JP2004172860A - 位相同期型光変調システムおよび光変調素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光短パルス列生成器10で生成された光短パルス列を光変調器12に入射する直前に分波器70で分岐する。分波器70から分波された光の一方を光変調器12に入射させ、もう一方はフォトディテクタ76で受けて電気信号に変換する。フォトディテクタ76で変換した電気信号を位相比較器74に入力する。位相比較器74では、基準クロック信号発生器 34 から供給される基準クロック信号とフォトディテクタ76で変換された電気信号の位相とを比較する。その差分を元に生成器10に入力するクロック信号の位相を可変位相遅延器72によって調整し、光変調器12に入射する直前の光短パルス列24の位相と変調信号生成器32から光変調器12に供給される電気信号28の位相とを合致させる。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、光時分割多重通信の分野で用いられる光変調システム、およびこの光変調システムに用いられる光変調素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
光時分割多重通信(OTDM: Optical time division multiplexing)とは、並列に光パルス信号(光短パルス列を光変調して電気パルス信号を光パルス信号に変換したもの)を生成(以後「コーディング」ともいう。)し、それをビットインターリーブすることにより多重化して(光MUX)送信し、受信側で送信側とは逆操作であるゲート信号によって光信号を分離(以後「ゲーティング)ともいう。)することにより元の並列光パルス信号に戻す(光DEMUX)方式を採る通信である。
【0003】
光変調システムは、OTDMにおいて、基準クロック信号に従って光パルス信号を生成したり(送信側)、光パルス信号を電気信号に復調したり(受信側)するために使用される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の技術では、基準クロック信号発生器によって供給される電気信号と変調信号生成器によって供給される電気変調信号との位相差を自動的に調整する機能が具わっていない。そのため両者信号の位相関係がずれ、通信エラー等の障害の原因となる。
【0005】
そこで、光変調器へ入力される直前のパルス光を分岐(以後「タップする」ということもある。)してその位相情報を抽出し、この位相情報に基づいて変調信号生成器によって供給される電気変調信号の位相を自動的に調整するフィードバック機能が必要となる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
<位相同期型光変調システム>
この発明の位相同期型光変調システムは、光短パルス列生成器、光変調器、基準クロック信号発生器、変調信号生成器および位相遅延器を具え、光短パルス列生成器でCW光を光短パルス列として生成する。こうして生成された光短パルス列を光変調器に入射する直前に自動位相調整装置の分波器で分岐する。分波器で分波した光の一方を光変調器に入射させ、もう一方はフォトディテクタで受け電気信号に変換する。フォトディテクタから出力された電気信号は位相比較器に入力される。位相比較器では、基準クロック信号発生器から供給される基準クロック信号とフォトディテクタで変換された電気信号の位相を比較する。その位相差に基づいて光短パルス列生成器に入力する電気パルス信号の位相を、フォトディテクタで変換された電気信号の位相(光短パルス列の位相に等しい。)と合致するように変化させる。このような位相制御によって、通信エラー等の障害の発生を防止することができる。
【0007】
<複合型光変調素子>
複合型光変調素子は、相異なる導電型のクラッド層で活性層を挟んだダブルへテロ接合構造を有する半導体素子であって、活性層は光導波路としての機能も有する。この素子の基本構造は、第1の電極のためのオーミックコンタクト層、第1のバッファ層、第1の導電型のクラッド層、活性層(光導波路)、第2の導電型のクラッド層、第2の導電型のキャップ層および第2の電極のためのオーミックコンタクト層を順次に積層させた構造を有している。特に、ダブルへテロ接合構造を2つの領域に分割してある。分割された一方の領域(第1活性層領域という。) を光変調素子として機能させ、かつ、他方の領域(第2活性層領域という。)をフォトディテクタとして機能させることができる。
【0008】
上述した構造を有する複合型光変調素子によれば、先ず、第1活性層領域において順方向に電圧を印加することで、活性層領域を伝播する光の強度を変化させるという光変調機能を達成できる。第2に、第2活性層領域において活性層領域を伝播する光の強度の変化に呼応する電気信号を取り出せるので、いわゆるフォトディテクタとしての機能を達成できる。この複合型光変調素子を、この発明の位相同期型光変調システムに適用すれば、同システムの小型コンパクト化が図られる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図1から図13を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、各図は、この発明に係る一構成例を図示するものであり、この発明が理解できる程度に各構成要素の断面形状や配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の材料および条件等を用いることがあるが、これら材料および条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。また、各図において同様の構成要素については、同一の番号を付して示し、その重複する説明を省略することもある。
【0010】
以下に示す図において、光ファイバ等の光信号の経路を太線で示し、電気信号の経路を細線で示してある。またこれら太線および細線に付された番号および記号は、それぞれ光信号あるいは電気信号を意味する。
【0011】
図1(A)はこの発明の適用が可能な送信側装置の概略的な構成を示す図であり、図1(B)はその内の1チャンネル分(チャンネルを区別するために図中番号にa、b、c、d、eを付する。)を抜き出して示したブロック図である。図1(B)には、光変調素子の動作を説明するために、主要な構成要素を加え、それらの関係を単純化して示してあり、簡単化のために、各チャンネルに光短パルス列を分離するための、すなわち光強度分割するための、分波器38を省略して示してある。
【0012】
光短パルス列生成器10に入ったCW光(continuous wave光)22は、後述する光変調方式により、パルス光24に変換され、光変調器12によって光パルス信号26に変換される。こうして得られた光パルス信号26は、一定の条件で遅延の長さを調整された光ファイバ18a,18b,…18eからなる光遅延調整部18を通り、合波器14に送られる。この合波器14で各チャンネルからの光パルス信号が合波され、合波された光パルス信号20(多重化された光パルス信号)となって伝送用の光ファイバに送られ、受信側に向けて送信される。
【0013】
図2は、この発明の適用が可能な受信側装置の概略的な構成を示す図である。送られてきた多重化された光パルス信号20の一部が分波器50で取り出されて、すなわち光強度分割され、フォトディテクタ51によって電気信号に変換されてクロック信号抽出器56に送られる。クロック信号抽出器56では、この受信光20によって送られてきたクロック信号が抽出される。このクロック信号が電気信号として電気信号遅延回路62に供給される。また送られてきた信号光は分波器50を通過して分波器52で各チャンネルに分配される。
【0014】
分配された信号光は、光変調器60(60a,60b,60c,60d,60e)に入り、ここでクロック信号抽出器56から電気信号遅延回路62を介して供給される電気パルス信号により、各チャンネルに対応した光パルス信号に切り分けられる。このようにして得られた各チャンネルの光パルス信号は、光電変換器64によって電気パルス信号に変換される。
【0015】
以上がOTDMの概略である。ここで再び、図1(B)を参照してOTDMの光変調方式につき、その概略を説明する。
【0016】
光短パルス列生成器10に半導体レーザ等の光源からCW光を入射させる。図中、CW光22、パルス光24および光パルス信号26のそれぞれにつき、光の強度を時間の関数として波形図22f、24fおよび26fで示してある。波形図22fに示すように、光短パルス列生成器10に入る前の光の強度は時間によらず一定値である。光短パルス列生成器10には、基準クロック信号発生器(clock signal generator)34から、電気パルス信号27が加えられる。光短パルス列生成器10に加わる電気パルス信号27は、一定時間間隔で並んだ規則正しいパルス列からなる電気パルス列である。
【0017】
光短パルス列生成器10は、この電気パルス信号27に呼応して、入力光であるCW光をパルス光24に変換する。したがって光変調器12aに入る前のパルス光24は、図中24fで示すように、一定時間間隔で並んだ規則正しい光パルス列となる。パルス光24は、必要に応じて光増幅器(図示せず)を介して、光変調器12aに入力される。
【0018】
光変調器12aには、基準クロック信号発生器34、位相遅延器(Phase shifter)30および変調信号生成器(plus pattern generator)32を介して電気変調信号28(この信号は、「0」又は「1」 の2値デジタル信号値が電圧の高低に反映されたパルス信号である。)が加えられる。すなわちこの電気変調信号28は、送信側の送りたい情報がデジタル2値信号に変換された信号である。この電気変調信号28の位相は入力するパルス光24の位相と同位相である必要がある。
【0019】
光変調器12aにパルス光24が入ると、電気変調信号28の2値デジタル信号値のうちのいずれか一方の値(高電位あるいは低電位のいずれか一方として人工的に取り決める。)に一致したパルス光のみが透過される。このように電気変調信号28でパルス光を通す時間帯は窓のような役割でもあるので、この時間帯を窓の開いている部分あるいは単に窓の部分ということもある。
【0020】
このようにして、2値デジタル電気信号が2値デジタル光信号に変換される。すなわち、図中26fで示すように、光変調器12aを出た後の光26は、送信側の送りたい情報が反映された光パルス信号26となっている。
【0021】
実際のOTDMにおける光短パルス列生成器10と光変調器12の間には光増幅器(図示せず)が挿入される。この光増幅器を挿入する理由は、パルス光24の元となるCW光22が光短パルス列生成器10を通過する段階で減衰し、さらに分波器38によってチャンネル数分に分配されることにより、さらに弱まってしまうため、この素子によりその強度を高める必要があるからである。この光増幅器の挿入や各種素子の周辺温度の変動等は、パルス光24の位相に変化を与えるため、基準クロック信号発生器34 によって供給される電気パルス信号27と変調信号生成器32 によって供給される電気変調信号28の位相との関係を、光増幅器の挿入等による位相の変化に応じて調整することが必要となる。
【0022】
上述した光変調方式では、光短パルス列生成器10に加えられる電気パルス信号27の位相と光変調器12に加えられる電気変調信号28の位相との関係を、自動的に調整させる機構が具わっていない。
【0023】
このことは伝送容量が小さい場合、すなわち単位時間当たりに送ることができる情報の量が少ない場合には、問題が起こらないが、大きくなると以下に説明する問題が生ずる。以下、この点について説明する。
【0024】
図3(A)および図3(B)は、光短パルス列24(すなわち光短パルス列生成器10を出たパルス光)と電気変調信号28(すなわち光変調器12に加わる電気変調信号)および光出力波形26(すなわち光変調器12を出た直後の光パルス信号)の関係を表す。それぞれの波形は、横軸に時間、縦軸に強度(光短パルス列24の波形24fと光パルス信号26の光出力波形26fにあっては光強度、電気変調信号28の波形にあっては電圧)をとって示してある。図3(A)は基準クロック信号発生器34 によって供給される電気パルス信号27と変調信号生成器32 によって供給される電気変調信号28との位相差がない場合、および図3(B)はその位相差がある場合を示す。図3では判別しやすくするためにパルス光24fは三角形、および電気変調信号28の波形は台形で示してあるが、実際には、いずれも立上り、立下りおよび頂点の部分は滑らかにつながる曲線から成っている。
【0025】
ここで、伝送容量が40 Gbit/s (すなわち1秒間に送る情報量が40 Gbitであること)である場合を一例として説明する。伝送容量は、後に説明する際に必要となる、クロック周波数と関連する値である。
【0026】
図3(A)の中段に示した電気変調信号28の波形の周期は25 ps であり、電圧が最大電圧の20%から80%の値になるまでに要する時間(立ち上がり時間)は通常10ps である。電圧が最高電圧の80%から20%の値に下がるまでの時間(立ち下がり時間)も同じく10ps である。この場合、電気変調信号波形の頂点の平らな部分は15 ps となる。伝送容量をこれより大きくするためには、この電気変調信号波形の周期を短くする必要がある。立ち上がりあるいは立下り時間は電気工学的にこれ以上短くはできないので、電気変調信号波形の頂点の平らな部分、すなわち最大電圧の持続時間を短くすることになる。逆に伝送容量を小さくすれば、この頂点の平らな部分は長くできることになる。
【0027】
図3(A)および図3(B)の上段に示したのが、すでに説明したとおり、光短パルス列生成器10を出た直後の光短パルス列24の波形24fである。この周期も電気変調信号波形の周期と同じである。ただし図3(A)は、光短パルス列と電気変調信号の両波形の位相が一致しているが、図3(B)は、これら両波形の位相がずれている(この例では電気変調信号の位相が光短パルス列の位相より遅れている。)。
【0028】
光変調器12aを出た直後の光パルス信号26の出力の光出力波形26fは、図3(A)および図3(B)のそれぞれの下段に描かれた波形になる。出力される光パルス信号を構成している各光短パルス(図では三角形の形に描かれた一つ一つを指す。)は、光短パルス列24fの中の一つの光短パルスと電気変調信号28の高電位部分(図では台形の形に描かれた部分で「1」が付された部分)が重なった部分のみである。電気変調信号28が低電位部分(図で「0」が付された部分)と重なった光短パルスは、出力されない。
【0029】
図3では電気変調信号として[100101]という信号を仮定している。この信号[100101]を光出力信号26に変換する場合である。基準クロック信号発生器34 によって供給される電気パルス信号27と変調信号生成器32 によって供給される電気変調信号28との位相が合っている場合(図3(A))は、光パルス信号26が、送信側が送りたいデジタル情報を正しく反映した光出力波形[100101]となっている。一方この位相が合っていない場合(図3(B))は 、光パルス信号26が送信側が送りたいデジタル情報を正しく反映した光出力波形[100101]となっていない。
【0030】
図3(B)では、光パルス信号26を構成する光短パルスとして存在すべき時刻(電気変調信号28では「1」が与えられている時刻)に光短パルスが出ているが、この光短パルスの右側が削られて歪められている。一方、光パルス信号26を構成する光短パルスとして存在すべきでない時刻においても小さいながら光パルス信号が出ている(図では2箇所)。
【0031】
このように、電気変調信号28が正しく光パルス信号26の光出力波形に反映されないと、通信エラー等、障害を引き起こす原因となる。
【0032】
もちろん以上論じたことは、伝送容量が小ければ、問題とならない。光短パルス列の波形24fのパルス間隔が広い上、電気変調信号28の窓も広く取れるからである。窓が広く取れるとは、電気変調信号28の頂点の平らな部分の長さが長くなることを意味する。したがって基準クロック信号発生器34によって供給される電気パルス信号27と変調信号生成器32 によって供給される電気変調信号28との位相差は、伝送容量が大きくなるほど小さくする必要がある。
【0033】
ここで説明した伝送容量40 Gbit/s は、光を使わない時分割多重(TDM)通信の限界といわれている。したがってこれ以上の伝送容量のTDMを実現するためには、光を使う必要がある。言い換えると、光を使う利点は伝送容量を大きくできる点にあり、光をもってしなければ実現できない伝送容量のTDMを実現するためには、基準クロック信号発生器34 によって供給される電気パルス信号27と変調信号生成器32 によって供給される電気変調信号28との位相が合っていることが必要といえる。
【0034】
<位相同期型光変調システムの第1の実施形態>
この発明の位相同期型光変調システムの第1の実施形態につき図4を参照して説明する。この発明の位相同期型光変調システムは、光短パルス列生成器、光変調器、基準クロック信号発生器、変調信号生成器および位相遅延器を具え、以下に説明するように動作する。
【0035】
光短パルス列生成器10でCW光を光短パルス列24として生成する。こうして生成された光短パルス列24を光変調器12に入射する直前に、自動位相調整装置78の分波器70で分岐する。
【0036】
分波器70には例えば光カプラを用いる。分波器70から分波された光の一方は光変調器12に入射し、もう一方はフォトディテクタ76で受けられ電気信号77に変換される。フォトディテクタ76から出力された電気信号77は位相比較器74に入力される。
【0037】
位相比較器74では、基準クロック信号発生器34 から供給される電気パルス信号27とフォトディテクタ76で変換された電気信号77の位相が比較される。その位相差すなわち差分を可変位相遅延器72に供給する。可変位相遅延器72は、この差分を元に、変調信号生成器32が光変調器12に供給する電気変調信号28の位相と光変調器12に入射する直前の光短パルス列24の位相とが合致するように調整された電気パルス信号73を発生させ、光短パルス列生成器10に供給する。
【0038】
この結果、自動位相調整装置78によれば送信側の送りたい情報を反映する2値デジタル電気変調信号28(変調信号生成器32から光変調器12に入力される。)の位相と光変調器12に入力する光短パルス列24の位相とを合致させることができる。
【0039】
上述した分波器70、フォトディテクタ76、可変位相遅延器72および位相比較器74は自動位相調整装置78を構成している。すなわちこの自動位相調整装置78によって、上述した電気変調信号28の位相と光短パルス列24の位相とのずれが原因で発生する通信エラー等の障害の発生を防止することができる。
【0040】
<複合型光変調素子の第1の実施形態>
上述した自動位相調整装置78によって、送信側の送りたい情報を反映する2値デジタル電気変調信号28の位相と光変調器12に入力する光短パルス列24の位相とを合致させるという課題は解決するが、光短パルス列生成器10と光変調器12との間に分波器70、フォトディテクタ76等を挿入しなければならないので、OTDMの送信側装置全体の規模が大きくなってしまう。また分波器70により光短パルス列24をタップするために、光変調器12に入力させる光短パルス列24の強度を小さくしてしまう。
【0041】
そこで本願発明者は、上記OTDMの送信側装置全体の規模が大きくなること、および光短パルス列24をタップすることによる光強度の減少という問題を解決するのに好適な、図5に示す構造の複合型光変調素子を創作した。
【0042】
複合型光変調素子は、相異なる導電型のクラッド層で活性層を挟んだダブルへテロ接合構造を有する半導体素子であって、活性層は光導波路としての機能も有する。
【0043】
この素子の基本構造は、第1の電極のためのオーミックコンタクト層180、第1のバッファ層182、第1の導電型のクラッド層184、活性層(光導波路)186、第2の導電型のクラッド層188、第2の導電型のキャップ層190および第2の電極のためのオーミックコンタクト層192を順次に積層させた構造を有している。特に、ダブルへテロ接合構造を2つの領域に分割してある。分割された一方の領域(第1活性層領域Iという。)を光変調素子として機能させ、かつ、他方の領域(第2活性層領域IIという。)をフォトディテクタとして機能させることができる。
【0044】
第1活性層領域Iと第2活性層領域IIの間には、導波路領域WGが設けられている。導波路領域WGは、光を導波するだけの機能を持ち、光変調機能やフォトディテクタとしての機能を有していない。この第1活性層領域I、導波路領域WGおよび第2活性層領域IIは、積層方向と直交する光の導波方向に沿って順次に配置されている。この導波路領域WGの構造は、第2の導電型のキャップ層190の代わりに、第1の導電型の半導体層196が真性半導体層198の上に形成された2層の積層からなる構造とする。
【0045】
また複合型光変調素子の光の導波方向の両端は、それぞれ光の入射端および出射端を構成しており、これら入射端および出射端には、それぞれ誘電体膜(それぞれ210,212)が形成されており、第1活性層領域Iと第2活性層領域IIとに対して電気信号を印加したり、あるいはこれら領域から電気信号を取り出したりするために、これら領域にはキャップ層190を介して、それぞれ電極218、216が形成されている。
【0046】
上記構造を有する複合型光変調素子によれば、先ず、第1活性層領域Iにおいて順方向に電圧を印加することで、活性層186を伝播する光の強度を変化させるという光変調機能を達成できる。第2に、第2活性層領域IIにおいて活性層186を伝播する光の強度の変化に呼応する電気信号を取り出せるので、いわゆるフォトディテクタとしての機能を達成できる。
【0047】
<位相同期型光変調システムの第2の実施形態>
次に、図6を参照して位相同期型光変調システムの第2の実施形態を説明する。位相同期型光変調システムの第2の実施形態は、複合型光変調素子を用いて構成される。この発明の位相同期型光変調システムの構成要素である、光変調器12、分波器70およびフォトディテクタ76を具える自動位相調整装置178を、複合型光変調素子100を用いて構成することができる。図6は、複合型光変調素子100を用いて構成した、位相同期型光変調システムの第2の実施形態を簡略化して示してある。図6中、符号Iで示した部分は光変調機能を有する第1活性層領域、符号IIで示した部分はフォトディテクタとしての機能を有する第2活性層領域を意味している(後述する図7、図8、図10においても、IおよびIIと表記した部分は、同じ意味を示す。)。
【0048】
光短パルス列生成器10により生成された光短パルス列24は、この複合型光変調素子100の第2活性層領域IIに入射し、この第2活性層領域IIで光短パルス列の繰返し周波数が電気信号77として検出される。検出された電気信号77は増幅器42で増幅され位相比較器74に送られる。増幅器42は必ずしも必要ではないが、これを挿入することで位相比較器74に送られる電気信号77の強度が強められ、位相比較器74での処理に確実性が増す。位相比較器74では、第2活性層領域IIにおいて検出された電気信号77の位相と基準クロック信号発生器34の電気パルス信号27の位相とが比較される。その比較情報を基に、可変位相遅延器72が複合型光変調素子の第2活性層領域IIで観測された光短パルス列24の位相と同位相の電気パルス信号73を光短パルス列生成器10に供給する。第2活性層領域IIを通過した光短パルス列24は第1活性層領域Iに入射し、この第1活性層領域Iに変調信号生成器32から供給される電気変調信号28により変調され、この複合型光変調素子から光パルス信号26として出力される。
【0049】
このように一体化することで、部品のコンパクト化が図れるほか、図4に示された分波器70等が不要となるので、光短パルス列24の分波器70で発生する強度の減衰を回避できる。
【0050】
<位相同期型光変調システムの第3の実施形態>
位相同期型光変調システムの第3の実施形態は、図1(A)説明したOTDMの送信部に複合型光変調素子を多数(チャンネルの数分)採用するシステムである。図7を参照して位相同期型光変調システムの第3の実施形態を説明する。ここでは記述を単純にするためにチャンネル数を2とするが、原理的にはチャンネル数はN(ただし、N≧3の整数)チャンネルに拡張できる。
【0051】
光短パルス列生成器10から出力された光短パルス列24は分波器38によって2分割され複合型光変調素子(100a、100b)に導入される。各々の複合型光変調素子(100a、100b)の第1活性層領域Iには、基準クロック信号発生器34から位相遅延器(30a、30b)および変調信号生成器(32a、32b)を介して電気変調信号(28a、28b)が供給される。
【0052】
多数のチャンネル中において、出力される光パルス信号(図7では26aおよび26b)強度が最も小さいチャンネルがある。2チャンネルの例において、最小強度のチャンネルをチャンネルbとする。この場合、チャンネルbに設けられている複合型光変調素子(以後「第1の素子」ということもある。)の第2活性層領域IIから第1活性層領域Iを通って出力される光パルス信号26bの強度を基準として光パルス信号強度を調整する。この調整は、他のチャンネル(ここでは、チャンネルaとする。)に含まれる複合型光変調素子100aに、バイアス電圧29を印加する直流バイアス電源142の供給電圧を調整し、チャンネルbの光パルス信号26bの強度と一致するようにチャンネルaの光パルス信号26aの強度を下げることにより行なう。直流バイアス電源142と第2活性層領域IIとはコイル144を介してつながっている。一方、第2活性層領域IIからはコンデンサ146を介することにより、直流バイアスを除いた電気信号成分のみを端子148から取り出すことができる。上述した直流バイアス電源142の供給電圧を調整操作する際には、この端子148から取り出される電気信号の強度をモニタしながら、この調整作業を行なうことになる。
【0053】
このような構成とすれば第1の素子の出力光パルス信号の強度を基準にして他のチャンネルの出力光パルス信号の強度を調整することができる。すなわち複合型光変調素子の第2活性層領域IIを可変光減衰器として用いることにより、すべてのチャンネルの光パルス信号の強度が第1の素子の出力光パルス信号の強度に等しくなるように調整することができる。
【0054】
OTDMの送信側を想定すると、位相同期型光変調システムがチャンネルの数だけ必要となり、各チャンネルから並列に光パルス信号が生成される。この生成される光パルス信号の強度はチャンネル毎に異なることは、通信エラー等の原因となり、好ましくないので、すべてのチャンネルの光パルス信号の強度が等しくなるように調整することができる機能は重要である。
【0055】
以上説明したように位相同期型光変調システムの第3の実施形態によれば、OTDMにおける送信側においてすべてのチャンネルの光パルス信号の位相自動調整機能の実現に加えて、光パルス信号強度を等しくすることも実現できる。また従来の方法に比べて部品点数が削減できるので、装置の製造コストの低減を図ることができる。
【0056】
<位相同期型光変調システムの第4の実施の形態>
位相同期型光変調システムの第4の実施形態は、複合型光変調素子であって、第1活性層領域Iの側の出力側端面に高反射コーティング170を施した複合型光変調素子(以後「反射型の複合型光変調素子」ということもある。)を用い、この複合型光変調素子の第2活性層領域IIから出力される電気信号を狭帯域フィルタを通して取り出す構成とした、位相同期型光変調システムである。
【0057】
図8を参照して、位相同期型光変調システムの第4の実施形態を説明する。光短パルス列生成器10から出力された光短パルス列24は分波器(図1(A)で38に相当する分波器であるが簡単のためこの図では図示してない。)を通り、分波器(光サーキュレータ)46を通って、反射型の複合型光変調素子130に入射する。この反射型の複合型光変調素子130の第2活性層領域IIで光短パルス列24のパルス繰返し周波数に関する情報を電気信号77として取り出す。この電気信号77は狭帯域フィルタ44を介して電気信号79となり、増幅器42により増幅されて電気信号81となって位相比較器74に入る。
【0058】
一方、位相比較器74へは基準クロック信号発生器34から電気パルス信号27が入り、この電気パルス信号27の位相と、電気信号81の位相が比較される。この比較結果に基づき前述したように位相比較器74から、電気パルス信号27の位相と電気信号81の位相との差分情報が可変位相遅延器72に送られる。可変位相遅延器72では、この差分情報を電気パルス信号27の位相に付加して電気パルス信号75を生成して、光短パルス列生成器10に電気パルス信号75を印加する。
【0059】
一方、反射型の複合光変調素子130の第1活性層領域Iでは光パルス信号26が生成され、第2活性層領域IIを通過して分波器(光サーキュレータ)46で分波され外部に取り出される。位相同期型光変調システムの第4の実施形態における自動位相調整装置179の機能は、位相同期型光変調システムの第2の実施形態の自動位相調整装置178の機能と同じ原理で実現される。
【0060】
第2活性層領域IIには、入力される光短パルス列24の繰返し周波数成分だけでなく、第1活性層領域Iで変調された光パルス信号26成分が重ね合わされた信号が出力される。したがって、光パルス信号26成分である低周波数成分を狭帯域フィルタ44により除外することにより、自動位相調整機能を実現させるための信号を得ることができる。
【0061】
位相同期型光変調システムの第4の実施の形態によれば、複合型光変調素子を反射型としてあるので、光変調領域である第1活性層領域Iを光は往復する間に変調される。すなわち透過型の複合型光変調素子に比べて第1活性層領域Iの長さが半分でよいことになる。このため光変調素子の静電容量を半分に低減でき、光変調動作をより高速化できる。
【0062】
<位相同期型光変調システムの第5の実施の形態>
以上において説明してきたのは、位相同期型光変調システムおよび複合型光変調素子を、OTDMの送信側に適用した場合についてである。本願発明の位相同期型光変調システムおよび複合型光変調素子は、OTDMの受信側における光ゲーティングシステムにも応用できる。
【0063】
ここでは図9を参照して、位相同期型光変調システムの第5の実施の形態として、OTDMの受信側システムを説明する。簡単のためにOTDMの1チャンネル分だけを取り出して説明する。図9では、ここで説明する1チャンネル分以外のチャンネルは「略」と表示して、これら省略したチャンネルの光ゲーティングを行なう部分を省いて図示してある。
【0064】
OTDMの受信側では既に概略説明したように、また送られてきた合波された光パルス信号20Rは第2段目の分波器52Rを通過して各チャンネルに分配される。また送られてきた合波された光パルス信号(すなわち受信光である。)20Rの一部20’Rが第1段目の分波器50Rで取り出されて(タップされて)第1のフォトディテクタ200で第1の電気信号67Rに変換される。第1のフォトディテクタ200から出力された第1の電気信号67Rは、クロック信号抽出器56Rに送られ、これによって送られてきた光パルス信号のクロック信号が抽出される。このクロック信号が電気信号57Rとして位相比較器74Rに供給される。
【0065】
光ゲーティングに必要な基準クロック信号31Rは変調信号生成器32Rで生成され、またこの基準クロック信号31Rに位相比較器74Rから供給される差分75Rが付加されて電気信号遅延回路62Rに供給される。光ゲーティングを行なう光変調器60Rには、電気信号遅延回路62Rから、この電気信号遅延回路62Rにおいて一定の位相遅延75R(位相比較器74Rから供給される差分75Rである。)が変調信号生成器32Rで生成された基準クロック信号31Rに付加されて得られる電気変調信号28Rが供給される。
【0066】
以上説明した光ゲーティングシステムにおける動作をより詳細に説明する。第2段目の分波器52Rでチャンネルごとに分配された光パルス信号25Rを、光ゲーティングを行なう光変調器60Rに入射する直前に分波器70Rでタップして第2のフォトディテクタ76Rで第2の電気信号77Rに変換して位相比較器74Rに送る。また前述したとおり、クロック信号抽出器56Rで抽出された電気信号57Rが位相比較器74Rに送られるので、この位相比較器74Rにおいては、この電気信号57Rの位相と第2のフォトディテクタ76Rで検出された第2の電気信号77Rの位相とが比較される。この結果(差分75R)を電気信号遅延回路62Rに供給する。電気信号遅延回路62Rでは、変調信号生成器32Rから供給されたゲーティング基準変調信号31Rの位相に上述した差分を付加して、変調信号生成器32Rから供給されるゲーティング基準変調信号31Rに対して必要量の位相遅延を行ない、電気変調信号28Rを生成する。光変調器60R(光ゲーティング部)は、これにこの電気変調信号28Rが供給されることで光ゲーティングを行ない、チャンネル毎の光パルス信号26Rを取り出す。この光パルス信号26Rは光電変換器64R で電気信号26Eとして最終的に受信される。
【0067】
この光ゲーティングシステムにおいて、光ゲーティング部直前の光パルス信号の位相情報を抽出し、この位相と電気変調信号28Rの位相とが合うように自動調整するためのフィードバック機能を有する回路構成部分、すなわち分波器70R、フォトディテクタ76Rおよび位相比較器74Rで構成される部分を、第1の発明において定義したと同様に、自動位相調整装置78Rと称する。
【0068】
上述したように、位相同期型光変調システムの第5の実施の形態によれば光変調器60Rに供給される電気変調信号28Rの位相と光ゲーティング部直前の光パルス信号の位相とを合致させることができる。このことによって、第2の分波器52R、光増幅器(図示せず)やそれらをつなぐ光ファイバ等の温度変化等の周辺環境の影響をこれら素子が受けることにより生ずる、光の位相の変化による通信エラー等の、OTDRにおける受信側における障害の発生を除去できる。
【0069】
しかし、以上説明した位相同期型光変調システムの第5の実施の形態では、複数の情報が重ね合わせられた光パルス信号を分波する第2段目の分波器52Rと光ゲーティングを行なう光変調器60Rとの間に、光ゲーティングを行なう光変調器に入射する直前の光パルス信号をタップするための分波器70Rやフォトディテクタ76R等を挿入しなければならないので、光ゲーティングシステムを構成する装置の規模が大きくなってしまう。また分波器70Rによりタップするために、光ゲーティングを行なう光変調器60Rに入力させる光短パルス列の強度を小さくしてしまう。
【0070】
<位相同期型光変調システムの第6の実施の形態>
そこで、上述の点を考慮して更なる改良を図った構成を、位相同期型光変調システムの第6の実施の形態として、図10を参照して説明する。
【0071】
第1段目の分波器50Rでタップされた光パルス信号20’Rは、フォトディテクタ200で電気パルス信号67Rに変換されて、クロック信号抽出器56Rに入力される。ここで検出されたクロック信号は、位相比較器74Rに供給される。
【0072】
一方、第2段目の分波器52Rと光電変換器64Rとの間に複合型光変調素子100Rを設置し、第2活性層領域IIで第1活性層領域I直前の光パルス信号の位相情報を抽出する。クロック信号抽出器56Rから供給される光パルス信号20R(受信信号である。)のクロック信号の位相と第2活性層領域IIで検出された光パルス信号77Rの位相とを位相比較器74Rによって比較して、この結果を電気的差分情報75Rとして、電気信号遅延回路62Rに供給する。電気信号遅延回路62Rでは、変調信号生成器 32Rから供給されるゲーティング基準変調信号31Rにチャンネル毎に必要量の位相遅延がなされて、第1活性層領域Iに電気変調信号28Rとして供給することで光ゲーティングを行ない、チャンネル毎の光パルス信号26Rを取り出し、この光パルス信号26Rは光電変換器64R で電気信号26Eとして最終的に受信される。
【0073】
このような構成とすれば、送信側から多数チャンネルの信号が合波されて(MUX)送られてくる複合型光変調素子100Rに入射する直前の光パルス信号20Rの位相と受信側の光ゲーティングの位相(電気変調信号28Rの位相)とを合致させることができる。自動位相調整装置78Rの機能を複合型光変調素子100Rで構成することで、小型化が図られ、前述した位相同期型光変調システムの第5の実施の形態における分波器70Rによる光タッピングによる光短パルスの強度を弱めてしまうという問題も解決する。その上で、分波器50Rで分波された時点での光パルス信号20の位相と光変調器(第1活性層領域I)に入射する直前における同光パルス信号の位相とのずれを自動的に調整できるシステムが実現でき、OTDMの通信の信頼性が向上する。
【0074】
受信側の光ゲーティングにおいても、前述した位相同期型光変調システムの第4の実施形態と同様に、第1活性層領域の側の出力端面に高反射コーティングを施した複合型光変調素子を用いた構成とすることができることは明らかである。この場合も当然に、位相同期型光変調システムの第4の実施形態と同様に、光変調動作が高速化される。
【0075】
<複合型光変調素子の第2の実施形態>
図11によって、複合型光変調素子の第2の実施形態を説明する。n型InP単結晶基板を用いて複合型光変調素子を構成する。n型InP(以後n−InPと略記する。この他の半導体についても同様に略記する。)基板230、基板側のオーミックコンタクト244にはAuGeNi/Auを用いる。n−InP基板230上にn−−InPクラッド層232、n+−InGaAsP活性層234、p−InPクラッド層236、p+−InPキャップ層238、がこの順に形成されている。p+−InPキャップ層側のオーミックコンタクト246、250はAu/AuZnを用いる。導波路領域WGは、p+−InPキャップ層238の代わりにn−InGaAsP層240およびi−InP層242(iは真性半導体を意味する。)の2層構造とする。
【0076】
n−−InPクラッド層232、p−InPクラッド層236、p+−InPキャップ層238の厚さはいずれも1μmから4μmとするのが好ましい。n+−InGaAsP活性層234の厚さは0.5μm程度とするのが好ましい。また、n−InP基板230、n−−InPクラッド層232、n+−InGaAsP活性層234、p−InPクラッド層236、p+−InPキャップ層238、のキャリヤー濃度は、それぞれ、2×1018 cm−3 、1×1017 cm−3 、5×1018 cm−3 、1×1018 cm−3、5×1018 cm−3 、程度とするのが好ましい。ドナー不純物としてはVI族のS、Se、Te等の元素、アクセプター不純物としてはII族のBe、Mg、Zn、Cd等の元素を用いればよい。
【0077】
第1活性層領域Iと第2活性層領域IIおよび導波路領域WGの長さは、それぞれ50μmから250μm程度とするのが望ましい。
【0078】
モニタ出力と変調信号との絶縁をさらに完全にするためにi−InP層242の上面部にAu/AuZnでオーミックコンタクト248を形成し、接地262することが好ましい。
【0079】
変調信号入力端子254あるいはモニタ出力端子252の円形に破線で囲った部分は、図11(B)に示すようにコンデンサー286で複合型光変調素子と接続される。また第1活性層領域Iおよび第2活性層領域IIにバイアス電圧を印加するためにコイル282を介して直流(DC)バイアス電源280が接続される。また、変調信号入力端子254あるいはモニタ出力端子252に対する共通電極として接地電極262が設けられている。
【0080】
第1活性層領域Iには変調信号入力端子254から変調信号電圧が印加される。またDCバイアス電源により負の電位(−1.5 Vから−2.0 V程度の範囲)が与えられる。変調信号電圧の最大最小値は、DCバイアス電源から−1.5 Vの電位が与えられているとすれば、それぞれ1.5 Vおよび−1.5 Vとすればよい。この場合第1活性層領域Iには0 V から−3.0 Vの範囲の電圧が加わることになる。−3.0 Vの電圧が加わっているときはこの領域が不透明になり(窓が閉まっている状態となり光短パルスを通さない。)、0 Vの電圧が加わっているときにはこの領域は透明になる(窓が開いている状態となり光短パルスを通す。)。このようにして光変調機能又は光ゲーティング機能が果たされる。
【0081】
第2活性層領域IIには、原則電圧は印加されていない。この領域を光が通過すると、活性層内で電子−ホールの対が生成される。この電子−ホールの対のために結果として入射光量に比例する光電流が発生する。この光電流を外部回路にモニタ出力端子252から取り出して、第2活性層領域IIを通過した光の強度を割り出すことができる。第2活性層領域IIを光が通過すると、以上説明したように一部が電力に変換されるので、光強度が弱まるが、光カプラでタップする場合に比べるとこの光強度の減少は十分に小さい。さらにDCバイアス電源から逆バイアス電圧を印加すれば、この第2活性層領域IIを通過する光の強度を調整することができる。
【0082】
このことにより、位相同期型光変調システムの第3の実施形態において、第1の素子の第2活性層領域IIから出力される信号強度を基準として、他のチャンネルの複合型光変調素子100のDCバイアス電源を調整し、第1の素子の変調出力信号の強度と一致するように光出力を下げることができる。
【0083】
<位相同期型光変調システムの第7の実施の形態>
図12によって、位相同期型光変調システムの第7の実施の形態として位相同期型光変調システムを説明する。
【0084】
なお図12においては、簡単のために、光短パルス列生成器101および複合型光変調素子100の光の入射端および出射端に施される誘電体膜(図5および図11の210および212)は図示されていない。また、複合型光変調器100の導波路領域WGおよびそれに関連する電極等の構成要素も省略して示してある。なお後述する図13においても同様にこれらの構成要素を省略して示してある。
【0085】
電極端子と可変位相遅延器72、増幅器42、変調信号生成器32とは、図12(B)に示すように、コンデンサー286を介して接続されており、これにコイル282を介してDCバイアスが直流電源装置280から加えられる構造となっている。
【0086】
複合型光変調素子100は例えばn型半導体単結晶基板80上に形成する。82は活性層領域Iクラッド層、84は活性層領域IIクラッド層である。一方86は光短パルス列生成器10のクラッド層である。88、89、90、91、92は可変位相遅延器72、位相比較器74、変調信号生成器32等と接続するためのオーミックコンタクト層である。96は光短パルス列生成器101の活性層である。110および120はそれぞれ、複合型光変調素子の第2活性層領域IIおよび第1活性層領域Iを示す。112および122はそれぞれ、第1活性層領域Iおよび第2活性層領域IIの活性層を表している。
【0087】
光短パルス列生成器101を構成する素子の構造は、複合型光変調素子の第1活性層領域Iおよび第2活性層領域IIの部分の構成と同じであり、単独のダブルへテロ接合構造の接合素子であって、光変調素子としての機能を持つ。駆動方法は、すでに説明した第1活性層領域Iの部分の駆動方法と同じである。この電極には基準クロック信号発生器34から可変位相遅延器72を介して周期的な電気パルス信号が加わっている。電気パルス信号の先頭値である0 Vの電圧が加わっているときにはこの領域は透明になり、この瞬間に光パルスの1つが生成される。このあと電圧が−3.0 Vとなり不透明になる。この繰返しにより、規則正しい光パルス列が生成される。
【0088】
このようにして生成された規則正しい光パルス列は、分波器150によりチャンネル数分に分割される。分波器150はスターカプラー等の光デバイスを用いれば、チャンネル数分に光短パルス列を分波することができる。分割されたうちの一つ一つがチャンネルごとに設けられている複合型光変調素子100に入射する。実際には、チャンネルの数分、複合型光変調調素子100が並列して配置されるが、簡単のために、図12(A)では、1チャンネル部分だけを抜き出して描いてある。複合型光変調素子100の動作については既に説明したとおりである。
【0089】
図12(A)に示すような構成とすれば、位相同期型光変調システムの第7の実施形態の構成が実現することは明らかである。すなわち、CW光を基準クロック信号の周波数に等しい繰返し周期をもつパルス列からなるパルス光に変換する光短パルス列生成器10は、上記に説明した光短パルス列生成器101を構成する素子によって実現する。
【0090】
光短パルス列生成器101、第1活性層領域120、第2活性層領域110と可変位相遅延器72、増幅器42、変調信号生成器32との電気的な接続は、いずれも図12(B)に示すようにコンデンサー286、コイル282を介してそれぞれ行なわれるように設置する。
【0091】
光短パルス列生成器101と光変調器との間に、光変調器へ入射する直前の光短パルス列を分岐してそのクロック信号の位相を抽出し、その位相と、基準クロック信号発生器から位相遅延器を介して供給される電気信号の基準クロック信号の位相とを比較して、位相遅延器の位相を調整するフィードバック機能は、すでに説明したところから、複合型光変調素子100において実現できることは明らかである。
【0092】
<位相同期型光変調システムの第8の実施の形態>
図13を参照して位相同期型光変調システムの第8の実施の形態を説明する。この図は基本的に図12とほとんど同じであり、ここでも簡単のために、光の入射端および出射端に施される全反射膜170以外の誘電体膜は、図示されていない。異なる点は、複合型光変調素子100に第1活性層領域Iの出力側に誘電体膜で高反射コーティング170が施されている点と、光短パルス列生成器101の後方に設けられた分波器150と複合型光変調素子100の間に分波器(光サーキュレータ)160が挿入されていることである。
【0093】
高反射コーティング170は、屈折率の異なる2種類の誘電体膜を1/4波長の厚みで交互に積層する構造をもってすれば実現する。
【0094】
以上の構成とすれば、既に説明したように、複合型光変調素子を反射型としてあるので、光変調領域である第1活性層領域Iを光は往復する間に変調される。すなわち透過型の複合型光変調素子に比べて第1活性層領域Iの長さが半分でよいことになる。このため光変調素子の静電容量を半分に低減でき、光変調素子の動作をより高速化できる。
【0095】
【発明の効果】
以上説明したように本願発明の位相同期型光変調システムによってコーディング時およびゲーティング時のいずれの場合においても必要とされる自動的位相同期が実現できることになる。
【0096】
また本願発明の複合型光変調素子は、OTDMの送信側のコーディングや受信側の光ゲーティングにおいて、有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は、光時分割多重通信の送信側の装置構成を説明する図であり、(B)は、光時分割多重通信の送信側の装置構成の1チャンネル分を抜き出して説明する図である。
【図2】光時分割多重通信の受信側の装置構成を説明する図である。
【図3】光短パルス列と電気変調信号と光出力波形との関係を説明する図である。
【図4】位相同期型光変調システムの第1の実施の形態を説明する図である。
【図5】複合型光変調素子の第1の実施の形態を説明する図である。
【図6】位相同期型光変調システムの第2の実施の形態を説明する図である。
【図7】位相同期型光変調システムの第3の実施の形態を説明する図である。
【図8】位相同期型光変調システムの第4の実施の形態を説明する図である。
【図9】位相同期型光変調システムの第5の実施の形態を説明する図である。
【図10】位相同期型光変調システムの第6の実の施形態を説明する図である。
【図11】(A)は、複合型光変調素子の第2の実施の形態を説明する図であり、(B)は、複合型光変調素子と可変位相遅延器等との電気的な接続を説明する図である。
【図12】(A)は、位相同期型光変調システムの第7の実施の形態を説明する図であり、 (B)は、光短パルス列生成器101、複合型光変調素子と可変位相遅延器等との電気的な接続を説明する図である。
【図13】位相同期型光変調システムの第8の実施の形態を説明する図である。
【符号の説明】
10、101:光短パルス列生成器
12、60、60R:光変調器
14:合波器
18:光遅延調整部
18a〜18e:一定の条件で遅延の長さを調整された光ファイバ
22:CW 光
24:パルス光
26:光パルス信号
30:位相遅延器
32、32R:変調信号生成器
34:基準クロック信号発生器
38、46、50、50R、52、52R、70、70R、150、160:分波器
42:増幅器
44:狭帯域フィルタ
51、76、76R、200:フォトディテクタ
56、56R:クロック信号抽出器
62、62R:電気信号遅延回路
64、64R:光電変換器
72:可変位相遅延器
74、74R:位相比較器
78、78R、178,179:自動位相調整装置
80:n型半導体単結晶基板
82:活性層領域Iクラッド層
84:活性層領域IIクラッド層
86:光短パルス列生成器クラッド層
88、89、90、91、92:オーミックコンタクト層
96、112、122:活性層
100、100R:複合型光変調素子
110:活性層領域II
120:活性層領域I
130:反射型の複合型光変調素子
142:直流バイアス電源
144:コイル
146:コンデンサ
148:端子
170:高反射コーティング
180:第1の電極のためのオーミックコンタクト層
182:第1のバッファ層
184:第1の導電型のクラッド層
186:活性層(光導波路)
188:第2の導電型のクラッド層
190:第2の導電型のキャップ層
192:第2の電極のためのオーミックコンタクト層
196:第1の導電型の半導体層
198:真性半導体層
210、212:誘電体膜
216、218:電極
230:n−InP
232:n−−InP
234:n+−InGaAsP活性層
236:p−Inp
238:p+−Inp
240:n−InGaAsP
242:i−InP
244:AuGeNi/Au
246、248、250:Au/AuZn
252:モニタ出力端子
254:変調信号入力端子
280:DCバイアス
282:コイル
286:コンデンサ
Claims (8)
- CW光を、基準クロック信号に同期して形成された光短パルスからなる光短パルス列に変換して出力する光短パルス列生成器と、
該光短パルス列をコーディングするための、電気変調信号を発生する変調信号生成器および該光短パルス列を光パルス信号に変換する光変調器と、
前記光短パルス列と前記基準クロック信号とが供給され、該光短パルス列の位相と前記基準クロック信号の位相との位相差を検出し、及び前記光短パルス列生成器に供給する前記基準クロック信号に対して前記位相差の分だけ位相調整を行なう自動位相調整装置とを具え、
該自動位相調整装置は、光変調器へ入射する直前の光短パルス列を分岐して該光短パルス列の位相を検出し、該位相と前記基準クロック信号発生器から供給される電気信号の位相とを比較して差分を検出し、前記光短パルス列生成器に供給する前記基準クロック信号の位相に該差分を付加し、変調信号生成器から供給される電気変調信号の位相と前記光変調器への入射直前での光短パルス列の位相とが合致するように調整する機能を有することを特徴とする位相同期型光変調システム。 - 相異なる導電型の半導体から成るクラッド層で活性層を挟んだダブルへテロ接合構造を有し、第1の電極、バッファ層、第1の導電型のクラッド層、活性層(光導波路)、第2の導電型のクラッド層、第2の導電型のキャップ層および第2の電極を含み、ダブルへテロ接合構造は、第1活性層領域および第2活性層領域の2つの領域に分割されており、該第1活性層領域と該第2活性層領域の間には、光を導波するだけの機能を持つ導波路領域が設けられており、該第1活性層領域、該導波路領域および該第2活性層領域は、積層方向と直交する光の導波方向に沿って順次に配置されており、前記第2の導電型のクラッド層の上に前記第1の導電型の半導体と真性半導体の2層を含む積層構造が設けられた構造となっていることを特徴とする複合型光変調素子。
- 請求項2に記載の複合型光変調素子において、
第1活性層領域の側の出力端面に高反射コーティングを施したことを特徴とする複合型光変調素子。 - CW光を、基準クロック信号の周波数に等しい繰返し周波数をもつパルス列からなる光短パルス列に変換する光短パルス列生成器と、該光短パルス列生成器に基準クロック信号を供給する可変位相遅延器と、前記光短パルス列を受けて電気変調信号に同期して光パルス信号を生成する光変調器と、該光変調器に電気変調信号を供給する変調信号生成器、および該変調信号生成器と位相遅延器に基準クロック信号を供給する基準クロック信号発生器とを具え、
前記光短パルス列生成器の後段に請求項2に記載の複合型光変調素子を配して、該複合型光変調素子の前記第1活性層領域は光変調器として機能させ、前記第2活性層領域では前記光短パルス列の位相を検出すべく機能させ、位相比較器には該光短パルス列の位相と前記基準クロック信号発生器から供給される電気信号の位相とを比較して差分を検出させ、前記光短パルス列生成器に変調信号を供給する可変位相変調器の生成する変調信号の位相に該差分を付加し、光短パルス列の光短パルス列生成器からの出射直後と該複合型光変調素子への入射直前での位相との関係を調整する機能を有することを特徴とする位相同期型光変調システム。 - 請求項4に記載の位相同期型光変調システムにおいて、
前記複合型光変調素子の第2活性層領域にバイアス電圧を印加することによって光パルス信号強度の調整が行なえるようにしたことを特徴とする位相同期型光変調システム。 - 請求項4に記載の位相同期型光変調システムにおいて、
前記複合型光変調素子は、前記第1活性層領域の側の出力端に高反射コーティングが施されており、
さらに該複合型光変調素子の第2活性層領域から検出された電気信号をフィルタリングする狭帯域フィルタを具え、該複合型光変調素子の第2活性層領域において検出された電気信号を該狭帯域フィルタを介して位相比較器に送ることを特徴とする位相同期型光変調システム。 - 複数のチャンネルの情報が重ね合わせられた光パルス信号を分岐する第1段目の分波器と、該光パルス信号をチャンネル毎に分割する第2段目の分波器と、該第1段目の分波器でタップされた該光パルス信号を第1の電気パルス信号に変換する第1のフォトディテクタと、該第1の電気パルス信号の基準クロック信号を抽出するクロック信号抽出器と、基準変調信号を生成する変調信号生成器と、光ゲーティングを行なう光変調器と、該光変調器に一定の位相遅延を与えた変調信号を供給する位相遅延器とを具え、
第2段目の分波器でチャンネル毎に分割された前記光パルス信号を、光ゲーティングを行なう光変調器に入射する直前に第3段目の分波器で分岐して第2のフォトディテクタで電気信号に変換して位相比較器に送り、該位相比較器において、前記第1の電気パルス信号の位相と第2のフォトディテクタで検出された電気信号の位相とを比較して差分を求め、該差分を位相遅延器に供給し、該位相遅延器では前記変調信号生成器から供給されたゲーティング基準変調信号の位相に前記差分を付加することによって変調信号生成器から供給されるゲーティング基準変調信号に対して必要量の位相遅延を行なった電気変調信号を生成し、該電気変調信号を光変調器(光ゲーティング部)に供給することで光ゲーティングを行ない、チャンネル毎の光パルス信号を取り出すことを特徴とする位相同期型光変調システム。 - 請求項7に記載の位相同期型光変調システムにおいて、
前記第2段目の分波器の後段に請求項2に記載の複合型光変調素子を配置し、
前記第2活性層領域で 光パルス信号を分岐して電気信号に変換して位相比較器に送り、
該位相比較器において、前記第1段目の分波器で分岐された該光パルス信号の基準クロック信号の位相と該電気信号の位相とを比較して差分を求め、該差分を位相遅延器に供給することを特徴とする位相同期型光変調システム。
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