JP2004198173A - 転がり軸受ユニット用荷重測定装置 - Google Patents

転がり軸受ユニット用荷重測定装置 Download PDF

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Hiroo Ishikawa
寛朗 石川
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Abstract

【課題】構成各部材の形状誤差や組み付け誤差に拘らず、1対の軌道輪同士の間に加わる荷重を正確に測定可能な構造を実現する。
【解決手段】磁気特性が円周方向に亙って交互に変化するエンコーダと、円周方向に離隔して配置した複数のセンサとを利用して上記荷重を測定する。この場合、これら各センサの出力信号が(A)に示す様に変化する。この信号から、周期T1 で変化する、形状誤差や組み付け誤差に起因する成分と、周期T2 で変化する、上記エンコーダの特性変化に基づく成分とを除去して、(D)に示す上記荷重の変化を表す成分のみを取り出す。そして、この(D)に示した成分により、ABSやTCSの制御を行なう。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明に係る転がり軸受ユニット用荷重測定装置は、例えば車両(自動車)の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持すると共に、少なくともこの車輪に加わる力の大きさを測定して、車両の安定運行に寄与せしめるものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の車輪を懸架装置に対して回転自在に支持するのに、転がり軸受ユニットを使用する。又、アンチロックブレーキシステム(ABS)やトラクションコントロールシステム(TCS)等、各種車両用姿勢安定装置を制御する為には、上記車輪の回転速度を検出する必要がある。この為、上記転がり軸受ユニットに回転速度検出装置を組み込んだ回転速度検出装置付転がり軸受ユニットにより、上記車輪を懸架装置に対して回転自在に支持すると共に、この車輪の回転速度を検出する事が、近年広く行なわれる様になっている。
【0003】
この様な目的で使用される回転速度検出装置付転がり軸受としては、特許文献1に記載されたもの等、多くの構造が知られている。回転速度検出装置付転がり軸受ユニットで検出した、車輪の回転速度を表す信号を制御器に送れば、ABSやTCSを適切に制御できる。この様に、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットによれば、制動時や加速時に於ける車両の走行姿勢の安定性確保を図れるが、より厳しい条件でもこの安定性の確保を図る為には、車両の走行安定性に影響するより多くの情報を取り入れて、ブレーキやエンジンの制御を行なう事が必要になる。これに対して、回転速度検出装置付転がり軸受ユニットを利用したABSやTCSの場合には、タイヤと路面との滑りを検知してブレーキやエンジンを制御する、所謂フィードバック制御を行なっている。この為、これらブレーキやエンジンの制御が一瞬とは言え遅れる為、厳しい条件下での性能向上の面からは改良が望まれる。即ち、従来構造の場合には、所謂フィードフォワード制御により、タイヤと路面との間に滑りが発生しない様にしたり、左右の車輪の制動力が極端に異なる所謂ブレーキの片効きを防止する事はできない。更には、トラック等で、積載状態が不良である事に基づいて走行安定性が不良になるのを防止する事もできない。
【0004】
この様な事情に鑑みて、前記特許文献1には、図3に示す様な、転がり軸受ユニットに加わる荷重を測定自在とした荷重測定装置付転がり軸受ユニットが記載されている。この従来の荷重測定装置付転がり軸受ユニットは、懸架装置に支持される外輪1の内径側に、車輪を結合固定するハブ2を支持している。このハブ2は、車輪を固定する為のフランジ3をその外端部(車両への組み付け状態で幅方向外側となる端部)に有するハブ本体4と、このハブ本体4の内端部(車両への組み付け状態で幅方向中央側となる端部)に外嵌されてナット5により抑え付けられた内輪6とを備える。そして、上記外輪1の内周面に形成した複列の外輪軌道7、7と上記ハブ2の外周面に形成した複列の内輪軌道8、8との間にそれぞれ複数個ずつの転動体9、9を配置して、上記外輪1の内径側での上記ハブ2の回転を自在としている。
【0005】
上記外輪1の軸方向中間部で複列の外輪軌道7、7の間部分に、この外輪1を直径方向に貫通する取付孔10を、この外輪1の上端部にほぼ鉛直方向に形成している。そして、この取付孔10内に、特許請求の範囲に記載した荷重測定用センサである、円杆状(棒状)の変位センサ11を装着している。この変位センサ11の先端面(下端面)に設けた検出面は、ハブ2の軸方向中間部に外嵌固定した被検出リング12の外周面に近接対向させている。上記変位センサ11は、上記検出面と上記被検出リング12の外周面との距離が変化した場合に、その変化量に対応した信号を出力する。
【0006】
上述の様に構成する従来の荷重測定装置付転がり軸受ユニットの場合には、上記変位センサ11の検出信号に基づいて、転がり軸受ユニットに加わる荷重を求める事ができる。即ち、車両の懸架装置に支持した上記外輪1は、この車両の重量により下方に押されるのに対して、車輪を支持固定したハブ2は、そのままの位置に止まろうとする。この為、上記重量が嵩む程、上記外輪1やハブ2、並びに転動体9、9の弾性変形に基づいて、これら外輪1の中心とハブ2の中心とのずれが大きくなる。そして、この外輪1の上端部に設けた、上記変位センサ11の検出面と上記被検出リング12の外周面との距離は、上記重量が嵩む程短くなる。そこで、上記変位センサ11の検出信号を制御器に送れば、予め実験等により求めた関係式或はマップ等から、当該変位センサ11を組み込んだ転がり軸受ユニットに加わる荷重を求める事ができる。この様にして求めた、各転がり軸受ユニットに加わる荷重に基づいて、ABSを適正に制御する他、積載状態の不良を運転者に知らせる。
【0007】
尚、図3に示した従来構造は、上記転がり軸受ユニットに加わる荷重に加えて、上記ハブ2の回転速度も検出自在としている。この為に、前記内輪6の内端部にセンサロータ13を外嵌固定すると共に、上記外輪1の内端開口部に被着したカバー14に回転検出センサ15を支持している。そして、この回転検出センサ15の検知部を、上記センサロータ13の被検出部に、検出隙間を介して対向させている。
【0008】
上述の様な回転速度検出装置を組み込んだ転がり軸受ユニットの使用時、車輪を固定したハブ2と共に上記センサロータ13が回転し、このセンサロータ13の被検知部が上記回転検出センサ15の検知部の近傍を走行すると、この回転検出センサ15の出力が変化する。この様にして回転検出センサ15の出力が変化する周波数は、上記車輪の回転数に比例する。従って、この回転検出センサ15の出力を図示しない制御器に送れば、ABSやTCSを適切に制御できる。
【0009】
ところで、図3に示した様な、従来から知られている荷重測定装置付転がり軸受ユニットの場合、車両の重量に基づいて鉛直方向に加わる荷重を測定できるが、例えば旋回走行時に遠心力等に基づいて加わるモーメント荷重を測定する事はできない。この為、車両のあらゆる走行状態に応じて、安定走行の為に適切な制御を行なう為の信号を得る面からは、改良が望まれる。この様な場合に使用可能な構造として、特許文献2、3に記載された構造が知られている。これら各特許文献2、3に記載された構造によれば、上記モーメント荷重を含め、車両の走行時に車輪に加わる各方向の荷重を測定できる。
【0010】
特に、特許文献3には、図4に示す様な構造で、回転軸16の回転速度と、この回転軸16に加わるモーメント荷重とを測定自在とした構造が記載されている。この従来構造の第2例の場合、上記回転軸16と共に回転するエンコーダ17の軸方向側面に対向させて、特許請求の範囲に記載した荷重測定用センサに相当する、円環状のセンサユニット18を、外輪1aに支持する状態で設けている。このセンサユニット18には、円周方向に互いに離隔させて、複数個のセンサを保持しており、それぞれの検出部を、上記エンコーダ17の軸方向側面に対向させている。このエンコーダ17の軸方向側面は、磁気特性を円周方向に亙って交互に且つ等間隔で変化させている。又、上記各センサとしては、ホールICや磁気抵抗素子等の磁気検出素子を内蔵した所謂アクティブ型のもの、或はポールピースの周囲にコイルを巻回した所謂パッシブ型のものを使用する。これら各構造のセンサは、何れも、検出部が対向する部分の磁気特性の変化に対応して出力信号を変化させる。
【0011】
上述の様な従来構造の第2例の運転時に、上記各センサの出力信号は、上記回転軸16の回転に伴って、この回転軸16の回転速度に応じた周波数で変化する。従って、何れかのセンサの出力信号に基づき、上記回転軸16の回転速度を算出できる。又、上記各センサの出力は、それぞれの検出部と上記エンコーダ17の軸方向側面との距離が短い程大きくなる。従って、上記各センサの出力信号の大きさを比較すれば、上記センサユニット18の軸方向側面と上記エンコーダ17の軸方向側面との距離が円周方向に関して不均一になっている程度を求められる。そして、この不均一になっている程度に基づいて、上記回転軸16と上記外輪1aとの間に作用するモーメント荷重を求める事ができる。
【0012】
【特許文献1】
特開2001−21577号公報
【特許文献2】
特開平10−73501号公報
【特許文献3】
特開平11−218542号公報
【0013】
【先発明の説明】
更に、特願2002−203072号には、ハブに加わる荷重の方向及び大きさを、比較的簡単な構造で正確に求める事を目的に考えられた、図5〜7に示す様な、荷重測定装置付転がり軸受ユニットが開示されている。この先発明に係る構造の場合には、外輪1の軸方向中間部分の円周方向等間隔4個所位置に取付孔10、10を、それぞれ上記外輪1の内外両周面同士を連通させる状態で形成している。そして、これら各取付孔10、10内に、それぞれが特許請求の範囲に記載した荷重測定用センサである、変位センサ11、11を挿入している。
【0014】
これら各変位センサ11、11はそれぞれ、ハブ2のラジアル方向(径方向)の変位及びスラスト方向(軸方向)の変位を測定自在とするもので、それぞれが非接触式である、2個の変位測定素子19a、19bを有する。これら各変位測定素子19a、19bは、静電容量式、或は渦電流式等の近接センサの如き、非接触式で微小変位量を測定自在なもので、上記各変位センサ11、11を構成する合成樹脂製のホルダ20の先端面部分と先端部側面部分とに包埋支持している。
【0015】
一方、複列の内輪軌道8、8の間に位置する、上記ハブ2の中間部に、被検出リング21を外嵌固定している。この被検出リング21は、金属板にプレス加工等の塑性加工を施す事により、断面L字形で全体を円環状としたもので、円筒部22と、この円筒部22の軸方向一端部から径方向外方に直角に折れ曲がった折れ曲がり部23とを備える。
【0016】
この様な被検出リング21に対して、上記各変位センサ11、11の変位測定素子19a、19bの検出部を、それぞれ近接対向させている。即ち、変位測定素子19aを上記円筒部22の外周面に近接対向させて、前記外輪1に対する上記ハブ2のラジアル方向(径方向)の変位を測定自在としている。又、上記変位測定素子19bを上記折れ曲がり部23の片側面に近接対向させて、上記外輪1に対する上記ハブ2のスラスト方向の変位を測定自在としている。
【0017】
上述の様に構成する、先発明に係る荷重測定装置付転がり軸受ユニットの場合には、上記4個の変位センサ11、11により、円周方向4個所位置で、上記外輪1に対する上記ハブ2の、ラジアル方向及びスラスト方向の変位を測定する。上記各変位センサ11、11が測定した、これら各変位センサ11、11毎に2種類ずつ合計8種類の検出信号は、それぞれハーネス24、24により取り出して、図示しない制御器に入力している。そして、この制御器が、上記各変位センサ11、11から送り込まれる検出信号に基づき、転がり軸受ユニットに加わる、各方向の荷重を求める。
【0018】
例えば、上記各転がり軸受ユニットに、車重等に基づく鉛直方向(下向き)の荷重が加わった場合には、鉛直方向に存在する2個の変位センサ11、11のうち、上側の変位センサ11で、ラジアル検出部を構成する変位測定素子19aと、ラジアル被検出面である上記円筒部22の外周面との距離が狭まり、下側の変位センサ11でこの距離が広がる。この際の距離の変化量は、上記荷重が大きくなる程大きくなる。水平方向(前後方向)に存在する2個の変位センサ11、11に関しては、この距離は変化しない。
【0019】
これに対して、何らかの原因で(例えば加速や制動に伴って)前記ハブ2に水平方向の荷重が加わった場合には、水平方向に存在する2個の変位センサ11、11のうち、荷重の作用方向前側の変位センサ11で、ラジアル検出部を構成する変位測定素子19aと、ラジアル被検出面である上記円筒部22の外周面との距離が縮まり、同じく作用方向後側の変位センサ11でこの距離が広がる。この際の距離の変化量も、上記荷重が大きくなる程大きくなる。鉛直方向に存在する2個の変位センサ11、11に関しては、この距離は変化しない。斜め方向の荷重によっては、総ての変位センサ11、11に関して、上記距離が変化する。
【0020】
従って、円周方向に関して等間隔に配置された4個の変位センサ11、11のラジアル検出部を構成する変位測定素子19a、19aの検出信号を比較すれば、ラジアル荷重の作用する方向とその大きさとを知る事ができる。尚、上記各部の距離の変化量とラジアル荷重の大きさ及び作用方向は、予め計算式や多数の実験、或はコンピュータ解析により求めておく。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
前述の図3〜4に示した従来構造にしても、或は上述の図5〜7に示した先発明に係る構造にしても、構成各部材の形状誤差や組み付け誤差に伴う各部材同士の間の距離変化に就いては、特に考慮していない。ところが、何れの構造の場合でも、構成各部材の形状誤差や組み付け誤差に基づいて各部材同士の間の距離が変化し、これに伴って荷重検出用のセンサの出力が変化する可能性がある。
【0022】
例えば、図3に示した従来構造の第1例或は図5〜7に示した先発明に係る構造で、被検出リング12或は円筒部22の外周面の真円度が不良であったり、この外周面の幾何中心が回転中心に対し偏心する等、被検出面が不良である場合、この外周面とセンサの検出部との距離が、荷重変動に関係なく変化する。又、図4に示した従来構造の第2例及び図5〜7に示した先発明に係る構造で、エンコーダ17或は折れ曲がり部23の軸方向側面が円周方向に波打っていたり、或はこの軸方向側面の回転中心に対する直角度が不良である等、被検出面が不良である場合、この軸方向側面とセンサの検出部との距離が、荷重変動に関係なく変化する。
【0023】
何れの場合でも、外周面や軸方向側面とセンサの検出部との距離の変動は、上記センサの出力信号の変化に繋がる。従って、この出力信号をそのまま解析した場合には、転がり軸受ユニットに加わる荷重を正確に測定できず、ABSやTCSを適切に制御する事はできない。
本発明は、この様な事情に鑑みて、上述の様な構成各部材の形状誤差や組み付け誤差に伴う各部材同士の間の距離変化に基づく影響を排除して、正確な荷重測定を行なえる転がり軸受ユニット用荷重測定装置を実現すべく発明したものである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明の転がり軸受ユニット用荷重測定装置は、1対の軌道輪と、荷重測定用センサと、演算器とを備える。
このうちの1対の軌道輪は、複数個の転動体を介して相対回転を自在に組み合わされている。
又、上記荷重測定用センサは、上記両軌道輪同士の間の距離の変化に対応して出力信号を変化させるものである。
更に、上記演算器は、上記荷重測定用センサの出力の変化に基づいて上記両軌道輪同士の間に作用する荷重を算出するものである。
そして、上記演算器は、上記荷重測定用センサから送り込まれる上記出力信号中に含まれる、周期的に変化する成分を除去して、上記両軌道輪同士の間に作用する荷重の大きさにより変化する成分を取り出してから、この荷重を算出する機能を有する。
【0025】
【作用】
上述の様に本発明の転がり軸受ユニット用荷重測定装置は、演算器が、荷重測定用センサから送り込まれる出力信号中に含まれる、周期的に変化する成分を除去する。この為、この出力信号中から、1対の軌道輪同士の間に作用する荷重の大きさにより変化する成分だけを取り出せる。即ち、前述した様な、構成各部材の形状誤差や組み付け誤差に伴って各部材同士の間の距離は、上記両軌道輪同士の相対回転に伴って周期的に変化する。従って、上記出力信号中の周期的に変化する成分は、上記形状誤差や組み付け誤差に基づくものと考えられる。そこで、本発明の様に、上記出力信号中の周期的に変化する成分を除去してから、上記両軌道輪同士の間に加わる荷重を算出すれば、この荷重を正確に求める事ができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1〜2は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例の特徴は、構成各部材の形状誤差や組み付け誤差に伴う各部材同士の間の距離変化に基づく影響を排除して、外輪とハブとの間等、1対の軌道輪同士の間に作用する荷重測定を正確に行なう点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図3〜4に示した従来構造、或は図5〜7に示した先発明に係る構造と共通するので、同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。
【0027】
本例は、前述の図4に示した従来構造の第2例の様に、回転速度検出の為のセンサユニット18に設けた複数のセンサの出力信号に基づいて、1対の軌道輪同士の間(図4の場合、外輪1aと内輪6との間。他の図3、5に示した様な構造に適用して、外輪1とハブ2との間でも同様。)に加わる荷重を測定する場合を示している。この様な場合で、エンコーダ17の軸方向側面が波打っていたり、このエンコーダ17の幾何中心と回転中心とがずれていたりする等の原因で、このエンコーダ17の軸方向側面と上記各センサの検出部との距離が、上記荷重に関係なく変動する場合に就いて説明する。
【0028】
この様な場合で、上記1対の軌道輪同士の間に作用する荷重が次第に変化し、この荷重に基づくこれら両軌道輪同士の間の距離が次第に変化した場合、上記各センサの出力信号は、図2(A)に示す様に変化する。即ち、これら各センサの出力信号は、同図(B)に示す様な、大きく(長い周期T1 で)変化する成分と、同図(C)に示す様に細かく(短い周期T2 で)変化する成分と、同図(D)に示す様に次第に大きく(或は小さく)なる成分とが合成されたものとなる。このうち、図2(B)に示した、周期T1 の大きな変化は、構成各部材の形状誤差や組み付け誤差に基づく各部材同士の間の距離の変化に伴って生じるものである。これに対して、図2(C)に示した、周期T2 の細かな変化は、上記各センサの検出部が対向する上記エンコーダ17の軸方向側面の磁気特性が円周方に変化している事に基づくものである。即ち、上記細かな変化の周波数(1/T2 )は、上記両軌道輪の相対回転速度に比例する。そして、図2(D)に示した成分が、上記両軌道輪同士の間に加わる荷重の変化に基づくものである。
【0029】
本例の場合、上述の様な周期T1 の大きな変化を、図1に示す様な回路により除去する。即ち、本例の場合には、高速フーリエ変換を行なうFFT演算器25に、上記各センサから求められる、上記両軌道輪同士の相対回転速度を表す信号と、上記図2(A)に示した、上記各センサから送り出されたままの出力信号とを送り込む。すると、上記FFT演算器25が、これら両信号を周波数分析して、上記図2(B)に示す様な、上記両軌道輪同士の相対回転速度に比例する周波数(1/T1 )で変化する成分を、フィルタ26により除去(カット)する。この結果、図2(C)に示す様に、上記両軌道輪の相対回転速度に比例した周波数(1/T2 )で細かく変化しつつ次第に大きくなる信号が得られる。
【0030】
この様にして図2(C)に示す様な信号を得られたならば、次いで、この信号の各周期中(T2 間)の代表値(一般的にはピーク値)をサンプリングしてこれをつなぐ。この結果、図2(D)に示した、上記両軌道輪同士の間に加わる荷重の変動に基づいて変化する信号を得られる。尚、上記図2(C)に示した信号から上記図2(D)に示した信号を得る為の処理は、例えば比較的周期の短い(周波数の高い)信号を除去するフィルタを通す事によっても、容易に行なえる。
【0031】
何れにしても、上記図2(D)に示した信号は、前述した様な、構成各部材の形状誤差や組み付け誤差、及び前記エンコーダ17の特性変動による影響を排除した、1対の軌道輪同士の間に作用する荷重の大きさにより変化する成分のみを表している。従って、上記図2(D)に示した信号をABSやTCSの制御器に送り込めば、これらABSやTCSの制御を適切に行なえる。この場合に、上記形状誤差や組み付け誤差の大きさに拘らず、上記図2(D)に示した信号を得られるので、上記ABSやTCSの制御を適切に行なう為に、上記構成各部材の形状精度や組み付け精度を極端に高くする必要はない。尚、荷重検出用のセンサが複数個存在する場合、上述の様な処理は、各センサ毎に行なう。
【0032】
又、本発明を、前述の図3に示した従来構造の第1例、或は前述の図5〜7に示した先発明に係る構造に関して実施する場合には、変位検出用センサの出力信号が細かく変化する事はない。即ち、この場合には、この変位検出用センサの出力信号は、図2(B)に示す様なものとなる。従って、構成部材の形状誤差や組み付け誤差の影響を排除する為には、図2(B)に示す様な出力信号を、図1に示した回路により、直接、図2(D)に示す様なものにする処理を行なえば足りる。
【0033】
【発明の効果】
本発明の転がり軸受ユニット用荷重測定装置は、以上に述べた通り構成され作用するので、構成各部材の形状誤差や組み付け誤差に拘らず、この転がり軸受ユニットに加わる荷重を正確に測定できる。この為、上記構成各部材の形状精度や組み付け精度を特に高くせずに、転がり軸受ユニットに加わる荷重を正確に測定できる。この為、ABSやTCSを適切に制御できる構造を、低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す、演算器部分のブロック図。
【図2】演算器部分で行なう信号処理を説明する為の線図。
【図3】従来から知られている荷重測定装置付転がり軸受ユニットの第1例を示す断面図。
【図4】同第2例を示す断面図。
【図5】先発明に係る荷重測定装置付転がり軸受ユニットの1例を示す断面図。
【図6】一部を省略して示す、図5のA−A断面図。
【図7】図5のB部拡大図。
【符号の説明】
1、1a 外輪
2 ハブ
3 フランジ
4 ハブ本体
5 ナット
6、6a、6b 内輪
7 外輪軌道
8 内輪軌道
9 転動体
10 取付孔
11 変位センサ
12 被検出リング
13 センサロータ
14 カバー
15 回転検出センサ
16 回転軸
17 エンコーダ
18 センサユニット
19a、19b 変位測定素子
20 ホルダ
21 被検出リング
22 円筒部
23 折れ曲がり部
24 ハーネス
25 FFT演算器
26 フィルタ

Claims (3)

  1. 複数個の転動体を介して相対回転を自在に組み合わされた1対の軌道輪と、これら両軌道輪同士の間の距離の変化に対応して出力信号を変化させる荷重測定用センサと、この荷重測定用センサの出力の変化に基づいて上記両軌道輪同士の間に作用する荷重を算出する演算器とを備え、この演算器は、上記荷重測定用センサから送り込まれる上記出力信号中に含まれる、周期的に変化する成分を除去して、上記両軌道輪同士の間に作用する荷重の大きさにより変化する成分を取り出してから、この荷重を算出する機能を有する転がり軸受ユニット用荷重測定装置。
  2. 出力信号中に含まれる周期的に変化する成分が、荷重測定用センサの検出部が対向している被検出面の不良に基づくものであり、演算器は、上記周期的に変化する成分を検出して通過周波数を変化させるフィルタ回路により、この周期的に変化する成分を上記出力信号より除去した残り成分に基づいて、両軌道輪同士の間に作用する荷重を算出する、請求項1に記載した転がり軸受ユニット用荷重測定装置。
  3. 荷重測定用センサが、回転速度検出装置を構成する回転速度センサを兼ねるものであり、演算器は、この回転速度センサの出力信号の大きさに基づいて両軌道輪同士の間に作用する荷重を算出するものであり、上記演算器は、エンコーダの回転に伴って細かく変化する上記回転速度センサの出力信号の代表値に基づいて、両軌道輪同士の間に作用する荷重を算出する、請求項1〜2の何れかに記載した転がり軸受ユニット用荷重測定装置。
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