JP2004201873A - 画像処理方法及び画像処理装置並びにプログラム - Google Patents

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Abstract

【目的】動脈瘤等の治療に関する医療上の多面的かつ有用な情報が得られることを課題とする。
【構成】血管のCT断層像に基づき血管部CT断面の中心点Oを求め、隣接する各血管部CT断面の中心点O1〜On間を滑らかな曲線で補間して血管部中心線Cを形成するステップと、前記中心線Cに垂直な血管部垂直断面を該中心線Cの微小区間毎に作成すると共に、該血管部垂直断面の輪郭形状を多角形で近似するステップと、隣接する多角形断面の各頂点間につき求めた微小距離を夫々累積加算することにより血管壁の長さを求めるステップとを備える。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は画像処理方法及び画像処理装置並びにプログラムに関し、更に詳しくは、血管造影剤を使用して撮影した動脈瘤のX線CT画像解析処理に適用して好適なるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、動脈瘤の撮影目的で血管造影剤を用いたX線CT撮影が行われている。動脈瘤は、血管部と、この血管壁に付着し、ゼリー(jelly)状に血液が固まった血栓部分とからなっている。マルチディテクタを使用したX線CT撮影では被検体体軸方向の分解能を高めて血管造影を行うことができ、動脈瘤部の血管領域抽出を容易に行うことができる。
【0003】
動脈瘤の定量的な評価は、正常な血管部の径と瘤部の径とを計測/比較することにより行われる。この場合に、血管部のCT断層像は血中の造影剤により鮮明に得られるが、血管壁に付着した血栓部分には造影剤が流入しないため、鮮明な像は得られない。しかも、血栓部には濃度斑と呼ばれる明るさの濃淡が存在しており、これが画像処理技術による血栓部分の計測を妨げている。
【0004】
この様な状況の下、従来は、造影領域を抽出するための閾値を適切に求める目的で、造影剤を注入しないで撮影したプレーンスカウト像と、造影剤を注入して撮影したアキシャル画像に基づき作成した造影スカウト像との差分をとって差分画像を求めると共に、該差分画像の造影領域の画素値に基づき造影領域抽出用の閾値を決定し、該閾値で造影アキシャル画像から造影領域を抽出し、鮮明な3D画像を作成するものが知られている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−325340(要約)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記造影領域(即ち、血管領域)の3D画像が鮮明に観察できるだけでは、動脈瘤等の治療に関する医療上の多面的かつ有用な情報は得られない。
【0007】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、その目的とする所は、動脈瘤等の治療に関する医療上の多面的かつ有用な情報が得られる画像処理方法及び画像処理装置並びにプログラムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は例えば図1の構成により解決される。即ち、本発明(1)の画像処理方法は、血管のCT断層像に基づき血管部CT断面の中心点Oを求め、隣接する各血管部CT断面の中心点O1〜On間を滑らかな曲線で補間して血管部中心線を形成するステップと、前記中心線Cに垂直な血管部垂直断面を該中心線Cの微小区間毎に作成すると共に、該血管部垂直断面の輪郭形状を多角形で近似するステップと、隣接する多角形断面の各頂点間につき求めた微小距離を夫々累積加算することにより血管壁の長さを求めるステップとを備えるものである。
【0009】
従って、様々な形状を有する動脈瘤(特に血管部)の形状、寸法を立体的、かつ忠実に把握できると共に、動脈瘤の多面的な診断が可能となる。なお、上記隣接する多角形断面の各頂点間につき求めた微小距離とは、好ましくは、隣接する多角形断面の各頂点間を滑らかな曲線で補間した場合の微小距離である。
【0010】
本発明(2)では、上記本発明(1)において、前記求めた血管壁の長さに基づき血管壁の(長手方向の)最大長と最小長とを求めるステップを更に備える。従って、血管の曲がりのみならず、血管のねじれも含めたより実際的な形状、寸法を忠実に把握できる。
【0011】
本発明(3)では、上記本発明(1)において、血管部垂直断面につき求めた面積に、隣接する垂直断面間の距離を乗算して微小区間毎の血管部微小体積を求めると共に、該求めた各微小体積を加算して血管部全体の体積を求めるステップと、前記CT断層像により作成した3次元画像につき所定のCT閾値範囲内に含まれる血栓部のボクセルデータを抽出・計数して、該血栓部の体積を求めるステップと、前記求めた血管部全体の体積と血栓部体積との比を求めるステップとを備えるものである。従って、様々な形状を有する動脈瘤の立体的、定量的な診断が容易に行える。
【0012】
また本発明(4)の画像処理装置は、血管のCT断層像に基づき血管部CT断面の中心点を求め、隣接する各血管部CT断面の中心点間を滑らかな曲線で補間して血管部中心線を形成する中心線形成手段と、前記中心線に垂直な血管部垂直断面を該中心線の微小区間毎に作成すると共に、該血管部垂直断面の輪郭形状を多角形で近似する垂直断面作成手段と、隣接する多角形断面の各頂点間につき求めた微小距離を夫々累積加算することにより血管壁周囲の長さを求める血管長演算手段とを備えるものである。
【0013】
本発明(5)では、上記本発明(4)において、血管長演算手段は、求めた血管壁の長さに基づき血管壁の(長手方向の)最大長と最小長とを求める。
【0014】
本発明(6)では、上記本発明(4)において、垂直断面作成手段は、隣接する垂直断面の一部が交差しない範囲内で中心線上の各微小区間を選択する。従って、血栓部を除く血管部の全体を重複なく、効率よく微小体積区間に分割できる。
【0015】
本発明(7)では、上記本発明(6)において、血管部垂直断面につき求めた面積に、隣接する垂直断面間の距離を乗算して微小区間毎の血管部微小体積を求めると共に、該求めた各微小体積を加算して血管部全体の体積を求める血管部体積演算手段と、前記CT断層像に基き血栓部の体積を求める血栓部体積演算手段と、前記求めた血管部体積と血栓部体積との比を求める体積比演算手段とを備える。
【0016】
本発明(8)では、上記本発明(6)において、血管部両端面部の垂直断面につき第1,第2の血管径を求めると共に、中間の微小区間毎の各血管径を前記第1,第2の血管径の中間の血管径で滑らかに補間する血管径補間手段と、前記補間された各血管径を有する仮想の血管部画像を作成する血管部作成手段とを備えるものである。
【0017】
本発明(8)によれば、計測された血管部両端面部の正常な血管径の情報をもとに、動脈瘤部も正常血管径であったと仮定した場合の正常血管を容易に作成(推定)できる。また、この正常血管の情報をもとに、ステントグラフト(stent graft)法等で用いる代替用血管部品を容易かつ適正に設計できる。更には、動脈瘤部の術前/術後の状態や、その後の経過を予測(シミュレーション)する上で多面的かつ極めて有用な医用情報が豊富に得られる。
【0018】
本発明(9)では、上記本発明(8)において、血管部垂直断面につき求めた面積に、隣接する垂直断面間の距離を乗算して微小区間毎の血管部微小体積を求めると共に、該求めた各微小体積を加算して血管部全体の体積を求める血管部体積演算手段と、前記CT断層像に基き血栓部の体積を求める血栓部体積演算手段と、前記求めた血管部体積と血栓部体積との比を求める体積比演算手段とを備える。従って、正常であった場合の血管部と、血栓部との様々な関係を容易に見積もれる。
【0019】
本発明(10)では、上記本発明(7)又は(9)において、血栓部体積演算手段は、CT断層像により作成した3次元画像につき所定のCT閾値範囲内に含まれる血栓部のボクセルデータを抽出・計数して、該血栓部の体積を求める。従って、もとのCT断層像情報を利用できると共に、比較的容易な演算で血栓部の体積を計測できる。なお、この血栓部の体積に上記求めた血管部の体積も含めることで比較の対象を動脈瘤部の体積としてもよい。
【0020】
本発明(11)では、上記本発明(7)又は(9)において、血管部体積演算手段は、隣接する垂直断面間の距離を該隣接する多角形頂点間の最大の距離と最小の距離との和の1/2により求める。従って、簡単な演算により各微小体積をより正確に求められる。なお、上記隣接する多角形頂点間の最大の距離と最小の距離とは、好ましくは、隣接する多角形断面の各頂点間を滑らかな曲線で補間した場合の最大の距離と最小の距離である。
【0021】
また本発明(12)のプログラムは、コンピュータに上記本発明(1)乃至(3)の何れか1に記載の画像処理方法を実行させるためのプログラムである。この様なプログラムは、CD−ROM等の記録媒体を介して、又は通信ネットワークを介するオンラインによりユーザに提供可能である。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に従って本発明に好適なる実施の形態を詳細に説明する。なお、全図を通して同一符号は同一又は相当部分を示すものとする。
【0023】
図2は実施の形態によるX線CT装置の要部構成図であり、本装置は大きく分けて、X線ファンビームXLFBにより被検体100のアキシャル/ヘリカルスキャン・読取等を行う走査ガントリ部30と、被検体100を搭載して体軸CLbの方向に移動させる撮影テーブル20と、操作者の設定・操作に基づき前記走査ガントリ部30及び撮影テーブル20の遠隔制御を行うと共に、走査ガントリ部30で検出された被検体の投影データ(RAWデータとも呼ばれる)に基づき該被検体のCT断層像を再構成する操作コンソール部10とを備える。
【0024】
更に、走査ガントリ部30において、40はX線管、40AはX線管制御部、50はX線の体軸CLb方向の曝射幅を制限するコリメータ、50Aはコリメータ制御部、90はチャネルCH方向に並ぶ多数(例えばn=1000程度)のX線検出素子が体軸CLb方向の例えば4列L1〜L4に配列されている多列X線検出器(マルチディテクタとも呼ばれる)、91はX線検出器90の検出信号に基づき被検体100の投影データg1(X,θ)〜g4(X,θ)を生成し、収集するデータ収集部、30Aは上記X線撮影系を体軸CLbの回りに回転させる回転制御部である。なお、慣例に従い、被検体体軸CLbの方向は装置座標のz軸と一致している。
【0025】
また、操作コンソール部10において、11はX線CT装置のスキャン制御並びにスキャン計画やCT断層像の再構成処理等を行う中央処理装置、11aはそのCPU、11bはCPU11aが使用するRAM,ROM等からなる主メモリ(MM)、12はキーボードやマウス等を含む指令やデータの入力装置、13はスキャン計画情報や再構成されたCT断層像等を表示するための表示装置(CRT)、14はCPU11aと走査ガントリ部30及び撮影テーブル20等との間で各種制御信号CSやモニタ信号MSのやり取りを行う制御インタフェース、15はデータ収集部91からの投影データを一時的に蓄積するデータ収集バッファ、16は再構成されたCT断層像データを蓄積・格納すると共に、X線CT装置の運用に必要な各種アプリケーションプログラムや各種演算/補正用のデータファイル等を格納している2次記憶装置(ハードディスク装置等)である。
【0026】
そして、200は病院内の1又は2以上の上記X線CT装置と遠隔の画像処理装置(ワークステーションとも呼ばれる)との間をオンラインで接続するためのローカルエリアネットワーク(LAN)、17はLAN200に接続するためのLANインタフェース(LIF)、50は本発明による画像処理を行うワークステーション(WS)である。なお、このワークステーション50は本発明の画像処理装置に相当する。
【0027】
次に血管造影剤を使用したX線CT撮影処理を説明する。図3は実施の形態によるX線CT撮影処理のフローチャートであり、CPU11aの制御下で実行される。図において、好ましくは、事前に被検体100のスカウトスキャンを行った後、この処理に入力する。ステップS11では、続く被検体100のアキシャル/ヘリカルスキャンのためのスキャン計画画面を表示部13に表示する。ステップS12では、操作者がスキャン範囲、スキャン密度、X線強度等からなるスキャンパラメータを設定する。
【0028】
次に、操作者が画面上のリコンタグをクリックすると、X線CT断層像の再構成パラメータを入力可能となる。ステップS13では、操作者がCT断層像のリコン範囲、リコン密度等からなるリコンパラメータを設定する。ステップS14ではこれらの設定確認ボタン「CONFIRM」の入力を待ち、該ボタンが入されない場合は、ステップS12に戻って各種パラメータ情報の設定変更が可能である。
【0029】
やがて、ステップS14で設定確認ボタン「CONFIRM」が入力されると、ステップS15では上記設定されたスキャンパラメータに従って被検体100のスキャン制御を行う。その際には、予め別途に設定されたシーケンスやタイミングに従って血管造影剤を投入する。ステップS16では被検体100の投影データg1(X,θ)〜g4(X,θ)を収集・蓄積する。ステップS17では所要撮影領域についての全スキャンを完了したか否かを判別し、完了でない場合はステップS15に戻る。
【0030】
こうして、やがて、全スキャンを完了すると、ステップS18では上記設定されたリコンパラメータに従って被検体100のCT断層像を再構成する。ステップS19では再構成されたCT断層像をディスク16に保存する。そして、ステップS20では該作成したCT断層像を表示装置13に表示する。
【0031】
図4は実施の形態による動脈瘤解析処理のフローチャートであり、ワークステーション50のCPU(不図示)により実行される。また、図5〜図8は動脈瘤解析処理のイメージ図(1)〜(4)であり、以下、これらの図を参照して動脈瘤解析処理を詳細に説明する。図4において、造影剤を使用した動脈瘤のCT画像データが入手可能になるとこの処理に入力する。
【0032】
ステップS31ではX線CT装置よりLAN200を介して入力した動脈瘤を含む血管のCT画像データに基き公知の処理により該血管部の3D画像を作成する。図5(A)に血管部3D画像のイメージを示す。被検体体軸(z軸)方向のCT断層像を重ね合せて表示することにより血管部の3D画像が得られる。ここで、61は血管部、62は血栓部である。このままでも、動脈瘤の3D画像を観察できるが、診断や治療に有用な幾何学的情報は得られない。
【0033】
ステップS32では操作者の指示に従い注目すべき血管領域を抽出し、血管部61の中心線を作成する。図5(B)に中心線Cの3D画像を示す。この場合に、上記図5(A)の3D画像データを使用して血管61の中心線Cを作成する処理としては、血管断面の面積重心を求める等の、公知の方法を採用できるが、ここでは断面中心を高速に検出可能な一例の方法を説明する。この処理はワークステーション50のCPUにより自動的に行われる。
【0034】
図6に血管部中心線作成処理のイメージを示す。図6(A)に血管部61のあるCTスライス面の平面図を示す。一般に、血管部のスライス断面は円形又は楕円形をしているが、ここでは一般性を損なうことなく楕円形の場合を示す。まず直交線分X,Yを容易し、その中心Oが血管部61の内側に来るようにセットする。線分中心Oが血管部61の内側にある判定は、各線分長PO≠0,OQ≠0,SO≠0,OT≠0であり、このとき、通常は、線分長PO≠OQ,SO≠OTである。なお、直交線分X,Yと血管部断面輪郭との交点P,Q,S,Tは、血管部61の造影撮影により、鮮明に得られる。
【0035】
次に図6(B)では例えば線分長PO=OQになるまで直交線分X,Yをx軸方向(矢印a方向)にスライドする。このとき、線分長SO≠OTのままである。そこで、次に図6(C)では線分長SO=OTになるまで直交線分X,Yをy軸方向(矢印b方向)にスライドする。この時点で、もし両線分長PO,OQが略等しい(許容範囲内である)状態に維持されていれば、その時の中心点Oの座標が血管61の中心座標となる。特に、血管断面が円形の場合はこの時点で血管中心Oが求まる。しかし、図示の如く楕円形の場合は更に上記の処理を繰り返す必要がある。
【0036】
即ち、この時点でまだ線分長PO≠OQの場合は、更に図6(D)において、該線分長PO=OQになるまで直交線分X,Yをx軸方向(矢印a方向)にスライドする。こうして、血管部61の中心を比較的に高速に検出できる。
【0037】
そして、こうして求めた各血管部中心座標につき、隣接するCT断面の中心点間を滑らかな曲線で補間することにより、血管部中心線Cを形成する。滑らかな曲線としてはBスプライン曲線等を利用できる。
【0038】
図4に戻り、ステップS33では上記形成した中心線Cに沿って該中心線Cに垂直な断面を作成する。図7に血管部垂直断面の作成イメージを示す。ここで、図7(A)に上記図5(B)の血管部CT断面を再度示す。また挿入図(a)に血管部垂直断面作成処理のイメージを示す。図(a)において、今、中心点Onの血管部断面に注目すると、該中心点Onのところで中心線Cを微分することにより接線の単位ベクトル<u1>を得る。次に該ベクトル<u1>に直交するベクトル<u2>を求める。直交ベクトルを求める方法は公知であり、例えばグラムシュミットのベクトル直交化法を利用できる。そして、該ベクトル<u2>に平行な多数の線分を想定すると共に、該線分と血管部周囲との交点座標をプロットすることにより、中心線Cに垂直な断面を形成できる。この場合に、血管壁部は周囲とのCT値の相違によって鮮明に識別できる。図7(B)に血管部垂直断面のイメージを示す。
【0039】
ステップS34では、こうして得られた血管部垂直断面の幾何学的取り扱いが容易となるように、該断面の輪郭を例えば20角形等からなる多角形で近似する。図8(A)に多角形で近似された血管部垂直断面のイメージを示す。断面を多角形近似することによりコンピュータ処理(CADによる処理)が容易となる。
【0040】
ステップS35では多角形断面の各頂点間を滑らかな曲線(Bスプライン曲線等)により補間する。このとき、各隣接する断面につき、どの頂点間を順次補間・接続するかについては幾分の自由度が存在する。今、z軸方向に展開する血管部に曲がりはあるが、ねじれが無いとすると、隣接する多角形の各頂点はz軸方向に略揃っている。この場合は、各多角形断面のz軸方向に対応する(振れの少ない)頂点間をねじれ無く接続することにより、ねじれの無い血管部を再生できる。この処理は、CPUにより自動的に行える。一方、血管部にねじれが存在するような場合には、どの頂点間を接続するかの頂点の選択に人手を介入させてもよい。そして、ステップS36ではこうして形成された血管部61aの情報に基き動脈瘤の診断や治療に有用な各種幾何学的情報を抽出する。次にこれらを説明する。
【0041】
図9は実施の形態による各種医用情報の抽出処理を説明するイメージ図であり、動脈瘤をなす血管部全体の体積と血栓部体積との比を求める場合を示している。図9(A)に血管部垂直断面の一部を示す。今、最初の垂直断面の中心点をO1とすると、その下側に第2,第3の各垂直断面に対応する中心点02,03等が続いている。最初の垂直断面と第2の垂直断面に着目すると、多角形の左端の頂点P1間の距離D12aが最大であり、その反対の右側の頂点Pi間の距離D12bが最小となっている。この場合に、隣接する第1,第2の各垂直断面は、該断面の一部が交差しない範囲内で中心線C上の微小区間O1,O2が選択されている。更に、この例の中心線C(即ち、血管部)はxz平面内で蛇行しており、よって多角形の頂点間の距離は図の左側が最大になったり、右側が最大になったりする。図示しないが、中心線Cがyz平面内で蛇行する場合も同様に考えられる。更に、実際の血管部の曲がり方の方向は、もっと複雑かつ多様であり、これに応じて頂点間の距離が最大になる頂点の位置も変化する。そしてその反対側に頂点間の距離が最小となる頂点が表れる。
【0042】
いずれにしても、隣接する多角形断面の各頂点間につき求めた微小距離を夫々累積加算することにより血管壁周囲の長さを求めることができる。例えば、D12a+D23a+D34b+…の演算により血管部左面の長さが求まる。なお、図示の各微小距離D12a,D23a,D34b等は直線であるが、これに限らない。好ましくは、各微小距離D12a,D23a,D34b等は隣接する多角形断面の各頂点間を滑らかな曲線で補間した場合の微小距離とする。また、血管部にねじれが存在するような場合には、最大と最小の各微小距離の表れる位置が僅かな角度をずらしながら表れる。この場合はD12a’+D23a’+D34b’+…の演算が行われる場合もある。この各微小距離D12a’,D23a’,D34b’等についても滑らかな曲線で補間したものを採用できる。また、他の血管壁の長さも同様にして求まる。かくして、動脈瘤をなす血管部の有用な幾何学的情報が得られる。
【0043】
次に血管部体積の計算方法を説明する。図9(A)において、血管部垂直断面につき求めた面積に、隣接する垂直断面間の距離を乗算して微小区間毎の血管部微小体積を求めると共に、該求めた各微小体積を中心線Cの方向に順次加算して血管部全体の体積を求める。この場合に、隣接する垂直断面間の距離は、隣接する多角形頂点間の最大の距離(例えばD12a)と最小の距離(例えばD12b)との和の1/2により求める。従って、簡単な演算により各微小体積をより正確に求められる。
【0044】
図9(B)に多角形の面積を求める方法のイメージを示す。今、中心点0から見た各頂点P1〜Pmの位置ベクトルを<P1>〜<Pm>とすると、多角形の面積Sは次式の演算により求まる。
【0045】
【数1】
Figure 2004201873
【0046】
ここで、×はベクトルの外積、またi=mの時のベクトル<Pi+1>=<P1>である。なお、CT断層画像につき、造影剤部分のボクセルデータの個数をカウントする方法もあるが、そのカウント領域が複数のCT断面を横切る垂直断面によって複雑な形状による制限を受けるため、上記数1による演算の方が簡単である。
【0047】
一方、血栓部62の体積については、CT断層像により作成した3次元画像につき血栓部組織のCT閾値範囲内に含まれる血栓部のボクセルデータをCT断層像毎に抽出し、累積計数することにより、該血栓部の体積を比較的容易に求めることが可能である。なお、隣接するCT断層像間に距離がある場合は該距離分を加味してその微小体積分のボクセルデータを計数する。そして、前記求めた血管部全体の体積と血栓部体積との比を求めることにより、様々な形状を有する動脈瘤の立体的、定量的な診断情報が容易に得られる。
【0048】
図10は実施の形態によるステントグラフト(stent graft)医療への適用例を説明するイメージ図である。ステントグラフトは、柔らかい金属(ステント:stent)の回りに皮(グラフト:graft)をつけてできた代替用血管部品で、動脈瘤や奇形血管部の治療によく用いられる。ステントグラフト法では、カテーテルを使用して人工血管をはめ込むため、人工血管の寸法(血管径や長さ等)が合わないとうまくはまらない。従って、まず治療を受ける血管部に関する正確な寸法情報が必要である。この寸法情報は上記実施の形態により正確に得られた。これに対して、新たに置換すべき正常な血管部品(ステントグラフト)の詳細な寸法情報も必要である。
【0049】
本実施の形態では、図10に示す如く、正常な血管部両端面部の各垂直断面につき第1,第2の血管径を求めると共に、中間の微小区間毎の各血管径を前記第1,第2の血管径の中間の血管径で滑らかに補間することにより、該滑らかに変化する各血管径を有するような仮想の正常な血管部品61bを設計する。好ましくは、正常な血管径は、正常部の複数垂直断面の血管径の平均により求める。
【0050】
また、この例の血管部品61bでは中央部の血管径が上記図8(B)のものに比べて太くなっており、よって置換後には血栓部62による悪影響が除去される。なお、術後の血栓部は次第に消滅してゆくことが知られている。
【0051】
この様に、本実施の形態では、計測された血管部両端面部の正常な血管径の情報をもとに、動脈瘤部も正常血管径であったと仮定した場合の正常血管を容易に作成(推定)できる。また、この正常血管の情報をもとに、ステントグラフト法等で用いる代替用血管部品を容易かつ適正に設計できる。必要なら、公知のCAD技術を使用して血管部品の様々な変更が行える。更には、動脈瘤部の術前/術後の状態や、手術計画、更には術後の経過等を予測(シミュレーション)する上で多面的かつ極めて有用な医用情報が豊富に得られる。
【0052】
なお、上記実施の形態では、本発明の経皮的人工血管置換(即ち、カテーテルを用いた内皮的なステントグラフト置換)への応用例を述べたが、これに限らない。本発明は動脈瘤の外科的なバイパス手術等にも応用可能である。
【0053】
また、上記実施の形態では本発明のX線CT画像への適用例を具体的に述べたが、これに限らない。本発明は核磁気共鳴(NMR)法により被検体の空間的な核磁化分布を画像化するところの所謂MRI(Magnetic Resonance Imaging)画像にも適用可能である。
【0054】
また、上記本発明に好適なる実施の形態を述べたが、本発明思想を逸脱しない範囲内で各部の構成、制御、処理及びこれらの組み合わせの様々な変更が行えることは言うまでも無い。
【0055】
【発明の効果】
以上述べた如く本発明によれば、動脈瘤等の治療に関する医療上の多面的かつ有用な情報が得られ、動脈瘤等の診断、治療に寄与するところが極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理を説明する図である。
【図2】実施の形態によるX線CT装置の要部構成図である。
【図3】実施の形態によるX線CT撮影処理のフローチャートである。
【図4】実施の形態による動脈瘤解析処理のフローチャートである。
【図5】実施の形態による動脈瘤解析処理のイメージ図(1)である。
【図6】実施の形態による動脈瘤解析処理のイメージ図(2)である。
【図7】実施の形態による動脈瘤解析処理のイメージ図(3)である。
【図8】実施の形態による動脈瘤解析処理のイメージ図(4)である。
【図9】実施の形態による各種医用情報の抽出処理を説明するイメージ図である。
【図10】実施の形態によるステントグラフト医療への適用例を説明するイメージ図である。
【符号の説明】
30 走査ガントリ部
20 撮影テーブル
10 操作コンソール部
50 ワークステーション(WS)
100 被検体
200 ローカルエリアネットワーク(LAN)

Claims (12)

  1. 血管のCT断層像に基づき血管部CT断面の中心点を求め、隣接する各血管部CT断面の中心点間を滑らかな曲線で補間して血管部中心線を形成するステップと、
    前記中心線に垂直な血管部垂直断面を該中心線の微小区間毎に作成すると共に、該血管部垂直断面の輪郭形状を多角形で近似するステップと、
    隣接する多角形断面の各頂点間につき求めた微小距離を夫々累積加算することにより血管壁の長さを求めるステップとを備えることを特徴とする画像処理方法。
  2. 前記求めた血管壁の長さに基づき血管壁の最大長と最小長とを求めるステップを更に備えることを特徴とする請求項1記載の画像処理方法。
  3. 血管部垂直断面につき求めた面積に、隣接する垂直断面間の距離を乗算して微小区間毎の血管部微小体積を求めると共に、該求めた各微小体積を加算して血管部全体の体積を求めるステップと、
    前記CT断層像により作成した3次元画像につき所定のCT閾値範囲内に含まれる血栓部のボクセルデータを抽出・計数して、該血栓部の体積を求めるステップと、
    前記求めた血管部全体の体積と血栓部体積との比を求めるステップとを備えることを特徴とする請求項1記載の画像処理方法。
  4. 血管のCT断層像に基づき血管部CT断面の中心点を求め、隣接する各血管部CT断面の中心点間を滑らかな曲線で補間して血管部中心線を形成する中心線形成手段と、
    前記中心線に垂直な血管部垂直断面を該中心線の微小区間毎に作成すると共に、該血管部垂直断面の輪郭形状を多角形で近似する垂直断面作成手段と、
    隣接する多角形断面の各頂点間につき求めた微小距離を夫々累積加算することにより血管壁周囲の長さを求める血管長演算手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。
  5. 血管長演算手段は、求めた血管壁の長さに基づき血管壁の最大長と最小長とを求めることを特徴とする請求項4記載の画像処理装置。
  6. 垂直断面作成手段は、隣接する垂直断面の一部が交差しない範囲内で中心線上の各微小区間を選択することを特徴とする請求項4記載の画像処理装置。
  7. 血管部垂直断面につき求めた面積に、隣接する垂直断面間の距離を乗算して微小区間毎の血管部微小体積を求めると共に、該求めた各微小体積を加算して血管部全体の体積を求める血管部体積演算手段と、
    前記CT断層像に基き血栓部の体積を求める血栓部体積演算手段と、
    前記求めた血管部体積と血栓部体積との比を求める体積比演算手段とを備えることを特徴とする請求項6記載の画像処理装置。
  8. 血管部両端面部の垂直断面につき第1,第2の血管径を求めると共に、中間の微小区間毎の各血管径を前記第1,第2の血管径の中間の血管径で滑らかに補間する血管径補間手段と、
    前記補間された各血管径を有する仮想の血管部画像を作成する血管部作成手段とを備えることを特徴とする請求項6記載の画像処理装置。
  9. 血管部垂直断面につき求めた面積に、隣接する垂直断面間の距離を乗算して微小区間毎の血管部微小体積を求めると共に、該求めた各微小体積を加算して血管部全体の体積を求める血管部体積演算手段と、
    前記CT断層像に基き血栓部の体積を求める血栓部体積演算手段と、
    前記求めた血管部体積と血栓部体積との比を求める体積比演算手段とを備えることを特徴とする請求項8記載の画像処理装置。
  10. 血栓部体積演算手段は、CT断層像により作成した3次元画像につき所定のCT閾値範囲内に含まれる血栓部のボクセルデータを抽出・計数して、該血栓部の体積を求めることを特徴とする請求項7又は9に記載の画像処理装置。
  11. 血管部体積演算手段は、隣接する垂直断面間の距離を該隣接する多角形頂点間の最大の距離と最小の距離との和の1/2により求めることを特徴とする請求項7又は9に記載の画像処理装置。
  12. コンピュータに請求項1乃至3の何れか1に記載の画像処理方法を実行させるためのプログラム。
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