JP2004183426A - 構造躯体及び構造躯体を利用した接地構造並びにその施工方法 - Google Patents

構造躯体及び構造躯体を利用した接地構造並びにその施工方法 Download PDF

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Abstract

【課題】IT時代に求められるコンピュータ機器に対するノイズ障害防止機能に優れ、建物全体の等電位化・シールド化による雷害対策にも有効な構造躯体及び構造躯体を利用した接地構造並びにその施工方法を提供する。
【解決手段】スラブ構造躯体31を構成するデッキスラブ1、鉄筋あるいはメッシュ筋等に、接地ケーブル24を接続するためのケーブル取出し用ボルト4、4A、4Bを、そのネジ部5を上方にして立設すると共に、該ケーブル取出し用ボルト4、4A、4Bに接地ケーブル接続金物15、15A、15Bを固着し、接地を必要とする機器32とスラブ構造躯体31を非常に短い長さの接地ケーブル24で接続可能な構造躯体。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種工場や事務所ビル等の建物に用いる構造躯体に関し、特に高周波・高調波ノイズによる障害や雷害の影響を受け易いコンピュータ機器類に対して低コストで高品質の接地構造を提供できる構造躯体であって、データセンター等をはじめとする各種工場やIT化が進んだ事務所ビル等に用いて好適な構造躯体及び構造躯体を利用した接地構造並びにその施工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、建物の構造躯体を接地に利用したものとして、柱部の鉄骨や鉄筋を接地線としたものが実施されているが、スラブ構造躯体を構成する鉄筋やメッシュ筋あるいはデッキスラブ等を接地に利用したものは見当たらない。
一方、データセンター等においては、フリーアクセスフロア内に銅線等をメッシュ状に配線し、これと電気的に接続することによって低抵抗接地を実現するようにしたものが見られる。
【0003】
上記したデッキスラブは、製品自体として溶接工法が採用されており、電気的に接続されていることから接地用として利用可能ではあるが、床面から接地線を取出すことは従来全く考えられていなかった。
このため、従来の技術を利用して接地線を床面から取出そうとすると、
(1)床埋設ボックスを設け、デッキスラブ筋に溶接した接地線を該ボックスに入れておいた後、コンクリートを打設する。
(2)デッキスラブ筋に溶接した接地線を支持材により固定した状態でコンクリートを打設する。
等の方法が考えられる。
【0004】
しかしながら、上記(1)は、従来床打ち込み配管として施工された方法であり、1平方メートル当り4箇所程度にボックスを埋設するとなると、非常に手間のかかる作業となることから、コスト的及び作業工程的に多くの問題がある。また、上記(2)の場合、上端筋の配筋やコンクリート打設作業及びコンクリート打設時の左官作業、床仕上げ作業の支障となると共に、接地線がコンクリート内に埋設されてしまうと云った懸念が残る等の問題があった。
【0005】
一方、フリーアクセスフロア内に銅線をグリッド状に設置するには、多額の費用が必要となると共に、200〜300mm程度以上の高さを持つフリーアクセスフロアを設置することが必要不可欠であると云う問題を有し、このため、フリーアクセスフロアのない建物に採用することは不可能である。また、コンピュータ機器等の各種機器を設置する場合、この接地線を盛り替える必要があり、維持管理面でも多大の負担がかかる問題を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した問題に対処するためになされたものであり、その第一の課題は、IT時代に求められるコンピュータ機器等に対するノイズ障害防止機能に優れ、建物全体の等電位化・シールド化による雷害対策にも有効な構造躯体及び構造躯体を利用した接地構造並びにその施工方法を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の課題は、低抵抗接地を実現するための現場追加作業を最小限に抑え、低コストで工程上のメリットも期待でき、しかも作業者の安全性を確保しながら施工できる構造躯体及び構造躯体を利用した接地構造並びにその施工方法を提供することにある。
本発明の更なる課題は、低抵抗の接地構造を構造躯体の配筋作業やコンクリート打設作業及び左官作業への支障にならないようにして施工できる構造躯体及び構造躯体を利用した接地構造並びにその施工方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するため、請求項1に係る発明の構造躯体は、スラブ構造躯体を構成する鉄筋、メッシュ筋あるいはデッキスラブ等に、接地ケーブルを接続するためのケーブル取出し用ボルトを、そのネジ部を上方にして立設すると共に、該ケーブル取出し用ボルトに接地ケーブル接続金物を固着してなることを特徴とするものである。
上記のようにスラブ構造躯体を構成する鉄筋、メッシュ筋あるいはデッキスラブ等にケーブル取出し用ボルトを立設し、これに接地ケーブル接続金物を固着することによって、比較的簡易な構成でスラブ構造躯体の鉄筋、メッシュ筋あるいはデッキスラブ等を接地線として利用した接地構造を実現することが可能となり、スラブ構造躯体を用いた低接地抵抗の接地構造を得ることができる。
【0009】
また、請求項2に係る発明の構造躯体は、請求項1に記載された構造躯体において、前記ケーブル取出し用ボルトを、前記デッキスラブの主鉄筋及び/又は下部鉄板プレートに溶接接合してなることを特徴とするものである。
このようにデッキスラブにケーブル取出し用ボルトを立設する場合、デッキスラブの主鉄筋及び/又は下部鉄板プレートに対して直接ケーブル取出し用ボルトを溶接接合することができ、この構造はデッキスラブ主筋上部にコンクリートかぶり厚さを確保できる場合に好適である。
【0010】
更に、請求項3に係る発明の構造躯体は、請求項1に記載された構造躯体において、前記ケーブル取出し用ボルトを、U字形状となし、前記ネジ部を有していない辺を前記デッキスラブの主鉄筋及び/又は下部鉄板プレートに溶接接合してなることを特徴とするものである。
このようにケーブル取出し用ボルトをU字形状となし、ネジ部を有していない辺をデッキスラブの主鉄筋及び/又は下部鉄板プレートに溶接接合することによって、デッキスラブにケーブル取出し用ボルトを立設することができ、この構造はデッキスラブ主筋上部にコンクリートかぶり厚さを確保できない場合に適している。
【0011】
更にまた、請求項4に係る発明の構造躯体は、請求項1に記載された構造躯体において、前記ケーブル取出し用ボルトを、L字形状となし、前記ネジ部を有していない辺を前記デッキスラブの下部鉄板プレートに溶接接合してなることを特徴とするものである。
上記のようにケーブル取出し用ボルトをL字形状となし、ネジ部を有していない辺をデッキスラブの下部鉄板プレートに溶接することによっても、デッキスラブにケーブル取出し用ボルトを立設することができ、この構造もデッキスラブ主筋上部にコンクリートかぶり厚さを確保できない場合に好適である。
【0012】
また、請求項5に係る発明の構造躯体は、請求項1ないし4のいずれかに記載された構造躯体において、前記ケーブル取出し用ボルトを、1平方メートル当り数箇所程度に設置してなることを特徴とするものである。
上記のようにケーブル取出し用ボルトを1平方メートル当り数箇所、例えば2〜4箇所程度設置しておくことにより、通常の建物における接地ケーブルの接続需要を十分に満たすことができる。
【0013】
更に、請求項6に係る発明の構造躯体は、請求項1ないし5のいずれかに記載された構造躯体において、前記接地ケーブル接続金物を、スラブ厚さに合わせて固着してなることを特徴とするものである。
このように接地ケーブル接続金物をスラブ厚さに合わせて固着することにより、スラブ床面と同一平面内に接地ケーブル接続金物を設置することができ、凹凸のない床面に仕上げることができる。
【0014】
また、請求項7に係る発明の構造躯体は、請求項1ないし5のいずれかに記載された構造躯体において、前記接地ケーブル接続金物と前記ケーブル取出し用ボルトの全長を、前記スラブ厚さと同一長さに固着してなることを特徴とするものである。
上記のように接地ケーブル接続金物とケーブル取出し用ボルトを合わせた長さをスラブ厚さと同じ長さに固着することにより、接地ケーブル接続金物を簡易にスラブ床面と同一平面内に設置することができる。
【0015】
更にまた、請求項8に係る発明の構造躯体は、請求項1ないし7のいずれかに記載された構造躯体において、前記接地ケーブル接続金物を、中心に貫通ネジ孔を有するナット状部材にて構成し、その下端を前記ケーブル取出し用ボルトの上端ネジ部にネジ結合により固着してなることを特徴とするものである。
上記のように接地ケーブル接続金物を中心に貫通ネジ孔を有するナット状部材にて構成することにより、接地ケーブル接続金物のケーブル取出し用ボルトへの取り付け固着並びにスラブ厚さへの合わせ固着をネジの結合調整によって容易に実施することができる。
【0016】
請求項9に係る発明の構造躯体は、請求項8に記載された構造躯体において、前記接地ケーブル接続金物を構成するナット状部材の貫通ネジ孔に、接地ケーブル接続用のボルトをネジ結合可能としてなることを特徴とするものである。
上記のように接地ケーブル接続金物を構成するナット状部材の貫通ネジ孔に接地ケーブル接続用のボルトをネジ結合可能に構成することにより、接地ケーブルを接地ケーブル接続金物に対しボルト結合によって簡単に接続することができるとともに、構造躯体と接地を必要とする機器間に設けられる接地ケーブルの長さを短くすることもできる。
【0017】
また、請求項10に係る発明の構造躯体は、請求項1ないし7のいずれかに記載された構造躯体において、前記接地ケーブル接続金物を、前記ケーブル取出し用ボルトの上端が突出するよう該ケーブル取出し用ボルトの上端ネジ部にネジ結合により固着し、該突出部に接地ケーブル接続用のナットをネジ結合可能に構成してなることを特徴とするものである。
上記のように接地ケーブル接続金物をケーブル取出し用ボルトにその上端ネジ部が突出するようネジ結合し、この突出部に接地ケーブル接続用のナットをネジ結合可能に構成することにより、接地ケーブルを接地ケーブル接続金物に対しナット結合によって簡単に接続することができるようになる。
【0018】
更に、請求項11に係る発明の構造躯体は、請求項1ないし10のいずれかに記載された構造躯体において、前記接地ケーブル接続金物の上端部に、キャップ又は蓋を着脱自在に装着してなることを特徴とするものである。
このように接地ケーブル接続金物の上端部にキャップ又は蓋を着脱自在に装着しておくことによって、コンクリート打設時にコンクリートが接地ケーブル接続金物のボルト孔や接地ケーブル接続金物内部に侵入しないよう保護することができる。
【0019】
また、請求項12に係る発明の構造躯体を利用した接地構造は、請求項1ないし11のいずれかに記載された構造躯体側の前記接地ケーブル接続金物に、各種機器類からの接地ケーブルを接続してなることことを特徴とするものである。
上記のように構成された構造躯体側の接地ケーブル接続金物に各種機器類からの接地ケーブルを接続することによって、スラブ構造躯体を構成する鉄筋、メッシュ筋あるいはデッキスラブ等を接地線として利用した接地抵抗の極めて低い接地構造を実現することができる。
【0020】
また、請求項13に係る発明の構造躯体を利用した接地構造は、請求項12に記載された構造躯体を利用した接地構造において、前記接地ケーブルの一端に設けられたケーブル端子を、前記接地ケーブル接続金物に対しボルト又はナットを介して接続してなることを特徴とするものである。
上記のように接地ケーブルの一端に設けられたケーブル端子をスラブ構造躯体側の接地ケーブル接続金物に対しボルト又はナットを介して接続することによって、簡単に各種機器類の接地構造を構成することができる。
【0021】
更に、本発明における請求項14に係る発明の構造躯体の施工方法は、スラブ構造躯体を構成する鉄筋、メッシュ筋あるいはデッキスラブ等に、接地ケーブルを接続するためのケーブル取出し用ボルトを、そのネジ部を上方にして立設し、該ケーブル取出し用ボルトに接地ケーブル接続金物をスラブ厚さに合わせたレベルとなるよう固着すると共に、該接地ケーブル接続金物の上端部にキャップ又は蓋を装着した後、コンクリートを打設し、しかる後床の補修及び床仕上げを行うことを特徴とするものである。
上記のように施工に際して、スラブ構造躯体を構成する鉄筋、メッシュ筋あるいはデッキスラブ等に接地ケーブルを接続するケーブル取出し用ボルト立設し、このケーブル取出し用ボルトに接地ケーブル接続金物を固着する作業を追加するだけでよく、追加作業も少なく、しかも通常のスラブ構造躯体施工のための配筋作業やコンクリートの打設作業あるいは左官作業に支障を及ぼすこともなく、容易に施工することができる。
【0022】
また、請求項15に係る発明の構造躯体の施工方法は、請求項14に記載された構造躯体の施工方法において、前記デッキスラブとして、予め工場にて前記ケーブル取出し用ボルトを溶接接合したものを用いてなることを特徴とするものである。
このようにケーブル取出し用ボルトを予め工場でデッキスラブに溶接接合したものを用いて施工することにより、現場での作業をより少なくすることができるため、効率よく施工することができる。
【0023】
更に、請求項16に係る発明の構造躯体の施工方法は、請求項14又は15のいずれかに記載された構造躯体の施工方法において、前記デッキスラブを現場にて所定位置に固着した後、該デッキスラブ相互を鉄骨梁に仮止め溶接し、次いで上端筋を配筋し、更にデッキスラブ主鉄筋と壁鉄筋を前記上端筋にて所定ピッチ毎に結束又は溶接し、しかる後前記該ケーブル取出し用ボルトに前記接地ケーブル接続金物を固着してなることを特徴とするものである。
上記のようにスラブ構造躯体を構成するデッキスラブを鉄骨梁上に仮止め溶接し、これに上端筋を配筋し、更にデッキスラブ主鉄筋と壁鉄筋を上端筋にて所定ピッチ毎に結束又は溶接することによって、壁鉄筋とデッキスラブとを電気的に接続施工することができる。
【0024】
更にまた、請求項17に係る発明の構造躯体の施工方法は、請求項14記載された構造躯体の施工方法において、前記鉄筋又はメッシュ筋を配筋した後、所定ピッチ毎にこれらを溶接すると共に、該鉄筋又はメッシュ筋に対し前記ケーブル取出し用ボルトを所要箇所に溶接接合し、該ケーブル取出し用ボルトに前記接地ケーブル接続金物をスラブ厚さに合わせたレベルとなるよう固着してなることを特徴とするものである。
上記のようにスラブを構成する鉄筋又はメッシュ筋を利用する場合、現場で鉄筋又はメッシュ筋を配筋後、所定ピッチ毎にこれらを溶接し、この鉄筋又はメッシュ筋にケーブル取出し用ボルトを溶接して接地ケーブル接続金物を固着すればよく、現場で配筋される鉄筋又はメッシュ筋に対しても容易にケーブル取出し用ボルト及び接地ケーブル接続金物を設置施工することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図1乃至図15に基づいて説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る躯体構造の構成を示す側面図、図2は本発明の第2実施形態に係る躯体構造の構成を示す側面図、図3は本発明の第3実施形態に係る躯体構造の構成を示す側面図、図4(A)及び(B)はデッキスラブを梁上に固着したS造りの場合の形態図、図5(A)及び(B)はデッキスラブを梁上に固着したSRC造りの場合の形態図、図6はデッキスラブ上に上端筋を配筋したS造りの場合の形態図、図7はデッキスラブ上に上端筋を配筋したSRC造りの場合の形態図、図8はデッキスラブを壁鉄筋に電気的に接続した状態の側面図、図9(A)及び(B)はケーブル取出し用ボルトに第1形態の接地ケーブル接続金物を固着した状態の側面図、図10(A)及び(B)はケーブル取出し用ボルトに第2形態の接地ケーブル接続金物を固着した状態の側面図、図11はケーブル取出し用ボルトに第3形態の接地ケーブル接続金物を固着した状態の側面図、図12は接地ケーブルを接続した接地構造の第1形態図、図13は接地ケーブルを接続した接地構造の第2形態図、図14は接地ケーブルを接続した接地構造の第3形態図、図15は本発明に係る構造躯体及び接地構造を採用した建物の全体構成を示す概念図である。
【0026】
図1に示す第1の実施形態において、1はデッキスラブで、建物30のスラブ構造躯体31を構成するものである。デッキスラブ1は主鉄筋2と鉄板プレート3とからなり、工場において製作され、現場に搬入されて組立て施工される。
このデッキスラブ1を工場において製作する際に、合わせてデッキスラブ1の主鉄筋2及び鉄板プレート3に対し、I字形状の例えばM13程度のケーブル取出し用ボルト4をそのネジ部5を上方にして溶接接合することにより立設するようにしている。
【0027】
なお、ケーブル取出し用ボルト4の溶接は、鉄板プレート3との溶接のみに止め、主鉄筋2に対する溶接は省略することも可能である。
また、この実施形態は、ケーブル取出し用ボルト4を主鉄筋2より上方に延長させて立設する必要があることから、デッキスラブ1の主鉄筋2の上部にコンクリートかぶり厚さを確保できる場合に適している。
【0028】
図2に示す第2の実施形態において、4AはU字加工が施されたU字形状のケーブル取出し用ボルトであり、第1の実施形態の場合と同様デッキスラブ1を工場において製作する際に、合わせてデッキスラブ1の主鉄筋2及び鉄板プレート3に対し、M13程度のケーブル取出し用ボルト4Aをそのネジ部5を上方にしてネジ部を有していない辺を溶接接合することにより立設するようにしている。この実施形態は、デッキスラブ1の主鉄筋2の上部にコンクリートかぶり厚さを確保できない場合に適している。
【0029】
更に、図3に示す第3の実施形態において、4BはL字加工が施されたL字形状のケーブル取出し用ボルトであり、第1の実施形態の場合と同様デッキスラブ1を工場において製作する際に、合わせてデッキスラブ1の鉄板プレート3に対し、M13程度のケーブル取出し用ボルト4Bをそのネジ部5を上方にしてネジ部を有していない辺を溶接接合することにより立設するようにしている。
この実施形態も、デッキスラブ1の主鉄筋2の上部にコンクリートかぶり厚さを確保できない場合に好適なものである。
【0030】
なお、ケーブル取出し用ボルト4、4A、4Bは、1平方メートル当り数箇所程度(2〜4箇所)設けられる。この際のケーブル取出し用ボルト4、4A、4Bの取付けピッチは任意のピッチでよいが、0.25平方メートルに1箇所程度が好ましい。また、ケーブル取出し用ボルト4、4A、4Bを溶接する主鉄筋2はD13が推奨されるが、デッキスラブ1の種類によってはD10を使用することも可能である。
【0031】
一方、上記のようにケーブル取出し用ボルト4、4A、4Bを設けたデッキスラブ1は、工場において製作された後、現場に搬入されてスラブ構造躯体31の施工に用いられる。以下にその施工方法を施工手順に従って説明する。
先ず、デッキスラブ1は鉄骨梁6上の所定位置に固着されて仮止め溶接される。図4、図5はその状態を示したものである。
【0032】
図4はS造りの場合の例で、(B)に示すようにデッキスラブ1を相互に接合を十分に行うと共に、(A)に示すように鉄骨梁6に対して必要に応じて金属製の調整板7を介して電気的に接続するようにしている。
なお、ここで鉄骨梁6とデッキスラブ1を電気的に接続できない場合には、次工程のデッキスラブ1に対する上端筋の配筋時に対応する。
【0033】
また、図5はSRC造りの場合の例で、この場合も(B)に示すようにデッキスラブ1を相互に接合を十分に行うと共に、(A)に示すように鉄骨梁6Aに対して必要に応じて金属製の調整板7Aを介して電気的に接続するようにしている。
なお、デッキスラブ1は最後に鉄骨梁6、6Aに対して端部固定材を介して現場溶接8あるいはプレート釘止9によってしっかりと固定される。(図6、図7を参照)
【0034】
次いで、デッキスラブ1上に上端筋10を配筋する。
図6はS造りの場合、図7はSRC造りの場合の例で、デッキスラブ1上に上端筋10を設置し、この上端筋10をデッキスラブ1の主鉄筋2と結束するか若しくは必要に応じて溶接することが望ましい。また、梁上接続筋11及び上端定着筋12はデッキスラブ1の主鉄筋2と50cmピッチ程度で溶接することを原則とするが、結束により代用することもできる。更に、図8に示すように必要に応じてデッキスラブ1の主鉄筋2と壁鉄筋13とを上端筋10等の連結筋によって50cmピッチ程度毎に結束又は溶接して電気的に接続する。
【0035】
なお、図8に示すように外壁材14としてPCやALCを用いる場合には型枠材として使用することが望ましく、この場合、内側の壁鉄筋13とデッキスラブ1又は鉄骨梁6とを電気的に接続する。電気的に接続する方法としては、上端定着筋12や上端筋10等の連結筋を使用し、壁鉄筋13とデッキスラブ1の主鉄筋2とを50cmピッチ程度毎に結束又は溶接する。
【0036】
続いて、図9、図10及び図11に示すようにケーブル取出し用ボルト4、4A、4Bの上端ネジ部5に接地ケーブル接続金物を固着する。
図9(A)及び(B)に示す接地ケーブル接続金物15は、ケーブル取出し用ボルト4、4Bのネジ部5にネジ結合するための貫通ネジ孔16を中心に有する30φ程度のナット状部材17によって構成され、その上端部に貫通ネジ孔16を利用してキャップ18が着脱自在に装着されるようになっている。この接地ケーブル接続金物15は、上端がスラブ厚さに合わせたレベルとなるようネジ結合を調整することによって、スラブ床仕上げ面と同一面に固着される。
【0037】
また、図10(A)及び(B)に示す接地ケーブル接続金物15Aは、ケーブル取出し用ボルト4、4Bのネジ部5にネジ結合するための貫通ネジ孔19を中心に有する長ナット20によって構成され、その上部に50φ程度のスタイロフォーム21が着脱自在に装着されるようになっている。この接地ケーブル接続金物15Aは、スタイロフォーム21の上面がスラブ厚さに合わせたレベルとなるよう長ナット20のネジ結合を調整することによって、スラブ床仕上げ面と同一面に固着される。尚、長ナット20をスラブ厚さに合わせたレベルに調整することによりスタイロフォーム21を用いなくてもよい。
【0038】
更に、図11に示す接地ケーブル接続金物15Bは、ケーブル取出し用ボルト4Bのネジ部5にその上端が突出するようネジ結合により固着される椀状部材22によって構成され、その上部開口に蓋23が着脱自在に装着されるようになっている。この接地ケーブル接続金物15Bは、蓋23の上面がスラブ厚さに合わせたレベルとなるよう椀状部材22のネジ結合を調整することによって、スラブ床仕上げ面と同一面に固着される。
【0039】
以上のようにして接地ケーブル接続金物15、15A、15Bをケーブル取出し用ボルト4、4A、4Bに固着した後、従来通りの作業によってスラブコンクリートを打設する。このコンクリート打設時に、ナット状部材17や長ナット20のネジ孔16、19あるいは椀状部材22の内部にコンクリートが侵入しないようキャップ18、スタイロフォーム21、蓋23によって保護している。
そして、コンクリート打設作業後、更に床の補修及び床仕上げ作業を行うことによってスラブ構造躯体31が施工される。
【0040】
なお、上記はスラブ構造躯体31を構成するデッキスラブを利用した場合の例について説明したが、鉄筋やメッシュ筋を利用することもでき、この場合、現場で鉄筋やメッシュ筋を配筋後、50cmピッチ程度毎にこれらを溶接又は結束すると共に、ケーブル取出し用ボルト4、4A、4B等を必要箇所に溶接し、このケーブル取出し用ボルトに接地ケーブル接続金物15、15A、15B等を上記と同様に固着することによって構成することができる。
【0041】
上記のようにして施工されたスラブ構造躯体31に対して、コンピュータ機器等の各種機器類32を接地する場合、接地を必要とする箇所における接地ケーブル接続金物15、15A、15Bのキャップ18、スタイロフォーム21、蓋23を取り外し、図12、図13、図14に示すようにして接地ケーブル24を接続する。
図12に示す接地構造は、接地ケーブル接続金物15を構成するナット状部材17の貫通ネジ孔16を利用し、接地ケーブル24の一端に設けられているケーブル端子25をボルト26によりネジ止め固定することによって、接地ケーブル接続金物15に接地ケーブル24を接続するようにしたものである。
【0042】
また、図13に示す接地構造は、スタイロフォーム21を取り外すことにより露出する長ナット20の貫通ネジ孔19を利用し、接地ケーブル24の一端に設けられているケーブル端子25をボルト26によりネジ止め固定することによって、接地ケーブル接続金物15Aに接地ケーブル24を接続するようにしたものである。
更に、図14に示す接地構造は、蓋23を取り外すことにより露出するケーブル取出し用ボルト4、4A、4B等の上端ネジ部5を利用し、接地ケーブル24の一端に設けられているケーブル端子25をナット27によりネジ止め固定することによって、接地ケーブル接続金物15Bに接地ケーブル24を接続するようにしたものである。
【0043】
このようにして、コンピュータ機器等の各種機器類32の接地ケーブル24をスラブ構造躯体31に設けられている接地ケーブル接続金物15、15A、15Bに対して接続することにより接地ケーブル24の長さを2メートル以下程度と短い距離で構造躯体に接地させることができる。
図15は建物30内に設置されたコンピュータ機器等の各種機器類32を接地するようにした建物の全体構成を示すもので、電力系ケーブル33、情報系ケーブル34の必要箇所にアレスタ(過電圧保護器)35を設置し、スラブ構造躯体31のデッキスラブ1や鉄筋、メッシュ筋、あるいは柱部又は壁鉄筋13等の金属部材に接地するようにしている。
【0044】
以上のようにスラブ構造躯体31を構成するデッキスラブ1、鉄筋、あるいはメッシュ筋を利用し、これらデッキスラブ1、鉄筋、あるいはメッシュ筋にケーブル取出し用ボルト4、4A、4B等を溶接により立設し、このケーブル取出し用ボルト4、4A、4Bに対して接地ケーブル接続金物15、15A、15Bを固着することによりスラブ構造躯体31を構成する。そして、このスラブ構造躯体31の接地ケーブル接続金物15、15A、15Bに接地ケーブル24を接続することによって接地構造を構成することができる。
【0045】
上記のようなデッキスラブ1、鉄筋、あるいはメッシュ筋等を接地線として利用した接地構造は、接地抵抗が非常に低く、高周波ノイズ、高調波ノイズを迅速に地中に拡散できる効果を有するため、コンピュータ機器に対するノイズ障害防止手段として有効に機能させることができる。また、建物全体が等電位化されてシールド効果をもたらすことができるため、雷害対策としても有効に機能させることができる。
【0046】
また、施工的にも、工場においてデッキスラブ1を製作する際に、デッキスラブ1にケーブル取出し用ボルト4、4A、4B等を溶接しておくことにより、現場での新たな追加作業を接地ケーブル接続金物15、15A、15Bをケーブル取出し用ボルト4、4A、4Bに対して、スラブ厚さに合わせて固着する作業のみとすることができるため、コスト及び施工工程上のメリットも十分に期待することができる。
【0047】
更に、通常のデッキスラブ1にケーブル取出し用ボルト4、4A、4Bや接地ケーブル接続金物15、15A、15Bが追加設置されるだけであるため、上端筋10の配筋作業やコンクリートの打設作業及び左官作業等に悪影響を及ぼす心配もなく、容易に施工することができる。
【0048】
更にまた、上端筋10の配筋やコンクリートの打設作業に伴う作業者の安全確保の点から、ケーブル取出し用ボルト4、4A、4Bのみの場合、作業者が転倒したときにケガをする心配があるが、接地ケーブル接続金物15、15A、15Bが固着されることにより保護キャップとしての役割を持たせることができるため、作業者に対する安全性を向上させることができる。
【0049】
従って、上記した各実施形態によると、IT時代に求められるコンピュータ機器に対するノイズ障害防止機能に優れ、建物全体の等電位化・シールド化による雷害対策としても有効な接地システムを低コストで構築することができる。
因みに、この接地システムと従来のフリーアクセスフロア内に接地線をグリッド状に配線したものとをコスト比較すると、この接地システムでは、1千〜2千円/平方メートル程度であるのに対して、従来のフリーアクセスフロア内に銅線等をメッシュ状に配線する場合には、3〜5万円/平方メートル程度であり、15分の1程度のコストで係る接地システムを構築することができる。
【0050】
【発明の効果】
以上に詳細に説明したように、本発明に係る構造躯体及び構造躯体を利用した接地構造並びにその施工方法によると、IT時代に求められるコンピュータ機器等に対するノイズ障害防止機能に優れ、建物全体の等電位化・シールド化による雷害対策にも有効な接地構造を構築することができる。
また、低抵抗接地を実現するための構造躯体を現場での追加作業を最小限に抑え、低コストで工程上のメリットも期待でき、しかも作業者の安全性を確保しながら施工することができる。
更には、上記接地構造のための構成を構造躯体の配筋作業やコンクリート打設作業及び左官作業に悪影響を及ぼさないようにして施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施形態に係る躯体構造の構成を示す側面図である。
【図2】第2実施形態に係る躯体構造の構成を示す側面図である。
【図3】第3実施形態に係る躯体構造の構成を示す側面図である。
【図4】デッキスラブを梁上に固着したS造りの場合の形態図である。
【図5】デッキスラブを梁上に固着したSRC造りの場合の形態図である。
【図6】デッキスラブ上に上端筋を配筋したS造りの場合の形態図である。
【図7】デッキスラブ上に上端筋を配筋したSRC造りの場合の形態図である。
【図8】デッキスラブを壁鉄筋に電気的に接続した状態を示す側面図である。
【図9】ケーブル取出し用ボルトに第1形態の接地ケーブル接続金物を固着した状態の側面図である。
【図10】ケーブル取出し用ボルトに第2形態の接地ケーブル接続金物を固着した状態の側面図である。
【図11】ケーブル取出し用ボルトに第3形態の接地ケーブル接続金物を固着した状態の側面図である。
【図12】接地ケーブルを接続した接地構造の第1形態図である。
【図13】接地ケーブルを接続した接地構造の第2形態図である。
【図14】接地ケーブルを接続した接地構造の第3形態図である。
【図15】本発明に係る構造躯体及び接地構造を採用した建物の全体構成を示す概念図である。
【符号の説明】
1…デッキスラブ、2…主鉄筋、3…鉄板プレート、4,4A,4B…ケーブル取出し用ボルト、5…上端ネジ部、6,6A…鉄骨梁、10…上端筋、11…梁上接続筋、12…上端定着筋、13…壁鉄筋、15,15A,15B…接地ケーブル接続金物、16…貫通ネジ孔、17…ナット状部材、18…キャップ、19…貫通ネジ孔、20…長ナット、21…スタイロフォーム、22…椀状部材、23…蓋、24…接地ケーブル、25…ケーブル端子、26…ボルト、27…ナット、30…建物、31…スラブ構造躯体、32…各種機器

Claims (17)

  1. スラブ構造躯体を構成する鉄筋、メッシュ筋あるいはデッキスラブ等に、接地ケーブルを接続するためのケーブル取出し用ボルトを、そのネジ部を上方にして立設すると共に、該ケーブル取出し用ボルトに接地ケーブル接続金物を固着してなることを特徴とする構造躯体。
  2. 前記ケーブル取出し用ボルトを、前記デッキスラブの主鉄筋及び/又は下部鉄板プレートに溶接接合してなることを特徴とする請求項1に記載の構造躯体。
  3. 前記ケーブル取出し用ボルトを、U字形状となし、前記ネジ部を有していない辺を前記デッキスラブの主鉄筋及び/又は下部鉄板プレートに溶接接合してなることを特徴とする請求項1に記載の構造躯体。
  4. 前記ケーブル取出し用ボルトを、L字形状となし、前記ネジ部を有していない辺を前記デッキスラブの下部鉄板プレートに溶接接合してなることを特徴とする請求項1に記載の構造躯体。
  5. 前記ケーブル取出し用ボルトを、1平方メートル当り数箇所程度に設置してなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の構造躯体。
  6. 前記接地ケーブル接続金物を、スラブ厚さに合わせて固着してなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の構造躯体。
  7. 前記接地ケーブル接続金物と前記ケーブル取出し用ボルトの全長を、前記スラブ厚さと同一長さに固着してなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の構造躯体。
  8. 前記接地ケーブル接続金物を、中心に貫通ネジ孔を有するナット状部材にて構成し、その下端を前記ケーブル取出し用ボルトの上端ネジ部にネジ結合により固着してなることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の構造躯体。
  9. 前記接地ケーブル接続金物を構成するナット状部材の貫通ネジ孔に、接地ケーブル接続用のボルトをネジ結合可能としてなることを特徴とする請求項8に記載の構造躯体。
  10. 前記接地ケーブル接続金物を、前記ケーブル取出し用ボルトの上端が突出するよう該ケーブル取出し用ボルトの上端ネジ部にネジ結合により固着し、該突出部に接地ケーブル接続用のナットをネジ結合可能に構成してなることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の構造躯体。
  11. 前記接地ケーブル接続金物の上端部に、キャップ又は蓋を着脱自在に装着してなることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の構造躯体。
  12. 請求項1ないし11のいずれかに記載された構造躯体側の前記接地ケーブル接続金物に、各種機器類からの接地ケーブルを接続してなることことを特徴とする構造躯体を利用した接地構造。
  13. 前記接地ケーブルの一端に設けられたケーブル端子を、前記接地ケーブル接続金物に対しボルト又はナットを介して接続してなることを特徴とする請求項12に記載の構造躯体を利用した接地構造。
  14. スラブ構造躯体を構成する鉄筋、メッシュ筋あるいはデッキスラブ等に、接地ケーブルを接続するためのケーブル取出し用ボルトを、そのネジ部を上方にして立設し、該ケーブル取出し用ボルトに接地ケーブル接続金物をスラブ厚さに合わせたレベルとなるよう固着すると共に、該接地ケーブル接続金物の上端部にキャップ又はスタイロフォーム蓋を装着した後、コンクリートを打設し、しかる後床の補修及び床仕上げを行うことを特徴とする構造躯体の施工方法。
  15. 前記デッキスラブとして、予め工場にて前記ケーブル取出し用ボルトを溶接接合したものを用いてなることを特徴とする請求項14に記載の構造躯体の施工方法。
  16. 前記デッキスラブを現場にて所定位置に固着した後、該デッキスラブ相互を鉄骨に仮止め溶接し、次いで上端筋を配筋し、更にデッキスラブ主鉄筋と壁鉄筋を所定ピッチ毎に結束又は溶接し、しかる後前記該ケーブル取出し用ボルトに前記接地ケーブル接続金物を固着してなることを特徴とする請求項14又は15のいずれかに記載の構造躯体の施工方法。
  17. 前記鉄筋又はメッシュ筋を配筋した後、所定ピッチ毎にこれらを溶接すると共に、該鉄筋又はメッシュ筋に対し前記ケーブル取出し用ボルトを所要箇所に溶接接合し、該ケーブル取出し用ボルトに前記接地ケーブル接続金物をスラブ厚さに合わせたレベルとなるよう固着してなることを特徴とする請求項14に記載の構造躯体の施工方法。
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JP2009080052A (ja) * 2007-09-27 2009-04-16 Hitachi-Ge Nuclear Energy Ltd 原子力発電用の出力領域モニタシステム
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CN103166230A (zh) * 2011-12-14 2013-06-19 河南省电力勘测设计院 一种实现电容器组和电抗器组快速互换的基础

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