JP2004196582A - セメント強化用熱可塑性樹脂補強材およびセメント成形物 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造が容易で、延伸むらがなく優れた抗張力を有し、また、均一に分散し、コンクリートとの引っ掛かり効果がよく、優れた補強効果を示すセメント強化用熱可塑性樹脂補強材及びそれを用いた強化セメント成形物の提供。
【解決手段】長手方向に多数の凹凸が形成された熱可塑性樹脂製の長尺体を一軸方向に延伸することによって、長さ方向に間隔を置いて多数の膨部が形成された線条体とし、これを所定長さに裁断してなるセメント強化用熱可塑性樹脂補強材において、長尺体の表層を高融点の熱可塑性樹脂で形成し、内層を表層より低融点の熱可塑性樹脂で形成したことを特徴とするセメント強化用熱可塑性樹脂補強材。
【選択図】 図1
【解決手段】長手方向に多数の凹凸が形成された熱可塑性樹脂製の長尺体を一軸方向に延伸することによって、長さ方向に間隔を置いて多数の膨部が形成された線条体とし、これを所定長さに裁断してなるセメント強化用熱可塑性樹脂補強材において、長尺体の表層を高融点の熱可塑性樹脂で形成し、内層を表層より低融点の熱可塑性樹脂で形成したことを特徴とするセメント強化用熱可塑性樹脂補強材。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメント強化用熱可塑性樹脂補強材およびセメント成形物に関する。さらに詳しくは、亀裂の発生のないセメント成形物を得るためのセメント強化用熱可塑性樹脂補強材及びそれを用いた強化セメント成形物に関する。
【0002】
【従来の技術】
セメント成形物は、建築、土木等の構築物の構築、スレート板、コンクリートブロック等の建築、土木用資材として広く使用されている。しかし、セメント成形物は圧縮強度が高い反面、ひび割れが生じたり、あるいは、曲げ応力が作用すると折損したり、亀裂が生じる等の問題がある。
【0003】
このため、コンクリート構造物は、鉄筋を配して強度を得る方法が採用されているが、鉄筋は重量物のため、運搬あるいは配筋のために人件費が嵩み大きな問題となっている。これを軽減するためにコンクリートに鋼繊維、ガラス繊維、炭素繊維、熱可塑性樹脂繊維等を配合して補強する方法が開発されている。
【0004】
しかし、鋼繊維は、強度を有しセメントとの親和性も優れているが、比重が高いため分級しやすく、混合、輸送等が難しい問題がある。また、発錆による補強強度の低下の問題があり、また、鋼繊維がコンクリートから突き出して衣類を引っ掛けたり、車のタイヤを磨耗させたりする問題もある。
【0005】
また、ガラス繊維は、セメントのアルカリ性に対する耐久性に問題があり、コンクリートの混合時に折損し易い問題もある。
【0006】
ポリエチレン等の熱可塑性樹脂繊維は、低廉で高強度を有し取扱いも容易であるが、疎水性でセメントとの親和性が低く、セメントとの接着性が低いために、コンクリートに対する耐引き抜き力が弱くなり、そのために補強効果が充分に発揮できないという問題がある。
【0007】
熱可塑性樹脂繊維とセメントとの接着力を高くするためには、熱可塑性樹脂繊維を細くして表面積を大きくすることが有力な手段となるが、熱可塑性樹脂繊維を細くすると飛散し易くなってセメントとの混和作業時において取扱いが難しくなると共に、コンクリートと混和する際に繊維同士が絡み、繊維の塊、すなわちファイバーボールが発生し易く、均一に分散させることが難しくなるという問題がある。
【0008】
このため、熱可塑性樹脂繊維にコンクリートに対して引っ掛かりが生じるように引っ掛かり部を形成することが提案されており、特許文献1には、複数のフィラメントが並列され、一軸延伸されると共に、並列されたフィラメント間を長さ方向に間隔をおいて局部的に熱溶着することによって接合する方法が示されている。しかし、延伸フィラメントを熱溶着する場合には、収縮破断の問題があるため強力な接合はできず、引抜応力等の力が作用すると、接合部が解裂して分離し、引っ掛かり効果が低減するおそれがある。
【0009】
また、熱可塑性樹脂繊維に間隔をおいて膨部を形成することが提案されており、特許文献2には、ポリプロピレンを芯材とし、これをポリエチレンで被覆した樹脂繊維を延伸することによって、繊維に間隔を置いてポリエチレンの膨部を形成することが示されている。同公報には、具体的な製造方法については説明がないため詳細は知り得ないが、目的とする間隔で希望の大きさの膨部を発生させることは、本発明者の知る限りにおいては難しい問題がある。また、ポリプロピレン繊維とポリエチレン間は接着性に問題があり、両者間の剥離によって補強材がコンクリートから抜け出るというおそれがある。
【0010】
熱可塑性樹脂繊維に間隔をおいて膨部を形成したセメント強化用熱可塑性樹脂補強材を得る方法としては、予め凹凸を有する長尺体を形成し、これを延伸する方法が有力な手段となるが、凹凸の形成によって肉厚が不揃いとなった長尺体を延伸すると、肉厚の部分は加熱が遅れるために温度を均一にすることが難しく、肉の厚い部分は加熱不足となって延伸むらが発生する問題がある。
【0011】
このため、製造が容易でコンクリートとの引っ掛かり効果が大きく、コンクリートから抜け出るおそれがなく、また、延伸むらのないセメント強化用熱可塑性樹脂補強材の開発が要請されている。
【0012】
【特許文献1】特開2000−27026号公報
【特許文献2】特開2000−64116号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、製造が容易で、延伸むらがなく優れた抗張力を有し、また、コンクリートに均一に分散し、コンクリートとの引っ掛かり効果がよく、優れた補強効果を示すセメント強化用熱可塑性樹脂補強材及びそれを用いた強化セメント成形物を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる目的を達成するため鋭意検討をした結果なされたもので、具体的には、長手方向に多数の凹凸が形成された熱可塑性樹脂製の長尺体を一軸方向に延伸することによって、長さ方向に間隔を置いて多数の膨部が形成された線条体とし、これを所定長さに裁断してなるセメント強化用熱可塑性樹脂補強材において、長尺体の表層を高融点の熱可塑性樹脂で形成し、内層を表層より低融点の熱可塑性樹脂で形成したことを特徴とするセメント強化用熱可塑性樹脂補強材を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、熱可塑性樹脂製のストランドを周面に多数の凹凸が形成されたロールを用いて押圧することによって、片面又は両面に多数の凹凸が形成された長尺体とし、これを一軸方向に延伸してなる上記のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材、押出し成形された溶融熱可塑性樹脂シートを周面に多数の凹凸が形成されたロールで押圧してシートに幅方向に延びる多数の小溝を形成し、得られたシートを長さ方向にスリットすることによって多数の凹凸が形成された長尺体とし、これを一軸方向に延伸してなる上記のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材、無機充填材を含有した熱可塑性樹脂の長尺体を用いて形成してなる上記のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材、ポリオレフィンからなる熱可塑性樹脂の長尺体を用いて形成してなる上記のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材、及び、極性単量体由来の単位を含有する変性ポリオレフィン、あるいは、変性ポリオレフィンが配合されたポリオレフィンからなる熱可塑性樹脂の長尺体を用いて形成してなる上記のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材を提供するものである。
【0016】
さらに、また、本発明は、セメントと、骨材と、上記のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材とが、水の共存下に混練され賦形されてなることを特徴とする強化セメント成形物を提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明セメント強化用熱可塑性樹脂補強材1は、図1(A)に示すように、長さ方向に間隔を置いて多数の膨部3、3が形成された線条体2からなり、図1(B)に示すように、長さ方向に多数の凹凸5、5が形成された熱可塑性樹脂製の長尺体4を一軸延伸して膨部3を有する線条体2とし、得られた線条体2を所定長さに裁断したものである。
【0018】
本発明においては、長尺体4が、図5、図6に示すように、融点の高い熱可塑性樹脂で形成された表層7と、融点の低い熱可塑性樹脂で形成された内層8との複層構造とされるところに特徴を有する。従って、線条体2は、これに対応して、融点の高い熱可塑性樹脂と融点の低い熱可塑性樹脂による複層構造となる。
【0019】
本発明において、融点の高い、融点の低いとは、表層7と内層8との比較において指称される。
【0020】
熱可塑性樹脂補強材1の表層7を形成する熱可塑性樹脂としては、延伸効果の大きい結晶性樹脂が好ましく、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリ塩化ビニリデン等を用いることができる。特に、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィンが好ましい。
【0021】
また、ポリオレフィンとして、セメントとの親和性を改良するために、極性単量体由来の単位を含有する変性ポリオレフィンを使用することができ、変性ポリオレフィンとしては、極性単量体とオレフィンを共重合することによって、あるいは、ポリオレフィンに極性単量体をグラフト重合することによって得ることができる。オレフィンと共重合される極性単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等を用いることができ、ポリオレフィンにラジカル重合する極性単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸及びその無水物、フマル酸、イタコン酸等を用いることができる。
【0022】
グラフト重合は、パーオキサイド等のラジカル発生剤の共存下に、ポリオレフィンと極性単量体を高温で混練することによって、あるいは溶媒に溶解して溶液状態として加熱反応させることによって得ることができる。変性ポリオレフィン中の極性単量体含有量としては0.1〜10重量%程度が望ましく、変性ポリオレフィンの配合量は1〜20重量%の範囲が望ましい。
【0023】
また、内層8を形成する熱可塑性樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリ塩化ビニリデン等を用いることができ、表層7との関係で融点の低い熱可塑性樹脂、好ましく表層7を構成する熱可塑性樹脂の融点より10℃以上、さらに好ましくは20℃以上融点の低い熱可塑性樹脂が使用される。中でも、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、特に、エチレン系重合体が好ましい。
【0024】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂製の長尺体4には、セメントとの親和性を改良するために、無機充填材を添加することができる。無機充填材の種類としては特に制限はなく、一般に、熱可塑性樹脂添加材として自体公知の無機充填材を使用することができ、例えば、タルク、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ガラス繊維、ウオラストナイト、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム等を使用することができる。無機充填材は酸変性ポリオレフィンと共に添加することが望ましい。
【0025】
無機充填材を配合することによって熱可塑性樹脂補強材の表面が粗面化され、また、延伸処理によって微細なクラックが発生してセメントとの親和性が向上する。無機充填材の添加は、表層7に行なわれるのが一般的であるが、同時に内層8に添加することもできる。無機充填材の配合量は、3〜60重量%、好ましくは5〜40重量%程度とされる。
【0026】
本発明において、引張り強度を重視するときは、長尺体4を形成する熱可塑性樹脂への添加に代えて、無機充填材を配合した熱可塑性樹脂で長尺体4を被覆することもでき、また、好ましい方法である。
【0027】
セメント強化用熱可塑性樹脂補強材1を形成する熱可塑性樹脂には、必要に応じて各種の添加材を配合することができ、例えば、フェノール系、有機ホスファイト系、ホスナイトなどの有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アルカリ土類金属塩のカルボン酸塩系等の塩素補足剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤;ヒドラジン系、アミンアシド系等の金属不活性剤;有機顔料;無機顔料等を添加することができる。
【0028】
これら成分は必要に応じて適宜配合され、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンミキサー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、一軸又は二軸の押出機等の混練機を用いて混合あるいは溶融混練された後、熱可塑性樹脂製長尺体4が成形される。
【0029】
本発明において、表層7と内層8の構造としては、図5に示すように、内層8の周囲を表層7で被覆したシースコアー構造とすることができ、また、図6に示すように、内層8の両面に表層7を形成したサンドイッチ構造とすることができる。
【0030】
熱可塑性樹脂製長尺体4は、広幅のシートを成形し、これをスリットすることによって同時に多数の線状体2を得ることができ、また、長尺体4に対応するストランドを成形して得ることもできる。ストランドとするときは、断面が長方形のリボン状とすることができ、また、断面が円形、長円形、三角形状、あるいは、星型等の異型体とすることもできる。
【0031】
複層型の熱可塑性樹脂製長尺体4を成形する手段としては、予め内層8となるシートと表層7となるシートをそれぞれ形成してドライラミネート法や熱ラミネート法を用いて複層化する手段や、内層8となるシートの表面に表層7となる熱可塑性樹脂をコーティングする方法、予め形成した表層7となるシートの間に内層8となる熱可塑性樹脂を押出してサンドイッチラミする方法、あるいは、多層共押出法によって積層シートとして押出成形するなどの公知の手段から適宜選択して用いればよいが、成形の容易さやコスト面、並びに、製品の各層間の接着性の点では、多層共押出法によって内層8と表層7の積層体を一段で得る方法が望ましい。シースコア構造については共押出法によるのが一般的である。
【0032】
熱可塑性樹脂製長尺体4としては、ストランドであるときはそのストランドに、シートであるときはそのシートをスリットした後で、あるいは、スリットする前に、凹凸5、5が長手方向に多数形成される。
【0033】
凹凸5、5は、長尺体4の断面積に変化を与えるもので、厚み方向に凹凸を形成することによって形成することができ、また、幅方向に凹凸を形成することによって形成することができる。
【0034】
厚み方向に凹凸を形成する場合には、図1(B)に示すように、長尺体4を横断する方向に延びる溝を長尺体4の長手方向に所定ピッチをもって多数形成することによって設けることができる。しかし、凹凸5、5は、線条体6の断面積に変化を与えることを目的とすることから、凹凸5、5は長尺体4を完全に横断している必要はなく、長尺体4の中央部に貫通したあるいは貫通していない小孔を穿設したものであってもよい。したがって、本発明においては、このような、小孔についても凹凸5として扱われるものとする。
【0035】
凹凸5、5の形状は特に制限はなく、図1(B)に示すように、断面三角形であってもよく、また、図2(A)に示すように波型とし、さらに、図2(B)に示すように断面方形とすることもできる。さらに、凹凸5、5は熱可塑性樹脂製長尺体4の片面に形成されたものであってもよく、また、図2(C)に示すように、熱可塑性樹脂製長尺体4の両面に形成されたものであってもよい。この場合、熱可塑性樹脂製長尺体4の両面に形成される凹凸5、5は、図2(C)に示すように表裏で対向する位置としてもよく、また、図2(D)に示すように表裏でずれるようにしてもよい。
【0036】
また、長尺体4とされたときの肉厚部aと薄肉部bの割合は、肉厚部a/薄肉部b比で1.1〜20.0、好ましくは1.5〜10.0の範囲が望ましい。
【0037】
熱可塑性樹脂製長尺体4に凹凸5、5を形成する方法としては、図7に示すように、ローレット等の表面に凹凸が形成されたロール11によって、熱可塑性樹脂製長尺体4を押圧することによって行なうことができる。なお、12は金属ロールである。
【0038】
凹凸5、5が形成された熱可塑性樹脂製長尺体4は、必要に応じて細幅にスリットされる。長尺体4の幅は目的に応じて任意に選定し得るが、一般には、0.5〜30mm、好ましくは2.0〜10mm程度とされ、厚さは、最大厚み部で0.2〜5mm、好ましくは0.5〜3mm程度、凹凸5のピッチは0.5〜5mm、好ましくは1.0〜3mm程度とされる。
【0039】
また、長尺体4の幅方向に凹凸5を形成するときは、図3に示すように、切欠は台形状であってもよく、また、図4(A)に示すように、波型とし、さらに、図4(B)に示すように方形とすることもでき、さらに、三角形であってもよい。
【0040】
また、凹凸5、5は、図4(A)、(B)に示すように長尺体4の両側縁に形成されたものであってもよく、また、図4(D)に示すように、長尺体4の片側縁に形成されたものであってもよい。凹凸5、5を長尺体4の両側縁に形成する場合、図4(A)、(B)に示すように、凹凸5、5を両側縁で対向する位置としてもよく、また、図4(C)に示すように左右でずれるようにしてもよい。
【0041】
幅方向に凹凸5を形成する方法としては、図7におけるローレットロールに代えて、目的とする凹凸形状の裁断刃を有する裁断ロールを用いて裁断することができる。
【0042】
幅方向に凹凸5、5が形成された長尺体4の幅は目的に応じて任意に選定し得るが、一般には、最大幅部aで0.5〜30mm、好ましくは2.0〜10mm程度とされ、厚さは、0.2〜5mm、好ましくは1.0〜3mm程度、凹凸5のピッチは0.5〜5mm、好ましくは1.0〜3mm程度とされ、最大幅部aと最小幅部bの割合は、最大幅部a/最小幅部b比で1.1〜10.0、好ましくは1.5〜8.0の範囲が望ましい。
【0043】
得られた長尺体4は延伸操作に付されることによって線状体2とされる。延伸は、熱ロールによる延伸、熱板による延伸、熱風炉による延伸等によって行なうことができる。延伸倍率は、3〜12倍、好ましくは5〜10倍程度が望ましい。
【0044】
本発明においては、融点の高い熱可塑性樹脂からなる表層7の内部が融点の低い熱可塑性樹脂からなる内層8で構成されているから、断面積の大きな部分においても、表層7の延伸温度に加熱する間に内層8は伸長可能な温度に達しており、延伸されないまま残ることはない。従って、延伸むらのない均一な延伸を行なうことができる。
【0045】
なお、本発明線条体2は、表面の親水性化処理を行なうことが望ましい。親水性化処理としては、コロナ放電処理、電子線照射、フレーム処理等を行なうことができ、また、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の界面活性剤、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、γ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、あるいは、チタネート系カップリング剤等を塗布することによって行なうことができる。
【0046】
線条体2は所定長さの短寸に裁断することによって、図1(A)に示すように、長さ方向に間隔を置いて膨部3、3が形成されたセメント強化用熱可塑性樹脂補強材1が形成される。
【0047】
本発明において所定長さとしては、5〜100mm、好ましくは10〜60mmが望ましい。熱可塑性樹脂補強材の長さが5mmより短いときは補強効果が低下し、また、100mmを超えるときはセメントとの混和が難しくなる。なお、セメント強化用熱可塑性樹脂補強材1は、補強材1本に対して、膨部3が2個以上、好ましくは3個以上が存在するように裁断される。
【0048】
本発明熱可塑性樹脂補強材1はセメントと混和されてモルタル、コンクリートとされる。セメントとしては、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント等の水硬性セメント、石膏、石灰等の気硬性セメントを使用することができる。
【0049】
セメントには、レキ、砂利、砕石、スラグ等の粗骨材、川砂、山砂、珪砂、ガラス粉、その他人工細骨材等の細骨材が配合される。また、必要に応じて着色剤、流動性改良剤が添加される。
【0050】
セメント、粗骨材、細骨材、及び、その他添加剤を必要に応じて配合し、熱可塑性樹脂補強材体と水を加えて混練される。熱可塑性樹脂補強材は剛性を有するため分散性がよくファイバーボールが形成されることなく均一にセメント組成物へ分散される。
【0051】
【発明の効果】
本発明熱可塑性樹脂補強材体は、長手方向に間隔を置いて線条体に膨部が形成されているからコンクリートに対する引っ掛かり効果が大きく、また、融点の低い熱可塑性熱可塑性樹脂からなる内層が設けられているから肉厚部についても加熱不足が生じることがなく均一に延伸することができ、耐引き抜き力が大きく補強効果の優れた実用的なセメント強化用熱可塑性樹脂補強材を得ることができる。
【0052】
【実施例】
(実施例1)
高圧法ポリエチレン(日本ポリケム社製)による、厚さ0.5mm、幅2.5mmの内層と、その周囲を0.25mmの厚さに被覆するポリプロピレン(日本ポリケム社製FY−6HA)からなる表層との複層ストランドを共押出し成形し、ローレットロールを用いて幅方向に延びる小溝状の凹凸を形成して図1(B)に示す形状の長尺体を得た。
【0053】
長尺体の幅は3.0mm、最大厚み部厚さ1.0mm、肉厚部a/薄肉部b比が1.7、凹凸のピッチは1.7mm、であった。
【0054】
得られた長尺体を、温度110〜120℃の熱板上で7倍に延伸した後、温度140℃の熱風循環式オーブン内で6%の弛緩熱処理を行なって延伸線状体とし、延伸状態を評価した。その結果、全長に亘って均一に延伸され、抗張力のむらは検出されなかった。
【0055】
(比較例1)
実施例1において、高圧法ポリエチレンの使用を省略し、全体をポリプロピレン(日本ポリケム社製FY−6HA)を使用して実施例1と同様に延伸線状体を形成し、延伸状態を評価した。その結果、延伸むらが発生し低抗張力となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明セメント強化用熱可塑性樹脂補強材を示す斜視図、(B)は長尺体を示す斜視図
【図2】長尺体の例を示す縦断面図
【図3】長尺体の他の例を示す斜視図
【図4】長尺体のさらに他の例を示す平面図
【図5】長尺体の断面構造の例を示す縦断面図
【図6】長尺体の断面構造の他の例を示す縦断面図
【図7】熱可塑性樹脂製長尺体に凹凸を形成する方法を示す説明図
【符号の説明】
1.熱可塑性樹脂補強材
2.線条体
3.膨部
4.長尺体
5.凹凸
7.表層
8.内層
11.ローレットロール
12.金属ロール
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメント強化用熱可塑性樹脂補強材およびセメント成形物に関する。さらに詳しくは、亀裂の発生のないセメント成形物を得るためのセメント強化用熱可塑性樹脂補強材及びそれを用いた強化セメント成形物に関する。
【0002】
【従来の技術】
セメント成形物は、建築、土木等の構築物の構築、スレート板、コンクリートブロック等の建築、土木用資材として広く使用されている。しかし、セメント成形物は圧縮強度が高い反面、ひび割れが生じたり、あるいは、曲げ応力が作用すると折損したり、亀裂が生じる等の問題がある。
【0003】
このため、コンクリート構造物は、鉄筋を配して強度を得る方法が採用されているが、鉄筋は重量物のため、運搬あるいは配筋のために人件費が嵩み大きな問題となっている。これを軽減するためにコンクリートに鋼繊維、ガラス繊維、炭素繊維、熱可塑性樹脂繊維等を配合して補強する方法が開発されている。
【0004】
しかし、鋼繊維は、強度を有しセメントとの親和性も優れているが、比重が高いため分級しやすく、混合、輸送等が難しい問題がある。また、発錆による補強強度の低下の問題があり、また、鋼繊維がコンクリートから突き出して衣類を引っ掛けたり、車のタイヤを磨耗させたりする問題もある。
【0005】
また、ガラス繊維は、セメントのアルカリ性に対する耐久性に問題があり、コンクリートの混合時に折損し易い問題もある。
【0006】
ポリエチレン等の熱可塑性樹脂繊維は、低廉で高強度を有し取扱いも容易であるが、疎水性でセメントとの親和性が低く、セメントとの接着性が低いために、コンクリートに対する耐引き抜き力が弱くなり、そのために補強効果が充分に発揮できないという問題がある。
【0007】
熱可塑性樹脂繊維とセメントとの接着力を高くするためには、熱可塑性樹脂繊維を細くして表面積を大きくすることが有力な手段となるが、熱可塑性樹脂繊維を細くすると飛散し易くなってセメントとの混和作業時において取扱いが難しくなると共に、コンクリートと混和する際に繊維同士が絡み、繊維の塊、すなわちファイバーボールが発生し易く、均一に分散させることが難しくなるという問題がある。
【0008】
このため、熱可塑性樹脂繊維にコンクリートに対して引っ掛かりが生じるように引っ掛かり部を形成することが提案されており、特許文献1には、複数のフィラメントが並列され、一軸延伸されると共に、並列されたフィラメント間を長さ方向に間隔をおいて局部的に熱溶着することによって接合する方法が示されている。しかし、延伸フィラメントを熱溶着する場合には、収縮破断の問題があるため強力な接合はできず、引抜応力等の力が作用すると、接合部が解裂して分離し、引っ掛かり効果が低減するおそれがある。
【0009】
また、熱可塑性樹脂繊維に間隔をおいて膨部を形成することが提案されており、特許文献2には、ポリプロピレンを芯材とし、これをポリエチレンで被覆した樹脂繊維を延伸することによって、繊維に間隔を置いてポリエチレンの膨部を形成することが示されている。同公報には、具体的な製造方法については説明がないため詳細は知り得ないが、目的とする間隔で希望の大きさの膨部を発生させることは、本発明者の知る限りにおいては難しい問題がある。また、ポリプロピレン繊維とポリエチレン間は接着性に問題があり、両者間の剥離によって補強材がコンクリートから抜け出るというおそれがある。
【0010】
熱可塑性樹脂繊維に間隔をおいて膨部を形成したセメント強化用熱可塑性樹脂補強材を得る方法としては、予め凹凸を有する長尺体を形成し、これを延伸する方法が有力な手段となるが、凹凸の形成によって肉厚が不揃いとなった長尺体を延伸すると、肉厚の部分は加熱が遅れるために温度を均一にすることが難しく、肉の厚い部分は加熱不足となって延伸むらが発生する問題がある。
【0011】
このため、製造が容易でコンクリートとの引っ掛かり効果が大きく、コンクリートから抜け出るおそれがなく、また、延伸むらのないセメント強化用熱可塑性樹脂補強材の開発が要請されている。
【0012】
【特許文献1】特開2000−27026号公報
【特許文献2】特開2000−64116号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、製造が容易で、延伸むらがなく優れた抗張力を有し、また、コンクリートに均一に分散し、コンクリートとの引っ掛かり効果がよく、優れた補強効果を示すセメント強化用熱可塑性樹脂補強材及びそれを用いた強化セメント成形物を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる目的を達成するため鋭意検討をした結果なされたもので、具体的には、長手方向に多数の凹凸が形成された熱可塑性樹脂製の長尺体を一軸方向に延伸することによって、長さ方向に間隔を置いて多数の膨部が形成された線条体とし、これを所定長さに裁断してなるセメント強化用熱可塑性樹脂補強材において、長尺体の表層を高融点の熱可塑性樹脂で形成し、内層を表層より低融点の熱可塑性樹脂で形成したことを特徴とするセメント強化用熱可塑性樹脂補強材を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、熱可塑性樹脂製のストランドを周面に多数の凹凸が形成されたロールを用いて押圧することによって、片面又は両面に多数の凹凸が形成された長尺体とし、これを一軸方向に延伸してなる上記のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材、押出し成形された溶融熱可塑性樹脂シートを周面に多数の凹凸が形成されたロールで押圧してシートに幅方向に延びる多数の小溝を形成し、得られたシートを長さ方向にスリットすることによって多数の凹凸が形成された長尺体とし、これを一軸方向に延伸してなる上記のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材、無機充填材を含有した熱可塑性樹脂の長尺体を用いて形成してなる上記のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材、ポリオレフィンからなる熱可塑性樹脂の長尺体を用いて形成してなる上記のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材、及び、極性単量体由来の単位を含有する変性ポリオレフィン、あるいは、変性ポリオレフィンが配合されたポリオレフィンからなる熱可塑性樹脂の長尺体を用いて形成してなる上記のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材を提供するものである。
【0016】
さらに、また、本発明は、セメントと、骨材と、上記のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材とが、水の共存下に混練され賦形されてなることを特徴とする強化セメント成形物を提供するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明セメント強化用熱可塑性樹脂補強材1は、図1(A)に示すように、長さ方向に間隔を置いて多数の膨部3、3が形成された線条体2からなり、図1(B)に示すように、長さ方向に多数の凹凸5、5が形成された熱可塑性樹脂製の長尺体4を一軸延伸して膨部3を有する線条体2とし、得られた線条体2を所定長さに裁断したものである。
【0018】
本発明においては、長尺体4が、図5、図6に示すように、融点の高い熱可塑性樹脂で形成された表層7と、融点の低い熱可塑性樹脂で形成された内層8との複層構造とされるところに特徴を有する。従って、線条体2は、これに対応して、融点の高い熱可塑性樹脂と融点の低い熱可塑性樹脂による複層構造となる。
【0019】
本発明において、融点の高い、融点の低いとは、表層7と内層8との比較において指称される。
【0020】
熱可塑性樹脂補強材1の表層7を形成する熱可塑性樹脂としては、延伸効果の大きい結晶性樹脂が好ましく、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリ塩化ビニリデン等を用いることができる。特に、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィンが好ましい。
【0021】
また、ポリオレフィンとして、セメントとの親和性を改良するために、極性単量体由来の単位を含有する変性ポリオレフィンを使用することができ、変性ポリオレフィンとしては、極性単量体とオレフィンを共重合することによって、あるいは、ポリオレフィンに極性単量体をグラフト重合することによって得ることができる。オレフィンと共重合される極性単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等を用いることができ、ポリオレフィンにラジカル重合する極性単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸及びその無水物、フマル酸、イタコン酸等を用いることができる。
【0022】
グラフト重合は、パーオキサイド等のラジカル発生剤の共存下に、ポリオレフィンと極性単量体を高温で混練することによって、あるいは溶媒に溶解して溶液状態として加熱反応させることによって得ることができる。変性ポリオレフィン中の極性単量体含有量としては0.1〜10重量%程度が望ましく、変性ポリオレフィンの配合量は1〜20重量%の範囲が望ましい。
【0023】
また、内層8を形成する熱可塑性樹脂としては、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体、ポリアミド、ポリアクリルニトリル、ポリ塩化ビニリデン等を用いることができ、表層7との関係で融点の低い熱可塑性樹脂、好ましく表層7を構成する熱可塑性樹脂の融点より10℃以上、さらに好ましくは20℃以上融点の低い熱可塑性樹脂が使用される。中でも、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、特に、エチレン系重合体が好ましい。
【0024】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂製の長尺体4には、セメントとの親和性を改良するために、無機充填材を添加することができる。無機充填材の種類としては特に制限はなく、一般に、熱可塑性樹脂添加材として自体公知の無機充填材を使用することができ、例えば、タルク、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、ガラス繊維、ウオラストナイト、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム等を使用することができる。無機充填材は酸変性ポリオレフィンと共に添加することが望ましい。
【0025】
無機充填材を配合することによって熱可塑性樹脂補強材の表面が粗面化され、また、延伸処理によって微細なクラックが発生してセメントとの親和性が向上する。無機充填材の添加は、表層7に行なわれるのが一般的であるが、同時に内層8に添加することもできる。無機充填材の配合量は、3〜60重量%、好ましくは5〜40重量%程度とされる。
【0026】
本発明において、引張り強度を重視するときは、長尺体4を形成する熱可塑性樹脂への添加に代えて、無機充填材を配合した熱可塑性樹脂で長尺体4を被覆することもでき、また、好ましい方法である。
【0027】
セメント強化用熱可塑性樹脂補強材1を形成する熱可塑性樹脂には、必要に応じて各種の添加材を配合することができ、例えば、フェノール系、有機ホスファイト系、ホスナイトなどの有機リン系、チオエーテル系等の酸化防止剤;ノニオン系、カチオン系、アニオン系等の帯電防止剤;ビスアミド系、ワックス系、有機金属塩系等の分散剤;アルカリ土類金属塩のカルボン酸塩系等の塩素補足剤;アミド系、ワックス系、有機金属塩系、エステル系等の滑剤;ヒドラジン系、アミンアシド系等の金属不活性剤;有機顔料;無機顔料等を添加することができる。
【0028】
これら成分は必要に応じて適宜配合され、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、Vブレンダー、タンブラーミキサー、リボンミキサー、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、一軸又は二軸の押出機等の混練機を用いて混合あるいは溶融混練された後、熱可塑性樹脂製長尺体4が成形される。
【0029】
本発明において、表層7と内層8の構造としては、図5に示すように、内層8の周囲を表層7で被覆したシースコアー構造とすることができ、また、図6に示すように、内層8の両面に表層7を形成したサンドイッチ構造とすることができる。
【0030】
熱可塑性樹脂製長尺体4は、広幅のシートを成形し、これをスリットすることによって同時に多数の線状体2を得ることができ、また、長尺体4に対応するストランドを成形して得ることもできる。ストランドとするときは、断面が長方形のリボン状とすることができ、また、断面が円形、長円形、三角形状、あるいは、星型等の異型体とすることもできる。
【0031】
複層型の熱可塑性樹脂製長尺体4を成形する手段としては、予め内層8となるシートと表層7となるシートをそれぞれ形成してドライラミネート法や熱ラミネート法を用いて複層化する手段や、内層8となるシートの表面に表層7となる熱可塑性樹脂をコーティングする方法、予め形成した表層7となるシートの間に内層8となる熱可塑性樹脂を押出してサンドイッチラミする方法、あるいは、多層共押出法によって積層シートとして押出成形するなどの公知の手段から適宜選択して用いればよいが、成形の容易さやコスト面、並びに、製品の各層間の接着性の点では、多層共押出法によって内層8と表層7の積層体を一段で得る方法が望ましい。シースコア構造については共押出法によるのが一般的である。
【0032】
熱可塑性樹脂製長尺体4としては、ストランドであるときはそのストランドに、シートであるときはそのシートをスリットした後で、あるいは、スリットする前に、凹凸5、5が長手方向に多数形成される。
【0033】
凹凸5、5は、長尺体4の断面積に変化を与えるもので、厚み方向に凹凸を形成することによって形成することができ、また、幅方向に凹凸を形成することによって形成することができる。
【0034】
厚み方向に凹凸を形成する場合には、図1(B)に示すように、長尺体4を横断する方向に延びる溝を長尺体4の長手方向に所定ピッチをもって多数形成することによって設けることができる。しかし、凹凸5、5は、線条体6の断面積に変化を与えることを目的とすることから、凹凸5、5は長尺体4を完全に横断している必要はなく、長尺体4の中央部に貫通したあるいは貫通していない小孔を穿設したものであってもよい。したがって、本発明においては、このような、小孔についても凹凸5として扱われるものとする。
【0035】
凹凸5、5の形状は特に制限はなく、図1(B)に示すように、断面三角形であってもよく、また、図2(A)に示すように波型とし、さらに、図2(B)に示すように断面方形とすることもできる。さらに、凹凸5、5は熱可塑性樹脂製長尺体4の片面に形成されたものであってもよく、また、図2(C)に示すように、熱可塑性樹脂製長尺体4の両面に形成されたものであってもよい。この場合、熱可塑性樹脂製長尺体4の両面に形成される凹凸5、5は、図2(C)に示すように表裏で対向する位置としてもよく、また、図2(D)に示すように表裏でずれるようにしてもよい。
【0036】
また、長尺体4とされたときの肉厚部aと薄肉部bの割合は、肉厚部a/薄肉部b比で1.1〜20.0、好ましくは1.5〜10.0の範囲が望ましい。
【0037】
熱可塑性樹脂製長尺体4に凹凸5、5を形成する方法としては、図7に示すように、ローレット等の表面に凹凸が形成されたロール11によって、熱可塑性樹脂製長尺体4を押圧することによって行なうことができる。なお、12は金属ロールである。
【0038】
凹凸5、5が形成された熱可塑性樹脂製長尺体4は、必要に応じて細幅にスリットされる。長尺体4の幅は目的に応じて任意に選定し得るが、一般には、0.5〜30mm、好ましくは2.0〜10mm程度とされ、厚さは、最大厚み部で0.2〜5mm、好ましくは0.5〜3mm程度、凹凸5のピッチは0.5〜5mm、好ましくは1.0〜3mm程度とされる。
【0039】
また、長尺体4の幅方向に凹凸5を形成するときは、図3に示すように、切欠は台形状であってもよく、また、図4(A)に示すように、波型とし、さらに、図4(B)に示すように方形とすることもでき、さらに、三角形であってもよい。
【0040】
また、凹凸5、5は、図4(A)、(B)に示すように長尺体4の両側縁に形成されたものであってもよく、また、図4(D)に示すように、長尺体4の片側縁に形成されたものであってもよい。凹凸5、5を長尺体4の両側縁に形成する場合、図4(A)、(B)に示すように、凹凸5、5を両側縁で対向する位置としてもよく、また、図4(C)に示すように左右でずれるようにしてもよい。
【0041】
幅方向に凹凸5を形成する方法としては、図7におけるローレットロールに代えて、目的とする凹凸形状の裁断刃を有する裁断ロールを用いて裁断することができる。
【0042】
幅方向に凹凸5、5が形成された長尺体4の幅は目的に応じて任意に選定し得るが、一般には、最大幅部aで0.5〜30mm、好ましくは2.0〜10mm程度とされ、厚さは、0.2〜5mm、好ましくは1.0〜3mm程度、凹凸5のピッチは0.5〜5mm、好ましくは1.0〜3mm程度とされ、最大幅部aと最小幅部bの割合は、最大幅部a/最小幅部b比で1.1〜10.0、好ましくは1.5〜8.0の範囲が望ましい。
【0043】
得られた長尺体4は延伸操作に付されることによって線状体2とされる。延伸は、熱ロールによる延伸、熱板による延伸、熱風炉による延伸等によって行なうことができる。延伸倍率は、3〜12倍、好ましくは5〜10倍程度が望ましい。
【0044】
本発明においては、融点の高い熱可塑性樹脂からなる表層7の内部が融点の低い熱可塑性樹脂からなる内層8で構成されているから、断面積の大きな部分においても、表層7の延伸温度に加熱する間に内層8は伸長可能な温度に達しており、延伸されないまま残ることはない。従って、延伸むらのない均一な延伸を行なうことができる。
【0045】
なお、本発明線条体2は、表面の親水性化処理を行なうことが望ましい。親水性化処理としては、コロナ放電処理、電子線照射、フレーム処理等を行なうことができ、また、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の界面活性剤、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、γ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、あるいは、チタネート系カップリング剤等を塗布することによって行なうことができる。
【0046】
線条体2は所定長さの短寸に裁断することによって、図1(A)に示すように、長さ方向に間隔を置いて膨部3、3が形成されたセメント強化用熱可塑性樹脂補強材1が形成される。
【0047】
本発明において所定長さとしては、5〜100mm、好ましくは10〜60mmが望ましい。熱可塑性樹脂補強材の長さが5mmより短いときは補強効果が低下し、また、100mmを超えるときはセメントとの混和が難しくなる。なお、セメント強化用熱可塑性樹脂補強材1は、補強材1本に対して、膨部3が2個以上、好ましくは3個以上が存在するように裁断される。
【0048】
本発明熱可塑性樹脂補強材1はセメントと混和されてモルタル、コンクリートとされる。セメントとしては、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント等の水硬性セメント、石膏、石灰等の気硬性セメントを使用することができる。
【0049】
セメントには、レキ、砂利、砕石、スラグ等の粗骨材、川砂、山砂、珪砂、ガラス粉、その他人工細骨材等の細骨材が配合される。また、必要に応じて着色剤、流動性改良剤が添加される。
【0050】
セメント、粗骨材、細骨材、及び、その他添加剤を必要に応じて配合し、熱可塑性樹脂補強材体と水を加えて混練される。熱可塑性樹脂補強材は剛性を有するため分散性がよくファイバーボールが形成されることなく均一にセメント組成物へ分散される。
【0051】
【発明の効果】
本発明熱可塑性樹脂補強材体は、長手方向に間隔を置いて線条体に膨部が形成されているからコンクリートに対する引っ掛かり効果が大きく、また、融点の低い熱可塑性熱可塑性樹脂からなる内層が設けられているから肉厚部についても加熱不足が生じることがなく均一に延伸することができ、耐引き抜き力が大きく補強効果の優れた実用的なセメント強化用熱可塑性樹脂補強材を得ることができる。
【0052】
【実施例】
(実施例1)
高圧法ポリエチレン(日本ポリケム社製)による、厚さ0.5mm、幅2.5mmの内層と、その周囲を0.25mmの厚さに被覆するポリプロピレン(日本ポリケム社製FY−6HA)からなる表層との複層ストランドを共押出し成形し、ローレットロールを用いて幅方向に延びる小溝状の凹凸を形成して図1(B)に示す形状の長尺体を得た。
【0053】
長尺体の幅は3.0mm、最大厚み部厚さ1.0mm、肉厚部a/薄肉部b比が1.7、凹凸のピッチは1.7mm、であった。
【0054】
得られた長尺体を、温度110〜120℃の熱板上で7倍に延伸した後、温度140℃の熱風循環式オーブン内で6%の弛緩熱処理を行なって延伸線状体とし、延伸状態を評価した。その結果、全長に亘って均一に延伸され、抗張力のむらは検出されなかった。
【0055】
(比較例1)
実施例1において、高圧法ポリエチレンの使用を省略し、全体をポリプロピレン(日本ポリケム社製FY−6HA)を使用して実施例1と同様に延伸線状体を形成し、延伸状態を評価した。その結果、延伸むらが発生し低抗張力となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は本発明セメント強化用熱可塑性樹脂補強材を示す斜視図、(B)は長尺体を示す斜視図
【図2】長尺体の例を示す縦断面図
【図3】長尺体の他の例を示す斜視図
【図4】長尺体のさらに他の例を示す平面図
【図5】長尺体の断面構造の例を示す縦断面図
【図6】長尺体の断面構造の他の例を示す縦断面図
【図7】熱可塑性樹脂製長尺体に凹凸を形成する方法を示す説明図
【符号の説明】
1.熱可塑性樹脂補強材
2.線条体
3.膨部
4.長尺体
5.凹凸
7.表層
8.内層
11.ローレットロール
12.金属ロール
Claims (7)
- 長手方向に多数の凹凸が形成された熱可塑性樹脂製の長尺体を一軸方向に延伸することによって、長さ方向に間隔を置いて多数の膨部が形成された線条体とし、これを所定長さに裁断してなるセメント強化用熱可塑性樹脂補強材において、長尺体の表層を高融点の熱可塑性樹脂で形成し、内層を表層より低融点の熱可塑性樹脂で形成してなることを特徴とするセメント強化用熱可塑性樹脂補強材。
- 熱可塑性樹脂製のストランドを、周面に多数の凹凸が形成されたロールを用いて押圧することによって、片面又は両面に多数の凹凸が形成された長尺体とし、これを一軸方向に延伸してなる請求項1に記載のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材。
- 押出し成形された溶融熱可塑性樹脂シートを周面に多数の凹凸が形成されたロールで押圧してシートに幅方向に延びる多数の小溝を形成し、得られたシートを長さ方向にスリットすることによって多数の凹凸が形成された長尺体とし、これを一軸方向に延伸してなる請求項1に記載のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材。
- 無機充填材を含有した熱可塑性樹脂の長尺体を用いて形成してなる請求項1〜3のいずれかに記載のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材。
- ポリオレフィンからなる熱可塑性樹脂の長尺体を用いて形成してなる請求項1〜4のいずれかに記載のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材。
- 極性単量体由来の単位を含有する変性ポリオレフィン、あるいは、変性ポリオレフィンが配合されたポリオレフィンからなる熱可塑性樹脂の長尺体を用いて形成してなる請求項1〜5のいずれかに記載のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材。
- セメントと、骨材と、請求項1〜6のいずれかに記載のセメント強化用熱可塑性樹脂補強材とが、水の共存下に混練され賦形されてなることを特徴とする強化セメント成形物。
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JP2014132136A (ja) * | 2013-01-04 | 2014-07-17 | Something:Kk | 地盤投入用袋体、柱状固化杭の形成方法及び柱状固化杭 |
-
2002
- 2002-12-18 JP JP2002366656A patent/JP2004196582A/ja active Pending
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