JP2004197961A - 生体温度調整用細管ヒートパイプ及び生体温度調整装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】受熱部と放熱部が離れており、かつ、両部の間に十分なスペースが存在しない対象に適用することのできる生体温度調整用細管ヒートパイプ等を提供する。
【解決手段】細管ヒートパイプ51は、一ターン部53(放熱部)と、複数のターンを有する蛇行ターン部55(受熱部)と、両ターン部53、55間を延びる直線部(熱輸送部)53bとから構成され、1本のパイプの両端を連通させた閉ループを形成している。熱輸送部は2本の直線状のパイプから構成されているので、この細管ヒートパイプ51は受熱部と放熱部を1往復で接続している。1往復のみとすることにより、熱輸送部を細くできるため、狭い空間を隔てて離れている受熱部と放熱部間で熱輸送を行うことができる。
【選択図】 図1
【解決手段】細管ヒートパイプ51は、一ターン部53(放熱部)と、複数のターンを有する蛇行ターン部55(受熱部)と、両ターン部53、55間を延びる直線部(熱輸送部)53bとから構成され、1本のパイプの両端を連通させた閉ループを形成している。熱輸送部は2本の直線状のパイプから構成されているので、この細管ヒートパイプ51は受熱部と放熱部を1往復で接続している。1往復のみとすることにより、熱輸送部を細くできるため、狭い空間を隔てて離れている受熱部と放熱部間で熱輸送を行うことができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体温度調整用ヒートパイプ、及び、このヒートパイプを使用した生体温度調整装置に関する。特には、受熱部と放熱部が離れており、両部の途中に十分なスペースが存在しない場合にも適用できる生体温度調整用細管ヒートパイプに関する。また、生体(人体)の表面又は内部に位置する生体患部を冷却又は加熱(加温)する用途に用いることのできる生体温度調整装置、特には、生体(人体)の奥の患部を局所的に冷却又は加熱(加温)するような用途にも用いることのできる生体温度調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器や内燃機関、真空ポンプ等の発熱体の冷却には、従来より放熱器が使用されている。放熱器の中で、ヒートパイプ式のものは熱輸送性能が高いことで知られている。一般的なヒートパイプ式放熱器は、発熱体が取り付けられるベース板と、このベース板に一部(受熱部)が取り付けられているヒートパイプとから主に構成されている。ヒートパイプとは、中空体内部の密閉空間を真空に引いた後に、水やブタン、アルコール等の作動流体を封入したものである。発熱体からベース板に伝えられた熱は、ベース板に接するヒートパイプの受熱部に伝えられ、同部の細管内の作動流体を蒸発させる。発生した蒸気は、ヒートパイプのベース板が取り付けられていない部分(放熱部)に移動し、同部において蒸気が放熱して液体に戻る。この密閉空間内の作動流体の相の変化や移動により、発熱体の熱を放熱する。放熱部にはフィンが設けられる場合もあり、熱を有効に拡散させる。
【0003】
このようなヒートパイプの種類の一つである、ヒートパイプが受熱部と放熱部間を蛇行するように配置された蛇行細管ヒートパイプは、熱の輸送能力が高く特に有効である。蛇行細管ヒートパイプは、例えば、特開平4−190090号に開示されている。
図6は、特開平4−190090号に開示されている蛇行細管ヒートパイプの構造を示す一部断面平面図である。
このヒートパイプ100は、以下の特性を有する。
(A)細孔の両端末が相互に流通自在に連結されて密閉されている(閉ループ型)。
(B)細孔の一部は受熱部H、他の一部は放熱部Cとなっている。
(C)受熱部Hと放熱部Cが交互に配置されており、両部の間を細孔が蛇行している。
(D)細孔内には二相凝縮性流体(作動流体)101が封入されている。
(E)細孔の内壁は、上記作動流体101が常に孔内を閉塞した状態のままで循環または移動することができる最大直径以下の径をもつ。
【0004】
ヒートパイプ100内で作動流体101の循環流が発生し、受熱部から放熱部へ熱(温熱)が輸送される。循環流の発生する方向はヒートパイプ100の姿勢によって異なる。
ヒートパイプ100が水平に配置された状態では、受熱部Hで発生した蒸気泡103の圧力が放熱部Cで減圧縮小されるため、作動流体101は受熱部Hから最も近い放熱部Cに向かって流れ、作動流体101が図の実線矢印方向に循環する。一方、垂直に配置されてボトムヒートとした状態では、受熱部Hで発生した蒸気泡103は、最も抵抗の少ない連結部105を通って上昇し、一方、これらの蒸気泡103の多くが凝縮した作動流体101は重力により蛇行部を下降し、作動流体101が図の破線矢印方向に循環する。なお、受熱部から放熱部に冷熱を送る場合には、上記とは逆に受熱部で作動流体の凝縮が生じ、放熱部で作動流体の蒸発が生じる。
【0005】
このような閉ループ型蛇行細管ヒートパイプの熱輸送特性として、粘性係数の小さい液体(フロンのR141b等)を作動流体として用いた場合、細管の内径を0.8mmと細径化しても十分な熱輸送特性を有することが確認されている(例えば、後記の非特許文献1参照)。また、ヒートパイプ製作時の初期真空について、ウィック型ヒートパイプは0.010mmHg前後の高真空を要するのに対して、閉ループ型細管ヒートパイプは60mmHg程度の低真空であっても十分な熱輸送能力を有する。
【0006】
さらに、この文献では、作動流体の蒸気相と液相の移動を可視化して、循環流の発生を考察している。その結果、2往復閉ループ型ヒートパイプにおいて、同パイプ内に3つの主蒸気プラグと3つの主液柱が交互に形成され、これらの加熱及び冷却による成長や凝縮により、受熱部と放熱部間で循環流の駆動力が発生している。
【0007】
ヒートパイプは、冷熱輸送(冷却装置)に用いることもできる。ヒートパイプの受熱部に冷熱発生体を取り付けると、この冷熱発生体が発する冷熱が、ヒートパイプの受熱部に伝えられ熱輸送部を経由して放熱部で放熱される。ここで、冷却したい対象物(被冷却物)を放熱部に接続した場合には、この被冷却物に冷熱発生体からの冷熱がヒートパイプを経由して輸送され、被冷却物が冷却される。
【0008】
冷熱輸送(冷却装置)の用途の一例として、近年頭部外傷の治療方法として注目されている局所低体温療法への適用も考えられる。この治療法においては、例えば、人体の大腿部から頭部までカテーテルを挿入し、頭部内(又はその近く)の患部を32〜35℃程度の温度に冷却する。この際、大腿部から頭部までの比較的長い距離を熱輸送できる冷却装置が必要となる。このような冷却装置として、供給カテーテルと分配カテーテルを有する冷却装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この冷却装置は、患者の血管内に通された供給カテーテルから患者の血液をチラーに送って冷却し、冷却された血液を、血管内に通された分配カテーテルを通して患部へ送り返すものである。
【0009】
また、外ルーメンと内ルーメンとを有する二重管構造の装置も提案されている。(例えば、特許文献2参照)。外ルーメンの先端は高熱伝導性であり、かつ、血液の流れに乱流を発生させ熱伝達を良好にするための不規則な外面が形成されている。内ルーメンと外ルーメンは、装置の先端で連通している。装置の先端を大腿部の血管から頭部内の患部へ挿入し、内ルーメンへ生理食塩水等の作動流体を流す。作動流体は、先端で内ルーメンから外ルーメンへ流れる。このとき、作動流体の冷熱が先端の外面から放出されて、患部を冷却する。
また、冷熱輸送(冷却装置)の用途の他の例として、肝臓ガン等を凍結して生体から取り除く凍結療法が挙げられる。
【0010】
さらに、ヒートパイプの用途として、温熱を与えることにより治療するのに適した患者の表面(皮膚)ないし患者の体内に位置する病変部位(患部)を加熱(加温)して治療する温熱療法への適用も考えられる。例えば、神経外科の分野で、患者が痛みを感じる筋肉、関節炎にかかった関節等の患部に温熱を与えることにより、痛みを緩和したり除去する治療方法が行われている。また、ガン部位に温熱を与えて、ガン細胞を死滅させる温熱療法(ハイパーサーミア)も知られている。
【0011】
【非特許文献1】
「SEMOS Heat Pipeの熱輸送特性」(永田、西尾、白樫、馬場、第38回日本伝熱シンポジウム講演論文集(2001−5))
【特許文献1】
米国特許第6042559号公報
【特許文献2】
米国特許第6096068号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
受熱部と放熱部が離れており、かつ、両部の間に十分なスペースが存在しない環境下で、蛇行細管ヒートパイプを使用する場合、どのような機器構成とするかについては、過去に提案がなされていない。また、前述の非特許文献1には、2往復閉ループ型ヒートパイプの場合には、循環流の駆動力が発生し熱輸送を滑らかに行えることが示されているが、1往復の場合については言及していない。
【0013】
また、前述のような局所低体温療法においては、現時点では十分な冷却効果が得られる方法が確立されていない。
【0014】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、受熱部と放熱部が離れており、かつ、両部の間に十分なスペースが存在しない対象に適用することのできる生体温度調整用細管ヒートパイプを提供することを目的とする。また、生体の表面又は内部に位置する生体患部を冷却又は加熱(加温)する用途に用いることのできる生体温度調整装置、特には、生体の奥の患部を局所的に冷却又は加熱するような用途にも用いることのできる生体温度調整装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の細管ヒートパイプは、 受熱部と、放熱部と、前記両部をつなぐ熱輸送部と、を具備し、全体として閉ループをなす細管からなる生体温度調整用細管ヒートパイプであって、前記熱輸送部が、1往復のみの細管により構成されていることを特徴とする。
1往復のみとすることにより、熱輸送部を細くできるため、狭い空間を隔てて離れている受熱部と放熱部間で熱輸送を行うことができる。ここで、ループ型の細管ヒートパイプは、熱輸送部を1往復としても十分な熱輸送能力を発揮することができることは、試作品で確認済である。なお、本発明における“熱”は温熱及び冷熱の双方を含み、ヒートパイプの受熱部は、いずれの場合でも輸送させたい熱を発生する物体に取り付けられる側を指す。
【0016】
本発明においては、前記受熱部及び/又は放熱部を、複数のターンを有する蛇行細管(蛇行ターン部)で構成すれば、受熱部と放熱部の表面積が大きくなり、熱輸送量を多くすることができる。
【0017】
本発明においては、前記蛇行ターン部の一方のターン端部が加熱(又は冷却)され、他方のターン端部が冷却(又は加熱)され、該蛇行ターン部において作動流体を蒸発・凝縮させ、もって前記蛇行ターン部内の作動流体の流動力を増すことが好ましい。
受熱部及び/又は放熱部内での作動流体の流動力を高めることにより、受熱部と放熱部間での本来の蒸発・凝縮による流動力が増大され、細管ヒートパイプ全体での作動流体の流動力がアップする(ブースター効果)。これにより、遠くまで相当量の作動流体を流せるので、熱輸送可能量を増やすことができ、熱輸送可能距離を長くできる。
【0018】
本発明の生体温度調整装置は、ペルチェユニット等の冷熱・温熱発生装置(熱発生装置)と、該熱発生装置と該熱発生装置により加熱・冷却される生体患部との間に配置され得る細管ヒートパイプと、を備える生体温度調整装置であって、前記細管ヒートパイプが、前記熱発生装置に接続される受熱部と、生体患部に接続される放熱部と、前記両部をつなぐ熱輸送部と、を具備する、全体として閉ループをなす細管からなり、前記熱輸送部が、1往復のみの細管により構成されていることを特徴とする。
上記熱発生装置としては、冷熱のみを発生するもの、温熱のみを発生するもの、冷熱と温熱の両方を発生可能なもののいずれでもよい。ペルチェユニットは、流す電流の向きを変えることにより、冷熱発生装置としても温熱発生装置としても切替えて使用できる。
【0019】
本発明においては、前記受熱部及び/又は放熱部が、複数のターンを有する蛇行細管(蛇行ターン部)により構成されることが好ましい。そして、前記蛇行ターン部の一方のターン端部が前記熱発生装置によって冷却(又は加熱)され、他方のターン端部が加熱(又は冷却)されることが好ましい。さらに、前記蛇行ターン部の一方のターン端部が前記熱発生装置によって冷却(又は加熱)され、他方のターン端部が周囲の空気及び/又は前記熱発生装置の素子放熱媒体(例えば空気)で加熱(又は冷却)されることが好ましい。
これにより、蛇行ターン部の両端部を冷却又は加熱しない場合と比べて、さらに熱輸送可能量や熱輸送可能距離が向上する。なお、素子放熱媒体とは以下のようなものである。熱発生装置が例えばペルチェ素子の場合は素子が板状をしており、その片側の面がヒートパイプ受熱部と接する熱的な作用面(例えば冷熱発生面)となり、その作用面の反対側の面(放熱面)に上記作用面と反対の熱的現像(例えば発熱)を生じる。そして、この反対側の面に風などの素子放熱媒体を当てて放熱させてやる必要がある。ここでは、その素子放熱媒体を前記蛇行ターン部におけるブースター効果を増大させるための補助的な熱源として用いるのである。
【0020】
本発明の生体温度調整用細管ヒートパイプおよび生体温度調整装置は、生体の表面または生体内に位置する患部を冷却又は加熱(加温)する用途に好適に用いることができる。すなわち、局所低体温療法、凍結療法、温熱療法等の、生体患部を冷却または加熱して治療する用途に好適に用いることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る細管ヒートパイプの構造を説明する図であり、図1(A)は平面図、図1(B)は側面図である。
この細管ヒートパイプ51は、図の右側の一ターン部53と、図の左側の複数のターンを有する蛇行ターン部55と、両部53、55をつなぐ直線部(熱輸送部)53bとから構成され、1本のパイプの両端を連通させた閉ループを形成している。
【0022】
両ターン部53、55は、熱伝導性の高い銅やアルミニウム等の材質で作製される。一方、直線部53bは、上記材質の他にも気密性の高いパイプ(チューブ)を形成できればいかなる材質を用いてもよく、例えば、ステンレス鋼等の金属と各種合成樹脂との複合材料からなるいわゆるフレキシブルチューブ(パイプ)や、NiTi合金等の超弾性合金製パイプ、PTFEチューブ等を用いることができる。このような材質からなるパイプ又はチューブを、例えば溶接、ロウ付け、フランジ接合、接着等の既知の接合方法で液密に接合することにより、本発明のヒートパイプを作製できる。フレキシブルチューブ(パイプ)としてはケーシングスプリングタイプ、セミインタースプリングタイプ、ライナーセミインターブレードタイプなどさまざまなタイプが市販されている。
【0023】
直線部53b及び一ターン部53は、長さ1700mm、外径2.0mm、内径1.6mmのパイプを、パイプのほぼ中心に径が14mmのほぼ円形のループ53aを形成するように湾曲させたものである。ループ53aの基部では、2本のパイプが接して平行に延びて直線部53bを形成している。
【0024】
蛇行ターン部55は、長さ1700mm、外径2.0mm、内径1.6mmの一対のパイプ57、59から構成される。各パイプ57、59は、細管ヒートパイプ51の長さ方向中心に対して対称形に配置される。パイプ57、59の一方の端部は、接続パイプ63を介して別のパイプの端部に接続し、各パイプ57、59の内孔が連通する。また、他方の端部は、接続パイプ61を介して直線部53bの端部と接続し、蛇行ターン部55のパイプの内孔と一ターン部53のパイプの内孔が連通する。各パイプ57、59が接続パイプ61、63に挿入される長さは、約20mm程度であり、各パイプ57、59と接続パイプ61、63とはロウ付けによって気密に接続される。接続パイプ61、63の長さは60mm、外径2.8mm、内径2.1mmである。
【0025】
両端部の間には複数のターン部が形成される。詳しく説明すると、パイプ57は接続パイプ61から直線部53bと同方向に延びて第1直線部57aとなる。そして第1直線部57aからやや外方向に拡がるように延びた先で第1直線部57aと平行に延びる第2直線部57bとなる。そして、同第2直線部57bから外方向にヘアピン状に折り返されて、一つ目のループ状ターン57cを形成し、その先は第2直線部57bと接して平行に延びる第3直線部57dとなる。第3直線部57dは、第2直線部57bの基端まで延びて、外方向に半円状に折り返されて一つ目の半円状ターン57eを形成し、その先は第2直線部57b及び第3直線部57dと平行に延びる第4直線部57fとなる。そして、同様に二つ目のループ状ターン57g、第5直線部57h、二つ目の半円状ターン57i、第6直線部57jを形成する。第6直線部57jの先は、直角内方向に1/4円状に湾曲する湾曲部57kとなり、端部が接続パイプ63の端部に挿入されている。
なお、他方のパイプ59は、これと対称の形状を有する。
【0026】
このように、蛇行ターン部55には、4つのループ状ターン57c、57g、59c、59gと、4つの半円状ターン57e、57i、59e、59iとからなる8つのターン、2つの湾曲部57k、59kと接続パイプ63で構成される1つのターンの、合計9個のターンが形成される。蛇行ターン部55の長さは320mm、幅は87mmである。また、細管ヒートパイプ51の全長は1300mmであり、この内、半円状ターン部の端と一ターン部間の長さは980mmである。
なお、ヒートパイプ51には、作動流体をヒートパイプ内に注入するための注入口(図示せず)が設けられている。この注入口は、作動流体封入後に密閉される。
【0027】
本実施形態では、ターン部53を一ターン部とし、ターン部55を複数のターンを有する構成としている、しかし、本発明においては、冷却または加熱する生体患部の場所、大きさ、輸送したい熱量等に応じて、これら両ターン部を一ターン部のみとしてもよく、あるいは両ターン部がそれぞれ複数のターンを有する構成としてもよい。本実施形態の細管ヒートパイプでは、蛇行ターン部55を複数のターンを有する構成として表面積を大きくし、熱発生装置からの受熱量を多くすることで、高い熱輸送量を発現している。
【0028】
また、本実施形態の細管ヒートパイプは、上述のように、ターンの数が多いほど表面積が大きくなるため、高い受熱能力または放熱能力を発揮する。したがって、受熱体・放熱体(被冷却物・被加熱物)の発生熱量に応じてターンの数を設定すれば、最適な熱輸送量を発現できる。
【0029】
本実施の形態では、蛇行ターン部55を受熱部、一ターン部53を放熱部とする。受熱部においては、蛇行ターン部55の全ての部分が受熱板69に当てられるのではなく、蛇行ターン部55の図の左側(L端部55Lの側、ループ状ターン57cや57gの側、一ターン部53の反対側)に受熱板69が配置されて、蛇行ターン部55と受熱板69はハンダで固定される。一方、蛇行ターン部55の右側(R端部55Rの側、半円状ターン57iや57eの側)は大気中に露出される。つまり、受熱部(蛇行ターン部55)内で温度の低い部分(受熱板69に当てられているL端部55L)と高い部分(大気中に露出されているR端部55R)とを作る。
【0030】
この図1のヒートパイプは、従来のヒートパイプに比べて、受熱部内での作動流体の流動力を高めて、ヒートパイプ全体での作動流体の流動力をアップさせ、長い距離を熱輸送できるように作用する。なお、より詳細には、図2及び図4を参照しつつ後述する。
【0031】
図2は、本発明に係る温度調整装置を冷却装置として用いる場合の構成、及び、その冷却能力試験の様子を説明する図であり、図2(A)は平面図、図2(B)は側面図である。
図3は、本発明に係る温度調整装置を加熱装置として用いる場合の構成を説明する側面図である。
図4は、図2の温度調整装置の一部の構造を説明する斜視図である。
図2及び図3に示す温度調整装置81は、人体の奥の患部を局所的に冷やし、その後にまた温めて元の温度に戻すことを想定したものである。図2の温度調整装置では、冷却能力を評価するために、図1に示す細管ヒートパイプ51を用いて、ペルチェユニット83で作られる冷熱を、ヒータ95で加熱されているステンレスバット93内の温水に輸送している。細管ヒートパイプ51の構造・作用は、図1の細管ヒートパイプと同様であり、説明を省略する。
【0032】
テーブル85上の一端には、ジャッキ87が置かれ、同ジャッキ87上にペルチェユニット83が載置されている。同ユニット83は、ジャッキ87上で、水平に対して30°の角度に傾斜し、排気ダクト89が、傾斜方向下側となるように配置される。これは、ヒートパイプ51を熱移動しやすいボトムヒートの姿勢とするためである(詳細後述)。排気ダクト89からは、ペルチェユニット83の素子放熱面に当った後の温風が吹き出される。この現象について図4を参照して詳細に説明する。
【0033】
ペルチェユニット83の熱発生源であるペルチェ素子は板状の形状であり、片側の面が所望の熱を発生させる熱的作用面(例えば冷熱発生面)となり、同面と反対側の面がその熱的作用と反対の熱的現象が発生する面(例えば放熱面)となる。このようなペルチェ素子において、冷熱発生面と放熱面とで45℃の温度差を作る場合について詳述する。例えば、同素子を冷熱発生源として使用する場合に、熱的作用面から−5℃の冷熱を発生させると、その反対側の面では+40℃の温熱が発生する。そこで、この反対側の面を冷風などによって冷やす必要がある。一方、同素子を温熱発生源として使用する場合に、熱的作用面から+50℃の温熱を発生させると、その反対側の面では温度が+5℃の冷熱が発生する。そこで、この反対側の面を温風などによって温める必要がある。
【0034】
図4の場合は、ペルチェ素子は冷熱発生源として使用される。図4に示すように、ペルチェ素子66は、ペルチェユニット83の上面に取り付けられており、上側の面が冷熱発生面、下側の面が放熱面68となる。放熱面68を冷却するために、ペルチェユニット83にはファン84が設けられている。ファン84が回転すると、室内空気70aがユニット83内に取り込まれてペルチェ素子66の放熱面68に当たり、同面68を冷却する。ユニット83内に取り込まれた室内空気70aは放熱面68からの放熱によって温度が室温+2〜3℃程度まで上昇し、この温度が上昇した空気70bがユニット83の排気ダクト89から排出される。この排気温風70bは、後述するようにヒートパイプ51の熱輸送特性の向上のために用いられる。
【0035】
ヒートパイプ51のL端部55Lは、受熱部である蛇行ターン部55にペルチェユニット83から冷熱が供給されるように、ペルチェユニット83に取り付けられる。詳しく説明すると、L端部55Lが固定されている受熱板69がペルチェユニット83の上面(ペルチェ素子66の冷熱発生面)にネジ等で固定されており、同端部55Lには、ペルチェ素子66から受熱板69を介して冷熱が伝えられる。一方、R端部55Rは大気中に露出しており、排気ダクト89から排出される、ペルチェ素子66の放熱面68からの放熱によって温度が上昇した空気70bが当たる。
【0036】
このように蛇行ターン部55内で、温度の低い部分(L端部55L)と温度の高い部分(R端部55R)が形成されると、同部内で作動流体が活発に移動する。したがって、ペルチェユニット83の作動によって付随的に発せられる、温度が上昇した空気を蛇行ターン部55のR端部55Rに当てることにより、L端部5Lに冷熱を供給しただけの場合よりもL端部55LとR端部55Rとの温度差が大きくなり、その結果蛇行ターン部55における作動流体の流動を活発化させてブースター効果をより増大させることができる。つまり、ペルチェユニットの素子放熱媒体(空気70a、70b)を、ブースター効果を増大させるための補助的な熱源としても利用するのである。
【0037】
また、受熱部においては、上述のように、温度の低いL端部55Lが上方、温度の高いR端部55Rが下方に位置し、熱移動しやすいボトムヒートの姿勢をとっている。
【0038】
図2に示すように、テーブル85上の他端には、断熱材91を介してステンレスバット93が置かれている。同バット内には水道水が入れられている。水道水はヒータ(一例で出力27W)95で加熱される。
細管ヒートパイプ51は、ペルチェユニット83に取り付けられた蛇行ターン部55から下方に傾斜し、その先でテーブル85の上面と平行に水平に延びて、一ターン部53の一部がバット93内に沈められている。蛇行ターン部55の先端のベース85上からの高さは520mmである。細管ヒートパイプ51の水平に延びる部分の長さは450mmであり、その内有効な熱交換部(水に浸されている部分)の長さは280mmである。
【0039】
一方、図3に示すような、本発明に係る温度調整装置を加熱装置として用いる場合は、ペルチェユニットに流す電流の向きを、図2に示す冷却装置の場合の反対方向に切替える。すると、同ユニットのペルチェ素子の上側の面が温熱発生面となり、下側の面が冷熱放熱面となる。この状態において、ヒートパイプ51の蛇行ターン部55のL端部55Lに当てられている受熱板69をペルチェユニット66の温熱発生面に固定し、R端部55Rを大気中に露出させる。これにより、蛇行ターン部55内で温度の高い部分(L端部55L)と温度の低い部分(R端部55R)が形成される。
【0040】
そして、蛇行ターン部55をボトムヒートの姿勢とするために、温度の高いL端部55Lが下方、温度の低いR端部55Rが上方となるように、同部55をペルチェユニット83上に傾斜して配置する。傾斜角度は一例で水平面に対して30°である。このように、ヒートパイプ51は、蛇行ターン部55から一ターン部53へ向けて上方に傾斜するように配置されている。なお、温度調整装置81を加熱装置として用いる場合、ペルチェユニット83の排気ダクト89は傾斜方向下側になるように位置させ、ペルチェユニット83から排気された空気を蛇行ターン部55のR端部55Rに当てない。なぜなら、排気された空気の温度が低すぎて、細管ヒートパイプがペルチェユニットから吸収した温熱を低下させる方向に作用してしまうからである。
【0041】
ペルチェユニット83は、上述のようにヒートパイプ51をボトムヒートの姿勢とするために、テーブル85上の一端に置かれたジャッキ87上に、水平に対して30°傾斜して配置されている。そして、テーブル85上の他端には、断熱材91及び支柱92を介して水道水が入れられたステンレスバット93が置かれている。細管ヒートパイプ51は、蛇行ターン部55から上方に傾斜し、その先でテーブル85の上面と平行に水平に延びて、一ターン部53の一部がバット93内に沈められている。この装置は、バット93内の水道水の温度を上昇させる場合に使用される。
【0042】
次に、温度調整装置におけるヒートパイプの作用についてまとめて説明する。ここでは、温度調整装置を冷却装置として使用する場合について、図2、図4を参照しつつ説明する。
ペルチェユニット83を作動させると、蛇行ターン部55においては、L端部55Lで冷熱が吸熱されて、同部のパイプ内で作動流体の凝縮が起こる。同時に、R端部55Rが周囲の空気で温められて、同部のパイプ内で作動流体の蒸発が起こる。L端部55LとR端部55R間の距離は比較的短いので、このような作動流体の凝縮と蒸発により、作動流体は両端部間を活発に移動する。蛇行細管ヒートパイプ51は一つの閉ループを成しているので、蛇行ターン部55内の両端部間で作動流体が活発に移動すると、作動流体の流動力は、蛇行ターン部55から一ターン部53へ延びる直線部53b内の作動流体にも伝えられる(ブースター効果)。これにより、蛇行ターン部55から一ターン部53までの距離が離れている場合でも、作動流体は、蛇行ターン部55から一ターン部53まで直線部53b内を流れる力を得ることができる。この方式によると、熱輸送距離を2000mm程度まで長くすることができる(別の試験で確認済み)。
【0043】
なお、受熱部あるいは放熱部内での作動流体の往復数、すなわち、ターン数が多いほど作動流体の流動力が大きくなり熱輸送能力が高くなることは、通常の蛇行細管ヒートパイプと共通である。
【0044】
図2に示す方式は、前述の局所低体温療法に有効な手段となり得る。この療法においては、大腿部から頭部までカテーテルを挿入し、頭部の一部を32〜35℃程度の温度に冷却し、その後にまた温めて元の温度に戻す。即ち、大腿部から頭部までの比較的長い距離を本方式で冷熱及び温熱輸送することにより、この療法を実現できる。
【0045】
次に、図2の冷却装置を使用した冷却実験の結果について説明する。
この冷却実験の条件は、上述の局所低体温療法を想定して決定した。つまり、バット93内の水道水の容積を、体重が60kgの人の血液量に相当する5リットルとし、実験開始時における温度を平均的な体内温度の37℃とした。そして、この水道水を、ヒータ通電状態であっても、32℃に冷却することを目標とした。なお、実験に使用したペルチェユニット83の出力は40Wである。
【0046】
作動流体の熱輸送能力をさらに向上させるために、蛇行ターン部55のR端部55R側において、図4に示すように、熱輸送部53b(中央の2本の直線部57b、59bを含む)に排気ダクト89からの排気温風が当らないように遮蔽板97を設けた。こうすることにより、ペルチェユニット83から作り出される冷熱が、熱輸送部53bを通過する間に、排気温風で加熱されてしまうことを防ぐ。したがって、ペルチェユニット83で発生する冷熱を、熱輸送部53bを通過中に減少させてしまうことなく、バット93内の水道水まで輸送することができる。
【0047】
図5は、図2の冷却装置を用いて行った冷却実験の結果を示すグラフである。図の縦軸は温度、横軸は経過時間を示す。また、◆はバット内の水道水の温度、●は室温を示す。
まず、ヒータによりバット93内の水道水を37.1℃の温度に加熱した。ペルチェユニット83は予め起動させておき、一ターン部53を水道水に浸けた時点を実験開始時間とし、水温が飽和した8時間後に一ターン部53を水道水から引き上げた。
【0048】
グラフから分かるように、水温は、実験開始から徐々に下降し、約6時間後には31.3℃まで低下した。そして、冷熱輸送を停止するまでの約2時間はこの飽和温度を維持し続けた。ヒータ95は、実験開始から終了までの13時間、常に通電状態にしておいた。したがって、一ターン部53を水道水から引き上げた後は、体内温度を想定した37℃に向かって、再び水温が上昇していった。
【0049】
この冷却装置の実験時間内の平均冷却能力は、
5000g×1cal/g・℃×(37.1℃−31.3℃)/(6hr×860cal/hr)=5.6Wであった。
また、図5のグラフから分かるように、実験開始直後の1時間は特に温度降下が大きく(すなわち、冷却能力が大きく)、1時間で水温が2℃低下した。この間の冷却能力は、
5000g×1cal/g・℃×(37.1℃−35.1℃)/(1hr×860cal/hr)=11.6Wであった。
これは、実験開始時点でペルチェユニット83及び受熱板69に溜まっていた冷熱が、一気に放出されたためと考えられる。
【0050】
また、局所低体温療法においては、初期の冷却能力が20分で−2℃であることが要求されている。この要求を満足するには現状の3倍の冷却能力が必要であるが、これは、ペルチェユニットの出力を大きくすることで実現できるものと考えられる。
【0051】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、熱輸送部を1往復のヒートパイプで形成することにより、受熱部と放熱部が離れており、かつ、両部の間に十分なスペースが存在しない対象に適用することのできる生体温度調整用細管ヒートパイプ及び同ヒートパイプを使用した生体温度調整装置を提供することができる。また、受熱部及び/又は放熱部のターン数を多くすることにより、さらに大きな熱輸送能力を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る細管ヒートパイプの構造を説明する図であり、図1(A)は平面図、図1(B)は側面図である。
【図2】本発明に係る温度調整装置を冷却装置として用いる場合の構成、及び、その冷却能力試験の様子を説明する図であり、図2(A)は平面図、図2(B)は側面図である。
【図3】本発明に係る温度調整装置を加熱装置として用いる場合の構成を説明する側面図である。
【図4】図2の温度調整装置の一部の構造を説明する斜視図である。
【図5】図2の冷温度調整装置を用いて行った冷却実験の結果を示すグラフである。
【図6】特開平4−190090号に開示されている蛇行細管ヒートパイプの構造を示す一部断面平面図である。
【符号の説明】
51 細管ヒートパイプ 53 一ターン部
55 蛇行ターン部 57、59 パイプ
61、63 接続パイプ 66 ペルチェ素子
68 放熱面 69 受熱板
81 温度調整装置 83 ペルチェユニット
85 テーブル 87 ジャッキ
89 排気ダクト 91 断熱材
93 ステンレスバット 95 ヒータ
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体温度調整用ヒートパイプ、及び、このヒートパイプを使用した生体温度調整装置に関する。特には、受熱部と放熱部が離れており、両部の途中に十分なスペースが存在しない場合にも適用できる生体温度調整用細管ヒートパイプに関する。また、生体(人体)の表面又は内部に位置する生体患部を冷却又は加熱(加温)する用途に用いることのできる生体温度調整装置、特には、生体(人体)の奥の患部を局所的に冷却又は加熱(加温)するような用途にも用いることのできる生体温度調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器や内燃機関、真空ポンプ等の発熱体の冷却には、従来より放熱器が使用されている。放熱器の中で、ヒートパイプ式のものは熱輸送性能が高いことで知られている。一般的なヒートパイプ式放熱器は、発熱体が取り付けられるベース板と、このベース板に一部(受熱部)が取り付けられているヒートパイプとから主に構成されている。ヒートパイプとは、中空体内部の密閉空間を真空に引いた後に、水やブタン、アルコール等の作動流体を封入したものである。発熱体からベース板に伝えられた熱は、ベース板に接するヒートパイプの受熱部に伝えられ、同部の細管内の作動流体を蒸発させる。発生した蒸気は、ヒートパイプのベース板が取り付けられていない部分(放熱部)に移動し、同部において蒸気が放熱して液体に戻る。この密閉空間内の作動流体の相の変化や移動により、発熱体の熱を放熱する。放熱部にはフィンが設けられる場合もあり、熱を有効に拡散させる。
【0003】
このようなヒートパイプの種類の一つである、ヒートパイプが受熱部と放熱部間を蛇行するように配置された蛇行細管ヒートパイプは、熱の輸送能力が高く特に有効である。蛇行細管ヒートパイプは、例えば、特開平4−190090号に開示されている。
図6は、特開平4−190090号に開示されている蛇行細管ヒートパイプの構造を示す一部断面平面図である。
このヒートパイプ100は、以下の特性を有する。
(A)細孔の両端末が相互に流通自在に連結されて密閉されている(閉ループ型)。
(B)細孔の一部は受熱部H、他の一部は放熱部Cとなっている。
(C)受熱部Hと放熱部Cが交互に配置されており、両部の間を細孔が蛇行している。
(D)細孔内には二相凝縮性流体(作動流体)101が封入されている。
(E)細孔の内壁は、上記作動流体101が常に孔内を閉塞した状態のままで循環または移動することができる最大直径以下の径をもつ。
【0004】
ヒートパイプ100内で作動流体101の循環流が発生し、受熱部から放熱部へ熱(温熱)が輸送される。循環流の発生する方向はヒートパイプ100の姿勢によって異なる。
ヒートパイプ100が水平に配置された状態では、受熱部Hで発生した蒸気泡103の圧力が放熱部Cで減圧縮小されるため、作動流体101は受熱部Hから最も近い放熱部Cに向かって流れ、作動流体101が図の実線矢印方向に循環する。一方、垂直に配置されてボトムヒートとした状態では、受熱部Hで発生した蒸気泡103は、最も抵抗の少ない連結部105を通って上昇し、一方、これらの蒸気泡103の多くが凝縮した作動流体101は重力により蛇行部を下降し、作動流体101が図の破線矢印方向に循環する。なお、受熱部から放熱部に冷熱を送る場合には、上記とは逆に受熱部で作動流体の凝縮が生じ、放熱部で作動流体の蒸発が生じる。
【0005】
このような閉ループ型蛇行細管ヒートパイプの熱輸送特性として、粘性係数の小さい液体(フロンのR141b等)を作動流体として用いた場合、細管の内径を0.8mmと細径化しても十分な熱輸送特性を有することが確認されている(例えば、後記の非特許文献1参照)。また、ヒートパイプ製作時の初期真空について、ウィック型ヒートパイプは0.010mmHg前後の高真空を要するのに対して、閉ループ型細管ヒートパイプは60mmHg程度の低真空であっても十分な熱輸送能力を有する。
【0006】
さらに、この文献では、作動流体の蒸気相と液相の移動を可視化して、循環流の発生を考察している。その結果、2往復閉ループ型ヒートパイプにおいて、同パイプ内に3つの主蒸気プラグと3つの主液柱が交互に形成され、これらの加熱及び冷却による成長や凝縮により、受熱部と放熱部間で循環流の駆動力が発生している。
【0007】
ヒートパイプは、冷熱輸送(冷却装置)に用いることもできる。ヒートパイプの受熱部に冷熱発生体を取り付けると、この冷熱発生体が発する冷熱が、ヒートパイプの受熱部に伝えられ熱輸送部を経由して放熱部で放熱される。ここで、冷却したい対象物(被冷却物)を放熱部に接続した場合には、この被冷却物に冷熱発生体からの冷熱がヒートパイプを経由して輸送され、被冷却物が冷却される。
【0008】
冷熱輸送(冷却装置)の用途の一例として、近年頭部外傷の治療方法として注目されている局所低体温療法への適用も考えられる。この治療法においては、例えば、人体の大腿部から頭部までカテーテルを挿入し、頭部内(又はその近く)の患部を32〜35℃程度の温度に冷却する。この際、大腿部から頭部までの比較的長い距離を熱輸送できる冷却装置が必要となる。このような冷却装置として、供給カテーテルと分配カテーテルを有する冷却装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この冷却装置は、患者の血管内に通された供給カテーテルから患者の血液をチラーに送って冷却し、冷却された血液を、血管内に通された分配カテーテルを通して患部へ送り返すものである。
【0009】
また、外ルーメンと内ルーメンとを有する二重管構造の装置も提案されている。(例えば、特許文献2参照)。外ルーメンの先端は高熱伝導性であり、かつ、血液の流れに乱流を発生させ熱伝達を良好にするための不規則な外面が形成されている。内ルーメンと外ルーメンは、装置の先端で連通している。装置の先端を大腿部の血管から頭部内の患部へ挿入し、内ルーメンへ生理食塩水等の作動流体を流す。作動流体は、先端で内ルーメンから外ルーメンへ流れる。このとき、作動流体の冷熱が先端の外面から放出されて、患部を冷却する。
また、冷熱輸送(冷却装置)の用途の他の例として、肝臓ガン等を凍結して生体から取り除く凍結療法が挙げられる。
【0010】
さらに、ヒートパイプの用途として、温熱を与えることにより治療するのに適した患者の表面(皮膚)ないし患者の体内に位置する病変部位(患部)を加熱(加温)して治療する温熱療法への適用も考えられる。例えば、神経外科の分野で、患者が痛みを感じる筋肉、関節炎にかかった関節等の患部に温熱を与えることにより、痛みを緩和したり除去する治療方法が行われている。また、ガン部位に温熱を与えて、ガン細胞を死滅させる温熱療法(ハイパーサーミア)も知られている。
【0011】
【非特許文献1】
「SEMOS Heat Pipeの熱輸送特性」(永田、西尾、白樫、馬場、第38回日本伝熱シンポジウム講演論文集(2001−5))
【特許文献1】
米国特許第6042559号公報
【特許文献2】
米国特許第6096068号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
受熱部と放熱部が離れており、かつ、両部の間に十分なスペースが存在しない環境下で、蛇行細管ヒートパイプを使用する場合、どのような機器構成とするかについては、過去に提案がなされていない。また、前述の非特許文献1には、2往復閉ループ型ヒートパイプの場合には、循環流の駆動力が発生し熱輸送を滑らかに行えることが示されているが、1往復の場合については言及していない。
【0013】
また、前述のような局所低体温療法においては、現時点では十分な冷却効果が得られる方法が確立されていない。
【0014】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、受熱部と放熱部が離れており、かつ、両部の間に十分なスペースが存在しない対象に適用することのできる生体温度調整用細管ヒートパイプを提供することを目的とする。また、生体の表面又は内部に位置する生体患部を冷却又は加熱(加温)する用途に用いることのできる生体温度調整装置、特には、生体の奥の患部を局所的に冷却又は加熱するような用途にも用いることのできる生体温度調整装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の細管ヒートパイプは、 受熱部と、放熱部と、前記両部をつなぐ熱輸送部と、を具備し、全体として閉ループをなす細管からなる生体温度調整用細管ヒートパイプであって、前記熱輸送部が、1往復のみの細管により構成されていることを特徴とする。
1往復のみとすることにより、熱輸送部を細くできるため、狭い空間を隔てて離れている受熱部と放熱部間で熱輸送を行うことができる。ここで、ループ型の細管ヒートパイプは、熱輸送部を1往復としても十分な熱輸送能力を発揮することができることは、試作品で確認済である。なお、本発明における“熱”は温熱及び冷熱の双方を含み、ヒートパイプの受熱部は、いずれの場合でも輸送させたい熱を発生する物体に取り付けられる側を指す。
【0016】
本発明においては、前記受熱部及び/又は放熱部を、複数のターンを有する蛇行細管(蛇行ターン部)で構成すれば、受熱部と放熱部の表面積が大きくなり、熱輸送量を多くすることができる。
【0017】
本発明においては、前記蛇行ターン部の一方のターン端部が加熱(又は冷却)され、他方のターン端部が冷却(又は加熱)され、該蛇行ターン部において作動流体を蒸発・凝縮させ、もって前記蛇行ターン部内の作動流体の流動力を増すことが好ましい。
受熱部及び/又は放熱部内での作動流体の流動力を高めることにより、受熱部と放熱部間での本来の蒸発・凝縮による流動力が増大され、細管ヒートパイプ全体での作動流体の流動力がアップする(ブースター効果)。これにより、遠くまで相当量の作動流体を流せるので、熱輸送可能量を増やすことができ、熱輸送可能距離を長くできる。
【0018】
本発明の生体温度調整装置は、ペルチェユニット等の冷熱・温熱発生装置(熱発生装置)と、該熱発生装置と該熱発生装置により加熱・冷却される生体患部との間に配置され得る細管ヒートパイプと、を備える生体温度調整装置であって、前記細管ヒートパイプが、前記熱発生装置に接続される受熱部と、生体患部に接続される放熱部と、前記両部をつなぐ熱輸送部と、を具備する、全体として閉ループをなす細管からなり、前記熱輸送部が、1往復のみの細管により構成されていることを特徴とする。
上記熱発生装置としては、冷熱のみを発生するもの、温熱のみを発生するもの、冷熱と温熱の両方を発生可能なもののいずれでもよい。ペルチェユニットは、流す電流の向きを変えることにより、冷熱発生装置としても温熱発生装置としても切替えて使用できる。
【0019】
本発明においては、前記受熱部及び/又は放熱部が、複数のターンを有する蛇行細管(蛇行ターン部)により構成されることが好ましい。そして、前記蛇行ターン部の一方のターン端部が前記熱発生装置によって冷却(又は加熱)され、他方のターン端部が加熱(又は冷却)されることが好ましい。さらに、前記蛇行ターン部の一方のターン端部が前記熱発生装置によって冷却(又は加熱)され、他方のターン端部が周囲の空気及び/又は前記熱発生装置の素子放熱媒体(例えば空気)で加熱(又は冷却)されることが好ましい。
これにより、蛇行ターン部の両端部を冷却又は加熱しない場合と比べて、さらに熱輸送可能量や熱輸送可能距離が向上する。なお、素子放熱媒体とは以下のようなものである。熱発生装置が例えばペルチェ素子の場合は素子が板状をしており、その片側の面がヒートパイプ受熱部と接する熱的な作用面(例えば冷熱発生面)となり、その作用面の反対側の面(放熱面)に上記作用面と反対の熱的現像(例えば発熱)を生じる。そして、この反対側の面に風などの素子放熱媒体を当てて放熱させてやる必要がある。ここでは、その素子放熱媒体を前記蛇行ターン部におけるブースター効果を増大させるための補助的な熱源として用いるのである。
【0020】
本発明の生体温度調整用細管ヒートパイプおよび生体温度調整装置は、生体の表面または生体内に位置する患部を冷却又は加熱(加温)する用途に好適に用いることができる。すなわち、局所低体温療法、凍結療法、温熱療法等の、生体患部を冷却または加熱して治療する用途に好適に用いることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る細管ヒートパイプの構造を説明する図であり、図1(A)は平面図、図1(B)は側面図である。
この細管ヒートパイプ51は、図の右側の一ターン部53と、図の左側の複数のターンを有する蛇行ターン部55と、両部53、55をつなぐ直線部(熱輸送部)53bとから構成され、1本のパイプの両端を連通させた閉ループを形成している。
【0022】
両ターン部53、55は、熱伝導性の高い銅やアルミニウム等の材質で作製される。一方、直線部53bは、上記材質の他にも気密性の高いパイプ(チューブ)を形成できればいかなる材質を用いてもよく、例えば、ステンレス鋼等の金属と各種合成樹脂との複合材料からなるいわゆるフレキシブルチューブ(パイプ)や、NiTi合金等の超弾性合金製パイプ、PTFEチューブ等を用いることができる。このような材質からなるパイプ又はチューブを、例えば溶接、ロウ付け、フランジ接合、接着等の既知の接合方法で液密に接合することにより、本発明のヒートパイプを作製できる。フレキシブルチューブ(パイプ)としてはケーシングスプリングタイプ、セミインタースプリングタイプ、ライナーセミインターブレードタイプなどさまざまなタイプが市販されている。
【0023】
直線部53b及び一ターン部53は、長さ1700mm、外径2.0mm、内径1.6mmのパイプを、パイプのほぼ中心に径が14mmのほぼ円形のループ53aを形成するように湾曲させたものである。ループ53aの基部では、2本のパイプが接して平行に延びて直線部53bを形成している。
【0024】
蛇行ターン部55は、長さ1700mm、外径2.0mm、内径1.6mmの一対のパイプ57、59から構成される。各パイプ57、59は、細管ヒートパイプ51の長さ方向中心に対して対称形に配置される。パイプ57、59の一方の端部は、接続パイプ63を介して別のパイプの端部に接続し、各パイプ57、59の内孔が連通する。また、他方の端部は、接続パイプ61を介して直線部53bの端部と接続し、蛇行ターン部55のパイプの内孔と一ターン部53のパイプの内孔が連通する。各パイプ57、59が接続パイプ61、63に挿入される長さは、約20mm程度であり、各パイプ57、59と接続パイプ61、63とはロウ付けによって気密に接続される。接続パイプ61、63の長さは60mm、外径2.8mm、内径2.1mmである。
【0025】
両端部の間には複数のターン部が形成される。詳しく説明すると、パイプ57は接続パイプ61から直線部53bと同方向に延びて第1直線部57aとなる。そして第1直線部57aからやや外方向に拡がるように延びた先で第1直線部57aと平行に延びる第2直線部57bとなる。そして、同第2直線部57bから外方向にヘアピン状に折り返されて、一つ目のループ状ターン57cを形成し、その先は第2直線部57bと接して平行に延びる第3直線部57dとなる。第3直線部57dは、第2直線部57bの基端まで延びて、外方向に半円状に折り返されて一つ目の半円状ターン57eを形成し、その先は第2直線部57b及び第3直線部57dと平行に延びる第4直線部57fとなる。そして、同様に二つ目のループ状ターン57g、第5直線部57h、二つ目の半円状ターン57i、第6直線部57jを形成する。第6直線部57jの先は、直角内方向に1/4円状に湾曲する湾曲部57kとなり、端部が接続パイプ63の端部に挿入されている。
なお、他方のパイプ59は、これと対称の形状を有する。
【0026】
このように、蛇行ターン部55には、4つのループ状ターン57c、57g、59c、59gと、4つの半円状ターン57e、57i、59e、59iとからなる8つのターン、2つの湾曲部57k、59kと接続パイプ63で構成される1つのターンの、合計9個のターンが形成される。蛇行ターン部55の長さは320mm、幅は87mmである。また、細管ヒートパイプ51の全長は1300mmであり、この内、半円状ターン部の端と一ターン部間の長さは980mmである。
なお、ヒートパイプ51には、作動流体をヒートパイプ内に注入するための注入口(図示せず)が設けられている。この注入口は、作動流体封入後に密閉される。
【0027】
本実施形態では、ターン部53を一ターン部とし、ターン部55を複数のターンを有する構成としている、しかし、本発明においては、冷却または加熱する生体患部の場所、大きさ、輸送したい熱量等に応じて、これら両ターン部を一ターン部のみとしてもよく、あるいは両ターン部がそれぞれ複数のターンを有する構成としてもよい。本実施形態の細管ヒートパイプでは、蛇行ターン部55を複数のターンを有する構成として表面積を大きくし、熱発生装置からの受熱量を多くすることで、高い熱輸送量を発現している。
【0028】
また、本実施形態の細管ヒートパイプは、上述のように、ターンの数が多いほど表面積が大きくなるため、高い受熱能力または放熱能力を発揮する。したがって、受熱体・放熱体(被冷却物・被加熱物)の発生熱量に応じてターンの数を設定すれば、最適な熱輸送量を発現できる。
【0029】
本実施の形態では、蛇行ターン部55を受熱部、一ターン部53を放熱部とする。受熱部においては、蛇行ターン部55の全ての部分が受熱板69に当てられるのではなく、蛇行ターン部55の図の左側(L端部55Lの側、ループ状ターン57cや57gの側、一ターン部53の反対側)に受熱板69が配置されて、蛇行ターン部55と受熱板69はハンダで固定される。一方、蛇行ターン部55の右側(R端部55Rの側、半円状ターン57iや57eの側)は大気中に露出される。つまり、受熱部(蛇行ターン部55)内で温度の低い部分(受熱板69に当てられているL端部55L)と高い部分(大気中に露出されているR端部55R)とを作る。
【0030】
この図1のヒートパイプは、従来のヒートパイプに比べて、受熱部内での作動流体の流動力を高めて、ヒートパイプ全体での作動流体の流動力をアップさせ、長い距離を熱輸送できるように作用する。なお、より詳細には、図2及び図4を参照しつつ後述する。
【0031】
図2は、本発明に係る温度調整装置を冷却装置として用いる場合の構成、及び、その冷却能力試験の様子を説明する図であり、図2(A)は平面図、図2(B)は側面図である。
図3は、本発明に係る温度調整装置を加熱装置として用いる場合の構成を説明する側面図である。
図4は、図2の温度調整装置の一部の構造を説明する斜視図である。
図2及び図3に示す温度調整装置81は、人体の奥の患部を局所的に冷やし、その後にまた温めて元の温度に戻すことを想定したものである。図2の温度調整装置では、冷却能力を評価するために、図1に示す細管ヒートパイプ51を用いて、ペルチェユニット83で作られる冷熱を、ヒータ95で加熱されているステンレスバット93内の温水に輸送している。細管ヒートパイプ51の構造・作用は、図1の細管ヒートパイプと同様であり、説明を省略する。
【0032】
テーブル85上の一端には、ジャッキ87が置かれ、同ジャッキ87上にペルチェユニット83が載置されている。同ユニット83は、ジャッキ87上で、水平に対して30°の角度に傾斜し、排気ダクト89が、傾斜方向下側となるように配置される。これは、ヒートパイプ51を熱移動しやすいボトムヒートの姿勢とするためである(詳細後述)。排気ダクト89からは、ペルチェユニット83の素子放熱面に当った後の温風が吹き出される。この現象について図4を参照して詳細に説明する。
【0033】
ペルチェユニット83の熱発生源であるペルチェ素子は板状の形状であり、片側の面が所望の熱を発生させる熱的作用面(例えば冷熱発生面)となり、同面と反対側の面がその熱的作用と反対の熱的現象が発生する面(例えば放熱面)となる。このようなペルチェ素子において、冷熱発生面と放熱面とで45℃の温度差を作る場合について詳述する。例えば、同素子を冷熱発生源として使用する場合に、熱的作用面から−5℃の冷熱を発生させると、その反対側の面では+40℃の温熱が発生する。そこで、この反対側の面を冷風などによって冷やす必要がある。一方、同素子を温熱発生源として使用する場合に、熱的作用面から+50℃の温熱を発生させると、その反対側の面では温度が+5℃の冷熱が発生する。そこで、この反対側の面を温風などによって温める必要がある。
【0034】
図4の場合は、ペルチェ素子は冷熱発生源として使用される。図4に示すように、ペルチェ素子66は、ペルチェユニット83の上面に取り付けられており、上側の面が冷熱発生面、下側の面が放熱面68となる。放熱面68を冷却するために、ペルチェユニット83にはファン84が設けられている。ファン84が回転すると、室内空気70aがユニット83内に取り込まれてペルチェ素子66の放熱面68に当たり、同面68を冷却する。ユニット83内に取り込まれた室内空気70aは放熱面68からの放熱によって温度が室温+2〜3℃程度まで上昇し、この温度が上昇した空気70bがユニット83の排気ダクト89から排出される。この排気温風70bは、後述するようにヒートパイプ51の熱輸送特性の向上のために用いられる。
【0035】
ヒートパイプ51のL端部55Lは、受熱部である蛇行ターン部55にペルチェユニット83から冷熱が供給されるように、ペルチェユニット83に取り付けられる。詳しく説明すると、L端部55Lが固定されている受熱板69がペルチェユニット83の上面(ペルチェ素子66の冷熱発生面)にネジ等で固定されており、同端部55Lには、ペルチェ素子66から受熱板69を介して冷熱が伝えられる。一方、R端部55Rは大気中に露出しており、排気ダクト89から排出される、ペルチェ素子66の放熱面68からの放熱によって温度が上昇した空気70bが当たる。
【0036】
このように蛇行ターン部55内で、温度の低い部分(L端部55L)と温度の高い部分(R端部55R)が形成されると、同部内で作動流体が活発に移動する。したがって、ペルチェユニット83の作動によって付随的に発せられる、温度が上昇した空気を蛇行ターン部55のR端部55Rに当てることにより、L端部5Lに冷熱を供給しただけの場合よりもL端部55LとR端部55Rとの温度差が大きくなり、その結果蛇行ターン部55における作動流体の流動を活発化させてブースター効果をより増大させることができる。つまり、ペルチェユニットの素子放熱媒体(空気70a、70b)を、ブースター効果を増大させるための補助的な熱源としても利用するのである。
【0037】
また、受熱部においては、上述のように、温度の低いL端部55Lが上方、温度の高いR端部55Rが下方に位置し、熱移動しやすいボトムヒートの姿勢をとっている。
【0038】
図2に示すように、テーブル85上の他端には、断熱材91を介してステンレスバット93が置かれている。同バット内には水道水が入れられている。水道水はヒータ(一例で出力27W)95で加熱される。
細管ヒートパイプ51は、ペルチェユニット83に取り付けられた蛇行ターン部55から下方に傾斜し、その先でテーブル85の上面と平行に水平に延びて、一ターン部53の一部がバット93内に沈められている。蛇行ターン部55の先端のベース85上からの高さは520mmである。細管ヒートパイプ51の水平に延びる部分の長さは450mmであり、その内有効な熱交換部(水に浸されている部分)の長さは280mmである。
【0039】
一方、図3に示すような、本発明に係る温度調整装置を加熱装置として用いる場合は、ペルチェユニットに流す電流の向きを、図2に示す冷却装置の場合の反対方向に切替える。すると、同ユニットのペルチェ素子の上側の面が温熱発生面となり、下側の面が冷熱放熱面となる。この状態において、ヒートパイプ51の蛇行ターン部55のL端部55Lに当てられている受熱板69をペルチェユニット66の温熱発生面に固定し、R端部55Rを大気中に露出させる。これにより、蛇行ターン部55内で温度の高い部分(L端部55L)と温度の低い部分(R端部55R)が形成される。
【0040】
そして、蛇行ターン部55をボトムヒートの姿勢とするために、温度の高いL端部55Lが下方、温度の低いR端部55Rが上方となるように、同部55をペルチェユニット83上に傾斜して配置する。傾斜角度は一例で水平面に対して30°である。このように、ヒートパイプ51は、蛇行ターン部55から一ターン部53へ向けて上方に傾斜するように配置されている。なお、温度調整装置81を加熱装置として用いる場合、ペルチェユニット83の排気ダクト89は傾斜方向下側になるように位置させ、ペルチェユニット83から排気された空気を蛇行ターン部55のR端部55Rに当てない。なぜなら、排気された空気の温度が低すぎて、細管ヒートパイプがペルチェユニットから吸収した温熱を低下させる方向に作用してしまうからである。
【0041】
ペルチェユニット83は、上述のようにヒートパイプ51をボトムヒートの姿勢とするために、テーブル85上の一端に置かれたジャッキ87上に、水平に対して30°傾斜して配置されている。そして、テーブル85上の他端には、断熱材91及び支柱92を介して水道水が入れられたステンレスバット93が置かれている。細管ヒートパイプ51は、蛇行ターン部55から上方に傾斜し、その先でテーブル85の上面と平行に水平に延びて、一ターン部53の一部がバット93内に沈められている。この装置は、バット93内の水道水の温度を上昇させる場合に使用される。
【0042】
次に、温度調整装置におけるヒートパイプの作用についてまとめて説明する。ここでは、温度調整装置を冷却装置として使用する場合について、図2、図4を参照しつつ説明する。
ペルチェユニット83を作動させると、蛇行ターン部55においては、L端部55Lで冷熱が吸熱されて、同部のパイプ内で作動流体の凝縮が起こる。同時に、R端部55Rが周囲の空気で温められて、同部のパイプ内で作動流体の蒸発が起こる。L端部55LとR端部55R間の距離は比較的短いので、このような作動流体の凝縮と蒸発により、作動流体は両端部間を活発に移動する。蛇行細管ヒートパイプ51は一つの閉ループを成しているので、蛇行ターン部55内の両端部間で作動流体が活発に移動すると、作動流体の流動力は、蛇行ターン部55から一ターン部53へ延びる直線部53b内の作動流体にも伝えられる(ブースター効果)。これにより、蛇行ターン部55から一ターン部53までの距離が離れている場合でも、作動流体は、蛇行ターン部55から一ターン部53まで直線部53b内を流れる力を得ることができる。この方式によると、熱輸送距離を2000mm程度まで長くすることができる(別の試験で確認済み)。
【0043】
なお、受熱部あるいは放熱部内での作動流体の往復数、すなわち、ターン数が多いほど作動流体の流動力が大きくなり熱輸送能力が高くなることは、通常の蛇行細管ヒートパイプと共通である。
【0044】
図2に示す方式は、前述の局所低体温療法に有効な手段となり得る。この療法においては、大腿部から頭部までカテーテルを挿入し、頭部の一部を32〜35℃程度の温度に冷却し、その後にまた温めて元の温度に戻す。即ち、大腿部から頭部までの比較的長い距離を本方式で冷熱及び温熱輸送することにより、この療法を実現できる。
【0045】
次に、図2の冷却装置を使用した冷却実験の結果について説明する。
この冷却実験の条件は、上述の局所低体温療法を想定して決定した。つまり、バット93内の水道水の容積を、体重が60kgの人の血液量に相当する5リットルとし、実験開始時における温度を平均的な体内温度の37℃とした。そして、この水道水を、ヒータ通電状態であっても、32℃に冷却することを目標とした。なお、実験に使用したペルチェユニット83の出力は40Wである。
【0046】
作動流体の熱輸送能力をさらに向上させるために、蛇行ターン部55のR端部55R側において、図4に示すように、熱輸送部53b(中央の2本の直線部57b、59bを含む)に排気ダクト89からの排気温風が当らないように遮蔽板97を設けた。こうすることにより、ペルチェユニット83から作り出される冷熱が、熱輸送部53bを通過する間に、排気温風で加熱されてしまうことを防ぐ。したがって、ペルチェユニット83で発生する冷熱を、熱輸送部53bを通過中に減少させてしまうことなく、バット93内の水道水まで輸送することができる。
【0047】
図5は、図2の冷却装置を用いて行った冷却実験の結果を示すグラフである。図の縦軸は温度、横軸は経過時間を示す。また、◆はバット内の水道水の温度、●は室温を示す。
まず、ヒータによりバット93内の水道水を37.1℃の温度に加熱した。ペルチェユニット83は予め起動させておき、一ターン部53を水道水に浸けた時点を実験開始時間とし、水温が飽和した8時間後に一ターン部53を水道水から引き上げた。
【0048】
グラフから分かるように、水温は、実験開始から徐々に下降し、約6時間後には31.3℃まで低下した。そして、冷熱輸送を停止するまでの約2時間はこの飽和温度を維持し続けた。ヒータ95は、実験開始から終了までの13時間、常に通電状態にしておいた。したがって、一ターン部53を水道水から引き上げた後は、体内温度を想定した37℃に向かって、再び水温が上昇していった。
【0049】
この冷却装置の実験時間内の平均冷却能力は、
5000g×1cal/g・℃×(37.1℃−31.3℃)/(6hr×860cal/hr)=5.6Wであった。
また、図5のグラフから分かるように、実験開始直後の1時間は特に温度降下が大きく(すなわち、冷却能力が大きく)、1時間で水温が2℃低下した。この間の冷却能力は、
5000g×1cal/g・℃×(37.1℃−35.1℃)/(1hr×860cal/hr)=11.6Wであった。
これは、実験開始時点でペルチェユニット83及び受熱板69に溜まっていた冷熱が、一気に放出されたためと考えられる。
【0050】
また、局所低体温療法においては、初期の冷却能力が20分で−2℃であることが要求されている。この要求を満足するには現状の3倍の冷却能力が必要であるが、これは、ペルチェユニットの出力を大きくすることで実現できるものと考えられる。
【0051】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、熱輸送部を1往復のヒートパイプで形成することにより、受熱部と放熱部が離れており、かつ、両部の間に十分なスペースが存在しない対象に適用することのできる生体温度調整用細管ヒートパイプ及び同ヒートパイプを使用した生体温度調整装置を提供することができる。また、受熱部及び/又は放熱部のターン数を多くすることにより、さらに大きな熱輸送能力を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る細管ヒートパイプの構造を説明する図であり、図1(A)は平面図、図1(B)は側面図である。
【図2】本発明に係る温度調整装置を冷却装置として用いる場合の構成、及び、その冷却能力試験の様子を説明する図であり、図2(A)は平面図、図2(B)は側面図である。
【図3】本発明に係る温度調整装置を加熱装置として用いる場合の構成を説明する側面図である。
【図4】図2の温度調整装置の一部の構造を説明する斜視図である。
【図5】図2の冷温度調整装置を用いて行った冷却実験の結果を示すグラフである。
【図6】特開平4−190090号に開示されている蛇行細管ヒートパイプの構造を示す一部断面平面図である。
【符号の説明】
51 細管ヒートパイプ 53 一ターン部
55 蛇行ターン部 57、59 パイプ
61、63 接続パイプ 66 ペルチェ素子
68 放熱面 69 受熱板
81 温度調整装置 83 ペルチェユニット
85 テーブル 87 ジャッキ
89 排気ダクト 91 断熱材
93 ステンレスバット 95 ヒータ
Claims (7)
- 受熱部と、放熱部と、前記両部をつなぐ熱輸送部と、を具備し、
全体として閉ループをなす細管からなる生体温度調整用細管ヒートパイプであって、
前記熱輸送部が、1往復のみの細管により構成されていることを特徴とする生体温度調整用細管ヒートパイプ。 - 前記受熱部及び/又は放熱部が、複数のターンを有する蛇行細管(蛇行ターン部)により構成されていることを特徴とする請求項1記載の生体温度調整用細管ヒートパイプ。
- 前記蛇行ターン部の一方のターン端部が加熱又は冷却され、他方のターン端部が冷却又は加熱され、該蛇行ターン部において作動流体を蒸発・凝縮させ、もって前記蛇行ターン部内の作動流体の流動力を増すことを特徴とする請求項2記載の生体温度調整用細管ヒートパイプ。
- ペルチェユニット等の冷熱・温熱発生装置(熱発生装置)と、該熱発生装置と該熱発生装置により加熱・冷却される生体患部との間に配置され得る細管ヒートパイプと、を備える生体温度調整装置であって、
前記細管ヒートパイプが、前記熱発生装置に接続される受熱部と、生体患部に接続される放熱部と、前記両部をつなぐ熱輸送部と、を具備する、全体として閉ループをなす細管からなり、
前記熱輸送部が、1往復のみの細管により構成されていることを特徴とする生体温度調整装置。 - 前記受熱部及び/又は放熱部が、複数のターンを有する蛇行細管(蛇行ターン部)により構成されることを特徴とする請求項4記載の生体温度調整装置。
- 前記蛇行ターン部の一方のターン端部が前記熱発生装置によって冷却又は加熱され、他方のターン端部が加熱又は冷却されることを特徴とする請求項5記載の温度調整装置。
- 前記蛇行ターン部の一方のターン端部が前記熱発生装置によって冷却又は加熱され、他方のターン端部が周囲の空気及び/又は前記熱発生装置の素子放熱媒体(例えば空気)で加熱又は冷却されることを特徴とする請求項6記載の温度調整装置。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2007091424A1 (ja) * | 2006-02-09 | 2007-08-16 | Yamaguchi University | 頭蓋内埋め込み型大脳冷却装置 |
JP2011512990A (ja) * | 2008-03-07 | 2011-04-28 | スミス メディカル エーエスディー インコーポレーテッド | 患者用伝熱装置 |
JP2022542908A (ja) * | 2019-07-22 | 2022-10-07 | ブルーエックスサーマル, インコーポレイテッド | 熱管理デバイスおよびシステム |
-
2002
- 2002-12-16 JP JP2002363408A patent/JP2004197961A/ja active Pending
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