JP2004173602A - 緑化基盤材 - Google Patents
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Abstract
【課題】産業廃棄物としての石炭灰や発泡ガラスを有効に活用し、金網なしでも降雨や湧水により侵食や流出しにくい緑化基盤材の提供。
【解決手段】生育基盤材を法面に吹き付けて植物を導入する緑化工法に用いる緑化基盤材であって、抜根材のチップを堆肥化したバーク堆肥と石炭灰に固結材としてセメントを加え、これに種子を混入し、そして上記石炭灰を5%〜25%含有している。
【選択図】 図1
【解決手段】生育基盤材を法面に吹き付けて植物を導入する緑化工法に用いる緑化基盤材であって、抜根材のチップを堆肥化したバーク堆肥と石炭灰に固結材としてセメントを加え、これに種子を混入し、そして上記石炭灰を5%〜25%含有している。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、法面や斜面などを緑化する場合に、降雨あるいは降雪によって流出しないようにした緑化基盤材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
切り土法面や盛土法面の侵食防止と安定のために種子を混合した緑化基盤材が法面に吹き付けられることが多い。この法面緑化工においては、早期の発芽と法面の侵食防止のため、草本植物が用いられることが多い。ところで、梅雨などの降雨時期や冬季の植物の生育が遅い時期などにおいては、一旦吹き付けた緑化基盤材が降雨あるいは降雪等により流出するおそれがある。また、湧水があるところでは、このような時期以外でも吹き付けた緑化基盤材は流出する。この為、上記緑化基盤材の表面侵食を防止するために、草本植物の造成と共に緑化基盤材の接合力を高める方法がある。
【0003】
一般的に緑化基盤材の接合力を高める方法としては、普通ポルトランドセメント等のセメント系侵食防止材やフライアッシュ等の石灰系侵食防止材、高分子系樹脂が多く使用されている。また、金網や繊維の混入等により緑化基盤材の剥離を防止する方法もある。
【0004】
また、木本植物は発芽や初期成育が遅いことから植物群落を形成し、侵食防止効果を上げるにはある程度の年月を必要とすることから、これまでは緑化基盤材としては草本植物が用いられてきた。しかし、地球温暖化対策及び本来の植性種の形成を図る観点から、ポット苗及び根株チップを用いた木本植物の利用も行われるようになって来ている。これは、草本植物の多くは一年生で、一年目は二酸化炭素を吸収するが、冬には枯れて逆に二酸化炭素を放出するのに対し、木本植物は多年生で二酸化炭素を吸収し続けるためである。
【0005】
従来においても、色々な緑化基盤材及び法面緑化工法が知られている。例えば、特開平11−61830号に係る「法面緑化用部材及び法面緑化工法」、特開平11−36311号に係る「法面緑化工法」、特開2000−257074号に係る「法面緑化基盤材料」などが知られている。しかし、これらの工法及び緑化基盤材では、セメントを固結材として金網無くして降雨や湧水によって流出しないように構成されたものは存在していない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、セメント系侵食防止材や石灰系侵食防止材等の侵食防止材緑化基盤材に配合する方法では、そのままでは浸食防止材のカルシウム分が水和反応により緑化基盤材が強く接合し、緑化基盤材の透水性が不足する為に湧水箇所では緑化基盤材が流出するおそれがある。そこで法面勾配が急なところでは金網等で補強する必要がある。また、これらの侵食防止材は基盤材を強く結合する為に固くなり過ぎて保水性が不足し、植物の発芽障害や初期生育の遅延等の副次的な問題が発生する危険性がある。石灰系侵食防止材は水和反応が遅く早期に強度発現しないという欠点もある。このため石灰系侵食防止材では降雨等が予想される場合は施工時期が制限される。また、これらの侵食防止材は強アルカリ性で、基盤材がアルカリ性に遷移し、発芽障害や初期成育の遅延等の問題を生じる場合もある。
【0007】
そして、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系水溶性樹脂、アクリル酸エステルなどの高分子系樹脂は、セメント系侵食防止材や石灰系侵食防止材を使用した場合のような発芽障害や生育障害を来さないという長所がある。しかしながら、紫外線などによる分子構造の劣化や、凍上・凍結などの物理的な外力によって接合力が短期間しか維持できないため、発芽・生育に長期間を有する植物群落を造成する場合には法面侵食が生じるおそれが大きい。
【0008】
また、金網や繊維等を混入する方法では施工にコストがかかることや基盤材が結合していないため、表面が徐々に浸食されるおそれがある。そして、ポット苗や根株チップを用いた木本植物の植栽では生育が遅いため、周囲から飛んできた雑草の繁茂により植栽した木本植物の成育が阻害されたり、木本植物が枯れるなどのおそれがある。
【0009】
表面の切り取りなどを行う法面工事においては、工事の施工により、地表面から法面内部への浸透水量が増加し、法面内部で水が飽和することにより法面内部に浸潤面ができ、そこで法面が崩壊する場合がある。
このように、法面を緑化する従来の法面緑化工には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、降雨や湧水により侵食や流出しにくい緑化基盤材を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる従来の問題点を解決する為になされたものであって、その解決すべき課題は、産業廃棄物としての石炭灰や発泡ガラスを最大限に活用して安価で植物の生育環境に配慮した緑化基盤材を提供することにある。すなわち、石炭灰は火力発電所から発生する産業廃棄物で年間700万トン以上発生しておりその利用が求められている。本発明は、この膨大な量の石炭灰を有効利用することにある。
【0011】
そこで、本発明では産業廃棄物としての石炭灰を少なくとも5%〜25%含有し、透水性や保水性を高め植物の生育を促すとともに、セメントを固結材とすることにより、水和反応が早く早期に強度発現するため、施工時期に制限されにくく、石炭灰の配合により適度な透水性があるため、吹き付けられた緑化基盤材が降雨時に飽和せずに、浸潤面が出来ないため、金網なしでも降雨や湧水により侵食や流出し難くなる。
【0012】
また、請求項2の吹き付け材においては、請求項1の基盤材に産業廃棄物であるガラスを発泡させた発泡ガラスを用い、発泡ガラスの比重は軽く、また、吸水性も低いため、他の材料とともに吹き付けたとき、空位抵抗が大きく、吹き付けた基盤材にくい込みにくく、適度な通気性を有する。また、表面に凹凸があり、他の材料との接着性が悪い。このため、固結材としてセメントを多く用いても固くなり過ぎず、種子の発芽環境として好適な状況となる。
【0013】
また、請求項3の緑化基盤材においては、発泡ガラスにおいて特に独立気泡を有する発泡ガラスを用いることを特徴としている。独立気泡のため、発泡ガラスの吸水性が低く、材料混合時に水を吸いにくく発泡ガラスの比重がより小さくなる。このため、吹き付け時に空気抵抗がより大きく、吹き付けた基盤材にくい込みにくく、適度な通気性を有する。このため、固結材としてセメントを多く用いても固くなり過ぎず、種子の発芽環境として好適な状況となる。
【0014】
また、請求項4の緑化基盤材においては、粉砕した氷或いは、ゼラチン、寒天のうちいずれか一つ以上を用いるもので、吹き付け後、これらの材料が解けだして空洞が出来るものである。
【0015】
また、請求項5の法面緑化工法においては、ポット苗あるいは根株チップ等により木本植物を導入する法面緑化工法において、上記緑化基盤材のセメント量を増加させ、より固く固結することにより、雑草の繁茂を抑制するとともに、石炭灰の配合により適度な透水性と保水性を有することにより、植栽した木本植物の成育を促すものである。
【0016】
また、請求項6の法面工法においては、表面の切り取りなどを行う法面工事において、工事の施工により、地表面から法面内部への浸透水量の増大を防ぐために、上記緑化基盤材を浸透水の増加を防止する法面安定材として用いるものである。この場合、上記緑化基盤材が適度な透水係数を持ち、しかも急勾配でも金網なしで施工できるため、例えば既存の法面の施設や樹木等を残してその間を施工する場合でも、斜面内に浸透する浸透水の増加を抑えることが出来る。
【0017】
上記構成により、本発明では急勾配の法面でも金網を用いずに、侵食防止効果を発揮し、植物の生育を促進することが可能になる。さらに、産業廃棄物としての石炭灰や発泡ガラスを有効利用することが可能となる以下、本発明に係る実施例を詳細に説明する。
【0018】
【発明の実施の形態】
バーク堆肥に石炭灰と独立気泡を有する発泡ガラスとセメントを混合した配合で吹き付け実験を行った。斜面を約5分の勾配に成形し、金網をしない斜面に向けて吹き付け機で厚さ3cmの吹き付けを行った。吹き付け実験の配合を表−1に示す。ここで、石炭灰としてフライアッシュをFA、クリンカアッシュをCAで表す。また、発泡ガラスは、5〜10mm程度に粉砕して用いた。その際、発泡ガラスの単位重量を測定したところ0.255kg/Lであった。
【0019】
[表−1]
【0020】
表−1の配合をバーク堆肥の含水比58.17%、CAの含水31.38%で修正すると表−2ようになる。なお、バーク堆肥と発泡ガラスのところの( )内の数字は容積(L)を表す。
[表−2]
【0021】
吹き付け実験後状況を観察した。▲1▼は少し柔らかく、吹き付け後30分ぐらいして水をかけたところ吹き付けされた緑化基盤材が少し流れた。これに対し、▲2▼、▲3▼、▲4▼は当初少し柔らかいが、徐々に固くなり、吹き付け後30分ぐらいして水をかけても吹き付けされた緑化基盤材は流れなかった。これにより、緑化基盤材に石炭灰、発泡ガラス、セメントを配合することにより水をかけても流れなくなり、急勾配で金網なしでも降雨や湧水等に対して安定なことがわかる。また、今回の場合、セメントを固結材としているため、固結材なしの場合や石灰系の固結材を用いた場合よりも固結時間が短く、固結度も大きくなる。このため、30分という短い時間でも流れなかったことからも分るように、施工時期の制約を受けにくく、降雨や湧水による流出の可能性の低い緑化基盤材を提供出来る。
【0022】
その後、状況の観察を行った。その結果を表−3に示す。なお、固さについては山中式土壌硬度計で土壌硬度として測定した。また、PHはPHメーターで測定した。
[表−3]
通常の土の吹き付けは土壌硬度が約10〜13mmであり、▲1▼はこの範囲にある。しかし、前述のように、吹き付け後に水をかけると流れることから急勾配で金網なしに吹き付けることは難しいと考えられる。▲2▼、▲3▼、▲4▼についてはこれより固くなっており、急勾配で金網なしに吹き付けることが可能と考えられる。しかし、土壌硬度が硬くなりすぎると種子が発芽しなくなる。この限界値は約27mm程度と言われており、今回の場合、発泡ガラスを配合しなかった▲4▼は24mmとかなり固くなっている。このため種子がほとんど発芽していない。これに対し、発泡ガラスを配合した▲3▼は21mmと▲4▼より柔らかくなっており、種子の発芽もみられる。これより、発泡ガラスを配合することにより吹き付けられる緑化基盤材が固くなりすぎるのを防ぐことができ、種子の発芽に好適な環境となる。
【0023】
PHについては石炭灰とセメントを配合するため当初大きくなるが、その後バーク堆肥と反応したり、降雨で流れたりする為に小さくなり、ほぼ1ヶ月程度で7前後となっており、問題のないことがわかる。しかし、当初から発芽効果を上げるため、この配合に木昨酢等の酸性材料を添加することもできる。また、種子の生育を促すうえでは、バーク堆肥に化成肥料等を添加することがより好ましい。
【0024】
この緑化基盤材について、吹き付け実験後38日後と51日後に、供試体を切り取り、単位重量、含水比、透水係数を測定した。その結果を表−4に示す。
[表−4]
これより、▲1▼、▲2▼に比べ▲3▼、▲4▼は単位重量が大きくなっており、密に詰まったことがわかる。また、▲3▼と▲4▼を比べると1割ほど▲4▼の方が単位重量が大きくなっており、密に詰まったことがわかる。なお、表−2より、▲3▼、▲4▼について密度の換算をすると発泡ガラスによる影響は約2%(バーク堆肥80L,FA1.5L、CA10L、セメント0.8Lとすると▲3▼は56kgで100.1L、▲4▼は52.5kgで90.8Lとなる。)であり、表−4ではそれ以上の値となっている。これより、発泡ガラスを配合することにより吹き付けられた緑化基盤材が密に締まり過ぎるのを防ぐことができ、適度な空隙を有するため、種子の発芽に好適な環境となる。なお、発泡ガラスに代えて、他の密度の小さい物、例えば発泡スチロール等を用いることも可能である。
【0025】
また、一般的に植生基盤材のみを吹き付けたときの時の透水係数は2×10−3cm/s程度であり、今回の場合、石炭灰(クリンカアアシュ)を配合することにより、緑化基盤材の透水係数は▲3▼で1.19×10−2、▲4▼で2.14×10−2と、望ましいとされている1×10−3cm/s程度以上となった。このように石炭灰を配合することにより通常の緑化基盤材よりもより多くの透水性を確保することが出来る。このため、降雨や湧水による流出の可能性がより低くなる。なお、▲3▼よりも▲4▼の方が透水係数が大きくなったのは、▲3▼が独立気泡を有する発泡ガラスを配合したため、水が通りにくかった為と考えられる。
【0026】
また、含水比については、独立気泡を有する発泡ガラスを配合した▲1▼、▲2▼、▲3▼については35%〜55%程度、発泡ガラスを配合しなかった▲4▼は74%程度と適度な水分を有することが分る。これにより、石炭灰(クリンカアッシュ)を配合することにより適度な保水性を有することが分る。なお、▲1▼、▲2▼、▲3▼に比べ▲4▼の含水比が高いのは、今回用いた発泡ガラスが独立気泡を有する発泡ガラスのためと考えられる。
【0027】
バーク堆肥として今回の実験では福井県内の(有)サンエー建材社製のバーク堆肥(商標名ヤマソイル)を用いた。これは抜根材を混合したバーク堆肥75%とヤシ繊維25%を用いて製造したもので、この成分表を表−5に示す。なお、他の市販の堆肥を用いることも出来る。
[表−5]
【0028】
なお、石炭灰の一例として例示したフライアッシュやクリンカアッシュの入手方法は特に限定されるものではないが、たとえば火力発電所における副産物として極めて安価に入手可能である。
【0029】
フライアッシュは、例えば、石炭の燃焼時に発生する溶融状態となった灰(石炭灰)の粒子が、高温の燃焼ガス中を浮遊して運搬された後に、ボイラ出口での温度低下により粒径微粒子となったところを電気集塵機にて補足することで入手可能である。このようにして得られたフライアッシュは、直径15μm程度の微粒子であり、(光学)顕微鏡での観察により球形であることが確認される。このため、コンクリートやモルタルにフライアッシュを混入すれば、これらの施工時の流動性が向上する。フライアッシュの主成分は、シリカとアルミナである。
【0030】
また、クリンカアッシュは、例えば、石炭を燃やしたときにボイラ底部の水槽(クリンカホッパ)に落下した石炭灰を回収し、これを破砕機を用いて破砕粉砕し、粒度調整して得ることができ、上記水槽において赤熱状態から急冷水洗されるので化学的に安定している。また、その粒径は粒度調整により、ほとんどが粗砂〜細礫程度の大きさとなっていることがより好ましい。クリンカアッシュは、シリカとアルミナとを主成分とし、小さな孔隙を多数有する、いわば多孔質の石炭灰であって、ブレ−ン方法にて求めたその比表面積は4.5m2/gと砂の約4.5倍である。したがって、クリンカアッシュは、砂などの一般の土壌構成材料と比較して通水性、保水性に優れている。また、このため、凍結深さも砂より約10%程度浅くなるなど凍上抑制効果にも優れている。このため、コンクリート組成物の水分保持に好適である。また、上記フライアッシュ、クリンカアッシュとは、すでに説明したようにその発生箇所により分類されるものであり、環境技術協会および日本フライアッシュ協会の編集・発行による「石炭灰ハンドブック第3版」のI章17ページにもその定義が記載されている。
【0031】
このクリンカアッシュの保水性を調べるために、クリンカアッシュを屋内に放置し含水比の変化を調べた結果を図1に示す。その結果クリンカアッシュはそのまま放置したても10日ほどは含水比が約50%あることが明らかとなった。また、完全に水分がなくなるのには26日ほどかかった。
【0032】
セメントとしては今回の実験では普通ポルトランドセメントを用いたが、他のものを用いてもよい。なお、一般的には、高炉セメントB種を用いた方が六価クロムの溶出量が少なくなる。
【0033】
発泡ガラスとは廃ガラスを高温の釜で発泡させて製造したものである。今回の実験では泡ガラスを5〜10mm程度の大きさに粉砕して用いた。該発泡ガラスは内部に小さな独立気泡があるが水が侵入しない為に軽く、これを加えて吹き付けることで、吹付け時の空気抵抗が大きくて固く締まり難くなる。従って、吹き付けられる緑化基盤材の中に混入している種子から出る根は成長し易くなる。
【0034】
種子の配合は表−6のようにした。
[表−6]
【0035】
なお、上記吹き付られる緑化基盤材及び種子の配合は基本的な配合であり、目標とする硬度を満たす範囲で配合材料の割合を変更したり、高分子保水剤や、混和剤を添加したりすることは可能である。また、バーク堆肥や発泡ガラスも、他のものを用いることもできる。
【0036】
【発明の実施の形態2】
表−7に示す配合で供試体を作製し、六価クロムの溶出試験を行った。ここで、石炭灰としてフライアッシュをFA、クリンカアッシュをCAで表す。また、発泡ガラスは、5〜10mm程度に粉砕して用いた。その際、発泡ガラスの単位重量を測定したところ0.255kg/Lであった。また、バーク堆肥の含水比58.17%、CAの含水31.38%とする。
[表−7]
【0037】
その結果は、0.01mg/L未満と土壌環境基準0.05mg/Lをクリアーした。なお、この測定は、建設省より2000年3月24日付けでなされた「セメント及びセメント系固化材の地盤改良及び改良土の再利用に関する当面の措置について」の通達の運用に際し指定された、「セメント及びセメント系固化材を使用した改良土の六価クロム溶出試験実施要項(案)」の「試験方法(JISK 0102 65.2.1に規定)」に従った。
【0038】
【発明の実施の形態3】
バーク堆肥に石炭灰とセメントを混合した配合で厚さ3cmの吹き付け実験を行った。3分勾配の湧水のある斜面に吹き付け機で吹き付けを行った。吹き付け実験の配合を表−8に示す。ここで、石炭灰としてフライアッシュをFA、クリンカアッシュをCAで表す。
[表−8]
【0039】
吹き付け実験後状況を観察したところ、▲6▼は徐々に固くなり、吹き付け後30分ぐらいして水をかけても吹き付けられた緑化基盤材は流れなかった。また、湧水箇所でも緑化基盤材の大きな流出はみられなかった。これにより、緑化基盤材に石炭灰、セメントを配合することにより、水をかけても流れなくなり、急勾配で金網なしでも降雨や湧水等に対して安定なことが分る。
【0040】
また、現地で供試体を取り強度と透水係数を調べ、その結果を表−9に示している。
[表−9]
その後、10ヶ月間種子の発芽状況を観察したが、吹き付けられた緑化基盤材が固くて芽は出なかった。なお、山中式土壌硬度計で測定した硬度は約30mmであった。一般的に土壌硬度が硬くなると種子が発芽しなくなり、この限界値は約27mm程度と言われており、今回の場合30mmは限界値以上であり、防草効果としては十分と考えられる。
【0041】
一般的に植生基盤材のみを吹き付けたときの時の透水係数は2×10−3cm/s程度であり、1×10−3cm/s程度以上であることが望ましいとされている。今回の場合、植生基盤材の望ましい値の70%程度であるが、植栽あるいは播種により発芽した苗木に水分を供給するには十分と考えられる。
これより、ポット苗あるいは根株チップ等により木本植物を導入する法面緑化工法において、吹き付け材のセメント量を増加させ、より固く固結することにより、雑草の繁茂を抑制するとともに、石炭灰の配合により適度な透水性と保水性を有することにより、急勾配で金網なしに吹き付けることが可能であり、植栽した木本植物の成育を促すことができる。
また、このように透水係数を低くすることにより、表面水の法面内部への浸透量を抑制し、法面内部に浸潤面が出来ることを防止する事が出来る。この結果、法面の安定を図ることが可能となる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明の具体的な構成は本実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。例えば、施工箇所は法面だけでなく平面でもよく自由である。例えば堤防や道路の植栽に用いることもできる。また、吹き付けられる緑化基盤材の厚さも自由であり、緑化基盤材や種子の配合、施工機械も適宜変更可能である。また、石灰や繊維や保水材、肥料や混和剤の混入も可能である。そして、緑化基盤材の硬度、透水係数は用いる場所の性状を勘案しながら決定すればよい。
【0043】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の緑化基盤材は産業廃棄物としての石炭灰や発泡ガラスを有効に活用し、植物に好適な保水性や透水性、通気性を有し、セメントを固結材とするため、金網なしでも降雨や湧水により侵食や流出しにくい緑化基盤材を構成することが出来る。そして、セメントを固結材としていることで固結時間が短く、石炭灰(クリンカアッシュ)は保水材、透水材として機能する。また、緑化基盤材の硬度を大きくすることにより、種子の発芽を抑制し、ポット苗あるいは根株チップ等により木本植物を導入する法面緑化工法において、雑草の繁茂を抑制すると共に、石炭灰の配合により適度な透水性と保水性を有することにより、植栽した木本植物の成育を促すことができる。また、法面や平面等の地盤内への浸透水を制御することにより、例えば余分な浸透水を排除し斜面の安定を図ることが出来る。
これより、急勾配の法面でも金網を用いずに、侵食防止効果を発揮し、植物の生育を促進することが可能になる。さらに、産業廃棄物としての石炭灰や発泡ガラスを有効利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】クリンカアッシュを屋内に放置して含水比の変化を表している。
【発明が属する技術分野】
本発明は、法面や斜面などを緑化する場合に、降雨あるいは降雪によって流出しないようにした緑化基盤材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
切り土法面や盛土法面の侵食防止と安定のために種子を混合した緑化基盤材が法面に吹き付けられることが多い。この法面緑化工においては、早期の発芽と法面の侵食防止のため、草本植物が用いられることが多い。ところで、梅雨などの降雨時期や冬季の植物の生育が遅い時期などにおいては、一旦吹き付けた緑化基盤材が降雨あるいは降雪等により流出するおそれがある。また、湧水があるところでは、このような時期以外でも吹き付けた緑化基盤材は流出する。この為、上記緑化基盤材の表面侵食を防止するために、草本植物の造成と共に緑化基盤材の接合力を高める方法がある。
【0003】
一般的に緑化基盤材の接合力を高める方法としては、普通ポルトランドセメント等のセメント系侵食防止材やフライアッシュ等の石灰系侵食防止材、高分子系樹脂が多く使用されている。また、金網や繊維の混入等により緑化基盤材の剥離を防止する方法もある。
【0004】
また、木本植物は発芽や初期成育が遅いことから植物群落を形成し、侵食防止効果を上げるにはある程度の年月を必要とすることから、これまでは緑化基盤材としては草本植物が用いられてきた。しかし、地球温暖化対策及び本来の植性種の形成を図る観点から、ポット苗及び根株チップを用いた木本植物の利用も行われるようになって来ている。これは、草本植物の多くは一年生で、一年目は二酸化炭素を吸収するが、冬には枯れて逆に二酸化炭素を放出するのに対し、木本植物は多年生で二酸化炭素を吸収し続けるためである。
【0005】
従来においても、色々な緑化基盤材及び法面緑化工法が知られている。例えば、特開平11−61830号に係る「法面緑化用部材及び法面緑化工法」、特開平11−36311号に係る「法面緑化工法」、特開2000−257074号に係る「法面緑化基盤材料」などが知られている。しかし、これらの工法及び緑化基盤材では、セメントを固結材として金網無くして降雨や湧水によって流出しないように構成されたものは存在していない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、セメント系侵食防止材や石灰系侵食防止材等の侵食防止材緑化基盤材に配合する方法では、そのままでは浸食防止材のカルシウム分が水和反応により緑化基盤材が強く接合し、緑化基盤材の透水性が不足する為に湧水箇所では緑化基盤材が流出するおそれがある。そこで法面勾配が急なところでは金網等で補強する必要がある。また、これらの侵食防止材は基盤材を強く結合する為に固くなり過ぎて保水性が不足し、植物の発芽障害や初期生育の遅延等の副次的な問題が発生する危険性がある。石灰系侵食防止材は水和反応が遅く早期に強度発現しないという欠点もある。このため石灰系侵食防止材では降雨等が予想される場合は施工時期が制限される。また、これらの侵食防止材は強アルカリ性で、基盤材がアルカリ性に遷移し、発芽障害や初期成育の遅延等の問題を生じる場合もある。
【0007】
そして、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ウレタン系水溶性樹脂、アクリル酸エステルなどの高分子系樹脂は、セメント系侵食防止材や石灰系侵食防止材を使用した場合のような発芽障害や生育障害を来さないという長所がある。しかしながら、紫外線などによる分子構造の劣化や、凍上・凍結などの物理的な外力によって接合力が短期間しか維持できないため、発芽・生育に長期間を有する植物群落を造成する場合には法面侵食が生じるおそれが大きい。
【0008】
また、金網や繊維等を混入する方法では施工にコストがかかることや基盤材が結合していないため、表面が徐々に浸食されるおそれがある。そして、ポット苗や根株チップを用いた木本植物の植栽では生育が遅いため、周囲から飛んできた雑草の繁茂により植栽した木本植物の成育が阻害されたり、木本植物が枯れるなどのおそれがある。
【0009】
表面の切り取りなどを行う法面工事においては、工事の施工により、地表面から法面内部への浸透水量が増加し、法面内部で水が飽和することにより法面内部に浸潤面ができ、そこで法面が崩壊する場合がある。
このように、法面を緑化する従来の法面緑化工には上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、降雨や湧水により侵食や流出しにくい緑化基盤材を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる従来の問題点を解決する為になされたものであって、その解決すべき課題は、産業廃棄物としての石炭灰や発泡ガラスを最大限に活用して安価で植物の生育環境に配慮した緑化基盤材を提供することにある。すなわち、石炭灰は火力発電所から発生する産業廃棄物で年間700万トン以上発生しておりその利用が求められている。本発明は、この膨大な量の石炭灰を有効利用することにある。
【0011】
そこで、本発明では産業廃棄物としての石炭灰を少なくとも5%〜25%含有し、透水性や保水性を高め植物の生育を促すとともに、セメントを固結材とすることにより、水和反応が早く早期に強度発現するため、施工時期に制限されにくく、石炭灰の配合により適度な透水性があるため、吹き付けられた緑化基盤材が降雨時に飽和せずに、浸潤面が出来ないため、金網なしでも降雨や湧水により侵食や流出し難くなる。
【0012】
また、請求項2の吹き付け材においては、請求項1の基盤材に産業廃棄物であるガラスを発泡させた発泡ガラスを用い、発泡ガラスの比重は軽く、また、吸水性も低いため、他の材料とともに吹き付けたとき、空位抵抗が大きく、吹き付けた基盤材にくい込みにくく、適度な通気性を有する。また、表面に凹凸があり、他の材料との接着性が悪い。このため、固結材としてセメントを多く用いても固くなり過ぎず、種子の発芽環境として好適な状況となる。
【0013】
また、請求項3の緑化基盤材においては、発泡ガラスにおいて特に独立気泡を有する発泡ガラスを用いることを特徴としている。独立気泡のため、発泡ガラスの吸水性が低く、材料混合時に水を吸いにくく発泡ガラスの比重がより小さくなる。このため、吹き付け時に空気抵抗がより大きく、吹き付けた基盤材にくい込みにくく、適度な通気性を有する。このため、固結材としてセメントを多く用いても固くなり過ぎず、種子の発芽環境として好適な状況となる。
【0014】
また、請求項4の緑化基盤材においては、粉砕した氷或いは、ゼラチン、寒天のうちいずれか一つ以上を用いるもので、吹き付け後、これらの材料が解けだして空洞が出来るものである。
【0015】
また、請求項5の法面緑化工法においては、ポット苗あるいは根株チップ等により木本植物を導入する法面緑化工法において、上記緑化基盤材のセメント量を増加させ、より固く固結することにより、雑草の繁茂を抑制するとともに、石炭灰の配合により適度な透水性と保水性を有することにより、植栽した木本植物の成育を促すものである。
【0016】
また、請求項6の法面工法においては、表面の切り取りなどを行う法面工事において、工事の施工により、地表面から法面内部への浸透水量の増大を防ぐために、上記緑化基盤材を浸透水の増加を防止する法面安定材として用いるものである。この場合、上記緑化基盤材が適度な透水係数を持ち、しかも急勾配でも金網なしで施工できるため、例えば既存の法面の施設や樹木等を残してその間を施工する場合でも、斜面内に浸透する浸透水の増加を抑えることが出来る。
【0017】
上記構成により、本発明では急勾配の法面でも金網を用いずに、侵食防止効果を発揮し、植物の生育を促進することが可能になる。さらに、産業廃棄物としての石炭灰や発泡ガラスを有効利用することが可能となる以下、本発明に係る実施例を詳細に説明する。
【0018】
【発明の実施の形態】
バーク堆肥に石炭灰と独立気泡を有する発泡ガラスとセメントを混合した配合で吹き付け実験を行った。斜面を約5分の勾配に成形し、金網をしない斜面に向けて吹き付け機で厚さ3cmの吹き付けを行った。吹き付け実験の配合を表−1に示す。ここで、石炭灰としてフライアッシュをFA、クリンカアッシュをCAで表す。また、発泡ガラスは、5〜10mm程度に粉砕して用いた。その際、発泡ガラスの単位重量を測定したところ0.255kg/Lであった。
【0019】
[表−1]
【0020】
表−1の配合をバーク堆肥の含水比58.17%、CAの含水31.38%で修正すると表−2ようになる。なお、バーク堆肥と発泡ガラスのところの( )内の数字は容積(L)を表す。
[表−2]
【0021】
吹き付け実験後状況を観察した。▲1▼は少し柔らかく、吹き付け後30分ぐらいして水をかけたところ吹き付けされた緑化基盤材が少し流れた。これに対し、▲2▼、▲3▼、▲4▼は当初少し柔らかいが、徐々に固くなり、吹き付け後30分ぐらいして水をかけても吹き付けされた緑化基盤材は流れなかった。これにより、緑化基盤材に石炭灰、発泡ガラス、セメントを配合することにより水をかけても流れなくなり、急勾配で金網なしでも降雨や湧水等に対して安定なことがわかる。また、今回の場合、セメントを固結材としているため、固結材なしの場合や石灰系の固結材を用いた場合よりも固結時間が短く、固結度も大きくなる。このため、30分という短い時間でも流れなかったことからも分るように、施工時期の制約を受けにくく、降雨や湧水による流出の可能性の低い緑化基盤材を提供出来る。
【0022】
その後、状況の観察を行った。その結果を表−3に示す。なお、固さについては山中式土壌硬度計で土壌硬度として測定した。また、PHはPHメーターで測定した。
[表−3]
通常の土の吹き付けは土壌硬度が約10〜13mmであり、▲1▼はこの範囲にある。しかし、前述のように、吹き付け後に水をかけると流れることから急勾配で金網なしに吹き付けることは難しいと考えられる。▲2▼、▲3▼、▲4▼についてはこれより固くなっており、急勾配で金網なしに吹き付けることが可能と考えられる。しかし、土壌硬度が硬くなりすぎると種子が発芽しなくなる。この限界値は約27mm程度と言われており、今回の場合、発泡ガラスを配合しなかった▲4▼は24mmとかなり固くなっている。このため種子がほとんど発芽していない。これに対し、発泡ガラスを配合した▲3▼は21mmと▲4▼より柔らかくなっており、種子の発芽もみられる。これより、発泡ガラスを配合することにより吹き付けられる緑化基盤材が固くなりすぎるのを防ぐことができ、種子の発芽に好適な環境となる。
【0023】
PHについては石炭灰とセメントを配合するため当初大きくなるが、その後バーク堆肥と反応したり、降雨で流れたりする為に小さくなり、ほぼ1ヶ月程度で7前後となっており、問題のないことがわかる。しかし、当初から発芽効果を上げるため、この配合に木昨酢等の酸性材料を添加することもできる。また、種子の生育を促すうえでは、バーク堆肥に化成肥料等を添加することがより好ましい。
【0024】
この緑化基盤材について、吹き付け実験後38日後と51日後に、供試体を切り取り、単位重量、含水比、透水係数を測定した。その結果を表−4に示す。
[表−4]
これより、▲1▼、▲2▼に比べ▲3▼、▲4▼は単位重量が大きくなっており、密に詰まったことがわかる。また、▲3▼と▲4▼を比べると1割ほど▲4▼の方が単位重量が大きくなっており、密に詰まったことがわかる。なお、表−2より、▲3▼、▲4▼について密度の換算をすると発泡ガラスによる影響は約2%(バーク堆肥80L,FA1.5L、CA10L、セメント0.8Lとすると▲3▼は56kgで100.1L、▲4▼は52.5kgで90.8Lとなる。)であり、表−4ではそれ以上の値となっている。これより、発泡ガラスを配合することにより吹き付けられた緑化基盤材が密に締まり過ぎるのを防ぐことができ、適度な空隙を有するため、種子の発芽に好適な環境となる。なお、発泡ガラスに代えて、他の密度の小さい物、例えば発泡スチロール等を用いることも可能である。
【0025】
また、一般的に植生基盤材のみを吹き付けたときの時の透水係数は2×10−3cm/s程度であり、今回の場合、石炭灰(クリンカアアシュ)を配合することにより、緑化基盤材の透水係数は▲3▼で1.19×10−2、▲4▼で2.14×10−2と、望ましいとされている1×10−3cm/s程度以上となった。このように石炭灰を配合することにより通常の緑化基盤材よりもより多くの透水性を確保することが出来る。このため、降雨や湧水による流出の可能性がより低くなる。なお、▲3▼よりも▲4▼の方が透水係数が大きくなったのは、▲3▼が独立気泡を有する発泡ガラスを配合したため、水が通りにくかった為と考えられる。
【0026】
また、含水比については、独立気泡を有する発泡ガラスを配合した▲1▼、▲2▼、▲3▼については35%〜55%程度、発泡ガラスを配合しなかった▲4▼は74%程度と適度な水分を有することが分る。これにより、石炭灰(クリンカアッシュ)を配合することにより適度な保水性を有することが分る。なお、▲1▼、▲2▼、▲3▼に比べ▲4▼の含水比が高いのは、今回用いた発泡ガラスが独立気泡を有する発泡ガラスのためと考えられる。
【0027】
バーク堆肥として今回の実験では福井県内の(有)サンエー建材社製のバーク堆肥(商標名ヤマソイル)を用いた。これは抜根材を混合したバーク堆肥75%とヤシ繊維25%を用いて製造したもので、この成分表を表−5に示す。なお、他の市販の堆肥を用いることも出来る。
[表−5]
【0028】
なお、石炭灰の一例として例示したフライアッシュやクリンカアッシュの入手方法は特に限定されるものではないが、たとえば火力発電所における副産物として極めて安価に入手可能である。
【0029】
フライアッシュは、例えば、石炭の燃焼時に発生する溶融状態となった灰(石炭灰)の粒子が、高温の燃焼ガス中を浮遊して運搬された後に、ボイラ出口での温度低下により粒径微粒子となったところを電気集塵機にて補足することで入手可能である。このようにして得られたフライアッシュは、直径15μm程度の微粒子であり、(光学)顕微鏡での観察により球形であることが確認される。このため、コンクリートやモルタルにフライアッシュを混入すれば、これらの施工時の流動性が向上する。フライアッシュの主成分は、シリカとアルミナである。
【0030】
また、クリンカアッシュは、例えば、石炭を燃やしたときにボイラ底部の水槽(クリンカホッパ)に落下した石炭灰を回収し、これを破砕機を用いて破砕粉砕し、粒度調整して得ることができ、上記水槽において赤熱状態から急冷水洗されるので化学的に安定している。また、その粒径は粒度調整により、ほとんどが粗砂〜細礫程度の大きさとなっていることがより好ましい。クリンカアッシュは、シリカとアルミナとを主成分とし、小さな孔隙を多数有する、いわば多孔質の石炭灰であって、ブレ−ン方法にて求めたその比表面積は4.5m2/gと砂の約4.5倍である。したがって、クリンカアッシュは、砂などの一般の土壌構成材料と比較して通水性、保水性に優れている。また、このため、凍結深さも砂より約10%程度浅くなるなど凍上抑制効果にも優れている。このため、コンクリート組成物の水分保持に好適である。また、上記フライアッシュ、クリンカアッシュとは、すでに説明したようにその発生箇所により分類されるものであり、環境技術協会および日本フライアッシュ協会の編集・発行による「石炭灰ハンドブック第3版」のI章17ページにもその定義が記載されている。
【0031】
このクリンカアッシュの保水性を調べるために、クリンカアッシュを屋内に放置し含水比の変化を調べた結果を図1に示す。その結果クリンカアッシュはそのまま放置したても10日ほどは含水比が約50%あることが明らかとなった。また、完全に水分がなくなるのには26日ほどかかった。
【0032】
セメントとしては今回の実験では普通ポルトランドセメントを用いたが、他のものを用いてもよい。なお、一般的には、高炉セメントB種を用いた方が六価クロムの溶出量が少なくなる。
【0033】
発泡ガラスとは廃ガラスを高温の釜で発泡させて製造したものである。今回の実験では泡ガラスを5〜10mm程度の大きさに粉砕して用いた。該発泡ガラスは内部に小さな独立気泡があるが水が侵入しない為に軽く、これを加えて吹き付けることで、吹付け時の空気抵抗が大きくて固く締まり難くなる。従って、吹き付けられる緑化基盤材の中に混入している種子から出る根は成長し易くなる。
【0034】
種子の配合は表−6のようにした。
[表−6]
【0035】
なお、上記吹き付られる緑化基盤材及び種子の配合は基本的な配合であり、目標とする硬度を満たす範囲で配合材料の割合を変更したり、高分子保水剤や、混和剤を添加したりすることは可能である。また、バーク堆肥や発泡ガラスも、他のものを用いることもできる。
【0036】
【発明の実施の形態2】
表−7に示す配合で供試体を作製し、六価クロムの溶出試験を行った。ここで、石炭灰としてフライアッシュをFA、クリンカアッシュをCAで表す。また、発泡ガラスは、5〜10mm程度に粉砕して用いた。その際、発泡ガラスの単位重量を測定したところ0.255kg/Lであった。また、バーク堆肥の含水比58.17%、CAの含水31.38%とする。
[表−7]
【0037】
その結果は、0.01mg/L未満と土壌環境基準0.05mg/Lをクリアーした。なお、この測定は、建設省より2000年3月24日付けでなされた「セメント及びセメント系固化材の地盤改良及び改良土の再利用に関する当面の措置について」の通達の運用に際し指定された、「セメント及びセメント系固化材を使用した改良土の六価クロム溶出試験実施要項(案)」の「試験方法(JISK 0102 65.2.1に規定)」に従った。
【0038】
【発明の実施の形態3】
バーク堆肥に石炭灰とセメントを混合した配合で厚さ3cmの吹き付け実験を行った。3分勾配の湧水のある斜面に吹き付け機で吹き付けを行った。吹き付け実験の配合を表−8に示す。ここで、石炭灰としてフライアッシュをFA、クリンカアッシュをCAで表す。
[表−8]
【0039】
吹き付け実験後状況を観察したところ、▲6▼は徐々に固くなり、吹き付け後30分ぐらいして水をかけても吹き付けられた緑化基盤材は流れなかった。また、湧水箇所でも緑化基盤材の大きな流出はみられなかった。これにより、緑化基盤材に石炭灰、セメントを配合することにより、水をかけても流れなくなり、急勾配で金網なしでも降雨や湧水等に対して安定なことが分る。
【0040】
また、現地で供試体を取り強度と透水係数を調べ、その結果を表−9に示している。
[表−9]
その後、10ヶ月間種子の発芽状況を観察したが、吹き付けられた緑化基盤材が固くて芽は出なかった。なお、山中式土壌硬度計で測定した硬度は約30mmであった。一般的に土壌硬度が硬くなると種子が発芽しなくなり、この限界値は約27mm程度と言われており、今回の場合30mmは限界値以上であり、防草効果としては十分と考えられる。
【0041】
一般的に植生基盤材のみを吹き付けたときの時の透水係数は2×10−3cm/s程度であり、1×10−3cm/s程度以上であることが望ましいとされている。今回の場合、植生基盤材の望ましい値の70%程度であるが、植栽あるいは播種により発芽した苗木に水分を供給するには十分と考えられる。
これより、ポット苗あるいは根株チップ等により木本植物を導入する法面緑化工法において、吹き付け材のセメント量を増加させ、より固く固結することにより、雑草の繁茂を抑制するとともに、石炭灰の配合により適度な透水性と保水性を有することにより、急勾配で金網なしに吹き付けることが可能であり、植栽した木本植物の成育を促すことができる。
また、このように透水係数を低くすることにより、表面水の法面内部への浸透量を抑制し、法面内部に浸潤面が出来ることを防止する事が出来る。この結果、法面の安定を図ることが可能となる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明の具体的な構成は本実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。例えば、施工箇所は法面だけでなく平面でもよく自由である。例えば堤防や道路の植栽に用いることもできる。また、吹き付けられる緑化基盤材の厚さも自由であり、緑化基盤材や種子の配合、施工機械も適宜変更可能である。また、石灰や繊維や保水材、肥料や混和剤の混入も可能である。そして、緑化基盤材の硬度、透水係数は用いる場所の性状を勘案しながら決定すればよい。
【0043】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の緑化基盤材は産業廃棄物としての石炭灰や発泡ガラスを有効に活用し、植物に好適な保水性や透水性、通気性を有し、セメントを固結材とするため、金網なしでも降雨や湧水により侵食や流出しにくい緑化基盤材を構成することが出来る。そして、セメントを固結材としていることで固結時間が短く、石炭灰(クリンカアッシュ)は保水材、透水材として機能する。また、緑化基盤材の硬度を大きくすることにより、種子の発芽を抑制し、ポット苗あるいは根株チップ等により木本植物を導入する法面緑化工法において、雑草の繁茂を抑制すると共に、石炭灰の配合により適度な透水性と保水性を有することにより、植栽した木本植物の成育を促すことができる。また、法面や平面等の地盤内への浸透水を制御することにより、例えば余分な浸透水を排除し斜面の安定を図ることが出来る。
これより、急勾配の法面でも金網を用いずに、侵食防止効果を発揮し、植物の生育を促進することが可能になる。さらに、産業廃棄物としての石炭灰や発泡ガラスを有効利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】クリンカアッシュを屋内に放置して含水比の変化を表している。
Claims (6)
- 抜根材のチップを堆肥化したバーク堆肥と石炭灰に固結材としてのセメントを加え、これに種子を混入した基盤材を法面などに吹き付けて植物を導入する緑化基盤材において、上記石炭灰を5%〜25%含有したことを特徴とする緑化基盤材。
- 上記緑化基盤材に、発泡ガラスを含有した請求項1に記載の緑化基盤材。
- 上記発泡ガラスの内部に小さな独立気泡を形成した請求項2に記載の緑化基盤材。
- 上記緑化基盤材に、粉砕した氷、或いはゼラチン、寒天のうち何れか一つ以上を含有した請求項1、請求項2、又は請求項3記載の緑化基盤材。
- ポット苗あるいは根株チップ等により木本植物を導入する法面等の緑化基盤において、セメントの量を増加して山中式土壌硬度計で約27mm以上になるように基盤材を固くして雑草の繁茂を抑制し、透水係数を1×10−3cm/s程度以上とした請求項1、請求項2、請求項3、又は請求項4記載の緑化基盤材。
- 法面に基盤材を吹き付けして侵食防止、或いは浸透水の制御を行う為に、透水係数を1×10−3cm/s程度以下とした請求項1、請求項2、請求項3、又は請求項4記載の緑化基盤材。
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