JP2004173354A - スイッチング電源装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】より簡素な構成で、部品点数や占有面積を低減させることができるスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】直流電源VCCと、直流電源VCCをスイッチングするスイッチ素子Qと、スイッチングにより発生するオーバーシュート電圧を直流電源VCCの入力電圧に重畳させるダイオードD1と、オーバーシュート電圧において正の入力電圧を超える波形の電圧を平滑にするインダクタL1及びコンデンサC1とを有する回路を具える。オーバーシュート電圧を利用することで、簡素な構成でありながら、入力電圧よりも高い出力電圧を得ることが可能である。
【選択図】 図1
【解決手段】直流電源VCCと、直流電源VCCをスイッチングするスイッチ素子Qと、スイッチングにより発生するオーバーシュート電圧を直流電源VCCの入力電圧に重畳させるダイオードD1と、オーバーシュート電圧において正の入力電圧を超える波形の電圧を平滑にするインダクタL1及びコンデンサC1とを有する回路を具える。オーバーシュート電圧を利用することで、簡素な構成でありながら、入力電圧よりも高い出力電圧を得ることが可能である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スイッチング電源装置に関するものである。特に、より簡素な構成で、直流電源の入力電圧と異なる電圧を生成することが可能なスイッチング電源装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子部品を有するエレクトロニクス機器などでは、必要な動作電圧を得るために電源からの入力電圧をスイッチング電源装置にて適宜変換することが行われている。スイッチング電源装置として、例えば、直流電源の入力電圧よりも低い出力電圧を得る降圧型DC/DCコンバータ(ダウンコンバータ)が知られている。図8は、従来のダウンコンバータの回路図である。
【0003】
図8に示すダウンコンバータは、非絶縁型コンバータと呼ばれるものであり、高電圧側HVに接続されたスイッチ素子Qのオン/オフ期間の比率によって入力電圧を変圧するもので、通常、一定間隔でオン/オフを繰り返す(例えば、非特許文献1参照)。スイッチ素子Qがオンのとき、高電圧側HVに接続された直流電源から低電圧側LVに接続された電子機器に電圧を通過させる。この電圧は、2次側に接続されたインダクタL及びコンデンサCにより平滑にされ、入力電圧よりも低い電圧が生成される。スイッチ素子Qがオフのとき、高電圧側HVからの電圧を遮断し、ダイオードDを介して還流する。
【0004】
【非特許文献1】
戸川治朗著「実用電源回路設計ハンドブック」 CQ出版社 1988年5月20日発刊 第92ページ
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、エレクトロニクス機器は、消費電力低減のために動作電圧が低下する傾向にあり、図8に示すようなダウンコンバータを具えて電源の入力電圧(例えば約13V)を必要な電圧値(例えば、5V程度)に変化させることが行われている。その一方で液晶ドライバなどの表示系などは、15V系が依然として使用されており、入力電圧よりも大きな電圧が必要とされる場合がある。この場合、従来は、昇圧型コンバータが別途必要となる。或いは、昇降圧型コンバータを用いる。また、0Vを基準とするアナログ回路に用いられる0pアンプや、ノーマリオン型(スイッチ素子の制御端子に信号が入力されないときにスイッチ素子が導通する)のJFETをオフにする場合などで負の電圧を必要とされる場合もある。このとき、従来は、極性反転型コンバータを用いる。
【0006】
このように複数の電圧を必要とする機器が増えてきているため、従来、各電圧に対応するように電源系統を増加させている。しかし、電源系統が増大することで電源回路が大規模化、複雑化する傾向が近年目立ってきており、部品点数及び専有面積が大きくなるという問題がある。そのため、より簡素な構成の電源系統が求められている。
【0007】
そこで、本発明の主目的は、より簡素な構成で、部品点数や占有面積を低減させることができるスイッチング電源装置を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、より簡素な構成で、入力電圧から複数の出力電圧を生成することが可能なスイッチング電源装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、スイッチ素子のスイッチングにより発生する瞬間的な電圧を入力電圧やグランド電圧に重畳させることで、上記目的を達成する。
【0010】
即ち、本発明スイッチング電源装置は、直流電源と、前記直流電源をスイッチングするスイッチ素子と、スイッチングにより発生する尖頭波形電圧を直流電源の入力電圧又はグランド電圧に重畳させる重畳素子と、前記尖頭波形電圧を平滑にする第一平滑素子とを具えることを特徴とする。
【0011】
直流電源をスイッチ素子により間欠的にオン/オフにする回路であって、スイッチ素子の2次側(下流側)にインダクタ(コイル)Lを具える回路では、スイッチ素子をONにすると、インダクタLの成分L1(インダクタンス)により、L1・di/dtで求められるオーバーシュート電圧が発生する。di/dtは、単位時間当たりの電流の変化率である。スイッチ素子をOFFにすると、L1・di/dtで求められるアンダーシュート電圧が発生する。従来、オーバーシュート電圧やアンダーシュート電圧などの尖頭波形電圧は、回路を構成する素子などに不具合を生じさせるものとして発生を防止することが求められていた。しかし、本発明では、逆にこのオーバーシュート電圧又はアンダーシュート電圧を利用することで、入力電圧よりも高い出力電圧又は負の出力電圧を得るものである。以下、本発明をより詳しく説明する。
【0012】
本発明においてスイッチ素子は、半導体からなるものが好ましい。このとき、スイッチングの際の損失を低減することができる。半導体からなるスイッチ素子としては、例えば、JFET(接合形電界効果トランジスタ)、FET(電界効果トランジスタ)、バイポーラトランジスタ、サイリスタ、GTO(ゲートターンオフサイリスタ)、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などが挙げられる。特に、ワイドバンドギャップ半導体からなるスイッチ素子を用いると、従来よく用いられているSi系半導体からなるスイッチ素子よりも、より低損失で高速動作が可能である。そのため、di/dtが大きくなるので、尖頭波形電圧の電圧値を大きくすることが可能であり、入力電圧よりも高い電圧や負の電圧をより効率よく生成することができて好ましい。
【0013】
尖頭波形電圧としては、オーバーシュート電圧やアンダーシュート電圧などのサージ電圧が挙げられる。オーバーシュート電圧は、以下のようにして発生する。例えば、スイッチ素子をONにして電源から回路に電流が流れて0Vから電源電圧(入力電圧)に上昇していく際、インダクタに磁界が発生してエネルギーを蓄える。そして、出力電圧が入力電圧となるまで上昇しても、インダクタの磁界がすぐに消えず、蓄えたエネルギーがなくなるまで電流を流す。これがオーバーシュート電圧として現れる。一方、アンダーシュート電圧は、上記と逆に、例えば、スイッチ素子をOFFにして電源からの電流が徐々に0Vに降下していく際に発生するものである。即ち、本発明は、スイッチングにより発生する二つの尖頭波形電圧を利用して、電源電圧よりも高い電圧又は負の電圧といった電源電圧と異なる二つの出力電圧を同様の回路にて得ることができる。なお、回路の出力部は、上記二つの出力電圧のうち、所望のいずれか一方の電圧を出力する。
【0014】
尖頭波形電圧を入力電圧又はグランド電圧に重畳させる重畳素子としては、ダイオードが挙げられる。重畳素子がない場合、スイッチ素子のスイッチングにて尖頭波形電圧を発生させても、尖頭波形電圧は、直流電源に引き込まれてしまい、発生させた尖頭波形電圧がなくなってしまう。従って、重畳素子を具えることで、尖頭波形電圧を入力電圧又はグランド電圧に重畳させることが可能であり、所望する出力電圧を得ることができる。
【0015】
尖頭波形電圧がオーバーシュート電圧の場合、直流電源の正の電圧を越える波形の電圧を上記重畳素子にて入力電圧に重畳させるとよい。このとき、直流電源よりも高い出力電圧を生成させることができる。また、尖頭波形電圧がアンダーシュート電圧の場合、電源電圧のマイナス側の電位(負の電圧)を基準電位とする。そして、直流電源の負の電圧を下回る波形の電圧を上記重畳素子にてグランド電圧を重畳させることで、負の出力電圧を生成させることができる。
【0016】
尖頭波形電圧において直流電源の正の電圧を越える波形、又は直流電源の負の電圧を下回る波形の電圧は、平滑にして出力することが好ましい。そこで、本発明では、尖頭波形電圧を平滑にする第一平滑素子を具える。第一平滑素子としては、例えば、インダクタ及びコンデンサが挙げられる。これら平滑素子は、電圧の平滑用に通常用いられているものを使用してもよい。
【0017】
また、di/dtを大きくして尖頭波形電圧の電流値をより大きくするために、更に増大素子を具えていてもよい。この増大素子としては、例えば、インダクタ及びコンデンサが挙げられる。これら増大素子は、上記平滑素子と同様のものを使用してもよい。
【0018】
上記では、尖頭波形電圧を利用して直流電源の入力電圧と異なる二つの電圧を得る構成であるが、その他の電圧、具体的には、直流電源の正の入力電圧よりも低い正の出力電圧を得る構成として、更に、ダウンコンバータ部を具えてもよい。ダウンコンバータ部は、スイッチ素子のスイッチングにより生成される矩形波の電圧を平滑にする第二平滑素子を具えるものが挙げられる。第二平滑素子は、例えば、上記第一素子と同様にインダクタ及びコンデンサが挙げられる。また、通常のBuck型のダウンコンバータを用いてもよく、非絶縁型、絶縁型のいずれでもよい。回路にダウンコンバータ部を具える場合、尖頭波形電圧を重畳して平滑にした電圧(重畳電圧)用の出力部に加えて、ダウンコンバータ用の出力部を具える。上記構成に加えてダウンコンバータ部を具えることで、異なる二つの系統の電圧を得ることができる。即ち、本発明は、一つのスイッチ素子で、ダウンコンバータ部により直流電源の入力電圧を降圧して入力電圧よりも低い出力電圧を得ると同時に、オーバーシュート電圧を利用して電源電圧よりも高い電圧を生成したり、アンダーシュート電圧を利用して負の電圧を生成したりすることが可能となる。
【0019】
尖頭波形電圧を重畳して第一平滑素子にて平滑にして得られる重畳電圧の大きさや、ダウンコンバータ電圧の大きさは、それぞれ別個に制御部を具えて制御してもよいが、この場合、制御部が複数必要になり、部品点数や占有面積の減少化が実現しにくい。そこで、本発明では、スイッチ素子のオン/オフを制御する制御部を利用して、重畳電圧やダウンコンバータ電圧の大きさを制御する。具体的には、スイッチ素子のスイッチングを制御する制御部を具え、制御部は、ダウンコンバータ部の電圧制御をスイッチ素子のduty比にて制御すると共に、重畳電圧の電圧制御をスイッチ素子のスイッチング周波数にて制御することを規定する。
【0020】
この構成により、一つの制御部で、スイッチ素子のスイッチングだけでなく、種々の電圧値をコントロールすることが可能であり、回路をより簡素化することができる。このような制御部としては、例えば、スイッチ素子に通常用いられている制御ICなどで、スイッチング周波数及びduty比を制御できるものが挙げられる。
【0021】
ダウンコンバータ部の電圧制御は、スイッチ素子のオン/オフ時間の比、通常、スイッチ素子をオンにしている期間とオフにしている期間の比率(duty比)によって制御可能である。ダウンコンバータ部では、スイッチ素子がオンの際、第二平滑素子、具体的には、インダクタにエネルギーを蓄積しながら、負荷に電力を供給し、スイッチ素子がオフの際、インダクタに蓄えたエネルギーを負荷に供給する。従って、例えば、duty比を大きくする、即ち、スイッチ素子のオンの時間を長くすると、蓄積されるエネルギーが大きくなることから、負荷が一定であればダウンコンバータ電圧を大きくすることができる。このとき、duty比が変化しても、単位時間あたりのオーバーシュート又はアンダーシュートの回数は不変であるため、duty比が尖頭波形電圧を重畳して平滑した後に得られる電圧(重畳電圧)に影響を与えることはない。
【0022】
一方、重畳電圧は、上記のように単位時間内に何個の尖頭波形が存在するかが問題である。従って、重畳電圧の制御は、単位時間に存在する尖頭波形の割合(スイッチング周波数)によって制御可能である。尖頭波形電圧の電圧値そのものは、スイッチ素子をオン/オフしたときの単位時間当たりの電流変化量に比例して決定されるため、スイッチング周波数の増減で変化することはない。しかし、スイッチング周波数を増減することで、尖頭波形の数が増減するため、入力電圧又はグランド電圧に尖頭波形電圧を重畳し平滑にして得られる重畳電圧の電圧値は、スイッチング周波数により変化する。例えば、スイッチング周波数を大きくすることで、重畳電圧を大きくすることができる。ここで、スイッチング周波数を変化させても、上記のようにduty比が変化することはない。従って、スイッチング周波数がダウンコンバータ部の電圧に影響を与えることはない。なお、重畳電圧の電圧値の上限は、入力電圧+オーバーシュート電圧、又はグランド電圧+アンダーシュート電圧である。
【0023】
本発明スイッチング電源装置は、電子部品を有するエレクトロ機器などに具えることが好ましい。具体的には、車載用電装品などが挙げられる。特に、液晶ドライバなどが必要となるディスプレイを具えるものに有効である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(実施例1−1) 直流電源の入力電圧よりも高い電圧を得る場合
まず、オーバーシュート電圧を用いて電源の入力電圧を越える電圧を得る構成について説明する。図1は、本発明スイッチング電源装置の基本構成を示す回路図である。本発明スイッチング電源装置は、直流電源VCCと、直流電源VCCをスイッチングするスイッチ素子Qと、スイッチングにより発生するオーバーシュート電圧を直流電源VCCの入力電圧に重畳させるダイオードD1と、オーバーシュート電圧において正の入力電圧を超える波形の電圧を平滑にするインダクタL1及びコンデンサC1とを有する回路を具える。本例では、スイッチ素子Qとして、トランジスタを用いた。以下、本発明スイッチング電源装置の動作を説明する。
【0025】
図1に示す回路において、スイッチ素子Qをオンにすると、スイッチ素子Qの2次側(図1において右側)に接続されるインダクタL1のインダクタンスL1’×di/dtで求められるオーバーシュート電圧が発生する。図2にオーバーシュート電圧の波形を示す。
【0026】
本発明では、ダイオードD1を具えることで、オーバーシュート電圧が電源VCC側に引き込まれることがなく、オーバーシュート電圧を出力側の電圧に加えることができる。そこで、ダイオードD1を用いて、オーバーシュート電圧を電源VCCの入力電圧に重畳すると、その波形は、図3のグラフに示すように、破線の直線で表される入力電圧に複数の尖頭波形(山)が存在する状態となる。
【0027】
図3に示す尖頭波形電圧において、入力電圧を越える波形の電圧をインダクタL1及びコンデンサC1にて平滑にする。平滑後の波形を図3に示す。図3に示すように、得られた平滑後の出力電圧(重畳電圧)は、入力電圧よりも高い電圧であることがわかる。このように本発明は、オーバーシュート電圧を利用することで、簡素な構成でありながら、入力電圧よりも高い出力電圧を得ることが可能である。
【0028】
また、本例においてスイッチ素子QをSiCなどのワイドバンドギャップ半導体からなる高速応答が可能なものを用いると、di/dtをより大きくすることができるため、より大きなオーバーシュート電圧を得ることが可能である。従って、より大きな出力電圧を効率よく得ることができる。
【0029】
なお、図1に示す回路においてダイオードD2を具えているのは、スイッチ素子Qがオフの際、インダクタL1の電圧がGNDレベル(0V)にまで降下することを防止するためである。また、抵抗Rは、単位時間当たりの電流変化量に応じて尖頭波形電圧が変化するため、電流量を定めるために設けている。
【0030】
(実施例1−2) 負の電圧を得る場合
次に、アンダーシュート電圧を用いて負の出力電圧を得る方法を説明する。この場合も上記図1に示す本発明スイッチング電源装置と同様の構成が適用できる。図1に示す回路において、スイッチ素子Qをオフにすると、スイッチ素子Qの2次側(図1において右側)に接続されるインダクタL1のインダクタンスL1’×di/dtで求められるアンダーシュート電圧が発生する。図4にスイッチ素子をオフにした際の電圧の波形を示す。スイッチ素子Qをオフにしても、インダクタL1に電流が流れ続けようとして電流が流れるため、すぐにGNDレベルとならない。このとき、インダクタL1の片端は、接地されているため、GNDレベルから電圧降下が発生して、インダクタL1の片端の電圧は、GND以下となる。これがアンダーシュート電圧として現れる。その後、インダクタL1とコンデンサC1とが共振回路となって振動しながらGNDに収束する。このアンダーシュート電圧を上記と同様にダイオードD1を用いて、グランド電圧に重畳し、アンダーシュート電圧において直流電源の負の電圧を下回る波形の電圧をインダクタL1及びコンデンサC1にて平滑にすると、得られた重畳電圧は、負の電圧となる。このように本発明は、アンダーシュート電圧を利用することで、上記と同様の簡素な構成でありながら、負の電圧を得ることが可能である。
【0031】
なお、本例において、上記と同様にスイッチ素子をワイドバンドギャップ半導体からなるものを用いると、電圧値がより大きなアンダーシュート電圧を得ることができ、より小さな(絶対値の大きな)負の電圧を効率よく得ることができる。
【0032】
(実施例2) 増大素子を具える場合
更に、上記図1に示す回路に尖頭波形電圧の電圧値を増大する増大素子を具える構成を説明する。図5は、増大素子を具える本発明スイッチング電源装置の回路図である。図中、図1と同じ符号は、同一のものを示す。本例では、図1に示す回路に加えて、増大素子として、インダクタL0及びコンデンサC0を具える。この回路では、これらインダクタL0及びコンデンサC0によってオーバーシュート電圧又はアンダーシュート電圧の電圧値を大きくすることができる。従って、重畳電圧の電圧値を大きくすることが可能である。
【0033】
(実施例3) ダウンコンバータ部を具える場合
次に、上記図1に示す回路とダウンコンバータ機能を有する回路とを共通化した構成を説明する。図6は、ダウンコンバータ部を具える本発明スイッチング電源装置の回路図である。図中、図1と同じ符号は、同一のものを示す。本例では、図1に示す回路に加えて、スイッチ素子Qの2次側(図6において右側)に、スイッチ素子Qのスイッチングにより生成される矩形波の電圧を平滑にするインダクタL2及びコンデンサC2を有するダウンコンバータ部DCを具える。本例のダウンコンバータ部DCは、整流用のダイオードD3を具える通常のBuck型のダウンコンバータとした。
【0034】
図6に示す回路では、実施例1と同様にスイッチ素子Qをオン又はオフにする際に発生するオーバーシュート電圧又はアンダーシュート電圧を利用して、重畳電圧(入力電圧よりも高い電圧又は負の電圧)を得ることができる。同時に、ダウンコンバータ部DCにより、スイッチ素子Qのスイッチングで直流電源VCCの正の入力電圧よりも低い正の出力電圧を得ることができる。従って、本発明スイッチング電源装置は、一つのスイッチ素子で異なる電圧値の出力電圧を得ることができ、部品点数や占有面積を低減することができる。
【0035】
(実施例4) 制御部を具える場合
次に、上記図6に示す回路にスイッチ素子の制御部を具える構成を説明する。図7は、スイッチ素子の制御部を具える本発明スイッチング電源装置の回路図である。図中、図6と同一の符号は、同一のものを示す。本例では、図6に示す回路に加えて、スイッチ素子Qのスイッチングを制御する制御部(コントローラ)Ctを具える。この制御部Ctでは、スイッチ素子Qの制御に加えて、重畳電圧の電圧制御、及びダウンコンバータ部DCの電圧制御を行う。
【0036】
重畳電圧の制御は、スイッチ素子Qのスイッチング周波数により制御することができる。また、ダウンコンバータ部DCの電圧制御は、スイッチングのduty比によって制御することができる。そして、スイッチング周波数は、ダウンコンバータ部DCの電圧に何らの影響も与えず、かつ、duty比は、重畳電圧に何らの影響も与えない。従って、制御部Ctとして、スイッチング周波数及びduty比の双方を制御可能な制御ICを用いることで、スイッチ素子Qのスイッチングだけでなく、2電源系統を1chの制御部で制御することが可能となる。従って、図7に示す本発明スイッチング電源装置は、周辺回路をより簡素にすることができる。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように本発明スイッチング電源装置によれば、尖頭波形電圧を利用することで、部品点数が少ないより簡素な構成でありながら、直流電源の入力電圧よりも高い電圧や負の電圧を得ることができるという優れた効果を奏する。
【0038】
また、ダウンコンバータ部を具えることで、上記に加えて、正の入力電圧よりも低い正の出力電圧を得ることができる。従って、一つのスイッチ素子で電圧値の異なる複数の出力電圧を得ることができ、部品点数の低減、占有面積の縮小を実現することが可能である。
【0039】
更に、スイッチ素子の制御部において、重畳電圧の電圧制御及びダウンコンバータ部の電圧制御を行うことで、二つの異なる電源系統を一つの制御部で制御できる。そのため、本発明は、周辺回路をより簡素にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明スイッチング電源装置の基本構成を示す回路図である。
【図2】オーバーシュート電圧の波形を模式的に示すグラフである。
【図3】オーバーシュート電圧の波形、電源の入力電圧の波形、平滑後の出力電圧の波形を模式的に示すグラフである。
【図4】図1に示す回路において、スイッチ素子をオフにした際の電圧の波形を模式的に示すグラフである。
【図5】増大素子を具える本発明スイッチング電源装置の回路図である。
【図6】ダウンコンバータ部を具える本発明スイッチング電源装置の回路図である。
【図7】スイッチ素子の制御部を具える本発明スイッチング電源装置の回路図である。
【図8】従来のダウンコンバータの回路図である。
【符号の説明】
C、C0、C1、C2 コンデンサ Ct 制御部 D、D1〜D3 ダイオード
DC ダウンコンバータ部 L、L0、L1、L2 インダクタ Q スイッチ素子
VCC 直流電源
【発明の属する技術分野】
本発明は、スイッチング電源装置に関するものである。特に、より簡素な構成で、直流電源の入力電圧と異なる電圧を生成することが可能なスイッチング電源装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子部品を有するエレクトロニクス機器などでは、必要な動作電圧を得るために電源からの入力電圧をスイッチング電源装置にて適宜変換することが行われている。スイッチング電源装置として、例えば、直流電源の入力電圧よりも低い出力電圧を得る降圧型DC/DCコンバータ(ダウンコンバータ)が知られている。図8は、従来のダウンコンバータの回路図である。
【0003】
図8に示すダウンコンバータは、非絶縁型コンバータと呼ばれるものであり、高電圧側HVに接続されたスイッチ素子Qのオン/オフ期間の比率によって入力電圧を変圧するもので、通常、一定間隔でオン/オフを繰り返す(例えば、非特許文献1参照)。スイッチ素子Qがオンのとき、高電圧側HVに接続された直流電源から低電圧側LVに接続された電子機器に電圧を通過させる。この電圧は、2次側に接続されたインダクタL及びコンデンサCにより平滑にされ、入力電圧よりも低い電圧が生成される。スイッチ素子Qがオフのとき、高電圧側HVからの電圧を遮断し、ダイオードDを介して還流する。
【0004】
【非特許文献1】
戸川治朗著「実用電源回路設計ハンドブック」 CQ出版社 1988年5月20日発刊 第92ページ
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
近年、エレクトロニクス機器は、消費電力低減のために動作電圧が低下する傾向にあり、図8に示すようなダウンコンバータを具えて電源の入力電圧(例えば約13V)を必要な電圧値(例えば、5V程度)に変化させることが行われている。その一方で液晶ドライバなどの表示系などは、15V系が依然として使用されており、入力電圧よりも大きな電圧が必要とされる場合がある。この場合、従来は、昇圧型コンバータが別途必要となる。或いは、昇降圧型コンバータを用いる。また、0Vを基準とするアナログ回路に用いられる0pアンプや、ノーマリオン型(スイッチ素子の制御端子に信号が入力されないときにスイッチ素子が導通する)のJFETをオフにする場合などで負の電圧を必要とされる場合もある。このとき、従来は、極性反転型コンバータを用いる。
【0006】
このように複数の電圧を必要とする機器が増えてきているため、従来、各電圧に対応するように電源系統を増加させている。しかし、電源系統が増大することで電源回路が大規模化、複雑化する傾向が近年目立ってきており、部品点数及び専有面積が大きくなるという問題がある。そのため、より簡素な構成の電源系統が求められている。
【0007】
そこで、本発明の主目的は、より簡素な構成で、部品点数や占有面積を低減させることができるスイッチング電源装置を提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、より簡素な構成で、入力電圧から複数の出力電圧を生成することが可能なスイッチング電源装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、スイッチ素子のスイッチングにより発生する瞬間的な電圧を入力電圧やグランド電圧に重畳させることで、上記目的を達成する。
【0010】
即ち、本発明スイッチング電源装置は、直流電源と、前記直流電源をスイッチングするスイッチ素子と、スイッチングにより発生する尖頭波形電圧を直流電源の入力電圧又はグランド電圧に重畳させる重畳素子と、前記尖頭波形電圧を平滑にする第一平滑素子とを具えることを特徴とする。
【0011】
直流電源をスイッチ素子により間欠的にオン/オフにする回路であって、スイッチ素子の2次側(下流側)にインダクタ(コイル)Lを具える回路では、スイッチ素子をONにすると、インダクタLの成分L1(インダクタンス)により、L1・di/dtで求められるオーバーシュート電圧が発生する。di/dtは、単位時間当たりの電流の変化率である。スイッチ素子をOFFにすると、L1・di/dtで求められるアンダーシュート電圧が発生する。従来、オーバーシュート電圧やアンダーシュート電圧などの尖頭波形電圧は、回路を構成する素子などに不具合を生じさせるものとして発生を防止することが求められていた。しかし、本発明では、逆にこのオーバーシュート電圧又はアンダーシュート電圧を利用することで、入力電圧よりも高い出力電圧又は負の出力電圧を得るものである。以下、本発明をより詳しく説明する。
【0012】
本発明においてスイッチ素子は、半導体からなるものが好ましい。このとき、スイッチングの際の損失を低減することができる。半導体からなるスイッチ素子としては、例えば、JFET(接合形電界効果トランジスタ)、FET(電界効果トランジスタ)、バイポーラトランジスタ、サイリスタ、GTO(ゲートターンオフサイリスタ)、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などが挙げられる。特に、ワイドバンドギャップ半導体からなるスイッチ素子を用いると、従来よく用いられているSi系半導体からなるスイッチ素子よりも、より低損失で高速動作が可能である。そのため、di/dtが大きくなるので、尖頭波形電圧の電圧値を大きくすることが可能であり、入力電圧よりも高い電圧や負の電圧をより効率よく生成することができて好ましい。
【0013】
尖頭波形電圧としては、オーバーシュート電圧やアンダーシュート電圧などのサージ電圧が挙げられる。オーバーシュート電圧は、以下のようにして発生する。例えば、スイッチ素子をONにして電源から回路に電流が流れて0Vから電源電圧(入力電圧)に上昇していく際、インダクタに磁界が発生してエネルギーを蓄える。そして、出力電圧が入力電圧となるまで上昇しても、インダクタの磁界がすぐに消えず、蓄えたエネルギーがなくなるまで電流を流す。これがオーバーシュート電圧として現れる。一方、アンダーシュート電圧は、上記と逆に、例えば、スイッチ素子をOFFにして電源からの電流が徐々に0Vに降下していく際に発生するものである。即ち、本発明は、スイッチングにより発生する二つの尖頭波形電圧を利用して、電源電圧よりも高い電圧又は負の電圧といった電源電圧と異なる二つの出力電圧を同様の回路にて得ることができる。なお、回路の出力部は、上記二つの出力電圧のうち、所望のいずれか一方の電圧を出力する。
【0014】
尖頭波形電圧を入力電圧又はグランド電圧に重畳させる重畳素子としては、ダイオードが挙げられる。重畳素子がない場合、スイッチ素子のスイッチングにて尖頭波形電圧を発生させても、尖頭波形電圧は、直流電源に引き込まれてしまい、発生させた尖頭波形電圧がなくなってしまう。従って、重畳素子を具えることで、尖頭波形電圧を入力電圧又はグランド電圧に重畳させることが可能であり、所望する出力電圧を得ることができる。
【0015】
尖頭波形電圧がオーバーシュート電圧の場合、直流電源の正の電圧を越える波形の電圧を上記重畳素子にて入力電圧に重畳させるとよい。このとき、直流電源よりも高い出力電圧を生成させることができる。また、尖頭波形電圧がアンダーシュート電圧の場合、電源電圧のマイナス側の電位(負の電圧)を基準電位とする。そして、直流電源の負の電圧を下回る波形の電圧を上記重畳素子にてグランド電圧を重畳させることで、負の出力電圧を生成させることができる。
【0016】
尖頭波形電圧において直流電源の正の電圧を越える波形、又は直流電源の負の電圧を下回る波形の電圧は、平滑にして出力することが好ましい。そこで、本発明では、尖頭波形電圧を平滑にする第一平滑素子を具える。第一平滑素子としては、例えば、インダクタ及びコンデンサが挙げられる。これら平滑素子は、電圧の平滑用に通常用いられているものを使用してもよい。
【0017】
また、di/dtを大きくして尖頭波形電圧の電流値をより大きくするために、更に増大素子を具えていてもよい。この増大素子としては、例えば、インダクタ及びコンデンサが挙げられる。これら増大素子は、上記平滑素子と同様のものを使用してもよい。
【0018】
上記では、尖頭波形電圧を利用して直流電源の入力電圧と異なる二つの電圧を得る構成であるが、その他の電圧、具体的には、直流電源の正の入力電圧よりも低い正の出力電圧を得る構成として、更に、ダウンコンバータ部を具えてもよい。ダウンコンバータ部は、スイッチ素子のスイッチングにより生成される矩形波の電圧を平滑にする第二平滑素子を具えるものが挙げられる。第二平滑素子は、例えば、上記第一素子と同様にインダクタ及びコンデンサが挙げられる。また、通常のBuck型のダウンコンバータを用いてもよく、非絶縁型、絶縁型のいずれでもよい。回路にダウンコンバータ部を具える場合、尖頭波形電圧を重畳して平滑にした電圧(重畳電圧)用の出力部に加えて、ダウンコンバータ用の出力部を具える。上記構成に加えてダウンコンバータ部を具えることで、異なる二つの系統の電圧を得ることができる。即ち、本発明は、一つのスイッチ素子で、ダウンコンバータ部により直流電源の入力電圧を降圧して入力電圧よりも低い出力電圧を得ると同時に、オーバーシュート電圧を利用して電源電圧よりも高い電圧を生成したり、アンダーシュート電圧を利用して負の電圧を生成したりすることが可能となる。
【0019】
尖頭波形電圧を重畳して第一平滑素子にて平滑にして得られる重畳電圧の大きさや、ダウンコンバータ電圧の大きさは、それぞれ別個に制御部を具えて制御してもよいが、この場合、制御部が複数必要になり、部品点数や占有面積の減少化が実現しにくい。そこで、本発明では、スイッチ素子のオン/オフを制御する制御部を利用して、重畳電圧やダウンコンバータ電圧の大きさを制御する。具体的には、スイッチ素子のスイッチングを制御する制御部を具え、制御部は、ダウンコンバータ部の電圧制御をスイッチ素子のduty比にて制御すると共に、重畳電圧の電圧制御をスイッチ素子のスイッチング周波数にて制御することを規定する。
【0020】
この構成により、一つの制御部で、スイッチ素子のスイッチングだけでなく、種々の電圧値をコントロールすることが可能であり、回路をより簡素化することができる。このような制御部としては、例えば、スイッチ素子に通常用いられている制御ICなどで、スイッチング周波数及びduty比を制御できるものが挙げられる。
【0021】
ダウンコンバータ部の電圧制御は、スイッチ素子のオン/オフ時間の比、通常、スイッチ素子をオンにしている期間とオフにしている期間の比率(duty比)によって制御可能である。ダウンコンバータ部では、スイッチ素子がオンの際、第二平滑素子、具体的には、インダクタにエネルギーを蓄積しながら、負荷に電力を供給し、スイッチ素子がオフの際、インダクタに蓄えたエネルギーを負荷に供給する。従って、例えば、duty比を大きくする、即ち、スイッチ素子のオンの時間を長くすると、蓄積されるエネルギーが大きくなることから、負荷が一定であればダウンコンバータ電圧を大きくすることができる。このとき、duty比が変化しても、単位時間あたりのオーバーシュート又はアンダーシュートの回数は不変であるため、duty比が尖頭波形電圧を重畳して平滑した後に得られる電圧(重畳電圧)に影響を与えることはない。
【0022】
一方、重畳電圧は、上記のように単位時間内に何個の尖頭波形が存在するかが問題である。従って、重畳電圧の制御は、単位時間に存在する尖頭波形の割合(スイッチング周波数)によって制御可能である。尖頭波形電圧の電圧値そのものは、スイッチ素子をオン/オフしたときの単位時間当たりの電流変化量に比例して決定されるため、スイッチング周波数の増減で変化することはない。しかし、スイッチング周波数を増減することで、尖頭波形の数が増減するため、入力電圧又はグランド電圧に尖頭波形電圧を重畳し平滑にして得られる重畳電圧の電圧値は、スイッチング周波数により変化する。例えば、スイッチング周波数を大きくすることで、重畳電圧を大きくすることができる。ここで、スイッチング周波数を変化させても、上記のようにduty比が変化することはない。従って、スイッチング周波数がダウンコンバータ部の電圧に影響を与えることはない。なお、重畳電圧の電圧値の上限は、入力電圧+オーバーシュート電圧、又はグランド電圧+アンダーシュート電圧である。
【0023】
本発明スイッチング電源装置は、電子部品を有するエレクトロ機器などに具えることが好ましい。具体的には、車載用電装品などが挙げられる。特に、液晶ドライバなどが必要となるディスプレイを具えるものに有効である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(実施例1−1) 直流電源の入力電圧よりも高い電圧を得る場合
まず、オーバーシュート電圧を用いて電源の入力電圧を越える電圧を得る構成について説明する。図1は、本発明スイッチング電源装置の基本構成を示す回路図である。本発明スイッチング電源装置は、直流電源VCCと、直流電源VCCをスイッチングするスイッチ素子Qと、スイッチングにより発生するオーバーシュート電圧を直流電源VCCの入力電圧に重畳させるダイオードD1と、オーバーシュート電圧において正の入力電圧を超える波形の電圧を平滑にするインダクタL1及びコンデンサC1とを有する回路を具える。本例では、スイッチ素子Qとして、トランジスタを用いた。以下、本発明スイッチング電源装置の動作を説明する。
【0025】
図1に示す回路において、スイッチ素子Qをオンにすると、スイッチ素子Qの2次側(図1において右側)に接続されるインダクタL1のインダクタンスL1’×di/dtで求められるオーバーシュート電圧が発生する。図2にオーバーシュート電圧の波形を示す。
【0026】
本発明では、ダイオードD1を具えることで、オーバーシュート電圧が電源VCC側に引き込まれることがなく、オーバーシュート電圧を出力側の電圧に加えることができる。そこで、ダイオードD1を用いて、オーバーシュート電圧を電源VCCの入力電圧に重畳すると、その波形は、図3のグラフに示すように、破線の直線で表される入力電圧に複数の尖頭波形(山)が存在する状態となる。
【0027】
図3に示す尖頭波形電圧において、入力電圧を越える波形の電圧をインダクタL1及びコンデンサC1にて平滑にする。平滑後の波形を図3に示す。図3に示すように、得られた平滑後の出力電圧(重畳電圧)は、入力電圧よりも高い電圧であることがわかる。このように本発明は、オーバーシュート電圧を利用することで、簡素な構成でありながら、入力電圧よりも高い出力電圧を得ることが可能である。
【0028】
また、本例においてスイッチ素子QをSiCなどのワイドバンドギャップ半導体からなる高速応答が可能なものを用いると、di/dtをより大きくすることができるため、より大きなオーバーシュート電圧を得ることが可能である。従って、より大きな出力電圧を効率よく得ることができる。
【0029】
なお、図1に示す回路においてダイオードD2を具えているのは、スイッチ素子Qがオフの際、インダクタL1の電圧がGNDレベル(0V)にまで降下することを防止するためである。また、抵抗Rは、単位時間当たりの電流変化量に応じて尖頭波形電圧が変化するため、電流量を定めるために設けている。
【0030】
(実施例1−2) 負の電圧を得る場合
次に、アンダーシュート電圧を用いて負の出力電圧を得る方法を説明する。この場合も上記図1に示す本発明スイッチング電源装置と同様の構成が適用できる。図1に示す回路において、スイッチ素子Qをオフにすると、スイッチ素子Qの2次側(図1において右側)に接続されるインダクタL1のインダクタンスL1’×di/dtで求められるアンダーシュート電圧が発生する。図4にスイッチ素子をオフにした際の電圧の波形を示す。スイッチ素子Qをオフにしても、インダクタL1に電流が流れ続けようとして電流が流れるため、すぐにGNDレベルとならない。このとき、インダクタL1の片端は、接地されているため、GNDレベルから電圧降下が発生して、インダクタL1の片端の電圧は、GND以下となる。これがアンダーシュート電圧として現れる。その後、インダクタL1とコンデンサC1とが共振回路となって振動しながらGNDに収束する。このアンダーシュート電圧を上記と同様にダイオードD1を用いて、グランド電圧に重畳し、アンダーシュート電圧において直流電源の負の電圧を下回る波形の電圧をインダクタL1及びコンデンサC1にて平滑にすると、得られた重畳電圧は、負の電圧となる。このように本発明は、アンダーシュート電圧を利用することで、上記と同様の簡素な構成でありながら、負の電圧を得ることが可能である。
【0031】
なお、本例において、上記と同様にスイッチ素子をワイドバンドギャップ半導体からなるものを用いると、電圧値がより大きなアンダーシュート電圧を得ることができ、より小さな(絶対値の大きな)負の電圧を効率よく得ることができる。
【0032】
(実施例2) 増大素子を具える場合
更に、上記図1に示す回路に尖頭波形電圧の電圧値を増大する増大素子を具える構成を説明する。図5は、増大素子を具える本発明スイッチング電源装置の回路図である。図中、図1と同じ符号は、同一のものを示す。本例では、図1に示す回路に加えて、増大素子として、インダクタL0及びコンデンサC0を具える。この回路では、これらインダクタL0及びコンデンサC0によってオーバーシュート電圧又はアンダーシュート電圧の電圧値を大きくすることができる。従って、重畳電圧の電圧値を大きくすることが可能である。
【0033】
(実施例3) ダウンコンバータ部を具える場合
次に、上記図1に示す回路とダウンコンバータ機能を有する回路とを共通化した構成を説明する。図6は、ダウンコンバータ部を具える本発明スイッチング電源装置の回路図である。図中、図1と同じ符号は、同一のものを示す。本例では、図1に示す回路に加えて、スイッチ素子Qの2次側(図6において右側)に、スイッチ素子Qのスイッチングにより生成される矩形波の電圧を平滑にするインダクタL2及びコンデンサC2を有するダウンコンバータ部DCを具える。本例のダウンコンバータ部DCは、整流用のダイオードD3を具える通常のBuck型のダウンコンバータとした。
【0034】
図6に示す回路では、実施例1と同様にスイッチ素子Qをオン又はオフにする際に発生するオーバーシュート電圧又はアンダーシュート電圧を利用して、重畳電圧(入力電圧よりも高い電圧又は負の電圧)を得ることができる。同時に、ダウンコンバータ部DCにより、スイッチ素子Qのスイッチングで直流電源VCCの正の入力電圧よりも低い正の出力電圧を得ることができる。従って、本発明スイッチング電源装置は、一つのスイッチ素子で異なる電圧値の出力電圧を得ることができ、部品点数や占有面積を低減することができる。
【0035】
(実施例4) 制御部を具える場合
次に、上記図6に示す回路にスイッチ素子の制御部を具える構成を説明する。図7は、スイッチ素子の制御部を具える本発明スイッチング電源装置の回路図である。図中、図6と同一の符号は、同一のものを示す。本例では、図6に示す回路に加えて、スイッチ素子Qのスイッチングを制御する制御部(コントローラ)Ctを具える。この制御部Ctでは、スイッチ素子Qの制御に加えて、重畳電圧の電圧制御、及びダウンコンバータ部DCの電圧制御を行う。
【0036】
重畳電圧の制御は、スイッチ素子Qのスイッチング周波数により制御することができる。また、ダウンコンバータ部DCの電圧制御は、スイッチングのduty比によって制御することができる。そして、スイッチング周波数は、ダウンコンバータ部DCの電圧に何らの影響も与えず、かつ、duty比は、重畳電圧に何らの影響も与えない。従って、制御部Ctとして、スイッチング周波数及びduty比の双方を制御可能な制御ICを用いることで、スイッチ素子Qのスイッチングだけでなく、2電源系統を1chの制御部で制御することが可能となる。従って、図7に示す本発明スイッチング電源装置は、周辺回路をより簡素にすることができる。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように本発明スイッチング電源装置によれば、尖頭波形電圧を利用することで、部品点数が少ないより簡素な構成でありながら、直流電源の入力電圧よりも高い電圧や負の電圧を得ることができるという優れた効果を奏する。
【0038】
また、ダウンコンバータ部を具えることで、上記に加えて、正の入力電圧よりも低い正の出力電圧を得ることができる。従って、一つのスイッチ素子で電圧値の異なる複数の出力電圧を得ることができ、部品点数の低減、占有面積の縮小を実現することが可能である。
【0039】
更に、スイッチ素子の制御部において、重畳電圧の電圧制御及びダウンコンバータ部の電圧制御を行うことで、二つの異なる電源系統を一つの制御部で制御できる。そのため、本発明は、周辺回路をより簡素にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明スイッチング電源装置の基本構成を示す回路図である。
【図2】オーバーシュート電圧の波形を模式的に示すグラフである。
【図3】オーバーシュート電圧の波形、電源の入力電圧の波形、平滑後の出力電圧の波形を模式的に示すグラフである。
【図4】図1に示す回路において、スイッチ素子をオフにした際の電圧の波形を模式的に示すグラフである。
【図5】増大素子を具える本発明スイッチング電源装置の回路図である。
【図6】ダウンコンバータ部を具える本発明スイッチング電源装置の回路図である。
【図7】スイッチ素子の制御部を具える本発明スイッチング電源装置の回路図である。
【図8】従来のダウンコンバータの回路図である。
【符号の説明】
C、C0、C1、C2 コンデンサ Ct 制御部 D、D1〜D3 ダイオード
DC ダウンコンバータ部 L、L0、L1、L2 インダクタ Q スイッチ素子
VCC 直流電源
Claims (6)
- 直流電源と、
前記直流電源をスイッチングするスイッチ素子と、
スイッチングにより発生する尖頭波形電圧を直流電源の入力電圧又はグランド電圧に重畳させる重畳素子と、
前記尖頭波形電圧を平滑にする第一平滑素子とを具えることを特徴とするスイッチング電源装置。 - 更に、尖頭波形電圧の電圧値を増大する増大素子を具えることを特徴とするスイッチング電源装置。
- 尖頭波形電圧は、オーバーシュート電圧又はアンダーシュート電圧であり、
オーバーシュート電圧の場合、直流電源の正の電圧を超える波形の電圧を重畳素子にて入力電圧に重畳させて直流電源の入力電圧より高い正の出力電圧を生成させ、
アンダーシュート電圧の場合、直流電源の負の電圧を下回る波形の電圧を重畳素子にてグランド電圧に重畳させて負の出力電圧を生成させることを特徴とする請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。 - 更に、スイッチ素子のスイッチングにより生成される矩形波の電圧を平滑にする第二平滑素子を有し、直流電源の正の電圧よりも低い正の出力電圧を得るダウンコンバータ部を具えることを特徴とする請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
- 更に、スイッチ素子のスイッチングを制御する制御部を具え、
前記制御部は、ダウンコンバータ部の電圧制御をスイッチ素子のduty比にて制御すると共に、第一平滑素子にて平滑にして得られる重畳電圧の電圧制御をスイッチ素子のスイッチング周波数にて制御することを特徴とする請求項4記載のスイッチング電源装置。 - スイッチ素子は、ワイドバンドギャップ半導体からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のスイッチング電源装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002333553A JP2004173354A (ja) | 2002-11-18 | 2002-11-18 | スイッチング電源装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006067696A (ja) * | 2004-08-26 | 2006-03-09 | Sumitomo Electric Ind Ltd | 電力変換装置及びリアクトル |
JP2007174864A (ja) * | 2005-12-26 | 2007-07-05 | Mitsubishi Electric Corp | 電力変換装置 |
US8664927B2 (en) | 2011-05-31 | 2014-03-04 | Fujitsu Semiconductor Limited | Voltage regulator |
-
2002
- 2002-11-18 JP JP2002333553A patent/JP2004173354A/ja active Pending
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