JP2004189783A - 発光材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】濃度消光が発現しない発光物質を発見することである。
【解決手段】少なくとも1種類の希土類元素、少なくとも1種類の遷移元素及び少なくとも1種類以上のカルコゲン元素(酸素を含む)から構成される発光材料について、発光物質としての特性を調査した結果、Tb2(MoO4) 3 、Eu2(MoO4) 3 、Nd2(MoO4) 3 、Nd2(WO4) 3 、Er2(MoO4) 3 又はEr2(WO4) 3は、濃度消光が発現しない発光物質である事実を発見し、非常に高効率の発光物質であることを発見した。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくとも1種類の希土類元素、少なくとも1種類の遷移元素及び少なくとも1種類以上のカルコゲン元素(酸素を含む)から構成される発光材料について、発光物質としての特性を調査した結果、Tb2(MoO4) 3 、Eu2(MoO4) 3 、Nd2(MoO4) 3 、Nd2(WO4) 3 、Er2(MoO4) 3 又はEr2(WO4) 3は、濃度消光が発現しない発光物質である事実を発見し、非常に高効率の発光物質であることを発見した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、特定の希土類元素、特定の遷移元素及び特定のカルコゲン元素(酸素を含む)から構成される発光材料に関するものであり、蛍光体材料、レーザー材料、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンス素子、放射線検出器等に応用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
蛍光体材料及び固体レーザー材料等の無機材料の発光物質は、通常は母体と発光中心より構成されており、適当な母体物質を選択し、その中に発光中心と呼ばれる不純物元素や格子欠陥などを分散させることにより実現されている。
【0003】
高効率の発光物質を実現する手法の一つとして、母体の中に含まれる発光中心の濃度を上げることが考えられる。しかしながら、通常は発光中心の濃度をある程度以上に上昇させると、逆に発光中心の濃度が上昇するに従って発光効率が減少する現象が発現する。その現象は、濃度消光と呼ばれている。
【0004】
従って、従来技術においては、発光物質における発光中心の濃度は、意図的に低く抑制されており、高々1%程度であった。例えば、代表的な固体レーザー材料であるYAG:Nd3+においては、発光中心であるNd3+の濃度は、通常0.5〜1.0原子%である(非特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、このような困難を解決する試みも、これまでに皆無ではなかった。その一つは、濃度消光が発現しない物質を発見することである。濃度消光という現象は、非常に一般的な現象であるが、必ずしも全ての物質に発現する現象ではなく、ごく僅かではあるが、例外的に濃度消光が発現しない物質も存在する。
【0006】
そのような物質の例として、NdP5O14が知られている(非特許文献2参照)。この物質においては、発光中心であるNd3+の濃度は、5原子%もあるが、それでもこの物質においては濃度消光が発現せず、極めて良好なレーザー物質として機能することが知られている。このように、濃度消光が例外的に発現しないレーザー材料は“化学量論的レーザー物質”と呼ばれる(非特許文献2参照)。
【0007】
さて、現在までに知られている化学量論的レーザー物質の種類は、NdP5O14を始めとして10種類程度しかない(非特許文献2及び3参照)。そして、それらの物質において、なぜ濃度消光が発現しないかの理由は、まだ完全には解明されていない。
【0008】
基本的な理由は、何らかの原因により発光中心の間の相互作用が妨げられていることにあると考えられ、またその原因としては、結晶構造の特徴が重要な役割を果たしていると考えられている。しかしながら、既に化学量論的レーザー物質として知られている物質と同一の結晶構造を持つ物質が常に化学量論的レーザー物質になるとは限らないという事実から類推すると、実際の原因は、それほど単純ではなく、非常に複雑であると考えられている。
従って、化学量論的レーザー物質を探索する際には、現時点においては明確な探索の指針は存在せず、様々な化合物を合成して発光特性を評価するという、原始的な発見的手法に依存せざるを得ないのが現状である。
【0009】
【非特許文献1】
塩谷繁雄、他編:光物性ハンドブック(培風館)、516頁
【非特許文献2】
宮澤信太郎著:光学結晶(培風館)、146〜147頁
【非特許文献3】
The Journal of Chemical Physics Volume 39, p. 504 − 511 (1963)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ここで本願発明者らが解決しようとする問題は、発光物質の濃度消光であり、濃度消光が発現しない発光物質を発見することである。希土類元素は、発光物質の発光中心として優れており、また、希土類元素、遷移元素及びカルコゲン元素(酸素を含む)から構成される発光材料は、希土類元素を含むため発光物質として利用できる可能性を秘めていたが、通常は希土類元素の濃度が高いために強い濃度消光が起こる可能性が高く、従来は発光物質としての特性が全く調査されていなかった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
これに対して、本願発明者らは、Tb2(MoO4) 3 、Eu2(MoO4) 3 、Nd2(MoO4) 3 、Nd2(WO4) 3 、Er2(MoO4) 3 又はEr2(WO4) 3について、発光物質としての特性を調査した結果、濃度消光が発現しない発光物質である事実を発見し、非常に高効率の発光物質であることを発見した。
【0012】
この発光物質においては、発光中心は、その中に含まれる希土類元素であるTb、Eu及びNdである。従って、この発光物質においては、母体の一部が発光中心を兼ねているという特徴がある。希土類元素の化合物は、無数に知られているが、希土類元素を発光中心と考えると母体の一部が発光中心を兼ねるため、発光中心の濃度が非常に高くなり、通常は、濃度消光が発現するために、発光物質として利用可能な希土類元素化合物は、従来において非常に少なかった。
【0013】
上記Tb2(MoO4) 3 、Eu2(MoO4) 3 、Nd2(MoO4) 3 、Nd2(WO4) 3 、Er2(MoO4) 3又はEr2(WO4) 3の中の少なくとも一つから成る発光材料は、希土類元素化合物であるにもかかわらず濃度消光が発現しない物質であり、非常に高効率の発光物質として利用可能な化合物である。
【0014】
濃度消光が発現する原因として考えられている機構は、発光中心である希土類イオンの間の相互作用である。この相互作用により、励起された希土類イオンは、無輻射にそのエネルギーを喪失し、発光せずに基底状態に戻る。従って、濃度消光を妨げるためには、希土類イオンの間の相互作用を妨げれば良い。ここでは、そのような手段として、希土類イオンの周囲が別のイオンにより囲まれているような結晶構造を探索することとした。
【0015】
その結果として発見された上記物質においては、希土類イオンは、結晶構造的に相互に隔離されており、濃度消光が起こりにくい結晶構造となっている。
【0016】
【実施の態様】
本願発明の発光材料においては、希土類元素の総数、遷移金属元素の総数及びカルコゲン元素の総数の化学量論比が2対3対12±α(ただし、αは、1より小さい正の数)となることを特徴としている。すなわち、該希土類元素の総数と該遷移金属元素の総数との化学量論比は、2対3で一定であるが、該カルコゲン元素の総数は、該希土類元素の総数と該遷移金属元素の総数に対して、12±α(ただし、αは、1より小さい正の数)と多少、化学量論比からはずれてもよい。
【0017】
また、結晶構造は、α− Gd2(MoO4) 3、β− Gd2(MoO4) 3(GMOと略称され、強誘電体として著名)又はγ− Gd2(MoO4) 3と同一であり、単結晶又は多結晶のいずれかである。
【0018】
上記発光材料の粉末を発光部位として含む発光体を形成することが望ましい。
【0019】
上記発光材料の製造方法としては、まず、上記発光材料の構成元素を上記発光材料の化学量論比と同じモル比率で混合する。次に、その混合原料を融解又は溶解し、固化させてから成形する。ここで成形とは、インゴット状、薄膜状又は粉末状に加工することを意味する。混合原料を融解又は溶解させる前に、それをいったん焼結させても良い。また焼結させたものは、融解又は溶解させずに、そのまま成形しても良い。
【0020】
上記焼結温度は、500℃〜1500℃であり、雰囲気は、酸素又は酸素及び酸素以外の少なくとも1種類以上の気体の混合気体である。また、必要に応じてバインダー(焼結助剤)を添加する。
【0021】
上記融解又は溶融過程の雰囲気は、酸素又は酸素及び酸素以外の少なくとも1種類以上の気体の混合気体である。
【0022】
結晶の製造は、CZ法により、融解又は溶解過程において、該材料の融液または溶液に該材料と同等もしくは類似の結晶構造を持つ物質を接触させて該材料の結晶を育成することもできる。
【0023】
上記発光材料を基板に堆積する方法としては、真空蒸着法、MBE法、スパッタ法、反応性スパッタ法、CVD法又は、MOCVD法等により行うことができる。
【0024】
また、上記発光材料の化学量論比を制御するために、該プロセス終了後に該元素の補充及び抜き取りを行ってもよい。
【0025】
また、上記発光材料を利用し、発光材料に磁場、電場又は応力を作用させることによって発光の強度、波長、偏光方向を変化させて光源装置を作製することもできる。
【0026】
【実施例】
化合物の例としてTb2Mo3O12を取り上げ、その作製方法を以下に説明する。原料物質としては、Tb4O7及びMoO3を用いる。Tb4O7及びMoO3の粉末を混合し高圧でプレスしたものを600℃の温度で3時間加熱し焼結させる。この作業により、原料は反応を起こしてTb2Mo3O12が生成される。得られたTb2Mo3O12の焼結体は、用途に応じて粉末に粉砕される他、単結晶を育成するための原料にも利用される。
【0027】
以下においては、Tb2Mo3O12単結晶の育成方法を説明する。育成方法は、CZ(チョクラルスキー)法である。すなわち、得られたTb2Mo3O12焼結体を白金坩堝に充填し、結晶育成炉の中に設置して融点である1155℃まで加熱し融解させる。加熱には高周波誘導加熱方式を利用し、また結晶育成炉内部の雰囲気は大気圧の空気である。
【0028】
Tb2Mo3O12が融解したら、事前に用意した種結晶を融液の表面に接触させ、種結晶をおよそ20(回転/分)の回転速度で回転させながらおよそ5〜10(mm/時)の速度で上昇させ、Tb2Mo3O12の単結晶を育成する。種結晶として利用可能な物質は、Tb2Mo3O12単結晶の他に、Tb2Mo3O12焼結体及び白金線などである。
【0029】
育成を終了した結晶は、急激に冷却されるとひび割れが発生する可能性があるため、およそ50(℃/時)の冷却速度でゆっくりと冷却し室温まで戻す。得られたTb2Mo3O12単結晶の発光特性を図1および図2に示す。
【0030】
図1は、Tb2Mo3O12単結晶の温度を室温(絶対温度=295K)に維持し、それにHe−Cdレーザーの光(波長=325 nm)を照射した時に得られた発光をスペクトルに分解した結果である。図1を見ると、いくつかの鋭い発光線が観察され、それらの中で主要なものは、(1)波長=480〜500nm付近に観察されるバンド、(2)波長=540〜560nm付近に観察されるバンド、(3)波長=580〜600nm付近に観察されるバンド、(4)波長=610〜630nm付近に観察されるバンド、の4本である。これらの全ての発光線の発光機構は、希土類元素であるTbのイオンの電子状態の変化であることが分かっている。そのTbイオンはTb2Mo3O12化合物中に存在しているが、Tb元素の濃度が10%以上であるにもかかわらず強い発光が観察されたことから、この化合物においては濃度消光が発現していないことが分かる。
【0031】
図2は、Tb2Mo3O12単結晶の温度を低温(絶対温度=1.4K)に維持し、同様の測定を行った結果である。図2を見ると、Tb2Mo3O12単結晶を低温に冷却することにより、発光強度が著しく増大すると共に、発光線の線幅が著しく減少していることが分かる。この結果は、Tb2Mo3O12単結晶を低温に冷却することにより、その発光効率が著しく増大しており、また励起状態に相当する電子状態の寿命が著しく増大していることを意味する。この結果は、Tb2Mo3O12単結晶の特性が発光物質として極めて優れていることを強く示唆していると共に、レーザー物質としても優れた特性を有する可能性があることを強く示唆している。
【0032】
【発明の効果】
本願発明における発光材料においては、発光効率が減少する濃度消光という現象が発現せず、高効率の発光物質を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】室温(絶対温度=295K)におけるTb2Mo3O12単結晶の発光特性
【図2】低温(絶対温度=1.4K)におけるTb2Mo3O12単結晶の発光特性
【発明の属する技術分野】
本願発明は、特定の希土類元素、特定の遷移元素及び特定のカルコゲン元素(酸素を含む)から構成される発光材料に関するものであり、蛍光体材料、レーザー材料、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンス素子、放射線検出器等に応用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
蛍光体材料及び固体レーザー材料等の無機材料の発光物質は、通常は母体と発光中心より構成されており、適当な母体物質を選択し、その中に発光中心と呼ばれる不純物元素や格子欠陥などを分散させることにより実現されている。
【0003】
高効率の発光物質を実現する手法の一つとして、母体の中に含まれる発光中心の濃度を上げることが考えられる。しかしながら、通常は発光中心の濃度をある程度以上に上昇させると、逆に発光中心の濃度が上昇するに従って発光効率が減少する現象が発現する。その現象は、濃度消光と呼ばれている。
【0004】
従って、従来技術においては、発光物質における発光中心の濃度は、意図的に低く抑制されており、高々1%程度であった。例えば、代表的な固体レーザー材料であるYAG:Nd3+においては、発光中心であるNd3+の濃度は、通常0.5〜1.0原子%である(非特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、このような困難を解決する試みも、これまでに皆無ではなかった。その一つは、濃度消光が発現しない物質を発見することである。濃度消光という現象は、非常に一般的な現象であるが、必ずしも全ての物質に発現する現象ではなく、ごく僅かではあるが、例外的に濃度消光が発現しない物質も存在する。
【0006】
そのような物質の例として、NdP5O14が知られている(非特許文献2参照)。この物質においては、発光中心であるNd3+の濃度は、5原子%もあるが、それでもこの物質においては濃度消光が発現せず、極めて良好なレーザー物質として機能することが知られている。このように、濃度消光が例外的に発現しないレーザー材料は“化学量論的レーザー物質”と呼ばれる(非特許文献2参照)。
【0007】
さて、現在までに知られている化学量論的レーザー物質の種類は、NdP5O14を始めとして10種類程度しかない(非特許文献2及び3参照)。そして、それらの物質において、なぜ濃度消光が発現しないかの理由は、まだ完全には解明されていない。
【0008】
基本的な理由は、何らかの原因により発光中心の間の相互作用が妨げられていることにあると考えられ、またその原因としては、結晶構造の特徴が重要な役割を果たしていると考えられている。しかしながら、既に化学量論的レーザー物質として知られている物質と同一の結晶構造を持つ物質が常に化学量論的レーザー物質になるとは限らないという事実から類推すると、実際の原因は、それほど単純ではなく、非常に複雑であると考えられている。
従って、化学量論的レーザー物質を探索する際には、現時点においては明確な探索の指針は存在せず、様々な化合物を合成して発光特性を評価するという、原始的な発見的手法に依存せざるを得ないのが現状である。
【0009】
【非特許文献1】
塩谷繁雄、他編:光物性ハンドブック(培風館)、516頁
【非特許文献2】
宮澤信太郎著:光学結晶(培風館)、146〜147頁
【非特許文献3】
The Journal of Chemical Physics Volume 39, p. 504 − 511 (1963)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ここで本願発明者らが解決しようとする問題は、発光物質の濃度消光であり、濃度消光が発現しない発光物質を発見することである。希土類元素は、発光物質の発光中心として優れており、また、希土類元素、遷移元素及びカルコゲン元素(酸素を含む)から構成される発光材料は、希土類元素を含むため発光物質として利用できる可能性を秘めていたが、通常は希土類元素の濃度が高いために強い濃度消光が起こる可能性が高く、従来は発光物質としての特性が全く調査されていなかった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
これに対して、本願発明者らは、Tb2(MoO4) 3 、Eu2(MoO4) 3 、Nd2(MoO4) 3 、Nd2(WO4) 3 、Er2(MoO4) 3 又はEr2(WO4) 3について、発光物質としての特性を調査した結果、濃度消光が発現しない発光物質である事実を発見し、非常に高効率の発光物質であることを発見した。
【0012】
この発光物質においては、発光中心は、その中に含まれる希土類元素であるTb、Eu及びNdである。従って、この発光物質においては、母体の一部が発光中心を兼ねているという特徴がある。希土類元素の化合物は、無数に知られているが、希土類元素を発光中心と考えると母体の一部が発光中心を兼ねるため、発光中心の濃度が非常に高くなり、通常は、濃度消光が発現するために、発光物質として利用可能な希土類元素化合物は、従来において非常に少なかった。
【0013】
上記Tb2(MoO4) 3 、Eu2(MoO4) 3 、Nd2(MoO4) 3 、Nd2(WO4) 3 、Er2(MoO4) 3又はEr2(WO4) 3の中の少なくとも一つから成る発光材料は、希土類元素化合物であるにもかかわらず濃度消光が発現しない物質であり、非常に高効率の発光物質として利用可能な化合物である。
【0014】
濃度消光が発現する原因として考えられている機構は、発光中心である希土類イオンの間の相互作用である。この相互作用により、励起された希土類イオンは、無輻射にそのエネルギーを喪失し、発光せずに基底状態に戻る。従って、濃度消光を妨げるためには、希土類イオンの間の相互作用を妨げれば良い。ここでは、そのような手段として、希土類イオンの周囲が別のイオンにより囲まれているような結晶構造を探索することとした。
【0015】
その結果として発見された上記物質においては、希土類イオンは、結晶構造的に相互に隔離されており、濃度消光が起こりにくい結晶構造となっている。
【0016】
【実施の態様】
本願発明の発光材料においては、希土類元素の総数、遷移金属元素の総数及びカルコゲン元素の総数の化学量論比が2対3対12±α(ただし、αは、1より小さい正の数)となることを特徴としている。すなわち、該希土類元素の総数と該遷移金属元素の総数との化学量論比は、2対3で一定であるが、該カルコゲン元素の総数は、該希土類元素の総数と該遷移金属元素の総数に対して、12±α(ただし、αは、1より小さい正の数)と多少、化学量論比からはずれてもよい。
【0017】
また、結晶構造は、α− Gd2(MoO4) 3、β− Gd2(MoO4) 3(GMOと略称され、強誘電体として著名)又はγ− Gd2(MoO4) 3と同一であり、単結晶又は多結晶のいずれかである。
【0018】
上記発光材料の粉末を発光部位として含む発光体を形成することが望ましい。
【0019】
上記発光材料の製造方法としては、まず、上記発光材料の構成元素を上記発光材料の化学量論比と同じモル比率で混合する。次に、その混合原料を融解又は溶解し、固化させてから成形する。ここで成形とは、インゴット状、薄膜状又は粉末状に加工することを意味する。混合原料を融解又は溶解させる前に、それをいったん焼結させても良い。また焼結させたものは、融解又は溶解させずに、そのまま成形しても良い。
【0020】
上記焼結温度は、500℃〜1500℃であり、雰囲気は、酸素又は酸素及び酸素以外の少なくとも1種類以上の気体の混合気体である。また、必要に応じてバインダー(焼結助剤)を添加する。
【0021】
上記融解又は溶融過程の雰囲気は、酸素又は酸素及び酸素以外の少なくとも1種類以上の気体の混合気体である。
【0022】
結晶の製造は、CZ法により、融解又は溶解過程において、該材料の融液または溶液に該材料と同等もしくは類似の結晶構造を持つ物質を接触させて該材料の結晶を育成することもできる。
【0023】
上記発光材料を基板に堆積する方法としては、真空蒸着法、MBE法、スパッタ法、反応性スパッタ法、CVD法又は、MOCVD法等により行うことができる。
【0024】
また、上記発光材料の化学量論比を制御するために、該プロセス終了後に該元素の補充及び抜き取りを行ってもよい。
【0025】
また、上記発光材料を利用し、発光材料に磁場、電場又は応力を作用させることによって発光の強度、波長、偏光方向を変化させて光源装置を作製することもできる。
【0026】
【実施例】
化合物の例としてTb2Mo3O12を取り上げ、その作製方法を以下に説明する。原料物質としては、Tb4O7及びMoO3を用いる。Tb4O7及びMoO3の粉末を混合し高圧でプレスしたものを600℃の温度で3時間加熱し焼結させる。この作業により、原料は反応を起こしてTb2Mo3O12が生成される。得られたTb2Mo3O12の焼結体は、用途に応じて粉末に粉砕される他、単結晶を育成するための原料にも利用される。
【0027】
以下においては、Tb2Mo3O12単結晶の育成方法を説明する。育成方法は、CZ(チョクラルスキー)法である。すなわち、得られたTb2Mo3O12焼結体を白金坩堝に充填し、結晶育成炉の中に設置して融点である1155℃まで加熱し融解させる。加熱には高周波誘導加熱方式を利用し、また結晶育成炉内部の雰囲気は大気圧の空気である。
【0028】
Tb2Mo3O12が融解したら、事前に用意した種結晶を融液の表面に接触させ、種結晶をおよそ20(回転/分)の回転速度で回転させながらおよそ5〜10(mm/時)の速度で上昇させ、Tb2Mo3O12の単結晶を育成する。種結晶として利用可能な物質は、Tb2Mo3O12単結晶の他に、Tb2Mo3O12焼結体及び白金線などである。
【0029】
育成を終了した結晶は、急激に冷却されるとひび割れが発生する可能性があるため、およそ50(℃/時)の冷却速度でゆっくりと冷却し室温まで戻す。得られたTb2Mo3O12単結晶の発光特性を図1および図2に示す。
【0030】
図1は、Tb2Mo3O12単結晶の温度を室温(絶対温度=295K)に維持し、それにHe−Cdレーザーの光(波長=325 nm)を照射した時に得られた発光をスペクトルに分解した結果である。図1を見ると、いくつかの鋭い発光線が観察され、それらの中で主要なものは、(1)波長=480〜500nm付近に観察されるバンド、(2)波長=540〜560nm付近に観察されるバンド、(3)波長=580〜600nm付近に観察されるバンド、(4)波長=610〜630nm付近に観察されるバンド、の4本である。これらの全ての発光線の発光機構は、希土類元素であるTbのイオンの電子状態の変化であることが分かっている。そのTbイオンはTb2Mo3O12化合物中に存在しているが、Tb元素の濃度が10%以上であるにもかかわらず強い発光が観察されたことから、この化合物においては濃度消光が発現していないことが分かる。
【0031】
図2は、Tb2Mo3O12単結晶の温度を低温(絶対温度=1.4K)に維持し、同様の測定を行った結果である。図2を見ると、Tb2Mo3O12単結晶を低温に冷却することにより、発光強度が著しく増大すると共に、発光線の線幅が著しく減少していることが分かる。この結果は、Tb2Mo3O12単結晶を低温に冷却することにより、その発光効率が著しく増大しており、また励起状態に相当する電子状態の寿命が著しく増大していることを意味する。この結果は、Tb2Mo3O12単結晶の特性が発光物質として極めて優れていることを強く示唆していると共に、レーザー物質としても優れた特性を有する可能性があることを強く示唆している。
【0032】
【発明の効果】
本願発明における発光材料においては、発光効率が減少する濃度消光という現象が発現せず、高効率の発光物質を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】室温(絶対温度=295K)におけるTb2Mo3O12単結晶の発光特性
【図2】低温(絶対温度=1.4K)におけるTb2Mo3O12単結晶の発光特性
Claims (4)
- 発光材料であって、Tb2(MoO4) 3 、Eu2(MoO4) 3 、Nd2(MoO4) 3 、Nd2(WO4) 3 、Er2(MoO4) 3 又はEr2(WO4) 3の中の少なくとも一つから成る発光材料。
- 上記発光材料は、単結晶又は多結晶のいずれかであることを特徴とする請求項1記載の発光材料。
- 上記請求項1又は2記載の発光材料の粉末を発光部位として含むことを特徴とする発光体。
- 上記請求項1乃至3記載の発光材料は、液体又は固体であることを特徴とする発光体。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002356111A JP2004189783A (ja) | 2002-12-09 | 2002-12-09 | 発光材料 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002356111A JP2004189783A (ja) | 2002-12-09 | 2002-12-09 | 発光材料 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004189783A true JP2004189783A (ja) | 2004-07-08 |
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ID=32756533
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002356111A Pending JP2004189783A (ja) | 2002-12-09 | 2002-12-09 | 発光材料 |
Country Status (1)
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---|---|
JP (1) | JP2004189783A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006137931A (ja) * | 2004-10-13 | 2006-06-01 | Kokusai Kiban Zairyo Kenkyusho:Kk | 蛍光体及び自発光型装置 |
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- 2002-12-09 JP JP2002356111A patent/JP2004189783A/ja active Pending
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