JP2004173704A - 滅菌方法 - Google Patents

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Tomoo Okubo
友雄 大久保
Shigeki Ito
茂樹 伊藤
Yoshiyuki Abe
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Abstract

【課題】被処理体を損ねることなく、低コストでかつ安全に、滅菌効果を高めることができる滅菌方法を提供する。
【解決手段】大気圧プラズマ発生装置内の高圧電極1と低圧電極2との間で大気圧プラズマを発生させ、その大気圧プラズマにより被処理体Gの表面を滅菌する。その大気圧プラズマに用いるガスは、ヘリウム,ネオン,アルゴン,クリプトン,キセノン,ラドンおよび窒素からなる不活性ガス群から選ばれる少なくとも一つを主成分とし、それにエチレンおよび酸素が含有されている混合ガスを用いる。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気圧プラズマによる滅菌方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から行われている主な滅菌方法としては、下記の▲1▼〜▲3▼があげられる。
▲1▼酸化エチレンガス等の殺菌剤を用いる方法。
▲2▼ガンマ線や紫外線等を照射する方法。
▲3▼真空プラズマによる方法。
【0003】
しかしながら、上記▲1▼の方法では、酸化エチレンガス等の殺菌剤が有毒であるため、作業性が悪く、作業環境の管理等にコストがかかる。また、上記▲2▼の方法では、ガンマ線や紫外線等により、被処理体が脆くなったり変色したりして、被処理体を損ねてしまう。また、上記▲3▼の方法では、真空設備が必要となるため、処理設備自体が大型化になり、コストがかかる。
【0004】
そこで、被処理体を損ねることなく、低コストでかつ安全に処理するようにするために、大気圧プラズマにより滅菌処理する方法が考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、単にヘリウムやアルゴン等の不活性ガスを用いた通常の大気圧プラズマでは、滅菌効果が不充分である。そこで、滅菌効果が高くなる大気圧プラズマによる滅菌方法が要求されている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、被処理体を損ねることなく、低コストでかつ安全に、滅菌効果を高めることができる滅菌方法の提供をその目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の滅菌方法は、電極の間で大気圧プラズマを発生させその大気圧プラズマにより被処理体を滅菌処理する滅菌方法であって、大気圧プラズマに用いるガスとして、ヘリウム,ネオン,アルゴン,クリプトン,キセノン,ラドンおよび窒素からなる群から選ばれる少なくとも一つを主成分とし、それにエチレンおよび酸素が含有されている混合ガスを用いるという構成をとる。
【0008】
本発明者らは、被処理体を損ねることなく、低コストでかつ安全に、滅菌効果を高めるようにすべく、滅菌方法について、鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、大気圧プラズマにより滅菌処理すればよいと着想し、さらに鋭意研究を重ねた。その結果、大気圧プラズマに用いるガスとして、ヘリウム,ネオン,アルゴン,クリプトン,キセノン,ラドンおよび窒素からなる群から選ばれる少なくとも一つを主成分とし、それにエチレンおよび酸素が含有されている混合ガスを用いれば、高い滅菌効果を示すことを見出し、本発明に到達した。
【0009】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0010】
図1は、本発明の滅菌方法の一実施の形態を示している。この実施の形態では、滅菌処理する被処理体Gを大気圧プラズマ発生装置内に配置し、その装置内で大気圧プラズマを発生させ、その大気圧プラズマにより、上記被処理体Gの表面を滅菌処理するようにしている。そして、大気圧プラズマに用いるガスは、ヘリウム,ネオン,アルゴン,クリプトン,キセノン,ラドンおよび窒素からなる不活性ガス群から選ばれる少なくとも一つを主成分とし、それにエチレンおよび酸素が含有されている混合ガスを用いる。
【0011】
より詳しく説明すると、上記大気圧プラズマ発生装置は、空間をあけて対向する高圧電極1と低圧電極2とを一組とする電極を備えており、その高圧電極1と低圧電極2の間の空間の少なくとも一部に上記被処理体Gを配置できるようになっている。また、上記大気圧プラズマ発生装置は、上記混合ガスを充填する流入口3とそれに用いたガスを排出する流出口4とを備えている。
【0012】
上記混合ガスにおいて、主成分となるヘリウムやアルゴン等の上記不活性ガスは、大気圧プラズマが安定する点で、70容量%以上であることが好ましく、より好ましくは、90容量%以上である。また、上記混合ガスにおいては、滅菌効果がより高くなる点で、エチレンの含有率が、0.5〜20容量%の範囲、酸素の含有率が、0.2〜10容量%の範囲、残りが上記不活性ガスであることが好ましく、より好ましくは、容量比が、不活性ガス:エチレン:酸素=100:2:1の場合である。
【0013】
上記被処理体Gは、特に限定されるものではなく、例えば、日用品,医療器具,衣服等があげられる。
【0014】
滅菌処理の対象となる菌も、特に限定されるものではなく、例えば、枯草菌,MRSA,黄色ぶどう球菌,肺炎桿菌,大腸菌,緑濃菌等があげられる。
【0015】
そして、上記被処理体Gは、例えば、つぎのようにして滅菌処理することができる。すなわち、まず、1個の被処理体Gを取り出し、必要に応じて、その被処理体Gの表面にエアーを吹き付ける等して、被処理体Gの表面の塵埃等を除去する。ついで、被処理体Gを上記大気圧プラズマ発生装置の高圧電極1と低圧電極2の間の空間に配置し、上記混合ガスを充填する。そして、上記高圧電極1と低圧電極2の間に電圧を印加し、大気圧プラズマを発生させる。このようにして、上記被処理体Gを滅菌処理することができる。
【0016】
上記大気圧プラズマの発生において、高圧電極1と低圧電極2の間に印加する電圧は、大気圧プラズマが発生すれば、特に限定されるものではないが、通常、1kV〜10kVの範囲である。また、その電源の周波数も、大気圧プラズマが発生すれば、特に限定されるものではないが、通常、1kHz〜50kHzの範囲である。また、印加する電圧の波形も、特に限定されるものではなく、正弦波,三角波,矩形波,パルス等でもよいが、通常は、上記正弦波である。
【0017】
また、滅菌効果は、大気圧プラズマを発生させる時間(滅菌処理する時間)が長い程、高くなる傾向にあるため、その時間は、必要とされる滅菌効果に応じて、適宜設定されるが、通常、1〜60分の範囲である。滅菌効果が高くなる点では、5分以上が好ましく、より好ましくは10分以上である。
【0018】
このようにして、上記混合ガスを用いて、被処理体Gを大気圧プラズマにより滅菌処理すると、単にヘリウムやアルゴン等の不活性ガスを用いた通常の大気圧プラズマによる滅菌処理よりも、滅菌効果が高くなる。
【0019】
このように滅菌効果が高くなる理由は、明確ではないが、エチレンと酸素とが、大気圧プラズマの作用により、酸化エチレンガス(殺菌剤)のように作用するためであると考えられる。また、エチレンと酸素の濃度を制御することにより、酸化エチレンガスの生成を極限に抑えることができるが、酸化エチレンガスの万一の発生に備えて、上記大気圧プラズマ発生装置における流出口4には、排出されたガスを水に吸収させる装置や燃焼させる装置等を設けてもよい。
【0020】
また、大気圧プラズマ中には、紫外線よりも高エネルギーのエキシマ光が発生したり、高エネルギーの電子やラジカルが発生したりするため、これらが上記滅菌効果に大きく寄与している。
【0021】
上記実施の形態では、大気圧プラズマによる滅菌処理は、対向する高圧電極1と低圧電極2の間に被処理体Gを配置するようにしたが、これに限定されるものではなく、電極間で発生させた大気圧プラズマをガス流や電界配置や磁気の作用により電極間の外側に配置されている被処理体Gの表面の所定の部分に吹き出す方法(リモートプラズマ)で滅菌処理してもよい。
【0022】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0023】
【実施例1】
上記実施の形態と同様にして、被処理体Gを大気圧プラズマにより滅菌処理した。この滅菌処理において、被処理体Gは、枯草菌が6.0×10個接種された濾紙を用い、石英板を介して低圧電極2の表面に載置した。また、大気圧プラズマに用いるガスは、容量比が、ヘリウム:アルゴン:エチレン:酸素=50:50:2:1の混合ガスを用いた。そして、電源として、周波数が5kHzの交流電源を用い、高圧電極1と低圧電極2の間に3kVの電圧を印加し、投入電力を200Wとし、大気圧プラズマによる滅菌処理を30分間行った。
【0024】
【比較例1】
大気圧プラズマに用いるガスとして、容量比が、ヘリウム:アルゴン=50:50の混合ガスを用いた。それ以外は上記実施例1と同様にした。
【0025】
【比較例2】
大気圧プラズマに用いるガスとして、容量比が、ヘリウム:アルゴン:酸素=50:50:1の混合ガスを用いた。それ以外は上記実施例1と同様にした。
【0026】
【比較例3】
大気圧プラズマに用いるガスとして、容量比が、ヘリウム:アルゴン:エチレン=50:50:1の混合ガスを用いた。それ以外は上記実施例1と同様にした。
【0027】
〔生菌数の測定〕
そして、上記実施例1および比較例1〜3による各滅菌処理において、滅菌開始から5分,10分,30分の時点の生菌数を測定した。その結果を図2に示した。
【0028】
図2に示す結果から、実施例1により滅菌処理は、比較例1〜3による滅菌処理よりも、滅菌効果が高いことがわかる。特に、滅菌時間が10分以上では、滅菌効果の差が顕著になる。
【0029】
【発明の効果】
以上のように、本発明の滅菌方法によれば、電極の間で大気圧プラズマを発生させその大気圧プラズマにより被処理体を滅菌処理する滅菌方法であって、大気圧プラズマに用いるガスとして、ヘリウム,ネオン,アルゴン,クリプトン,キセノン,ラドンおよび窒素からなる群から選ばれる少なくとも一つを主成分とし、それにエチレンおよび酸素が含有されている混合ガスを用いるため、高い滅菌効果を示す。
【0030】
特に、本発明の滅菌方法において、混合ガスにおけるエチレンの含有率が、0.5〜20容量%の範囲、酸素の含有率が、0.2〜10容量%の範囲、残りがヘリウム,ネオン,アルゴン,クリプトン,キセノン,ラドンおよび窒素からなる群から選ばれる少なくとも一つである場合には、より高い滅菌効果を示す。
【0031】
さらに、混合ガスにおけるヘリウム,ネオン,アルゴン,クリプトン,キセノン,ラドンおよび窒素からなる群から選ばれる少なくとも一つと、エチレンと、酸素の容量比が、100:2:1である場合には、さらに高い滅菌効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の滅菌方法の一実施の形態を示す説明図である。
【図2】上記滅菌方法の実施例の結果を示すグラフ図である。
【符号の説明】
1 高圧電極
2 低圧電極
G 被処理体

Claims (3)

  1. 電極の間で大気圧プラズマを発生させその大気圧プラズマにより被処理体を滅菌処理する滅菌方法であって、大気圧プラズマに用いるガスとして、下記(A)を主成分とし、それに下記(B)および(C)が含有されている混合ガスを用いることを特徴とする滅菌方法。
    (A)ヘリウム,ネオン,アルゴン,クリプトン,キセノン,ラドンおよび窒素からなる群から選ばれる少なくとも一つ。
    (B)エチレン。
    (C)酸素。
  2. 混合ガスにおける上記(B)の含有率が、0.5〜20容量%の範囲、上記(C)の含有率が、0.2〜10容量%の範囲、残りが上記(A)である請求項1記載の滅菌方法。
  3. 混合ガスにおける上記(A):(B):(C)の容量比が、100:2:1である請求項1または2記載の滅菌方法。
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