JP2004184844A - 赤外線遮蔽フィルムおよびそれを用いた赤外線遮蔽構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】赤外線吸収剤を用いても、赤外線遮蔽効果が長く持続するようになる赤外線遮蔽フィルムおよびそれを用いた赤外線遮蔽構造を提供する。
【解決手段】フィルム基材1の表面に、金属膜および金属酸化物膜の少なくとも一方からなる反射層2が形成され、この反射層2の表面にフィルム貼着用の粘着剤層3が形成され、上記フィルム基材1の裏面に、赤外線吸収剤を含有している赤外線吸収層4が形成されており、上記反射層2が、赤外線吸収層4よりも赤外線の到来側に位置している。
【選択図】図1
【解決手段】フィルム基材1の表面に、金属膜および金属酸化物膜の少なくとも一方からなる反射層2が形成され、この反射層2の表面にフィルム貼着用の粘着剤層3が形成され、上記フィルム基材1の裏面に、赤外線吸収剤を含有している赤外線吸収層4が形成されており、上記反射層2が、赤外線吸収層4よりも赤外線の到来側に位置している。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、赤外線の透過を少なくすることができる赤外線遮蔽フィルムおよびそれを用いた赤外線遮蔽構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、室内の冷房負荷を低減させる目的で、窓ガラス等に、赤外線を遮蔽する機能を付加したものが普及しつつある。その赤外線遮蔽機能を付加する手段としては、例えば下記▲1▼〜▲3▼のフィルムを窓ガラスに貼着することが知られている。
▲1▼金属膜や金属酸化物膜からなる反射層が積層されたフィルム。
▲2▼赤外線を吸収する吸収剤(以下、「赤外線吸収剤」という)を含有した粘着剤層が積層されたフィルム(特許文献1参照)。
▲3▼上記▲1▼と▲2▼とを組み合わせて赤外線遮蔽効果を高めたフィルム。
【0003】
上記▲1▼のフィルムは、フィルム基材の片面に、金属膜や金属酸化物膜からなる反射層,および粘着剤層が順に積層されたものであり、窓ガラスには、上記粘着剤層が当接されて貼着されている。そして、窓ガラスを透過した赤外線は、上記反射層である程度反射され、室内側に入り込み難くなっている。
【0004】
また、▲2▼のフィルムは、フィルム基材の片面に、赤外線吸収剤入り粘着剤層が積層されたものであり、窓ガラスには、上記粘着剤層が当接されて貼着されている。そして、窓ガラスを透過した赤外線は、上記粘着剤層内の赤外線吸収剤である程度吸収され、室内側に入り込み難くなっている。
【0005】
上記▲1▼と▲2▼とを組み合わせた▲3▼のフィルムは赤外線遮蔽効果が高いとして賞用されている。この種のフィルムは、図9に示すように、フィルム基材1の片面に、金属膜や金属酸化物膜からなる反射層2,および赤外線吸収剤入り粘着剤層10が順に積層されたものであり、窓ガラスWには、上記粘着剤層10の表面が当接された状態て貼着されている。そして、窓ガラスWを透過した赤外線(矢印Aで示す)は、上記粘着剤層10内の赤外線吸収剤である程度吸収され、その一部は、反射層2で矢印Bのように反射し窓ガラスWを矢印Cのように透過し外部へ放射され、残部は赤外線吸収剤でエネルギーが削がれた状態で矢印Dのように、反射層2,フィルム基材1を透過し室内に到達する。この▲3▼のフィルムは、上記▲1▼や▲2▼のフィルムよりも赤外線遮蔽効果を高めたものとなっている。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−59082号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記▲2▼,▲3▼のフィルムのように、赤外線吸収剤を用いたフィルムでは、使用年数を重ねるごとに赤外線遮蔽効果が低下する。特に上記▲3▼のフィルムは、より早期に赤外線遮蔽効果が低下するという問題が生じている。そこで、本発明者は、その原因を究明した結果、つぎのようなことをつきとめた。すなわち、赤外線が反射層2よりも先に赤外線吸収剤入り粘着剤層10を透過すると、到来赤外線の全てが赤外線吸収剤の作用を受けることになり、赤外線吸収剤への負荷が大きく、赤外線吸収剤が早期に劣化する。特に上記▲3▼のフィルムでは、反射層2で反射する前と後とで赤外線が赤外線吸収剤入り粘着剤層10を透過する(矢印A,矢印B参照)ため、赤外線吸収剤がより早期に劣化する。
【0008】
本発明は、このような知見に鑑みなされたもので、赤外線吸収剤を用いても、赤外線遮蔽効果が長く持続するようになる赤外線遮蔽フィルムおよびそれを用いた赤外線遮蔽構造の提供をその目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、金属膜および金属酸化物膜の少なくとも一方からなる反射層と、赤外線を吸収する吸収剤を含有している吸収層とを備えた多層構造の赤外線遮蔽フィルムであって、上記反射層が、吸収層よりも上記赤外線の到来側に位置している赤外線遮蔽フィルムを第1の要旨とする。
【0010】
また、本発明は、赤外線の到来側の表面に粘着剤層が形成されている赤外線遮蔽フィルムが、その粘着剤層の表面を、窓ガラスのような透明被着体の、赤外線の到来側と反対側の面に当接させた状態で貼着されている赤外線遮蔽構造を第2の要旨とする。
【0011】
本発明の赤外線遮蔽フィルムおよびそれを用いた赤外線遮蔽構造では、到来する赤外線を、まず反射層により反射させ、反射されなかった赤外線のみを赤外線吸収剤で吸収させる。そのうえ、従来例と異なり、吸収層を入射した赤外線と反射した赤外線の双方が透過することがない。そのため、本発明の赤外線遮蔽フィルムおよびそれを用いた赤外線遮蔽構造では、赤外線吸収剤にかかる負荷が低減され、赤外線遮蔽効果が長く持続するようになる。
【0012】
なお、本発明の赤外線遮蔽フィルムにおけるフィルムとは、特に厚みが限定されるものではなく、板状のものも含む意味である。
【0013】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明の赤外線遮蔽フィルムの第1の実施の形態を示している。この実施の形態における赤外線遮蔽フィルムは、フィルム基材1と、このフィルム基材1の表面に形成された反射層2と、この反射層2の表面に形成されたフィルム貼着用の粘着剤層3と、上記フィルム基材1の裏面に形成された赤外線吸収層4とからなっている。
【0015】
図2は、上記赤外線遮蔽フィルムを用いた赤外線遮蔽構造を示しており、窓ガラス(透明被着体)Wの室内側に、上記赤外線遮蔽フィルムが、上記粘着剤層3の表面を当接させた状態で貼着されている構造となっている。
【0016】
このように窓ガラスWの室内側に上記赤外線遮蔽フィルムが貼着された構造(図2に示す赤外線遮蔽構造)では、反射層2が赤外線吸収層4よりも赤外線の到来側に位置しているため、室外からの到来赤外線(矢印A)は、上記窓ガラスWおよび粘着剤層3を透過した後、上記反射層2で矢印Eのように反射される。そして、反射されなかった赤外線のみが、矢印Fのように上記反射層2およびフィルム基材1を透過して上記赤外線吸収層4の吸収作用を受け、エネルギーが削がれた状態で矢印Gのように室内に到達する。このように、この赤外線遮蔽フィルムでは到来赤外線は、まず、反射層2で反射され、反射されなかった赤外線のみが赤外線吸収層4で吸収される。そのうえ、従来例と異なり、吸収層を入射した赤外線と反射した赤外線の双方が透過することがない。そのため、赤外線吸収剤の劣化が生じ難くなり長寿命になる。
【0017】
つぎに、赤外線遮蔽フィルムの材料等についてより詳しく説明すると、上記フィルム基材1は、特に限定されないが、可視光領域(光線の波長が380〜780nm程度)において透明性を有するものであって、各種の透明材料を各種の方法によってフィルム状に成形したものであることが好ましい。上記透明材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等があげられる。上記フィルム基材1の厚みは、特に限定されないが、この実施の形態のように、窓ガラスWに貼着して使用する場合には、通常、作業性や可撓性等が良好となる点で、10〜350μmの範囲に設定される。
【0018】
上記反射層2は、金属膜および金属酸化物膜の少なくとも一方からなり、金属酸化物膜/金属膜の2層構造や、金属酸化物膜/金属膜/金属酸化物膜の3層構造や、金属酸化物膜/金属膜/金属酸化物膜/金属膜/金属酸化物膜の5層構造等の多層化した構造であってもよい。多層化することによって、可視光透過率,可視光反射率,必要に応じて電波シールド性能を調整することができる。
【0019】
上記反射層2を構成する金属膜は、所定の金属を蒸着やスパッタリング等することによって形成される。上記金属としては、金,銀,銅,白金,アルミニウム,ニッケル,パラジウム,イリジウム,錫,クロム,亜鉛等の金属、およびこれらを主成分とする合金や混合物があげられる。各金属膜の厚みは、特に限定されないが、通常、10〜40nmの範囲に設定される。
【0020】
上記反射層2を構成する金属酸化膜は、所定の金属酸化物を蒸着やスパッタリング等することによって形成される。上記金属酸化物としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO),酸化インジウム,酸化錫,酸化珪素,酸化アルミニウム,酸化亜鉛,酸化チタン,酸化タングステン等があげられる。各金属酸化物膜の厚みも、特に限定されないが、通常、20〜200nmの範囲に設定される。
【0021】
上記赤外線吸収層4は、赤外線吸収剤を含有しており、層形成主材料に赤外線吸収剤を添加した材料から形成されている。この赤外線吸収層4は、特に限定されないが、耐擦傷性の点からハードコート層に形成されることが好ましい。そして、上記層形成主材料としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン・アクリル樹脂,アクリル樹脂,メラミン樹脂,ウレタン樹脂,シリコーン樹脂,フッ素樹脂等があげられる。上記赤外線吸収層4の厚みは、特に限定されないが、通常、1〜50μmの範囲に設定される。
【0022】
また、上記赤外線吸収層4に含有されている赤外線吸収剤は、有機系でも無機系でもよいが、有機系の赤外線吸収剤としては、シアニン系化合物,ピリリウム系化合物,スクワリウム系化合物,クロコニウム系化合物,アズレニウム系化合物等のポリメチレン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、モノおよびジチオナフトール系化合物等のNi,Pd,Pt,Co,Cu等の各種金属錯体、イモニウム系化合物,アミニウム系化合物等のアミノ化合物、アントラキノン系化合物,ナフトキノン系化合物等のキノン系化合物等があげられる。なかでも、好ましいのは、可視光波長領域の吸収が非常に小さく、近赤外線波長領域に極大吸収を有する点で、イモニウム系化合物,アミニウム系化合物等のアミノ化合物である。
【0023】
上記粘着剤層3の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系樹脂,シリコーン系樹脂等があげられる。上記粘着剤層3の厚みは、特に限定されないが、通常、5〜50μmの範囲に設定される。
【0024】
つぎに、上記赤外線遮蔽フィルムの製造について説明する。この赤外線遮蔽フィルムは、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、上記フィルム基材1を準備し、このフィルム基材1の表面に、所定の金属や金属酸化物を蒸着することによって、金属膜や金属酸化物膜からなる反射層2を形成する。金属膜および金属酸化物膜を積層して多層化する場合には、その積層順に順次蒸着する。ついで、その形成された反射層2の表面に粘着剤層3の形成材料を塗工して粘着剤層3を形成する。つぎに、フィルム基材1の裏面に、赤外線吸収層4の形成材料をハードコートして赤外線吸収層4を形成する。このようにして、上記赤外線遮蔽フィルムを製造することができる。なお、上記赤外線遮蔽フィルムを商品等として運搬や販売等する際には、上記粘着剤層3の表面に、通常、剥離自在のセパレータシートS(図1参照)が貼着される。
【0025】
このようにして製造された赤外線遮蔽フィルムの使用方法は、例えば、窓ガラスWの室内側に貼着して(上記赤外線遮蔽構造にして)使用される。すなわち、商品である上記セパレータシートS付き赤外線遮蔽フィルムからセパレータシートSを剥がして、上記粘着剤層3の表面を露出させた後、その粘着剤層3の表面を窓ガラスWの室内側に当接させて、その窓ガラスWに上記赤外線遮蔽フィルムを貼着する。
【0026】
このように、本発明の赤外線遮蔽フィルムによれば、反射層2を赤外線吸収層4よりも赤外線の到来側に位置させることによって、室外からの到来赤外線は、上記反射層2での反射によって弱められて、上記赤外線吸収層4に到達するようになる。このため、赤外線吸収層4での赤外線エネルギーは小さくなっており、赤外線吸収剤への負荷が小さくなる。その結果、赤外線吸収剤の劣化が生じ難くなって寿命が伸び、赤外線遮蔽フィルムの赤外線遮蔽効果を長く持続させることができようになることから、赤外線遮蔽フィルムの張り替えサイクルが長くなり、張り替えに要する手間やコストを低減させることができるようになる。
【0027】
また、上記のように赤外線吸収剤の劣化が生じ難くなることから、従来では劣化が激しいために使用できなかったような赤外線吸収剤でも、使用できるようになる。
【0028】
そして、本発明の赤外線遮蔽フィルムによれば、反射層2での反射率を上げる程、赤外線吸収層4に到達する赤外線エネルギーは小さくなるため、赤外線遮蔽効果をより長く持続させることができようになる。
【0029】
さらに、上記反射層2は、金属膜や金属酸化物膜からなるため、反射層2の表面抵抗を、例えば3Ω以下に設定することによって、電波シールドフィルムとしての機能を付加することもできる。すなわち、上記赤外線遮蔽フィルムによれば、窓ガラスWの室内側に貼着等することによって、室外から進入してくる電波によって室内のエレクトロニクス機器が誤動作すること等を防止したり、室内のエレクトロニクス機器から電波が室外に漏れることによって情報が漏洩したりすること等を防止したりすることができるようになる。
【0030】
図3は、本発明の赤外線遮蔽フィルムの第2の実施の形態を示している。この実施の形態における赤外線遮蔽フィルムは、フィルム基材5自体に赤外線吸収剤を含有させ、このフィルム基材5の表面に反射層2を形成し、その反射層2の表面に粘着剤層3を形成して構成されている。
【0031】
このようにすることにより、赤外線吸収層を別個に設ける必要がなくなり、赤外線遮蔽フィルム全体の厚みを薄くすることができるようになる。
【0032】
この実施の形態の赤外線遮蔽フィルムの使用方法も、上記第1の実施の形態と同様にして、図4に示すように、窓ガラスWの室内側に貼着して使用される。そして、このようにして窓ガラスWの室内側に上記赤外線遮蔽フィルムが貼着された構造(赤外線遮蔽構造)でも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0033】
図5は、本発明の赤外線遮蔽フィルムの第3の実施の形態を示している。この実施の形態における赤外線遮蔽フィルムは、フィルム基材1の裏面に、反射層2を設け、その上に赤外線吸収層4を設けている。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態(図1)と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0034】
このようにすると、粘着剤層3を直接フィルム基材1に形成できるため、粘着剤選択の自由度が向上する。
【0035】
この実施の形態の赤外線遮蔽フィルムの使用方法も、上記第1の実施の形態と同様にして、図6に示すように、窓ガラスWの室内側に貼着して使用される。そして、このようにして窓ガラスWの室内側に上記赤外線遮蔽フィルムが貼着された構造(赤外線遮蔽構造)でも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0036】
図7は、本発明の赤外線遮蔽フィルムの第4の実施の形態を示している。この実施の形態における赤外線遮蔽フィルムは、フィルム基材1の表面に、赤外線吸収層4を形成し、その上に反射層2を形成している。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態(図1)と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0037】
この赤外線遮蔽フィルムでは、使用の際に室内側にフィルム基材1が露呈することとなり、赤外線遮蔽フィルム清掃等の作業性が向上する。
【0038】
この実施の形態の赤外線遮蔽フィルムの使用方法も、上記第1の実施の形態と同様にして、図8に示すように、窓ガラスWの室内側に貼着して使用される。そして、このようにして窓ガラスWの室内側に上記赤外線遮蔽フィルムが貼着された構造(赤外線遮蔽構造)でも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0039】
上記第1〜第4の各実施の形態の第1の変形例として、各赤外線遮蔽フィルムにおいて粘着剤層3を省いてもよい。このような赤外線遮蔽フィルムによれば、粘着剤層3が形成されていないため、その粘着剤層3の表面に貼着する剥離自在のセパレータシートSが不要となり、赤外線遮蔽フィルムをそのままの形態で商品として運搬や販売等することができる。この赤外線遮蔽フィルムの使用方法としては、窓ガラスWの室内側または上記赤外線遮蔽フィルムの反射層2の表面に粘着剤を塗布して赤外線遮蔽フィルムを窓ガラスWに貼着し、上記第1〜第4の各実施の形態における赤外線遮蔽構造(図2,図4,図6,図8参照)と同様の構造にしてもよいし、窓ガラスW等に貼着することなく、上記赤外線遮蔽フィルムをそのまま、反射層2を赤外線吸収層4よりも赤外線の到来側に位置させた状態で、張設等してもよい。そして、これら各変形例の赤外線遮蔽フィルムによっても、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0040】
第2の変形例として、上記第1〜第4の各実施の形態の赤外線遮蔽フィルムにおけるフィルム基材1,5の厚みを厚くして、赤外線遮蔽フィルムを板状にしてもよい。板状のものであれば、窓ガラスW等に貼着せず、ついたて状にして使用することができる。また、このように板状とする場合には、フィルム基材1,5の透明材料として、ガラス板やガラス扉等があげられる。
【0041】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0042】
【実施例1】
上記第1の実施の形態と同様にして、図1に示す赤外線遮蔽フィルムを製造した。すなわち、まず、フィルム基材1としてPETフィルム(厚み:100μm)を準備し、このPETフィルムの一方の面(表面)にスパッタリングにより酸化チタン/銀/酸化チタンを厚み40nm/20nm/40nmに成膜して反射層2(表面抵抗は2.8Ω)を形成した。ついで、その反射層2の表面に粘着剤を塗工して粘着剤層(厚み:40μm)3を形成した。つぎに、ハードコート剤(大日本インキ化学工業社製、ハードクリヤー)に1phrの赤外線吸収剤(林原生物化学研究所製、NKX−1199)を添加したものを用いて、上記PETフィルムの他方の面(裏面)にハードコートして赤外線吸収層(厚み:40μm)4を形成した。そして、このようにして製造された赤外線遮蔽フィルムをガラス板(厚み:3mm)にラミネートし、図2に示す赤外線遮蔽構造体とした。
【0043】
【比較例1】
反射層2と赤外線吸収剤入り粘着剤層10とを備えた図9に示す従来の赤外線遮蔽フィルムを製造した。すなわち、まず、フィルム基材1であるPETフィルム(厚み:100μm)の一方の面(表面)にスパッタリングにより酸化チタン/銀/酸化チタンを厚み40nm/20nm/40nmに成膜して反射層2(表面抵抗は2.8Ω)を形成した。ついで、上記実施例1と同様の粘着剤に1phrの赤外線吸収剤(林原生物化学研究所製、NKX−1199)を添加したものを上記反射層の表面に塗工して赤外線吸収剤入り粘着剤層(厚み:40μm)10を形成した。そして、このようにして製造された赤外線遮蔽フィルムをガラス板(厚み:3mm)にラミネートして赤外線遮蔽構造体とした。
【0044】
【比較例2】
反射層2を備えた従来の赤外線遮蔽フィルムを製造した(赤外線吸収剤なし)。すなわち、まず、フィルム基材1であるPETフィルム(厚み:100μm)の一方の面(表面)にスパッタリングにより酸化チタン/銀/酸化チタンを厚み40nm/20nm/40nmに成膜して反射層2(表面抵抗は2.8Ω)を形成した。ついで、上記実施例1と同様の粘着剤を塗工して粘着剤層(厚み:40μm)3を形成した。そして、このようにして製造された赤外線遮蔽フィルムをガラス板(厚み:3mm)にラミネートして赤外線遮蔽構造体とした。
【0045】
〔日射透過率〕
このようにして得られた実施例1および比較例1,2の各赤外線遮蔽構造体を島津製作所製UV3100PCにかけ、各赤外線遮蔽フィルムの日射透過率を測定した。この測定では、ランプ光をガラス板側から照射した。また、この測定は、初期データを取った後、カーボンアーク試験機に60℃の雰囲気下でそれぞれ200時間および500時間投入した後も行なった。そして、その測定結果を下記の表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
上記表1より、実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1の方が、赤外線遮蔽効果が長く持続しており、赤外線吸収剤の耐久性が向上していることがわかる。また、比較例2では、赤外線遮蔽効果が殆どない。
【0048】
〔電波シールド性能〕
上記実施例1および比較例1,2の各赤外線遮蔽構造体における赤外線遮蔽フィルムの電波シールド性能をKEC法(使用電波:1GHz)により測定した。この測定も、上記日射透過率の測定と同様、初期データを取った後、カーボンアーク試験機に60℃の雰囲気下でそれぞれ200時間および500時間投入した後も行なった。そして、その測定結果を下記の表2に示した。
【0049】
【表2】
【0050】
また、上記表2より、電波シールド性能はいずれも劣化していないことから、各赤外線遮蔽構造体における赤外線遮蔽フィルムの電波シールド性能は、赤外線を吸収する赤外線吸収層4や赤外線吸収剤入り粘着剤層10の配置に関わらず、維持できることが確認できる。
【0051】
【発明の効果】
以上のように、本発明の赤外線遮蔽フィルムによれば、金属膜および金属酸化物膜の少なくとも一方からなる反射層が、赤外線吸収剤を含有している吸収層よりも、赤外線の到来側に位置している。このため、到来する赤外線を、まず反射層で反射させ、反射されなかった赤外線のみを赤外線吸収剤で吸収させることができるとともに、吸収層を入射した赤外線と反射した赤外線の双方が透過することがなくなる。そのため、赤外線吸収剤にかかる負荷が低減され、赤外線遮蔽効果が長く持続するようになる。
【0052】
特に、本発明の赤外線遮蔽フィルムにおいて、上記反射層の表面抵抗が3Ω以下に設定されている場合には、電波シールドフィルムとしての機能を付加することもできる。
【0053】
また、本発明の赤外線遮蔽フィルムにおいて、赤外線の到来側の表面に粘着剤層が形成されている場合には、窓ガラス等の透明被着体に簡単に貼着することができる。
【0054】
そして、本発明の赤外線遮蔽構造によれば、赤外線の到来側と反対側の透明被着体の面に、本発明の赤外線遮蔽フィルムが、粘着剤層の表面を上記透明被着体に当接させた状態で貼着されているため、赤外線吸収剤にかかる負荷が低減され、赤外線遮蔽効果が長く持続するようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の赤外線遮蔽フィルムの第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】上記赤外線遮蔽フィルムを用いた赤外線遮蔽構造を示す断面図である。
【図3】本発明の赤外線遮蔽フィルムの第2の実施の形態を示す断面図である。
【図4】上記赤外線遮蔽フィルムを用いた赤外線遮蔽構造を示す断面図である。
【図5】本発明の赤外線遮蔽フィルムの第3の実施の形態を示す断面図である。
【図6】上記赤外線遮蔽フィルムを用いた赤外線遮蔽構造を示す断面図である。
【図7】本発明の赤外線遮蔽フィルムの第4の実施の形態を示す断面図である。
【図8】上記赤外線遮蔽フィルムを用いた赤外線遮蔽構造を示す断面図である。
【図9】従来の赤外線遮蔽フィルムを用いた赤外線遮蔽構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 フィルム基材
2 反射層
3 粘着剤層
4 赤外線吸収層
【発明の属する技術分野】
本発明は、赤外線の透過を少なくすることができる赤外線遮蔽フィルムおよびそれを用いた赤外線遮蔽構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、室内の冷房負荷を低減させる目的で、窓ガラス等に、赤外線を遮蔽する機能を付加したものが普及しつつある。その赤外線遮蔽機能を付加する手段としては、例えば下記▲1▼〜▲3▼のフィルムを窓ガラスに貼着することが知られている。
▲1▼金属膜や金属酸化物膜からなる反射層が積層されたフィルム。
▲2▼赤外線を吸収する吸収剤(以下、「赤外線吸収剤」という)を含有した粘着剤層が積層されたフィルム(特許文献1参照)。
▲3▼上記▲1▼と▲2▼とを組み合わせて赤外線遮蔽効果を高めたフィルム。
【0003】
上記▲1▼のフィルムは、フィルム基材の片面に、金属膜や金属酸化物膜からなる反射層,および粘着剤層が順に積層されたものであり、窓ガラスには、上記粘着剤層が当接されて貼着されている。そして、窓ガラスを透過した赤外線は、上記反射層である程度反射され、室内側に入り込み難くなっている。
【0004】
また、▲2▼のフィルムは、フィルム基材の片面に、赤外線吸収剤入り粘着剤層が積層されたものであり、窓ガラスには、上記粘着剤層が当接されて貼着されている。そして、窓ガラスを透過した赤外線は、上記粘着剤層内の赤外線吸収剤である程度吸収され、室内側に入り込み難くなっている。
【0005】
上記▲1▼と▲2▼とを組み合わせた▲3▼のフィルムは赤外線遮蔽効果が高いとして賞用されている。この種のフィルムは、図9に示すように、フィルム基材1の片面に、金属膜や金属酸化物膜からなる反射層2,および赤外線吸収剤入り粘着剤層10が順に積層されたものであり、窓ガラスWには、上記粘着剤層10の表面が当接された状態て貼着されている。そして、窓ガラスWを透過した赤外線(矢印Aで示す)は、上記粘着剤層10内の赤外線吸収剤である程度吸収され、その一部は、反射層2で矢印Bのように反射し窓ガラスWを矢印Cのように透過し外部へ放射され、残部は赤外線吸収剤でエネルギーが削がれた状態で矢印Dのように、反射層2,フィルム基材1を透過し室内に到達する。この▲3▼のフィルムは、上記▲1▼や▲2▼のフィルムよりも赤外線遮蔽効果を高めたものとなっている。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−59082号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記▲2▼,▲3▼のフィルムのように、赤外線吸収剤を用いたフィルムでは、使用年数を重ねるごとに赤外線遮蔽効果が低下する。特に上記▲3▼のフィルムは、より早期に赤外線遮蔽効果が低下するという問題が生じている。そこで、本発明者は、その原因を究明した結果、つぎのようなことをつきとめた。すなわち、赤外線が反射層2よりも先に赤外線吸収剤入り粘着剤層10を透過すると、到来赤外線の全てが赤外線吸収剤の作用を受けることになり、赤外線吸収剤への負荷が大きく、赤外線吸収剤が早期に劣化する。特に上記▲3▼のフィルムでは、反射層2で反射する前と後とで赤外線が赤外線吸収剤入り粘着剤層10を透過する(矢印A,矢印B参照)ため、赤外線吸収剤がより早期に劣化する。
【0008】
本発明は、このような知見に鑑みなされたもので、赤外線吸収剤を用いても、赤外線遮蔽効果が長く持続するようになる赤外線遮蔽フィルムおよびそれを用いた赤外線遮蔽構造の提供をその目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、金属膜および金属酸化物膜の少なくとも一方からなる反射層と、赤外線を吸収する吸収剤を含有している吸収層とを備えた多層構造の赤外線遮蔽フィルムであって、上記反射層が、吸収層よりも上記赤外線の到来側に位置している赤外線遮蔽フィルムを第1の要旨とする。
【0010】
また、本発明は、赤外線の到来側の表面に粘着剤層が形成されている赤外線遮蔽フィルムが、その粘着剤層の表面を、窓ガラスのような透明被着体の、赤外線の到来側と反対側の面に当接させた状態で貼着されている赤外線遮蔽構造を第2の要旨とする。
【0011】
本発明の赤外線遮蔽フィルムおよびそれを用いた赤外線遮蔽構造では、到来する赤外線を、まず反射層により反射させ、反射されなかった赤外線のみを赤外線吸収剤で吸収させる。そのうえ、従来例と異なり、吸収層を入射した赤外線と反射した赤外線の双方が透過することがない。そのため、本発明の赤外線遮蔽フィルムおよびそれを用いた赤外線遮蔽構造では、赤外線吸収剤にかかる負荷が低減され、赤外線遮蔽効果が長く持続するようになる。
【0012】
なお、本発明の赤外線遮蔽フィルムにおけるフィルムとは、特に厚みが限定されるものではなく、板状のものも含む意味である。
【0013】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0014】
図1は、本発明の赤外線遮蔽フィルムの第1の実施の形態を示している。この実施の形態における赤外線遮蔽フィルムは、フィルム基材1と、このフィルム基材1の表面に形成された反射層2と、この反射層2の表面に形成されたフィルム貼着用の粘着剤層3と、上記フィルム基材1の裏面に形成された赤外線吸収層4とからなっている。
【0015】
図2は、上記赤外線遮蔽フィルムを用いた赤外線遮蔽構造を示しており、窓ガラス(透明被着体)Wの室内側に、上記赤外線遮蔽フィルムが、上記粘着剤層3の表面を当接させた状態で貼着されている構造となっている。
【0016】
このように窓ガラスWの室内側に上記赤外線遮蔽フィルムが貼着された構造(図2に示す赤外線遮蔽構造)では、反射層2が赤外線吸収層4よりも赤外線の到来側に位置しているため、室外からの到来赤外線(矢印A)は、上記窓ガラスWおよび粘着剤層3を透過した後、上記反射層2で矢印Eのように反射される。そして、反射されなかった赤外線のみが、矢印Fのように上記反射層2およびフィルム基材1を透過して上記赤外線吸収層4の吸収作用を受け、エネルギーが削がれた状態で矢印Gのように室内に到達する。このように、この赤外線遮蔽フィルムでは到来赤外線は、まず、反射層2で反射され、反射されなかった赤外線のみが赤外線吸収層4で吸収される。そのうえ、従来例と異なり、吸収層を入射した赤外線と反射した赤外線の双方が透過することがない。そのため、赤外線吸収剤の劣化が生じ難くなり長寿命になる。
【0017】
つぎに、赤外線遮蔽フィルムの材料等についてより詳しく説明すると、上記フィルム基材1は、特に限定されないが、可視光領域(光線の波長が380〜780nm程度)において透明性を有するものであって、各種の透明材料を各種の方法によってフィルム状に成形したものであることが好ましい。上記透明材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等があげられる。上記フィルム基材1の厚みは、特に限定されないが、この実施の形態のように、窓ガラスWに貼着して使用する場合には、通常、作業性や可撓性等が良好となる点で、10〜350μmの範囲に設定される。
【0018】
上記反射層2は、金属膜および金属酸化物膜の少なくとも一方からなり、金属酸化物膜/金属膜の2層構造や、金属酸化物膜/金属膜/金属酸化物膜の3層構造や、金属酸化物膜/金属膜/金属酸化物膜/金属膜/金属酸化物膜の5層構造等の多層化した構造であってもよい。多層化することによって、可視光透過率,可視光反射率,必要に応じて電波シールド性能を調整することができる。
【0019】
上記反射層2を構成する金属膜は、所定の金属を蒸着やスパッタリング等することによって形成される。上記金属としては、金,銀,銅,白金,アルミニウム,ニッケル,パラジウム,イリジウム,錫,クロム,亜鉛等の金属、およびこれらを主成分とする合金や混合物があげられる。各金属膜の厚みは、特に限定されないが、通常、10〜40nmの範囲に設定される。
【0020】
上記反射層2を構成する金属酸化膜は、所定の金属酸化物を蒸着やスパッタリング等することによって形成される。上記金属酸化物としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO),酸化インジウム,酸化錫,酸化珪素,酸化アルミニウム,酸化亜鉛,酸化チタン,酸化タングステン等があげられる。各金属酸化物膜の厚みも、特に限定されないが、通常、20〜200nmの範囲に設定される。
【0021】
上記赤外線吸収層4は、赤外線吸収剤を含有しており、層形成主材料に赤外線吸収剤を添加した材料から形成されている。この赤外線吸収層4は、特に限定されないが、耐擦傷性の点からハードコート層に形成されることが好ましい。そして、上記層形成主材料としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン・アクリル樹脂,アクリル樹脂,メラミン樹脂,ウレタン樹脂,シリコーン樹脂,フッ素樹脂等があげられる。上記赤外線吸収層4の厚みは、特に限定されないが、通常、1〜50μmの範囲に設定される。
【0022】
また、上記赤外線吸収層4に含有されている赤外線吸収剤は、有機系でも無機系でもよいが、有機系の赤外線吸収剤としては、シアニン系化合物,ピリリウム系化合物,スクワリウム系化合物,クロコニウム系化合物,アズレニウム系化合物等のポリメチレン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、モノおよびジチオナフトール系化合物等のNi,Pd,Pt,Co,Cu等の各種金属錯体、イモニウム系化合物,アミニウム系化合物等のアミノ化合物、アントラキノン系化合物,ナフトキノン系化合物等のキノン系化合物等があげられる。なかでも、好ましいのは、可視光波長領域の吸収が非常に小さく、近赤外線波長領域に極大吸収を有する点で、イモニウム系化合物,アミニウム系化合物等のアミノ化合物である。
【0023】
上記粘着剤層3の形成材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、アクリル系樹脂,シリコーン系樹脂等があげられる。上記粘着剤層3の厚みは、特に限定されないが、通常、5〜50μmの範囲に設定される。
【0024】
つぎに、上記赤外線遮蔽フィルムの製造について説明する。この赤外線遮蔽フィルムは、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、上記フィルム基材1を準備し、このフィルム基材1の表面に、所定の金属や金属酸化物を蒸着することによって、金属膜や金属酸化物膜からなる反射層2を形成する。金属膜および金属酸化物膜を積層して多層化する場合には、その積層順に順次蒸着する。ついで、その形成された反射層2の表面に粘着剤層3の形成材料を塗工して粘着剤層3を形成する。つぎに、フィルム基材1の裏面に、赤外線吸収層4の形成材料をハードコートして赤外線吸収層4を形成する。このようにして、上記赤外線遮蔽フィルムを製造することができる。なお、上記赤外線遮蔽フィルムを商品等として運搬や販売等する際には、上記粘着剤層3の表面に、通常、剥離自在のセパレータシートS(図1参照)が貼着される。
【0025】
このようにして製造された赤外線遮蔽フィルムの使用方法は、例えば、窓ガラスWの室内側に貼着して(上記赤外線遮蔽構造にして)使用される。すなわち、商品である上記セパレータシートS付き赤外線遮蔽フィルムからセパレータシートSを剥がして、上記粘着剤層3の表面を露出させた後、その粘着剤層3の表面を窓ガラスWの室内側に当接させて、その窓ガラスWに上記赤外線遮蔽フィルムを貼着する。
【0026】
このように、本発明の赤外線遮蔽フィルムによれば、反射層2を赤外線吸収層4よりも赤外線の到来側に位置させることによって、室外からの到来赤外線は、上記反射層2での反射によって弱められて、上記赤外線吸収層4に到達するようになる。このため、赤外線吸収層4での赤外線エネルギーは小さくなっており、赤外線吸収剤への負荷が小さくなる。その結果、赤外線吸収剤の劣化が生じ難くなって寿命が伸び、赤外線遮蔽フィルムの赤外線遮蔽効果を長く持続させることができようになることから、赤外線遮蔽フィルムの張り替えサイクルが長くなり、張り替えに要する手間やコストを低減させることができるようになる。
【0027】
また、上記のように赤外線吸収剤の劣化が生じ難くなることから、従来では劣化が激しいために使用できなかったような赤外線吸収剤でも、使用できるようになる。
【0028】
そして、本発明の赤外線遮蔽フィルムによれば、反射層2での反射率を上げる程、赤外線吸収層4に到達する赤外線エネルギーは小さくなるため、赤外線遮蔽効果をより長く持続させることができようになる。
【0029】
さらに、上記反射層2は、金属膜や金属酸化物膜からなるため、反射層2の表面抵抗を、例えば3Ω以下に設定することによって、電波シールドフィルムとしての機能を付加することもできる。すなわち、上記赤外線遮蔽フィルムによれば、窓ガラスWの室内側に貼着等することによって、室外から進入してくる電波によって室内のエレクトロニクス機器が誤動作すること等を防止したり、室内のエレクトロニクス機器から電波が室外に漏れることによって情報が漏洩したりすること等を防止したりすることができるようになる。
【0030】
図3は、本発明の赤外線遮蔽フィルムの第2の実施の形態を示している。この実施の形態における赤外線遮蔽フィルムは、フィルム基材5自体に赤外線吸収剤を含有させ、このフィルム基材5の表面に反射層2を形成し、その反射層2の表面に粘着剤層3を形成して構成されている。
【0031】
このようにすることにより、赤外線吸収層を別個に設ける必要がなくなり、赤外線遮蔽フィルム全体の厚みを薄くすることができるようになる。
【0032】
この実施の形態の赤外線遮蔽フィルムの使用方法も、上記第1の実施の形態と同様にして、図4に示すように、窓ガラスWの室内側に貼着して使用される。そして、このようにして窓ガラスWの室内側に上記赤外線遮蔽フィルムが貼着された構造(赤外線遮蔽構造)でも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0033】
図5は、本発明の赤外線遮蔽フィルムの第3の実施の形態を示している。この実施の形態における赤外線遮蔽フィルムは、フィルム基材1の裏面に、反射層2を設け、その上に赤外線吸収層4を設けている。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態(図1)と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0034】
このようにすると、粘着剤層3を直接フィルム基材1に形成できるため、粘着剤選択の自由度が向上する。
【0035】
この実施の形態の赤外線遮蔽フィルムの使用方法も、上記第1の実施の形態と同様にして、図6に示すように、窓ガラスWの室内側に貼着して使用される。そして、このようにして窓ガラスWの室内側に上記赤外線遮蔽フィルムが貼着された構造(赤外線遮蔽構造)でも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0036】
図7は、本発明の赤外線遮蔽フィルムの第4の実施の形態を示している。この実施の形態における赤外線遮蔽フィルムは、フィルム基材1の表面に、赤外線吸収層4を形成し、その上に反射層2を形成している。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態(図1)と同様であり、同様の部分には同じ符号を付している。
【0037】
この赤外線遮蔽フィルムでは、使用の際に室内側にフィルム基材1が露呈することとなり、赤外線遮蔽フィルム清掃等の作業性が向上する。
【0038】
この実施の形態の赤外線遮蔽フィルムの使用方法も、上記第1の実施の形態と同様にして、図8に示すように、窓ガラスWの室内側に貼着して使用される。そして、このようにして窓ガラスWの室内側に上記赤外線遮蔽フィルムが貼着された構造(赤外線遮蔽構造)でも、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0039】
上記第1〜第4の各実施の形態の第1の変形例として、各赤外線遮蔽フィルムにおいて粘着剤層3を省いてもよい。このような赤外線遮蔽フィルムによれば、粘着剤層3が形成されていないため、その粘着剤層3の表面に貼着する剥離自在のセパレータシートSが不要となり、赤外線遮蔽フィルムをそのままの形態で商品として運搬や販売等することができる。この赤外線遮蔽フィルムの使用方法としては、窓ガラスWの室内側または上記赤外線遮蔽フィルムの反射層2の表面に粘着剤を塗布して赤外線遮蔽フィルムを窓ガラスWに貼着し、上記第1〜第4の各実施の形態における赤外線遮蔽構造(図2,図4,図6,図8参照)と同様の構造にしてもよいし、窓ガラスW等に貼着することなく、上記赤外線遮蔽フィルムをそのまま、反射層2を赤外線吸収層4よりも赤外線の到来側に位置させた状態で、張設等してもよい。そして、これら各変形例の赤外線遮蔽フィルムによっても、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0040】
第2の変形例として、上記第1〜第4の各実施の形態の赤外線遮蔽フィルムにおけるフィルム基材1,5の厚みを厚くして、赤外線遮蔽フィルムを板状にしてもよい。板状のものであれば、窓ガラスW等に貼着せず、ついたて状にして使用することができる。また、このように板状とする場合には、フィルム基材1,5の透明材料として、ガラス板やガラス扉等があげられる。
【0041】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0042】
【実施例1】
上記第1の実施の形態と同様にして、図1に示す赤外線遮蔽フィルムを製造した。すなわち、まず、フィルム基材1としてPETフィルム(厚み:100μm)を準備し、このPETフィルムの一方の面(表面)にスパッタリングにより酸化チタン/銀/酸化チタンを厚み40nm/20nm/40nmに成膜して反射層2(表面抵抗は2.8Ω)を形成した。ついで、その反射層2の表面に粘着剤を塗工して粘着剤層(厚み:40μm)3を形成した。つぎに、ハードコート剤(大日本インキ化学工業社製、ハードクリヤー)に1phrの赤外線吸収剤(林原生物化学研究所製、NKX−1199)を添加したものを用いて、上記PETフィルムの他方の面(裏面)にハードコートして赤外線吸収層(厚み:40μm)4を形成した。そして、このようにして製造された赤外線遮蔽フィルムをガラス板(厚み:3mm)にラミネートし、図2に示す赤外線遮蔽構造体とした。
【0043】
【比較例1】
反射層2と赤外線吸収剤入り粘着剤層10とを備えた図9に示す従来の赤外線遮蔽フィルムを製造した。すなわち、まず、フィルム基材1であるPETフィルム(厚み:100μm)の一方の面(表面)にスパッタリングにより酸化チタン/銀/酸化チタンを厚み40nm/20nm/40nmに成膜して反射層2(表面抵抗は2.8Ω)を形成した。ついで、上記実施例1と同様の粘着剤に1phrの赤外線吸収剤(林原生物化学研究所製、NKX−1199)を添加したものを上記反射層の表面に塗工して赤外線吸収剤入り粘着剤層(厚み:40μm)10を形成した。そして、このようにして製造された赤外線遮蔽フィルムをガラス板(厚み:3mm)にラミネートして赤外線遮蔽構造体とした。
【0044】
【比較例2】
反射層2を備えた従来の赤外線遮蔽フィルムを製造した(赤外線吸収剤なし)。すなわち、まず、フィルム基材1であるPETフィルム(厚み:100μm)の一方の面(表面)にスパッタリングにより酸化チタン/銀/酸化チタンを厚み40nm/20nm/40nmに成膜して反射層2(表面抵抗は2.8Ω)を形成した。ついで、上記実施例1と同様の粘着剤を塗工して粘着剤層(厚み:40μm)3を形成した。そして、このようにして製造された赤外線遮蔽フィルムをガラス板(厚み:3mm)にラミネートして赤外線遮蔽構造体とした。
【0045】
〔日射透過率〕
このようにして得られた実施例1および比較例1,2の各赤外線遮蔽構造体を島津製作所製UV3100PCにかけ、各赤外線遮蔽フィルムの日射透過率を測定した。この測定では、ランプ光をガラス板側から照射した。また、この測定は、初期データを取った後、カーボンアーク試験機に60℃の雰囲気下でそれぞれ200時間および500時間投入した後も行なった。そして、その測定結果を下記の表1に示した。
【0046】
【表1】
【0047】
上記表1より、実施例1と比較例1とを比較すると、実施例1の方が、赤外線遮蔽効果が長く持続しており、赤外線吸収剤の耐久性が向上していることがわかる。また、比較例2では、赤外線遮蔽効果が殆どない。
【0048】
〔電波シールド性能〕
上記実施例1および比較例1,2の各赤外線遮蔽構造体における赤外線遮蔽フィルムの電波シールド性能をKEC法(使用電波:1GHz)により測定した。この測定も、上記日射透過率の測定と同様、初期データを取った後、カーボンアーク試験機に60℃の雰囲気下でそれぞれ200時間および500時間投入した後も行なった。そして、その測定結果を下記の表2に示した。
【0049】
【表2】
【0050】
また、上記表2より、電波シールド性能はいずれも劣化していないことから、各赤外線遮蔽構造体における赤外線遮蔽フィルムの電波シールド性能は、赤外線を吸収する赤外線吸収層4や赤外線吸収剤入り粘着剤層10の配置に関わらず、維持できることが確認できる。
【0051】
【発明の効果】
以上のように、本発明の赤外線遮蔽フィルムによれば、金属膜および金属酸化物膜の少なくとも一方からなる反射層が、赤外線吸収剤を含有している吸収層よりも、赤外線の到来側に位置している。このため、到来する赤外線を、まず反射層で反射させ、反射されなかった赤外線のみを赤外線吸収剤で吸収させることができるとともに、吸収層を入射した赤外線と反射した赤外線の双方が透過することがなくなる。そのため、赤外線吸収剤にかかる負荷が低減され、赤外線遮蔽効果が長く持続するようになる。
【0052】
特に、本発明の赤外線遮蔽フィルムにおいて、上記反射層の表面抵抗が3Ω以下に設定されている場合には、電波シールドフィルムとしての機能を付加することもできる。
【0053】
また、本発明の赤外線遮蔽フィルムにおいて、赤外線の到来側の表面に粘着剤層が形成されている場合には、窓ガラス等の透明被着体に簡単に貼着することができる。
【0054】
そして、本発明の赤外線遮蔽構造によれば、赤外線の到来側と反対側の透明被着体の面に、本発明の赤外線遮蔽フィルムが、粘着剤層の表面を上記透明被着体に当接させた状態で貼着されているため、赤外線吸収剤にかかる負荷が低減され、赤外線遮蔽効果が長く持続するようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の赤外線遮蔽フィルムの第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】上記赤外線遮蔽フィルムを用いた赤外線遮蔽構造を示す断面図である。
【図3】本発明の赤外線遮蔽フィルムの第2の実施の形態を示す断面図である。
【図4】上記赤外線遮蔽フィルムを用いた赤外線遮蔽構造を示す断面図である。
【図5】本発明の赤外線遮蔽フィルムの第3の実施の形態を示す断面図である。
【図6】上記赤外線遮蔽フィルムを用いた赤外線遮蔽構造を示す断面図である。
【図7】本発明の赤外線遮蔽フィルムの第4の実施の形態を示す断面図である。
【図8】上記赤外線遮蔽フィルムを用いた赤外線遮蔽構造を示す断面図である。
【図9】従来の赤外線遮蔽フィルムを用いた赤外線遮蔽構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 フィルム基材
2 反射層
3 粘着剤層
4 赤外線吸収層
Claims (4)
- 金属膜および金属酸化物膜の少なくとも一方からなる反射層と、赤外線を吸収する吸収剤を含有している吸収層とを備えた多層構造の赤外線遮蔽フィルムであって、上記反射層が、吸収層よりも上記赤外線の到来側に位置していることを特徴とする赤外線遮蔽フィルム。
- 上記反射層の表面抵抗が3Ω以下に設定されている請求項1記載の赤外線遮蔽フィルム。
- 請求項1または2記載の赤外線遮蔽フィルムにおいて、上記赤外線の到来側の表面に粘着剤層が形成されている赤外線遮蔽フィルム。
- 赤外線の到来側と反対側の透明被着体の面に、請求項3記載の赤外線遮蔽フィルムが、粘着剤層の表面を上記透明被着体に当接させた状態で貼着されていることを特徴とする赤外線遮蔽構造。
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JP2010513942A (ja) * | 2006-12-14 | 2010-04-30 | ナムローゼ・フェンノートシャップ・ベーカート・ソシエテ・アノニム | 太陽光制御フィルム |
JP2011195417A (ja) * | 2010-03-23 | 2011-10-06 | Asahi Glass Co Ltd | 合わせガラス |
JP2012189683A (ja) * | 2011-03-09 | 2012-10-04 | Nitto Denko Corp | 赤外線反射フィルム |
-
2002
- 2002-12-05 JP JP2002353868A patent/JP2004184844A/ja active Pending
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