JP2004184202A - 液体吐出装置における液体の背圧制御方法、液体吐出装置、マイクロアレイ製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】液体吐出装置において、安定した吐出を得るために、吐出する液体の背圧を効率よく制御することが可能な背圧制御方法、並びに、吐出を行うカートリッジの小型化、低コスト化が可能で、かつ安定した吐出が得られる液体吐出装置、並びにその液体吐出装置を用いて、多種類のマイクロアレイを効率よく作製することができるマイクロアレイの製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】吐出する液体を入れた液体貯留部4と、液滴を吐出するノズル50を有する吐出ヘッド部5とを備えた複数のカートリッジ3を、密閉可能なケース2に設けられた開口部26に前記吐出ヘッド部5をシール材27によりシールして装着し、前記液体貯留部4の液体注入口40を開口させた状態として、密閉された前記ケース2内の圧力を制御する。
【選択図】 図1
【解決手段】吐出する液体を入れた液体貯留部4と、液滴を吐出するノズル50を有する吐出ヘッド部5とを備えた複数のカートリッジ3を、密閉可能なケース2に設けられた開口部26に前記吐出ヘッド部5をシール材27によりシールして装着し、前記液体貯留部4の液体注入口40を開口させた状態として、密閉された前記ケース2内の圧力を制御する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主としてマイクロアレイの作製のための液体吐出装置、マイクロアレイの製造方法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子研究機関、医療、薬品開発の研究機関等においては、DNA解析や免疫学的解析等のために、スライドガラスのような基板上に、数千〜数万種類のDNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)、タンパク質などの生体分子溶液をマトリックス状にスポットしたマイクロアレイ(バイオチップ)が用いられる。このようなマイクロアレイを作製する方法としては、接触ピン法、マイクロピペット法、インクジェット法などが知られている。そのうち、特に最近ではインクジェット法が注目を浴びている。これは、インクジェット法が、極少量の液滴を目的の位置に高精度に打つことができること、吐出ヘッドが基板に接触しないこと、基板材料にガラスや合成樹脂、金属、フィルム等任意の材料が使用できること、動作音が低いこと、低コストであることなどの特徴を有しているからである。
インクジェット法は、インクジェットヘッドのアクチュエータ部を、例えば圧電体により変位させることにより、ダイヤフラムのポンプ作用でノズル先端から液滴を吐出させる方法である。
【0003】
このようなインクジェット法を用いたものとして、例えば特許文献1がある。この方法は、ピペット本体に、ピペット本体の外部から試料を注入する試料注入口と、注入された試料を導入しかつ一時貯留し得るキャビティと、貯留された試料をノズル部の貫通孔を経由して外部に吐出する試料吐出口とを形成してなるとともに、ピペット本体のキャビティ形成位置に対応した部位の外面上に圧電/電歪素子を設けてなり、圧電/電歪素子の駆動によりキャビティ内の体積を変化させ、キャビティ内に貯留された試料の一定量を試料吐出口から吐出させるマイクロピペットを用いるものである。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−196010号公報(特許請求の範囲、段落[0040]〜[0045]、図1、図9、図10)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来技術においては、キャビティ内の液体の背圧を制御してないため、キャビティ内の液体が少なくなるに伴って吐出圧力が変化するので、吐出が不安定になるという問題がある。また、背圧を一定に保ちノズル開口からの液漏れを防ぐためにスポンジ等のフォームを液体貯留部に入れる方法もあるが、液体貯留部が大きくなり小型化が困難になるとともに、コスト高となる問題がある。
【0006】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑み、液体吐出装置において、安定した吐出を得るために、吐出する液体の背圧を効率よく制御することが可能な背圧制御方法、並びに、吐出を行うカートリッジの小型化、低コスト化が可能で、かつ安定した吐出が得られる液体吐出装置、並びにその液体吐出装置を用いて、多種類のマイクロアレイを効率よく作製することができるマイクロアレイの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る液体吐出装置における液体の背圧制御方法は、吐出する液体を入れた液体貯留部と、液滴を吐出するノズルを有する吐出ヘッド部とを備えた複数のカートリッジを、密閉可能なケースに設けられた開口部に前記吐出ヘッド部をシールして装着し、前記液体貯留部の液体注入口を開口させた状態として、密閉された前記ケース内を減圧することを特徴とする。
【0008】
本発明の背圧制御方法は、密閉されたケース内に装着された複数のカートリッジ内の液体の背圧を該ケース内を減圧することにより一括して制御することができる。したがって、個々にカートリッジ内の液体の背圧を制御する手段を設けなくてもよいので、カートリッジの小型化、低コスト化が可能である。
なお、ケースの減圧作用は吐出時に行えばよく、安定した吐出が得られる。
【0009】
本発明の背圧制御方法では、複数のカートリッジに代えて、単一のカートリッジを使用することができる。多種類のマイクロアレイを作製する場合においては、それぞれ異なる種類の生体分子溶液の注入を容易にするために、カートリッジを独立に形成された複数の液体貯留部を有する単一のカートリッジの構成とすることが都合がよいものである。
したがって、単一のカートリッジを使用する場合、本発明の液体吐出装置における背圧制御方法は、吐出する液体を入れた複数の液体貯留部と、液滴を吐出する複数のノズルを有する単一の吐出ヘッド部とを備えた単一のカートリッジを、密閉可能なケースに設けられた開口部に前記吐出ヘッド部をシールして装着し、前記液体貯留部の液体注入口を開口させた状態として、密閉された前記ケース内を減圧するものである。
【0010】
ここで、マイクロアレイとは、ガラス等の基板上に、数千〜数万種類のDNAやRNA、タンパク質などのプローブサンプルが配列されたものである。DNAマイクロアレイ(DNAチップともいう)がその代表的な例である。また、DNA(Deoxyribo Nucleic Acids:デオキシリボ核酸(遺伝物質))とは、塩基、糖(デオキシリボーズ)及びリン酸が結合したもの(ヌクレオチド)がさらに結合し、最終的には二重らせん形となったものである。ここで、塩基はアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類がある。また、DNAマイクロアレイは、DNAの相補性を利用し、検査、解析に利用するものである。
RNA(ribonuclec acid:リボ核酸)は、リボヌクレオチドが重合した核酸で、リボソームRNA、伝令RNA、転移RNAなどがあり、核のみでなく細胞全体に分布している。塩基はアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)の4種類である。また、1本鎖構造である。
タンパク質は、生物細胞に不可欠の主要成分として、20種のL−アミノ酸がペプチド結合することで合成される高分子ポリペプチドの総称であり、様々な分子量、構造、機能をもった生体高分子である。
【0011】
吐出時におけるケースの減圧の程度は、大気圧に対して−0.05〜−3kPaの圧力にすることが好ましい。この範囲内の減圧であれば、安定した吐出が得られる。特に、減圧下限値(−3kPa)を超えると、液滴の重量変化が大きくなり、不安定な吐出状態となりやすい。
【0012】
本発明の液体吐出装置は、密閉可能なケースと、該ケース内に着脱自在に装着される単一または複数のカートリッジとを備え、
前記カートリッジは、それぞれ、吐出する液体の注入口を有する液体貯留部と、液滴を吐出するノズルを有する吐出ヘッド部とを備えた構成である。
したがって、前記密閉可能なケースに、例えば吸引手段を接続すれば、ケース内部を減圧することができ、しかもすべてのカートリッジ内の液体の背圧を一括して制御することができる。したがって、個別のカートリッジ背圧制御手段は不要となるので、カートリッジの小型化、低コスト化が可能である。
また、液体貯留部にフォームやゴムタンク等を用いないため、生体高分子とのコンパティビリティが高いものとなる。
また、独立のカートリッジであるため、交換が容易で、クロスコンタミネーションが生じない。
【0013】
前述のように、本発明は単一のカートリッジも使用可能である。この場合、本発明の液体吐出装置は、密閉可能なケースと、該ケース内に着脱自在に装着される単一または複数のカートリッジとを備え、
前記カートリッジは、吐出する液体の注入口を有する複数の液体貯留部と、液滴を吐出する複数のノズルを有する単一の吐出ヘッド部とを備えた構成とする。なお、単一のカートリッジを複数装着することもできる。
前記カートリッジは、独立した複数の液体貯留部を備えているので、従来の自動分注装置等を使用して容易に生体分子溶液の注入を行うことができる。カートリッジの交換も一度に別種類の生体分子溶液のものに交換することができる。
【0014】
本発明の液体吐出装置を例えばマイクロアレイの作製に使用する場合、前記ケースが、所定の方向に移動するキャリッジと一体に構成されたキャリッジケースとしてもよい。つまり、キャリッジと一体型のキャリッジケースとするものである。あるいは、キャリッジと着脱自在な分離型の構成としてもよい。
前者の一体型の場合は、カートリッジ単位で着脱、交換が可能で、後者の分離型の場合は、ケース単位で着脱、交換が可能である。いずれを採用するかはコストバランスによる。
【0015】
本発明の液体吐出装置においては、前記ケースの底面に前記カートリッジの吐出ヘッド部が嵌合する開口部を設け、該吐出ヘッド部の嵌合時、該開口部の気密がシール材により保持される構成となっている。
このように構成することによって、カートリッジの着脱口である開口部の気密性が保持される。シール材は、開口部もしくは吐出ヘッド部のどちらか一方に設ければよい。
【0016】
ケースの密閉とカートリッジの着脱を容易にするため、前記ケースは、ケース本体と、該ケース本体にシール材を介して開閉自在に結合された蓋と、該蓋を速脱着式にロックするロック手段とを備えた構成とする。
ロック手段は、例えばバックル方式のようにワンタッチで速脱着が可能な構成とすることが好ましい。このようなロック手段とすることにより、マクロアレイの作製において比較的頻繁に行われるカートリッジの交換を容易に行うことができる。なお、蓋はシール材を介してケース本体に密着されるので、ケースの密閉は保たれる。
【0017】
本発明の液体吐出装置は、前記ケースの内部圧力が圧力調整手段により減圧および/または加圧調整される構成となっていることが好ましい。
吐出時には、ケース内を前記のように減圧すればよく、吐出前にあっては、加圧あるいは減圧と加圧の両方を用いて、以下に述べる各種の準備作業ないしメンテナンスを行うことができる。例えば、
(1)前記ケースの内部圧力を前記圧力調整手段により大気圧よりも高く調整することによって前記液体貯留部内の液体を前記ノズルに充填すること。
(2)前記ケースの内部圧力を前記圧力調整手段により大気圧よりも高く調整することによって前記吐出ヘッド部内に滞留する気泡および残留物を排出すること。
(3)前記ケースの内部圧力を前記圧力調整手段により制御することによって、前記ノズルから洗浄用液体を吸引および排出し、前記カートリッジ内部を洗浄すること。
(4)前記ケースの内部圧力を前記圧力調整手段により減圧することによって、前記カートリッジ内に収容された液体中の溶存気体を脱気すること。
(5)前記ケース内に乾燥用空気を送入することによって、洗浄後の前記カートリッジ内部を乾燥させること。
(6)前記ケース内の温度および湿度を温湿度調整手段により調整すること。
前記(2)、(4)の操作により、不吐出の原因となる気泡や、ノズルの目詰まりの原因となる固形成分、異物等の残留物を排除することができる。また、(1)の操作により、液体の充填(プライミング)を行うことができる。
また、クロスコンタミネーションを防止するためには、(3)、(5)の操作によって、カートリッジ内を洗浄し、その後、カートリッジ内部を乾燥させる。(6)の操作は圧力調整手段に温湿度調整部を付加することで可能である。
以上の各操作は、すべてのカートリッジに対して一括して行うことができる。なお、独立の複数の液体貯留部をもつ単一のカートリッジの場合も同様である。
【0018】
また、本発明の液体吐出装置は、前記カートリッジの液体貯留部の全容量が、前記ケースの容積の0.03倍以下とするものである。
密閉可能なケースであれば、このように液体貯留部とケースの容積比を設定することにより、吐出に伴ってケース内部が減圧していくので、ケース内部圧力を圧力調整手段等でアクティブに制御しなくてもよい。
【0019】
また、前記吐出ヘッド部は静電駆動方式の構成とするのが好ましい。静電駆動方式によれば、極微小の液滴を非接触で正確に吐出することができるとともに、全ノズルからの同時吐出を容易に行うことができる。
また、前記ケースは、前記カートリッジの装着時、該カートリッジと電気的に接続する構成となっていることがこのましい。これにより、カートリッジの交換が容易になる。
【0020】
本発明のマイクロアレイ製造方法は、請求項4乃至19のいずれかに記載の液体吐出装置を用いてマイクロアレイを製造することを特徴とする。
前述したように、本発明の液体吐出装置を使用することにより、多数のカートリッジ(単一カートリッジの場合は多数の液体貯留部)内の液体の背圧を一括して制御できるので、微小な液滴を安定して吐出させることができ、高密度かつ低コストのマイクロアレイの製造が可能である。
【0021】
前記のように、マイクロアレイを効率的に製造するため、本発明のマイクロアレイ製造装置は、基台と、前記基台上において、直交する方向に相対的に移動するキャリッジおよびテーブルと、前記テーブル上にセットされた一または複数のマイクロアレイ作製用基板とを備え、請求項4乃至19のいずれかに記載の液体吐出装置の密閉可能なケースを前記キャリッジと一体に構成するか、または、
基台と、前記基台上において、直交する方向に相対的に移動するキャリッジおよびテーブルと、前記テーブル上にセットされた一または複数のマイクロアレイ作製用基板とを備え、請求項4乃至19のいずれかに記載の液体吐出装置の密閉可能なケースを前記キャリッジと着脱自在な分離型の構成としたものである。
さらに、前記ケースの内部圧力を調整する圧力調整手段を備えた構成とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による液体吐出装置の構成図で、一部を断面図で示している。図2、図3は液体吐出装置の正面図と側面図である。また、図4は液体吐出装置におけるケース本体の平面図である。
この液体吐出装置1は、密閉可能なケース2と、ケース2内に着脱自在に装着される複数のカートリッジ3とを備えている。カートリッジ3はケース2内の底面にM行×N列で配置されている。まず最初に、カートリッジ3について説明し、その次にケース2について構成を説明する。
【0023】
(1)カートリッジの構成
図5はカートリッジの斜視図、図6、図7はカートリッジの下面図と断面図である。
カートリッジ3は、吐出する液体(例えば、生体分子溶液)10を貯留する液体貯留部(リザーバとも呼ばれる)4と、液体10を吐出する一または複数のノズル50を有する吐出ヘッド部5とが一体的に構成された構造となっている。
液体貯留部4はガラス、プラスチック等からなり、上部には液体10の注入口40が開口した状態で設けられている。また、液体貯留部4の下部には流路41が形成され、この流路41は、後述する吐出ヘッド部4の流路に連通するように接続される。
【0024】
(2)吐出ヘッド部
カートリッジ3の先端部(下端部)には、例えば静電駆動方式の吐出ヘッド部5が設けられている。この吐出ヘッド部5は、図7に示すように、3枚の基板51、52、53を相互に接合した構造となっている。図7において、左側の基板51はガラス基板、中間の基板52はSi基板、右側の基板53はガラス基板をそれぞれ用いている。中間のSi基板52には、予めエッチングにより前記ノズル50、吐出室54、および流路55が形成されている。吐出室54の底部(図7では側壁部)が振動板56となっている。この振動板56に所定の空隙でもって対面するアクチュエータ電極57が一方の例えばガラス基板53に形成されている。アクチュエータ電極57は、例えば、酸化錫を不純物としてドープした酸化インジウム膜、すなわちITO(Indium Tin Oxide:インジウム酸化第1錫)膜で電極を形成している。ただし、電極57はこれに限定されるものではない。また、アクチュエータ電極57は、Si基板の振動板56との間に所定の空隙を確保するために、ガラス基板53に設けられた凹部58内に形成することが好ましい。
他方の例えばガラス基板51は、中間のSi基板52と接合され、吐出流路の蓋基板として用いられる。これら3枚の基板51、52、53は陽極接合または接着により互いに接合されている。
【0025】
このように構成された吐出ヘッド部5を前記液体貯留部4と接着により接合することによって、吐出ヘッド部5の流路55と液体貯留部4の流路41とを接続し、カートリッジ3が構成される。そしてさらに、前記アクチュエータ電極57とSi基板52に駆動回路6を配線することにより、静電駆動方式の吐出ヘッド部5が構成される。図6において、61、62は液体貯留部4の下面に設けられた接点で、63は配線部である。
【0026】
ここで、前記のように構成された吐出ヘッド部5の動作を簡単に説明する。静電駆動方式においては、アクチュエータ電極57を正に帯電させ、振動板56を負に帯電させると、振動板56が電極57側へ引き寄せられ、吐出室54の容積が増加する。この状態で駆動回路6によりアクチュエータ電極57への電荷の供給を止めると、振動板56は元に戻るため、そのときの圧力により容積変化の差分に相当する一定量の液滴がノズル50より吐出される。
なお、ここでは、液滴吐出駆動方法を静電気を利用した静電駆動方式で説明したが、圧電体を用いる圧電駆動方式としてもよい。
【0027】
(3)ケースの構成
ケース2は、図1〜図4に示すように、箱形のケース本体20と、ケース本体20にヒンジ21で開閉自在に結合された蓋22と、ケース本体20の上面または蓋22の下面の周辺部(シール面)に設けられたシール材23と、蓋22を速脱着式にロックするロック手段24と、ケース2の内部圧力を所定の負圧または正圧にするための圧力調整手段(図8参照)に接続される接続パイプ25とを備えている。
また、前記カートリッジ3を着脱自在に装着するため、図4に示すように、ケース本体20の底面には吐出ヘッド部5が嵌合する開口部26がカートリッジ3の数だけ設けられている。また、ケース2内の気密性を保つために、開口部26の周辺部には例えばパッキンからなるシール材27が接着等で貼り付けられている。シール材27は例えばOリングを用い、これをカートリッジ3の吐出ヘッド部5の外周に設けた溝内に嵌め込む方法でもシールすることができる。
また、各開口部26の近傍にはカートリッジ3の装着時、吐出ヘッド部5の接点61、62と接触し電気的接続をする電極28、29が設けられている。
【0028】
(4)ケースの蓋のロック機構
ケース2の蓋22のロック機構についてはいろいろな形態が考えられる。基本的には簡単な速脱着方式が望ましい。その一例をバックル方式の止め具(ロック手段)24で示す。この止め具24は、図2、図3に示すように、方形状の掛け金241を枢着したレバー242をケース本体20に軸支し、掛け金241の先端部を蓋22に突設したフック243に引っ掛けてレバー242を引き倒すことによりロックされる構造となっている。すなわち、掛け金241のレバー242との軸結合部245はレバー242の回転中心である軸支部244より半径rだけ偏心した(離れた)位置に枢着されており、かつロック状態のときには軸結合部245が軸支部244よりも若干ケース表面側に近づく位置にて停止するようにしている。そのため、ケース本体20の表面に当接するストッパー246がレバー242に設けられている。したがって、このロック位置からレバー242を引き起こせば、掛け金241を簡単にフック243から外すことができ、蓋22を開けることができる。蓋22を閉じるときには掛け金241をフック243に引っ掛け、レバー243をストッパー246がケース本体20の表面に当接するまで引き倒す。これによって蓋22とケース本体21との間に設けられたシール材23を締め付け、ロックされる。したがって、ケース2を簡単に密閉することができる。また、蓋22の開閉も容易であるので、カートリッジ3の着脱、交換が容易となる。なお、シール材23はパッキンで示してあるが、前記のようにOリングを用いてシール面の溝に張り巡らしてもよい。
【0029】
(5)ケースの圧力調整手段
(i)減圧の場合
前記止め具24により蓋22をロックし、ケース2を密閉状態とする。この密閉状態のケース2に前記接続パイプ25を介して、例えば図8(a)に示すような負圧調整手段7を接続する。負圧調整手段7は吸引ポンプ71と圧力コントローラ72とから構成されており、ケース2は例えば伸縮自在なチューブ73により圧力コントローラ72を介して吸引ポンプ71に接続されている。また、圧力コントローラ72は電磁弁74、制御回路75、および圧力センサ76から構成されている。したがって、吸引ポンプ71により密閉状態のケース2内部の空気を吸引することにより、ケース2の内部圧力が制御回路75で予め設定された圧力(負圧設定値)になるようにケース2内部を減圧することができる。この減圧は各カートリッジ3の液体注入口40を通じて液体貯留部4内の液体10に作用する。したがって、ケース2内部に装着された全部のカートリッジ3に対して液体貯留部4内の液体10の背圧を一括して制御することができる。よって、吐出時においてケース内部の適正な減圧制御を行うことにより、安定した吐出を行わせることができる。また、従来のように液体貯留部4にスポンジ等のフォームやゴムタンク等を用いる必要がないため、カートリッジ3の小型化、低コスト化が可能である。
【0030】
(ii)加圧の場合
逆に、ケース2内部を加圧する場合は、例えば図8(b)に示すような正圧調整手段8に密閉状態のケース2を接続して加圧する。正圧調整手段8はコンプレッサー81と圧力コントローラ82とからなり、ケース2とコンプレッサー81とは圧力コントローラ82を介して伸縮自在なチューブ83で接続されている。圧力コントローラ82は、電磁弁84、制御回路85、および圧力センサ86から構成されている。したがって、コンプレッサ81により密閉状態のケース2内部を加圧することにより、ケース2の内部圧力が制御回路85で予め設定された圧力(正圧設定値)になるようにケース2内部を加圧することができる。これによって、吐出前にあっては、ケース内部の適正な加圧制御を行うことにより、全部のカートリッジ3に対して一括して、例えば、各吐出ヘッド部5のノズル50内に滞留する固形成分や異物、あるいは吐出室54内に残留する気泡等を排出したり、あるいは液体貯留部4内の液体10をノズル先端まで完全に充填することができる。また、洗浄液を用いて前記減圧と加圧を交互に加えることにより、ノズル50から洗浄液を吸引および排出することができ、これによりカートリッジ3内部を洗浄することができる。
なお、前記負圧調整手段7および正圧調整手段8は、ポンプ、空気ファンなど正逆の圧力発生源と回路の切替弁を用いて減圧および加圧の兼用タイプに構成することが好ましい。
【0031】
実施の形態2.
前記のように構成された液体吐出装置1を用いてマイクロアレイを作製するには、液体吐出装置1とガラスあるいはプラスチック等からなるマイクロアレイ作製用基板を直交するX、Y方向に相対的に走査移動することによって作製する。その一例を図9に示す。
図9は本発明のマイクロアレイ製造装置の概要を示す斜視図である。
このマイクロアレイ製造装置100は、基台110上において、水平面内でX方向に移動するキャリッジを前記液体吐出装置1のケース2にて一体に構成したキャリッジケース(あるいはカートリッジホルダ)120としたものである。キャリッジケース120の構成については、前記ケース2の構成と全く同じであるので、主な構成要素には同一の符号を付して説明は省略する。
【0032】
キャリッジケース120の移動方向Xと直角のY方向に相対的に移動するテーブル130上には、スライドガラスや樹脂製等からなるマイクロアレイ作製用基板140が一または複数枚セット(載置)される。さらに、X軸(キャリッジケース)およびY軸(テーブル)の駆動制御手段150が設けられており、またX軸ダクト101上には減圧および加圧兼用タイプの圧力調整ユニット160が設置され、伸縮自在なチューブ161でキャリッジケース120と接続されている。また、液体吐出装置1の吐出制御手段(図示せず)は一般的にPC(パーソナルコンピュータ)と専用回路にて構成されている。
【0033】
キャリッジケース120のケース本体20の底面には、前述したように複数のカートリッジ3が着脱自在に装着される。各カートリッジ3の液体貯留部4には吐出する液体10として、例えばDNA断片を含むそれぞれ異なる種類の生体分子溶液が入れられている。カートリッジ3は、装着時、吐出ヘッド部5がキャリッジケース120底面に設けられた開口部26に密接に嵌合し、シール材27により開口部26からの空気洩れを防止するとともに、吐出ヘッド部5の接点61、62と開口部26近傍に設けられたキャリッジケース120内の電極28、29とがそれぞれ接触して電気的接続を果たす。各電極28、29はキャリッジケース120の側面に設けられたコネクタ105を介して前記吐出制御手段に接続されている。また、カートリッジ3は、図10に示すように、吐出ヘッド部5の先端面すなわちノズル開口面59がキャリッジケース120の下面とほぼ一致するように装着される。したがって、液滴の吐出距離はキャリッジケース120の下面とテーブル130上のマイクロアレイ作製用基板140の表面間の空隙間隔Gで設定することができる。
【0034】
所要数のカートリッジ3が搭載されたキャリッジケース120はX軸駆動機構によってX方向に走査される。X軸駆動機構は図示していないが、公知のタイミングベルト機構やボールネジ機構等を用い、これにキャリッジケース120を結合してパルスモータを駆動することで実施できる。図9では、このようなX軸駆動機構が側面に長穴103を設けたX軸ダクト101内に内蔵されているものである。
テーブル130はY軸駆動機構によってY方向に走査される。このY軸駆動機構は前記X軸駆動機構と同様の構成であり、側面に長穴104を設けたY軸ダクト102内に内蔵されている。
なお、テーブル130上にはマイクロアレイ作製用の基板140が1枚または複数枚セット(載置)される。また、テーブル130は固定式としてもよい。この場合は、キャリッジケース120を直交するX、Y両方向に走査可能な構成とする。
【0035】
前記のように構成されたマイクロアレイ製造装置100において、全てのカートリッジ3をキャリッジケース120に搭載した後では、キャリッジケース120の蓋22を閉じ、ロック手段としての止め具24により蓋22をロックする。蓋22とケース本体20のシール面はシール材23によりシールされる。これにより、キャリッジケース120は密閉状態に保持される。
その後、キャリッジケース120の接続パイプ25にチューブ161で接続された圧力調整ユニット160を作動し、キャリッジケース120の内部圧力が所定の負圧または正圧になるよう圧力を調整する。
【0036】
(1)吐出時
ノズル50より液滴を吐出する際には、圧力調整ユニット160によりキャリッジケース120の内部圧力を負圧に調整して吐出を行う。負圧の圧力は、各カートリッジ3の液体注入口40を通じて液体貯留部4内の液体10の背圧として作用する。またこのとき、キャリッジケース120の内部圧力は、大気圧よりも低い圧力、好ましくは図11に示すように、−0.05kPa〜−3kPaの範囲の圧力に調整される。この負圧設定値は図8(a)の制御回路75で設定されている。
図11は背圧と吐出重量(ノズル50から吐出される液滴の重量をいう)との関係を示すグラフである。横軸に背圧を、縦軸に液滴重量変化をとって示してある。大気圧のときは横軸の背圧が「0」の位置としている。また、縦軸の液滴重量変化(%)は、大気圧吐出時の液滴重量に対するその負圧吐出時の液滴重量の減少割合をあらわす。例えば、背圧−3kPaのとき、液滴重量変化が20%というのは、大気圧吐出時の液滴重量の80%の液滴重量であることを意味している。−3kPa以内であれば吐出重量は減少するが、安定した吐出が可能である。また、大気圧に対し、0.05kPa以上の減圧にすることにより、メニスカスがこわれた時に起こるノズルからの液漏れを防ぐことができる。しかも、キャリッジケース120内の全てのカートリッジ3の背圧を一括して制御することができる。
【0037】
マイクロアレイは、キャリッジケース120をX方向に主走査し、マイクロアレイ作製用基板140をセットしたテーブル130をY方向に副走査することによって作製することができる。
また、背圧制御(調整)のもとでは、極少量(数ピコリットル)のオーダーで液滴を吐出することができるので、高密度のマイクロアレイを作製することができる。しかも、液体貯留部4にフォームやゴムタンク等を用いないため生体高分子とのコンパティビリティーが高い。また、カートリッジ3の小型化、低コスト化が可能で、極少量の液体の吐出ができるため、マイクロアレイの製造コストの低減が可能である。
また、カートリッジ3はそれぞれ独立のものであるため、交換が容易で、クロスコンタミネーションがない。
【0038】
(2)吐出前の準備作業およびメンテナンス
吐出前にあっては、下記のような準備作業(処理)およびメンテナンスが適宜実施される。これらの処理は、通常、キャリッジケース120のホームポジションにおいて実施される。
(i)液体の充填
液体の充填(プライミング)とは、カートリッジ3の液体貯留部4内に注入された液体10をノズル50の先端まで完全に満たした状態に充填することをいう。このプライミング処理の際には、圧力調整ユニット160により密閉状態のキャリッジケース120内部を加圧する。これによって、全てのカートリッジ3に対して液体貯留部4内の液体10を一括して加圧し、各ノズル50の先端まで液体10を充填することができる。また、加圧の程度は、生体分子溶液の粘度や吐出ヘッド部5内の流体抵抗等にもよるが、大気圧よりも少し高い圧力に設定して行う。ノズル50からの生体分子溶液の排出量があまり多くならないように留意する。また、ノズル50内に滞留する固形成分や異物等の残留物も排出することができる。これらの残留物や気泡の存在はノズルの目詰まりや不吐出の原因となるので、吐出が不安定になったときに、上記の方法で除去される。
【0039】
(ii)洗浄
各カートリッジ3のノズル50は時々洗浄する必要がある。洗浄処理は、洗浄用液体を用いて行う。洗浄用液体としては、例えば、蒸留水、エタノール、合成洗剤もしくは殺菌剤入りの洗浄液などが用いられる。洗浄に際しては、これらの洗浄用液体を入れた受け皿(図示せず)をキャリッジケース120のホームポジションにて昇降可能に設ける。この受け皿の洗浄用液体内に各カートリッジ3のノズル先端面(すなわち、キャリッジケース120の底面全体)が浸漬するように受け皿を上昇させた後、圧力調整ユニット160により減圧と加圧を交互にキャリッジケース120に与える。これによって、洗浄用液体は各ノズル50から吸い込まれ、また逆に排出される。このように洗浄用液体の吸引と排出を繰り返すことにより全てのカートリッジ3を一括して洗浄することができる。
【0040】
(iii)乾燥
洗浄後は、各カートリッジ3を乾燥する。この処理では乾燥用空気を圧力調整ユニット160によりキャリッジケース120内に送り込む。乾燥用空気は各ノズル50から外部へ排出されるので、全てのカートリッジ3を一括して乾燥することができる。
(iv)温度・湿度管理
圧力調整ユニット160は、例えば図8(b)に示した回路にさらに温度センサ、湿度センサを追加することにより温度・湿度調整部(図示せず)を有する構成とすることができる。このような温度・湿度調整部により、キャリッジケース120内の温度・湿度の一括管理が可能なので、生体分子溶液の劣化が生じない。普通、常温・常湿に調整される。
(v)溶存気体の脱気
生体分子溶液をカートリッジ3に注入する際、液体中に溶存気体(一般には、空気)が含まれることがある。溶存気体が存在すると、気泡発生による吐出不良の原因となるので脱気する必要がある。気泡は前述したプライミングの際に除去することができるが、キャリッジケース120内を減圧することによって気泡の発生を抑制することができる。この脱気処理は、圧力調整ユニット160を用いて、通常、キャリッジケース120内を10kPa程度に減圧下することにより、液体10中の溶存気体(空気以外の気体も含む)を脱気することができる。
【0041】
実施の形態3.
図12はキャリッジとケースの分離可能な構成を示す断面図、図13はキャリッジの斜視図である。
この実施形態では、第2の実施形態で示した一体型のキャリッジケース120と異なり、キャリッジ121とケース2を分離型に構成したものである。
キャリッジ121は、例えば方形状の枠体により構成されている。この支持フレーム122の中に密閉可能なケース2を入れて保持する。そのため、ケース本体20の下面に、支持フレーム122の底面と係合する段付き部123を設けている。段付き部123は支持フレーム122の上端と係合するようにケース本体20の側面に設けてもよい。また、支持フレーム122にはケース本体20に取り付けられるコネクタ105の取付位置によってはコネクタ105を逃がすための切欠き凹部124が設けられることもある。
なお、ケース2を支持フレーム122に搭載したとき、支持フレーム122の下端とケース2の下面を必ずしも面一にする必要はないが、ケース2の下面が引っ込み気味よりも突出気味のほうが好ましい。図13において、125は前記X軸機構との連結部である。
【0042】
この実施形態によれば、ケース2をケースごとキャリッジ121から取り外すことができるので、任意の配列を有するケース2と簡単に取り替えることができる。したがって、マイクロアレイの配列の自由度が高い。また、カートリッジ
の形態、個数の相違等、あるいはケース2の配線不具合が発生した場合などにも迅速に対応することができる。
【0043】
実施の形態4.
図14はマルチリザーバ型の単一カートリッジの例を示す上面図、図15はその断面図である。
この実施形態に示す単一のカートリッジ30は、複数の液体貯留部4を有する第1の基板31と、第1の基板31との間で独立の流路33を形成する第2の基板32とを接合し、第2の基板32の下面中央部にヘッドチップからなる吐出ヘッド部5を接合したものである。液体貯留部4から流路33を経由してノズル50に至る吐出径路はすべて独立に構成されている。
第1および第2の基板31、32はガラスまたはプラスチックからなり、両基板は例えば熱溶着により接合されている。
吐出ヘッド部5は小型のヘッドチップとして構成されており、その構造は図7とほぼ同様である。このヘッドチップ(吐出ヘッド部5)は接着により第2の基板32の下面に接合されている。
【0044】
このように構成された単一のカートリッジ30を前述したキャリッジ121と一体型のキャリッジケース120または分離型のケース2に搭載するには、それらのキャリッジケース120またはケース2の底面に一つの開口部26を設けて、その開口部26にヘッドチップからなる吐出ヘッド部5を密接に嵌合する。開口部26の周辺部には前述したとおりシール材27および電極28、29が設けられている。
【0045】
この実施形態によれば、吐出ヘッド部5の2列のノズル50全部から同時に吐出させることができるので、多種類のプローブサンプルをもつマイクロアレイを短時間に作製することができる。また、キャリッジケース120またはケース2の吐出時の減圧作用は前述したとおりであるので、微少量の液滴を安定して吐出することができる。また、吐出前の準備処理およびメンテナンスについても前述の通りに行うことができる。なお、この単一のカートリッジ30をキャリッジケース120またはケース2と着脱するには、第1の基板31に適当な摘みを設けて着脱すればよい。
【0046】
実施の形態5.
この実施形態は、個々に独立したカートリッジ3(図1参照)あるいは単一のカートリッジ30(図14参照)を密閉したケースまたはキャリッジケースに収容するものである。例えば、図16に示すように、個々に独立したカートリッジ3を複数、密閉可能なケース2Aに収容する。この場合、ケース2Aは図1、図9、図12等で示したケース2あるいはキャリッジケース120から圧力調整手段に接続する接続パイプ25を省いた形態のものでよい。
そして、ケース2Aの容積V1と、全カートリッジ3の液体貯留部4の総容量V2との比率を、次のように設定する。
V2/V1≦3/100
ケース2Aは密閉されているので、各カートリッジ3の吐出動作に伴って液体貯留部4内の液体が減少していくため、ケース2Aの内部は減圧されていくことになる。
したがって、本実施形態によれば、前述のようにケースの内部圧力を圧力調整手段(圧力調整ユニット160)によってアクティブに制御しなくても、安定した吐出が得られる。
【0047】
本発明における液体吐出装置およびカートリッジは、マイクロアレイの作製に限られるものでないことはいうまでもない。したがって、通常のインクジェットヘッドとしても利用することができる。また、液滴の吐出方向も下向きに限定されるものではなく、横向きのいわゆるエッジタイプとして構成することもできる。さらに、色の異なるインクや発光材料を含む溶液を液体貯留部4に入れることにより、カラーフィルタや電界発光基板の製造にも好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による液体吐出装置の断面図。
【図2】液体吐出装置の正面図。
【図3】液体吐出装置の側面図。
【図4】液体吐出装置におけるケース本体の平面図。
【図5】カートリッジの斜視図。
【図6】カートリッジの下面図。
【図7】カートリッジの断面図。
【図8】圧力調整手段の構成図。
【図9】本発明のマイクロアレイ製造装置の概要を示す斜視図。
【図10】カートリッジを搭載したキャリッジケースの断面図。
【図11】背圧と吐出重量の関係を示すグラフ。
【図12】キャリッジとケースの分離可能な構成を示す断面図。
【図13】キャリッジの斜視図。
【図14】マルチリザーバ型の単一カートリッジの例を示す上面図。
【図15】単一カートリッジの断面図。
【図16】密閉ケースを使用する場合の構成図。
【符号の説明】
1 液体吐出装置、2 ケース、2A ケース、3 カートリッジ、4 液体貯留部、5 吐出ヘッド部、6 駆動回路、7 負圧調整手段、8 正圧調整手段、10 液体、20 ケース本体、21 ヒンジ、22 蓋、23 シール材、24 ロック手段、25 接続パイプ、26 開口部、27 シール材、28 電極、29 電極、30 カートリッジ、31 第1の基板、32 第2の基板、33 流路、40 液体注入口、41 流路、50 ノズル、51 ガラス基板、52 Si基板、53 ガラス基板、54 吐出室、55 流路、56 振動板、57 アクチュエータ電極、58 凹部、59 ノズル開口面、61 接点、62 接点、63 配線部、71 吸引ポンプ、72 圧力コントローラ、73 チューブ、74 電磁弁、75 制御回路、76 圧力センサ、81 コンプレッサー、82 圧力コントローラ、83 チューブ、84 電磁弁、85制御回路、86 圧力センサ、100 マイクロアレイ製造装置、101 X軸ダクト、102 Y軸ダクト、103 長穴、104 長穴、105 コネクタ、110 基台、120 キャリッジケース、121 キャリッジ、122 支持フレーム、123 段付き部、124 切欠き凹部、125 連結部、130 テーブル、140 マイクロアレイ作製用基板、150 駆動制御手段、160 圧力調整ユニット、161 チューブ、241 掛け金、242 レバー、243 フック、244 軸支部、245 軸結合部、246 ストッパー
【発明の属する技術分野】
本発明は、主としてマイクロアレイの作製のための液体吐出装置、マイクロアレイの製造方法及び製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子研究機関、医療、薬品開発の研究機関等においては、DNA解析や免疫学的解析等のために、スライドガラスのような基板上に、数千〜数万種類のDNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)、タンパク質などの生体分子溶液をマトリックス状にスポットしたマイクロアレイ(バイオチップ)が用いられる。このようなマイクロアレイを作製する方法としては、接触ピン法、マイクロピペット法、インクジェット法などが知られている。そのうち、特に最近ではインクジェット法が注目を浴びている。これは、インクジェット法が、極少量の液滴を目的の位置に高精度に打つことができること、吐出ヘッドが基板に接触しないこと、基板材料にガラスや合成樹脂、金属、フィルム等任意の材料が使用できること、動作音が低いこと、低コストであることなどの特徴を有しているからである。
インクジェット法は、インクジェットヘッドのアクチュエータ部を、例えば圧電体により変位させることにより、ダイヤフラムのポンプ作用でノズル先端から液滴を吐出させる方法である。
【0003】
このようなインクジェット法を用いたものとして、例えば特許文献1がある。この方法は、ピペット本体に、ピペット本体の外部から試料を注入する試料注入口と、注入された試料を導入しかつ一時貯留し得るキャビティと、貯留された試料をノズル部の貫通孔を経由して外部に吐出する試料吐出口とを形成してなるとともに、ピペット本体のキャビティ形成位置に対応した部位の外面上に圧電/電歪素子を設けてなり、圧電/電歪素子の駆動によりキャビティ内の体積を変化させ、キャビティ内に貯留された試料の一定量を試料吐出口から吐出させるマイクロピペットを用いるものである。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−196010号公報(特許請求の範囲、段落[0040]〜[0045]、図1、図9、図10)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来技術においては、キャビティ内の液体の背圧を制御してないため、キャビティ内の液体が少なくなるに伴って吐出圧力が変化するので、吐出が不安定になるという問題がある。また、背圧を一定に保ちノズル開口からの液漏れを防ぐためにスポンジ等のフォームを液体貯留部に入れる方法もあるが、液体貯留部が大きくなり小型化が困難になるとともに、コスト高となる問題がある。
【0006】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑み、液体吐出装置において、安定した吐出を得るために、吐出する液体の背圧を効率よく制御することが可能な背圧制御方法、並びに、吐出を行うカートリッジの小型化、低コスト化が可能で、かつ安定した吐出が得られる液体吐出装置、並びにその液体吐出装置を用いて、多種類のマイクロアレイを効率よく作製することができるマイクロアレイの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る液体吐出装置における液体の背圧制御方法は、吐出する液体を入れた液体貯留部と、液滴を吐出するノズルを有する吐出ヘッド部とを備えた複数のカートリッジを、密閉可能なケースに設けられた開口部に前記吐出ヘッド部をシールして装着し、前記液体貯留部の液体注入口を開口させた状態として、密閉された前記ケース内を減圧することを特徴とする。
【0008】
本発明の背圧制御方法は、密閉されたケース内に装着された複数のカートリッジ内の液体の背圧を該ケース内を減圧することにより一括して制御することができる。したがって、個々にカートリッジ内の液体の背圧を制御する手段を設けなくてもよいので、カートリッジの小型化、低コスト化が可能である。
なお、ケースの減圧作用は吐出時に行えばよく、安定した吐出が得られる。
【0009】
本発明の背圧制御方法では、複数のカートリッジに代えて、単一のカートリッジを使用することができる。多種類のマイクロアレイを作製する場合においては、それぞれ異なる種類の生体分子溶液の注入を容易にするために、カートリッジを独立に形成された複数の液体貯留部を有する単一のカートリッジの構成とすることが都合がよいものである。
したがって、単一のカートリッジを使用する場合、本発明の液体吐出装置における背圧制御方法は、吐出する液体を入れた複数の液体貯留部と、液滴を吐出する複数のノズルを有する単一の吐出ヘッド部とを備えた単一のカートリッジを、密閉可能なケースに設けられた開口部に前記吐出ヘッド部をシールして装着し、前記液体貯留部の液体注入口を開口させた状態として、密閉された前記ケース内を減圧するものである。
【0010】
ここで、マイクロアレイとは、ガラス等の基板上に、数千〜数万種類のDNAやRNA、タンパク質などのプローブサンプルが配列されたものである。DNAマイクロアレイ(DNAチップともいう)がその代表的な例である。また、DNA(Deoxyribo Nucleic Acids:デオキシリボ核酸(遺伝物質))とは、塩基、糖(デオキシリボーズ)及びリン酸が結合したもの(ヌクレオチド)がさらに結合し、最終的には二重らせん形となったものである。ここで、塩基はアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類がある。また、DNAマイクロアレイは、DNAの相補性を利用し、検査、解析に利用するものである。
RNA(ribonuclec acid:リボ核酸)は、リボヌクレオチドが重合した核酸で、リボソームRNA、伝令RNA、転移RNAなどがあり、核のみでなく細胞全体に分布している。塩基はアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)の4種類である。また、1本鎖構造である。
タンパク質は、生物細胞に不可欠の主要成分として、20種のL−アミノ酸がペプチド結合することで合成される高分子ポリペプチドの総称であり、様々な分子量、構造、機能をもった生体高分子である。
【0011】
吐出時におけるケースの減圧の程度は、大気圧に対して−0.05〜−3kPaの圧力にすることが好ましい。この範囲内の減圧であれば、安定した吐出が得られる。特に、減圧下限値(−3kPa)を超えると、液滴の重量変化が大きくなり、不安定な吐出状態となりやすい。
【0012】
本発明の液体吐出装置は、密閉可能なケースと、該ケース内に着脱自在に装着される単一または複数のカートリッジとを備え、
前記カートリッジは、それぞれ、吐出する液体の注入口を有する液体貯留部と、液滴を吐出するノズルを有する吐出ヘッド部とを備えた構成である。
したがって、前記密閉可能なケースに、例えば吸引手段を接続すれば、ケース内部を減圧することができ、しかもすべてのカートリッジ内の液体の背圧を一括して制御することができる。したがって、個別のカートリッジ背圧制御手段は不要となるので、カートリッジの小型化、低コスト化が可能である。
また、液体貯留部にフォームやゴムタンク等を用いないため、生体高分子とのコンパティビリティが高いものとなる。
また、独立のカートリッジであるため、交換が容易で、クロスコンタミネーションが生じない。
【0013】
前述のように、本発明は単一のカートリッジも使用可能である。この場合、本発明の液体吐出装置は、密閉可能なケースと、該ケース内に着脱自在に装着される単一または複数のカートリッジとを備え、
前記カートリッジは、吐出する液体の注入口を有する複数の液体貯留部と、液滴を吐出する複数のノズルを有する単一の吐出ヘッド部とを備えた構成とする。なお、単一のカートリッジを複数装着することもできる。
前記カートリッジは、独立した複数の液体貯留部を備えているので、従来の自動分注装置等を使用して容易に生体分子溶液の注入を行うことができる。カートリッジの交換も一度に別種類の生体分子溶液のものに交換することができる。
【0014】
本発明の液体吐出装置を例えばマイクロアレイの作製に使用する場合、前記ケースが、所定の方向に移動するキャリッジと一体に構成されたキャリッジケースとしてもよい。つまり、キャリッジと一体型のキャリッジケースとするものである。あるいは、キャリッジと着脱自在な分離型の構成としてもよい。
前者の一体型の場合は、カートリッジ単位で着脱、交換が可能で、後者の分離型の場合は、ケース単位で着脱、交換が可能である。いずれを採用するかはコストバランスによる。
【0015】
本発明の液体吐出装置においては、前記ケースの底面に前記カートリッジの吐出ヘッド部が嵌合する開口部を設け、該吐出ヘッド部の嵌合時、該開口部の気密がシール材により保持される構成となっている。
このように構成することによって、カートリッジの着脱口である開口部の気密性が保持される。シール材は、開口部もしくは吐出ヘッド部のどちらか一方に設ければよい。
【0016】
ケースの密閉とカートリッジの着脱を容易にするため、前記ケースは、ケース本体と、該ケース本体にシール材を介して開閉自在に結合された蓋と、該蓋を速脱着式にロックするロック手段とを備えた構成とする。
ロック手段は、例えばバックル方式のようにワンタッチで速脱着が可能な構成とすることが好ましい。このようなロック手段とすることにより、マクロアレイの作製において比較的頻繁に行われるカートリッジの交換を容易に行うことができる。なお、蓋はシール材を介してケース本体に密着されるので、ケースの密閉は保たれる。
【0017】
本発明の液体吐出装置は、前記ケースの内部圧力が圧力調整手段により減圧および/または加圧調整される構成となっていることが好ましい。
吐出時には、ケース内を前記のように減圧すればよく、吐出前にあっては、加圧あるいは減圧と加圧の両方を用いて、以下に述べる各種の準備作業ないしメンテナンスを行うことができる。例えば、
(1)前記ケースの内部圧力を前記圧力調整手段により大気圧よりも高く調整することによって前記液体貯留部内の液体を前記ノズルに充填すること。
(2)前記ケースの内部圧力を前記圧力調整手段により大気圧よりも高く調整することによって前記吐出ヘッド部内に滞留する気泡および残留物を排出すること。
(3)前記ケースの内部圧力を前記圧力調整手段により制御することによって、前記ノズルから洗浄用液体を吸引および排出し、前記カートリッジ内部を洗浄すること。
(4)前記ケースの内部圧力を前記圧力調整手段により減圧することによって、前記カートリッジ内に収容された液体中の溶存気体を脱気すること。
(5)前記ケース内に乾燥用空気を送入することによって、洗浄後の前記カートリッジ内部を乾燥させること。
(6)前記ケース内の温度および湿度を温湿度調整手段により調整すること。
前記(2)、(4)の操作により、不吐出の原因となる気泡や、ノズルの目詰まりの原因となる固形成分、異物等の残留物を排除することができる。また、(1)の操作により、液体の充填(プライミング)を行うことができる。
また、クロスコンタミネーションを防止するためには、(3)、(5)の操作によって、カートリッジ内を洗浄し、その後、カートリッジ内部を乾燥させる。(6)の操作は圧力調整手段に温湿度調整部を付加することで可能である。
以上の各操作は、すべてのカートリッジに対して一括して行うことができる。なお、独立の複数の液体貯留部をもつ単一のカートリッジの場合も同様である。
【0018】
また、本発明の液体吐出装置は、前記カートリッジの液体貯留部の全容量が、前記ケースの容積の0.03倍以下とするものである。
密閉可能なケースであれば、このように液体貯留部とケースの容積比を設定することにより、吐出に伴ってケース内部が減圧していくので、ケース内部圧力を圧力調整手段等でアクティブに制御しなくてもよい。
【0019】
また、前記吐出ヘッド部は静電駆動方式の構成とするのが好ましい。静電駆動方式によれば、極微小の液滴を非接触で正確に吐出することができるとともに、全ノズルからの同時吐出を容易に行うことができる。
また、前記ケースは、前記カートリッジの装着時、該カートリッジと電気的に接続する構成となっていることがこのましい。これにより、カートリッジの交換が容易になる。
【0020】
本発明のマイクロアレイ製造方法は、請求項4乃至19のいずれかに記載の液体吐出装置を用いてマイクロアレイを製造することを特徴とする。
前述したように、本発明の液体吐出装置を使用することにより、多数のカートリッジ(単一カートリッジの場合は多数の液体貯留部)内の液体の背圧を一括して制御できるので、微小な液滴を安定して吐出させることができ、高密度かつ低コストのマイクロアレイの製造が可能である。
【0021】
前記のように、マイクロアレイを効率的に製造するため、本発明のマイクロアレイ製造装置は、基台と、前記基台上において、直交する方向に相対的に移動するキャリッジおよびテーブルと、前記テーブル上にセットされた一または複数のマイクロアレイ作製用基板とを備え、請求項4乃至19のいずれかに記載の液体吐出装置の密閉可能なケースを前記キャリッジと一体に構成するか、または、
基台と、前記基台上において、直交する方向に相対的に移動するキャリッジおよびテーブルと、前記テーブル上にセットされた一または複数のマイクロアレイ作製用基板とを備え、請求項4乃至19のいずれかに記載の液体吐出装置の密閉可能なケースを前記キャリッジと着脱自在な分離型の構成としたものである。
さらに、前記ケースの内部圧力を調整する圧力調整手段を備えた構成とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による液体吐出装置の構成図で、一部を断面図で示している。図2、図3は液体吐出装置の正面図と側面図である。また、図4は液体吐出装置におけるケース本体の平面図である。
この液体吐出装置1は、密閉可能なケース2と、ケース2内に着脱自在に装着される複数のカートリッジ3とを備えている。カートリッジ3はケース2内の底面にM行×N列で配置されている。まず最初に、カートリッジ3について説明し、その次にケース2について構成を説明する。
【0023】
(1)カートリッジの構成
図5はカートリッジの斜視図、図6、図7はカートリッジの下面図と断面図である。
カートリッジ3は、吐出する液体(例えば、生体分子溶液)10を貯留する液体貯留部(リザーバとも呼ばれる)4と、液体10を吐出する一または複数のノズル50を有する吐出ヘッド部5とが一体的に構成された構造となっている。
液体貯留部4はガラス、プラスチック等からなり、上部には液体10の注入口40が開口した状態で設けられている。また、液体貯留部4の下部には流路41が形成され、この流路41は、後述する吐出ヘッド部4の流路に連通するように接続される。
【0024】
(2)吐出ヘッド部
カートリッジ3の先端部(下端部)には、例えば静電駆動方式の吐出ヘッド部5が設けられている。この吐出ヘッド部5は、図7に示すように、3枚の基板51、52、53を相互に接合した構造となっている。図7において、左側の基板51はガラス基板、中間の基板52はSi基板、右側の基板53はガラス基板をそれぞれ用いている。中間のSi基板52には、予めエッチングにより前記ノズル50、吐出室54、および流路55が形成されている。吐出室54の底部(図7では側壁部)が振動板56となっている。この振動板56に所定の空隙でもって対面するアクチュエータ電極57が一方の例えばガラス基板53に形成されている。アクチュエータ電極57は、例えば、酸化錫を不純物としてドープした酸化インジウム膜、すなわちITO(Indium Tin Oxide:インジウム酸化第1錫)膜で電極を形成している。ただし、電極57はこれに限定されるものではない。また、アクチュエータ電極57は、Si基板の振動板56との間に所定の空隙を確保するために、ガラス基板53に設けられた凹部58内に形成することが好ましい。
他方の例えばガラス基板51は、中間のSi基板52と接合され、吐出流路の蓋基板として用いられる。これら3枚の基板51、52、53は陽極接合または接着により互いに接合されている。
【0025】
このように構成された吐出ヘッド部5を前記液体貯留部4と接着により接合することによって、吐出ヘッド部5の流路55と液体貯留部4の流路41とを接続し、カートリッジ3が構成される。そしてさらに、前記アクチュエータ電極57とSi基板52に駆動回路6を配線することにより、静電駆動方式の吐出ヘッド部5が構成される。図6において、61、62は液体貯留部4の下面に設けられた接点で、63は配線部である。
【0026】
ここで、前記のように構成された吐出ヘッド部5の動作を簡単に説明する。静電駆動方式においては、アクチュエータ電極57を正に帯電させ、振動板56を負に帯電させると、振動板56が電極57側へ引き寄せられ、吐出室54の容積が増加する。この状態で駆動回路6によりアクチュエータ電極57への電荷の供給を止めると、振動板56は元に戻るため、そのときの圧力により容積変化の差分に相当する一定量の液滴がノズル50より吐出される。
なお、ここでは、液滴吐出駆動方法を静電気を利用した静電駆動方式で説明したが、圧電体を用いる圧電駆動方式としてもよい。
【0027】
(3)ケースの構成
ケース2は、図1〜図4に示すように、箱形のケース本体20と、ケース本体20にヒンジ21で開閉自在に結合された蓋22と、ケース本体20の上面または蓋22の下面の周辺部(シール面)に設けられたシール材23と、蓋22を速脱着式にロックするロック手段24と、ケース2の内部圧力を所定の負圧または正圧にするための圧力調整手段(図8参照)に接続される接続パイプ25とを備えている。
また、前記カートリッジ3を着脱自在に装着するため、図4に示すように、ケース本体20の底面には吐出ヘッド部5が嵌合する開口部26がカートリッジ3の数だけ設けられている。また、ケース2内の気密性を保つために、開口部26の周辺部には例えばパッキンからなるシール材27が接着等で貼り付けられている。シール材27は例えばOリングを用い、これをカートリッジ3の吐出ヘッド部5の外周に設けた溝内に嵌め込む方法でもシールすることができる。
また、各開口部26の近傍にはカートリッジ3の装着時、吐出ヘッド部5の接点61、62と接触し電気的接続をする電極28、29が設けられている。
【0028】
(4)ケースの蓋のロック機構
ケース2の蓋22のロック機構についてはいろいろな形態が考えられる。基本的には簡単な速脱着方式が望ましい。その一例をバックル方式の止め具(ロック手段)24で示す。この止め具24は、図2、図3に示すように、方形状の掛け金241を枢着したレバー242をケース本体20に軸支し、掛け金241の先端部を蓋22に突設したフック243に引っ掛けてレバー242を引き倒すことによりロックされる構造となっている。すなわち、掛け金241のレバー242との軸結合部245はレバー242の回転中心である軸支部244より半径rだけ偏心した(離れた)位置に枢着されており、かつロック状態のときには軸結合部245が軸支部244よりも若干ケース表面側に近づく位置にて停止するようにしている。そのため、ケース本体20の表面に当接するストッパー246がレバー242に設けられている。したがって、このロック位置からレバー242を引き起こせば、掛け金241を簡単にフック243から外すことができ、蓋22を開けることができる。蓋22を閉じるときには掛け金241をフック243に引っ掛け、レバー243をストッパー246がケース本体20の表面に当接するまで引き倒す。これによって蓋22とケース本体21との間に設けられたシール材23を締め付け、ロックされる。したがって、ケース2を簡単に密閉することができる。また、蓋22の開閉も容易であるので、カートリッジ3の着脱、交換が容易となる。なお、シール材23はパッキンで示してあるが、前記のようにOリングを用いてシール面の溝に張り巡らしてもよい。
【0029】
(5)ケースの圧力調整手段
(i)減圧の場合
前記止め具24により蓋22をロックし、ケース2を密閉状態とする。この密閉状態のケース2に前記接続パイプ25を介して、例えば図8(a)に示すような負圧調整手段7を接続する。負圧調整手段7は吸引ポンプ71と圧力コントローラ72とから構成されており、ケース2は例えば伸縮自在なチューブ73により圧力コントローラ72を介して吸引ポンプ71に接続されている。また、圧力コントローラ72は電磁弁74、制御回路75、および圧力センサ76から構成されている。したがって、吸引ポンプ71により密閉状態のケース2内部の空気を吸引することにより、ケース2の内部圧力が制御回路75で予め設定された圧力(負圧設定値)になるようにケース2内部を減圧することができる。この減圧は各カートリッジ3の液体注入口40を通じて液体貯留部4内の液体10に作用する。したがって、ケース2内部に装着された全部のカートリッジ3に対して液体貯留部4内の液体10の背圧を一括して制御することができる。よって、吐出時においてケース内部の適正な減圧制御を行うことにより、安定した吐出を行わせることができる。また、従来のように液体貯留部4にスポンジ等のフォームやゴムタンク等を用いる必要がないため、カートリッジ3の小型化、低コスト化が可能である。
【0030】
(ii)加圧の場合
逆に、ケース2内部を加圧する場合は、例えば図8(b)に示すような正圧調整手段8に密閉状態のケース2を接続して加圧する。正圧調整手段8はコンプレッサー81と圧力コントローラ82とからなり、ケース2とコンプレッサー81とは圧力コントローラ82を介して伸縮自在なチューブ83で接続されている。圧力コントローラ82は、電磁弁84、制御回路85、および圧力センサ86から構成されている。したがって、コンプレッサ81により密閉状態のケース2内部を加圧することにより、ケース2の内部圧力が制御回路85で予め設定された圧力(正圧設定値)になるようにケース2内部を加圧することができる。これによって、吐出前にあっては、ケース内部の適正な加圧制御を行うことにより、全部のカートリッジ3に対して一括して、例えば、各吐出ヘッド部5のノズル50内に滞留する固形成分や異物、あるいは吐出室54内に残留する気泡等を排出したり、あるいは液体貯留部4内の液体10をノズル先端まで完全に充填することができる。また、洗浄液を用いて前記減圧と加圧を交互に加えることにより、ノズル50から洗浄液を吸引および排出することができ、これによりカートリッジ3内部を洗浄することができる。
なお、前記負圧調整手段7および正圧調整手段8は、ポンプ、空気ファンなど正逆の圧力発生源と回路の切替弁を用いて減圧および加圧の兼用タイプに構成することが好ましい。
【0031】
実施の形態2.
前記のように構成された液体吐出装置1を用いてマイクロアレイを作製するには、液体吐出装置1とガラスあるいはプラスチック等からなるマイクロアレイ作製用基板を直交するX、Y方向に相対的に走査移動することによって作製する。その一例を図9に示す。
図9は本発明のマイクロアレイ製造装置の概要を示す斜視図である。
このマイクロアレイ製造装置100は、基台110上において、水平面内でX方向に移動するキャリッジを前記液体吐出装置1のケース2にて一体に構成したキャリッジケース(あるいはカートリッジホルダ)120としたものである。キャリッジケース120の構成については、前記ケース2の構成と全く同じであるので、主な構成要素には同一の符号を付して説明は省略する。
【0032】
キャリッジケース120の移動方向Xと直角のY方向に相対的に移動するテーブル130上には、スライドガラスや樹脂製等からなるマイクロアレイ作製用基板140が一または複数枚セット(載置)される。さらに、X軸(キャリッジケース)およびY軸(テーブル)の駆動制御手段150が設けられており、またX軸ダクト101上には減圧および加圧兼用タイプの圧力調整ユニット160が設置され、伸縮自在なチューブ161でキャリッジケース120と接続されている。また、液体吐出装置1の吐出制御手段(図示せず)は一般的にPC(パーソナルコンピュータ)と専用回路にて構成されている。
【0033】
キャリッジケース120のケース本体20の底面には、前述したように複数のカートリッジ3が着脱自在に装着される。各カートリッジ3の液体貯留部4には吐出する液体10として、例えばDNA断片を含むそれぞれ異なる種類の生体分子溶液が入れられている。カートリッジ3は、装着時、吐出ヘッド部5がキャリッジケース120底面に設けられた開口部26に密接に嵌合し、シール材27により開口部26からの空気洩れを防止するとともに、吐出ヘッド部5の接点61、62と開口部26近傍に設けられたキャリッジケース120内の電極28、29とがそれぞれ接触して電気的接続を果たす。各電極28、29はキャリッジケース120の側面に設けられたコネクタ105を介して前記吐出制御手段に接続されている。また、カートリッジ3は、図10に示すように、吐出ヘッド部5の先端面すなわちノズル開口面59がキャリッジケース120の下面とほぼ一致するように装着される。したがって、液滴の吐出距離はキャリッジケース120の下面とテーブル130上のマイクロアレイ作製用基板140の表面間の空隙間隔Gで設定することができる。
【0034】
所要数のカートリッジ3が搭載されたキャリッジケース120はX軸駆動機構によってX方向に走査される。X軸駆動機構は図示していないが、公知のタイミングベルト機構やボールネジ機構等を用い、これにキャリッジケース120を結合してパルスモータを駆動することで実施できる。図9では、このようなX軸駆動機構が側面に長穴103を設けたX軸ダクト101内に内蔵されているものである。
テーブル130はY軸駆動機構によってY方向に走査される。このY軸駆動機構は前記X軸駆動機構と同様の構成であり、側面に長穴104を設けたY軸ダクト102内に内蔵されている。
なお、テーブル130上にはマイクロアレイ作製用の基板140が1枚または複数枚セット(載置)される。また、テーブル130は固定式としてもよい。この場合は、キャリッジケース120を直交するX、Y両方向に走査可能な構成とする。
【0035】
前記のように構成されたマイクロアレイ製造装置100において、全てのカートリッジ3をキャリッジケース120に搭載した後では、キャリッジケース120の蓋22を閉じ、ロック手段としての止め具24により蓋22をロックする。蓋22とケース本体20のシール面はシール材23によりシールされる。これにより、キャリッジケース120は密閉状態に保持される。
その後、キャリッジケース120の接続パイプ25にチューブ161で接続された圧力調整ユニット160を作動し、キャリッジケース120の内部圧力が所定の負圧または正圧になるよう圧力を調整する。
【0036】
(1)吐出時
ノズル50より液滴を吐出する際には、圧力調整ユニット160によりキャリッジケース120の内部圧力を負圧に調整して吐出を行う。負圧の圧力は、各カートリッジ3の液体注入口40を通じて液体貯留部4内の液体10の背圧として作用する。またこのとき、キャリッジケース120の内部圧力は、大気圧よりも低い圧力、好ましくは図11に示すように、−0.05kPa〜−3kPaの範囲の圧力に調整される。この負圧設定値は図8(a)の制御回路75で設定されている。
図11は背圧と吐出重量(ノズル50から吐出される液滴の重量をいう)との関係を示すグラフである。横軸に背圧を、縦軸に液滴重量変化をとって示してある。大気圧のときは横軸の背圧が「0」の位置としている。また、縦軸の液滴重量変化(%)は、大気圧吐出時の液滴重量に対するその負圧吐出時の液滴重量の減少割合をあらわす。例えば、背圧−3kPaのとき、液滴重量変化が20%というのは、大気圧吐出時の液滴重量の80%の液滴重量であることを意味している。−3kPa以内であれば吐出重量は減少するが、安定した吐出が可能である。また、大気圧に対し、0.05kPa以上の減圧にすることにより、メニスカスがこわれた時に起こるノズルからの液漏れを防ぐことができる。しかも、キャリッジケース120内の全てのカートリッジ3の背圧を一括して制御することができる。
【0037】
マイクロアレイは、キャリッジケース120をX方向に主走査し、マイクロアレイ作製用基板140をセットしたテーブル130をY方向に副走査することによって作製することができる。
また、背圧制御(調整)のもとでは、極少量(数ピコリットル)のオーダーで液滴を吐出することができるので、高密度のマイクロアレイを作製することができる。しかも、液体貯留部4にフォームやゴムタンク等を用いないため生体高分子とのコンパティビリティーが高い。また、カートリッジ3の小型化、低コスト化が可能で、極少量の液体の吐出ができるため、マイクロアレイの製造コストの低減が可能である。
また、カートリッジ3はそれぞれ独立のものであるため、交換が容易で、クロスコンタミネーションがない。
【0038】
(2)吐出前の準備作業およびメンテナンス
吐出前にあっては、下記のような準備作業(処理)およびメンテナンスが適宜実施される。これらの処理は、通常、キャリッジケース120のホームポジションにおいて実施される。
(i)液体の充填
液体の充填(プライミング)とは、カートリッジ3の液体貯留部4内に注入された液体10をノズル50の先端まで完全に満たした状態に充填することをいう。このプライミング処理の際には、圧力調整ユニット160により密閉状態のキャリッジケース120内部を加圧する。これによって、全てのカートリッジ3に対して液体貯留部4内の液体10を一括して加圧し、各ノズル50の先端まで液体10を充填することができる。また、加圧の程度は、生体分子溶液の粘度や吐出ヘッド部5内の流体抵抗等にもよるが、大気圧よりも少し高い圧力に設定して行う。ノズル50からの生体分子溶液の排出量があまり多くならないように留意する。また、ノズル50内に滞留する固形成分や異物等の残留物も排出することができる。これらの残留物や気泡の存在はノズルの目詰まりや不吐出の原因となるので、吐出が不安定になったときに、上記の方法で除去される。
【0039】
(ii)洗浄
各カートリッジ3のノズル50は時々洗浄する必要がある。洗浄処理は、洗浄用液体を用いて行う。洗浄用液体としては、例えば、蒸留水、エタノール、合成洗剤もしくは殺菌剤入りの洗浄液などが用いられる。洗浄に際しては、これらの洗浄用液体を入れた受け皿(図示せず)をキャリッジケース120のホームポジションにて昇降可能に設ける。この受け皿の洗浄用液体内に各カートリッジ3のノズル先端面(すなわち、キャリッジケース120の底面全体)が浸漬するように受け皿を上昇させた後、圧力調整ユニット160により減圧と加圧を交互にキャリッジケース120に与える。これによって、洗浄用液体は各ノズル50から吸い込まれ、また逆に排出される。このように洗浄用液体の吸引と排出を繰り返すことにより全てのカートリッジ3を一括して洗浄することができる。
【0040】
(iii)乾燥
洗浄後は、各カートリッジ3を乾燥する。この処理では乾燥用空気を圧力調整ユニット160によりキャリッジケース120内に送り込む。乾燥用空気は各ノズル50から外部へ排出されるので、全てのカートリッジ3を一括して乾燥することができる。
(iv)温度・湿度管理
圧力調整ユニット160は、例えば図8(b)に示した回路にさらに温度センサ、湿度センサを追加することにより温度・湿度調整部(図示せず)を有する構成とすることができる。このような温度・湿度調整部により、キャリッジケース120内の温度・湿度の一括管理が可能なので、生体分子溶液の劣化が生じない。普通、常温・常湿に調整される。
(v)溶存気体の脱気
生体分子溶液をカートリッジ3に注入する際、液体中に溶存気体(一般には、空気)が含まれることがある。溶存気体が存在すると、気泡発生による吐出不良の原因となるので脱気する必要がある。気泡は前述したプライミングの際に除去することができるが、キャリッジケース120内を減圧することによって気泡の発生を抑制することができる。この脱気処理は、圧力調整ユニット160を用いて、通常、キャリッジケース120内を10kPa程度に減圧下することにより、液体10中の溶存気体(空気以外の気体も含む)を脱気することができる。
【0041】
実施の形態3.
図12はキャリッジとケースの分離可能な構成を示す断面図、図13はキャリッジの斜視図である。
この実施形態では、第2の実施形態で示した一体型のキャリッジケース120と異なり、キャリッジ121とケース2を分離型に構成したものである。
キャリッジ121は、例えば方形状の枠体により構成されている。この支持フレーム122の中に密閉可能なケース2を入れて保持する。そのため、ケース本体20の下面に、支持フレーム122の底面と係合する段付き部123を設けている。段付き部123は支持フレーム122の上端と係合するようにケース本体20の側面に設けてもよい。また、支持フレーム122にはケース本体20に取り付けられるコネクタ105の取付位置によってはコネクタ105を逃がすための切欠き凹部124が設けられることもある。
なお、ケース2を支持フレーム122に搭載したとき、支持フレーム122の下端とケース2の下面を必ずしも面一にする必要はないが、ケース2の下面が引っ込み気味よりも突出気味のほうが好ましい。図13において、125は前記X軸機構との連結部である。
【0042】
この実施形態によれば、ケース2をケースごとキャリッジ121から取り外すことができるので、任意の配列を有するケース2と簡単に取り替えることができる。したがって、マイクロアレイの配列の自由度が高い。また、カートリッジ
の形態、個数の相違等、あるいはケース2の配線不具合が発生した場合などにも迅速に対応することができる。
【0043】
実施の形態4.
図14はマルチリザーバ型の単一カートリッジの例を示す上面図、図15はその断面図である。
この実施形態に示す単一のカートリッジ30は、複数の液体貯留部4を有する第1の基板31と、第1の基板31との間で独立の流路33を形成する第2の基板32とを接合し、第2の基板32の下面中央部にヘッドチップからなる吐出ヘッド部5を接合したものである。液体貯留部4から流路33を経由してノズル50に至る吐出径路はすべて独立に構成されている。
第1および第2の基板31、32はガラスまたはプラスチックからなり、両基板は例えば熱溶着により接合されている。
吐出ヘッド部5は小型のヘッドチップとして構成されており、その構造は図7とほぼ同様である。このヘッドチップ(吐出ヘッド部5)は接着により第2の基板32の下面に接合されている。
【0044】
このように構成された単一のカートリッジ30を前述したキャリッジ121と一体型のキャリッジケース120または分離型のケース2に搭載するには、それらのキャリッジケース120またはケース2の底面に一つの開口部26を設けて、その開口部26にヘッドチップからなる吐出ヘッド部5を密接に嵌合する。開口部26の周辺部には前述したとおりシール材27および電極28、29が設けられている。
【0045】
この実施形態によれば、吐出ヘッド部5の2列のノズル50全部から同時に吐出させることができるので、多種類のプローブサンプルをもつマイクロアレイを短時間に作製することができる。また、キャリッジケース120またはケース2の吐出時の減圧作用は前述したとおりであるので、微少量の液滴を安定して吐出することができる。また、吐出前の準備処理およびメンテナンスについても前述の通りに行うことができる。なお、この単一のカートリッジ30をキャリッジケース120またはケース2と着脱するには、第1の基板31に適当な摘みを設けて着脱すればよい。
【0046】
実施の形態5.
この実施形態は、個々に独立したカートリッジ3(図1参照)あるいは単一のカートリッジ30(図14参照)を密閉したケースまたはキャリッジケースに収容するものである。例えば、図16に示すように、個々に独立したカートリッジ3を複数、密閉可能なケース2Aに収容する。この場合、ケース2Aは図1、図9、図12等で示したケース2あるいはキャリッジケース120から圧力調整手段に接続する接続パイプ25を省いた形態のものでよい。
そして、ケース2Aの容積V1と、全カートリッジ3の液体貯留部4の総容量V2との比率を、次のように設定する。
V2/V1≦3/100
ケース2Aは密閉されているので、各カートリッジ3の吐出動作に伴って液体貯留部4内の液体が減少していくため、ケース2Aの内部は減圧されていくことになる。
したがって、本実施形態によれば、前述のようにケースの内部圧力を圧力調整手段(圧力調整ユニット160)によってアクティブに制御しなくても、安定した吐出が得られる。
【0047】
本発明における液体吐出装置およびカートリッジは、マイクロアレイの作製に限られるものでないことはいうまでもない。したがって、通常のインクジェットヘッドとしても利用することができる。また、液滴の吐出方向も下向きに限定されるものではなく、横向きのいわゆるエッジタイプとして構成することもできる。さらに、色の異なるインクや発光材料を含む溶液を液体貯留部4に入れることにより、カラーフィルタや電界発光基板の製造にも好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による液体吐出装置の断面図。
【図2】液体吐出装置の正面図。
【図3】液体吐出装置の側面図。
【図4】液体吐出装置におけるケース本体の平面図。
【図5】カートリッジの斜視図。
【図6】カートリッジの下面図。
【図7】カートリッジの断面図。
【図8】圧力調整手段の構成図。
【図9】本発明のマイクロアレイ製造装置の概要を示す斜視図。
【図10】カートリッジを搭載したキャリッジケースの断面図。
【図11】背圧と吐出重量の関係を示すグラフ。
【図12】キャリッジとケースの分離可能な構成を示す断面図。
【図13】キャリッジの斜視図。
【図14】マルチリザーバ型の単一カートリッジの例を示す上面図。
【図15】単一カートリッジの断面図。
【図16】密閉ケースを使用する場合の構成図。
【符号の説明】
1 液体吐出装置、2 ケース、2A ケース、3 カートリッジ、4 液体貯留部、5 吐出ヘッド部、6 駆動回路、7 負圧調整手段、8 正圧調整手段、10 液体、20 ケース本体、21 ヒンジ、22 蓋、23 シール材、24 ロック手段、25 接続パイプ、26 開口部、27 シール材、28 電極、29 電極、30 カートリッジ、31 第1の基板、32 第2の基板、33 流路、40 液体注入口、41 流路、50 ノズル、51 ガラス基板、52 Si基板、53 ガラス基板、54 吐出室、55 流路、56 振動板、57 アクチュエータ電極、58 凹部、59 ノズル開口面、61 接点、62 接点、63 配線部、71 吸引ポンプ、72 圧力コントローラ、73 チューブ、74 電磁弁、75 制御回路、76 圧力センサ、81 コンプレッサー、82 圧力コントローラ、83 チューブ、84 電磁弁、85制御回路、86 圧力センサ、100 マイクロアレイ製造装置、101 X軸ダクト、102 Y軸ダクト、103 長穴、104 長穴、105 コネクタ、110 基台、120 キャリッジケース、121 キャリッジ、122 支持フレーム、123 段付き部、124 切欠き凹部、125 連結部、130 テーブル、140 マイクロアレイ作製用基板、150 駆動制御手段、160 圧力調整ユニット、161 チューブ、241 掛け金、242 レバー、243 フック、244 軸支部、245 軸結合部、246 ストッパー
Claims (23)
- 吐出する液体を入れた液体貯留部と、液滴を吐出するノズルを有する吐出ヘッド部とを備えた一つまたは複数のカートリッジを、密閉可能なケースに設けられた開口部に前記吐出ヘッド部をシールして装着し、前記液体貯留部の液体注入口を開口させた状態として、密閉された前記ケース内の圧力を制御することを特徴とする液体吐出装置における液体の背圧制御方法。
- 吐出する液体を入れた複数の液体貯留部と、液滴を吐出する複数のノズルを有する単一の吐出ヘッド部とを備えた単一または複数のカートリッジを、密閉可能なケースに設けられた開口部に前記吐出ヘッド部をシールして装着し、前記液体貯留部の液体注入口を開口させた状態として、密閉された前記ケース内の圧力を制御することを特徴とする液体吐出装置における液体の背圧制御方法。
- 吐出時に、前記ケースの内部圧力を大気圧よりも低い−0.05〜−3kPaの圧力にすることを特徴とする請求項1または2記載の液体吐出装置における液体の背圧制御方法。
- 密閉可能なケースと、該ケース内に着脱自在に装着される単一または複数のカートリッジとを備え、
前記カートリッジは、それぞれ、吐出する液体の注入口を有する液体貯留部と、液滴を吐出するノズルを有する吐出ヘッド部とを備えたことを特徴とする液体吐出装置。 - 密閉可能なケースと、該ケース内に着脱自在に装着される単一または複数のカートリッジとを備え、
前記カートリッジは、吐出する液体の注入口を有する複数の液体貯留部と、液滴を吐出する複数のノズルを有する単一の吐出ヘッド部とを備えたことを特徴とする液体吐出装置。 - 前記ケースが所定の方向に移動するキャリッジと一体に構成されたキャリッジケースであることを特徴とする請求項4または5記載の液体吐出装置。
- 前記ケースが所定の方向に移動するキャリッジと着脱自在な分離型の構成となっていることを特徴とする請求項4または5記載の液体吐出装置。
- 前記ケースの底面に前記カートリッジの吐出ヘッド部が嵌合する開口部を設け、該吐出ヘッド部の嵌合時、該開口部の気密がシール材により保持される構成となっていることを特徴とする請求項4乃至7のいずれかに記載の液体吐出装置。
- 前記ケースは、ケース本体と、該ケース本体にシール材を介して開閉自在に結合された蓋と、該蓋を速脱着式にロックするロック手段とを備えたことを特徴とする請求項4乃至8のいずれかに記載の液体吐出装置。
- 前記ケースの内部圧力が圧力調整手段により減圧および/または加圧調整される構成となっていることを特徴とする請求項4乃至9のいずれかに記載の液体吐出装置。
- 吐出前に、前記ケースの内部圧力を前記圧力調整手段により大気圧よりも高く調整することによって前記液体貯留部内の液体を前記ノズルに充填することを特徴とする請求項10記載の液体吐出装置。
- 吐出前に、前記ケースの内部圧力を前記圧力調整手段により大気圧よりも高く調整することによって前記吐出ヘッド部内に滞留する気泡および残留物を排出することを特徴とする請求項10記載の液体吐出装置。
- 吐出前に、前記ケースの内部圧力を前記圧力調整手段により制御することによって、前記ノズルから洗浄用液体を吸引および排出し、前記カートリッジ内部を洗浄することを特徴とする請求項10記載の液体吐出装置。
- 吐出前に、前記ケースの内部圧力を前記圧力調整手段により減圧することによって、前記カートリッジ内に収容された液体中の溶存気体を脱気することを特徴とする請求項10記載の液体吐出装置。
- 吐出前に、前記ケース内に乾燥用空気を送入することによって、洗浄後の前記カートリッジ内部を乾燥させることを特徴とする請求項13記載の液体吐出装置。
- 前記ケース内の温度および湿度を温湿度調整手段により調整することを特徴とする請求項4乃至15のいずれかに記載の液体吐出装置。
- 前記カートリッジの液体貯留部の全容量が、前記ケースの容積の0.03倍以下であることを特徴とする請求項4乃至9のいずれかに記載の液体吐出装置。
- 前記吐出ヘッド部は静電駆動方式の構成となっていることを特徴とする請求項4乃至17のいずれかに記載の液体吐出装置。
- 前記ケースは、前記カートリッジの装着時、該カートリッジと電気的に接続する構成となっていることを特徴とする請求項4乃至18のいずれかに記載の液体吐出装置。
- 請求項4乃至19のいずれかに記載の液体吐出装置を用いてマイクロアレイを製造することを特徴とするマイクロアレイ製造方法。
- 基台と、前記基台上において、直交する方向に相対的に移動するキャリッジおよびテーブルと、前記テーブル上にセットされた一または複数のマイクロアレイ作製用基板とを備え、請求項4乃至19のいずれかに記載の液体吐出装置の密閉可能なケースを前記キャリッジと一体に構成したことを特徴とするマイクロアレイ製造装置。
- 基台と、前記基台上において、直交する方向に相対的に移動するキャリッジおよびテーブルと、前記テーブル上にセットされた一または複数のマイクロアレイ作製用基板とを備え、請求項4乃至19のいずれかに記載の液体吐出装置の密閉可能なケースを前記キャリッジと着脱自在な分離型の構成としたことを特徴とするマイクロアレイ製造装置。
- 前記ケースの内部圧力を調整する圧力調整手段をさらに備えたことを特徴とする請求項21または22記載のマイクロアレイ製造装置。
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2002
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