JP2004182278A - 加熱容器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上方に拡開し底部に非炎焼型化学発熱剤17を収納する受け皿1と、受け皿1の開口4を封鎖し被加熱物18を収納する容器本体2と、容器本体2の開口4を封鎖する蓋体3とを備えた加熱容器を陶磁器で製造し、容器本体2の底部に連続して囲い枠7を立上げ、囲い枠7で囲繞された内側底壁6に通気孔8を形成し、囲い枠7の外側において、容器本体2の外周壁9に、受け皿1に挿通する透水孔10を形成し、蓋体3の周縁下端面13を透水孔10の外側において容器本体2の外周壁9と当接させる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱容器に関する。より詳細には、本発明は、非炎型化学発熱剤と水との反応を利用することにより、どのような状況下で使用しても、食品を同じような状態に加熱調理できる加熱容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料には、酸素と反応して炎を出して燃焼する化石系や、動植物質系燃料のほかに、たとえば水添反応等による発熱反応により、熱量を発生する化合物或いは組成物がある。
【0003】
このような化合物或いは組成物に対し、米国陸軍省では、”Flame非炎焼型化学発熱剤less Chemical Heater(FCH)”として制式用語を与えている。従って、明細書においては、米国陸軍省の用法に倣い、用語「非炎焼型化学発熱剤」を、酸素と反応して炎を出して燃焼する化石系、もしくは動植物質系燃料と異なり、たとえば水添反応等による発熱反応により熱量を発生する化合物或いは組成物と定義する。
【0004】
このような非炎焼型化学発熱剤としては、生石灰(CaO)、粉体マグネシウム、鉄粉と活性炭性と食塩とから成る組成物、粉体マグネシウム、粉体生石灰と粉体アルミニウムとから成る組成物等、各種のものが知られている。
【0005】
非炎焼型化学発熱剤の重要な用途の一つは、たとえば駅弁のように、調理済み食品等を、場所を選ばずに加熱することである。非炎焼型化学発熱剤を利用して調理済み食品等を加熱する場合に最も重要なことは、非炎焼型化学発熱剤と反応させる水の量である。
【0006】
以下、非炎焼型化学発熱剤と水との反応に関して略説する。非炎焼型化学発熱剤は、いずれも、化学量論量の水と反応させて所定の熱量を発生させるものである。その反応機構を、生石灰(CaO)を例にとって説明する。CaOは、下記の反応式に従ってH2Oと反応して、15.2Kcalの熱量を発生する。
CaO + H2O = Ca(OH)2 + 15.2Kcal
CaOの分子量は56.08である。一方、H2Oの分子量は18である。即ち、15.2Kcalの熱量を発生させるには、56.08グラムのCaOに対して、18グラムのH2Oを反応させなければならない。56.08グラムのCaOに対して、H2Oが18グラム以下の場合、未反応のCaOが残留し、一方H2Oが18グラム以上の場合、反応終了後余剰水が残留し、その処理に負担がかかる。この熱力学理論は、生石灰(CaO)以外の非炎焼型化学発熱剤と水との反応にも同じように適用される。
【0007】
なお、2成分系以上の非炎焼型化学発熱剤の場合には、第1段階反応において、非炎焼型化学発熱剤の第1成分と水が反応して、含水化合物、または水酸化物を生成し、第2段階反応において、第2成分と含水化合物、または水酸化物がさらなる反応を起こすという逐次反応を起こす。この逐次反応の場合にも、第1段階反応において、正確に秤量した水を使用することにより、後続する逐次反応が適正に行われるので、上述した熱力学理論が適用される。
【0008】
以上の説明により、非炎焼型化学発熱剤と水との反応を利用して食品等を加熱する場合は、化学量論量に基づいて正確に秤量した水と反応させることが重要であることが分かる。
【0009】
さらに、非炎焼型化学発熱剤を利用して、調理済み食品等を加熱する場合に重要なことは、食品衛生に留意することである。
【0010】
近年、非炎焼型化学発熱剤を使用して食品を加熱する例として、一般の駅弁、炎焼型燃料を嫌うホテルや旅館の個室での食事、病室や老人ホーム等への宅配、アウトドアースポーツ等の際の食事の他に、ガスや電気等の加熱手段が遮断された緊急災害時に備えて、自治体等で備蓄される食品等があげられる。いずれにしても、非炎焼型化学発熱剤は、環境状況がほぼ決まっている一般家庭よりも、不特定多数の種々雑多な人が居合わせたり、或いは野外、または複雑な要素が混在している環境下で使用される場合が多い。このような環境下では、汚染されないように、容器を開封することなく加熱することが望ましい。
【0011】
また、非炎焼型化学発熱剤を利用して、調理済み食品等を加熱する場合に重要なことは、使用者の年齢、性別、健常者、非健常者に関わりなく、誰が、どのような状況下で使用しても、同じような状態で加熱調理できることである。
【0012】
また、非炎焼型化学発熱剤は使い捨ての消耗品であるので、複雑な構成とせず、できる限り単純な方法で確実に水と反応させるようにし、かつコストを下げることも、重要な要素である。
【0013】
この点を勘案して、非炎焼型化学発熱剤を充填した袋と、反応水を充填した袋を密着して配置し、引張り紐を引いて、両方の袋を同時に開裂させて、反応を起こさせる方法が提案されているが、製造工程が複雑になると共に、引張り紐が途中で切れたり、両袋の開裂が十分でなく非炎焼型化学発熱剤と水との反応の確実性に欠けるという欠点がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、非炎焼型化学発熱剤と水との反応を利用して食品を加熱する加熱容器であって、容器を開封することなく、非炎焼型化学発熱剤に対して化学量論量に基づいて正確に秤量した水を、非炎焼型化学発熱剤に添加して反応させ、誰が、どのような状況下で使用しても、同じような状態に食品を加熱調理することができる、極めて単純な構造の加熱容器を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための請求項1記載の加熱容器は、上方に拡開し、底部に非炎焼型化学発熱剤を収容しうる受け皿と、該受け皿の上面開口を封鎖するように、受け皿の周縁張出し部に載置され、かつ被加熱物を収容しうる容器本体と、容器本体の上面開口を封鎖しうる蓋体とを備える加熱容器であって、
(イ)容器本体が、その底壁の周縁部に立設された囲い枠を備え、囲い枠で囲繞された底壁に通気孔が穿設され、かつ囲い枠の外側方において、容器本体の周壁に、受け皿に連通する透水孔が形成されており、
(ロ)蓋体の周縁下端面が、前記透水孔の外側方において、容器本体の周壁と当接しうるようになっている。
【0016】
請求項2に記載の加熱容器は、請求項1記載の加熱容器において、容器本体の底壁の下面周縁部に、受け皿の開口の周縁の張り出し部に当接しうる突起が突設されている。
【0017】
請求項3に記載の加熱容器は、請求項1または2記載の加熱容器において、受け皿の開口の周縁に張出し部が延設されており、この張出し部に、容器本体の外周壁が当接するようになっている。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の加熱容器の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の加熱容器の分解斜視図である。加熱容器は、受け皿(1)と、容器本体(2)と、蓋体(3)とから構成されている。
【0019】
受け皿(1)、容器本体(2)、および蓋体(3)の材料は特段に制限されないが、用途に応じて適宜選択される。即ち、駅弁等、携帯使い捨て用に共する場合はプラスチックで、また、ホテル、旅館等で継続して使用する場合は、陶磁器で製造することが望ましい。
【0020】
受け皿(1)は、上方に拡開する開口(4)を有し、開口(4)の周囲には、所定の形状の張出し部(5)が延設されている。受け皿(1)の底部には、添加される水と反応させる非炎焼型化学発熱剤(17)(図2)が収容される。
【0021】
容器本体(2)には、被加熱物(18)(図2)が装入され、受け皿(1)の上面開口(4)を封鎖するようになっている。
【0022】
容器本体(2)の底壁(6)の周辺部には、囲い枠(7)が立設され、囲い枠(7)で囲繞された底壁(6)上に、食品等の被加熱物(18)が置かれるようになっている。この囲い枠(7)は、添加される反応水が、被加熱物(18)の方に流入するのを防止するためのものである。
【0023】
さらに、囲い枠(7)で囲繞された底壁(6)には、受け皿(1)内で発生した非炎焼型化学発熱剤(17)と反応水との反応により発生した蒸気を、容器本体(2)内へ流入させるための多数の通気孔(8)が穿設されている。
【0024】
前記通気孔(8)の形状は、簀の子状、あるいは角形若しくは丸形等、特に限定されないが、非炎焼型化学発熱剤(17)と水との反応により発生した蒸気と、被加熱物(18)との接触効率を高めるためには、底壁(6)の面積に比べて、通気孔(8)の総空隙率を、できるだけ大とするのがよい。
【0025】
本発明の加熱容器を使用する場合、非炎焼型化学発熱剤(17)と水との反応により発生した蒸気は、加熱作用が終了したら水に還元されるが、それが容器本体(2)内に滞留していると、加熱された被加熱物(18)の風味や香味等を損ねるおそれがある。従って、容器本体(2)内に発生した水分、或いは被加熱物(18)から滲み出た汁を、速やかに受け皿(1)内へ滴下させるためにも、通気孔(8)の総空隙率はできるだけ大きいのがよい。
【0026】
囲い枠(7)の外側方に延びる容器本体(2)の外周壁(9)には、受け皿(1)内に連通する複数の透水孔(10)が穿設されている。
【0027】
透水孔(10)の形状は、特段に限定されないが、反応水を受け皿(1)内に速やかに滴下させるためには、その寸法をできるだけ大きくし、かつその数も、できるだけ多くするのがよい。
【0028】
透水孔(10)の外側方において、容器本体(2)の外周壁(9)の下面には、受け皿(1)の張出し部(5)へ当接しうる環状突起(11)が突設されている。
【0029】
環状突起(11)の形状は、受け皿(1)の開口(4)の周囲に設けられた張出し部(5)へ適正に当接するような形状にすることが好ましい。このことにより、受け皿(1)内における非炎焼型化学発熱剤(17)と反応水との反応により発生した蒸気は、加熱容器の外に漏出することなく、蒸気の熱量を最大限に利用することができる。また、容器本体(2)が、受け皿(1)に嵌合されているので、がたつきがなく、使用中に高温の蒸気が漏洩することも防止される。
【0030】
蓋体(3)をもって、容器本体(2)を封鎖するに当たっては、適所に緩い上向凹入部(12)を設けた蓋体(3)の周縁下端面(13)を、透水孔(10)の外側において、容器本体(2)の外周壁(9)上に当接させる。これにより、非炎焼型化学発熱剤(17)と反応させる水を、蓋体(3)の外表面(14)に添って滴下させ、容器本体(2)の外周壁(9)と、蓋体(3)の下端部との間に形成された水溜め(15)と、蓋体(3)の周縁下端面(13)に設けた上向凹入部(12)を経て、透水孔(10)から受け皿(1)内に添加させることができる。
【0031】
なお、本発明の加熱容器における受け皿(1)、容器本体(2)、および蓋体(3)は、それぞれ別体に製造される。従って、これらを、陶土、陶石、あるいはプラスチックで成形する場合、熱収縮を起こすので、蓋体(3)の周縁下端面(13)に、あえて上向凹入部(12)を設けなくても、蓋体(3)を容器本体(2)の周壁(9)と当接させた際、両者の間には、水を通過させる程度の隙間が形成されることとなる。
【0032】
無論、非炎焼型化学発熱剤(17)と反応させる水は、被加熱物(18)を収容した容器本体(2)と蓋体(3)を同時に持ち上げて、受け皿(1)に直接注入してもよい。
【0033】
蓋体(3)には、余剰の蒸気を容器外に排出する排気孔(16)を設けるのがよい。排気孔(16)を設けることにより、加熱作用が終了した蒸気、あるいは余剰に発生した蒸気を迅速に容器外に排除できるので,それらが水滴となって落下して、食品等被加熱物(18)の食味や風味等を損ねるのが防止できる。
【0034】
本発明の加熱容器を使用するに当たっては、先ず、図2に示すように、受け皿(1)の底部に、非炎焼型化学発熱剤(17)を置く。
【0035】
次いで、被加熱物(18)を入れた容器本体(2)を受け皿(1)に被せる。この場合、容器本体(2)の底部下面周縁より突設させた環状突起(11)は、受け皿(1)の張出し部(5)の周縁と密接し、非炎焼型化学発熱剤(17)と水との反応により発生する蒸気が、容器本体(2)外に漏出するのが防止される。
【0036】
次いで、蓋体(3)を容器本体(2)に被せる。この場合、蓋体(3)の周縁下端面(13)が、容器本体(2)に穿設された透水孔(10)の外側において、容器本体(2)の外周壁(9)に当接して、蓋体(3)の周縁下端面(13)が透水孔(10)を塞がないようになっている。
【0037】
上述したように、受け皿(1)、容器本体(2)、および蓋体(3)をセットした後、非炎焼型化学発熱剤(17)と反応する所定量の水を入れたピッチャー(19)から、蓋体(3)の外表面(14)に沿って水を滴下すると、水は、水溜め(15)および透水孔(10)を経て、受け皿(1)内に滴下し、非炎焼型化学発熱剤(17)と反応して、直ちに高温の蒸気を発生する。
【0038】
非炎焼型化学発熱剤(17)と水との反応により発生した高温の蒸気は、容器本体(2)の底面に穿設された通気孔(8)から、容器本体(2)内へ抜け、被加熱物(18)と接触して、これを加熱した後、蓋体(3)における排気孔(16)から外部に排気される。
【0039】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によると、容器を開封せずに、非炎焼型化学発熱剤に対して化学量論量に基づいて正確に秤量した水を、非炎焼型化学発熱剤に添加して反応させ、どのような状況下で使用しても、同じような状態に食品を加熱調理することができる。
【0040】
請求項2に記載の発明によると、容器本体と受け皿が嵌合し、受け皿内で非炎焼型化学発熱剤と水との反応により発生した蒸気が、容器本体外部に漏出するのが防止され、加熱容器全体の安定性が確保される。
【0041】
請求項3に記載の発明によると、容器本体の外周壁と受け皿の張出し部が当接し、受け皿内で非炎焼型化学発熱剤と水との反応により発生した蒸気が、容器本体外部に漏出するのが抑止され、加熱容器全体の安定性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の加熱容器の一実施例の分解斜視図である。
【図2】同じく、使用態様を示す縦断正面図である。
【符号の説明】
(1)受け皿
(2)容器本体
(3)蓋体
(4)開口
(5)張出し部
(6)底壁
(7)囲い枠
(8)通気孔
(9)外周壁
(10)透水孔
(11)環状突起
(12)上向凹入部
(13)下端面
(14)外表面
(15)水溜め
(16)排気孔
(17)非炎焼型化学発熱剤
(18)被加熱物
(19)ピッチャー
Claims (3)
- 上方に拡開し、底部に非炎焼型化学発熱剤を収容しうる受け皿と、該受け皿の上面開口を封鎖するように、受け皿の周縁張出し部に載置され、かつ被加熱物を収容しうる容器本体と、容器本体の上面開口を封鎖しうる蓋体とを備える加熱容器であって、
(イ)容器本体が、その底壁の周縁部に立設された囲い枠を備え、囲い枠で囲繞された底壁に通気孔が穿設され、かつ囲い枠の外側方において、容器本体の周壁に、受け皿に連通する透水孔が形成されており、
(ロ)蓋体の周縁下端面が、前記透水孔の外側方において、容器本体の周壁と当接しうるようになっていることを特徴とする加熱容器。 - 容器本体の底壁の下面周縁部に、受け皿の開口の周縁の張出し部に当接しうる突起が突設されている請求項1に記載の加熱容器。
- 受け皿の開口の周縁に張出し部が延設されており、この張出し部に、容器本体の外周壁が当接するようになっている請求項1または2に記載の加熱容器。
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