JP2004197252A - 合成繊維用紡糸油剤組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐糸−金属摩耗性、耐糸−糸摩耗性、高度の糸条集束性を有し、製糸および延伸加工工程における糸加工温度の上昇、熱板ヒーターの清掃周期の長期化に対応できる適度な耐熱性を有する合成繊維用紡糸油剤組成物提供する。
【解決手段】分子量600〜1300のポリエーテルエステル化合物、分子量1000〜3000のポリエーテル系界面活性剤および分子量1000〜4000の部分酸化ポリエチレンワックスのアルカリ金属塩をそれぞれ15〜60:5〜40:0.5〜7の質量比で含む合成繊維用紡糸油剤組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】分子量600〜1300のポリエーテルエステル化合物、分子量1000〜3000のポリエーテル系界面活性剤および分子量1000〜4000の部分酸化ポリエチレンワックスのアルカリ金属塩をそれぞれ15〜60:5〜40:0.5〜7の質量比で含む合成繊維用紡糸油剤組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、合成繊維用紡糸油剤組成物に関する。本発明は、特に、無撚無糊織物用合成繊維を製造する際に用いて、製糸時の熱板ヒーター汚れを軽減し、製織時の毛羽立ち、単糸切れ、糸削れ等を軽減するのに有効な合成繊維用紡糸油剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、織物用合成繊維においては、製織準備工程において、製織性向上を目的としてポリビニルアルコール系又はポリアクリル系などの糊剤を糸条に付与する糊付けを行ない、経糸に高度の集束性を付与して、毛羽立ち、単糸切れ、糸削れ等を防止する方法が広く行われている。しかしながら、この糊付処理は糊付け設備を必要とし、さらには得られた織布に対しても高次加工をする前に脱糊剤工程を組み込まなければならず、そのため近年では糊付け工程を必要としない無撚無糊製織により工程合理化を促進しようとする方向で検討が進められている。
【0003】
また、近年では、製糸、延伸加工工程の高速化が益々進み、それに伴う糸加工温度の上昇、熱板ヒーターの清掃周期の長期化により、糸品質の向上、工程のコスト管理の進展等が強く求められている。
【0004】
一般に、無撚無糊織物用経糸合成繊維には、耐糸−金属摩耗性、耐糸−糸摩耗性、高度の糸条集束性等が要求されており、これらを可能にする手段として、鉱物油、脂肪酸エステル等の平滑剤を主体にした紡糸油剤に、部分酸化ポリエチレンワックスのアルカリ金属塩を配合する方法(例えば、特許文献1参照)や、高分子ポリエーテル、シリコン油を併用する方法が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1のように平滑剤が低分子モノエステルや鉱物油だけからなる場合には、加熱時に糸条と金属が高張力で接触する場合に十分な油膜強度が得られず、糸切れを起こしやすい。また、特許文献3のようにシリコーン系薬剤の付着した無撚無糊織布の高次加工を行う場合には、シリコーン系薬剤が原因となり、高次加工薬剤が不均一に付着することがあるため、シリコーン系以外薬剤の薬剤により無撚無糊製織を可能にする紡糸油剤を求められている。
【0006】
一方、製糸、延伸加工工程の高速、高温化に対応する手段として、チオエーテル系エステル化合物を油剤の平滑剤として用いる方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。この場合、油剤の耐熱性が高いために短期間のヒーター汚れ防止には効果があるが、油剤加熱後の残量物が多くなる傾向にあるので、長期間の使用においてはヒーター汚れを軽減することができず、さらにこのようなチオエーテル系エステル化合物は平滑性に乏しいために、糸条に必要以上の張力や摩擦が加わり、十分な糸品位が得られないことがある。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−40873号公報
【特許文献2】
特公昭58−17308号公報
【特許文献3】
特公昭62−27193号公報
【特許文献4】
特開平10−298865号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、無撚無糊製織適性、すなわち、耐糸−金属摩耗性、耐糸−糸摩耗性、高度の糸条集束性を有し、製糸および延伸加工工程における糸加工温度の上昇、熱板ヒーターの清掃周期の長期化に対応できる適度な耐熱性を有する合成繊維用紡糸油剤組成物、特に油剤加熱時において適度な時間にわたり液状を保ち、しかる後に速やかに熱分解して十分な油膜強度を保持しながら、熱板ヒーターの汚れの原因となる油剤加熱後の残量物が少なくなる機能を有する、合成繊維用紡糸油剤組成物を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、アルキレンオキサイド付加物において、エチレンオキサイド単独付加物に比較して、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの混合付加物は熱分解が早くなり、プロピレンオキサイド/エチレンオキサイドの付加モル比をコントロールした二価脂肪酸のエステル化合物を平滑剤として用いることにより適度な耐熱性が得られること、またこれとポリエーテル系界面活性剤およびび部分酸化ポリエチレンワックスのアルカリ金属塩とを併用することにより無撚無糊織物用経糸合成繊維に必要な耐糸−金属摩耗性、耐糸−糸摩耗性、高度の糸条集束性が付与できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は下記(A)、(B)および(C)をそれぞれ15〜60:5〜40:0.5〜7の質量比で含む合成繊維用紡糸油剤組成物を提供する。
【0011】
(A)分子量600〜1300の下記一般式(1)で表されるポリエーテルエステル化合物
(上式中、−CO−R1 −CO−は炭素数4〜12の二価脂肪酸からOH基を除いた残基を表し、R2 、R3 は炭素数10〜16のアルキル基を表し、p、q、rおよびsは、それぞれ、1以上であって、r+s/p+q=1/3〜4/1、p+q+r+s=4〜12を満足する整数を表す)
(B)分子量1000〜3000のポリエーテル系界面活性剤(ただし、(A)に含まれるものを除く)
(C)分子量1000〜4000の部分酸化ポリエチレンワックスのアルカリ金属塩
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる(A)成分である前記一般式(1)の化合物の合成方法には特に制限はなく、この化合物は、例えば、炭素数10〜16の高級アルコールにエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが付加した化合物と、二価脂肪酸との反応により得られるエステル化合物であってよく、その分子量は600〜1300である。
【0013】
本発明で用いられる(A)成分の合成に用いられる高級アルコールは、炭素数10〜16の、直鎖もしくは分枝鎖のアルコールであってよく、これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。かかるアルコールとしては、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、イソラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコールなどが挙げられ、これらのうちではデシルアルコール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、イソラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコールおよびイソセチルアルコールが好ましく、ラウリルアルコール、イソラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソセチルアルコールが特に好ましい。
【0014】
前記一般式(1)の化合物中のエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの総付加モル数は4〜12モルであり、プロピレンオキサイド/エチレンオキサイドの付加モル比は1/3〜4/1である。一般式(1)の化合物において、[(C2 H4 O)p −(C3 H6 O)r ]および[(OC3 H6 )s −(OC2 H4 )q ]の[]内は、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加モル数を表すものであって、高級アルコールに付加されるエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの付加の順位はいずれであってもよく、また付加形態もブロック付加、ランダム付加のいずれであってもよく、特に制限はない。なかでも総付加モル数が4〜10モルで、プロピレンオキサイド/エチレンオキサイドの付加モル比が1/2〜3/1であるものが好ましく、総付加モル数が4〜8モルで、プロピレンオキサイド/エチレンオキサイドの付加モル比が1/2〜2/1であるものが特に好ましい。総付加モル数が4モル未満、あるいはプロピレンオキサイド/エチレンオキサイドの付加モル比が1/3未満の場合、エステル化合物の低温安定性が悪くなり、室温で固化するおそれがある。総付加モル数が12モルを超えたり、あるいはプロピレンオキサイド/エチレンオキサイドの付加モル比が4/1を超える場合、エステル化合物の平滑性が著しく低下し、糸切れを起こす原因となる。
【0015】
前記一般式(1)のエステル化合物を合成する際に用いられる二価脂肪酸は、炭素数4〜12のジカルボン酸化合物であり、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸などが挙げられ、特にアジピン酸、セバシン酸が好ましい。
【0016】
本発明に用いられる(B)成分は、分子量が1000〜3000のポリエーテル系界面活性剤である。ただし、広義にポリエーテル系界面活性剤に含まれる前記(A)成分は除く。用いられるポリエーテル系界面活性剤には、その他に制限はないが、分子量が1000〜3000である高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物または多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物であるのが好ましい。
【0017】
ここで用いられる高級アルコールとしては、直鎖もしくは分子鎖のアルコールであり、なかでも炭素数が4〜18のアルコールが好ましい。具体的には、例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、イソラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコールが好ましい。
【0018】
また、ここで用いられる多価アルコールとしては,特に制限は無いが、例えば、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、グリセリン、ソルビトールなどが挙げられ、特にヒマシ油、硬化ヒマシ油、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタンが好ましい。
【0019】
ポリエーテル系界面活性剤(B)の分子量は、1000〜3000、好ましくは1500〜2500である。分子量が1000未満では十分な糸条集束性が得られず、分子量3000を超えると紡糸油剤の粘度が必要以上に高くなるおそれがある。上記ポリエーテル系界面活性剤(B)は、それぞれ単独でまたは2種以上を併用して用いることができ、その組み合わせに特に制限はない。
【0020】
本発明に用いられる(C)成分は、分子量が1000〜4000の部分酸化ポリエチレンワックスのアルカリ金属塩である。部分酸化ポリエチレンワックスのアルカリ金属塩は、例えば、融点が80〜120℃、酸価が10〜30の部分酸化ポリエチレンワックスをカリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属塩にしたものであってよく、ここで用いられる部分酸化ポリエチレンワックスの具体例としてはハイワックス4051E、4052E、4202E、4252E(三井化学(株)製)やA−C629、A−C680(AC−ポリエチレン(株)製)などの市販品が挙げられる。この(C)成分は、一般のアニオン界面活性剤や非イオン界面活性剤などの界面活性剤で乳化分散した水系エマルジョンの形で使用され、エマルジョン中のワックス濃度や併用する薬剤には特に制限はない。
【0021】
本発明の合成繊維用紡糸油剤中には、上記の(A)成分、(B)成分および(C)成分が、質量比でそれぞれ15〜60:5〜40:0.5〜7の割合で含まれる。(A)成分の質量比が15〜60の範囲より少なくなるとコントロールされた適当な耐熱特性が得られず、多くなると油剤エマルジョンの形成や安定性を阻害するおそれがある。(B)成分の質量比が5〜40の範囲より少なくなると十分な糸集束性が得られず、多くなると糸の平滑性を阻害するおそれがある。また、(C)成分の質量比が0.5〜7の範囲より少なくなると十分な耐糸−糸摩耗性、高度の糸条集束性が得られず、多くなると糸条の平滑性を大きく阻害するおそれがある。
【0022】
本発明の合成繊維用紡糸油剤組成物は、上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分が一剤中に上記の質量比で含有された剤形にあるのが好ましいが、(A)成分+(B)成分と(C)成分、(A)成分と(B)成分+(C)成分の二剤形、もしくは(A)成分、(B)成分、(C)成分の三剤形に分け、使用時に上記質量比に配合し、使用する形であってもよい。
【0023】
また、本発明の合成繊維用紡糸油剤組成物中には、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分の他に、通常の紡糸油剤に用いられてるエステル化油等を平滑助剤として配合したり、帯電防止剤、集束剤、防腐剤や、その他乳化剤等が配合されていてもよい。
【0024】
本発明の合成繊維用紡糸油剤組成物が付与される合成繊維としては、特に制限はないが、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維などが挙げられる。そして、この紡糸油剤組成物を使用して、製糸または加工を行う場合には、前記配合比で配合された(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計で、合成繊維質量に対する付着量を0.1〜1.5質量%、特に0.3〜1質量%とすることが好ましい。
【0025】
本発明の合成繊維用紡糸油剤組成物は、従来の紡糸油剤と同様に、水に溶解させ、または分散、乳化させた水性液として、もしくは最適な溶剤を使用した溶液として合成繊維に付与することができる。そして、このときの紡糸油剤組成物の濃度は、特に制限はないが、通常5〜30質量%、好ましくは10〜20%質量%であるのがよい。また、合成繊維に紡糸油剤組成物を付与する方法としては、従来の方法、例えば、ノズルオイリングやローラータッチ、浴による浸漬、スプレー噴霧等の方法をもちいることができる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0027】
合成例1
ジ[EO(1)PO(1)ラウリル]アジペートの合成
反応容器に、ラウリルアルコールにエチレンオキサイド1モルおよびプロピレンオキサイド1モルが付加された化合物(EO(1)PO(1)ラウリルエーテル)578.9g(2.01モル)、アジピン酸146g(1モル)、触媒としてp−トルエンスルホン酸4.3gを仕込んだ後、窒素気流下で撹拌しながら、160℃まで加熱昇温を行う。温度の上昇とともに反応によって生成する水を留去しながら、160℃で3時間脱水反応を行う。その後、温度を240℃まで上げ、0.08Mpa以下の減圧で反応させる。反応の終了を酸価の減少および留去水の計量によって確認し、反応終了後100℃に冷却し、触媒除去剤で触媒を除去し、精製した。
【0028】
合成例2
ジ[EO(2)PO(2)ラウリル]アジペートの合成
反応容器に、ラウリルアルコールにエチレンオキサイド2モルおよびプロピレンオキサイド2モルが付加された化合物(EO(2)PO(2)ラウリルエーテル)783.9g(2.01モル)、アジピン酸146g(1モル)、触媒としてp−トルエンスルホン酸4.3gを仕込んだ後、窒素気流下で撹拌しながら、160℃まで加熱昇温を行う。温度の上昇とともに反応によって生成する水を留去しながら、160℃で3時間脱水反応を行う。その後、温度を240℃まで上げ、0.08Mpa以下の減圧で反応させる。反応の終了を酸価の減少および留去水の計量によって確認し、反応終了後100℃に冷却し、触媒除去剤で触媒を除去し、精製した。
【0029】
合成例3
ジ[EO(1)PO(2)イソトリデシル]アジペートの合成
反応容器に、イソトリデシルアルコールにエチレンオキサイド1モルおよびプロピレンオキサイド2モルが付加された化合物(EO(1)PO(2)イソトリデシルエーテル)723.6g(2.01モル)、アジピン酸146g(1モル)、触媒としてp−トルエンスルホン酸4.3gを仕込んだ後、窒素気流下で撹拌しながら、160℃まで加熱昇温を行う。温度の上昇とともに反応によって生成する水を留去しながら、160℃で3時間脱水反応を行う。その後、温度を240℃まで上げ、0.08Mpa以下の減圧で反応させる。反応の終了を酸価の減少および留去水の計量によって確認し、反応終了後100℃に冷却し、触媒除去剤で触媒を除去し、精製した。
【0030】
実施例1〜4、比較例1〜3
表1に示す配合割合で配合した実施例1〜4、比較例1〜3の紡糸用油剤組成物を用いて、エマルジョン濃度15質量%の各水性液を調製する。470デシテックス/68フィラメント( 470detx/68f)の6ナイロン糸を用い、糸条に対する油剤付与量が0.6質量%になるように付与して油剤付与糸を作り、下記の各評価に供した。
【0031】
評価方法
発煙性試験
220℃、50cmの熱板ヒーター上を、100m/分で油剤付与糸を走行させたときに熱板ヒーター上から発生する煙を捕集して、デジタル粉塵カウンター(柴田科学製P−5H型)で発煙量を測定し、以下の基準で評価した。
【0032】
Count unit:0.001mg/m3 =1CPM
◎:4000CPM以下
○:4000〜7000CPM
△:7000〜10000CPM
×:10000CPM以上
ヒーター汚れ試験
220℃、50cmの熱板ヒーターを30°傾斜させ、そこに実施例または比較例の油剤を流量10ml/時で30分間滴下する。油剤滴下終了後、さらに220℃で1時間加熱焼成する。油剤滴下終了後および加熱焼成終了後のヒーターの状態を目視で観察し、汚れの少ないもの(良)から汚れの多いもの(劣)までを、○、○△、△、△×、×の5段階で評価する。
【0033】
糸−糸ラビング試験(F/Fラビング)
装置の概略を図1に示したYSS式糸摩擦抱合力試験機にて、交叉角60°、撚り角1080°、荷重300gの測定条件下に、ストローク60mm、1往復を1サイクル(1回)として、100サイクル/分の速さで糸条同士を糸が切断するまで擦り合わせて、切断するまでの回数を測定し、以下の基準で評価した。切断するまでの回数が多いほど耐糸−糸摩耗性、糸条集束性が良好であると判断する。
【0034】
◎:10000回超
○:6001〜10000回
△:2001〜6000回
×:2000回以下
糸−糸間静摩擦試験(F/Fμs)
糸と糸との間に起こる静摩擦をデュポン式静摩擦測定器にて測定する。試料筒に巻いた糸と接触角θ=πで垂らした糸に重り6g(T1)を付け、試料筒を回転させた時の抵抗T2(g)を測定し、下記式により静摩擦係数(F/Fμs)を求める。
【0035】
F/Fμs=1/π・ln(T2/T1)
さらに、糸への抵抗のかかり始めを0とし、滑り始めるまでの抵抗、すなわちスティックスリップ(g)を同時に測定する。
【0036】
試料筒:50mmφ×76.2mm、回転速度:0.0016cm/秒
耐糸−金属間摩耗性試験
糸条に対する初期張力を10gとして平行移動し続ける筬羽に対して90°の角度で糸条を接触させながら、糸速度300m/分で糸条を1万m走行させる。試験後、筬羽を装置より取り外し、ファイバースコープにて筬羽に残る摩耗痕を観察し、摩耗痕の少ないもの(良)から摩耗痕の大きいもの(劣)までを、◎、○、△、×の4段階の基準で判定する。
【0037】
結果を表1に合わせて示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1の結果より、本発明の紡糸用油剤組成物で処理された糸条は、耐糸−糸摩耗性、高度の糸条集束性を示し、かつ、良好な耐熱挙動を示すことがわかる。
【0040】
【発明の効果】
本発明の紡糸油剤組成物により処理された合成繊維は、耐糸−金属摩耗性、耐糸−糸摩耗性、高度の糸条集束性を示し、製糸および延伸加工工程における糸加工温度の上昇、熱板ヒーターの清掃周期の長期化に対応できる、適度な耐熱性を有するものとなり、無撚無糊製織を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】糸−糸ラビング試験に用いた装置の模式図。
【発明が属する技術分野】
本発明は、合成繊維用紡糸油剤組成物に関する。本発明は、特に、無撚無糊織物用合成繊維を製造する際に用いて、製糸時の熱板ヒーター汚れを軽減し、製織時の毛羽立ち、単糸切れ、糸削れ等を軽減するのに有効な合成繊維用紡糸油剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、織物用合成繊維においては、製織準備工程において、製織性向上を目的としてポリビニルアルコール系又はポリアクリル系などの糊剤を糸条に付与する糊付けを行ない、経糸に高度の集束性を付与して、毛羽立ち、単糸切れ、糸削れ等を防止する方法が広く行われている。しかしながら、この糊付処理は糊付け設備を必要とし、さらには得られた織布に対しても高次加工をする前に脱糊剤工程を組み込まなければならず、そのため近年では糊付け工程を必要としない無撚無糊製織により工程合理化を促進しようとする方向で検討が進められている。
【0003】
また、近年では、製糸、延伸加工工程の高速化が益々進み、それに伴う糸加工温度の上昇、熱板ヒーターの清掃周期の長期化により、糸品質の向上、工程のコスト管理の進展等が強く求められている。
【0004】
一般に、無撚無糊織物用経糸合成繊維には、耐糸−金属摩耗性、耐糸−糸摩耗性、高度の糸条集束性等が要求されており、これらを可能にする手段として、鉱物油、脂肪酸エステル等の平滑剤を主体にした紡糸油剤に、部分酸化ポリエチレンワックスのアルカリ金属塩を配合する方法(例えば、特許文献1参照)や、高分子ポリエーテル、シリコン油を併用する方法が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1のように平滑剤が低分子モノエステルや鉱物油だけからなる場合には、加熱時に糸条と金属が高張力で接触する場合に十分な油膜強度が得られず、糸切れを起こしやすい。また、特許文献3のようにシリコーン系薬剤の付着した無撚無糊織布の高次加工を行う場合には、シリコーン系薬剤が原因となり、高次加工薬剤が不均一に付着することがあるため、シリコーン系以外薬剤の薬剤により無撚無糊製織を可能にする紡糸油剤を求められている。
【0006】
一方、製糸、延伸加工工程の高速、高温化に対応する手段として、チオエーテル系エステル化合物を油剤の平滑剤として用いる方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。この場合、油剤の耐熱性が高いために短期間のヒーター汚れ防止には効果があるが、油剤加熱後の残量物が多くなる傾向にあるので、長期間の使用においてはヒーター汚れを軽減することができず、さらにこのようなチオエーテル系エステル化合物は平滑性に乏しいために、糸条に必要以上の張力や摩擦が加わり、十分な糸品位が得られないことがある。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−40873号公報
【特許文献2】
特公昭58−17308号公報
【特許文献3】
特公昭62−27193号公報
【特許文献4】
特開平10−298865号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、無撚無糊製織適性、すなわち、耐糸−金属摩耗性、耐糸−糸摩耗性、高度の糸条集束性を有し、製糸および延伸加工工程における糸加工温度の上昇、熱板ヒーターの清掃周期の長期化に対応できる適度な耐熱性を有する合成繊維用紡糸油剤組成物、特に油剤加熱時において適度な時間にわたり液状を保ち、しかる後に速やかに熱分解して十分な油膜強度を保持しながら、熱板ヒーターの汚れの原因となる油剤加熱後の残量物が少なくなる機能を有する、合成繊維用紡糸油剤組成物を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、アルキレンオキサイド付加物において、エチレンオキサイド単独付加物に比較して、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの混合付加物は熱分解が早くなり、プロピレンオキサイド/エチレンオキサイドの付加モル比をコントロールした二価脂肪酸のエステル化合物を平滑剤として用いることにより適度な耐熱性が得られること、またこれとポリエーテル系界面活性剤およびび部分酸化ポリエチレンワックスのアルカリ金属塩とを併用することにより無撚無糊織物用経糸合成繊維に必要な耐糸−金属摩耗性、耐糸−糸摩耗性、高度の糸条集束性が付与できることを見出し、この知見に基づき本発明を完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は下記(A)、(B)および(C)をそれぞれ15〜60:5〜40:0.5〜7の質量比で含む合成繊維用紡糸油剤組成物を提供する。
【0011】
(A)分子量600〜1300の下記一般式(1)で表されるポリエーテルエステル化合物
(上式中、−CO−R1 −CO−は炭素数4〜12の二価脂肪酸からOH基を除いた残基を表し、R2 、R3 は炭素数10〜16のアルキル基を表し、p、q、rおよびsは、それぞれ、1以上であって、r+s/p+q=1/3〜4/1、p+q+r+s=4〜12を満足する整数を表す)
(B)分子量1000〜3000のポリエーテル系界面活性剤(ただし、(A)に含まれるものを除く)
(C)分子量1000〜4000の部分酸化ポリエチレンワックスのアルカリ金属塩
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる(A)成分である前記一般式(1)の化合物の合成方法には特に制限はなく、この化合物は、例えば、炭素数10〜16の高級アルコールにエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが付加した化合物と、二価脂肪酸との反応により得られるエステル化合物であってよく、その分子量は600〜1300である。
【0013】
本発明で用いられる(A)成分の合成に用いられる高級アルコールは、炭素数10〜16の、直鎖もしくは分枝鎖のアルコールであってよく、これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。かかるアルコールとしては、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ウンデシルアルコール、ラウリルアルコール、イソラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコールなどが挙げられ、これらのうちではデシルアルコール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、イソラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコールおよびイソセチルアルコールが好ましく、ラウリルアルコール、イソラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソセチルアルコールが特に好ましい。
【0014】
前記一般式(1)の化合物中のエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの総付加モル数は4〜12モルであり、プロピレンオキサイド/エチレンオキサイドの付加モル比は1/3〜4/1である。一般式(1)の化合物において、[(C2 H4 O)p −(C3 H6 O)r ]および[(OC3 H6 )s −(OC2 H4 )q ]の[]内は、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加モル数を表すものであって、高級アルコールに付加されるエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドの付加の順位はいずれであってもよく、また付加形態もブロック付加、ランダム付加のいずれであってもよく、特に制限はない。なかでも総付加モル数が4〜10モルで、プロピレンオキサイド/エチレンオキサイドの付加モル比が1/2〜3/1であるものが好ましく、総付加モル数が4〜8モルで、プロピレンオキサイド/エチレンオキサイドの付加モル比が1/2〜2/1であるものが特に好ましい。総付加モル数が4モル未満、あるいはプロピレンオキサイド/エチレンオキサイドの付加モル比が1/3未満の場合、エステル化合物の低温安定性が悪くなり、室温で固化するおそれがある。総付加モル数が12モルを超えたり、あるいはプロピレンオキサイド/エチレンオキサイドの付加モル比が4/1を超える場合、エステル化合物の平滑性が著しく低下し、糸切れを起こす原因となる。
【0015】
前記一般式(1)のエステル化合物を合成する際に用いられる二価脂肪酸は、炭素数4〜12のジカルボン酸化合物であり、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸などが挙げられ、特にアジピン酸、セバシン酸が好ましい。
【0016】
本発明に用いられる(B)成分は、分子量が1000〜3000のポリエーテル系界面活性剤である。ただし、広義にポリエーテル系界面活性剤に含まれる前記(A)成分は除く。用いられるポリエーテル系界面活性剤には、その他に制限はないが、分子量が1000〜3000である高級アルコールのアルキレンオキサイド付加物または多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物であるのが好ましい。
【0017】
ここで用いられる高級アルコールとしては、直鎖もしくは分子鎖のアルコールであり、なかでも炭素数が4〜18のアルコールが好ましい。具体的には、例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、イソラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコールが好ましい。
【0018】
また、ここで用いられる多価アルコールとしては,特に制限は無いが、例えば、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン、グリセリン、ソルビトールなどが挙げられ、特にヒマシ油、硬化ヒマシ油、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタンが好ましい。
【0019】
ポリエーテル系界面活性剤(B)の分子量は、1000〜3000、好ましくは1500〜2500である。分子量が1000未満では十分な糸条集束性が得られず、分子量3000を超えると紡糸油剤の粘度が必要以上に高くなるおそれがある。上記ポリエーテル系界面活性剤(B)は、それぞれ単独でまたは2種以上を併用して用いることができ、その組み合わせに特に制限はない。
【0020】
本発明に用いられる(C)成分は、分子量が1000〜4000の部分酸化ポリエチレンワックスのアルカリ金属塩である。部分酸化ポリエチレンワックスのアルカリ金属塩は、例えば、融点が80〜120℃、酸価が10〜30の部分酸化ポリエチレンワックスをカリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属塩にしたものであってよく、ここで用いられる部分酸化ポリエチレンワックスの具体例としてはハイワックス4051E、4052E、4202E、4252E(三井化学(株)製)やA−C629、A−C680(AC−ポリエチレン(株)製)などの市販品が挙げられる。この(C)成分は、一般のアニオン界面活性剤や非イオン界面活性剤などの界面活性剤で乳化分散した水系エマルジョンの形で使用され、エマルジョン中のワックス濃度や併用する薬剤には特に制限はない。
【0021】
本発明の合成繊維用紡糸油剤中には、上記の(A)成分、(B)成分および(C)成分が、質量比でそれぞれ15〜60:5〜40:0.5〜7の割合で含まれる。(A)成分の質量比が15〜60の範囲より少なくなるとコントロールされた適当な耐熱特性が得られず、多くなると油剤エマルジョンの形成や安定性を阻害するおそれがある。(B)成分の質量比が5〜40の範囲より少なくなると十分な糸集束性が得られず、多くなると糸の平滑性を阻害するおそれがある。また、(C)成分の質量比が0.5〜7の範囲より少なくなると十分な耐糸−糸摩耗性、高度の糸条集束性が得られず、多くなると糸条の平滑性を大きく阻害するおそれがある。
【0022】
本発明の合成繊維用紡糸油剤組成物は、上記の(A)成分、(B)成分、(C)成分が一剤中に上記の質量比で含有された剤形にあるのが好ましいが、(A)成分+(B)成分と(C)成分、(A)成分と(B)成分+(C)成分の二剤形、もしくは(A)成分、(B)成分、(C)成分の三剤形に分け、使用時に上記質量比に配合し、使用する形であってもよい。
【0023】
また、本発明の合成繊維用紡糸油剤組成物中には、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分の他に、通常の紡糸油剤に用いられてるエステル化油等を平滑助剤として配合したり、帯電防止剤、集束剤、防腐剤や、その他乳化剤等が配合されていてもよい。
【0024】
本発明の合成繊維用紡糸油剤組成物が付与される合成繊維としては、特に制限はないが、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維などが挙げられる。そして、この紡糸油剤組成物を使用して、製糸または加工を行う場合には、前記配合比で配合された(A)成分、(B)成分、(C)成分の合計で、合成繊維質量に対する付着量を0.1〜1.5質量%、特に0.3〜1質量%とすることが好ましい。
【0025】
本発明の合成繊維用紡糸油剤組成物は、従来の紡糸油剤と同様に、水に溶解させ、または分散、乳化させた水性液として、もしくは最適な溶剤を使用した溶液として合成繊維に付与することができる。そして、このときの紡糸油剤組成物の濃度は、特に制限はないが、通常5〜30質量%、好ましくは10〜20%質量%であるのがよい。また、合成繊維に紡糸油剤組成物を付与する方法としては、従来の方法、例えば、ノズルオイリングやローラータッチ、浴による浸漬、スプレー噴霧等の方法をもちいることができる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0027】
合成例1
ジ[EO(1)PO(1)ラウリル]アジペートの合成
反応容器に、ラウリルアルコールにエチレンオキサイド1モルおよびプロピレンオキサイド1モルが付加された化合物(EO(1)PO(1)ラウリルエーテル)578.9g(2.01モル)、アジピン酸146g(1モル)、触媒としてp−トルエンスルホン酸4.3gを仕込んだ後、窒素気流下で撹拌しながら、160℃まで加熱昇温を行う。温度の上昇とともに反応によって生成する水を留去しながら、160℃で3時間脱水反応を行う。その後、温度を240℃まで上げ、0.08Mpa以下の減圧で反応させる。反応の終了を酸価の減少および留去水の計量によって確認し、反応終了後100℃に冷却し、触媒除去剤で触媒を除去し、精製した。
【0028】
合成例2
ジ[EO(2)PO(2)ラウリル]アジペートの合成
反応容器に、ラウリルアルコールにエチレンオキサイド2モルおよびプロピレンオキサイド2モルが付加された化合物(EO(2)PO(2)ラウリルエーテル)783.9g(2.01モル)、アジピン酸146g(1モル)、触媒としてp−トルエンスルホン酸4.3gを仕込んだ後、窒素気流下で撹拌しながら、160℃まで加熱昇温を行う。温度の上昇とともに反応によって生成する水を留去しながら、160℃で3時間脱水反応を行う。その後、温度を240℃まで上げ、0.08Mpa以下の減圧で反応させる。反応の終了を酸価の減少および留去水の計量によって確認し、反応終了後100℃に冷却し、触媒除去剤で触媒を除去し、精製した。
【0029】
合成例3
ジ[EO(1)PO(2)イソトリデシル]アジペートの合成
反応容器に、イソトリデシルアルコールにエチレンオキサイド1モルおよびプロピレンオキサイド2モルが付加された化合物(EO(1)PO(2)イソトリデシルエーテル)723.6g(2.01モル)、アジピン酸146g(1モル)、触媒としてp−トルエンスルホン酸4.3gを仕込んだ後、窒素気流下で撹拌しながら、160℃まで加熱昇温を行う。温度の上昇とともに反応によって生成する水を留去しながら、160℃で3時間脱水反応を行う。その後、温度を240℃まで上げ、0.08Mpa以下の減圧で反応させる。反応の終了を酸価の減少および留去水の計量によって確認し、反応終了後100℃に冷却し、触媒除去剤で触媒を除去し、精製した。
【0030】
実施例1〜4、比較例1〜3
表1に示す配合割合で配合した実施例1〜4、比較例1〜3の紡糸用油剤組成物を用いて、エマルジョン濃度15質量%の各水性液を調製する。470デシテックス/68フィラメント( 470detx/68f)の6ナイロン糸を用い、糸条に対する油剤付与量が0.6質量%になるように付与して油剤付与糸を作り、下記の各評価に供した。
【0031】
評価方法
発煙性試験
220℃、50cmの熱板ヒーター上を、100m/分で油剤付与糸を走行させたときに熱板ヒーター上から発生する煙を捕集して、デジタル粉塵カウンター(柴田科学製P−5H型)で発煙量を測定し、以下の基準で評価した。
【0032】
Count unit:0.001mg/m3 =1CPM
◎:4000CPM以下
○:4000〜7000CPM
△:7000〜10000CPM
×:10000CPM以上
ヒーター汚れ試験
220℃、50cmの熱板ヒーターを30°傾斜させ、そこに実施例または比較例の油剤を流量10ml/時で30分間滴下する。油剤滴下終了後、さらに220℃で1時間加熱焼成する。油剤滴下終了後および加熱焼成終了後のヒーターの状態を目視で観察し、汚れの少ないもの(良)から汚れの多いもの(劣)までを、○、○△、△、△×、×の5段階で評価する。
【0033】
糸−糸ラビング試験(F/Fラビング)
装置の概略を図1に示したYSS式糸摩擦抱合力試験機にて、交叉角60°、撚り角1080°、荷重300gの測定条件下に、ストローク60mm、1往復を1サイクル(1回)として、100サイクル/分の速さで糸条同士を糸が切断するまで擦り合わせて、切断するまでの回数を測定し、以下の基準で評価した。切断するまでの回数が多いほど耐糸−糸摩耗性、糸条集束性が良好であると判断する。
【0034】
◎:10000回超
○:6001〜10000回
△:2001〜6000回
×:2000回以下
糸−糸間静摩擦試験(F/Fμs)
糸と糸との間に起こる静摩擦をデュポン式静摩擦測定器にて測定する。試料筒に巻いた糸と接触角θ=πで垂らした糸に重り6g(T1)を付け、試料筒を回転させた時の抵抗T2(g)を測定し、下記式により静摩擦係数(F/Fμs)を求める。
【0035】
F/Fμs=1/π・ln(T2/T1)
さらに、糸への抵抗のかかり始めを0とし、滑り始めるまでの抵抗、すなわちスティックスリップ(g)を同時に測定する。
【0036】
試料筒:50mmφ×76.2mm、回転速度:0.0016cm/秒
耐糸−金属間摩耗性試験
糸条に対する初期張力を10gとして平行移動し続ける筬羽に対して90°の角度で糸条を接触させながら、糸速度300m/分で糸条を1万m走行させる。試験後、筬羽を装置より取り外し、ファイバースコープにて筬羽に残る摩耗痕を観察し、摩耗痕の少ないもの(良)から摩耗痕の大きいもの(劣)までを、◎、○、△、×の4段階の基準で判定する。
【0037】
結果を表1に合わせて示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1の結果より、本発明の紡糸用油剤組成物で処理された糸条は、耐糸−糸摩耗性、高度の糸条集束性を示し、かつ、良好な耐熱挙動を示すことがわかる。
【0040】
【発明の効果】
本発明の紡糸油剤組成物により処理された合成繊維は、耐糸−金属摩耗性、耐糸−糸摩耗性、高度の糸条集束性を示し、製糸および延伸加工工程における糸加工温度の上昇、熱板ヒーターの清掃周期の長期化に対応できる、適度な耐熱性を有するものとなり、無撚無糊製織を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】糸−糸ラビング試験に用いた装置の模式図。
Claims (1)
- 下記(A)、(B)および(C)をそれぞれ15〜60:5〜40:0.5〜7の質量比で含む合成繊維用紡糸油剤組成物。
(A)分子量600〜1300の下記一般式(1)で表されるポリエーテルエステル化合物
(上式中、−CO−R1 −CO−は炭素数4〜12の二価脂肪酸からOH基を除いた残基を表し、R2 、R3 は炭素数10〜16のアルキル基を表し、p、q、rおよびsは、それぞれ、1以上であって、r+s/p+q=1/3〜4/1、p+q+r+s=4〜12を満足する整数を表す)
(B)分子量1000〜3000のポリエーテル系界面活性剤(ただし、(A)に含まれるものを除く)
(C)分子量1000〜4000の部分酸化ポリエチレンワックスのアルカリ金属塩
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JP2002365632A JP2004197252A (ja) | 2002-12-17 | 2002-12-17 | 合成繊維用紡糸油剤組成物 |
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WO2009081528A1 (ja) * | 2007-12-20 | 2009-07-02 | Matsumoto Yushi-Seiyaku Co., Ltd. | 合成繊維用処理剤およびこれを用いた合成繊維の製造方法 |
JP5881267B1 (ja) * | 2015-06-25 | 2016-03-09 | 竹本油脂株式会社 | 合成繊維用処理剤の水性液及び合成繊維の処理方法 |
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2002
- 2002-12-17 JP JP2002365632A patent/JP2004197252A/ja active Pending
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