JP2004202544A - 異形断面をもつ多角形環状体部品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】異形断面をもつ多角形環状体部品を、金属の棒材から出発して、その曲げおよび溶接を行なうことを中心の工程とする多角形環状体の製造において、製造工程の効率を高めるとともに材料歩留まりを画期的に高め、断面が異形である部品を有利に製造することができる、異形断面をもつ多角形環状体の製造方法を提供すること。
【解決手段】下記の諸工程を行なう。A)棒材を鍛造して、屈曲部の数に相当する数の太径部分(11)と、細径部分(12)とが連なった段付き素材(1)を用意し、B)太径部分(11)を曲げ加工して、多角形で、両端が向き合っているが開いた環状の素材(3)とし、C)向き合った両端を突き合わせて溶接することにより、閉じた環状の素材(5)を形成し、D)型打ち鍛造により、異形断面をもつ多角形環状体素材(7)とし、E)必要な仕上げ加工、たとえば切削を行って、異形断面をもつ多角形環状体部品(8)とする。
【選択図】 図4
【解決手段】下記の諸工程を行なう。A)棒材を鍛造して、屈曲部の数に相当する数の太径部分(11)と、細径部分(12)とが連なった段付き素材(1)を用意し、B)太径部分(11)を曲げ加工して、多角形で、両端が向き合っているが開いた環状の素材(3)とし、C)向き合った両端を突き合わせて溶接することにより、閉じた環状の素材(5)を形成し、D)型打ち鍛造により、異形断面をもつ多角形環状体素材(7)とし、E)必要な仕上げ加工、たとえば切削を行って、異形断面をもつ多角形環状体部品(8)とする。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属材料から、異形断面をもつ多角形、とくに四角形の環状体部品を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、たとえば図1(平面図)および図2(側面図)に示す、「フレーム」と呼ばれているガスタービン燃焼器用のトランジションピースに使われるシール用リングのような、平面図および側面図の一方または両方において曲線的(図示した例は平面図において曲線的)であり、しかも断面が、たとえば図3に示したような異形の形状をもった部品を金属材料から製造しようとするときに、実施可能な製造方法としては、板材をウオータージェットや溶断などの手段で切断し、それを機械加工で仕上げるという工程しかなかった。とくに、その材料が耐熱性の高いNi基超合金(ハステロイX、ナイモニック263など)や、Co基超合金(L605など)のように、高価な合金である場合、材料歩留まりが低い製造方法を採用せざるを得ないということは、製造コストがきわめて高くなることを意味していた。
【0003】
この点を改善することを意図して、発明者らの一人は、棒状の金属を出発材料とする製造方法を案出し、すでに提案した(特願2002−19397)。その製造方法は、たとえば長方形の断面をもつ棒材を曲げて両端を突き合わせ、突き合わせ部分をフラッシュバット溶接して環状体にし、得られた環状体に矢通し作業を行なって内側を整形し、必要な熱処理を施したのち、機械加工で仕上げるという工程からなる。
【0004】
この製造方法により、材料歩留まりは格段に向上したが、製造コストの低減という点からは、なお改善が必要であった。製品のバリエーションからいえば、断面が異形のものを製造しようとする場合、機械加工で切削除去すべき量が多大であり、材料歩留まりと所要時間の両面から、不利である。
【0005】
上記した発明の方法を実施するに当たって、曲げ加工をした部分が減肉することを経験し、その対策が必要になった。具体的な対策は、減肉を見込んで若干太めの棒材を使用することであるが、これは、屈曲部以外の部分では大量の切削を行なう必要があるから、この発明の利益に逆行する。同様な問題は、たとえば長方形の環状体において、対向する一組の長辺と一組の短辺との太さに大きな差があるとき、太い方を基準にして棒材を用意しなければならない、という場面でも経験する。
【0006】
一方、フランジ状体であって耳片付きのものを形成する技術として、丸棒を加工して複数の環状切り込みを入れた段付き棒を用意し、これを円形に巻回して環状とし、突き合わせ端部同士を溶接してから、これを押圧扁平化して、上記の段の部分を耳片に形成するという工程からなる方法が知られている(特公昭56−1975)。発明者らは、この耳片付フランジ形成法にヒントを得て、段付き素材を多角形環状部品の製造に利用することを着想した。そのアイデアは、屈曲部を太径にしてあらかじめ余肉を与えておくことにより、屈曲によって生じる減肉を補償しようというものである。屈曲を受けない辺の部分は細径の、余計な材料のない太さにすることができ、材料歩留まりを高めることができる。
【0007】
この段付き素材から出発して多角形環状部品を製造するには、太径の部分を屈曲させてほぼ多角形とし、上記の耳片付フランジ形成法にならって、突き合わせ端部同士を溶接する。フランジの製造は全体をプレスして扁平にするのに対し、異形断面をもった多角形環状部品を製造する手段として、発明者らは、型打ち鍛造を採用した。段付き素材と型打ち鍛造との組み合わせは、辺によって太さが異なる多角形環状部品を製造する場合にも好都合であって、屈曲部、断面積の大きい辺、小さい辺のそれぞれに適切な径を与えた段付き素材を用意して型打ち鍛造することにより、取り除かれる材料を最小限にした加工が可能になる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述のような経過をたどって発展した発明者らの知見にもとづき、すなわち、前掲特願2002−19397の変形多角形部材の製造方法を基礎とし、これに特公昭56−1975の耳片付フランジ形成法に着想を得た段付き素材の使用を組み合わせた技術により、棒材から出発して曲げおよび溶接を行なうことを中心の工程とする多角形環状体の製造において、製造工程の効率を高めるとともに材料歩留まりを画期的に高め、断面が異形である部品を有利に製造することができる、異形断面をもつ多角形環状体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明の製造方法は、金属の棒材から異形断面をもつ多角形の環状体部品を製造する方法であって、図4に示すように、下記の諸工程を本質的な工程とする。
A)棒材を鍛造して、屈曲部の数に相当する数の太径部分(11)と、その残りの、辺部を形成する細径部分(12)とが連なった、長い段付き素材(1)を用意すること(図4A)、
B)この長い段付き素材(1)の太径部分(11)を曲げ加工して、多角形で、両端が向き合っているが開いた環状の素材(3)とすること(図4B)、
C)環状の素材(3)の向き合った両端を突き合わせて溶接することにより、多角形で、閉じた環状の素材(5)を形成すること(図4C)、
D)環状素材(5)を型打ち鍛造することにより、異形断面をもつ多角形環状体素材(7)とすること(図4D)、および
E)多角形環状体素材(7)に必要な仕上げ加工、たとえば切削を行って、異形断面をもつ多角形環状体部品(8)とすること。
【0010】
【発明の実施形態】
本発明の製造方法には、上述した基本的な方法に対する変更態様として、溶接する素材として対称形のものを2個用意し、2箇所溶接して環状の素材を得る態様が可能である。すなわち、金属の棒材から異形断面をもつ多角形の環状体部品を製造する方法であって、図5に工程を示す、下記の諸工程からなる製造方法である。
A’)棒材を鍛造して、屈曲部の数の半分に相当する数の太径部分(21)と、その残りの、辺部を形成する細径部分(22)とが連なった、短い段付き素材(2)を用意すること(図5A’)、
B’)この短い段付き素材(2)の太径部分(21)を曲げ加工して、完成品の半分の形状をもったコ字形素材(4)とすること(図5B’)、
C’)2個のコ字形素材(4)の各端を突き合わせて溶接することにより、多角形で、閉じた環状の素材(6)を形成すること(図5C’)、
D)閉じた環状の素材(6)を型打ち鍛造することにより異形断面をもつ多角形環状体素材(7)とすること(図5D)、および
E)多角形環状体素材(7)に必要な仕上げ加工を施して、異形断面をもつ多角形環状体部品(8)とすること。
【0011】
上記した基本的態様および変更態様のどちらによるかは、製造しようとする多角形環状体部品の形状、寸法、さらには使用する装置の便宜などにより選択すればよい。
【0012】
段付き素材(1,2)は、断面がほぼ円形のものであってもよいし、正方形または長方形のものであってもよく、製造しようとする環状体部品の断面形状と、それに応じた製造工程にとって好都合なものを選ぶ。太径部分(11,21)は、続く環状の素材(3)またはコ字形素材(4)の屈曲部になる部分であり、その数は当然に、前者では屈曲部の数と一致し、後者ではその半分の数となる。四角形環状体を製造する場合、図4および図5に示したように、4カ所の屈曲部に相当する4個またはその半分の2個である。
【0013】
太径部分(11,21)の長さ、および細径部分(12,22)との断面径の比率、さらに大径から小径への移行部分のテーパは、曲げ加工時に十分な肉が屈曲部に与えられ、後続の型打ち鍛造において、肉不足や過大なバリが出ないように決定する。前述のように、細径部分は、製造しようとする多角形環状体部品の各部分の断面積に応じて、さまざまに変化させることができる。たとえば、ほぼ長方形の環状体であって、長辺より短辺の方がより大きい断面積をもつ場合は、屈曲部が最大の径、短辺部分が中位の径、そして長辺部分が最小の径をもつ段付き素材を用意することになる。段付き素材の用意は、四面高速鍛造機による自由鍛伸が高能率で有利であるが、フォージングロールによる型鍛造など、任意の手段を採用することができる。
【0014】
変更態様に従って、2個のコ字形素材(4)を組み合わせる場合、製造しようとする環状体部品の平面形状に応じ、その半分を構成する形状のものとすることはもちろんであるが、両端の突き合わせは同一軸上において行なうことが好ましい。たとえば、環状体が六角形の場合、屈曲部を3個有する(屋根+両側壁)の形状をえらぶ。このようなわけで、本発明でいう「コ字形」とは、多角形の半分の形状として可能な、さまざまなものを包含する。
【0015】
環状素材(5,6)を得るための溶接は、フラッシュバット溶接、MIG溶接など任意の技術により実施できるが、工程が簡単であり、かつ短時間でできる点で、フラッシュバット溶接が最も有利である。フラッシュバット溶接は、当該分野において既知の技術に従って実施することができる。溶接により生じたバリの部分は、型打ち鍛造に先立って除去することが好ましい。これには、グラインダー研削などの手段が採用できる。
【0016】
異形断面をもつ多角形環状体素材(7)を得るための型打ち鍛造も、当該分野において既知の技術に従って実施することができる。型打ち鍛造を工程中に採用したことは本発明の特徴であって、これにより、図3に例示したようなリブ付き長方形断面のほか、三角形、滴形などの異形断面をもつ多角形環状体素材を製造することが容易になった。必要に応じて、型打ち鍛造の最後に、鍛造バリを打ち抜きにより除く作業を行なう。
【0017】
本発明の異形断面をもつ多角形環状体部品の製造方法は、上記した基本的な工程に加えて、必要に応じて他の工程を、上記した工程の中途に装入し、また工程の終わりに付加して、実施することができる。その例は、矢通し工程、すなわちテーパをもった治具を通して環状素材の内側を整形する工程であって、これはフラッシュバット溶接に続くバリ取りの後に行なうほか、必要により、最終的な機械加工に先立って行なうこともある。
【0018】
型打ち鍛造に続いて、焼鈍や溶体化処理のための熱処理を施すことが、通常は必要であろう。熱処理の温度、時間、冷却速度などの条件は、使用した材料によって選択する。たとえば、前記したNi基の超合金「ナイモニック263」であれば、1150℃に1時間の加熱と、それに続く水冷である。
【0019】
最終的な機械加工は、環状体素材の外形を整えて部品とする工程であり、それに続いて、必要な付加的加工、たとえばドリル穿孔または放電加工による孔あけ工程を行なうこともある。そのほか、製造の中途で必要に応じて、さまざまな検査、たとえば寸法のチェック、探傷、表面硬さの測定などを行なうべきことはいうまでもない。
【0020】
【発明の効果】
本発明の方法により異形断面をもつ多角形環状体部品を製造すれば、棒状の素材の曲げ加工および溶接を行なって環状体を得るという、さきに提案した方法の利点である、高い材料歩留りという利益が享受できる。その上で本発明は、棒材を加工して段付き素材を用意するという構成を取り入れたことによって、型打ち鍛造による外形の形成という、効率の高い成形法の採用を可能にし、機械加工の量を顕著に減らすことに成功して、工程の合理化と製造コストの削減をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法により製造される、異形断面をもつ多角形環状体部品の例(ガスタービンのトランジションピース用フレーム)を示す平面図。
【図2】図1の矢視方向の側面図。
【図3】図1のI−I部分の拡大断面図。
【図4】本発明に従う異形断面をもつ多角形環状体部品の製造方法の、基本的な態様の工程を説明する図であって、Aは鍛造により得た太径部と細径部とをもつ長い段付き素材、Bはその太径部を曲げて得た、多角形で開いた環状の素材、Cはその向き合った両端を突き合わせて溶接して得た多角形で閉じた環状の素材、Dは閉じた環状の素材を型打ち鍛造して得た、異形断面をもつ多角形環状体素材を、それぞれ示す。
【図5】本発明に従う異形断面をもつ多角形環状体部品の製造方法の、変更態様の工程を説明する、図4に対応する図であって、A’は鍛造により得た太径部と細径部とをもつ短い段付き素材、B’はその太径部を曲げて得たコ字形素材、C’は2個のコ字形素材の向き合った両端を突き合わせて溶接して得た、多角形で閉じた環状の素材、Dは閉じた環状の素材を型打ち鍛造して得た、異形断面をもつ多角形環状体素材を、それぞれ示す。
【符号の説明】
1 長い段付き素材 2 短い段付き素材
11,21 太径部分 12,22 細径部分
3 開いた環状の素材 4 コ字形素材
5,6 閉じた環状の素材
7 型打ち鍛造製品(異形断面をもつ多角形環状体素材)
8 異形断面をもつ多角形環状体部品
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属材料から、異形断面をもつ多角形、とくに四角形の環状体部品を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、たとえば図1(平面図)および図2(側面図)に示す、「フレーム」と呼ばれているガスタービン燃焼器用のトランジションピースに使われるシール用リングのような、平面図および側面図の一方または両方において曲線的(図示した例は平面図において曲線的)であり、しかも断面が、たとえば図3に示したような異形の形状をもった部品を金属材料から製造しようとするときに、実施可能な製造方法としては、板材をウオータージェットや溶断などの手段で切断し、それを機械加工で仕上げるという工程しかなかった。とくに、その材料が耐熱性の高いNi基超合金(ハステロイX、ナイモニック263など)や、Co基超合金(L605など)のように、高価な合金である場合、材料歩留まりが低い製造方法を採用せざるを得ないということは、製造コストがきわめて高くなることを意味していた。
【0003】
この点を改善することを意図して、発明者らの一人は、棒状の金属を出発材料とする製造方法を案出し、すでに提案した(特願2002−19397)。その製造方法は、たとえば長方形の断面をもつ棒材を曲げて両端を突き合わせ、突き合わせ部分をフラッシュバット溶接して環状体にし、得られた環状体に矢通し作業を行なって内側を整形し、必要な熱処理を施したのち、機械加工で仕上げるという工程からなる。
【0004】
この製造方法により、材料歩留まりは格段に向上したが、製造コストの低減という点からは、なお改善が必要であった。製品のバリエーションからいえば、断面が異形のものを製造しようとする場合、機械加工で切削除去すべき量が多大であり、材料歩留まりと所要時間の両面から、不利である。
【0005】
上記した発明の方法を実施するに当たって、曲げ加工をした部分が減肉することを経験し、その対策が必要になった。具体的な対策は、減肉を見込んで若干太めの棒材を使用することであるが、これは、屈曲部以外の部分では大量の切削を行なう必要があるから、この発明の利益に逆行する。同様な問題は、たとえば長方形の環状体において、対向する一組の長辺と一組の短辺との太さに大きな差があるとき、太い方を基準にして棒材を用意しなければならない、という場面でも経験する。
【0006】
一方、フランジ状体であって耳片付きのものを形成する技術として、丸棒を加工して複数の環状切り込みを入れた段付き棒を用意し、これを円形に巻回して環状とし、突き合わせ端部同士を溶接してから、これを押圧扁平化して、上記の段の部分を耳片に形成するという工程からなる方法が知られている(特公昭56−1975)。発明者らは、この耳片付フランジ形成法にヒントを得て、段付き素材を多角形環状部品の製造に利用することを着想した。そのアイデアは、屈曲部を太径にしてあらかじめ余肉を与えておくことにより、屈曲によって生じる減肉を補償しようというものである。屈曲を受けない辺の部分は細径の、余計な材料のない太さにすることができ、材料歩留まりを高めることができる。
【0007】
この段付き素材から出発して多角形環状部品を製造するには、太径の部分を屈曲させてほぼ多角形とし、上記の耳片付フランジ形成法にならって、突き合わせ端部同士を溶接する。フランジの製造は全体をプレスして扁平にするのに対し、異形断面をもった多角形環状部品を製造する手段として、発明者らは、型打ち鍛造を採用した。段付き素材と型打ち鍛造との組み合わせは、辺によって太さが異なる多角形環状部品を製造する場合にも好都合であって、屈曲部、断面積の大きい辺、小さい辺のそれぞれに適切な径を与えた段付き素材を用意して型打ち鍛造することにより、取り除かれる材料を最小限にした加工が可能になる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述のような経過をたどって発展した発明者らの知見にもとづき、すなわち、前掲特願2002−19397の変形多角形部材の製造方法を基礎とし、これに特公昭56−1975の耳片付フランジ形成法に着想を得た段付き素材の使用を組み合わせた技術により、棒材から出発して曲げおよび溶接を行なうことを中心の工程とする多角形環状体の製造において、製造工程の効率を高めるとともに材料歩留まりを画期的に高め、断面が異形である部品を有利に製造することができる、異形断面をもつ多角形環状体の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成する本発明の製造方法は、金属の棒材から異形断面をもつ多角形の環状体部品を製造する方法であって、図4に示すように、下記の諸工程を本質的な工程とする。
A)棒材を鍛造して、屈曲部の数に相当する数の太径部分(11)と、その残りの、辺部を形成する細径部分(12)とが連なった、長い段付き素材(1)を用意すること(図4A)、
B)この長い段付き素材(1)の太径部分(11)を曲げ加工して、多角形で、両端が向き合っているが開いた環状の素材(3)とすること(図4B)、
C)環状の素材(3)の向き合った両端を突き合わせて溶接することにより、多角形で、閉じた環状の素材(5)を形成すること(図4C)、
D)環状素材(5)を型打ち鍛造することにより、異形断面をもつ多角形環状体素材(7)とすること(図4D)、および
E)多角形環状体素材(7)に必要な仕上げ加工、たとえば切削を行って、異形断面をもつ多角形環状体部品(8)とすること。
【0010】
【発明の実施形態】
本発明の製造方法には、上述した基本的な方法に対する変更態様として、溶接する素材として対称形のものを2個用意し、2箇所溶接して環状の素材を得る態様が可能である。すなわち、金属の棒材から異形断面をもつ多角形の環状体部品を製造する方法であって、図5に工程を示す、下記の諸工程からなる製造方法である。
A’)棒材を鍛造して、屈曲部の数の半分に相当する数の太径部分(21)と、その残りの、辺部を形成する細径部分(22)とが連なった、短い段付き素材(2)を用意すること(図5A’)、
B’)この短い段付き素材(2)の太径部分(21)を曲げ加工して、完成品の半分の形状をもったコ字形素材(4)とすること(図5B’)、
C’)2個のコ字形素材(4)の各端を突き合わせて溶接することにより、多角形で、閉じた環状の素材(6)を形成すること(図5C’)、
D)閉じた環状の素材(6)を型打ち鍛造することにより異形断面をもつ多角形環状体素材(7)とすること(図5D)、および
E)多角形環状体素材(7)に必要な仕上げ加工を施して、異形断面をもつ多角形環状体部品(8)とすること。
【0011】
上記した基本的態様および変更態様のどちらによるかは、製造しようとする多角形環状体部品の形状、寸法、さらには使用する装置の便宜などにより選択すればよい。
【0012】
段付き素材(1,2)は、断面がほぼ円形のものであってもよいし、正方形または長方形のものであってもよく、製造しようとする環状体部品の断面形状と、それに応じた製造工程にとって好都合なものを選ぶ。太径部分(11,21)は、続く環状の素材(3)またはコ字形素材(4)の屈曲部になる部分であり、その数は当然に、前者では屈曲部の数と一致し、後者ではその半分の数となる。四角形環状体を製造する場合、図4および図5に示したように、4カ所の屈曲部に相当する4個またはその半分の2個である。
【0013】
太径部分(11,21)の長さ、および細径部分(12,22)との断面径の比率、さらに大径から小径への移行部分のテーパは、曲げ加工時に十分な肉が屈曲部に与えられ、後続の型打ち鍛造において、肉不足や過大なバリが出ないように決定する。前述のように、細径部分は、製造しようとする多角形環状体部品の各部分の断面積に応じて、さまざまに変化させることができる。たとえば、ほぼ長方形の環状体であって、長辺より短辺の方がより大きい断面積をもつ場合は、屈曲部が最大の径、短辺部分が中位の径、そして長辺部分が最小の径をもつ段付き素材を用意することになる。段付き素材の用意は、四面高速鍛造機による自由鍛伸が高能率で有利であるが、フォージングロールによる型鍛造など、任意の手段を採用することができる。
【0014】
変更態様に従って、2個のコ字形素材(4)を組み合わせる場合、製造しようとする環状体部品の平面形状に応じ、その半分を構成する形状のものとすることはもちろんであるが、両端の突き合わせは同一軸上において行なうことが好ましい。たとえば、環状体が六角形の場合、屈曲部を3個有する(屋根+両側壁)の形状をえらぶ。このようなわけで、本発明でいう「コ字形」とは、多角形の半分の形状として可能な、さまざまなものを包含する。
【0015】
環状素材(5,6)を得るための溶接は、フラッシュバット溶接、MIG溶接など任意の技術により実施できるが、工程が簡単であり、かつ短時間でできる点で、フラッシュバット溶接が最も有利である。フラッシュバット溶接は、当該分野において既知の技術に従って実施することができる。溶接により生じたバリの部分は、型打ち鍛造に先立って除去することが好ましい。これには、グラインダー研削などの手段が採用できる。
【0016】
異形断面をもつ多角形環状体素材(7)を得るための型打ち鍛造も、当該分野において既知の技術に従って実施することができる。型打ち鍛造を工程中に採用したことは本発明の特徴であって、これにより、図3に例示したようなリブ付き長方形断面のほか、三角形、滴形などの異形断面をもつ多角形環状体素材を製造することが容易になった。必要に応じて、型打ち鍛造の最後に、鍛造バリを打ち抜きにより除く作業を行なう。
【0017】
本発明の異形断面をもつ多角形環状体部品の製造方法は、上記した基本的な工程に加えて、必要に応じて他の工程を、上記した工程の中途に装入し、また工程の終わりに付加して、実施することができる。その例は、矢通し工程、すなわちテーパをもった治具を通して環状素材の内側を整形する工程であって、これはフラッシュバット溶接に続くバリ取りの後に行なうほか、必要により、最終的な機械加工に先立って行なうこともある。
【0018】
型打ち鍛造に続いて、焼鈍や溶体化処理のための熱処理を施すことが、通常は必要であろう。熱処理の温度、時間、冷却速度などの条件は、使用した材料によって選択する。たとえば、前記したNi基の超合金「ナイモニック263」であれば、1150℃に1時間の加熱と、それに続く水冷である。
【0019】
最終的な機械加工は、環状体素材の外形を整えて部品とする工程であり、それに続いて、必要な付加的加工、たとえばドリル穿孔または放電加工による孔あけ工程を行なうこともある。そのほか、製造の中途で必要に応じて、さまざまな検査、たとえば寸法のチェック、探傷、表面硬さの測定などを行なうべきことはいうまでもない。
【0020】
【発明の効果】
本発明の方法により異形断面をもつ多角形環状体部品を製造すれば、棒状の素材の曲げ加工および溶接を行なって環状体を得るという、さきに提案した方法の利点である、高い材料歩留りという利益が享受できる。その上で本発明は、棒材を加工して段付き素材を用意するという構成を取り入れたことによって、型打ち鍛造による外形の形成という、効率の高い成形法の採用を可能にし、機械加工の量を顕著に減らすことに成功して、工程の合理化と製造コストの削減をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法により製造される、異形断面をもつ多角形環状体部品の例(ガスタービンのトランジションピース用フレーム)を示す平面図。
【図2】図1の矢視方向の側面図。
【図3】図1のI−I部分の拡大断面図。
【図4】本発明に従う異形断面をもつ多角形環状体部品の製造方法の、基本的な態様の工程を説明する図であって、Aは鍛造により得た太径部と細径部とをもつ長い段付き素材、Bはその太径部を曲げて得た、多角形で開いた環状の素材、Cはその向き合った両端を突き合わせて溶接して得た多角形で閉じた環状の素材、Dは閉じた環状の素材を型打ち鍛造して得た、異形断面をもつ多角形環状体素材を、それぞれ示す。
【図5】本発明に従う異形断面をもつ多角形環状体部品の製造方法の、変更態様の工程を説明する、図4に対応する図であって、A’は鍛造により得た太径部と細径部とをもつ短い段付き素材、B’はその太径部を曲げて得たコ字形素材、C’は2個のコ字形素材の向き合った両端を突き合わせて溶接して得た、多角形で閉じた環状の素材、Dは閉じた環状の素材を型打ち鍛造して得た、異形断面をもつ多角形環状体素材を、それぞれ示す。
【符号の説明】
1 長い段付き素材 2 短い段付き素材
11,21 太径部分 12,22 細径部分
3 開いた環状の素材 4 コ字形素材
5,6 閉じた環状の素材
7 型打ち鍛造製品(異形断面をもつ多角形環状体素材)
8 異形断面をもつ多角形環状体部品
Claims (5)
- 金属の棒材から異形断面をもつ多角形の環状体部品を製造する方法であって、下記の諸工程からなる製造方法:
A)棒材を鍛造して、屈曲部の数に相当する数の太径部分(11)と、その残りの、辺部を形成する細径部分(12)とが連なった、長い段付き素材(1)を用意すること、
B)この長い段付き素材(1)の太径部分(11)を曲げ加工して、多角形で、両端が向き合っているが開いた環状の素材(3)とすること、
C)環状の素材(3)の向き合った両端を突き合わせて溶接することにより、多角形で、閉じた環状の素材(5)を形成すること、
D)環状素材(5)を型打ち鍛造することにより、異形断面をもつ多角形環状体素材(7)とすること、および
E)多角形環状体素材(7)に必要な仕上げ加工を施して、異形断面をもつ多角形環状体部品(8)とすること。 - 金属の棒材から異形断面をもつ多角形の環状体部品を製造する方法であって、下記の諸工程からなる製造方法:
A’)棒材を鍛造して、屈曲部の数の半分に相当する数の太径部分(21)と、その残りの、辺部を形成する細径部分(22)とが連なった、短い段付き素材(2)を用意すること、
B’)この短い段付き素材(2)の太径部分(21)を曲げ加工して、完成品の半分の形状をもったコ字形素材(4)とすること、
C’)2個のコ字形素材(4)の各端を突き合わせて溶接することにより、多角形で、閉じた環状の素材(6)を形成すること、
D)閉じた環状の素材(6)を型打ち鍛造することにより異形断面をもつ多角形環状体素材(7)とすること、および
E)多角形環状体素材(7)に必要な仕上げ加工を施して、異形断面をもつ多角形環状体部品(8)とすること。 - 長い段付き素材(1)または短い段付き素材(2)を、高速四面鍛造機により用意する請求項1または2の製造方法。
- 溶接を、フラッシュバット溶接により実施する請求項1または2の製造方法。
- 請求項1または2の製造方法により製造した、ガスタービンのトランジションピース用のフレームである、異形断面をもつ多角形の環状体部品。
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