JP2004175622A - 透明基体用自己調光膜及び自己調光膜付き透明基体 - Google Patents

透明基体用自己調光膜及び自己調光膜付き透明基体 Download PDF

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利明 安崎
Yoshibumi Kijima
義文 木島
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Abstract

【課題】外部環境状況に応じて視界を遮蔽することなく自己調光することができる透明基体用自己調光膜及び自己調光膜付き透明基体を提供する。
【解決手段】自己調光膜付き透明基体としての複層ガラス100は、室内側ガラス板10と、室内側ガラス板10との間に中空部15を画成する室外側ガラス板20と、中空部15側に成膜された自己調光膜30を備える。自己調光膜30には、室外側ガラス板20の面上に該面から順に成膜された、誘電体層31、金属層32,33、犠牲金属層34、TiONを主成分として成る光触媒層35、及び電荷分離層36が配されている。光触媒層35は、外部からの光の強度が高いときに当該光を吸収して当該光触媒層35の伝導帯に移動した電子を金属層32,33の伝導帯に供給する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、透明基体用自己調光膜及び自己調光膜付き透明基体に関し、特に、建築用窓ガラスや自動車用窓ガラス等の透明基体用自己調光膜、及び自己調光膜付き透明基体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築用窓ガラスや自動車用窓ガラス等の透明ガラス板としては、外部からの光や熱の侵入を抑制する調光機能性膜材料等でコーティングされたガラスが実用化されている(例えば、特許文献1参照。)。上記調光機能性膜材料としては、例えば、AgやZnO等の膜材料を複数積層した熱線反射膜材料がある。この熱線反射膜は、赤外光を反射して夏季の日射における熱の侵入を遮蔽する一方、可視光を透過するので、視界を遮断することなく遮熱を行って冷房負荷の軽減を図ることができる。
【0003】
また、電圧印加により色が変化するWを含有するエレクトロクロミックガラス等を用いて、上記熱線反射膜における可視光の透過率を人為的に制御して調光を行うことも提案されている。
【0004】
さらには、温度の変化に伴い相転移する液晶等の高分子材料溶液を封入した自己調光機能付き複層ガラスが提案されている。この複層ガラスは、所定の温度、例えば40℃程度になると高分子材料の相転移に起因する白濁又は着色によって外部から侵入する光や熱の量を抑制することができる。このような温度等の外部環境状況に応じて自動的に調光する機能は、自己調光機能と呼ばれている。
【0005】
【特許文献1】
特公平05−070580号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記調光機能性膜材料等でコーティングされたガラスは、その光透過スペクトル特性が光の強度等外部環境状況に関わりなく一定であり、夏季の日射における熱の侵入を抑制し、同時に曇天時や冬季等の日射における熱の侵入を抑制しないといったニーズに応えることができず、自己調光機能を有していない。
【0007】
また、上記エレクトロクロミックガラス等では、調光を可視光の透過率を人為的に制御することにより行っているので、人為的に調光機能を発揮することができるが、自己調光機能を有していないので調光に手間がかかる。
【0008】
さらに、上記自己調光機能付き複層ガラスでは、外部から侵入する光や熱の量の抑制を高分子材料の白濁又は着色により行っているので、この白濁又は着色により視界が遮られる。
【0009】
本発明の目的は、外部環境状況に応じて視界を遮蔽することなく自己調光することができる透明基体用自己調光膜及び自己調光膜付き透明基体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の自己調光膜は、透明基体の面上に成膜された透明基体用自己調光膜において、外部から光を受けて電子を放出する感光膜と、前記感光膜から放出された電子を捕捉する金属膜とを備え、前記金属膜は、前記電子の作用及び前記光の強度に応じて酸化状態と還元状態を可逆的に呈することを特徴とする。
【0011】
請求項1記載の自己調光膜によれば、外部から光を受けて電子を放出する感光膜と、感光膜から放出された電子を捕捉する金属膜とが透明板の面上に成膜され、金属膜が電子の作用及び光の強度に応じて酸化状態と還元状態を可逆的に呈するので、外部環境状況としての外部からの光の強度に応じて視界を遮蔽することなく自己調光することができる。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項26記載の自己調光膜は、透明基体の面上に成膜された透明基体用自己調光膜において、外部から光を受けてホールを放出する感光膜と、前記感光膜から放出されたホールを捕捉する金属膜とを備え、前記金属膜は、前記ホールの作用及び前記光の強度に応じて還元状態と酸化状態を可逆的に呈することを特徴とする。
【0013】
請求項26記載の自己調光膜によれば、外部から光を受けてホールを放出する感光膜と、前記感光膜から放出されたホールを捕捉する金属膜とを備え、前記金属膜は、前記ホールの作用及び前記光の強度に応じて還元状態と酸化状態を可逆的に呈するので、外部環境状況としての外部からの光の強度に応じて視界を遮蔽することなく自己調光することができる。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項51記載の自己調光膜付き透明基体は、請求項1乃至50のいずれか1項に記載の自己調光膜を有することを特徴とする。
【0015】
請求項51記載の自己調光膜付き透明基体によれば、請求項1乃至50のいずれか1項に記載の自己調光膜を有するので、外部環境状況に応じて視界を遮蔽することがなく自己調光するものを提供することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明者は、上記目的を達成するために、鋭意研究を行った結果、透明基体の面上に成膜された透明基体用自己調光膜において、外部から光を受けて電子を放出する感光膜と、感光膜から放出された電子を捕捉する金属膜とを備え、金属膜は、電子の作用及び光の強度に応じて酸化状態と還元状態を可逆的に呈すると、外部環境状況に応じて視界を遮蔽することなく自己調光することができるのを見出した。
【0017】
また、本発明者は、上記目的を達成するために、鋭意研究を行った結果、透明基体の面上に成膜された透明基体用自己調光膜において、外部から光を受けてホールを放出する感光膜と、感光膜から放出されたホールを捕捉する金属膜とを備え、金属膜は、ホールの作用及び光の強度に応じて還元状態と酸化状態を可逆的に呈すると、外部環境状況に応じて視界を遮蔽することなく自己調光することができるのを見出した。
【0018】
以下、本発明の実施の形態に係る透明基体用自己調光膜を図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る透明基体用自己調光膜を備える自己調光膜付き透明基体の断面図である。
【0020】
図1において、自己調光膜付き透明基体としての複層ガラス100は、厚さ5mmのフロートガラスから成る室内側ガラス板10と、室内側ガラス板10にその周囲において幅約10mmの封止枠体16を介して対向し、間に中空部15を画成する厚さ5mmのフロートガラスから成る室外側ガラス板20(窓ガラス,透明基体)と、該中空部15において室外側ガラス板20の面上に成膜された複層ガラス100用の後述する図2の自己調光膜30とを備える。封止枠体16は、室内側ガラス板10及び室外側ガラス板20の各々と封止剤17により封止される。また、封止枠体16の内側面には乾燥剤18が配される。
【0021】
図2は、図1における自己調光膜30の断面図である。
【0022】
図2において、自己調光膜30は、室外側ガラス板20の面上に該面から順に成膜された、ZnOから成る厚さ45nmの誘電体層31、Agから成る厚さ10nmの金属層32(金属膜)、Znから成る厚さ1nmの金属層33(他の金属膜)、Zn及びZnO(酸化金属膜)から成る厚さ3nmの犠牲金属層34、TiON(感光体)を主成分として成る厚さ35nmの光触媒層35(感光膜)、並びにZrOを主成分として成る厚さ15nmの電荷分離層36から成るサンドイッチ構造を呈する。これらの層31〜36は、後述するようにスパッタリング法により成膜される。また、自己調光膜30は、サンドイッチ構造であるので、各層間における電荷の授受を容易に行うことができる。
【0023】
金属層32は、Agから成るとしたが、光触媒層35から放出された電子を容易に捕捉することができればよく、Pt,Pd,Au,Cuから成る貴金属の群から選択された1つ以上の貴金属単体若しくはその化合物、又はAgにドーパントとしてのPd,Au,In,Sn,Al,Cu等の他の金属単体を含有する混合物から成ってもよい。金属層32は金属層33に隣接するので、金属層33の電荷を容易に捕捉することができる。
【0024】
また、金属層33は、Znから成るとしたが、Sn,Inから成る遷移金属の群から選択された1つ以上の遷移金属単体、その化合物、及びその混合物のいずれかから成るか、又はY,Raから成る希土類金属の群から選択された1つ以上の希土類金属単体、その化合物、及びその混合物のいずれかから成ってもよい。
【0025】
なお、金属層32と金属層33とは異なる単体金属、単体金属の混合物、その化合物、及びその混合物のいずれかであることが好ましく、これにより、誘電体層31までのエネルギー準位においてエネルギー勾配を設けることができる。また、金属層32,33の合計の厚さは、11nmであるが、5〜25nm、好ましくは5〜16nmであればよく、これにより、視界を遮蔽するのを防止することができる。
【0026】
犠牲金属層34は、Zn及びZnOから成るとしたが、Ti,Zn,Zn−Sn合金の金属から成る群から選択された1つ以上及び該選択された金属(単体金属)及び金属の酸化物から成ってもよい。犠牲金属層34は、金属層32,33が成膜された後に選択された金属が成膜され、光触媒層35を成膜するときに金属層32,33の代わりに選択された金属が部分的に酸化されたものであるので、上記スパッタリング法における光触媒層35の成膜プロセスにおいて酸化しやすい上記成膜された金属層32,33の劣化や腐蝕等を防止することができる。また、犠牲金属層34は、上記金属層32,33が成膜される前に成膜されてもよい。これにより、金属層32,33の劣化や腐蝕等をより防止することができる。犠牲金属層34は、その厚さが3nmであるとしたが、1〜5nm程度であれば、金属層32,33の劣化や腐蝕等を十分に防止することができる。
【0027】
光触媒層35は、TiONを主成分として成るとしたが、TiO,TiN,TiON,ZnO,VO,WO,NbO,TaO,SnO,Fe,α−Fe,Inから成る感光体の群から選択された1つ以上の感光体、2つ以上の感光体が混合した混合物、及び2つ以上の感光体が化合した化合物のいずれかから成ってもよい。これにより、選択された光触媒が有するエネルギーギャップに応じて室外(外部)からの光を吸収することができる。
【0028】
電荷分離層36はZrOを主成分として成るとしたが、Zn,Al,B,Ga,In等をドープしたTiO,Si,CdS,GaP,CdSe,KTaO,LiNbO,Si−C,Ru錯体,SiO,SrTiO等であってもよい。
【0029】
また、上記光触媒は、室外からの光を干渉する作用を有する。これにより、視界を遮蔽することをより効果的になくすことができる。さらに、この光触媒層35は、上記外部からの光を干渉する作用によりその層の厚さを適当に調整することができ、この調整した光触媒層35の層の厚さに応じて色調整する作用を有する。これにより、着色しても視界を遮蔽することを効果的になくすことができると共に、室外からの光が複数回の光路を通過することができ、光の利用効率を高める効果、いわゆるエタロン効果を奏することができる。さらに、この光触媒は室外からの光の反射を防止する作用を有する。これにより、上記色調整作用をより発揮することができる。
【0030】
電荷分離層36を構成するZrOは、上記光触媒層35及び電荷分離層36の組み合わせが後述する図3のエネルギーダイヤグラムを満たすように選択されたものであるので、他の酸化金属であってもよい。電荷分離層36がZrOから成るので、後述する図3のエネルギーダイヤグラムを確実に満たすことができる。
【0031】
電荷分離層36や金属層32,33は、光触媒層35を構成する光触媒における電荷分離を促進し、電子とホールの再結合を防止する。これにより、効率的に自己調光することができる。
【0032】
図2の自己調光膜30の成膜は以下のスパッタリング法を用いて行われる。
【0033】
このスパッタリング法による成膜には、例えばロードロック式インラインマグネトロンスパッタ装置が使用される。該スパッタ装置の使用にあたっては、金属層32,33を成膜するときは当該金属層32,33を構成する単体金属をターゲットとし、又は金属を含有する化合物から成る層を成膜するときは当該化合物が含有する金属をターゲットとし、成膜される層に応じて好ましいプロセスガスの成分及びその圧力又はそれらの分圧を規定したレシピに従って成膜プロセスが実行される。
【0034】
上記レシピに従って、例えば金属単体から成る金属層32,33を成膜するには、例えばプロセスガスとして希ガスであるアルゴンガスを100%、その圧力を0.40Pa(3mTorr)とする。これにより、金属単体が酸化するのを防止することができる。また、犠牲金属層34は、犠牲にされる単体金属をターゲットとし、プロセスガスとして酸素ガスを用いてスパッタ装置内部に酸化剤としての酸素プラズマを発生させ、若干酸化させた単体金属を成膜する。
【0035】
同様に、誘電体層31の成膜では、酸素ガス60%及びアルゴンガス40%の圧力を0.40Pa、光触媒層35の成膜では、酸素80%及び窒素20%の圧力を1.33Pa(10mTorr)、電荷分離層36の成膜では、酸素100%の圧力を1.33Pa、ガスバリア層40の成膜では、窒素100%の圧力を0.40Paとする。
【0036】
このスパッタリング法によれば、容易に複数の層を成膜することができる。
【0037】
以下、自己調光膜30を構成する複数の層の機能を説明する。
【0038】
図3は、図2における金属層32,33、光触媒層35、及び電荷分離層36のエネルギーダイヤグラムを表す図である。なお、価電子帯には基底状態にある電子が収容され、伝導帯には励起状態にある電子が収容される。
【0039】
図3に示すように、光触媒層35は、その価電子帯と伝導帯とのエネルギー準位の差分で表される所定のエネルギーギャップが2.8eV以下、例えば2.8eVであり、このエネルギーギャップは可視光の強度に相当する。これにより、光触媒層35は可視光の一部を吸収する可視光応答を行うことができ、可視光を吸収すると着色すると共に、可視光に対する透過率を低下させることができる。このとき、可視光の一部は光触媒層35により吸収され、可視光は主に還元状態を呈する金属層32,33により吸収される。なお、可視光応答性がある光触媒層35を構成する感光体としては、TiN,TiON,TiOx(亜酸化物),金属をドープしたTiO等を挙げることができる。光触媒層35を構成する感光体としてTiN,TiON,TiOx(亜酸化物),金属をドープしたTiO等を使用すると、自己調光膜30が中空部15において室外側ガラス板20又は室内側ガラス板10の面上に成膜される場合に、ガラス板10,20が紫外光を吸収して金属層32,33が腐食されないので好ましい。
【0040】
金属層32,33は、単体金属であるのでエネルギーギャップを有することがなく、光触媒層35のエネルギーギャップ内にエネルギー準位を有し、且つ電子やホールから成るキャリアが収容される伝導帯を有する。これにより、金属層32,33は、光触媒層35からのキャリアを容易に捕捉することができる。
【0041】
また、電荷分離層36は、光触媒層35の価電子帯よりも高いエネルギー準位の価電子帯、及び光触媒層35の伝導帯よりも高いエネルギー準位の伝導帯を有する。これにより、電荷分離層36は、光触媒層35からの電子のエネルギー障壁となることができると共に、光触媒層35からのホールを容易に捕捉することができる。また、電荷分離層36は、金属層32,33の伝導帯よりも高いエネルギー準位の価電子帯、及び金属層32,33の伝導帯よりも高いエネルギー準位の伝導帯を有する。これにより、電荷分離層36は、光触媒層35からのホールを金属層32,33よりも容易に捕捉することができる。
【0042】
電荷分離層36がZrOから成るので、その伝導帯のエネルギー準位を金属層32,33の伝導帯及び光触媒層35の伝導帯のエネルギー準位よりも確実に高くすることができると共に、その価電子帯のエネルギー準位を金属層32,33の伝導帯及び光触媒層35の価電子帯のエネルギー準位よりも確実に高くすることができる。
【0043】
図3において、光触媒層35は、そのエネルギーギャップの大きさに相当するエネルギー(光の強度)を有する可視光の一部を吸収し、価電子帯の電子(e)は励起されて伝導帯に移動する。このとき、電子が移動した価電子帯には、ホール(h;正孔)が生じる。
【0044】
上記光触媒層35の伝導帯に移動した電子は、光触媒層35の伝導帯よりも低いエネルギー準位の伝導帯を有し、酸化状態を呈する金属層32,33に捕捉される。捕捉された電子は金属層32,33を構成する金属を還元し、この還元された金属を多数有する金属層32,33は還元状態を呈するので、室外からの光を遮断する。
【0045】
また、上記光触媒層35の価電子帯に生じたホールは、光触媒層35の価電子帯及び金属層32,33の伝導帯よりも高いエネルギー準位の価電子帯を有する電荷分離層36に捕捉され、捕捉されたホールは、例えば中空部15内部の汚染源である有機物等を酸化する。
【0046】
このように、光触媒層35が室外からの光の強度が高いときに当該光の一部を吸収すると、光触媒層35からの電子は金属層32,33へ移動し、光触媒層35からのホールは電荷分離層36へ移動し、もって金属層32,33及び電荷分離層36は、自己調光膜30内部において光触媒層35を構成する光触媒における電荷分離が促進し、電子とホールとの再結合を防止する。これにより、電荷分離層36が金属層32,33に光触媒層35からの電子を効率的に供給すると共に、金属層32,33は光触媒層35からの電子を効率的に捕捉することができ、もって、電子が供給されることによって還元状態を呈する金属層32,33は室外からの光の強度が高いときに当該光を効率的に反射することができる。
【0047】
なお、図3のエネルギーダイヤグラムにおいて、光触媒層35のエネルギーギャップは、可視光の強度に相当する2.8eV以下であるとしたが、例えば紫外光の強度に相当する2.8〜6.0eVであってもよい。これにより、光触媒層35は紫外光の一部を吸収する紫外光応答を行うことができ、着色することなく、紫外光に対する透過率を低下させることができる。
【0048】
図2及び図3の自己調光膜30によれば、金属層32,33及び光触媒層35を備え、室外からの光の強度が光触媒層35のバンドギャップよりも高い場合にのみ、光触媒層35はその光の一部を吸収して電子を放出し、金属層32,33が放出された電子を捕捉し、金属層32,33は還元されて還元状態を呈するので、室外からの光の透過を遮断することができる。また、光触媒層35は、バンドギャップ以下のエネルギーを有する光の大部分を吸収することなく透過させるので、室外からの光の強度に応じて視界を遮蔽することなく自己調光することができる。
【0049】
また、電荷分離層36は、その伝導帯のエネルギー準位が光触媒層35の伝導帯のエネルギー準位よりも高いので、電荷分離層36の伝導帯のエネルギー準位は光触媒層35からの電子に対してエネルギー障壁となり、もって、光触媒層35からの電子を金属層32,33に供給し易くすることができる。
【0050】
加えて、金属層32,33が光触媒層35からの電子を捕捉するときに、犠牲金属層34は、光触媒層35と金属層32,33との間に介在するので、光触媒層35からの電子を捕捉する。この捕捉した電子の作用により、犠牲金属層34を構成する金属酸化物が単体金属に還元されて、その単体金属の分だけ金属層33の実効的な厚みを増大させることができる。これにより、自己調光膜30は、室外からの光を遮断することができる。
【0051】
本第1の実施の形態によれば、自己調光膜30において、室外からの光の強度が低いときは、光触媒層35が可視光の吸収を抑制して可視光の透過率を70〜90%にすることができると共に、室外からの光の強度が高いときは、光触媒層35は可視光を吸収して、金属層32,33は電子を確実に捕捉して還元状態を呈するので、可視光の透過率を50〜70%にすることができる。
【0052】
また、本第1の実施の形態によれば、自己調光膜30において、室外からの光の強度が高いときは、金属層32,33が光触媒膜から放出された電子を確実に捕捉して還元状態を呈するので、赤外光の透過率を50%以下にすることができると共に、室外からの光の強度が低いときは、金属層が酸化状態を呈するので、赤外光の透過率を50〜70%にすることができる。
【0053】
さらに、自己調光膜30は、外部からの光の強度に応じて確実に自己調光して、外部からの光の強度が高いときに該光の透過率を少なくとも5%遮断することができる。
【0054】
上記第1の実施の形態では、室外側ガラス板20の一の面に1つの自己調光膜30を成膜したが、さらに2つ(図4)又はそれ以上の自己調光膜30を成膜してもよい。これにより、室外からの光の透過率をより低下させることができる。
【0055】
上記第1の実施の形態では、自己調光膜30は、中空部15側においてその上面に、さらにガスバリア層40が成膜されていてもよい(図5)。このガスバリア層40は、例えば、SiN(珪素窒化物)から成る。なお、上記ガスバリア層40は、TiOやSiAlN(サイアロン)から成ってもよい。これにより、自己調光膜30内部へのガスや水分等の侵入を防止することができる。
【0056】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る自己調光膜の断面図である。
【0057】
図6において、本発明の第2の実施の形態に係る透明板用自己調光膜としての自己調光膜50は、室外側ガラス板20の面上から順に成膜された、ZrOを主成分として成る厚さ10nmの電荷分離層51、TiONを主成分として成る厚さ35nmの光触媒層52、Zn及びZnOから成る厚さ3nmの犠牲金属層53、Agから成る厚さ10nmの金属層54、Znから成る厚さ1nmの金属層55、Zn及びZnOから成る厚さ3nmの犠牲金属層56、TiONを主成分として成る厚さ30nmの光触媒層57、ZrOを主成分として成る厚さ10nmの電荷分離層58、及びガスバリア層40から成るサンドイッチ構造を呈する。
【0058】
なお、これらの層51〜58は、図2の自己調光膜30の場合と同じくスパッタリング法により成膜される。また、成膜されている層51〜58の各々の機能及び効果は図2又は図5の自己調光膜30と同じである。
【0059】
上記電荷分離層51、光触媒層52、及び金属層54,55は、成膜順が図2の自己調光膜30の金属層32,33、光触媒層35、及び電荷分離層36と逆である。これにより、図3における金属層32,33、光触媒層35、及び電荷分離層36のエネルギーダイヤグラムと同等の効果を奏することができる。
【0060】
本第2の実施の形態によれば、金属層54,55は、光触媒層52,57が放出する電子を捕捉することができ、室外からの光に応じて視界を遮蔽することなくより効率的に自己調光することができる。また、室外からの光に応じて確実に自己調光することができる。
【0061】
上記第2の実施の形態では、室外側ガラス板20の一の面に成膜されるのは、1つの自己調光膜30としたが、さらに、2つ以上の自己調光膜30,30とする技術(図4)、上述したようにガスバリア層40を最外層に成膜する技術(図5)を適用することができる。
【0062】
図7は、本発明の第3の実施の形態に係る自己調光膜の断面図である。
【0063】
本発明の第3の実施の形態に係る自己調光膜では、そのエネルギーダイヤグラムが本第1の実施の形態に係る自己調光膜におけるエネルギーダイヤグラム(図3)と異なる。
【0064】
以下、第3の実施の形態に係る自己調光膜を構成する複数の層の機能を図7,図8を用いて説明する。
【0065】
図7は、第3の実施の形態に係る自己調光膜の断面図である。
【0066】
図7において、自己調光膜70は、室外側ガラス板20の面上に該面から順に成膜された、ZnOから成る厚さ45nmの誘電体層71、Agから成る厚さ10nmの金属層72、Znから成る厚さ1nmの金属層73、Zn(さらに他の金属層)及びZnOから成る厚さ3nmの犠牲金属層74、TiO(感光体)を主成分として成る厚さ35nmの光触媒層75(感光膜)、及びGaPを主成分として成る厚さ15nmの電荷分離層76から成るサンドイッチ構造を呈する。
【0067】
なお、これらの層71〜76は、図2の自己調光膜30の場合と同じくスパッタリング法により成膜される。また、成膜されている層71〜76の各々の機能及び効果は、光触媒層75の電荷分離を促進するという構造において、図2の光触媒層35の電荷分離を促進するという構造を有する自己調光膜30と同じである。
【0068】
光触媒層75は、TiO2を主成分として成るとしたが、TiO,TiN,TiON,ZnO,VO,WO,NbO,TaO,SnO,Fe,α−Fe,Inから成る感光体の群から選択された1つ以上の感光体、2つ以上の感光体が混合した混合物、及び2つ以上の感光体が化合した化合物のいずれかから成ってもよい。これにより、選択された光触媒が有するエネルギーギャップに応じて室外からの光を吸収することができる。
【0069】
電荷分離層76は、GaPを主成分として成るとしたが、ZrO,SrTiO,SiO,KTaO,SnO等から成ってもよい。
【0070】
なお、上記光触媒層75及び電荷分離層76の組み合わせは、後述する図8のエネルギーダイヤグラムを満たすように選択される。
【0071】
以下、自己調光膜70を構成する複数の層の機能を説明する。
【0072】
図8は、図7における金属層72,73、光触媒層75、及び電荷分離層76のエネルギーダイヤグラムを表す図である。
【0073】
図8に示すように、光触媒層75は、その所定のエネルギーギャップが2.8eV以下、例えば2.8eVであり、このエネルギーギャップは可視光の強度に相当する。これにより、光触媒層75は可視光の一部を吸収する可視光応答を行うことができ、可視光を吸収すると着色すると共に、可視光に対する透過率を低下させることができる。このとき、可視光の一部は光触媒層75により吸収され、可視光の大部分は主に還元状態を呈する金属層72,73により吸収される。なお、可視光応答性がある光触媒層75を構成する感光体としては、TiON,TiOCr,TiOx(1.5<X<2)等を挙げることができる。光触媒層75を構成する感光体としてTiON,TiOCr,TiOx(1.5<X<2)等を使用すると、自己調光膜70が中空部15において室外側ガラス板20又は室内側ガラス板10の面上に成膜される場合に、ガラス板10,20が紫外光を吸収して金属層72,73が腐食されないので好ましい。
【0074】
金属層72,73は、光触媒層75のエネルギーギャップ内に電子やホールから成るキャリアが収容される伝導帯を有する。これにより、金属層72,73は、光触媒層75からのキャリアを容易に捕捉することができる。
【0075】
また、電荷分離層76は、光触媒層75の価電子帯よりも低いエネルギー準位の価電子帯、及び光触媒層75の伝導帯よりも低いエネルギー準位の伝導帯を有する。これにより、電荷分離層76は、光触媒層75からのホールのエネルギー障壁となることができると共に、光触媒層75からの電子を容易に捕捉することができる。また、電荷分離層76は、金属層72,73の伝導帯よりも低いエネルギー準位の価電子帯、及び金属層72,73の伝導帯よりも低いエネルギー準位の伝導帯を有する。これにより、電荷分離層76は、光触媒層75からの電子を金属層72,73よりも容易に捕捉することができる。
【0076】
電荷分離層76がGaPから成るので、その伝導帯のエネルギー準位を金属層72,73の伝導帯及び光触媒層75の伝導帯のエネルギー準位よりも確実に低くすることができると共に、その価電子帯のエネルギー準位を金属層72,73の伝導帯及び光触媒層75の価電子帯のエネルギー準位よりも確実に低くすることができる。図8において、光触媒層75は、そのエネルギーギャップの大きさに相当するエネルギーを有する可視光の一部を吸収し、価電子帯の電子(e)は励起されて伝導帯に移動する。このとき、電子が移動した価電子帯には、ホール(h)が生じる。
【0077】
上記光触媒層75の価電子帯に生じたホールは、光触媒層75及び電荷分離層76の価電子帯よりも高いエネルギー準位の伝導帯を有し、還元状態を呈する金属層72,73に捕捉される。捕捉されたホールは金属層72,73を構成する金属を酸化し、この酸化された金属を多数有する金属層72,73は酸化状態を呈するので、室外からの光の透過を増大(逆調光)する。
【0078】
また、上記光触媒層75の伝導帯に移動した電子は、光触媒層75の伝導帯及び金属層72,73の伝導帯よりも低いエネルギー準位の伝導帯を有する電荷分離層76に捕捉され、捕捉された電子は、例えば中空部15内部の水等を還元する。
【0079】
このように、光触媒層75が室外からの光の強度が高いときに当該光の一部を吸収すると、光触媒層75からのホールは金属層72,73へ移動し、光触媒層75からの電子は電荷分離層76へ移動し、もって金属層72,73及び電荷分離層76は、自己調光膜70内部において光触媒層75を構成する光触媒における電荷分離が促進し、電子とホールとの再結合を防止する。これにより、金属層72,73及び電荷分離層76は、金属層72,73に光触媒層75からのホールを効率的に供給することができ、もって、ホールが供給されることによって酸化状態を呈する金属層72,73は室外からの光の強度が高いときに当該光の透過を効率的に増大することができる。
【0080】
なお、図8のエネルギーダイヤグラムにおいて、光触媒層75のエネルギーギャップは、可視光の強度に相当する2.8eV以下であるとしたが、例えば紫外光の強度に相当する2.8〜6.0eVであってもよい。これにより、光触媒層75は紫外光の一部を吸収する紫外光応答を行うことができ、着色することなく、可視光及び紫外光に対する透過率を増大させることができる。
【0081】
図7及び図8の自己調光膜70によれば、金属層72,73及び光触媒層75を備え、室外からの光の強度が光触媒層75のバンドギャップよりも高い場合にのみ、光触媒層75はその光の一部を吸収してホールを放出し、金属層72,73が放出されたホールを捕捉し、金属層72,73は酸化されて酸化状態を呈するので、室外からの光の透過を増大することができる。また、光触媒層75は、バンドギャップ以下のエネルギーを有する光の大部分を吸収することなく透過させるので、室外からの光の強度に応じて視界を遮蔽することなく自己調光することができる。
【0082】
また、電荷分離層76は、その価電子帯のエネルギー準位が光触媒層75の価電子帯のエネルギー準位よりも低いので、電荷分離層76の価電子帯のエネルギー準位は光触媒層75からのホールに対してエネルギー障壁となり、もって、光触媒層75からのホールを金属層72,73に供給し易くすることができる。
【0083】
加えて、金属層72,73が光触媒層75からのホールを捕捉するときに、犠牲金属層74は、光触媒層75と金属層72,73との間に介在するので、光触媒層75からのホールを捕捉する。この捕捉したホールの作用により、犠牲金属層74を構成する単体金属が酸化されて、その酸化された単体金属の分だけ金属層33の実効的な厚みを減少させることができる。これにより自己調光膜70は室外からの光の透過を増大させることができ、例えば、自己調光膜70を有するガラス板の夜間におけるミラー作用を増大することができ、当該ガラス板をアクティブ断熱ガラスやアクティブプライバシーガラスとすることができる。
【0084】
本第3の実施の形態によれば、自己調光膜70において、室外からの光の強度が低いときは、光触媒層75は可視光の透過率を50%以下にすることができると共に、室外からの光の強度が高いときは、光触媒層75は可視光の透過率を50〜70%にすることができる。
【0085】
また、本第3の実施の形態によれば、自己調光膜70において、外部からの光の強度が高いときは、金属層72,73が光触媒膜から放出されたホールを確実に捕捉して酸化状態を呈するので、赤外光の透過率を50〜70%にすることができると共に、外部からの光の強度が低いときは、金属層72,73が還元状態を呈するので、赤外光の透過率を50%以下にすることができる。
【0086】
さらに、自己調光膜70は、外部からの光の強度に応じて確実に自己調光して、外部からの光の強度が高いときに該光の透過率を少なくとも5%増加させることができる。
【0087】
上記第3の実施の形態では、室外側ガラス板20の一の面に成膜されるのは、1つの自己調光膜70としたが、さらに、2つ以上の自己調光膜70,70とする技術(図4)、ガスバリア層40を最外層に成膜する技術(図5)、及び金属層72,73、光触媒層75、及び電荷分離層76を逆の成膜順で成膜する技術(図6)を適用することができる。
【0088】
上記第1乃至第3の実施の形態において、電荷分離層76の面上に金属層が更に設けられてもよい。
【0089】
上記第1乃至第3の実施の形態では、自己調光膜30,50,70は、室外側ガラス板20の上面に成膜されたが、中空部15において室内側ガラス板10の上面に成膜してもよく、さらには、複層ガラス100の外側においてガラス板10,20の面上に成膜してもよい。自己調光膜30,50,70が中空部15において密封されていると、自己調光膜30,50,70の劣化や腐蝕等を起こりにくくすることができる。また、自己調光膜30,50,70が室外側ガラス板20側に成膜されていると、自己調光膜30,50,70が熱線を吸収しても屋内に該熱線の熱を放出することを防止することができる。
【0090】
上記自己調光膜30,50,70は、いかなるものに形成されてもよく、例えば、複層ガラス等の窓ガラスに形成されてもよい。また、ガラス板等の透明基体が自己調光膜30,50,70を有することにより、自己調光膜付き透明基体、例えば、光スイッチ、光ヒューズ、光アテニュエイター(光抵抗器)等を構成してもよい。
【0091】
これにより、上記自己調光膜が形成された窓ガラスは、建築用窓ガラスや自動車用窓ガラス等において利用することができ、上記光スイッチ、光ヒューズ、及び光アテニュエイター等は、光機器や電子機器等の産業上の分野において利用することができる。
【0092】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0093】
本発明者は、室外環境状況に応じて視界を遮蔽することなく自己調光することができる自己調光膜30又は自己調光膜50、及び自己調光膜30,50付き複層ガラス100を提供するために、表1の自己調光膜を備える複層ガラス100の試験片を作製した(表1の実施例1〜4及び比較例1)。
【0094】
なお、実施例1の試験片が備える自己調光膜としては図2の自己調光膜30を使用した。また、実施例2の試験片では図4の2つの自己調光膜30,30を使用し、実施例3の試験片では図4のガスバリア層40が成膜された自己調光膜30を使用し、実施例4の試験片では図6の自己調光膜50を使用した。さらに、比較例1の試験片では、図2の自己調光膜30において、最外部に誘電体層31を備え、且つ光触媒層35及び電荷分離層36を備えていないものを使用した。
【0095】
そして、波長550nmの可視光及び波長900nmの赤外光を含む夏季太陽光に相当する光を照射する光源を使用して、作製した試験片の光照射中における透過率を測定し、透過率の測定結果から、該可視光の吸収率(可視光吸収率)、及び該赤外光に対する反射率(赤外光反射率)を評価すると共に自己調光性を評価した。なお、自己調光性の評価は、評価された可視光吸収率及び赤外光反射率が共に5%以上である場合に○、5%未満である場合に×とした。
【0096】
測定及び評価の結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
Figure 2004175622
【0098】
表1から、当該日射相当の光の強度が高いときにのみ、熱線反射膜としての自己調光膜30,50付き複層ガラス100に日射相当の光を照射しながら測定された日射相当の光に対する反射率、特に赤外光反射率を向上させることができ、もって外部からの光の侵入を制限することができる複層ガラス100、いわゆるアクティブLow−Eの複層ガラスを提供することができるのが分かった。
【0099】
また、複層ガラス100において、日射相当の光の吸収率を測定した結果、上記反射率同様に、日射相当の光の強度が高いときにのみ、日射相当の光の吸収率、特に可視光吸収率を向上させることができるのが分かった。また、自己調光膜30,50は、外部からの光の強度が高いときに該光の透過を少なくとも5%遮断したので、外部からの光の強度に応じて確実に自己調光することができるのが分かった。
【0100】
これにより、自己調光膜30,50を備える複層ガラス100は、その光透過スペクトル特性が外部からの光の強度によって変化するので、夏季の日射光に含まれる赤外光の侵入を制限しながら曇天時や冬季等における日射の侵入を制限しないといったニーズに応えることができることが分かった。
【0101】
すなわち、複層ガラス100は、外部から光を受けて電子を放出する光触媒層35、又は光触媒層52,57と、光触媒層35、又は光触媒層52,57から放出された電子を捕捉する金属層32,33、又は金属層54,55とが透明ガラス板の面上に成膜された透明板用自己調光膜を備え、金属層32,33、又は金属層54,55が電子の作用及び外部からの光の強度に応じて酸化状態と還元状態を可逆的に呈したので、外部環境状況としての外部からの光の強度に応じて視界を遮蔽することなく自己調光することができるのが分かった。
【0102】
また、上記実施例では、図3のエネルギーダイヤグラムを有する実施例の試験片を作製したが、第3の実施の形態に係る自己調光膜70と同様の実施例の実験片を作製しても上記効果と同様の効果を奏することができるのが分かった。
【0103】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、上記目的を達成するために、請求項1記載の自己調光膜によれば、外部から光を受けて電子を放出する感光膜と、感光膜から放出された電子を捕捉する金属膜とが透明板の面上に成膜され、金属膜が電子の作用及び光の強度に応じて酸化状態と還元状態を可逆的に呈するので、外部環境状況としての外部からの光の強度に応じて視界を遮蔽することなく自己調光することができる。
【0104】
請求項2記載の自己調光膜によれば、感光膜が、光の強度が高いときに電子の放出を行うと共に、光の強度が低いときに電子の放出を行わない光触媒から成るので、光の強度が高いときに、金属膜は電子の捕捉を行って該電子の作用に応じて還元状態を呈して光の透過を妨げるようにすると共に、光の強度が低いときに、金属膜は電子を捕捉することがないので酸化状態を呈して光の透過を妨げないようにすることができる。
【0105】
請求項3記載の自己調光膜によれば、感光膜が光の反射を防止する作用を有するので、視界を遮蔽することを効果的になくすことができる。
【0106】
請求項4記載の自己調光膜によれば、感光膜は光を干渉する作用を有するので、光が複数回の光路を通過することができ、光の利用効率を高める効果、即ちエタロン効果を奏することができる。
【0107】
請求項5記載の自己調光膜によれば、感光膜が光を干渉する作用により色調整する作用を有するので、着色しても視界を遮蔽することを効果的になくすことができる。
【0108】
請求項6記載の自己調光膜によれば、感光膜は、TiO,TiN,TiON,ZnO,VO,WO,NbO,TaO,SnO,Fe,α−Fe,Inから成る感光体の群から選択された1つ以上の感光体、2つ以上の感光体が混合した混合物、及び2つ以上の感光体が化合した化合物のいずれかから成るので、選択された感光体又は化合物が有するエネルギーギャップに応じて外部からの光を吸収することができる。
【0109】
請求項7記載の自己調光膜によれば、電荷分離膜が感光膜における電荷分離を促進し、電子とホールの再結合を防止するので、外部環境状況としての外部からの光の強度に応じてより効率的に自己調光することができる。
【0110】
請求項8記載の自己調光膜によれば、電荷分離膜及び金属膜が感光膜を挟持するので、電荷分離膜は感光膜からのホールを捕捉すると共に、金属膜は感光膜からの電子を捕捉し、もって感光膜における電荷分離をより効率的に行うことができる。
【0111】
請求項9記載の自己調光膜によれば、電荷分離膜、感光膜、及び金属膜がサンドイッチ構造を成すので、層間の電荷授受を容易に行うことができる。
【0112】
請求項10記載の自己調光膜によれば、電荷分離膜の伝導帯のエネルギー準位が感光膜の伝導帯のエネルギー準位よりも高いので、電荷分離膜は感光膜からの電子エネルギー障壁となることができる。
【0113】
請求項11記載の自己調光膜によれば、電荷分離膜の価電子帯のエネルギー準位が感光膜の価電子帯のエネルギー準位よりも高いので、電荷分離膜は感光膜からのホールを容易に捕捉することができる。
【0114】
請求項12記載の自己調光膜によれば、電荷分離膜がZrO,Zn,Al,B,Ga,In等をドープしたTiO,Si,CdS,GaP,CdSe,KTaO,LiNbO,Si−C,Ru錯体,SiO,及びSrTiOのいずれかから成るので、電荷分離膜の伝導帯のエネルギー準位を感光膜の伝導帯のエネルギー準位よりも確実に高くすることができると共に、電荷分離膜の価電子帯のエネルギー準位を感光膜の価電子帯のエネルギー準位よりも確実に高くすることができる。
【0115】
請求項13記載の自己調光膜によれば、感光膜が外部からの光を吸収して電子を放出するので、外部からの光により確実に応じることができる。
【0116】
請求項14記載の自己調光膜によれば、吸収される光が紫外光から成るので、紫外光の透過を遮断することができる。
【0117】
請求項15記載の自己調光膜によれば、吸収される光が可視光を含むので、可視光の透過を遮断することができる。
【0118】
請求項16記載の自己調光膜によれば、光の強度が低いときに可視光の透過率が70〜90%であるので、感光膜は可視光を吸収するのを抑制することができる。
【0119】
請求項17記載の自己調光膜によれば、光の強度が高いときに可視光の透過率が50〜70%であるので、感光膜は可視光を吸収し、金属膜は電子を確実に捕捉することができる。
【0120】
請求項18記載の自己調光膜によれば、感光膜から放出された電子の捕捉を行った金属膜が外部からの光を反射することにより当該光の透過を遮断するので、外部からの光が含む熱が内部に侵入するのを制限することができる。
【0121】
請求項19記載の自己調光膜によれば、外部からの光が赤外光を含み、当該光の強度が高いときに当該赤外光の透過率が50%以下であるので、金属膜は感光膜から放出された電子を捕捉し、赤外光を確実に反射することができる。
【0122】
請求項20記載の自己調光膜によれば、外部からの光が赤外光を含み、当該光の強度が弱いときに当該赤外光の透過率が50〜70%であるので、赤外光を反射するのを抑制することができる。
【0123】
請求項21記載の自己調光膜によれば、金属膜に隣接する他の金属膜が感光膜から放出された電子を捕捉するので、他の金属膜が還元状態を呈して、他の金属膜の実効的な厚みを増大させることができ、外部からの光をより遮断することができる。
【0124】
請求項22記載の自己調光膜によれば、他の金属膜は、Zn,Sn,Inから成る遷移金属の群から選択された1つ以上の遷移金属単体、その化合物、及びその混合物のいずれかから成るか、又はY,Raから成る希土類金属の群から選択された1つ以上の希土類金属単体、その化合物、及びその混合物のいずれかから成るので、感光膜から放出された電子を容易に捕捉することができる。
【0125】
請求項23記載の自己調光膜によれば、感光膜と金属膜との間に介在する酸化金属膜が感光膜から放出された電子を捕捉するので、酸化金属膜を還元して単体金属にすることができ、もって、金属膜の実効的な厚みを増大させることができ、外部からの光をより遮断することができる。
【0126】
請求項25記載の自己調光膜によれば、金属膜が外部からの光の強度が高いときに当該光の透過率を少なくとも5%遮断するので、外部からの光の強度に応じて確実に自己調光することができる。
【0127】
請求項26記載の自己調光膜によれば、外部から光を受けてホールを放出する感光膜と、感光膜から放出されたホールを捕捉する金属膜とを備え、金属膜は、ホールの作用及び光の強度に応じて還元状態と酸化状態を可逆的に呈するので、外部環境状況としての外部からの光の強度に応じて視界を遮蔽することなく自己調光することができる。
【0128】
請求項27記載の自己調光膜によれば、感光膜が、光の強度が高いときにホールの放出を行うと共に、光の強度が低いときにホールの放出を行わない光触媒から成るので、光の強度が高いときに、金属膜はホールの捕捉を行って該ホールの作用に応じて酸化状態を呈して光の透過を妨げるようにすると共に、光の強度が低いときに、金属膜はホールを捕捉することがないので還元状態を呈して光の透過を妨げないようにすることができる。
【0129】
請求項28記載の自己調光膜によれば、感光膜が光の反射を防止する作用を有するので、視界を遮蔽することを効果的になくすことができる。
【0130】
請求項29記載の自己調光膜によれば、感光膜は光を干渉する作用を有するので、光が複数回の光路を通過することができ、光の利用効率を高める効果、即ちエタロン効果を奏することができる。
【0131】
請求項30記載の自己調光膜によれば、感光膜が光を干渉する作用により色調整する作用を有するので、着色しても視界を遮蔽することを効果的になくすことができる。
【0132】
請求項31記載の自己調光膜によれば、感光膜は、TiO,TiN,TiON,ZnO,VO,WO,NbO,TaO,SnO,Fe,α−Fe,Inから成る感光体の群から選択された1つ以上の感光体、2つ以上の感光体が混合した混合物、及び2つ以上の感光体が化合した化合物のいずれかから成るので、選択された感光体又は化合物が有するエネルギーギャップに応じて外部からの光を吸収することができる。
請求項32記載の自己調光膜によれば、電荷分離膜が感光膜における電荷分離を促進し、電子とホールの再結合を防止するので、外部環境状況としての外部からの光の強度に応じてより効率的に自己調光することができる。
【0133】
請求項33記載の自己調光膜によれば、電荷分離膜及び金属膜が感光膜を挟持するので、電荷分離膜は感光膜からの電子を捕捉すると共に、金属膜は感光膜からのホールを捕捉し、もって感光膜における電荷分離をより効率的に行うことができる。
【0134】
請求項34記載の自己調光膜によれば、電荷分離膜、感光膜、及び金属膜がサンドイッチ構造を成すので、層間の電荷授受を容易に行うことができる。
【0135】
請求項35記載の自己調光膜によれば、電荷分離膜の伝導帯のエネルギー準位が感光膜の伝導帯のエネルギー準位よりも低いので、電荷分離膜は感光膜からのホールのエネルギー障壁となることができる。
【0136】
請求項36記載の自己調光膜によれば、電荷分離膜の価電子帯のエネルギー準位が感光膜の価電子帯のエネルギー準位よりも低いので、電荷分離膜は感光膜からの電子を容易に捕捉することができる。
【0137】
請求項37記載の自己調光膜によれば、電荷分離膜は、ZrO,KTaO,SnO,SrTiO,及びSiOのいずれかから成るので、電荷分離膜の伝導帯のエネルギー準位を感光膜の伝導帯のエネルギー準位よりも確実に低くすることができると共に、電荷分離膜の価電子帯のエネルギー準位を感光膜の価電子帯のエネルギー準位よりも確実に低くすることができる。
【0138】
請求項38記載の自己調光膜によれば、感光膜が外部からの光を吸収してホールを放出するので、外部からの光により確実に応じることができる。
【0139】
請求項40記載の自己調光膜によれば、吸収される光が可視光を含むので、可視光の透過を増大させることができる。
【0140】
請求項41記載の自己調光膜によれば、光の強度が低いときに可視光の透過率が50%以下であるので、感光膜は可視光が透過するのを抑制することができる。
【0141】
請求項42記載の自己調光膜によれば、光の強度が高いときに可視光の透過率が50〜70%であるので、感光膜は可視光を確実に透過することができる。
【0142】
請求項43記載の自己調光膜によれば、感光膜から放出されたホールの捕捉を行った金属膜が当該光の透過を増加するので、夜間におけるミラー作用を増大することができる。
【0143】
請求項44記載の自己調光膜によれば、外部からの光は赤外光を含み、当該光の強度が高いときは、当該赤外光の透過率が50%〜70%であり、金属膜は光触媒から放出されたホールを捕捉し、当該酸化状態を呈する金属膜により赤外光を確実に透過することができる。
【0144】
請求項45記載の自己調光膜によれば、外部からの光は赤外光を含み、当該光の強度が低いときは、当該赤外光の透過率が50%以下であり、金属膜は還元状態を呈し、赤外光を透過するのを抑制することができる。
【0145】
請求項46記載の自己調光膜によれば、金属膜に隣接する他の金属膜が感光膜から放出されたホールを捕捉するので、他の金属膜が酸化状態を呈して、他の金属膜の実効的な厚みを減少させることができ、外部からの光をより透過することができる。
【0146】
請求項47記載の自己調光膜によれば、他の金属膜は、Zn,Sn,Inから成る遷移金属の群から選択された1つ以上の遷移金属単体、その化合物、及びその混合物のいずれかから成るか、又はY,Raから成る希土類金属の群から選択された1つ以上の希土類金属単体、その化合物、及びその混合物のいずれかから成るので、感光膜から放出されたホールを容易に捕捉することができる。
【0147】
請求項48記載の自己調光膜によれば、感光膜と金属膜との間に介在する酸化金属膜が感光膜から放出されたホールを捕捉するので、酸化金属膜中の単体金属は酸化状態を呈して、金属膜の実効的な厚みを減少させることができ、外部からの光をより透過することができる。
【0148】
請求項50記載の自己調光膜によれば、金属膜が外部からの光の強度が高いときに当該光の透過率を少なくとも5%増加するので、外部からの光の強度に応じて確実に自己調光することができる。
【0149】
請求項51記載の自己調光膜付き透明基体によれば、請求項1乃至50のいずれか1項に記載の自己調光膜を有するので、外部環境状況に応じて視界を遮蔽することがなく自己調光するものを提供することができる。
【0150】
請求項52記載の自己調光膜付き透明基体によれば、自己調光膜が窓ガラスに形成されるので、建築用窓ガラスや自動車用窓ガラス等の産業上の分野において利用することができる。
【0151】
請求項53記載の自己調光膜付き透明基体によれば、室内側ガラス板と、該室内側ガラス板に対向し、間に中空部を画成する室外側ガラス板とを備える複層ガラスから成る窓ガラスが室内側ガラス板及び室外側ガラス板の一方のガラス板の中空部側面上に形成された自己調光膜であるので、自己調光膜の劣化や腐蝕等を起こりにくくすることができる。
【0152】
請求項54記載の自己調光膜付き透明基体によれば、室内側ガラス板の中空部側面上に自己調光膜が形成されたので、自己調光膜の劣化や腐蝕等を起こりにくくすることができる。また、自己調光膜が外部からの光に含まれている熱線を吸収しても内部に該熱線の熱を放出することを防止することができる。
【0153】
請求項55記載の自己調光膜付き透明基体によれば、光スイッチ、光ヒューズ、及び光アテニュエイターのいずれか1つを構成するので、光機器や電子機器等の産業上の分野において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る透明基体用自己調光膜を備える自己調光膜付き透明基体の断面図である。
【図2】図1における自己調光膜30の断面図である。
【図3】図2における金属層32,33、光触媒層35、及び電荷分離層36のエネルギーダイヤグラムを表す図である。
【図4】図2の自己調光膜30の変形例の断面図である。
【図5】図2の自己調光膜30の他の変形例の断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る自己調光膜の断面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る自己調光膜の断面図である。
【図8】図7における金属層72,73、光触媒層75、及び電荷分離層76のエネルギーダイヤグラムを表す図である。
【符号の説明】
15 中空部
20 室外側ガラス板
30,50,70 自己調光膜
32 金属層
33 金属層
34 犠牲金属層
35 光触媒層
36 電荷分離層
40 ガスバリア層
100 複層ガラス

Claims (55)

  1. 透明基体の面上に成膜された透明基体用自己調光膜において、外部から光を受けて電子を放出する感光膜と、前記感光膜から放出された電子を捕捉する金属膜とを備え、前記金属膜は、前記電子の作用及び前記光の強度に応じて酸化状態と還元状態を可逆的に呈することを特徴とする自己調光膜。
  2. 前記感光膜は、前記光の強度が高いときに前記電子の放出を行うと共に、前記光の強度が低いときに前記電子の放出を行わない光触媒から成ることを特徴とする請求項1記載の自己調光膜。
  3. 前記感光膜は前記光の反射を防止する作用を有することを特徴とする請求項2記載の自己調光膜。
  4. 前記感光膜は前記光を干渉する作用を有することを特徴とする請求項2又は3記載の自己調光膜。
  5. 前記感光膜は、前記光を干渉する作用により色調整する作用を有することを特徴とする請求項4記載の自己調光膜。
  6. 前記感光膜は、TiO,TiN,TiON,ZnO,VO,WO,NbO,TaO,SnO,Fe,α−Fe,Inから成る感光体の群から選択された1つ以上の感光体、2つ以上の感光体が混合した混合物、及び2つ以上の感光体が化合した化合物のいずれかから成ることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  7. 前記感光膜における電荷分離を促進し、電子とホールの再結合を防止する電荷分離膜を備えることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  8. 前記電荷分離膜及び前記金属膜は、前記感光膜を挟持することを特徴とする請求項7記載の自己調光膜。
  9. 前記電荷分離膜、前記感光膜、及び前記金属膜は、サンドイッチ構造を成すことを特徴とする請求項7又は8記載の自己調光膜。
  10. 前記電荷分離膜は、その伝導帯のエネルギー準位が前記感光膜の伝導帯のエネルギー準位よりも高いことを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  11. 前記電荷分離膜は、その価電子帯のエネルギー準位が前記感光膜の価電子帯のエネルギー準位よりも高いことを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  12. 前記電荷分離膜はZrO,Zn,Al,B,Ga,In等をドープしたTiO,Si,CdS,GaP,CdSe,KTaO,LiNbO,Si−C,Ru錯体,SiO,及びSrTiOのいずれかから成ることを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  13. 前記感光膜は前記電子の放出を前記光を吸収することにより行うことを特徴とする請求項2乃至12のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  14. 前記吸収される光は紫外光から成ることを特徴とする請求項13記載の自己調光膜。
  15. 前記吸収される光は可視光を含むことを特徴とする請求項13又は14記載の自己調光膜。
  16. 前記光の強度が低いときは、前記可視光の透過率が70〜90%であることを特徴とする請求項15記載の自己調光膜。
  17. 前記光の強度が高いときは、前記可視光の透過率が50〜70%であることを特徴とする請求項15又は16記載の自己調光膜。
  18. 前記感光膜から放出された電子の捕捉を行った金属膜は、前記光の透過を遮断することを特徴とする請求項2乃至17のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  19. 前記光は赤外光を含み、当該光の強度が高いときは、当該赤外光の透過率が50%以下であることを特徴とする請求項18記載の自己調光膜。
  20. 前記光は赤外光を含み、当該光の強度が低いときは、当該赤外光の透過率が50〜70%であることを特徴とする請求項18又は19記載の自己調光膜。
  21. 前記金属膜に隣接する他の金属膜を備え、当該他の金属膜は、前記感光膜から放出された電子を捕捉することを特徴とする請求項1乃至20のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  22. 前記他の金属膜は、Zn,Sn,Inから成る遷移金属の群から選択された1つ以上の遷移金属単体、その化合物、及びその混合物のいずれかから成るか、又はY,Raから成る希土類金属の群から選択された1つ以上の希土類金属単体、その化合物、及びその混合物のいずれかから成ることを特徴とする請求項21記載の自己調光膜。
  23. 前記感光膜と金属膜との間に介在する酸化金属膜を備え、当該酸化金属膜は、前記感光膜から放出された電子を捕捉することを特徴とする請求項1乃至22のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  24. 前記金属膜は、Ag,Pt,Pd,Au,Cuから成る貴金属の群から選択された1つ以上の貴金属単体、その化合物、及びその混合物のいずれかから成ることを特徴とする請求項1乃至23のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  25. 前記光の強度が高いときに、当該光の透過率を少なくとも5%遮断することを特徴とする請求項1乃至24のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  26. 透明基体の面上に成膜された透明基体用自己調光膜において、外部から光を受けてホールを放出する感光膜と、前記感光膜から放出されたホールを捕捉する金属膜とを備え、前記金属膜は、前記ホールの作用及び前記光の強度に応じて還元状態と酸化状態を可逆的に呈することを特徴とする自己調光膜。
  27. 前記感光膜は、前記光の強度が高いときに前記ホールの放出を行うと共に、前記光の強度が低いときに前記ホールの放出を行わない光触媒から成ることを特徴とする請求項26記載の自己調光膜。
  28. 前記感光膜は前記光の反射を防止する作用を有することを特徴とする請求項27記載の自己調光膜。
  29. 前記感光膜は前記光を干渉する作用を有することを特徴とする請求項27又は28記載の自己調光膜。
  30. 前記感光膜は、前記光を干渉する作用により色調整する作用を有することを特徴とする請求項29記載の自己調光膜。
  31. 前記感光膜は、TiO,TiN,TiON,ZnO,VO,WO,NbO,TaO,SnO,Fe,α−Fe,Inから成る感光体の群から選択された1つ以上の感光体、2つ以上の感光体が混合した混合物、及び2つ以上の感光体が化合した化合物のいずれかから成ることを特徴とする請求項27乃至30のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  32. 前記感光膜における電荷分離を促進し、電子とホールの再結合を防止する電荷分離膜を備えることを特徴とする請求項27乃至31のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  33. 前記電荷分離膜及び前記金属膜は、前記感光膜を挟持することを特徴とする請求項32記載の自己調光膜。
  34. 前記電荷分離膜、前記感光膜、及び前記金属膜は、サンドイッチ構造を成すことを特徴とする請求項32又は33記載の自己調光膜。
  35. 前記電荷分離膜は、その伝導帯のエネルギー準位が前記感光膜の伝導帯のエネルギー準位よりも低いことを特徴とする請求項32乃至34のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  36. 前記電荷分離膜は、その価電子帯のエネルギー準位が前記感光膜の価電子帯のエネルギー準位よりも低いことを特徴とする請求項32乃至35のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  37. 前記電荷分離膜は、ZrO,KTaO,SnO,SrTiO,及びSiOのいずれかから成ることを特徴とする請求項32乃至36のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  38. 前記感光膜は前記ホールの放出を前記光を吸収することにより行うことを特徴とする請求項27乃至37のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  39. 前記吸収される光は紫外光から成ることを特徴とする請求項38記載の自己調光膜。
  40. 前記吸収される光は可視光を含むことを特徴とする請求項38又は39記載の自己調光膜。
  41. 前記光の強度が低いときは、前記可視光の透過率が50%以下であることを特徴とする請求項40記載の自己調光膜。
  42. 前記光の強度が高いときは、前記可視光の透過率が50〜70%であることを特徴とする請求項40又は41記載の自己調光膜。
  43. 前記感光膜から放出されたホールの捕捉を行った金属膜は、前記光の透過を増加させることを特徴とする請求項27乃至42のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  44. 前記光は赤外光を含み、当該光の強度が高いときは、当該赤外光の透過率が50%〜70%であることを特徴とする請求項43記載の自己調光膜。
  45. 前記光は赤外光を含み、当該光の強度が低いときは、当該赤外光の透過率が50%以下であることを特徴とする請求項43又は44記載の自己調光膜。
  46. 前記金属膜に隣接する他の金属膜を備え、当該他の金属膜は、前記感光膜から放出されたホールを捕捉することを特徴とする請求項26乃至45のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  47. 前記他の金属膜は、Zn,Sn,Inから成る遷移金属の群から選択された1つ以上の遷移金属単体、その化合物、及びその混合物のいずれかから成るか、又はY,Raから成る希土類金属の群から選択された1つ以上の希土類金属単体、その化合物、及びその混合物のいずれかから成ることを特徴とする請求項46記載の自己調光膜。
  48. 前記感光膜と金属膜との間に介在する酸化金属膜を備え、当該酸化金属膜は、前記感光膜から放出されたホールを捕捉することを特徴とする請求項26乃至47のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  49. 前記金属膜は、Ag,Pt,Pd,Au,Cuから成る貴金属の群から選択された1つ以上の貴金属単体、その化合物、及びその混合物のいずれかから成ることを特徴とする請求項26乃至48のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  50. 前記光の強度が高いときに、当該光の透過率を少なくとも5%増加させることを特徴とする請求項26乃至50のいずれか1項に記載の自己調光膜。
  51. 請求項1乃至50のいずれか1項に記載の自己調光膜を有することを特徴とする自己調光膜付き透明基体。
  52. 前記自己調光膜は窓ガラスに形成されることを特徴とする請求項51記載の自己調光膜付き透明基体。
  53. 前記窓ガラスは、室内側ガラス板と、該室内側ガラス板に対向し、間に中空部を画成する室外側ガラス板とを備える複層ガラスから成り、前記自己調光膜は前記室内側ガラス板及び前記室外側ガラス板の一方のガラス板の中空部側面上に形成されることを特徴とする請求項52記載の自己調光膜付き透明基体。
  54. 前記一方のガラス板は前記室外側ガラス板であることを特徴とする請求項53記載の自己調光膜付き透明基体。
  55. 光スイッチ、光ヒューズ、及び光アテニュエイターのいずれか1つを構成することを特徴とする請求項51記載の自己調光膜付き透明基体。
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