JP2004201681A - 新規脂質キナーゼ - Google Patents

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雅子 杉浦
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Abstract

【課題】 各種の疾患に関連していると考えられる新規な脂質キナーゼ、該酵素をコードするDNA、該蛋白質に特異的に結合する抗体、該蛋白質を検出する方法、該酵素活性調節物質のスクリーニング方法、該酵素関連物質を有効成分として含むの医薬組成物等に関する。
【解決手段】 a)乃至e)のいずれか一つに記載のDNA:a)特定のヌクレオチド配列からなるDNA;b)特定の配列表に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA;c)上記a)記載のDNAのヌクレオチド配列と相補的な配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、該酵素活性を有する蛋白質をコードする領域を含むDNA;d)上記a)記載のDNAと95%のヌクレオチド配列相同性を示し、該酵素活性を有する蛋白質をコードする領域を含むこDNA;e)特定の配列を含むDNA。
【選択図】 なし

Description

本発明は、神経性疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症、動脈硬化、癌および癌の転移などの疾患に関連していると考えられる脂質をリン酸化する新規な脂質キナーゼ、該脂質キナーゼをコードするDNA、該DNAを含むことからなる組換えプラスミド、該組換えプラスミドで形質転換せしめた宿主、該脂質キナーゼの製造方法、該蛋白質に特異的に結合する抗体、該蛋白質を検出する方法、該脂質キナーゼ活性の測定方法、該脂質キナーゼ活性調節物質(神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症、動脈硬化、癌および癌の転移等の疾患の治療および/または予防活性を有する物質を含む)のスクリーニング方法、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症、動脈硬化、癌および癌の転移等の疾患に罹患するリスクを判定する方法および該脂質キナーゼ関連物質を有効成分として含むの医薬組成物等に関する。
スフィンゴ脂質は従来、グリセロリン脂質およびコレステロールとならぶ細胞膜の主要な構成成分の一つと考えられてきた。グリセロリン脂質は細胞膜構造の維持だけでなく、その代謝産物として多くの生理活性物質を産生させることが知られてきたが、スフィンゴ脂質についてはその代謝産物の生理活性については最近までほとんど知られていなかった。近年、いくつかのスフィンゴ脂質の代謝産物にアポトーシスの誘導や細胞増殖刺激作用などの生理活性が知られるようになり、スフィンゴ脂質の代謝酵素が生理的反応や種々の病態に密接に関連する可能性が示唆されるようになった。なかでも、セラミドは多くの細胞機能を調節するレギュレーターとして注目を集めている(非特許文献1参照)。
例えば、セラミドはTNF-αやIL-1βなどの炎症性サイトカインのセカンドメッセンジャーとして機能し、ホスホリパーゼA等のアラキドン酸経路を活性化することが知られている(非特許文献2および非特許文献3参照)。すなわち、セラミドを各種炎症性疾患の増悪因子として捉える捕らえることができる。また、先天性免疫不全症候群に感染した患者におけるCD4T細胞のアポトーシスを伴う減少や脳細胞への感染の際にもセラミドが増悪因子として機能しているという報告がある(非特許文献4および非特許文献5参照)。さらには、2型糖尿病や肥満においてTNF-αがインシュリン抵抗性を引き起こすが知られているが、セラミドはその下流においても増悪因子として機能していると考えられている(非特許文献6および非特許文献7参照)。腎臓メサンギウム細胞のアポトーシスにおいてセラミドの関与が示唆されており、腎臓疾患の発症および進展にセラミド代謝系が重要な役割を果たしていることが考えられる(非特許文献8参照)。また、LPS等が引き金になり起こる敗血症においてもセラミドがセカンドメッセンジャーとして機能していると報告されている(非特許文献9参照)。さらには、動脈硬化層形成の引き金となるLDLの凝集反応においてもスフィンゴミエリナーゼの活性化に伴うセラミドの上昇が増悪因子として機能するという報告がある(非特許文献10参照)。またこれらとは逆に、癌治療における放射線療法や化学療法において、癌細胞のアポトーシスをセラミドが促進することが知られている(非特許文献11、非特許文献12および非特許文献13参照)。
一方、セラミドの代謝産物であるセラミド−1−リン酸およびその生成酵素であるセラミドキナーゼに関してもいくつかの生理活性が知られている。例えば、脳のシナプスのおいて、カルシウム刺激に応答してセラミドキナーゼが活性化され、生成したセラミド−1−リン酸がシナプスからの神経伝達物質の放出を調節している(非特許文献14および非特許文献15参照)。従って、薬剤等によりセラミドキナーゼの活性を調節することは、アルツハイマー病を含めた各種神経性疾患の治療法となる可能性がある。また、セラミド−1−リン酸は上述した各種セラミドの機能をブロックする作用があると考えられている(非特許文献16参照)。すなわち、慢性関節炎等の各種炎症性疾患、先天性免疫不全症候群、インシュリン抵抗性が引き金となる2型糖尿病や肥満、さらには敗血症、動脈硬化といったをセラミドが増悪因子として作用する疾患をセラミド−1−リン酸により抑制できると考えられる。従って、薬剤等によりセラミドキナーゼを活性化することは、各種炎症性疾患、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症や動脈硬化等の治療法となる可能性がある。逆に、癌の放射線療法や化学療法においてはセラミドキナーゼ活性を抑制する事によって、セラミド量を保つことが出来れば、細胞のアポトーシスを促進し、治療効果を向上させる可能性も考えられる。
国際公開第01/74837号パンフレット ハヌン(Hannun, Y. A.)およびオベイド(Obeid, L. M.)、「トレンズ・イン・バイオケミカル・サイエンシィズ(Trends in Biochemical Sciences)」、1995年、20巻、p.73-77 シュピーゲルら(Spiegel, S. et al.)、「カレント・オピニオン・オブ・セル・バイオロジー(Current Opinion of Cell Biologies)」、1996年、8巻、p.159-167 マティアスら(Mathias, S. et al.)、「サイエンス(Science)」、1993年、259巻、p.519-522 コリネら(Coline, M. G. et al.)、「プロシーディングズ・オブ・ザ・アソシエーション・オブ・アメリカン・フィジシャンズ(Proceedings of the Association of American Physicians)」、1997年、109巻、p.146-153 ウィルトら(Wilt, S. et al.)「アナルズ・オブ・ニューロロジー(Annals of Neurology」,1995年、37巻、p.381-394 ベガムら(Begum, N. et al.)「ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(European Journal of Biochemistry)」、1996年、238巻、p.214-220 ホタミスリギルら(Hotamisligil, G. S. et al.)「サイエンス(Science)」、1996年、271巻、p.665-668 ゲネロら(Gennero, I. et al.)「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)」、2002年、277巻、p.12724-12734 ビュートラー(Beutler, B.)とクルース(Kruys, V.)「ザ・ジャーナル・オブ・カルディオバスキュラー・ファーマコロジー(The Journal of Cardiovascular Pharmacology)」、1995年、25巻、S1-S8 シッセルら(Schissel, S. L. et al.)「ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(Journal of Clinical Investigation)」、1996年、98巻、p.1455-1464 マイケルら(Michael, J. M. et al.)「キャンサー・リサーチ(Cancer Reseach) 、1997年、57巻、p.3600-3605 ボーズら(Bose, R. et al.)「セル(Cell)」、1995年、82巻、p.405-414 ジャフリゾウら(Jaffrezou, J. P. et al.)「イー・エム・ビー・オー・ジャーナル(EMBO Journal)」、1996年、15巻、p.2417-2424 バジャリーら(Bajjalieh, S. M. et al.)「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)」、1989年、264巻、p.14354-14360
本発明者らはヒトセラミドキナーゼと部分的にホモロジーを有する新規蛋白質をコードするcDNAをクローニングし、この新規蛋白質の全一次構造を解明することに成功した。さらにこの新規蛋白質を発現させ、該蛋白質が脂質キナーゼ活性を有することを確認することに成功し、本発明を完成させた。
本発明は、
(1) a)乃至e)のいずれか一つに記載のDNA:
a)配列表の配列番号1のヌクレオチド番号1から1596に示されるヌクレオチド配列からなるDNA;
b)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA;
c)上記a)記載のDNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなる一本鎖DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、脂質キナーゼ活性を有する蛋白質をコードする領域を含むことからなるDNA;
d)上記a)記載のDNAと95%のヌクレオチド配列相同性を示し、脂質キナーゼ活性を有する蛋白質をコードする領域を含むことからなるDNA;
e)配列表の配列番号1のヌクレオチド番号1から1596に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるDNA、

(2) a)乃至c)のいずれか一つに記載のDNA:
a)形質転換大腸菌E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102(FERM BP−8201)が保持するプラスミドに挿入されているDNA;
b)上記a)記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、脂質キナーゼ活性を有する蛋白質をコードする領域を含むことからなるDNA;
c)形質転換大腸菌E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102(FERM BP−8201)が保持するプラスミドに挿入されているDNAを含むことからなるDNA、

(3) 脂質キナーゼ活性が、セラミドの一位の水酸基をリン酸化する活性であることを特徴とする、(1)乃至(2)のいずれか一つに記載のDNA、

(4) 下記のa)乃至d)のいずれか一つに記載の蛋白質:
a)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
b)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質;
c)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列において、一つまたは二つ以上のアミノ酸が付加、挿入、欠失もしくは置換されているアミノ酸配列からなり、脂質キナーゼ活性を有することを特徴とする蛋白質;
d)(1)乃至(3)のいずれか一つに記載のDNAによりコードされ、脂質キナーゼ活性を有することを特徴とする蛋白質、

(5) 脂質キナーゼ活性が、セラミドの一位の水酸基をリン酸化する活性であることを特徴とする、(4)記載の蛋白質、

(6) 下記のa)またはb)に記載の蛋白質:
a)形質転換大腸菌E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102(FERM BP−8201)が保持するプラスミド、pcDNA3.1−cerk2に挿入されているDNAによりコードされるアミノ酸配列からなる蛋白質;
b)形質転換大腸菌E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102(FERM BP−8201)が保持するプラスミドに挿入されているDNAによりコードされるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質、

(7) (1)乃至(3)のいずれか一つに記載のDNAを含む組換えプラスミド、

(8) 発現ベクターであることを特徴とする、(7)記載の組換えプラスミド、

(9) 形質転換大腸菌E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102(FERM BP−8201)により保持される組換えプラスミド、

(10) (7)乃至(9)のいずれか一つに記載の組換えプラスミドで形質転換された宿主細胞、

(11) 原核細胞であることを特徴とする、(10)記載の宿主細胞、

(12) 真核細胞であることを特徴とする、(10)記載の宿主細胞、

(13) 哺乳動物由来の細胞であることを特徴とする、(12)記載の宿主細胞、

(14) 形質転換大腸菌E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102(FERM BP−8201)であることを特徴とする(10)記載の宿主細胞、

(15) (4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質と特異的に結合する抗体、

(16) ポリクローナル抗体であることを特徴とする、(15)記載の抗体、

(17) モノクローナル抗体であることを特徴とする、(15)記載の抗体、

(18) ヒト化抗体、キメラ抗体およびヒト抗体から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、(15)または(17)に記載の抗体、

(19) 下記の工程1)および2)を含む、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質の製造方法:
1)(11)乃至(14)のいずれか一つに記載の宿主細胞を、脂質キナーゼ活性を有する蛋白質の産生が可能な条件下で培養する工程;
2)1)における培養により得られた培養物から、脂質キナーゼ活性を有する蛋白質を回収する工程、

(20) (19)に記載の方法により得られる蛋白質、

(21) 下記の工程1)乃至3)を含む、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質の精製方法:
1) カルモジュリンを含まない溶媒に溶解させた(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質を含む試料を、カルモジュリンを固定させた樹脂に接触させる工程;
2) 該樹脂をカルモジュリンを含まない溶媒で洗浄する工程;
3) 2)で洗浄された樹脂から、EGTAまたはEDTAを含む溶媒を用いて脂質キナーゼ活性を有する蛋白質を溶出させる工程、

(22) 下記の工程1)および2)を含む、試料中の(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質の検出方法;
1)(15)乃至(18)のいずれか一つに記載の抗体と試料を混合する工程;
2)該抗体と(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質の複合体を検出する工程、

(23) 下記の工程1)および2)を含む、試料中の(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質をコードするmRNAの検出方法;
1)試料からmRNAを抽出する工程;
2)1)で抽出されたmRNA中の(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質をコードするmRNA量を測定する工程、

(24) 下記の工程1)および2)を含む、試料中の(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質の検出方法;
1)試料、脂質基質およびリン酸供給物質を混合する工程;
2)脂質基質のリン酸化の程度を測定する工程、

(25) 下記の工程1)および2)を含む、脂質キナーゼ活性を測定する方法:
1)脂質基質、リン酸供給物質および下記のa)乃至c)から選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含む試料を混合する工程;
a)(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質;
b)該蛋白質を発現する細胞;
c)該細胞の破砕液;
2)脂質基質のリン酸化の程度を検出する工程、

(26) 下記の工程1)乃至3)を含む、脂質キナーゼ活性を調節する活性を有する物質をスクリーニングする方法:
1)被験物質の存在下または非存在下で、脂質基質、リン酸供給物質および下記のa)乃至c)から選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含む試料を混合させる工程;
a)(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質;
b)該蛋白質を発現する細胞;
c)該細胞の破砕液;
2)被験物質の存在下および非存在下における脂質基質のリン酸化の程度を検出し、比較する工程;
3)被験物質存在下における該リン酸化の程度が、被験物質非存在下における該リン酸化の程度よりも大きい場合または小さい場合、該被験物質を選択する工程、

(27) 下記の工程1)乃至3)を含む、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化から選択される一つ若しくは二つ以上の疾患の治療または予防効果を有する物質をスクリーニングする方法:
1)被験物質の存在下または非存在下で、脂質基質、リン酸供給物質および下記のa)乃至c)から選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含む試料を混合させる工程;
a)(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質;
b)該蛋白質を発現する細胞;
c)該細胞の破砕液;
2)被験物質の存在下および非存在下における脂質基質のリン酸化の程度を検出し、比較する工程;
3)被験物質存在下における該リン酸化の程度が、被験物質非存在下における該リン酸化の程度よりも大きい場合、該被験物質を選択する工程、

(28) 下記の工程1)乃至3)を含む、癌および癌の転移のいずれか一つ若しくは両方の疾患の治療または予防効果を有する物質をスクリーニングする方法:
1)被験物質の存在下または非存在下で、脂質基質、リン酸供給物質および下記のa)乃至c)から選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含む試料を混合させる工程;
a)(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質;
b)該蛋白質を発現する細胞;
2)被験物質の存在下および非存在下における脂質基質のリン酸化の程度を検出し、比較する工程;
3)被験物質存在下における該リン酸化の程度が、被験物質非存在下における該リン酸化の程度よりも小さい場合、該被験物質を選択する工程、

(29) 脂質基質が、セラミドであることを特徴とする、(24)乃至(28)のいずれか一つに記載の方法、

(30) 下記の工程1)乃至3)からなる、脂質キナーゼ活性を調節する物質をスクリーニングする方法:
1)被験物質の存在下または非存在下で、リン酸供給物質および下記のa)およびb)から選択されるいずれか一つまたは両方を含む試料を混合させる工程;
a)(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞;
b)a)に記載の細胞の破砕液;
2)該細胞に由来する脂質のリン酸化を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
3)被験物質存在下における該リン酸化の程度が、被験物質非存在下における該リン酸化の程度よりも大きい場合または小さい場合、該被験物質を選択する工程、

(31) 下記の工程1)乃至3)を含む、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化から選択される一つ若しくは二つ以上の疾患の治療または予防効果を有する物質をスクリーニングする方法:
1)被験物質の存在下または非存在下で、リン酸供給物質および下記のa)およびb)から選択されるいずれか一つまたは両方を含む試料を混合させる工程;
a)(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞;
b)a)に記載の細胞の破砕液;
2) 該細胞に由来する脂質のリン酸化を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
3)被験物質存在下における該リン酸化の程度が、被験物質非存在下における該リン酸化の程度よりも大きい場合、該被験物質を選択する工程、

(32) 下記の工程1)乃至3)を含む、癌および癌の転移のいずれか一つ若しくは両方の疾患の治療または予防効果を有する物質をスクリーニングする方法:
1)被験物質の存在下または非存在下で、リン酸供給物質および下記のa)およびb)から選択されるいずれか一つまたは両方を含む試料を混合させる工程;
a)(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞;
b)a)に記載の細胞の破砕液;
2) 該細胞に由来する脂質のリン酸化を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
3)被験物質存在下における該リン酸化の程度が、被験物質非存在下における該リン酸化の程度よりも小さい場合、該被験物質を選択する工程、

(33) 脂質基質が標識されていることを特徴とする、(23)乃至(29)のいずれか一つに記載の方法、

(34) リン酸供給物質が32P−γ−ATPであることを特徴とする(23)乃至(32)のいずれか一つに記載の方法、

(35) 下記の工程1)乃至3)を含む、試料中の、脂質キナーゼ活性によりリン酸化される物質を検出する方法:
1)被験試料の存在下および非存在下で、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質、標識されたセラミドおよびリン酸供給物質を混合する工程;
2)セラミドのリン酸化の程度を検出し、該被験試料の存在下と非存在下で比較する工程;
3)該被験試料の非存在下に比べ、該被験試料の存在下において該リン酸化の程度が小さい場合、該被験試料中に脂質キナーゼ活性によりリン酸化される物質が含まれると判断する方法、

(36) (4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質を有効成分として含有する医薬組成物、

(37) (15)乃至(18)のいずれか一つに記載の抗体を有効成分として含む医薬組成物、

(38) (1)乃至(3)のいずれか一つに記載の一本鎖または二本鎖DNAを有効成分として含む医薬組成物、

(39) (1)乃至(3)のいずれか一つに記載のDNAのアンチセンス配列からなり、かつ、10乃至50塩基からなることを特徴とする一本鎖DNA、RNAまたはsiRNAを有効成分として含む医薬組成物、

(40) 神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症、動脈硬化、癌および癌の転移から選択される一つ若しくは二つ以上の疾患の治療および/または予防剤であることを特徴とする、(36)乃至(39)のいずれか一つに記載の医薬組成物、

(41) 下記のa)乃至c)から選択される一つもしくは複数を含む脂質キナーゼの発現検出用キット:
a)(15)乃至(18)のいずれか一つに記載の抗体;
b)i)およびii)にPCR用プライマーの組であり、且つ、(1)乃至(3)のいずれか一つに記載のDNAの有するヌクレオチド配列からなるヌクレオチドまたはその断片を増幅することができることを特徴とする、一組のPCR用プライマー;
i)配列表の配列番号1に記載のヌクレオチド配列からなる一本鎖DNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つ、10乃至50塩基からなる一本鎖DNA;
ii)配列表の配列番号1に記載のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなる一本鎖DNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つ、10乃至50塩基からなる一本鎖DNA;
c)配列表の配列番号1に記載のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなる一本鎖DNAとハイブリダイズし、且つ、20乃至1000塩基からなる一本鎖DNAであることを特徴とするプローブ、

(42) 下記の工程1)乃至3)を含む、被験個体における神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化から選択される一つまたは二つ以上の疾患に罹患するリスクの検出方法;
1)被験個体由来の試料(被験試料という)および正常個体由来の試料(対照試料という)中の(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質の含有量を測定する工程;
2)該含有量を被験試料と対照試料で比較する工程;
3)該含有量が、対照試料よりも被験試料において少ない場合、被験個体が神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化から選択される一つまたは二つ以上の疾患に罹患するリスクが高いと判断する工程、

(43) 下記の工程1)乃至3)を含む、被験個体における、癌および癌の転移から選択される一つまたは両方の疾患に罹患するリスクの検出方法;
1)被験個体由来の試料(被験試料という)および正常個体由来の試料(対照試料という)中の(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質の含有量を測定する工程;
2)該含有量を被験試料と対照試料で比較する工程、
3)該含有量が、対照試料よりも被験試料において多い場合、被験個体が癌および癌の転移から選択される一つまたは両方の疾患に罹患するリスクが高いと判断する工程、

(44) 下記の工程1)乃至4)を含む、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質の発現を調節する活性を有する物質をスクリーニングする方法:
1)被験物質の存在下または非存在下で、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞を培養する工程;
2)培養上清を分取するかまたは細胞の破砕液を調製し、試料液とする工程;
3)該試料液中の、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質量を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
4)被験物質存在下における該蛋白質量が、被験物質非存在下における該蛋白質量よりも大きい場合または小さい場合、該被験物質を選択する工程、

(45) 下記の工程1)乃至4)を含む、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化から選択される一つ若しくは二つ以上の疾患の治療または予防効果を有する物質をスクリーニングする方法:
1)被験物質の存在下または非存在下で、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞を培養する工程;
2)培養上清を分取するかまたは細胞の破砕液を調製し、試料液とする工程;
3)該試料液中の、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質量を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
4)被験物質存在下における該蛋白質量が、被験物質非存在下における該蛋白質量よりも大きい場合、該被験物質を選択する工程、

(46) 下記の工程1)乃至4)を含む、癌および癌の転移のいずれか一つ若しくは両方の疾患の治療または予防効果を有する物質をスクリーニングする方法:
1)被験物質の存在下または非存在下で、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞を培養する工程;
2)培養上清を分取するまたは細胞の破砕液を調製し、試料液とする工程;
3)該試料液中の、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質量を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
4)被験物質存在下における該蛋白質量が、被験物質非存在下における該蛋白質量よりも小さい場合、該被験物質を選択する工程、

(47) 下記の工程1)乃至4)を含む、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質をコードするmRNA発現調節活性を有する物質をスクリーニングする方法:
1)被験物質の存在下または非存在下で、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞を培養する工程;
2)培養細胞からmRNAを抽出する工程;
3)該mRNA中の、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質をコードするmRNA量を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
4)被験物質存在下における該蛋白質をコードするmRNA量が、被験物質非存在下における該蛋白質をコードするmRNA量よりも大きい場合または小さい場合、該被験物質を選択する工程、

(48) 下記の工程1)乃至4)を含む、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化から選択される一つ若しくは二つ以上の疾患の治療または予防効果を有する物質をスクリーニングする方法:
1)被験物質の存在下または非存在下で、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞を培養する工程;
2)培養細胞からmRNAを抽出する工程;
3)該mRNA中の、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質をコードするmRNA量を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
4)被験物質存在下における該蛋白質をコードするmRNA量が、被験物質非存在下における該蛋白質をコードするmRNA量よりも大きい場合、該被験物質を選択する工程、

(49) 下記の工程1)乃至4)を含む、癌および癌の転移のいずれか一つ若しくは両方の疾患の治療または予防効果を有する物質をスクリーニングする方法:
1)被験物質の存在下または非存在下で、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞を培養する工程;
2)培養細胞からmRNAを抽出する工程;
3)該mRNA中の、(4)乃至(6)のいずれか一つに記載の蛋白質をコードするmRNA量を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
4)被験物質存在下における該蛋白質をコードするmRNA量が、被験物質非存在下における該蛋白質をコードするmRNA量よりも小さい場合、該被験物質を選択する工程、

に関する。

すなわち、本発明は脂質キナーゼ活性を有する新規な蛋白質、該蛋白質をコードするDNA、該DNAを含む組換えプラスミド、該プラスミドで形質転換された宿主細胞、該蛋白質の製造方法、該蛋白質に特異的に結合する抗体、該蛋白質を検出する方法、該蛋白質の活性を測定する方法、該蛋白質の活性を調節する物質(神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症、動脈硬化、癌および癌の転移等の疾患の治療および/または予防剤を含む)のスクリーニング方法、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症、動脈硬化、癌および癌の転移等の疾患に罹患するリスクを判定する方法、および本発明に関連した医薬組成物等を提供するものである。
本発明において、「脂質キナーゼ活性」とは、各種脂質をリン酸化する活性をいい、好適には、下記の化1の反応式に示すように、セラミドの1位の水酸基をリン酸化し、セラミド−1−リン酸を生成せしめる反応を触媒する活性をいう。
Figure 2004201681

本発明において「脂質基質」とは、本発明の蛋白質が有する脂質キナーゼ活性によりリン酸化される脂質をいう。このような脂質としては、本発明の脂質キナーゼ活性を有する蛋白質によりリン酸化される脂質であれば特に限定されないが、好適には、上記化1の一般式(I)により示されるすべてのセラミドを挙げることができる。より好適には、上記式(I)においてRがCHCHで示されるセラミド、上記式(I)においてRが(CHCHで示されるセラミド、上記式(I)においてRが(CHCHで示されるセラミドおよび上記式(I)においてRが(CH15CHで示されるセラミドが挙げられ、もっとも好ましくは、上記式(I)においてRが(CHCHで示されるセラミドである。また、ウシ胎児脳由来セラミドは、主成分として上記式(I)においてRが(CH17CHで示されるセラミドを含む脂質混合物であり、これも本発明の脂質基質として用いる事ができる。また、各種セラミドの各種光学異性体も本発明に含まれる。また本発明の脂質キナーゼ活性を有する蛋白質は、セラミドに類似した他の脂質もリン酸化すると考えられ、本発明の脂質基質はセラミドに限定されない。又、これらの物質が検出可能に標識されたものも本発明に含まれる。
また、本発明において「リン酸供給物質」とは、上記化1に示されるリン酸化反応で、リン酸基を供給する物質(化1式中で、「X−P」と示される物質)をいう。このような物質は、該リン酸化反応においてリン酸を供給できるものであれば特に限定されないが、好適にはATP、GTP、CTPまたはTTPであり、より好適にはATPである。また、リン酸供給物質には、例えば32P−γ−ATPのような各種標識体も含まれる。
「本発明の蛋白質」とは、脂質キナーゼ活性を有する蛋白質を意味し、本明細書において「新規脂質キナーゼ」とは本発明の蛋白質を指すものとする。

本発明において、「本発明のヌクレオチド」とは、本発明の蛋白質が有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を含むものをいい、DNAであってもRNAであってもよい。DNAである場合は「本発明のDNA」と呼ぶ。DNAとしては、cDNA、ゲノムDNA、人工的に改変されたDNA、化学的に合成されたDNAなど、現在知られる限りどのような形態をとっていても良い。また、本発明のDNAには二本鎖DNAおよび一本鎖DNAを両方含むが、特に断りが無い限り、二本鎖DNAを指す。二本鎖DNAは、アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列であるセンス配列からなる一本鎖DNA(センス鎖)、および、センス配列と相補的なヌクレオチド配列であるアンチセンス配列からなる一本鎖DNA(アンチセンス鎖)が静電的に結合して二本鎖になったものである。本発明において、ヌクレオチドがRNAである場合、配列表におけるヌクレオチド配列を示す配列において、T(チミン)をU(ウラシル)に読み替えるものとする。本発明のヌクレオチドは、脂質キナーゼ活性を有する蛋白質をコードするヌクレオチド配列を含むようなヌクレオチドも含む。

本発明のヌクレオチドの一つの例としては、配列表の配列番号1のヌクレオチド番号1から1596に示されるヌクレオチド配列からなるDNAを挙げることができる。又、該ヌクレオチド配列を含むことからなるDNAも、脂質キナーゼ活性を有する蛋白質をコードする限り、本発明に含まれる。

また、本発明のヌクレオチドの別の例としては、配列表の配列番号1のヌクレオチド番号1から1596に示されるヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなるヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、脂質キナーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAが挙げられる。
本発明のヌクレオチドの他の例としては、配列表の配列番号1のヌクレオチド番号1から1596に示されるヌクレオチド配列と70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上のヌクレオチド配列相同性を有するDNAが挙げられる。このようなDNAとしては、自然界で発見される変異型DNA、人為的に改変した変異型DNA、異種生物由来の相同DNAなどが含まれる。

また、本発明のヌクレオチドの他の例としては、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNAが挙げられる。なお、所望のアミノ酸に対応するコドンは、その選択も任意でよく、例えば利用する宿主のコドン使用頻度を考慮して常法に従い決定できる。(Grantham, R. et al. (1981) Nucleic Acids Res. 9, 143-174)。さらに、これらヌクレオチド配列のコドンの一部改変は、常法に従い、所望の改変をコードする合成オリゴヌクレオチドからなるプライマーを利用した、部位特異的変異導入法(site specific mutagenesis/Mark, D. F. et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 5662-5666)などに従うことができる。

また、本発明のヌクレオチドのさらに別の例としては、形質転換大腸菌株E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102が保持する組換えプラスミドに挿入されているDNAを挙げることができる。この形質転換大腸菌株E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102株は、平成14年10月10日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1-1-1 中央第6)に国際寄託され、受託番号FERM BP−8201が付されている。したがって、該DNAは、該菌株から取得することが可能である。また、該DNAを含むことからなるDNA、及び、該菌株の保持する組換えプラスミドに挿入されているDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAも、コードする蛋白質が脂質キナーゼ活性を有する限り、本発明に含まれる。

本発明のヌクレオチドとして好適なものは、配列表の配列番号1のヌクレオチド番号1から1596に示されるヌクレオチド配列からなるDNA、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA、および、形質転換大腸菌株E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102が保持する組換えプラスミドに挿入されているDNAであり、より好適には、配列表の配列番号1のヌクレオチド番号1から1596に示されるヌクレオチド配列からなるDNA、および、形質転換大腸菌株E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102が保持する組換えプラスミドに挿入されているDNAである。

また、本発明のヌクレオチドによりコードされるアミノ酸配列からなる蛋白質は本発明の蛋白質の一つの例として挙げられる。該ヌクレオチドにコードされる蛋白質において、任意の一つもしくは二つ以上のアミノ酸を欠失させた改変体を作製するためには、エキソヌクレアーゼBal31等を用いてDNAを末端から削る方法(岸本 利光ら“続生化学実験講座1・遺伝子研究法II”335-354)、カセット変異法(岸本 利光、“新生化学実験講座2・核酸III 組換えDNA技術 ”242-251)などにの方法を適用できる。このように、本発明のヌクレオチドを元に遺伝子工学的手法により得られる蛋白質であっても、該蛋白質が脂質キナーゼ活性を有する限り本発明に含まれる。このような蛋白質は、必ずしも配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の全てを有するものである必要はなく、例えばその部分配列からなる蛋白質であっても、該蛋白質が脂質キナーゼ活性を示す限り本発明の蛋白質に包含される。また、該蛋白質をコードするDNAも本発明に含まれる。

また、本発明の蛋白質の別の例としては、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質を挙げることができる。また、該アミノ酸配列を含むことからなる蛋白質も、該蛋白質が脂質キナーゼ活性を示す限り本発明の蛋白質に包含される。

また、本発明の蛋白質のさらに別の例としては、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質において、1個または数個の部位に、1個または数個のアミノ酸残基が、置換、欠失、挿入および/または付加した蛋白質も、該蛋白質が脂質キナーゼ活性を有する限り、本発明に含まれる。数個とは、10を超えない個数を表し、好適には5を超えない個数を示す。置換したアミノ酸配列を有する蛋白質が、天然型蛋白質と同等の活性を有する例として、例えば、インターロイキン2(IL−2)遺伝子のシステインに相当するヌクレオチド配列をセリンに相当するヌクレオチド配列に変換して得られた蛋白質が、IL−2活性を保持することが知られている(Wang, A. et al. (1984) Science 224, 1431-1433)。

「本発明の抗体」とは、本発明の蛋白質と特異的に結合する抗体をいい、このような抗体にはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体等が含まれる。また、これらの抗体の断片であっても、本発明の蛋白質と特異的に結合するものであれば本発明に含まれる。このような抗体の断片の例としては、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメントなどが挙げられる。

本発明の蛋白質をコードするDNAの一部の配列を知るためには、例えば、既知のヒトセラミドキナーゼの配列に基づいて、NCBI(National Center for Biotechnology Information, 米国)のdbESTデータベースに対して相同性検索を行う事により該配列を知る事ができる。また、例えば、ヒトセラミドキナーゼのcDNAの全配列または部分配列に基づいてプローブを作成し、該プローブを用いてcDNAライブラリーに対してストリンジェンシィの弱い条件でのコロニーハイブリダイゼーションを行い、該ハイブリダイゼーションにより得られたクローンの配列を解析することにより、その一部又は全部の配列を知ることができる。また、既知のヒトセラミドキナーゼの配列、より好適には系統発生的に保存された領域の配列、に基づいてプライマーを作成し、cDNAライブラリーを鋳型にポリメラーゼ連鎖反応(以下「PCR」という。Saiki, R. K. et al. (1988) Science 239, 487-491参照)を行う、または、該プライマーを用いて、全RNAを鋳型にリバーストランスクリプターゼ−ポリメラーゼ連鎖反応(以下「RT−PCR」という。)を行いその産物の配列を解析することにより、その一部の配列を知ることができる。本発明の蛋白質をコードするDNAの全配列は、例えば、上記の様にして得られた部分配列に基づいてプローブを作成し、適当なcDNAライブラリーを用いたストリンジェントな条件でのコロニーハイブリダイゼーション法により得られたクローンの配列を解析することにより知ることができる。また、本発明の蛋白質をコードするDNAの全配列は、例えば、上記の様にして得られた部分配列に基づいて適当なプライマーを作成し、適当なcDNAライブラリーを鋳型にPCRを行うか、適当なmRNAを鋳型にRT−PCRを行いその産物の配列を解析することにより知ることができる。また、本発明の蛋白質をコードするDNAの全配列は、例えば、上記の様にして得られた部分配列に基づいてプライマーを作成し、mRNAを用いたRapid Amplification of cDNA Ends (以下「RACE」という。実験医学, (1994), 12(6), 35-38参照)、または市販のキットとcDNAライブラリーを用いたRACEを行うことにより得られたクローンの配列を解析することにより知ることができる。
本発明のヌクレオチドは、例えば、本発明の蛋白質を発現する培養細胞などからmRNAを調製した後、これを鋳型としてcDNAを合成し、その中から本発明の蛋白質をコードするcDNAを公知の方法によりスクリーニングすることにより得ることができる。このmRNAの供給源となる動物細胞は、本発明においては、HEK293細胞株が好適であるが、各種の細胞または組織、あるいは他の培養細胞株を使用することもできる。また市販のcDNAライブラリーを用いることもできる。たとえばクロンテックより市販の各種cDNAライブラリーを用いることができるが、これに限定されない。
mRNAの抽出にあたっては、チオシアン酸グアニジン・塩化セシウム超遠心法、チオシアン酸グアニジン・ホットフェノール法、グアニジン塩酸法、酸性チオシアン酸グアニジン・フェノール・クロロホルム法も採用しうるが、市販のmRNA分離キットを用いることもできる。
真核細胞の細胞質に存在するmRNAの多くは、その3’末端にポリ(A)配列を持つことが知られているので、この特徴を利用してビオチン化したオリゴ(dT)プローブにmRNAを吸着させ、さらにストレプトアビジンを固定化した常磁性粒子に、ビオチン/ストレプトアビジン間の結合を利用してmRNAを捕捉し洗浄操作の後、mRNAを溶出することにより精製することができる。また、オリゴ(dT)セルロースカラムにmRNAを吸着させて、次にこれを溶出して精製する方法も採用し得る。さらにショ糖密度勾配遠心法などにより、mRNAをさらに分画することもできる。
上記のごとくして得られたmRNAが脂質キナーゼ活性を有する蛋白質をコードするものであることを確認するためには、mRNAを蛋白質に翻訳させ酵素活性を調べるか、該蛋白質に特異的な抗体を用いてその蛋白質を同定する等の方法を用いることができる。例えば、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞にmRNAを注入して翻訳させることができ(Gardon, j. B. et al. (1972) Nature 233, 177-182)、あるいは、ウサギ網状赤血球系やコムギ胚芽系といった無細胞翻訳系を利用できる(Schleif, R. F. and Wensink, P. C. (1981): “ Practical Methods in Molecular Biology “ , Springer-Verlag, NY.)。
また、上記方法で得たmRNAを鋳型として、逆転写酵素を用いて一本鎖cDNAを合成した後、この一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを合成することができる。その方法としては、S1ヌクレアーゼ法(Efstratiadis, A. et al. (1976) Cell 7, 279-288)、Land法(Land, H. et al. (1981) Nucleic Acids Res. 9, 2251-2266)、O. Joon Yoo法(Yoo, O. J. et al. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79, 1049-1053)なども採用し得るが、本発明の目的にはOkayama-Berg法(Okayama, H. and Berg, P. (1982) Mol. Cell. Biol. 2, 161-170)が好適である。
次に、得られたcDNA断片をラムダファージベクターに挿入し自己複製させることによりcDNA断片を持つ組換えファージを安定に保持し、増幅させることができる。例えば、ラムダファージλZAPII(ストラタジーン社製)を用いる場合、宿主大腸菌XL1−Blue MRF’株やJM109株にプラークを作らせ、それらのプラークの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(5-Bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-galactopyranoside(X−gal))代謝による発色の有無から組換え体を選別することができる。なお、ベクターとしては、ラムダ系のファージベクター以外に、プラスミドベクターも用いることができる。
上記のようにして得られる組換えファージから、目的の脂質キナーゼ活性を有する蛋白質をコードするcDNAを有するクローンを選別する方法としては、例えば以下に示す各種方法のいずれかを採用できる。
1)合成オリゴヌクレオチドプローブを用いるスクリーニング法
目的の蛋白質のアミノ酸配列の全部、または一部が解明されている場合(該配列は、目的の蛋白質に特異的な複数個連続した配列であれば、目的の蛋白質のどの部分のアミノ酸配列でもよい)、該アミノ酸配列をコードするオリゴヌクレオチドを合成し(コドンの縮重のあるアミノ酸に対しては、使用頻度の高いコドンを用いても、または考えられるコドンを組み合わせて複数個のヌクレオチド配列を合成してもよく、また後者の場合、イノシンを含ませてその種類を減らすこともできる)、これを32P、35Sまたはビオチン等で標識したものをプローブとして、ニトロセルロースフィルターまたはナイロンフィルター上に変性固定した組換えファージDNAとハイブリダイズさせ、得られた陽性クローンを検索して、これを選択する。

2)ポリメラーゼ連鎖反応により作製したプローブを用いるスクリーニング法
目的の蛋白質のアミノ酸配列の全部または一部が解明されている場合、該アミノ酸配列のN末端側の一部に対応するセンス鎖と、同じくC末端側の一部に対応するアンチセンス鎖のオリゴヌクレオチドを合成し、PCRを行い、目的の蛋白質をコードするDNA断片を増幅する。ここで用いる鋳型DNAとしては、本発明の蛋白質を産生する細胞のmRNAより逆転写反応にて合成したcDNA、またはゲノムDNAを用いることができる。このようにして調製したDNA断片を、32P、35Sまたはビオチン等で標識し、これをプローブとして用いたプラークハイブリダイゼーションまたはコロニーハイブリダイゼーションによるcDNAライブラリーやゲノムライブラリーのスクリーニングを実施して、目的のクローンを選択する。

3)他の動物細胞株で脂質キナーゼ活性を有する蛋白質を産生させてスクリーニングする方法
前記のようにして得たcDNAを発現ベクターに挿入したプラスミド(自己複製可能で、転写プロモーター領域を含むプラスミド、もしくは動物細胞の染色体に組み込まれ得るようなプラスミドのいずれも使用できる)で動物細胞宿主を形質転換し、それらcDNAにコードされた蛋白質を産生させ、その培養上清または細胞抽出物中の、脂質キナーゼ活性を測定するか、または、本発明の蛋白質に特異的に結合する抗体、および該抗体に対する二次抗体を用いて、本発明の蛋白質の存在を検出することにより、本発明の蛋白質をコードするcDNAを有する株を選択する。なお、動物細胞宿主としてはCOSやCHO等の汎用される細胞株を使用できるが、外来遺伝子産物としての本発明の蛋白質の検出を容易にするため、宿主自体は一定の培養条件下で本発明の蛋白質を産生しない細胞であることが好ましい。
4)セレクティブ・ハイブリダイゼーション・トランスレーションの系を用いる方法
形質転換株から得られるcDNAを、ニトロセルロースフィルターまたはナイロンフィルターなどにブロットし、本発明の蛋白質の産生能を有する組織または細胞から抽出したmRNAをハイブリダイズさせた後、cDNAに結合したmRNAを解離させ、回収する。回収したmRNAを、蛋白質翻訳系(例えば、アフリカツメガエルの卵母細胞への注入や、ウサギ網状赤血球ライゼートや、コムギ胚芽などの無細胞系)で蛋白質に翻訳させ、その蛋白質の脂質キナーゼ活性を調べるか、または脂質キナーゼ活性を有する蛋白質に対する抗体を用いて検出し、目的の株を選択する。
上記のようにして得られた目的の形質転換株からの本発明のヌクレオチドの採取は、公知の方法(Maniatis, T. et al.(1982): “Molecular Cloning A Laboratory Mannual”,Cold Spring Harbor Laboratory, NY)に従い実施できる。例えば、細胞よりプラスミドDNAに相当する画分を分離し、該プラスミドDNAよりcDNA領域を切り出すことにより行い得る。
また、本発明のヌクレオチドの取得に際しては、PCR法によるDNA/RNA増幅法も好適に利用できる。殊にライブラリーから全長のcDNAが得られないような場合には、5’RACE法および3’RACE法を組み合わせることにより全長のcDNAを得ることができる。かかるPCR法の採用に際して使用されるプライマーは、本発明遺伝子の配列情報に基づいて適宜設定することができ、常法に従い合成することができる。
このようにして得られるDNAのヌクレオチド配列の決定は、例えば、マキサム―ギルバートの化学修飾法(Maxam, A. M. and Gilbert, W. (1980) : “Methods in Enzymology“ 65, 499-559)やM13ファージを用いるジデオキシヌクレオチド鎖終結法(Messing, J. and Vieira, J. (1982) Gene 19, 269-276)などにより行うことができる。また、ラジオアイソトープの代わりに蛍光色素を用いた自動DNA配列解析装置(例えば、パーキンエルマー・ジャパン・アプライドバイオシステムズ社製モデル373A等)を使用することもできる。
上記のように得られた本発明のDNAがベクターに挿入された組換えプラスミドも本発明に含まれる。このような目的に用いるベクターとしては、一般に知られているさまざまなベクターを用いることができる。好適なものとしては、原核細胞用ベクター、真核細胞用ベクター、哺乳動物由来の細胞用ベクターなどが挙げられるが、これに限定されない。このような組換えプラスミドにより、他の原核生物、または真核生物の宿主細胞を形質転換させることができる。さらに、適当なプロモーター配列および/または形質発現に関わる配列を有するベクターを用いるか、もしくはそのような配列を導入することにより、発現ベクターとすることで、それぞれの宿主において遺伝子を発現させることが可能である。このような発現ベクターは、本発明の組換えプラスミドの好適な態様である。
本発明の組換えプラスミドは、各種細胞に導入し、宿主細胞とすることができる。このような細胞は、プラスミドを導入することができる細胞であれば原核細胞であっても真核細胞であってもよい。
原核細胞の宿主としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)や枯草菌(Bacillus subtilis)などが挙げられる。目的の遺伝子をこれらの宿主細胞内で形質転換させるには、宿主と適合し得る種由来のレプリコンすなわち複製起点と、調節配列を含んでいるプラスミドベクターで宿主細胞を形質転換させる。また、ベクターとしては、形質転換細胞に表現形質(表現型)の選択性を付与することができる配列を有するものが好ましい。
例えば、大腸菌としてはK12株などがよく用いられ、ベクターとしては、一般にpBR322やpUC系のプラスミドが用いられるが、これらに限定されず、公知の各種菌株、およびベクターがいずれも使用できる。
プロモーターとしては、大腸菌においては、トリプトファン(trp)プロモーター、ラクトース(lac)プロモーター、トリプトファン・ラクトース(tac)プロモーター、リポプロテイン(lpp)プロモーター、ポリペプチド鎖伸張因子Tu(tufB)プロモーター等が挙げられ、どのプロモーターも本発明の蛋白質の産生に使用することができる。
枯草菌としては、例えば207−25株が好ましく、ベクターとしてはpTUB228(Ohmura, K. et al. (1984) J. Biochem. 95, 87-93)などが用いられるが、これに限定されるものではない。
プロモーターとしては、枯草菌のα−アミラーゼのシグナルペプチド配列をコードするDNA配列を連結することにより、菌体外での分泌発現も可能となる。
真核細胞の宿主細胞には、脊椎動物、昆虫、酵母などの細胞が含まれ、脊椎動物細胞としては、哺乳動物由来の細胞、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman, Y. (1981) Cell 23, 175-182、ATCC CRL−1650)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL−61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub, G. and Chasin, L. A. (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77, 4126-4220)等がよく用いられているが、これらに限定されない。
脊椎動物細胞の発現プロモーターとしては、通常発現しようとする遺伝子の上流に位置するプロモーター、RNAのスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列等を有するものを使用でき、さらにこれは必要により複製起点を有してもよい。該発現ベクターの例としては、SV40の初期プロモーターを有するpSV2dhfr(Subramani, S. et al. (1981) Mol. Cell. Biol. 1, 854-864)等が挙げられるが、これに限定されない。
宿主細胞として、COS細胞を用いる場合を例に挙げると、発現ベクターとしては、SV40複製起点を有し、COS細胞において自立増殖が可能であり、さらに、転写プロモーター、転写終結シグナル、およびRNAスプライス部位を具えたものを用いることができる。該発現ベクターは、ジエチルアミノエチル(DEAE)−デキストラン法(Luthman, H. and Magnusson, G. (1983) Nucleic Acids Res, 11, 1295-1308)、リン酸カルシウム−DNA共沈殿法(Graham, F. L. and van der Eb, A. J. (1973) Virology 52, 456-457)、および電気パルス穿孔法(Neumann, E. et al. (1982) EMBO J. 1, 841-845)などによりCOS細胞に取り込ませることができ、かくして所望の形質転換細胞を得ることができる。また、宿主細胞としてCHO細胞を用いる場合には、発現ベクターと共に、抗生物質G418耐性マーカーとして機能するneo遺伝子を発現し得るベクター、例えばpRSVneo(Sambrook, J. et al. (1989) : “Molecular Cloning A Laboratory Manual“ Cold Spring Harbor Laboratory, NY)やpSV2−neo(Southern, P. J. and Berg, P. (1982) J. Mol. Appl. Genet. 1, 327-341)などをコ・トランスフェクトし、G418耐性のコロニーを選択することにより、本発明の蛋白質を安定に産生する形質転換細胞を得ることができる。
昆虫細胞を宿主細胞として用いる場合には、鱗翅類ヤガ科のSpodoptera frugiperdaの卵巣細胞由来株化細胞(Sf−9またはSf−21)やTrichoplusia niの卵細胞由来High Five細胞(Wickham, T. J. et al, (1992) Biotechnol. Prog. I: 391-396)などが宿主細胞としてよく用いられ、バキュロウイルストランスファーベクターとしてはオートグラファ核多角体ウイルス(AcNPV)のポリヘドリン蛋白質のプロモーターを利用したpVL1392/1393がよく用いられる(Kidd, I. M. and V.C. Emery (1993) The use of baculoviruses as expression vectors. Applied Biochemistry and Biotechnology 42, 137-159)。この他にも、バキュロウイルスのP10や同塩基性蛋白質のプロモーターを利用したベクターも使用できる。さらに、AcNPVのエンベロープ表面蛋白質GP67の分泌シグナル配列を目的蛋白質のN末端側に繋げることにより、組換え蛋白質を分泌蛋白質として発現させることも可能である(Zhe-mei Wang, et al. (1998) Biol. Chem., 379, 167-174)。
真核微生物を宿主細胞とした発現系としては、酵母が一般によく知られており、その中でもサッカロミセス属酵母、例えばパン酵母Saccharomyces cerevisiaeや石油酵母Pichia pastorisが好ましい。該酵母などの真核微生物の発現ベクターとしては、例えば、アルコール脱水素酵素遺伝子のプロモーター(Bennetzen, J. L. and Hall, B. D. (1982) J. Biol. Chem. 257, 3018-3025)や酸性フォスファターゼ遺伝子のプロモーター(Miyanohara, A. et al. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80, 1-5)などを好ましく利用できる。また、分泌型蛋白質として発現させる場合には、分泌シグナル配列と宿主細胞の持つ内在性プロテアーゼあるいは既知のプロテアーゼの切断部位をN末端側に持つ組換え体として発現することも可能である。例えば、トリプシン型セリンプロテアーゼのヒトマスト細胞トリプターゼを石油酵母で発現させた系では、N末端側に酵母のαファクターの分泌シグナル配列と石油酵母の持つKEX2プロテアーゼの切断部位をつなぎ発現させることにより、活性型トリプターゼが培地中に分泌されることが知られている(Andrew, L. Niles,et al. (1998) Biotechnol.Appl. Biochem. 28, 125-131)。
上記のようにして得られる形質転換体は、常法に従い培養することができ、該培養により細胞内、または細胞外に本発明の蛋白質が産生される。該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択でき、例えば、上記COS細胞であれば、RPMI1640培地やダルベッコ改変イーグル培地(以下「DMEM」という)などの培地に、必要に応じウシ胎児血清などの血清成分を添加したものを使用できる。培養条件としては、CO2濃度は0乃至50%の範囲であればよく、好適には1乃至10%でありより好適には5%である。培養温度は0乃至99℃であればよく、好適には20乃至50℃であり、より好適には35乃至40℃である。
上記培養により形質転換体の細胞内または細胞外に産生される組換え蛋白質は、培養産物中から、その蛋白質の物理化学的性質、化学的性質、生化学的性質(酵素活性など)等を利用した各種の分離操作(「生化学データブックII」、1175-1259項、第1版第1刷、1980年6月23日株式会社東京化学同人発行;Biochemistry, vol. 25, No.25, p8274-8277 (1986); Eur. J. Biochem., 163, p313-321 (1987)等参照)により分離、精製することができる。該分離操作としては、具体的には例えば通常の再構成処理、蛋白沈殿剤による処理(塩析法)、遠心分離、浸透圧ショック法、凍結融解法、超音波破砕、限外ろ過、ゲル濾過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アッフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の各種液体クロマトグラフィー、透析法、それらの組み合わせ等を例示できる。上記分離操作により、高収率で所望の組換え蛋白質を工業的規模で製造できる。また、発現させる組換え蛋白質に6残基からなるヒスチジンを繋げることにより、ニッケルアフィニティーカラムで効率的に精製することができる。上記分離操作を組み合わせることにより容易に高収率、高純度で本発明の蛋白質を大量に製造できる。本発明の蛋白質の製造過程に用いる分離操作としては、本発明の蛋白質がカルモジュリンに結合する性質を有することから、好適には、カルモジュリン・セファロース等の担体を充填させたカラムを用いた分離操作を挙げることができる。具体的には、カルモジュリンを含まない溶媒に溶解させた本発明の蛋白質を含む試料を、カルモジュリンを結合させた樹脂に吸着させ、次にこの樹脂をカルモジュリンを含まない溶媒で洗浄する。さらに、ここで洗浄された樹脂から、EGTAまたはEDTAを含む溶媒を用いて脂質キナーゼ活性を有する蛋白質を溶出させるという方法であるが、本発明はこれに限定されない。
あるDNAが配列表の配列番号1のヌクレオチド番号1から1596に示されるヌクレオチド配列からなるDNAとハイブリダイズするか否かは、例えば目的とするDNAをランダムプライマー法(Anal. Biochem., 132: 6013 (1983))やニックトランスレーション法(Maniatis, T. et al. (1982) in “ Molecular Cloning A Laboratory Mannual “ Cold Spring Harbor Laboratory, NY.)等に従い、[α−32P]dCTP等で標識したプローブを用いてハイブリダイゼーションを行い調べることができる。ハイブリダイゼーションに用いるDNAは、公知の方法、例えばニトロセルロース膜やナイロン膜等に吸着させ、加熱あるいは紫外線照射により固相化させる。次いで、その膜を例えば6×SSC、5% デンハート(Denhardt)溶液および0.1% ドデシル硫酸ナトリウム(以下「SDS」という)を含むプレハイブリダイゼーション溶液に浸し、55℃で4時間以上保温する。その後、先に作成した標識プローブを同様のプレハイブリダイゼーション溶液に最終比活性1×10cpm/mlとなるように加え、60℃で一晩保温する。膜を57℃で5分間洗浄する操作を5回繰り返し、さらに57℃で20分間洗浄後、オートラジオグラフィーを行うことにより、ハイブリダイズしたか否かを判定することができる。この方法を利用して、各種動物細胞由来のcDNAライブラリーから、配列表の配列番号1のヌクレオチド番号1から1596に示されるヌクレオチド配列からなるDNAとハイブリダイズするcDNAを単離することができる。(Maniatis, T. et al. (1982) in “ Molecular Cloning A Laboratory Mannual “ Cold Spring Harbor Laboratory, NY.)。また、ハイブリダイゼーションの条件は上記の条件に限定されず,ストリンジェントな条件下であればよい。本発明において、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションとは、ハイブリダイゼーションを、5×SSC(0.75M 塩化ナトリウム、0.075M クエン酸ナトリウム)またはこれと同等の塩濃度のハイブリダイゼーション溶液中、37℃乃至42℃の温度条件下、約12時間行い、5×SSCまたはこれと同等の塩濃度の溶液等で必要に応じて予備洗浄を行った後、1×SSCまたはこれと同等の塩濃度の溶液中で洗浄を行うことにより実施できる。また、さらに0.1×SSCまたはこれと同等の塩濃度の溶液中で洗浄を行うこともできる。

このような各種の本発明のDNAは、上記脂質キナーゼ活性を有する蛋白質の情報に基づいて、例えばホスファイト・トリエステル法(Hunkapiller, M. et al. (1984) Nature 310, 105-111)などの常法に従い、化学合成により製造することもできる。
本発明の蛋白質が脂質キナーゼ活性を有することは、例えばリン酸供給物質として放射性の32P−ATPを用いたスフィンゴシンキナーゼ活性測定用のシュピーゲルらの方法(Olivera, A. and Spiegel, S. (1993) Nature 365, 557-560参照)を改変した次の方法に従って確認することができる。具体的には、本発明の蛋白質を含む溶液と、塩化マグネシウム、エチレンジアミン四酢酸(以下「EDTA」という)、ジチオスレイトール、フッ化ナトリウム、バナジン酸ナトリウム、4−デオキシピリドキシン、コンプリートTM(プロテアーゼインヒビター ベーリングマンハイム社製)、200mM 塩化カリウムを含むトリス緩衝液(pH7.5)、およびウシ胎児血清(以下、BSA)に溶解した基質D−ヘキサノイルスフィンゴシン、D−エリスロ(以下単にC6 セラミドと略す)もしくはオクチルグルコシドを用いてミセル化したセラミド(ウシ胎児脳よりの精製品、Sigma社製)さらには放射標識32P−γ−ATPを混合し、37℃で保温することにより脂質キナーゼ反応を行う。次に、1N塩酸を加えることにより反応を停止させ、クロロホルム:メタノール:濃塩酸(100:200:1、v/v)を加えて抽出操作を施し、得られた下層(クロロホルム層)を薄層クロマトグラフィー(以下、TLC)で展開、分析する。セラミドキナーゼ活性は上記TLCにおいて、生成物であるセラミド-1−リン酸(以下、Cer-1-P)のスポットを定量することにより得られる。このような活性の測定方法については脂質のリン酸化を検出できる方法であればどんな方法を用いることもでき、ここに挙げた方法に限定されない。32P−ATPを用いる代わりに、脂質基質が標識されたもの、たとえば、Hセラミド、14CセラミドまたはNBD−セラミド(カタログ番号:219545、カルビオケム社製)などを用いて、上記の方法と同様にTLCで分離することにより活性を測定できる。さらにリン酸供給物および脂質基質共に未標識のものを用いても、反応液から脂質基質が含まれる画分をHPLCなどにより抽出し、質量分析をすることでリン酸化を検出することができ、脂質キナーゼ活性を測定することができる。上記のような脂質キナーゼ活性の測定方法において、本発明の蛋白質の供給源としては、本発明の蛋白質の精製品または粗精製品、本発明の蛋白質を発現する細胞、または該細胞の破砕液などを用いてもよい。このような方法においては、細胞由来の脂質中に、本発明の蛋白質の有する脂質キナーゼ活性によりリン酸化される脂質を含む場合は、外部から脂質基質を加えることなく、細胞内の脂質のリン酸化を指標としたアッセイをすることもできる。ただし、新規脂質キナーゼの脂質キナーゼ活性検出方法、または該活性を調節する物質のスクリーニング方法は、これらの方法に限定されず、本発明の蛋白質が特異的にリン酸化し得る他の基質を使用することも可能である。このようなセラミド以外の基質を探索する方法としては、下記のような方法が挙げられる。すなわち、該基質を含む可能性のある試料(試料A)および該基質を含まない試料(試料B)に、本発明の蛋白質、セラミドおよびリン酸供給物を混合し、セラミドのリン酸化の程度を上記方法により検出し、試料Aの該リン酸化の程度が試料Bよりも小さい場合、試料A中に脂質キナーゼ活性によりリン酸化されるうる物質が含まれると判断するすることができる。このような本発明の蛋白質の基質は、標識されたリン酸供給物質を用いて、上記の反応を行い、TLCなどの各種方法で分離し、リン酸化を受けた画分を抽出して単離することができる。
また、上記の脂質キナーゼ活性検出方法において、合成された化合物や微生物の二次代謝産物等の被験物質を基質リン酸化反応時に共存させ、該被験物質が本発明の蛋白質の脂質キナーゼ活性を活性化または阻害するか否かを調べることにより、脂質キナーゼ活性調節活性を有する物質の評価またはスクリーニングが可能である。このような脂質キナーゼ活性を調節する物質は、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症、動脈硬化、癌および癌の転移などの疾患の治療および/または予防剤として有用である。特に、該活性を促進する物質は神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化などの疾患の治療および/または予防剤として有用であり、該活性を抑制する物質は癌および/または癌の転移の治療または予防剤として有用である。
脂質キナーゼ活性の抑制の程度は、通常活性抑制率にして10%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらにより好ましくは70%以上、さらにより一層好ましくは90%以上、さらによりなお一層好ましくは95%以上であり、最適には100%である。活性抑制率の算出式の代表的なものとしては以下の式、数1が挙げられる。
[数1]
活性抑制率(%)=(被験物質存在下のリン酸化の程度/被験物質非存在下のリン酸化の程度)×100

また、リン酸化活性の促進の程度は、活性促進率にして150%以上を適用できるが、好ましくは200%以上、より好ましくは300%以上、より一層好ましくは500%以上、最適には1000%以上である。活性促進率の算出式の代表的なものとしては以下の式、数2が挙げられる。
[数2]
活性促進率(%)=(被験物質存在下のリン酸化の程度/被験物質非存在下のリン酸化の程度)×100

該脂質キナーゼ活性を調節する物質としては、本発明の蛋白質の脂質キナーゼ活性を特異的に調節する活性が高く、他のリン酸化酵素(キナーゼ)の活性に影響しないような物質が好ましい。また、上記のような脂質キナーゼ活性の測定方法を利用して、試料中の本発明の蛋白質の検出または定量をすることもできる。
また、この他にも、試料中の本発明の蛋白質の検出または定量の方法としては、試料に本発明の抗体を添加し、公知の方法を用いて、蛋白質と抗体の複合体を検出する方法が挙げられる。該複合体の検出方法としては、ウェスタンブロット法、免疫沈降法、免疫染色法等を挙げることができる。
また、試料中の本発明の蛋白質の遺伝子レベルでの発現を検出または定量する方法としては、試料からmRNAを単離し、単離したmRNA中の本発明の蛋白質をコードするmRNAを検出または定量する方法が挙げられる。本発明の蛋白質をコードするmRNAを検出または定量する方法としては、本発明のDNAのヌクレオチドを元に設計されたPCRプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応を利用した各種方法(RT−PCR、リアルタイムPCR法、定量的PCR法等)を利用することができる。さらに、本発明のDNAを元に設計されたプローブを用いたドットブロット法やin situハイブリダイゼーション法などによっても、同様に試料中の本発明の蛋白質をコードする遺伝子の発現を検出または定量することができる。このような方法に用いる試料としては、培養細胞、生検組織、血液などの体液、実験動物から得られる臓器または組織の破砕液などが挙げられるが、これに限定されない。
また、上記のような蛋白質レベルまたは遺伝子レベルでの本発明の蛋白質の発現の検出または定量方法において、合成された化合物や微生物の二次代謝産物等の被験物質と試料をあらかじめ共存させることにより、本発明の蛋白質の蛋白質レベルまたは遺伝子レベルでの発現を調節する活性を有する物質のスクリーニングを行なうことができる。このように、本発明の蛋白質の発現を調節する活性を有する物質は、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症、動脈硬化、癌および癌の転移等の疾患の治療および/または予防剤としての効果が期待できる。特に、発現を亢進する活性を有する物質であれば、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化等の疾患の治療および/または予防剤として有用であり、発現を抑制する活性を有する物質であれば、癌および癌の転移のいずれか一つ若しくは両方の疾患の治療または予防剤として有用である。
発現の抑制の程度は、発現抑制率にして10%以上を適用することができるが、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらにより好ましくは70%以上、さらにより一層好ましくは90%以上、さらによりなお一層好ましくは95%以上であり、最適には100%である。発現抑制率の算出式の代表的なものとしては以下の式、数3が挙げられる。
[数3]
発現抑制率(%)=(被験物質存在下の発現量/被験物質非存在下の発現量)×100

また、発現の亢進の程度は、発現亢進率にして150%以上を適用できるが、好ましくは200%以上、より好ましくは300%以上、より一層好ましくは500%以上、最適には1000%以上である。発現亢進率の算出式の代表的なものとしては以下の式、数4が挙げられる。
[数4]
発現亢進率(%)=(被験物質存在下の発現量/被験物質非存在下の発現量)×100

本発明において、「部分ヌクレオチド」とは、本発明のヌクレオチドの一部からなるヌクレオチドの断片であり、このような部分ヌクレオチドは天然のDNAを切断することによって得ることもできるし、化学的に合成することもできる。
本発明のDNAのセンス配列からなる部分ヌクレオチドの例としては、センスプライマーなどが挙げられる。また、本発明のDNAのアンチセンス配列からなる部分ヌクレオチドの例としては、プローブ、アンチセンスプライマー,アンチセンスヌクレオチドなどが挙げられる。これら部分ヌクレオチドは、蛋白質をコードしていなくてもよい。
本発明のプローブとしては、蛍光物質、放射性同位体等により標識されているものが望ましく、該プローブの長さは特に限定されないが、通常20乃至1000残基であり,好ましくは50乃至500残基である。本発明のプローブとして好適なものは、配列表の配列番号1に記載のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなる一本鎖DNAとハイブリダイズする一本鎖DNAである。
本発明において「PCR用プライマー」とは、PCR反応に用いることにより本発明のヌクレオチドの部分,または全体を増幅することができる部分ヌクレオチドをいう。該PCR用プライマーは、基本的に、センスプライマーおよびアンチセンスプライマーを一組として用いるが、既知のプライマーと組み合わせて使うこともできる。該PCR用プライマーの長さとしては,通常10乃至50塩基であり,好ましくは15乃至40塩基である。本発明のPCR用センスプライマーとして好ましいものは、配列表の配列番号1に記載のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなる一本鎖DNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズする一本鎖DNAであり、本発明のPCR用アンチセンスプライマーとして好ましいものは、配列表の配列番号1に記載のヌクレオチド配列からなる一本鎖DNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズする一本鎖DNAである。
本発明のアンチセンスヌクレオチドとは、本発明のDNAのセンス鎖と生体内でハイブリダイズし、本発明の蛋白質の発現を抑制する作用を持つ部分ヌクレオチドである。このようなアンチセンスヌクレオチドとしては、アンチセンスDNA、アンチセンスRNAおよびアンチセンスsiRNAなどが挙げられる。このようなアンチセンスヌクレオチドは、本発明の蛋白質の翻訳を抑制する活性を有していれば長さを限定されないが、好適には10乃至40塩基からなるものであり、より好適には20乃至30塩基からなるものである。本発明のアンチセンスヌクレオチドとして好ましいものは、本発明のDNAのアンチセンス配列からなることを特徴とする一本鎖DNA、RNAまたはsiRNAであり,これらのアンチセンスヌクレオチドを含む医薬組成物も本発明に含まれる。

これらのプローブおよびPCR用プライマーは、本発明の蛋白質の遺伝子レベルでの発現を検出する際のツールとして有用であり、これらのプローブとPCR用プライマーおよび本発明の抗体を単独もしくは複合して含むことからなる本蛋白質の発現検出キットも、該発現の検出に有用である.。

さらに、このような部分ヌクレオチド、本発明のヌクレオチドなどを用いて本発明の蛋白質の発現を調節することにより、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症、動脈硬化、癌および癌の転移等の疾患の遺伝子治療を行なうことも可能である。例えば本発明のDNAを挿入したアデノウィルスを用いて,疾患部位における本発明の蛋白質の発現量を増加させることにより、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化等の疾患の治療か可能であろう。

また、セラミドは神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化等の疾患において増悪因子として働くと考えられている。本発明の蛋白質は、セラミドのリン酸化を促進する活性を有しており、セラミドによる該疾患の増悪効果を打ち消す活性をもつことが期待されるため、該疾患の患部において発現が低下していることが予想される。これとは逆に、癌や癌の転移などの疾患においては、患部にセラミドが蓄積することにより、疾患の増悪が抑制されると考えられている。本発明の蛋白質は、セラミドのリン酸化を促進する活性を有し、セラミドによる該疾患の患部における増悪抑制活性を打ち消す活性を有すると考えられるため、該疾患の患部において発現が亢進していることが予想される。何らかの疾患に罹患している恐れのある個体から採取した試料(被験試料)中の本発明の蛋白質の発現量を検出し、正常個体由来の試料(対照試料)における該発現量と比較して少ない場合は、該個体が神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化などの疾患に罹患していると判断する、または、これらの疾患に罹患するリスクが高いと判断することができるだろう。また、該比較の結果、対照試料におけるより、被験試料における発現量が大きい場合、該個体が癌および癌の転移などの疾患に罹患していると判断する、または、これらの疾患に罹患するリスクが高いと判断することができるだろう。このような、疾患またはその疾患に罹患するリスクの検出に供する個体由来の試料として好ましいものは、疾患ごとに異なるが、疾患の患部から得られるものが望ましいが、これに限定されない。例えば、対象疾患が腎臓疾患である場合は、腎臓の生検組織が望ましいが、血液、尿、唾液などの体液であっても良い。

以下に本発明の抗体の作製法について述べる。
ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の製造にあたっては、一般に下記のような作業工程が必要である。すなわち、
(a)抗原として使用する生体高分子の精製、
(b)抗原を動物に注射することにより免疫した後、血液を採取しその抗体価を検定して脾臓摘出の時期を決定してから、抗体産生細胞を調製する工程、
(c)骨髄腫細胞(以下「ミエローマ」という)の調製、
(d)抗体産生細胞とミエローマとの細胞融合、
(e)目的とする抗体を産生するハイブリドーマ群の選別、
(f)単一細胞クローンへの分割(クローニング)、
(g)場合によっては、モノクローナル抗体を大量に製造するためのハイブリドーマの培養、またはハイブリドーマを移植した動物の飼育、
(h)このようにして製造されたモノクローナル抗体の生理活性、およびその認識特異性の検討、あるいは標識試薬としての特性の検定、
等である。ポリクローナル抗体は、(e)の工程で得られるハイブリドーマを培養し、その培養上清を分取することにより得ることができる。
以下、モノクローナル抗体の作製法を上記工程に沿って詳述するが、該抗体の作製法はこれに制限されず、例えば脾細胞以外の抗体産生細胞およびミエローマを使用することもできる。
(a)抗原の精製
抗原としては、前記したような方法で調製した本発明の蛋白質またはその一部を使用することができる。さらに、本発明により本発明の蛋白質の一次構造が明らかにされたので、当業者に周知の方法を用いて、本発明の蛋白質の部分ペプチドを化学合成し、これを抗原として使用することもできる。
(b)抗体産生細胞の調製
工程(a)で得られた抗原と、フロインドの完全または不完全アジュバント、またはカリミョウバンのような助剤とを混合し、免疫原として実験動物に免疫する。実験動物としては、マウスが最も好適に用いられるが、これに限定されない。
マウス免疫の際の免疫原投与法は、皮下注射、腹腔内注射、静脈内注射、皮内注射、筋肉内注射いずれでもよいが、皮下注射または腹腔内注射が好ましい。
免疫は、一回、または、適当な間隔で(好ましくは1週間から5週間間隔で)複数回繰返し行なうことができる。その後、免疫した動物の血清中の抗原に対する抗体価を測定し、抗体価が十分高くなった動物を抗体産生細胞の供給原として用いれば、以後の操作の効果を高めることができる。一般的には、最終免疫後3〜5日後の動物由来の抗体産生細胞を後の細胞融合に用いることが好ましい。
ここで用いられる抗体価の測定法としては、放射性同位元素免疫定量法(以下「RIA法」という)、固相酵素免疫定量法(以下「ELISA法」という)、蛍光抗体法、受身血球凝集反応法など種々の公知技術があげられるが、検出感度、迅速性、正確性、および操作の自動化の可能性などの観点から、RIA法またはELISA法がより好適である。
本発明における抗体価の測定は、例えばELISA法によれば、以下に記載するような手順により行うことができる。まず、精製または部分精製した抗原をELISA用96穴プレート等の固相表面に吸着させ、さらに抗原が吸着していない固相表面を抗原と無関係なタンパク質、例えばウシ血清アルブミン(以下「BSA」という)により覆い、該表面を洗浄後、第一抗体として段階希釈した試料(例えばマウス血清)に接触させ、上記抗原に試料中のモノクローナル抗体を結合させる。さらに第二抗体として酵素標識されたマウス抗体に対する抗体を加えてマウス抗体に結合させ、洗浄後該酵素の基質を加え、基質分解に基づく発色による吸光度の変化等を測定することにより、抗体価を算出する。
(c)ミエローマの調製工程
ミエローマとしては、一般的にはマウスから得られた株化細胞、例えば8−アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)ミエローマ株P3X63Ag8U.1(P3-U1)[Yelton, D.E. et al. Current Topics in Microbiology and Immunology, 81, 1-7(1978)]、P3/NSI /1-Ag4-1(NS-1) [Kohler, G. et al. European J. Immu nology, 6, 511-519 (1976) ]、Sp2 /O-Ag14 (SP-2) [Shulman, M. et al. Nature, 276, 269-270 (1978)]、P3X63Ag8.653 (653) [Kearney, J. F. et al. J. Immunology, 123, 1548-1550 (1979)]、P3X63Ag8(X63) [Horibata, K. and Harris, A. W. Nature, 256, 495-497 (1975)]などを用いることが好ましい。これらの細胞株は、適当な培地、例えば8−アザグアニン培地[RPMI−1640培地にグルタミン、2−メルカプトエタノール、ゲンタマイシン、およびウシ胎児血清(以下「FCS」という)を加えた培地に8−アザグアニンを加えた培地] 、イスコフ改変ダルベッコ培地(Iscove's Modified Dulbecco's Medium ;以下「IMDM」という)、またはダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium;以下「DMEM」という)で継代培養するが、細胞融合の3乃至4日前に正常培地[例えば、10% FCSを含むASF104培地(味の素(株)社製)]で継代培養し、融合当日に2×10以上の細胞数を確保しておく。
(d)細胞融合
抗体産生細胞は、形質細胞、およびその前駆細胞であるリンパ球であり、これは個体のいずれの部位から得てもよく、一般には脾、リンパ節、末梢血、またはこれらを適宜組み合わせたもの等から得ることができるが、脾細胞が最も一般的に用いられる。
最終免疫後、所定の抗体価が得られたマウスから抗体産生細胞が存在する部位、例えば脾臓を摘出し、抗体産生細胞である脾細胞を調製する。この脾細胞と工程(c)で得られたミエローマを融合させる手段として現在最も一般的に行われているのは、細胞毒性が比較的少なく融合操作も簡単なポリエチレングリコールを用いる方法である。この方法は、例えば以下の手順よりなる。
脾細胞とミエローマとを無血清培地(例えばRPMI1640)、またはリン酸緩衝生理食塩液(以下「PBS」という)でよく洗浄し、脾細胞とミエローマの細胞数の比が5:1〜10:1程度になるように混合し、遠心分離する。上清を除去し、沈澱した細胞群をよくほぐした後、撹拌しながら1mlの50%(w/v)ポリエチレングリコール(分子量1000〜4000)を含む無血清培地を滴下する。その後、10mlの無血清培地をゆっくりと加えた後遠心分離する。再び上清を捨て、沈澱した細胞を適量のヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(以下「HAT」という)液およびマウスインターロイキン−2(以下「IL−2」という)を含む正常培地(以下「HAT培地」という)中に懸濁して培養用プレート(以下「プレート」という)の各ウェルに分注し、5% 炭酸ガス存在下、37℃で2週間程度培養する。途中適宜HAT培地を補う。
(e)ハイブリドーマ群の選択
上記ミエローマ細胞が、8−アザグアニン耐性株である場合、すなわち、ヒポキサンチン・グアニン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)欠損株である場合、融合しなかった該ミエローマ細胞、およびミエローマ細胞どうしの融合細胞は、HAT含有培地中では生存できない。一方、抗体産生細胞どうしの融合細胞、あるいは、抗体産生細胞とミエローマ細胞とのハイブリドーマは生存することができるが、抗体産生細胞どうしの融合細胞には寿命がある。従って、HAT含有培地中での培養を続けることによって、抗体産生細胞とミエローマ細胞とのハイブリドーマのみが生き残り、結果的にハイブリドーマを選択することができる。
コロニー状に生育してきたハイブリドーマについて、HAT培地からアミノプテリンを除いた培地(以下「HT培地」という)への培地交換を行う。以後、培養上清の一部を採取し、例えば、ELISA法により抗体価を測定する。
以上、8−アザグアニン耐性の細胞株を用いる方法を例示したが、その他の細胞株もハイブリドーマの選択方法に応じて使用することができ、その場合使用する培地組成も変化する。
(f)クローニング
工程(b)の記載と同様の方法で抗体価を測定することにより、特異的抗体を産生することが判明したハイブリドーマを、別のプレートに移しクローニングを行う。このクローニング法としては、プレートの1ウェルに1個のハイブリドーマが含まれるように希釈して培養する限界希釈法、軟寒天培地中で培養しコロニーを回収する軟寒天法、マイクロマニュピレーターによって1個づつの細胞を取り出し培養する方法、セルソーターによって1個の細胞を分離する「ソータクローン」などが挙げられるが、限界希釈法が簡便でありよく用いられる。
抗体価の認められたウェルについて、例えば限界希釈法によるクローニングを2〜4回繰返し、安定して抗体価の認められたものを本発明のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
(g)ハイブリドーマ培養によるモノクローナル抗体の調製
クローニングを完了したハイブリドーマは、培地をHT培地から正常培地に換えて培養される。大量培養は、大型培養瓶を用いた回転培養、あるいはスピナー培養で行われる。この大量培養における上清を、ゲル濾過等、当業者に周知の方法を用いて精製することにより、本発明の蛋白質に特異的に結合するモノクローナル抗体を得ることができる。また、同系統のマウス(例えば、上記のBALB/c)、あるいはNu/Nuマウスの腹腔内で該ハイブリド−マを増殖させることにより、本発明のモノクローナル抗体を大量に含む腹水を得ることができる。精製の簡便な方法としては、市販のモノクローナル抗体精製キット(例えば、MAbTrap GIIキット;ファルマシア社製)等を利用することもできる。
かくして得られるモノクローナル抗体は、本発明の蛋白質に対して高い抗原特異性を有する。
(h)モノクローナル抗体の検定
かくして得られたモノクローナル抗体のアイソタイプおよびサブクラスの決定は以下のように行うことができる。まず、同定法としてはオクテルロニー(Ouchterlony)法、ELISA法、またはRIA法が挙げられる。オクテルロニー法は簡便ではあるが、モノクローナル抗体の濃度が低い場合には濃縮操作が必要である。一方、ELISA法またはRIA法を用いた場合は、培養上清をそのまま抗原吸着固相と反応させ、さらに第二次抗体として各種イムノグロブリンアイソタイプ、サブクラスに対応する抗体を用いることにより、モノクローナル抗体のアイソタイプ、サブクラスを同定することが可能である。また、さらに簡便な方法として、市販の同定用のキット(例えば、マウスタイパーキット;バイオラッド社製)等を利用することもできる。
さらに、タンパク質の定量は、フォーリンロウリー法、および280nmにおける吸光度[1.4(OD280)=イムノグロブリン1mg/ml]より算出する方法により行うことができる。
このようにして得られる本発明の抗体は、その特異性を利用した本発明の蛋白質の検出や分離精製に用いることができる。
新規脂質キナーゼに対する抗体をヒトに対する医薬として用いる場合、抗原性の問題からヒトの体内で免疫原性を示さない抗体作製することが望ましい。このような抗体の例として、キメラ抗体、ヒト型抗体およびヒト抗体が挙げられる。
本発明において、「キメラ抗体」とは、その可変領域がヒト以外の動物の免疫グロブリン由来であり且つその定常領域がヒト免疫グロブリン由来であることを特徴とする、組換型モノクローナル抗体を意味する。好適なキメラ抗体は、その可変領域がマウス免疫グロブリン由来であり且つその定常領域がヒト免疫グロブリン由来であることを特徴とするマウス/ヒトキメラモノクローナル抗体である。定常領域が由来するヒト免疫グロブリンとしては、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE等のアイソタイプを例示することができ、好適にはIgG及びIgMである。そのようなキメラ抗体を製造する方法としては、ヒト以外の動物のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマより該抗体をコードするDNAを単離し、次いで該DNAより活性なVH遺伝子(H鎖可変領域をコードする再配列されたVDJ遺伝子)及びVL遺伝子(L鎖可変領域をコードする再配列されたVJ遺伝子)を単離し、VH遺伝子の下流にヒト免疫グロブリンをコードするDNA由来のCH遺伝子(H鎖定常領域をコードするC遺伝子)を、VL遺伝子の下流にCL遺伝子(L鎖定常領域をコードするC遺伝子)をそれぞれ機能発現が可能なように適宜連結し、次いで同一又は別個の発現ベクターへ挿入し、得られた組換発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、得られた形質転換宿主細胞の培養物より単離精製する方法(特公平3−73280号公報等参照)を例示することができるが、その方法に限定されるものではない。
本発明において、「ヒト型抗体(humanized antibody via CDR-grafting)」とは、可変領域内の相補性決定領域(Complementarity-determining region:以下、CDR)の一部又は全部がヒト以外の動物のモノクローナル抗体由来であり、且つその可変領域内のCDR以外の領域すなわち枠組領域(Framework region:以下、FR)の大部分又は全部がヒトイムノグロブリン由来であり、且つその定常領域がヒトイムノグロブリン由来であることを特徴とする、組換型モノクローナル抗体を意味する。好適なヒト型抗体は、CDRの一部又は全部がマウスモノクローナル抗体由来であり、且つFRがヒトイムノグロブリン由来であり、且つその定常領域がヒトイムノグロブリン由来であることを特徴とする、ヒト型モノクローナル抗体である。
本発明において、CDRとは、抗体の可変領域中に存在する、抗原と相補的に直接結合する部位である領域を意味する。
定常領域が由来するヒト免疫グロブリンとしては、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE等のアイソタイプを例示することができ、好適にはIgG及びIgMである。そのようなヒト型モノクローナル抗体の製造方法としては、マウスモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマより少なくとも1つのマウスH鎖CDR遺伝子及びそれに対応する少なくとも1つマウスL鎖CDR遺伝子を、ヒト免疫グロブリン遺伝子から前記マウスH鎖CDRに対応するヒトH鎖CDR以外の全領域をコードするヒトH鎖遺伝子及び前マウスL鎖CDRに対応するヒトL鎖CDR以外の全領域をコードするヒトL鎖遺伝子をそれぞれ単離し、次いでマウスH鎖CDR遺伝子とヒトH鎖遺伝子を、マウスL鎖CDR遺伝子とヒトL鎖遺伝子をそれぞれ機能発現が可能なように適宜連結し、次いで同一又は別個の組換えベクターへ挿入し、得られた組換発現ベクターで宿主細胞を形質転換し、得られた形質転換宿主細胞の培養物より単離精製する方法(特表平4−506458号公報、特開昭62−296890号公報等参照)等を例示することができるが、その方法に限定されるものではない。
このようなヒト型抗体の作成法の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれに限定されない。Balb/cマウスを用いて、常法(Kohler et al.: Nature 256, p.495-497, 1975)により本発明の蛋白質に対するマウス型モノクローナル抗体を作製し、脂質キナーゼ活性を調節し、かつ高親和性を有するモノクローナル抗体を選択する。この脂質キナーゼに対する高親和性マウス型モノクローナル抗体のCDR−領域(CDR−1、2および3)をヒトIgGのCDR領域に移植するCDR−grafting(Winter and Milstein: Nature 349, p293-299, 1991)の手法を駆使することによりヒト型抗体を得ることができる。
本発明において、「ヒト抗体」とは、免疫グロブリンを構成するH鎖の可変領域及びH鎖の定常領域並びにL鎖の可変領域及びL鎖の定常領域を含む全ての領域がヒト免疫グロブリンをコードする遺伝子に由来する免疫グロブリンを意味する。そのようなヒト抗体の製造方法としては、ヒト免疫グロブリン遺伝子をヒト以外の哺乳動物の遺伝子座中に組込むことにより作製されたトランスジェニック動物をヒト抗原で免疫感作することにより、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体として取得する方法(WO94/25585号公報、特表平6−500233号公報等参照)等を例示することができるが、その方法に限定されるものではない。このような抗新規脂質キナーゼヒトモノクローナル抗体の作成法の一つの具体例を以下に挙げる。ヒト末梢血あるいは脾臓から採取したヒトリンパ球をin vitroでIL−4存在下、抗原である新規脂質キナーゼまたは該キナーゼに特異的なアミノ酸配列からなるペプチドで感作し、感作したヒトリンパ球をマウスとヒトとのヘテロハイブリドーマであるK/B(ATCC CRL−1823)と細胞融合させることにより目的の抗体産生ハイブリドーマをスクリーニングする。得られた抗体産生ハイブリドーマが生産する抗体は、ヒト抗新規脂質キナーゼモノクローナル抗体である。これらの抗体の中から脂質キナーゼ活性を調節する抗体を選別する。しかしながら、このようにヒトリンパ球をin vitroで感作する方法では、一般的に抗原に対して高親和性の抗体を得るのは困難である。従って、新規脂質キナーゼに高親和性のモノクローナル抗体を得るには、上記のようにして得られた低親和性のヒト抗新規脂質キナーゼモノクローナル抗体を高親和化する必要がある。それには、上記のようにして得られ、中和抗体であるものの低親和性であるヒト抗新規脂質キナーゼモノクローナル抗体のCDR領域(特にCDR−3)にランダム変異を導入し、これをファージで発現させて本発明の蛋白質を固相化したプレートを用いてファージディスプレー法により、抗原である本発明の蛋白質に強力に結合するファージを選択し、そのファージを大腸菌で増やし、その塩基配列から高親和性を有するCDRのアミノ酸配列を決定すればよい。このようにして得られたヒト抗新規脂質キナーゼモノクローナル抗体をコードする遺伝子を一般的に使用されている哺乳動物細胞用発現ベクターに組み込んで、発現させることによりヒト抗新規脂質キナーゼモノクローナル抗体が得られる。これらの中から、脂質キナーゼ活性を調節し、かつ高親和性である目的の抗新規脂質キナーゼヒトモノクローナル抗体を選別することができる。ヒト末梢血リンパ球をin vitroで培養する代わりに、Severe combined immune deficiency(SCID)マウスに移植し、このSCIDマウスを新規脂質キナーゼまたは該キナーゼに特異的なアミノ酸配列からなるペプチドを用いて感作することによってもヒト抗体を得ることができる(Mosier D. E. et al.: Nature 335, p256-259, 1988; Duchosal M. A. et al.: Nature 355, p258-262, 1992)。
本発明において、「抗体の断片」とは、本発明における抗体の一部を意味し、好適には本発明のモノクローナル抗体の一部を意味する。抗体の断片には、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv(variable fragment of antibody)、scFv等が含まれる。「F(ab’)2」及び「Fab’」とは、免疫グロブリン又はモノクローナル抗体を、ペプシンやパパイン等のタンパク質分解酵素又はペプチド分解酵素で処理することにより、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の前後が切断されて生じる抗体断片を意味する。
このようにして得られたハイブリドーマを培養することにより、目的のヒト抗新規脂質キナーゼモノクローナル抗体を大量に製造でき、該タンパク質の物理的性質や化学的性質などを利用した各種の公知の分離操作法により分離・精製することができる。更に、上述の方法で得られた抗新規脂質キナーゼモノクローナル抗体の中から、新規脂質キナーゼの活性を活性化または中和する抗体を得ることができる。これら新規脂質キナーゼの活性を調節する抗体は、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症、動脈硬化、癌および癌の転移などの疾患の治療および/または予防効果を期待できる。特に新規脂質キナーゼの活性を活性化する抗体は、新規脂質キナーゼによるセラミドの代謝を促進する為、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化に対する治療及び/または予防剤として期待される。in vitroでの抗新規脂質キナーゼ抗体による新規脂質キナーゼの生物活性の調節活性は、上記のような、脂質キナーゼ活性測定方法を利用して測定することができる。
本発明の蛋白質は、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化の患部においてこれらの疾患の増悪因子であると考えられているセラミドをリン酸化し、セラミド−1−リン酸へと変換するため、適切な方法で製剤化することにより、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化等の疾患の治療および/または予防剤の有効成分となりうる。本発明における神経性疾患の具体例としては、アルツハイマー、脳虚血傷害、網膜芽細胞種、網膜色素変性、糖尿病網膜症、緑内障等が挙げられ、腎臓疾患の例としては、慢性糸球体腎炎、急性糸球体腎炎、糖尿病性腎症、慢性腎不全、急性腎不全、ネフローゼ症候群などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明の抗体のうち、本発明の蛋白質と結合することにより該蛋白質の有する脂質キナーゼ活性を活性化させるようなものは、セラミドのリン酸化を亢進することにより、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化等の疾患の治療および/または予防剤の有効成分になりうる。また、本発明の抗体のうち、本発明の蛋白質と結合することにより、該蛋白質の有する脂質キナーゼ活性を抑制するような抗体は、癌および/または癌の転移の治療および/または予防剤の有効成分となりうる。これらの蛋白質や抗体は、製剤化して経口的あるいは非経口的に投与することができる。このような製剤は、本発明の蛋白質および本発明の抗体を有効成分として含有する医薬組成物(以下、本蛋白質製剤という)として、ヒトあるいは動物に対し安全に投与されるものである。医薬組成物の形態としては、点滴を含む注射剤、坐剤、経鼻剤、舌下剤、経皮吸収剤などが挙げられる。本蛋白製剤の有効成分は蛋白質であるため、バイアル瓶などのガラス容器や注射筒などへの吸着が著しい上に不安定であり、種々の物理化学的因子、例えば、熱、pH及び湿度等により容易に失活する。従って、安定な形で製剤化するために、安定化剤、pH調整剤、緩衝剤、可溶化剤、界面活性剤などを添加する。安定化剤としてはグリシン、アラニン等のアミノ酸類、デキストラン40及びマンノース等の糖類、ソルビトール、マンニトール、キシリトール等の糖アルコール等が挙げられ、またこれらの二種以上を併用してもよい。これらの安定化剤の添加量は、本蛋白質製剤の有効成分の重量に対して0.01〜100倍、特に0.1〜10倍添加するのが好ましい。これら安定化剤を加えることにより、液状製剤あるいは凍結乾燥製剤の保存安定性を向上することができる。緩衝剤としては、例えばリン酸バッファー、クエン酸バッファー等が挙げられる。緩衝剤は、液状製剤あるいは凍結乾燥製剤の再溶解後の水溶液のpHを調製し、本蛋白質製剤の有効成分の安定性、溶解性に寄与する。緩衝剤の添加量としては、例えば液状製剤あるいは凍結乾燥製剤を採用解した後の水量に対し、1〜10mMとするのが好ましい。界面活性剤としては、好ましくはポリソルベート20、プルロニックF−68、ポリエチレングリコール等、特に好ましくはポリソルベート80が挙げられ、またこれらの2種以上を併用してもよい。高分子蛋白質は容器の材質であるガラスや樹脂などに吸着しやすい。従って、界面活性剤を添加することによって、液状製剤あるいは凍結乾燥製剤の再溶解後における蛋白質の、容器への吸着を防止することができる。界面活性剤の添加量としては、液状製剤あるいは凍結乾燥製剤の再溶解後の水重量に対して0.001〜1.0%添加することが好ましい。以上のような安定化剤、緩衝剤、あるいは吸着防止剤を加えて本蛋白質製剤を調製することができるが、特に医療用または動物用注射剤として用いる場合は、浸透圧として許容される浸透圧比は1〜2が好ましい。浸透圧比は、製剤化に際して塩化ナトリウムの増減により調製することができる。製剤中の蛋白質含量は、適用疾患、適用投与経路などに応じて適宜調整することができる。たとえば、ヒトに対するヒト型抗体の投与量は、抗体の新規脂質キナーゼに対する親和性、即ち、新規脂質キナーゼに対する解離定数(Kd値)に対し、親和性が高い(Kd値が低い)ほど、ヒトへの投与量を少なく薬効を発揮することができる。ヒト型抗新規脂質キナーゼ抗体をヒトに対して投与する際には、例えば、約0.1〜100mg/kgを1〜30日間に1回投与する。
また、本発明のアンチセンスヌクレオチドは、癌のように脂質キナーゼの発現を抑制することで治療または予防効果が期待できる疾患の治療または予防剤の有効成分として有用である。アンチセンスヌクレオチドを含む医薬として有用な組成物は、医薬として許容できる担体の混合などの公知の方法によって製造され得る。このような担体と製造方法の例は、Applied Antisense Oligonucleotide Technology(1998 Wiley−Liss、Inc.)に記載されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドを含む製剤は、それ自体あるいは適宜の薬理学的に許容される、賦形剤、希釈剤等と混合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤若しくはシロップ剤等により経口的に、または、注射剤、坐剤、貼付剤、若しくは、外用剤等により非経口的に投与することができる。これらの製剤は、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール、ソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α澱粉、デキストリンのような澱粉誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルランのような有機系賦形剤;及び、軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;燐酸水素カルシウムのような燐酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;硫酸カルシウムのような硫酸塩等の無機系賦形剤を挙げることができる。)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーズワックス、ゲイ蝋のようなワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;DLロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物のような珪酸類;及び、上記澱粉誘導体を挙げることができる。)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、及び、前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。)、崩壊剤(例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる。)、乳化剤(例えば、ベントナイト、ビーガムのようなコロイド性粘土;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムのような陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウムのような陽イオン界面活性剤;及び、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤を挙げることができる。)、安定剤(メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及び、ソルビン酸を挙げることができる。)、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等を挙げることができる。)、希釈剤等の添加剤を用いて周知の方法で製造される。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを患者へ導入する方法については、上記に加えてコロイド分散系を用いることができる。コロイド分散系は該ポリヌクレオチドの生体内の安定性を高める効果や、特定の臓器、組織または細胞へ該ポリヌクレオチドを効率的に輸送する効果が期待される。コロイド分散系は、通常用いられるものであれば限定しないが、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び水中油系の乳化剤、ミセル、混合ミセル及びリポソームを包含する脂質をベースとする分散系を挙げる事ができ、好ましくは、特定の臓器、組織または細胞へ該ポリヌクレオチドを効率的に輸送する効果のある、複数のリポソーム、人工膜の小胞である(Mannino et al.,Biotechniques,1988,6,682;Blume and Cevc,Biochem.et Biophys.Acta,1990,1029,91;Lappalainen et al.,Antiviral Res.,1994,23,119;Chonn and Cullis,Current Op.Biotech.,1995,6,698 )。0.2−0.4 μmのサイズ範囲をとる単膜リポソームは、巨大分子を含有する水性緩衝液のかなりの割合を被包化し得、該ポリヌクレオチドはこの水性内膜に被胞化され、生物学的に活性な形態で脳細胞へ輸送される(Fraley et al.,Trends Biochem.Sci.,1981,6,77 )。リポソームの組成は、通常、脂質、特にリン脂質、とりわけ相転移温度の高いリン脂質を1種またはそれ以上のステロイド、特にコレステロールと通常複合したものである。リポソーム生産に有用な脂質の例は、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、スフィンゴ脂質、ホスファチジルエタノールアミン、セレブロシド及びガングリオシドのようなホスファチジル化合物を包含する。特に有用なのはジアシルホスファチジルグリセロールであり、ここでは脂質部分が14−18の炭素原子、特に16−18の炭素原子を含有し、飽和している(14−18の炭素原子鎖の内部に二重結合を欠いている)。代表的なリン脂質は、ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン及びジステアロイルホスファチジルコリンを包含する。
リポソームを包含するコロイド分散系の標的化は、受動的または能動的のいずれかであってもよい。受動的な標的化は、洞様毛細血管を含有する臓器の網内系細胞へ分布しようとするリポソーム本来の傾向を利用することによって達成される。一方、能動的な標的化は、例えば、ウイルスの蛋白質コート(Morishita et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.),1993,90,8474 )、モノクローナル抗体(またはその適切な結合部分)、糖、糖脂質または蛋白質(またはその適切なオリゴペプチドフラグメント)のような特定のリガンドをリポソームへ結合させること、または天然に存在する局在部位以外の臓器及び細胞型への分布を達成するためにリポソームの組成を変えることによってリポソームを修飾する手法等を挙げる事ができる。標的化されたコロイド分散系の表面は様々なやり方で修飾され得る。リポソームで標的したデリバリーシステムでは、脂質二重層との緊密な会合において標的リガンドを維持するために、リポソームの脂質二重層へ脂質基が取込まれ得る。脂質鎖を標的リガンドと結びつけるために様々な連結基が使用され得る。本発明のオリゴヌクレオチドのデリバリーが所望される細胞の上に支配的に見出される特定の細胞表面分子に結合する標的リガンドは、例えば、(1)デリバリーが所望される細胞によって支配的に発現される特定の細胞受容体と結合している、ホルモン、成長因子またはその適切なオリゴペプチドフラグメント、または(2)標的細胞上で支配的に見出される抗原性エピトープと特異的に結合する、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体、またはその適切なフラグメント(例えば、Fab ;F (ab')2 )、であり得る。2 種またはそれ以上の生物活性剤は、単一のリポソーム内部で複合し、投与することもできる。内容物の細胞内安定性及び/または標的化を高める薬剤をコロイド分散系へ追加することも可能である。
その使用量は症状、年齢等により異なるが、経口投与の場合には、1回当り1mg乃至2000mg、好適には30mg乃至1500mg、注射の場合には、1回当り0.1mg乃至1000mg、好適には5mg乃至500mg)を皮下注射、筋肉注射または静脈注射によって投与することができる。
また、本発明の蛋白質をワクチン製剤として投与することにより、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症、動脈硬化、癌、および癌の転移などの治療または予防効果が期待できるだろう。

また、本発明の蛋白質に結合する物質は脂質キナーゼ活性の調節活性を有すると考えられるが、このような物質をスクリーニングする場合、本発明の蛋白質の部分アミノ酸配列からなるペプチドを使用することができ、該部分ペプチドも本発明に含まれる。該部分ペプチドは、本発明の蛋白質の部分アミノ酸配列からなっていれば特に限定されず、キナーゼ活性を有している必要は無い。該部分配列の好適な例としては、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列の部分からなるペプチドを挙げることができる。また、このようなペプチドを含むことからなるペプチドも本発明に含まれる。このようなペプチドとしては精製の為、または樹脂などに固定する為にタグを結合させて発現させたペプチド等を挙げることができるが、これに限定されない。
以上述べたごとく、本発明により、新規脂質キナーゼおよび該蛋白質を使用した脂質キナーゼ活性化または阻害剤の新規試験方法および該蛋白質を使用した特異的かつ高感度な脂質定量方法が提供された。本発明は、脂質キナーゼに対して特異的な活性化または阻害活性を有する、神経性疾患治療薬、腎臓疾患治療薬、抗炎症剤、先天性免疫不全症候群の治療薬、抗2型糖尿病薬、抗肥満薬、抗敗血症薬、抗動脈硬化薬および制癌剤の候補化合物のスクリーニングに有用である。
以下に記載する実施例をもって、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1.cDNAのクローニング
1)ヒトセラミドキナーゼと相同性をもつcDNAクローンの検索と塩基配列の解析
既知のヒトセラミドキナーゼのアミノ酸配列に基づいて、NCBIのゲノムデータベースに対してtblastnのアルゴリズムを用いて相同性検索を行い、ヒトセラミドキナーゼに相同性のあるゲノム配列(GenBankTM accession number AC017116)を見出した。このゲノム配列部分に相当するmRNAの転写を確認するために、複数の市販cDNAライブラリーを鋳型として用いて以下のPCRを行った。
2)PCRによるcDNA断片の増幅
既知のセラミドキナーゼに相同性の高い、ゲノム配列AC017116中の領域から以下の2つのオリゴヌクレオチドプライマー、C2-SおよびC2-Aを合成した。
C2-S:5’-GACCGAAGTCATTAAAATA;(配列表の配列番号3)
C2-A:5’-AGCCTCTAGGTGCCACTGA;(配列表の配列番号4)
次いで、市販cDNAライブラリーを鋳型として、C2-Sをセンスプライマー、C2-Aをアンチセンスプライマーとして用いて、TakaRa LA Taq(宝酒造(株)社製)を用いたPCR反応を行った。すなわち、5μlのMarathon-ReadyTM human fetal kidneyやfetal lung (クロンテック社製)cDNAと、オリゴヌクレオチドプライマー(C2-SおよびC2-A)各0.4μM、ならびにdATP、dGTP、dCTP、dTTP各400μM、2.5mM 塩化マグネシウム、1×LA PCR緩衝液、0.05単位のLA Taq DNAポリメラーゼ(以上キットに添付)からなる50μlの反応液を調製した。この反応液をタカラ PCR MP(宝酒造(株)社製)を使用して、94℃で2分間加熱した後、94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で2分のサイクルを30回繰り返してから、72℃で10分間保温した。この反応液を1%アガロースゲル電気泳動で解析した結果、約700bpのDNA断片のバンドが観察された。このバンド内のDNA断片をゲルよりQIAクイックゲルエクストラクションキット(キアゲン社製)により回収し、T/Aクローニング法(Clark, J. M. et al. (1988) Nucleic Acid Res. 16, 9677-9686)によりpCR2.1ベクター(真核生物用 TA クローニングキット(インビトロゲン社製)に添付)に連結し、大腸菌INVα’株(キットに添付)に導入した。得られた形質転換株よりプラスミドDNA pCR2.1−CERK2Sを抽出し、挿入されているcDNAの全ヌクレオチド配列をジデオキシヌクレオチド鎖終結法によりヌクレオチド配列を決定した。その結果、得られたヌクレオチド配列は、上記1)のゲノム配列AC017116上に存在する配列であり、セラミドキナーゼに相同性を有するアミノ酸配列をコードするものであった(配列表の配列番号1のヌクレオチド番号494〜1252に示される領域)。次に、このDNA断片を含む完全なcDNAを取得するために、以下に示すような5’RACE法および3’RACE法を利用して、完全長cDNAのヌクレオチド配列を決定した。
3)5’RACE法
本発明遺伝子の5’部分を含むcDNAクローンは、市販キット(5’RACE System for Rapid Amplification of cDNA ends Version 2.0, ライフテクノロジー社(現在はインビトロゲン社)製)を用いて、その添付の5’RACE法に従い、所望の全長cDNAを単離した。まず、2)で得られた配列表の配列番号1のヌクレオチド番号494〜1252に記載のヌクレオチド配列からなるDNA断片(CERK2−PCRと呼ぶ)の配列をもとに、下記のような3種のアンチセンスプライマー(GSP-a1、GSP-a2およびGSP-a3)を合成した。
GSP-a1:5’-GTGCCTTAACAACAGC;(配列表の配列番号5)
GSP-a2:5’-CAGAGCCAAAGTTCTTCCACCAAAGCC;(配列表の配列番号6)
GSP-a3:5’-AGAACCCAAAGCGAAGAAGCTTGCC;(配列表の配列番号7)
アマシャムファルマシアのクイックプレップ mRNA分離キットを用いて、キットに添付されたプロトコールに従って、ポリ(A)RNAをHEK293細胞から分離した。第1鎖cDNAの合成は次のように行った。5μgのHEK293ポリ(A)RNA及びプライマーGSP-a1 2.5pmolを体積15.5μlになるよう混合し、70℃ 10分間プレインキュベートした後、氷上で急速冷却し、ポリ(A)RNAを変性させた。これに、反応混合物(2.5μlの10×PCR緩衝液(pH8.4、200mM Tris−HCl、500mM KCl)、2.5μlの25mM MgCl、1μlの10mM dNTP(10mM10mM dATP、10mM dGTP、10mM dTTPおよび5mMdCTP)および2.5μlの0.1mM DTTの混合液)を加え、42℃で1分間インキュベートし、1μlのSuperScriptTM逆転写酵素(200U/μl)を加え、42℃で50分間、70℃で15分間インキュベートした。反応終了後,1μlのリボヌクレアーゼHを加え37℃で30分間反応させた。GlassMax isolation spin cartridgeで過剰のヌクレオチドとプライマーを除いた反応液を減圧乾燥させ、16.5μlの滅菌水に溶解した。この溶液に、5μlの5×tailing緩衝液(pH8.4、50mM Tris−HCl、125mM KCl、7.5mM MgCl)、2.5μlの2mM dCTPを加え、94℃で3分間インキュベートし、氷上で急速冷却し、DNAを変成させた。この溶液に、1μlのterminal deoxynucleotidyl transferaseを加え、37℃で10分間、65℃で10分間インキュベーションし、cDNAの3’末端にポリ(C)を付加した。次いで、このcDNAを鋳型として、TakaRa LA Taq(宝酒造(株)社製)を用いて、1回目のPCR反応を行なった。すなわち、5μlの反応液とプライマー GSP-a2および5’RACE Abriged Anchor Primer各0.4μM、ならびにdATP、dGTP、dCTP、dTTP各400μM、2.5mM 塩化マグネシウム、1×LA PCR緩衝液、0.05単位のLA Taq DNAポリメラーゼ(以上キットに添付)からなる50μlの反応液を調製した。この反応液を94℃で2分間加熱した後、94℃で30秒、65℃で30秒、72℃で2分の温度サイクルで30サイクル繰り返してから、72℃で10分保温した。続いて、1回目のPCR反応液を鋳型として2回目のPCRを行った。1回目のPCR反応液を100分の1に希釈し、そのうち、5μlを用いて、GSP-a3及びAbriged Universal Amplification Primer(AUAP)各0.4μMを加え、その他の溶液は1回目のPCR反応と同様に加えた。この反応液を94℃で2分間加熱した後、94℃で30秒、65℃で30秒、72℃で2分の温度サイクルで30サイクル繰り返してから、72℃で10分保温した。PCR産物をマイクロ バイオ−スピンカラム 30 クロマトグラフィーカラム(バイオラド社製)を用いて精製し、T/Aクローニング法(Clark, J. M. et al. (1988) Nucleic Acid Res. 16:9677-9686)によりpCR2.1ベクター(オリジナル TA クローニングキット(インビトロゲン社製)に添付)に連結し、大腸菌INVαF’株(キットに添付)に導入した。陽性のクローンにつき、挿入されたcDNAの全ヌクレオチド配列をジデオキシヌクレオチド鎖終結法により決定した。

4)3’RACE法
本発明遺伝子の3’部分を含むcDNAクローンは、市販cDNAライブラリーMarathon-ReadyTM human kidney (クロンテック社製)を用いて、その添付の3’RACE法のプロトコールに従い単離した。まず、CERK2−PCRの塩基配列に基づき2種のセンスプライマー、GSP-S1およびGSP-S2を合成した。
GSP-S1:5’-TGGGATGGAAACAGACCGAATCCTGAC;(配列表の配列番号8)
GSP-S2:5’-CACAGCTTCCACTTGGCTAATAC;(配列表の配列番号9)
次いで、TakaRa LA Taq(宝酒造(株)社製)を用いて2回のPCR反応を行った。すなわち、1回目は5μlのMarathon-ReadyTM human fetal kidney (クロンテック社製)cDNAと、GSP-S1およびAdaptor Primer 1(AP1)各0.4μM、ならびにdATP、dGTP、dCTP、dTTP各400μM、2.5mM 塩化マグネシウム、1×LA PCR緩衝液、0.05単位のLA Taq DNAポリメラーゼ(以上キットに添付)からなる50μlの反応液を調製した。この反応液を94℃で2分間加熱した後、94℃で30秒、72℃で2分の温度サイクルを5サイクル、94℃で30秒、70℃で2分の温度サイクルを5サイクル、94℃で30秒、68℃で4分の温度サイクルを20サイクル繰り返してから、72℃で10分間保温した。続いて、1回目のPCR反応液を鋳型として2回目のPCRを行った。1回目のPCR反応液を100分の1に希釈し、そのうち、5μlを用いて、GSP-S2及びNested Adaptor Primer 2(AP2)各0.4μMを加え、その他の溶液は1回目のPCR反応と同様に加えた。この反応液を94℃で2分間加熱した後、94℃で30秒、68℃で4分の温度サイクルで20サイクル繰り返してから、72℃で10分保温した。PCR産物をマイクロ バイオ−スピンカラム 30 クロマトグラフィーカラム(バイオラド社製)を用いて精製し、T/Aクローニング法(Clark, J. M. et al. (1988) Nucleic Acid Res. 16:9677-9686)によりpCR2.1ベクター(オリジナル TA クローニングキット(インビトロゲン社製)に添付)に連結し、大腸菌INVαF’株(キットに添付)に導入した。陽性のクローンにつき、挿入されたcDNAの全ヌクレオチド配列をジデオキシヌクレオチド鎖終結法により決定した。その結果、PCR断片CERK2−PCRの配列とポリA配列を含む配列が得られた。

5)全長cDNAの決定
3)、4)で得られた5’部分の配列と3’部分の配列より、本発明遺伝子のcDNAの全ヌクレオチド配列を決定した。本発明遺伝子のcDNAを以下CERK2と称する。CERK2は合計3313塩基からなり、1596塩基からなるオープンリーディングフレーム(以下「ORF」という)を含んでおり、3’末端側の非翻訳領域にポリ(A)鎖を有している。そのORFのヌクレオチド配列を配列表の配列番号1のヌクレオチド番号1から1596に示す。また、該ORFのヌクレオチド配列に対応するアミノ酸配列を配列表の配列番号2に示す。さらに、これらの配列について、GenBankおよびEMBLのDNAデータベースならびにSWISS−PLOTプロテインデータベースに対して相同性検索を行った結果、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列には、特に高い相同性を有する既知の蛋白質はなかった。また、本発明遺伝子とセラミドキナーゼの全長にわたる相同性は28%しかないものの、脂質リン酸化酵素であるセラミドキナーゼおよびスフィンゴシンキナーゼに種を越えて系統的に保存されたドメイン部分(Sugiura M. et al(2002) J. Biol. Chem. 277, 23294-23300 参照)については相同性を有していた。

実施例2.CERK2の発現の組織特異性
市販の調整済みノーザンブロット ヒト 12レーン MTNTM ブロット(クロンテック社製)を用いて、CERK2の組織における発現を調べた。配列番号1の584から940番目までのDNA断片をBcaBEST DNA ラベリングキット(宝酒造(株)社製)と[α−32P]dCTPを用いて放射標識した。これをプローブとして、6×SSC、5% デンハート(Denhardt)溶液および0.5% ドデシル硫酸ナトリウム(以下「SDS」という)、50%ホルムアミドを含むハイブリダイゼーション溶液でハイブリダイゼーションを行った。ブロットを洗浄後、イメージングアナライザー(BAS2000、富士フィルム)で解析した。その結果、CERK2は腎臓に特異的に発現していることが示唆された。

実施例3.組換え体の発現
1)発現ベクターの作製
脊椎動物細胞発現系を利用して、実施例1で得られたCERK2によりコードされる蛋白質を得た。まず、サイトメガロウイルスのプロモーターの下流に、配列表の配列番号1のヌクレオチド番号1から1596に示すヌクレオチド配列からなるDNA領域を有し、該cDNAを発現させるための真核生物発現ベクターを構築した。上記ベクター作製のために、配列番号1の1から1774番目までの塩基配列を増幅するための下記の配列からなるオリゴヌクレオチドプライマー、CERK2-S、CERK2-Aを合成した。
CERK2-A:5’-ATGCCTGATGATCTGAGGTGG;(配列表の配列番号11)
次いで、市販cDNAライブラリーを鋳型として、TakaRa LA Taq(宝酒造(株)社製)を用いたPCR反応を行なった。すなわち、5μlのMarathon-ReadyTM human fetal lung (クロンテック社製)cDNAと、オリゴヌクレオチドプライマー(CERK2-SおよびCERK2-A)各0.4μM、ならびにdATP、dGTP、dCTP、dTTP各400μM、2.5mM 塩化マグネシウム、1×LA PCR緩衝液、0.05単位のLA Taq DNAポリメラーゼ(以上キットに添付)からなる50μlの反応液を調製した。この反応液を94℃で2分間加熱した後、94℃で30秒、65℃で30秒、72℃で2分の温度サイクルを30サイクル繰り返してから、72℃で10分間保温した。PCR産物を、T/Aクローニング法によりpCR2.1ベクター(真核生物用 TA クローニングキット(インビトロゲン社製)に添付)に連結し、大腸菌INVαF’株(キットに添付)に導入した。陽性のクローンにつき、挿入されたcDNAの全ヌクレオチド配列をジデオキシヌクレオチド鎖終結法により確認した。このプラスミドをpCR2.1‐CERK2と命名した。pCR2.1‐CERK2を制限酵素Xho IとKpn Iで消化し、挿入cDNAを含む約1.7kbpの断片を単離し、pcDNA3.1ベクター(インビトロゲン社製)に挿入し、大腸菌JM109株に導入した。得られた形質転換株よりプラスミドDNA pcDNA3.1−cerk2を抽出し、挿入されているcDNAの全ヌクレオチド配列をジデオキシヌクレオチド鎖終結法により確認した。なお、この発現用プラスミドpcDNA3.1−cerk2を保持する形質転換大腸菌株E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102は、平成14年10月10日付けで独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに国際寄託され、受託番号FERM BP−8201が付された。

2)XpressTMエピトープタグ付き発現ベクターの作製
サイトメガロウイルスのプロモーターの下流に、配列表の配列番号2のアミノ酸番号1から532に示すアミノ酸配列をコードするcDNA領域を有し、N末端に6残基のHisタグ部位とXpressTMエピトープタグ部位をもつ蛋白質を発現させるための真核生物発現ベクターを構築した。
上記ベクター作製のために、5’側に制限酵素認識部位を付加したオリゴヌクレオチドプライマー、His-SおよびHis-Aを合成した。
His-A:5’-AACTCGAGTTACTTTGGAATCATTTCTTCCATGC;(配列表の配列番号9)
次いで、pcDNA3.1−cerk2を鋳型として、Pfu TurboTM DNA polymerase(ストラタジーン社製)を用いたPCR反応を行なった。すなわち、100ngのプラスミドDNA(pcDNA3.1−cerk2)と、オリゴヌクレオチドプライマー(His-SおよびHis-A)各0.5μM、ならびにdATP、dGTP、dCTP、dTTP各200μM、1×Pfu緩衝液、2.5単位のPfu Turbo DNA ポリメラーゼからなる100μlの反応液を調製した。この反応液を94℃で2分間加熱した後、94℃で1分、68℃で4分の温度サイクルを30サイクル繰り返してから、72℃で10分間保温した。PCR産物を、ゲルよりQIAクイックゲルエクストラクションキット(キアゲン社製)により回収し、Kpn IおよびXho Iで消化し、pcDNA3.1/HisAベクターに挿入し、大腸菌TOP10F’株に導入した。得られた形質転換株よりプラスミドDNA pcDNA3.1/His−cerk2を抽出し、挿入されているcDNAの全ヌクレオチド配列をジデオキシヌクレオチド鎖終結法により確認した。

3)動物細胞での発現
本発明の蛋白質が脂質キナーゼ活性を有するかを確認するために、上記2)で作成した発現ベクターpcDNA3.1/His−cerk2をヒト胚子腎臓細胞HEK293に、リポフェクタミン プラス(ライフテクノロジー社製)を用いて、添付のプロトコールに従ってトランスフェクションし、本発明の蛋白質のN末端にXpressTMエピトープタグのついた融合蛋白質を発現させた。すなわち、1プレートあたり6×10個のHEK293細胞を組織培養用ポリリジンコート10cmディッシュにまいた24時間後に、4μgのpcDNA3.1/His−cerk2をトランスフェクションした。37℃で2日間培養した後、緩衝液A(20% グリセロール、1mM β―メルカプトエタノール、1mM EDTA、1mM バナジン酸ナトリウム、15mM フッ化ナトリウム、0.5mM 4−デオキシピリドキシン、コンプリートTM(プロテアーゼインヒビター、ベーリングマンハイム社製)、100mM トリス緩衝液、pH7.5)にて細胞を回収し、プローブ型ソニケーター(ブランソン社製、cell disruptor 200)にて超音波破砕を行い、細胞破砕液を調整した。この細胞破砕液を超遠心(105000*g、60分)により細胞質画分と膜画分に分画した。また、pcDNA3.1/HisA発現ベクター上には、抗生物質G418耐性マーカーとして機能するneo遺伝子があり、pcDNA3.1/His−cerk2トランスフェクション後のHEK293細胞より、G418耐性のコロニーを選択することにより、本発明の蛋白質を安定に産生する形質転換細胞を得ることができる。

実施例4.CERK2の局在
本発明の蛋白質の局在を、上記実施例3 3)で調製した、本発明の蛋白質のN末端にXpressTMエピトープタグがついた融合蛋白質を含む細胞質画分と膜画分を用いて、ウェスタンブロッティングにて調べた。抗Xpress抗体(インビトロゲン社製)を用いることにより、ウェスタンブロッティングによりN末側にXpressTMエピトープタグをもつ本発明の蛋白質を検出した。その結果、本発明の蛋白質は、膜画分に多く局在することが示唆された(図1参照)。

実施例5.セラミドキナーゼ活性の測定
セラミドキナーゼ活性の測定は、上記実施例3で調製した膜画分から、抗Xpressタグ抗体を用いて免疫沈降により本発明の蛋白質を回収し、その蛋白質を用い、[32P]-γ―ATP(NEN社製)およびCセラミドを基質として、以下に記載する方法に従って行った。
具体的には、まず、実施例3で調整した本発明の蛋白質を含む膜画分より、抗Xpress抗体とプロテインGセファロース ファーストフロー(ファルマシアバイオテク社製)を用いて免疫沈降を行い、本発明の蛋白質を回収した。この回収した蛋白質を含む緩衝液B(1mM β―メルカプトエタノール、1mM EDTA、1mM バナジン酸ナトリウム、15mM フッ化ナトリウム、0.5mM 4−デオキシピリドキシン、コンプリートTM(プロテアーゼインヒビター ベーリングマンハイム社製)、200mM 塩化カリウム、100mM トリス緩衝液、pH7.5) 180μl、およびウシ胎児血清(以下、BSA)を用いて調整した1mM Cセラミド 10μlさらには100mM 塩化マグネシウムおよび2mM 放射標識[32P]-γ―ATPの混合液 10μlを添加し、37℃で20分間保温することによりセラミドキナーゼ反応を行った。次に、1N塩酸 20μlを加えることにより反応を停止させ、クロロホルム:メタノール:濃塩酸(100:200:1、v/v)800μlおよび2.5M 塩化カリウム 250μl、クロロホルム 250μlを加えて抽出操作を施し、2000×gで遠心後、得られた下層(クロロホルム層)を薄層クロマトグラフィー(以下、TLC)で展開、分析した。展開溶媒としては、クロロホルム/アセトン/メタノール/酢酸/水(10:4:3:2:1)である。セラミドキナーゼ活性は上記TLCにおいて、生成物であるセラミド−1−リン酸(Cer-1-P)のスポットの放射活性をイメージングアナライザー(BAS2000、富士フィルム)等で定量することにより得られる。
この方法で測定したところ、本発明の蛋白質を含む膜画分の免疫沈降産物は、pcDNA3.1/HisAベクターのみをHEK293細胞に、リポフェクタミン プラス(ライフテクノロジー社製)を用いて、トランスフェクションした際の対照細胞破砕液より同様に調整した免疫沈降産物と比較して、有意に高いCセラミドリン酸化活性を持っていた。(図2参照)
抗Xpress抗体を用いたウェスタンブロッティングによる、Xpress融合脂質キナーゼの細胞内分布(レーン1:未分画試料、レーン2:細胞質画分、レーン3:膜画分(レーン3) Xpress融合脂質キナーゼの脂質キナーゼ活性を示すTLC図、C1P;セラミド−1−リン酸、PA:ホスファチジン酸 (レーン1およびレーン2:pcDNA3.1/HisAベクターで形質転換したHEK293細胞破砕液(対照)、レーン3およびレーン4:Xpress融合脂質キナーゼを発現させたHEK293細胞破砕液)
配列番号3: C2-S primer
配列番号4: C2-A primer
配列番号5: GST-A1 primer
配列番号6: GST-A2 primer
配列番号7: GST-A3 primer
配列番号8: His-S primer
配列番号9: His-A primer
配列番号10: CERK2-S primer
配列番号11: CERK2-A primer

Claims (49)

  1. a)乃至e)のいずれか一つに記載のDNA:
    a)配列表の配列番号1のヌクレオチド番号1から1596に示されるヌクレオチド配列からなるDNA;
    b)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA;
    c)上記a)記載のDNAのヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなる一本鎖DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、脂質キナーゼ活性を有する蛋白質をコードする領域を含むことからなるDNA;
    d)上記a)記載のDNAと95%のヌクレオチド配列相同性を示し、脂質キナーゼ活性を有する蛋白質をコードする領域を含むことからなるDNA;
    e)配列表の配列番号1のヌクレオチド番号1から1596に示されるヌクレオチド配列を含むことからなるDNA。
  2. a)乃至c)のいずれか一つに記載のDNA:
    a)形質転換大腸菌E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102(FERM BP−8201)が保持するプラスミドに挿入されているDNA;
    b)上記a)記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、脂質キナーゼ活性を有する蛋白質をコードする領域を含むことからなるDNA;
    c)形質転換大腸菌E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102(FERM BP−8201)が保持するプラスミドに挿入されているDNAを含むことからなるDNA。
  3. 脂質キナーゼ活性が、セラミドの一位の水酸基をリン酸化する活性であることを特徴とする、請求項1乃至2のいずれか一つに記載のDNA。
  4. 下記のa)乃至d)のいずれか一つに記載の蛋白質:
    a)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなる蛋白質;
    b)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質;
    c)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列において、一つまたは二つ以上のアミノ酸が付加、挿入、欠失もしくは置換されているアミノ酸配列からなり、脂質キナーゼ活性を有することを特徴とする蛋白質;
    d)請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のDNAによりコードされ、脂質キナーゼ活性を有することを特徴とする蛋白質。
  5. 脂質キナーゼ活性が、セラミドの一位の水酸基をリン酸化する活性であることを特徴とする、請求項4記載の蛋白質。
  6. 下記のa)またはb)に記載の蛋白質:
    a)形質転換大腸菌E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102(FERM BP−8201)が保持するプラスミド、pcDNA3.1−cerk2に挿入されているDNAによりコードされるアミノ酸配列からなる蛋白質;
    b)形質転換大腸菌E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102(FERM BP−8201)が保持するプラスミドに挿入されているDNAによりコードされるアミノ酸配列を含むことからなる蛋白質。
  7. 請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のDNAを含む組換えプラスミド。
  8. 発現ベクターであることを特徴とする、請求項7記載の組換えプラスミド。
  9. 形質転換大腸菌E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102(FERM BP−8201)により保持される組換えプラスミド。
  10. 請求項7乃至9のいずれか一つに記載の組換えプラスミドで形質転換された宿主細胞。
  11. 原核細胞であることを特徴とする、請求項10記載の宿主細胞。
  12. 真核細胞であることを特徴とする、請求項10記載の宿主細胞。
  13. 哺乳動物由来の細胞であることを特徴とする、請求項12記載の宿主細胞。
  14. 形質転換大腸菌E.coli pcDNA3.1−cerk2 SANK 71102(FERM BP−8201)であることを特徴とする請求項10記載の宿主細胞。
  15. 請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質と特異的に結合する抗体。
  16. ポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項15記載の抗体。
  17. モノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項15記載の抗体。
  18. ヒト化抗体、キメラ抗体およびヒト抗体から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項15または17に記載の抗体。
  19. 下記の工程1)および2)を含む、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質の製造方法:
    1)請求項11乃至請求項14のいずれか一つに記載の宿主細胞を、脂質キナーゼ活性を有する蛋白質の産生が可能な条件下で培養する工程;
    2)1)における培養により得られた培養物から、脂質キナーゼ活性を有する蛋白質を回収する工程。
  20. 請求項19に記載の方法により得られる蛋白質。
  21. 下記の工程1)乃至3)を含む、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質の精製方法:
    1) カルモジュリンを含まない溶媒に溶解させた請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質を含む試料を、カルモジュリンを固定させた樹脂に接触させる工程;
    2) 該樹脂をカルモジュリンを含まない溶媒で洗浄する工程;
    3) 2)で洗浄された樹脂から、EGTAまたはEDTAを含む溶媒を用いて脂質キナーゼ活性を有する蛋白質を溶出させる工程。
  22. 下記の工程1)および2)を含む、試料中の請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質の検出方法;
    1)請求項15乃至請求項18のいずれか一つに記載の抗体と試料を混合する工程;
    2)該抗体と請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質の複合体を検出する工程。
  23. 下記の工程1)および2)を含む、試料中の請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質をコードするmRNAの検出方法;
    1)試料からmRNAを抽出する工程;
    2)1)で抽出されたmRNA中の請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質をコードするmRNA量を測定する工程。
  24. 下記の工程1)および2)を含む、試料中の請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質の検出方法;
    1)試料、脂質基質およびリン酸供給物質を混合する工程;
    2)脂質基質のリン酸化の程度を測定する工程。
  25. 下記の工程1)および2)を含む、脂質キナーゼ活性を測定する方法:
    1)脂質基質、リン酸供給物質および下記のa)乃至c)から選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含む試料を混合する工程;
    a)請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質;
    b)該蛋白質を発現する細胞;
    c)該細胞の破砕液;
    2)脂質基質のリン酸化の程度を検出する工程。
  26. 下記の工程1)乃至3)を含む、脂質キナーゼ活性を調節する活性を有する物質をスクリーニングする方法:
    1)被験物質の存在下または非存在下で、脂質基質、リン酸供給物質および下記のa)乃至c)から選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含む試料を混合させる工程;
    a)請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質;
    b)該蛋白質を発現する細胞;
    c)該細胞の破砕液;
    2)被験物質の存在下および非存在下における脂質基質のリン酸化の程度を検出し、比較する工程;
    3)被験物質存在下における該リン酸化の程度が、被験物質非存在下における該リン酸化の程度よりも大きい場合または小さい場合、該被験物質を選択する工程。
  27. 下記の工程1)乃至3)を含む、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化から選択される一つ若しくは二つ以上の疾患の治療または予防効果を有する物質をスクリーニングする方法:
    1)被験物質の存在下または非存在下で、脂質基質、リン酸供給物質および下記のa)乃至c)から選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含む試料を混合させる工程;
    a)請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質;
    b)該蛋白質を発現する細胞;
    c)該細胞の破砕液;
    2)被験物質の存在下および非存在下における脂質基質のリン酸化の程度を検出し、比較する工程;
    3)被験物質存在下における該リン酸化の程度が、被験物質非存在下における該リン酸化の程度よりも大きい場合、該被験物質を選択する工程。
  28. 下記の工程1)乃至3)を含む、癌および癌の転移のいずれか一つ若しくは両方の疾患の治療または予防効果を有する物質をスクリーニングする方法:
    1)被験物質の存在下または非存在下で、脂質基質、リン酸供給物質および下記のa)乃至c)から選択されるいずれか一つまたは二つ以上を含む試料を混合させる工程;
    a)請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質;
    b)該蛋白質を発現する細胞;
    2)被験物質の存在下および非存在下における脂質基質のリン酸化の程度を検出し、比較する工程;
    3)被験物質存在下における該リン酸化の程度が、被験物質非存在下における該リン酸化の程度よりも小さい場合、該被験物質を選択する工程。
  29. 脂質基質が、セラミドであることを特徴とする、請求項24乃至請求項28のいずれか一つに記載の方法。
  30. 下記の工程1)乃至3)からなる、脂質キナーゼ活性を調節する物質をスクリーニングする方法:
    1)被験物質の存在下または非存在下で、リン酸供給物質および下記のa)およびb)から選択されるいずれか一つまたは両方を含む試料を混合させる工程;
    a)請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞;
    b)a)に記載の細胞の破砕液;
    2)該細胞に由来する脂質のリン酸化を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
    3)被験物質存在下における該リン酸化の程度が、被験物質非存在下における該リン酸化の程度よりも大きい場合または小さい場合、該被験物質を選択する工程。
  31. 下記の工程1)乃至3)を含む、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化から選択される一つ若しくは二つ以上の疾患の治療または予防効果を有する物質をスクリーニングする方法:
    1)被験物質の存在下または非存在下で、リン酸供給物質および下記のa)およびb)から選択されるいずれか一つまたは両方を含む試料を混合させる工程;
    a)請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞;
    b)a)に記載の細胞の破砕液;
    2) 該細胞に由来する脂質のリン酸化を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
    3)被験物質存在下における該リン酸化の程度が、被験物質非存在下における該リン酸化の程度よりも大きい場合、該被験物質を選択する工程。
  32. 下記の工程1)乃至3)を含む、癌および癌の転移のいずれか一つ若しくは両方の疾患の治療または予防効果を有する物質をスクリーニングする方法:
    1)被験物質の存在下または非存在下で、リン酸供給物質および下記のa)およびb)から選択されるいずれか一つまたは両方を含む試料を混合させる工程;
    a)請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞;
    b)a)に記載の細胞の破砕液;
    2) 該細胞に由来する脂質のリン酸化を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
    3)被験物質存在下における該リン酸化の程度が、被験物質非存在下における該リン酸化の程度よりも小さい場合、該被験物質を選択する工程。
  33. 脂質基質が標識されていることを特徴とする、請求項23乃至請求項29のいずれか一つに記載の方法。
  34. リン酸供給物質が32P−γ−ATPであることを特徴とする請求項23乃至請求項32のいずれか一つに記載の方法。
  35. 下記の工程1)乃至3)を含む、試料中の、脂質キナーゼ活性によりリン酸化される物質を検出する方法:
    1)被験試料の存在下および非存在下で、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質、標識されたセラミドおよびリン酸供給物質を混合する工程;
    2)セラミドのリン酸化の程度を検出し、該被験試料の存在下と非存在下で比較する工程;
    3)該被験試料の非存在下に比べ、該被験試料の存在下において該リン酸化の程度が小さい場合、該被験試料中に脂質キナーゼ活性によりリン酸化される物質が含まれると判断する方法。
  36. 請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質を有効成分として含有する医薬組成物。
  37. 請求項15乃至請求項18のいずれか一つに記載の抗体を有効成分として含む医薬組成物。
  38. 請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の一本鎖または二本鎖DNAを有効成分として含む医薬組成物。
  39. 請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載のDNAのアンチセンス配列からなり、かつ、10乃至50塩基からなることを特徴とする一本鎖DNA、RNAまたはsiRNAを有効成分として含む医薬組成物。
  40. 神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症、動脈硬化、癌および癌の転移から選択される一つ若しくは二つ以上の疾患の治療および/または予防剤であることを特徴とする、請求項36乃至39のいずれか一つに記載の医薬組成物。
  41. 下記のa)乃至c)から選択される一つもしくは複数を含む脂質キナーゼの発現検出用キット:
    a)請求項15乃至請求項18のいずれか一つに記載の抗体;
    b)i)およびii)にPCR用プライマーの組であり、且つ、請求項1乃至3のいずれか一つに記載のDNAの有するヌクレオチド配列からなるヌクレオチドまたはその断片を増幅することができることを特徴とする、一組のPCR用プライマー;
    i)配列表の配列番号1に記載のヌクレオチド配列からなる一本鎖DNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つ、10乃至50塩基からなる一本鎖DNA;
    ii)配列表の配列番号1に記載のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなる一本鎖DNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つ、10乃至50塩基からなる一本鎖DNA;
    c)配列表の配列番号1に記載のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列からなる一本鎖DNAとハイブリダイズし、且つ、20乃至1000塩基からなる一本鎖DNAであることを特徴とするプローブ。
  42. 下記の工程1)乃至3)を含む、被験個体における神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化から選択される一つまたは二つ以上の疾患に罹患するリスクの検出方法;
    1)被験個体由来の試料(被験試料という)および正常個体由来の試料(対照試料という)中の請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質の含有量を測定する工程;
    2)該含有量を被験試料と対照試料で比較する工程;
    3)該含有量が、対照試料よりも被験試料において少ない場合、被験個体が神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化から選択される一つまたは二つ以上の疾患に罹患するリスクが高いと判断する工程。
  43. 下記の工程1)乃至3)を含む、被験個体における、癌および癌の転移から選択される一つまたは両方の疾患に罹患するリスクの検出方法;
    1)被験個体由来の試料(被験試料という)および正常個体由来の試料(対照試料という)中の請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質の含有量を測定する工程;
    2)該含有量を被験試料と対照試料で比較する工程。
    3)該含有量が、対照試料よりも被験試料において多い場合、被験個体が癌および癌の転移から選択される一つまたは両方の疾患に罹患するリスクが高いと判断する工程。
  44. 下記の工程1)乃至4)を含む、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質の発現を調節する活性を有する物質をスクリーニングする方法:
    1)被験物質の存在下または非存在下で、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞を培養する工程;
    2)培養上清を分取するかまたは細胞破砕液を調製し、試料液とする工程;
    3)該試料液中の、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質量を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
    4)被験物質存在下における該蛋白質量が、被験物質非存在下における該蛋白質量よりも大きい場合または小さい場合、該被験物質を選択する工程。
  45. 下記の工程1)乃至4)を含む、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化から選択される一つ若しくは二つ以上の疾患の治療または予防効果を有する物質をスクリーニングする方法:
    1)被験物質の存在下または非存在下で、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞を培養する工程;
    2)培養上清を分取するかまたは細胞破砕液を調製し、試料液とする工程;
    3)該試料液中の、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質量を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
    4)被験物質存在下における該蛋白質量が、被験物質非存在下における該蛋白質量よりも大きい場合、該被験物質を選択する工程。
  46. 下記の工程1)乃至4)を含む、癌および癌の転移のいずれか一つ若しくは両方の疾患の治療または予防効果を有する物質をスクリーニングする方法:
    1)被験物質の存在下または非存在下で、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞を培養する工程;
    2)培養上清を分取するまたは細胞を破砕液を調製し、試料液とする工程;
    3)該試料液中の、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質量を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
    4)被験物質存在下における該蛋白質量が、被験物質非存在下における該蛋白質量よりも小さい場合、該被験物質を選択する工程。
  47. 下記の工程1)乃至4)を含む、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質をコードするmRNA発現調節活性を有する物質をスクリーニングする方法:
    1)被験物質の存在下または非存在下で、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞を培養する工程;
    2)培養細胞からmRNAを抽出する工程;
    3)該mRNA中の、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質をコードするmRNA量を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
    4)被験物質存在下における該蛋白質をコードするmRNA量が、被験物質非存在下における該蛋白質をコードするmRNA量よりも大きい場合または小さい場合、該被験物質を選択する工程。
  48. 下記の工程1)乃至4)を含む、神経性疾患、腎臓疾患、炎症、先天性免疫不全症候群、2型糖尿病、肥満、敗血症および動脈硬化から選択される一つ若しくは二つ以上の疾患の治療または予防効果を有する物質をスクリーニングする方法:
    1)被験物質の存在下または非存在下で、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞を培養する工程;
    2)培養細胞からmRNAを抽出する工程;
    3)該mRNA中の、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質をコードするmRNA量を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
    4)被験物質存在下における該蛋白質をコードするmRNA量が、被験物質非存在下における該蛋白質をコードするmRNA量よりも大きい場合、該被験物質を選択する工程。
  49. 下記の工程1)乃至4)を含む、癌および癌の転移のいずれか一つ若しくは両方の疾患の治療または予防効果を有する物質をスクリーニングする方法:
    1)被験物質の存在下または非存在下で、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質を発現する細胞を培養する工程;
    2)培養細胞からmRNAを抽出する工程;
    3)該mRNA中の、請求項4乃至請求項6のいずれか一つに記載の蛋白質をコードするmRNA量を測定し、測定結果を被験物質の存在下と非存在下で比較する工程;
    4)被験物質存在下における該蛋白質をコードするmRNA量が、被験物質非存在下における該蛋白質をコードするmRNA量よりも小さい場合、該被験物質を選択する工程。
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