JP2004176090A - 成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】熱交換器用アルミニウム合金フィン材について、成形性、ろう付性、耐エロージョン性に優れた特性を得る。
【解決手段】フィン材の組成を、重量%で、Fe:0.1〜2.5%、Mn:1.3〜3.0%の1種又は2種を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有し、板厚が0.1mm以下であり、ろう付相当熱処理前の平均結晶粒径が250〜2000μmである。
【効果】成形性、ろう付性、耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材が得られる。
【選択図】 なし
【解決手段】フィン材の組成を、重量%で、Fe:0.1〜2.5%、Mn:1.3〜3.0%の1種又は2種を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有し、板厚が0.1mm以下であり、ろう付相当熱処理前の平均結晶粒径が250〜2000μmである。
【効果】成形性、ろう付性、耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材が得られる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラジエータなど、特にろう付工法により製造される自動車熱交換器に使用される薄肉アルミニウム合金フィン材及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に自動車のラジエータなどとして用いられている熱交換器の構造部材であるフィン材は冷媒通路形成体(例えば管材)にAl−Siろう材によりろう付して金属的に結合させ、伝熱面積を広くすることにより熱交換効率の向上を図っている。前記フィン材にはAA1050合金などの純Al系合金、AA3003合金などのAl−Mn系合金、Al−Fe系合金などが用いられている。
近年の自動車の軽量化により自動車用熱交換器もまた軽量化や高熱交換効率が求められており、フィン材にも薄肉化あるいはろう付性(接合率)の向上が求められている。
従来はフィン材として、ろう付前の平均結晶粒径が200μm以下のものが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−131166号公報(第2頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、通常フィン材はH14程度の調質で使用されるが、ろう付前の結晶粒径が細かすぎると、ろう付時の昇温過程における再結晶が促進されすぎて、ろう付熱処理後の結晶粒径が微細になる。このような従来のフィン材は、耐エロージョン性が劣るものであり、成形性、ろう付性や耐エロージョン性を全て満足できるものはなかった。いずれの特性も欠けてしまうことによって、熱交換器のフィン材としての必要な特性を満足できなくなるばかりでなく、熱交換器性能の低下が避けられないという問題が生じてきた。
【0005】
そこで、本発明者らは上述のような観点から、優れた成形性、ろう付性(接合率)及び耐エロージョン性を併せ持つフィン材を得るべく研究を行った。
本発明は、上記の知見に基づき、成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材及びその製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明の成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材のうち、請求項1記載の発明は、重量%で、Fe:0.1〜2.5%、Mn:1.3〜3.0%の1種又は2種を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有し、板厚が0.1mm以下であり、ろう付相当熱処理前の平均結晶粒径が250〜2000μmであることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材の発明は、請求項1記載の発明において、さらに、重量%でSi:0.2〜1.5%、Zn:0.1〜3.0%、Ni:0.01〜1.0%、Zr:0.05〜0.20%、Ti:0.01〜0.30%、In:0.001〜0.20%、Sn:0.01〜0.50%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法の発明は、請求項1又は2記載の組成を有するアルミニウム合金を用い、溶湯を作製し、前記溶湯を冷却速度:15℃/s未満で鋳造してスラブ又は板材を作製し、熱間圧延を行い又は行わず、冷間圧延の前又は冷間圧延途中で、300超〜450℃で3〜10時間の1回目の中間焼鈍を施すことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法の発明は、請求項1又は2記載の組成を有するアルミニウム合金を用い、溶湯を作製し、前記溶湯を冷却速度:15〜1000℃/sで鋳造してスラブ又は板材に作製し、熱間圧延を行い又は行わず、冷間圧延の前又は冷間圧延途中で、450超〜620℃で3〜10時間の1回目の中間焼鈍を施すことを特徴とする。
【0010】
以下に、本発明で限定する事項について説明する。
Fe:0.1〜2.5%
Feは、金属間化合物として晶出または析出し、ろう付後の強度を向上させる。0.1%未満であると上記効果が小さく、2.5%を超えると、腐食速度が速くなりすぎ、また、粗大晶出物を形成し鋳造性や圧延性が著しく低下する。
【0011】
Mn:1.3〜3.0%
Mnは、金属間化合物として晶出または析出し、ろう付後の強度を向上させる。1.3%未満であると上記効果が小さく、3.0%を超えると、粗大晶出物を形成し鋳造性や圧延性が著しく低下する。
【0012】
Si:0.2〜1.5%
Siは、Al−Mn−Si、Al−Fe−Si、Al−Mn−Si−Fe、Zr−Si系化合物として分散あるいはマトリックスに固溶して強度を向上させる。また、このような化合物の形成によりろう付後のMnやZr固溶度を低下させ熱伝導性を向上させる。0.2%未満であると上記効果が小さく、1.5%を超えると、粗大晶出物を形成し鋳造性や圧延性が著しく低下する。また、融点が低下し、ろう付時に溶融する。さらにSi固溶度が増大し、熱伝導性が低下する。
【0013】
Zn:0.1〜3.0%
Znは、非接合部材よりも電位を卑にし、犠牲陽極材として作用する。0.1%未満であると上記効果が小さく、3.0%を超えると自己腐食速度が著しく大きくなる。
【0014】
Ni:0.01〜1.0%
Niは、金属間化合物として晶出または析出し、ろう付後の強度を向上させる。0.01%未満であると上記効果が小さく、1.0%を越えると自己腐食速度が著しく大きくなる。また、Al−Mn−Ni系の化合物を形成するため、過剰な単体Siを形成し、固相線温度低下を招き、ろう付時に溶融しやすくなる。
【0015】
Zr:0.05〜0.20%、Ti:0.01〜0.30%
Zr、Tiは、ろう付後に微細な金属間化合物として分散し、強度を向上させる。Zr:0.05%未満、Ti:0.01%未満であると上記効果が小さく、Zr:0.20%超、Ti:0.30%超であると、鋳造性や圧延性が著しく低下する。
【0016】
In:0.001〜0.20%、Sn:0.01〜0.50%
In、Snは、非接合部材よりも電位を卑にし、犠牲陽極材として作用する。In:0.001%未満、Sn:0.01%未満であると上記効果が小さく、In:0.20%超、Sn:0.50%超であると自己腐食速度が著しく大きくなる。また、圧延性が低下する。
【0017】
ろう付相当熱処理前の平均結晶粒径:250〜2000μm
ろう付相当熱処理前の平均結晶粒径を250〜2000μmとすることにより、フィン成形時のフィン送りを生産性上十分なものとし、フィン高さやフィンピッチのばらつきを抑制する。このばらつきの抑制により、ろう付時のフィンの接合率を向上させるとともに、コアの熱交換効率の向上と、熱交換器コアの強度(耐久性)を向上させる。ろう付相当熱処理前の平均結晶粒径が250μm未満では、ろう付時の昇温過程における再結晶が促進されすぎて、ろう付熱処理後の結晶粒径が微細になり、耐エロージョン性が低下する。ろう付相当熱処理後の平均結晶粒径が2000μmを超えると、フィンの成形性低下による生産性低下、フィンの接合率低下に伴う熱交換効率の低下と熱交換器コアの強度(耐久性)が低下する。
【0018】
溶湯を冷却速度:15℃/s未満で鋳造した時は晶出物がある程度粗大なので、冷間圧延の前又は冷間圧延途中で、300超〜450℃で3〜10時間の1回目の中間焼鈍を施す。300℃以下だと再結晶を促進するための化合物の析出が不十分となりろう付相当熱処理前の結晶粒径が粗大化しすぎてしまい、450℃を超えると再結晶を促進するための化合物の析出が多くなりすぎ、ろう付前の結晶粒径が微細になりすぎてしまう。
また、焼鈍時間が3時間未満であると上記効果が小さく、10時間を超えると化合物の粗大化が起こる。
【0019】
溶湯を冷却速度:15〜1000℃/sで鋳造した時は、冷間圧延の前又は冷間圧延途中で、450超〜620℃で3〜10時間の1回目の中間焼鈍を施す。450℃以下だと再結晶を促進するための化合物の析出が不十分となりろう付相当熱処理前の結晶粒径が粗大化しすぎてしまい、620℃を超えると再結晶を促進するための化合物の析出が多くなりすぎ、ろう付前の結晶粒径が微細になりすぎてしまう。また、焼鈍時間が3時間未満であると上記効果が小さく、10時間を超えると化合物の粗大化が起こる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のフィン材に用いるアルミニウム合金は、上記組成に従って常法により製造することができる。1回目の中間焼鈍の後は冷間圧延を行い、必要により2回目以降の中間焼鈍を冷間圧延の途中に施しながら板厚0.1mm以下のフィン材とする。なお、2回目以降の中間焼鈍条件は特に規定はしないが、1回目と同じ条件が望ましい。また板厚の下限は強度確保のため、0.05mm以上が好ましい。本発明のフィン材は製造方法が限定されるものではない。上記により得られたフィン材は、通常はコルゲート加工を施してフィンとする。上記フィンは、チューブ間に設置するなどして組付けられ、ろう付処理が行われ熱交換器が得られる。
【0021】
【実施例】
表1に示す組成のアルミニウム合金を鋳造時の冷却速度を変えて鋳造し、熱間圧延およびまたは冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延を施すことにより、0.08mmの板厚の圧延材を調質H14で作製した。
【0022】
フィン材の結晶粒径の測定方法は、幅20mm、長さ50mmのフィン材表面をエッチングして結晶粒界を鮮明にした。次に圧延方向に均一な平行線を10本引いて、各線毎の結晶粒数を測定した。線の長さの合計を結晶粒数で除した値を平均結晶粒径とした。
【0023】
フィンの成形性
それぞれのフィンを幅20mm、長さ2mに切断し、フィン高さ9mm、フィンピッチ1.2mmとなるようコルゲート成形を実施した。フィン高さの最大と最小、およびフィンピッチの最大と最小を測定し、それらの差を計算した。それぞれの差が5%以内であったものを十分な成形性を持つ材料と判断した。
【0024】
フィンの接合率
コルゲート加工を施したフィン材と片面にAl−Si系ろう材を設けたブレージングシートと組み付け、これにフラックスを塗布後、高純度窒素ガス雰囲気中で590〜600℃×5分のろう付相当熱処理を行った。フィンを除去した後、フィンとブレージングシートが接合されていた長さを測定した。フィンとブレージングシートが完全に接合されていた場合を100%とした。なお、95%以上の接合率があれば、熱交換器の熱交換性能と強度(耐久性)を十分に確保できることから、ブレージングシートとの接合率が95%以上のものを十分なろう付性(接合率)があると判定した。
ブレージングシート:Al−10%Si(4045)/Al−1%Mn−0.15%Cu(3003)
板厚:0.30mm
クラッド率:ろう材10%、芯材90%
調質:H14
【0025】
耐エロージョン性
コルゲート加工を施したフィン材と片面にAl−Si系ろう材を設けたブレージングシートと組み付け、これにフラックスを塗布後、高純度窒素ガス雰囲気中で590〜600℃×5分のろう付相当熱処理を行った。ろう付フィレット部の断面を観察、フィンのエロージョン深さを測定して耐エロージョン性を評価した。最大の侵食深さが板厚の80%以内のものを○、80%を超えたものを×とした。接合部の接合強度が低下する可能性があることから、侵食率80%を基準とした。
ブレージングシート:Al−10%Si(4045)/Al−1%Mn−0.15%Cu(3003)
板厚:0.30mm
クラッド率:ろう材10%、芯材90%
調質:H14
【0026】
【表1】
【0027】
各評価の結果を表1に示すが、本発明材は、いずれも優れた成形性、ろう付性、耐エロージョン性を示した。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材及びその製造方法によれば、優れた成形性、ろう付性、耐エロージョン性を有するフィン材が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラジエータなど、特にろう付工法により製造される自動車熱交換器に使用される薄肉アルミニウム合金フィン材及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に自動車のラジエータなどとして用いられている熱交換器の構造部材であるフィン材は冷媒通路形成体(例えば管材)にAl−Siろう材によりろう付して金属的に結合させ、伝熱面積を広くすることにより熱交換効率の向上を図っている。前記フィン材にはAA1050合金などの純Al系合金、AA3003合金などのAl−Mn系合金、Al−Fe系合金などが用いられている。
近年の自動車の軽量化により自動車用熱交換器もまた軽量化や高熱交換効率が求められており、フィン材にも薄肉化あるいはろう付性(接合率)の向上が求められている。
従来はフィン材として、ろう付前の平均結晶粒径が200μm以下のものが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−131166号公報(第2頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、通常フィン材はH14程度の調質で使用されるが、ろう付前の結晶粒径が細かすぎると、ろう付時の昇温過程における再結晶が促進されすぎて、ろう付熱処理後の結晶粒径が微細になる。このような従来のフィン材は、耐エロージョン性が劣るものであり、成形性、ろう付性や耐エロージョン性を全て満足できるものはなかった。いずれの特性も欠けてしまうことによって、熱交換器のフィン材としての必要な特性を満足できなくなるばかりでなく、熱交換器性能の低下が避けられないという問題が生じてきた。
【0005】
そこで、本発明者らは上述のような観点から、優れた成形性、ろう付性(接合率)及び耐エロージョン性を併せ持つフィン材を得るべく研究を行った。
本発明は、上記の知見に基づき、成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材及びその製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明の成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材のうち、請求項1記載の発明は、重量%で、Fe:0.1〜2.5%、Mn:1.3〜3.0%の1種又は2種を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有し、板厚が0.1mm以下であり、ろう付相当熱処理前の平均結晶粒径が250〜2000μmであることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材の発明は、請求項1記載の発明において、さらに、重量%でSi:0.2〜1.5%、Zn:0.1〜3.0%、Ni:0.01〜1.0%、Zr:0.05〜0.20%、Ti:0.01〜0.30%、In:0.001〜0.20%、Sn:0.01〜0.50%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法の発明は、請求項1又は2記載の組成を有するアルミニウム合金を用い、溶湯を作製し、前記溶湯を冷却速度:15℃/s未満で鋳造してスラブ又は板材を作製し、熱間圧延を行い又は行わず、冷間圧延の前又は冷間圧延途中で、300超〜450℃で3〜10時間の1回目の中間焼鈍を施すことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法の発明は、請求項1又は2記載の組成を有するアルミニウム合金を用い、溶湯を作製し、前記溶湯を冷却速度:15〜1000℃/sで鋳造してスラブ又は板材に作製し、熱間圧延を行い又は行わず、冷間圧延の前又は冷間圧延途中で、450超〜620℃で3〜10時間の1回目の中間焼鈍を施すことを特徴とする。
【0010】
以下に、本発明で限定する事項について説明する。
Fe:0.1〜2.5%
Feは、金属間化合物として晶出または析出し、ろう付後の強度を向上させる。0.1%未満であると上記効果が小さく、2.5%を超えると、腐食速度が速くなりすぎ、また、粗大晶出物を形成し鋳造性や圧延性が著しく低下する。
【0011】
Mn:1.3〜3.0%
Mnは、金属間化合物として晶出または析出し、ろう付後の強度を向上させる。1.3%未満であると上記効果が小さく、3.0%を超えると、粗大晶出物を形成し鋳造性や圧延性が著しく低下する。
【0012】
Si:0.2〜1.5%
Siは、Al−Mn−Si、Al−Fe−Si、Al−Mn−Si−Fe、Zr−Si系化合物として分散あるいはマトリックスに固溶して強度を向上させる。また、このような化合物の形成によりろう付後のMnやZr固溶度を低下させ熱伝導性を向上させる。0.2%未満であると上記効果が小さく、1.5%を超えると、粗大晶出物を形成し鋳造性や圧延性が著しく低下する。また、融点が低下し、ろう付時に溶融する。さらにSi固溶度が増大し、熱伝導性が低下する。
【0013】
Zn:0.1〜3.0%
Znは、非接合部材よりも電位を卑にし、犠牲陽極材として作用する。0.1%未満であると上記効果が小さく、3.0%を超えると自己腐食速度が著しく大きくなる。
【0014】
Ni:0.01〜1.0%
Niは、金属間化合物として晶出または析出し、ろう付後の強度を向上させる。0.01%未満であると上記効果が小さく、1.0%を越えると自己腐食速度が著しく大きくなる。また、Al−Mn−Ni系の化合物を形成するため、過剰な単体Siを形成し、固相線温度低下を招き、ろう付時に溶融しやすくなる。
【0015】
Zr:0.05〜0.20%、Ti:0.01〜0.30%
Zr、Tiは、ろう付後に微細な金属間化合物として分散し、強度を向上させる。Zr:0.05%未満、Ti:0.01%未満であると上記効果が小さく、Zr:0.20%超、Ti:0.30%超であると、鋳造性や圧延性が著しく低下する。
【0016】
In:0.001〜0.20%、Sn:0.01〜0.50%
In、Snは、非接合部材よりも電位を卑にし、犠牲陽極材として作用する。In:0.001%未満、Sn:0.01%未満であると上記効果が小さく、In:0.20%超、Sn:0.50%超であると自己腐食速度が著しく大きくなる。また、圧延性が低下する。
【0017】
ろう付相当熱処理前の平均結晶粒径:250〜2000μm
ろう付相当熱処理前の平均結晶粒径を250〜2000μmとすることにより、フィン成形時のフィン送りを生産性上十分なものとし、フィン高さやフィンピッチのばらつきを抑制する。このばらつきの抑制により、ろう付時のフィンの接合率を向上させるとともに、コアの熱交換効率の向上と、熱交換器コアの強度(耐久性)を向上させる。ろう付相当熱処理前の平均結晶粒径が250μm未満では、ろう付時の昇温過程における再結晶が促進されすぎて、ろう付熱処理後の結晶粒径が微細になり、耐エロージョン性が低下する。ろう付相当熱処理後の平均結晶粒径が2000μmを超えると、フィンの成形性低下による生産性低下、フィンの接合率低下に伴う熱交換効率の低下と熱交換器コアの強度(耐久性)が低下する。
【0018】
溶湯を冷却速度:15℃/s未満で鋳造した時は晶出物がある程度粗大なので、冷間圧延の前又は冷間圧延途中で、300超〜450℃で3〜10時間の1回目の中間焼鈍を施す。300℃以下だと再結晶を促進するための化合物の析出が不十分となりろう付相当熱処理前の結晶粒径が粗大化しすぎてしまい、450℃を超えると再結晶を促進するための化合物の析出が多くなりすぎ、ろう付前の結晶粒径が微細になりすぎてしまう。
また、焼鈍時間が3時間未満であると上記効果が小さく、10時間を超えると化合物の粗大化が起こる。
【0019】
溶湯を冷却速度:15〜1000℃/sで鋳造した時は、冷間圧延の前又は冷間圧延途中で、450超〜620℃で3〜10時間の1回目の中間焼鈍を施す。450℃以下だと再結晶を促進するための化合物の析出が不十分となりろう付相当熱処理前の結晶粒径が粗大化しすぎてしまい、620℃を超えると再結晶を促進するための化合物の析出が多くなりすぎ、ろう付前の結晶粒径が微細になりすぎてしまう。また、焼鈍時間が3時間未満であると上記効果が小さく、10時間を超えると化合物の粗大化が起こる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のフィン材に用いるアルミニウム合金は、上記組成に従って常法により製造することができる。1回目の中間焼鈍の後は冷間圧延を行い、必要により2回目以降の中間焼鈍を冷間圧延の途中に施しながら板厚0.1mm以下のフィン材とする。なお、2回目以降の中間焼鈍条件は特に規定はしないが、1回目と同じ条件が望ましい。また板厚の下限は強度確保のため、0.05mm以上が好ましい。本発明のフィン材は製造方法が限定されるものではない。上記により得られたフィン材は、通常はコルゲート加工を施してフィンとする。上記フィンは、チューブ間に設置するなどして組付けられ、ろう付処理が行われ熱交換器が得られる。
【0021】
【実施例】
表1に示す組成のアルミニウム合金を鋳造時の冷却速度を変えて鋳造し、熱間圧延およびまたは冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延を施すことにより、0.08mmの板厚の圧延材を調質H14で作製した。
【0022】
フィン材の結晶粒径の測定方法は、幅20mm、長さ50mmのフィン材表面をエッチングして結晶粒界を鮮明にした。次に圧延方向に均一な平行線を10本引いて、各線毎の結晶粒数を測定した。線の長さの合計を結晶粒数で除した値を平均結晶粒径とした。
【0023】
フィンの成形性
それぞれのフィンを幅20mm、長さ2mに切断し、フィン高さ9mm、フィンピッチ1.2mmとなるようコルゲート成形を実施した。フィン高さの最大と最小、およびフィンピッチの最大と最小を測定し、それらの差を計算した。それぞれの差が5%以内であったものを十分な成形性を持つ材料と判断した。
【0024】
フィンの接合率
コルゲート加工を施したフィン材と片面にAl−Si系ろう材を設けたブレージングシートと組み付け、これにフラックスを塗布後、高純度窒素ガス雰囲気中で590〜600℃×5分のろう付相当熱処理を行った。フィンを除去した後、フィンとブレージングシートが接合されていた長さを測定した。フィンとブレージングシートが完全に接合されていた場合を100%とした。なお、95%以上の接合率があれば、熱交換器の熱交換性能と強度(耐久性)を十分に確保できることから、ブレージングシートとの接合率が95%以上のものを十分なろう付性(接合率)があると判定した。
ブレージングシート:Al−10%Si(4045)/Al−1%Mn−0.15%Cu(3003)
板厚:0.30mm
クラッド率:ろう材10%、芯材90%
調質:H14
【0025】
耐エロージョン性
コルゲート加工を施したフィン材と片面にAl−Si系ろう材を設けたブレージングシートと組み付け、これにフラックスを塗布後、高純度窒素ガス雰囲気中で590〜600℃×5分のろう付相当熱処理を行った。ろう付フィレット部の断面を観察、フィンのエロージョン深さを測定して耐エロージョン性を評価した。最大の侵食深さが板厚の80%以内のものを○、80%を超えたものを×とした。接合部の接合強度が低下する可能性があることから、侵食率80%を基準とした。
ブレージングシート:Al−10%Si(4045)/Al−1%Mn−0.15%Cu(3003)
板厚:0.30mm
クラッド率:ろう材10%、芯材90%
調質:H14
【0026】
【表1】
【0027】
各評価の結果を表1に示すが、本発明材は、いずれも優れた成形性、ろう付性、耐エロージョン性を示した。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材及びその製造方法によれば、優れた成形性、ろう付性、耐エロージョン性を有するフィン材が得られる。
Claims (4)
- 重量%で、Fe:0.1〜2.5%、Mn:1.3〜3.0%の1種又は2種を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなる組成を有し、板厚が0.1mm以下であり、ろう付相当熱処理前の平均結晶粒径が250〜2000μmであることを特徴とする成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- さらに、重量%でSi:0.2〜1.5%、Zn:0.1〜3.0%、Ni:0.01〜1.0%、Zr:0.05〜0.20%、Ti:0.01〜0.30%、In:0.001〜0.20%、Sn:0.01〜0.50%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材。
- 請求項1又は2記載の組成を有するアルミニウム合金を用い、溶湯を作製し、前記溶湯を冷却速度:15℃/s未満で鋳造してスラブ又は板材を作製し、熱間圧延を行い又は行わず、冷間圧延の前又は冷間圧延途中で、300超〜450℃で3〜10時間の1回目の中間焼鈍を施すことを特徴とする成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法。
- 請求項1又は2記載の組成を有するアルミニウム合金を用い、溶湯を作製し、前記溶湯を冷却速度:15〜1000℃/sで鋳造してスラブ又は板材を作製し、熱間圧延を行い又は行わず、冷間圧延の前又は冷間圧延途中で、450超〜620℃で3〜10時間の1回目の中間焼鈍を施すことを特徴とする成形性、ろう付性及び耐エロージョン性に優れた熱交換器用アルミニウム合金フィン材の製造方法。
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