JP2004201163A - 空洞導波管と誘電体導波管の接続構造 - Google Patents

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【課題】空洞導波管と誘電体導波管とを低損失でかつ広帯域に接続できる空洞導波管と誘電体導波管との接続構造を提供する。
【解決手段】プリント基板の表面に搭載した誘電体導波管とプリント基板の裏面に取り付けた空洞導波管との接続構造において、誘電体導波管はプリント基板と対向する面に導体膜が形成されずに誘電体が露出するスロットを具え、プリント基板はそのスロットに対向する位置にビアホールを具え、プリント基板と空洞導波管との間に前記スロットに対向する位置にスルーホールを具えた金属板を配置する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、誘電体導波管共振器あるいはフィルタなどとして用いられる誘電体導波管と空洞導波管との接続構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平11−68419号公報
【特許文献2】特開平11−186818号公報
【0003】
マイクロ波やミリ波帯といった高周波回路においては空洞導波管が古くから用いられており、現在でもアンテナの給電系などに広く用いられている。しかしながら、空洞導波管は肉厚の金属壁を必要とし、回路装置が大型となるので、一般的には小型化・集積化が進んでいる電子回路には利用し難い。小型化・集積化された伝送線路としてはマイクロストリップが利用されているが、マイクロストリップは損失が大きいという欠点がある。そのため、マイクロストリップを利用した回路では性能の劣化が避けられない。
【0004】
一方、誘電体材料の表面に導体膜を形成して得られる誘電体導波管は、誘電体材料による電磁波の短縮効果があり、また金属壁が必要でないので空洞導波管に比較して大幅な小型化が可能である。そこで、空洞導波管の伝送モードを誘電体導波管の伝送モードに変換することができれば、アンテナ給電系などの導波管回路を低損失のまま小型化することができる。それによって、マイクロ波帯やミリ波帯の通信機器全体の小型化を図ることができる。
【0005】
しかし、これまで空洞導波管と誘電体導波管を接続する実用的な手法は提案されていない。従来は、空洞導波管をいったんマイクロストリップに変換し、さらにマイクロストリップから誘電体導波管への変換を行うことで、誘電体導波管を利用することが試みられている。このような方法は、損失の大きいマイクロストリップを介在させることになるだけでなく、モード変換構造も2つ必要となるため、電子回路の性能を低下させる大きな要因となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、空洞導波管と誘電体導波管とを低損失でかつ広帯域に接続できる空洞導波管と誘電体導波管との接続構造を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、誘電体導波管のスロットを介して接続することによって、上記の課題を解決するものである。すなわち、プリント基板の表面に搭載した誘電体導波管とプリント基板の裏面に取り付けた空洞導波管との接続構造において、誘電体導波管はプリント基板と対向する面に導体膜が形成されずに誘電体が露出するスロットを具え、プリント基板はそのスロットに対向する位置にビアボールを具え、 プリント基板と空洞導波管との間に前記スロットに対向する位置にスルーホールを具えた金属板を配置することに特徴を有するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明による空洞導波管と誘電体導波管の接続構造の構成要素は以下のとおりである。
(1)誘電体導波管:直方体の誘電体の入出力部分に誘電体が露出したスロットを具え、その他は導体膜で覆われる。
(2)プリント基板:誘電体導波管を搭載して固着するもので、上記スロットに対向する位置にビアホールが形成されている。
(3)金属板:プリント基板が貼り付けられ、スロットおよびビアホールに対向する位置に貫通孔が形成されている。
(4)空洞導波管:空洞部がスロットに対向しており、端部のフランジは金属板に固定される。
【0009】
【実施例】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。図1は、本発明の実施例を示す斜視図である。プリント基板13の上面に誘電体導波管11をはんだ付けなどで固定し、プリント基板13の下面に金属板15を密着させる。誘電体導波管11の底面には一部の導体膜を除去したスロット12が設けられており、プリント基板13のビアホール14の形状をこのスロット11にほぼ等しく、スロット12とビアホール14の位置が一致するように調整される。金属板15には貫通孔16が形成されており、この位置もプリント基板13のビアホール14と一致させる。そして、金属板15の下面から空洞導波管17の端面が密着させられる。図1の例では、空洞導波管17の端面にフランジ18が設けられており、金属板15にねじ止めするようになっている。空洞導波管からの電磁界は金属板15の貫通孔16、プリント基板13のビアホール14を経て、誘電体導波管11に設けられたスロット12と結合するようになっている。
【0010】
図2(A)の平面図、(B)の正面断面図を用いて説明する。金属板15に設けられている貫通孔16は短辺寸法を低くしたために特性インピーダンスの低くなった空洞導波管と考えることができる。誘電体導波管11は空洞導波管17よりも特性インピーダンスが低くなるため、そのまま接続した場合、2つの導波管のインピーダンス整合が得難くなる。金属板15に設けられた貫通孔16を低インピーダンスの導波管線路として使用することで、両者のインピーダンス整合を取り易くしている。
【0011】
誘電体導波管に用いられる誘電体と金属とは、通常、熱膨張率が大きく異なる。そのため、誘電体導波管を金属に直接接続すると温度変化によって接合部にストレスがかかる。それを防ぐため、プリント基板は金属と誘電体の熱膨張率の相違を吸収する緩衝材として作用する。さらに、貫通孔とスロットの大きさの差から生じる隙間からの電磁波の漏れを防ぐ蓋の作用も果たしている。スロットの形状とビアホールの形状は厳密に一致させる必要はなく、電磁波が漏洩する隙間を生じさせなければよい。
【0012】
本発明による構造では、電磁界は閉空間に閉じ込められて漏れは生じない。また、変換部にマイクロストリップや他の誘電体などの損失の大きい構成要素を用いていないので、低損失の変換を実現できる。図3は、空洞導波管と誘電体導波管の内部の磁界の結合を模式的に描いたものである。2つの導波管は貫通孔とビアホールで構成されるキャビティを通じて結合している。誘電体導波管のスロットを設ける位置は、誘電体導波管の短絡端面管内波長の1/2弱程度にすると、2つの導波管内の電磁界の位相が一致し、広帯域で反射の少ないモード変換が可能となる。
【0013】
本発明によるモード変換の特性を調べるために、図4のように、誘電体導波管の両端に空洞導波管を接続してその伝送特性と反射特性を測定した。用いた空洞導波管はEIAJ規格のWRI−260とし、これに接続する誘電体導波管は比誘電率が4.5の誘電体材料を用い、幅寸法と高さ寸法をそれぞれ4mmと2.5mmとし、長さは50mmとした。金属板の厚みを2.7mmとし、貫通孔の幅と長さをそれぞれ1.6mmと9mmとしたときの測定結果を図5に示す。25GHzから30GHzまでの周波数範囲でリターンロスが14dB以上になっており、伝送損失は2dBとなっている。この伝送損失は測定のために用いた同軸導波管変換器2個の損失分を含んでいるためので、実際の伝送損失は1dB以下となっている。
【0014】
変換特性をさらに低反射で広帯域にするには、図6に示すような構造が考えられる。これは、金属板を1枚追加することで、導波管のインピーダンスステップを一つ付け加えた構造である。金属板65A、65Bによってインピーダンスステップが2段になり、1段の場合よりも接合部でのインピーダンスの変化が少なくなり、反射特性が改善される。また、上記の説明で用いた誘電体導波管の左端を、図7に示したように、短絡させずに用いると、空洞導波管から誘電体導波管の2方向にエネルギーが分配される分岐回路として利用することができる。
【0015】
誘電体導波管の寸法は、用いる誘電体材料の比誘電率の平方根の逆数の割合で小型化されるので、例えば比誘電率4.5の誘電体材料を用いた場合、空洞導波管に比べ47%の大きさになる。したがって、図8に示すように、空洞導波管と2本の誘電体導波管を強く結合させ、空洞導波管からのエネルギーを誘電体導波管の4つのポートに分配することも可能である。この構成では、プリント基板のビアホールを2つに増やし、2本の誘電体導波管の各スロットと接合している。例えば、3本の同じ断面寸法の空洞導波管をこのような配置で接続した場合、強い結合は得難いが、誘電体導波管は小型であるため、空洞導波管の断面の上に2つの誘電体導波管を配置することができ、スロットを導波管内部の電磁界が強い位置に配置できるため、結合度を高められる。
【0016】
【発明の効果】
本発明によれば、大型の空洞導波管を単純な構造で小型の誘電体導波管に変換でき、また誘電体導波管はプリント基板上に表面実装されるので、集積回路での導波管回路の利用が容易となる。プリント配線板に用いられているマイクロストリップよりも誘電体導波管の伝送損失ははるかに小さく、またアンテナ給電系からの空洞導波管をマイクロストリップに変換する回路がなくなるので、マイクロ波・ミリ波帯の回路の低損失化が可能となる。また、誘電体導波管フィルタの入出力の少なくとも一方に用いることで、従来必要とされていたマイクロストリップは不要となって誘電体導波管フィルタの低損失化が可能となる。これは誘電体導波管デュプレクサにおいても同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す斜視図
【図2】その平面図(A)と正面断面図(B)
【図3】本発明の他の実施例を示す斜視図
【図4】本発明の他の実施例を示す正面断面図
【図5】本発明による誘電体フィルタの特性の説明図
【図6】本発明の他の実施例を示す正面断面図
【図7】本発明の他の実施例を示す正面断面図
【図8】本発明の他の実施例を示す平面図
【符号の説明】
11:誘電体導波管
12:スロット
13:プリント基板
14:ビアホール
15、65:金属板
16:貫通孔
17:空洞導波管
18:フランジ

Claims (3)

  1. プリント基板の表面に搭載した誘電体導波管とプリント基板の裏面に取り付けた空洞導波管との接続構造において、
    誘電体導波管はプリント基板と対向する面に導体膜が形成されずに誘電体が露出するスロットを具え、
    プリント基板はそのスロットに対向する位置にビアホールを具え、
    プリント基板と空洞導波管との間に前記スロットに対向する位置に貫通孔を具えた金属板を配置することを特徴とする空洞導波管と誘電体導波管の接続構造。
  2. 空洞導波管のフランジが金属板に固定される請求項1記載の空洞導波管と誘電体導波管の接続構造。
  3. プリント基板の表面に搭載した誘電体導波管とプリント基板の裏面に取り付けた空洞導波管との接続構造において、
    誘電体導波管はプリント基板と対向する面に導体膜が形成されずに誘電体が露出するスロットを具え、スロットに対向する位置にビアホールを具えたプリント基板に搭載されて固定され、
    プリント基板の裏面にはそのビアホールに対向する位置に貫通孔を具えた金属板が固着され、その金属板に空洞導波管のフランジが固着されることを特徴とする空洞導波管と誘電体導波管の接続構造。
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