JP2004516012A - 新規シグレック類およびそれらの用途 - Google Patents

新規シグレック類およびそれらの用途 Download PDF

Info

Publication number
JP2004516012A
JP2004516012A JP2002514161A JP2002514161A JP2004516012A JP 2004516012 A JP2004516012 A JP 2004516012A JP 2002514161 A JP2002514161 A JP 2002514161A JP 2002514161 A JP2002514161 A JP 2002514161A JP 2004516012 A JP2004516012 A JP 2004516012A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
siglec
bms
protein
sequence
nucleic acid
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002514161A
Other languages
English (en)
Inventor
マリンダ・ロングファー
ハン・チャン
ジーナ・ホイットニー
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Bristol Myers Squibb Co
Original Assignee
Bristol Myers Squibb Co
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Bristol Myers Squibb Co filed Critical Bristol Myers Squibb Co
Publication of JP2004516012A publication Critical patent/JP2004516012A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/705Receptors; Cell surface antigens; Cell surface determinants
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2319/00Fusion polypeptide

Abstract

本発明は、CD33に対してタンパク質相同性を持つシアロアドヘシンサブグループの新しいメンバーであるSIGLEC−BMS配列のタンパク質、ペプチド断片、核酸分子およびその断片、相補配列、対立遺伝子型、ホモログ、抗体および変異体ならびにこれらの分子の使用方法を提供する。

Description

【0001】
本願は、2000年7月21日に出願された米国仮特許出願第60/220,139号に基づき、前記仮特許出願の内容は参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する。本願では種々の刊行物に言及する。それら刊行物の開示内容は参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、本明細書で「SIGLEC−BMS」と呼ぶシアロアドヘシンヌクレオチド配列、および新規SIGLECポリペプチド、ならびにそれらの用途に関する。
【0003】
(発明の背景)
免疫グロブリン様分子のスーパーファミリーに属する一群のシアル酸依存性接着分子が記載されている(Kelm,S.ら,1998,Eur.J.Biochem. 255:663−672)。このファミリーの記載には「Siglec(シグレック)」という用語が採用されている(ialic acid−binding Ig−related lectins)。現在までに、このグループのメンバーには、Siglec−1(シアロアドヘシン)、Siglec−2(CD22)、Siglec−3(CD33)、Siglec−4(ミエリン関連糖タンパク質またはMAG)、Siglec−4b(シュワン細胞ミエリンタンパク質またはSMP)、Siglec−5(OB−BP2)、Siglec−6(OB−BP1、CD33L)、Siglec−7、およびSiglec−8が含まれている(表1)。Siglecグループのタンパク質メンバーの生物学的活性はほとんどわかっていない。しかし、Siglecタンパク質は、例えば造血、ニューロン発達および免疫などの多様な生物学的プロセスに関与すると考えられる(Vinson,M.ら,1996,前掲)。また、これらのタンパク質は、シアリル化された(sialyated)細胞表面グリカンを認識することによって細胞接着/細胞シグナリングを媒介することも、研究によって示唆されている(Kelm,S.ら,1996,Glycoconj.J. 13:913−926;Kelm,S.ら,1998,Eur.J.Biochem. 255:663−672;Vinson,M.ら,1996,J.Biol.Chem. 271:9267−9272)。
【0004】
【表1】
Siglecタンパク質ファミリーのメンバーおよびそれらの分布
Figure 2004516012
Figure 2004516012
(1)Crockerら,1994,EMBO J. 13:4490−4503;Crockerら,1997,Glycoconjugate J. 14:601−609;Vinsonら,1996,J.Biol.Chem. 271:9267−9272;Kelmら,1998,Eur.J.Biochem. 255:663−672;Barnesら,1999,Blood 93:1245−1252
(2)Kelmら,1998,Eur.J.Biochem. 255:663−672
(3)Freemanら,1995,Blood 85:2005−2012;Kelmら,1998,Eur.J.Biochem. 255:663−672;Taylorら,1999,J.Biol.Chem. 274:11505−11512
(4)Kelmら,1998,Eur.J.Biochem. 255:663−672
(5)Kelmら,1998,Eur.J.Biochem. 255:663−672
(6)Cornishら,1998,Blood 92:2123−2132
(7)Takeiら,1997,Cytogen.Cell.Genet. 78:295−300;Patelら,1999,J.Biol.Chem. 274:22729−22738
(8)Nicolら,1999,J.Biol.Chem. 274:34089−34095
(9)Floydら,2000,J.Biol.Chem. 275:861−866。
【0005】
既知のSiglecタンパク質は多様な造血細胞タイプで発現されるにもかかわらず、いずれも共通する類似構造(N末端Vセットドメイン(膜遠位)に続いて様々な数の細胞外C2セットドメイン、膜貫通ドメインおよび短い細胞質テールを含む構造)を持っている(図1)。また、末端Vセットドメインは、Igスーパーファミリーのメンバーでは他に類のない珍しいシート内ジスルフィド橋を持つ(Williams,A.F.およびBarclay,A.N.,1988,Annu.Rev.Immunol. 6:381−405;Williams,A.F.ら,1989,Cold Spring Harbor Symp.Quant.Biol. 54:637−647;Pedraza,L.ら,1990,J.Cell.Biol. 111:2651−2661)。
【0006】
切断型突然変異体(Nath,D.ら,J.Biol.Chem. 270:26184−26191)、部位特異的突然変異誘発(Vinson,M.ら,1996,J.Biol.Chem. 271:9267−9272;Van der Merwe,P.a.ら,1996,J.Biol Chem. 271:9273−9280)、X線結晶構造解析およびNMR(Crocker,P.R.ら,1997,Glycoconjugate J. 14:601−609で論じられている)を含む様々な研究アプローチの結果、既知のSiglecタンパク質のN末端VセットドメインのGFCC’C’’面はシアル酸と相互作用することが、明確に証明されている。したがって、Vセットドメインはシアル酸と相互作用することによって細胞−細胞接着を媒介する。特に、Vセットドメインのアルギニン残基は、シアル酸への結合にとって重要なアミノ酸残基である(Vinson,M.ら,1996,前掲)。
【0007】
既知のSiglecタンパク質のリガンドとされているのは、糖またはシアル酸を含むように修飾された他の細胞上の、または場合によって同じ細胞上の、糖タンパク質または糖脂質である(表1)。天然シアル酸(Sia)は約40種類あり、細胞表面糖タンパク質の構造多様性を増加させている。最も一般的なシアル酸は、糖タンパク質および糖脂質上の他の糖、例えばGal、GalNAc、GlcNAcおよびSia自体に結合して末端位に存在するNeu5Ac、Neu9Ac2およびNeu5Gcである。ある種の細胞タイプにおけるシアル酸の発現パターンは、シアリルトランスフェラーゼの特異的発現によって制御されると推測されている(Paulson,J.C.ら,1989 J.Biol.Chem. 264:10931−10934)。Siglecタンパク質は末端シアル酸を認識するだけでなく、それらが結合している末端手前の糖に基づいて、これらの部分の前後関係も認識すると考えられる(Kelm,S.ら,1996,Glycoconj.J. 13:913−926)。
【0008】
Siglecは、シアル酸のタイプと末端近くの糖へのその結合とに明瞭な特異性を持つシアル酸依存性レクチンとして機能することにより、細胞−細胞接着を媒介すると考えられる(Kelm,S.,1994,前掲;Powell,L.D.ら,1994,J.Biol.Chem. 269:10628−10636;Sjoberg,E.ら,1994,J.Cell Biol. 126:549−562;Collins,B.,E.ら,1997,J.Biol.Chem. 272:1248−1255)。例えば、Siglec−1を発現させる細胞は、糖タンパク質および糖脂質上の配列、Neu5Acα2,3Galβ1,3GalNAcと、Neu5Acα2,3Galβ1,3(4)GlcNAcを認識する(Kelm,S.ら,1994,Curr.Biol. 4:965:72;Crocker,P.R.ら,1991,EMBO J. 10:1661)。
【0009】
Siglecは、Siglecタンパク質が同じ細胞上の複合糖質を認識するシス相互作用にも関与すると推測されている。このようなシス相互作用は、CD22(Braesch−Andersen,S.およびStamenkovic,I.,1994,J.Biol.Chem. 269:11783−11786;Hanasaki,K.ら,1995,J.Biol.Chem. 270:7533−7542)、CD33(Freeman,S.D.ら,1995,前掲)およびMAG(Freeman,S.D.ら,1995,前掲で論じされている)の細胞間接着を調節すると考えられる。
【0010】
いくつかのSiglecタンパク質の細胞質テールのアミノ酸配列から、それらは細胞内シグナリングに関与することが強く示唆される。例えば、Siglec−2は細胞質ドメインに6つのチロシンを持ち、そのうちの2つは活性化を媒介するITAM(Immunotyrosine−based activation motif、イムノチロシン型活性化モチーフ)モチーフ内にあり、4つは阻害を媒介するITIM(Immunotyrosine−based inhibition motif、イムノチロシン型阻害モチーフ)モチーフ内にある(Taylor,V.ら,1999,J.Biol.Chem. 274:11505−11512)。ITAMモチーフチロシンがリン酸化されるとSrcの動員が可能になり、ITIMモチーフチロシンがリン酸化されるとSHP−1およびSHP−2の動員が可能になる。Siglec−3は2つのITIMを持ち、これらがリン酸化されるとSHP−1およびSHP−2が動員される(Taylor,V.ら,1999,前掲)。Siglec−6も細胞質テール内にSLAM様シグナリングモチーフを持つと推定されている。SLAMはignaling ymphocyte ctivation oleculeの頭字語である(Patel,N.ら,1999,J.Biol.Chem. 274:22729−22738)。
【0011】
Siglecは他にも生物学的活性を持つと推測されている。炎症細胞浸潤物が組織を損傷し炎症誘発物質を放出することによって喘息および他のアレルギー疾患の発生に重要な役割を果たすことを示す証拠は増えつつある。炎症部位では活性化された好酸球、好中球、マクロファージ、マスト細胞およびリンパ球がその数を増し、これらの細胞はそれぞれ、炎症応答全体を調節することができる(Busse,W.W.,1998,J.Allergy Clin.Immunol. 102:S17−22)。好酸球はアレルゲンによる炎症部位に顕著に認められることから、喘息およびアレルギーでは好酸球は特に興味深い(Kroegel,C.ら,1994,Eur.Respir J. 7:519−543;Haczku,A.,1998,Acta.Microbiol.Immunol.Hung. 45:19−29;Boyce,J.A.,1997,Allergy Asthma Proc. 18:293−300)。好酸球は、毒性顆粒タンパク質、炎症誘発性脂質媒介物質およびサイトカイン類の放出により、喘息における気道リモデリングおよび反応性亢進に重要な因子として関連づけられている(Durham,S.R.,1998,Clin.Exp.Allergy 28 Suppl.2:11−6)。
【0012】
CD33(例えばSiglec−3)は、他のSiglecとの構造類似性およびシアル酸への結合能力に基づいて、Siglecファミリーのメンバーであるとみなされる。CD33(Siglec−3;67kDa、EMBL/GENBANKのヒト配列M23197、EMBL/GENBANKのマウス配列S71345/S71403)は最初はヒト骨髄性細胞から単離された(Andrews,R.G.ら,1983,Blood 62:124;Griffin,J.D.ら,1984,Leuk Res.8:521;Peiper,S.C.,1988,Blood 72:314−321;Peirelli,L.ら,1993,Br.J.Haematol. 84:24)。他にもSAF−2(EP0924297A1)およびSAF−4(WO9853840)ならびにAF135028(Genbank)などのCD33ホモログが同定されている。
【0013】
ヒトcDNAクローン(Simmons,D.L.およびSeed,B.,1988,J.Immunol. 141:2797)およびネズミcDNAクローン(Tchilian,E.Z.ら,1994,Blood 83:3188)の配列から、CD33はCセットドメインを2つしか持たないSiglec(そのため既知のSiglec中最小のSiglec)をコードすると予測される。CD33は、O−グリカン中のNeuAcα2,3Galβ1,3GalNAc、およびN−グリカン中のNeuAcα2,3Falβ1,3(4)GlcNAcに結合する(Freeman,S.ら,1995,Blood 85:2005−2012)。CD33を発現させる細胞は、適切なシアロ複合糖質を持つ細胞に結合するには、脱シアリル化を受けなければならないことから、阻害的シス相互作用によって接着機能が調節または遮断されることが示唆される(Freeman,S.ら,1995,前掲)。さらに、CD33は、Vセットドメインに保存されたアルギニン残基を持っている。
【0014】
CD33は、骨髄性白血病をリンパ性白血病と区別するための臨床上重要な診断マーカーである(Griffin,J.D.ら,Leuk.Res. 8:521;Matutes,E.ら,1985,Haematol.Oncol. 3:179;Bain,B.J.編「Leukaemia Diagnosis:A Guide to the FAB Classification」(1990)の61頁(英国ロンドン、Gower Medical))。CD33発現は骨髄単球前駆細胞、単球およびマクロファージに関連づけられていることから、CD33は骨髄細胞分化の調節に役割を果たすことが示唆される(Peiper,S.C.ら,前掲;Peirelli,L.ら,前掲;Andrews,R.G.ら,前掲;Griffin,J.D.ら,前掲;Nakamura,Y.ら,1994,Blood 83:1442;Bernstein,I.D.ら,1987,J.Clin.Invest. 79:1153)。
【0015】
CD33に似た構造を持つSIGLECタンパク質をコードすると予測される配列が過去に単離され、特徴づけられている。CD33に似た配列には、例えば、ヒト胎盤cDNAライブラリーから単離された配列であって、選択的スプライシングの結果という関係にあると推測されるCD33L1およびCD33L2(Takei,Y.ら,1997,Cytogent.Cell.Genet.78:295−300)、ヒト活性化単球ライブラリー(ESTライブラリー番号pHMQCD14)から単離された配列であって、ほぼ同じ配列を持つことから、レプチン結合タンパク質OB−BP2(Genbankアクセッション番号M23197)を発現させる遺伝子と同じ遺伝子から発現されると推測されるSiglec−5(Cornish,A.L.ら,1998,Bloo 92:2123−2132)、およびTF−1ヒト赤白血球細胞株から単離されたSiglec−6(OB−BP1)(Patel,N.ら,1999,J.Biol.Chem. 274:22729−22738)。Siglec−7およびSiglec−8の配列も最近になって記載されている(Nicoll,G.ら,1999,J.Biol.Chem. 274:34089−34095;Floyd,H.ら,2000,J.Biol.Chem. 275:861−866)。
【0016】
本発明は、ヌクレオチド配列(例えばSiglecBMSL3a、−L3b、−L3c、−L3d、−L4a、−L5a、および−L5b)の発見、ならびにCD33/Siglec−3に対して構造相同性を有し、前記ヌクレオチド配列によってコードされる、新規Siglec−タンパク質に関する。
【0017】
(発明の概要)
本発明は、本発明のSIGLEC−BMSタンパク質をコードする単離された核酸分子およびそれらの使用方法を提供する。例えば、本発明のヌクレオチド配列には、それぞれ図2A、3A、4A、5A、7A、8A、9A、および6Aに記載のSiglecBMSL3a、−L3b、−L3c、−L3d、−L4a、−L5a、−L5b、および−L3995が含まれる。
【0018】
本発明はSIGLEC−BMSタンパク質分子も提供する。本発明のSIGLEC−BMSの具体的態様には、それぞれ図2B、3B、4B、5B、7B、8B、9B、および6Bに記載のSIGLEC−BMS−L3a、−L3b、−L3c、−L3d、−L4a、−L5a、−L5b、および−L3−995−2が含まれる。
【0019】
本発明の核酸分子は、SiglecBMS配列の一部分、例えばオリゴヌクレオチド、またはその断片を包含する。本発明の核酸分子は、ペプチド核酸(PNA)および本発明の核酸分子と反応するアンチセンス分子も包含する。
【0020】
本発明は、様々な型のSiglecBMS遺伝子および転写物、例えば異なる対立遺伝子型、多型型、選択的前駆体転写物、成熟転写物、および選択的スプライス転写物などに相当する種々のヌクレオチド配列も包含する。さらに、SiglecBMS配列の使用コドン変異体である組換え核酸分子も提供する。
【0021】
本発明は、組換え発現ベクター中のSiglecBMSをコードするポリヌクレオチド、および前記発現ベクターを含む宿主−ベクター系を包含する。一態様として、本発明のSiglecBMS配列を含む組換えベクターを導入した種々の宿主細胞を提供する。
【0022】
本発明は、単離されて実質的に精製されたSiglecBMSヌクレオチド配列を、核酸プローブおよびプライマーとして使用する方法、抗SIGLEC−BMS抗体を産生させるための抗原としてSIGLEC−BMSポリペプチドを使用する方法、およびSIGLEC−BMSリガンドを取得および検出するためにSIGLEC−BMSポリペプチドを使用する方法を提供する。SiglecBMSプローブおよびプライマー、ならびに抗SIGLEC−BMS抗体は、生物学的試料中に存在する天然SiglecBMSヌクレオチド配列および天然SIGLEC−BMSタンパク質配列を検出するための診断アッセイおよびキットに役立つ。
【0023】
また、本発明は、本発明のSiglecBMSヌクレオチド配列と反応し、よってゲノム配列の発現を乱すことができる、アンチセンス分子に関する。
【0024】
また、本発明は、SIGLEC−BMSタンパク質のアゴニスト、抗体、アンタゴニストまたは活性阻害剤などの治療薬に関する。これらの組成物は、SIGLEC−BMSタンパク質の存在または欠乏に関係する状態の予防または処置に有用である。
【0025】
さらに本発明は、少なくとも1つのSIGLEC−BMSタンパク質と医薬的に許容できる担体とを含む、免疫系疾患、例えば喘息、白血病、または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患を処置するための医薬組成物を提供する。さらに本発明は、少なくとも1つのSIGLEC−BMSタンパク質を認識する抗体またはその抗体断片を許容できる担体中に含む医薬組成物を提供する。
【0026】
免疫系疾患の治療に役立つ医薬組成物を含むキットも本発明に包含される。一態様として、1または複数の本発明の医薬組成物を含むキットは、免疫系疾患、例えば喘息、白血病、または他のアレルギー性もしくは炎症性疾患を処置するために使用される。
【0027】
(詳細な説明)
本願発明をさらに詳しく理解することができるように、以下の説明を行なう。
【0028】
本明細書で使用する「Siglec−BMS」という用語は、少なくとも1つのIg様ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質テールを含む構造類似性を共有するシアル酸結合性Ig様レクチンのタンパク質ファミリーを指す。通例、Ig様ドメインは細胞外ドメインであり、Ig(V)ドメインとIg(C)ドメインとを含む。SIGLEC−BMSタンパク質の例には、L3a、L3b、L3c、L3d、L3−995−2、L4a、L5a、およびL5bなどがあるが、これらに限るわけではない。
【0029】
本明細書で使用する「Siglec−10」という用語は、複数のIg様ドメイン、膜貫通ドメイン、および2つのITIMシグナリングモチーフを持つ細胞質テールを含む、CD33関連Siglec類に対する構造類似性を共有するシアル酸結合性Ig様レクチンのタンパク質ファミリーを指す。完全長Siglec−10タンパク質は、5つのIg様ドメイン(Ig−D1、Ig−D2、Ig−D3、Ig−D4およびIg−D5)を含み、本願ではこれをSIGLEC−BMS−L3と呼ぶ。完全長Siglec−10タンパク質は、SIGLEC−BMS−L3−995−2とも呼ばれる。本願では、Siglec−10、SIGLEC−BMS−L3、およびSIGLEC−BMS−L3−995−2という用語を可換的に使用する。
【0030】
本明細書で使用する「単離された」という用語は、特定の核酸もしくはポリペプチドまたはその断片であって、夾雑物(すなわち当該特定の核酸またはポリペプチド分子とは異なる物質)が当該特定の核酸またはポリペプチドから分離されているものを意味する。
【0031】
本明細書で使用する「精製された」という用語は、特定の核酸もしくはポリペプチドまたはその断片であって、実質的に全ての夾雑物(すなわち当該特定の核酸またはポリペプチド分子とは異なる物質)が当該特定の核酸またはポリペプチドから分離されているものを意味する。
【0032】
本明細書では、第1のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列がそれぞれ第2の基準ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列と比較して全く同じである場合に、第1のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列はそれぞれ第2の基準ヌクレオチド配列またはアミノ酸配列に対して配列「同一性」を持つという。
【0033】
本明細書では、第1のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列を第2の基準配列と比較して配列の相違がほとんど無い場合(すなわち第1配列と第2配列とがほぼ同一である場合)に、第1のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、第2の基準配列に「類似している」という。例えば、2つの配列間で異なるヌクレオチドまたはアミノ酸の割合が約60%〜99.99%である場合、それら2つの配列は互いに類似していると見なされる。
【0034】
本明細書で使用する「相補的」という用語は、水素結合によって会合して二本鎖核酸分子を形成する能力を有するプリンヌクレオチドおよびピリミジンヌクレオチドを持つ核酸分子を指す。塩基対グアニンおよびシトシン、アデニンおよびチミン、ならびにアデニンおよびウラシルは、相補性によって関連づけられる。相補的という用語は、2つの一本鎖核酸分子からなる全ての塩基対、または折りたたまれた一本鎖核酸からなる全ての塩基対に適用される。
【0035】
SIGLEC−BMSコード核酸分子の「断片」という用語は、SIGLEC−BMSタンパク質の生物学的活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列の一部を指す。したがって、SiglecBMS分子の断片は、SIGLEC−BMSタンパク質の生物学的活性を有するペプチドをコードし、SIGLEC−BMSタンパク質の全アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列よりも、ヌクレオチド数が少ないヌクレオチド配列である。
【0036】
SIGLEC−BMSポリペプチド分子の「断片」という用語は、SIGLEC−BMSポリペプチドの生物学的活性を有するポリペプチドの一部を指す。
【0037】
本明細書で使用するSIGLEC−BMSの「生物学的活性」という用語は、当該タンパク質が細胞接着分子として機能すること、および/または当該SIGLEC−BMSタンパク質が抗SIGLEC−BMS抗体と結合する場合は、当該タンパク質が抗SIGLEC−BMS抗体の産生を誘発することを意味する。
【0038】
本明細書で使用する「異種」という用語は、非SIGLEC−BMSタンパク質またはその断片を指す。異種分子は、発現されたSIGLEC−BMS遺伝子産物の単離および/または精製を容易にするために、SIGLEC−BMSタンパク質に融合(例えば連結または接合)される。異種分子の例には、ヒト免疫グロブリン定常領域、Hisタグ配列、またはグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)配列などがあるが、これらに限るわけではない。
【0039】
本発明の分子
本発明は、以下に詳述するその諸側面として、タンパク質、抗体、核酸分子、組換えDNA分子、形質転換宿主細胞、製造方法、アッセイ、治療および診断方法、ならびに医薬組成物、治療組成物または診断組成物であって、いずれもSiglec−BMSタンパク質またはそれらをコードする核酸が関係するものを提供する。
【0040】
便宜上、SiglecBMS(例えば、−L3a、−L3b、−L3c、−L3d、−L3995、−L4a、−L5a、および−L5b)のヌクレオチド配列を、「SiglecBMS」または「本発明のSiglecヌクレオチド配列」と総称する。また、SiglecBMSによってコードされるタンパク質には「SIGLEC−BMS−L3a、−L3b、−L3c、−L3d、−L3−995−2、−L4a、−L5a、および−L5bタンパク質」が含まれ、これらを「SIGLEC−BMSタンパク質」または「本発明のSIGLECタンパク質」または「本発明のタンパク質」と総称する。
【0041】
本発明の核酸分子
SIGLEC−BMSタンパク質をコードする核酸分子
本発明は、Siglecサブグループのタンパク質に共通する類似の構造的特徴を持つ新規ポリペプチドをコードする核酸分子(ここではこれらをSiglecBMSヌクレオチド配列と呼ぶ)の発見を開示する。Siglecサブグループに共通する構造的特徴にはIg様ドメインが含まれ、このIg様ドメインは細胞外にあって、Cセットドメインと、B鎖およびE鎖間に珍しいシート内ジスルフィド橋を持つVセットドメインとを含む(A.F.WilliamsおよびA.N.Barclay,1988,Annu.Rev.Immunol. 6:381−405;A.F.Williamsら,1989,Cold SpringHarbor Symp.Quant.Biol. 54:637−647;L.Pedrazaら,1990,J.Cell biol. 111:2651−2661)。SiglecBMSのヌクレオチド配列は、それぞれ2つ(例えば−L4、−L5a、および−L5b)ないし3つ(例えば−L3a、−L3b、−L3c、および−L3d)のCセットドメインを持ちうるポリペプチドをコードする。
【0042】
特定の態様では、新規ヌクレオチド配列は、それぞれ図2A、3A、4A、5A、7A、8A、9A、および6Aに示すように、L3aL3bL3cL3dL4L5aL5b、およびL3995と呼ばれる(配列番号1〜7および27)。これらのヌクレオチド配列は、SIGLEC−BMSタンパク質および/またはその断片をコードし、コードされるタンパク質は生物学的活性を示し、例えば細胞接着分子として機能する。
【0043】
例えば、L3aをコードする単離されたSiglec核酸は、図2Aに示す配列の+12位にあるコドンGGCから始まって、+1760位のコドンCCAで終わっている。L3bをコードする単離されたSiglec核酸は、図3Aに示す配列の+3位にあるコドンGATから始まって、+1868位のコドンCAAで終わっている。L3cをコードする単離されたSiglec核酸は、図4Aに示す配列の+12位にあるコドンGGAから始まって、+1736位のコドンCAAで終わっている。L3dをコードする単離されたSiglec核酸は、図5Aに示す配列の+2位にあるコドンCCCから始まって、+1291位のコドンATGで終わっている。L3をコードする単離されたSiglec核酸は、図6Aに示す配列の+1位にあるコドンATGから始まって、+2091位のコドンCAAで終わっている。L4aをコードする単離されたSiglec核酸は、図7Aに示す配列の+1位にあるコドンCTGから始まって、+1398位のコドンGGCで終わっている。L5aをコードする単離されたSiglec核酸は、図8Aに示す配列の+43位にあるコドンATGから始まって、+1431位のコドンAGAで終わっている。L5bをコードする単離されたSiglec核酸は、図9Aに示す配列の+57位にあるコドンATGから始まって、+914位のコドンAGTで終わっている。
【0044】
SiglecBMSL3SiglecBMSL4(本明細書ではL4aともいう)、SiglecBMSL5a、およびSiglecBMSL5bは一括して、2000年8月10日に、ブダペスト条約の規定に基づいて、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(バージニア州20110−2209ユニバーシティ・ブルバード10801)に寄託され、ATCC受託番号PTA−2343を与えられている。SiglecBMSL3SiglecBMSL4(本明細書ではL4aともいう)、SiglecBMSL5a、およびSiglecBMSL5bの各核酸配列を、それぞれ図6A、7A、8Aおよび9Aに記載する。これらの核酸配列は、特異的プローブへのハイブリダイゼーションまたは制限酵素解析などの標準的分離技術によって、一括寄託物から容易に分離することができる(Maniatis,T.ら「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」1989、コールドスプリングハーバー研究所、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)。
【0045】
本発明の実施にあたって、本発明のヌクレオチド配列は、SiglecBMS配列の単離された完全長または部分cDNA分子もしくはオリゴマーであることができる。SiglecBMSヌクレオチド配列は、SIGLEC−BMSタンパク質のシグナルペプチド領域、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および/または細胞内ドメインの全部または一部をコードすることができる。
【0046】
単離されたSiglecBMS配列
本発明の核酸分子は、好ましくは、核酸分子がSiglecBMS配列以外の配列を持つ夾雑核酸分子から実質的に分離されている単離型である。当業者は、核酸単離法を利用して、単離されたSiglecBMS配列を容易に得ることができる。例えばSambrookら「Molecular Cloning」(1989)を参照されたい。本発明は、組換えDNA技術または化学合成法によって製造される単離されたSiglecBMS配列も提供する。本発明は、様々な哺乳動物種、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ネズミ、ウマ、そして好ましくはヒトなどから単離されるヌクレオチド配列も提供する。
【0047】
単離された核酸分子には、DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、および関連分子、SIGLEC−BMSコード配列またはその一部に相補的な核酸分子、ならびにSIGLEC−BMSタンパク質をコードする核酸配列にハイブリダイズするものが含まれる。好ましい核酸分子は、本明細書に開示するヌクレオチド配列と同一であるかほぼ同一である(例えば類似している)ヌクレオチド配列を持つ。具体的には、ゲノムDNA、cDNA、リボザイム、およびアンチセンス分子などが考えられる。
【0048】
同一および変異SiglecBMS配列
本発明は、本明細書に開示するSiglecBMS配列と同一であるか類似するポリヌクレオチド配列を持つ単離された核酸分子を提供する。したがって、ポリヌクレオチド配列は、配列番号1〜7または27に記載する特定のSiglecBMS配列と同一であってよい。あるいは、ポリヌクレオチド配列は、本明細書に開示する配列と類似していてもよい。
【0049】
本発明の一態様は、SiglecBMSヌクレオチド配列に対して配列同一性または配列類似性を示す核酸分子、例えば図2A、3A、4A、5A、7A、8A、9Aおよび6A(配列番号1〜7または27)に示す本発明の配列と少なくとも60%〜99.9%の配列類似性または100%までの配列同一性を有する分子を提供する。好ましい態様は、本発明のSiglecBMS配列(例えば配列番号1〜7または27)に対して、約75%〜99.9%の配列類似性を示す核酸分子を提供し、より好ましい態様は約86%〜99.9%の配列類似性を有する分子を提供し、最も好ましい態様は100%の配列同一性を有する分子を提供する。
【0050】
選択的スプライスSiglecBMS配列
本発明の核酸分子は、SiglecBMSの選択的スプライス転写物に相当する核酸配列を含む。一般に、選択的スプライス転写物は、以下の段階を経て細胞中で生成することができる成熟RNA転写物である:(1)細胞はイントロン含有遺伝子から前駆体RNA転写物を転写し、この際、前駆体RNA転写物には全てのイントロン配列が含まれる;(2)細胞は異なる前駆体転写物から異なるイントロンを切り出して、それぞれ異なるイントロンを持つ不均質な成熟RNA転写物の集団をもたらす;(3)細胞は選択的スプライス転写物の一部または全部を翻訳して、同じイントロン含有遺伝子配列によってコードされる不均質なタンパク質の集団を生成する。このように細胞は、共通する前駆体転写物の選択的スプライシングの結果という関係にある不均質なSiglecBMS RNA転写物の集団を産生することができる。さらに、選択的スプライス転写物から翻訳されるSIGLEC−BMSタンパク質は、異なる生物学的活性を持ちうる。
【0051】
例えば、本発明のポリヌクレオチド配列はイントロンを含み、以下の3種類のSIGLEC−BMSタンパク質群をコードすることができる。すなわち(1)図2A、3A、4A、および5Aに記載のヌクレオチド配列(配列番号1〜4)、これらは互いに関係し、それぞれSIGLEC−BMSタンパク質−L3a、−L3b、−L3c、および−L3d(例えば、それぞれ図2B、3B、4B、および5B;それぞれ配列番号8、9、10および11)をコードするSiglecBMSL3a、−L3b、−L3c、および−L3dの選択的スプライス転写物に相当するcDNAクローンを表す;(2)図7Aに記載のヌクレオチド配列(配列番号5)、これはSIGLEC−BMS−4aタンパク質(図7B、配列番号12)をコードするSiglecBMSL4aの選択的スプライス転写物に相当するcDNAクローンを表す;(3)図8Aおよび9Aに記載のヌクレオチド配列(配列番号6〜7)、これらは互いに関係し、それぞれSIGLEC−BMS−5aおよび−5bタンパク質(例えば図8Bおよび9B;それぞれ配列番号13および14)をコードするSiglecBMSL5aおよび−L5bの選択的スプライス転写物に相当するcDNAクローンを表す。本発明は、完全長SiglecBMSL3 cDNAのハイブリッドコンストラクト(下記実施例14)を表すSiglecBMSL3995のヌクレオチド配列(図6A;配列番号27)を持つ核酸分子も提供する。
【0052】
相補配列
本発明は、図2A、3A、4A、5A、7A、8A、9A、および6Aに記載の配列(配列番号1〜7および27)(好ましくはその中のベクター配列を除くコード配列)に相補的な核酸分子も提供する。相補性は完全でも部分的でもよい。完全に相補的とは、配列番号1〜7および27に記載の全配列に対する相補性を意味する。部分的に相補的とは、配列番号1〜7および27に記載の配列の一部分だけに対する相補性を意味する。
【0053】
SiglecBMS配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列
さらに本発明は、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件でSiglecBMSヌクレオチド配列(例えば配列番号1〜7または27)に選択的にハイブリダイズするヌクレオチド配列も提供する。通例、標準的な高ストリンジェンシー条件でのハイブリダイゼーションは、配列相補性が約70%〜約100%異なる2つの相補的核酸分子の間で起こる。核酸分子間の高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションが、例えば同一性の程度、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー、およびハイブリダイズする鎖の長さなどに依存することは、当業者には明らかである。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションを行なうための方法および処方は当技術分野では周知であり、例えばSambrookら「Molecular Cloning」(1989)などに見いだすことができる。
【0054】
一般に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、(1)洗浄に低イオン強度および高温、例えば50℃の0.015M NaCl/0.0015M酒石酸ナトリウム/0.1%SDSを使用する条件、または(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミドなどの変性剤を使用する条件、例えば42℃で、50%(v/v)ホルムアミド、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)、および750mM NaCl、75mMクエン酸ナトリウムを使用する条件である。
【0055】
ストリンジェントな条件のもう一つの例では、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、超音波処理したサケ精子DNA(50mg/ml)、0.1%SDS、および10%デキストラン硫酸を42℃で使用し、0.2×SSCおよび0.1%SDS中、42℃で洗浄を行なう。当業者は、明瞭で検出可能なハイブリダイゼーションシグナルを得るのに適したストリンジェンシー条件を容易に決定し、変更することができる。
【0056】
SiglecBMS配列の断片
さらに本発明は、本発明のSiglecBMS配列の断片、例えば本明細書に開示するSiglecBMS配列(配列番号1〜7、15および27に示すもの)の一部を有する核酸分子も提供する。断片の大きさはその用途によって決まる。例えば、断片がSIGLEC−BMS細胞外ドメインをコードするように選ばれる場合、当業者はこのドメインをコードするのに十分な大きさのポリヌクレオチド断片を選択することになる。断片が核酸プローブまたはPCRプライマーとして使用される場合は、プロービングまたはプライミング中に得られる偽陽性の数が比較的少なくなるように断片長が選択される。あるいは、SiglecBMS配列の断片を使って、例えばヒト免疫グロブリン配列またはGST配列などの非SiglecBMS配列に融合されたSiglecBMS配列を有する組換え融合遺伝子を構築してもよい。
【0057】
本発明の核酸分子、その断片、ならびにプローブおよびプライマーは、例えばライブラリーのハイブリダイゼーションスクリーニング、または遺伝子転写および/または遺伝子発現の解析手段としてのmRNA転写物の検出および定量など、様々な分子生物学技術に役立つ。好ましくは、プローブおよびプライマーはDNAである。理論的および実用的考察により、少なくとも15塩基対のプローブまたはプライマー長が提案される(Methods in Enzymology,152:432−442(1987,Academic Press)のWallace,B.およびMiyada,G.著「Oligonucleotide Probes for the Screening of Recombinant DNA Libraries」)。
【0058】
選択的ハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプライマーとして特に有用なSiglecBMSヌクレオチド配列の断片は、当技術分野で知られる方法を使って、SiglecBMSヌクレオチド配列から容易に同定することができる。例えば、SiglecBMS転写物のうちSIGLECタンパク質の細胞外ドメインをコードする部分を検出するPCRプライマーのセットは、米国特許第4,965,188号に記載のPCR法によって作製することができる。本発明のプローブおよびプライマーは、当業者に周知の方法によって製造することができる(Sambrookら,前掲)。好ましい一態様では、プローブおよびプライマーを化学合成法によって合成する(Gait,M.J.編「Oligonucleotide Synthesis」1984,IRL Press,英国オックスフォード)。
【0059】
本発明の一態様は、本発明の核酸分子またはその特定部分の特異的増幅を可能にするSiglecBMS配列に相補的な核酸プライマーを提供する。もう一つの態様は、SiglecBMS配列またはその一部、例えば細胞外ドメインの全部または一部に選択的または特異的にハイブリダイズさせるための相補的な核酸プローブを提供する。
【0060】
融合遺伝子
本発明は、例えば、発現したSIGLEC−BMS遺伝子産物の単離および/または精製を容易にするためにHISタグ配列(Kroll,D.J.ら,1993,DNA Cell Biol 12:441−53)、またはGST、またはヒト免疫グロブリン配列などの非SiglecBMS配列に融合(例えば連結または接合)されたSiglecBMS配列を含む融合遺伝子を提供する。好ましい融合遺伝子は、非SiglecBMS配列に有効な形で連結されたSiglecBMS配列、例えば非SiglecBMS配列とインフレームで融合されたSiglecBMS配列を含む。
【0061】
あるいは、本発明の融合遺伝子は、異なる哺乳類から単離されたSiglecBMS配列に融合されたSiglecBMS配列を含む。例えば、本明細書に開示するヒトSiglecBMS配列を、異なるヒトまたは異なる動物種から単離されたSiglecBMS配列に融合することができる。
【0062】
SIGLEC−BMSタンパク質をコードする使用コドン変異体
本発明は、本明細書に開示するSiglecBMSヌクレオチド配列とは異なるが、予想されるSIGLEC−BMSポリペプチド配列または生物学的活性には変化がない単離された使用コドン変異体を提供する。例えば、多くのアミノ酸は2以上のトリプレットによって指定される。遺伝暗号の縮重により、同じアミノ酸を指定するコドン、すなわち同義コドンが存在しうる。アミノ酸アルギニン(R)をコードするヌクレオチドコドンCGT、CGG、CGCおよびCGA、またはアミノ酸アスパラギン酸(D)をコードするコドンGATおよびGACなどが、その例である。したがって、タンパク質は、詳細なヌクレオチド配列は異なるが、それでもなお同じ配列を持つタンパク質をコードする1または複数の核酸分子によってコードされうる。アミノ酸コード配列は以下の通りである。
【表2】
Figure 2004516012
【0063】
使用コドン変異体は組換えDNA技術によって作製することができる。コドンは、特定の原核または真核発現宿主におけるSiglecBMS転写物またはSIGLEC−BMSポリペプチドの産生レベルが最適になるように、その宿主細胞が利用するコドンの頻度に従って選択することができる。SIGLEC−BMSポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を変化させる他の理由としては、長い半減期または増加した安定性など、より望ましい性質を持つRNA転写物を産生させることが挙げられる。遺伝コードの縮重の結果として、各SIGLEC−BMSポリペプチドをコードする多数の変異SiglecBMSヌクレオチド配列を単離することができる。したがって、本発明では、考えうる全てのトリプレットコドンを選択することにより、本明細書に開示するSIGLEC−BMSポリペプチドをコードするヌクレオチド配列またはSIGLEC−BMSポリペプチドの生物学的活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の考えうる組合わせを全て作製することができる。この特定態様では、各変異ヌクレオチド配列がそれぞれ図2B、3B、4B、5B、7B、8B、9Bまたは6Bに記載のアミノ酸配列(配列番号8〜14または28)と配列同一性を持つポリペプチドをコードするような形で配列番号1〜7または27に記載の配列とは異なる、単離されたヌクレオチド配列が提供される。
【0064】
SiglecBMS配列の対立遺伝子型
本発明では、SiglecBMSヌクレオチド配列の代替的対立遺伝子型も考えられる。これらの代替的対立遺伝子型は同じ種の異なる対象から単離することができる。
【0065】
通例、天然遺伝子配列の単離された対立遺伝子型には、野生型および突然変異型対立遺伝子が含まれる。野生型SiglecBMS遺伝子は、例えば細胞接着分子としての機能などの正常なSIGLEC−BMSの生物学的活性を有するSIGLEC−BMSタンパク質をコードするだろう。突然変異型SiglecBMS遺伝子配列は、例えば細胞接着分子として機能しないなど、正常なSIGLEC−BMSタンパク質には見られない活性を有するSIGLEC−BMSタンパク質をコードするかもしれない。あるいは、突然変異型SiglecBMS遺伝子配列は、正常な活性を有するSIGLEC−BMSタンパク質をコードするかもしれない。
【0066】
自然に起こる対立遺伝子変異により、ある集団内の個体には、SIGLEC−BMS分子の活性を持つペプチドをコードする核酸の1または複数のヌクレオチド(約3〜4%までのヌクレオチド)に変異が存在しうることは、当業者には理解されるだろう。そのようなヌクレオチド変異およびその結果生じるアミノ酸多型は全て本発明の範囲に包含される。
【0067】
SiglecBMS配列の多型型
本発明は、配列番号1〜7または27に記載のSiglecBMSヌクレオチド配列の特定多型型のヌクレオチド配列を提供する。通例、天然遺伝子配列の単離された多型型は、同じ種の異なる対象から単離される。多型型は、アミノ酸コドン配列を変化させても変化させなくてもよい1または複数のヌクレオチド置換を有する配列を含む。これらの置換は、野生型SIGLEC−BMSタンパク質の生物学的活性を持つタンパク質をコードするか、または異なる活性を持つ、もしくは活性を持たないSIGLEC−BMSタンパク質の突然変異多型型をコードする野生型SiglecBMS遺伝子をもたらす。
【0068】
誘導体型核酸分子
本発明の核酸分子には、DNAまたはRNA分子とは異なる誘導体型核酸分子およびアンチセンス分子も含まれる。誘導体分子には、一本鎖DNAまたはRNAに塩基対形成依存的に結合するペプチド核酸(PNA)ならびにホスホロチオエート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデートおよびメチルホスホン酸分子などの非核酸分子が含まれる(Zamecnik,P.C.ら,1978,Proc.Natl.Acad.Sci. 75:280284;Goodchild,P.C.ら,1986,Proc.Natl.Acad.Sci. 83:4143−4146)。ペプチド核酸分子は、リジンなどのアミノ酸残基およびアミノ基が付加されている核酸オリゴマーを含む。抗遺伝子剤とも呼ばれるこれらの小分子は、それらの核酸相補(テンプレート)鎖に結合することによって、転写伸長を停止させる(Nielsen,P.E.ら,1993,Anticancer Drug Des 8:53−63)。DNA、RNAおよびそれらの類似体を合成する方法の概説は、例えばF.Eckstein編「Oligonucleotides and Analogues」1991,IRL Press,ニューヨーク、M.J.Gait編「Oligonucleotide Synthesis」1984,IRL Press,英国オックスフォードなどに見いだすことができる。また、アンチセンスRNA技術の方法は、米国特許第5,194,428号および第5,110,802号に記載されている。当業者は、これらの種類の核酸分子を、本明細書に記載のSiglecBMSポリヌクレオチド配列を使って、容易に取得することができる。例えば、Egholmら「Innovative and Perspectives in Solid Phase Synthesis」(1992)の325−328頁、または米国特許第5,539,082号などを参照されたい。
【0069】
SiglecBMSポリペプチドをコードするRNA
本発明は、SIGLEC−BMSタンパク質をコードする核酸分子を提供する。特に、本発明のRNA分子は、SIGLEC−BMSタンパク質をコードする単離された完全長もしくは部分mRNA分子またはRNAオリゴマーであることができる。
【0070】
本発明のRNA分子には、SiglecBMS配列を有するDNAまたはRNAのセンス鎖に、塩基対により、塩基依存的に、特異的結合をするアンチセンスRNA分子、ペプチド核酸(PNA)、またはホスホロチオエート誘導体などの非核酸分子も含まれる。当業者は、本明細書に記載のSiglecBMS配列を使って、これらの種類の核酸分子を容易に取得することができる。
【0071】
検出可能なマーカーで標識された核酸分子
本発明のSiglecBMS核酸分子の態様には、SiglecBMS配列またはその任意の特定部分の特異的増幅を可能にするDNAおよびRNAプライマー、ならびにSiglecBMS配列またはその一部に選択的または特異的にハイブリダイズするプローブが含まれる。核酸プローブは検出可能なマーカーで標識することができる。検出可能なマーカーの例には、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレーターまたは酵素などがあるが、これらに限るわけではない。標識DNAおよびRNAプローブを作製する技術は周知である。例えばSambrookら「Molecular Cloning」(1989)を参照されたい。
【0072】
本発明のタンパク質およびポリペプチド
本発明は新規SIGLEC−BMSタンパク質も提供する。SIGLEC−BMSタンパク質の一態様は、図6B(配列番号28)に示すAla141からSer198までのアミノ酸配列を含む。SIGLEC−BMSタンパク質のもう一つの態様は、図6B(配列番号28)に示すAla141からSer198までのアミノ酸配列を含み、配列番号1〜7および27のいずれか一つに示す核酸に相補的な核酸配列にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸分子によってコードされる。SIGLECタンパク質のもう一つの態様は、配列番号1〜7および27のいずれか一つに示す核酸に相補的な核酸分子にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含む。本発明の新規タンパク質配列の特定態様には、SIGLEC−MBS−L3a、−L3b、−L3c、−L3d、−L4、−L5a、−L5b、および−L3−995−2(それぞれ配列番号8〜14および28に記載)が含まれる。SIGLEC−BMSタンパク質は数多くの形で体現することができ、好ましくは単離されたまたは精製された形で体現することができる。
【0073】
SIGLEC−BMSタンパク質は、ウシ、ヒツジ、ブタ、ネズミ、ウマ、そして好ましくはヒトなどの哺乳動物種から単離することができる。あるいは、精製されたSIGLEC−BMSタンパク質を、合成、半合成、または組換え法によって製造することもできる。
【0074】
当業者は、標準的な単離および精製法を利用して、単離および/または精製されたSIGLECタンパク質を容易に得ることができる(Marchak,D.R.ら「Strategies for Protein Purification and Characterization」1996,Cold Spring Harbor Press,ニューヨーク州プレーンビュー)。単離および精製の性質と程度は用途に依存する。例えば、精製SIGLEC−BMSタンパク質分子は、抗体または他のリガンドへのSIGLEC−BMSの結合を損なう他のタンパク質または分子を実質的に含まないだろう。SIGLEC−BMSタンパク質の態様には、SIGLEC−BMSタンパク質の生物学的活性を有する精製されたSIGLEC−BMSタンパク質またはその断片が含まれる。一つの形態として、そのような精製されたSIGLEC−BMSタンパク質またはその断片は、抗体または他のリガンドを結合する能力を維持している。
【0075】
細胞では、SiglecBMS遺伝子配列は、シグナルペプチドおよびイントロンを含むと予想されるので、翻訳後修飾の結果として、細胞は様々な型の特定SIGLEC−BMSタンパク質を産生すると予期される。例えば、様々な型の単離されたSIGLEC−BMSとして、シグナルペプチドを含む前駆体型、シグナルペプチドを含まない成熟型、および分子内切断などの翻訳後事象の結果生じる異なる型のSIGLEC−BMSタンパク質などを挙げることができる。
【0076】
本発明は、本明細書に開示するSIGLEC−BMS配列の予想配列と同一なアミノ酸配列を有する単離され精製されたタンパク質、ポリペプチドおよびその断片を提供する。したがって、アミノ酸配列は、配列番号8〜14または28のいずれかに記載の特定SIGLEC−BMS配列と同一であってよい。
【0077】
本発明は、本明細書に開示する予想SIGLEC−BMSタンパク質配列(例えば図2B、3B、4B、5B、7B、8B、9Bおよび6B;配列番号8〜14または28)と比較して配列変異を有するタンパク質も包含する。例えば、変異配列を有するタンパク質には、対立遺伝子変異体、突然変異体、保存的置換変異体、および他の哺乳類生物から単離されたSIGLEC−BMSタンパク質などが含まれる。アミノ酸配列は本明細書に開示する配列に類似しているだろう。例えば、2つのタンパク質配列間で相違するアミノ酸残基の割合が約60%〜99.99%である場合、それら2つのタンパク質配列は互いに類似しているとみなされる。
【0078】
本発明は、1または複数のアミノ酸置換、挿入、欠失、切断またはフレームシフトを有する突然変異体型SIGLEC−BMSタンパク質をコードするSiglecBMSの突然変異型対立遺伝子を包含する。そのような突然変異体型タンパク質は通例、野生型タンパク質と同じ生物学的活性は示さない。SiglecBMSの突然変異型対立遺伝子は、例えば細胞接着分子として機能するなど野生型SIGLEC−BMSタンパク質と同じ生物学的活性を持つSIGLEC−BMSタンパク質をコードする場合もしない場合もありうる。
【0079】
SIGLEC−BMSタンパク質のもう一つ変異体は、1または複数のアミノ酸置換によって相違しているアミノ酸配列を持ってもよい。この変異体は、置換アミノ酸が構造的または化学的に類似する性質を有する保存的アミノ酸変化(例えばイソロイシンによるロイシンの置換)を持つことができる。あるいは、変異体は、非保存的アミノ酸変化(例えばトリプトファンによるグリシンの置換)を持ってもよい。同様の軽微な変化には、アミノ酸の欠失もしくは挿入またはその両方も含めることができる。どのアミノ酸残基を、そしてどのくらいの数のアミノ酸残基を置換、挿入または欠失させることができるかを決定する際の指針は、当技術分野で周知のコンピュータープログラム、例えばDNASTARソフトウェアを使って見いだすことができる。
【0080】
保存的アミノ酸置換は、多くの場合、タンパク質のコンフォメーションまたは生物学的活性を変化させずに、タンパク質に施すことができる。そのような変化には、疎水性アミノ酸イソロイシン(I)、バリン(V)およびロイシン(L)の間で相互に行なわれる置換;アスパラギン酸(D)によるグルタミン酸(E)の置換またはその逆;グルタミン(Q)によるアスパラギン(N)の置換;およびセリン(S)によるスレオニン(T)の置換またはその逆が含まれる。特定アミノ酸の環境およびタンパク質の三次元構造におけるその役割に応じて、他の置換も、保存的であるとみなすことができる。例えば、グリシン(G)とアラニン(A)は可換的であることが多く、アラニン(A)とバリン(V)も同様である。比較的疎水性であるメチオニン(M)は、多くの場合、ロイシンおよびイソロイシンと交換することができ、バリンと交換できる場合もある。リジン(K)およびアルギニン(R)は、アミノ酸残基の重要な特徴がその電荷であってこれら2つのアミノ酸残基の異なるpKが重要でないような部位では、交換可能である場合が多い。特定の環境ではさらに他の変化も保存的であるとみなすことができる。
【0081】
本発明のタンパク質は、例えばSIGLEC−BMSタンパク質に関連するエピトープを特異的に結合する抗体の産生を誘発する能力などのSIGLEC−BMSタンパク質の生物学的活性を示す。したがって、SIGLEC−BMSタンパク質またはそのオリゴペプチドは、適切な動物または細胞における特異的免疫応答を誘導し、かつ/または特異的抗体と結合することができる。
【0082】
SIGLEC−BMS細胞外ドメイン
本発明は、SIGLEC−BMSタンパク質の細胞外および/または細胞質ドメインを持つ単離されたタンパク質を提供する。
【0083】
SIGLEC−BMSタンパク質の細胞外ドメインは複数のIg様ドメインを含む(図1)。完全長SIGLEC−BMSタンパク質(SIGLEC−BMS−L3、SIGLEC−BMS−L3−995−2ともいう)は、5つのIg様ドメイン、すなわちIg−D1(Vセット、Ser14〜Thr140)、Ig−D2(Cセット、Ala141〜Ala235)、Ig−D3(Cセット、Ala252〜Gln341)、Ig−D4(Cセット、Val358〜His443)、およびIg−D5(Cセット、Tyr444〜Pro538)を含んでいる(図25)。
【0084】
既知のSiglecタンパク質(例えばCD33)の細胞外ドメインは、シアリル化された細胞表面と結合し(Kelm,S.ら,1996,前掲;Kelm,S.ら,1998,前掲;Vinson,M.ら,1996,前掲)、細胞接着または細胞シグナリングを媒介すると推測される。SIGLEC−BMSタンパク質の細胞外ドメインがシアリル化された細胞表面グリカンと結合するかどうかを決定するために、種々のタンパク質結合解析を行なうことができる。結合解析には、蛍光標示式細胞分取(例えばFACS)などの方法、ELISA解析、および細胞結合解析が含まれる。
【0085】
FACS解析は、完全長SIGLEC−BMSタンパク質、その断片、SIGLEC−BMS融合タンパク質、または突然変異型SIGLEC−BMSタンパク質を使って行なわれる。好ましい方法では、SIGLEC−BMSの細胞外ドメインを持つポリペプチド、例えば図23または24に記載の融合タンパク質などを使用する。結合試験は、混合白血球の集団または造血細胞株を、SIGLEC−BMSタンパク質の細胞外ドメインを持つポリペプチドと反応させることによって行なう。
【0086】
SIGLEC−BMSタンパク質の結合特異性も、固形支持体を使って決定される。SIGLEC−BMSタンパク質をELISAプレートなどの固形支持体に固定化する。使用するSIGLEC−BMSタンパク質には、完全長SIGLEC−BMSタンパク質、その断片、SIGLEC−BMS融合タンパク質、または突然変異型SIGLEC−BMSタンパク質が含まれる。細胞をシアリダーゼで前処理する。固定化したタンパク質を、混合白血球、混合顆粒球、B細胞、T細胞、NK細胞、および単球を含む細胞または細胞株と反応させる。
【0087】
あるいは、SIGLEC−BMSタンパク質の結合特異性は、種々の細胞タイプまたは細胞株を、本発明のSIGLEC−BMSタンパク質を発現させる細胞と反応させることによって解析される。このタンパク質発現細胞は、SIGLEC−BMSの一過性または長期間発現をもたらす方法を含む当技術分野でよく知られる方法を使って作出される。このタンパク質発現細胞は哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、細菌細胞、または酵母細胞であってよい。このタンパク質発現細胞は完全長SIGLEC−BMSタンパク質もしくはその断片、SIGLEC−BMS融合タンパク質、または突然変異型SIGLEC−BMSタンパク質を発現させることができる。このタンパク質発現細胞を、混合白血球、混合顆粒球、B細胞、T細胞、NK細胞、および単球を含む種々の細胞タイプまたは細胞株と反応させる。反応する細胞をシアリダーゼで前処理する。
【0088】
SIGLEC−BMS細胞質ドメイン
既知のSiglecタンパク質の細胞質ドメインは、細胞内でのリン酸化を媒介するITAMまたはITIMモチーフ内にチロシン残基を持っている。例えば、Siglec−3(例:CD33)の細胞質テールは、リン酸化されるとSHP−1およびSHP−2を動員するITIMモチーフを2つ含んでいる(Taylor,V.ら,1999,前掲)。
【0089】
SIGLEC−BMSタンパク質の細胞質テールドメインがリン酸化を媒介するかどうかを決定するために、種々の方法を実行することができる。それらの方法にはキナーゼアッセイが含まれる。
【0090】
キナーゼアッセイは、SIGLEC−BMSタンパク質を、リン酸化活性を提供するキナーゼと反応させることによって行なわれる。キナーゼを、完全長SIGLEC−BMSタンパク質、その断片、SIGLEC−BMS融合タンパク質または突然変異型SIGLEC−BMSタンパク質を含むSIGLEC−BMSタンパク質と反応させる。
【0091】
突然変異型SIGLEC−BMSタンパク質は、SIGLEC−BMSタンパク質の細胞質ドメイン内の1または複数のアミノ酸の特異的置換、例えば特定アミノ酸の突然変異(チロシンからフェニルアラニン、ロイシン、トリプトファンまたはThrへの変異など)を含んでよい(図15)。突然変異型SIGLEC−BMSタンパク質の例には、図15に示し、実施例12で説明するように、597、641、667または691位の少なくとも1つのチロシンがフェニルアラニンで置換されているSIGLEC−BMSタンパク質が含まれるが、これらに限るわけではない。
【0092】
SIGLEC−BMSタンパク質の細胞質テール中のどの突然変異が種々のチロシンキナーゼによるリン酸化に影響を及ぼすかを知ることにより、当業者は、SIGLEC媒介性細胞シグナリングに影響を及ぼすリガンドをスクリーニングする方法を開発することができる。例えば、図6Bの597、641、667または691位のいずれかにあるチロシンをフェニルアラニン、ロイシン、トリプトファンおよびスレオニンで置換しても、SIGLEC媒介性細胞シグナリングの媒介は起こりうる。さらに、そのように突然変異させた細胞質ドメイン内の部位に結合するリガンドを、SIGLEC媒介性細胞シグナリングが調節されるように、すなわち細胞シグナリングがアップレギュレートまたはダウンレギュレートされるように修飾することもできる。
【0093】
SIGLEC−BMSタンパク質の製造方法
本発明のSIGLEC−BMSタンパク質は組換え法によって製造することができる。高収率が望まれる場合は、組換え法が好ましい。組換え法では、クローン化された遺伝子を適切な宿主細胞で発現させる。例えば、SiglecBMS配列を持つ発現ベクターを宿主細胞に導入した後、前記配列によってコードされるSIGLEC−BMSタンパク質のインビトロ産生が可能な条件で、宿主細胞を培養する。
【0094】
例えば、一般論として、組換えSIGLEC−BMSタンパク質の産生には、宿主/ベクター系および以下のステップが必要になりうる。SIGLEC−BMSタンパク質またはその断片をコードする核酸分子、例えば配列番号1〜7または27に開示するポリヌクレオチドのいずれか一つを得ることができる。次に、上述のように、SIGLEC−BMSコード核酸分子を、好ましくは、発現ベクターに、適切な発現制御配列が有効な形で連結されるように挿入して、SIGLEC−BMSコード配列を含む発現ベクターを作製することができる。発現ベクターは、標準的な形質転換法によって、適切な宿主に導入することができ、その結果得られた形質転換宿主を、SIGLEC−BMSタンパク質の産生と回収が可能な条件で培養する。例えば、SIGLEC−BMS遺伝子が誘導性プロモーターの制御下にある場合、適切な成長条件には、適当な誘導物質が含まれる。このようにして産生されたSIGLEC−BMSタンパク質は成長培地から単離されるか、または細胞から直接単離される。多少の不純物があってもかまわない場合は、タンパク質の回収および精製が必要ないかもしれない。当業者は、当技術分野で知られる適当な宿主/発現系(Cohenら,前掲;Maniatisら,前掲)を、SIGLEC−BMSコード配列を使ったSIGLEC−BMSタンパク質の製造に利用できるように、容易に適合させることができる。
【0095】
本発明のSIGLEC−BMSタンパク質およびその断片は、化学合成法によって製造することができる。ポリペプチドの固相化学合成の原理は当技術分野では周知であり、この分野に関係する概説書に見いだすことができる(Dugas,H.およびPenney,C.,1981,「Bioorganic Chemistry」54−92頁,Springer−Verlag,ニューヨーク)。SIGLEC−BMSポリペプチドは、Applied Biosystems 430Aペプチド合成装置(Applied Biosystems,カリフォルニア州フォスターシティー)およびApplied Biosystemsが提供する合成サイクルを利用する固相法によって合成することができる。t−ブトキシカルボニル保護アミノ酸などの保護アミノ酸および他の試薬類は多くの化学薬品供給業者から販売されている。
【0096】
本発明は、化学修飾タンパク質などの誘導体型タンパク質分子を提供する。アルキル、アシル、またはアミノ基による水素の置換は、そのような修飾の例である。SIGLEC−BMSタンパク質誘導体は天然SIGLEC−BMSタンパク質の生物学的活性を保っている。
【0097】
SIGLEC−BMSをコードする組換え核酸および分子
本明細書に記載するSIGLEC−BMSタンパク質またはその断片をコードするヌクレオチド配列を含む組換えDNA分子(rDNA)も提供する。本明細書にいうrDNA分子は、インビトロでの分子操作が施されたDNA分子である。rDNA分子を作製する方法は当技術分野では周知である。例えばSambrookら「Molecular Cloning」(1989)を参照されたい。本発明の好ましいrDNA分子では、SIGLEC−BMSタンパク質またはその断片をコードする配列が、1または複数の発現制御配列および/またはベクター配列に有効な形で連結されている。
【0098】
ベクター
本発明の核酸分子は、非SiglecBMS配列に連結されたSiglecBMS配列の配列またはその一部をそれぞれに含む組換え分子であってよい。例えば、SiglecBMS配列をベクターに有効な形で融合して、組換え分子を作製することができる。
【0099】
ベクターという用語には、例えばプラスミド、コスミド、およびファージミドが含まれるが、これらに限るわけではない。好ましいベクターは、適当な宿主細胞でのrDNAの複製をもたらすレプリコンを含む自律的に複製するベクターであることができる。あるいは、好ましいベクターは、宿主細胞への組換えベクターの組込みをもたらす。種々のウイルスベクター、例えば数多くの周知のレトロウイルスおよびアデノウイルスベクターなども使用することができる(Berkner,1988,Biotechniques 6:616−629)。
【0100】
好ましいベクターは、原核宿主細胞または真核宿主細胞におけるSiglecBMS転写物またはポリペプチド配列の発現を可能にする。好ましいベクターには、大腸菌などの適当な宿主において、挿入されたSiglecBMS配列の転写を可能にし、有効な形で連結されたSiglecBMS配列の発現(例えば転写および/または翻訳)の調節に使用することができるプロモーター配列などの発現制御要素を含む発現ベクターが含まれる。
【0101】
発現制御要素は当技術分野では知られており、例えば誘導性プロモーター、構成的プロモーター、分泌シグナル、エンハンサー、転写ターミネーター、および他の転写調節要素などが含まれるが、これらに限るわけではない。翻訳に関与する発現制御要素は当技術分野では他にも知られており、例えばシャイン・ダルガノ配列(例えば原核宿主細胞)、開始コドン、終止コドンなどがある。
【0102】
効率の良いSiglecBMS配列の翻訳には特異的開始シグナルも必要だろう。これらのシグナルにはATG開始コドンおよび隣接配列が含まれる。SiglecBMSの開始コドンおよび上流配列を適当な発現ベクターに挿入する場合は、翻訳制御シグナルを追加する必要はないかもしれない。しかし、コード配列だけまたはその一部だけを挿入する場合は、ATG開始コドンを含む外来の転写制御シグナルを用意しなければならない。さらに、開始コドンは、インサート全体の転写が保証されるように、正しい読み枠になければならない。外来転写要素および開始コドンは、天然起源でも合成起源でも、様々な起源を持つことができる。発現効率は、使用する細胞系に適したエンハンサーを含めることによって向上させることができる(Scharf,D.ら,1994,Results Probl.Cell.Differ. 20:125−62;Bittnerら,1987,Methods in Enzymol. 153:516−544)。
【0103】
真核宿主細胞におけるSiglecBMS配列の発現に好ましいベクターは、例えば昆虫細胞における発現用のバキュロウイルスポリヘドリンプロモーターなどの発現制御要素を含む。他の発現制御要素には、植物細胞のゲノムに由来するプロモーターまたはエンハンサー(例えば熱ショック遺伝子、RUBISCO遺伝子、貯蔵タンパク質遺伝子)、ウイルスプロモーターまたはリーダー配列、または植物ウイルスに由来するもの、および哺乳類遺伝子または哺乳類ウイルス由来のプロモーターまたはエンハンサーが含まれる。
【0104】
好ましいベクターは、薬剤耐性(例えばアンピシリンまたはテトラサイクリンに対する耐性)を付与する遺伝子産物をコードする選択可能マーカー遺伝子を少なくとも1つは含む。ベクターは、外来DNA配列の挿入に便利な複数のエンドヌクレアーゼ制限部位も含む。本発明のSIGLEC−BMSタンパク質をコードする組換え発現ベクターを作製する方法は当技術分野では周知であり、Maniatis,T.ら「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」(1989,コールドスプリングハーバー研究所,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)およびAusubelら「Current Protocols in Molecular Biology」(1989,John Wiley & Sons,ニューヨーク州ニューヨーク)に見いだすことができる。
【0105】
SiglecBMS転写物および/またはコードされているSIGLEC−BMSポリペプチドを製造するための好ましいベクターは、原核宿主細胞に適合する発現ベクターである。原核細胞発現ベクターは当技術分野では周知であり、いくつかの業者から入手することができる。例えば、pETベクター(pET−21など、Novagen Corp.)、BLUESCRIPTファージミド(Stratagene、カリフォルニア州ラホーヤ)、pSPORT(Gibco BRL、メリーランド州ロックビル)、またはptrp−lacハイブリッドを使って、SIGLEC−BMSポリペプチドを細菌宿主細胞で発現させることができる。
【0106】
もう一つの選択肢として、SiglecBMS転写物および/またはコードされているSIGLEC−BMSポリペプチドを製造するための好ましい発現ベクターは、真核宿主細胞に適合する発現ベクターである。より好ましいベクターは、脊椎動物細胞に適合するベクターである。真核細胞発現ベクターは当技術分野で周知であり、いくつかの業者から販売されている。通例、所望のDNAセグメントの挿入に便利な制限部位を含むそのようなベクターを用意する。そのようなベクターの典型例は、PSVLおよびpKSV−10(Pharmacia)、pBPV−1/pML2d(International Biotechnologies,Inc.)、pTDT1(ATCC番号31255)、および類似の真核発現ベクターである。
【0107】
宿主−ベクター系
さらに本発明は、SiglecBMSヌクレオチド配列またはその断片を含むベクター、プラスミド、ファージミド、またはコスミドが適切な宿主細胞に導入されている宿主−ベクター系も提供する。SiglecBMS配列の保持および発現には、様々な発現ベクター/宿主系を利用することができる。宿主−ベクター系を使って、SiglecBMSヌクレオチド配列がコードしているSIGLEC−BMSポリペプチドを発現(産生)させることができる。宿主細胞は原核細胞または真核細胞であることができる。適切な原核宿主細胞の例には、EscherichiaBacillusPseudomonasStreptococcus、およびStreptomycesなどの属からの細菌株が含まれる。適切な真核宿主細胞の例には、酵母細胞、植物細胞、または動物細胞、例えば哺乳動物細胞が含まれる。好ましい態様として、COS7哺乳動物細胞中のpcDNA3ベクター(Invitrogen,カリフォルニア州カールスバッド)、細菌細胞中のpGEXベクター(Promega,ウィスコンシン州マディソン)、またはSf9昆虫細胞中のpFastBacベクター(Gibco/BRL、メリーランド州ロックビル)を含む宿主−ベクター系を提供する。
【0108】
適当な宿主細胞への本発明の組換えDNA分子の導入は、使用するベクターおよび使用する宿主系のタイプによって決まる周知の方法によって達成される。例えば、原核宿主細胞は、エレクトロポレーションまたは塩処理法によって核酸分子が導入(例えば形質転換)される。例えば、Cohenら,1972,Proc Acad Sci USA 69:2110、Maniatis,T.ら,「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」,1989,コールドスプリングハーバー研究所,ニューヨーク州コールドスプリングハーバーなどを参照されたい。脊椎動物細胞は、エレクトロポレーション、カチオン性脂質または塩処理を含む様々な方法によって、組換えDNAを含むベクターで形質転換される(Grahamら,1973,Virol 52:456;Wiglerら,1979,Proc Natl Acad Sci USA 76:1373−76)。
【0109】
うまく形質転換された細胞、すなわち本発明のrDNA分子を含む細胞は、当技術分野で周知の技術によって同定することができる。例えば、本発明の組換えDNAの導入によって得られる細胞を選択し、クローン化して、単コロニーを形成させる。これらのコロニーから細胞を収集し、溶解し、Southern, Mol Biol(1975)98:503またはBerentら,Biotech(1985)3:208に記載されているような方法を使って、そのDNA内容物をrDNAの存在について調べるか、または細胞から産生されたタンパク質を生化学的アッセイまたは免疫学的方法によってアッセイする。
【0110】
細菌系では、SIGLEC−BMSタンパク質に応じて、多くの発現ベクターを選択することができる。例えば、抗体を誘導するために多量のSIGLEC−BMSタンパク質が必要な場合は、可溶性で精製が容易な融合タンパク質の高レベル発現をもたらすベクターが望ましいだろう。そのようなベクターには、多機能性大腸菌クローニングおよび発現ベクター、例えば、ハイブリッドタンパク質が産生されるようにβ−ガラクトシダーゼのアミノ末端Metおよびそれに続く7残基の配列にSiglecBMS配列をインフレームで連結することができるBLUESCRIPT(Stratagene)、pINベクター(Van HeekeおよびSchuster(1989) Biol Chem 264:5503−5509)などが含まれるが、これらに限るわけではない。pGEXベクター(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を使って、外来タンパク質をグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として発現させてもよい。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン−アガロースビーズに吸着させた後、遊離グルタチオンの存在下で溶出することによって、溶解した細胞から容易に精製することができる。このような系で製造されるタンパク質は、クローン化した目的タンパク質を随意にGST部分から切り離すことができるように、ヘパリン、トロンビンまたは第Xa因子プロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
【0111】
酵母Saccharomyces cerevisiaeでは、例えばベータ因子、アルコールオキシダーゼおよびPGHなどの構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターを含む多くのベクターを使用することができる。例えば、Ausubelら(前掲)およびGrantら(1987)Methods in Enzymology 153:516−544。
【0112】
植物発現ベクターを使用する場合は、多くのプロモーターのいずれかによって、SIGLEC−BMSタンパク質をコードする配列を発現させることができる。例えば、CaMVの35Sおよび19Sプロモーター(Brissonら(1984)Nature 310:511−514)などのウイルスプロモーターを単独で、またはTMV由来のオメガリーダー配列(Takamatsuら(1987)EMBO 6:307−311)と組み合わせて使用することができる。もう一つの選択肢として、RUBISCOの小サブユニット(Coruzziら(1984)EMBO 3:1671−1680;Broglieら(1984)Science 224:838−843)、または熱ショックプロモーター(Winter,J.およびSinibaldi,R.M.(1991)Results Probl Cell Differ 17:85−105)などの植物プロモーターを使用することもできる。これらのコンストラクトは、直接DNA形質転換または病原体を介したトランスフェクションによって植物細胞に導入することができる。そのような技術の概要については、Hobbs,S.「McGraw Yearbook of Science and Technology」(1992,McGraw Hill,ニューヨーク州ニューヨーク)の191〜196頁、またはWeissbachおよびWeissbach「Methods for Plant Molecular Biology」(1988,Academic Press,ニューヨーク州ニューヨーク)の421〜463頁を参照されたい。
【0113】
SIGLEC−BMSタンパク質を発現させるために使用することができるもう一つの発現系は昆虫系である。そのような系の一つでは、Autographa californica核多核体病ウイルス(AcNPV)を、Spodoptera frugiperda細胞またはTrichoplusia幼虫で外来遺伝子を発現させるためのベクターとして使用することができる。SIGLEC−BMSタンパク質をコードする配列は、ウイルスの非必須領域、例えばポリヘドリン遺伝子中にクローン化し、ポリヘドリンプロモーターの制御下に置くことができる。SiglecBMS核酸配列をうまく挿入することができれば、ポリヘドリン遺伝子は不活性になり、コートタンパク質を欠く組換えウイルスが産生されることになる。次に、組換えウイルスを、S.flugiperda細胞またはTrichoplusia幼虫に感染させ、その中でSIGLEC−BMSタンパク質を発現させることができる(Smithら,1983, Virol 46:584;Engelhard,E.K.ら,1994,Proc Nat Acad Sci 91:3224−7)。
【0114】
哺乳類宿主細胞では、多くのウイルス型発現系を利用することができる。アデノウイルスを発現ベクターとして使用する場合は、後期プロモーターおよびトリパータイトリーダー配列からなるアデノウイルス転写/翻訳ベクターにSiglecBMS配列を連結することができる。ウイルスゲノムの非必須E1またはE3領域への挿入により、感染した宿主細胞中でSIGLEC−BMSタンパク質を発現させることができる生存可能なウイルスが得られる(LoganおよびShenk,1984,Proc Natl Acad Sci 81:3655−59)。さらに、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーなどの転写エンハンサーを使って、哺乳類宿主細胞における発現を増加させることもできる。
【0115】
また、挿入された配列の発現を調整する能力、または発現されたタンパク質を望ましい形でプロセシングする能力で、宿主細胞株を選択することもできる。タンパク質のそのような修飾には、例えばアセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質付加およびアシル化などがあるが、これらに限るわけではない。前駆体型のタンパク質(例えばプレプロタンパク質)を切断する翻訳後プロセシングも、正しい挿入、フォールディングおよび/または機能にとって重要であるかもしれない。例えばCHO、HeLa、MDCK、293、WI38などの様々な宿主細胞は、そのような翻訳後活性に関して特殊な細胞機構および独特の機序を持っており、導入された外来タンパク質の正しい修飾およびプロセシングが保証されるように選択することができる。
【0116】
組換えタンパク質の長期高収率生産には安定な発現が好ましい。例えば、本発明のSIGLEC−BMSタンパク質を安定に発現させる細胞株は、ウイルス複製起点または内因性発現要素および選択可能マーカー遺伝子を含む発現ベクターを使って形質転換することができる。ベクターの導入後に細胞を濃縮培地で生育させてから、選択培地に移すことができる。選択可能マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することであり、その存在は、導入された配列をうまく発現させる細胞の成長および回収を可能にする。安定に形質転換された細胞の耐性集塊は、使用する細胞タイプに適した組織培養技術を使って増殖させることができる。
【0117】
形質転換細胞株の回収には数多くの選択系を使用することができる。これらには、例えば、それぞれtkまたはaprt細胞で使用することができる単純疱疹ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wigler,M.ら,1977,Cell 11:223−32)およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowy,I.ら,1980,Cell 22:817−23)が含まれるが、これらに限るわけではない。また、代謝拮抗物質、抗生物質または除草剤耐性を選択の根拠として使用することもできる。例えば、メトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr(Wigler,M.ら,1980,Proc Natl Acad Sci 77:3567−70)、アミノグリコシド系抗生物質ネオマイシンおよびG−418に対する耐性を付与するnpt(Colbere−Garapin,F.ら,1981,J.Mol.Biol.150:1−14)、ならびにそれぞれクロルスルフロンおよびホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を付与するalsまたはpat(Murry,前掲)である。他の選択可能遺伝子、例えば細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用できるようにするtrpB、または細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用できるようにするhisDなども記載されている(Hartman,S.C.およびR.C.Mulligan,1988,Proc.Natl.Acad.Sci. 85:8047−51)。最近は、形質転換体を同定するためだけでなく、特殊なベクター系に起因する一過性のまたは安定なタンパク質発現の量を定量するためにも広く使用されているアントシアニン類、β−グルクロニダーゼおよびその基質GUS、ならびにルシフェラーゼおよびその基質ルシフェリンなどのマーカーにより、可視マーカーの使用も増えている(Rhodes,C.A.ら,1995,Methods Mol Biol 55:121−131)。
【0118】
SIGLEC−BMSタンパク質およびポリペプチドに反応する抗体
さらに本発明は、SIGLEC−BMSタンパク質またはSIGLEC−BMSタンパク質の断片に結合する抗体、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、断片およびヒト化抗体なども提供する。本発明のモノクローナル抗体の具体例として、Siglec−10−9、Siglec−10−13、Siglec−10−14、Siglec−10−27およびSiglec−10−61と呼ばれる抗体が挙げられる。これらは一括して、2001年7月18日に、ブダペスト条約の規定に基づいて、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(バージニア州20110−2209ユニバーシティ・ブルバード10801)に寄託され、ATCC受託番号(___)を与えられている。これらの抗体は、サブクローニングまたはイソタイプ分離などの標準的分離技術によって、一括寄託物から容易に分離することができる(Harlow,E.およびLane,D.「Antibodies,A Laboratory Manual」(1988),コールドスプリングハーバー研究所,ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)。
【0119】
モノクローナル抗体Siglec−10−9、Siglec−10−13、Siglec−10−14、Siglec−10−27、およびSiglec−10−61はいずれもSiglec−10を認識し結合する抗体であり、異なるまたは類似するイソタイプを示す。例えば、Siglec−10−9のイソタイプはIgG3カッパイソタイプ、Siglec−10−13はIgG2bカッパイソタイプ、Siglec−10−14はIgG1カッパイソタイプ、Siglec−10−27はIgG1カッパイソタイプ、Siglec−10−61はIgG2aカッパイソタイプである。
【0120】
好ましくは、本発明の抗体は、SIGLEC−BMS配列を持つポリペプチドに特異的に結合する。例えば、本発明の抗体は、図6B(配列番号28)に示すAla141からSer198までのアミノ酸配列を含むSIGLEC−BMSタンパク質を認識し、これに結合する。もう一つの態様として、本発明の抗体は、配列番号1〜7および27のいずれか一つに示す核酸に相補的な核酸分子にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸分子によってコードされる図6B(配列番号28)のAla141からSer198までのアミノ酸配列を含むSIGLEC−BMSを認識し、結合することができる。さらに、本発明の抗体は、配列番号1〜7および27のいずれか一つに示す核酸に相補的な核酸分子にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むSIGLECタンパク質を認識し、結合することができる。好ましくは、本発明の抗体は、SIGLEC−BMS−L3a、−L3b、−L3c、−L3d、−L4a、−L5a、−L5b、および−L3−995−2タンパク質(図2B、3B、4B、5B、7B、8B、9B、および6B)を認識し、結合することができる。
【0121】
最も好ましくは、SIGLEC−BMS抗体は、SIGLEC−BMSタンパク質の細胞外ドメインに特異的に結合する。細胞外ドメインはSiglec10のIg様ドメインのいずれかまたは全部であることができる。具体的には、本抗体は、図25に示す第2Ig様(Ig−D2)ドメイン(Ala141−Ser198)またはIgD5ドメイン(Tyr444−Pro538)を認識し、結合することができる。他の態様では、本発明の抗体は、SIGLEC−BMSタンパク質または前駆体の他のドメインに特異的に結合することができる。例えば、本抗体は、SIGLEC−BMSタンパク質の細胞質ドメインに結合する。例えば、細胞質ドメインは、図6Bに示すLys576からGln697までのアミノ酸を包含することができる。
【0122】
最も好ましい抗体は、SIGLEC−BMSタンパク質に選択的に結合し、非SIGLEC−BMSタンパク質には結合しない(または弱く結合する)だろう。これらの抗体は、例えばウサギ、ヒツジ、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウマ、マウスおよびヒトなど、どのような起源に由来してもよい。
【0123】
当業者には理解されるだろうが、抗体の標的となるSIGLEC−BMSタンパク質の領域またはエピトープは、意図する用途によって様々である。例えば、生細胞上の膜結合型SIGLEC−BMSを検出するための免疫アッセイで使用しようとする抗体は、接近しやすいエピトープ、例えばSIGLEC−BMSタンパク質の細胞外ドメインなどに向けられるべきである。抗SIGLEC−BMS mAbは、SIGLEC−BMS陽性細胞の細胞表面を染色するために使用することができる。SIGLEC−BMSタンパク質の予想細胞外ドメインは、潜在的に、スクリーニング、診断、予後、および追跡検査ならびに撮像法のマーカーになる。さらに、SIGLEC−BMSタンパク質は、SIGLEC−BMSタンパク質の有無に関係する状態を処置するための治療法、例えば標的抗体療法、免疫療法および遺伝子療法などの優れた標的になりうる。他のエピトープを認識する抗体は、損傷した細胞または瀕死の細胞内のSIGLEC−BMSの同定、分泌されたSIGLEC−BMSタンパク質またはその断片の検出に役立つだろう。また、本発明の抗体の一部は、結合時または結合後に細胞内に内在化(例えば進入)する内在化抗体でありうる。内在化抗体は細胞成長の阻害および/または細胞死の誘導に役立つ。
【0124】
本発明は、本発明のモノクローナル抗体がその標的抗原に免疫特異的に結合するのを競合的に阻害する抗原結合領域を持つ任意のモノクローナル抗体を包含する。これらのモノクローナル抗体は、例えば抗体Siglec−10−9、Siglec−10−13、Siglec−10−14、Siglec−10−27、およびSiglec−10−61のいずれかを使って、定型的な競合アッセイによって同定することができる(Harlow,E.およびLane,D.「Antibodies, A Laboratory Manual」1988,コールドスプリングハーバー研究所、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)。さらに、本発明は、本発明のモノクローナル抗体の抗原結合領域を含む組換えタンパク質も提供する。
【0125】
本発明は、SIGLEC−BMSタンパク質またはその断片を特異的に認識する抗体断片も包含する。本明細書にいう抗体断片は、その標的に結合する可変領域の少なくとも一部、すなわち抗原結合領域と定義される。免疫グロブリンの定常領域の一部が含まれていてもよい。モノクローナル抗体またはポリクローナル抗血清の断片としては、Fab、F(ab’)、Fv断片、一本鎖抗体、および免疫学的に重要な部分(すなわちSIGLEC−BMSを認識し結合する部分)を含む融合タンパク質などが挙げられる。
【0126】
本発明のキメラ抗体は、異なる種に由来する少なくとも2つの抗体部分、例えばヒト部分と非ヒト部分とを含む免疫グロブリン分子である。キメラ抗体は、非ヒト定常領域および可変領域を持つ抗体よりもヒトに対する抗原性がおそらく低いので、有用である。キメラ抗体の抗原結合領域(可変領域)は、非ヒト由来源(例えばネズミ)から得ることができ、免疫グロブリンに生物学的エフェクター機能を付与するキメラ抗体の定常領域はヒト由来源から得ることができる(Morrisonら,1985,Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 81:6851;Takedaら,1985,Nature 314:452;Cabillyら,米国特許第4,816,567号;Bossら,米国特許第4,816,397号)。キメラ抗体は非ヒト抗体分子の抗原結合特異性と、ヒト抗体分子によって付与されるエフェクター機能とを持つだろう。
【0127】
本発明のキメラ抗体には、いくつかの異なる抗原結合特異性を持つキメラタンパク質である抗体も含まれる(例えば抗TNP:Boulianneら,1984,Nature 312:643、および抗腫瘍抗原:Sahaganら,1986,J.Immunol. 137:1066)。本発明は、異なるエフェクター機能(Neubergerら,1984,Nature 312:604)、他の種に由来する免疫グロブリン定常領域、および他の免疫グロブリン鎖の定常領域(Sharonら,1984,Nature 309:364;Tanら,1985,J.Immunol. 135:3565−3567)を持つキメラタンパク質も提供する。遺伝子修飾のターゲティングに相同組換えを使って、抗体分子を修飾し、キメラ抗体分子を製造する方法も記載されている(Fellら,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8507−8511)。
【0128】
SIGLEC−BMSタンパク質に対するヒト化抗体も有用である。本明細書にいうヒト化SIGLEC−BMS抗体は、SIGLEC−BMSタンパク質に結合する能力を持つ免疫グロブリン分子である。ヒト化SIGLEC−BMS抗体は、実質的にヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を持つ可変領域と、実質的に非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を持つ超可変領域とを含む。ヒト化抗体は当技術分野で知られるいくつかの方法によって製造することができる(Tengら,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 80:7308−7312;Kozborら,1983,Immunology Today 4:7279;Olssonら,1982,Meth.Enzymol. 92:3−16)。
【0129】
当技術分野では様々な抗体製造法がよく知られている。例えば抗体は、適当な哺乳類宿主を、例えば単離されたSIGLEC−BMSタンパク質、ペプチド、断片、またはイムノコンジュゲート型SIGLEC−BMSタンパク質などの免疫原で免疫化することによって製造することができる(Harlow「Antibodies」1989,Cold Spring Harbor Press,ニューヨーク州)。さらに、SIGLEC−BMSの融合タンパク質、例えばGST、ヒトIg、またはHisタグ付き融合タンパク質に融合されたSIGLEC−BMSなども、免疫原として使用することもできる。また、SIGLEC−BMSタンパク質を発現または過剰発現させる細胞を免疫化に使用することもできる。同様に、SIGLEC−BMSタンパク質を発現させるように操作された細胞も使用することができる。このストラテジーにより、内因性SIGLEC−BMSタンパク質を認識する能力が向上したモノクローナル抗体を製造することができる(HarlowおよびLane「Antibodies:A Laboratory Manual」1988,Cold Spring Harbor Press)。
【0130】
SIGLEC−BMSタンパク質のアミノ酸配列およびその断片は、抗体作製用のSIGLEC−BMSタンパク質の特定領域を選択するために使用することができる。例えば、SIGLEC−BMSアミノ酸配列の疎水性および親水性解析を使って、SIGLEC−BMSタンパク質構造中の親水性領域を同定することができる。免疫原構造を示すSIGLEC−BMSタンパク質の領域ならびに他の領域およびドメインは、当技術分野で知られる他の様々な方法(Rost,B.およびSander,C.,1994,Protein 19:55−72)、例えばChou−Fasman、Garnier−Robson、Kyte−Doolittle、Eisenberg、Karplus−SchultzまたはJameson−Wolf解析などを使って、容易に同定することができる。これらの残基を含む断片は、抗SIGLEC−BMS抗体の作製には特に適している。
【0131】
免疫原として使用されるタンパク質を調製する方法、およびタンパク質とBSA、KLHなどの担体または他の担体タンパク質との免疫原複合体を作製する方法は当技術分野では周知である。治療剤を抗体に複合体化または接合する技術は周知である(Arnonら著「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Reisfeldら編「Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy」の243〜56頁(Alan R.Liss,Inc.,1985);Hellstromら「Antibodies For Drug Delivery」、Robinsonら編「Controlled Drug Delivery」第二版の623〜53頁(Marcel Dekker,Inc.,1987);Thorpe著「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、Pincheraら編「Monoclonal Antibodies’84:Biological And Clinical Applications」の475〜506頁(1985);およびThorpeら「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody Toxin Conjugates」Immune.Rev.,62:119−58(1982);Sodeeら,1997,Clin.Nuc.Med. 21:759−766)。ある場合には、例えばカルボジイミド試薬などを使った直接複合体化を利用することができ、また別の例では、Pierce Chemical Co.(イリノイ州ロックフォード)によって供給されているような連結試薬が有効であるかもしれない。
【0132】
SIGLEC−BMS免疫原の投与は、当技術分野では広く知られているように、適当な佐剤を使用し、適切な期間にわたって、注射によって行なわれる。免疫化スケジュール中は、抗体価を調べて、抗体形成の妥当性を決定することができる。
【0133】
この方法で製造されたポリクローナル抗血清も一部の用途には十分であるが、医薬組成物には、モノクローナル抗体製剤が好ましい。所望のモノクローナル抗体を分泌する不死化細胞株は、広く知られているようにリンパ球または脾細胞の不死化をもたらすKohlerおよびMilsteinの標準的方法(Nature 256:495−497)またはその変法を使って作出することができる。所望の抗体を分泌する不死化細胞株のスクリーニングは、SIGLEC−BMSタンパク質またはその断片を抗原とする免疫アッセイによって行なう。所望の抗体を分泌する適当な不死化細胞培養物が同定されたら、それらの細胞をインビトロで、または腹水で産生させる方法によって培養することができる。次に、培養上清または腹水上清から、所望のモノクローナル抗体を回収する。
【0134】
ヒト起源の新規抗体も、適当な生物学的機能を持つ抗原に対して、作製することができる。完全にヒト由来である抗体は、ヒト患者の治療的処置には特に望ましい。ヒトモノクローナル抗体は、BorrebaeckらがProc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3995−99(1988)に記載しているように、例えばSIGLEC−BMSタンパク質またはそのペプチドなどの抗原を使ってヒトリンパ球をインビトロで抗原に感作し、次にEBV形質転換を行なうか、または抗原感作リンパ球とマウスもしくはヒトリンパ球との雑種形成を行なうことによって製造することができる。
【0135】
別法として、ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子を発現させることはできないがヒト重鎖および軽鎖遺伝子を発現させることはできるマウスなどのトランスジェニック動物を使って製造することもできる。トランスジェニックマウスは、選択した抗原、例えば本発明ポリペプチドの全部または一部を使って、通常の方法で免疫化される。抗原に対するモノクローナル抗体は、通常のハイブリドーマ技術を使って製造することができる。トランスジェニックマウスが保有するヒト免疫グロブリン導入遺伝子はB細胞分化中に再配列し、続いてクラススイッチおよび体細胞突然変異を起こす。したがって、この技術を用いることにより、治療的に有用なIgG、IgAおよびIgB抗体を製造することができる。このヒト抗体製造技術の概要については、LonbergおよびHaszar(1995,Int.Rev.Immunol. 13:65−93)。ヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体を製造するこの技術の詳細な解説は、米国特許第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、および第5,545,806号に見いだすことができる。
【0136】
抗体または断片は組換え手段によって製造してもよい。SIGLEC−BMSタンパク質の所望の領域に特異的に結合する抗体領域は、複数の種に起源を持つキメラまたはCDR移植抗体との関連で製造することもできる。
【0137】
本発明の分子の用途
SIGLEC−BMSタンパク質をコードする核酸分子は、診断および/または予後判定法での使用を含めて、様々な目的に有用である。本発明の核酸分子およびタンパク質は、適切な生物学的試料中のSiglecBMSヌクレオチド配列および/またはSIGLEC−BMSタンパク質の存在および/または量を調べるために使用することができる。
【0138】
適切な生物学的試料は動物またはヒトから得ることができる。試料は、例えば脾臓、リンパ節、胸腺、骨髄、肝臓、心臓、脳、胎盤、肺、骨格筋、腎臓および膵臓から得られる試料などの細胞試料または組織試料であることができる。試料は、例えば尿、血清、血漿、痰または洗浄液などの生物学的液体であることができる。あるいは、試料は鼻、耳または咽喉のスワブ検体であってもよい。
【0139】
さらに、SIGLEC−BMSタンパク質は、様々な診断または治療モダリティ用の分子として役立ちうる抗体の産生を誘発することができる。SIGLEC−BMSタンパク質を利用して、SIGLEC−BMSタンパク質に結合する物質(例えばSIGLEC−BMSリガンド)を同定し単離すること、およびSIGLEC−BMSタンパク質の生物学的活性を調節することもできる。
【0140】
Siglec−BMSタンパク質をコードする核酸分子の用途
SIGLEC−BMSタンパク質をコードする核酸分子は、本明細書に記載するSiglecBMSヌクレオチド配列に関係するヌクレオチド配列を同定および/または単離するために、様々なハイブリダイゼーション法で使用することができる。SiglecBMS配列に関係する配列は、新たなリガンドおよび抗体の開発に有用である。ハイブリダイゼーション法は、SiglecBMS配列と同一であるかSiglecBMS配列に類似しているDNAおよびRNA配列、例えばSIGLEC−BMSホモログ、選択的スプライスアイソフォーム、対立遺伝子変異体、および突然変異型SIGLECタンパク質ならびにそれらのコードおよび遺伝子配列などを同定/単離に使用される。
【0141】
本明細書に記載するSIGLEC−BMSタンパク質をコードする核酸配列の全長または断片は、SiglecBMS配列に関係する配列を持つ核酸分子を取得するための核酸分子プローブとして使用することができる。
【0142】
一態様として、ゲノムライブラリー、例えばλファージまたはBAC(細菌人工染色体)もしくはYAC(酵母人工染色体)中に構築されたライブラリーなどをスクリーニングしてSiglec遺伝子のゲノムクローンを単離するために、SiglecBMS核酸プローブを使用する。ゲノムライブラリーから得られるSiglecBMS配列は、上流または下流非コード配列、例えばプロモーター、エンハンサー、転写終結配列などの単離に役立つ。上流配列は、適当な宿主細胞への導入時に非SiglecBMS配列を発現させる組換えDNA分子を構築するために、非SiglecBMS配列に接合することができる。もう一つの態様として、特定の組織または細胞タイプ中で発現されるcDNAクローンを単離するために、SiglecBMSプローブを使用してcDNAライブラリーをスクリーニングする。cDNAライブラリーから得られるSiglecBMS配列は、種々の細胞タイプ、組織タイプ、または種々の哺乳類対象から配列を単離するのに有用である。
【0143】
さらに、SIGLEC−BMSタンパク質をコードする核酸分子またはその断片を選択的に増幅またはクローニングするためのポリメラーゼ連鎖反応(PCRプライマーのセット)に使用されるオリゴヌクレオチドプライマー対を製造することもできる。変性/アニール/重合ステップのサイクルを何サイクルも含むPCR法(米国特許第4,965,188号)は当技術分野では周知であり、他のSIGLEC−BMSコード核酸分子の単離用に、容易に適合させることができる。
【0144】
さらに、本発明の核酸分子は、SiglecBMS核酸プローブを使って生物学的試料中に存在するSiglecBMS配列の存在および/または量を決定する診断態様にも利用することができる。
【0145】
ある診断態様には、ハイブリダイゼーション操作にSiglecBMSプローブを使って、適当な生物学的試料内に存在するSiglecBMSヌクレオチド配列の量を決定することが含まれる。
【0146】
もう一つの態様には、ハイブリダイゼーション操作にSiglecBMSプローブを使って、試験対象から得た生物学的試料中のSiglecBMS核酸分子の量を定量することが含まれる。試験試料中のSiglecBMS核酸分子の量は、正常な対象から得た参考試料中のSiglecBMS核酸分子の量と比較することができる。試験試料と参考試料の間でSiglecBMS核酸分子の量に測定可能な相違が存在することは、SiglecBMS核酸分子レベルの異常またはSiglecBMS核酸分子の欠乏に関係する疾患の存在または重症と相関するかもしれない。
【0147】
もう一つの態様として、SiglecBMS RNA転写物量の経時的なモニタリングは、様々な時点に採取した試験試料中のSiglecBMS RNA転写物の量を定量的に決定することによって達成される。様々な試料中のSiglecBMS転写物の量の相違は、SiglecBMS転写物の発現に関係する疾患の経過を表す。
【0148】
さらにもう一つの態様として、SiglecBMS転写物またはタンパク質に関係する疾患または障害が、SiglecBMS遺伝子コピー数の増加または不足によって検出される。遺伝子コピー数を検出する方法には、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH解析)による染色体マッピングが含まれる(Rowleyら,1990,PNAS USA,87:9358−9362;H.Shizuya,PNAS USA,89:8794)。SiglecBMS遺伝子コピー数の増加を決定する方法は重要である。なぜなら、この増加は、SIGLEC−BMSタンパク質に関係する疾患の重症度の増加および患者の予後不良と相関関係にあるかもしれないからである。
【0149】
そのような診断方法を実行するには、試験対象から採取した適切な生物学的試料を、試料核酸分子とプローブとをハイブリダイズさせるのに有効な条件で、SiglecBMSプローブと接触させる。同様にして、正常な対象から得た生物学的試料を、同様の条件でSiglecBMSプローブと接触させ、ハイブリダイズさせる。プローブにハイブリダイズした核酸分子の存在を検出する。相対的な量および/または定量化した量を、試験試料と参考試料との間で比較することができる。SiglecBMSプローブは、好ましくは、例えば放射性ラベル、酵素ラベル、蛍光ラベル、さらには化学発光ラベルなどの既知の検出可能ラベルのいずれかで標識される。
【0150】
ハイブリダイゼーション技術の適切な変法は、SiglecBMS配列を持つ核酸の検出に、数多く利用することができる。それらには、例えばサザン法およびノーザン法が含まれる。本発明の検出面に関係して使用することができるハイブリダイゼーション技術およびハイブリダイゼーションシステムは、例えばFalkowらの米国特許第4,358,535号に記載されているような診断アッセイを含めて、他にも知られている。もう一つのハイブリダイゼーション法として、標的核酸が1または複数の細胞内にあり、その標的核酸をSiglecBMSプローブと接触させるインサイチューハイブリダイゼーションが挙げられる。当技術分野では周知のとおり、細胞には、化学固定などの固定によってハイブリダイゼーションの準備を施し、その細胞を、SiglecBMSプローブと固定された細胞内にある核酸とのハイブリダイゼーションが可能になるような条件に置く。
【0151】
あるいは、プローブとの接触に先だって、SiglecBMS核酸を試験試料から分離する。試料から標的核酸を単離する方法は周知であり、例えば塩化セシウム勾配遠心分離、クロマトグラフィー(イオン、アフィニティー、磁気など)、およびフェノール抽出などが挙げられる。
【0152】
SIGLEC−BMSタンパク質の用途
SIGLEC−BMSタンパク質は好酸球、好中球および単球に発現し、これらの分子の発現は免疫限定的である。これは、これらのタンパク質が、好酸球または他の免疫細胞の成熟、遊走、活性化または他細胞とのコミュニケーションの調節に関与するかも知れないことを示している。したがってSIGLEC−BMSタンパク質は、喘息および他のアレルギー疾患、白血病、または炎症の発病に関与すると推測される。
【0153】
したがってSIGLEC−BMSタンパク質は薬剤開発の魅力的な標的である。SIGLEC−BMSに向けられた薬剤は、喘息における炎症、組織損傷およびリモデリング、さらには他の炎症性疾患、例えばアレルギー性鼻炎、変形性関節症、炎症性腸疾患、クローン病、慢性閉塞性肺疾患、感染、結膜炎、糸球体腎炎、関節リウマチおよび歯肉炎などを、おそらく抑制するだろう。さらに、先に発見されたSIGLECタンパク質が、いくつかのタイプの骨髄単球性白血病(monomyelocytic leukemia)で循環未成熟白血球上に検出されていることから(Elghetany,M.T.,1998,Haematologica 83:1104−1115)、SIGLEC−BMSタンパク質に向けられた薬剤は、特定タイプの白血病(例えば好酸球性白血病)の処置またはターゲティングに使用することができそうである。
【0154】
さらに、本発明のSIGLEC−BMSタンパク質および断片は、本明細書に記載するように、SIGLEC−BMSタンパク質に関係するエピトープを特異的に結合する抗体の産生を誘導するために使用することもできる(KohlerおよびMilstein,前掲)。SIGLEC−BMS抗体にはFv、Fab’およびF(ab’)2、SIGLEC−BMS抗体などの断片が含まれる。SIGLEC−BMSタンパク質の選択したドメインまたは領域と免疫反応するSIGLEC−BMS抗体はとりわけ有用である。興味あるドメインとしては、例えばSIGLEC−BMSタンパク質の細胞外ドメインおよび細胞質ドメインが挙げられる。
【0155】
ある態様では、SIGLEC−BMSタンパク質に関係するタンパク質(例えばホモログ)を得るために、SIGLEC−BMS抗体を使って発現ライブラリーをスクリーニングする。
【0156】
もう一つの態様では、不均質なタンパク質の集団を含む試料からSIGLEC−BMSタンパク質を濃縮または精製するために、SIGLEC−BMS抗体を使用する。濃縮および精製法には従来の技術、例えば免疫アフィニティー法が含まれる。一般に、免疫アフィニティー法には、次のステップが含まれる:固形支持マトリックスをSIGLEC−BMS抗体と連結することによって、SIGLEC−BMSタンパク質と特異的に結合するアフィニティーマトリックスを調製する;連結アフィニティーマトリックスを、試料中のSIGLEC−BMSタンパク質が連結アフィニティーマトリックスに結合することができるような条件で、試料と接触させる;連結アフィニティーマトリックスに結合しなかった非SIGLEC−BMSタンパク質を除去することによって、SIGLEC−BMSタンパク質を濃縮または精製する。さらに、SIGLEC−BMSタンパク質をアフィニティーマトリックスから溶出させるステップを含めてもよい。所望のタンパク質またはタンパク質複合体のアフィニティー濃縮に関する大まかなステップおよび条件は「Antibodies:A Laboratory Manual」(Harlow,E.およびLane,D.,1988,CSHL,ニューヨーク州コールドスプリング)に見いだすことができる。
【0157】
SIGLEC−BMS抗体は、SIGLEC−BMSタンパク質を発現させる細胞を検出、選別、単離するためにも使用される。SIGLEC−BMS陽性(+)細胞は種々の生物学的試料中に検出される。細胞上にSIGLEC−BMSタンパク質が(単独で、または他の細胞表面マーカーと一緒に)存在することを利用して、SIGLEC−BMSを発現させる細胞を他の細胞から識別し単離(例えば選別)することができる。SIGLEC−BMS抗体を使って、個々の対象または患者から比較的純粋なSIGLEC−BMS陽性細胞を大量に生成し、それらを組織培養で成長させることができる。このようにして、例えば個々の対象の細胞を限られた生検試料から増殖させた後、夾雑細胞の潜在的交絡変数を伴わずに、診断および予後遺伝子、タンパク質、染色体異常の存在、遺伝子発現プロファイル、または他の適当な遺伝子型および表現型の特徴について調べることができる。同様に、患者別のワクチンおよび細胞免疫療法を、そのような細胞調製物から作り出すこともできる。SIGLEC−BMS陽性細胞を検出、選別および単離する方法では、インジウム111(または他の同位体)を使った蛍光または免疫シンチグラフィなどの様々な撮像法が使用される。
【0158】
本発明の抗体には複数の診断用途がある。例えば、骨髄異形成症候群ではCD33がアップレギュレートされ(Elghetamy,1998,前掲)、白血病の診断マーカーとして使用される。本発明は、対象(例えば動物またはヒト対象)におけるSIGLEC−BMSタンパク質の存在または欠乏に関係する疾患を診断する方法を提供する。一態様として、この方法は、1または複数の本発明の抗体を使って、試料(例えば細胞試料または生物学的液体試料)中のSIGLEC−BMSタンパク質の量を定量的に決定することを含む。次に、そのようにして決定した量は、正常対象から採取した試料中の量と比較することができる。試料中に測定できるほど異なる量が存在する(すなわち試験試料中のSIGLEC−BMSタンパク質の量が正常試料中のSIGLEC−BMSタンパク質の量より多いか、または少ない)という事実により、疾患の存在が示される。
【0159】
抗体が検出可能なラベルを持っている場合、本発明の抗SIGLEC−BMS抗体は、画像診断法にはとりわけ有用だろう。本発明の実施にあたって、本方法では、SIGLEC−BMSタンパク質またはその断片を認識する任意のモノクローナル抗体、例えばモノクローナル抗体Siglec10−9、Siglec10−13、Siglec10−14、Siglec10−27またはSiglec10−61のその標的抗原に対する免疫特異的結合を競合的に阻害する抗原結合領域を持つ抗体などを使用することができるだろう。
【0160】
本発明は、適切な生物学的試料中のSIGLEC−BMSタンパク質の検出に役立つ様々な免疫学的アッセイを提供する。適切な検出可能マーカーとしては、例えば放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、発色団、金属キレーター、ビオチン、または酵素などが挙げられるが、これらに限るわけではない。そのようなアッセイは、一般に、SIGLEC−BMSタンパク質を認識し結合する1または複数の標識SIGLEC−BMS抗体を含み、当技術分野で周知の様々な免疫学的アッセイ形式、例えば沈殿、凝集、補体結合、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、酵素連結免疫蛍光アッセイ(ELIFA)(H.Liuら,1998,Cancer Research 58:4055−4060)、免疫組織化学的解析などを含む。
【0161】
さらに、SIGLEC−BMSを発現させる細胞を検出する免疫学的撮像法、例えば標識SIGLEC−BMS抗体を使ったラジオシンチグラフィ撮像法なども、本発明によって提供される。そのようなアッセイは、SIGLEC−BMSタンパク質を発現させる細胞の数および/または位置の検出およびモニタリングに臨床上有用だろう。
【0162】
さらに本発明は、罹患した対象から採取した生物学的試験試料を正常な対象から採取した参考試料と比較した場合の試料中のSIGLEC−BMSタンパク質の量および分布の相違を決定する方法も提供する。一態様として、この方法は、試験試料および参考試料を、SIGLEC−BMSタンパク質との複合体を特異的に形成する抗SIGLEC−BMS抗体と接触させ、よって試験試料および参考試料中のSIGLEC−BMSの量および分布の相違を検出する手段とすることを含む。
【0163】
さらに本発明は、様々な時点で試験対象から採取した試料中のSIGLEC−BMSタンパク質の量を測定することによって、試験対象におけるSIGLEC−BMSに関係する疾患または障害の経過をモニタリングする方法を提供する。これは、試料中のSIGLEC−BMSの量の経時変化を決定する目的で行なわれる。疾患または障害の経過のモニタリングにより、処置のタイミング、用量、およびタイプを、経時的に最適化することができる。一態様として、本方法は、対象から採取した第1試料でSIGLEC−BMSタンパク質の存在を定量的に決定し、そのようにして決定した量を、異なる時点で採取した同じ対象の第2試料中に存在する量と比較することを含み、決定した量の相違は疾患の経過を表す。
【0164】
本発明の一態様は、候補対象における喘息状態を診断する方法である。この方法は、候補喘息対象の生物学的試料(例えば試験試料)および正常な対照の試験試料(例えば参考試料)を得ること;試験試料および参考試料を、SIGLEC−BMSタンパク質との複合体を特異的に形成する抗SIGLEC−BMS抗体と接触させること;そのようにして形成された試験試料および参考試料中の複合体を検出することを含み、試験試料中および参考試料中に形成される複合体の量の測定可能な相違は喘息状態を表す。血流中または洗浄液中のSIGLEC−BMSレベルの上昇は、喘息の状態または重症度を検出する手段になりうる。この検出は、SIGLEC−BMSタンパク質と反応する抗体を用いるELISAまたは類似の方法によって行なうことができる。
【0165】
SIGLEC−BMS抗体は、SIGLEC−BMSタンパク質の生物学的活性を調節(例えば阻害または活性化)するために、またはSIGLEC−BMSタンパク質を発現させる細胞に抗炎症薬などの治療剤をターゲティングするために、治療的に使用することもできる。例えばSIGLEC−BMSを発現させる細胞は、SIGLEC−BMSタンパク質を発現させる細胞と結合する抗体を使って、標的にすることができる。SIGLEC−BMS抗体と細胞との結合は、SIGLEC−BMSタンパク質の生物学的活性を低下させ、よってSIGLEC−BMS発現細胞の成長を阻害し、SIGLEC−BMSタンパク質の異常な細胞発現に関係する疾患を減少させる。
【0166】
SIGLEC−BMS抗体またはその断片を、第2の分子、例えば治療剤(例:細胞毒性剤)などに結合して、イムノコンジュゲートを得ることもできる。このイムノコンジュゲートは、第2の分子をSIGLEC−BMS陽性細胞にターゲティングすることによってSIGLEC−BMS陽性細胞の成長を阻害するために使用することができる(DeVita,Jr.,V.T.ら編「Cancer:Principles and Practice of Oncology」第4版,1993,J.B.Lippincott Co.,フィラデルフィア)の2624〜2636頁、Vitetta,E.Sら著「Immunotoxin Therapy」)。
【0167】
治療剤としては、例えば抗腫瘍薬、細胞毒、放射性物質、サイトカイン、第2の抗体または酵素などが挙げられるが、これらに限るわけではない。細胞毒性剤の例には、リシン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン、グルココルチコイド、および他の化学療法剤、ならびに放射性同位体があるが、これらに限らない。
【0168】
さらに本発明は、プロドラッグを細胞毒性薬に変換する酵素に本発明の抗体を連結する態様を提供する。もう一つの選択肢として、抗体を酵素、リンホカインまたはオンコスタチンに連結する。
【0169】
Fab、Fab’またはF(ab’)などの免疫反応性断片は免疫グロブリン全体よりも免疫原性が一般に低いので、これらの断片を使用することは、多くの場合、好ましく、治療との関連では特にそうである。本発明は、医薬的に許容できる担体中に本発明のモノクローナル抗体または抗イディオタイプモノクローナル抗体を含む医薬組成物も提供する。
【0170】
SIGLEC−BMSリガンドのスクリーニング
本発明のもう一つの側面は、SIGLEC−BMSタンパク質と結合し(例えばリガンド)かつ/またはその生物学的活性を調節するような興味ある薬剤を同定するためのスクリーニング方法に関する。SIGLEC−BMSタンパク質は好酸球で発現されるので、これらの薬剤は好酸球または他の免疫細胞の成熟、遊走、活性化、または他細胞とのコミュニケーションの調節に関与しているかもしれない。したがって、SIGLEC−BMSタンパク質と結合しその生物学的活性を調節する薬剤は、喘息および他のアレルギー疾患の特定の症状、白血病の軽減に有効であり、炎症を減少させるかもしれない。
【0171】
通例、そのようなスクリーニング方法の目標は、標的ポリペプチド(例えばSIGLEC−BMS)に結合し、標的ポリペプチドの生物学的活性の変化、例えば標的ポリペプチドの活性化または阻害を引き起し、よってSIGLEC−BMSタンパク質の異常な細胞発現に関係する疾患を減少させることである。興味ある薬剤は、候補薬剤の集団から同定される。
【0172】
これらのスクリーニング法には、SIGLEC−BMSタンパク質に結合する薬剤および細胞構成成分(例えばSIGLEC−BMSのリガンド)を検出し、それを同定するためのアッセイが含まれる。一態様として、スクリーニングアッセイには、SIGLEC−BMSタンパク質と試験薬剤または細胞抽出物の一成分との会合(例えば結合)が可能な条件で、SIGLEC−BMSタンパク質を、試験薬剤または細胞抽出物と接触させること;およびSIGLEC−BMSタンパク質と会合した薬剤または成分を含む複合体が形成されるかどうかを決定することが含まれる。これらのスクリーニング方法は、ハイスループットスクリーニング法での使用に適している。
【0173】
薬剤とSIGLEC−BMSタンパク質との結合は、分子量のシフト、または結合していないSIGLEC−BMSタンパク質の生物学的活性の変化、またはツーハイブリッドシステムにおけるレポーター遺伝子の発現(Fields,S.およびSong,O.,1989,Nature 340:245−246)を使ってアッセイすることができる。薬剤/細胞成分がSIGLEC−BMSタンパク質に結合するかどうかを確認するために使用される方法は、主として、使用するSIGLEC−BMSタンパク質の性質に基づく。例えば、ゲル遅延アッセイ(gel retardation assay)を使って、薬剤がSIGLEC−BMSまたはその断片に結合するかどうかを決定する。別法として、免疫検出およびバイオチップ(例えば米国特許第4,777,019号)技術を採用して、SIGLEC−BMSタンパク質と共に使用する。SIGLEC−BMSタンパク質と結合する薬剤を同定するもう一つの方法では、免疫型細胞由来の糖脂質抽出物を使ったTLCオーバーレイ(TLC overlay)アッセイを利用する(K.M.Abdullahら,1992,Infect.Immunol. 60:56−62)。当業者は、特定の薬剤がSIGLEC−BMSタンパク質に結合するかどうかを決定するために、当技術分野で知られる数多くの技術を容易に利用することができる。
【0174】
上記の代わりに、または上記に引き続いて、SIGLEC−BMS活性のアゴニストおよびアンタゴニストを同定する手段として、複合体の一部であるSIGLEC−BMSタンパク質の生物学的活性を解析することができる。例えば、CD22を結合する細胞成分を単離するために使用された方法(D.Sgroiら,1993,J.Biol.Chem. 268:7011−7018;L.D.Powellら,1993,J.Biol.Chem. 268:7019−7027)に変更を加えて、細胞抽出物を抗SIGLEC−BMS抗体が固定化されているアフィニティーカラムと接触させることによって、SIGLEC−BMSタンパク質に結合する細胞表面糖タンパク質を単離することができるようにする。
【0175】
ある薬剤がSIGLEC−BMSタンパク質の生物学的活性を低下させる場合、本明細書では、その薬剤はSIGLEC−BMS活性をアンタゴナイズ(拮抗)するという。好ましいアンタゴニストは、SIGLEC−BMSの生物学的活性を選択的にアンタゴナイズし、他の細胞タンパク質に影響を及ぼさない。さらに、好ましいアンタゴニストは、SIGLEC−BMS活性を50%以上、より好ましくは90%以上低下させ、最も好ましくは全てのSIGLEC−BMS活性を除去する。
【0176】
ある薬剤がSIGLEC−BMSタンパク質の生物学的活性を増加させる場合、本明細書では、その薬剤はSIGLEC−BMS活性をアゴナイズ(agonize)するという。好ましいアゴニストはSIGLEC−BMSの生物学的活性を選択的にアゴナイズし、他のどの細胞タンパク質にも影響を及ぼさない。さらに、好ましいアンタゴニストは、SIGLEC−BMS活性を50%以上、より好ましくは90%以上増加させ、最も好ましくはSIGLEC−BMS活性を倍加する。
【0177】
本発明のアッセイのもう一つの態様では、酵母ツーハイブリッドシステム(Fields,S.およびSong,O.,前掲)を使って、または結合捕捉(binding−capture)アッセイ(Harlow,前掲)を使って、SIGLEC−BMSタンパク質に結合する薬剤および細胞構成成分をスクリーニングする。一般に、酵母ツーハイブリッドシステムはレポーター遺伝子を保有する酵母宿主細胞で行なわれ、DNA結合ドメインと転写活性化ドメインとを持つGAL転写因子のモジュール性に基づいている。ツーハイブリッドシステムは、DNA結合ドメインを含む組換えタンパク質と、転写活性化ドメインを含むもう一つの組換えタンパク質との物理的相互作用によってモジュール式転写因子の転写活性を復元し、よってレポーター遺伝子の発現を引き起すことに依拠している。ツーハイブリッドシステムで使用される組換えタンパク質の一方は、SIGLEC−BMSの結合パートナーをスクリーニングするために、SIGLEC−BMSコード配列を含むように構築することができる。酵母ツーハイブリッドシステムを使って、cDNA配列ライブラリー(G.J.Hannonら,1993,Genes and Dev. 7:2378−2391)およびランダムアプタマーライブラリー(J.P.Manfrediら,1996,Molec.And Cell.Biol. 16:4700−4709)またはセミランダムアプタマーライブラリー(M.Yangら,1995,Nucleic Acids Res. 23:1152−1156)をSIGLEC−BMSリガンドに関してスクリーニングすることができる。
【0178】
本明細書に記載のスクリーニングアッセイに使用されるSIGLEC−BMSタンパク質としては、例えば単離されたSIGLEC−BMSタンパク質、SIGLEC−BMSタンパク質の断片、SIGLEC−BMSタンパク質を発現させるように改変された細胞、SIGLEC−BMSタンパク質を発現させるように改変された細胞の画分などが挙げられるが、これらに限るわけではない。
【0179】
SIGLEC−BMSタンパク質との結合および/またはSIGLEC−BMSタンパク質活性の調節について試験される候補薬剤は、例えばペプチド、抗体、小分子、ビタミン誘導体、および炭水化物などであることができる。SIGLEC−BMSタンパク質への結合に関して試験される薬剤の構造上の性質に関して制約がないことは、当業者には容易に理解することができる。薬剤クラスの一つは、SIGLEC−BMSタンパク質のアミノ酸配列に基づいて選択されたアミノ酸配列を持つペプチド剤である。小ペプチド剤はSIGLEC−BMSタンパク質の競合阻害剤として働くことができる。
【0180】
SIGLEC−BMSタンパク質との結合および/またはSIGLEC−BMSタンパク質活性の調節について試験される候補薬剤は無作為に選択されるか、または合理的に選択される。ある薬剤がSIGLEC−BMSタンパク質の特異的配列を考慮しないで無作為に選ばれる場合、本明細書では、その薬剤は無作為に選択されるという。無作為に選択される薬剤の例は、化合物ライブラリー、ペプチドコンビナトリアルライブラリーの構成要素、ある生物の成長培地の構成成分、または植物抽出物である。
【0181】
ある薬剤が薬剤の作用に関係する標的部位(SIGLEC−BMSタンパク質)の配列および/またはそのコンフォメーションに基づいて無作為にではなく選択される場合、本明細書では、その薬剤は合理的に選択されるという。薬剤は、SIGLEC−BMSタンパク質を構成するペプチド配列を利用することによって合理的に選択される。例えば、合理的に選択されたペプチド剤は、SIGLEC−BMSタンパク質の選択された断片と同一なアミノ酸配列を持つペプチドであることができる。
【0182】
SIGLEC−BMSタンパク質との結合および/またはSIGLEC−BMSタンパク質活性の調節について試験される細胞抽出物は、例えば細胞または組織の水性抽出物、細胞または組織の有機抽出物、または部分精製細胞画分などである。本発明のスクリーニング法で使用される細胞抽出物の供給源に関して制約がないことは、当業者には容易に理解することができる。
【0183】
本発明の医薬組成物
本発明は、医薬有効量の可溶性SIGLEC−BMS分子を含む免疫系疾患処置用の医薬組成物を包含する。本医薬組成物は、可溶性SIGLEC−BMSタンパク質分子および/または核酸分子および/または前記分子をコードするベクターを含むことができる。好ましい態様として、可溶性SIGLEC−BMSタンパク質分子は、図6Bに示すSIGLEC−10の細胞外ドメインのアミノ酸配列を持つ。本組成物は、例えば薬物毒素、酵素、抗体またはコンジュゲートなど(ただしこれらに限らない)の他の治療薬をさらに含んでもよい。
【0184】
一態様として、本医薬組成物は、無修飾の、または治療剤(例えば薬物、毒素、酵素または第2の抗体)に結合された、または組換え型(例えばキメラ抗体または二重特異性抗体)のSIGLEC抗体を含むことができる。本組成物は他の抗体またはコンジュゲート(例えば抗体カクテル)をさらに含んでもよい。
【0185】
本医薬組成物は、好ましくは、適切な担体および佐剤も含む。適切な担体および佐剤には、本発明のSIGLEC−BMS分子と混合した場合にこの分子の活性を保ち、かつ対象の免疫系とは反応しない任意の物質が包含される。適切な担体および佐剤の例としては、ヒト血清アルブミン、イオン交換体、アルミナ、レシチン、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、および硫酸プロタミンなどの塩類または電解質が挙げられるが、これらに限らない。他の例には、任意の標準的医薬担体、例えばリン酸緩衝食塩溶液、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、および様々なタイプの湿潤剤などが含まれる。他の担体としては、例えば滅菌溶液、被覆錠を含む錠剤、およびカプセルなどを挙げることができる。通例、このような担体は賦形剤、例えばデンプン、ミルク、糖、ある種の粘土、ゼラチン、ステアリン酸またはその塩、マグネシウムまたはステアリン酸マグネシウム、タルク、植物油脂、ゴム、グリコール類、または他の既知の賦形剤を含む。このような担体は、香料および着色料または他の成分を含んでもよい。このような担体を含む組成物は、周知の従来法によって製剤化される。そのような組成物は、例えばリポソームなどの種々の脂質組成物内に製剤化したり、ポリマーミクロスフェアなどの種々のポリマー組成物中に製剤化したりしてもよい。
【0186】
本発明の医薬組成物は、通常の投与法、例えば静脈内(i.v.)投与、腹腔内(i.p.)投与、筋肉内(i.m.)投与、皮下投与、経口投与、坐剤としての投与、または局所外用、またはミニ浸透圧ポンプなどの徐放装置の植込みなど(ただしこれらに限るわけではない)を使って、対象に投与することができる。本発明の医薬組成物は、例えば溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、坐剤、ポリマーマイクロカプセルまたは微小胞、リポソーム、および注射用または注入用液など、種々の剤形をとることができる。好ましい剤形は、投与方式および治療用途に依存する。
【0187】
本発明の組成物に関する最も有効な投与方式および用法は、多くの要因、例えば患部組織のタイプ、処置しようとする自己免疫疾患のタイプ、疾患の重症度、対象の健康状態、薬剤による処置に対する対象の応答など(ただしこれらに限らない)に依存する。したがって薬剤の投与量は対象および投与方式によって様々である。
【0188】
可溶性SIGLEC−BMS分子は、適当な量で、適切な期間(例えば時間および/または複数回)、対象に投与することができる。本発明の医薬組成物の投与は、様々な時間にわたって行なうことができる。一態様として、本発明の医薬組成物は1時間以上にわたって投与することができる。さらに、疾患の重症度および当技術分野で知られている他の要因によっては、投与を繰り返すこともできる。
【0189】
本発明を例証し、当業者がそれを構成して利用するのを助けるために、以下に実施例を記載する。方法論および結果は、処置の目標および使用する手法によって異なりうる。本実施例は、決して、本発明の範囲を詳細に限定しようとするものではない。
【0190】
実施例1
以下に、SiglecBMS cDNAクローン、cDNAクローンの配列、およびSIGLEC−BMSポリペプチドを得るために使用した方法を説明する。
【0191】
正常組織と比較して罹患免疫組織中で転写物発現の増加を示すヒト遺伝子配列を求めて商用ESTデータベース(Incyte ESTデータベース、カリフォルニア州パロアルト)を検索し、興味あるcDNAクローンを同定し、それらのクローンをデータベースの所有者(Incyte)から取得し、クローンのインサート全体を配列決定することによって、SiglecBMSヌクレオチド配列を持つ核酸分子を得た。具体的には、検索により、喘息患者由来の好酸球で優先的に発現されるヌクレオチド配列SiglecBMS(−L3a)が同定された。同じESTデータベースをさらにマイニングして、cDNAクローンを取得することにより、SiglecBMS(−L3b、−L3c、−L3d、−L4a、−L5d、および−L5b)のヌクレオチド配列を持つ他のcDNAクローンを得た。
【0192】
Qiagen BioRobot 9600を使って、個々のcDNAクローンからDNAを単離した。次に、精製されたDNAを、ダイターミネーター法を使ったサイクルシークエンシングに掛けた後、ABI377シークエンサー(Perkin−Elmer)でのアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、検出した。
【0193】
SiglecBMS cDNAクローンのヌクレオチド配列を、両方の鎖の3つのオープンリーディングフレーム(ORF)の全てで解析して、コードされているタンパク質の予想アミノ酸配列を決定した。ヌクレオチド配列解析は、SeqWebバージョン1.1(GCG、Genetics Computer Group Wisconsin Package Version 10、ウィスコンシン州マディソン、1999)を使って行ない、アミノ酸配列の予測には翻訳ツール(Translate Tool)を、またモチーフの予測には構造解析ツール(Structure Analysis Tool)を使用した。全てのクローンにいくつかのIg様ドメインが同定されたので、GCGのパイルアップツール(Pileup Tool)を使ったさらなる類似性解析が可能になった(Unixバージョン9.1、1997)。この類似性解析に基づいて、さらに1つのIgドメインが、L3クローンに同定された。各クローンのアミノ酸配列を比較したところ、これらのcDNAクローンはヒトCD33(Siglec−3)と配列相同性を持つタンパク質をコードする配列を含むことが示唆された。これらのヌクレオチド配列をSiglecBMS(配列番号1〜7、15)と命名し、タンパク質配列(配列番号8〜14、16)をSIGLEC−BMSと命名した。
【0194】
ウェブ型実験室管理データシステムPHREDを使って配列データを追跡、加工し(Ewing,B.,Hillier,L.,Wendl,M.およびGreen,P.,1998,Genome Research 8:175−185「Basecalling of automated sequencer traces using PHRED. I. Accuracy assessment」)、PHRAPアルゴリズムを使って、個々の配列を連続した断片にアセンブルした(Ewing,B.およびGreen,P.,1998,Genome Research 8:186−194「Basecalling of automated sequencer traces using PHRED. II. Error probabilities」)。アセンブルしたDNAデータは、CONSED(Gordon,D.,Abajian,C.およびGreen,P.,1998,Genome Research 8:195−202「Consed: A graphical tool for sequence finishing」)を使って編集して、品質を手作業で点検し、配列ギャップを閉じて隣接させるためのプライマーを設計すると共に、配列内のあいまいさを解消した。
【0195】
SIGLEC−BMS−L3a のアミノ酸配列
SiglecBMSL3aのヌクレオチド配列(配列番号1、図2A、クローン526604)は、SiglecBMSL3転写物の選択的スプライス型に相当すると予想される。SiglecBMSL3aヌクレオチド配列は、CD33と共通する構造的特徴を示す584アミノ酸長のオープンリーディングフレームをコードする。このヌクレオチド配列は、配列番号8(図2B)に記載のアミノ酸配列を持つSIGLEC−BMS−L3aタンパク質をコードする。SIGLEC−BMS−L3aは、N末端の42アミノ酸疎水性シグナルペプチド、3つのIg様ドメインを含む397アミノ酸細胞外ドメイン、25アミノ酸残基の膜貫通ドメイン、および2つの推定ITIMモチーフを含む120アミノ酸細胞内ドメインを持っている。
【0196】
SIGLEC−BMS−L3aは喘息患者の好酸球で発現する。したがって、SIGLEC−BMS−L3aは、接着を調節し、細胞内シグナルを生成して、好酸球の成熟、動員、および炎症部位での活性化を支持する細胞表面受容体であるだろう。したがって、SIGLEC−BMS−L3aは、喘息および免疫系の他の疾患にとって潜在的標的であることが判明するだろう。
【0197】
SIGLEC−BMS−L3b のアミノ酸配列
配列番号2に示すSiglecBMSL3bのヌクレオチド配列(図3A、クローン527595)は、SiglecBMSL3aに関係する部分転写物に相当する。SiglecBMSL3bヌクレオチド配列は、CD33と共通する構造的特徴を示すがSIGLEC−BMS−L3aの配列と比較すると最初の17アミノ酸残基を欠く620アミノ酸長のORFをコードする。このヌクレオチド配列は、不完全なN末端15アミノ酸疎水性シグナルペプチド、3つのIg様ドメインを含む475アミノ酸細胞外ドメイン、SIGLEC−BMS−L3aにはないアミノ酸インサート配列、25アミノ酸残基の膜貫通ドメイン、および2つの推定ITIMモチーフを含む120アミノ酸細胞内ドメインを持つ配列番号9(図3B)に記載のアミノ酸配列を有するSIGLEC−BMS−L3bタンパク質をコードする。
【0198】
SIGLEC−BMS−L3c のアミノ酸配列
配列番号3に示すSiglecBMSL3cのヌクレオチド配列(図4A、クローン652995)は、SiglecBMSL3aに関係する部分転写物に相当する。SiglecBMSL3cヌクレオチド配列は、CD33と共通する構造的特徴を示すがSIGLEC−BMS−L3aの配列と比較すると最初の122アミノ酸残基を欠く573アミノ酸長のORFをコードする。このヌクレオチド配列は、3つのIg様ドメインを含む428アミノ酸残基長の不完全な細胞外ドメイン、SIGLEC−BMS−L3dには見つかるがSIGLEC−BMS−L3bにはない58アミノ酸のインサート配列、25アミノ酸残基の膜貫通ドメイン、および2つの推定ITIMモチーフを含む120アミノ酸細胞内ドメインを持つSIGLEC−BMS−L3cタンパク質(配列番号10、図4B)をコードする。
【0199】
SIGLEC−BMS−L3d のアミノ酸配列
配列番号4に示すSiglecBMSL3dのヌクレオチド配列(図5A、クローン1709963)は、SiglecBMSL3aに関係する部分転写物に相当する。SiglecBMSL3dヌクレオチド配列は、CD33と共通する構造的特徴を示すがSIGLEC−BMS−L3aの配列と比較すると最初の45アミノ酸残基を欠く431アミノ酸長のORFをコードする。このヌクレオチド配列は、不完全な細胞外ドメイン、4つのIg様ドメイン、および20アミノ酸残基の膜貫通ドメインを含む410アミノ酸残基長のSIGLEC−BMS−L3dタンパク質(配列番号11、図5B)をコードする。
【0200】
SIGLEC−BMS−L4a のアミノ酸配列
配列番号5に示すSiglecBMSL4aのヌクレオチド配列(図7A、クローン2895823)は、Siglec転写物の選択的スプライス型に相当する。SiglecBMSL4aヌクレオチド配列は、CD33と共通する構造的特徴を示すが残基数未知のN末端アミノ酸残基を欠く467アミノ酸長のオープンリーディングフレームをコードする。このヌクレオチド配列は、2つのIg様ドメインを含む267アミノ酸細胞外ドメイン、24アミノ酸残基の膜貫通ドメイン、および推定ITIMまたはITAMモチーフを含む30アミノ酸細胞内ドメインを持つSIGLEC−BMS−L4aタンパク質(配列番号12、図7B)をコードする。
【0201】
SIGLEC−BMS−L5a のアミノ酸配列
配列番号6に示すSiglecBMSL5aのヌクレオチド配列(図8A、クローン3344926)は、Siglec転写物の選択的スプライス型の完全長cDNAに相当する。SiglecBMSL5aヌクレオチド配列は、CD33と共通する構造的特徴を示す464アミノ酸長のオープンリーディングフレームをコードする。このヌクレオチド配列は、2つのIg様ドメインを含む262アミノ酸細胞外ドメイン、24アミノ酸残基の膜貫通ドメイン、および推定ITIMまたはITAMモチーフを含む30アミノ酸細胞内ドメインを持つSIGLEC−BMS−L5aタンパク質(配列番号13、図8B)をコードする。
【0202】
SIGLEC−BMS−L5b のアミノ酸配列
配列番号7に示すSiglecBMSL5bのヌクレオチド配列(図9A、クローン3403156)は、SiglecBMSL5aに関係する転写物、例えばSiglecBMSL5aの選択的スプライス型に相当する。SiglecBMSL5bヌクレオチド配列は、CD33と共通する構造的特徴を示す287アミノ酸長のオープンリーディングフレームをコードする。このヌクレオチド配列は、N末端15アミノ酸疎水性シグナルペプチド、Ig様ドメインを1つだけ含む155アミノ酸細胞外ドメイン、およびこのタンパク質のC末端の読み枠をシフトさせるSIGLEC−BMS−L5bにはない配列を有するインサートを持つSIGLEC−BMS−L5bタンパク質(配列番号14、図9B)をコードする。SIGLEC−BMS−L5bの配列は膜貫通ドメインを欠いている。
【0203】
実施例2
ノーザンブロット技術を使って行なった種々のヒト組織におけるSiglecBMS転写物の発現パターンの解析を以下に説明する。
【0204】
ノーザンブロットメンブレン(図10A)はClontech(MTN Blots、Clontech、カリフォルニア州パロアルト)から入手した。メンブレンの各レーンには、種々のヒト組織から抽出された約1〜2マイクログラムのポリA+RNAが含まれていた。ヒト脾臓、リンパ節、胸腺、PBL、骨髄および胎児肝臓由来のRNA試料を含むブロット(MTN Human Immune System IIブロット)と、ヒト脳、心臓、骨格筋、結腸、胸腺、脾臓、腎臓、肝臓、小腸、胎盤、肺、およびPBLを含むブロット(MTN Human 12レーンブロット)とを、開始コドンATGから始まる完全長SiglecBMSL3を参考配列として、それぞれPCR法によって作製したプローブとハイブリダイズさせた(図10B)。L3プローブは、SiglecBMS3a、−3b、−3c、および−3dに共通するヌクレオチド位置596〜1328のヌクレオチド配列を含む。S1プローブは、SiglecBMS3cおよび−3dに共通するヌクレオチド位置428〜593のスプライス変異体配列を含む。S2プローブは、SiglecBMS3bおよび−3cに共通するヌクレオチド位置1341〜1578のスプライス変異体配列を含む。3つのプローブは全てSiglecBMSL3c配列(例えば652995)から増幅した。さらに、β−アクチンプローブを対照プローブとして使用した(Clontech、カリフォルニア州パロアルト)。
【0205】
ノーザン解析用プローブの作製に使用するPCRプライマーには、以下のプライマーを含めた:
L3:
5’(596−616) TGC TCA GCT TCA CGC CCA GAC(配列番号33)
3’(1319−1328) TGC ACG GAG AGG CTG AGA GA(配列番号34)
プローブ長:732bp
S1:
5’(428−446) CTC AGA AGC CTG ATG TCT A(配列番号35)
3’(576−593) GAG AAG TGG GAG GTC GTT(配列番号36)
プローブ長:65bp
S2:
5’(1341−1359) CTG CTG GGC CCC TCC TGC(配列番号37)
3’(1559−1578) GAC GTT CCA GGC CTC ACA G(配列番号38)
プローブ長:237bp
参考配列:ATGから始まる完全長BMSL3。
【0206】
プローブは個別に、ランダムプライミングによって32P−dCTPで標識し、Chromospin 100カラム(Clontech)で精製し、熱変性した。メンブレンを、ExpressHyb溶液(Clontech)中、連続的に振とうしながら、68℃で30分間プレハイブリダイズした。メンブレンを、変性プローブ(約200万cpm/ml)と共に、新しいExpressHyb溶液中、連続的に振とうしながら、68℃で4時間インキュベートした。メンブレンを、0.05%SDSを含む2×SSC中、室温で40分間洗浄し、その間に洗浄液を数回交換した。次に、0.1%SDSを含む0.1×SSC中、50℃で40分間の洗浄を、洗浄液を数回交換して行なった。メンブレンのハイブリダイゼーションパターンはPhosphorImager 445 SI(Molecular Dynamics、カリフォルニア州サニーベール)を使って得た。
【0207】
L3プローブにより、脾臓、リンパ節およびPBLを含むヒト免疫組織中に、4.4kbの転写物が容易に検出された。それより低レベルのSiglecBMSL3転写物が、ヒト胸腺、骨髄および胎児肝臓にも検出された(図10A)。SiglecBMSL3転写物は、脳、心臓、骨格筋、結腸、腎臓、肝臓、小腸、胎盤または肺を含むヒト非免疫組織には検出されなかった。
【0208】
実施例3
標準的な逆転写酵素PCR増幅技術を使って行なった種々のヒト組織におけるSiglecBMS転写物の発現パターンの解析を以下に説明する。
【0209】
逆転写酵素PCR法を使って、初代ヒト細胞および細胞株から抽出したRNAならびに市販のヒト器官cDNAにおけるSiglecBMS転写物の組織分布を決定した。ClontechからHuman I、IIおよびImmune Multiple Tissue cDNA Panelを購入した。さらに、単球、TNF刺激内皮細胞、脾臓、HL−60細胞およびJurkat細胞から、Trizol(Gibco BRL、ニューヨーク州グランドアイランド)を製造者の指示通りに使って、RNAを抽出した。
【0210】
抽出したRNAを、以下の反応混合物を使って、cDNAに逆転写した:ジエチルシアノホスフェート処理(DEPC)水8マイクロリットル、5×第1鎖バッファー(Gibco BRL)4マイクロリットル、10mMデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)(Gibco BRL)2マイクロリットル、0.1M DTT(Gibco BRL)2マイクロリットル、RNアーゼ阻害剤(40U、Roche Molecular Biochemicals、ニュージャージー州インディアナポリス)1マイクロリットル、10×ヘキサヌクレオチド(Roche Molecular Biochemicals)2マイクロリットル、およびSuperScript II(Gibco BRL)1マイクロリットル中、各試料から得た全RNA 5マイクログラム。反応混合物を37℃で1時間インキュベートした後、75℃で15分間インキュベートし、4℃で保存した。カスタムプライマーをLife Technologies(メリーランド州ゲーサーズバーグ)から入手し、各プライマー対について配列決定パラメーターを最適化した。PCR産物の品質を1.2%アガロースゲルでの電気泳動によって決定した。PCRは、「Ready−To−Go」PCR Beads(Pharmacia Biotech Inc.,ニュージャージー州ピスカタウェイ)を使って、以下の物質を含む25マイクロリットルの反応混合物中で行なった:1.5U Taqポリメラーゼ、10mM Tris−HCl(室温でpH9.0)、50mM KCl、1.5mM MgCl、200μMの各dNTP、およびBSAを含む安定剤、0.2μMの各プライマー、および1マイクロリットルのRT−PCR反応生成物または各2μlのClontech製市販MTC Human I、IIおよびImmune cDNAパネル。
【0211】
PCR反応に使用するPCRプライマー配列には、以下の配列を含めた:
P1プライマー:
5’(−96/−77) CCT TCG GCT TCC CCT TCT GC(配列番号39)
3’(560−579) CGT TGG TTT GGT TCC TTG G(配列番号40)
P2プライマー:
5’(852−870) CAC ACT GAG CTG GGT CCT G(配列番号41)
3’(1560−1578) GAC GTT CCA GGC CTC ACA G(配列番号42)
P3プライマー:
5’(852−870) CAC ACT GAG CTG GGT CCT G(配列番号43)
3’(1670−1689) GAA AAG AAG AGC CGT GAT GC(配列番号44)。
【0212】
【表3】
各L3スプライス変異体の予想産物サイズ
Figure 2004516012
上の表に示すように、P3プライマーは、552bp、837bp、837bpおよび552bp長であると予想された。
結果を図11Aの表に示す。
【0213】
実施例4
SYBR Green PCR増幅技術を使って行なった種々のヒト組織、血液細胞および細胞株におけるSiglecBMS転写物の発現パターンの解析を以下に説明する。
【0214】
Human I、IIおよびImmune Multiple Tissue cDNA PanelをClontech(カリフォルニア州パロアルト)から購入した。さらに、リンパ球、好酸球、好中球、T細胞、単球、TNF刺激内皮細胞、脾細胞、HL60細胞およびJurkat細胞からRNAを得て、上記実施例3で述べたように逆転写した。SYBR Green PCR Master Mix(PE Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティー)を使ってcDNAを増幅した。SYBR Greenシステムは、内部ハウスキーピング遺伝子β−アクチンと比較した標的転写物配列の相対的定量と、増幅のリアルタイムモニタリングを可能にする(PE Biosystems,User Bulletin #2 P/N 4303859)。反応はABI−PRISM 7700 Sequence Detection System(PE Biosystems)で行なった。全ての反応を増幅曲線の直線部分でβ−アクチン遺伝子によって標準化した。
【0215】
L3遺伝子の様々な領域を増幅するために以下のプライマー対を使用した(図12A)。すなわち、L3−TMプライマー対は、SiglecBMS3a、−3b、−3cおよび−3dに共通するヌクレオチド位置1603〜1966の推定膜貫通配列を含み、S1プライマー対は、SiglecBMS3cおよび−3dに共通するヌクレオチド位置428〜447のスプライス変異体配列を含み、S2プライマー対は、SiglecBMS3bおよび−3cに共通するヌクレオチド位置1948〜1966のスプライス変異体配列を含む。データはβ−アクチン遺伝子発現に対して標準化した後、参考組織とした骨格筋に対する増加倍率として表した(図12B)。
【0216】
SYBR Green増幅法のPCRプライマーには以下のプライマーを含めた:
L3−TM:
5’(1603−1621) TGC AGC TGC CAG ATA AGA(配列番号45)
3’(1948−1966) GGC TTG AGT GGA TGA TTT(配列番号46)
PCR産物:363bp
S1:
5’(428−447) CTC CGA AGC CTG ATG TCT A(配列番号47)
3’(576−594) GAG AAG TGG GAG GTC GTT(配列番号48)
PCR産物:166bp
S2:
5’(1343−1361) CTG CTG GGC CCC TCC TGC(配列番号49)
3’(1560−1579) GAC GTT CCA GGC CTC ACA G(配列番号50)
PCR産物:236bp
β−アクチン:
5’GTG GGG CGC CCC AGG CAC CA(配列番号51)
3’CTC CTT AAT GTC ACG CAC GAT TC(配列番号52)
PCR産物:539bp。
【0217】
実施例5
SiglecBMSL3a、−L3b、−L3cおよび−L3dを含む様々な選択的スプライス転写物を生成するSiglecBMSL3のヒト染色体位置のマッピングを以下に説明する。
【0218】
スタンフォードG3ラジエーションハイブリッドパネル(スタンフォード大学ゲノムセンターラジエーションハイブリッドマッピングサーバー)を使って、Siglec−BMSL3のヒト染色体マップ位置を決定した。膜貫通領域から150bpの断片を増幅させるプライマー対を選択した。PCR条件には、95℃で5分の後、95℃、56℃および72℃で各30秒を30サイクル、次に72℃で10分という条件を含めた。
【0219】
プライマーを使って、スタンフォードG3セットの83ハイブリッド全てをスクリーニングした。得られた陽性および陰性パターンをスタンフォードヒトゲノムセンターラジエーションハイブリッドマッピングサーバーに送信し、15,632個の基準マーカーに対する2点統計解析(two−point statistical analysis)にかけた。この解析により、それぞれ32cR[LOD(Log of Odds)スコア=6.47]および29cR(LODスコア=6.28)の距離にある2つのマーカーD19S425およびD19S418への連鎖が得られ、このパネルではそれぞれ960および870kbの物理的距離に相当した(1cR=30kb)。19番染色体のこの領域のスタンフォードラジエーションハイブリッドマップを参照すると、順序はおそらくはD19S418−Siglec−BMSL3−D19S425であり、細胞遺伝学的位置は19q13であることがわかる。マーカーD19S418は、19番染色体のWhitehead遺伝地図のYAC790A05で陽性である(Wendeら,Mammal Gen.,10,154−160(1999))。
【0220】
染色体位置決定法に使用するPCRプライマーには、以下のプライマーを含めた。
L3−TM:
5’(1603−1621) TGC AGC TGC CAG ATA AGA(配列番号53)
3’(1948−1966) GGC TTG AGT GGA TGA TTT(配列番号54)
PCR産物:363bp。
【0221】
実施例6
ヒトRガンマ鎖に融合されたSiglecBMSL3aおよびSiglec−BMS−L3−995−2の細胞外ドメインを含むIg融合タンパク質の作製を以下に説明する。
【0222】
Ig融合タンパク質をコードするプラスミドを構築した。簡単に述べると、SIGLEC−BMS−L3a(例えば526604)またはSIGLEC−BMS−L3−995−2の細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列を、肝cDNAライブラリー(Clontech)からPCR法によって増幅した。SIGLEC−BMSの細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列を、独占販売されている発現ベクターpd19(Bristol−Myers Squibb、ニュージャージー州プリンストン)に作動可能な形で連結した。pd19ベクターは、SiglecBMSL3aおよびSiglecBMSL3995配列の発現を駆動するように、サイトメガロウイルスプロモーター(CMVプロモーター;Boshart,M.ら,1985,Cell 41:521−530)を持っている。さらにpd19ベクターは、そこにコードされている免疫グロブリン部分のFc受容体結合を減少させる点突然変異を持つヒトRガンマ鎖の一部を含んでいる。得られたプラスミドをSiglecL3A−hIgおよびSiglecL3−hIgと名付けた。SiglecL3−hIg融合タンパク質を、DEAE一過性トランスフェクションにより、COS細胞で発現させた。融合タンパク質は、使用前に、プロテインAトリスアクリルカラム(Pierce、イリノイ州ロックフォード)を使ったクロマトグラフィーによって、COS7上清から精製した。
【0223】
実施例7
FACS解析を使って行なったSIGLEC−BMS−L3AおよびSIGLEC−BMS−L3融合タンパク質の細胞外ドメインの結合特異性の決定を以下に説明する。
【0224】
SIGLEC−BMS−L3AおよびSIGLEC−BMS−L3の結合特異性を決定するために、混合白血球細胞集団および造血細胞株を入手した。この解析で使用した細胞および細胞株には、EBV形質転換B細胞である細胞株MB、PMおよびTJ(Bristol−Myers Squibb)、B細胞リンパ芽球腫Ramos、HSB−2およびRaji;T細胞リンパ芽球腫であるJurkat;赤芽球性白血病細胞株であるHEL;およびアメリカンタイプカルチャーコレクション(バージニア州マナッサス)から入手した単球細胞株U973およびHL60が含まれる。
【0225】
細胞を、結合バッファー(1%w/vウシ血清アルブミンおよび0.1%アジ化ナトリウムを含むDMEM)に、タンパク質濃度5マイクログラム/1×10細胞のSiglec融合タンパク質(実施例6)、mALCAM hIg融合タンパク質(Rガンマ融合タンパク質対照)、またはCD5 hIg融合タンパク質(Eガンマ融合タンパク質対照)と共に懸濁した。融合タンパク質上のIgテールがFc受容体に非特異的に結合しないように、ウサギIg(Sigma Chemical Co.,ミズーリ州セントルイス)も、100マイクログラム/100万細胞の割合で加えた。その混合物を氷上で1時間インキュベートした後、結合バッファーで2回洗浄した。各洗浄の間に細胞を500×Gで5分間遠心分離した。抗hIg/FITC(Jackson Immunoresearch、ペンシルバニア州ウェストグローブ)および/またはフィコエリトリン結合抗CD20/PE(Beckton Dickenson、カリフォルニア州サンノゼ)、抗CD14/PE(Beckton−Dickenson)および抗CD4/PE(Beckton−Dickenson)を氷上で30分間加えた。さらなる洗浄を行なった後、Cell Questソフトウェアを使って、細胞をBecton Dikenson FACSortで解析した。細胞を生細胞ゲーティングし、赤/緑色を補正した。
【0226】
混合白血球集団をSIGLEC−BMS融合タンパク質への結合について解析した。FACS解析の結果を表4に示す。FACSによって調べた細胞へのSIGLEC BMSL3aおよびSIGLEC BMSL3の結合に差異はなかった。リンパ球サイズの細胞および単球サイズの細胞の小集団はどちらの融合タンパク質についても陽性に染色された。抗CD20(B細胞用)、単球用抗CD14、抗CD4または抗CD3(T細胞用)との二重染色により、B細胞および単球は融合タンパク質を結合するが、T細胞は結合しないことが確認された。B細胞および単球上のFc受容体への融合タンパク質の結合も考えられるが、その可能性は、2つの融合タンパク質対照、すなわちFcRを結合しないRガンマhIgテールを持つもの(mALCAM hIg)およびFcRを結合するEガンマhIgテールを持つものとの比較によって排除された。
【0227】
同様のFACS解析を細胞株で行なった。HEL細胞株(例えば赤芽球性白血病細胞株)およびJurkat細胞株(例えばT細胞株)は、どちらのSIGLEC BMSL3融合タンパク質についても陽性に染色されなかった。さらに、EBV形質転換B細胞株MB、PMおよびTJも陽性に染色されなかった。B細胞株Ramos、RajiおよびHSB2は陽性に染色された。全血では多少の単球結合が認められたが、単球細胞株U973およびHL60は何も結合を示さなかった。
【0228】
Siglec−10−hIg結合のFACS解析を表4に示す。データは、混合白血球集団および造血細胞株をSiglec−10−hIg融合タンパク質と共にインキュベートした後、フルオレセイン結合抗hIg(Jackson Immunoresearch、ペンシルバニア州ウェストグローブ)および/またはフィコエリトリン結合抗CD20、抗CD3、抗CD14および抗CD4で染色することによって得た。対照としてmALCAM hIg融合タンパク質(hIg Rγ対照)およびCD5 hIg融合タンパク質(hIg Eγ対照)を並行して解析した。融合タンパク質上のIgテールがFc受容体に非特異的に結合するのを防ぐために、ウサギIg(Sigma)も加えた。mALCAM、CD5およびSiglec−10 hIgについて、バックグラウンドとの比較でFITCに関して陽性に染色される細胞の割合を示す。細胞株には単色FACSを使用し、初代末梢血単核細胞(PBMC)には二色FACSを使った。
【表4】
Figure 2004516012
【0229】
実施例8
固形支持体法による、異なる血球集団または細胞株がSIGLEC−BMS−L3融合タンパク質の細胞外ドメインに対して結合特異性を示すかどうかの決定を、以下に説明する。
【0230】
ELISAプレートをSIGLEC−BMSL3 hIg融合タンパク質(200ng/ウェル)で一晩コーティングすることによって、SIGLEC−BMS−L3融合タンパク質を固形支持体上に固定化した。そのプレートを1%BSAを含むDMEMで1時間ブロックした。
【0231】
使用する細胞および細胞株には、混合白血球、混合顆粒球、精製B細胞、精製NK細胞、精製単球、Ramos(B細胞株)、RBC、Jurkat(T細胞株)ならびにHL60およびK652(単球細胞株)を含めた。血液細胞および細胞株をカルセインAM(5マイクロリットル/10細胞)で37℃で30分間標識した。細胞をハンクス緩衝食塩溶液(HBSS)で2回洗浄し、ブロックしたELISAプレート(200マイクロリットル中、4×10/ウェル)に37℃で30分間加えた。プレートをHBSSで穏やかに洗浄し、100マイクロリットルのHBSSを各ウェルに加えた。蛍光はCytoFluor4000(PerSeptive Biosystems、マサチューセッツ州フレーミングハム)を使って励起波長485/蛍光波長530で読み取った。
【0232】
結果を図13に示す。混合白血球、混合顆粒球、精製B細胞、精製NK細胞、精製単球およびRamos(B細胞株)は固定化SIGLEC融合タンパク質に付着した。RBC、Jurkat(T細胞株)、HL60およびK652(単球細胞株)は、上記タンパク質被覆プレートに付着しなかった。細胞のシアリダーゼ前処理(0.1U/ml、37℃で30分)はどの付着細胞タイプの結合にも有意な影響を及ぼさなかった。
【0233】
実施例9
完全長SIGLEC−BMS−L3(例えば995−2、実施例14参照)タンパク質を発現させるCOS細胞ならびに種々の細胞および細胞株を使った結合試験を以下に説明する。
【0234】
COS7細胞に、完全長Siglec−BMS−L3(例えば995−2、実施例14参照)を含むpcDNA3プラスミド(InVitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)を、DEAE−デキストラン法により、一過性にトランスフェクトまたは疑似(mock)トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に、EDTAを使って細胞をプレートから解離させ、10%FCSを含むDMEMが入っている6ウェルプレートに、2×10/ウェルの密度で再播種した。結合アッセイは、トランスフェクション後48時間から60時間の間に行なった。
【0235】
血球および細胞株をカルセインAM(5マイクロリットル/10細胞)で37℃で30分間標識した。0.25%BSAを含むDMEMに、RBC、混合白血球、Ramos(B細胞株)、HL60およびK562(単球細胞株)ならびにJurkat(T細胞株)を再懸濁した。一部の細胞についてはシアリダーゼによる前処理も行なった(0.1U/ml、37℃で30分の後、DMEM+0.25%BSAで3回洗浄)。1mlの血球または細胞株懸濁液を各ウェルに加えた。細胞を、穏やかに振とうしながら、37℃で30分間インキュベートした。プレートをPBS+0.25%BSAで穏やかに3回洗浄した。細胞を0.25%グルタルアルデヒドで固定した。
【0236】
結合を定量化するために、2以上の添加細胞タイプを結合するトランスフェクトCOS7細胞の割合を、各処置につき10視野から決定した(各処置につき少なくとも100細胞を調べた)。結果をCOS7細胞結合のパーセンテージとして表した。トランスフェクト細胞への結合を、疑似トランスフェクト対照とも比較した。
【0237】
結果を図14に示す。トランスフェクトCOS7細胞は混合白血球およびRamos細胞株(B細胞株)に結合した。シアリダーゼ前処理はこの結合に有意な影響を及ぼさなかった。シアル酸消化が完全であるという証拠はないので、この観察結果は示唆に過ぎない。トランスフェクトCOS7細胞はRBC、Jurkat(T細胞株)またはHL60およびK562(単球細胞株)への結合は示さなかった。
【0238】
実施例10
GSTタンパク質に融合したSiglecBMSL3aの細胞質テールドメインを含む種々の融合タンパク質の作製を以下に説明する。
【0239】
SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質テールドメインを含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を構築するために、SIGLEC−BMS−L3の細胞質ドメインをPHA活性化Jurkat cDNAライブラリーから増幅した(KRRTQTE...VKFQ;例えば図6Bを参照されたい)。GST配列を含むpGEX4T−3(Pharmacia Biotech)のEcoRI/XhoI部位に、上記細胞質テール断片をサブクローニングした。得られたコンストラクトをGST−SiglecL3cytoと名付けた(図15)。
【0240】
さらに、597位、641位および691位でのY→F突然変異体を作製した。GST−SiglecBMSL3cytoおよびSIGLEC−BMS突然変異体タンパク質を細菌E.coli中で発現させ、Pharmaciaプロトコール(SmithおよびJohnson,1988,Gene 67:31−40に基づくプロトコール)によって精製した。
【0241】
SIGLEC−BMS−L3cyto(野生型)および突然変異型SIGLECの細胞質テールドメインをコードする配列を作製するために使用したPCRプライマーには、以下のプライマーが含まれる。
GST−SiglecBMSL3cyto(wt)プライマー:
5’GCG GCC AGG AAT TCC AAG AGA CGG ACT CAG ACA GAA(配列番号55)
3’GCG GCC CTC GAG TCA TTG GAA CTT GACTTC TGC(配列番号56)
GST−SiglecBMSL3Y641F:
wtフォワードおよびリバースプライマーならびにY641F変異導入プライマー:
5’CCA GAA TCA AAG AAG AAC CAG AAA AAG CAG TTT CAG TTG CCC AGT TTC CCA GAA CCC(配列番号57)
3’GGG TTC TGG GAA ACT GGG CAA CTG AA CTG CTT TTT CTG GTT CTT CTT TGA TTC TGG(配列番号58)
GST−SiglecBMSL3Y667F:
wtフォワードおよびリバースプライマーならびにY667F変異導入プライマー:
5’GAG AGC CAA GAG GAG CTC CAT TTT GCC ACG CTC AAC TTC CCA GGC(配列番号59)
3’GCC TGG GAA GTT GAG CGT GGC AAA ATG GAG CTC CTC TTG GCT CTC(配列番号60)
GST−SiglecBMSL3Y691F:
wtフォワードプライマーおよびY691F変異導入リバースプライマー:
5’GCG GCC CTC GAG TCA TTG GAA CTT GAC TTC TGC AAA ATC CGC CTG GGT GCC(配列番号61)
3’GCG GCC CTC GAG TCA TTG GAA CTT GAC TTC TGC AAA ATC CGC CTG GGT GCC(配列番号62)
GST−SiglecBMSL3Y641alone(欠失突然変異体)プライマー:
5’GCG GCC AGG AAT TCC ATC AAT GTG GTC CCG ACG GCT GGC(配列番号63)
3’GCG GCC CTC GAG TCA ATG GAG CTC CTC TTG GCT CTC(配列番号64)。
【0242】
実施例11
ヒトIg配列に融合したSiglecBMSL3aまたはSiglecBMSL3の細胞外ドメインを含む種々の融合タンパク質の作製を以下に説明する。これらの融合タンパク質にはSiglecBMSL3a hIgおよびSiglecBMSL3 hIgが含まれる。
【0243】
HindIII、BglIIおよびNcoIの制限部位を持つリンカー配列を含むプライマーを使って、SIGLECBMS−L3a(例えば526604)および995−2の細胞外ドメインをコードするヌクレオチド配列を増幅した。増幅された断片(例えば、siglecBMS−L3aの1201bp断片またはSiglec BMS−L3の1650bp断片)を制限酵素HindIIIおよびBglIIで消化し、消化された断片を、HindIIIおよびBmaHIで消化したpd19ベクター(実施例6参照;Bristol−Myers Squibb、ニュージャージー州プリンストン)にクローニングした。pd19ベクターは、コードされる融合タンパク質の免疫グロブリン部分のFc受容体結合を減少させる点突然変異を持つヒトRガンマ鎖の一部を含んでいる。挿入の完全性は、Siglec/hIgプラスミドコンストラクトをHindIII/NcoIで消化してSiglecの細胞外ドメインをチェックするか、またはHindIII/XbaIで消化して融合コンストラクト全体をチェックすることによって確認した。Siglec−10−hig融合タンパク質を、DEAE−デキストラン一過性トランスフェクションにより、COS7細胞中で発現させた。1%DEAE−デキストラン(Sigma)、0.125%クロロキン(Sigma)および10%NuSerum(Beckton Dickenson、ニュージャージー州フランクリンレイクス)を含むCMEM中、1マイクログラム/ミリリットルのDNAをCOS7細胞に4時間トランスフェクトした後、リン酸緩衝食塩水(PBS)中の10%DMSOで2分間処理した。4〜7日後に、COS7上清を除去し、Siglec−10−hig融合タンパク質を、プロテインAトリスアクリルカラム(Pierce、イリノイ州ロックフォード)でのクロマトグラフィーによって精製した。
【0244】
SiglecBMSL3a hIgの構築に使用したプライマーの配列には、次の配列を含めた:
【化1】
Figure 2004516012
【0245】
SiglecBMSL3a hIgの構築に使用したプライマーの配列には、次の配列を含めた:
【化2】
Figure 2004516012
【0246】
実施例12
SIGLEC−BMS−L3の細胞質テールドメインが既知のチロシンキナーゼによるリン酸化を受けるかどうかを決定するために使用したキナーゼアッセイを以下に説明する。
【0247】
キナーゼアッセイは、SIGLEC−BMS−L3に似た性質を持つ受容体と会合することが知られている4種類の主要チロシンキナーゼの代表例を使って、ELISA形式で行なった。試験したチロシンキナーゼにはlck、ZAP70、emt、およびJAK3が含まれる。
【0248】
GST融合タンパク質およびGSTを、炭酸ナトリウム(pH9)中、4マイクログラム/mlの濃度で、Immulon 2 96穴プレートに、室温で16時間コーティングした。GST融合タンパク質には、GST−SiglecBMSL3cyto(野生型)、GST−LAT(リン酸化に利用することができる10個のチロシンを持つアダプタータンパク質)、GST−cyto−Y597F(597位にY→F突然変異)、GST−L3cyto−Y641F(641位にY→F突然変異)、GST−L3cyto−Y667F(667位にY→F突然変異)、L3cyto−Y691F(691位にY→F突然変異)、GST−L3cyto−Y641alone、およびGSTのみを含めた。LATは、T細胞、マスト細胞、NK細胞および巨核球中で発現される36〜38kDaのパルミトイル化内在性膜アダプタータンパク質である。T細胞受容体(TCR/CD3)を介したシグナル伝達は、チロシンキナーゼの活性化と、それに続く数多くの細胞質タンパク質基質のリン酸化とを伴う。LATは10個のチロシン残基を持ち、これら多くのチロシンキナーゼファミリーの主要な基質の1つである。リン酸化LATは多くの重要なシグナリング分子を結合するので、リン酸化LATはよい陽性対照である(W.Zhangら,1998,Cell 92:83;W.Zhangら,1999,Immunity 10:323)。
【0249】
プレートを洗浄した後、ブロッキング試薬(Blocking Reagent、Hitachi Genetics Systems、カリフォルニア州アラメダ)でブロックした。キナーゼ反応は、キナーゼバッファー(25mM Hepes pH7.0、6.25mM MnCl、6.25mM MgCl、0.5mMバナジン酸ナトリウム、7.5μM ATP)および0.25マイクログラム/mlの濃度から始まるチロシンキナーゼの2倍段階希釈液中、50マイクロリットルの液量で行なった。キナーゼ反応は室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、ホスホチロシン含量を1:1000の抗p−Tyr(PY99)HRP(Santa Cruz、カリフォルニア州サンタクルーズ)およびペルオキシダーゼ基質(KPL、メリーランド州ゲーサーズバーグ)で検出した。650/450nmの吸光度を検出した。
【0250】
図16A〜Gに示すキナーゼアッセイの結果は、SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質ドメインが、4つの主要キナーゼファミリーのうち少なくとも3つの代表例、すなわちJak3、Lck、Emtによってリン酸化されうるが、ZAP−70ではリン酸化されないことを示している。キナーゼ濃度の滴定により、Siglec−10はLckおよびJakによって同じ程度によくリン酸化され、Emtでは中等度のリン酸化が観察され、ZAP−79ではリン酸化はほとんどまたは全く起こらないことが確認された。野生型GST−SIGLECBMS−L3cytoがリン酸化される程度は、Lck(100%)>JAK3(92%)>>emt(65%)>>>ZAP70(20%)だった。
【0251】
細胞質テール中の特定位置に突然変異を持つGST融合タンパク質は、種々のチロシンキナーゼによるリン酸化に影響を及ぼした。
結果を以下の表に要約する。
【表5】
Figure 2004516012
【0252】
図16A〜Gおよび上の表に示す結果は、ITIM様モチーフに含まれている597位および667位のチロシンが、lck、JAK3、emtおよびZAP70を含む数種類のチロシンキナーゼシグナリング分子によるリン酸化の標的であるらしいことを示唆している。691位にあるチロシンも、LckおよびJak3キナーゼによる野生型Siglecテールのリン酸化に寄与している。例えば、667位および691位にあるYのリン酸化は、lckによる野生型リン酸化の約80%およびJAK3による野生型リン酸化の75%を占めた。これに対し、641位にあるYの突然変異は試験したどのキナーゼによるリン酸化の程度にも有意な影響を及ぼさなかった。さらに、Y641のみを含むコンストラクトは、どのキナーゼによってもリン酸化されなかったことから、Y641はおそらくリン酸化部位ではないことが裏付けられた(データの記載なし)。597位にあるYのリン酸化に対する寄与は、lckの場合は約20%、JAK3の場合は25%、emtの場合は約30%と計算できるだろう。
【0253】
実施例13
SIGLEC−BMS−L3の細胞質テールドメインが細胞溶解液中のSHP−1またはSHP−2を結合するかどうかを決定するためのウェスタンブロット法およびELISA技術の使用について以下に説明する。
【0254】
SHPタンパク質に関するウェスタンブロッティング:Siglec−10の細胞質ドメインが細胞溶解液中のSHP−1およびSHP−2を結合するかどうかを決定するために、10μgのGST融合タンパク質±チロシンリン酸化を、300μlの細胞溶解液(トリトンX100可溶性画分、5×10非刺激細胞)と共に4℃で一晩インキュベートした。50μlのグルタチオンセファローズビーズ(Amersham Pharmacia Biotech)を使ってGST融合タンパク質複合体を4℃で1時間捕捉した。次にビーズをJurkat細胞溶解液と共にインキュベートした。ビーズを氷冷溶解バッファーで3回洗浄し、結合しているタンパク質をSDS還元試料バッファーに溶出させ、SDS−ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動によって分割した。分離したタンパク質を標準的なウェスタンブロッティング技術によってニトロセルロースに移した。次に、抗P−Y HRP結合抗体(クローン4G10、Upstate Biotechnology、ニューヨーク州レイクプラシッド)を使って、ブロットをリン酸化チロシンを含むタンパク質について染色した。次に、ブロットをストリップにして、マウス抗SHP−1(Transduction Laboratories、ケンタッキー州レキシントン)またはマウス抗SHP−2(Transduction Laboratories)で染色し、続いてHRP結合二次抗体(ヤギ抗マウス、Biosoure Int.、カリフォルニア州カマリロ)を添加した。染色されたタンパク質を、化学発光検出試薬(Renaissance、NEN Bio Products、マサチューセッツ州ボストン)を添加し、フィルム(Kodak)に露出することによって撮像した。
【0255】
図17Aに示す結果は、細胞溶解液由来のSHP−1およびSHP−2がどちらも、SIGLEC L3タンパク質の細胞質ドメインに結合する能力を持つことを示している。しかし、SHP−1の結合はY667F突然変異体では認められなかった。これはこのチロシンがSHP−1との相互作用にとって好ましいチロシン(例えば一文字記号:Y)であることを示している。しかし、SHP−2結合は、Y667F突然変異体試料でも、約50%しか減少しなかった。これは、SHP−2が667位のチロシンと、SIGLEC BMSL3の細胞質テール中の他のチロシンとの両方に結合しているらしいことを示している。
【0256】
ELISAによるSHPタンパク質へのITIMペプチド結合:ビオチン化Siglec−10ホスホペプチド(660−678)ESQEELHpYATLNFPGRVPR(ITIM667)はW.M.Keck Biotechnology Resource Center(コネチカット州ニューヘブン)で作製された。ブロッキング試薬(Hitachi Genetics Systems)中、4μg/mlのホスホペプチドを、ストレプトアビジン被覆ELISAプレート(Pierce、イリノイ州ロックフォード)に結合した。プレートを洗浄した後、GST融合タンパク質GSTのみ、GST−SHP−1SH2SH2またはGST−SHP−2SH2SH2またはGST−ZAP−70SH2SH2の2倍段階希釈液を加え、室温で1時間インキュベートした。ポリクローナル抗GST(Siglec抗体産生について詳述する方法と同様の方法によって社内で作製したもの)を1:1000の希釈率で加え、1:2000のHRP結合抗ウサギ(Biosource)を加え、ペルオキシダーゼ基質(KPL、メリーランド州ゲーサーズバーグ)でシグナルを検出した。
【0257】
図17Bに示す無細胞系の結果でも、SHP−1およびSHP−2がどちらもY667ドメインを含むリン酸化ペプチドに高い親和性で結合できることが裏付けられた。
【0258】
実施例14
SIGLEC−BMS−L3タンパク質をコードする完全長SiglecBMSL3の配列を持つDNA分子の作製を以下に説明する。完全長配列をBMSL3−995−2と名付けた(図6AおよびB)。
【0259】
pSPORTベクター(Life Technology/Gibco、ニューヨーク州グランドアイランド)に融合された652995と呼ばれるクローン(Incyteデータベース)は、Siglec BMSL3 cDNAの完全な3’端を含んでいる。652995クローンを制限酵素EcoRIおよびBbrPIで消化し、大きい方の断片(約6.4kb)をゲル精製した。3421048と呼ばれるもう一つのクローン(Incyteデータベース)は、Siglec BMSL3 cDNAの完全な5’端を含んでおり、これを制限酵素EcoRiおよびBbrPIで消化し、ゲル精製した(約820bp)。ゲル精製した断片をpSPORTベクターに連結して、完全長Siglec BMSL3ヌクレオチド配列を持つハイブリッドコンストラクトとし、995−2と名付けた。995−2の配列を他のSiglecBMSL3配列と照合した。995−2クローンを制限酵素EcoRIおよびNotIで消化し、同様に消化した完全長発現用のpcDNA3ベクター(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)に連結した。
【0260】
3421048の5’端の部分配列を得た。その配列は次の通りである:
5’CAGGCCTGTC TCAGGCAGGC CCTGCGCCTC CTATGCGGAG ATGCTACTGC CACTGCTGCT GTCCTCGCTG CTGGGCGGGT CCCANGCTAT GGATGGGAGA TTCTGGATAC GAGTGCAGGA GTCAGTGATG GTGCCGGAGG GCCTGTGCAT CTCTGTGCCC TGCTCTTTCT CCTACCCCCG ACAGGACTGG ACAGGGTCTA CCCCAGCTTA TGGCTACTGG TTCAAAGCAG TGACTGAGAC A 3’(配列番号69)。
【0261】
実施例15
以下の実施例では、シアル酸へのSiglec−10の結合を解析するためのポリアクリルアミド複合糖質結合アッセイを説明する。
【0262】
完全長Siglec−10(pcDNA3ベクター中の995−2)をCOS7細胞に一過性にトランスフェクト(トランスフェクションプロトコールについては上記の方法を参照されたい)するか、または疑似(sham)トランスフェクトし、トランスフェクションから24時間以内に96穴プレートに播種し、18〜22時間付着させた。播種した細胞の半分を、0.01Uシアリダーゼ(Calbiochem、カリフォルニア州ラホーヤ)で37℃で1時間処理した。なぜなら、この処理は、他のSiglecファミリーメンバーの結合部位を遮蔽する可能性がある細胞表面シアル酸を除去することが明らかになっているからである(Zhangら,2000)。次に、1%BSAを含むDMEMで細胞を洗浄し、ビオチンおよび炭水化物(ラクトース、3’−シアリルラクトースまたは6’−シアリルラクトース、GlycoTech Corp.、メリーランド州ロックビル)を含む飽和濃度(20μg/ml)のポリアクリルアミドポリマーと共にインキュベートした。並行して行なった無細胞実験では、Immulongプレートを精製Siglec−10−hIg融合タンパク質(200ng/ウェル)で被覆し、20μg/mlのポリアクリルアミドポリマーと共にインキュベートした。1時間後にプレートを洗浄し、DMEM中のストレプトアビジン−セイヨウワサビペルオキシダーゼ(Vector Labs、カリフォルニア州バーリンゲーム)で30分間処理した。最終洗浄の後、TMBペルオキシダーゼ基質(KPL、メリーランド州ゲーサーズバーグ)を加え、プレートを室温で発色させた。0.1N HClで反応を停止し、450nmの吸光度をスペクトロメーターで決定した。Immulonプレート上にSiglec−10−hIgを固定化し、ポリアクリルアミドビオチン化複合糖質の結合を決定することによって、2,3’−シアリルラクトース(2,3’PAA)および2,6’−シアリルラクトース(2,6’PAA)に対するSiglec−10の結合選択性を決定した(図26)。2,6’−PAAコンジュゲートは非シアリル化ラクトース(陰性対照)または2,3’−PAAより有意に多く結合した。この観察結果を裏付けるために、続いて、細胞に基づく実験を行なった。DEAEデキストラン法によって完全長Siglec−10(pcDNA3中の995−2)をCOS7にトランスフェクトし、トランスフェクト細胞へのPAA結合を決定した。トランスフェクトCOS7細胞への2,6’−PAAコンジュゲートの結合は、シアリダーゼ前処理後に、有意に多くなった。シアリダーゼ処理の必要があることから、Siglec−10のシス結合は添加されたPAAとの相互作用を阻害するらしいことが示唆された。
【0263】
実施例16
以下の実施例では、Siglec−10に対するモノクローナル抗体の作製、およびFACS解析およびウェスタンブロット法によるSiglec−10タンパク質の検出を目的とするモノクローナル抗体の使用を説明する。
【0264】
Ribiアジュバント(Corixa、モンタナ州ハミルトン)中のSiglec−10−hIgタンパク質を3週間毎に1回腹腔内注射することによってBalb/cマウスを免疫化した。屠殺の3日前に、Siglec−10−hIgのIV注射でマウスを追加免役した。脾細胞を無菌的に収集し、洗浄し、融合を誘発するためにPEG1500 50%(Roche)の存在下で10:1のマウス骨髄腫細胞(P3x、ATCC、メリーランド州ロックビル)と混合した。ELISAによるスクリーニングでSiglec−10−hIgには選択的であるが他のhIgには選択性を示さない抗体を産生するクローンを、ローラーフラスコ中で増殖させた。精製したモノクローナル抗体を、Siglec−10−hIgおよび他の類似の融合タンパク質のウェスタンブロットによって、さらにスクリーニングした。抗体特異性に関する第3のスクリーニングは、完全長Siglec−10発現コンストラクトをトランスフェクトしたCOS7細胞のFACS解析を使って行なった。
【0265】
Siglec タンパク質発現:末梢血細胞集団および細胞株のFACS解析を行なって、表面タンパク質発現を決定した(表6)。抗Siglec−10抗体は、単離された顆粒球(好酸球および好中球)およびCD14+単球に結合して、蛍光強度が大きく変化した。抗体はCD28+細胞およびCD3+細胞を含む他の血球には結合しなかった。
【0266】
表6は、造血細胞株および初代白血球におけるSiglec−10の発現を表す。ビオチン化モノクローナル抗Siglec−10を細胞に加えた後、FITC結合ストレプトアビジンで処理した。Siglec−10をトランスフェクトしたCOS7細胞に対する免疫反応性(FACSによって決定)に基づいて、抗体を選択した。末梢血単核細胞調製物(PBMC)には、亜集団を識別するためにPE結合二次抗体を使用した。蛍光が増加した総細胞数のパーセンテージを示す。記載のデータは2〜3実験の平均を表す。
【表6】
Figure 2004516012
【0267】
SIGLEC−10に関するウェスタンブロッティング:数種類の細胞株及び末梢血細胞集団から得た細胞溶解液(トリトンX100可溶性タンパク質画分)10μgを試料バッファーと混合し、SDS−PAGE(4−20%勾配ゲル)で分割し、標準的なウェスタンブロッティング技術によってニトロセルロースに移した。次に、そのブロットを抗Siglec−10モノクローナル抗体で染色し、続いてHRP結合二次抗体(ヤギ抗マウス、Biosource Int.、カリフォルニア州カマリロ)を加えた。化学発光検出試薬(Renaissance、NEN Bio Products、マサチューセッツ州ボストン)を添加することにより、PhosphorImager 445 SI(Moleuclar Dynamics、カリフォルニア州サニーベール)を使って、染色されたタンパク質を撮像した。抗Siglec−10 mAbは、約76kDaの分子量を持つ単一のバンドを認識した(図27)。他に目に見えるバンドはなかったことから、この抗体はSiglec−10に特異的であることが示唆された。顆粒球および数種類の血液細胞株はSiglec−10を発現させるようである(図27)。
【0268】
実施例17
以下の実施例では、インサイチューハイブリダイゼーションを用いた非ヒト霊長類(NHP)組織およびヒト組織におけるSiglec−10陽性ハイブリダイゼーションシグナルの検出を説明する。
【0269】
PCR産物テンプレートを利用したインビトロ転写によってSiglec10用のヒト35S標識RNAプローブ(リボプローブ)を作製した。遺伝子特異的プライマー(GSP)セットは、Siglec10 L3プローブ(5’(724−744) TGCTCAGCTTCACGCCCAGAC;3’(1447−1456) TGCACGGAGAGGCTGAGA GA)に関するプローブプライマー配列データ(Siglec Manuscript、IIPD)に従って、Life Technologies(メリーランド州ロックビル)から得た。pSportプラスミドベクターにクローニングした完全長Siglec10遺伝子のPCR増幅によって、アンプリコンを得た。ゲル電気泳動を行ない、妥当なサイズのバンドをゲルから切り出した。これらのバンドを精製(Gel SNAP Purificationキット、Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)し、次にTOPO−TAクローニングキット(Invitrogen、カリフォルニア州カールズバッド)を使って、pCRIIベクターにサブクローニグした。ミニプレップおよび配列解析ならびにGenBank Blastを併用することにより、配列同一性を確認した(GenBankにより19番染色体に100%の274bp一致が確認された。別途行なった新規Siglec10配列およびミニプレップ配列結果のBlast2は100%の相同性を与えた)。次に、GSPならびにT7および/またはSp6プライマーを使って、ミニプレップをPCR増幅した。RNAポリメラーゼSp6およびT7ならびに市販のキット(Riboprobe(登録商標)Combination System、Promega、ウィスコンシン州マディソン)を利用してリボプローブを作製し、インサイチューハイブリダイゼーションを行なった。
【0270】
図28に、非ヒト霊長類組織およびヒト組織におけるSiglec−10陽性ハイブリダイゼーションシグナル分布の詳細を表すインサイチューハイブリダイゼーション像を示す。
【0271】
図28Aは、非ヒト霊長類(NHP)(パネルA、C、E)/ヒト脾臓(パネルB、D、F)におけるSiglec−10陽性ハイブリダイゼーションを表す。パネルA(明視野、倍率40×)は、NHP脾臓のリンパ濾胞(LF)および周辺の赤脾髄(RP)領域を表す。パネルB(明視野、倍率40×)は、ヒト脾臓のリンパ濾胞(LF)および周辺の赤脾髄(RP)を表す。パネルC(倍率40×)は、赤脾髄領域(RP)に伴うSiglec10ハイブリダイゼーションシグナルを示すパネルAの暗視野である。パネルD(倍率40×)は、赤脾髄領域(矢印)中のSiglec10ハイブリダイゼーションシグナル(白いフォーカス)を示すパネルBの暗視野である。パネルE(明視野、倍率200×)は、NHPのリンパ節(矢印)およびマクロファージ(矢尻)に伴うSiglec10ハイブリダイゼーションシグナル(黒いフォーカス)を示す赤脾髄の詳細を表す。パネルF(明視野、倍率200×)は、ヒトのマクロファージ(矢印)に伴うSiglec−10ハイブリダイゼーションシグナル(黒いフォーカス)を示す赤脾髄の詳細を表す。
【0272】
図28Bは、NHP空腸(パネルA、C、E)、ヒト肝臓(B、D、F)におけるSiglec−10陽性ハイブリダイゼーションを表す。パネルA(明視野、倍率40×)は、NHP空腸のリンパ濾胞(LF)を含む粘膜(M)を表す。パネルB(明視野、倍率40×)はヒト肝臓を表す。パネルCは、リンパ濾胞におけるSiglec10ハイブリダイゼーションシグナル(矢印)および粘膜固有層におけるフォーカス(矢尻)を示すパネルAの暗視野を表す。パネルDは、類洞に沿ったSiglec−10ハイブリダイゼーションシグナルを示すパネルBの暗視野を表す。パネルE(明視野、倍率200×)は、NHP空腸粘膜のリンパ濾胞中のリンパ球に伴うSiglec−10ハイブリダイゼーションシグナルの詳細を示す。パネルF(明視野、倍率400×)は、ヒト肝臓のクッパー細胞(在住マクロファージ)に伴うSiglec10ハイブリダイゼーションシグナル(矢印)の詳細を表す。
【0273】
図28Cは、非ヒト霊長類結腸におけるSiglec−10陽性ハイブリダイゼーションを表す。パネルA(暗視野、倍率40×)は、粘膜(M)、粘膜下組織(SM)、外筋層(ME)および粘膜下組織中のリンパ濾胞(LF)を含む結腸の横断面を表す。Siglec10ハイブリダイゼーションシグナルは、粘膜の固有層(矢印)、粘膜下組織のLF(LF)、および多焦点的に外筋層の間質(矢尻)に存在する。パネルB(暗視野、倍率100×)は、粘膜固有層(矢印)および粘膜下LF(矢尻)中のSiglec10ハイブリダイゼーションシグナルを示すパネルAの詳細を表す。パネルC(暗視野、倍率100×)は、外筋層の間質(矢印)におけるSiglec10ハイブリダイゼーションシグナルを示すパネルAの詳細を表す。パネルDは、粘膜(M)、リンパ濾胞(LF)を伴う粘膜下組織(SM)、および外筋層(ME)を示すパネルAの明視野である。パネルDは、粘膜固有層(LP)および粘膜下組織中のリンパ濾胞(LF)を示すパネルBの明視野である。パネルEは、外筋層の間質におけるSiglec10陽性単核細胞(矢印)を示すパネルCの明視野である。パネルF(明視野、倍率200×)は、リンパ球(矢印)およびマクロファージ(矢尻)に伴うSiglec10ハイブリダイゼーションシグナルを示す粘膜固有層の詳細を表す。
【0274】
図28Dは、NHP(パネルA、C、E)/ヒトリンパ節(パネルB、D、F)におけるSiglec−10陽性ハイブリダイゼーションシグナルの分布を表す。パネルA(暗視野、倍率10×)、リンパ濾胞(LF)に伴うSiglec10ハイブリダイゼーションシグナルを表す。顕著な細胞はNHPリンパ節のメラノマクロファージ(矢印)である。パネルB(明視野、倍率40×)は、ヒトリンパ節のリンパ球に伴う弱いSiglec10ハイブリダイゼーションシグナルを表す。パネルCは、LFおよびメラノマクロファージ(矢印)を示すパネルAの明視野である。パネルDは、弱いSiglec10シグナル(矢印)を示すパネルBの暗視野である。パネルE(明視野、倍率200×)は、リンパ球(矢印)およびメラノマクロファージ(矢尻)に伴うSiglec10ハイブリダイゼーションシグナルを示すLFの詳細を表す。パネルF(明視野、倍率400×)は、リンパ球(矢印)に伴う弱いSiglec10ハイブリダイゼーションシグナルを示すLFの詳細を表す。
【0275】
図28Eは、喘息肺におけるSiglec−10陽性ハイブリダイゼーションシグナルSiglec−10 RNAの分布を表す。パネルA(明視野、100×)は、好中球、マクロファージおよびリンパ球を含む混合炎症細胞集団の浸潤を受けたヒト肺の肺実質を表す。パネルBは、多焦点Siglec10ハイブリダイゼーションシグナル(矢印)を示すパネルAの暗視野である。パネルC(明視野、倍率400×)は肺の炎症細胞の詳細を表し、マクロファージ(矢印)に伴うSiglec−10ハイブリダイゼーションシグナルは認められるが、好酸球(矢尻)に伴うシグナルは認められない。
【0276】
図28Fは、非ヒト霊長類(パネルA、B、D、E、G、H)/ヒト肺(パネルC、F、I)へのSiglec−10 RNAの結合を表す。パネルA(明視野、倍率40×)は、NHP肺の気道細気管支(B)を表す。パネルB(明視野、倍率100×)は、NHP肺の気管支下領域、細気管支(B)におけるリンパ濾胞(LF)の詳細を表す。パネルC(明視野、倍率100×)は、褐色に染まった肺胞マクロファージ(炭珪肺)(矢印)を伴うヒト肺の肺実質を表す。パネルDは、気道内腔(L)および肺実質(矢尻)におけるSiglec−10ハイブリダイゼーションシグナル(矢印)を示すパネルAの暗視野である。パネルEは、LFおよび肺実質(矢印)におけるSiglec−10ハイブリダイゼーションシグナルを示すパネルBの暗視野である。パネルFは、肺胞マクロファージに伴うSiglec−10ハイブリダイゼーションシグナル(矢印)を示すパネルCの暗視野である。パネルG(明視野、倍率400×)は、肺胞マクロファージに伴うSiglec−10ハイブリダイゼーションシグナル(矢印)を示すパネルAの詳細を表す。パネルH(明視野、400×)は、LF(矢印)および肺胞マクロファージ(矢尻)のリンパ球に伴うSiglec 10ハイブリダイゼーションシグナルを示すパネルBの詳細を表す。パネルI(明視野、倍率400×)は、褐色に染まった(炭珪肺)肺胞マクロファージに伴うSiglec−10ハイブリダイゼーションシグナル(矢印)を示すパネルCの詳細を表す。
【0277】
インサイチューハイブリダイゼーションの最終結果を表7に示す。
【表7】
Figure 2004516012
ISHスコア:シグナルなし、−;最小ハイブリダイゼーションシグナル、+;低シグナル、++;中シグナル、+++;著しいシグナル、++++。
NE、未検定
GALT、固有層中の腸管関連リンパ系組織
軟骨はバックグラウンドが高く、この組織では−または+ハイブリダイゼーションを察知することができなかった。
【0278】
本明細書で引用した種々の刊行物は、いずれも参考文献としてそのまま本明細書の一部を構成する。
【0279】
本発明が関係する分野の当業者には明らかであろうが、本発明は、本発明の精神または欠くことのできない特徴から逸脱することなく、上に詳しく開示した態様以外の形態で体現することができる。したがって上述した本発明の具体的態様は例示であって限定ではないとみなすべきである。本発明の範囲は上記の説明に含まれる実施例に限定されるのではなく特許請求の範囲に記載されているとおりである。
【図面の簡単な説明】
【図1】SIGLECタンパク質ファミリーの予想構造の概略図。
【図2】実施例1に記載の(A)SiglecBMSL3aのヌクレオチド配列(配列番号1)および(B)SIGLEC−BMS−L3aの予想アミノ酸配列(配列番号8)。
【図3】実施例1に記載の(A)SiglecBMSL3bのヌクレオチド配列(配列番号2)および(B)SIGLEC−BMS−L3bの予想アミノ酸配列(配列番号9)。
【図4】実施例1に記載の(A)SiglecBMSL3cのヌクレオチド配列(配列番号3)および(B)SIGLEC−BMS−L3bの予想アミノ酸配列(配列番号10)。
【図5】実施例1に記載の(A)SiglecBMSL3dのヌクレオチド配列(配列番号4)および(B)SIGLEC−BMS−L3dの予想アミノ酸配列(配列番号11)。
【図6A−1】実施例14に記載の(A)SiglecBMSL3995のヌクレオチド配列(配列番号27)(ATG開始コドンとスプライシング部位には陰を付けてある。枠で囲んだ領域は膜貫通ドメインを表す)および(B)SIGLEC−BMS−L3−995−2の予想アミノ酸配列(配列番号28)。
【図6A−2】実施例14に記載の(A)SiglecBMSL3995のヌクレオチド配列(配列番号27)(ATG開始コドンとスプライシング部位には陰を付けてある。枠で囲んだ領域は膜貫通ドメインを表す)および(B)SIGLEC−BMS−L3−995−2の予想アミノ酸配列(配列番号28)。
【図6A−3】実施例14に記載の(A)SiglecBMSL3995のヌクレオチド配列(配列番号27)(ATG開始コドンとスプライシング部位には陰を付けてある。枠で囲んだ領域は膜貫通ドメインを表す)および(B)SIGLEC−BMS−L3−995−2の予想アミノ酸配列(配列番号28)。
【図6B】実施例14に記載の(A)SiglecBMSL3995のヌクレオチド配列(配列番号27)(ATG開始コドンとスプライシング部位には陰を付けてある。枠で囲んだ領域は膜貫通ドメインを表す)および(B)SIGLEC−BMS−L3−995−2の予想アミノ酸配列(配列番号28)。
【図7】実施例1に記載の(A)SiglecBMSL4aのヌクレオチド配列(配列番号5)および(B)SIGLEC−BMS−L4aの予想アミノ酸配列(配列番号12)。
【図8】実施例1に記載の(A)SiglecBMSL5aのヌクレオチド配列(配列番号6)および(B)SIGLEC−BMS−L5aの予想アミノ酸配列(配列番号13)。
【図9】実施例1に記載の(A)SiglecBMSL5bのヌクレオチド配列(配列番号7)および(B)SIGLEC−BMS−L5bの予想アミノ酸配列(配列番号14)。
【図10A】実施例2に記載の(A)ヒト組織におけるSiglecBMSL3転写物の分布を示すノーザンブロット解析および(B)プローブ配列の位置を示す概略図。
【図10B】実施例2に記載の(A)ヒト組織におけるSiglecBMSL3転写物の分布を示すノーザンブロット解析および(B)プローブ配列の位置を示す概略図。
【図11A】実施例3に記載の(A)ヒト組織におけるSiglecBMSL3転写物の分布を示すRT−PCR解析の結果を示す表および(B)プライマー/PCR産物の位置を示す概略図。
【図11B】実施例3に記載の(A)ヒト組織におけるSiglecBMSL3転写物の分布を示すRT−PCR解析の結果を示す表および(B)プライマー/PCR産物の位置を示す概略図。
【図12A】実施例4に記載の(A)定量的RT−PCR解析によって検出されるヒト組織および細胞株におけるSiglecBMSL3転写物の分布を示すヒストグラム、(B)2人の被験者から得た精製ヒト白血球におけるSiglecBMSL3転写物発現レベルを示す定量的RT−PCR解析、および(C)プライマー/PCR産物の位置を示す概略図。
【図12B】実施例4に記載の(A)定量的RT−PCR解析によって検出されるヒト組織および細胞株におけるSiglecBMSL3転写物の分布を示すヒストグラム、(B)2人の被験者から得た精製ヒト白血球におけるSiglecBMSL3転写物発現レベルを示す定量的RT−PCR解析、および(C)プライマー/PCR産物の位置を示す概略図。
【図12C】実施例4に記載の(A)定量的RT−PCR解析によって検出されるヒト組織および細胞株におけるSiglecBMSL3転写物の分布を示すヒストグラム、(B)2人の被験者から得た精製ヒト白血球におけるSiglecBMSL3転写物発現レベルを示す定量的RT−PCR解析、および(C)プライマー/PCR産物の位置を示す概略図。
【図13】固定化SIGLEC−BMSL3−hIg融合タンパク質(例えばSIGLEC−BMS−L3の細胞外ドメイン)を種々の血球集団または細胞株に結合させる、実施例8に記載の結合アッセイの結果を示すグラフ。
【図14】完全長SIGLEC−BMS−L3タンパク質を発現させるCOS7細胞を種々の血球集団または細胞株に結合させる、実施例9に記載の結合アッセイの結果を示すグラフ。
【図15】L3cyto−wt、L3cyto−Y641F、L3cyto−Y667F、L3cyto−Y691F、およびL3cyto−Y641aloneを含む野生型および突然変異型SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質テールを有する種々のGST融合タンパク質の概略図。また、SIGLEC−BMSL3タンパク質の非スプライス型(995−2、SIGLEC−BMSL3 hIg)およびスプライス型(526604、SIGLEC−BMSL3a hIg)細胞外ドメインを含む、実施例10に記載のhIg(ヒト免疫グロブリン)融合タンパク質も図示している。
【図16A】実施例12で説明するように、野生型および突然変異型SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質を含む種々の基質を種々のチロシンキナーゼ、すなわち(A)lckキナーゼ、(B)ZAP70キナーゼ、(C)emtキナーゼ、および(D)JAK3キナーゼと反応させたキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(E)野生型SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質基質と、ZAP70、emt、およびJAK3を含む種々のチロシンキナーゼとを使ったキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(F)LAT基質と、lck、ZAP70、emt、およびJAK3を含む種々のチロシンキナーゼとを使ったキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(G)野生型および種々のY→F突然変異体の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質の、チロシンキナーゼ混合物によるチロシンリン酸化の結果を示すグラフ。
【図16B】実施例12で説明するように、野生型および突然変異型SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質を含む種々の基質を種々のチロシンキナーゼ、すなわち(A)lckキナーゼ、(B)ZAP70キナーゼ、(C)emtキナーゼ、および(D)JAK3キナーゼと反応させたキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(E)野生型SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質基質と、ZAP70、emt、およびJAK3を含む種々のチロシンキナーゼとを使ったキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(F)LAT基質と、lck、ZAP70、emt、およびJAK3を含む種々のチロシンキナーゼとを使ったキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(G)野生型および種々のY→F突然変異体の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質の、チロシンキナーゼ混合物によるチロシンリン酸化の結果を示すグラフ。
【図16C】実施例12で説明するように、野生型および突然変異型SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質を含む種々の基質を種々のチロシンキナーゼ、すなわち(A)lckキナーゼ、(B)ZAP70キナーゼ、(C)emtキナーゼ、および(D)JAK3キナーゼと反応させたキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(E)野生型SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質基質と、ZAP70、emt、およびJAK3を含む種々のチロシンキナーゼとを使ったキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(F)LAT基質と、lck、ZAP70、emt、およびJAK3を含む種々のチロシンキナーゼとを使ったキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(G)野生型および種々のY→F突然変異体の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質の、チロシンキナーゼ混合物によるチロシンリン酸化の結果を示すグラフ。
【図16D】実施例12で説明するように、野生型および突然変異型SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質を含む種々の基質を種々のチロシンキナーゼ、すなわち(A)lckキナーゼ、(B)ZAP70キナーゼ、(C)emtキナーゼ、および(D)JAK3キナーゼと反応させたキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(E)野生型SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質基質と、ZAP70、emt、およびJAK3を含む種々のチロシンキナーゼとを使ったキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(F)LAT基質と、lck、ZAP70、emt、およびJAK3を含む種々のチロシンキナーゼとを使ったキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(G)野生型および種々のY→F突然変異体の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質の、チロシンキナーゼ混合物によるチロシンリン酸化の結果を示すグラフ。
【図16E】実施例12で説明するように、野生型および突然変異型SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質を含む種々の基質を種々のチロシンキナーゼ、すなわち(A)lckキナーゼ、(B)ZAP70キナーゼ、(C)emtキナーゼ、および(D)JAK3キナーゼと反応させたキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(E)野生型SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質基質と、ZAP70、emt、およびJAK3を含む種々のチロシンキナーゼとを使ったキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(F)LAT基質と、lck、ZAP70、emt、およびJAK3を含む種々のチロシンキナーゼとを使ったキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(G)野生型および種々のY→F突然変異体の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質の、チロシンキナーゼ混合物によるチロシンリン酸化の結果を示すグラフ。
【図16F】実施例12で説明するように、野生型および突然変異型SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質を含む種々の基質を種々のチロシンキナーゼ、すなわち(A)lckキナーゼ、(B)ZAP70キナーゼ、(C)emtキナーゼ、および(D)JAK3キナーゼと反応させたキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(E)野生型SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質基質と、ZAP70、emt、およびJAK3を含む種々のチロシンキナーゼとを使ったキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(F)LAT基質と、lck、ZAP70、emt、およびJAK3を含む種々のチロシンキナーゼとを使ったキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(G)野生型および種々のY→F突然変異体の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質の、チロシンキナーゼ混合物によるチロシンリン酸化の結果を示すグラフ。
【図16G】実施例12で説明するように、野生型および突然変異型SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質を含む種々の基質を種々のチロシンキナーゼ、すなわち(A)lckキナーゼ、(B)ZAP70キナーゼ、(C)emtキナーゼ、および(D)JAK3キナーゼと反応させたキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(E)野生型SIGLEC−BMS−L3タンパク質の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質基質と、ZAP70、emt、およびJAK3を含む種々のチロシンキナーゼとを使ったキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(F)LAT基質と、lck、ZAP70、emt、およびJAK3を含む種々のチロシンキナーゼとを使ったキナーゼアッセイの結果を示すグラフ。(G)野生型および種々のY→F突然変異体の細胞質テールを構成成分とするGST融合タンパク質の、チロシンキナーゼ混合物によるチロシンリン酸化の結果を示すグラフ。
【図17A】(A)SHP−1およびSHP−2がリン酸化SIGLEC−BMSL3細胞質テールと会合することを証明する実施例13に記載の免疫沈降実験の結果。(B)実施例13に記載の、ELISAによる、Y667 ITIMへのSHP−1およびSHP−2の結合を表す。
【図17B】(A)SHP−1およびSHP−2がリン酸化SIGLEC−BMSL3細胞質テールと会合することを証明する実施例13に記載の免疫沈降実験の結果。(B)実施例13に記載の、ELISAによる、Y667 ITIMへのSHP−1およびSHP−2の結合を表す。
【図18】実施例10に記載のGSTタンパク質に融合したSiglec−BMS−L3aの細胞質テールドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を表す。(A)L3cyto−wtのヌクレオチド配列(配列番号17)、(B)L3cyto−wtのアミノ酸配列(配列番号22)。
【図19】実施例10に記載のGSTタンパク質に融合したSiglec−BMS−L3aの細胞質テールドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を表す。(A)L3cyto−Y641Fのヌクレオチド配列(配列番号18)、(B)L3cyto−Y641Fのアミノ酸配列(配列番号23)。
【図20】実施例10に記載のGSTタンパク質に融合したSiglec−BMS−L3aの細胞質テールドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を表す。(A)L3cyto−Y667Fのヌクレオチド配列(配列番号19)、(B)L3cyto−Y667Fのアミノ酸配列(配列番号24)。
【図21】実施例10に記載のGSTタンパク質に融合したSiglec−BMS−L3aの細胞質テールドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を表す。(A)L3cyto−Y691Fのヌクレオチド配列(配列番号20)、(B)L3cyto−Y691Fのアミノ酸配列(配列番号25)。
【図22】実施例10に記載のGSTタンパク質に融合したSiglec−BMS−L3aの細胞質テールドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を表す。(A)L3cyto−Y641aloneのヌクレオチド配列(配列番号21)、(B)L3cyto−Y641aloneのアミノ酸配列(配列番号26)。
【図23A−1】実施例11に記載のヒト免疫グロブリンタンパク質(hIg)に融合したSiglec−BMS−L3aの細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を表す。(A)SiglecBMSL3a hIgのヌクレオチド配列(配列番号31)、(B)SIGLECL−BMS−L3a hIg(配列番号32)。
【図23A−2】実施例11に記載のヒト免疫グロブリンタンパク質(hIg)に融合したSiglec−BMS−L3aの細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を表す。(A)SiglecBMSL3a hIgのヌクレオチド配列(配列番号31)、(B)SIGLECL−BMS−L3a hIg(配列番号32)。
【図23B】実施例11に記載のヒト免疫グロブリンタンパク質(hIg)に融合したSiglec−BMS−L3aの細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を表す。(A)SiglecBMSL3a hIgのヌクレオチド配列(配列番号31)、(B)SIGLECL−BMS−L3a hIg(配列番号32)。
【図24A−1】実施例11に記載のヒト免疫グロブリンタンパク質に融合したSiglec−BMS−L3の細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を表す。(A)SiglecBMSL3 hIgのヌクレオチド配列(配列番号29)、(B)SIGLEC−BMS−L3 hIg(配列番号30)。
【図24A−2】実施例11に記載のヒト免疫グロブリンタンパク質に融合したSiglec−BMS−L3の細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を表す。(A)SiglecBMSL3 hIgのヌクレオチド配列(配列番号29)、(B)SIGLEC−BMS−L3 hIg(配列番号30)。
【図24B】実施例11に記載のヒト免疫グロブリンタンパク質に融合したSiglec−BMS−L3の細胞外ドメインのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を表す。(A)SiglecBMSL3 hIgのヌクレオチド配列(配列番号29)、(B)SIGLEC−BMS−L3 hIg(配列番号30)。
【図25】最も長いオープンリーディングフレーム(配列番号15)に基づくSiglec−10の697アミノ酸配列を表す。スプライスされる2つの領域をボールド体で表し、細胞質ドメイン中のITEMモチーフのアミノ酸を枠で囲んでいる。イントロン/エキソン境界を矢印で示し、ドメイン番号は5つのIg様ドメインを表している。
【図26】実施例15で説明するようにSiglec10へのポリアクリルアミド複合糖質の結合を表す。図示する結果は、2実験、n=4〜6処理/実験の平均±SDである。
【図27】実施例16に記載の抗Siglec10モノクローナル抗体でプローブした細胞溶解物のウェスタンブロットを表す。
【図28】実施例17に記載の非ヒト霊長類およびヒト組織におけるSiglec−10陽性ハイブリダイゼーションシグナルの分布の詳細を示すインサイチューハイブリダイゼーション(ISH)の結果を表す。
(A)NHP脾臓(パネルA、C、E)、ヒト脾臓(パネルB、D、E)
(B)NHP空腸(パネルA、C、E)、ヒト肝臓(パネルB、D、E)
(C)NHP結腸(パネルA〜G)
(D)NHPリンパ節(パネルA、C、E)、ヒトリンパ節(パネルB、D、E)
(E)ヒト喘息肺(パネルA、C、E)
(F)NHP肺(パネルA、B、D、E、G、H)、ヒト肺(パネルC、F、I)。

Claims (38)

  1. 図6Bに示すAla141からSer198までのアミノ酸配列を含む単離されたSIGLECタンパク質。
  2. 図2A、3A、4A、5A、6A、7A、8Aおよび9Aのいずれか一つに示す核酸に相補的な核酸分子にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸分子によってコードされる図6Bに示すAla141からSer198までのアミノ酸配列を含む単離されたSIGLECタンパク質。
  3. 図4B、5Bおよび6Bのいずれか一つに示すアミノ酸配列を含む請求項1または2の単離されたSIGLECタンパク質。
  4. 図2A、3A、4A、5A、6A、7A、8Aおよび9Aのいずれか一つに示す核酸に相補的な核酸分子にストリンジェントな条件でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含む単離されたSIGLECタンパク質。
  5. 図2B、3B、4B、5B、6B、7B、8Bのいずれかに示すアミノ酸配列を有する請求項4の単離されたSIGLECタンパク質。
  6. 請求項3のタンパク質のペプチド断片。
  7. 図6Bに示すAla141からSer198までのアミノ酸配列またはその断片を有する請求項6のペプチド断片。
  8. 図6Bに示すLys576からGln697までのアミノ酸配列を有する細胞質ドメインまたはその断片を含む請求項6のペプチド断片。
  9. 細胞質ドメインを含み、その細胞質ドメイン中の少なくとも1つのチロシンがフェニルアラニン、ロイシン、トリプトファンおよびスレオニンからなる群より選択されるアミノ酸で置換されている突然変異型SIGLEC BMSタンパク質。
  10. 図6Bに示すアミノ酸配列を持ち、上記細胞質ドメイン中のチロシンが597位、641位、667位、または691位のチロシンのいずれかである請求項9の突然変異型SIGLEC BMSタンパク質。
  11. 図2A、3A、4A、5A、6A、7A、8Aおよび9Aのいずれか一つに示す核酸に相補的な核酸分子にストリンジェントな条件でハイブリダイズする図6Aに示す+421位のコドンGCCから+594位のコドンTCAまでの核酸を含む単離されたSiglec核酸分子。
  12. 請求項1、2または4のタンパク質をコードする単離されたSiglec核酸分子。
  13. (a)図2Aに示す+12位のコドンGGCから+1760位のコドンCCAまでの配列、(b)図3Aに示す+3位のコドンGATから+1868位のコドンCAAまでの配列、(c)図4Aに示す+12位のコドンGGAから+1736位のコドンCAAまでの配列、(d)図5Aに示す+2位のコドンCCCから+1291位のコドンATGまでの配列、(e)図6Aに示す+1位のコドンATGから+2091位のコドンCAAまでの配列、(f)図7Aに示す+1のコドンCTGから+1398位のコドンGGCまでの配列、(g)図8Aに示す+43位のコドンATGから+1431位のコドンAGAまでの配列、または(h)図9Aに示す+57位のコドンATGから+914位のコドンAGTまでの配列を含む、請求項12の単離されたSiglec核酸分子。
  14. DNAまたはRNAである請求項11または13の単離されたSiglec核酸分子。
  15. 請求項11または13の分子のヌクレオチド配列に相補的な単離された核酸分子。
  16. 請求項11または13の単離された核酸分子を含むベクター。
  17. 適切な宿主細胞中の請求項16のベクターを含む宿主−ベクター系。
  18. 図2B、3B、4B、5B、6B、7B、8Bおよび9Bのいずれかのアミノ酸配列を持つSIGLEC−BMSタンパク質を製造する方法であって、
    a)請求項17の宿主−ベクター系を、タンパク質が産生されるように、適切な条件で培養すること、および
    b)そのように産生されたタンパク質を回収すること、
    を含む方法。
  19. 請求項18の方法によって製造されたSIGLEC−BMSタンパク質。
  20. 異種ポリペプチドに融合された請求項1、2もしくは4のポリペプチドまたはその断片を含むキメラタンパク質。
  21. 異種ポリペプチドに融合された請求項1、2または4のポリペプチドの細胞外ドメインを含むキメラタンパク質。
  22. 異種ポリペプチドに融合された請求項1、2または4のポリペプチドの細胞質ドメインを含むキメラタンパク質。
  23. 異種ポリペプチドが免疫グロブリン定常領域である請求項20、21または22のキメラタンパク質。
  24. 異種ポリペプチドがグルタチオンS−トランスフェラーゼである請求項20、21または22のキメラタンパク質。
  25. 請求項1、2または4のタンパク質を特異的に認識し結合する抗原結合部位を持つ抗体または抗体断片。
  26. ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体である請求項25の抗体。
  27. モノクローナル抗体がSIGLEC−10−9、SIGLEC−10−13、SIGLEC−10−14、SIGLEC−10−27、またはSIGLEC−10−61と呼ばれ、ATCC受託番号(−−−−)として一括して寄託されている抗体である請求項26の抗体。
  28. 抗体がネズミ抗原結合部位とエフェクター機能を調節するヒト化領域とを持つキメラ抗体である請求項25の抗体。
  29. Siglec−10陽性細胞によって誘導される免疫応答を調整する試験分子を同定する方法であって、
    a)Siglec−10陽性細胞を試験分子と接触させること、および
    b)免疫応答が調整されるかどうかを決定すること、
    を含む方法。
  30. 免疫応答を調整する試験分子がSiglec−10陽性細胞上のSiglec−10の細胞外ドメインを標的とする請求項29の方法。
  31. 細胞外ドメインがSiglec−10のIg様ドメインの少なくとも1つを包含する請求項30の方法。
  32. Siglec−10のIg様ドメインがSiglec−10のIg(V)ドメインである請求項31の方法。
  33. Siglec−10のIg様ドメインがSiglec−10のIg(C)ドメインである請求項31の方法。
  34. Siglec−10陽性細胞によって誘導される免疫応答を調整する方法であって、Siglec−10陽性細胞を、Siglec−10に対するモノクローナル抗体と、免疫応答が調整されるように、適切な条件で接触させることを含む方法。
  35. 抗体がSiglec−10の細胞外ドメインを標的とする請求項34の方法。
  36. そのように標的とされる細胞外ドメインがSiglec−10のIg様ドメインである請求項35の方法。
  37. Ig様ドメインがSiglec−10のIg(V)ドメインである請求項36の方法。
  38. Ig様ドメインがSiglec−10のIg(C)ドメインである請求項36の方法。
JP2002514161A 2000-07-21 2001-07-20 新規シグレック類およびそれらの用途 Pending JP2004516012A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US22013900P 2000-07-21 2000-07-21
PCT/US2001/023082 WO2002008257A2 (en) 2000-07-21 2001-07-20 Siglec (sialic acid-binding ig-related lectin) polypeptides and uses thereof

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004516012A true JP2004516012A (ja) 2004-06-03

Family

ID=22822232

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002514161A Pending JP2004516012A (ja) 2000-07-21 2001-07-20 新規シグレック類およびそれらの用途

Country Status (8)

Country Link
US (1) US20030036631A1 (ja)
EP (1) EP1305417A2 (ja)
JP (1) JP2004516012A (ja)
AU (1) AU2002224546A1 (ja)
CA (1) CA2416713A1 (ja)
IL (1) IL153542A0 (ja)
MX (1) MXPA03000514A (ja)
WO (1) WO2002008257A2 (ja)

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6933223B1 (en) 2004-04-15 2005-08-23 National Semiconductor Corporation Ultra-low loop wire bonding
AU2005255423A1 (en) * 2004-06-09 2005-12-29 Tanox, Inc. Diagnosis and treatment of SIGLEC-6 associated diseases
AU2006335053A1 (en) * 2005-11-21 2007-07-19 Genentech, Inc. Novel gene disruptions, compositions and methods relating thereto
WO2007120815A2 (en) * 2006-04-12 2007-10-25 The Regents Of The University Of California Methods for treating lymphocyte-associated disorders by modulation of siglec activity
WO2009048072A1 (ja) * 2007-10-11 2009-04-16 Daiichi Sankyo Company, Limited 破骨細胞関連蛋白質Siglec-15を標的とした抗体
WO2014098249A1 (ja) 2012-12-21 2014-06-26 国立大学法人名古屋大学 組織修復活性組成物及びその利用
AU2016354924A1 (en) 2015-11-17 2018-06-21 Innate Pharma Siglec-10 antibodies
EP3625258A1 (en) 2017-05-16 2020-03-25 Alector LLC Anti-siglec-5 antibodies and methods of use thereof
SG11202100555PA (en) 2018-07-27 2021-02-25 Alector Llc Anti-siglec-5 antibodies and methods of use thereof
CN114414812B (zh) * 2020-12-21 2022-09-20 华中科技大学同济医学院附属同济医院 生物标志物组合在制备暴发性心肌炎诊断试剂及暴发性心肌炎药物方面的应用

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0983078A4 (en) * 1997-05-27 2003-03-26 Smithkline Beecham Corp SIALOADHESIN 4 FAMILY DNA (SAF-4)
ES2312205T3 (es) * 1998-03-10 2009-02-16 Genentech, Inc. Nuevo polipeptido y acidos nucleicos que lo codifican.
AU3883800A (en) * 1999-04-02 2000-10-23 Eli Lilly And Company Hob-bp2h compositions, methods and uses thereof

Also Published As

Publication number Publication date
US20030036631A1 (en) 2003-02-20
EP1305417A2 (en) 2003-05-02
WO2002008257A3 (en) 2002-12-27
CA2416713A1 (en) 2002-01-31
AU2002224546A1 (en) 2002-02-05
IL153542A0 (en) 2003-07-06
MXPA03000514A (es) 2003-10-06
WO2002008257A2 (en) 2002-01-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1539228B1 (en) Novel composition and methods for the treatment of immune related diseases
CA2473746C (en) Compositions and methods for the detection, diagnosis and therapy of hematological malignancies
KR100607612B1 (ko) 종양의 진단 및 치료를 위한 방법 및 이를 위한 조성물
JP2002533134A (ja) ペプチドグリカン認識タンパク質
KR20040072626A (ko) 혈액학적 악성종양의 검출, 진단 및 치료용 조성물 및 방법
KR20050048615A (ko) 종양의 진단 및 치료를 위한 조성물 및 방법
US20090081727A1 (en) CD33-Like Protein
KR20040073537A (ko) 종양의 진단 및 치료 방법 및 이를 위한 조성물
WO1998006839A1 (en) Cd44-like protein
US20020123617A1 (en) Novel immunoglobulin superfamily members of APEX-1, APEX-2 and APEX-3 and uses thereof
JP2003512819A (ja) B7様ポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび抗体
JP2004516012A (ja) 新規シグレック類およびそれらの用途
CA2518101A1 (en) Compositions and methods for the treatment of systemic lupus erythematosis
JP2008502368A (ja) Siglec−6関連疾患の診断および処置
EP1317553B1 (en) Pde8a and uses thereof
JP2003508036A (ja) アトラクチン様ポリヌクレオチド、ポリペプチド、および抗体
US20070264261A1 (en) Methods of Therapy and Diagnosis Using Targeting of Cells that Express Killer Cell Immunoglobulin like Receptor like Proteins
JP2002537769A (ja) ヒトエンドカインαおよび使用方法
AU705281B2 (en) Secreted human fas antigen
JP2003523760A (ja) ヒトポリヌクレオチド、ポリペプチド、および抗体
JP2001502888A (ja) Cd33様タンパク質をコードするヌクレオチド配列
US20030040604A1 (en) Siglec-12 polypeptides, polynucleotides, and methods of use thereof
US20030105058A1 (en) CD44-like protein
US20020146767A1 (en) Human EMR1-like G protein-coupled receptor
JP2008253269A (ja) 新規ポリペプチド