、特に限定はないが、分散媒として有機溶剤を用いる場合には、防爆の観点から金属が好ましく、特にステンレス鋼が好ましい。また、配管の内径は、前述の研磨剤スラリーの流速を満足すれば特に限定されないが、流速のほかに、研磨剤スラリーを分散するときの分散機および配管での圧力損失、所望の粒径分布となるように分散されたときの粘度などに基づいて適宜決定される。必要に応じて小型分散機から大型分散機まで使い分ける場合があり、それぞれ最適な配管内径が決定されるが、現実的には、6Aから20A(呼び径)の配管から選択することになり、沈降を防止することが可能になる。
【0017】
したがって、研磨剤のように比較的比重の高い粒状体を有機溶剤のように比較的比重の低い分散媒に分散する場合においても、所望の粒径分布や研磨剤粒子濃度を有する研磨剤スラリーが容易にしかも安定に得られる。
【0018】
故に、前記スラリー調製方法によって得られた研磨剤スラリーは、磁性粉体のスラリーに添加して磁性記録媒体用塗料を調製するのに特に好適に使用できる。
【0019】
前記研磨剤スラリーとしては、ほかに、平版印刷版の基材である支持体ウェブに塗布して感光性、感熱性、または光重合性の製版層を形成する製版層形成液なども挙げられる。
【0020】
前記粒状体の平均粒径は、0.05〜0.6μmの範囲が好ましい。このような粒状体としては、たとえば、α−アルミナ、酸化クロム、ベンガラ、炭化珪素、酸化チタン、およびシリカなどの研磨剤粒子、各種セラミックス粉末、フェライト粉末や高磁性合金粉末などの磁性体粉末、各種無機顔料粉末、各種有機顔料粉末などが挙げられる。
【0021】
前記分散媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ブタノール、イソプロパノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、エチルセロソルブ、メチルセロソルブなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酪酸メチル、炭酸エチレンなどのエステル系溶剤、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらの溶剤には限定されない。また、これらの有機溶剤と水との混合物も使用できる。
【0022】
前記分散媒には、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂などの各種結合剤を配合することができる。
【0023】
連続式分散機としては、後述するビーズミル、および前記スラリーを循環させつつ超音波を照射することにより、剪断力を付与する循環型超音波連続式分散機などが使用される。
【0024】
前記スラリー調製方法に使用されるスラリー調製装置は、前記連続式分散機を1台のみ有するものであってもよく、前記連続式分散機が2台以上直列に配列されていてもよい。
【0025】
連続式分散機を1台のみ有するスラリー調製装置においては、前記連続式分散機にスラリーを2回以上通過させるように構成することが、前記粒状体を前記分散媒に安定に分散させる上で好ましい。
【0026】
請求項2に記載の発明は、前記連続式分散機から前記スラリーを導出するスラリー導出管路における前記スラリーの流速も0.3m/秒以上に保持するスラリー調製方法に関する。
【0027】
前記スラリー調製方法においては、スラリー導入管路だけでなく、スラリー導出管路においてもスラリーが高速で流通するから、前記連続式分散機で充分な剪断力が付与されず、前記連続式分散機を通過した時点においても前記スラリーが不安定な場合においても、スラリー導出管路を構成する配管において、前記スラリー中の粒状体が沈降・堆積することがない。したがって、前記スラリー調製方法を研磨剤スラリーの調製に適用すれば、所望の粒径分布および研磨剤濃度を有する研磨剤スラリーが更に容易に得られる。
【0028】
請求項3に記載の発明は、前記粒状体が研磨剤粒子であるスラリー調製方法に関する。
【0029】
前記スラリー調製方法は、請求項1に記載のスラリー調製方法を研磨剤スラリーの調製に適用した例である。
【0030】
研磨剤スラリー中の研磨剤濃度は、20〜70重量%の範囲が好ましいが、前記範囲には限定されない。
【0031】
請求項4に記載の発明は、前記分散媒が有機溶剤であるスラリー調製方法に関する。
【0032】
前記スラリー調製方法は、請求項1に記載のスラリー調製方法を有機溶剤中に粒状体が分散したスラリーの調製に適用した例である。
【0033】
これらのスラリー調製方法で得られた研磨剤スラリーは、研磨剤粒子が分散媒中に安定に分散しているから、磁性記録媒体用塗料の調製に好適に使用できる。
【0034】
また、前記スラリー調製方法は、セラミックス粉末を適宜の結合剤とともに有機溶剤中に分散させたセラミックススラリーの調製に好適に使用できる。
【0035】
請求項5に記載の発明は、前記研磨剤粒子が、α−アルミナ、酸化クロム、ベンガラ、炭化珪素、酸化チタン、およびシリカからなる群から選択されてなるスラリー調製方法に関する。
【0036】
磁性記録材料用の研磨剤としては、上に挙げたものが好ましい。
【0037】
したがって、前記スラリー調製方法によって得られる研磨剤スラリーは、磁性記録媒体用塗料の調製に好適に使用される。
【0038】
請求項6に記載の発明は、前記スラリー導入管路および前記スラリー導出管路において、前記スラリーの流速を0.5m/秒以上に保持するスラリー調製方法に関する。
【0039】
前記スラリー調製方法においては、前記スラリー導入管路および前記スラリー導出管路におけるスラリーの流速は、請求項1〜4に記載のスラリー調製方法における流速に比較して更に高速であるから、前記スラリー導入管路および前記スラリー導出管路を構成する配管内での粒状体の沈降・堆積は、更に効果的に防止される。
【0040】
請求項7に記載の発明は、前記スラリーを前記連続式分散機に2回以上通過させるスラリー調製方法に関する。
【0041】
前記スラリー調製方法によれば、前記スラリーには、複数回にわたって機械的剪断力が付与されるから、前記研磨剤スラリーのように粒状体と分散媒との比重が大きく異なるスラリーを調製する場合においても、連続式分散機の外部において粒状体が分離して沈降・堆積することが防止され、安定なスラリーが得られる。
【0042】
前記スラリー調製方法に使用されるスラリー調製装置には、スラリー導出管路をスラリー導入管路に連通させ、スラリーを循環させるようにした循環型スラリー調製装置、および連続式分散機を複数台直列に配設し、1の連続式分散機のスラリー導出管路を、前記1の連続式分散機の下流側に隣接する他の連続式分散機のスラリー導入管路に接続し、多段階で分散を行う多段型スラリー調製装置がある。
【0043】
前記循環型スラリー調製装置および多段型スラリー調製装置において分散が進行するとスラリーの粘度が上昇する。前記スラリーが研磨剤スラリーである場合には、粘度が1.5P以上になれば、スラリーを静置しても研磨剤粒子の沈降が起こらなくなるから、スラリー導入管路およびスラリー導出管路におけるスラリーの流速を0.3m/秒以上に保持する必要はない。
【0044】
請求項8に記載の発明は、前記スラリー導入管路の管路長が、前記スラリーの滞留時間が13秒以下になるように定められてなるスラリー調製方法に関する。
【0045】
前記スラリーは、前記スラリー導入管路においては未だに剪断力を受けていないので、粒状体が沈殿・堆積し易い状態にある。したがって、前記スラリー導入管路における前記スラリーの滞留時間が長すぎると、前記スラリー導入管路の内部で粒状体が沈降・堆積する恐れがある。
【0046】
しかしながら、前記スラリー調製方法においては、前記スラリーを、前記スラリー導入管路における滞留時間が13秒以下になるように流通させているから、前記スラリーは、粒状体が沈降する前に連続式分散機に導入され、そこで強い剪断力を付与される。
【0047】
したがって、前記スラリー導入管路における粒状体の沈降・堆積が防止される。
【0048】
請求項9に記載の発明は、前記連続式分散機として、内部にビーズが充填されてなるとともに前記スラリーが導入されるタンク状容器と、前記タンク状容器の中央部で回転するアジテータとを備えるビーズミルを用いるスラリー調製方法に関する。
【0049】
前記ビーズミルにおいては、タンク状容器内にビーズが充填されているから、前記タンク状容器にスラリーを導入しつつアジテータを回転させると、前記タンク状容器内でビーズ同士が互いに衝突することにより、前記スラリーに強い剪断力が及ぼされる。
【0050】
したがって、前記スラリー中の粒状体と分散媒との比重差が大きかったり、互いの親和性が低かったりする場合においても、安定性の高いスラリーが得られる。
【0051】
前記ビーズミルは、縦型であっても横型であってもよい。また、内部のアジテータは、調製しようとするスラリーの粘度に応じて、ディスクが回転軸に多数植設された中粘度用のディスク型アジテータ、および円筒状ロータの外周面全体に多数のピンが植設された高粘度用のピン型アジテータなどが使用される。
【0052】
請求項10に記載の発明は、前記ビーズミルとして、前記スラリーが繰り返し導入される循環型ビーズミルを使用するスラリー調製方法に関する。
【0053】
前記スラリー調製方法は、請求項8に記載の発明において、循環型ビーズミルを使用する例である。
【0054】
循環型ビーズミルには、前記スラリーが何度も導入されるから、前記スラリーにはそのたび毎に強い剪断力が加えられる。
【0055】
したがって、請求項9に記載のスラリー調製方法に比較しても更に粒状体の均一分散性や安定性に優れたスラリーが得られる。
【0056】
請求項11に記載の発明は、前記連続式分散機にスラリーを供給する供給タンク内において、前記スラリーが常時流動化されてなるスラリー調製方法に関する。
【0057】
前記スラリー調製方法によれば、前記連続式分散機には、常時、流動状態、即ち粒状体が分散媒中に分散した状態に保持されたスラリーが供給されるから、前記供給タンクと前記連続式分散機とを接続するスラリー導入管路において粒状体が沈降・堆積することが特に効果的に防止される。
【0058】
請求項12に記載の発明は、前記スラリー導入管路および前記スラリー導出管路を構成する配管の内径が、調製後のスラリーの粘度に基づいて定められてなるスラリー調製方法に関する。
【0059】
請求項13に記載の発明は、粒状体が分散媒中に分散したスラリーを調製するスラリー調製装置であって、前記スラリーに剪断力を付与する連続式分散機を有してなるとともに、前記連続式分散機に前記スラリーを導入するスラリー導入管路、および前記連続式分散機から前記スラリーを導出するスラリー導出管路は、前記スラリーが0.3m/秒以上の流速で流通するように形成されてなることを特徴とするスラリー調製装置に関する。
【0060】
請求項1のところで述べたのと同様の理由により、前記スラリー調製装置を用いれば、研磨剤のように比較的比重の高い粒状体を有機溶剤のように比較的比重の低い分散媒に分散する場合においても、所望の粒径分布や研磨剤粒子濃度を有する研磨剤スラリーが容易にしかも安定に得られる。
【0061】
【発明の実施の形態】
1.実施形態1
本発明に係るスラリーの調製方法に使用されるスラリー調製装置の一例を図1に示す。
【0062】
実施形態1に係るスラリー調製装置100は、本発明における連続式分散機の一例である横型ビーズミル2と、研磨剤粒子と有機溶剤と結合剤とを攪拌・混合して研磨剤スラリーを調製するとともに、前記研磨剤スラリーをビーズミル2に供給する供給タンク4と、供給タンク4中の研磨剤スラリーをビーズミル2に導入するスラリー導入管路6と、ビーズミル2を通過した研磨剤スラリーをビーズミル2から導出するスラリー導出管路8と、スラリー導出管路8を通して導出された研磨剤スラリーを供給タンク4に戻す戻し管路12と、スラリー調製装置100において所定の分散度に到達したスラリーを貯留するストックタンク10とを備える。戻し管路12からは三方弁13を介して連通流路15が分岐し、連通流路15の先端がストックタンク10に連通している。ストックタンク10は、また、内部のスラリーを取り出す取出し管路14を備えている。
【0063】
供給タンク4には、仕込まれた研磨剤粒子と有機溶剤と結合剤とを攪拌・混合する攪拌羽根4Aが設けられている。また、スラリー導入管路6には、ポンプPが介装されている。
【0064】
スラリー導入管路6、スラリー導出管路8、および戻し管路12は、内部をスラリーが流通するときの流速が0.3m/秒以上、好ましくは0.4m/秒以上、更に好ましくは0.5m/秒以上になるように、ポンプPの吐出能力との関係で配管の内径が選択されている。また、前記配管の内径は、スラリー導入管路6、スラリー導出管路8、および戻し管路12の間で互いに等しいことが、設計の単純化の上からは好ましいが、前記流速が得られる限り、特に互いに等しくなくてもよい。
【0065】
ビーズミル2の構成の詳細を図2に示す。
【0066】
図2に示すように、ビーズミル2は、略円筒状のタンク状容器2Aと、タンク状容器2Aの軸線に沿って設けられ、駆動装置(図示せず。)によって前記位置に片持ち式に支承されているとともに、軸線の周りに回転するアジテータ2Bとを備える。
【0067】
アジテータ2Bとタンク状容器2Aの前記駆動装置側の端板2Fとの間には液シール機構2iが設けられている。アジテータ2Bは、円筒状の本体2Eと、本体2Eの表面全体に一定間隔で立設されたピン2Cとを備える。タンク状容器2Aの内壁面にもピン2Dが立設されている。ピン2Dは、互いに隣接する2本のピン2Cの間に位置するように設けられている。
【0068】
端面2Fには、タンク状容器2Aにスラリーを導入するスラリー導入管2Hが立設され、端面2Fとは反対側の端面2Gには、タンク状容器2Aからスラリーを導出するスラリー導出管2Jが立設されている。端板2Gの内側には、スラリーとビーズとを分離し、ビーズがスラリー導出間2Jから流出しないように、スラリー導出管2Jに連通するセパレータが設けられている。スラリー導入管路6はスラリー導入管2Hに接続され、スラリー導出管路8はスラリー導出管2Jに接続されている。
【0069】
なお、実施形態1に示す例においてはビーズミルは1個であるが、スラリー調製装置100においてビーズミルを2個以上直列に配設してもよいのはもちろんである。
【0070】
スラリー調製装置100を用いて研磨剤スラリーを調製する手順について以下に説明する。
【0071】
まず、供給タンク4に、研磨剤粒子と有機溶剤と結合剤とを所定量仕込み、攪拌羽根4Aで攪拌して結合剤の有機溶剤溶液中に研磨剤粒子を分散させ、スラリーを調製する。
【0072】
研磨剤粒子が分散したら、ポンプPを起動し、前記スラリーを、スラリー導入管路6、ビーズミル2、スラリー導出管路8、三方弁13、戻し管路12、および供給タンク4により形成される流路を循環させる。このとき、スラリー導入管路6、スラリー導出管路8、および戻し管路12におけるスラリーの流速が何れも0.3m/秒以上になるようにポンプPの吐出量を設定する。そして、ビーズミル2においては、アジテータ2Bを回転させる。
【0073】
ビーズミル2においては、アジテータ2Bが回転することにより、ピン2Cがピン2Dに対して回転するとともに、ピン2Cとピン2Dとの相対運動により、ビーズ同士が激しくぶつかり合う。したがって、供給タンク4からスラリー導入管路6を通ってビーズミル2に導入されたスラリーは、互いに相対運動するピン2Cとピン2D、およびタンク状容器2A内部において互いにぶつかり合うビーズによって強い剪断力を付与される。これによって前記スラリー中の研磨剤粒子が有機溶媒中に均一に分散する。
【0074】
前記スラリーが所定の分散度に達したら、三方弁13を切替えてスラリー導出管路8と連通管路15とを連通させ、スラリーをストックタンク10に導入するとともに、ストックタンク10において貯留する。
【0075】
前記スラリーは、前記流路を循環させることにより、何度もビーズミル2に導入されるから、繰り返し剪断力を受ける。これにより、研磨剤粒子は、スラリー中に均一に分散する。
【0076】
更に、スラリー導入管路6、スラリー導出管路8、および戻し管路12においてスラリーは0.3m/秒以上の流速で流通するから、これらの管路を構成する配管が水平部を有していても、前記スラリー中の研磨剤粒子が、前記水平部において沈降・堆積することはない。
【0077】
2.実施形態2
本発明に係るスラリーの調製方法に使用されるスラリー調製装置の別の例を図3に示す。
【0078】
実施形態2に係るスラリー調製装置102は、図3に示すように、直列に接続された2台のビーズミル20および22と、研磨剤粒子と有機溶剤と結合剤とを攪拌・混合して研磨剤スラリーを調製するとともに、前記研磨剤スラリーをビーズミル20に供給する供給タンク40と、供給タンク40の研磨剤スラリーをビーズミル20に導入するスラリー導入管路60と、研磨剤スラリーをビーズミル20から導出するスラリー導出管路80と、スラリー導出管路80を通して導出された研磨剤スラリーを一時貯留する一時貯留タンク30と、一時貯留タンク30の研磨剤スラリーをビーズミル22に導入するスラリー導入管路62と、研磨剤スラリーをビーズミル22から導出するスラリー導出管路82と、スラリー導出管路82から導出された研磨剤スラリーを一時貯留するストックタンク32とを備える。
【0079】
ビーズミル20およびビーズミル22は、図2に示す通りの構成を有している。スラリー導入管路60およびスラリー導入管路62には、それぞれポンプP1およびP2が介装されている。
【0080】
供給タンク40および一時貯留タンク30には、それぞれ攪拌羽根40Aおよび攪拌羽根30Aが設けられている。また、供給タンク40には、研磨剤供給管路40Bおよび分散媒供給管路40Cが設けられている。研磨剤粒子、および結合剤を有機溶剤溶液に溶解させた分散媒は、それぞれ研磨剤供給管路40Bおよび分散媒供給管路40Cを通して供給タンク40に連続的に供給される。
【0081】
スラリー導入管路60、スラリー導入管路62、スラリー導出管路80、およびスラリー導出管路82を構成する配管は、何れも研磨剤スラリーが内部を0.3m/秒以上の流速で流通するように内径が設定されている。
【0082】
スラリー調製装置102を用いて研磨剤スラリーを調製する手順について以下に説明する。
【0083】
前記研磨剤粒子と前記分散媒とを、それぞれ研磨剤供給管路40Bおよび分散媒供給管路40Cを通して供給タンク40に連続的に仕込み、攪拌羽根40Aで攪拌して前記研磨剤中に前記研磨剤粒子を分散させ、スラリーを調製する。
【0084】
供給タンク40内で仮調製された研磨剤スラリーを、スラリー導入管路60を通してビーズミル20に導入する。
【0085】
スラリー導入管路60から導入された研磨剤スラリーは、ビーズミル20内部において強い剪断力を付与される。これによって研磨剤は分散媒中に均一に分散される。
【0086】
ビーズミル20を通過した研磨剤スラリーは、スラリー導出管路80を通って一時貯留タンク30に導入され、一時貯留される。そして、一時貯留タンク30からスラリー導入管路62を通ってビーズミル22に導入される。
【0087】
ビーズミル22内部においてもビーズミル20と同様に前記研磨剤スラリーに強い剪断力が付与され、研磨剤粒子が更に均一に分散する。
【0088】
ビーズミル22中で研磨剤粒子が分散された研磨剤スラリーは、スラリー導出管路82を通ってストックタンク32に導入され、ストックタンク32に貯留される。
【0089】
ビーズミル20とビーズミル22との間には一時貯留タンク30が設けられているから、ポンプP1とポンプP2との吐出量にある程度差があってもスラリー調製装置102の運転に支障を来すことはない。しかし、ポンプP1とポンプP2との吐出量は、スラリー導入管路60、スラリー導入管路62、スラリー導出管路80、およびスラリー導出管路82の何れにおいても、研磨剤スラリーの流速が0.3m/秒以上、好ましくは0.4m/秒以上になるように設定されている。
【0090】
実施形態2に係るスラリー調製装置102においても、研磨剤スラリーの流速は、スラリー導入管路60、スラリー導入管路62、スラリー導出管路80、およびスラリー導出管路82の何れにおいても0.3m/秒以上であるから、これらの管路を構成する配管が水平部を有していても、前記スラリー中の研磨剤粒子が、前記水平部において沈降・堆積することはない。
【0091】
【実施例】
(実施例1、2、比較例1)
図4に示すスラリー調製装置を用い、研磨剤スラリーを調製した。図4のスラリー調製装置は、戻り管路12および三方弁を有しない以外は、図1に示す実施形態1のスラリー調製装置と同様の構成を有している。また、ビーズミルの構成は図2に示す通りである。
【0092】
研磨剤スラリーの組成は以下に示すとおりである。
【0093】
研磨剤、有機溶剤、および結合剤を前記の重量割合で供給タンク4に仕込み、攪拌羽根4Aで攪拌することにより、前記研磨剤の沈降・堆積を防止しながら、スラリー導入管路6を通してビーズミル2に前記研磨剤を連続的に供給した。
【0094】
ビーズミル2の内部においてアジテータ2Bを回転させ、スラリー導入管路6から導入された研磨剤スラリーに剪断力を付与した。ビーズミル2で剪断力を付与したのち、スラリー導出管路8を通してストックタンク10に研磨剤スラリーを導出した。
【0095】
スラリー導入管路6およびスラリー導出管路8における研磨剤スラリーの流速を0.1〜0.5m/分の間で変化させた。スラリー導入管路6は、前記各流速において研磨剤スラリーの滞留時間が8秒になるように配管の直径および長さを選択した。
【0096】
このときの、供給タンク4内部の固形分濃度とスラリー導出管路8からストックタンク10に導出される研磨剤スラリー中の固形分濃度とを比較した。また、スラリー導入管路6およびスラリー導出管路8を構成する配管内における研磨剤の堆積状況を目視観察して評価した。前記評価は、◎「堆積なし。」、○「殆ど堆積なし。」、△「少し堆積あり。」、×「かなり堆積あり。」の4段階で評価した。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
(実施例3、4、比較例2)
研磨剤スラリーの滞留時間が13秒になるようにスラリー導入管路6を構成する配管の直径および長さを選択した以外は、実施例1,2、比較例1と同様の手順で研磨剤スラリーを調製した。結果を表2に示す。
【0098】
【表2】
(実施例5、6、比較例3)
研磨剤スラリーの滞留時間が18秒になるようにスラリー導入管路6を構成する配管の直径および長さを選択した以外は、実施例1,2、比較例1と同様の手順で研磨剤スラリーを調製した。結果を表3に示す。
【0099】
【表3】
研磨剤スラリーの流速が0.3m/秒以上の実施例1〜6では、スラリー導入管路6内の研磨剤スラリーの滞留時間が18秒と長い場合にも、問題になるほどの研磨剤の堆積は見られなかった。これに対して、研磨剤スラリーの流速が0.1m/秒の比較例1〜3では、スラリー導入管路6内の滞留時間が13秒以上になると研磨剤粒子の明らかな堆積が認められた。
【0100】
実施例1〜6を比較すると、スラリー導入管路6内の滞留時間が8秒と短い実施例1および2、並びに前記滞留時間が13秒の実施例3および4では研磨剤粒子の堆積は殆ど認められなかったのに対し、前記滞留時間が18秒と長い実施例5および6では若干の堆積が見られた。
【0101】
このことから、前記滞留時間は13秒以下が好ましいことがわかった。
【0102】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、スラリー調製装置の配管に水平部がある場合においても、分散初期において前記粒状体が前記水平部に沈降・堆積することなく、所望の粒径分布や研磨剤粒子濃度を有する研磨剤スラリーが安定に調製できるスラリー調製方法およびスラリー調製装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施形態1に係るスラリー調製装置の構成を示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示すスラリー調製装置の備えるビーズミルの構成を示す概略断面図である。
【図3】図3は、実施形態2に係るスラリー調製装置の構成を示す概略図である。
【図4】図4は、実施例1〜6および比較例1〜3で使用したスラリー調製装置の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
2 ビーズミル
4 供給タンク
6 スラリー導入管路
8 スラリー導出管路
10 ストックタンク
20 ビーズミル
22 ビーズミル
30 一時貯留タンク
32 ストックタンク
40 供給タンク
100 スラリー調製装置
102 スラリー調製装置
【発明の属する技術分野】
本発明は、スラリー調製方法およびスラリー調製装置に関し、特に、研磨剤粒子のように比較的比重の大きな粒子が安定に分散したスラリーを調製できるスラリー調製方法およびスラリー調製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ビデオテープやオーディオテープなどの磁性記録媒体の磁気記録層には、磁気ヘッドの汚れを防止する目的で、通常、磁性粉の他に研磨剤が配合されている。
【0003】
このような磁気記録媒体を製造するのに使用される磁気記録媒体用塗料の製造方法としては、
(1)別分散した研磨剤スラリーのスラリーを、磁性粉体の分散終了時に添加する方法(特許文献1)、
(2)別々に調製した磁性粉体スラリーと研磨剤スラリーとを混合する方法(特許文献2)、
(3)表面処理剤によって研磨剤に表面処理を施して前記研磨剤を単独で分散媒中に分散させ、次いで得られたスラリーを磁性塗料に添加混合する方法(特許文献3)、および
(4)研磨剤を結合剤および有機溶剤とともに分散した研磨剤ペーストを、磁性粉を結合、添加剤、有機溶剤とともに分散した磁性塗料に添加する方法(特許文献4)
が提案されてきた。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−250666号公報
【特許文献2】
特開平7−98858号公報
【特許文献3】
特開平9−35263号公報
【特許文献4】
特開平7−14159号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
研磨剤スラリーは、通常、研磨剤を、結合剤の有機溶剤溶液である分散媒中に分散させることにより調製される。前記分散工程においては、各種の連続式分散機によって研磨剤と分散媒との混合物に剪断力を加えることが一般的であり、このための装置としては、従来、バッチ式分散機であるボールミルなどが使用されてきた。
【0006】
ボールミルは、予めボールがチャージされたベッセル内に研磨剤および分散媒を単独にそれぞれ計量・投入後、ベッセルを回転させることによって分散する分散機であり、ベッセルが回転するときのボールの落下による摩砕剪断および衝撃作用を利用している。ベッセル内に投入された研磨剤および分散媒などの内容物は更新されることなく、一定時間分散される。
【0007】
ボールミルは、所望の研磨剤粒径にもよるが、一般的には十数時間の分散時間を要するとともに、分散終了後のベッセルおよびボールの洗浄に多大な労力と時間とがかかるという欠点がある。また、ボールミルで分散され、高粘度になった研磨剤スラリーに、必要に応じて連続式分散機で仕上げ分散を施すことがあるが、このような場合には、2種類の分散装置を使用することになり、このことも、多大な労力と時間とを費やすのみならず、設備費が高くなる原因になる。
【0008】
そのため、研磨剤スラリーを連続的に供給するサンドグラインダやピンタイプミルなどの分散効率の高い連続式分散機による分散を試みたが、分散後の研磨剤粒径分布や研磨剤濃度にバラツキが生じるという問題があった。
【0009】
これらの問題の原因を鋭意検討した結果、前記研磨剤粒子が前記有機溶剤に比較して比重が著しく大きいので、分散初期には、前記連続式分散機に連通する配管の水平部に沈降・堆積することが根本原因であることが明らかになった。そして、この根本原因により、以下の現象が現れることも判った。
【0010】
前記混合物を前記連続式分散機に何度も循環させたり、連続式分散機を多段に接続したものに流通させたりして、前記研磨剤粒子の分散が進行すると、研磨剤スラリーの粘度が上昇するから、前記配管の水平部に沈降・堆積した研磨剤粒子は研磨剤スラリー中に徐々に流出する。しかし、前記沈降・堆積した研磨剤粒子は、分散終了時点でも前記研磨剤粒子が全部研磨剤スラリー中に分散することなく、前記配管の水平部に残存していることがある。
【0011】
したがって、所望の粒径分布や研磨剤粒子濃度を有する研磨剤スラリーが得られないことがあった。
【0012】
本発明は、前記研磨剤粒子などの粒状体が前記有機溶剤溶液などの分散媒に分散したスラリーを調製するスラリー調製方法およびスラリー調製装置であって、分散初期において粒状体がスラリー調製装置の配管内に沈降・堆積することなく、所望の粒径分布や粒子濃度を有するスラリーが安定に調製できるスラリー調製方法およびスラリー調製装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、粒状体が分散媒中に分散したスラリーを調製するスラリー調製方法であって、連続式分散機を通過させて前記スラリーに剪断力を付与する分散工程を有してなるとともに、前記連続式分散機に前記スラリーを導入するスラリー導入管路において、前記スラリーの流速を0.3m/秒以上に保持することを特徴とするスラリー調製方法に関する。
【0014】
前記流速の上限は、特に限定されないが、分散を必要とする研磨剤の種類および量、アジテータの回転数、分散機および配管での圧力損失、分散時の発熱量などに応じて適宜選択される。現実には、分散機には小型分散機から大型分散機まで存在するが、流速の上限としては1.5m/秒が好ましい。これ以上の流速になると、分散進行に伴う研磨剤スラリーの粘度上昇などにより、分散機および配管での圧力損失が増大し、分散機の液シール機構を破壊することがある。
【0015】
前記スラリー調製方法においては、前記スラリー導入管路をスラリーが高速で流通するから、粒状体の沈降や堆積の生じやすい分散初期においても、粒状体が分離してスラリー導入管路およびスラリー導出管路における配管の水平部分に沈降することが防止される。
【0016】
配管の材質としては、金属、プラスチックス、ガラスなどがあり、特に限定はないが、分散媒として有機溶剤を用いる場合には、防爆の観点から金属が好ましく、特にステンレス鋼が好ましい。また、配管の内径は、前述の研磨剤スラリーの流速を満足すれば特に限定されないが、流速のほかに、研磨剤スラリーを分散するときの分散機および配管での圧力損失、所望の粒径分布となるように分散されたときの粘度などに基づいて適宜決定される。必要に応じて小型分散機から大型分散機まで使い分ける場合があり、それぞれ最適な配管内径が決定されるが、現実的には、6Aから20A(呼び径)の配管から選択することになり、沈降を防止することが可能になる。
【0017】
したがって、研磨剤のように比較的比重の高い粒状体を有機溶剤のように比較的比重の低い分散媒に分散する場合においても、所望の粒径分布や研磨剤粒子濃度を有する研磨剤スラリーが容易にしかも安定に得られる。
【0018】
故に、前記スラリー調製方法によって得られた研磨剤スラリーは、磁性粉体のスラリーに添加して磁性記録媒体用塗料を調製するのに特に好適に使用できる。
【0019】
前記研磨剤スラリーとしては、ほかに、平版印刷版の基材である支持体ウェブに塗布して感光性、感熱性、または光重合性の製版層を形成する製版層形成液なども挙げられる。
【0020】
前記粒状体の平均粒径は、0.05〜0.6μmの範囲が好ましい。このような粒状体としては、たとえば、α−アルミナ、酸化クロム、ベンガラ、炭化珪素、酸化チタン、およびシリカなどの研磨剤粒子、各種セラミックス粉末、フェライト粉末や高磁性合金粉末などの磁性体粉末、各種無機顔料粉末、各種有機顔料粉末などが挙げられる。
【0021】
前記分散媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ブタノール、イソプロパノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、エチルセロソルブ、メチルセロソルブなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酪酸メチル、炭酸エチレンなどのエステル系溶剤、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらの溶剤には限定されない。また、これらの有機溶剤と水との混合物も使用できる。
【0022】
前記分散媒には、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂などの各種結合剤を配合することができる。
【0023】
連続式分散機としては、後述するビーズミル、および前記スラリーを循環させつつ超音波を照射することにより、剪断力を付与する循環型超音波連続式分散機などが使用される。
【0024】
前記スラリー調製方法に使用されるスラリー調製装置は、前記連続式分散機を1台のみ有するものであってもよく、前記連続式分散機が2台以上直列に配列されていてもよい。
【0025】
連続式分散機を1台のみ有するスラリー調製装置においては、前記連続式分散機にスラリーを2回以上通過させるように構成することが、前記粒状体を前記分散媒に安定に分散させる上で好ましい。
【0026】
請求項2に記載の発明は、前記連続式分散機から前記スラリーを導出するスラリー導出管路における前記スラリーの流速も0.3m/秒以上に保持するスラリー調製方法に関する。
【0027】
前記スラリー調製方法においては、スラリー導入管路だけでなく、スラリー導出管路においてもスラリーが高速で流通するから、前記連続式分散機で充分な剪断力が付与されず、前記連続式分散機を通過した時点においても前記スラリーが不安定な場合においても、スラリー導出管路を構成する配管において、前記スラリー中の粒状体が沈降・堆積することがない。したがって、前記スラリー調製方法を研磨剤スラリーの調製に適用すれば、所望の粒径分布および研磨剤濃度を有する研磨剤スラリーが更に容易に得られる。
【0028】
請求項3に記載の発明は、前記粒状体が研磨剤粒子であるスラリー調製方法に関する。
【0029】
前記スラリー調製方法は、請求項1に記載のスラリー調製方法を研磨剤スラリーの調製に適用した例である。
【0030】
研磨剤スラリー中の研磨剤濃度は、20〜70重量%の範囲が好ましいが、前記範囲には限定されない。
【0031】
請求項4に記載の発明は、前記分散媒が有機溶剤であるスラリー調製方法に関する。
【0032】
前記スラリー調製方法は、請求項1に記載のスラリー調製方法を有機溶剤中に粒状体が分散したスラリーの調製に適用した例である。
【0033】
これらのスラリー調製方法で得られた研磨剤スラリーは、研磨剤粒子が分散媒中に安定に分散しているから、磁性記録媒体用塗料の調製に好適に使用できる。
【0034】
また、前記スラリー調製方法は、セラミックス粉末を適宜の結合剤とともに有機溶剤中に分散させたセラミックススラリーの調製に好適に使用できる。
【0035】
請求項5に記載の発明は、前記研磨剤粒子が、α−アルミナ、酸化クロム、ベンガラ、炭化珪素、酸化チタン、およびシリカからなる群から選択されてなるスラリー調製方法に関する。
【0036】
磁性記録材料用の研磨剤としては、上に挙げたものが好ましい。
【0037】
したがって、前記スラリー調製方法によって得られる研磨剤スラリーは、磁性記録媒体用塗料の調製に好適に使用される。
【0038】
請求項6に記載の発明は、前記スラリー導入管路および前記スラリー導出管路において、前記スラリーの流速を0.5m/秒以上に保持するスラリー調製方法に関する。
【0039】
前記スラリー調製方法においては、前記スラリー導入管路および前記スラリー導出管路におけるスラリーの流速は、請求項1〜4に記載のスラリー調製方法における流速に比較して更に高速であるから、前記スラリー導入管路および前記スラリー導出管路を構成する配管内での粒状体の沈降・堆積は、更に効果的に防止される。
【0040】
請求項7に記載の発明は、前記スラリーを前記連続式分散機に2回以上通過させるスラリー調製方法に関する。
【0041】
前記スラリー調製方法によれば、前記スラリーには、複数回にわたって機械的剪断力が付与されるから、前記研磨剤スラリーのように粒状体と分散媒との比重が大きく異なるスラリーを調製する場合においても、連続式分散機の外部において粒状体が分離して沈降・堆積することが防止され、安定なスラリーが得られる。
【0042】
前記スラリー調製方法に使用されるスラリー調製装置には、スラリー導出管路をスラリー導入管路に連通させ、スラリーを循環させるようにした循環型スラリー調製装置、および連続式分散機を複数台直列に配設し、1の連続式分散機のスラリー導出管路を、前記1の連続式分散機の下流側に隣接する他の連続式分散機のスラリー導入管路に接続し、多段階で分散を行う多段型スラリー調製装置がある。
【0043】
前記循環型スラリー調製装置および多段型スラリー調製装置において分散が進行するとスラリーの粘度が上昇する。前記スラリーが研磨剤スラリーである場合には、粘度が1.5P以上になれば、スラリーを静置しても研磨剤粒子の沈降が起こらなくなるから、スラリー導入管路およびスラリー導出管路におけるスラリーの流速を0.3m/秒以上に保持する必要はない。
【0044】
請求項8に記載の発明は、前記スラリー導入管路の管路長が、前記スラリーの滞留時間が13秒以下になるように定められてなるスラリー調製方法に関する。
【0045】
前記スラリーは、前記スラリー導入管路においては未だに剪断力を受けていないので、粒状体が沈殿・堆積し易い状態にある。したがって、前記スラリー導入管路における前記スラリーの滞留時間が長すぎると、前記スラリー導入管路の内部で粒状体が沈降・堆積する恐れがある。
【0046】
しかしながら、前記スラリー調製方法においては、前記スラリーを、前記スラリー導入管路における滞留時間が13秒以下になるように流通させているから、前記スラリーは、粒状体が沈降する前に連続式分散機に導入され、そこで強い剪断力を付与される。
【0047】
したがって、前記スラリー導入管路における粒状体の沈降・堆積が防止される。
【0048】
請求項9に記載の発明は、前記連続式分散機として、内部にビーズが充填されてなるとともに前記スラリーが導入されるタンク状容器と、前記タンク状容器の中央部で回転するアジテータとを備えるビーズミルを用いるスラリー調製方法に関する。
【0049】
前記ビーズミルにおいては、タンク状容器内にビーズが充填されているから、前記タンク状容器にスラリーを導入しつつアジテータを回転させると、前記タンク状容器内でビーズ同士が互いに衝突することにより、前記スラリーに強い剪断力が及ぼされる。
【0050】
したがって、前記スラリー中の粒状体と分散媒との比重差が大きかったり、互いの親和性が低かったりする場合においても、安定性の高いスラリーが得られる。
【0051】
前記ビーズミルは、縦型であっても横型であってもよい。また、内部のアジテータは、調製しようとするスラリーの粘度に応じて、ディスクが回転軸に多数植設された中粘度用のディスク型アジテータ、および円筒状ロータの外周面全体に多数のピンが植設された高粘度用のピン型アジテータなどが使用される。
【0052】
請求項10に記載の発明は、前記ビーズミルとして、前記スラリーが繰り返し導入される循環型ビーズミルを使用するスラリー調製方法に関する。
【0053】
前記スラリー調製方法は、請求項8に記載の発明において、循環型ビーズミルを使用する例である。
【0054】
循環型ビーズミルには、前記スラリーが何度も導入されるから、前記スラリーにはそのたび毎に強い剪断力が加えられる。
【0055】
したがって、請求項9に記載のスラリー調製方法に比較しても更に粒状体の均一分散性や安定性に優れたスラリーが得られる。
【0056】
請求項11に記載の発明は、前記連続式分散機にスラリーを供給する供給タンク内において、前記スラリーが常時流動化されてなるスラリー調製方法に関する。
【0057】
前記スラリー調製方法によれば、前記連続式分散機には、常時、流動状態、即ち粒状体が分散媒中に分散した状態に保持されたスラリーが供給されるから、前記供給タンクと前記連続式分散機とを接続するスラリー導入管路において粒状体が沈降・堆積することが特に効果的に防止される。
【0058】
請求項12に記載の発明は、前記スラリー導入管路および前記スラリー導出管路を構成する配管の内径が、調製後のスラリーの粘度に基づいて定められてなるスラリー調製方法に関する。
【0059】
請求項13に記載の発明は、粒状体が分散媒中に分散したスラリーを調製するスラリー調製装置であって、前記スラリーに剪断力を付与する連続式分散機を有してなるとともに、前記連続式分散機に前記スラリーを導入するスラリー導入管路、および前記連続式分散機から前記スラリーを導出するスラリー導出管路は、前記スラリーが0.3m/秒以上の流速で流通するように形成されてなることを特徴とするスラリー調製装置に関する。
【0060】
請求項1のところで述べたのと同様の理由により、前記スラリー調製装置を用いれば、研磨剤のように比較的比重の高い粒状体を有機溶剤のように比較的比重の低い分散媒に分散する場合においても、所望の粒径分布や研磨剤粒子濃度を有する研磨剤スラリーが容易にしかも安定に得られる。
【0061】
【発明の実施の形態】
1.実施形態1
本発明に係るスラリーの調製方法に使用されるスラリー調製装置の一例を図1に示す。
【0062】
実施形態1に係るスラリー調製装置100は、本発明における連続式分散機の一例である横型ビーズミル2と、研磨剤粒子と有機溶剤と結合剤とを攪拌・混合して研磨剤スラリーを調製するとともに、前記研磨剤スラリーをビーズミル2に供給する供給タンク4と、供給タンク4中の研磨剤スラリーをビーズミル2に導入するスラリー導入管路6と、ビーズミル2を通過した研磨剤スラリーをビーズミル2から導出するスラリー導出管路8と、スラリー導出管路8を通して導出された研磨剤スラリーを供給タンク4に戻す戻し管路12と、スラリー調製装置100において所定の分散度に到達したスラリーを貯留するストックタンク10とを備える。戻し管路12からは三方弁13を介して連通流路15が分岐し、連通流路15の先端がストックタンク10に連通している。ストックタンク10は、また、内部のスラリーを取り出す取出し管路14を備えている。
【0063】
供給タンク4には、仕込まれた研磨剤粒子と有機溶剤と結合剤とを攪拌・混合する攪拌羽根4Aが設けられている。また、スラリー導入管路6には、ポンプPが介装されている。
【0064】
スラリー導入管路6、スラリー導出管路8、および戻し管路12は、内部をスラリーが流通するときの流速が0.3m/秒以上、好ましくは0.4m/秒以上、更に好ましくは0.5m/秒以上になるように、ポンプPの吐出能力との関係で配管の内径が選択されている。また、前記配管の内径は、スラリー導入管路6、スラリー導出管路8、および戻し管路12の間で互いに等しいことが、設計の単純化の上からは好ましいが、前記流速が得られる限り、特に互いに等しくなくてもよい。
【0065】
ビーズミル2の構成の詳細を図2に示す。
【0066】
図2に示すように、ビーズミル2は、略円筒状のタンク状容器2Aと、タンク状容器2Aの軸線に沿って設けられ、駆動装置(図示せず。)によって前記位置に片持ち式に支承されているとともに、軸線の周りに回転するアジテータ2Bとを備える。
【0067】
アジテータ2Bとタンク状容器2Aの前記駆動装置側の端板2Fとの間には液シール機構2iが設けられている。アジテータ2Bは、円筒状の本体2Eと、本体2Eの表面全体に一定間隔で立設されたピン2Cとを備える。タンク状容器2Aの内壁面にもピン2Dが立設されている。ピン2Dは、互いに隣接する2本のピン2Cの間に位置するように設けられている。
【0068】
端面2Fには、タンク状容器2Aにスラリーを導入するスラリー導入管2Hが立設され、端面2Fとは反対側の端面2Gには、タンク状容器2Aからスラリーを導出するスラリー導出管2Jが立設されている。端板2Gの内側には、スラリーとビーズとを分離し、ビーズがスラリー導出間2Jから流出しないように、スラリー導出管2Jに連通するセパレータが設けられている。スラリー導入管路6はスラリー導入管2Hに接続され、スラリー導出管路8はスラリー導出管2Jに接続されている。
【0069】
なお、実施形態1に示す例においてはビーズミルは1個であるが、スラリー調製装置100においてビーズミルを2個以上直列に配設してもよいのはもちろんである。
【0070】
スラリー調製装置100を用いて研磨剤スラリーを調製する手順について以下に説明する。
【0071】
まず、供給タンク4に、研磨剤粒子と有機溶剤と結合剤とを所定量仕込み、攪拌羽根4Aで攪拌して結合剤の有機溶剤溶液中に研磨剤粒子を分散させ、スラリーを調製する。
【0072】
研磨剤粒子が分散したら、ポンプPを起動し、前記スラリーを、スラリー導入管路6、ビーズミル2、スラリー導出管路8、三方弁13、戻し管路12、および供給タンク4により形成される流路を循環させる。このとき、スラリー導入管路6、スラリー導出管路8、および戻し管路12におけるスラリーの流速が何れも0.3m/秒以上になるようにポンプPの吐出量を設定する。そして、ビーズミル2においては、アジテータ2Bを回転させる。
【0073】
ビーズミル2においては、アジテータ2Bが回転することにより、ピン2Cがピン2Dに対して回転するとともに、ピン2Cとピン2Dとの相対運動により、ビーズ同士が激しくぶつかり合う。したがって、供給タンク4からスラリー導入管路6を通ってビーズミル2に導入されたスラリーは、互いに相対運動するピン2Cとピン2D、およびタンク状容器2A内部において互いにぶつかり合うビーズによって強い剪断力を付与される。これによって前記スラリー中の研磨剤粒子が有機溶媒中に均一に分散する。
【0074】
前記スラリーが所定の分散度に達したら、三方弁13を切替えてスラリー導出管路8と連通管路15とを連通させ、スラリーをストックタンク10に導入するとともに、ストックタンク10において貯留する。
【0075】
前記スラリーは、前記流路を循環させることにより、何度もビーズミル2に導入されるから、繰り返し剪断力を受ける。これにより、研磨剤粒子は、スラリー中に均一に分散する。
【0076】
更に、スラリー導入管路6、スラリー導出管路8、および戻し管路12においてスラリーは0.3m/秒以上の流速で流通するから、これらの管路を構成する配管が水平部を有していても、前記スラリー中の研磨剤粒子が、前記水平部において沈降・堆積することはない。
【0077】
2.実施形態2
本発明に係るスラリーの調製方法に使用されるスラリー調製装置の別の例を図3に示す。
【0078】
実施形態2に係るスラリー調製装置102は、図3に示すように、直列に接続された2台のビーズミル20および22と、研磨剤粒子と有機溶剤と結合剤とを攪拌・混合して研磨剤スラリーを調製するとともに、前記研磨剤スラリーをビーズミル20に供給する供給タンク40と、供給タンク40の研磨剤スラリーをビーズミル20に導入するスラリー導入管路60と、研磨剤スラリーをビーズミル20から導出するスラリー導出管路80と、スラリー導出管路80を通して導出された研磨剤スラリーを一時貯留する一時貯留タンク30と、一時貯留タンク30の研磨剤スラリーをビーズミル22に導入するスラリー導入管路62と、研磨剤スラリーをビーズミル22から導出するスラリー導出管路82と、スラリー導出管路82から導出された研磨剤スラリーを一時貯留するストックタンク32とを備える。
【0079】
ビーズミル20およびビーズミル22は、図2に示す通りの構成を有している。スラリー導入管路60およびスラリー導入管路62には、それぞれポンプP1およびP2が介装されている。
【0080】
供給タンク40および一時貯留タンク30には、それぞれ攪拌羽根40Aおよび攪拌羽根30Aが設けられている。また、供給タンク40には、研磨剤供給管路40Bおよび分散媒供給管路40Cが設けられている。研磨剤粒子、および結合剤を有機溶剤溶液に溶解させた分散媒は、それぞれ研磨剤供給管路40Bおよび分散媒供給管路40Cを通して供給タンク40に連続的に供給される。
【0081】
スラリー導入管路60、スラリー導入管路62、スラリー導出管路80、およびスラリー導出管路82を構成する配管は、何れも研磨剤スラリーが内部を0.3m/秒以上の流速で流通するように内径が設定されている。
【0082】
スラリー調製装置102を用いて研磨剤スラリーを調製する手順について以下に説明する。
【0083】
前記研磨剤粒子と前記分散媒とを、それぞれ研磨剤供給管路40Bおよび分散媒供給管路40Cを通して供給タンク40に連続的に仕込み、攪拌羽根40Aで攪拌して前記研磨剤中に前記研磨剤粒子を分散させ、スラリーを調製する。
【0084】
供給タンク40内で仮調製された研磨剤スラリーを、スラリー導入管路60を通してビーズミル20に導入する。
【0085】
スラリー導入管路60から導入された研磨剤スラリーは、ビーズミル20内部において強い剪断力を付与される。これによって研磨剤は分散媒中に均一に分散される。
【0086】
ビーズミル20を通過した研磨剤スラリーは、スラリー導出管路80を通って一時貯留タンク30に導入され、一時貯留される。そして、一時貯留タンク30からスラリー導入管路62を通ってビーズミル22に導入される。
【0087】
ビーズミル22内部においてもビーズミル20と同様に前記研磨剤スラリーに強い剪断力が付与され、研磨剤粒子が更に均一に分散する。
【0088】
ビーズミル22中で研磨剤粒子が分散された研磨剤スラリーは、スラリー導出管路82を通ってストックタンク32に導入され、ストックタンク32に貯留される。
【0089】
ビーズミル20とビーズミル22との間には一時貯留タンク30が設けられているから、ポンプP1とポンプP2との吐出量にある程度差があってもスラリー調製装置102の運転に支障を来すことはない。しかし、ポンプP1とポンプP2との吐出量は、スラリー導入管路60、スラリー導入管路62、スラリー導出管路80、およびスラリー導出管路82の何れにおいても、研磨剤スラリーの流速が0.3m/秒以上、好ましくは0.4m/秒以上になるように設定されている。
【0090】
実施形態2に係るスラリー調製装置102においても、研磨剤スラリーの流速は、スラリー導入管路60、スラリー導入管路62、スラリー導出管路80、およびスラリー導出管路82の何れにおいても0.3m/秒以上であるから、これらの管路を構成する配管が水平部を有していても、前記スラリー中の研磨剤粒子が、前記水平部において沈降・堆積することはない。
【0091】
【実施例】
(実施例1、2、比較例1)
図4に示すスラリー調製装置を用い、研磨剤スラリーを調製した。図4のスラリー調製装置は、戻り管路12および三方弁を有しない以外は、図1に示す実施形態1のスラリー調製装置と同様の構成を有している。また、ビーズミルの構成は図2に示す通りである。
【0092】
研磨剤スラリーの組成は以下に示すとおりである。
【0093】
研磨剤、有機溶剤、および結合剤を前記の重量割合で供給タンク4に仕込み、攪拌羽根4Aで攪拌することにより、前記研磨剤の沈降・堆積を防止しながら、スラリー導入管路6を通してビーズミル2に前記研磨剤を連続的に供給した。
【0094】
ビーズミル2の内部においてアジテータ2Bを回転させ、スラリー導入管路6から導入された研磨剤スラリーに剪断力を付与した。ビーズミル2で剪断力を付与したのち、スラリー導出管路8を通してストックタンク10に研磨剤スラリーを導出した。
【0095】
スラリー導入管路6およびスラリー導出管路8における研磨剤スラリーの流速を0.1〜0.5m/分の間で変化させた。スラリー導入管路6は、前記各流速において研磨剤スラリーの滞留時間が8秒になるように配管の直径および長さを選択した。
【0096】
このときの、供給タンク4内部の固形分濃度とスラリー導出管路8からストックタンク10に導出される研磨剤スラリー中の固形分濃度とを比較した。また、スラリー導入管路6およびスラリー導出管路8を構成する配管内における研磨剤の堆積状況を目視観察して評価した。前記評価は、◎「堆積なし。」、○「殆ど堆積なし。」、△「少し堆積あり。」、×「かなり堆積あり。」の4段階で評価した。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
(実施例3、4、比較例2)
研磨剤スラリーの滞留時間が13秒になるようにスラリー導入管路6を構成する配管の直径および長さを選択した以外は、実施例1,2、比較例1と同様の手順で研磨剤スラリーを調製した。結果を表2に示す。
【0098】
【表2】
(実施例5、6、比較例3)
研磨剤スラリーの滞留時間が18秒になるようにスラリー導入管路6を構成する配管の直径および長さを選択した以外は、実施例1,2、比較例1と同様の手順で研磨剤スラリーを調製した。結果を表3に示す。
【0099】
【表3】
研磨剤スラリーの流速が0.3m/秒以上の実施例1〜6では、スラリー導入管路6内の研磨剤スラリーの滞留時間が18秒と長い場合にも、問題になるほどの研磨剤の堆積は見られなかった。これに対して、研磨剤スラリーの流速が0.1m/秒の比較例1〜3では、スラリー導入管路6内の滞留時間が13秒以上になると研磨剤粒子の明らかな堆積が認められた。
【0100】
実施例1〜6を比較すると、スラリー導入管路6内の滞留時間が8秒と短い実施例1および2、並びに前記滞留時間が13秒の実施例3および4では研磨剤粒子の堆積は殆ど認められなかったのに対し、前記滞留時間が18秒と長い実施例5および6では若干の堆積が見られた。
【0101】
このことから、前記滞留時間は13秒以下が好ましいことがわかった。
【0102】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、スラリー調製装置の配管に水平部がある場合においても、分散初期において前記粒状体が前記水平部に沈降・堆積することなく、所望の粒径分布や研磨剤粒子濃度を有する研磨剤スラリーが安定に調製できるスラリー調製方法およびスラリー調製装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施形態1に係るスラリー調製装置の構成を示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示すスラリー調製装置の備えるビーズミルの構成を示す概略断面図である。
【図3】図3は、実施形態2に係るスラリー調製装置の構成を示す概略図である。
【図4】図4は、実施例1〜6および比較例1〜3で使用したスラリー調製装置の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
2 ビーズミル
4 供給タンク
6 スラリー導入管路
8 スラリー導出管路
10 ストックタンク
20 ビーズミル
22 ビーズミル
30 一時貯留タンク
32 ストックタンク
40 供給タンク
100 スラリー調製装置
102 スラリー調製装置
Claims (13)
- 粒状体が分散媒中に分散したスラリーを調製するスラリー調製方法であって、
連続式分散機を通過させることにより、前記スラリーに剪断力を付与する分散工程を有してなるとともに、
前記連続式分散機に前記スラリーを導入するスラリー導入管路において、前記スラリーの流速を0.3m/秒以上に保持することを特徴とするスラリー調製方法。 - 前記連続式分散機からストックタンクに前記スラリーを導出するスラリー導出管路における前記スラリーの流速を0.3m/秒以上に保持する請求項1に記載のスラリー調製方法。
- 前記粒状体は研磨剤粒子である請求項1または2に記載のスラリー調製方法。
- 前記分散媒は有機溶剤である請求項1〜3の何れか1項に記載のスラリー調製方法。
- 前記研磨剤粒子は、α−アルミナ、酸化クロム、ベンガラ、炭化珪素、酸化チタン、およびシリカからなる群から選択されてなる請求項3または4に記載のスラリー調製方法。
- 前記スラリー導入管路および前記スラリー導出管路において、前記スラリーの流速を0.5m/秒以上に保持する請求項1〜5の何れか1項に記載のスラリー調製方法。
- 前記スラリーを前記連続式分散機に2回以上通過させる請求項1〜6の何れか1項に記載のスラリー調製方法。
- 前記スラリー導入管路の管路長は、前記スラリーの滞留時間が13秒以下になるように定められてなる請求項1〜7の何れか1項に記載のスラリー調製方法。
- 前記連続式分散機として、内部にビーズが充填されてなるとともに前記スラリーが導入されるタンク状容器と、前記タンク状容器の中央部で回転するアジテータとを備えるビーズミルを用いる請求項1〜8の何れか1項に記載のスラリー調製方法。
- 前記ビーズミルとして、前記スラリーが繰り返し導入される循環型ビーズミルを使用する請求項9に記載のスラリー調製方法。
- 前記連続式分散機にスラリーを供給する供給タンク内において、前記スラリーは常時流動化されてなる請求項1〜10に記載のスラリー調製方法。
- 前記スラリー導入管路および前記スラリー導出管路を構成する配管の内径は、調製後のスラリーの粘度に基づいて定められてなる請求項1〜11の何れか1項に記載のスラリー調製方法。
- 粒状体が分散媒中に分散したスラリーを調製するスラリー調製装置であって、
前記スラリーに剪断力を付与する連続式分散機を有してなるとともに、
前記連続式分散機に前記スラリーを導入するスラリー導入管路、および前記連続式分散機から前記スラリーを導出するスラリー導出管路は、前記スラリーが0.3m/秒以上の流速で流通するように形成されてなることを特徴とするスラリー調製装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002373893A JP2004202623A (ja) | 2002-12-25 | 2002-12-25 | スラリー調製方法およびスラリー調製装置 |
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JP2002373893A JP2004202623A (ja) | 2002-12-25 | 2002-12-25 | スラリー調製方法およびスラリー調製装置 |
Publications (1)
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JP2004202623A true JP2004202623A (ja) | 2004-07-22 |
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ID=32812063
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JP2002373893A Pending JP2004202623A (ja) | 2002-12-25 | 2002-12-25 | スラリー調製方法およびスラリー調製装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8128754B2 (en) | 2008-11-14 | 2012-03-06 | Ak Steel Properties, Inc. | Ferric pickling of silicon steel |
JP2016521677A (ja) * | 2013-06-19 | 2016-07-25 | 大連海事大学 | 水酸化マグネシウムを高効率に製造する製造方法及び装置 |
-
2002
- 2002-12-25 JP JP2002373893A patent/JP2004202623A/ja active Pending
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