JP2004173550A - 野菜の鮮度保持剤、野菜の鮮度保持方法および野菜の栽培方法 - Google Patents

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  • Storage Of Fruits Or Vegetables (AREA)
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Abstract

【課題】野菜、果物等の保存や栽培において、安全で、良好な鮮度保持の薬剤を提供し、かつ、該薬剤を用いた野菜類の保存方法、栽培方法を提供する。
【解決手段】ヒノキチオール、イソチオシアン酸アリルおよびヒマシ油をソルビタン系乳化剤とともに水に分散することによって上記課題は達成される。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、野菜の鮮度保持剤、同鮮度保持方法および同栽培方法に関する。詳しくは、根菜類、葉菜類、果菜類等の鮮度保持あるいは栽培に好適な薬剤およびそれを用いる方法に関する。
【0002】
近年、食の安全性について極めて重要な関心事になってきている。例えば、野菜類への残留農薬、さらには、農薬がもたらす環境への影響(環境ホルモン、催奇毒性、慢性毒性等)も配慮しなければならない。
【0003】
根菜類の種芋は、その保存に際し、チウラム、オーソサイト、ベンレートT、ジマンダイセン(いずれも商品名)等の薬剤で処理されているのが通常であり、これらの中には環境ホルモンの疑いがあるものがあり、さらには、種芋中に移行し、子芋にまで引き継がれる可能性がある。
【0004】
なお、長薯、自然薯、里芋、馬鈴薯、生蒟蒻芋等の根菜類では、採取から全量消費されるまでには約1年間かかり、長期貯蔵性が要求される。そのような根菜類では低温の保湿貯蔵蔵で保管されているが、加令による味の低下ばかりでなく、一部腐敗し、そのために全体の味が落ちるという問題がある。
【0005】
一方、白菜、キャベツ、レタス、ほうれん草等の葉菜類では、腐敗が進行しやすく、また、しおれやすいという問題が有り、朝採ったものをすぐに流通に乗せる必要が有る。
【0006】
トマト、キュウリ等の果菜類では、上記した根菜類ほどの貯蔵や葉菜類ほどの早急な流通へ乗せることは要求されないが、鮮度が要求され、しなびるという問題がある。さらに、イチゴでは極めて腐敗が早く、鮮度保持が強く求められている。
【0007】
特に、イチゴにおいては、ウドンコ病、灰色カビ病の防除に栽培中に、例えば、トリホリン乳剤、サプロール乳剤、ピンクロゾリン水和剤、プロシミドン水和剤、スミレックス水和剤(いずれも商品名)等の農薬が使用されるが、これら農薬は環境ホルモンの疑いがあり、これらに代わる安全な薬剤が求められている。
【0008】
りんご、みかん、メロン、バナナ等の果実も、採取期を越えて保管され、流通に載せられており、やはり、保管中の鮮度低下、腐敗が問題である。
【0009】
係る状況下に、これら野菜、果実の鮮度保持のために、熟成ホルモンであるエチレンを吸収する薬剤や発生を防止する薬剤とともに保存することが試みられ、さらに、カビ等の腐敗菌の発生を防止する薬剤を噴霧したり、これら薬剤に浸漬したりしている。
【0010】
ここで用いる薬剤として、わさびの辛み成分であるイソチオシアン酸アリルやヒバの精油であるヒノキチオール等が使用され、その調査結果が特許庁の特許マップシリーズにも記載されている(非特許文献1)。
【0011】
イソチオシアン酸アリルやヒノキチオールは天然物であり、安全な物質として知られており、その有効利用が望まれている。
【0012】
しかしながら、イソチオシアン酸アリルやヒノキチオールは有機溶剤に可溶であるが水には難溶であり、安全に使用するには問題がある。
【0013】
これを解決したものとして、大豆成分を用いた鮮度保持剤が開示されている(特許文献1)が、分散には多量の大豆成分(おから、豆乳等)が必要であり、イソチオシアン酸アリルやヒノキチオールには抗菌性があるとはいうものの、長期の保存等に使用するには問題がある。
【0014】
また、イソチオシアン酸アリルやヒノキチオールを単独で使用すると、それ自体で効果はあるものの、自然薯のような根菜類を長期保存すると、ある時期で効果が終わってしまい、8ヶ月程度の長期保存ができないという問題もある。
【0015】
【特許文献1】
特開平6−113735号公報
【非特許文献1】
特許マップシリーズ“化学24 抗菌性化合物とその応用”2001年6月19日初版発行、特許庁編、社団法人 発明協会発行、P171〜194(2.4植物質)
【0016】
【発明が解決する課題】
本発明の課題は、根菜類を始め各種や菜類の鮮度を長期に保つ、ヒノキチオール、イソチオシアン酸アリルを用いた野菜類の鮮度保持剤を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決する為、ヒノキチオールおよびイソチオシアン酸アリルを併用して、野菜類の保存について研究をした結果、ヒノキチオオールとイソチオシアン酸アリルをヒマシ油と共にソルビタン系乳化剤で乳化し、得られた乳化液を野菜に噴霧したり、野菜を該乳化液に浸漬したりすることで、野菜の鮮度を飛躍的に保存できることを見出し、ついに本発明に到達した。
【0018】
すなわち、本発明は、ヒノキチオール、イソチオシアン酸アリルおよびヒマシ油をソルビタン系乳化剤により乳化してなることを特徴とする野菜の鮮度保持剤である。
【0019】
また、上記鮮度保持剤を使用した、野菜類の鮮度保持方法、種子、種芋の保存方法および野菜類の栽培方法である。
【0020】
本発明では、天然の抗菌剤、抗カビ剤として知られるヒノキチオールとイソチオシアン酸アリルを併用する。その量比は対象とする野菜、種子、種芋等により異なるが、通常1:100〜100:1、好ましくは1:50〜50:1、さらに好ましくは1:10〜10:1とする。
【0021】
ヒノキチオールとは、台湾ヒノキ、ヒバ等の針葉樹から抽出される精油成分であり、本発明では、ヒノキチオールが含まれているものであれば、粗製の精油であっても使用できる。
【0022】
イソチオシアン酸アリルとは、わさび等の辛味成分として知られたもので、粗製のものはカラシ油として知られている。本発明では、イソチオシアン酸アリルが含まれていればいずれでも使用できる。
【0023】
本発明で用いるヒマシ油は、医薬、化粧品原料等に使用されるもので、ヒマシ油であれば特に限定されない。
【0024】
また、本発明では、分散剤として、食品添加物として知られているソルビタン系乳化剤を用いる。
【0025】
上記、ヒノキチオールおよびイソチオシアン酸アリルは水に難溶性であり、かつ、各種乳化剤にでは水にうまく分散できないが、ヒマシ油を用いることによりソルビタン系乳化剤との相乗効果により水にうまく分散できるとともに、ヒノキチオールおよびイソチオシアン酸アリルのみでは十分ではない野菜の鮮度保持効果を長期にわたり持続できる。
【0026】
本発明の鮮度保持剤は、ヒノキチオールおよびイソチオシアン酸アリルをヒマシ油およびソルビタン系乳化剤とともに水に分散することにより製造できる。なお、分散にあたり、ヒノキチオールあるいはイソチオシアン酸アリルをエタノール等の水溶性溶媒に溶解しておいてもよい。また、分散を十分に行う為にアトマイザー等の分散器を使用することもできる。
【0027】
ここで、ヒマシ油の使用量は、ヒノキチオールとイソチオシアン酸アリルの合計量に対して1〜20重量%が適当であり、好ましくは5〜15重量%である。
【0028】
また、ソルビタン系乳化剤の使用量は、ヒノキチオールおよびイソチオシアン酸アリル合計量に対し、1〜20重量%が適当であり、好ましくは5〜15重量%である。
【0029】
本発明では、ヒノキチオール、イソチオシアン酸アリルの高濃度乳化液を作っておいて、使用にあたり、所定濃度になるよう水で希釈して用いることも可能である。また、ヒノキチオール、イソチオシアン酸アリルの高濃度乳化液をそれぞれ作っておいて、所定組成比になるように混ぜ合わせてもよい。
【0030】
本発明のヒノキチオールおよびイソチオシアン酸アリルを含む乳化液を、ヒノキチオール濃度およびイソチオシアン酸アリル合計10〜500ppm、好ましくは50〜400ppm、さらに好ましくは100〜300ppmとし、野菜にかけたり、野菜を浸漬したりすることにより、鮮度保持処理ができる。
【0031】
また、種子、種芋等の保存あるいは播種(植栽)に当たり、所定濃度に調節した本発明の鮮度保持剤を噴霧あるいは鮮度保持剤に浸漬する。特に、種子を水につけて発芽を促すような場合に、本発明の鮮度保持剤に浸漬して栽培すると、種子についているカビ、細菌の増殖が抑えられ、かつ、本発明の鮮度保持剤がもたらす鮮度維持効果が発芽直後にも植物体に作用し、発育が良好になる。さらに、苗をあらかじめ本発明の鮮度保持剤で処理(根部あるいは全体の浸漬、あるいは苗採取前に葉面が濡れる程度の噴霧)することによっても、苗を健康に保つことが可能であり、植栽後の活着が良好となる。
【0032】
なお、保存に当たっては、山芋、サツマイモ、蒟蒻等の根菜類ではおがくず、籾殻、わら等を使用するに際し、あるいは白菜、キャベツ、ねぎ等の葉菜類では新聞紙等を用いるに際し、これらに本発明の鮮度保持剤で処理しておくことで、噴霧あるいは浸漬に代えることが可能であり、このような処理も本発明に含まれる。
【0033】
さらに、キュウリ、イチゴ、メロン、みかん、りんご等の果菜、果実の保存に於いても、本発明の鮮度保持剤で処理することにより、鮮度の維持が顕著である。なお、処理としては、本発明の鮮度保持剤を所定濃度(通常、ヒノキチオールとイソチオシアン酸アリルの合計で10〜500ppm)に調節して噴霧や浸漬、あるいは鮮度保持剤を含浸させたおがくず、籾殻、わら、新聞紙等で囲うことが挙げられる。
【0034】
また、葉菜、根菜、果菜等の野菜をハウス栽培において、本発明の鮮度保持剤を土壌およびハウス壁にあらかじめ噴霧しておくことにより、さらには、栽培中に時々ハウス内に噴霧することにより、得られる野菜の鮮度が格段に向上し、採取後の鮮度も長期にわたって維持される。
【0035】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0036】
実施例1(鮮度保持剤の調製)
ヒノキチオール(成田林業社製)40gとイソチオシアン酸アリル(関東化学社製)60gをヒマシ油(第一工業薬品社製)10gとソルビタン系乳化剤(第一工業薬品社製)10gの混合物に加え、よく混合し、ついで、水を加えよく撹拌し、全体を1000ccとして、鮮度保持剤を製造した。なお、使用に当たっては300〜500倍に水で希釈して用いた。
【0037】
ヒマシ油を用いないでソルビタン系乳化剤を20gにして、鮮度保持剤を作成したが、ヒノキチオールおよびイソチオシアン酸アリルはうまく乳化しなかった。また、ソルビタン系乳化剤を用いないでヒマシ油を20gにしたが、全く乳化しなかった。
【0038】
比較例1(ヒノキチオール分散液の調製)
実施例1において、イソチオシアン酸アリルを全く用いず、ヒノキチオールの使用量を100gとするほかは実施例1と同様にして、ヒノキチオール分散液を得た。
【0039】
比較例2(イソチオシアン酸アリル分散液の調製)
実施例1において、ヒノキチオールを全く用いず、イソチオシアン酸アリルの使用量を100gとするほかは実施例1と同様にして、イソチオシアン酸アリル分散液を得た。
【0040】
実施例2(自然薯(種芋)の保存試験)
自然薯の種芋(50〜120g)を掘り出し、流水で洗浄、水切り後、実施例1で製造した鮮度保持剤の500倍液(200ppm)に5分間浸漬処理した。ついで、上記500倍液を噴霧し、水分を40〜45%になるよう調整した杉おがくずとともに鮮度保持剤処理済の種芋100本を深さ15cm、巾25cm、長さ105cmの段ボール箱に入れ、テープで封をして、3〜5℃の冷蔵庫中で保管した。100日後に開封して種芋の状態を調べた。腐敗したものは一つもなかった。また、この種芋を畑に植え、栽培したが順調に生育した。
【0041】
なお、鮮度保持剤未処理(浸漬およびおがくずへの添加なし)のものでは100本中20本が腐敗しており、畑に植えての栽培でも生育が鮮度保持剤で処理した種芋に比べ悪かった。
【0042】
実施例3(自然薯の保存試験)
自然薯を掘り出し、流水で洗浄、水切り後に、実施例1で製造した鮮度保持剤の約300倍液(300ppm)を、自然薯1kg当たり20cc噴霧し、実施例2と同様にした杉おがくずとともに5cm、巾25cm、長さ105cmの段ボール箱に入れ(自然薯10kg、16本)、テープで封をしたものを5箱作った。
3℃の冷蔵庫中で8ヵ月間保管した後に開封して自然薯の状態を調べたところ、いずれもみずみずしく、かつ、腐敗したものは見られなかった。また、食味も取り立てのときとほとんど変わっていなかった。
【0043】
なお、鮮度保持剤で処理しないものでは、8ヶ月の保管中に約20%が腐敗あるいは変質しており、腐敗・変質のないものでも食味が落ちていた。また、比較例1で作成したヒノキチオール分散液を用いたものでは、2ヶ月後に一部腐敗したものが見られ、比較例2で作成したイソチオシアン酸アリル分散液を用いたものでは4ヶ月後から一部腐敗したものが見られ、いずれも8ヶ月後には鮮度保持剤を使用しなかったものよりは良好であったが、食味が落ちていた。
【0044】
実施例4(イチゴの栽培試験)
イチゴ(品種:章姫)の苗を、平成13年9月20日圃場より採取し、実施例1で製造した鮮度保持剤の500倍液を苗全体に噴霧した後、ハウス内に定植した。以後15日毎に実施例1で製造した鮮度保持剤の500倍液で葉面が湿る程度に散布し、平成14年5月10日まで栽培を続けた。この間に得られた果実は良好であり、採取後の果実はそのままで1週間外観の変化もなく、食味も良好であった。さらに、栽培期間中は、ウドンコ病や灰色カビ病の発生は見られなかった。
【0045】
なお、鮮度保持剤をまったく使用しないでイチゴを栽培したところ、平成14年2月中頃にウドンコ病が発生した。そこで、実施例1で製造した鮮度保持剤を300倍に希釈し、全体が湿る程度に噴霧し、引き続き栽培を続けたところ、鮮度保持剤散布3日後にはほとんど灰色カビ病は消失し、苗の生育はやや遅れたものの健康体に回復した。その後、15日毎に鮮度保持剤を噴霧したものでは順調な果実の採取が可能であった。
【0046】
実施例5(イチゴの保存試験)
本発明の鮮度保持剤を使用せずに栽培したイチゴ(品種:章姫)を採取した後、実施例1の鮮度保持剤の500倍液を噴霧し、同鮮度保持剤の500倍液を噴霧して乾かした紙を敷いたプラスチック製容器に詰め、上をプラスチックシートで軽く封じて、7℃の保管庫にて保管した。1週間後でも外観の変化は見られず、また、食味も採り立てと変わらなかった。
【0047】
なお、鮮度保持剤の処理のないものでは、3日後から外観が崩れるものが現れ、1週間後には食用に適さない状態となった。
【0048】
実施例6(ミニトマトの栽培試験)
ミニトマト(品種:チカ)の苗を、平成13年8月25日にハウス内に定植した。その後、実施例1で製造した鮮度保持剤の500倍液を、平成13年9月1日より15日毎に、収穫期に入った平成14年3月16日より10日毎に葉面散布し、平成14年6月25日までミニトマトを収穫した。この間のトマト葉カビ病の発生はなく、得られたミニトマトも健康で、食味も良好であった。
【0049】
【発明の効果】
本発明の鮮度保持剤は、ヒノキチオール、イソチオシアン酸アリル、ヒマシ油という安全な天然素材を使用し、また、分散剤も食品添加物として安全なものであるので、葉菜、根菜、果菜等を処理する鮮度保持剤として有用であり、かつ、従来の鮮度保持剤に比べその効果も長い。さらに、根菜の種芋等の保管においても健康なまま保存できる。また、本発明の鮮度保持剤を野菜類の栽培において土壌処理、ハウス内噴霧等によりヒノキチオール、イソチオシアン酸アリルの持つ抗菌、抗カビ性能ばかりでなく、本発明の鮮度保持剤が持つ鮮度保持作用による植物体が健康になり、良好な成長を見る事ができる。
【0050】
本発明の鮮度保持剤は、キュウリ、カボチャ、ナス、メロン等の果菜類の栽培、保管ばかりでなく、みかん等の栽培において、開花期に散布することでミカン灰色カビ病等の発生を防ぐことができ好ましいものである。

Claims (5)

  1. ヒノキチオール、イソチオシアン酸アリルおよびヒマシ油をソルビタン系乳化剤により乳化してなることを特徴とする野菜の鮮度保持剤。
  2. 野菜をヒノキチオール、イソチオシアン酸アリルおよびヒマシ油をソルビタン系乳化剤により乳化してなる乳化液で処理することを特徴とする野菜の鮮度保持方法。
  3. ヒノキチオール、イソチオシアン酸アリルおよびヒマシ油をソルビタン系乳化剤により乳化してなる乳化液を噴霧した後および/又は噴霧しながら野菜を栽培することを特徴とする野菜の栽培方法。
  4. ヒノキチオール、イソチオシアン酸アリルおよびヒマシ油をソルビタン系乳化剤により乳化してなる乳化液で種子、種芋あるいは苗を処理した後に播種あるいは植栽することを特徴とする野菜の栽培方法。
  5. 種子あるいは種芋をヒノキチオール、イソチオシアン酸アリルおよびヒマシ油をソルビタン系乳化剤により乳化してなる乳化液で処理したのちに保存することを特徴とする種子あるいは種芋の保存方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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