JP2004175668A - オニウム塩 - Google Patents
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Abstract
【課題】種々用途に適合した物性を持つ電解質として使用できる、低融点でイオン伝導度が高く、耐酸化性にも優れた新規な低融点オニウム塩を提供する。
【解決手段】トリフロロメチル硫酸(トリフロロメタンスルフォン酸)イミド・トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリフロロメチル硫酸(トリフロロ酢酸)イミド・テトラエチルアンモニウム塩等の下記式(I)
{R1−O−S(=O)2−}{R2−}N− ・Z+ (I)
{式中、R1は非置換又はハロゲン原子で置換された炭化水素基であり、R2は、R3−O−S(=O)2−、R4−S(=O)2−又はR5−(C=O)−で示される基(R3、R4、R5はいずれも非置換又はハロゲン原子で置換されたアルキル基を示す。但し、R3がR1と同一であることはない。)又はシアノ基であり、Z+は有機オニウムカチオンである。}
で示されるオニウム塩。
【選択図】 なし
【解決手段】トリフロロメチル硫酸(トリフロロメタンスルフォン酸)イミド・トリメチルプロピルアンモニウム塩、トリフロロメチル硫酸(トリフロロ酢酸)イミド・テトラエチルアンモニウム塩等の下記式(I)
{R1−O−S(=O)2−}{R2−}N− ・Z+ (I)
{式中、R1は非置換又はハロゲン原子で置換された炭化水素基であり、R2は、R3−O−S(=O)2−、R4−S(=O)2−又はR5−(C=O)−で示される基(R3、R4、R5はいずれも非置換又はハロゲン原子で置換されたアルキル基を示す。但し、R3がR1と同一であることはない。)又はシアノ基であり、Z+は有機オニウムカチオンである。}
で示されるオニウム塩。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、一次もしくは二次のリチウム電池、色素増感型太陽電池、電気二重層キャパシタ、表示素子等の電気化学デバイスあるいは電析浴、更には化学合成の媒体として利用可能なオニウム塩に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年多く用いられるようになったリチウム一次電池、リチウム二次電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、エレクトロクロミック表示素子、あるいは将来的な実用化に向けて種々に検討がなされている色素増感型太陽電池などの電気化学デバイスにおける非水系の電解液としては、電解質をエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、あるいはアセトニトリル等の有機溶媒に溶解させた溶液が用いられてきた。しかし、これらの電解質溶液に用いられる有機溶媒は揮発しやすく、またそれ自体が可燃性を有す化合物であることから、長期の信頼性、耐久性、および安全性に問題がある。
【0003】
そこで電解質として有機溶媒を用いず、常温で液状であるオニウム塩を電解質として応用することが提案され、種々検討されている。例えば1−メチル−3−エチルイミダゾリウムカチオンと、ビストリフルオロメタンスルホン酸アミドアニオンからなるオニウム塩は、周囲温度で液状であり、高いイオン伝導率を示すことが示されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】
特開平8−259543号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これまで電解質として利用可能であることが知られているオニウム塩は少なく、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホン酸アミド、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホン酸等の極限られたアニオンを有するオニウム塩が報告されているだけであり、その性能の範囲も自ずと限定されているのが現状である。そこで、電解質を使用する電気化学的デバイスの分野においては、種々の用途に合った物性、具体的には、室温で液状であり、かつ高いイオン伝導度をもつ新たな有機オニウム塩の開発が求められていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく、オニウム塩を構成するアニオンとカチオンのうち、これまで検討があまりされていないアニオンの構造について、その特性との相関性に関して鋭意検討を行なった。その結果、これまでオニウム塩のアニオンとして知られていない特定のアニオンを有する新規なアンモニウム塩は、これまでに報告されているトリフルオロメタンスルホン酸イミド等のアニオンを有するアンモニウム塩と比べて低い融点を有し、液状を示す温度範囲の下限温度がより低いという新たな知見を得た。そして、更に検討を行なった結果、上記アニオンを有する他のオニウム塩も非水電解液用の電解質として使用できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、下記一般式(I)
{R1−O−S(=O)2−}{R2−}N− ・Z+ (I)
{式中、R1は非置換又はハロゲン原子で置換された炭化水素基であり、R2は、R3−O−S(=O)2−、R4−S(=O)2−又はR5−(C=O)−で示される基(R3、R4、R5はいずれも非置換又はハロゲン原子で置換されたアルキル基を示す。但し、R3がR1と同一であることはない。)又はシアノ基であり、Z+は有機オニウムカチオンである。}
で示されるオニウム塩である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のオニウム塩は、下記式(IV)で示されるアニオン部分(以下、単にアニオン部分と称す場合がある)と、有機オニウムカチオンから構成される。
【0008】
{R1−O−S(=O)2−}{R2−}N− (IV)
{式中、R1は非置換又はハロゲン原子で置換された炭化水素基であり、R2は、R3−O−S(=O)2−、R4−S(=O)2−あるいはR5−(C=O)−で示される基(R3、R4、R5はいずれも非置換又はハロゲン原子で置換されたアルキル基を示す。但し、R3がR1と同一であることはない。)又はシアノ基である。}
このような「{R1−O−S(=O)2−}{R2}N−」で示される非対称アニオン部分を有するオニウム塩はこれまで知られていないばかりでなく、他のアニオン部分を有する場合と比べて、耐酸化性とイオン伝導度に優れ、またオニウム塩の融点を著しく低くすることができる。
【0009】
上記のアニオン部分において、R1は非置換又はハロゲン原子で置換された炭化水素基である。
【0010】
当該炭化水素基としては、特に制限されるものではなく公知の如何なる炭化水素基でもよいが、炭素数が多いほど融点と粘度が高くなる傾向にある為、炭素数1〜10の炭化水素基であることが好ましい。
【0011】
当該炭化水素基を具体的に例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝状のアルキル基;アリル基、2−ブテニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;フェニル基、アントラニル基等の炭素数6〜10のアリール基;トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基等のアルキル基で置換された炭素数7〜10(アルキル基の有す炭素原子も含む)のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等の炭素数7〜10のアラルキル基等が例示される。
【0012】
これら炭化水素基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換されていても良い。このようなハロゲン原子で置換された炭化水素基とすることにより、非置換の炭化水素基に比べて、耐酸化性を向上させることが可能となる。ハロゲン原子で置換される場合、その置換位置や置換数は特に制限されるものではない。また、よりイオン伝導度と耐酸化性が高いオニウム塩となるという点で、フッ素原子で置換されているものがより好ましい。
【0013】
このようなフッ素原子で置換された炭化水素基を具体的に例示すると、トリフロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフロロプロピル基、ノナフロロブチル基、ヘプタフロロイソプロピル基、ノナフロロイソブチル基、2,2,2−トリフロロエチル基、1,1,−ジフロロエチル基等の炭素数1〜6のフロロアルキル基;ペンタフロロフェニル基、2,4,6−トリフロロフェニル基等の炭素数6〜10のフロロアリール基;トリフロロメチルフェニル基、ビス(トリフロロメチル)フェニル基等の、フロロアルキル基で置換された炭素数7〜10(フロロアルキル基の有す炭素原子も含む)のアリール基;ヘプタフロロベンジル基、1,1−ジフロロベンジル基等の炭素数7〜10のフロロアラルキル基等を挙げることができる。
【0014】
上記フッ素原子で置換された炭化水素基のなかでも、きわめて高い耐酸化性を得られるという点で、その有する全ての水素原子がフッ素原子に置換された(パーフロロ)炭化水素基であることが特に好ましい。
【0015】
さらに耐酸化性、イオン伝導度が共に高くなるという理由から、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のパーフロロアルキル基、パーフロロフェニル基、炭素数7〜9のパーフロロアラルキル基のいずれかであるのが特に好適である。
【0016】
前記アニオン部分において、R2は、R3−O−S(=O)2−、R4−S(=O)2−あるいはR5−(C=O)−で示される基(R3、R4、R5は非置換又はハロゲン原子で置換されたアルキル基を示す。但し、R3がR1と同一であることはない。)又はシアノ基である。これらのような基とすることにより、他の基である場合に比して耐酸化性を向上させることができる。
【0017】
これらの基において、R3、R4、R5は非置換又はハロゲン原子で置換されたアルキル基である。当該アルキル基としては、前記R1として例示された炭化水素基のうちのアルキル基と同様のものが例示される。また、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換されることにより、非置換のものよりも耐酸化性が向上するが、イオン伝導度の高いものが得られる点で、フッ素原子で置換されたものが好ましい。当該フッ素原子で置換されたアルキル基としては、前記R1として例示されたフッ素原子置換された炭化水素基のうちのフロロアルキル基と同様のものが例示される。
【0018】
但し、R3として前記R1と同一の基が結合している場合には、R2が{R1−O−S(=O)2−}として示される基と同一となる。この場合には対称性が高くなるためだと推測されるが、オニウム塩の融点が高くなり多くの場合に常温で固体となる。従って、R3として前記R1と同一の基が結合していてはならず、例えばR1としてトリフロロメチル基が結合している場合には、R3は非置換のアルキル基であるか、あるいはトリフロロメチル基以外の、ハロゲンで置換されたアルキル基でなくてはならない。
【0019】
より高い耐酸化性とイオン伝導度を有すものとなる点で、R3、R4、R5としてはいずれも炭素数1〜6の直鎖又は分枝状のパーフロロアルキル基であるのが好ましい。
【0020】
特に好ましいアニオン部分を具体的に例示すると、以下のものが挙げられる。
【0021】
【化1】
{注:アニオンであることを示す、−の符号は省略した。}
本発明のオニウム塩における有機オニウムカチオン{前記一般式(I)におけるZ+}は、窒素、硫黄、酸素、リン、セレン、錫、ヨウ素、アンチモン等の孤立電子対を有する元素を含んだ化合物に陽イオン型の原子団が配位して生ずる少なくとも一つの有機基を有するカチオンであれば特に制限されるものではない。
【0022】
有機オニウムカチオンのなかでも、耐還元性が高い点で、Z+で示される有機オニウムイオンが、下記一般式(II)
R6R7R8R9N+ (II)
(式中、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の一価の炭化水素基であるか、あるいはR6、R7、R8及びR9のうちの2つ又は3つが結合して複素環を形成していてもよい。)
で示されるカチオン、又は下記一般式(III)
R6R7R8R9P+ (III)
{式中、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ前記一般式(II)におけるR6、R7、R8及びR9と同義である。}
で示されるカチオンであることが好ましい。
【0023】
上記式(II)又は(III)において、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の一価の炭化水素基であるか、あるいはR6、R7、R8及びR9のうちの2つ又は3つが結合して複素環を形成していてもよい。
【0024】
当該炭化水素基としては特に制限されず、公知の如何なる炭化水素基でもよく、具体的には前記R1における炭化水素基として例示したものと同様のものが例示される。これら炭化水素基のなかでも、オニウム塩の融点が低く、耐還元性が高い点で直鎖又は分枝状のアルキル基が好ましい。
【0025】
また、これらのR6、R7、R8及びR9はそのうちの2つ又は3つが結合して環(窒素原子又はリン原子を含むため、必然的に複素環となる)を形成していてもよい。形成される複素環も特に限定されるものではなく飽和複素環でも芳香族複素環でも良い。飽和複素環としては、ピロリジン環、ピペリジン環等の含窒素複素環類やペンタメチレンフォスフィン環等の含リン複素環類等の単環類;キヌクリジン環等の窒素原子が橋頭位となる橋かけ環類等が例示され、芳香族環としてはピロール環、ピリジン環、イミダゾール環等が例示される。
【0026】
飽和複素環が形成される際に、その複素環がピロリジン環、ピペリジン環等の単環である場合には、その環の構成原子(窒素原子又はリン原子を含む)数が8以下の環であることが好ましく、6員環又は5員環であることがより好ましい。他方、キヌクリジン環等の橋かけ環である場合には、もっとも大きな環が8員環より小さいことが好ましく、6員環より小さいことがより好ましい。
【0027】
前記一般式(II)で示されるカチオンを具体的に例示すると、R6、R7、R8及びR9がいずれもアルキル基であるものとして、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン等の対称アンモニウムカチオン類;エチルトリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、ジエチルジメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリエチルイソプロピルアンモニウムカチオン、トリメチルプロピルアンモニウムカチオン、トリメチルイソプロピルアンモニウムカチオン、ブチルトリメチルアンモニウムカチオン、ヘキシルトリメチルアンモニウムカチオン、オクチルトリメチルアンモニウムカチオン、ドデシルトリメチルアンモニウムカチオン、ジメチルジプロピルアンモニウムカチオン等の非対称アンモニウムカチオン類が例示される。
【0028】
またR6、R7、R8及びR9のうちの2つが結合して飽和複素環を形成しているものとして、N、N−ジメチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−エチルピロリジニウムカチオン等が例示され、R6、R7、R8及びR9のうちの3つが結合して飽和複素環を形成しているものとして、N−メチルキノクリジウムカチオン等が例示される。
【0029】
R6、R7、R8及びR9のうちのいずれか2つが結合して芳香族性の複素環を形成しているものとしては、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジプロピルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジプロピルイミダゾリウムカチオン等の対称イミダゾリウムカチオン類;1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−イソプロピル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−tert−ブチル−3−イソプロピルイミダゾリウムカチオン等の非対称イミダゾリウムカチオン類;N−エチルピリジニウムカチオン、N−ブチルピリジニウムカチオン等のピリジニウムカチオン類等が例示される。
【0030】
これら一般式(II)で示されるカチオンのなかでも、オニウム塩が低融点であることを重視すると、R6、R7、R8及びR9がいずれもアルキル基であるアンモニウムカチオン類であるか、R6、R7、R8及びR9のうちのいずれか2つが結合して芳香族性の複素環を形成しているものが好ましい。そのなかでもイオン伝導度が高い点で、アルキル基が何れも炭素数が1〜3のアルキル基であるものが特に好ましい。
【0031】
また、高いイオン伝導度を有する点を重視すると、R6、R7、R8及びR9のうちのいずれか2つが結合して芳香族性の複素環を形成しているものが好ましく、特に耐還元性も良好であり、かつ、イオン伝導度も良好である点でイミダゾリウムカチオン類であることが好ましく、非対称イミダゾリウムカチオンであることがより好ましく、R6、R7、R8及びR9のうちの残る2つが炭素数3以下のアルキル基であるの非対称イミダゾリウムカチオンが最も好ましい。
【0032】
他方、耐還元性に優れていることを重視する場合には、R6、R7、R8及びR9のうちの2つ又は3つが結合して飽和複素環を形成しているものが好ましく、さらにそのなかでもオニウム塩が低融点であることから、R6、R7、R8及びR9のうちのいずれか2つが結合して飽和複素環を形成しているものが好ましい。
【0033】
前記一般式(III)で示されるカチオンを具体的に例示すると、R6、R7、R8及びR9がいずれもアルキル基であるものとして、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラプロピルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラオクチルホスホニウムカチオン、テトラフェニルホスホニウムカチオン等の対称ホスホニウムカチオン類;トリメチルエチルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、ヘキシルトリメチルホスホニウムカチオン、トリメチルオクチルホスホニウムカチオン等の非対称ホスホニウムカチオン類が挙げられる。
【0034】
これら一般式(III)で示されるカチオンのなかでも、オニウム塩が低融点であることを重視すると、R6、R7、R8及びR9がいずれもアルキル基であるホスホニウムカチオン類が好ましく、そのなかでもイオン伝導度が高い点で、アルキル基が何れも炭素数が1〜3のアルキル基であるものが特に好ましい。
【0035】
また耐還元性に優れていることを重視する場合には、R6、R7、R8及びR9のうちの2つ又は3つが結合して飽和複素環を形成しているものが好ましく、さらにおのなかでもオニウム塩が低融点であることから、R6、R7、R8及びR9のうちのいずれか2つが結合して飽和複素環を形成しているものが好ましい。
【0036】
本発明のオニウム塩を製造する方法は特に制限されるものではないが、好ましくは、前記一般式(IV)に示される非対称アニオンの金属塩と、アニオンとしてハロゲンイオンを持つ有機オニウム塩(有機オニウムカチオンのハロゲン塩)とを混合する塩交換法を挙げることができる。
【0037】
塩交換法に用いられる非対称アニオンの金属塩において、好適に用いられる金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属類等を挙げることができる。中でも、イオン交換の容易さから、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類が好適に用いられる。さらには、原料となる金属塩の吸湿性の低さより、カリウムが特に好適に用いられる。
【0038】
これら金属塩は、例えば次のような方法により容易に合成することができる。即ち、下記一般式(V)
R2−NH2 (V)
(式中、R2は、前記一般式(I)と同義である。)
で示される酸アミドと、金属アルコキシド(例えばカリウムエトキシド、tert−ブトキシカリウム等)等の金属塩脱水素剤とを反応させた後、下記一般式(VII)
R1−O−S(=O)2−X (VI)
(式中、R1は前記一般式(I)と同義であり、Xはハロゲン原子である)で示される酸無水物を反応させることにより、下記一般式(VII)
{R1−O−S(=O)2−}{R2}N−M (VII)
(式中、R1及びR2は前記一般式(I)と同義であり、Mは金属原子である)で示される化合物(金属イミド)として合成することができる。
【0039】
続いて、上記のアニオン金属塩と、有機カチオンのハロゲン塩とを塩交換させることによって本発明のオニウム塩が得られる。
【0040】
塩交換法に用いられる有機カチオンのハロゲン塩において、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素を特に制限無く用いることができるが、塩交換の容易さから、塩素、臭素、沃素が好適に用いられる。さらには、塩交換後に副生する無機塩の除去の容易さから、非対称アニオンの金属塩の金属と同周期のハロゲンを選択するのが好適である。
【0041】
塩交換は一般に溶媒中で行われる。溶媒は特に制限されるものではないが、具体的に例を挙げて説明すると、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルフォキシド等のスルフォキシド類等の有機溶媒及び水を挙げることができる。中でも、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド、水等の比誘電率が10以上の溶媒が、原料である非対称アニオン金属塩及び有機カチオンハロゲン塩の溶解度が高く、好適に用いることができる。
【0042】
塩交換の反応は、特に制限されるものではなく、加熱下、冷却下、加圧下、減圧下、常圧下で行うことができ、通常は、常圧下、室温条件で、反応時間数分〜10時間程度で十分進行にする。イオン交換を行った後、副生する無機塩を除去し、目的物を単離すればよい。例えば、無機塩を水層に抽出した後に溶媒を除去する方法、無機塩を析出させて濾別した後に溶媒を除去する方法、無機塩を溶解させさらに目的の有機塩を結晶化させ濾取する方法等により好適に単離することができる。また、単離されたオニウム塩が水分を含む場合には、必要に応じて濃縮、共沸脱水等を行うことで乾燥すればよい。
【0043】
この様にして得られた本発明のオニウム塩は、一般に低融点で高イオン伝導性を示すため、1次及び2次Li電池用電解質、湿式太陽電池用電解質、キャパシタ用電解質、エレクトロクロミック表示素子用電解質、メッキ用電解質、反応用溶媒等に好適に用いられる。また、この様なオニウム塩から成る電解質を用いて、Li電池、湿式太陽電池、キャパシタ、エレクトロクロミック素子等の電気化学デバイスを構成することにより、低温特性の良好な電気化学デバイスを構築することもできる。
【0044】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
(1)NMR測定
試料10〜20mgを約1mlのジメチルスルフォキシド−d6(標準物質として1,4−ビストリフロロメチルベンゼン含有)に溶解し日本電子製核磁気共鳴装置JNM−LA500により1H、19F核を測定した。19Fのピーク位置は1,4−ビストリフロロメチルベンゼンのピークを−78.25ppmとした場合のケミカルシフトを示した。
【0046】
製造例1
以下の方法により、塩交換法により本発明のオニウム塩を製造する際に用る非対称アニオンの金属塩として、トリフロロメチル硫酸(トリフロロメタンスルホン酸)イミド・カリウム塩〔{CF3−O−S(=O)2−}{CF3−S(=O)2−}N−K〕を製造した。
【0047】
Gould,G.E. et.al.(Journal of American Chemical Society、1969、vol.91、page2902)らの方法に準じて合成した24gのCF3OClを真空下でステンレス製のチューブに導入し、さらに、−196℃に冷却しながら14gの二酸化硫黄を導入した後−20℃、8時間反応させ、15.5gのCF3OSO2Clを得た。
別に、トルフロロメタンスルホン酸アミド30.2gを200mlの脱水メタノールに溶解させた後、tert−ブトキシカリウム22.3gを添加し、60℃で3時間反応させた。その後、この溶液を減圧下濃縮し、白色粉体を得た。この粉体に、脱水ジエチルエーテル250mlを加えてスラリーとし、0℃に冷却した後、先に合成した15.5gのCF3OSO2Clと脱水ジエチルエーテル100mlの混合液を滴下した。得られた溶液を0℃で2時間攪拌後、室温で4時間反応させた。次いで、得られたスラリーを冷却した後濾過し、ジエチルエーテルで洗浄して結晶を取り出した。この結晶を減圧下乾燥して白色粉体54.3g(収率81.0%)を得た。1H−NMRにはピークは見られず、19F−NMRに−61.2ppm(3F)、−94.7ppm(3F)の2本のシングレットピークが確認された。さらにMS−ESI測定(溶媒:メタノール)においては、トリフロロメチル硫酸(トリフロロメタンスルフォン酸)イミドイオンと考えられる分子量296.1のアニオンが観察された。以上の測定により目的の金属塩が合成されたことを確認した。
【0048】
製造例2及び3
製造例1において、トリフロロメタンスルホンアミドに代えて、トリフロロ酢酸アミド(製造例2)又はシアンアミド(製造例3)を用いたと以外は同様にして、それぞれトリフロロメチル硫酸(トリフロロ酢酸)イミド カリウム塩〔{CF3−O−S(=O)2−}{CF3−C=O−}N−K〕(製造例2)又はトリフロロメチル硫酸(シアン)イミド カリウム塩〔{CF3−O−S(=O)2−}{CN−}N−K〕(製造例3)を合成した。
【0049】
実施例1
製造例1で合成したトリフロロメチル硫酸(トリフロロメタンスルホン酸)イミド カリウム塩6.7g(20mmol)とテトラエチルアンモニウムクロライド3.3g(20mmol)をグローブボックス内、窒素雰囲気下、相対湿度10%以下の状態で秤量し、イオン交換水50mlに溶解させたところ、2層に層分離した。この混合液に、塩化メチレン100mlを加えて抽出し、有機層をイオン交換水50mlで2回洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し、6.1gの薄黄色透明液体(トリフロロメチル硫酸(トリフロロメタンスルフォン酸)イミド・トリメチルプロピルアンモニウム塩)を得た。1H−NMR:1.21ppm(t)、3.26ppm(q)。19F−NMR:−61.2ppm(s)、−94.7ppm(s)。
【0050】
この液体を、示差走査熱量計(DSC)を用いて分析したところ、融点は23.1℃であった。また、25℃におけるイオン伝導度を測定したところ、2.3mS/cmであった。
【0051】
比較例1
トリフロロメチル硫酸(トリフロロメタンスルホン酸)イミド・カリウム塩の代わりにトリフロロメタンスルホン酸イミド・リチウム塩を用いる他は実施例1と同様のやり方によってオニウム塩を調製し、ビス(トリフロロメタンスルホン酸)イミド・テトラエチルアンモニウム塩を得た。1H−NMR:1.17ppm(t)、3.22ppm(q)。19F−NMR:−95.09ppm(s)。
【0052】
この化合物は25℃において固体であるため、イオン伝導度を測定することができなかった。
【0053】
実施例2〜4
テトラエチルアンモニウムクロライドの代わりに表1に示す有機カチオン原料を用いた以外は、実施例1と同様に操作し、表1に示す化合物を得た。得られたオニウム塩のNMR分析結果、融点、25℃におけるイオン伝導度、及び酸化電位を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
実施例5〜10
表2に示すアニオン原料及びカチオン原料を用い、実施例1と同様に操作し、表2に示す化合物を得た。得られたオニウム塩のNMR分析結果、融点及びイオン伝導度を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
【発明の効果】
上記本発明のオニウム塩はこれまでオニウム塩のアニオンとして使用されたことがない特殊なアニオンを有する新規なオニウム塩であり、融点が低く、イオン伝導度が高いため、非水電解液用の電解質や化学合成における溶媒として好適に使用できる。一般に双極子モーメントが小さいイオンを有するほど、溶融したオニウム塩の粘度は低くなり、電解液等の電気化学的液体として良好な性質を示すが、双極子モーメントを下げるため対称性の高いカチオンを用いると、オニウム塩の融点が高くなり、液状で使用できる温度範囲が制限されるという問題があったのに対し、本発明のオニウム塩では、対称性の高いカチオンと組み合わせても、低い融点を発現することが可能となっている。
【発明の属する技術分野】
本発明は、一次もしくは二次のリチウム電池、色素増感型太陽電池、電気二重層キャパシタ、表示素子等の電気化学デバイスあるいは電析浴、更には化学合成の媒体として利用可能なオニウム塩に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年多く用いられるようになったリチウム一次電池、リチウム二次電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、エレクトロクロミック表示素子、あるいは将来的な実用化に向けて種々に検討がなされている色素増感型太陽電池などの電気化学デバイスにおける非水系の電解液としては、電解質をエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメトキシエタン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、あるいはアセトニトリル等の有機溶媒に溶解させた溶液が用いられてきた。しかし、これらの電解質溶液に用いられる有機溶媒は揮発しやすく、またそれ自体が可燃性を有す化合物であることから、長期の信頼性、耐久性、および安全性に問題がある。
【0003】
そこで電解質として有機溶媒を用いず、常温で液状であるオニウム塩を電解質として応用することが提案され、種々検討されている。例えば1−メチル−3−エチルイミダゾリウムカチオンと、ビストリフルオロメタンスルホン酸アミドアニオンからなるオニウム塩は、周囲温度で液状であり、高いイオン伝導率を示すことが示されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】
特開平8−259543号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これまで電解質として利用可能であることが知られているオニウム塩は少なく、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホン酸アミド、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホン酸等の極限られたアニオンを有するオニウム塩が報告されているだけであり、その性能の範囲も自ずと限定されているのが現状である。そこで、電解質を使用する電気化学的デバイスの分野においては、種々の用途に合った物性、具体的には、室温で液状であり、かつ高いイオン伝導度をもつ新たな有機オニウム塩の開発が求められていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく、オニウム塩を構成するアニオンとカチオンのうち、これまで検討があまりされていないアニオンの構造について、その特性との相関性に関して鋭意検討を行なった。その結果、これまでオニウム塩のアニオンとして知られていない特定のアニオンを有する新規なアンモニウム塩は、これまでに報告されているトリフルオロメタンスルホン酸イミド等のアニオンを有するアンモニウム塩と比べて低い融点を有し、液状を示す温度範囲の下限温度がより低いという新たな知見を得た。そして、更に検討を行なった結果、上記アニオンを有する他のオニウム塩も非水電解液用の電解質として使用できることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、下記一般式(I)
{R1−O−S(=O)2−}{R2−}N− ・Z+ (I)
{式中、R1は非置換又はハロゲン原子で置換された炭化水素基であり、R2は、R3−O−S(=O)2−、R4−S(=O)2−又はR5−(C=O)−で示される基(R3、R4、R5はいずれも非置換又はハロゲン原子で置換されたアルキル基を示す。但し、R3がR1と同一であることはない。)又はシアノ基であり、Z+は有機オニウムカチオンである。}
で示されるオニウム塩である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のオニウム塩は、下記式(IV)で示されるアニオン部分(以下、単にアニオン部分と称す場合がある)と、有機オニウムカチオンから構成される。
【0008】
{R1−O−S(=O)2−}{R2−}N− (IV)
{式中、R1は非置換又はハロゲン原子で置換された炭化水素基であり、R2は、R3−O−S(=O)2−、R4−S(=O)2−あるいはR5−(C=O)−で示される基(R3、R4、R5はいずれも非置換又はハロゲン原子で置換されたアルキル基を示す。但し、R3がR1と同一であることはない。)又はシアノ基である。}
このような「{R1−O−S(=O)2−}{R2}N−」で示される非対称アニオン部分を有するオニウム塩はこれまで知られていないばかりでなく、他のアニオン部分を有する場合と比べて、耐酸化性とイオン伝導度に優れ、またオニウム塩の融点を著しく低くすることができる。
【0009】
上記のアニオン部分において、R1は非置換又はハロゲン原子で置換された炭化水素基である。
【0010】
当該炭化水素基としては、特に制限されるものではなく公知の如何なる炭化水素基でもよいが、炭素数が多いほど融点と粘度が高くなる傾向にある為、炭素数1〜10の炭化水素基であることが好ましい。
【0011】
当該炭化水素基を具体的に例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基等の炭素数1〜6の直鎖又は分枝状のアルキル基;アリル基、2−ブテニル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;フェニル基、アントラニル基等の炭素数6〜10のアリール基;トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基等のアルキル基で置換された炭素数7〜10(アルキル基の有す炭素原子も含む)のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等の炭素数7〜10のアラルキル基等が例示される。
【0012】
これら炭化水素基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換されていても良い。このようなハロゲン原子で置換された炭化水素基とすることにより、非置換の炭化水素基に比べて、耐酸化性を向上させることが可能となる。ハロゲン原子で置換される場合、その置換位置や置換数は特に制限されるものではない。また、よりイオン伝導度と耐酸化性が高いオニウム塩となるという点で、フッ素原子で置換されているものがより好ましい。
【0013】
このようなフッ素原子で置換された炭化水素基を具体的に例示すると、トリフロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフロロプロピル基、ノナフロロブチル基、ヘプタフロロイソプロピル基、ノナフロロイソブチル基、2,2,2−トリフロロエチル基、1,1,−ジフロロエチル基等の炭素数1〜6のフロロアルキル基;ペンタフロロフェニル基、2,4,6−トリフロロフェニル基等の炭素数6〜10のフロロアリール基;トリフロロメチルフェニル基、ビス(トリフロロメチル)フェニル基等の、フロロアルキル基で置換された炭素数7〜10(フロロアルキル基の有す炭素原子も含む)のアリール基;ヘプタフロロベンジル基、1,1−ジフロロベンジル基等の炭素数7〜10のフロロアラルキル基等を挙げることができる。
【0014】
上記フッ素原子で置換された炭化水素基のなかでも、きわめて高い耐酸化性を得られるという点で、その有する全ての水素原子がフッ素原子に置換された(パーフロロ)炭化水素基であることが特に好ましい。
【0015】
さらに耐酸化性、イオン伝導度が共に高くなるという理由から、炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のパーフロロアルキル基、パーフロロフェニル基、炭素数7〜9のパーフロロアラルキル基のいずれかであるのが特に好適である。
【0016】
前記アニオン部分において、R2は、R3−O−S(=O)2−、R4−S(=O)2−あるいはR5−(C=O)−で示される基(R3、R4、R5は非置換又はハロゲン原子で置換されたアルキル基を示す。但し、R3がR1と同一であることはない。)又はシアノ基である。これらのような基とすることにより、他の基である場合に比して耐酸化性を向上させることができる。
【0017】
これらの基において、R3、R4、R5は非置換又はハロゲン原子で置換されたアルキル基である。当該アルキル基としては、前記R1として例示された炭化水素基のうちのアルキル基と同様のものが例示される。また、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換されることにより、非置換のものよりも耐酸化性が向上するが、イオン伝導度の高いものが得られる点で、フッ素原子で置換されたものが好ましい。当該フッ素原子で置換されたアルキル基としては、前記R1として例示されたフッ素原子置換された炭化水素基のうちのフロロアルキル基と同様のものが例示される。
【0018】
但し、R3として前記R1と同一の基が結合している場合には、R2が{R1−O−S(=O)2−}として示される基と同一となる。この場合には対称性が高くなるためだと推測されるが、オニウム塩の融点が高くなり多くの場合に常温で固体となる。従って、R3として前記R1と同一の基が結合していてはならず、例えばR1としてトリフロロメチル基が結合している場合には、R3は非置換のアルキル基であるか、あるいはトリフロロメチル基以外の、ハロゲンで置換されたアルキル基でなくてはならない。
【0019】
より高い耐酸化性とイオン伝導度を有すものとなる点で、R3、R4、R5としてはいずれも炭素数1〜6の直鎖又は分枝状のパーフロロアルキル基であるのが好ましい。
【0020】
特に好ましいアニオン部分を具体的に例示すると、以下のものが挙げられる。
【0021】
【化1】
{注:アニオンであることを示す、−の符号は省略した。}
本発明のオニウム塩における有機オニウムカチオン{前記一般式(I)におけるZ+}は、窒素、硫黄、酸素、リン、セレン、錫、ヨウ素、アンチモン等の孤立電子対を有する元素を含んだ化合物に陽イオン型の原子団が配位して生ずる少なくとも一つの有機基を有するカチオンであれば特に制限されるものではない。
【0022】
有機オニウムカチオンのなかでも、耐還元性が高い点で、Z+で示される有機オニウムイオンが、下記一般式(II)
R6R7R8R9N+ (II)
(式中、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の一価の炭化水素基であるか、あるいはR6、R7、R8及びR9のうちの2つ又は3つが結合して複素環を形成していてもよい。)
で示されるカチオン、又は下記一般式(III)
R6R7R8R9P+ (III)
{式中、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ前記一般式(II)におけるR6、R7、R8及びR9と同義である。}
で示されるカチオンであることが好ましい。
【0023】
上記式(II)又は(III)において、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の一価の炭化水素基であるか、あるいはR6、R7、R8及びR9のうちの2つ又は3つが結合して複素環を形成していてもよい。
【0024】
当該炭化水素基としては特に制限されず、公知の如何なる炭化水素基でもよく、具体的には前記R1における炭化水素基として例示したものと同様のものが例示される。これら炭化水素基のなかでも、オニウム塩の融点が低く、耐還元性が高い点で直鎖又は分枝状のアルキル基が好ましい。
【0025】
また、これらのR6、R7、R8及びR9はそのうちの2つ又は3つが結合して環(窒素原子又はリン原子を含むため、必然的に複素環となる)を形成していてもよい。形成される複素環も特に限定されるものではなく飽和複素環でも芳香族複素環でも良い。飽和複素環としては、ピロリジン環、ピペリジン環等の含窒素複素環類やペンタメチレンフォスフィン環等の含リン複素環類等の単環類;キヌクリジン環等の窒素原子が橋頭位となる橋かけ環類等が例示され、芳香族環としてはピロール環、ピリジン環、イミダゾール環等が例示される。
【0026】
飽和複素環が形成される際に、その複素環がピロリジン環、ピペリジン環等の単環である場合には、その環の構成原子(窒素原子又はリン原子を含む)数が8以下の環であることが好ましく、6員環又は5員環であることがより好ましい。他方、キヌクリジン環等の橋かけ環である場合には、もっとも大きな環が8員環より小さいことが好ましく、6員環より小さいことがより好ましい。
【0027】
前記一般式(II)で示されるカチオンを具体的に例示すると、R6、R7、R8及びR9がいずれもアルキル基であるものとして、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン等の対称アンモニウムカチオン類;エチルトリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、ジエチルジメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリエチルイソプロピルアンモニウムカチオン、トリメチルプロピルアンモニウムカチオン、トリメチルイソプロピルアンモニウムカチオン、ブチルトリメチルアンモニウムカチオン、ヘキシルトリメチルアンモニウムカチオン、オクチルトリメチルアンモニウムカチオン、ドデシルトリメチルアンモニウムカチオン、ジメチルジプロピルアンモニウムカチオン等の非対称アンモニウムカチオン類が例示される。
【0028】
またR6、R7、R8及びR9のうちの2つが結合して飽和複素環を形成しているものとして、N、N−ジメチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−エチルピロリジニウムカチオン等が例示され、R6、R7、R8及びR9のうちの3つが結合して飽和複素環を形成しているものとして、N−メチルキノクリジウムカチオン等が例示される。
【0029】
R6、R7、R8及びR9のうちのいずれか2つが結合して芳香族性の複素環を形成しているものとしては、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジプロピルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジプロピルイミダゾリウムカチオン等の対称イミダゾリウムカチオン類;1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−イソプロピル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−tert−ブチル−3−イソプロピルイミダゾリウムカチオン等の非対称イミダゾリウムカチオン類;N−エチルピリジニウムカチオン、N−ブチルピリジニウムカチオン等のピリジニウムカチオン類等が例示される。
【0030】
これら一般式(II)で示されるカチオンのなかでも、オニウム塩が低融点であることを重視すると、R6、R7、R8及びR9がいずれもアルキル基であるアンモニウムカチオン類であるか、R6、R7、R8及びR9のうちのいずれか2つが結合して芳香族性の複素環を形成しているものが好ましい。そのなかでもイオン伝導度が高い点で、アルキル基が何れも炭素数が1〜3のアルキル基であるものが特に好ましい。
【0031】
また、高いイオン伝導度を有する点を重視すると、R6、R7、R8及びR9のうちのいずれか2つが結合して芳香族性の複素環を形成しているものが好ましく、特に耐還元性も良好であり、かつ、イオン伝導度も良好である点でイミダゾリウムカチオン類であることが好ましく、非対称イミダゾリウムカチオンであることがより好ましく、R6、R7、R8及びR9のうちの残る2つが炭素数3以下のアルキル基であるの非対称イミダゾリウムカチオンが最も好ましい。
【0032】
他方、耐還元性に優れていることを重視する場合には、R6、R7、R8及びR9のうちの2つ又は3つが結合して飽和複素環を形成しているものが好ましく、さらにそのなかでもオニウム塩が低融点であることから、R6、R7、R8及びR9のうちのいずれか2つが結合して飽和複素環を形成しているものが好ましい。
【0033】
前記一般式(III)で示されるカチオンを具体的に例示すると、R6、R7、R8及びR9がいずれもアルキル基であるものとして、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラプロピルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラオクチルホスホニウムカチオン、テトラフェニルホスホニウムカチオン等の対称ホスホニウムカチオン類;トリメチルエチルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、ヘキシルトリメチルホスホニウムカチオン、トリメチルオクチルホスホニウムカチオン等の非対称ホスホニウムカチオン類が挙げられる。
【0034】
これら一般式(III)で示されるカチオンのなかでも、オニウム塩が低融点であることを重視すると、R6、R7、R8及びR9がいずれもアルキル基であるホスホニウムカチオン類が好ましく、そのなかでもイオン伝導度が高い点で、アルキル基が何れも炭素数が1〜3のアルキル基であるものが特に好ましい。
【0035】
また耐還元性に優れていることを重視する場合には、R6、R7、R8及びR9のうちの2つ又は3つが結合して飽和複素環を形成しているものが好ましく、さらにおのなかでもオニウム塩が低融点であることから、R6、R7、R8及びR9のうちのいずれか2つが結合して飽和複素環を形成しているものが好ましい。
【0036】
本発明のオニウム塩を製造する方法は特に制限されるものではないが、好ましくは、前記一般式(IV)に示される非対称アニオンの金属塩と、アニオンとしてハロゲンイオンを持つ有機オニウム塩(有機オニウムカチオンのハロゲン塩)とを混合する塩交換法を挙げることができる。
【0037】
塩交換法に用いられる非対称アニオンの金属塩において、好適に用いられる金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属類等を挙げることができる。中でも、イオン交換の容易さから、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属類が好適に用いられる。さらには、原料となる金属塩の吸湿性の低さより、カリウムが特に好適に用いられる。
【0038】
これら金属塩は、例えば次のような方法により容易に合成することができる。即ち、下記一般式(V)
R2−NH2 (V)
(式中、R2は、前記一般式(I)と同義である。)
で示される酸アミドと、金属アルコキシド(例えばカリウムエトキシド、tert−ブトキシカリウム等)等の金属塩脱水素剤とを反応させた後、下記一般式(VII)
R1−O−S(=O)2−X (VI)
(式中、R1は前記一般式(I)と同義であり、Xはハロゲン原子である)で示される酸無水物を反応させることにより、下記一般式(VII)
{R1−O−S(=O)2−}{R2}N−M (VII)
(式中、R1及びR2は前記一般式(I)と同義であり、Mは金属原子である)で示される化合物(金属イミド)として合成することができる。
【0039】
続いて、上記のアニオン金属塩と、有機カチオンのハロゲン塩とを塩交換させることによって本発明のオニウム塩が得られる。
【0040】
塩交換法に用いられる有機カチオンのハロゲン塩において、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素を特に制限無く用いることができるが、塩交換の容易さから、塩素、臭素、沃素が好適に用いられる。さらには、塩交換後に副生する無機塩の除去の容易さから、非対称アニオンの金属塩の金属と同周期のハロゲンを選択するのが好適である。
【0041】
塩交換は一般に溶媒中で行われる。溶媒は特に制限されるものではないが、具体的に例を挙げて説明すると、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソプロピル等のエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルフォキシド等のスルフォキシド類等の有機溶媒及び水を挙げることができる。中でも、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブチルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド、水等の比誘電率が10以上の溶媒が、原料である非対称アニオン金属塩及び有機カチオンハロゲン塩の溶解度が高く、好適に用いることができる。
【0042】
塩交換の反応は、特に制限されるものではなく、加熱下、冷却下、加圧下、減圧下、常圧下で行うことができ、通常は、常圧下、室温条件で、反応時間数分〜10時間程度で十分進行にする。イオン交換を行った後、副生する無機塩を除去し、目的物を単離すればよい。例えば、無機塩を水層に抽出した後に溶媒を除去する方法、無機塩を析出させて濾別した後に溶媒を除去する方法、無機塩を溶解させさらに目的の有機塩を結晶化させ濾取する方法等により好適に単離することができる。また、単離されたオニウム塩が水分を含む場合には、必要に応じて濃縮、共沸脱水等を行うことで乾燥すればよい。
【0043】
この様にして得られた本発明のオニウム塩は、一般に低融点で高イオン伝導性を示すため、1次及び2次Li電池用電解質、湿式太陽電池用電解質、キャパシタ用電解質、エレクトロクロミック表示素子用電解質、メッキ用電解質、反応用溶媒等に好適に用いられる。また、この様なオニウム塩から成る電解質を用いて、Li電池、湿式太陽電池、キャパシタ、エレクトロクロミック素子等の電気化学デバイスを構成することにより、低温特性の良好な電気化学デバイスを構築することもできる。
【0044】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
(1)NMR測定
試料10〜20mgを約1mlのジメチルスルフォキシド−d6(標準物質として1,4−ビストリフロロメチルベンゼン含有)に溶解し日本電子製核磁気共鳴装置JNM−LA500により1H、19F核を測定した。19Fのピーク位置は1,4−ビストリフロロメチルベンゼンのピークを−78.25ppmとした場合のケミカルシフトを示した。
【0046】
製造例1
以下の方法により、塩交換法により本発明のオニウム塩を製造する際に用る非対称アニオンの金属塩として、トリフロロメチル硫酸(トリフロロメタンスルホン酸)イミド・カリウム塩〔{CF3−O−S(=O)2−}{CF3−S(=O)2−}N−K〕を製造した。
【0047】
Gould,G.E. et.al.(Journal of American Chemical Society、1969、vol.91、page2902)らの方法に準じて合成した24gのCF3OClを真空下でステンレス製のチューブに導入し、さらに、−196℃に冷却しながら14gの二酸化硫黄を導入した後−20℃、8時間反応させ、15.5gのCF3OSO2Clを得た。
別に、トルフロロメタンスルホン酸アミド30.2gを200mlの脱水メタノールに溶解させた後、tert−ブトキシカリウム22.3gを添加し、60℃で3時間反応させた。その後、この溶液を減圧下濃縮し、白色粉体を得た。この粉体に、脱水ジエチルエーテル250mlを加えてスラリーとし、0℃に冷却した後、先に合成した15.5gのCF3OSO2Clと脱水ジエチルエーテル100mlの混合液を滴下した。得られた溶液を0℃で2時間攪拌後、室温で4時間反応させた。次いで、得られたスラリーを冷却した後濾過し、ジエチルエーテルで洗浄して結晶を取り出した。この結晶を減圧下乾燥して白色粉体54.3g(収率81.0%)を得た。1H−NMRにはピークは見られず、19F−NMRに−61.2ppm(3F)、−94.7ppm(3F)の2本のシングレットピークが確認された。さらにMS−ESI測定(溶媒:メタノール)においては、トリフロロメチル硫酸(トリフロロメタンスルフォン酸)イミドイオンと考えられる分子量296.1のアニオンが観察された。以上の測定により目的の金属塩が合成されたことを確認した。
【0048】
製造例2及び3
製造例1において、トリフロロメタンスルホンアミドに代えて、トリフロロ酢酸アミド(製造例2)又はシアンアミド(製造例3)を用いたと以外は同様にして、それぞれトリフロロメチル硫酸(トリフロロ酢酸)イミド カリウム塩〔{CF3−O−S(=O)2−}{CF3−C=O−}N−K〕(製造例2)又はトリフロロメチル硫酸(シアン)イミド カリウム塩〔{CF3−O−S(=O)2−}{CN−}N−K〕(製造例3)を合成した。
【0049】
実施例1
製造例1で合成したトリフロロメチル硫酸(トリフロロメタンスルホン酸)イミド カリウム塩6.7g(20mmol)とテトラエチルアンモニウムクロライド3.3g(20mmol)をグローブボックス内、窒素雰囲気下、相対湿度10%以下の状態で秤量し、イオン交換水50mlに溶解させたところ、2層に層分離した。この混合液に、塩化メチレン100mlを加えて抽出し、有機層をイオン交換水50mlで2回洗浄した。得られた有機層を減圧濃縮し、6.1gの薄黄色透明液体(トリフロロメチル硫酸(トリフロロメタンスルフォン酸)イミド・トリメチルプロピルアンモニウム塩)を得た。1H−NMR:1.21ppm(t)、3.26ppm(q)。19F−NMR:−61.2ppm(s)、−94.7ppm(s)。
【0050】
この液体を、示差走査熱量計(DSC)を用いて分析したところ、融点は23.1℃であった。また、25℃におけるイオン伝導度を測定したところ、2.3mS/cmであった。
【0051】
比較例1
トリフロロメチル硫酸(トリフロロメタンスルホン酸)イミド・カリウム塩の代わりにトリフロロメタンスルホン酸イミド・リチウム塩を用いる他は実施例1と同様のやり方によってオニウム塩を調製し、ビス(トリフロロメタンスルホン酸)イミド・テトラエチルアンモニウム塩を得た。1H−NMR:1.17ppm(t)、3.22ppm(q)。19F−NMR:−95.09ppm(s)。
【0052】
この化合物は25℃において固体であるため、イオン伝導度を測定することができなかった。
【0053】
実施例2〜4
テトラエチルアンモニウムクロライドの代わりに表1に示す有機カチオン原料を用いた以外は、実施例1と同様に操作し、表1に示す化合物を得た。得られたオニウム塩のNMR分析結果、融点、25℃におけるイオン伝導度、及び酸化電位を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
実施例5〜10
表2に示すアニオン原料及びカチオン原料を用い、実施例1と同様に操作し、表2に示す化合物を得た。得られたオニウム塩のNMR分析結果、融点及びイオン伝導度を表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
【発明の効果】
上記本発明のオニウム塩はこれまでオニウム塩のアニオンとして使用されたことがない特殊なアニオンを有する新規なオニウム塩であり、融点が低く、イオン伝導度が高いため、非水電解液用の電解質や化学合成における溶媒として好適に使用できる。一般に双極子モーメントが小さいイオンを有するほど、溶融したオニウム塩の粘度は低くなり、電解液等の電気化学的液体として良好な性質を示すが、双極子モーメントを下げるため対称性の高いカチオンを用いると、オニウム塩の融点が高くなり、液状で使用できる温度範囲が制限されるという問題があったのに対し、本発明のオニウム塩では、対称性の高いカチオンと組み合わせても、低い融点を発現することが可能となっている。
Claims (4)
- 下記一般式(I)
{R1−O−S(=O)2−}{R2−}N− ・Z+ (I)
{式中、R1は非置換又はハロゲン原子で置換された炭化水素基であり、R2は、R3−O−S(=O)2−、R4−S(=O)2−又はR5−(C=O)−で示される基(R3、R4、R5はいずれも非置換又はハロゲン原子で置換されたアルキル基を示す。但し、R3がR1と同一であることはない。)又はシアノ基であり、Z+は有機オニウムカチオンである。}
で示されるオニウム塩。 - Z+で示される有機オニウムカチオンが、下記一般式(II)
R6R7R8R9N+ (II)
(式中、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、炭素数1〜8の一価の炭化水素基であるか、あるいはR6、R7、R8及びR9のうちの2つ又は3つが結合して環を形成していてもよい。)
で示されるカチオン、又は下記一般式(III)
R6R7R8R9P+ (III)
{式中、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ前記一般式(II)におけるR6、R7、R8及びR9と同義である。}
で示されるカチオンである請求項1に記載のオニウム塩。 - 請求項1又は2に記載のオニウム塩を用いた非水電解液用電解質。
- 請求項3記載の電解質を用いることを特徴とする電気化学的デバイス。
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-
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