JP2004193008A - 透明導電薄膜の成膜方法と透明導電薄膜、透明導電性フィルム及びタッチパネル - Google Patents
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Abstract
【課題】基板への密着性に優れ、機械的耐久試験にて膜の物性(電気的物性、光学的物性)の低下や、欠損、剥離等を生じることがない透明導電薄膜を成膜する。この方法により成膜された透明導電薄膜を有する耐久性に優れた透明導電性フィルムと、この透明導電性フィルムを有するタッチパネルを提供する。
【解決手段】基板上に物理的蒸着法により透明導電薄膜を成膜するに当たり、デュアルカソードスパッタリング等により、成膜工程中に、基板及び成膜中の膜に対して、プラズマによるボンバードを施す。ボンバードにより基板への膜の密着力が高められると共に膜が緻密化され、機械的耐久性が向上する。この方法により高分子フィルム4上に透明導電薄膜5が成膜された透明導電性フィルム。この透明導電性フィルムを備えるタッチパネル。
【選択図】 図1
【解決手段】基板上に物理的蒸着法により透明導電薄膜を成膜するに当たり、デュアルカソードスパッタリング等により、成膜工程中に、基板及び成膜中の膜に対して、プラズマによるボンバードを施す。ボンバードにより基板への膜の密着力が高められると共に膜が緻密化され、機械的耐久性が向上する。この方法により高分子フィルム4上に透明導電薄膜5が成膜された透明導電性フィルム。この透明導電性フィルムを備えるタッチパネル。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板への密着性に優れ、機械的耐久試験にて膜の物性(電気的物性、光学的物性)の低下や、欠損、剥離等を生じることがない透明導電薄膜を成膜する方法と、この方法により成膜された透明導電薄膜、この方法により高分子フィルム上に透明導電薄膜を成膜した透明導電性フィルム、及びこの透明導電性フィルムを有するタッチパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
指で押したり、専用ペンで描画すると、その部分が対面電極と接触、通電して信号が入力される抵抗膜式タッチパネルは、小型、軽量、薄型化に有利であることから、各種の家電や携帯端末の入力機器として広く用いられている。
【0003】
抵抗膜式タッチパネルは、図1に示す如く、ガラス板1の上に透明導電薄膜2を形成してなる下部電極3の上に、高分子フィルム4に透明導電薄膜5を形成してなる上部電極6を、透明導電薄膜2,5が対面するようにスペーサ(マイクロドットスペーサ)7を介して積層したものであり、上部電極6の表示面を指やペンで押すと、上部電極6と下部電極3とが接触して通電し信号が入力される。なお、上部電極6の表面には、高分子フィルム4の保護のためにハードコート層8が設けられている。
【0004】
従来において、タッチパネルの透明導電薄膜2,3は、一般にDCスパッタリングにより形成されている。
【0005】
このようなタッチパネルでは、指やペンによる入力に伴って、上部電極6の透明導電薄膜5と下部電極3の透明導電薄膜2とが接触と非接触とを繰り返すこととなるが、透明導電薄膜5,2の形成材料であるITO(インジウム・スズ酸化物)等の透明導電性材料は、耐擦傷性が低いために、透明導電薄膜2,5のうち、特にタッチパネルの入力時に繰り返し変形を受ける上部電極6の透明導電薄膜5には亀裂が入り易く、また、透明導電薄膜2,5同士の接触、非接触で透明導電薄膜5が基材である高分子フィルム4から剥離して脱落し易いという問題があった。
【0006】
上部電極6の透明導電薄膜5が損傷したり、剥離したりすると、透明導電薄膜5面の電気抵抗値が変化し、また、その均一性が失われ、電気特性が損なわれることにより、正確な入力を行うことができなくなり、このことがタッチパネルの信頼性を損ない、損傷、欠陥、耐久性低下の原因となっていた。
【0007】
なお、タッチパネル用途の透明導電性フィルムの耐久性を向上させる目的で、特開平2−194943号公報には、ITO透明導電薄膜を成膜した後、熱処理を施してITOを結晶化させることが記載されているが、透明導電性フィルムの基材が高分子フィルムであるため、この熱処理温度にも限界があり、例えば150℃で24時間というような、比較的低い温度で長い時間での熱処理が必要となり、生産性、コストの面で問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−194943号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の問題点を解決し、基板への密着性に優れ、機械的耐久試験にて膜の物性(電気的物性、光学的物性)の低下や、欠損、剥離等を生じることがない透明導電薄膜を成膜する方法と、この方法により成膜された透明導電薄膜、この方法により高分子フィルム上に透明導電薄膜を成膜した透明導電性フィルム、及びこの透明導電性フィルムを有するタッチパネルを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の透明導電薄膜の成膜方法は、基板上に物理的蒸着法により透明導電薄膜を成膜する方法において、該成膜工程中に、該基板及び成膜中の膜に対して、プラズマによるボンバードを施すことを特徴とする。 本発明では、物理的蒸着(PVD)法により透明導電薄膜を成膜する際に、基板及び成膜中の膜を積極的にプラズマにさらすことで、基板表面及び成膜中の膜をプラズマ中のイオンでボンバードメントする。これにより、基板表面を清浄、活性化することで膜の密着力を高めることができ、しかも成膜中の膜にプラズマ中のイオンが入射することにより膜の緻密化を図ることができ、機械的な耐久性に優れた透明導電薄膜を成膜することが可能となる。
【0011】
本発明において、成膜方法としてはスパッタリングが好ましく、スパッタリング成膜工程においてボンバードを施すには、
▲1▼ 2つのカソードに交互に電圧を印加して成膜するデュアルカソードスパッタリングを行う。
▲2▼ 成膜中に基板に高周波電圧を印加する基板バイアス式プラズマスパッタリングを行う。
▲3▼ スパッタリング装置内のコイル(導体)に高周波電圧を印加するICPプラズマスパッタリングを行う。
方法が挙げられる。
【0012】
本発明の透明導電薄膜材料としては、インジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)、アンチモンドープ・スズ酸化物(ATO)、又はアルミナドープ・亜鉛酸化物(AZO)等が挙げられる。
【0013】
本発明の透明導電薄膜は、このような本発明の方法により成膜されたものであり、基板との密着性、機械的耐久性に優れる。
【0014】
また、本発明の透明導電性フィルムは、高分子フィルム上に、このような本発明の方法により透明導電薄膜を成膜してなるものであり、透明導電薄膜の高分子フィルムに対する密着性、機械的耐久性に優れる。
【0015】
この透明導電性フィルムにおいて、高分子フィルムと透明導電薄膜との間には下地層を設けても良く、これにより透明導電薄膜の高分子フィルムに対する密着性をより一層高めることができる。また、透明導電薄膜上に被覆層を形成しても良く、これにより透明導電薄膜の機械的耐久性をより一層高めることができる。
【0016】
本発明のタッチパネルはこのような透明導電性フィルムを備えるものであり、透明導電薄膜の密着性、機械的耐久性が良好であるために、入力時の摺動耐久性に優れる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
本発明の透明導電薄膜の成膜方法では、基板上にスパッタリング、蒸着、イオンプレーティング等のPVD法により透明導電薄膜を成膜するに当たり、成膜工程中に、基板及び成膜中の膜に対して、プラズマによるボンバードを施す。
【0019】
このボンバードメントの方法としては、特に制限はないが、次の▲1▼〜▲3▼の方法を採用することができ、これらは2種以上を組み合わせて採用しても良い。
▲1▼ 2つのカソードに交互に電圧を印加して成膜するデュアルカソードスパッタリングによりボンバードを施す。
▲2▼ 成膜中に基板に高周波電圧を印加することによりボンバードを施す。
▲3▼ スパッタリング装置内のコイル、アンテナ等の導体に高周波電圧を印加することによりボンバードを施す。
【0020】
これらのうち、▲2▼,▲3▼の方法は、装置が複雑になることや、設置スペースの問題等があり連続生産機には不利な面もある。▲1▼のデュアルカソードは基板搬送も従来のままで良く、また、プラズマを誘導するコイルの設置も不要なために、装置構成が簡易で工業的に有利である。
【0021】
デュアルカソードでは2つのカソード間に交互に電圧を印加(例えば、50kHzの周期で交替)するために、両カソード間をプラズマが移動する。そのため、従来のマグネトロンDCスパッタではターゲット上にプラズマが磁場の効果により閉じ込められているのに対して、デュアルカソードスパッタリングでは系のインピーダンスが低下してプラズマが広がり、基板を積極的にボンバードメントすることができ、これにより、密着性が高く、膜の密度も高い緻密で機械的耐久性に優れた透明導電薄膜を成膜することができる。
【0022】
透明導電薄膜の構成材料としては特に制限はなく、インジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)、アンチモンドープ・スズ酸化物(ATO)、又はアルミナドープ・亜鉛酸化物(AZO)等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。また、透明導電薄膜の膜厚についても透明導電薄膜の用途に応じて適宜決定されるが、通常の場合、10nm〜1μm程度である。
【0023】
透明導電薄膜を形成する基板としては、後述の高分子フィルム、その他高分子板、ガラス板、金属板等が挙げられる。これらの基板には、透明導電薄膜の密着性をより高めるために、成膜に先立ち、コロナ処理や真空中でのプラズマ処理を施しても良く、また、透明導電薄膜の密着性向上を目的とした下地層、例えば、後述の本発明の透明導電性フィルムの下地層を成膜しても良い。
【0024】
なお、スパッタリング条件については特に制限はないが、
雰囲気:Arにごく微量のO2(0.1〜5%)を混入させたガス
圧力 :0.3〜3.0Pa
電力 :2〜8W/cm2
周波数:例えば、デュアルカソードでは50kHzが一例として挙げられる。周波数の可能性は広く、10Hz〜500kHzの範囲とすることができる。また、高周波電源(ICPなどの場合)は一般には13.56MHz
といった条件を採用することが好ましい。
【0025】
本発明の透明導電性フィルムは、基板としての高分子フィルム上に、このような本発明の成膜方法により透明導電薄膜を形成したものである。
【0026】
基板となる高分子フィルムの樹脂材料としては、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート(TAC)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等が挙げられるが、特に強度面でPET、PC、PMMA、TAC、とりわけPET、TACが好ましい。
【0027】
このような高分子フィルムの厚さは、透明導電薄膜の用途等によっても異なるが、タッチパネルの上部電極としての用途には、通常の場合13μm〜0.5mm程度とされる。この高分子フィルムの厚さが13μm未満では、上部電極としての十分な耐久性を得ることができず、0.5mmを超えると得られるタッチパネルの厚肉化を招き、また、上部電極としての柔軟性も損なわれ、好ましくない。
【0028】
高分子フィルム上に形成される透明導電薄膜としては、前述のインジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)、アンチモンドープ・スズ酸化物(ATO)、アルミナドープ・亜鉛酸化物(AZO)等が好ましい。この透明導電薄膜の膜厚が薄過ぎると十分な導電性を得ることができず、過度に厚くても導電性がサチレートしてしまい、成膜コストが高くつき、好ましくない。このため、例えば、タッチパネル用途の場合、透明導電薄膜の膜厚は1〜500nm、特に5〜100nmであることが好ましい。
【0029】
なお、高分子フィルムには、透明導電薄膜の成膜に先立ち下地層を形成して、透明導電薄膜の密着性を高めることが好ましい。この下地層としては、珪素化合物よりなるものが好ましく、具体的な珪素化合物としては、SiCx、SiOx、SiNx、SiCxOy、SiCxNy、SiOxNy又はSiCxOyNzが挙げられる。なお、下地層9は、このような珪素化合物の2種以上を含むものであっても良く、またこれらの珪素化合物の積層膜であっても良い。
【0030】
下地層の膜厚は、過度に薄いと下地層を形成したことによる高分子フィルムと透明導電薄膜との密着性の向上効果及び耐擦傷性の向上効果が十分に得られないが、この下地層の膜厚が過度に厚くても、密着性、耐擦傷性の向上効果に顕著な差異はなく、成膜コストが高くつく上にフィルムの柔軟性が損なわれるため好ましくない。このため、下地層の膜厚は0.5nm〜100μm、特に1nm〜50μmであることが好ましい。
【0031】
このような下地層は、珪素化合物をそのまま、或いは、アルコール、ケトン、トルエン、ヘキサン等の溶剤に溶解した溶液等の液状物として高分子フィルムに塗布して乾燥させることにより形成することもできるが、好ましくは、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理蒸着法、又はCVD等の化学蒸着法、特に好ましくはスパッタリング法で成膜するのが、得られる下地層の緻密性、高分子フィルムに対する接着性に優れ、成膜時のコンタミが少なく、また高速での成膜が可能でその後の透明導電薄膜の成膜を同一の装置内で連続的に行うことができ、成膜効率にも優れる点で望ましい。
【0032】
スパッタリング法によりSiCx、SiOx、SiNx、SiCxOy、SiCxNy、SiOxNy又はSiCxOyNzよりなる下地層を形成する場合、ターゲット材料としては、Si、SiC、SiO、SiO2又はSi3N4を用いることができ、それぞれ反応性ガスの種類、流量を調整することにより、所望の組成の下地層を形成することができる。
【0033】
下地層成膜時のスパッタリング条件には特に制限はなく、真空度0.05〜3Pa、投入電力密度2〜500kW/m2程度で実施することができ、このスパッタリング成膜時の反応性ガス流量及び成膜時間を調整することにより、所望の組成、所望の膜厚の下地層を形成することができる。
【0034】
なお、本発明の透明導電薄膜は、高分子フィルムの透明導電薄膜を成膜する面とは反対側の面にハードコート層を形成しても良い。このハードコート層としては、アクリル層、エポキシ層、ウレタン層、シリコン層等が挙げられ、通常その厚さは1〜50μm程度である。
【0035】
また、本発明の透明導電性フィルムにおいては、高分子フィルムに下地層を成膜するに先立ち、その表面に常法に従ってプラズマ処理を施しても良く、プラズマ処理を施すことにより、高分子フィルムの表面に官能基を付与して高分子フィルムと下地層との接着性を高めると共に、表面のエッチングによるアンカー効果で高分子フィルムに対する下地層の接着強度を高め、より一層剥離防止効果を高めることができる。
【0036】
本発明のタッチパネルは、図1に示す如く、このような透明導電性フィルムを上部電極として備えるものであり、高分子フィルムと透明導電薄膜との密着性が高く、また、透明導電薄膜の機械的耐久性が良好であるため、耐久性、信頼性に優れる。
【0037】
なお、本発明の透明導電性フィルムは、タッチパネルの上部電極としての用途に好適であるが、その他、透明スイッチングデバイス、その他の各種の光学系透明導電性フィルム用途に有効に使用することができる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0039】
なお、以下において、基板としては、片面にUV系硬化型アクリルハードコート層が形成された、厚み188μmのPETフィルムを用いた。
【0040】
実施例1
マグネトロンDCスパッタ装置のシングルカソードにターゲットとしてSiをセットし、デュアルカソードに2つのITOターゲットをセットした。真空チャンバーに上記PETフィルムをセットし、ターボ分子ポンプで5×10−4Paまで排気した。その後、Arガスを160sccm、O2ガスを40sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した後、Siターゲットに4kWの電力を印加し、ハードコートが成膜されている面とは反対側のPET面に約50nm厚みのSiO2薄膜を下地層として成膜した。その後、真空チャンバー内を再度排気した後、Arガスを196sccm、O2ガスを4sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した後、デュアルカソードのそれぞれのITOターゲットに50kHzの周期で交互に4kWの電力を印加してSiO2上に約30nm厚みのITO薄膜を成膜した。
【0041】
得られた透明導電性フィルムについて、表面抵抗測定装置(三菱化学(株)製「ロレスタAP」)により被覆層側の表面抵抗値を測定したところ、400Ω/Sqであった。また、下記方法で摺動筆記試験を行い、結果を表1に示した。
【0042】
<摺動筆記試験>
透明導電性フィルムの透明導電薄膜(被覆層)面側をマイクロドットスペーサ付のITOガラス基板と対向させてこれらを張り合わせ、透明導電性フィルムのハードコート層形成面をポリアセタール樹脂製の入力ペン(先端部0.8R)を用い、250gfの荷重をかけて往復摺動筆記試験を行った。試験後、リニアリティ値の測定を行い、リニアリティ値が1.5%以下のものを良好、1.5%を超えるものを不良とした。
【0043】
リニアリティ値は、透明導電性フィルムの抵抗値の均一性を表す指標であり、リニアリティ値は次のようにして求めることができる。
【0044】
透明導電性フィルムの対向する2辺に銀ペースト等で電極を設け、両電極間に直流電圧を印加する。このときの両電極間の距離をL、印加電圧をVとする。次に、透明導電性フィルム上の任意の点について、マイナス電極からの距離lとその点におけるマイナス電極との電位差vを測定する。
【0045】
リニアリティ値は下記式で算出され、小さいほど抵抗値の均一性が良好であり、0%であれば抵抗値は完全に均一である。一般に、抵抗膜式のアナログタッチパネルでは、このリニアリティ値が1.5%以下であることが好ましい。
リニアリティ(%)=|l/L−v/V|×100
【0046】
比較例1
マグネトロンDCスパッタ装置のシングルカソードにターゲットとしてITOをセットし、真空チャンバーに実施例1で用いたものと同様のPETフィルムをセットし、ターボ分子ポンプで5×10−4Paまで排気した。その後、Arガスを196sccm、O2ガスを4sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した後、ITOターゲットに4kWの電力を印加してハードコート層が成膜されている面とは反対側のPET面に約30nm厚みのITO薄膜を成膜した。
【0047】
この透明導電性フィルムについて、実施例1と同様にして摺動筆記試験を行い、結果を表1に示した。
【0048】
比較例2
マグネトロンDCスパッタ装置のシングルカソードにターゲットとしてそれぞれITOとSiをセットし、真空チャンバーに実施例1で用いたものと同様のPETフィルムをセットし、ターボ分子ポンプで5×10−4Paまで排気した。その後、Arガスを160sccm、O2ガスを40sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した後、Siターゲットに4kWの電力を印加してハードコート層が成膜されている面とは反対側のPET面に約50nm厚みのSiO2薄膜を成膜した。その後、真空チャンバー内を再度排気した後、Arガスを196sccm、O2ガスを4sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した後、ITOターゲットに4kWの電力を印加してSiO2上に約30nm厚みのITO薄膜を成膜した。
【0049】
この透明導電性フィルムについて、実施例1と同様にして摺動筆記試験を行い、結果を表1に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
表1より、本発明によれば、電気特性の劣化の問題がなく、耐久性に優れた透明導電性フィルムが提供されることがわかる。
【0052】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、基板に対する密着性及び機械的耐久性に優れた透明導電薄膜、及び高分子フィルムと透明導電薄膜との密着性及び機械的耐久性に優れ、耐擦傷性、繰り返し変形に対する耐久性に優れた透明導電性フィルムが提供され、このような透明導電性フィルムを用いて高耐久性で信頼性に優れたタッチパネルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的なタッチパネルの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ガラス板
2 透明導電薄膜
3 下部電極
4 高分子フィルム
5 透明導電薄膜
6 上部電極
7 スペーサ
8 ハードコート層
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板への密着性に優れ、機械的耐久試験にて膜の物性(電気的物性、光学的物性)の低下や、欠損、剥離等を生じることがない透明導電薄膜を成膜する方法と、この方法により成膜された透明導電薄膜、この方法により高分子フィルム上に透明導電薄膜を成膜した透明導電性フィルム、及びこの透明導電性フィルムを有するタッチパネルに関する。
【0002】
【従来の技術】
指で押したり、専用ペンで描画すると、その部分が対面電極と接触、通電して信号が入力される抵抗膜式タッチパネルは、小型、軽量、薄型化に有利であることから、各種の家電や携帯端末の入力機器として広く用いられている。
【0003】
抵抗膜式タッチパネルは、図1に示す如く、ガラス板1の上に透明導電薄膜2を形成してなる下部電極3の上に、高分子フィルム4に透明導電薄膜5を形成してなる上部電極6を、透明導電薄膜2,5が対面するようにスペーサ(マイクロドットスペーサ)7を介して積層したものであり、上部電極6の表示面を指やペンで押すと、上部電極6と下部電極3とが接触して通電し信号が入力される。なお、上部電極6の表面には、高分子フィルム4の保護のためにハードコート層8が設けられている。
【0004】
従来において、タッチパネルの透明導電薄膜2,3は、一般にDCスパッタリングにより形成されている。
【0005】
このようなタッチパネルでは、指やペンによる入力に伴って、上部電極6の透明導電薄膜5と下部電極3の透明導電薄膜2とが接触と非接触とを繰り返すこととなるが、透明導電薄膜5,2の形成材料であるITO(インジウム・スズ酸化物)等の透明導電性材料は、耐擦傷性が低いために、透明導電薄膜2,5のうち、特にタッチパネルの入力時に繰り返し変形を受ける上部電極6の透明導電薄膜5には亀裂が入り易く、また、透明導電薄膜2,5同士の接触、非接触で透明導電薄膜5が基材である高分子フィルム4から剥離して脱落し易いという問題があった。
【0006】
上部電極6の透明導電薄膜5が損傷したり、剥離したりすると、透明導電薄膜5面の電気抵抗値が変化し、また、その均一性が失われ、電気特性が損なわれることにより、正確な入力を行うことができなくなり、このことがタッチパネルの信頼性を損ない、損傷、欠陥、耐久性低下の原因となっていた。
【0007】
なお、タッチパネル用途の透明導電性フィルムの耐久性を向上させる目的で、特開平2−194943号公報には、ITO透明導電薄膜を成膜した後、熱処理を施してITOを結晶化させることが記載されているが、透明導電性フィルムの基材が高分子フィルムであるため、この熱処理温度にも限界があり、例えば150℃で24時間というような、比較的低い温度で長い時間での熱処理が必要となり、生産性、コストの面で問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−194943号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の問題点を解決し、基板への密着性に優れ、機械的耐久試験にて膜の物性(電気的物性、光学的物性)の低下や、欠損、剥離等を生じることがない透明導電薄膜を成膜する方法と、この方法により成膜された透明導電薄膜、この方法により高分子フィルム上に透明導電薄膜を成膜した透明導電性フィルム、及びこの透明導電性フィルムを有するタッチパネルを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の透明導電薄膜の成膜方法は、基板上に物理的蒸着法により透明導電薄膜を成膜する方法において、該成膜工程中に、該基板及び成膜中の膜に対して、プラズマによるボンバードを施すことを特徴とする。 本発明では、物理的蒸着(PVD)法により透明導電薄膜を成膜する際に、基板及び成膜中の膜を積極的にプラズマにさらすことで、基板表面及び成膜中の膜をプラズマ中のイオンでボンバードメントする。これにより、基板表面を清浄、活性化することで膜の密着力を高めることができ、しかも成膜中の膜にプラズマ中のイオンが入射することにより膜の緻密化を図ることができ、機械的な耐久性に優れた透明導電薄膜を成膜することが可能となる。
【0011】
本発明において、成膜方法としてはスパッタリングが好ましく、スパッタリング成膜工程においてボンバードを施すには、
▲1▼ 2つのカソードに交互に電圧を印加して成膜するデュアルカソードスパッタリングを行う。
▲2▼ 成膜中に基板に高周波電圧を印加する基板バイアス式プラズマスパッタリングを行う。
▲3▼ スパッタリング装置内のコイル(導体)に高周波電圧を印加するICPプラズマスパッタリングを行う。
方法が挙げられる。
【0012】
本発明の透明導電薄膜材料としては、インジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)、アンチモンドープ・スズ酸化物(ATO)、又はアルミナドープ・亜鉛酸化物(AZO)等が挙げられる。
【0013】
本発明の透明導電薄膜は、このような本発明の方法により成膜されたものであり、基板との密着性、機械的耐久性に優れる。
【0014】
また、本発明の透明導電性フィルムは、高分子フィルム上に、このような本発明の方法により透明導電薄膜を成膜してなるものであり、透明導電薄膜の高分子フィルムに対する密着性、機械的耐久性に優れる。
【0015】
この透明導電性フィルムにおいて、高分子フィルムと透明導電薄膜との間には下地層を設けても良く、これにより透明導電薄膜の高分子フィルムに対する密着性をより一層高めることができる。また、透明導電薄膜上に被覆層を形成しても良く、これにより透明導電薄膜の機械的耐久性をより一層高めることができる。
【0016】
本発明のタッチパネルはこのような透明導電性フィルムを備えるものであり、透明導電薄膜の密着性、機械的耐久性が良好であるために、入力時の摺動耐久性に優れる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
本発明の透明導電薄膜の成膜方法では、基板上にスパッタリング、蒸着、イオンプレーティング等のPVD法により透明導電薄膜を成膜するに当たり、成膜工程中に、基板及び成膜中の膜に対して、プラズマによるボンバードを施す。
【0019】
このボンバードメントの方法としては、特に制限はないが、次の▲1▼〜▲3▼の方法を採用することができ、これらは2種以上を組み合わせて採用しても良い。
▲1▼ 2つのカソードに交互に電圧を印加して成膜するデュアルカソードスパッタリングによりボンバードを施す。
▲2▼ 成膜中に基板に高周波電圧を印加することによりボンバードを施す。
▲3▼ スパッタリング装置内のコイル、アンテナ等の導体に高周波電圧を印加することによりボンバードを施す。
【0020】
これらのうち、▲2▼,▲3▼の方法は、装置が複雑になることや、設置スペースの問題等があり連続生産機には不利な面もある。▲1▼のデュアルカソードは基板搬送も従来のままで良く、また、プラズマを誘導するコイルの設置も不要なために、装置構成が簡易で工業的に有利である。
【0021】
デュアルカソードでは2つのカソード間に交互に電圧を印加(例えば、50kHzの周期で交替)するために、両カソード間をプラズマが移動する。そのため、従来のマグネトロンDCスパッタではターゲット上にプラズマが磁場の効果により閉じ込められているのに対して、デュアルカソードスパッタリングでは系のインピーダンスが低下してプラズマが広がり、基板を積極的にボンバードメントすることができ、これにより、密着性が高く、膜の密度も高い緻密で機械的耐久性に優れた透明導電薄膜を成膜することができる。
【0022】
透明導電薄膜の構成材料としては特に制限はなく、インジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)、アンチモンドープ・スズ酸化物(ATO)、又はアルミナドープ・亜鉛酸化物(AZO)等が挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。また、透明導電薄膜の膜厚についても透明導電薄膜の用途に応じて適宜決定されるが、通常の場合、10nm〜1μm程度である。
【0023】
透明導電薄膜を形成する基板としては、後述の高分子フィルム、その他高分子板、ガラス板、金属板等が挙げられる。これらの基板には、透明導電薄膜の密着性をより高めるために、成膜に先立ち、コロナ処理や真空中でのプラズマ処理を施しても良く、また、透明導電薄膜の密着性向上を目的とした下地層、例えば、後述の本発明の透明導電性フィルムの下地層を成膜しても良い。
【0024】
なお、スパッタリング条件については特に制限はないが、
雰囲気:Arにごく微量のO2(0.1〜5%)を混入させたガス
圧力 :0.3〜3.0Pa
電力 :2〜8W/cm2
周波数:例えば、デュアルカソードでは50kHzが一例として挙げられる。周波数の可能性は広く、10Hz〜500kHzの範囲とすることができる。また、高周波電源(ICPなどの場合)は一般には13.56MHz
といった条件を採用することが好ましい。
【0025】
本発明の透明導電性フィルムは、基板としての高分子フィルム上に、このような本発明の成膜方法により透明導電薄膜を形成したものである。
【0026】
基板となる高分子フィルムの樹脂材料としては、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリル、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、トリアセテート(TAC)、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、金属イオン架橋エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリウレタン、セロファン等が挙げられるが、特に強度面でPET、PC、PMMA、TAC、とりわけPET、TACが好ましい。
【0027】
このような高分子フィルムの厚さは、透明導電薄膜の用途等によっても異なるが、タッチパネルの上部電極としての用途には、通常の場合13μm〜0.5mm程度とされる。この高分子フィルムの厚さが13μm未満では、上部電極としての十分な耐久性を得ることができず、0.5mmを超えると得られるタッチパネルの厚肉化を招き、また、上部電極としての柔軟性も損なわれ、好ましくない。
【0028】
高分子フィルム上に形成される透明導電薄膜としては、前述のインジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)、アンチモンドープ・スズ酸化物(ATO)、アルミナドープ・亜鉛酸化物(AZO)等が好ましい。この透明導電薄膜の膜厚が薄過ぎると十分な導電性を得ることができず、過度に厚くても導電性がサチレートしてしまい、成膜コストが高くつき、好ましくない。このため、例えば、タッチパネル用途の場合、透明導電薄膜の膜厚は1〜500nm、特に5〜100nmであることが好ましい。
【0029】
なお、高分子フィルムには、透明導電薄膜の成膜に先立ち下地層を形成して、透明導電薄膜の密着性を高めることが好ましい。この下地層としては、珪素化合物よりなるものが好ましく、具体的な珪素化合物としては、SiCx、SiOx、SiNx、SiCxOy、SiCxNy、SiOxNy又はSiCxOyNzが挙げられる。なお、下地層9は、このような珪素化合物の2種以上を含むものであっても良く、またこれらの珪素化合物の積層膜であっても良い。
【0030】
下地層の膜厚は、過度に薄いと下地層を形成したことによる高分子フィルムと透明導電薄膜との密着性の向上効果及び耐擦傷性の向上効果が十分に得られないが、この下地層の膜厚が過度に厚くても、密着性、耐擦傷性の向上効果に顕著な差異はなく、成膜コストが高くつく上にフィルムの柔軟性が損なわれるため好ましくない。このため、下地層の膜厚は0.5nm〜100μm、特に1nm〜50μmであることが好ましい。
【0031】
このような下地層は、珪素化合物をそのまま、或いは、アルコール、ケトン、トルエン、ヘキサン等の溶剤に溶解した溶液等の液状物として高分子フィルムに塗布して乾燥させることにより形成することもできるが、好ましくは、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理蒸着法、又はCVD等の化学蒸着法、特に好ましくはスパッタリング法で成膜するのが、得られる下地層の緻密性、高分子フィルムに対する接着性に優れ、成膜時のコンタミが少なく、また高速での成膜が可能でその後の透明導電薄膜の成膜を同一の装置内で連続的に行うことができ、成膜効率にも優れる点で望ましい。
【0032】
スパッタリング法によりSiCx、SiOx、SiNx、SiCxOy、SiCxNy、SiOxNy又はSiCxOyNzよりなる下地層を形成する場合、ターゲット材料としては、Si、SiC、SiO、SiO2又はSi3N4を用いることができ、それぞれ反応性ガスの種類、流量を調整することにより、所望の組成の下地層を形成することができる。
【0033】
下地層成膜時のスパッタリング条件には特に制限はなく、真空度0.05〜3Pa、投入電力密度2〜500kW/m2程度で実施することができ、このスパッタリング成膜時の反応性ガス流量及び成膜時間を調整することにより、所望の組成、所望の膜厚の下地層を形成することができる。
【0034】
なお、本発明の透明導電薄膜は、高分子フィルムの透明導電薄膜を成膜する面とは反対側の面にハードコート層を形成しても良い。このハードコート層としては、アクリル層、エポキシ層、ウレタン層、シリコン層等が挙げられ、通常その厚さは1〜50μm程度である。
【0035】
また、本発明の透明導電性フィルムにおいては、高分子フィルムに下地層を成膜するに先立ち、その表面に常法に従ってプラズマ処理を施しても良く、プラズマ処理を施すことにより、高分子フィルムの表面に官能基を付与して高分子フィルムと下地層との接着性を高めると共に、表面のエッチングによるアンカー効果で高分子フィルムに対する下地層の接着強度を高め、より一層剥離防止効果を高めることができる。
【0036】
本発明のタッチパネルは、図1に示す如く、このような透明導電性フィルムを上部電極として備えるものであり、高分子フィルムと透明導電薄膜との密着性が高く、また、透明導電薄膜の機械的耐久性が良好であるため、耐久性、信頼性に優れる。
【0037】
なお、本発明の透明導電性フィルムは、タッチパネルの上部電極としての用途に好適であるが、その他、透明スイッチングデバイス、その他の各種の光学系透明導電性フィルム用途に有効に使用することができる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0039】
なお、以下において、基板としては、片面にUV系硬化型アクリルハードコート層が形成された、厚み188μmのPETフィルムを用いた。
【0040】
実施例1
マグネトロンDCスパッタ装置のシングルカソードにターゲットとしてSiをセットし、デュアルカソードに2つのITOターゲットをセットした。真空チャンバーに上記PETフィルムをセットし、ターボ分子ポンプで5×10−4Paまで排気した。その後、Arガスを160sccm、O2ガスを40sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した後、Siターゲットに4kWの電力を印加し、ハードコートが成膜されている面とは反対側のPET面に約50nm厚みのSiO2薄膜を下地層として成膜した。その後、真空チャンバー内を再度排気した後、Arガスを196sccm、O2ガスを4sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した後、デュアルカソードのそれぞれのITOターゲットに50kHzの周期で交互に4kWの電力を印加してSiO2上に約30nm厚みのITO薄膜を成膜した。
【0041】
得られた透明導電性フィルムについて、表面抵抗測定装置(三菱化学(株)製「ロレスタAP」)により被覆層側の表面抵抗値を測定したところ、400Ω/Sqであった。また、下記方法で摺動筆記試験を行い、結果を表1に示した。
【0042】
<摺動筆記試験>
透明導電性フィルムの透明導電薄膜(被覆層)面側をマイクロドットスペーサ付のITOガラス基板と対向させてこれらを張り合わせ、透明導電性フィルムのハードコート層形成面をポリアセタール樹脂製の入力ペン(先端部0.8R)を用い、250gfの荷重をかけて往復摺動筆記試験を行った。試験後、リニアリティ値の測定を行い、リニアリティ値が1.5%以下のものを良好、1.5%を超えるものを不良とした。
【0043】
リニアリティ値は、透明導電性フィルムの抵抗値の均一性を表す指標であり、リニアリティ値は次のようにして求めることができる。
【0044】
透明導電性フィルムの対向する2辺に銀ペースト等で電極を設け、両電極間に直流電圧を印加する。このときの両電極間の距離をL、印加電圧をVとする。次に、透明導電性フィルム上の任意の点について、マイナス電極からの距離lとその点におけるマイナス電極との電位差vを測定する。
【0045】
リニアリティ値は下記式で算出され、小さいほど抵抗値の均一性が良好であり、0%であれば抵抗値は完全に均一である。一般に、抵抗膜式のアナログタッチパネルでは、このリニアリティ値が1.5%以下であることが好ましい。
リニアリティ(%)=|l/L−v/V|×100
【0046】
比較例1
マグネトロンDCスパッタ装置のシングルカソードにターゲットとしてITOをセットし、真空チャンバーに実施例1で用いたものと同様のPETフィルムをセットし、ターボ分子ポンプで5×10−4Paまで排気した。その後、Arガスを196sccm、O2ガスを4sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した後、ITOターゲットに4kWの電力を印加してハードコート層が成膜されている面とは反対側のPET面に約30nm厚みのITO薄膜を成膜した。
【0047】
この透明導電性フィルムについて、実施例1と同様にして摺動筆記試験を行い、結果を表1に示した。
【0048】
比較例2
マグネトロンDCスパッタ装置のシングルカソードにターゲットとしてそれぞれITOとSiをセットし、真空チャンバーに実施例1で用いたものと同様のPETフィルムをセットし、ターボ分子ポンプで5×10−4Paまで排気した。その後、Arガスを160sccm、O2ガスを40sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した後、Siターゲットに4kWの電力を印加してハードコート層が成膜されている面とは反対側のPET面に約50nm厚みのSiO2薄膜を成膜した。その後、真空チャンバー内を再度排気した後、Arガスを196sccm、O2ガスを4sccmの流量で混合ガスとして導入し、0.5Paとなるように調整した後、ITOターゲットに4kWの電力を印加してSiO2上に約30nm厚みのITO薄膜を成膜した。
【0049】
この透明導電性フィルムについて、実施例1と同様にして摺動筆記試験を行い、結果を表1に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
表1より、本発明によれば、電気特性の劣化の問題がなく、耐久性に優れた透明導電性フィルムが提供されることがわかる。
【0052】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、基板に対する密着性及び機械的耐久性に優れた透明導電薄膜、及び高分子フィルムと透明導電薄膜との密着性及び機械的耐久性に優れ、耐擦傷性、繰り返し変形に対する耐久性に優れた透明導電性フィルムが提供され、このような透明導電性フィルムを用いて高耐久性で信頼性に優れたタッチパネルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的なタッチパネルの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ガラス板
2 透明導電薄膜
3 下部電極
4 高分子フィルム
5 透明導電薄膜
6 上部電極
7 スペーサ
8 ハードコート層
Claims (11)
- 基板上に物理的蒸着法により透明導電薄膜を成膜する方法において、
該成膜工程中に、該基板及び成膜中の膜に対して、プラズマによるボンバードを施すことを特徴とする透明導電薄膜の成膜方法。 - 請求項1において、該物理的蒸着法がスパッタリングであることを特徴とする透明導電薄膜の成膜方法。
- 請求項2において、2つのカソードに交互に電圧を印加して成膜するデュアルカソードスパッタリングによりボンバードを施すことを特徴とする透明導電薄膜の成膜方法。
- 請求項2において、成膜中に基板に高周波電圧を印加することによりボンバードを施すことを特徴とする透明導電薄膜の成膜方法。
- 請求項2において、スパッタリング装置内の導体に高周波電圧を印加することによりボンバードを施すことを特徴とする透明導電薄膜の成膜方法。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、透明導電薄膜材料がインジウム・スズ酸化物、インジウム・亜鉛酸化物、アンチモンドープ・スズ酸化物、又はアルミナドープ・亜鉛酸化物であることを特徴とする透明導電薄膜の成膜方法。
- 請求項1ないし6のいずれか1項の方法により成膜されたことを特徴とする透明導電薄膜。
- 高分子フィルム上に透明導電薄膜を形成してなる透明導電性フィルムにおいて、該透明導電薄膜が請求項1ないし6のいずれか1項の方法により成膜されたことを特徴とする透明導電性フィルム。
- 請求項8において、該高分子フィルムと透明導電薄膜との間に下地層が設けられていることを特徴とする透明導電性フィルム。
- 請求項8又は9において、該透明導電薄膜の上に被覆層が形成されていることを特徴とする透明導電性フィルム。
- 請求項8ないし10のいずれか1項に記載の透明導電性フィルムを備えることを特徴とするタッチパネル。
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-
2002
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