JP2004196921A - ラテックスフォームおよびその製造方法 - Google Patents
ラテックスフォームおよびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004196921A JP2004196921A JP2002365801A JP2002365801A JP2004196921A JP 2004196921 A JP2004196921 A JP 2004196921A JP 2002365801 A JP2002365801 A JP 2002365801A JP 2002365801 A JP2002365801 A JP 2002365801A JP 2004196921 A JP2004196921 A JP 2004196921A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- latex
- foam
- latex foam
- types
- mixing
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Manufacture Of Porous Articles, And Recovery And Treatment Of Waste Products (AREA)
Abstract
【課題】混合が容易であり、夫々から得られるラテックスフォームが発現するガラス転移点が−50℃近傍と、−10〜70℃の温度範囲内である2種類のラテックスゴムを物理的に均質に混合させ、これにゲル化剤およびエアー等を混合することで、該ガラス転移温度間において温度依存性を小さくし得るラテックスフォームと、該フォームの製造方法を提供する。
【解決手段】ラテックスフォームとした際に−50℃近傍および−10〜70℃の範囲の少なくとも2つの温度域に夫々ガラス転移点を発現する2種類のラテックスゴムと、架橋剤等の所要の副原料とを充分に混合して得られる液状原料にゲル化剤およびエアーを混合して得られるラテックスフォーム原料Mを架橋・硬化させる。
【選択図】 図5
【解決手段】ラテックスフォームとした際に−50℃近傍および−10〜70℃の範囲の少なくとも2つの温度域に夫々ガラス転移点を発現する2種類のラテックスゴムと、架橋剤等の所要の副原料とを充分に混合して得られる液状原料にゲル化剤およびエアーを混合して得られるラテックスフォーム原料Mを架橋・硬化させる。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ラテックスフォームおよびその製造方法に関し、更に詳細には、所定の温度領域において低反発弾性と、良好なゴム物性を発現し、電気・電子関連製品等に代表される衝撃吸収体等に好適に使用し得るラテックスフォームと、該フォームの製造方法に関するものである。
【0002】
例えば衝撃吸収体、吸音材または制振材の材質として、低反発弾性を発現するポリウレタン樹脂等の、所謂低反発弾性ポリウレタンフォームが好適に使用されている。前記低反発弾性ポリウレタンフォームは、医療用の腰枕、足枕、安眠用枕またはマットレス等の使用時における使用者の体圧を分散させることで、床ずれ等の低減を達成し得る新たな素材として注目を集めている。
【0003】
一般に、前記ポリウレタンフォームが低反発弾性を達成するには、基本的にその組成を調整することで、該素材が有する粘弾性から測定されるtanδのピークが、該低反発弾性を得たい温度範囲に略一致するようにすればよい。そして、前記tanδは、前記素材が有するガラス転移点と略一致することが経験的に知られている。従って、通常使用される低反発弾性フォームの常用温度範囲において、ガラス転移点を発現するような組成とした素材を使用すればよい。そして、前記ガラス転移点を複数有するような組成とすれば、所謂温度依存性の小さなフォームを得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記低反発性ポリウレタンフォームの素材として、前述のポリウレタン系樹脂の如き樹脂系物質を使用した場合、その構造内における結晶部分の存在により基本的な硬度が高く、また高い柔軟性および伸び率といった、所謂ゴム物性を有していない点が問題として挙げられる。このため、吸音・制振機能を有するシール材といった、所謂ゴム物性を必要とする使用用途には向かず、前記ポリウレタン系樹脂をフォーム素材として使用する場合には、その発泡倍率を大きくする等して対応することが一般的であった。そしてこの場合、得られる低反発弾性ポリウレタンフォームにおける引張強度等の機械的強度は、良好な数値とはなり得ず、その結果、耐久性等が悪化する問題が指摘される。
【0005】
この他、前記素材としてゴム組成物を用いることも可能である。ゴム組成物の場合、当然ゴム物性を備えているため、前述の問題は生じない。しかしゴム組成物を使用する場合、以下の問題が指摘される。すなわち、
▲1▼前記ゴム組成物は、所要の物性を発現させるため、ゴム原料に対して、多量のカーボンブラックや可塑剤等の添加物が添加されるが、一般に該ゴム原料の粘度が高いため、その混合や該添加物の均一な分散が困難である。また発泡に際して、前述の添加物が更に不均一となることが予測され、その結果、低反発弾性以外の、例えば 硬度、密度および引張強度等の機械的強度といった諸物性の制御が困難となる。
▲2▼前記ゴム組成物において前記ガラス転移点は、基本的に該ゴム組成物を構成する鎖状分子の長さによって決定されるが、この分子量は通常100万〜300万程度と非常に長いことが一般的である。そしてこの分子量故、低温におけるゴム分子の自由度は高く、そのため一般に前記ゴム組成物のガラス転移点温度は−50℃近傍にしか発現しなかった。このため、前述のポリウレタン系樹脂について採用するような、複数の温度域で夫々ガラス転移点を発現するゴム組成物を混合する手段を用いることができず、実際上、温度依存性の小さな低反発弾性フォームを製造し得なかった。
【0006】
【発明の目的】
この発明は、従来のラテックスフォームが有する前記問題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、その混合が容易であり、夫々から得られるラテックスフォームが発現するガラス転移点が異なる、具体的には少なくとも−50℃近傍と、−10〜70℃の温度範囲内との夫々にガラス転移点を発現する2種類のラテックスゴムを物理的に均質に混合させ、これにゲル化剤およびエアー等を混合することで、該ガラス転移温度間において温度依存性を小さくし得るラテックスフォームと、該フォームの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本願の発明に係るラテックスフォームは、ラテックスフォームとした際に−50℃近傍および−10〜70℃の範囲の少なくとも2つの温度域に夫々ガラス転移点を発現する2種類のラテックスゴムと、架橋剤等の所要の副原料とを充分に混合して得られる液状原料100重量部に対して1〜10重量部に設定されるゲル化剤と、エアーとを混合して得られるラテックスフォーム原料を架橋・硬化させることで、
1Hzの振動数で粘弾性を測定した際に得られるtanδのピーク値でガラス転移点を表したときに、−50〜70℃の温度範囲における該tanδの存在幅が0.3以内となっていることを特徴とする。
【0008】
同じく前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の別の発明に係るラテックスフォームの製造方法は、ラテックスフォームとした際に−50℃近傍および−10〜70℃の範囲の少なくとも2つの温度域に夫々ガラス転移点を発現する2種類のラテックスゴムを準備し、
前記2種類のラテックスゴムと、架橋剤等の所要の副原料とを充分に混合して液状原料とし、
この液状原料100重量部に対し、ゲル化剤1〜10重量部およびエアーを添加して混合することでゲル化したラテックスフォーム原料を得て、
次いで、前記ゲル化したラテックスフォーム原料に加熱を施して架橋・硬化を進行させることで、
1Hzの振動数で粘弾性を測定した際に得られるtanδのピーク値でガラス転移点を表したときに、−50〜70℃の温度範囲における該tanδの存在幅が0.3以内となっているラテックスフォームを製造するようにしたことを特徴とする。
【0009】
同じく前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の更に別の発明に係るラテックスフォームの製造方法は、ラテックスフォームとした際に−50℃近傍および−10〜70℃の範囲の少なくとも2つの温度域に夫々ガラス転移点を発現する2種類のラテックスゴムを準備し、
前記2種類のラテックスゴムを充分に混合して得た混合ラテックスゴムに対し、架橋剤等の所要の副原料を充分に混合して液状原料とし、
この液状原料100重量部に対し、ゲル化剤1〜10重量部を添加して混合することでゲル化したラテックスフォーム原料を得て、
次いで、前記ゲル化したラテックスフォーム原料に加熱を施して架橋・硬化を進行させることで、
1Hzの振動数で粘弾性を測定した際に得られるtanδのピーク値でガラス転移点を表したときに、−50〜70℃の温度範囲における該tanδの存在幅が0.3以内となっているラテックスフォームを製造するようにしたことを特徴とする。
【0010】
本願の発明者は、低反発弾性を発現させるラテックスフォームの原料として、そのガラス転移点温度が−50℃近傍と、−10〜70℃の範囲内に夫々発現する2種類のラテックスフォームをなす2種類のラテックスゴムを使用し、これを充分に混合・混練し、次いで加硫剤およびゲル化剤等の添加物を加えることで、低温域および高温域の双方において温度依存性の小さな低反発弾性のラテックスフォームが得られることを知見したものである。この場合、得られるラテックスフォームの粘弾性測定により得られるtanδが変動する存在幅(変動幅)が、図1に示す如く、−50℃から−10〜70℃の温度範囲において0.3以内に限定される形状となる。
【0011】
また前記2種類のラテックスゴムの混合に際して、ゴムが化学的に過度に混ざり合い、その結果得られるラテックスフォームのガラス転移点が狭い温度範囲内だけに発現しないように異なる種類、具体的には該ゴム間の溶解度パラメータの差を0.1以上となる種類とすることで、広い温度域に亘って粘弾性測定により得られるtanδが変動する存在幅(変動幅)がより小さくなることも併せて知見したものである。なお本発明において、図示されるtanδまたはG'曲線に係る各グラフ図は、基本的にその特徴的な曲率等を生かしつつ、かつ全体としては概略的に示すようにしている。また、本発明に係る粘弾性測定は以下の条件により測定されている。
・粘弾性測定装置:商品名 ARES−2KFRTN1−FCO−STD;レオメトリック・サイエンティフィック製
【0012】
基本的に前記tanδは、測定される物質、ここではラテックスフォームから測定されるガラス転移点と略同一の位置にそのピークを有している。そして、所定の温度範囲における前記tanδの変動幅が、該所定の温度範囲における温度依存性の大きさに比例するものであると知られている。従って、ある温度範囲における前記tanδの変動幅が小さければ、該温度範囲において温度依存性も小さいといえる。
【0013】
ある温度における前記tanδは、ある温度におけるG'値(弾性に関係する値)と、G"値(粘性に関係する値)との比である(G'/G")。ここで前記G'値は、基本的にラテックスフォームをなすラテックスゴムの分子量および構造によって決定される。前記G'値を温度を横軸としてプロットしたG'曲線には、図2に示す如く、前記ラテックスゴムから得られるtanδの上昇開始点近傍温度に対応した第1変位点と、かつ該tanδの下降終了点近傍温度に対応した第2変位点とが夫々存在している。なお、前記第1変位点とは、低温側において、G'値が減少(下降)し始めて屈曲した部分の両端方向に夫々延在する曲線の傾きを示す接線の交点のことである。また、前記第2変位点とは、高温側において、G'値が減少状態から一定値に安定し始める屈曲した部分の両端方向に夫々延在する曲線の傾きを示す接線の交点のことである。一般に、前記G'曲線は、ラテックスフォームをなすラテックスゴムの分子量が小さい程、高い温度域に変位点を有し、該分子量が大きい程、低い温度域に変位点を有するものである。
【0014】
そして前記G"値は、殊にラテックスフォームの組成等と密接な関係は確認されておらず、前記tanδのピーク値以降の温度範囲において、順次下降する略直線的な曲線を描くものである。従って、前記tanδのピーク値以降の温度範囲において、前記G'曲線およびG"曲線を略直線と考えた場合、該G'曲線(直線)が示す傾きを、順次緩やかに下降するG"曲線(直線)の傾きに略一致させるようにすれば、tanδ=G'/G"の関係式から、存在幅の小さいtanδ、すなわち温度依存性の小さなラテックスフォームが得られることになる。これは前記tanδが、基本的には前記ラテックスフォームの組成等により、その変位点を任意とし得る前記G'値によって、制御されることを示唆している。なお、一般に前記第1変位点と第2変位点との間のG'曲線の挙動については、該2つの変位点が直線的に結ばれる形状となっていることが望ましい。
【0015】
前述([0010])した種類の異なるとは、具体的には使用される夫々のラテックスゴムから得られるラテックスフォームの溶解度パラメータの差が少なくとも0.1以上ある状態を指す。すなわち前記2種類のラテックスゴムは、双方の溶解度パラメータ差を0.1以上に設定することで、該ゴムを混合した混合ラテックスゴムから得られるラテックスフォームのtanδのピーク値の存在幅を、前記第1変位点の存在する−50℃と第2変位点の存在する−10〜70℃の間で0.3を更に下回る数値に抑えることが可能となる。なお、前記ラテックスゴムを3つ以上使用する場合には、使用する全てのゴムから得られたラテックスフォームをガラス転移点の順で整列させ、互いに隣り合うラテックスフォームを得るための該ゴム間の溶解度パラメータ差を0.1以上に設定することで同様の効果が期待できる。
【0016】
前記溶解度パラメータは、化合物置換基の分子引力定数を用い、化合物の分子構造と密度から算出することができる(黄 慶雲著「接着の化学と実際」第21頁〜第26頁,1962年発行 高分子刊行会)。また前記分子引力定数については、ピー.エス.スモール(P.S.Small)により応用化学ジャーナル(JournalApplied Chemistry,第3巻第71頁〜第80頁,1953年発行)に記載がなされている。そして本発明で前記溶解度パラメータは、前記分子引力定数を用いた化合物の分子構造と密度から算出した値が用いられる。
【0017】
前記ラテックスゴムとして、その溶解度パラメータの差が0.1未満である物質を使用した場合には、夫々のゴムの混合の際に大きく相溶して構造が均質化してしまうことが懸念され、−50℃近傍にガラス転移点を発現するラテックスフォームをなすラテックスゴムから得られる該ラテックスフォームの第1変位点と、−10〜70℃の間にガラス転移点を発現するラテックスフォームをなすラテックスゴムから得られる該ラテックスフォームの第2変位点とが互いに接近してしまう。これは、前記第1変位点および第2変位点の、縦軸(Pa)における幅が変化しないのに、図3に示す如く、横軸(温度)における幅だけが縮小する状態、すなわち、前記G'曲線の傾きが急な状態となり、広い温度範囲において変動の少ないtanδを得ることが困難となることを意味している。
【0018】
この一方で、前記2種類のラテックスゴムは物理的には充分に混合されている必要がある。この2種類のラテックスゴムの物理的な混合が不充分であると、得るべきラテックスフォームの構造内において、ある部位においては一方のラテックスゴムから得られるラテックスフォームが、また違うある部位においては他方のラテックスゴムから得られるラテックスフォームが夫々偏在して形成されてしまう事態を生じ、その結果、部位により2種類のガラス転移点が混在するだけのラテックスフォームが製造されてしまうからである。このため本発明においては、前記2種類のラテックスゴムを混合するに必要とされる混合時の駆動力を、剪断速度と混合時間とで表すようにしている。また本発明に係るラテックスフォームの原料たるラテックスゴムは、その性状が液状であり、所謂粘稠体である通常のゴム原料に較べて格段に混合・混練が容易であるため、混練における不調、すなわち充分な混練がなされない等の問題が起こる可能性は小さい。
【0019】
またラテックスゴムを架橋させたラテックスフォームを素材とすることで、ガラス転移点の選択、すなわち良好な低反発弾性を発現させる温度域の選択だけでなく、全体的な硬度も容易に変更し得る。具体的には、前記ラテックスフォームの主原料であるラテックスゴムに対して混合される発泡剤(本発明においてはエアー(各種不活性ガスを含む)の量を制御し、密度(発泡倍率)を変更することで達成される。更にフォーム体となっているため、通常のソリッドなゴム弾性体に較べて、物理的構造上においてもよりエネルギー吸収率に優れている。このような特徴からも、反発弾性を容易に低くし得る特徴を有している。
【0020】
なお、前記ラテックスゴムの構造としては、一般的にその構造が複雑、すなわち低温時における柔軟性が小さい程、高い温度域に変位点を有し、反対の場合には低い温度域に変位点を有するものである。例えば、ラテックスゴムを構成する分子の極性が大きかったり、IIR(ブチルゴム)のように多分岐型の分子構造であって側鎖が多かったり、CR(クロロプレンゴム)またはNR(天然ゴム)のように結晶性が高い物質はガラス転移点だけでは柔軟性が一意的に決定されないため留意が必要である。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係るラテックスフォームおよびその製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。本発明に係るラテックスフォームは、図4に示すような製造工程を経て好適に製造されている。前記製造工程は、原料調整工程S1、ゲル化工程S2、加熱工程S3および最終工程S4から基本的に構成されている。また、前記各工程S1〜S4については、例えば図5に示すような製造装置30により、連続的かつ好適に実施される。前記製造装置30は、前記原料準備工程S1およびゲル化工程S2を経ることで得られるゲル化したラテックスフォーム原料M(以下、ゲル化原料と云う)から、シート状のテックスフォーム20を連続的に製造する装置である。なおここで云うゲル化原料およびこの後に記載されるゲル化原料とは、完全にゲル化が完了した原料だけを指すものでなく、前記ゲル化工程S2により混合されたゲル化剤により、主原料であるラテックスゴムから次第にゲル化している途上の原料および完全にゲル化した原料全てを指すものである。
【0022】
前記製造装置30は、具体的には前記原料準備工程S1を実施する攪拌羽根31aを有する混合タンク31と、前記ゲル化原料を移送するため図示しない駆動源により駆動されるベルトコンベア式の移送機構32と、この移送機構32の最上流側に配置され、前記ゲル化工程S2を実施すると共に、移送ベルト32a上にゲル化原料を供給するミキシングヘッド34と、該ミキシングヘッド34の下流側に設置され、供給されたゲル化原料を所定厚さのシート状とする製品厚制御手段36と、その下流側に設けられる所定長さのトンネル式加熱炉38とから基本的に構成される。
【0023】
(原料準備工程S1について)
前記混合タンク31で行なわれる前記原料準備工程S1は、前記ラテックスフォーム20を得るべき各原料を混合・攪拌して液状のラテックスフォーム原料(以下、液状原料と云う)を得るための工程である。ここでは、前記ラテックスフォーム20を得るための各原料のうちゲル化剤およびセルを形成するエアー等のガス以外の物質、すなわち主原料となる2種類のラテックスゴムと、架橋剤、充填剤、起泡剤、気泡安定剤および老化防止剤等といった副原料とが混合される。そして前記2種類のラテックスゴムに対して前記各副原料が充分に混合されることで、前記液状原料が得られる。なお前記液状原料を得るための各原料については、ここでは一度に混合した場合を述べているが、前記2種類のラテックスゴムの充分な混合を達成すべく、予め該2種類のラテックスゴムを混合して混合ラテックスゴムとした後に、前記副原料を加えるようにする形態を採用し得る。この場合、前記2種類のラテックスゴムが予混合されるのと同様の効果を奏するため、前述([0018])した理由により全体として同一のガラス転移点を発現する良好なラテックスフォーム20が得られる。
【0024】
前記ラテックスフォーム20の主原料であるラテックスゴムとしては、NBRラテックスゴム、SBRラテックスゴム、クロロプレンゴム(CR)ラテックスゴムまたはNRラテックスゴム等の天然または合成のラテックスゴムが、単独でラテックスフォームとされた際に発現するガラス転移点から適宜選択されて使用される。殊に−10〜70℃近傍にガラス転移点を発現するラテックスフォームをなすラテックスゴムとしては、スチレン含有量が高いか、カルボキシル変性されているラテックスゴムが好適である。スチレン基は凝集し易く、またカルボキシル基もまた凝集し易く、この凝集により通常のラテックスゴムに較べ高い温度域にガラス転移点を有するようになっていると考えられる。他方の−50℃近傍にガラス転移点を有するようになるラテックスゴムは、該ラテックスゴムとしては一般的な物質であるため、適宜必要なラテックスゴムが選択して使用可能である。
【0025】
また前記2種類のラテックスゴムの溶解度パラメータについては、前述([0016])の如く、前記分子引力定数を用いた化合物の分子構造と密度から算出されるため、SBRまたはNBRといった種類によって近似した値となる。一般的には、NBRラテックスゴムの場合で17.6〜21.2、SBRラテックスゴムの場合で16.6〜17.8、CRラテックスゴムの場合で16.9〜19.2、NRラテックスゴムの場合で16.3〜17.8程度となっている。従って前述([0024])の如く、−50℃近傍にガラス転移点を有するラテックスゴムとして、SBRラテックスゴムを使用した際に他方の−10〜70℃の温度範囲にガラス転移点を有するラテックスゴムとして何れのラテックスゴムも使用可能であるが、殊に溶解度パラメータの点からは最もその差が大きくなり得るNBRラテックスゴムが好適と推論される。
【0026】
また前記2種類のラテックスゴムは、その重量における混合割合が40:60〜60:40の間に設定される。この混合割合が、前述の範囲外となると、得られる混合ラテックスゴムの構造が混合割合が多い何れかのラテックスゴム側に近似してしまうためにG'曲線が量の多いラテックスゴム側にシフトしてしまう。これは混合ラテックスゴムから得られるラテックスフォームの第1変位点および第2変位点の、夫々存在する温度の差が縮まることを意味している。この温度差の縮小により、得られるラテックスフォームのtanδのピークの存在幅が大きくなってしまい、その結果、温度依存性が大きくなってしまうことになる。
【0027】
前記各副原料の添加量としては、主原料である前記2種類のラテックスゴムを合わせた重量を100重量部とし、これに対して架橋剤が0.5〜6重量部、起泡剤が2〜6重量部、気泡安定剤が1.0〜5.0重量部、老化防止剤が1〜5重量部並びに充填剤1〜20重量部程度に設定される。なお、前記副原料の種類および添加される量については、一例であり、前述の主原料の種類、一度に調整される原料の量等により、従来公知のものから適宜選択された副原料が必要量だけ使用される。殊に前記気泡安定剤については、本発明において大きな意味を持っている−10〜70℃にガラス転移点を有するラテックスフォームをなすラテックスゴムは泡保持が余り良好ではないため、1.0〜5.0重量部と通常の0.5〜1.5重量部に較べて多く必要とされる。この量が1.0重量部未満であると泡保持性が悪化して均一なセル構造が得られなくなり、また5.0重量部を越えると原料系におけるpHバランスが崩れ、ゲル化時間の遅延および製造コストの増大といった問題が顕在化する。
【0028】
また前記2種類のラテックスゴムは、前述([0018])の如く、物理的には充分に混合され、該ラテックスゴムが均質に入り交じっている状態となる必要がある。このため本発明では、前記各副原料および2種類のラテックスゴムの充分な混合を意図し、該混合に係る剪断力を示す剪断速度が10〜10000min-1となる範囲で、少なくとも30分以上の時間をかけて実施されるように設定される。なお、この条件で実施される混合は、前記2種類のラテックスゴムを予め混合する場合には、該予混合の段階においても適用することが好ましい。
【0029】
そして前記剪断速度は、前記混合タンク31が発揮し得る最高剪断速度Q(min-1)から導出され、該最高剪断速度Qは、以下の式の如く定義される。
Q=(P×π×S)/V
ここで、
P:混合タンク(31)の攪拌羽根(31a)の翼径(mm)
π:3.14(円周率)
S:1分当たりの回転数
V:混合タンク(31)と混合タンク(31)における攪拌羽根(31a)との間のクリアランス(隙間)における、最も狭い部分の距離(mm)
すなわち、前記剪断速度を実施し得る最高剪断速度を有するように、前記各要素が設定された混合タンク31および撹拌羽根31aを用いればよい。
【0030】
(ゲル化工程S2について)
前記ゲル化工程S2は、前記原料準備工程S1で得られた液状原料に所要のエアー(各種不活性ガスを含む)およびゲル化剤を添加し、充分に混合させて気泡状態にすると共に、ゲル化されたラテックスフォーム原料Mを得るための工程である。通常は前記原料準備工程S1で得られ、ポンプ31b等の手段で供給される液状原料と、図示しない手段により計量されて供給されるエアーと、同じく図示しない手段により計量されると共に、ポンプ34a等の手段で供給されるゲル化剤とをミキシングヘッド等の混合装置34により充分に混合することで実施される。
【0031】
前記ミキシングヘッド34は、移送ベルト32a上に前記ゲル化原料を制御下に供給するものであり、一端が前述した該ゲル化原料の混合機構31等に接続されている。前記製品厚制御手段36は、移送ベルト32a上に吐出供給されたゲル化原料を得るべきシート状ラテックスフォーム20とするものであり、具体的にはドクターナイフまたはドクターロール等の従来公知の手段が採用される。
【0032】
前記ゲル化剤は、直径0.5〜5.0μm程度の粒子の懸濁液状態、すなわちラテックス状態をなすラテックスゴムの粒子の化学的安定性を低下させると共に、凝集させて、所謂ゲル化状態とするための物質であり、一般的にはケイフッ化ナトリウム(SSF)、ケイフッ化カリウムまたはケイフッ化カルシウム等のケイフッ化系物質等を水溶液状態とした液状物が使用される。そしてその添加量としては、前記液状原料100重量部に対して1〜10重量部程度が好適である。この添加量が前述の範囲外となると、好適なゲル化、具体的にはゲル化の完了に必要な時間、すなわちゲル化時間が長くなり過ぎたり、短くなり過ぎてしまうことにより、何れも好適なラテックスフォーム20が得られなくなってしまう。また、前記ゲル化剤としては、殊に前述のケイフッ化ナトリウムが、ゲル化開始時間等の反応制御が容易であることから好適に使用されている。
【0033】
また前述のゲル化の完了により、前記ラテックスフォーム原料M中にあるエアーは気泡として保持されると共に、ラテックスフォーム20の骨格構造が完成することになる。この気泡は、そのまま最終的に得られるラテックスフォーム20のセルとなるため、該気泡の大きさはセル径を決定することになる。前記気泡径は、基本的に前記ゲル化時間に依存している。すなわち、ゲル化時間が長ければ、その間に前記ゲル化原料中に混合された気泡が互いに接触し合って合一して巨大化したり、該ゲル化原料外へ排出されることになってしまうので、該ゲル化時間が短い程、小さなセル径とし得る。従って、前記セル径は前記ゲル化剤の添加量によって大きく影響を受ける。
【0034】
(加熱工程S3について)
前記加熱工程S3は、前記製品厚制御手段36により所要厚さとされたゲル化原料に、該原料の架橋反応等が充分に進行するに足る加熱を行ない、架橋・硬化反応を進行・完了させてラテックスフォーム20とするため、前記トンネル式加熱炉38によって実施される工程である。この工程に使用される加熱手段としては、前記トンネル式加熱炉38の他、前記ゲル化原料に充分な加熱を行ない、架橋・硬化させ得るものであれば、如何なるものでも採用可能である。
【0035】
(最終工程S4について)
最終的に施される前記最終工程S4を経ることで、最終製品たるラテックスフォームが完成する。具体的には、得られたラテックスフォーム20に対して、必要とされる各種加工および検査等を実施する工程であり、場合によっては得るべき各種製品形状への切断・縫製等の後加工および検査等の実施も行なわれる。また得られたラテックスフォーム20に加工を施さず、そのままロール状に巻き取る等した後に別工程で加工等するようにしてもよい。なお、前述の実施例については、前記ゲル化状態にあるゲル化原料が、製造装置30に対して連続的に供給されるように構成されるが、殊にこれに限定されるものではなく、得るべきラテックスフォームの大きさ毎に個別的、所謂バッチ式に製造するようにしてもよい。
【0036】
また本発明に係る前記ラテックスフォームは、所要形状への成形や加工が製造工程上および物性上容易なラテックスフォームから作製される。このため、前記ラテックスフォームの使用用途に適した寸法および形状、例えば医療用の別途マットレスであれば、ベッドの大きさ等に合致させて所要の厚さを有する直方体形状物とすることが容易である等、該ラテックスフォームを素材として様々な製品に容易に加工し得る。
【0037】
【発明の効果】
以上に説明した如く、本発明に係るラテックスフォームおよびその製造方法によれば、その混合が容易であり、夫々単独でラテックスフォームとした際に−50℃近傍と、−10〜70℃の温度範囲内とに夫々ガラス転移点を発現する2種類のラテックスゴムを物理的に均質に混合し、これにゲル化剤およびエアー等を混合することで、該ガラス転移温度間において温度依存性を小さくすることで良好な低反発弾性を発現させると共に、ゴム物性を発現するラテックスフォームを製造し得る。
【0038】
またラテックスゴムを架橋させたラテックスフォームを素材とするため、エアー量の制御による硬度の調整が容易であり、またフォーム体という物理的構造によっても反発弾性を低下させる効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係るラテックスフォームのtanδを示すグラフ図である。
【図2】G'値と、tanδとの一般的な関係と、各温度毎の該G'値プロットしたG'曲線における第1変位点および第2変位点を示すグラフ図である。
【図3】異なる2種類のラテックスゴムを使用した場合において、夫々のラテックスゴムから得られるラテックスフォームに係るtanδおよびG'曲線と、該2種類のラテックスゴムを混合して得られるラテックスフォームに係るtanδおよびG'曲線とを概略的に示すグラフ図である。ここで、図3(a)はtanδ同士の関係、図3(b)はG'曲線同士の関係を示す。
【図4】実施例に係るラテックスフォームの製造工程を示すフローチャート図である。
【図5】実施例に係るラテックスフォームの製造装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
M ラテックスフォーム原料
【発明の属する技術分野】
この発明は、ラテックスフォームおよびその製造方法に関し、更に詳細には、所定の温度領域において低反発弾性と、良好なゴム物性を発現し、電気・電子関連製品等に代表される衝撃吸収体等に好適に使用し得るラテックスフォームと、該フォームの製造方法に関するものである。
【0002】
例えば衝撃吸収体、吸音材または制振材の材質として、低反発弾性を発現するポリウレタン樹脂等の、所謂低反発弾性ポリウレタンフォームが好適に使用されている。前記低反発弾性ポリウレタンフォームは、医療用の腰枕、足枕、安眠用枕またはマットレス等の使用時における使用者の体圧を分散させることで、床ずれ等の低減を達成し得る新たな素材として注目を集めている。
【0003】
一般に、前記ポリウレタンフォームが低反発弾性を達成するには、基本的にその組成を調整することで、該素材が有する粘弾性から測定されるtanδのピークが、該低反発弾性を得たい温度範囲に略一致するようにすればよい。そして、前記tanδは、前記素材が有するガラス転移点と略一致することが経験的に知られている。従って、通常使用される低反発弾性フォームの常用温度範囲において、ガラス転移点を発現するような組成とした素材を使用すればよい。そして、前記ガラス転移点を複数有するような組成とすれば、所謂温度依存性の小さなフォームを得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記低反発性ポリウレタンフォームの素材として、前述のポリウレタン系樹脂の如き樹脂系物質を使用した場合、その構造内における結晶部分の存在により基本的な硬度が高く、また高い柔軟性および伸び率といった、所謂ゴム物性を有していない点が問題として挙げられる。このため、吸音・制振機能を有するシール材といった、所謂ゴム物性を必要とする使用用途には向かず、前記ポリウレタン系樹脂をフォーム素材として使用する場合には、その発泡倍率を大きくする等して対応することが一般的であった。そしてこの場合、得られる低反発弾性ポリウレタンフォームにおける引張強度等の機械的強度は、良好な数値とはなり得ず、その結果、耐久性等が悪化する問題が指摘される。
【0005】
この他、前記素材としてゴム組成物を用いることも可能である。ゴム組成物の場合、当然ゴム物性を備えているため、前述の問題は生じない。しかしゴム組成物を使用する場合、以下の問題が指摘される。すなわち、
▲1▼前記ゴム組成物は、所要の物性を発現させるため、ゴム原料に対して、多量のカーボンブラックや可塑剤等の添加物が添加されるが、一般に該ゴム原料の粘度が高いため、その混合や該添加物の均一な分散が困難である。また発泡に際して、前述の添加物が更に不均一となることが予測され、その結果、低反発弾性以外の、例えば 硬度、密度および引張強度等の機械的強度といった諸物性の制御が困難となる。
▲2▼前記ゴム組成物において前記ガラス転移点は、基本的に該ゴム組成物を構成する鎖状分子の長さによって決定されるが、この分子量は通常100万〜300万程度と非常に長いことが一般的である。そしてこの分子量故、低温におけるゴム分子の自由度は高く、そのため一般に前記ゴム組成物のガラス転移点温度は−50℃近傍にしか発現しなかった。このため、前述のポリウレタン系樹脂について採用するような、複数の温度域で夫々ガラス転移点を発現するゴム組成物を混合する手段を用いることができず、実際上、温度依存性の小さな低反発弾性フォームを製造し得なかった。
【0006】
【発明の目的】
この発明は、従来のラテックスフォームが有する前記問題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、その混合が容易であり、夫々から得られるラテックスフォームが発現するガラス転移点が異なる、具体的には少なくとも−50℃近傍と、−10〜70℃の温度範囲内との夫々にガラス転移点を発現する2種類のラテックスゴムを物理的に均質に混合させ、これにゲル化剤およびエアー等を混合することで、該ガラス転移温度間において温度依存性を小さくし得るラテックスフォームと、該フォームの製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本願の発明に係るラテックスフォームは、ラテックスフォームとした際に−50℃近傍および−10〜70℃の範囲の少なくとも2つの温度域に夫々ガラス転移点を発現する2種類のラテックスゴムと、架橋剤等の所要の副原料とを充分に混合して得られる液状原料100重量部に対して1〜10重量部に設定されるゲル化剤と、エアーとを混合して得られるラテックスフォーム原料を架橋・硬化させることで、
1Hzの振動数で粘弾性を測定した際に得られるtanδのピーク値でガラス転移点を表したときに、−50〜70℃の温度範囲における該tanδの存在幅が0.3以内となっていることを特徴とする。
【0008】
同じく前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の別の発明に係るラテックスフォームの製造方法は、ラテックスフォームとした際に−50℃近傍および−10〜70℃の範囲の少なくとも2つの温度域に夫々ガラス転移点を発現する2種類のラテックスゴムを準備し、
前記2種類のラテックスゴムと、架橋剤等の所要の副原料とを充分に混合して液状原料とし、
この液状原料100重量部に対し、ゲル化剤1〜10重量部およびエアーを添加して混合することでゲル化したラテックスフォーム原料を得て、
次いで、前記ゲル化したラテックスフォーム原料に加熱を施して架橋・硬化を進行させることで、
1Hzの振動数で粘弾性を測定した際に得られるtanδのピーク値でガラス転移点を表したときに、−50〜70℃の温度範囲における該tanδの存在幅が0.3以内となっているラテックスフォームを製造するようにしたことを特徴とする。
【0009】
同じく前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の更に別の発明に係るラテックスフォームの製造方法は、ラテックスフォームとした際に−50℃近傍および−10〜70℃の範囲の少なくとも2つの温度域に夫々ガラス転移点を発現する2種類のラテックスゴムを準備し、
前記2種類のラテックスゴムを充分に混合して得た混合ラテックスゴムに対し、架橋剤等の所要の副原料を充分に混合して液状原料とし、
この液状原料100重量部に対し、ゲル化剤1〜10重量部を添加して混合することでゲル化したラテックスフォーム原料を得て、
次いで、前記ゲル化したラテックスフォーム原料に加熱を施して架橋・硬化を進行させることで、
1Hzの振動数で粘弾性を測定した際に得られるtanδのピーク値でガラス転移点を表したときに、−50〜70℃の温度範囲における該tanδの存在幅が0.3以内となっているラテックスフォームを製造するようにしたことを特徴とする。
【0010】
本願の発明者は、低反発弾性を発現させるラテックスフォームの原料として、そのガラス転移点温度が−50℃近傍と、−10〜70℃の範囲内に夫々発現する2種類のラテックスフォームをなす2種類のラテックスゴムを使用し、これを充分に混合・混練し、次いで加硫剤およびゲル化剤等の添加物を加えることで、低温域および高温域の双方において温度依存性の小さな低反発弾性のラテックスフォームが得られることを知見したものである。この場合、得られるラテックスフォームの粘弾性測定により得られるtanδが変動する存在幅(変動幅)が、図1に示す如く、−50℃から−10〜70℃の温度範囲において0.3以内に限定される形状となる。
【0011】
また前記2種類のラテックスゴムの混合に際して、ゴムが化学的に過度に混ざり合い、その結果得られるラテックスフォームのガラス転移点が狭い温度範囲内だけに発現しないように異なる種類、具体的には該ゴム間の溶解度パラメータの差を0.1以上となる種類とすることで、広い温度域に亘って粘弾性測定により得られるtanδが変動する存在幅(変動幅)がより小さくなることも併せて知見したものである。なお本発明において、図示されるtanδまたはG'曲線に係る各グラフ図は、基本的にその特徴的な曲率等を生かしつつ、かつ全体としては概略的に示すようにしている。また、本発明に係る粘弾性測定は以下の条件により測定されている。
・粘弾性測定装置:商品名 ARES−2KFRTN1−FCO−STD;レオメトリック・サイエンティフィック製
【0012】
基本的に前記tanδは、測定される物質、ここではラテックスフォームから測定されるガラス転移点と略同一の位置にそのピークを有している。そして、所定の温度範囲における前記tanδの変動幅が、該所定の温度範囲における温度依存性の大きさに比例するものであると知られている。従って、ある温度範囲における前記tanδの変動幅が小さければ、該温度範囲において温度依存性も小さいといえる。
【0013】
ある温度における前記tanδは、ある温度におけるG'値(弾性に関係する値)と、G"値(粘性に関係する値)との比である(G'/G")。ここで前記G'値は、基本的にラテックスフォームをなすラテックスゴムの分子量および構造によって決定される。前記G'値を温度を横軸としてプロットしたG'曲線には、図2に示す如く、前記ラテックスゴムから得られるtanδの上昇開始点近傍温度に対応した第1変位点と、かつ該tanδの下降終了点近傍温度に対応した第2変位点とが夫々存在している。なお、前記第1変位点とは、低温側において、G'値が減少(下降)し始めて屈曲した部分の両端方向に夫々延在する曲線の傾きを示す接線の交点のことである。また、前記第2変位点とは、高温側において、G'値が減少状態から一定値に安定し始める屈曲した部分の両端方向に夫々延在する曲線の傾きを示す接線の交点のことである。一般に、前記G'曲線は、ラテックスフォームをなすラテックスゴムの分子量が小さい程、高い温度域に変位点を有し、該分子量が大きい程、低い温度域に変位点を有するものである。
【0014】
そして前記G"値は、殊にラテックスフォームの組成等と密接な関係は確認されておらず、前記tanδのピーク値以降の温度範囲において、順次下降する略直線的な曲線を描くものである。従って、前記tanδのピーク値以降の温度範囲において、前記G'曲線およびG"曲線を略直線と考えた場合、該G'曲線(直線)が示す傾きを、順次緩やかに下降するG"曲線(直線)の傾きに略一致させるようにすれば、tanδ=G'/G"の関係式から、存在幅の小さいtanδ、すなわち温度依存性の小さなラテックスフォームが得られることになる。これは前記tanδが、基本的には前記ラテックスフォームの組成等により、その変位点を任意とし得る前記G'値によって、制御されることを示唆している。なお、一般に前記第1変位点と第2変位点との間のG'曲線の挙動については、該2つの変位点が直線的に結ばれる形状となっていることが望ましい。
【0015】
前述([0010])した種類の異なるとは、具体的には使用される夫々のラテックスゴムから得られるラテックスフォームの溶解度パラメータの差が少なくとも0.1以上ある状態を指す。すなわち前記2種類のラテックスゴムは、双方の溶解度パラメータ差を0.1以上に設定することで、該ゴムを混合した混合ラテックスゴムから得られるラテックスフォームのtanδのピーク値の存在幅を、前記第1変位点の存在する−50℃と第2変位点の存在する−10〜70℃の間で0.3を更に下回る数値に抑えることが可能となる。なお、前記ラテックスゴムを3つ以上使用する場合には、使用する全てのゴムから得られたラテックスフォームをガラス転移点の順で整列させ、互いに隣り合うラテックスフォームを得るための該ゴム間の溶解度パラメータ差を0.1以上に設定することで同様の効果が期待できる。
【0016】
前記溶解度パラメータは、化合物置換基の分子引力定数を用い、化合物の分子構造と密度から算出することができる(黄 慶雲著「接着の化学と実際」第21頁〜第26頁,1962年発行 高分子刊行会)。また前記分子引力定数については、ピー.エス.スモール(P.S.Small)により応用化学ジャーナル(JournalApplied Chemistry,第3巻第71頁〜第80頁,1953年発行)に記載がなされている。そして本発明で前記溶解度パラメータは、前記分子引力定数を用いた化合物の分子構造と密度から算出した値が用いられる。
【0017】
前記ラテックスゴムとして、その溶解度パラメータの差が0.1未満である物質を使用した場合には、夫々のゴムの混合の際に大きく相溶して構造が均質化してしまうことが懸念され、−50℃近傍にガラス転移点を発現するラテックスフォームをなすラテックスゴムから得られる該ラテックスフォームの第1変位点と、−10〜70℃の間にガラス転移点を発現するラテックスフォームをなすラテックスゴムから得られる該ラテックスフォームの第2変位点とが互いに接近してしまう。これは、前記第1変位点および第2変位点の、縦軸(Pa)における幅が変化しないのに、図3に示す如く、横軸(温度)における幅だけが縮小する状態、すなわち、前記G'曲線の傾きが急な状態となり、広い温度範囲において変動の少ないtanδを得ることが困難となることを意味している。
【0018】
この一方で、前記2種類のラテックスゴムは物理的には充分に混合されている必要がある。この2種類のラテックスゴムの物理的な混合が不充分であると、得るべきラテックスフォームの構造内において、ある部位においては一方のラテックスゴムから得られるラテックスフォームが、また違うある部位においては他方のラテックスゴムから得られるラテックスフォームが夫々偏在して形成されてしまう事態を生じ、その結果、部位により2種類のガラス転移点が混在するだけのラテックスフォームが製造されてしまうからである。このため本発明においては、前記2種類のラテックスゴムを混合するに必要とされる混合時の駆動力を、剪断速度と混合時間とで表すようにしている。また本発明に係るラテックスフォームの原料たるラテックスゴムは、その性状が液状であり、所謂粘稠体である通常のゴム原料に較べて格段に混合・混練が容易であるため、混練における不調、すなわち充分な混練がなされない等の問題が起こる可能性は小さい。
【0019】
またラテックスゴムを架橋させたラテックスフォームを素材とすることで、ガラス転移点の選択、すなわち良好な低反発弾性を発現させる温度域の選択だけでなく、全体的な硬度も容易に変更し得る。具体的には、前記ラテックスフォームの主原料であるラテックスゴムに対して混合される発泡剤(本発明においてはエアー(各種不活性ガスを含む)の量を制御し、密度(発泡倍率)を変更することで達成される。更にフォーム体となっているため、通常のソリッドなゴム弾性体に較べて、物理的構造上においてもよりエネルギー吸収率に優れている。このような特徴からも、反発弾性を容易に低くし得る特徴を有している。
【0020】
なお、前記ラテックスゴムの構造としては、一般的にその構造が複雑、すなわち低温時における柔軟性が小さい程、高い温度域に変位点を有し、反対の場合には低い温度域に変位点を有するものである。例えば、ラテックスゴムを構成する分子の極性が大きかったり、IIR(ブチルゴム)のように多分岐型の分子構造であって側鎖が多かったり、CR(クロロプレンゴム)またはNR(天然ゴム)のように結晶性が高い物質はガラス転移点だけでは柔軟性が一意的に決定されないため留意が必要である。
【0021】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係るラテックスフォームおよびその製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。本発明に係るラテックスフォームは、図4に示すような製造工程を経て好適に製造されている。前記製造工程は、原料調整工程S1、ゲル化工程S2、加熱工程S3および最終工程S4から基本的に構成されている。また、前記各工程S1〜S4については、例えば図5に示すような製造装置30により、連続的かつ好適に実施される。前記製造装置30は、前記原料準備工程S1およびゲル化工程S2を経ることで得られるゲル化したラテックスフォーム原料M(以下、ゲル化原料と云う)から、シート状のテックスフォーム20を連続的に製造する装置である。なおここで云うゲル化原料およびこの後に記載されるゲル化原料とは、完全にゲル化が完了した原料だけを指すものでなく、前記ゲル化工程S2により混合されたゲル化剤により、主原料であるラテックスゴムから次第にゲル化している途上の原料および完全にゲル化した原料全てを指すものである。
【0022】
前記製造装置30は、具体的には前記原料準備工程S1を実施する攪拌羽根31aを有する混合タンク31と、前記ゲル化原料を移送するため図示しない駆動源により駆動されるベルトコンベア式の移送機構32と、この移送機構32の最上流側に配置され、前記ゲル化工程S2を実施すると共に、移送ベルト32a上にゲル化原料を供給するミキシングヘッド34と、該ミキシングヘッド34の下流側に設置され、供給されたゲル化原料を所定厚さのシート状とする製品厚制御手段36と、その下流側に設けられる所定長さのトンネル式加熱炉38とから基本的に構成される。
【0023】
(原料準備工程S1について)
前記混合タンク31で行なわれる前記原料準備工程S1は、前記ラテックスフォーム20を得るべき各原料を混合・攪拌して液状のラテックスフォーム原料(以下、液状原料と云う)を得るための工程である。ここでは、前記ラテックスフォーム20を得るための各原料のうちゲル化剤およびセルを形成するエアー等のガス以外の物質、すなわち主原料となる2種類のラテックスゴムと、架橋剤、充填剤、起泡剤、気泡安定剤および老化防止剤等といった副原料とが混合される。そして前記2種類のラテックスゴムに対して前記各副原料が充分に混合されることで、前記液状原料が得られる。なお前記液状原料を得るための各原料については、ここでは一度に混合した場合を述べているが、前記2種類のラテックスゴムの充分な混合を達成すべく、予め該2種類のラテックスゴムを混合して混合ラテックスゴムとした後に、前記副原料を加えるようにする形態を採用し得る。この場合、前記2種類のラテックスゴムが予混合されるのと同様の効果を奏するため、前述([0018])した理由により全体として同一のガラス転移点を発現する良好なラテックスフォーム20が得られる。
【0024】
前記ラテックスフォーム20の主原料であるラテックスゴムとしては、NBRラテックスゴム、SBRラテックスゴム、クロロプレンゴム(CR)ラテックスゴムまたはNRラテックスゴム等の天然または合成のラテックスゴムが、単独でラテックスフォームとされた際に発現するガラス転移点から適宜選択されて使用される。殊に−10〜70℃近傍にガラス転移点を発現するラテックスフォームをなすラテックスゴムとしては、スチレン含有量が高いか、カルボキシル変性されているラテックスゴムが好適である。スチレン基は凝集し易く、またカルボキシル基もまた凝集し易く、この凝集により通常のラテックスゴムに較べ高い温度域にガラス転移点を有するようになっていると考えられる。他方の−50℃近傍にガラス転移点を有するようになるラテックスゴムは、該ラテックスゴムとしては一般的な物質であるため、適宜必要なラテックスゴムが選択して使用可能である。
【0025】
また前記2種類のラテックスゴムの溶解度パラメータについては、前述([0016])の如く、前記分子引力定数を用いた化合物の分子構造と密度から算出されるため、SBRまたはNBRといった種類によって近似した値となる。一般的には、NBRラテックスゴムの場合で17.6〜21.2、SBRラテックスゴムの場合で16.6〜17.8、CRラテックスゴムの場合で16.9〜19.2、NRラテックスゴムの場合で16.3〜17.8程度となっている。従って前述([0024])の如く、−50℃近傍にガラス転移点を有するラテックスゴムとして、SBRラテックスゴムを使用した際に他方の−10〜70℃の温度範囲にガラス転移点を有するラテックスゴムとして何れのラテックスゴムも使用可能であるが、殊に溶解度パラメータの点からは最もその差が大きくなり得るNBRラテックスゴムが好適と推論される。
【0026】
また前記2種類のラテックスゴムは、その重量における混合割合が40:60〜60:40の間に設定される。この混合割合が、前述の範囲外となると、得られる混合ラテックスゴムの構造が混合割合が多い何れかのラテックスゴム側に近似してしまうためにG'曲線が量の多いラテックスゴム側にシフトしてしまう。これは混合ラテックスゴムから得られるラテックスフォームの第1変位点および第2変位点の、夫々存在する温度の差が縮まることを意味している。この温度差の縮小により、得られるラテックスフォームのtanδのピークの存在幅が大きくなってしまい、その結果、温度依存性が大きくなってしまうことになる。
【0027】
前記各副原料の添加量としては、主原料である前記2種類のラテックスゴムを合わせた重量を100重量部とし、これに対して架橋剤が0.5〜6重量部、起泡剤が2〜6重量部、気泡安定剤が1.0〜5.0重量部、老化防止剤が1〜5重量部並びに充填剤1〜20重量部程度に設定される。なお、前記副原料の種類および添加される量については、一例であり、前述の主原料の種類、一度に調整される原料の量等により、従来公知のものから適宜選択された副原料が必要量だけ使用される。殊に前記気泡安定剤については、本発明において大きな意味を持っている−10〜70℃にガラス転移点を有するラテックスフォームをなすラテックスゴムは泡保持が余り良好ではないため、1.0〜5.0重量部と通常の0.5〜1.5重量部に較べて多く必要とされる。この量が1.0重量部未満であると泡保持性が悪化して均一なセル構造が得られなくなり、また5.0重量部を越えると原料系におけるpHバランスが崩れ、ゲル化時間の遅延および製造コストの増大といった問題が顕在化する。
【0028】
また前記2種類のラテックスゴムは、前述([0018])の如く、物理的には充分に混合され、該ラテックスゴムが均質に入り交じっている状態となる必要がある。このため本発明では、前記各副原料および2種類のラテックスゴムの充分な混合を意図し、該混合に係る剪断力を示す剪断速度が10〜10000min-1となる範囲で、少なくとも30分以上の時間をかけて実施されるように設定される。なお、この条件で実施される混合は、前記2種類のラテックスゴムを予め混合する場合には、該予混合の段階においても適用することが好ましい。
【0029】
そして前記剪断速度は、前記混合タンク31が発揮し得る最高剪断速度Q(min-1)から導出され、該最高剪断速度Qは、以下の式の如く定義される。
Q=(P×π×S)/V
ここで、
P:混合タンク(31)の攪拌羽根(31a)の翼径(mm)
π:3.14(円周率)
S:1分当たりの回転数
V:混合タンク(31)と混合タンク(31)における攪拌羽根(31a)との間のクリアランス(隙間)における、最も狭い部分の距離(mm)
すなわち、前記剪断速度を実施し得る最高剪断速度を有するように、前記各要素が設定された混合タンク31および撹拌羽根31aを用いればよい。
【0030】
(ゲル化工程S2について)
前記ゲル化工程S2は、前記原料準備工程S1で得られた液状原料に所要のエアー(各種不活性ガスを含む)およびゲル化剤を添加し、充分に混合させて気泡状態にすると共に、ゲル化されたラテックスフォーム原料Mを得るための工程である。通常は前記原料準備工程S1で得られ、ポンプ31b等の手段で供給される液状原料と、図示しない手段により計量されて供給されるエアーと、同じく図示しない手段により計量されると共に、ポンプ34a等の手段で供給されるゲル化剤とをミキシングヘッド等の混合装置34により充分に混合することで実施される。
【0031】
前記ミキシングヘッド34は、移送ベルト32a上に前記ゲル化原料を制御下に供給するものであり、一端が前述した該ゲル化原料の混合機構31等に接続されている。前記製品厚制御手段36は、移送ベルト32a上に吐出供給されたゲル化原料を得るべきシート状ラテックスフォーム20とするものであり、具体的にはドクターナイフまたはドクターロール等の従来公知の手段が採用される。
【0032】
前記ゲル化剤は、直径0.5〜5.0μm程度の粒子の懸濁液状態、すなわちラテックス状態をなすラテックスゴムの粒子の化学的安定性を低下させると共に、凝集させて、所謂ゲル化状態とするための物質であり、一般的にはケイフッ化ナトリウム(SSF)、ケイフッ化カリウムまたはケイフッ化カルシウム等のケイフッ化系物質等を水溶液状態とした液状物が使用される。そしてその添加量としては、前記液状原料100重量部に対して1〜10重量部程度が好適である。この添加量が前述の範囲外となると、好適なゲル化、具体的にはゲル化の完了に必要な時間、すなわちゲル化時間が長くなり過ぎたり、短くなり過ぎてしまうことにより、何れも好適なラテックスフォーム20が得られなくなってしまう。また、前記ゲル化剤としては、殊に前述のケイフッ化ナトリウムが、ゲル化開始時間等の反応制御が容易であることから好適に使用されている。
【0033】
また前述のゲル化の完了により、前記ラテックスフォーム原料M中にあるエアーは気泡として保持されると共に、ラテックスフォーム20の骨格構造が完成することになる。この気泡は、そのまま最終的に得られるラテックスフォーム20のセルとなるため、該気泡の大きさはセル径を決定することになる。前記気泡径は、基本的に前記ゲル化時間に依存している。すなわち、ゲル化時間が長ければ、その間に前記ゲル化原料中に混合された気泡が互いに接触し合って合一して巨大化したり、該ゲル化原料外へ排出されることになってしまうので、該ゲル化時間が短い程、小さなセル径とし得る。従って、前記セル径は前記ゲル化剤の添加量によって大きく影響を受ける。
【0034】
(加熱工程S3について)
前記加熱工程S3は、前記製品厚制御手段36により所要厚さとされたゲル化原料に、該原料の架橋反応等が充分に進行するに足る加熱を行ない、架橋・硬化反応を進行・完了させてラテックスフォーム20とするため、前記トンネル式加熱炉38によって実施される工程である。この工程に使用される加熱手段としては、前記トンネル式加熱炉38の他、前記ゲル化原料に充分な加熱を行ない、架橋・硬化させ得るものであれば、如何なるものでも採用可能である。
【0035】
(最終工程S4について)
最終的に施される前記最終工程S4を経ることで、最終製品たるラテックスフォームが完成する。具体的には、得られたラテックスフォーム20に対して、必要とされる各種加工および検査等を実施する工程であり、場合によっては得るべき各種製品形状への切断・縫製等の後加工および検査等の実施も行なわれる。また得られたラテックスフォーム20に加工を施さず、そのままロール状に巻き取る等した後に別工程で加工等するようにしてもよい。なお、前述の実施例については、前記ゲル化状態にあるゲル化原料が、製造装置30に対して連続的に供給されるように構成されるが、殊にこれに限定されるものではなく、得るべきラテックスフォームの大きさ毎に個別的、所謂バッチ式に製造するようにしてもよい。
【0036】
また本発明に係る前記ラテックスフォームは、所要形状への成形や加工が製造工程上および物性上容易なラテックスフォームから作製される。このため、前記ラテックスフォームの使用用途に適した寸法および形状、例えば医療用の別途マットレスであれば、ベッドの大きさ等に合致させて所要の厚さを有する直方体形状物とすることが容易である等、該ラテックスフォームを素材として様々な製品に容易に加工し得る。
【0037】
【発明の効果】
以上に説明した如く、本発明に係るラテックスフォームおよびその製造方法によれば、その混合が容易であり、夫々単独でラテックスフォームとした際に−50℃近傍と、−10〜70℃の温度範囲内とに夫々ガラス転移点を発現する2種類のラテックスゴムを物理的に均質に混合し、これにゲル化剤およびエアー等を混合することで、該ガラス転移温度間において温度依存性を小さくすることで良好な低反発弾性を発現させると共に、ゴム物性を発現するラテックスフォームを製造し得る。
【0038】
またラテックスゴムを架橋させたラテックスフォームを素材とするため、エアー量の制御による硬度の調整が容易であり、またフォーム体という物理的構造によっても反発弾性を低下させる効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係るラテックスフォームのtanδを示すグラフ図である。
【図2】G'値と、tanδとの一般的な関係と、各温度毎の該G'値プロットしたG'曲線における第1変位点および第2変位点を示すグラフ図である。
【図3】異なる2種類のラテックスゴムを使用した場合において、夫々のラテックスゴムから得られるラテックスフォームに係るtanδおよびG'曲線と、該2種類のラテックスゴムを混合して得られるラテックスフォームに係るtanδおよびG'曲線とを概略的に示すグラフ図である。ここで、図3(a)はtanδ同士の関係、図3(b)はG'曲線同士の関係を示す。
【図4】実施例に係るラテックスフォームの製造工程を示すフローチャート図である。
【図5】実施例に係るラテックスフォームの製造装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
M ラテックスフォーム原料
Claims (17)
- ラテックスフォームとした際に−50℃近傍および−10〜70℃の範囲の少なくとも2つの温度域に夫々ガラス転移点を発現する2種類のラテックスゴムと、架橋剤等の所要の副原料とを充分に混合して得られる液状原料100重量部に対して1〜10重量部に設定されるゲル化剤と、エアーとを混合して得られるラテックスフォーム原料(M)を架橋・硬化させることで、
1Hzの振動数で粘弾性を測定した際に得られるtanδのピーク値でガラス転移点を表したときに、−50〜70℃の温度範囲における該tanδの存在幅が0.3以内となっている
ことを特徴とするラテックスフォーム。 - 前記液状原料は、前記2種類のラテックスゴムを予め充分に混合して得た混合ラテックスゴムに対して、前記副原料を混合することで得られる請求項1記載のラテックスフォーム。
- 前記2種類のラテックスゴムから得られるラテックスフォームにおける溶解度パラメータの差は、少なくとも0.1以上に設定される請求項1または2記載のラテックスフォーム。
- 前記2種類のラテックスゴムの重量における混合割合は、40:60〜60:40の間に設定される請求項1〜3の何れかに記載のラテックスフォーム。
- 前記副原料の1つである気泡安定剤の混合量は、前記2種類のラテックスゴムを合わせた重量を100重量部に対して1.0〜5.0重量部に設定される請求項1〜4の何れかに記載のラテックスフォーム。
- ラテックスフォームとした際に−50℃近傍および−10〜70℃の範囲の少なくとも2つの温度域に夫々ガラス転移点を発現する2種類のラテックスゴムを準備し、
前記2種類のラテックスゴムと、架橋剤等の所要の副原料とを充分に混合して液状原料とし、
この液状原料100重量部に対し、ゲル化剤1〜10重量部およびエアーを添加して混合することでゲル化したラテックスフォーム原料(M)を得て、
次いで、前記ゲル化したラテックスフォーム原料(M)に加熱を施して架橋・硬化を進行させることで、
1Hzの振動数で粘弾性を測定した際に得られるtanδのピーク値でガラス転移点を表したときに、−50〜70℃の温度範囲における該tanδの存在幅が0.3以内となっているラテックスフォームを製造するようにした
ことを特徴とするラテックスフォームの製造方法。 - 前記2種類のラテックスゴムとして、夫々の該ラテックスゴムから得られるラテックスフォームの溶解度パラメータの差が、少なくとも0.1以上になる物質が使用される請求項6記載のラテックスフォームの製造方法。
- 前記副原料の1つである気泡安定剤として、前記2種類のラテックスゴムを合わせた重量を100重量部に対して1.0〜5.0重量部が使用される請求項6または7記載のラテックスフォームの製造方法。
- 前記2種類のラテックスゴムと、架橋剤等の所要の副原料とを充分に混合して液状原料を得るに際して実施される混合は、少なくとも10〜10000min-1の範囲に設定される最大剪断速度で、30分以上実施される請求項6〜8の何れかに記載のラテックスフォームの製造方法。
- 前記2種類のラテックスゴムは、その重量における混合割合が40:60〜60:40の間となるように混合される請求項6〜9の何れかに記載のラテックスフォームの製造方法。
- 前記ゲル化剤として、ケイフッ化ナトリウムの如きケイフッ化系物質が使用される請求項6〜10の何れかに記載のラテックスフォームの製造方法。
- ラテックスフォームとした際に−50℃近傍および−10〜70℃の範囲の少なくとも2つの温度域に夫々ガラス転移点を発現する2種類のラテックスゴムを準備し、
前記2種類のラテックスゴムを充分に混合して得た混合ラテックスゴムに対し、架橋剤等の所要の副原料を充分に混合して液状原料とし、
この液状原料100重量部に対し、ゲル化剤1〜10重量部を添加して混合することでゲル化したラテックスフォーム原料(M)を得て、
次いで、前記ゲル化したラテックスフォーム原料(M)に加熱を施して架橋・硬化を進行させることで、
1Hzの振動数で粘弾性を測定した際に得られるtanδのピーク値でガラス転移点を表したときに、−50〜70℃の温度範囲における該tanδの存在幅が0.3以内となっているラテックスフォームを製造するようにした
ことを特徴とするラテックスフォームの製造方法。 - 前記2種類のラテックスゴムとして、夫々の該ラテックスゴムから得られるラテックスフォームの溶解度パラメータの差が、少なくとも0.1以上になる物質が使用される請求項12記載のラテックスフォームの製造方法。
- 前記副原料の1つである気泡安定剤として、前記2種類のラテックスゴムを合わせた重量を100重量部に対して1.0〜5.0重量部が使用される請求項12または13記載のラテックスフォームの製造方法。
- 少なくとも前記混合ラテックスゴムに対し、架橋剤等の所要の副原料を充分に混合するに際して実施される混合は、少なくとも10〜10000min-1の範囲に設定される最大剪断速度で、30分以上実施される請求項12〜14の何れかに記載のラテックスフォームの製造方法。
- 前記2種類のラテックスゴムは、その重量における混合割合が40:60〜60:40の間となるように混合される請求項12〜15の何れかに記載のラテックスフォームの製造方法。
- 前記ゲル化剤として、ケイフッ化ナトリウムの如きケイフッ化系物質が使用される請求項12〜16の何れかに記載のラテックスフォームの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002365801A JP2004196921A (ja) | 2002-12-17 | 2002-12-17 | ラテックスフォームおよびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002365801A JP2004196921A (ja) | 2002-12-17 | 2002-12-17 | ラテックスフォームおよびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004196921A true JP2004196921A (ja) | 2004-07-15 |
Family
ID=32763246
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002365801A Pending JP2004196921A (ja) | 2002-12-17 | 2002-12-17 | ラテックスフォームおよびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004196921A (ja) |
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2006105857A1 (en) * | 2005-04-04 | 2006-10-12 | Polymerlatex Gmbh | New aqueous reinforced rubber dispersions and their use for making latex foams |
US8158691B2 (en) | 2005-04-04 | 2012-04-17 | Polymer Latex Gmbh & Co. Kg | Aqueous reinforced rubber dispersions and their use for making latex foams |
US8222362B2 (en) | 2006-08-10 | 2012-07-17 | Polymerlatex Gmbh | Latex with reduced odor |
US8399105B2 (en) | 2004-09-09 | 2013-03-19 | Polymer Latex Gmbh & Co., Kg | Polymer latex suitable for the preparation of dip-molded articles |
JP5676798B1 (ja) * | 2013-08-26 | 2015-02-25 | 日東電工株式会社 | 発泡シート |
JP2015212352A (ja) * | 2013-08-26 | 2015-11-26 | 日東電工株式会社 | 発泡シート |
-
2002
- 2002-12-17 JP JP2002365801A patent/JP2004196921A/ja active Pending
Cited By (9)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US8399105B2 (en) | 2004-09-09 | 2013-03-19 | Polymer Latex Gmbh & Co., Kg | Polymer latex suitable for the preparation of dip-molded articles |
WO2006105857A1 (en) * | 2005-04-04 | 2006-10-12 | Polymerlatex Gmbh | New aqueous reinforced rubber dispersions and their use for making latex foams |
EP1712589A1 (en) * | 2005-04-04 | 2006-10-18 | PolymerLatex GmbH | New aqueous reinforced rubber dispersions and their use for making latex foams |
US8158691B2 (en) | 2005-04-04 | 2012-04-17 | Polymer Latex Gmbh & Co. Kg | Aqueous reinforced rubber dispersions and their use for making latex foams |
US8222362B2 (en) | 2006-08-10 | 2012-07-17 | Polymerlatex Gmbh | Latex with reduced odor |
JP5676798B1 (ja) * | 2013-08-26 | 2015-02-25 | 日東電工株式会社 | 発泡シート |
JP2015110721A (ja) * | 2013-08-26 | 2015-06-18 | 日東電工株式会社 | 発泡シート |
JP2015212352A (ja) * | 2013-08-26 | 2015-11-26 | 日東電工株式会社 | 発泡シート |
US10105929B2 (en) | 2013-08-26 | 2018-10-23 | Nitto Denko Corporation | Foamed sheet |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US10487187B2 (en) | Rubber latex elastic foamed body | |
US20210262468A1 (en) | Rubber compound with high fiber loading useful in pdm stators | |
US9598550B2 (en) | Method of devulcanizing vulcanized rubber | |
JP2004196921A (ja) | ラテックスフォームおよびその製造方法 | |
KR100878557B1 (ko) | 스크랩으로부터 고무의 재생방법 | |
JP6043467B2 (ja) | クロロプレンゴム発泡体及びその製造方法 | |
CN107474325A (zh) | 一种橡胶混炼方法 | |
JP4296391B2 (ja) | ラテックスフォームの製造方法 | |
CN104744667A (zh) | 聚氨酯堵水剂及其制备方法和使用方法 | |
JP2009173839A (ja) | ゴム製品の製造方法 | |
JP5062584B2 (ja) | 原料ゴム組成物の製造方法 | |
KR102145295B1 (ko) | 가공성이 우수한 pv 라텍스 폼의 제조방법 | |
AU777847B2 (en) | Foamed rubber structure and method of making the same | |
JPH0559345A (ja) | ペースト型加熱発泡充填材 | |
CN106810886A (zh) | 一种高低温性能优异的复合改性沥青及制备方法 | |
JP3560895B2 (ja) | 糸状ゴム材料及びその製造方法並びにゴム製品を構成するゴム組成物の製造方法 | |
JP5654281B2 (ja) | タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ | |
JP2007332202A (ja) | ゴムアスファルト組成物 | |
Setyarini et al. | The effect of addition of waste materials on nitrile butadiene rubber to the mechanical properties of roller rubber | |
Herrmann et al. | Influence of the modification of ground truck tyres as an additive on the properties of a truck tread compound | |
JPH03121184A (ja) | ジョイントシートの製造方法 | |
JP2010242243A (ja) | ウェットスーツ | |
KR101664581B1 (ko) | 라텍스 폼의 제조방법 | |
KR102111505B1 (ko) | 저경도, 고탄성, 내마모성이 우수한 휠체어 바퀴 발포 내장재와 그 내장재의 제조방법 | |
TW201800479A (zh) | 熱塑性聚氨酯可發泡原料組成及其發泡體 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050805 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20071128 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20071204 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080408 |