JP2004191915A - 光コネクタ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】フェルール15の光ファイバ装着孔の先端部側を細径の光ファイバ孔15bで形成して光ファイバの位置決めを行ない、後部側を太径のファイバ挿入孔15cで形成して接着剤17で接着固定する光コネクタである。細径の光ファイバ孔と太径のファイバ被覆挿入孔とは90°以下のテーパ孔で連通され、装着される光ファイバの公称外径をEaとしたとき、光ファイバ孔の孔径DをEa+(0μmを超え1μm以下)とし、細径の光ファイバ孔15bの軸方向長さLを2.0mm以下とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報通信システムの光通信で光ファイバ同士の接続に用いる光コネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インターネットの拡大等で、情報伝送量の増大と伝送の高速化に対応して、光ファイバを用いた通信網の構築が急速に進められている。この光ファイバ通信網の構築において、光コネクタは、光ファイバ同士の接続の切り替えを可能にし、また、予め光ファイバに取付けておくことより、組立て現場での接続作業を容易にする重要な回路要素となるもので、低損失の光コネクタが求められている。
【0003】
光コネクタは、単心コネクタから多心コネクタのものまで、使用形態に対応して各種のものが開発されているが、一般的には、セラミック又は樹脂等で成形されたフェルールを用いて光ファイバの位置決めと固定が行なわれる。フェルールは、ファイバ被覆を除去して露出されたガラスファイバ部を挿入して位置決めを行なう細径の光ファイバ孔と、ファイバ被覆及び外皮部を部分的に収納し接着剤で固定する太径のファイバ挿入孔とを有する。このフェルールは、光コネクタ筐体内に収納されて接続の着脱と係止を行なうように構成されている。
【0004】
図7は従来の光コネクタの一例を説明する図である(例えば、特許文献1参照)。図7(A)は細径の光ファイバ孔を短く形成した例を示す図、図7(B)は細径の光ファイバ孔を長く形成した例を示す図である。図中、1は光ファイバ、2はコア部、2aはモードフィールド径拡大部(MFD拡大部)、3はクラッド部、4はファイバ被覆、5はフェルール、5aはフェルール端面、5bは光ファイバ孔、5cはファイバ挿入孔、6は保持金具、6aは貫通孔、7は接着剤を示す。
【0005】
光ファイバ1は、コア部2とクラッド部3からなり、外周面をファイバ被覆4により保護されている。光ファイバ1の先端部は、熱処理によりコア部2のモードフィールド径(以下、MFDという)が拡大された拡大部2aで形成され、接続時の光軸ずれの許容範囲を広くしている。このMFD拡大部2aを光ファイバ1の接続端側に形成することにより、接続部の軸ずれによる接続損失を低減することができる。また、MFDが異なる光ファイバ同士の接続では、MFDの小さい方の光ファイバのMFDを拡大して、MFDの大きい方に合わせることにより、MFDの差に起因する接続損失の増加を低減することができる。
【0006】
光コネクタは、保持金具6を取付けたフェルール5内に光ファイバ1を装着して構成される。図7(A)に示すフェルール5には、端面5a側に光ファイバ1の先端部を装着する細径の光ファイバ孔5bが形成され、その後方にファイバ被覆4が挿入し得る径の太径のファイバ挿入孔5cが形成されている。細径の光ファイバ孔5bは、光ファイバ外径(通常の光ファイバは125μm)より僅かに(数μm以下)大きな孔径で、その長さはMFD拡大部2aの中央部に至るように形成されている。ファイバ挿入孔5cは、光ファイバ孔5bに連通し、光ファイバ孔5bより数十μm以上大きい孔径になるように設定されている。
【0007】
光ファイバ1は、細径の光ファイバ孔5bで位置決めされ、ファイバ挿入孔5c内に接着剤7を充填して接着固定される。接着剤7は、光ファイバ孔5bと光ファイバ1との間隙、及び、ファイバ挿入孔5cとファイバ被覆4との間隙、並びに保持具6の貫通孔6aとファイバ被覆4との間隙にも浸透して、フェルール5と光ファイバ1とを接着一体化している。
【0008】
上記の図7(A)の構成において、フェルール5内に装着された光ファイバ1は、細径の光ファイバ孔5bの後端から急激に太径のファイバ挿入孔5c内に充填された接着剤7で囲われた状態となる。このため、環境温度の変化により接着剤7が膨張収縮し、光ファイバ1は、光ファイバ孔5bとファイバ挿入孔5cの境部分で不均一な曲げ応力を受け、不規則な曲げによる損失変動を生じる恐れがある。
【0009】
図7(B)は、この点を改善するために、光ファイバ1が装着される細径の光ファイバ孔5bを、MFD拡大部2aを超えて長く形成し、ファイバ被覆4が除去された光ファイバ1の部分を実質的に1μm以下の接着剤で囲まれるように構成している。この結果、MFD拡大部2a及びコア部2が厚い層の接着剤7に曝される部分がなくなり、温度変化による損失変動をなくすことができるとされている。
【0010】
【特許文献1】
特開平4−73609号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上記の図7(A)及び図7(B)の何れの例においても、光ファイバ1はフェルール5の細径の光ファイバ孔5bにより位置決めが行なわれる。このため、光ファイバ孔5bは可能な限り高精度で形成し、光ファイバ1との間の間隙が限りなくゼロになるように形成する必要がある。上記特許文献1において、光ファイバ孔5bは光ファイバ外径より僅かに(数μ以下)大きいとの記載、また図1(B)の例において1μm程度以下の接着剤で光ファイバが囲まれるとの記載はあるものの、具体的には明示されていない。
【0012】
また、図8は上述のMFD拡大部2aの形成例を示す図で、図中の符号は、図7で用いたのと同じ符号を用いることにより説明を省略する。光ファイバ1の接続端部にMFD拡大部2aを形成する場合、図8(A)に示すように光ファイバ1の端部或いは途中部分のファイバ被覆4を除去し、所定範囲のガラスファイバ部分を露出させる。次いで、図8(B)に示すように、所定領域を加熱処理してコア部2に添加されているドーパントをクラッド部3側に熱拡散させでMFD拡大部2aを形成する。この後、MFD拡大部2aの中央で光ファイバ1を切断し、図8(C)に示すような光ファイバ端末とする。この、光ファイバ端末は、図7で説明したようにフェルール5に装着され光コネクタとされる。
【0013】
しかし、MFD拡大部2を形成する際の加熱処理によって、光ファイバ1の端部は、図8(D)に示すように加熱処理されないガラスファイバ外径に対して細る。この細り量は、加熱条件によって多少異なるが、MFDを数μm拡大する場合は大よそ0.5μm〜2.0μm程度である。光ファイバの先端部の径が縮径すると、図7に示すフェルール5に装着したとき、光ファイバ孔5bとのクリアランスが大きくなり、光ファイバ1の軸ずれが大きくなる。光ファイバ1の軸ずれが大きくなると、光コネクタの接続で接続損失が増加し、不良品が増え生産性も悪くなる。
【0014】
また、フェルール5に形成する光ファイバ孔5bが細径になると、孔成形用のピンが細くなり成形時に曲がりやすくなる。また、孔径を高精度で形成する場合、通常、ワイヤを用いて研磨加工で仕上げるが、加工する孔が細径になると、用いるワイヤも細くなり切れやすくなる。このため研磨速度を落とす必要があり、生産性が低下し加工コストが上がる。図7(B)ように、光ファイバ孔5bを長くすると、前記の理由から曲がりのない孔の形成が難しく、また、加工コストも増大するものと思われる。
【0015】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、通常の光ファイバ又は接続端のMFDが加熱処理により拡大された光ファイバを装着した光コネクタで、フェルールでの光ファイバの正確な位置決めを行なうことができ、且つ生産性を高めることが可能な光コネクタを提供することを課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明による光コネクタは、フェルールの光ファイバ装着孔の先端部側を細径の光ファイバ孔で形成して光ファイバの位置決めを行ない、後部側を太径のファイバ挿入孔で形成して接着剤で接着固定する光コネクタである。細径の光ファイバ孔と太径のファイバ挿入孔とは90°以下のテーパ孔で連通され、装着される光ファイバの公称外径をEaとしたとき、光ファイバ孔の孔径DをEa+(0μmを超え1μm以下)とし、細径の光ファイバ孔の軸方向長さLを2.0mm以下とする。
【0017】
また、本発明による他の光コネクタで、装着される光ファイバの先端部のモードフィールド径が拡大されている場合、装着される光ファイバの公称外径をEaとしたとき、光ファイバ孔の孔径DaをEa+(−1μm以上0μm以下)とするか、或いは、光ファイバのモードフィールド径が拡大された先端部外径をEbとしたとき、光ファイバ孔の孔径DaをEb+(0μmを超え1μm以下)とする。また、細径光ファイバ孔の軸方向長さLaを光ファイバのモードフィールド径が拡大された領域Mより短くする。
【0018】
【発明の実施の形態】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1は通常の光ファイバを用いた光コネクタの例を示す図、図2はモードフィールド径(以下、MFDという)を拡大した光ファイバを用いた光コネクタの例を示す図、図3は多心の光コネクタの例を示す図である。図中、11,11’は光ファイバ、12はコア部、12aはモードフィールド径拡大部(MFD拡大部)、13はクラッド部、14はファイバ被覆、15はフェルール、15aはフェルール端面、15bは細径の光ファイバ孔、15cは太径のファイバ挿入孔、15dはテーパ孔、16は保持具、16aは貫通孔、17は接着剤を示す。
【0019】
図1に示す例において、光ファイバ11はコア部12とクラッド部13からなり、外周面をファイバ被覆14により保護されている。光コネクタは、従来技術の項で説明したのと同様に、光ファイバ11をフェルール15内に挿入固定し、フェルール15を保持具16により保持固定して構成される。フェルール15には、端面15a側に光ファイバ1の先端部を装着する細径の光ファイバ孔15bが形成され、その後方に太径のファイバ挿入孔15cが形成される。
【0020】
光ファイバ11は、細径の光ファイバ孔15bで位置決めされ、太径のファイバ挿入孔15c内に接着剤17を充填して接着固定される。接着剤17は、光ファイバ孔15bと光ファイバ1との間隙、及び、ファイバ挿入孔15cとファイバ被覆14との間隙、並びに、保持具16の貫通孔16aとファイバ被覆14との間隙にも浸透してフェルール15と光ファイバ11とを接着一体化する。
【0021】
細径の光ファイバ孔15bと太径のファイバ挿入孔15cとは、テーパ孔15dで連通させ、細径の光ファイバ孔15bの後端から太径のファイバ挿入孔15cとの間で、孔の断面積が急に変化しないようにスムーズな体積変換を行なう。テーパ孔15dのテーパ角θは、90°以下、さらに好ましくは60°以下で形成されているのが望ましい。
【0022】
細径の光ファイバ孔15bと太径のファイバ挿入孔15cをテーパ孔15dで連通させることにより、接着剤17の硬化時に光ファイバ11に応力集中が発生せず、損失増加を抑制することができる。また、環境温度の変化により接着剤17の膨張収縮の影響による、光ファイバ11に加わる応力変化を緩和することもできる。この結果、光ファイバ11に不均一な曲げ応力が作用して不規則な曲げによる損失変動が生じるのを回避することができる。
【0023】
細径の光ファイバ孔15bは、装着される光ファイバ11の外径にほぼ等しい高精度で形成し、光ファイバ11とのクリアランスを可能な限り小さくすることにより、光ファイバ11の正確な位置決めを行なうことができる。光ファイバ11は、クラッド部13の外径が、例えば、公称外径125μmである場合、細径の光ファイバ孔15bの孔径Dは、125μm〜126μmの間で形成するのが好ましい。また、近年は、100μm以下の光ファイバも開発されていることから、装着する光ファイバの公称外径をEaとすると、細径の光ファイバ孔15bの孔径Dは、Ea+(0μmを超え1μm以下)で形成するのが望ましい。なお、ファイバ挿入孔15cの孔径は、細径の光ファイバ孔15bの孔径Dより100μ以上大きくする。光ファイバの公称外径が125μmの場合、通常、ファイバ被覆外径は250μm前後であり、ファイバ挿入孔15cの孔径は300μm位で形成される。
【0024】
光ファイバ孔15bを上述のように細径孔で形成する場合、フェルール孔部の成形に用いる成形ピンが細径となり曲がりやすくなる。また、細径の孔を高精度に仕上げるには、細いワイヤを用いて研磨する必要があるが、研磨する孔が長いとワイヤが切れやすく時間もかかり、生産性が低下し加工コストも高くなる。このため、細径の光ファイバ孔15bは、できるだけ短い軸方向長さで形成されていることが好ましい。光ファイバ孔15bは、光ファイバ11の接続端の位置決めが主たる目的であることから、位置決めに必要な軸方向長さを確保できればよく、その軸方向長さLは2.0mm以下で形成するのが望ましい。
【0025】
図2に示す例においては、光ファイバ11’は、図1と同様にコア部12とクラッド部13からなり、外周面をファイバ被覆14により保護されている。ただ、光ファイバ先端部分は、熱処理によりコア部12のMFDが拡大されたMFD拡大部12aで形成されている。MFDが拡大された拡大部12aは、接続時の光軸ずれの許容範囲が広くなるので、接続損失を小さくでき接続部の歩留まりを高くすることができる。
【0026】
また、光コネクタは図1の例とほぼ同じで、保持金具16を取付けたフェルール15内に光ファイバ11’を装着して構成される。フェルール15には、接続の端面15a側に光ファイバ1の先端部を装着する細径の光ファイバ孔15bが形成され、その後方に光ファイバ11’が楽に挿入し得る太径のファイバ挿入孔15cが形成される。光ファイバ11’は、細径の光ファイバ孔15bで位置決めされ、太径のファイバ挿入孔15c内に接着剤17を充填して接着固定される。
【0027】
接着剤17は、細径の光ファイバ孔15bと光ファイバ1との間隙、及び、太径のファイバ挿入孔孔15cとファイバ被覆14との間隙、並びに、保持金具16の貫通孔16aとファイバ被覆14との間隙にも浸透してフェルール15と光ファイバ11とを接着一体化する。細径の光ファイバ孔15bと太径のファイバ挿入孔15cとは、図1の例と同様に、テーパ孔15dを介して連通させ、細径の光ファイバ孔15bの後端から太径のファイバ挿入孔15cとの間で、孔の断面積が急に変化しないようにスムーズな体積変換を行なう。テーパ孔15dのテーパ角θは、90°以下、さらに好ましくは60°以下で形成されているのが望ましい。
【0028】
通常、MFDを拡大するための熱処理を行なうと、図8でも説明したように、図2(B)のファイバ端部拡大図に示すように、光ファイバ外径(クラッド外径)がEaからEbに変化し、僅かながら細くなる。通常の場合、加熱処理しない時のクラッド外径をEaに対して、MFDを数μm拡大する場合はこれより0.5μm〜2μm程度細った外径Ebとなる。例えば、クラッド外径Eaが125μm、MFDが6.5μmのシングルモード光ファイバを、MFDが10.5μmになるように拡大すると、その拡大領域Mのクラッド外径Ebが123.8μmになる。すなわち、熱処理により1%程度外径が細くなる。なお、MFDの値は、波長1.55μmの値である。
【0029】
したがって、MFD拡大部12aを有する光ファイバ11’を装着する場合は、図1の例に対して、光ファイバ孔15bの孔径Daを多少細くする必要がある。すなわち、MFD拡大部12bを有する光ファイバ11’を装着する場合、光ファイバの公称外径をEaとすると、細径の光ファイバ孔15bの孔径Daは、Ea+(−1μm以上0μm以下)で形成するのが望ましい。また、光ファイバ孔15bの軸方向長さLaは、光ファイバのMFDが拡大された領域Mより短くする。
【0030】
また、MFDを拡大したMFD拡大部12bを有する光ファイバ11’を装着する場合は、光ファイバのMFDが拡大された先端部外径をEbとしたとき、細径の光ファイバ孔15bの孔径Daは、Eb+(0μmを超え1μm以下)で形成するのが望ましい。この場合、光ファイバ外径の細り量は数μmとなるが、その場合においても、細径の光ファイバ孔15bは、装着される光ファイバ11の外径にほぼ等しい高精度で形成し、光ファイバ11とのクリアランスを可能な限り小さくすることにより、光ファイバ11の正確な位置決めを行なうことができる。
【0031】
図3は、図1及び図2の構成を多心の光コネクタに適用した例を示す図である。多心の光コネクタの場合、複数の細径の光ファイバ孔15bは、孔ピッチP及びフェルール15両側に形成されるガイド孔Gに対しても正確に形成されていることが必要であるが、光ファイバ孔15bと光ファイバ11、11’とのクリアランスを小さくすることは特に重要となる。多心の光コネクタにおいては、前記のクリアランスが大きいと、隣接する光ファイバ双方のクリアランスが加算されるため、単心の光コネクタと比べて位置ずれも大きくなる。したがって、図1及び図2の構成を、多心の光コネクタに用いることは極めて有効である。
【0032】
図4は、MFD拡大の加熱処理としてガスバーナを用いる場合の一例を示す図である。図中、18はバーナ本体部、19はガス供給管部、20はガス噴射口を示す。ガスバーナは、矩形状のバーナ本体部18に、複数のガス噴射口20をマトリックス状に設け、ガス供給管部19からプロパンガス等の燃焼ガスを供給するようにして構成される。ガス噴射口20は、0.3mmφ程度の孔径で、孔ピッチが0.7mm〜1.0mm程度で設けられる。このようなガスバーナを用い、光ファイバ11’に対して2.0mm以上離して加熱することにより、加熱領域の細り量をある程度抑制することができる。
【0033】
例えば、波長1.55μmでのMFDが約5μmの高機能光ファイバを、MFDを約10μmに拡大するのに、図4に示すようなガスバーナを用い、光ファイバとの距離を2.8mm開けて加熱処理したところ、細り量(Eb−Ea)は0.8μmであった。加熱条件をあまり制限しないような場合、細り量は、2μm以上となることもある。
【0034】
図5は光ファイバの軸ずれによる接続損失を示す図で、互いに接続されるシングルモード光ファイバ(SMF)のMFDが10.5μmの場合で、横軸に軸ずれ量(μm)をとり、縦軸に接続損失(dB/1ヶ所)を示したものである。この図5によれば、MFDが一致する光ファイバ同士の接続あっても、その接続端部の中心軸が0.5μmずれることにより0.04dB、1.0μmずれることにより0.16dB、1.5μmずれることにより0.35dBの接続損失が生じることとなる。
【0035】
(実施例1)
クラッド外径が80μm、ファイバ被覆外径が165μmの光ファイバで図1に示す単心光コネクタを作製した。フェルール15の光ファイバ孔15bの軸方向長さLを1.0mm、光ファイバ孔15bの孔径Dを80〜81μmの範囲で形成し、テーパ孔15dのテーパ角θを60°、ファイバ挿入孔15cの孔径を300μmで形成した。このときの接続損失は平均0.07dBであった。
【0036】
(実施例2)
実施例1と同じクラッド外径が80μmの光ファイバを、16心、180μmピッチのテープ心線とし、多心光コネクタを作製した。多心用フェルールの光ファイバ孔15bの軸方向長さLを1.0mm、光ファイバ孔15bの孔径Dを80〜81μmの範囲で形成し、テーパ孔15dのテーパ角θを60°とした。このときの接続損失は平均0.12dBであった。
【0037】
(実施例3)
クラッド外径Eaが125μm、ファイバ被覆外径が250μmの光ファイバで、その先端部のMFDを6.5μmから10.3μmに拡大した光ファイバで図2に示す単心光コネクタを作製した。MFD拡大部12aにおけるクラッド外径Ebは123.8μmに縮小され、MFD拡大部12aの範囲Mは1.7mmであった。フェルール15の光ファイバ孔15bの軸方向長さLaを1.5mm、光ファイバ孔15bの孔径Daを124〜125μmの範囲で形成し、テーパ孔15dのテーパ角θを60°、ファイバ挿入孔15cの孔径を300μmで形成した。このときの接続損失は平均0.08dBであった。
【0038】
(実施例4)
実施例3と同じMFD拡大部を有する光ファイバを、8心、250μmピッチのテープ心線とし、多心光コネクタを作製した。多心用フェルールの光ファイバ孔15bの軸方向長さLaを1.5mm、光ファイバ孔15bの孔径Daを124〜125μmの範囲で形成し、テーパ孔15dのテーパ角θを60°で形成した。このときの接続損失は平均0.11dBであった。
【0039】
以上、実施例1〜4を作製して本発明の効果を確認したが、フェルール成形冶具の成形ピンの曲がりはなく、光ファイバ孔の仕上げ研磨も、孔の軸方向長さが短いため効率よく短時間で高精度に行うことができた。また、光コネクタに光ファイバを装着し、接続損失を測定したが、従来構造のもの(クリアランス1μ程度で接続損失は0.2dB位)と比べ1/2程度に軽減することができた。
【0040】
(実施例5)
また、図2で示す構成で、光コネクタ先端部側の細径の光ファイバ孔15bの孔径Daを、MFD拡大の加熱処理を行なった先端部外径Eaに対して、0μmを超え1μm以下の範囲で精度よく形成した。この場合、細り量に関係なく光ファイバ11の軸ずれは最大0.5μmとなり、図5のデータによれば接続損失は最大0.04dBとなる。これについて、20サンプルを作製して測定したところ、平均の接続損失は0.06dBで、標準偏差は0.02dBであった。
【0041】
(比較例1)
MFD拡大の加熱処理を行なった光ファイバ11’を、図1で示す構成の光コネクタに装着したとする。このとき、光コネクタ先端部側の光ファイバ孔の孔径が、光ファイバの公称外径Ea(=非加熱部の外径)+(0μm〜1μm)の範囲で、精度よく形成されているものとする。そして、光ファイバ先端部のMFD拡大の加熱処理による光ファイバの細り量が、0.8μmであったとすると、このときの光ファイバの軸ずれは最大0.9μmとなり、図5のデータから見ると接続損失は最大0.13dBとなる。これについて、20サンプルを作製して測定したところ、平均の接続損失は0.1dBであり、標準偏差は0.03dBであった。なお、光ファイバの細り量が2μmであったとすると、光ファイバの軸ずれは最大1.5μmとなり、接続損失は最大0.35dBとなる。
【0042】
実施例5と比較例1の結果から、光コネクタの細径の光ファイバ孔15bの孔径Daは、光ファイバ11’のMFDが拡大された先端部の外径Ebを基準に、0μmを超え1μm以内の精度で形成されるのが好ましい。ただ、装着される光ファイバ11’のMFD値とその拡大MFD値によって、加熱時間や加熱量が変わるので、光ファイバ11’の細り量も一律ではない。しかし、細り量は、使用するガスバーナや光ファイバ11’の種別とMFD拡大値が設定されれば、ある程度は一様に揃えることが可能である。したがって、光コネクタの製造に際しては、細径の光ファイバ孔15bの孔径を、所定値より多少小さ目に形成しておき、後で所定値に研磨することにより実現することが可能である。
【0043】
また、細径の光ファイバ孔15bの軸方向長さLaは、光ファイバ先端部のMFD拡大領域Mより短くしておく必要がある。というのは、MFD拡大領域Mと細り領域はほぼ一致し、光ファイバ孔15bに光ファイバ先端部が完全に挿入できるようにすることにある。MFD領域Mは、通常、2〜4mm以下であるので、光ファイバ孔15bの軸方向長さLaは、大よそ2mm以下であればよい。この程度の軸方向長さであれば、孔径の研磨も比較的容易で精度も出しやすく、生産性を損ねることなく製造することができる。
【0044】
図6は、フェルールと光ファイバとの間に充填されて接着固定する接着剤の硬化収縮率による波長特性を示すものである。光コネクタに光ファイバ11、11’を装着する場合、接着剤樹脂が硬化収縮する際に、光コネクタ内で応力が生じ残留する。この接着剤樹脂による残留応力は、光コネクタ内で光ファイバ11,11’にマイクロベンドを引き起こし、損失増加の一因となる。したがって接着剤の硬化収縮率は小さいほうが望ましい。
【0045】
図6で示すように、エポキシ系接着剤の樹脂配合を変えて、硬化収縮率が4%と6%の接着剤を用意し、この接着剤を用いて、曲げに対して損失を生じやすい光ファイバ11、11’を図1又は図2に示す構成で光コネクタ内に装着して、その波長特性を測定してみた。硬化収縮率が6%の接着剤は、硬化収縮率が4%の接着剤と比べて、長波長側で損失増加が見られる。この結果、特に顕著性を示すものではないが、接着剤の硬化収縮率は5%以下とするのが望ましい。
【0046】
また、光コネクタは光ファイバ11の引張り荷重に対しての耐性が求められる。例えば、ファイバ被覆外径が0.9mmの光ファイバ心線を光コネクタに装着した場合、ファイバ長手方向に9.8Nのスクーリング荷重がかけられる。MFD拡大の加熱処理を施している場合、その部分での破断強度が劣化しているので、硬化後の接着剤樹脂が軟らかいと、引張り荷重が光コネクタの先端部に及び、MFD拡大部で破断が生じる恐れがある。
【0047】
硬化後のヤング率が490MPaと1470MPaの接着剤樹脂を用いて、図1に示す光コネクタ内にMFD拡大光ファイバ11’を装着した。サンプル数は各20とし、光ファイバ長手方向に荷重をかけ、フェルール15から光ファイバ11が剥離する時の引張り荷重を測定した。この結果、ヤング率が490MPaの接着剤樹脂を用いた場合は、平均値が17.6N、標準偏差が6.2N、最大値27.0N、最小値8.0Nであった。ヤング率が1470MPaの接着剤樹脂を用いた場合は、平均値が26.1N、標準偏差が3.8N、最大値32.9N、最小値は21.4Nであった。この結果、後者は前者に対して平均値で8.5N上昇し、標準偏差が60%程度に減少し、優位性を示しており、接着剤のヤング率を980MPa以上とするのが望ましい。
【0048】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、通常の光ファイバ又は接続端のMFDが加熱処理により拡大された光ファイバを装着した光コネクタで、フェルールでの光ファイバの正確な位置決めを行なうことができ、接続損失の少ない、且つ生産性を高いものを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を説明する図である。
【図2】本発明の他の実施形態を説明する図である。
【図3】本発明による多心の光コネクタの例を説明する図である。
【図4】本発明のMFD拡大の加熱処理に用いるガスバーナの一例を示す図である。
【図5】光ファイバの軸ずれによる接続損失を説明する図である。
【図6】接着剤の硬化収縮率による光ファイバの波長特性を示す図である。
【図7】従来技術を説明する図である。
【図8】従来技術における課題の一部を説明する図である。
【符号の説明】
11…光ファイバ、12…コア部、12a…モードフィールド径拡大部(MFD拡大部)、13…クラッド部、14…ファイバ被覆、15…フェルール、15a…フェルール端面、15b…細径の光ファイバ孔、15c…太径のファイバ挿入孔、15d…テーパ孔、16…保持金具、16a…貫通孔、17…接着剤、18…バーナ本体部、19…ガス供給部、20…ガス供給口。
Claims (6)
- フェルールの光ファイバ装着孔の先端部側を細径の光ファイバ孔で形成して光ファイバの位置決めを行ない、後部側を太径のファイバ挿入孔で形成して接着剤で接着固定する光コネクタであって、
前記細径の光ファイバ孔と前記太径のファイバ挿入孔とはテーパ角が90°以下のテーパ孔で連通され、装着される光ファイバの公称外径をEaとしたとき、前記光ファイバ孔の孔径DがEa+(0μmを超え1μm以下)であり、前記光ファイバ孔の軸方向長さLが2.0mm以下であることを特徴とする光コネクタ。 - フェルールの光ファイバ装着孔の先端部側を細径の光ファイバ孔で形成して光ファイバの位置決めを行ない、後部側を太径のファイバ挿入孔で形成して接着剤で接着固定する光コネクタであって、
前記細径の光ファイバ孔と前記太径のファイバ挿入孔とはテーパ角が90°以下のテーパ孔で連通され、装着される光ファイバの先端部のモードフィールド径が拡大されている場合、前記装着される光ファイバの公称外径をEaとしたとき、前記光ファイバ孔の孔径DaがEa+(−1μm以上0μm以下)であり、前記光ファイバ孔の軸方向長さLaが前記光ファイバのモードフィールド径が拡大された領域Mより短いことを特徴とする光コネクタ。 - フェルールの光ファイバ装着孔の先端部側を細径の光ファイバ孔で形成して光ファイバの位置決めを行ない、後部側を太径のファイバ挿入孔で形成して接着剤で接着固定する光コネクタであって、
前記細径の光ファイバ孔と前記太径のファイバ挿入孔とはテーパ角が90°以下のテーパ孔で連通され、装着される光ファイバの先端部のモードフィールド径が拡大されている場合、前記光ファイバのモードフィールド径が拡大された先端部外径をEbとしたとき、前記光ファイバ孔の孔径DaがEb+(0μmを超え1μm以下)であり、前記光ファイバ孔の軸方向長さLaが前記光ファイバのモードフィールド径が拡大された領域Mより短いことを特徴とする光コネクタ。 - 前記細径の光ファイバ孔が複数形成された多心構造であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光コネクタ。
- 前記太径のファイバ挿入孔に硬化収縮率が5%以下である接着剤を充填したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光コネクタ。
- 前記太径のファイバ挿入孔に硬化後のヤング率が980MPa以上である接着剤を充填したことを特徴とする請求項1〜5に記載の光コネクタ。
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