JP2004189800A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジニアリングプラスチックが本来有する優れた特徴を損なうことなく、その流動性を向上させた、物性バランスに優れる熱可塑性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】エンジニアリングプラスチック樹脂(A)100質量部に、
ポリカーボネート樹脂に非相溶な重合体ブロック(B1)1〜40重量%とポリカーボネート樹脂と相溶性または親和性のある重合体ブロック(B2)60〜99質量%(B1とB2の合計量が100質量%)とがブロックまたはグラフト構造をなし、数平均分子量が3000〜40000である共重合体(B)1〜100質量部を添加してなる熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】エンジニアリングプラスチック樹脂(A)100質量部に、
ポリカーボネート樹脂に非相溶な重合体ブロック(B1)1〜40重量%とポリカーボネート樹脂と相溶性または親和性のある重合体ブロック(B2)60〜99質量%(B1とB2の合計量が100質量%)とがブロックまたはグラフト構造をなし、数平均分子量が3000〜40000である共重合体(B)1〜100質量部を添加してなる熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた流動性を有するエンジニアリングプラスチック系熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジニアリングプラスチック樹脂は、その優れた機械強度、耐熱性、電気特性、寸法安定性などにより、OA機器、情報・通信機器、電気・電子機器、家庭電化機器、自動車分野、建築分野等の様々な分野において幅広く利用されている。しかしながら、例えばPCの場合、成型加工温度が高く、溶融流動性に劣るという問題点を有している。一方、近年においては、それらの成形品が、複写機、ファックス、パソコンなどのOA機器、情報・通信機器、電気・電子機器などのハウジングや部品などの場合には、形状が複雑になること、軽量化、省資源の見地から成形品が薄肉化することなどの理由から、PCの溶融流動性すなわち射出成形性を高める樹脂改質剤および組成物が求められている。
【0003】
PCの溶融流動性の改良にあたっては、PC自体を低分子量化する方法が一般的である。また、添加剤としてはスチレン系樹脂、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリエステルやPC等の低分子量オリゴマーが知られている。
また、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)とのポリマーアロイ組成物(例えば特許文献1参照)、ゴム変性ポリスチレン樹脂(HIPS)等のスチレン系樹脂とのポリマーアロイ組成物(例えば特許文献2参照)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)とのポリマーアロイ組成物(例えば特許文献3参照)、などのスチレン系樹脂をPCに配合したポリマーアロイ化による流動性改良が報告されている。
また、さらなる流動性の改良を目的として、ポリエステルオリゴマーを添加する方法(例えば特許文献4参照)、PCのオリゴマーを添加する方法(例えば特許文献5参照)、低分子量のスチレン系共重合体を添加する方法(例えば特許文献6、7、8、9参照)、ポリオルガノシロキサンセグメントを有する重合体を添加する方法(例えば特許文献10参照)、ポリアルキル(メタ)アクリレートの存在下にスチレンを重合して得られる重合体を添加する方法(例えば特許文献11参照)が知られている。
【特許文献1】特公昭38−15225号公報
【特許文献2】特公昭43−6295号公報
【特許文献3】特公昭43−13384号公報
【特許文献4】特公昭54−21455号公報
【特許文献5】特開平3−24501号公報
【特許文献6】特公昭52−784号公報
【特許文献7】特開平4−332742号公報
【特許文献8】特開平11−181197号公報
【特許文献9】特開2000−178432号公報
【特許文献10】特開平11−35831号公報
【特許文献11】特開2000−239477号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、低分子量体を添加することは流動性を向上させるものの、PCの特徴である優れた耐衝撃性や耐熱性を低下させる要因となる。また、PCに非相溶な重合体を添加すると高い流動性改良効果はもたらすものの、表層剥離(耐剥離性)の問題が生じてくる。さらに、ABS樹脂やHIPS等のスチレン樹脂とのポリマーアロイ組成物を添加して耐熱性や耐衝撃性を維持させているが、近年更なるPCの溶融流動性を高める樹脂改質剤および組成物が求められている。従って、本発明の目的は、高い流動性を有するとともに、耐剥離性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、エンジニアリングプラスチック樹脂(A)100質量部に、ポリカーボネート樹脂に非相溶な重合体ブロック(B1)1〜40重量%とポリカーボネート樹脂と相溶性または親和性のある重合体ブロック(B2)60〜99質量%(B1とB2の合計量が100質量%)とがブロックまたはグラフト構造をなし、数平均分子量が3000〜40000である共重合体(B)1〜100質量部を添加してなる熱可塑性樹脂組成物にある。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、「ポリカーボネート樹脂」(以後PC樹脂と省略する)とは、ビスフェノールAとホスゲンまたはジフェニルカーボネートのような炭酸エステルを反応させて得られるような、ビスフェノールA骨格を有する一般に知られた樹脂である。
本発明の共重合体(B)が有する「PC樹脂に非相溶な重合体ブロック(B1)」とは、重合体ブロック(B1)のみからなる重合体10質量%とPC樹脂(粘度平均分子量17000〜25000のもの)90質量%(併せて100質量%)を二軸押出機により270℃で溶融混練し、射出成形機等によりブレンド体の成形試片を作成した時、表層剥離(層状剥離)が観察されるものをいう。
また、本発明の共重合体(B)が有する「PC樹脂と相溶性または親和性のある重合体ブロック(B2)」とは、同様の方法により、表層剥離(層状剥離)が観察されないものを意味する。
【0007】
耐表層剥離性(耐剥離性)の評価は、得られた成形品の表面にカッターナイフで1mm2 のマス目を100個作り、その部分を粘着テープで充分密着させ、勢いよく剥す方法でテープ剥離試験を行い、評価することができる(碁盤目剥離試験:JIS K−5400)。また、簡易的な方法ではあるが、成形試片の突き出しピン跡にカッターナイフで斜め水平に切り込みを入れることで、より一層厳しい評価を目視で充分に確認することが可能である。
この両評価に合格した重合体を「PC樹脂と相溶性または親和性のある重合体」とし、そのいずれか一方でも不合格なものを「PC樹脂に非相溶な重合体」とする。
【0008】
本発明に有用なPCに非相溶な重合体ブロック(B1)としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルジメチルシロキサン等のポリオルガノシロキサン、ポリエチルアクリレート、ポリn−ブチルアクリレート、ポリ2−エチルヘキシルアクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリステアリルアクリレート等のポリアルキルアクリレート、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等の芳香族ビニル重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂およびそれらを主成分とする共重合体等が挙げられる。これらのうちでは、樹脂自体の溶融粘度が低く、PCに代表されるエンジニアリングプラスチック樹脂の流動性改良効果が大きいポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルジメチルシロキサン等のポリオルガノシロキサンおよびそれらを主成分とする重合体、ポリエチルアクリレート、ポリn−ブチルアクリレート、ポリ2−エチルヘキシルアクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリステアリルアクリレート等のポリアルキルアクリレートおよびそれらを主成分とする重合体がより好ましい。
【0009】
本発明に有用なPCと相溶性または親和性のある重合体ブロック(B2)としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、(メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート)共重合体、(メチルメタクリレート/フェニルメタクリレート)共重合体等の1種または2種以上のアルキル(メタ)アクリレートからなる単独重合体および共重合体、(スチレン/アクリロニトリル)共重合体、(スチレン/メタクリロニトリル)共重合体等の芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物とからなる共重合体、(メチルメタクリレート/スチレン)共重合体、(メチルメタクリレート/アクリロニトリル)共重合体等のアルキルメタクリレートとシアン化ビニル化合物または芳香族アルケニル化合物とからなる共重合体、ポリ−ε−カプロラクトン等の脂肪族ポリエステルおよびPC、またはそれらを主成分とする重合体が挙げられる。
これらのうちでは、PCに代表されるエンジニアリングプラスチックの本来有する優れた特徴(耐熱性、耐衝撃性、難燃性等)が損なわれることなく、その成形加工性(溶融流動性等)の改良にも有効なポリメチルメタクリレート、(メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート)共重合体、(メチルメタクリレート/フェニルメタクリレート)共重合体等の1種または2種以上のアルキル(メタ)アクリレートからなる単独重合体および共重合体、(スチレン/アクリロニトリル)共重合体、(スチレン/メタクリロニトリル)共重合体等の芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物とからなる共重合体、(メチルメタクリレート/スチレン)共重合体、(メチルメタクリレート/アクリロニトリル)共重合体等のアルキルメタクリレートとシアン化ビニル化合物または芳香族アルケニル化合物とからなる共重合体またはそれらを主成分とする重合体がより好ましい。
【0010】
共重合体(B)が含有する重合体ブロック(B1)と重合体ブロック(B2)の割合については、流動性と機械物性のバランスを考慮すると、重合体ブロック(B1)が1〜40質量%、重合体ブロック(B2)が60〜99質量%ある。
重合体ブロック(B1)が1質量%未満であると、充分な流動性向上効果が得らず、40質量%を超えるとエンジニアリングプラスチック樹脂の成形品において、表層剥離が生じ、外観、衝撃強度、あるいは実用上重要なウエルド外観や面衝撃が低下する。
流動性と機械物性のバランスから、共重合体(B)中重合体ブロック(B1)の含有量が3〜40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜40質量%である。
【0011】
本発明に用いる共重合体(B)は、重合体ブロック(B1)および(B2)からなるブロック共重合体またはグラフト共重合体である。
ブロック共重合体は、線状ブロック共重合体および分岐状(星状)ブロック共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種のブロック共重合体である。
線状ブロック共重合体は、B1−B2型のジブロック共重合体、B1−B2−B1型のトリブロック共重合体、B2−B1−B2型のトリブロック共重合体、(−B1−B2−)n型のマルチブロック共重合体である。分岐状(星状)ブロック共重合体は、前記線状ブロック共重合体を基本構造とする分岐状(星状)ブロック共重合体である。これらの中でも、組成物の物理的性質の点から、B1−B2−B1型のトリブロック共重合体、 B1−B2型のジブロック共重合体、または、これらの混合物が好ましい。
また、グラフト共重合体はB1−g−B2型、B2−g−B1型を基本構造とし、B1および/またはB2はそれぞれランダム共重合体やブロック共重合体となっていてもよい。
【0012】
共重合体(B)は、その数平均分子量が3000〜40000のものを用いる。好ましくは5000〜30000である。数平均分子量が3000未満であると流動性は向上するもののブリードアウト等の問題が発生し、また、数平均分子量が40000を超えると流動性が低下する。
共重合体(B)における、質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は特に限定されないが、好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.5以下である。Mw/Mnが1.8を超えると樹脂組成物(C)の均一性が低下する傾向にある。
【0013】
共重合体(B)の製造方法は、特に限定されないが、制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合、連鎖移動剤を用いるラジカル重合および近年開発されたリビングラジカル重合を挙げることができる。これらの内、リビングラジカル重合がブロック共重合体およびグラフト共重合体の分子量および構造の制御の簡便性の点から好ましい。
リビングラジカル重合は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合である。リビング重合とは、狭義においては、末端が常に活性を持ち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。リビングラジカル重合は近年様々なグループで積極的に研究がなされている。
その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの(例えば非特許文献1参照)、コバルトポルフィリン錯体やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合 (Atom Transfar Radical Polymerization:ATRP)などを挙げることができる。本発明において、これらのうちどの方法を使用するかはとくに制約はない。これらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭いMw/Mn=1.1〜1.5程度の重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み比によって自由にコントロールすることができる。
【0014】
原子移動ラジカル重合でB1−B2ジブロック共重合体を合成する場合、例えば、2−ブロモイソ酪酸エチルなどの有機ハロゲン化物を開始剤として、一価の臭化銅を触媒に、2、2’−ビピリジルやその誘導体を配位子として酢酸ブチル等の有機溶媒中50〜120℃でAの重合を行う。B1の転化率がほぼ100%になった時点でB2を添加し重合を行うことでジブロック共重合体を得ることができる。
また、ニトロキサイドを用いた重合でB1−B2ジブロック共重合体を合成する場合、例えば、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジニルオキシラジカルのような安定ラジカルとベンジルパーオキサイドのようなラジカル開始剤を用いて、無溶媒もしくはトルエン等の有機溶媒中80〜150℃でAの重合を行う。B1の転化率がほぼ100%になった時点でB2を添加して重合を行うことでジブロック共重合体を得ることができる。
【0015】
本発明に用いるエンジニアリングプラスチック樹脂(A)としては、従来知られている各種の熱可塑性エンジニアリングプラスチック樹脂であれば特に制限はなく、ポリフェニレンエーテル、PC、シンジオタクチックポリスチレン、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のナイロン系重合体、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等を例示することができ、これらの1種または2種以上を用いることができるが、本発明の流動性改良効果を考慮すると、ポリフェニレンエーテル、PC等が好ましく、PCがより好ましい。
PCとしては、代表的には、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(すなわちビスフェノールA)系PC等の4,4’−ジオキシジアリールアルカン系PCが挙げられる。
エンジニアリングプラスチック樹脂(A)の分子量は、所望に応じて適宜決定すればよく、本発明において特に制限はない。
【0016】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、エンジニアリングプラスチック樹脂(A)に共重合体(B)を添加してなる。樹脂組成物としてエンジニアリングプラスチック樹脂本来の性能(耐熱性、衝撃強度等)を低下させることなく有効な流動性改良効果を得るため、エンジニアリングプラスチック樹脂(A)100質量部を基準として、共重合体(B)の添加量は1〜100質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜15質量部とする。
【0017】
さらに、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、従来知られている各種の添加剤、安定剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤、難燃剤、フルオロオレフィン等を配合してもよい。例えば、成形品の強度、剛性、さらには難燃性を向上させるために、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維などを含有させることができる。さらに、耐薬品性などの改良のためにポリエチレンテレフタレートなどの他の樹脂組成物、耐衝撃性を向上させるためのコアシェル2層構造からなるゴム状弾性体等を配合してもよい。
また、予め共重合体(B)の比率を大きくして、共重合体(B)とエンジニアリングプラスチック樹脂(A)を混合したマスターバッチを調製し、その後このマスターバッチとエンジニアリングプラスチック樹脂(A)とを再度混合し、所望の組成物を得ることもできる。
本発明の樹脂組成物は、上述した各成分を混合することにより得られる。混合の方法としては、従来知られている各種の配合方法および混練方法を用いることができる。例えば、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、2本ロール、ニーダー、ブラベンダー等を使用する方法が挙げられる。
このようにして得られた本発明の樹脂組成物を原料として用い、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、圧縮成形、カレンダー成形などの、従来知られている各種の成形法により成形を行えば、流動性と衝撃強度のバランスに優れた成形品が得られる。
【0018】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば射出成形品とすることで、複写機、ファックス、テレビ、ラジオ、テープレコーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話機、情報端末機、冷蔵庫、電子レンジなどのOA機器、情報・通信機器、家庭電化機器のハウジングや各種部品、さらには自動車部品などの他の分野にも用いられる。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の記載において、「部」および「%」は特に断らない限り「質量部」および「質量%」を意味する。
各種評価方法
(1)数平均分子量(Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて、溶離液クロロホルム、ポリメチルメタクリレート換算で測定した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(TOSOH社製、商品名:HLC−8200GPC、検出器:示差屈折)
カラム:TSKgel SuperHZM−N(内径6.0mm、長さ150mm)2本
カラム槽温度:35℃
移動相:クロロホルム、流量1.0ml/min
標準サンプル:PMMA(Polymer Laboratories社製)(Mn:330000、88000、34500、10300、2990)
試料:濃度 2mg/ml、クロロホルム溶液
試料注入量:100μl
【0020】
(2)共重合体組成
1H−NMR (JEOL社製 EX270)
温度:30℃
溶媒:重クロロホルム
試料濃度:5質量/体積%、試料量0.5ml
(3)溶融流動性
SFL(スパイラルフロー長さ):成形温度280℃、金型温度80℃、肉厚2mm、幅15mm、射出圧力98MPaの条件にて測定、単位cm
(4)表層剥離(耐剥離性)
前述した方法により得られた成形品の突き出しピン跡にカッターで切り込みを入れ、剥理状態を目視観察
○:剥離なく良好
×:表層剥離見られる
【0021】
<参考例1> PAS(アクリロニトリル−スチレンランダム共重合体)−b−PBA(ポリブチルアクリレート)型ジブロック共重合体(B1)の合成
100mLのオートクレーブを窒素置換したのち、塩化銅(I)0.038g、2,2‘−ビピリジル0.178gおよびジメトキシベンゼン20gを量り取った。該オートクレーブを3回アルゴン置換して、スチレン17ml、アクリロニトリル4.2mlを加えた。次いで開始剤1−フェニルエチルクロライド0.053gを加えた。130℃に加熱し、重合を開始した。サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析により転化率を決定した。12時間後、転化率が90%を超したのでブチルアクリレート0.73mlを添加して重合を行った。さらに12時間後、反応混合物をメタノールに注ぎ、沈殿したポリマーを真空乾燥機にて1.3kPaまで圧力を減じて70℃で24時間乾燥させた。得られた重合体(B1)をGPC、NMR解析を行ったところ、Mn=19000、分子量分布=1.19、PCと非相溶な重合体ブロック/PCと相溶性または親和性のある重合体ブロックの比は29/71(質量%)であった。
【0022】
<参考例2> PAS(アクリロニトリル−スチレンランダム共重合体)−b−PBA(ポリブチルアクリレート)型ジブロック共重合体(B2)の合成
BAの量を0.73mlから2.2mlとした以外は実施例1と同様にして重合を行い、重合体(B2)を得た。
得られたブロック共重合体をGPC測定行ったところ、Mn=39000、分子量分布が1.23であった。また1H−NMRによる組成分析を行ったところ、PCと非相溶な重合体ブロック/PCと相溶性または親和性のある重合体ブロックの比は55/45(質量%)であった。
【0023】
<参考例3> PAS(B3)の合成
100mLのガラス製アンプルの重合容器内を窒素置換したのち、塩化銅(I)0.038g、2,2‘−ビピリジル0.178gおよびジメトキシベンゼン20gを量り取った。該アンプルを3回アルゴン置換して、スチレン24ml、アクリロニトリル6.0mlを加えた。次いで開始剤1−フェニルエチルクロライド0.053gを加えた。130℃に加熱し、重合を開始した。24時間後、反応混合物をメタノールに注ぎポリマーを回収した。得られた重合体(B3)をGPC、NMR解析を行ったところ、Mn=19000、分子量分布=1.16、組成比はAN/St=29/71(質量%)であった。
【0024】
(実施例1)
参考例1で得られた重合体(B1)をPC(ユーピロンS−2000F、粘度平均分子量25000、三菱エンジニアリングプラスチック製)と表1の割合でハンドブレンドし、二軸押出機(機種名:TEM−35、東芝機械製)に供給し、280℃で溶融混練し、PC系樹脂組成物を得た。
その評価結果を表1に示す。
【0025】
(比較例1、2)
重合体(B1)に代えて、重合体(B2)又は重合体(B3)を用いた以外は実施例1と同様の方法でPC系樹脂組成物を得た。
その評価結果を表1に示す。
(比較例3)
重合体(B1)に代えて、 AS樹脂(SAN樹脂、商標SR05B、宇部サイコン株式会社製、Mw63000)を表1の割合でブレンドした以外は実施例2と同じ操作を行って、PC系樹脂組成物を得た。その評価結果を表1に示す。(比較例4)
PCを100部として実施例1と同様の方法により評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
本発明のによれば、PCに代表されるエンジニアリングプラスチックが本来有する優れた耐剥離性等の特性を損なうことなく、その成形加工性(溶融流動性等)が改良され、物性バランスに優れたエンジニアリングプラスチック樹脂を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた流動性を有するエンジニアリングプラスチック系熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジニアリングプラスチック樹脂は、その優れた機械強度、耐熱性、電気特性、寸法安定性などにより、OA機器、情報・通信機器、電気・電子機器、家庭電化機器、自動車分野、建築分野等の様々な分野において幅広く利用されている。しかしながら、例えばPCの場合、成型加工温度が高く、溶融流動性に劣るという問題点を有している。一方、近年においては、それらの成形品が、複写機、ファックス、パソコンなどのOA機器、情報・通信機器、電気・電子機器などのハウジングや部品などの場合には、形状が複雑になること、軽量化、省資源の見地から成形品が薄肉化することなどの理由から、PCの溶融流動性すなわち射出成形性を高める樹脂改質剤および組成物が求められている。
【0003】
PCの溶融流動性の改良にあたっては、PC自体を低分子量化する方法が一般的である。また、添加剤としてはスチレン系樹脂、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリエステルやPC等の低分子量オリゴマーが知られている。
また、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)とのポリマーアロイ組成物(例えば特許文献1参照)、ゴム変性ポリスチレン樹脂(HIPS)等のスチレン系樹脂とのポリマーアロイ組成物(例えば特許文献2参照)、アクリロニトリル・スチレン樹脂(AS樹脂)とのポリマーアロイ組成物(例えば特許文献3参照)、などのスチレン系樹脂をPCに配合したポリマーアロイ化による流動性改良が報告されている。
また、さらなる流動性の改良を目的として、ポリエステルオリゴマーを添加する方法(例えば特許文献4参照)、PCのオリゴマーを添加する方法(例えば特許文献5参照)、低分子量のスチレン系共重合体を添加する方法(例えば特許文献6、7、8、9参照)、ポリオルガノシロキサンセグメントを有する重合体を添加する方法(例えば特許文献10参照)、ポリアルキル(メタ)アクリレートの存在下にスチレンを重合して得られる重合体を添加する方法(例えば特許文献11参照)が知られている。
【特許文献1】特公昭38−15225号公報
【特許文献2】特公昭43−6295号公報
【特許文献3】特公昭43−13384号公報
【特許文献4】特公昭54−21455号公報
【特許文献5】特開平3−24501号公報
【特許文献6】特公昭52−784号公報
【特許文献7】特開平4−332742号公報
【特許文献8】特開平11−181197号公報
【特許文献9】特開2000−178432号公報
【特許文献10】特開平11−35831号公報
【特許文献11】特開2000−239477号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、低分子量体を添加することは流動性を向上させるものの、PCの特徴である優れた耐衝撃性や耐熱性を低下させる要因となる。また、PCに非相溶な重合体を添加すると高い流動性改良効果はもたらすものの、表層剥離(耐剥離性)の問題が生じてくる。さらに、ABS樹脂やHIPS等のスチレン樹脂とのポリマーアロイ組成物を添加して耐熱性や耐衝撃性を維持させているが、近年更なるPCの溶融流動性を高める樹脂改質剤および組成物が求められている。従って、本発明の目的は、高い流動性を有するとともに、耐剥離性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、エンジニアリングプラスチック樹脂(A)100質量部に、ポリカーボネート樹脂に非相溶な重合体ブロック(B1)1〜40重量%とポリカーボネート樹脂と相溶性または親和性のある重合体ブロック(B2)60〜99質量%(B1とB2の合計量が100質量%)とがブロックまたはグラフト構造をなし、数平均分子量が3000〜40000である共重合体(B)1〜100質量部を添加してなる熱可塑性樹脂組成物にある。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、「ポリカーボネート樹脂」(以後PC樹脂と省略する)とは、ビスフェノールAとホスゲンまたはジフェニルカーボネートのような炭酸エステルを反応させて得られるような、ビスフェノールA骨格を有する一般に知られた樹脂である。
本発明の共重合体(B)が有する「PC樹脂に非相溶な重合体ブロック(B1)」とは、重合体ブロック(B1)のみからなる重合体10質量%とPC樹脂(粘度平均分子量17000〜25000のもの)90質量%(併せて100質量%)を二軸押出機により270℃で溶融混練し、射出成形機等によりブレンド体の成形試片を作成した時、表層剥離(層状剥離)が観察されるものをいう。
また、本発明の共重合体(B)が有する「PC樹脂と相溶性または親和性のある重合体ブロック(B2)」とは、同様の方法により、表層剥離(層状剥離)が観察されないものを意味する。
【0007】
耐表層剥離性(耐剥離性)の評価は、得られた成形品の表面にカッターナイフで1mm2 のマス目を100個作り、その部分を粘着テープで充分密着させ、勢いよく剥す方法でテープ剥離試験を行い、評価することができる(碁盤目剥離試験:JIS K−5400)。また、簡易的な方法ではあるが、成形試片の突き出しピン跡にカッターナイフで斜め水平に切り込みを入れることで、より一層厳しい評価を目視で充分に確認することが可能である。
この両評価に合格した重合体を「PC樹脂と相溶性または親和性のある重合体」とし、そのいずれか一方でも不合格なものを「PC樹脂に非相溶な重合体」とする。
【0008】
本発明に有用なPCに非相溶な重合体ブロック(B1)としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルジメチルシロキサン等のポリオルガノシロキサン、ポリエチルアクリレート、ポリn−ブチルアクリレート、ポリ2−エチルヘキシルアクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリステアリルアクリレート等のポリアルキルアクリレート、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等の芳香族ビニル重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂およびそれらを主成分とする共重合体等が挙げられる。これらのうちでは、樹脂自体の溶融粘度が低く、PCに代表されるエンジニアリングプラスチック樹脂の流動性改良効果が大きいポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルジメチルシロキサン等のポリオルガノシロキサンおよびそれらを主成分とする重合体、ポリエチルアクリレート、ポリn−ブチルアクリレート、ポリ2−エチルヘキシルアクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリステアリルアクリレート等のポリアルキルアクリレートおよびそれらを主成分とする重合体がより好ましい。
【0009】
本発明に有用なPCと相溶性または親和性のある重合体ブロック(B2)としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、(メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート)共重合体、(メチルメタクリレート/フェニルメタクリレート)共重合体等の1種または2種以上のアルキル(メタ)アクリレートからなる単独重合体および共重合体、(スチレン/アクリロニトリル)共重合体、(スチレン/メタクリロニトリル)共重合体等の芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物とからなる共重合体、(メチルメタクリレート/スチレン)共重合体、(メチルメタクリレート/アクリロニトリル)共重合体等のアルキルメタクリレートとシアン化ビニル化合物または芳香族アルケニル化合物とからなる共重合体、ポリ−ε−カプロラクトン等の脂肪族ポリエステルおよびPC、またはそれらを主成分とする重合体が挙げられる。
これらのうちでは、PCに代表されるエンジニアリングプラスチックの本来有する優れた特徴(耐熱性、耐衝撃性、難燃性等)が損なわれることなく、その成形加工性(溶融流動性等)の改良にも有効なポリメチルメタクリレート、(メチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート)共重合体、(メチルメタクリレート/フェニルメタクリレート)共重合体等の1種または2種以上のアルキル(メタ)アクリレートからなる単独重合体および共重合体、(スチレン/アクリロニトリル)共重合体、(スチレン/メタクリロニトリル)共重合体等の芳香族アルケニル化合物とシアン化ビニル化合物とからなる共重合体、(メチルメタクリレート/スチレン)共重合体、(メチルメタクリレート/アクリロニトリル)共重合体等のアルキルメタクリレートとシアン化ビニル化合物または芳香族アルケニル化合物とからなる共重合体またはそれらを主成分とする重合体がより好ましい。
【0010】
共重合体(B)が含有する重合体ブロック(B1)と重合体ブロック(B2)の割合については、流動性と機械物性のバランスを考慮すると、重合体ブロック(B1)が1〜40質量%、重合体ブロック(B2)が60〜99質量%ある。
重合体ブロック(B1)が1質量%未満であると、充分な流動性向上効果が得らず、40質量%を超えるとエンジニアリングプラスチック樹脂の成形品において、表層剥離が生じ、外観、衝撃強度、あるいは実用上重要なウエルド外観や面衝撃が低下する。
流動性と機械物性のバランスから、共重合体(B)中重合体ブロック(B1)の含有量が3〜40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは10〜40質量%である。
【0011】
本発明に用いる共重合体(B)は、重合体ブロック(B1)および(B2)からなるブロック共重合体またはグラフト共重合体である。
ブロック共重合体は、線状ブロック共重合体および分岐状(星状)ブロック共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種のブロック共重合体である。
線状ブロック共重合体は、B1−B2型のジブロック共重合体、B1−B2−B1型のトリブロック共重合体、B2−B1−B2型のトリブロック共重合体、(−B1−B2−)n型のマルチブロック共重合体である。分岐状(星状)ブロック共重合体は、前記線状ブロック共重合体を基本構造とする分岐状(星状)ブロック共重合体である。これらの中でも、組成物の物理的性質の点から、B1−B2−B1型のトリブロック共重合体、 B1−B2型のジブロック共重合体、または、これらの混合物が好ましい。
また、グラフト共重合体はB1−g−B2型、B2−g−B1型を基本構造とし、B1および/またはB2はそれぞれランダム共重合体やブロック共重合体となっていてもよい。
【0012】
共重合体(B)は、その数平均分子量が3000〜40000のものを用いる。好ましくは5000〜30000である。数平均分子量が3000未満であると流動性は向上するもののブリードアウト等の問題が発生し、また、数平均分子量が40000を超えると流動性が低下する。
共重合体(B)における、質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は特に限定されないが、好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.5以下である。Mw/Mnが1.8を超えると樹脂組成物(C)の均一性が低下する傾向にある。
【0013】
共重合体(B)の製造方法は、特に限定されないが、制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合、連鎖移動剤を用いるラジカル重合および近年開発されたリビングラジカル重合を挙げることができる。これらの内、リビングラジカル重合がブロック共重合体およびグラフト共重合体の分子量および構造の制御の簡便性の点から好ましい。
リビングラジカル重合は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合である。リビング重合とは、狭義においては、末端が常に活性を持ち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。リビングラジカル重合は近年様々なグループで積極的に研究がなされている。
その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの(例えば非特許文献1参照)、コバルトポルフィリン錯体やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合 (Atom Transfar Radical Polymerization:ATRP)などを挙げることができる。本発明において、これらのうちどの方法を使用するかはとくに制約はない。これらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭いMw/Mn=1.1〜1.5程度の重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み比によって自由にコントロールすることができる。
【0014】
原子移動ラジカル重合でB1−B2ジブロック共重合体を合成する場合、例えば、2−ブロモイソ酪酸エチルなどの有機ハロゲン化物を開始剤として、一価の臭化銅を触媒に、2、2’−ビピリジルやその誘導体を配位子として酢酸ブチル等の有機溶媒中50〜120℃でAの重合を行う。B1の転化率がほぼ100%になった時点でB2を添加し重合を行うことでジブロック共重合体を得ることができる。
また、ニトロキサイドを用いた重合でB1−B2ジブロック共重合体を合成する場合、例えば、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジニルオキシラジカルのような安定ラジカルとベンジルパーオキサイドのようなラジカル開始剤を用いて、無溶媒もしくはトルエン等の有機溶媒中80〜150℃でAの重合を行う。B1の転化率がほぼ100%になった時点でB2を添加して重合を行うことでジブロック共重合体を得ることができる。
【0015】
本発明に用いるエンジニアリングプラスチック樹脂(A)としては、従来知られている各種の熱可塑性エンジニアリングプラスチック樹脂であれば特に制限はなく、ポリフェニレンエーテル、PC、シンジオタクチックポリスチレン、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のナイロン系重合体、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等を例示することができ、これらの1種または2種以上を用いることができるが、本発明の流動性改良効果を考慮すると、ポリフェニレンエーテル、PC等が好ましく、PCがより好ましい。
PCとしては、代表的には、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン(すなわちビスフェノールA)系PC等の4,4’−ジオキシジアリールアルカン系PCが挙げられる。
エンジニアリングプラスチック樹脂(A)の分子量は、所望に応じて適宜決定すればよく、本発明において特に制限はない。
【0016】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、エンジニアリングプラスチック樹脂(A)に共重合体(B)を添加してなる。樹脂組成物としてエンジニアリングプラスチック樹脂本来の性能(耐熱性、衝撃強度等)を低下させることなく有効な流動性改良効果を得るため、エンジニアリングプラスチック樹脂(A)100質量部を基準として、共重合体(B)の添加量は1〜100質量部、好ましくは2〜30質量部、さらに好ましくは3〜15質量部とする。
【0017】
さらに、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、従来知られている各種の添加剤、安定剤、強化剤、無機フィラー、耐衝撃性改質剤、難燃剤、フルオロオレフィン等を配合してもよい。例えば、成形品の強度、剛性、さらには難燃性を向上させるために、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維などを含有させることができる。さらに、耐薬品性などの改良のためにポリエチレンテレフタレートなどの他の樹脂組成物、耐衝撃性を向上させるためのコアシェル2層構造からなるゴム状弾性体等を配合してもよい。
また、予め共重合体(B)の比率を大きくして、共重合体(B)とエンジニアリングプラスチック樹脂(A)を混合したマスターバッチを調製し、その後このマスターバッチとエンジニアリングプラスチック樹脂(A)とを再度混合し、所望の組成物を得ることもできる。
本発明の樹脂組成物は、上述した各成分を混合することにより得られる。混合の方法としては、従来知られている各種の配合方法および混練方法を用いることができる。例えば、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、2本ロール、ニーダー、ブラベンダー等を使用する方法が挙げられる。
このようにして得られた本発明の樹脂組成物を原料として用い、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、圧縮成形、カレンダー成形などの、従来知られている各種の成形法により成形を行えば、流動性と衝撃強度のバランスに優れた成形品が得られる。
【0018】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば射出成形品とすることで、複写機、ファックス、テレビ、ラジオ、テープレコーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話機、情報端末機、冷蔵庫、電子レンジなどのOA機器、情報・通信機器、家庭電化機器のハウジングや各種部品、さらには自動車部品などの他の分野にも用いられる。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の記載において、「部」および「%」は特に断らない限り「質量部」および「質量%」を意味する。
各種評価方法
(1)数平均分子量(Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて、溶離液クロロホルム、ポリメチルメタクリレート換算で測定した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(TOSOH社製、商品名:HLC−8200GPC、検出器:示差屈折)
カラム:TSKgel SuperHZM−N(内径6.0mm、長さ150mm)2本
カラム槽温度:35℃
移動相:クロロホルム、流量1.0ml/min
標準サンプル:PMMA(Polymer Laboratories社製)(Mn:330000、88000、34500、10300、2990)
試料:濃度 2mg/ml、クロロホルム溶液
試料注入量:100μl
【0020】
(2)共重合体組成
1H−NMR (JEOL社製 EX270)
温度:30℃
溶媒:重クロロホルム
試料濃度:5質量/体積%、試料量0.5ml
(3)溶融流動性
SFL(スパイラルフロー長さ):成形温度280℃、金型温度80℃、肉厚2mm、幅15mm、射出圧力98MPaの条件にて測定、単位cm
(4)表層剥離(耐剥離性)
前述した方法により得られた成形品の突き出しピン跡にカッターで切り込みを入れ、剥理状態を目視観察
○:剥離なく良好
×:表層剥離見られる
【0021】
<参考例1> PAS(アクリロニトリル−スチレンランダム共重合体)−b−PBA(ポリブチルアクリレート)型ジブロック共重合体(B1)の合成
100mLのオートクレーブを窒素置換したのち、塩化銅(I)0.038g、2,2‘−ビピリジル0.178gおよびジメトキシベンゼン20gを量り取った。該オートクレーブを3回アルゴン置換して、スチレン17ml、アクリロニトリル4.2mlを加えた。次いで開始剤1−フェニルエチルクロライド0.053gを加えた。130℃に加熱し、重合を開始した。サンプリング溶液のガスクロマトグラム分析により転化率を決定した。12時間後、転化率が90%を超したのでブチルアクリレート0.73mlを添加して重合を行った。さらに12時間後、反応混合物をメタノールに注ぎ、沈殿したポリマーを真空乾燥機にて1.3kPaまで圧力を減じて70℃で24時間乾燥させた。得られた重合体(B1)をGPC、NMR解析を行ったところ、Mn=19000、分子量分布=1.19、PCと非相溶な重合体ブロック/PCと相溶性または親和性のある重合体ブロックの比は29/71(質量%)であった。
【0022】
<参考例2> PAS(アクリロニトリル−スチレンランダム共重合体)−b−PBA(ポリブチルアクリレート)型ジブロック共重合体(B2)の合成
BAの量を0.73mlから2.2mlとした以外は実施例1と同様にして重合を行い、重合体(B2)を得た。
得られたブロック共重合体をGPC測定行ったところ、Mn=39000、分子量分布が1.23であった。また1H−NMRによる組成分析を行ったところ、PCと非相溶な重合体ブロック/PCと相溶性または親和性のある重合体ブロックの比は55/45(質量%)であった。
【0023】
<参考例3> PAS(B3)の合成
100mLのガラス製アンプルの重合容器内を窒素置換したのち、塩化銅(I)0.038g、2,2‘−ビピリジル0.178gおよびジメトキシベンゼン20gを量り取った。該アンプルを3回アルゴン置換して、スチレン24ml、アクリロニトリル6.0mlを加えた。次いで開始剤1−フェニルエチルクロライド0.053gを加えた。130℃に加熱し、重合を開始した。24時間後、反応混合物をメタノールに注ぎポリマーを回収した。得られた重合体(B3)をGPC、NMR解析を行ったところ、Mn=19000、分子量分布=1.16、組成比はAN/St=29/71(質量%)であった。
【0024】
(実施例1)
参考例1で得られた重合体(B1)をPC(ユーピロンS−2000F、粘度平均分子量25000、三菱エンジニアリングプラスチック製)と表1の割合でハンドブレンドし、二軸押出機(機種名:TEM−35、東芝機械製)に供給し、280℃で溶融混練し、PC系樹脂組成物を得た。
その評価結果を表1に示す。
【0025】
(比較例1、2)
重合体(B1)に代えて、重合体(B2)又は重合体(B3)を用いた以外は実施例1と同様の方法でPC系樹脂組成物を得た。
その評価結果を表1に示す。
(比較例3)
重合体(B1)に代えて、 AS樹脂(SAN樹脂、商標SR05B、宇部サイコン株式会社製、Mw63000)を表1の割合でブレンドした以外は実施例2と同じ操作を行って、PC系樹脂組成物を得た。その評価結果を表1に示す。(比較例4)
PCを100部として実施例1と同様の方法により評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
本発明のによれば、PCに代表されるエンジニアリングプラスチックが本来有する優れた耐剥離性等の特性を損なうことなく、その成形加工性(溶融流動性等)が改良され、物性バランスに優れたエンジニアリングプラスチック樹脂を提供することができる。
Claims (6)
- エンジニアリングプラスチック樹脂(A)100質量部に、ポリカーボネート樹脂に非相溶な重合体ブロック(B1)1〜40重量%とポリカーボネート樹脂と相溶性または親和性のある重合体ブロック(B2)60〜99質量%(B1とB2の合計量が100質量%)とがブロックまたはグラフト構造をなし、数平均分子量が3000〜40000である共重合体(B)1〜100質量部を添加してなる熱可塑性樹脂組成物。
- 重合体ブロック(B1)が、構成単位として1種または2種以上のアルキル(メタ)アクリレート単量体単位を有することを特徴とする請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 重合体ブロック(B2)が、構成単位として芳香族アルケニル単量体単位とシアン化ビニル単量体単位とを有する重合体ブロック(B2−1)であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 重合体ブロック(B2)が、構成単位としてアルキル(メタ)アクリレート単量体単位と、シアン化ビニル単量体単位または芳香族アルケニル単量体単位とを有する重合体ブロック(B2−2)であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 共重合体(B)が、リビングラジカル重合により製造されたものであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の熱可塑性樹脂組成物。
- エンジニアリングプラスチック樹脂(A)がポリカーボネート樹脂を主成分とする樹脂であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の熱可塑性樹脂組成物。
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