JP2004173687A - スクリーニング方法 - Google Patents

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孝徳 松尾
Hiroko Tsuge
裕子 柘植
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Abstract

【課題】 腎疾患や糖尿病などの予防・治療薬をスクリーニングするための方法を提供する。
【解決手段】 (i)ヒト由来TGF−BStimulated Clone−22蛋白質(TSC−22)と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩;あるいは(ii)上記TSC−22と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその部分ペプチドをコードするヌクレオチド:を用いることを特徴とする、該蛋白質またはその塩が関連する疾患、例えば、腎疾患または糖尿病の予防・治療物質のスクリーニング方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、Transforming Growth Factor-β Stimulated Clone-22(以下、TSC−22と略称する)、それをコードするポリヌクレオチドあるいはそれに対する抗体等の新規用途、特にTSC−22またはそれをコードするポリヌクレオチドを用いた腎疾患等の予防・治療薬のスクリーニング方法などに関する。
現在、腎疾患の治療薬としては、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤などが用いられているが、これらの薬剤は腎血行動態に影響を及ぼすために、高度の腎機能低下患者には適用できないという欠点を有する。従って、かかる副作用のない新規な腎疾患予防・治療薬の開発が切望されている。
あらゆる腎疾患は末期腎不全に至る過程で腎線維化を伴う。腎線維化において中心的役割を果たす因子としてトランスフォーミング成長因子−β(以下、TGF−βと略称する)が挙げられる。糸球体腎炎ラットモデルに、TGF−βの内因性中和因子であるデコリン、抗TGF−β抗体またはTGF−βのアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与すると、細胞外マトリックス(ECM)産生が顕著に阻害され、糸球体硬化の進展が抑制されることが報告されている。また、TGF−β遺伝子のインビボ導入によりECMの蓄積が起こり、糸球体腎炎が誘発されることが知られている。
TGF−βは、そのレセプターからSmadと総称される細胞内シグナル伝達因子を介して種々の標的遺伝子の転写を調節することにより、多様な生理活性を実現している。従って、TGF−βシグナル伝達系のさらに下流に位置する分子が腎機能低下進展作用の実体をなしている可能性がある。
TSC−22は、TGF−β刺激に応答する遺伝子の1つとして、マウス骨芽細胞株から最初に単離されたロイシンジッパー(LZ)ドメインを有する蛋白質をコードする遺伝子であり(非特許文献1)、そのヒトホモログは144アミノ酸からなる蛋白質をコードする(ヒト−マウス(ラット)間のホモロジーは、アミノ酸レベルで約99%の同一性である;非特許文献2)。TSC−22蛋白質は、転写制御因子にしばしば見られるLZドメインを持つが、既知のDNA結合領域(塩基性アミノ酸領域、ヘリックス−ループ−ヘリックス(HLH)モチーフなど)を欠くため、転写抑制因子として働くことが予測されているが、C型ナトリウム利尿性ペプチド遺伝子のGCエレメントに結合してその転写を促進するとの報告もあり(非特許文献3)、その生理的機能については未だよく理解されていない。
ジャーナル・オヴ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.),第267巻(第15号),1992年5月25日,p.10219−24 バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーション(Biochem. Biophys. Res. Commun.),第222巻(第3号),1996年5月24日,p.821−6 ヨーロピアン・ジャーナル・オヴ・バイオケミストリー(Eur. J. Biochem.),第242巻(第3号),1996年,p.460−6
本発明の目的は、優れた効果を奏しかつ副作用のない、腎疾患等の予防・治療薬を開発する上で不可欠の、当該予防・治療薬として有用な物質を探索するのに好適な新規スクリーニング方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、各種の腎疾患モデル動物における腎TSC−22の発現が、特に糸球体上皮細胞や尿細管上皮細胞において顕著に増加していることを初めて見出し、さらに、腎疾患モデル動物における腎TSC−22の発現を抑制することによって、腎疾患の治療効果が得られることを初めて見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1] 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法;
[2] 配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法;
[3] 疾患が糖尿病または腎疾患である上記[1]記載のスクリーニング方法;
[4] 疾患が糖尿病性腎症である上記[1]記載のスクリーニング方法;
[5] 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を産生する能力を有する細胞を被験物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下における該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の生産量を比較することを特徴とする、上記[1]記載のスクリーニング方法;
[6] (a) 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を産生する能力を有する細胞、並びに(b) 該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩が結合し得るポリヌクレオチドおよび該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩と相互作用し得る転写制御因子からなる群より選択される物質を含んでなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング用キット;
[7] 被験物質の存在下および非存在下における、配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を比較することを特徴とする、上記[1]記載のスクリーニング方法;
[8] (a) 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩、並びに(b) 該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩が結合し得るポリヌクレオチドあるいは該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩と相互作用し得る転写制御因子を含んでなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング用キット;
[9] 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩により発現が制御される遺伝子を含有する細胞および該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を、被験物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下における該遺伝子の発現を比較することを特徴とする、上記[7]記載のスクリーニング方法;
[10] (a) 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩により発現が制御される遺伝子を含有する細胞、(b) 該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩、並びに(c) 該遺伝子とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを含んでなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング用キット;
[11] 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を産生する能力を有する細胞を被験物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下における該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を比較することを特徴とする、上記[7]記載のスクリーニング方法;
[12] (a) 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を産生する能力を有する細胞、並びに(b) 該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩により発現が制御される遺伝子とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを含んでなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング用キット;
[13] 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを用いることを特徴とする、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法;
[14] 配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを用いることを特徴とする、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法;
[15] ポリヌクレオチドが配列番号:1で表される塩基配列の全部または一部を含有する上記[14]記載のスクリーニング方法;
[16] 疾患が糖尿病または腎疾患である上記[14]記載のスクリーニング方法;
[17] 疾患が糖尿病性腎症である上記[14]記載のスクリーニング方法;
[18] 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を産生する能力を有する細胞を被験物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下における該蛋白質またはその部分ペプチドをコードするmRNAの量を比較することを特徴とする、上記[14]記載のスクリーニング方法;
[19] (a) 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を産生する能力を有する細胞、並びに(b) 該蛋白質またはその部分ペプチドをコードするmRNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを含んでなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング用キット;
[20] 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療薬;
[21] 疾患が糖尿病または腎疾患である上記[20]記載の予防・治療薬;
[22] 疾患が糖尿病性腎症である上記[20]記載の予防・治療薬;
[23] 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列と相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを含有してなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療薬;
[24] 疾患が糖尿病または腎疾患である上記[23]記載の予防・治療薬;
[25] 疾患が糖尿病性腎症である上記[23]記載の予防・治療薬;
[26] 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の診断薬;
[27] 疾患が糖尿病または腎疾患である上記[26]記載の診断薬;
[28] 疾患が糖尿病性腎症である上記[26]記載の診断薬;
[29] 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを含有してなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の診断薬;
[30] 疾患が糖尿病または腎疾患である上記[29]記載の診断薬;
[31] 疾患が糖尿病性腎症である上記[29]記載の診断薬;
[32] TSC−22抑制薬を含有してなる糖尿病または腎疾患の予防・治療薬;
[33] 腎疾患が糖尿病性腎症である上記[32]記載の予防・治療薬;
[34] 哺乳動物にTSC−22抑制薬を投与することを特徴とする、該哺乳動物における糖尿病または腎疾患の予防または治療方法;
[35] 腎疾患が糖尿病性腎症である上記[34]記載の方法;
[36] 糖尿病または腎疾患の予防・治療薬を製造するための、TSC−22抑制薬の使用;
[37] 腎疾患が糖尿病性腎症である上記[36]記載の使用などに関する。
本発明のスクリーニング法によれば、優れた効果を有し、かつ、副作用のない腎疾患や糖尿病などの予防・治療薬をスクリーニングすることができる。
本発明において、配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質(以下、「本発明の蛋白質」と略記することがある)は、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)の細胞(例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来する蛋白質であってよく、また、化学合成もしくは無細胞翻訳系で合成された蛋白質であってもよい。あるいは上記アミノ酸配列をコードする塩基配列を有するポリヌクレオチドを導入された形質転換体から産生された組換え蛋白質であってもよい。
配列番号:2で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:2で表されるアミノ酸配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、特に好ましくは約95%以上、最も好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
配列番号:2で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質としては、例えば、前記の配列番号:2で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性を有する蛋白質などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、インスリン遺伝子等の転写制御活性などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの性質が性質的に(例、生理学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。したがって、転写制御活性が同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.1〜10倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度、蛋白質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
転写制御活性の測定は、公知の方法、例えば、標的遺伝子についてのノーザン解析やゲルシフトアッセイ等を用いて行うことができる。あるいは、本発明の蛋白質の活性は、その細胞内局在性を用いた方法、例えば、細胞質から核への移行度を調べることによっても評価することができる。
また、本発明の蛋白質としては、例えば、(i)配列番号:2で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:2で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有する蛋白質などのいわゆるムテインも含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置は、蛋白質の活性が保持される限り特に限定されない。
本発明の蛋白質は、好ましくは、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有する蛋白質、すなわちヒトTSC−22蛋白質または他の哺乳動物におけるそのホモログである。
本明細書における蛋白質は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質をはじめとする、本発明の蛋白質は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルなどのC1−6アルキル基;例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基;例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基;例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基;α−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基;ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
本発明の蛋白質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明の蛋白質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明の蛋白質には、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイルなどのC1−6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども含まれる。
本発明の蛋白質の部分ペプチド(以下、単に「本発明の部分ペプチド」と略称する場合もある)としては、上記した本発明の蛋白質の部分アミノ酸配列を有するペプチドであり、且つ本発明の蛋白質と実質的に同質の活性を有する限り、何れのものであってもよいが、例えば、配列番号:2で表されるアミノ酸配列のうち、LZドメインおよびそのアミノ末端側に隣接する保存領域(TSCボックス)を含む部分アミノ酸配列を有するものなどが用いられる。
本発明の部分ペプチドのアミノ酸の数は、本発明の蛋白質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも30個以上、好ましくは60個以上、より好ましくは100個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが好ましい。
ここで「実質的に同質の活性」とは上記と同意義を示す。また、「実質的に同質の活性」の測定は上記と同様に行なうことができる。
また、本発明の部分ペプチドはC末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。ここでエステルにおけるRとしては、本発明の蛋白質について前記したと同様のものが挙げられる。本発明の部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明の部分ペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明の部分ペプチドには、上記した本発明の蛋白質と同様に、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したGlnがピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
本発明の蛋白質またはその部分ペプチドの塩としては、酸または塩基との生理学的に許容される塩が挙げられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明の蛋白質またはその塩は、前述した哺乳動物の細胞または組織から自体公知の蛋白質の精製方法によって製造することができる。具体的には、哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズし、可溶性画分および/または核画分を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー等で分離精製することによって、本発明の蛋白質またはその塩を製造することができる。
本発明の蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩(以下、「本発明の蛋白質等」と包括的に略記する場合がある)は、公知のペプチド合成法に従って製造することもできる。
ペプチド合成法は、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。本発明の蛋白質を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合し、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とする蛋白質を製造することができる。
ここで、縮合や保護基の脱離は、自体公知の方法、例えば、以下の(i)〜(v)に記載された方法に従って行われる。
(i)M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド・シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
(ii)SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
(iii)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
(iv)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 蛋白質の化学IV、 205、(1977年)
(v)矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
このようにして得られた蛋白質は、公知の精製法により精製単離することができる。ここで、精製法としては、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶、これらの組み合わせなどが挙げられる。
上記方法で得られる蛋白質が遊離体である場合には、該遊離体を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に蛋白質が塩として得られた場合には、該塩を公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
本発明の蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の合成には、通常市販の蛋白質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とする蛋白質もしくはペプチド(以下、「蛋白質等」と総称する場合もある)の配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂から蛋白質等を切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的の蛋白質等またはそのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、蛋白質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するか、または、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒は、蛋白質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジンなどのアミン類,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度は蛋白質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することができる。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ターシャリーブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、ターシャリーブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
蛋白質等のアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(蛋白質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いた蛋白質等とC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去した蛋白質等とを製造し、この両蛋白質等を上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護蛋白質等を精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗蛋白質等を得ることができる。この粗蛋白質等は既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望の蛋白質等のアミド体を得ることができる。
蛋白質等のエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、蛋白質等のアミド体と同様にして、所望の蛋白質等のエステル体を得ることができる。
本発明の部分ペプチドまたはその塩は、本発明の蛋白質またはその塩を適当なペプチダーゼで切断することによっても製造することができる。
さらに、本発明の蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩は、本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAを含有する形質転換体を培養し、得られる培養物から本発明の蛋白質等を分離精製することによって製造することもできる。
本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、ヒトまたは他の哺乳動物(例えば、ウシ、サル、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ハムスターなど)のあらゆる細胞(例えば、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)や血球系の細胞、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋など(特に、脳や脳の各部位)由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAなどが挙げられる。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞・組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、「RT-PCR法」と略称する)によって増幅することもできる。
本発明の蛋白質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:1で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号:1で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質と実質的に同質の活性(例、転写制御活性など)を有する蛋白質をコードするDNAなどが挙げられる。
配列番号:1で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:1で表される塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、特に好ましくは約80%以上、最も好ましくは約90%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。ハイブリダイゼーションは、好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が好ましい。
本発明の蛋白質をコードするDNAは、好ましくは配列番号:1で表される塩基配列を含有するDNAなどである。
本発明の部分ペプチドをコードするDNAは、配列番号:2で表されるアミノ酸配列の一部と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、上記した細胞・組織由来のcDNA、上記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞・組織よりmRNA画分を調製したものを用いて直接RT-PCR法によって増幅することもできる。
具体的には、本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、(1)配列番号:1で表される塩基配列を有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、または(2)配列番号:1で表される塩基配列を有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、該DNAにコードされるアミノ酸配列を含む蛋白質と実質的に同質の活性(例:転写制御活性など)を有するペプチドをコードするDNAなどが用いられる。
配列番号:1で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、該塩基配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、最も好ましくは約90%以上の同一性を有する塩基配列を含有するポリヌクレオチドなどが用いられる。
本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAは、該蛋白質またはペプチドをコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当な発現ベクターに組み込んだDNAを、本発明の蛋白質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを標識したものとハイブリダイゼーションすることによってクローニングすることができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(前述)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、該ライブラリーに添付された使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
DNAの塩基配列は、公知のキット、例えば、MutanTM-super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM-K(宝酒造(株))等を用いて、ODA-LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って変換することができる。
クローン化されたDNAは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。
本発明の蛋白質をコードするDNA発現ベクターは、例えば、本発明の蛋白質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13);枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194);酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15);λファージなどのバクテリオファージ;レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルス;pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。
例えば、宿主が動物細胞である場合、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、HSV-TKプロモーターなどが用いられる。なかでも、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。
宿主がエシェリヒア属菌である場合、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが好ましい。
宿主がバチルス属菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。
宿主が酵母である場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。
宿主が昆虫細胞である場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターとしては、上記の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Ampと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neoと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用い、dhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によって選択することもできる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明の蛋白質のN端末側に付加してもよい。宿主がエシェリヒア属菌である場合、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが;宿主がバチルス属菌である場合、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが;宿主が酵母である場合、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列などが;宿主が動物細胞である場合、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ用いられる。
上記のようにして得られる「本発明の蛋白質をコードするDNA」を含有する形質転換体は、公知の方法に従い、該DNAを含有する発現ベクターで、宿主を形質転換することによって製造することができる。
ここで、発現ベクターとしては、前記したものが挙げられる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック・アシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology),120巻,517(1978)〕,HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン,24巻,255(1983)〕,207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞、Estigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合、昆虫細胞としては、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213-217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞などが用いられる。
形質転換は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。
エシェリヒア属菌は、例えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gene),17巻,107(1982)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
バチルス属菌は、例えば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
酵母は、例えば、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology),194巻,182−187(1991)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
昆虫細胞および昆虫は、例えば、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology),6, 47-55(1988)などに記載の方法に従って形質転換することができる。
動物細胞は、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法に従って形質転換することができる。
形質転換体の培養は、宿主の種類に応じ、公知の方法に従って実施することができる。
例えば、宿主がエシェリヒア属菌またはバチルス属菌である形質転換体を培養する場合、培養に使用される培地としては液体培地が好ましい。また、培地は、形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物などを含有することが好ましい。ここで、炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖などが;窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質が;無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがそれぞれ挙げられる。また、培地には、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは、好ましくは約5〜8である。
宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。必要により、プロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を培地に添加してもよい。
宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体の培養は、通常約15〜43℃で、約3〜24時間行なわれる。必要により、通気や撹拌を行ってもよい。
宿主がバチルス属菌である形質転換体の培養は、通常約30〜40℃で、約6〜24時間行なわれる。必要により、通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が酵母である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330(1984)〕などが挙げられる。培地のpHは、好ましくは約5〜8である。培養は、通常約20℃〜35℃で、約24〜72時間行なわれる。必要に応じて、通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えばGrace's Insect Medium(Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature),195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6.2〜6.4である。培養は、通常約27℃で、約3〜5日間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する場合の培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Science),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association)199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。培地のpHは、好ましくは約6〜8である。培養は、通常約30℃〜40℃で、約15〜60時間行なわれる。必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
以上のようにして、形質転換体の細胞内(核内もしくは細胞質内)または細胞外に本発明の蛋白質を製造することができる。
前記形質転換体を培養して得られる培養物から本発明の蛋白質等を自体公知の方法に従って分離精製することができる。
例えば、本発明の蛋白質等を培養菌体あるいは細胞の細胞質から抽出する場合、培養物から公知の方法で集めた菌体あるいは細胞を適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊した後、遠心分離やろ過により可溶性蛋白質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。該緩衝液は、尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤を含んでいてもよい。一方、核画分から本発明の蛋白質等を抽出する場合は、上記の遠心分離またはろ過により得られる沈殿を例えば高張液等で処理し、遠心分離して上清を回収することにより、核蛋白質の粗抽出液を得る方法などが用いられる。
このようにして得られた可溶性画分あるいは核抽出液中に含まれる本発明の蛋白質等の単離精製は、自体公知の方法に従って行うことができる。このような方法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法;透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法;イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法;アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法;逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法;等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法;などが用いられる。これらの方法は、適宜組み合わせることもできる。
かくして得られる蛋白質等が遊離体である場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって、該遊離体を塩に変換することができ、蛋白質等が塩として得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、該塩を遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、形質転換体が産生する蛋白質等を、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。該蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
かくして得られる本発明の蛋白質等の存在は、特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウエスタンブロッティングなどにより確認することができる。
さらに、本発明の蛋白質等は、上記の本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに対応するRNAを鋳型として、ウサギ網状赤血球ライセート、コムギ胚芽ライセート、大腸菌ライセートなどからなる無細胞蛋白質翻訳系を用いてインビトロ翻訳することによっても合成することができる。あるいは、さらにRNAポリメラーゼを含む無細胞転写/翻訳系を用いて、本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAを鋳型としても合成することができる。
本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患としては、正常時と比較した場合に、本発明の蛋白質またはその塩の量が増加あるいは減少している疾患が挙げられる。
ここで、「正常時と比較した場合に、本発明の蛋白質またはその塩の量が増加している疾患」としては、例えば腎疾患(例えば、糖尿病性腎症;慢性糸球体腎炎;IgA腎症;腎移植後の慢性拒絶;腎癌;腹膜透析時の腹膜硬化症;急性腎炎症候群;ネフローゼ症候群;巣状糸球体硬化症;膜性腎症;尿崩症;慢性腎盂腎炎;進行性腎障害);内分泌・代謝性疾患(例えば、糖尿病);循環器疾患(例えば、動脈硬化症;心筋梗塞;心不全;心筋症;PTCAおよびステント留置後の血管再狭窄;心・血管移植後の慢性拒絶;血栓症);脳血管障害(例えば、脳梗塞);肺疾患(例えば、肺線維症、慢性閉塞性肺症候群、肺癌);肝疾患(例えば、肝硬変、肝炎、肝癌);消化管疾患(例えば、大腸炎、大腸癌);性腺疾患(例えば、前立腺癌);膠原病(例えば、強皮症、全身性エリテマトーデス);リウマチ性疾患(例えば、慢性関節リウマチ);骨疾患(例えば、骨粗鬆症)などが挙げられる。
「正常時と比較した場合に、本発明の蛋白質またはその塩の量が減少している疾患」としては、例えば消化管疾患(例えば、胃潰瘍、十二指腸潰瘍;胃癌;唾液腺癌);皮膚疾患(例えば、火傷、術後の創傷);脳腫瘍などが挙げられる。
本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患は、好ましくは腎疾患または糖尿病であり、さらに好ましくは糖尿病性腎症である。
本発明は、本発明の蛋白質等を用いることを特徴とする、該蛋白質が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法に関する。当該スクリーニング方法は、例えば、
1)本発明の蛋白質等を産生する能力を有する細胞を被験物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下における本発明の蛋白質等の生産量を比較すること;
2)被験物質の存在下および非存在下における本発明の蛋白質等の活性を比較すること;などによって行われる。
後者の方法は、さらに、
2a)本発明の蛋白質等の活性を、該蛋白質等により発現が制御される遺伝子を含有する細胞における該遺伝子の発現を測定することにより評価する方法;
2b)本発明の蛋白質等の活性を、該蛋白質等により転写活性が制御されるプロモーターのシスエレメントへの該蛋白質等もしくはそれと相互作用し得る転写制御因子の結合度を測定することにより評価する方法;
2c)本発明の蛋白質等の活性を、該蛋白質等の細胞内局在性を測定することにより評価する方法;などに分けられる。
「本発明の蛋白質等により発現が制御される遺伝子」としては、例えばインスリン遺伝子等が挙げられる。あるいは、該遺伝子は該蛋白質等により転写活性が制御されるプロモーター(例、インスリン遺伝子プロモーター等)のシスエレメントを含むキメラDNAであってもよく、この場合は当該プロモーターの下流に各種のレポーター蛋白質をコードするDNAを連結してもよい。「本発明の蛋白質等により発現が制御される遺伝子を含有する細胞」としては、例えば、膵細胞などが挙げられる。また、「本発明の蛋白質等により転写活性が制御されるプロモーター」としては、例えば、インスリン遺伝子プロモーターなどが挙げられる。「本発明の蛋白質等と相互作用し得る転写制御因子」としては、例えば、インスリン遺伝子プロモーターのシスエレメントに結合し得る転写制御因子などが挙げられ、該転写制御因子は、例えば、膵細胞核抽出液として提供され得る。あるいは、本発明の蛋白質等と相互作用し得る転写制御因子は、核抽出液から本発明の蛋白質等をプローブとして、精製、もしくは本発明の蛋白質等をコードするポリヌクレオチドを用いて酵母two-hybrid法によりcDNAをクローニングすることができる。
上記2a)の場合、スクリーニング系への本発明の蛋白質等の供給は、該蛋白質等を産生する能力をさらに有する細胞を用いることによっても行うことができる。
本発明の蛋白質等を用いるスクリーニング方法に使用される「本発明の蛋白質等を産生する能力を有する細胞」は特に限定されないが、酸化ストレスや増殖因子処理などの各種刺激に応じて本発明の蛋白質等の産生が誘導されるものが好ましい。あるいは、本発明の蛋白質等を産生する能力を有する細胞は、前記した本発明の蛋白質等をコードするDNAを含有する形質転換体であってもよい。
本発明の蛋白質等を産生する能力を有する細胞の好適な例としては、哺乳動物(好ましくは、ヒト、ラット、マウスなど)の腎臓もしくは膵臓、より好ましくは腎臓から単離された細胞などが挙げられる。これらの細胞は不死化されたものであってもよい。
本発明の蛋白質等を産生する能力を有する細胞の培養は、前記した形質転換体と同様にして行われる。
被験物質としては、例えばペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられる。
本発明の蛋白質等は、公知の方法、例えば、本発明の蛋白質等に対する抗体を用いて、ウェスタン解析、ELISA法などの方法またはそれに準じる方法に従って定量することができる。
ここで使用される「本発明の蛋白質等に対する抗体」は、本発明の蛋白質等を認識し得る抗体であれば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の何れであってもよい。また、該抗体は、抗体分子そのものであってもよいし、抗体分子のF(ab') 、Fab'、あるいはFab画分であってもよい。また、抗体は標識されていてもよい。
抗体の標識に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔35S〕〔125I〕、〔131I〕、〔H〕、〔14C〕などが用いられる。酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−(ストレプト)アビジン系を用いることもできる。
あるいは、本発明の蛋白質等は、上記本発明の蛋白質等と相互作用し得る転写制御因子を用いて、ウェスト−ウェスタン解析またはそれに準じる方法に従って定量することができる。該転写制御因子は標識されていることが好ましく、標識剤としては上記と同様の物質を用いることができる。
あるいはまた、本発明の蛋白質等は、それが結合し得るポリヌクレオチドを用いてゲルシフトアッセイ法またはそれに準じる方法に従って定量することができる。「本発明の蛋白質等が結合し得るポリヌクレオチド」としては、本発明の蛋白質が結合して転写を制御する遺伝子のプロモーター領域中の配列を含むものが挙げられる。例えば、以前に報告されたものとしては、C型ナトリウム利尿性ペプチド遺伝子のGCエレメントがあるが、これに限定されない。
本発明の蛋白質等を定量する際、定量される蛋白質等は、細胞内に含まれるものまたは細胞外に分泌されたもののいずれであってもよく、さらに両者の合計であってもよい。
また、細胞内に含まれる本発明の蛋白質等を定量する場合、細胞を適当な固定液あるいは膜透過促進剤処理した後に行うことが好ましい。また、細胞を適当な緩衝液に懸濁し、超音波または凍結融解などによって細胞を破壊した後、破砕液中の蛋白質等を定量することもできる。必要により、破砕液中の蛋白質等を分離精製した後に、蛋白質等の定量を行ってもよい。核内に移行した本発明の蛋白質等を定量する場合、上記と同様に細胞を破壊した後、沈殿を回収し、これをさらに高張液等で処理することにより得られる核抽出液中の蛋白質等を測定すればよい。
上記2c)の場合、本発明の蛋白質等の細胞内局在性は、例えば、該蛋白質等を産生する能力を有する細胞における該蛋白質等の細胞質から核への移行の度合いをモニタリングすることにより評価することができる。例えば、蛍光標識した本発明の蛋白質等に対する抗体で該細胞を免疫染色することにより、該蛋白質等の細胞質から核への移行をモニタリングすることができる。あるいは、本発明の蛋白質等をGFPなどの蛍光蛋白質との融合蛋白質として発現し得る形質転換体を用いることにより、直接的に該蛋白質等の細胞質から核への移行をモニタリングすることもできる(例えば、Biochem. Biophys. Res. Commun., 278: 659-664 (2000)を参照)。
本発明はまた、上記1)の本発明の蛋白質等の生産量を指標とするスクリーニング法に用いることができるスクリーニング用キットに関する。該キットは、(a)上記の本発明の蛋白質等を産生する能力を有する細胞、および(b)本発明の蛋白質等を検出することができる試薬、例えば、上記した本発明の蛋白質等に対する抗体、該蛋白質等が結合し得るポリヌクレオチドもしくは該蛋白質等と相互作用し得る転写制御因子の少なくとも一方、好ましくは両方をその構成として含むことを特徴とする。該キットは、所望により上記1)のスクリーニング方法を実施するのに必要もしくは好ましい他の試薬類、器具類をさらに構成として含むことができる。
本発明の蛋白質等を用いる上記2)のスクリーニング方法において指標として用いられる本発明の蛋白質等の活性としては、例えば転写制御活性などが挙げられる。具体的には、例えば「本発明の蛋白質等と相互作用し得る転写制御因子の標的ポリヌクレオチドへの結合を制御する活性」、「本発明の蛋白質等の標的ポリヌクレオチドへの結合活性」、「本発明の蛋白質等による転写制御の支配下にある遺伝子の発現制御活性」、「本発明の蛋白質等の核移行活性」などが挙げられる。
「本発明の蛋白質等と相互作用し得る転写制御因子」としては、例えば、インスリン遺伝子の転写制御に関与する転写因子であって、本発明の蛋白質によって該転写制御活性が調節されている蛋白質などが挙げられる。このような転写制御因子はそれを発現する細胞(例えば、上記インスリン遺伝子の転写因子の場合は膵細胞など)の核抽出液として提供され得る。
「本発明の蛋白質等と相互作用し得る転写制御因子の標的ポリヌクレオチド」としては、例えば、ヒトまたは他の哺乳動物由来のインスリン遺伝子プロモーターの塩基配列またはその一部を含有するポリヌクレオチド等が挙げられる。
「本発明の蛋白質等の標的ポリヌクレオチド」としては、上記の「本発明の蛋白質等が結合し得るポリヌクレオチド」として例示されたものが挙げられる。
上記結合活性もしくは結合を制御する活性は、ゲルシフトアッセイ法(electrophoretic mobility shift assay)等の公知の方法またはそれに準じる方法を用いて測定することができる。
「本発明の蛋白質等による転写制御の支配下にある遺伝子」としては、本発明の蛋白質等と相互作用し得る転写制御因子の標的ポリヌクレオチドをシスエレメントとして含むプロモーターの制御下にある遺伝子、または本発明の蛋白質等の標的ポリヌクレオチドをシスエレメントとして含むプロモーターの制御下にある遺伝子が挙げられる。前者として、例えば、インスリン遺伝子などが挙げられる。後者として、以前に報告されたものとしては、C型ナトリウム利尿性ペプチド遺伝子が挙げられる。
このような遺伝子の発現制御活性は、該遺伝子から産生されるmRNAの塩基配列をもとに適当なプライマーを作成し、RT−PCRを行って該遺伝子の転写産物量を測定することにより測定できる。また、上記発現制御活性は、公知の方法またはそれに準じる方法に従って、該遺伝子から産生されるmRNAの塩基配列の全部または一部を含むポリヌクレオチドを標識して作成したプローブを用いたノザンブロッティング法により測定できる。また、上記発現制御活性は、公知の方法またはそれに準じる方法に従って、本発明の蛋白質等と相互作用し得る転写制御因子の標的ポリヌクレオチド、または本発明の蛋白質等の標的ポリヌクレオチドを含むプロモーターの下流に適当なレポーター遺伝子を連結した発現ベクターを作成し、該ベクターを適当な細胞、好ましくは本発明の蛋白質等および/またはそれと相互作用し得る転写制御因子を産生する細胞に導入して、レポーター遺伝子がコードする蛋白質の発現を確認することによっても測定できる。
本発明はまた、上記2)の本発明の蛋白質等の活性を指標とするスクリーニング法に用いることができるスクリーニング用キットに関する。例えば、上記2a)のスクリーニング法に用いることができるキットとしては、(a)本発明の蛋白質等により発現が制御される遺伝子を含有する細胞、(b)本発明の蛋白質等および(c)該遺伝子の発現を検出することができる試薬、例えば、該遺伝子とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドの少なくとも1つ、好ましくはすべてをその構成として含むものが挙げられる。尚、(b)の本発明の蛋白質等は、(a)の細胞により産生されるものであってもよい。
上記2b)のスクリーニング法に用いることができるキットとしては、(a)本発明の蛋白質等、および(b)上記した本発明の蛋白質等が結合し得るポリヌクレオチドまたは本発明の蛋白質等と相互作用し得る転写制御因子の少なくとも一方、好ましくは両方をその構成として含むものが挙げられる。
また、上記2c)のスクリーニング法に用いることができるキットとしては、(a)本発明の蛋白質等を産生する能力を有する細胞、および必要に応じて(b)該蛋白質等に対する抗体をその構成として含むものが挙げられる。(a)の細胞において、本発明の蛋白質等がGFPなどの蛍光蛋白質との融合蛋白質のように生細胞で可視化可能な形態で産生される場合は、(b)の抗体を省略することができる。
これらのキットは、所望により上記2)のスクリーニング方法を実施するのに必要もしくは好ましい他の試薬類、器具類をさらに構成として含むことができる。
上記のスクリーニング方法において、被験物質の存在下と非存在下における本発明の蛋白質の産生量または活性を比較する代わりに、本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患に罹患している疑いのある動物由来の細胞その他の検体と正常対照動物由来のそれとにおける本発明の蛋白質の量または活性を比較することによって、被検動物が本発明の蛋白質が関連する疾患に罹患しているか否か、または将来該疾患に罹患する可能性が高いか否かを診断することができる。
本発明の蛋白質等を用いるスクリーニング方法によって、本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質、すなわち、本発明の蛋白質等の産生を調節(促進または阻害)する物質、あるいは本発明の蛋白質等の活性を調節(促進または阻害)する物質をスクリーニングすることができる。
例えば、本発明の蛋白質等の産生量を約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上増大させる被験物質を、本発明の蛋白質等の産生を促進する物質として;本発明の蛋白質等の産生量を約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上減少させる被験物質を本発明の蛋白質等の産生を阻害する物質として、それぞれ選択することができる。
また、例えば、本発明の蛋白質等の活性を約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上増大させる被験物質を、本発明の蛋白質等の活性を促進する物質として;本発明の蛋白質等の活性を約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上減少させる被験物質を本発明の蛋白質等の活性を阻害する物質として、それぞれ選択することができる。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる本発明の蛋白質が関連する疾患の予防・治療物質は、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などのいずれであってもよい。これらは塩を形成していてもよく、該塩の具体例としては、前記した本発明の蛋白質の塩と同様のものが挙げられる。
本発明の蛋白質等を用いるスクリーニング方法により得られる「本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質」(化合物)は、必要により薬理学的に許容し得る担体とともに混合して医薬組成物とした後に、本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療薬として用いることができる。
ここで、薬理学的に許容される担体としては、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質が用いられ、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などとして配合される。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。
賦形剤の好適な例としては、乳糖、白糖、D−マンニトール、D−ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。
滑沢剤の好適な例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカなどが挙げられる。
結合剤の好適な例としては、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、トレハロース、デキストリン、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
崩壊剤の好適な例としては、乳糖、白糖、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、軽質無水ケイ酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
溶剤の好適な例としては、注射用水、生理的食塩水、リンゲル液、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油などが挙げられる。
溶解補助剤の好適な例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
懸濁化剤の好適な例としては、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリンなどの界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの親水性高分子;ポリソルベート類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。
等張化剤の好適な例としては、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール、D−ソルビトール、ブドウ糖などが挙げられる。
緩衝剤の好適な例としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液などが挙げられる。
無痛化剤の好適な例としては、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
防腐剤の好適な例としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが挙げられる。
抗酸化剤の好適な例としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸塩などが挙げられる。
着色剤の好適な例としては、水溶性食用タール色素(例、食用赤色2号および3号、食用黄色4号および5号、食用青色1号および2号などの食用色素、水不溶性レーキ色素(例、前記水溶性食用タール色素のアルミニウム塩など)、天然色素(例、β−カロチン、クロロフィル、ベンガラなど)などが挙げられる。
甘味剤の好適な例としては、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビアなどが挙げられる。
前記医薬組成物の剤形としては、例えば錠剤、カプセル剤(ソフトカプセル、マイクロカプセルを含む)、顆粒剤、散剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などの経口剤;および注射剤(例、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤など)、外用剤(例、経鼻投与製剤、経皮製剤、軟膏剤など)、坐剤(例、直腸坐剤、膣坐剤など)、ペレット、点滴剤、徐放性製剤(例、徐放性マイクロカプセルなど)等の非経口剤が挙げられ、これらはそれぞれ経口的あるいは非経口的に安全に投与できる。
医薬組成物は、製剤技術分野において慣用の方法、例えば日本薬局方に記載の方法等により製造することができる。以下に、製剤の具体的な製造法について詳述する。医薬組成物中の本発明のスクリーニング方法により得られる化合物の含量は、剤形、該化合物の投与量などにより異なるが、例えば約0.1ないし100重量%である。
例えば、経口剤は、有効成分に、賦形剤(例、乳糖,白糖,デンプン,D−マンニトールなど)、崩壊剤(例、カルボキシメチルセルロースカルシウムなど)、結合剤(例、α化デンプン,アラビアゴム,カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ポリビニルピロリドンなど)または滑沢剤(例、タルク,ステアリン酸マグネシウム,ポリエチレングリコール6000など)などを添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性を目的として、コーティング基剤を用いて自体公知の方法でコーティングすることにより製造される。
該コーティング基剤としては、例えば糖衣基剤、水溶性フィルムコーティング基剤、腸溶性フィルムコーティング基剤、徐放性フィルムコーティング基剤などが挙げられる。
糖衣基剤としては、白糖が用いられ、さらに、タルク、沈降炭酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、プルラン、カルナバロウなどから選ばれる1種または2種以上を併用してもよい。
水溶性フィルムコーティング基剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース系高分子;ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE〔オイドラギットE(商品名)、ロームファルマ社〕、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子;プルランなどの多糖類などが挙げられる。
腸溶性フィルムコーティング基剤としては、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース アセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースなどのセルロース系高分子;メタアクリル酸コポリマーL〔オイドラギットL(商品名)、ロームファルマ社〕、メタアクリル酸コポリマーLD〔オイドラギットL−30D55(商品名)、ロームファルマ社〕、メタアクリル酸コポリマーS〔オイドラギットS(商品名)、ロームファルマ社〕などのアクリル酸系高分子;セラックなどの天然物などが挙げられる。
徐放性フィルムコーティング基剤としては、例えばエチルセルロースなどのセルロース系高分子;アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS〔オイドラギットRS(商品名)、ロームファルマ社〕、アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル共重合体懸濁液〔オイドラギットNE(商品名)、ロームファルマ社〕などのアクリル酸系高分子などが挙げられる。
上記したコーティング基剤は、その2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。また、コーティングの際に、例えば酸化チタン、三二酸化鉄等のような遮光剤を用いてもよい。
注射剤は、有効成分を分散剤(例、ポリソルベート80,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60,ポリエチレングリコール,カルボキシメチルセルロース,アルギン酸ナトリウムなど)、保存剤(例、メチルパラベン,プロピルパラベン,ベンジルアルコール,クロロブタノール,フェノールなど)、等張化剤(例、塩化ナトリウム,グリセリン,D−マンニトール,D−ソルビトール,ブドウ糖など)などと共に水性溶剤(例、蒸留水,生理的食塩水,リンゲル液等)あるいは油性溶剤(例、オリーブ油,ゴマ油,綿実油,トウモロコシ油などの植物油、プロピレングリコール等)などに溶解、懸濁あるいは乳化することにより製造される。この際、所望により溶解補助剤(例、サリチル酸ナトリウム,酢酸ナトリウム等)、安定剤(例、ヒト血清アルブミン等)、無痛化剤(例、ベンジルアルコール等)等の添加物を用いてもよい。注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。
本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療薬の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより異なるが、例えば、腎疾患に罹患している成人患者(体重60kg)においては、一日あたり、有効成分である本発明のスクリーニング方法により得られる化合物として、約0.1ないし100mg、好ましくは約1.0ないし50mg、より好ましくは約1.0ないし20mgである。
本発明はさらに、本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド(以下、「本発明のポリヌクレオチド」と略記することがある)を用いることを特徴とする、本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法に関する。
ここで、本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患としては、本発明の蛋白質等を用いるスクリーニング法において上記したものが同様に挙げられるが、好ましくは腎疾患または糖尿病であり、さらに好ましくは糖尿病性腎症である。
本発明のポリヌクレオチドは、本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであれば、DNA、RNAまたはDNA/RNAキメラのいずれであってもよいが、好ましくはDNAである。これらは二本鎖または一本鎖のいずれであってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(すなわち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(すなわち、非コード鎖)であってもよい。なお、本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAとしては、本発明の蛋白質等の遺伝子工学的手法による製造方法において前記したものが挙げられる。
本発明のポリヌクレオチドを用いるスクリーニング方法は、例えば、本発明の蛋白質等を産生する能力を有する細胞を培養した場合と、本発明の蛋白質等を産生する能力を有する細胞を被験物質の存在下に培養した場合とで、本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードするmRNAの量を本発明のポリヌクレオチドを用いて測定・比較することなどによって行われる。
ここで、本発明の蛋白質等を産生する能力を有する細胞、該細胞の培養方法、および被験物質としては、前記した本発明の蛋白質等を用いるスクリーニング方法と同様のものが挙げられる。
本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードするmRNAの量は、公知の方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)第2版(前述)に記載の方法またはそれに準じる方法に従って定量することができる。例えば、本発明の蛋白質等を産生する能力を有する細胞の培養物から常法に従って全RNAまたはポリA(+)RNAを抽出し、本発明のポリヌクレオチド、例えば、配列番号:1で表される塩基配列の全部または一部を含有するポリヌクレオチドをプローブとしてノーザンハイブリダイゼーションを行うか、あるいは配列番号:1で表される塩基配列の一部を含有する一対のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてRT−PCR法を行うことによって定量することができる。
例えば、本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードするmRNAの量を約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上増大させる被験物質を、本発明の蛋白質をコードする遺伝子の発現を促進する物質として;本発明の蛋白質をコードするmRNAの量を約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上減少させる被験物質を、本発明の蛋白質をコードする遺伝子の発現を阻害する物質として選択することができる。
本発明はまた、上記の本発明のポリヌクレオチドを用いるスクリーニング方法に用いることができるスクリーニング用キットに関する。該キットは、(a)上記した本発明の蛋白質等を産生する能力を有する細胞、および(b)本発明の蛋白質等をコードする遺伝子の発現を検出することができる試薬、例えば、本発明の蛋白質等をコードするmRNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドの少なくとも一方、好ましくは両方をその構成として含むことができる。該キットは、所望により上記の本発明のポリヌクレオチドを用いるスクリーニング方法を実施するのに必要もしくは好ましい他の試薬類、器具類をさらに構成として含むことができる。
本発明のポリヌクレオチドを用いるスクリーニング方法により得られる本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質は、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などのいずれであってもよい。これらは塩を形成していてもよく、該塩の具体例としては、前記した本発明の蛋白質の塩と同様のものが挙げられる。
該スクリーニング方法により得られる本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質(化合物)は、必要により薬理学的に許容し得る担体とともに混合して医薬組成物とした後に、本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療薬として用いることができる。
ここで、薬理学的に許容される担体としては、本発明の蛋白質等を用いるスクリーニング方法により得られる本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質の場合と同様のものが挙げられる。
該医薬組成物は、本発明の蛋白質等を用いるスクリーニング方法により得られる本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質の場合と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。
本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療薬の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより異なるが、例えば、腎疾患に罹患している成人患者(体重60kg)においては、一日あたり、有効成分である本発明のスクリーニング方法により得られる化合物として、約0.1ないし100mg、好ましくは約1.0ないし50mg、より好ましくは約1.0ないし20mgである。
本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質は、該蛋白質をコードする遺伝子のプロモーター活性を検出することによってスクリーニングすることもできる。
本発明の蛋白質をコードするDNAがレポーター遺伝子で置換された細胞あるいは非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が本発明の蛋白質をコードする遺伝子のプロモーターの支配下に存在するので、被験物質による処理あるいは被験物質の投与後に、該レポーター遺伝子がコードする蛋白質の発現を確認することにより、該プロモーターの活性を検出することができる。
また、本発明の蛋白質をコードする遺伝子の転写調節領域とレポーター遺伝子が連結されてできたベクターを有する細胞および非ヒト哺乳動物においても該プロモーターの活性を検出できる。
ここで、レポーター遺伝子としては、例えばβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子などが挙げられる。
例えば、本発明の蛋白質をコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、本発明の蛋白質の発現する組織で、本発明の蛋白質の代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。したがって、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いる染色により、簡便に本発明の蛋白質の発現状態を確認することができる。具体的には、細胞あるいは組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察することにより、細胞あるいは組織における本発明の蛋白質の発現状態を確認することができる。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
本発明の蛋白質をコードする遺伝子のプロモーター活性を促進または阻害する化合物は、該蛋白質またはその塩の産生および活性を調節することができるので、本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療薬として有用である。
本発明の蛋白質またはそれをコードするmRNAは、例えば糖尿病や腎疾患(例、糖尿病性腎症)などで発現が増加するため、当該疾患における早期診断、症状の重症度の判定、疾患進行の予測のためのマーカーとして有用である。よって、本発明の蛋白質等に対する抗体および上記の本発明のポリヌクレオチドは、本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の診断薬として有用である。さらに、該抗体は本発明の蛋白質またはその塩と結合してこれを不活性化(中和)し、また、本発明の蛋白質をコードするDNAのアンチセンスポリヌクレオチドは、本発明の蛋白質をコードするmRNAとハイブリダイズして該蛋白質への翻訳を阻害するので、本発明のスクリーニング方法により得られる化合物と同様に、本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療薬として有用である。
したがって、本発明はまた、本発明の蛋白質等に対する抗体を含有してなる該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療薬に関する。ここで、本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患としては、本発明の蛋白質等を用いるスクリーニング法において上記したもののうち、正常時と比較した場合に本発明の蛋白質またはその塩の量が増加している疾患として例示されたものが同様に挙げられるが、好ましくは腎疾患または糖尿病であり、さらに好ましくは糖尿病性腎症である。
本発明の蛋白質等に対する抗体(以下、「本発明の抗体」と略記する場合がある)は、該蛋白質等を抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。本発明の蛋白質等に対するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、例えば以下のようにして製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明の蛋白質等を、哺乳動物に対して、投与により抗体産生が可能な部位に、それ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与する。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる哺乳動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
例えば、抗原で免疫された哺乳動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し、最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化蛋白質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は、既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256、495 (1975)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などの哺乳動物の骨髄腫細胞が挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は、1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマは、例えば、蛋白質抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法;抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識した蛋白質を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法;などによりスクリーニングすることができる。
モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。モノクローナル抗体の選別は、通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行なうことができる。モノクローナル抗体の選別および育種用培地は、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。このような培地としては、例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
このようにして得られたモノクローナル抗体は、自体公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って分離精製することができる。
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明の蛋白質等に対するポリクローナル抗体は、自体公知の方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(蛋白質抗原)自体、あるいはそれとキャリアー蛋白質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に哺乳動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明の抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造することができる。
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプリングさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤、例えばグルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、哺乳動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なわれる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
本発明の抗体を含有してなる、本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療薬は、本発明の抗体そのものであってもよいが、該抗体を薬理学的に許容し得る担体とともに混合して得られる医薬組成物であることが好ましい。ここで、薬理学的に許容される担体としては、前記した「本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質」の場合と同様のものが挙げられる。
該医薬組成物は、前記した「本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質」の場合と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。
該予防・治療薬の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより異なるが、例えば、腎疾患に罹患している成人患者(体重60kg)においては、一日あたり、有効成分である本発明の抗体として、約0.1ないし100mg、好ましくは約1.0ないし50mg、より好ましくは約1.0ないし20mgである。
本発明はまた、本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列と相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを含有してなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療薬に関する。ここで、本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患としては、本発明の蛋白質等を用いるスクリーニング法において上記したもののうち、正常時と比較した場合に本発明の蛋白質またはその塩の量が増加している疾患として例示されたものが同様に挙げられるが、好ましくは腎疾患または糖尿病であり、さらに好ましくは糖尿病性腎症である。
本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列と相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチド(以下、「本発明のアンチセンスポリヌクレオチド」と略記する場合がある)としては、本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列と完全に相補的な塩基配列、または実質的に相補的な塩基配列を有し、本発明の蛋白質をコードするRNAからの該蛋白質の翻訳を抑制する作用を有するものであればよい。「実質的に相補的な塩基配列」としては、本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列と、該蛋白質を発現する細胞の生理学的条件下でハイブリダイズし得る塩基配列、より具体的には、本発明の蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列の相補鎖との間で約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列などが挙げられる。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、クローン化した、あるいは決定された本発明のポリヌクレオチドの塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。そうしたポリヌクレオチドは、本発明の蛋白質をコードする遺伝子の複製または発現を阻害することができる。即ち、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、本発明の蛋白質をコードする遺伝子から転写されるRNAとハイブリダイズすることができ、mRNAの合成(プロセッシング)または機能(蛋白質への翻訳)を阻害することができる。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドの標的領域は、アンチセンスポリヌクレオチドがハイブリダイズすることにより、結果として本発明の蛋白質の翻訳が阻害されるものであればその長さに特に制限はなく、本発明の蛋白質をコードするRNAの全配列であっても部分配列であってもよく、短いもので約15塩基程度、長いものでmRNAまたは初期転写産物の全配列が挙げられる。合成の容易さや抗原性の問題を考慮すれば、約15〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましいがそれに限定されない。具体的には、例えば、本発明の蛋白質をコードする遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、蛋白質コード領域、ORF翻訳開始コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域、および3’端ヘアピンループが標的領域として選択しうるが、該遺伝子内部の如何なる領域も標的として選択しうる。例えば、該遺伝子のイントロン部分を標的領域とすることもまた好ましい。
さらに、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、本発明の蛋白質をコードするmRNAもしくは初期転写産物とハイブリダイズして蛋白質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAである本発明の蛋白質をコードする遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAの転写を阻害し得るものであってもよい。
アンチセンスポリヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているデオキシヌクレオチド、D−リボースを含有しているデオキシヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販の蛋白質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、さらにDNA:RNAハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えば蛋白質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。こうした修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
アンチセンスポリヌクレオチドは、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。こうした修飾は当該分野で数多く知られており、例えば J. Kawakami et al., Pharm Tech Japan, Vol. 8, pp.247, 1992; Vol. 8, pp.395, 1992; S. T. Crooke et al. ed., Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993 などに開示がある。
アンチセンスポリヌクレオチドは、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピド、コレステロールなど)といった粗水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端あるいは5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端あるいは5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
本発明の蛋白質をコードするmRNAもしくは遺伝子初期転写産物を、コード領域の内部(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)で特異的に切断し得るリボザイムもまた、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドに包含され得る。「リボザイム」とは核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、最近では当該酵素活性部位の塩基配列を有するオリゴDNAも同様に核酸切断活性を有することが明らかになっているので、本明細書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイムは、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないというさらなる利点を有する。「本発明のポリヌクレオチド」に対応するmRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98(10): 5572-5577 (2001)]。さらに、リボザイムを、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で使用する場合には、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780-2788 (2001)]。
本発明の蛋白質をコードするmRNAもしくは遺伝子初期転写産物のコード領域内の部分配列(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)に相補的な二本鎖オリゴRNAもまた、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドに包含され得る。短い二本鎖RNAを細胞内に導入するとそのRNAに相補的なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、最近、この現象が哺乳動物細胞でも起こることが確認されたことから[Nature, 411(6836): 494-498 (2001)]、リボザイムの代替技術として注目されている。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムは、本発明の蛋白質をコードするcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列情報に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的領域を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。RNAi活性を有する二本鎖オリゴRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中で、例えば、約90〜約95℃で約1分程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、相補的なオリゴヌクレオチド鎖を交互にオーバーラップするように合成して、これらをアニーリングさせた後リガーゼでライゲーションすることにより、より長い二本鎖ポリヌクレオチドを調製することもできる。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを含有してなる、本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療薬は、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドそのものであってもよいが、該アンチセンスポリヌクレオチドを薬理学的に許容し得る担体とともに混合して得られる医薬組成物であることが好ましい。該アンチセンスポリヌクレオチドは、本発明の蛋白質等を用いるスクリーニング方法により得られる本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質の場合と同様にして、製剤化し、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。また、アンチセンスポリヌクレオチドは、例えばレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後に投与することもできる。
アンチセンスポリヌクレオチドは、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与してもよく、エアロゾル化後、吸入剤として気管内に局所投与することもできる。
該アンチセンスポリヌクレオチドの投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより異なるが、例えば、腎疾患に罹患している成人患者(体重60kg)においては、一日あたり、約0.1ないし100mg、好ましくは約1.0ないし50mg、より好ましくは約1.0ないし20mgである。
さらに、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、組織や細胞における本発明の蛋白質をコードするポリヌクレオチドの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプローブとして使用することもできる。
本発明はまた、上記の「本発明のポリヌクレオチド」を含有してなる、本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の診断薬に関する。例えば、本発明のポリヌクレオチドをプローブとして使用することにより、哺乳動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)における本発明の蛋白質をコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断薬として有用である。
本発明のポリヌクレオチドを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、自体公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(ゲノミックス(Genomics),第5巻,874〜879頁(1989年)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America),第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションにより発現過多または減少が検出された場合やPCR−SSCP法によりDNAの突然変異が検出された場合は、例えば、糖尿病や腎疾患などの本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患に罹患している可能性が高いと診断することができる。
本発明はまた、上記の「本発明の抗体」を含有してなる、本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の診断薬に関する。
すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化された本発明の蛋白質等とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化された本発明の蛋白質等の割合を測定することにより被検液中の本発明の蛋白質またはその塩を定量することを特徴とする、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の診断方法、および
(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の別の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の本発明の蛋白質またはその塩を定量することを特徴とする、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の診断方法を提供する。
上記(ii)の定量においては、一方の抗体が本発明の蛋白質等のN端部を認識する抗体である場合、他方の抗体が本発明の蛋白質等の他の部分、例えばC端部を認識する抗体であることが望ましい。
また、本発明の蛋白質等に対するモノクローナル抗体を用いて該蛋白質の定量を行うことができるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab')、Fab'、あるいはFab画分を用いてもよい。
本発明の抗体を用いる本発明の蛋白質またはその塩の定量は、特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−(ストレプト)アビジン系を用いることもできる。
抗原あるいは抗体の不溶化にあたっては、物理吸着を用いてもよく、また通常蛋白質等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明のモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の本発明の蛋白質またはその塩の量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
上記サンドイッチ法による本発明の蛋白質またはその塩の測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は、本発明の蛋白質の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、本発明の蛋白質のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。
競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明の蛋白質の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」 Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D : Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E : Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I : Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、本発明の抗体を用いることによって、本発明の蛋白質またはその塩を感度良く定量することができる。
本発明の抗体を用いる上記の定量法において、被検動物の生検サンプル(例、腎細胞、膵細胞など)を被検体とし、該検体中の本発明の蛋白質またはその塩の濃度を定量することによって、該蛋白質の発現過多または減少が検出された場合は、例えば、糖尿病や腎疾患などの本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患に罹患している可能性が高いと診断することができる。
本発明は、さらに、TSC−22抑制薬を含有してなる糖尿病または腎疾患、好ましくは糖尿病性腎症の予防・治療薬に関する。
TSC−22抑制薬とは、生体内において、TSC−22を量的および/または質的に抑制し得る物質をいう。具体的には、TSC−22遺伝子の発現(転写、転写後調節、翻訳、翻訳後修飾などの各レベルをすべて包含する)を抑制するか、あるいはTSC−22蛋白質を不安定化もしくは活性を抑制しうる物質であれば特に限定されず、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などのいずれであってもよい。これらは塩を形成していてもよく、該塩の具体例としては、前記した本発明の蛋白質の塩と同様のものが挙げられる。
TSC−22抑制薬は、好ましくは、腎臓または膵臓において、TSC−22の産生もしくは発現またはTSC−22の活性を抑制しうる物質である。
TSC−22抑制薬を含有してなる糖尿病または腎疾患(例、糖尿病性腎症)の予防・治療薬は、TSC−22の性状に応じて、本発明の蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質や本発明のアンチセンスポリヌクレオチドの場合と同様にして製剤化することができる。
該予防・治療薬は、安全で低毒性であるので、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。
TSC−22抑制薬の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより異なるが、例えば、成人患者(体重60kg)においては、一日あたり約0.1ないし100mg、好ましくは約1.0ないし50mg、より好ましくは約1.0ないし20mgである。
本明細書において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Sec :セレノシステイン(selenocysteine)
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
ヒトTSC−22 cDNAの蛋白質コード領域の塩基配列を示す。
〔配列番号:2〕
ヒトTSC−22蛋白質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:3〕
実施例4においてセンスプローブとして用いられたDNAの塩基配列を示す。
以下において、実施例により本発明をより具体的にするが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 Wistar fattyラットの腎臓におけるTSC-22 mRNA発現の増加
インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)を呈し糖尿病性腎症(DN)を自然発症する雄性Wistar fattyラット(13、22及び40週齢;武田ラビックス)と、その正常対照ラットである同週齢の雄性Wistar leanラット(武田ラビックス)を用いて、24時間蓄尿及び尾静脈採血を行い、尿中アルブミン排泄量、血漿中グルコース濃度及び血漿中インスリン濃度を測定した。尿中アルブミン排泄量はA/G Bテストワコー(和光純薬) を用いて測定し、血漿中グルコース濃度はシンクロンCX5デルタ(Beckman Coulter)にて測定した。インスリン濃度はRIA法(塩野義製薬)により測定した。各5匹のラットより腎臓を採取し-80℃で保存した。試料を破砕後、total RNAを抽出した。既報(Endocrinology, 134(3): 1205-1212 (1994))のmRNA配列をもとにプライマー及び蛍光プローブを作製し、ABI PRISM 7700 (Applied Biosystems)を用いてリアルタイム定量RT-PCR法により各種mRNA発現量を測定した。結果を表1及び表2に示す。
[表1]
尿中アルブミン排泄量、血漿中グルコース濃度及び血漿中インスリン濃度

Wistar lean ラット Wistar fatty ラット
週齢 13 22 40 13 22 40
尿中アルブミン 5.1 4.0 10.4 6.7 55.7 182.0
排泄量 (mg/day)
血漿中グルコース 138.9 137.1 134.3 319.2 402.9 319.4
濃度 (mg/dl)
血漿中インスリン 123.0 125.6 158.7 1091.9 1019.2 1674.4
濃度 (μUnits/ml)
(n=5, Mean)
[表2]
Wistar fattyラットの腎臓における TSC-22及びTGF-β1のmRNA発現量
(各週齢のWistar lean ラットの腎臓における発現量を1とした時の相対値)

週齢 13 22 40
TSC-22 1.0 1.0 1.6
TGF-β1 1.1 1.0 1.7
(n=5, Mean)
Wistar fattyラットは13週齢よりNIDDMを呈し、22週齢よりDNを発症して尿中アルブミン排泄量が増加した。40週齢のWistar fattyラットにおいてTSC-22 mRNA発現量の増加が認められ、また、transforming growth factor-β1(TGF-β1) mRNA発現量の増加も認められており、TSC-22 mRNAとTGF-β1 mRNA発現量の間には有意な正相関(r=0.80598, p=0.0049)が認められた。
実施例2 Zucker fattyラットの腎臓におけるTSC-22 mRNA発現の変化
高インスリン血症を呈し、腎障害を自然発症する雄性Zucker fattyラット(ZFラット、18週齢、日本チャールズリバー)に0.5%メチルセルロース100cPに懸濁したカンデサルタンシレキセチル(angiotensin II type1受容体拮抗薬)を9週間、一日一回連日経口投与した。対照群及び正常対照群である同週齢の雄性Zucker leanラット(ZLラット、日本チャールズリバー)には0.5%メチルセルロース100cP(Vehicle)を一日一回連日経口投与した。投与8週後に24時間蓄尿を行い、A/G Bテストワコー(和光純薬)を用いて尿中アルブミン排泄量を測定した。投与9週後に腎臓を採取し-80℃で保存した。試料を破砕後、total RNAを抽出した。既報(前述)のmRNA配列をもとにプライマー及び蛍光プローブを作製し、ABI PRISM7700(Applied Biosystems)を用いてリアルタイム定量RT-PCR法により各種mRNA発現量を測定した。結果を表3及び表4に示す。
[表3]
尿中アルブミン排泄量、血中グルコース濃度及び血中インスリン濃度

ZLラット ZFラット ZFラット
Vehicle Vehicle カンデサルタン
シレキセチル
尿中アルブミン排泄量 48.5 401.5 61.7
(mg/day)
(n=8-9, Mean)
[表4]
Zucker fattyラットの腎臓におけるTSC-22及びTGF-β1のmRNA発現量
(Zucker leanラットの腎臓における発現量を1とした時の相対値)

ZFラット ZFラット
Vehicle カンデサルタンシレキセチル
TSC-22 2.4 1.6
TGF-β1 2.1 1.2
(n=8-9, Mean)
尿中アルブミン排泄量が増加しているZucker fattyラットの腎臓においてはTSC-22 mRNA発現量が増加し、TGF-β1のmRNA発現の増加も認められた。さらに、カンデサルタンシレキセチル投与により尿中アルブミン排泄量の増加が抑制された場合には、上記のいずれのmRNA発現量増加も抑制された。
実施例3 自然発症高コレステロール血症ラットの腎臓におけるTSC-22 mRNA発現の増加
腎障害を自然発症する雄性の自然発症高コレステロール血症ラット(SHCラット、6, 12, 20及び26-30週齢、武田ラビックス)及び正常対照群である同週齢の雄性Sprague-Dawleyラット(SDラット、日本クレア)を用いて、24時間蓄尿及び尾静脈採血を行い、尿中アルブミン排泄量、血漿中総コレステロール濃度及び血中尿素窒素濃度を測定した。尿中アルブミン排泄量はA/G Bテストワコー(和光純薬)を用いて測定し、血漿中総コレステロール濃度及び血中尿素窒素濃度はシンクロンCX5デルタ(Beckman Coulter)を用いて測定した。腎臓を採取し-80℃で保存した。試料を破砕後、total RNAを抽出した。既報のmRNA配列をもとにプライマー及び蛍光プローブを作製し、ABI PRISM7700(Applied Biosystems)を用いてリアルタイム定量RT-PCR法により各mRNA発現量を測定した。結果を表5及び表6に示す。
[表5]
尿中アルブミン排泄量、血漿中グルコース濃度及び血漿中インスリン濃度

SD ラット SHC ラット
週齢 6 12 20 26-30 6 12 20 26-30
尿中アルブミン 6.1 9.2 13.1 16.4 8.9 179.2 598.3 656.6
排泄量 (mg/day)
血中尿素窒素 18.9 21.5 22.8 21.5 15.7 20.2 40.1 85.1
濃度 (mg/dl)
(n=4-5, Mean)
[表6]
SHCラットの腎臓における TSC-22及びTGF-β1のmRNA発現量
(各週齢のSD ラットの腎臓における発現量を1とした時の相対値)

週齢 6 12 20 26-30
TSC-22 1.9 3.5 6.0 12.4
TGF-β1 1.1 1.4 4.5 9.0
(n=4-5, Mean)
12週齢のSHCラットにおいて既に尿中アルブミン排泄量が増加しており、以後、経時的に増加した。また、20週齢以降のSHCラットにおいて血中尿素窒素濃度も経時的に増加した。TSC-22 mRNAの発現は6週齢のSHCラットにおいては1.9倍に増加しており、以後、経時的な発現量増加が認められた。SHCラットにおいてTSC-22 mRNA発現量は尿中アルブミン排泄量(r=0.67648, p=0.0015)及び血中尿素窒素濃度(r=0.96394, p=0.0001)と有意な正相関を示した。また、TGF-β1 mRNA発現量の増加は12週齢以降のSHCラットにおいて認められた。SHCラットにおけるTSC-22 mRNAとTGF-β1 mRNA発現量の間には有意な正相関(r=0.88356, p=0.0001)が認められた。
実施例4 自然発症高コレステロール血症SHCラットおよび正常SDラットの腎臓におけるTSC-22の発現 ―in situ hybridizationによる解析―
10%中性緩衝ホルマリンにより還流固定したSDラットおよびSHCラットから腎臓を採取し、10%中性緩衝ホルマリンによる固定後、パラフィン包埋してブロックを作製した。これを4μmの厚さで薄切し、in situ hybridization (ISH)染色用の切片として使用した。以下の配列をもとにT3およびSP6 RNA polymerase を用いてジゴキシゲニン(DIG)標識RNAプローブを作製した。DIG標識にはDIG RNA Labeling Mix(ロシュ社)を用いた。GAPDH(glyceraldehyde-3-phosphate-dehydrogenase)遺伝子をポジティブコントロールとしてラット腎臓におけるISHの条件を確認した後、TSC-22アンチセンスプローブおよびそのセンスプローブ[配列番号:3;ラットTSC-22 mRNA(GenBank Accession番号:L25785)の3'-非翻訳領域の一部(塩基番号:611-952)]、抗DIG抗体および発色基質としてNBT/BCIP(nitro blue tetrazolium/5-bromo-4-chloro-3-indolyl phosphate)を用いてISHを行った。染色後、ケルネヒトロートにより核染色を行った。
その結果、図1に示すようにSHCラット腎臓の近位尿細管、薄壁尿細管、糸球体包の上皮細胞と足細胞、遠位尿細管および集合管の上皮細胞にシグナルが認められ、正常のものより明らかに強かった。また、SHCラット腎でシグナルが強かった尿細管は管腔が著しく拡張していた。また、SHCラット腎には、炎症部位が存在したがTSC-22の発現シグナルは認められなかった。なお、センスプローブによるシグナルはSDおよびSHCラット腎ともに認められなかった。
以上の結果は、TSC-22が糸球体や尿細管の上皮細胞系で高発現することと腎障害の発症が密接に関係していることを示唆している。
本発明のスクリーニング法によれば、優れた効果を有し、かつ、副作用のない腎疾患や糖尿病などの予防・治療薬をスクリーニングすることができる。
自然発症高コレステロール血症SHCラットおよび正常SDラットの腎臓におけるTSC-22の発現の様子を示す。図1A〜Cは正常SDラット腎由来切片を示し、図1D〜Fは自然発症高コレステロール血症SHCラット腎由来切片を示す。図1AおよびD(倍率:×50)並びに図1BおよびE(倍率:×400)は尿細管の顕微鏡像、図1CおよびF(倍率:×400)は糸球体の顕微鏡像である。

Claims (37)

  1. 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法。
  2. 配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法。
  3. 疾患が糖尿病または腎疾患である請求項1記載のスクリーニング方法。
  4. 疾患が糖尿病性腎症である請求項1記載のスクリーニング方法。
  5. 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を産生する能力を有する細胞を被験物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下における該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の生産量を比較することを特徴とする、請求項1記載のスクリーニング方法。
  6. (a) 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を産生する能力を有する細胞、並びに(b) 該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩が結合し得るポリヌクレオチドおよび該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩と相互作用し得る転写制御因子からなる群より選択される物質を含んでなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング用キット。
  7. 被験物質の存在下および非存在下における、配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を比較することを特徴とする、請求項1記載のスクリーニング方法。
  8. (a) 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩、並びに(b) 該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩が結合し得るポリヌクレオチドあるいは該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩と相互作用し得る転写制御因子を含んでなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング用キット。
  9. 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩により発現が制御される遺伝子を含有する細胞および該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を、被験物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下における該遺伝子の発現を比較することを特徴とする、請求項7記載のスクリーニング方法。
  10. (a) 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩により発現が制御される遺伝子を含有する細胞、(b) 該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩、並びに(c) 該遺伝子とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを含んでなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング用キット。
  11. 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を産生する能力を有する細胞を被験物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下における該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を比較することを特徴とする、請求項7記載のスクリーニング方法。
  12. (a) 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を産生する能力を有する細胞、並びに(b) 該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩により発現が制御される遺伝子とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを含んでなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング用キット。
  13. 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを用いることを特徴とする、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法。
  14. 配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを用いることを特徴とする、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング方法。
  15. ポリヌクレオチドが配列番号:1で表される塩基配列の全部または一部を含有する請求項14記載のスクリーニング方法。
  16. 疾患が糖尿病または腎疾患である請求項14記載のスクリーニング方法。
  17. 疾患が糖尿病性腎症である請求項14記載のスクリーニング方法。
  18. 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を産生する能力を有する細胞を被験物質の存在下および非存在下に培養し、両条件下における該蛋白質またはその部分ペプチドをコードするmRNAの量を比較することを特徴とする、請求項14記載のスクリーニング方法。
  19. (a) 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を産生する能力を有する細胞、並びに(b) 該蛋白質またはその部分ペプチドをコードするmRNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るポリヌクレオチドを含んでなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療物質のスクリーニング用キット。
  20. 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療薬。
  21. 疾患が糖尿病または腎疾患である請求項20記載の予防・治療薬。
  22. 疾患が糖尿病性腎症である請求項20記載の予防・治療薬。
  23. 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列と相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドを含有してなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の予防・治療薬。
  24. 疾患が糖尿病または腎疾患である請求項23記載の予防・治療薬。
  25. 疾患が糖尿病性腎症である請求項23記載の予防・治療薬。
  26. 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の診断薬。
  27. 疾患が糖尿病または腎疾患である請求項26記載の診断薬。
  28. 疾患が糖尿病性腎症である請求項26記載の診断薬。
  29. 配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチドを含有してなる、該蛋白質またはその塩が関連する疾患の診断薬。
  30. 疾患が糖尿病または腎疾患である請求項29記載の診断薬。
  31. 疾患が糖尿病性腎症である請求項29記載の診断薬。
  32. TSC−22抑制薬を含有してなる糖尿病または腎疾患の予防・治療薬。
  33. 腎疾患が糖尿病性腎症である請求項32記載の予防・治療薬。
  34. 哺乳動物にTSC−22抑制薬を投与することを特徴とする、該哺乳動物における糖尿病または腎疾患の予防または治療方法。
  35. 腎疾患が糖尿病性腎症である請求項34記載の方法。
  36. 糖尿病または腎疾患の予防・治療薬を製造するための、TSC−22抑制薬の使用。
  37. 腎疾患が糖尿病性腎症である請求項36記載の使用。
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