JP2004181698A - インクジェットプリント装置、及びプリント方法 - Google Patents

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Minoru Teshigahara
稔 勅使川原
Naoji Otsuka
尚次 大塚
喜一郎 ▲高▼橋
Kiichiro Takahashi
Osamu Iwasaki
督 岩崎
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Abstract

【課題】時間差むらの発生場所を特定し、視覚的に目立たない場合は時間差印字を行わず双方向記録を行い高速化を図る。
【解決手段】バンド間で時間差ムラが生じる位置を検出し、視覚的に濃度差が認識しやすい位置関係にあるかを判断し、目立つ場合は時間差印字を行い、目立たない場合は通常の双方向印字を行う。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は複数色のインクをプリント媒体に付与する記録ヘッドを双方向に走査してカラープリント行う双方向プリント装置及び方法に関し、特に双方向カラープリントを行う際に生ずる打ち込み時間差による濃度むらを軽減させ、且つ走査間での色むらが視覚的に目立たない場合には濃度むら軽減に関わる処理を行わず記録を行い、高速記録が可能な双方向プリント装置、及びプリント方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
プリント装置、特にインクジェット方式のプリント装置に於いては普通紙等におけるカラープリントにおける記録スピードの向上と高画質化が重要なテーマとなっている。
【0003】
記録スピードの向上の手法としては、記録ヘッドの長尺化の他に、記録ヘッドの記録(駆動)周波数の向上や双方向プリントなどが一般的である。双方向プリントは片方向プリントに比較して、同じスループットを得るときに必要エネルギの分散化が時間的になされているので、トータルシステムとしてはコスト的に有効な手段となっている。
【0004】
双方向プリント方式、特に記録ヘッドの構成によっては各色のインクの打ち込み順序が主走査の往方向と副方向で異なる為に、バンド状の色むらが発生するという原理的な問題は、主走査方向にノズル列が対称的にレイアウトされた記録ヘッド(整理番号4053003)により解決手法が提案されている。
【0005】
また主に普通紙のテキスト等の記録においては、黒文字の高品位化を実現するため、顔料系のインクを用いるインクジェットプリント装置が主流となりつつある。
【0006】
ここで顔料系の黒インクはフェザリングによる品位劣化を防ぐため低浸透系の組成で取り扱われることが多い。また低浸透系のインクを吐出する黒ノズルと、超浸透系のインクを吐出する対称形のカラーノズルを横並びの構成で記録すると、黒・カラーの境界間での滲み(ブリード)や白もや現象(低浸透インクの後退による濃度低下)が生じるため黒ノズルとカラーノズルは縦並びの構成が用いられることが多い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の構成において黒、カラー間が副走査方向に縦並びの位置関係にあるため同一領域に黒インクとカラーインクが混在する、例えばグレー色のような色相を紙面全域に記録する際に双方向記録を行うと、紙面の右端部と左端部で黒とカラーの打ち込まれる時間差が異なることになる。仮に低浸透系の黒インクが先に打ち込まれ、後に超浸透系のカラーインクが打ち込まれるような構成を想定すると、黒インクが打ち込まれ、紙面に染着する前にカラーインクが打ち込まれるるため黒インクは紙内部に押し込まれ濃度が下がる。つまり記録用紙の右端部と左端部で同じ打ち込み順で、且つ同じ打ち込み量で記録を行っても濃度差が生じることになる。またこれが1バンドであれば時間差による濃度差が主走査方向に段階的に記録されているため視覚的には認識しづらいが、数バンド連続して記録すると副走査方向、特に記録媒体の左右両端部においては走査(バンド)毎に時間差の長短が繰り返しになるため視覚的にバンド間における濃度差が目立ち著しく画質を低下させる原因となる。
【0008】
この課題を解決するためにファイルNO.4471007では、記録データを所定エリアサイズで分割し、各エリアにおける打ち込み量(ドット数)をカウントし、黒、カラーともに所定打ち込み量を超えているかを判定し、超えた場合は印字方向を片方向に切り替え、先打ち、後打ちの時間差を確保しバンド間で顕著に目立つ濃度むらを軽減することが提案されている。濃度むらとはバンド間における相対的な濃度差から視覚的に認識される現象であり、バンド間で濃度むらが認識しずらい位置関係にあるにも関わらず、時間差を生じさせる記録処理が行われるため、ユーザーにとっては著しく印刷速度が低下させてしまうといった問題が生じる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の問題を解決するため、着目した走査(バンド)内に先打ち、後打ちされるインク付与量が所定値以上の領域が存在し、且つ前バンドとの間での前記濃度むらが生じるインク付与量の領域が、視覚的に認識されやすい隣接位置に存在するか否かを判別し、隣接位置にある場合には所定量の時間差を設けて記録を行い、隣接しない場合には時間差を設けるために必要な一連の処理をスキップすることを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態としては、例えば副走査方向に低浸透系の黒インクを吐出する記録素子群と、それとは異なる浸透度、例えば超浸透系のカラーインクを吐出する記録素子群とが縦並びに配置された構成の記録ヘッドにおいて1パス双方向記録を行う際に生じるバンド間での時間差ムラを低減するために印字前に記録データをバンド内で所定領域に分割し、それぞれの領域において各色のインク付与量を取得する手段と、その領域内において先打ちされるインクと後打ちされるインクの付与量がそれぞれ所定値以上であるかを判別する手段と、所定値以上の場合はそのバンド内での位置情報を取得する手段と、その位置情報を、前バンドにおけるインク付与量が所定値を超えたエリアの位置関係と比較する手段と、比較した結果が隣接する位置関係にあった場合には、所定の時間差を確保するために必要となる待機時間を算出する待機時間算出手段と、算出された待機時間を設定し待機実行する印字待機手段と、隣接しない位置関係にない場合は、時間差確保に関わる一連の処理を省くスキップ手段、を有することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、濃度むらが発生するインク量が付与される領域があっても、バンド間で所定のインク量が付与される領域が視覚的に目立ちにくい位置条件であれば、時間差を設けるといった処理を行わずに高速記録を行うことが出来る。
【0012】
(装置の説明)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、各図において、同一符号で示す要素はそれぞれ同一または対応する要素を示す。
【0013】
図1は、本発明を適用したインクジェットプリント装置の実施形態における主要部の構成を示す図である。図1において、ヘッドカートリッジ1がキャリッジ2に交換可能に搭載されている。ヘッドカートリッジ1は、プリント・ヘッド部およびインク・タンク部を有し、また、ヘッド部を駆動するための信号などを授受するためのコネクタが設けられている(不図示)。
【0014】
ヘッドカートリッジ1はキャリッジ2に位置決めして交換可能に搭載されており、キャリッジ2には、上記コネクタを介して各ヘッド・カートリッジ1に駆動信号等を伝達するためのコネクタ・ホルダ(電気接続部)が設けられている。キャリッジ2は、主走査方向に延在して装置本体に設置されたガイド・シャフト3に沿って往復移動可能に案内支持されている。そして、キャリッジ2は主走査モータ4によりモータ・プーリ5、従動プーリ6およびタイミング・ベルト7等の駆動機構を介して駆動されるとともにその位置及び移動が制御される。また、ホームポジションセンサ30がキャリッジに設けられている。これにより遮蔽板36の位置をキャリッジ2上のホームポジションセンサ30が通過した際に位置を知ることが可能となる。
【0015】
プリント用紙やプラスチック薄板等のプリント媒体8は給紙モータ35からギアを介してピックアップローラ31を回転させることによりオートシートフィーダ(以降ASF)32から一枚ずつ分離給紙される。更に搬送ローラ9の回転により、ヘッドカートリッジ1の吐出口面と対向する位置(プリント部)を通って搬送(副走査)される。搬送ローラ9はLFモータ34の回転によりギアを介して行われる。その際、給紙されたかどうかの判定と給紙時の頭出し位置の確定は、ペーパエンドセンサ33をプリント媒体8が通過した時点で行われる。更に、プリント媒体8の後端が実際にどこに有り、実際の後端から現在の記録位置を最終的に割り出す為にもペーパエンドセンサ33は使用されている。
【0016】
なお、プリント媒体8は、プリント部において平坦なプリント面を形成するように、その裏面をプラテン(不図示)により支持されている。この場合、キャリッジ2に搭載された各ヘッド・カートリッジ1は、それらの吐出口面がキャリッジ2から下方へ突出して前記2組の搬送ローラ対の間でプリント媒体8と平行になるように保持されている。
【0017】
ヘッドカートリッジ1は例えば、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインク・ジェット・ヘッド・カートリッジであって、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えたものである。すなわちヘッドカートリッジ1のプリント・ヘッドは、上記電気熱変換体によって印加される熱エネルギーによる膜沸騰により生じる気泡の圧力を利用して、吐出口よりインクを吐出してプリントを行うものである。もちろん、圧電素子によってインクを吐出する等、その他の方式であっても良い。
【0018】
図2は、上記インクジェットプリント装置における制御回路の概略構成例のブロック図を示す。
【0019】
同図において、コントローラ200は主制御部であり、例えばマイクロ・コンピュータ形態のCPU201、プログラムや所要のテーブルその他の固定データを格納したROM203、画像データを展開する領域や作業用の領域等を設けたRAM205を有する。ホスト装置210は、画像データの供給源(プリントに係る画像等のデータの作成、処理等を行うコンピュータとする他、画像読み取り用のリーダ部等の形態であってもよい)である。画像データ、その他のコマンド、ステータス信号等は、インタフェース(I/F)212を介してコントローラ200と送受信される。
【0020】
操作部120は操作者による指示入力を受容するスイッチ群であり、電源スイッチ222、吸引回復の起動を指示するための回復スイッチ226等を有する。センサ群230は装置の状態を検出するためのセンサ群であり、上述のホームポジションセンサ30、プリント媒体の有無を検出するためのペーパエンドセンサ33、および環境温度を検出するために適宜の部位に設けられた温度センサ234等を有する。
【0021】
ヘッド・ドライバ240は、プリントデータ等に応じてプリント・ヘッド1の吐出ヒータ25を駆動するドライバである。ヘッド・ドライバ240は、プリントデータを吐出ヒータ25の位置に対応させて整列させるシフト・レジスタ、適宜のタイミングでラッチするラッチ回路、駆動タイミング信号に同期して吐出ヒータを作動させる論理回路素子の他、ドット形成位置合わせのために駆動タイミング(吐出タイミング)を適切に設定するタイミング設定部等を有する。
【0022】
プリント・ヘッド1には、サブヒータ242が設けられている。サブヒータ242はインクの吐出特性を安定させるための温度調整を行うものであり、吐出ヒータ25と同時にプリント・ヘッド基板上に形成された形態および/またはプリント・ヘッド本体ないしはヘッドカートリッジに取り付けられる形態とすることができる。
【0023】
モータ・ドライバ250は主走査モータ4を駆動するドライバであり、副走査モータ34はプリント媒体8を搬送(副走査)するために用いられるモータであり、モータ・ドライバ270はそのドライバである。
【0024】
給紙モータ34はプリント媒体8をASFから分離、給紙するために用いられるモータであり、モータ・ドライバ260はそのドライバである。
【0025】
(実施例1)
図3は、ヘッドカートリッジ1の記録ヘッド部の主要部構造を部分的に示す模式図である。同図において、100、101はブラックを吐出する記録ヘッド(以降Bk1、Bk2)である。102はシアンを吐出する第一の記録ヘッド(以降C1)である。103はマゼンタを吐出する第一の記録ヘッド(M1)である。104はイエローを吐出する第一の記録ヘッド(Y1)である。105はイエローを吐出する第二の記録ヘッド(Y2)である。106はマゼンタを吐出する第二の記録ヘッド(M2)である。107はシアンを吐出する第二の記録ヘッド(M2)である。
【0026】
これら上記の記録ヘッド群を一つとしてヘッドカートリッジ1を構成している。ヘッドカートリッジ1に於いて、これら上記の個々の記録ヘッドは複数の吐出ノズルを有している。一例としてブラック記録ヘッド100Bk1において110はブラックの吐出ノズルである。列単位ではノズル数160、300dpiのピッチでノズルが形成され、Bk1とBk2が600dpiオフセットしているため色単位で見れば320ノズル、600dpiの記録ヘッドということになる。
【0027】
カラー記録ヘッド102C1に於いて112はシアンの吐出ノズルである。記録ヘッド103M1に於いて113はマゼンタの吐出ノズルである。記録ヘッド106M2に於いて116はマゼンタの吐出ノズルである。記録ヘッド107C2に於いて117はシアンの吐出ノズルであり、それぞれ列単位ではノズル数128、600dpiピッチでノズルが形成され、各色2列がオフセットしているため色単位で見れば256ノズル、1200dpiの記録ヘッドということになる。
【0028】
個々の記録ヘッドのノズル群は主走査方向に対してほぼ垂直な方向に配列されている。厳密には吐出タイミングのとの関係で主走査方向に多少斜めに配列されている場合も有る。更に、これらの記録ヘッド群は主走査方向と同一の方向に配列されている。具体的には図2の場合は記録ヘッド112C1、113M1、114Y1、115Y2、116M2、117C2の各々が主走査方向と同一の方向に配列されている。また本実施例の記録ヘッドでは黒を吐出する記録ヘッドの方がシアン、マゼンタ、イエローを吐出する記録ヘッドよりトータルピッチが長くなっている。これによりモノクロデータのエリアでは黒を吐出する記録ヘッドの全幅320ノズルを用いて記録することによって高速化を実現することができる。また黒とカラーが混在するような領域の記録においては黒を吐出する記録ヘッドの使用ノズル幅をカラーのノズル数と同じ幅に制限して記録を行う。これは浸透度が大きく異なる、黒インクとカラーインク(シアン、マゼンタ、イエロー)を同一走査で記録した場合、ブリードや白もやで著しく画像が劣化するため、黒インクを吐出するノズルを制限し、一走査内で黒とカラー混在したとしても、別の走査で記録を行うことで、上述のブリードや白もや現象を回避することができるためである。
【0029】
図4(A)は図2のヘッド構成で黒とカラーが混在する場合の記録方法を示す模式図である。例えば図4(B)に示すように、通常のカラーモードにおける記録では図のように黒ノズルと、カラーノズルにオフセットがあるために同一エリアを記録するのに1走査分の差が生じる。この方法で例えば黒とカラーが混在する、例えばグレーのような均一なパターンを記録するとスキャンAにおいては1スキャン目に領域A、Bといった順に黒インクのみ付与される。次に紙を1バンド分送り、2スキャン目は、領域B、Aの順でカラーインクが付与される。黒インクとカラーインクの付与される時間が大きければ、黒インクは溶剤等が紙内部に浸透し顔料粒子が紙表面に残る。その後カラーインクが付与されれば比較的濃度の高いグレーが記録されることになる。逆に黒インクとカラーインクが付与される時間が短ければ、先打ちされた黒インクは定着しきれない状態で超浸透特性のカラーインクがその上に付与されるために黒インクは紙の内部に潜りこむために比較的低濃度のグレーが表現される。そのため、黒・カラーの時間差は領域Bが少なく、Aが多い。相対的な濃度は領域Aが濃くなる。同時に領域C、Dには順に黒インクが付与されていることになる。再び1バンド分紙送りを行い、同様の動作を繰り返す。カラーインクは領域D、Cといった順に付与されることとなり、このバンド内における相対的な濃度は領域Cの方が濃くなる。この記録が続くとバンド間の両端部では濃い、薄いといった領域が繰り返され、この現象を黒インクと、カラーインクの打ち込み時間差による濃度むらと呼び、視覚的に目立ち、著しく画像の劣化を招く。
【0030】
この課題を解決するためには各領域において黒とカラーの打ち込み時間差が同一であれば良い。本実施のヘッド構成において、時間差を同じにするには黒、カラー共に使用ノズルを制限して1スキャン分のオフセット量を設けることも考えられるが、双方向で記録が出来たとしてもノズル数が制限された分印刷速度が落ちてしまうといった弊害が生じる。
【0031】
図5は各印字方法における黒、カラーインクの打ち込み時間差に起因する濃度むらの見え方を示したものである。(A)は通常の双方向印字の場合で、前述のような用紙両端部に「濃い、薄い」が繰り返され色むらが視覚的に目立つ。(B)は印字方向を片方向に限定した場合でスキャン幅が切り替わるところで急激な濃度変化が生じる。印字データに関わらず用紙フル幅をスキャンすれば黒とカラーが打ち込まれる時間差が常にバンド間で一律になるため色むらは発生しないが、無駄な主走査動作が増え、記録動作に膨大な時間がかかる欠点がある。(C)は先打ちされる黒インクと、後打ちされるカラーインクの付与時間差を一律にするため、スキャン間で常に所定時間が確保されるよう待機動作を実施した場合である。この記録動作では双方向で記録しつつ濃度むらを軽減することが可能となる。
【0032】
図6は本実施の形態における、時間差記録動作の全体フロー図である。
【0033】
ユーザーがホストコンピュータから記録装置に記録データを送信すると、印字を行う前に、着目したバンド内に濃度むらが発生しやすい領域が存在するか否かを判断するために、ステップS1でドットカウント処理を行う。このドットカウント処理については(ドットカウント処理)で後述する。ドットカウントした結果に基づきステップS2でバンド内に黒、カラー共に所定ドットを超えた領域A_overが存在するか否かを判断する。濃度むらが生じる領域がなければステップS10にて通常の双方向記録を実施する。A_overが存在した場合にはステップS3でバンドスキャン進行方向に対し最端部となる位置を取得し、ステップS4でその位置情報A_over(last)をセットする。ステップS5で次スキャンの印字開始位置A_nscanの位置情報を取得し、ステップS6にて着目した領域の先打ち、後打ちの時間差ΔTをA_over(last)とA_nscanとから算出する。ステップS7にて、その算出した時間ΔTが所定時間Tth以上か否かを判断し、所定時間に満たない場合にはステップS8にて後打ちするまでに待機すべき時間T(wait)を算出し、ステップS9にて待機処理を実施する。そして所定の時間を超えた段階でステップS10にて通常の双方向記録動作を実施する。また所定時間Tthを超えていた場合は、通常の後打ちまでの時間が確保されているため通常の双方向記録を行う。
【0034】
またフロー図には記載していないが、モノクロモードにおいては濃度むらが発生することはない。よって記録データが転送され、モノクロ・カラーモードの判別を行い、モノクロモードの場合には濃度むら軽減に関わる一連の処理を行わず双方向記録を実施することになる。
【0035】
(ドットカウント処理)
図7にバンド内で分割された領域におけるインク付与量を管理するドットカウント処理のフロー図を示す。ステップS11で受信データをバンド(走査)内で所定サイズのエリアに分割する。本実施例においては1パス記録のみ実施するため、この領域を(縦*横)=128*320ドット(600dpi)とする。これは記録ヘッドの使用ノズル幅等を考慮し任意のサイズで構わない。マルチパス印字の際にはパス数分で所定の領域を分割しても良い。また一般的に記録メディアにより、インクの最大打ち込み率が異なるため、記録メディアごとに所定のドット数を設定できる閾値設定手段を記録装置に備えることが望ましい。次にステップS12で各エリアにおける黒、カラーのドット数を独立にカウントする。以後このカウントされたドット数の情報により処理が行われることになる。
【0036】
(濃度むら判定閾値)
図8は本実施の形態におけるグレー色の入力レベルに応じた、黒、カラーのドット数を表したものである。
【0037】
本実施の形態では低浸透の黒インクを付与し始める段階で、カラーインクの付与量は80%を常に超えている。黒が10%以下の領域では、先打ち、後打ちの時間差による濃度差が目立たないため、本実施の形態では、黒が10%以上の領域で、且つカラーインクの付与率が80%以上の領域を濃度むらが発生するエリアを検出するための閾値とする。
【0038】
よって各エリアにおけるドット数の閾値は
黒128*320*10%=4096dot
カラー128*320*2*80%=65536dotとなる。
【0039】
本実施の形態は黒とカラーといったように浸透速度の異なるインクの付与量のみを考慮しているが、閾値を各色独立に設定しインク付与量と色相を考慮してもよい。また一般的に表層にコート層がある記録メディアを用いた場合や、印字パス数を増やした場合に、にじみ等の画像弊害が低減するため、黒とカラーのインク付与量を増やすことが出来る。これらの使用を考慮して、記録メディア、印字パス数から複数の閾値を黒、カラー共に独立に設定できる構成であってもよい。
【0040】
(時間差処理)
図9は時間差記録処理に必要な時間差を算出するための具体例である。この用にバンド間で視覚的に目立つ濃度むら領域が存在した場合には、着目したバンドの後打ちとなるカラーインクを印字する際、所定の時間差を確保し、濃度低下を避ける処理を行う必要がある。図9においては着目したバンドBの領域A_over(last)は記録走査進行方向に対し所定のドット数を超えた領域の最端部で、黒インクが先打ちされた状態であり、このタイミングで既にバンドAは記録動作が終了していることとなる。本記録装置は1バンド分紙送りを行い、バンドCを副方向で記録する。バンドCはスキャン開始位置がA_nscanとなるためバンドBのA_over(last)が後打ちされるまでの時間は、記録ヘッドが距離Xを往復する移動距時間となる。この移動間に予備吐出等の回復動作が必要となれば、その動作に要する時間が加算されることとなる。本実施の形態では、着目した領域にカラーインクが後打ちされるまでにはTthといった時間差が必要となる。この所定の時間Tthは先打ち後打ちされるインクの浸透性や、記録媒体の浸透性能、記録が行われる温湿度といった環境状態にも依存するが、おおよそ100msec〜1secの時間が必要となる。次走査となるスキャンCの印字開始位置がA_nscanなので、そこまでの往復の移動時間ΔTがTth以上であれば、バンド間での濃度むらは目立たないため通常の双方向印字動作を行う。時間差ΔTがTth未満であれば、スキャン開始位置A_nscanで(Tth−ΔT)時間の待機時間を設けて記録を行う。
【0041】
(実施例2)
図10は通常双方向印字における、バンド間での色むらの見え方を示したものである。(A)(B)は共にバンド間で黒、カラーインクがほぼ同じ付与量で記録された場合で、バンド間でパターンが連続であるか非連続であるかの違いである。(B)ようにバンド間で濃度差が生じる領域が存在したとしても、それが連続的な位置関係になければ視覚的には認識しずらくなる。つまり黒、カラーのインク量が所定量を超える領域がバンド間で隣接しているか否かを判断し、連続している場合には先打ち、後打ちの間に一定時間以上の待機状態を設けて濃度むらを軽減し、非連続である場合には視覚的に認識しずらいため通常の双方向記録を行うことにより、実用上ユーザーが視覚的に認識できる濃度むらへの対処を行うことで画像劣化を防ぎ、高速に記録動作を行うことが可能となるのである。
【0042】
図11は本実施の形態における、隣接位置判別記録動作の全体フロー図である。
【0043】
図6のステップS2でバンド内に黒、カラー共に所定ドットを超えた領域A_overが存在するか否かを判定し、A_overが存在した場合にはステップS3の濃度むら位置判別ルーチンに移行し、前バンドとの相対位置関係について調べる。ここで隣接領域が存在しなければ通常の双方向記録を実施する。隣接エリアが存在する場合にステップS5にてスキャン進行方向に対し最端部となる領域の位置情報を取得し、ステップS6でその位置情報A_over(last)をセットし、実施例1に記載した時間差記録と同じシーケンスで記録を行う。
【0044】
(エリア位置判別)
本実施の形態では同一エリアに黒とカラーのインク量が所定量以上付与された場合に打ち込み時間差による濃度むらが発生するため、1走査内の記録データを複数エリアに分割し各エリアに対して上述のドットカウント処理を行い、黒、カラーともに所定のドット数を超えたエリアを判別し、そのエリアが前バンドと隣接する位置関係にあるか否かを判断する。図12に記録予定のバンドイメージを示す。上述の濃度むら判定閾値を超えた領域A_overを判別し用紙幅方向での位置情報を検出する。本実施の形態では(1)と(12)を濃度むらが生じるインク付与領域と判別した。
図13は記録予定のバンドと、記録済みのバンドとの位置関係について示したものである。バンドBは後打ちとなるカラーインクが未記録の状態である。上述の濃度むら判定によって、A_overがエリア(1)と(12)と検出されている。またバンドAは既に記録済みで着目領域との隣接エリアが(1)(2)、及び(11)(12)(13)となり、図14のエリア位置判別ルーチンのステップS34で前バンドと共に所定ドット数を超えた領域A_overの隣接の有無を判定し濃度差が視覚的に目立ちやすい位置関係にあるか否かを調べる。本実施の形態ではバンドAの隣接エリアDがA_overとなり、バンドBの着目エリア(12)と隣接する位置関係にあるためバンド間で濃度むらが目立ちやすい領域が連続していると判断し、バンドBの後打ち記録をする際に時間差を設けることになる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、記録ヘッドの黒、カラーの記録素子列が副走査方向に並ぶ、いわゆる縦並びの配置で双方向記録方式を採るインクジェットプリント装置において、黒、カラーが同一領域に混在するパターンを記録する際に生じていた打ち込み時間差に起因するバンド間における濃度むらの発生を、先打ち、後打ちの時間から時間差が短い場合には後打ち印字までの待機処理を実施することにより軽減し、バンド間で濃度むらの生じる領域の管理を行い、視覚的に目立たない場合には前記待機処理を省くことにより記録速度の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したインクジェットプリント装置の実施形態における主要部の構成を示す図である。
【図2】上記インクジェットプリント装置における制御回路の概略構成例のブロック図である。
【図3】ヘッドカートリッジ1の記録ヘッド部の主要部構造を部分的に示す模式図である。
【図4】図2のヘッド構成で黒とカラーが混在する場合の記録方法を示す模式図である。
【図5】各印字方法における黒、カラーインクの打ち込み時間差に起因する濃度むらの見え方を示した図である。
【図6】本実施の形態における、時間差記録動作の全体フロー図である。
【図7】バンド内で分割された領域におけるインク付与量を管理するドットカウント処理のフロー図である。
【図8】本実施の形態におけるグレー色の入力レベルに応じた、黒、カラーのドット数を表した図である。
【図9】時間差記録処理に必要な時間差を算出するための具体例である。
【図10】通常双方向印字における、バンド間での色むらの見え方を示したものである。
【図11】本実施の形態における、隣接位置判別記録動作の全体フロー図である。
【図12】記録予定のバンドイメージを示す図である。
【図13】記録予定のバンドと、記録済みのバンドとの位置関係について示した図である。
【図14】エリア位置判別ルーチンを示す図である。

Claims (7)

  1. 記録ヘッドを双方向に走査し、複数色のインクをプリント媒体に付与してカラー画像を形成するプリント装置において、
    前記記録ヘッドは記録媒体への浸透度が低い黒インクを吐出するノズル列群と、少なくとも黒インクより記録媒体への浸透度が高いカラーインクを吐出するノズル列群を有し、特定領域をプリントする際は黒、カラーが異走査の関係になるよう記録するプリント装置において、
    印字前に、着目した走査の記録データを予め設定された複数の領域に分割する分割手段と、その分割された複数の領域ごとに付与されるドット数をカウントするドットカウント手段と、前記カウントしたドット数と比較する閾値を設定するドット閾値設定手段と、前記カウントしたドット数が閾値を超えたか否かを判定するドット数判定手段と、前記判定手段により超えたと判断した場合に、着目した走査領域(バンド)において主走査進行方向に対し最端部となる位置を取得するエッジ位置取得手段と、次走査の印字開始位置を取得する印字開始位置取得手段と、これら二つの位置関係から着目した走査領域(バンド)を後打ちするまでの時間を算出する時間差算出手段と、その算出された時間と比較する閾値を設定する時間閾値設定手段と、その算出された時間が予め定められた閾値以上か否かを判定する時間判定手段と、予め設けられた時間に満たない場合は所定時間が経過するまで印字開始位置に待機する印字待機手段を備えたことを特徴とするプリント装置。
  2. 請求項1に記載のプリント装置において、
    前記ドット数判定手段により閾値を超えたと判断した場合に、その領域が前走査の隣接する位置関係に前記閾値を超える領域が存在するか否かを判定する隣接領域判定手段と、前記着目した領域が前走査と隣接しない場合には、前記時間差を確保するために行われる一連の処理を省くスキップ手段を持つことを特徴とするプリント装置。
  3. 前記データ分割手段は、
    分割するエリアを、副走査方向に対し使用されるノズル幅の1/nの幅分であることを特徴とする請求項1に記載のプリント装置。
  4. 前記ドットカウント手段は、
    記録素子列毎、色毎、もしくは黒、カラー独立にカウント可能な構成を備えることを特徴とする請求項1に記載のプリント装置。
  5. 前記ドット数判定手段は、
    色毎、もしくは黒、カラー独立に閾値を設定可能な構成を備えることを特徴とする請求項1に記載のプリント装置。
  6. 前記閾値設定手段は、
    所定領域の閾値を、記録メディア、印字パス数毎に設定可能な構成を備えることを特徴とする請求1に記載のプリント装置。
  7. 前記受信した記録データを、
    モノクロ/カラー判別するモノクロ/カラー判別手段と、記録データがモノクロの場合には記録データのエリア分割等の濃度むら軽減に関わる一連の処理をスキップするスキップ手段を有することを特徴とする請求項1に記載のプリント装置。
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US7926908B2 (en) 2007-09-21 2011-04-19 Canon Kabushiki Kaisha Ink jet printing apparatus and ink jet printing method
US8714706B2 (en) 2008-05-13 2014-05-06 Seiko Epson Corporation Liquid ejecting apparatus and method of ejecting liquid

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