JP2004170666A - 吸遮音構造体及び吸遮音構造体アレイ - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、限られた設置スペースで効率的な吸遮音を実現する吸遮音構造体の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の吸遮音構造体10は、壁体20に設ける吸遮音構造体10であって、断面が略半円状の吸音材60と、吸音材60と壁体20とが形成する断面が略半円状の空間70を断面視にて放射状に仕切る複数の板材52とを備えることを特徴とする。本発明によれば、複数の板材52により放射状に仕切られた吸音セル71を半円状の断面の吸音材60により覆うことによって、吸音材60全領域で効率的な吸音を実現することができ、吸音材60の略半円状の断面故に、吸遮音構造体10の設置面積当たりの吸音性能を高めることができる。
【選択図】 図2
【解決手段】本発明の吸遮音構造体10は、壁体20に設ける吸遮音構造体10であって、断面が略半円状の吸音材60と、吸音材60と壁体20とが形成する断面が略半円状の空間70を断面視にて放射状に仕切る複数の板材52とを備えることを特徴とする。本発明によれば、複数の板材52により放射状に仕切られた吸音セル71を半円状の断面の吸音材60により覆うことによって、吸音材60全領域で効率的な吸音を実現することができ、吸音材60の略半円状の断面故に、吸遮音構造体10の設置面積当たりの吸音性能を高めることができる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耳障りな騒音を吸収及び遮断するための吸遮音構造に係り、より詳細には、吸音材の背後に空気層を備えた吸遮音構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、吸音材の背後に空気層を備えた吸音装置として、略平らな基板と、当該基板と対向するよう設けられた吸音材とを備え、基板と吸音材との間の空気層を複数の格子状のセルに分割する仕切り板を更に備えた吸音装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この従来の吸音装置は、吸音材背後の空気層の厚さを、吸収すべき音波の波長の1/4倍に設定することにより、音波のエネルギの効率的な減衰を図っている。この従来の吸音装置によれば、特定の周波数成分の吸音率が向上し、高い吸音性能と共に軽量化を実現することが可能となる。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−161282号(第6貢、第16図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、吸音装置を車両に設置する場合、一般的には、エンジンのような音源の周辺や静粛性の必要な車室内に設置することが有効となる。しかしながら、エンジンルーム内にはエンジンを中心として補器類やバッテリー等種々の部品が密集しており、また、乗員空間としての車室空間に関しては、乗員のための快適性や安全性が最優先され、可能な限り広い空間を確保することが最重要視されている。従って、特に車両に設置される吸音装置に関しては、その設置スペースが非常に限定されるため、或いは、吸音装置のためだけに新たなスペースを確保することは非常に困難であるため、その限られた設置スペース或いは使用されていないスペースを如何に有効に利用して効率的な吸音性能を実現できるかが重要な課題となる。
【0005】
これに対して、上記従来の吸音装置は、吸音材背後の空気層の厚さを所定の値に設定することにより効率的に吸音性能を高めることができるものの、当該空気層の厚さに起因して比較的大きな一定の厚みのあるスペースを必要とするという課題を残している。また、吸音装置の設置面積に略等しい面積の吸音材により吸音がなされているため、設置面積の効率的な利用に関して課題を残している。
【0006】
そこで、本発明は、限られた設置スペースで効率的な吸遮音を実現する吸遮音構造体及び吸遮音構造体アレイの提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、請求項1に記載する如く、壁体に設ける吸遮音構造体であって、
断面が略半円状の吸音材と、
前記吸音材と前記壁体とが形成する断面が略半円状の空間を断面視にて放射状に仕切る複数の板材とを備えることを特徴とする、吸遮音構造体によって達成される。
【0008】
本発明において、複数の板材は、断面が略半円状の吸音材と壁体との間に画成される断面が略半円状の空間内部に放射状に配置される。このとき、略半円筒状の空間内部には、複数の板材によって仕切られた複数の空間(以下、この空間を「吸音セル」という)が形成される。この吸音セルの集合は、断面が略半円状の吸音材の略全周で開口しているので、当該吸音セルの集合にはあらゆる方向成分を持つ音が入力される。また、この吸音セルは、音波の入射方向から見て徐々に変化する断面積を有するので、当該吸音セルに効率的に音波が入力される。この結果、本発明によれば、各吸音セルの開口を覆う吸音材の全領域で効率的な吸音を実現することが可能となる。特に、この吸音材の表面積は、略半円状の断面故に、吸遮音構造体の設置面積に比して大きいを有するので、吸遮音構造体の設置面積当たりの吸音性能を高めることができる。
【0009】
また、上記目的は、請求項2に記載する如く、断面が略半円状の吸音材と、前記吸音材と前記壁体とが形成する断面が略半円状の空間を断面が略扇形の複数の扇形空間へと仕切る仕切り板とを備える吸遮音構造体が、複数個互いに隣接して壁体に配列された吸遮音構造体アレイであって、
前記複数の吸遮音構造体の扇形空間のうち、前記壁体に隣接し且つ開口が互いに対向する対の扇形空間が、前記吸音材の前記壁体側に設けた反射材により覆われていることを特徴とする、吸遮音構造体アレイによって達成される。
【0010】
本発明において、吸遮音構造体アレイは、設置面積の有効利用の観点から、複数個の吸遮音構造体を互いに隣接して配列することにより構成される。各吸遮音構造体において、仕切り板は、断面が略半円状の吸音材と壁体との間に画成される断面が略半円状の空間内部に配置され、当該略半円筒状の空間内部に、断面が略扇形の複数の扇形空間(即ち、吸音セル)を画成する。ところで、複数の吸遮音構造体を隣接して配列した場合、隣接する吸遮音構造体の存在により効果的な音波入力が実現されなくなる吸音セルが発生する。この吸音セルは、複数の吸音セルのうち、隣接する吸遮音構造体側に開口を持つ壁体近傍の吸音セルである。本発明によれば、当該吸音セルの開口部を反射材により覆うことで、当該吸音セルへの音波の入力に代えて、当該吸音セルの開口部での音波の反射を実現する。この反射材で反射する音波は、隣接する吸遮音構造体側の同反射材との間で反射を繰り返しつつ、これらの反射材上の吸音材によりそのエネルギが吸収されていく。この反射が繰り返される空間は、壁体を垂直方向に見て徐々に変化する断面積を有する故に、当該空間には、吸遮音構造体の複数の吸音セルの何れにも入力されない方向成分を持つ音波が効率的に入力される。この結果、設置面積の有効利用を図りつつ、吸遮音構造体アレイとしての吸音性能を、個々の吸遮音構造体の吸音性能を足し合わせて得られる吸音性能に比して高めることができる。
【0011】
また、上記目的は、請求項3に記載する如く、壁体に設ける吸遮音構造体であって、
壁体に対して略垂直に立設された略半円形の板材と、
前記略半円形の板材に対して略垂直を成すように設けられる、前記略半円形の板材との交線を直径とする略円形の板材と、
前記各板材の外周縁と接するような略半球の殻形態を有する吸音材とを備えることを特徴とする、吸遮音構造体によって達成される。
【0012】
本発明において、各板材は、吸音材と壁体との間に画成される略半球の空間内部に配置される。このとき、略半球の空間内部には、複数の板材によって仕切られた複数の空間(以下、この空間を「吸音セル」という)が形成される。この吸音セルの集合は、略半球状の吸音材の略全領域で開口しているので、当該吸音セルの集合にはあらゆる方向成分を持つ音が入力される。従って、本発明によれば、各吸音セルの開口を覆う吸音材の全領域で効率的な吸音を実現することが可能となる。特に、この吸音材は、略半球状の形態故に、吸遮音構造体の設置面積に比して大きい表面積を有するので、吸遮音構造体の設置面積当たりの吸音性能を高めることができる。尚、略半円形の板材は、略半球の空間を等分割する複数の板材であってよく、略円形の板材も、互いに所定の間隔を置いて配設される複数の板材であってよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による吸遮音構造を備えた第1実施例の吸音装置10を示す斜視図であり、図2は、本実施例の吸音装置10の設置状態を示す断面図である。
【0014】
本実施例の吸音装置10は、図2に示すように、フロアパネル、ルーフパネル、エンジンアンダーカバー、フードパネル等のような壁体20に設置され、以下で詳説するように、吸音材60と、仕切り板50とから構成される。
【0015】
吸音材60は、半筒形の殻状の形態を有しており、図2に示すように、壁体20との間に断面(図1のX方向から見た断面)が略半円の筒状の空気層70を形成する。尚、吸音材60は、吸音性能を有する材料、例えばグラスウールやロックウール等の無機質繊維、アルミニウム繊維等の金属繊維材料、ポリスチレン系樹脂やポリエチレン系樹脂等のような合成樹脂発泡体、ウレタンやゴム系の軟質な材料、多孔質材料等から形成されてよい。
【0016】
仕切り板50は、壁体20と吸音材60との間の空気層70内に配置され、放射状に配置された複数の板材51から構成されている。このとき、仕切り板50は、X方向から見て、断面が略半円の空気層70を断面が扇型の複数の空間71(以下、「吸音セル71」という)に仕切ることになる。尚、仕切り板50は、アルミニウム板や鋼板等により形成されてもよく、又は、ポリプロピレン系樹脂のような硬質樹脂で一体成形されてもよい。
【0017】
本実施例の吸音装置10の両端部には、上述の空気層70のX方向の開口を覆うように蓋部材56が設けられる。蓋部材56は、空気層70の略半円の断面に対応して、扇型の形態を有している。この蓋部材56により、上述の吸音セル71は、径方向にのみ(放射状に)開口することになる。尚、蓋部材56は、仕切り板50と同様に、アルミニウム板や鋼板等により形成されてもよく、又は、ポリプロピレン系樹脂のような硬質樹脂で仕切り板50と一体成形されてもよい。
【0018】
なお、吸音装置10は、吸音材60を仕切り板50に接着又はねじ止め等により固定した状態で壁体20に設置してもよい。このとき、仕切り板50は、吸音装置10の設置場所等に依存して、壁体20上に単に載置されるだけであってもよく、壁体20にクリップやスクリュウ等により固定されてもよく、若しくは、壁体20に接着剤等により固着されてもよい。
【0019】
次に、図1及び図3を参照して、本発明による吸音装置10の吸音原理及びそれに関連する外形寸法について説明する。本発明による吸音装置10の奥行き寸法Lは、吸音装置10の設置場所に依存して、種々の値であってよい。但し、奥行き寸法Lが大きくなると、吸音セル71内で奥行き方向(X方向)に音波の比較的大きな伝播経路が形成され、吸音効果が広範な周波数帯に分散されることになる。これを防止するため、吸音装置10には、図1に示すように、吸音セル71の奥行き方向を仕切るための中間壁部材58が設けられてよい。この中間壁部材58は、奥行き寸法Lに応じて複数設けられてよく、吸音装置10の両端部の蓋部材56の間に等間隔若しくは種々の間隔で配設されてよい。また、この中間壁部材58は、仕切り板50と同様に、アルミニウム板や鋼板等により形成されてもよく、又は、ポリプロピレン系樹脂のような硬質樹脂で仕切り板50と一体成形されてもよい。
【0020】
一方、吸音装置10の幅W及び高さHは、図3を参照して説明する吸音原理に基づいて、吸音性能を効率的に高めるべく、吸収すべき音波の周波数帯等を考慮して決定される。
【0021】
図3を参照するに、波長λの音波が吸音装置10に入射した場合、上述の吸音セル71内には入射波と反射波との合成により定在波が形成される。この定在波は、波長λの1/4の奇数倍だけ壁体20から離れた位置で腹を有しており、当該腹で音波の粒子速度が最大となる。従って、粒子速度が最大となる位置に吸音材60を設け、最も高い粒子速度を持つ位置で音波を吸音材60に通過させれば、最も効率的に音波を減衰させることができる。
【0022】
この目的のため、吸音セル71内の音波の伝播経路Rが、吸収すべき音波の波長λの1/4倍(若しくはその奇数倍)となるように、吸音装置10の幅W及び高さHが設定される。例えば、空気層70の断面が完全な半円(半径R)である場合、当該半円の半径Rを吸収すべき音波の波長λの1/4倍に設定することにより、当該吸収すべき音波の周波数付近での吸音性能を大幅に高めることができる。尚、かかる場合、吸音装置10の幅Wはλ/2となり、高さHはλ/4となる。また、吸音セル71の開口幅Aは、吸音セル71への音波の効率的な入力を実現するため、吸収すべき周波数帯域の音波の波長λよりも小さく設定される。従って、この観点から、仕切り板50の板材51の個数やそれらの間隔が決定される。
【0023】
以上説明した第1実施例の吸音装置10によると、吸音セル71は、壁体20側から吸音材60側に向かって開口幅が徐々に広がる扇型断面を有するので、音波の入射方向に対して吸音セル71の断面積(図2のZ方向から見た断面積)が滑らかに変化することになり、吸音セル71内において音響インピーダンスの緩やかな変化が実現される。これにより、各吸音セル71内に音波を効率的に入力させることができる。
【0024】
また、放射状に配置された複数の板材51により画成される吸音セル71の集合は、吸音すべき音が存在する空間に対して放射状に開口することになる。従って、吸音装置10に様々な方向から入射する音波に対しても、吸音セル71内への上述の如く効率的な音波入力が実現され、この結果、吸音材60の全表面積を利用した効果的な吸音が実現される。特に、吸音材60は、略半円の断面を有するので、吸音装置10の設置面積S(S=L×W)に比して吸音材60の表面積が大きく、吸音装置10の設置面積当たりの吸音性能を高めることができる。
【0025】
また、壁体20背後から吸音装置10の設置空間に侵入する音の経路に仕切り板50の板材51が介在するため、また、放射状に配置した複数の板材51により仕切り板50が高い剛性を有するため、仕切り板50を透過する際に音のエネルギを効果的に損失させることができる。即ち、仕切り板50が壁体20背後からの音に対して高い遮音性能を併せ持つため、吸音装置10の設置空間の静粛性を高めることが可能となる。尚、この遮音効果を更に高めるべく、仕切り板50と壁体20との間に低ばね材を介在させることも可能である。
【0026】
以上の通り、本発明による吸音装置10は、非常にコンパクトな形態で効果的な吸遮音性能を発揮できるため、特に設置スペースが非常に限定される車室空間やエンジンルームに設置するのに好適であり、また、様々な方向成分の音波が存在する点からも車室空間等に設置するのに好適である。
【0027】
ところで、上述の第1実施例の吸音装置10は、上述の如く、その幅方向の寸法Wが吸音の観点から決定されているので、設置スペースによっては複数の吸音装置10を並設することができる場合も考えられる。かかる場合には、限られた設置スペースの有効な利用を図るべく、可能な限り多くの吸音装置10を互いに隣接して配列することが望ましい。しかしながら、上述の如く半円筒状の吸音装置10を互いに隣接して配列すると、図4に示すような設置状態となり、一方の吸音装置10a’の吸音セル71’の吸音性能が、他方の吸音装置10b’の存在により阻害されるという不都合が生ずる。
【0028】
より具体的には、吸音装置10a’の吸音セル71a’に注目すると、吸音セル71a’は、図3での定在波に関する説明より明らかなように、吸音セル71a’に垂直に入力する音(図中、矢印Qにて指示)に対して効率的な吸音を実現する。しかしながら、この方向成分を持つ音は、隣の吸音装置10b’に入力されることになるので、吸音セル71a’の吸音性能が有効に利用されないことになる。また、壁体20に対して略垂直に入射する音(図中、矢印Sにて指示)については、上述の定在波は吸音セル71a’内で放射状の仕切り板(板材51)に沿って形成される。このとき、一部は壁体20で反射され定在波には寄与しない成分も存在するので他の吸音セルに比べ効率的でない。尚、これらに関しては、吸音装置10b’の吸音セル71b’についても同様である。
【0029】
これに対して、次に説明する本発明の第2実施例によれば、以下で詳説するように、複数の吸音装置が隣接して配列される場合に効果的な吸音性能を発揮することを可能とする。
【0030】
図5は、本実施例の吸音装置10a,10bの設置状態を示す断面図である。本実施例の吸音装置10a,10bは、図5に示すように、互いに隣接して配置されている。隣接する吸音装置10a,10bの間には、可能な限り小さな隙間が設定されるが、ある程度の隙間が形成されてもよい。本実施例の吸音装置10a,10bの構成は、上述の第1実施例の吸音装置10の構成に対して、図5に示すように、それぞれの吸音セル71a,71bの開口を覆う反射材61a,61bを備える点のみが異なる。この反射材61a,61bは、吸音セル71a,71bの開口を覆うように吸音材60a,60bの裏側(壁体側)に配設される。尚、この反射材61a,61bは、反射板として仕切り板50a,50bに一体的に設けられてよい。
【0031】
図5に示す設置状態において、隣接する吸音装置10a,10bの間には空間14が形成されている。この空間14内には、吸音装置10a,10bの各吸音セル71に入射されない方向成分を持つ音波が入力される。尚、空間14は、音波の入射方向から見て、壁体20に向かって徐々に狭くなっていく開口を有するため、空間14内において音響インピーダンスの緩やかな変化が実現され、各吸音セル71に入射されない音波が空間14内に効率的に入力されることになる。
【0032】
空間14内に入力された音波は、図5に示すように、吸音材60a,60bの裏側の反射材61a,61bで反射を繰り返しつつ、空間14内を壁体20に向かって進行し、壁体20に反射した後、更に反射材61a,61bでの反射を繰り返しつつ、空間14内から出力されていく。従って、この空間14内に入力された音波は、反射材61a,61bで反射する毎に、反射材61a,61b上の吸音材60a,60bによりそのエネルギが吸収されることになる。即ち、効率的な音波入力がなされない吸音セル71a,71bに反射材61a,61bを設けることによって、各吸音セルに入射されない方向成分を持つ音に対する効果的な吸音が可能となる。尚、単独の吸音装置10aの吸音セル71aにより本来的に吸音が実現されるべき入射方向の音(図中、矢印Qにて指示)に対しては、吸音装置10bの吸音セル71cにより吸音が実現されるので(吸音セル71bについても同様)、反射材61a,61bを設けることが、吸音装置10a,10b全体としての吸音性能を劣化させる要因となることはない。
【0033】
以上の通り、本発明の第2実施例の吸音装置によると、入力された音に対する効果的な吸音がなされない空間を、効果的な吸音が可能な空間に変化させることができる。特に、この効果的な吸音が実現されない空間は、音波の入射方向から見て滑らかに変化する断面積を有する故に、効率的な音波入力がなされるので、吸音が可能な空間に変化させることによる効果が非常に大きくなる。
【0034】
図6は、本発明による吸遮音構造を備えた第3実施例の吸音装置10の設置状態を示す断面図である。本実施例の吸音装置10は、ボデーパネルのような壁体20に設置され、以下で詳説するように、吸音材60と、仕切り板50とから構成される。
【0035】
本実施例の吸音材60は、略半球形の殻状の形態を有しており、壁体20との間に略半球形の空気層70を形成する。本実施例の仕切り板50は、壁体20に平行に互いに間隔A’を置いて積層された複数の略円形の板材51aと、各円形の板材51aに対して垂直に立設され、半球形の空気層70を略2等分する略半円形の板材51bとから構成されている。従って、本実施例において、半球形の空気層70内には、半円形の板材51bを底面として略水平方向に開口を有する複数の空間71(以下、「吸音セル71」という)が形成される。
【0036】
ここで、各板材51aの間隔A’及び吸音セル71の深さH’は、上述の第1実施例における吸音セル71の開口幅A及び吸音セル71内の音波の伝播経路Rと同一の観点からそれぞれ決定される。また、半円形の板材51bは、上述の第1実施例における吸音セル71の開口幅Aと同一の観点から、例えば半球形の空気層70を略4等分するように2個配設されてもよく、或いは、同様に3個以上配設されてもよい。
【0037】
本実施例においても、上述の第1実施例と同様に、各吸音セル71には半円形の板材51bを反射面として定在波が形成され、各吸音セル71を覆う吸音材60の全表面積を利用した効果的な吸音が実現される。また、吸音材60は、半球形の殻状の形態を有するので、吸音装置10の設置面積に比して吸音材60の表面積が大きく、吸音装置10の設置面積当たりの吸音性能を高めることができる。
【0038】
特に本実施例においては、積層構造の各層の吸音セル71は、他の層の吸音セル71とは異なる深さH’を有しているので、上述の吸音原理(図3参照)から理解できるように、比較的広い周波数域の音に対して効果的な吸音を実現することができる。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0040】
特に、上述の第1及び第2実施例の仕切り板50の複数の板材51の配設方法に関しては、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。例えば、隣接する2つの板材51のなす各中心角は、必ずしもすべて略同一である必要はなく、吸音装置の設置場所周辺の音場に応じて、互いに異なる値であってもよい。同様に、放射状に延在する複数の板材51の起点O(図1参照)は、必ずしも吸音装置の幅方向の中心付近にある必要はなく、吸音装置の設置場所周辺の音場に応じて、吸音装置の幅方向の中心から偏心した位置にあってもよい。
【0041】
また、仕切り板50の起点O(図1参照)付近の形状に関して、仕切り板50は、図7に示すように、各吸音セル71の底部を画成する反射材52を更に備えてもよい。これにより、吸音装置10の高さHが増加するものの、吸音セル71内に上述の音波の伝播経路Rを明確に規定することができる。
【0042】
また、上述した第2実施例では、反射材61a,61bが吸音材60a,60bの裏側の設けられていたが、対応する部分の吸音材60a,60bを吸音層と反射層とからなる積層構造に構成することも可能である。
【0043】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したようなものであるから、以下に記載されるような効果を奏する。請求項1に係る発明によれば、放射状に画成された吸音セルの開口を略半円状の断面の吸音材で覆うことによって、吸音材の全領域で効率的な吸音が実現され、吸遮音構造体の設置面積当たりの吸音性能を高めることができる。また、請求項2に係る発明によれば、限られた設置面積の有効な利用を図ることができると共に、特定の吸音セルの開口を反射材で覆うことによって、個々の吸遮音構造体の吸音性能を足し合わせて得られる以上に効果的な吸遮音構造体アレイとしての吸音性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による吸遮音構造を備えた吸音装置の第1実施例を示す斜視図である。
【図2】本実施例の吸音装置の設置状態を示す断面図である。
【図3】本発明による吸遮音構造の吸音原理の説明図である。
【図4】比較説明のための吸音装置アレイの断面図である。
【図5】本発明の第2実施例として示す吸音装置アレイの断面図である。
【図6】本発明の第3実施例に係る吸音装置の断面図である。
【図7】代替実施例の吸遮音構造を示す断面図である。
【符号の説明】
10 吸音装置
20 壁体
50 仕切り板
52 仕切り板の板材
60 吸音材
61a,61b 反射材
70 空気層
71 吸音セル
【発明の属する技術分野】
本発明は、耳障りな騒音を吸収及び遮断するための吸遮音構造に係り、より詳細には、吸音材の背後に空気層を備えた吸遮音構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、吸音材の背後に空気層を備えた吸音装置として、略平らな基板と、当該基板と対向するよう設けられた吸音材とを備え、基板と吸音材との間の空気層を複数の格子状のセルに分割する仕切り板を更に備えた吸音装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この従来の吸音装置は、吸音材背後の空気層の厚さを、吸収すべき音波の波長の1/4倍に設定することにより、音波のエネルギの効率的な減衰を図っている。この従来の吸音装置によれば、特定の周波数成分の吸音率が向上し、高い吸音性能と共に軽量化を実現することが可能となる。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−161282号(第6貢、第16図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、吸音装置を車両に設置する場合、一般的には、エンジンのような音源の周辺や静粛性の必要な車室内に設置することが有効となる。しかしながら、エンジンルーム内にはエンジンを中心として補器類やバッテリー等種々の部品が密集しており、また、乗員空間としての車室空間に関しては、乗員のための快適性や安全性が最優先され、可能な限り広い空間を確保することが最重要視されている。従って、特に車両に設置される吸音装置に関しては、その設置スペースが非常に限定されるため、或いは、吸音装置のためだけに新たなスペースを確保することは非常に困難であるため、その限られた設置スペース或いは使用されていないスペースを如何に有効に利用して効率的な吸音性能を実現できるかが重要な課題となる。
【0005】
これに対して、上記従来の吸音装置は、吸音材背後の空気層の厚さを所定の値に設定することにより効率的に吸音性能を高めることができるものの、当該空気層の厚さに起因して比較的大きな一定の厚みのあるスペースを必要とするという課題を残している。また、吸音装置の設置面積に略等しい面積の吸音材により吸音がなされているため、設置面積の効率的な利用に関して課題を残している。
【0006】
そこで、本発明は、限られた設置スペースで効率的な吸遮音を実現する吸遮音構造体及び吸遮音構造体アレイの提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、請求項1に記載する如く、壁体に設ける吸遮音構造体であって、
断面が略半円状の吸音材と、
前記吸音材と前記壁体とが形成する断面が略半円状の空間を断面視にて放射状に仕切る複数の板材とを備えることを特徴とする、吸遮音構造体によって達成される。
【0008】
本発明において、複数の板材は、断面が略半円状の吸音材と壁体との間に画成される断面が略半円状の空間内部に放射状に配置される。このとき、略半円筒状の空間内部には、複数の板材によって仕切られた複数の空間(以下、この空間を「吸音セル」という)が形成される。この吸音セルの集合は、断面が略半円状の吸音材の略全周で開口しているので、当該吸音セルの集合にはあらゆる方向成分を持つ音が入力される。また、この吸音セルは、音波の入射方向から見て徐々に変化する断面積を有するので、当該吸音セルに効率的に音波が入力される。この結果、本発明によれば、各吸音セルの開口を覆う吸音材の全領域で効率的な吸音を実現することが可能となる。特に、この吸音材の表面積は、略半円状の断面故に、吸遮音構造体の設置面積に比して大きいを有するので、吸遮音構造体の設置面積当たりの吸音性能を高めることができる。
【0009】
また、上記目的は、請求項2に記載する如く、断面が略半円状の吸音材と、前記吸音材と前記壁体とが形成する断面が略半円状の空間を断面が略扇形の複数の扇形空間へと仕切る仕切り板とを備える吸遮音構造体が、複数個互いに隣接して壁体に配列された吸遮音構造体アレイであって、
前記複数の吸遮音構造体の扇形空間のうち、前記壁体に隣接し且つ開口が互いに対向する対の扇形空間が、前記吸音材の前記壁体側に設けた反射材により覆われていることを特徴とする、吸遮音構造体アレイによって達成される。
【0010】
本発明において、吸遮音構造体アレイは、設置面積の有効利用の観点から、複数個の吸遮音構造体を互いに隣接して配列することにより構成される。各吸遮音構造体において、仕切り板は、断面が略半円状の吸音材と壁体との間に画成される断面が略半円状の空間内部に配置され、当該略半円筒状の空間内部に、断面が略扇形の複数の扇形空間(即ち、吸音セル)を画成する。ところで、複数の吸遮音構造体を隣接して配列した場合、隣接する吸遮音構造体の存在により効果的な音波入力が実現されなくなる吸音セルが発生する。この吸音セルは、複数の吸音セルのうち、隣接する吸遮音構造体側に開口を持つ壁体近傍の吸音セルである。本発明によれば、当該吸音セルの開口部を反射材により覆うことで、当該吸音セルへの音波の入力に代えて、当該吸音セルの開口部での音波の反射を実現する。この反射材で反射する音波は、隣接する吸遮音構造体側の同反射材との間で反射を繰り返しつつ、これらの反射材上の吸音材によりそのエネルギが吸収されていく。この反射が繰り返される空間は、壁体を垂直方向に見て徐々に変化する断面積を有する故に、当該空間には、吸遮音構造体の複数の吸音セルの何れにも入力されない方向成分を持つ音波が効率的に入力される。この結果、設置面積の有効利用を図りつつ、吸遮音構造体アレイとしての吸音性能を、個々の吸遮音構造体の吸音性能を足し合わせて得られる吸音性能に比して高めることができる。
【0011】
また、上記目的は、請求項3に記載する如く、壁体に設ける吸遮音構造体であって、
壁体に対して略垂直に立設された略半円形の板材と、
前記略半円形の板材に対して略垂直を成すように設けられる、前記略半円形の板材との交線を直径とする略円形の板材と、
前記各板材の外周縁と接するような略半球の殻形態を有する吸音材とを備えることを特徴とする、吸遮音構造体によって達成される。
【0012】
本発明において、各板材は、吸音材と壁体との間に画成される略半球の空間内部に配置される。このとき、略半球の空間内部には、複数の板材によって仕切られた複数の空間(以下、この空間を「吸音セル」という)が形成される。この吸音セルの集合は、略半球状の吸音材の略全領域で開口しているので、当該吸音セルの集合にはあらゆる方向成分を持つ音が入力される。従って、本発明によれば、各吸音セルの開口を覆う吸音材の全領域で効率的な吸音を実現することが可能となる。特に、この吸音材は、略半球状の形態故に、吸遮音構造体の設置面積に比して大きい表面積を有するので、吸遮音構造体の設置面積当たりの吸音性能を高めることができる。尚、略半円形の板材は、略半球の空間を等分割する複数の板材であってよく、略円形の板材も、互いに所定の間隔を置いて配設される複数の板材であってよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明による吸遮音構造を備えた第1実施例の吸音装置10を示す斜視図であり、図2は、本実施例の吸音装置10の設置状態を示す断面図である。
【0014】
本実施例の吸音装置10は、図2に示すように、フロアパネル、ルーフパネル、エンジンアンダーカバー、フードパネル等のような壁体20に設置され、以下で詳説するように、吸音材60と、仕切り板50とから構成される。
【0015】
吸音材60は、半筒形の殻状の形態を有しており、図2に示すように、壁体20との間に断面(図1のX方向から見た断面)が略半円の筒状の空気層70を形成する。尚、吸音材60は、吸音性能を有する材料、例えばグラスウールやロックウール等の無機質繊維、アルミニウム繊維等の金属繊維材料、ポリスチレン系樹脂やポリエチレン系樹脂等のような合成樹脂発泡体、ウレタンやゴム系の軟質な材料、多孔質材料等から形成されてよい。
【0016】
仕切り板50は、壁体20と吸音材60との間の空気層70内に配置され、放射状に配置された複数の板材51から構成されている。このとき、仕切り板50は、X方向から見て、断面が略半円の空気層70を断面が扇型の複数の空間71(以下、「吸音セル71」という)に仕切ることになる。尚、仕切り板50は、アルミニウム板や鋼板等により形成されてもよく、又は、ポリプロピレン系樹脂のような硬質樹脂で一体成形されてもよい。
【0017】
本実施例の吸音装置10の両端部には、上述の空気層70のX方向の開口を覆うように蓋部材56が設けられる。蓋部材56は、空気層70の略半円の断面に対応して、扇型の形態を有している。この蓋部材56により、上述の吸音セル71は、径方向にのみ(放射状に)開口することになる。尚、蓋部材56は、仕切り板50と同様に、アルミニウム板や鋼板等により形成されてもよく、又は、ポリプロピレン系樹脂のような硬質樹脂で仕切り板50と一体成形されてもよい。
【0018】
なお、吸音装置10は、吸音材60を仕切り板50に接着又はねじ止め等により固定した状態で壁体20に設置してもよい。このとき、仕切り板50は、吸音装置10の設置場所等に依存して、壁体20上に単に載置されるだけであってもよく、壁体20にクリップやスクリュウ等により固定されてもよく、若しくは、壁体20に接着剤等により固着されてもよい。
【0019】
次に、図1及び図3を参照して、本発明による吸音装置10の吸音原理及びそれに関連する外形寸法について説明する。本発明による吸音装置10の奥行き寸法Lは、吸音装置10の設置場所に依存して、種々の値であってよい。但し、奥行き寸法Lが大きくなると、吸音セル71内で奥行き方向(X方向)に音波の比較的大きな伝播経路が形成され、吸音効果が広範な周波数帯に分散されることになる。これを防止するため、吸音装置10には、図1に示すように、吸音セル71の奥行き方向を仕切るための中間壁部材58が設けられてよい。この中間壁部材58は、奥行き寸法Lに応じて複数設けられてよく、吸音装置10の両端部の蓋部材56の間に等間隔若しくは種々の間隔で配設されてよい。また、この中間壁部材58は、仕切り板50と同様に、アルミニウム板や鋼板等により形成されてもよく、又は、ポリプロピレン系樹脂のような硬質樹脂で仕切り板50と一体成形されてもよい。
【0020】
一方、吸音装置10の幅W及び高さHは、図3を参照して説明する吸音原理に基づいて、吸音性能を効率的に高めるべく、吸収すべき音波の周波数帯等を考慮して決定される。
【0021】
図3を参照するに、波長λの音波が吸音装置10に入射した場合、上述の吸音セル71内には入射波と反射波との合成により定在波が形成される。この定在波は、波長λの1/4の奇数倍だけ壁体20から離れた位置で腹を有しており、当該腹で音波の粒子速度が最大となる。従って、粒子速度が最大となる位置に吸音材60を設け、最も高い粒子速度を持つ位置で音波を吸音材60に通過させれば、最も効率的に音波を減衰させることができる。
【0022】
この目的のため、吸音セル71内の音波の伝播経路Rが、吸収すべき音波の波長λの1/4倍(若しくはその奇数倍)となるように、吸音装置10の幅W及び高さHが設定される。例えば、空気層70の断面が完全な半円(半径R)である場合、当該半円の半径Rを吸収すべき音波の波長λの1/4倍に設定することにより、当該吸収すべき音波の周波数付近での吸音性能を大幅に高めることができる。尚、かかる場合、吸音装置10の幅Wはλ/2となり、高さHはλ/4となる。また、吸音セル71の開口幅Aは、吸音セル71への音波の効率的な入力を実現するため、吸収すべき周波数帯域の音波の波長λよりも小さく設定される。従って、この観点から、仕切り板50の板材51の個数やそれらの間隔が決定される。
【0023】
以上説明した第1実施例の吸音装置10によると、吸音セル71は、壁体20側から吸音材60側に向かって開口幅が徐々に広がる扇型断面を有するので、音波の入射方向に対して吸音セル71の断面積(図2のZ方向から見た断面積)が滑らかに変化することになり、吸音セル71内において音響インピーダンスの緩やかな変化が実現される。これにより、各吸音セル71内に音波を効率的に入力させることができる。
【0024】
また、放射状に配置された複数の板材51により画成される吸音セル71の集合は、吸音すべき音が存在する空間に対して放射状に開口することになる。従って、吸音装置10に様々な方向から入射する音波に対しても、吸音セル71内への上述の如く効率的な音波入力が実現され、この結果、吸音材60の全表面積を利用した効果的な吸音が実現される。特に、吸音材60は、略半円の断面を有するので、吸音装置10の設置面積S(S=L×W)に比して吸音材60の表面積が大きく、吸音装置10の設置面積当たりの吸音性能を高めることができる。
【0025】
また、壁体20背後から吸音装置10の設置空間に侵入する音の経路に仕切り板50の板材51が介在するため、また、放射状に配置した複数の板材51により仕切り板50が高い剛性を有するため、仕切り板50を透過する際に音のエネルギを効果的に損失させることができる。即ち、仕切り板50が壁体20背後からの音に対して高い遮音性能を併せ持つため、吸音装置10の設置空間の静粛性を高めることが可能となる。尚、この遮音効果を更に高めるべく、仕切り板50と壁体20との間に低ばね材を介在させることも可能である。
【0026】
以上の通り、本発明による吸音装置10は、非常にコンパクトな形態で効果的な吸遮音性能を発揮できるため、特に設置スペースが非常に限定される車室空間やエンジンルームに設置するのに好適であり、また、様々な方向成分の音波が存在する点からも車室空間等に設置するのに好適である。
【0027】
ところで、上述の第1実施例の吸音装置10は、上述の如く、その幅方向の寸法Wが吸音の観点から決定されているので、設置スペースによっては複数の吸音装置10を並設することができる場合も考えられる。かかる場合には、限られた設置スペースの有効な利用を図るべく、可能な限り多くの吸音装置10を互いに隣接して配列することが望ましい。しかしながら、上述の如く半円筒状の吸音装置10を互いに隣接して配列すると、図4に示すような設置状態となり、一方の吸音装置10a’の吸音セル71’の吸音性能が、他方の吸音装置10b’の存在により阻害されるという不都合が生ずる。
【0028】
より具体的には、吸音装置10a’の吸音セル71a’に注目すると、吸音セル71a’は、図3での定在波に関する説明より明らかなように、吸音セル71a’に垂直に入力する音(図中、矢印Qにて指示)に対して効率的な吸音を実現する。しかしながら、この方向成分を持つ音は、隣の吸音装置10b’に入力されることになるので、吸音セル71a’の吸音性能が有効に利用されないことになる。また、壁体20に対して略垂直に入射する音(図中、矢印Sにて指示)については、上述の定在波は吸音セル71a’内で放射状の仕切り板(板材51)に沿って形成される。このとき、一部は壁体20で反射され定在波には寄与しない成分も存在するので他の吸音セルに比べ効率的でない。尚、これらに関しては、吸音装置10b’の吸音セル71b’についても同様である。
【0029】
これに対して、次に説明する本発明の第2実施例によれば、以下で詳説するように、複数の吸音装置が隣接して配列される場合に効果的な吸音性能を発揮することを可能とする。
【0030】
図5は、本実施例の吸音装置10a,10bの設置状態を示す断面図である。本実施例の吸音装置10a,10bは、図5に示すように、互いに隣接して配置されている。隣接する吸音装置10a,10bの間には、可能な限り小さな隙間が設定されるが、ある程度の隙間が形成されてもよい。本実施例の吸音装置10a,10bの構成は、上述の第1実施例の吸音装置10の構成に対して、図5に示すように、それぞれの吸音セル71a,71bの開口を覆う反射材61a,61bを備える点のみが異なる。この反射材61a,61bは、吸音セル71a,71bの開口を覆うように吸音材60a,60bの裏側(壁体側)に配設される。尚、この反射材61a,61bは、反射板として仕切り板50a,50bに一体的に設けられてよい。
【0031】
図5に示す設置状態において、隣接する吸音装置10a,10bの間には空間14が形成されている。この空間14内には、吸音装置10a,10bの各吸音セル71に入射されない方向成分を持つ音波が入力される。尚、空間14は、音波の入射方向から見て、壁体20に向かって徐々に狭くなっていく開口を有するため、空間14内において音響インピーダンスの緩やかな変化が実現され、各吸音セル71に入射されない音波が空間14内に効率的に入力されることになる。
【0032】
空間14内に入力された音波は、図5に示すように、吸音材60a,60bの裏側の反射材61a,61bで反射を繰り返しつつ、空間14内を壁体20に向かって進行し、壁体20に反射した後、更に反射材61a,61bでの反射を繰り返しつつ、空間14内から出力されていく。従って、この空間14内に入力された音波は、反射材61a,61bで反射する毎に、反射材61a,61b上の吸音材60a,60bによりそのエネルギが吸収されることになる。即ち、効率的な音波入力がなされない吸音セル71a,71bに反射材61a,61bを設けることによって、各吸音セルに入射されない方向成分を持つ音に対する効果的な吸音が可能となる。尚、単独の吸音装置10aの吸音セル71aにより本来的に吸音が実現されるべき入射方向の音(図中、矢印Qにて指示)に対しては、吸音装置10bの吸音セル71cにより吸音が実現されるので(吸音セル71bについても同様)、反射材61a,61bを設けることが、吸音装置10a,10b全体としての吸音性能を劣化させる要因となることはない。
【0033】
以上の通り、本発明の第2実施例の吸音装置によると、入力された音に対する効果的な吸音がなされない空間を、効果的な吸音が可能な空間に変化させることができる。特に、この効果的な吸音が実現されない空間は、音波の入射方向から見て滑らかに変化する断面積を有する故に、効率的な音波入力がなされるので、吸音が可能な空間に変化させることによる効果が非常に大きくなる。
【0034】
図6は、本発明による吸遮音構造を備えた第3実施例の吸音装置10の設置状態を示す断面図である。本実施例の吸音装置10は、ボデーパネルのような壁体20に設置され、以下で詳説するように、吸音材60と、仕切り板50とから構成される。
【0035】
本実施例の吸音材60は、略半球形の殻状の形態を有しており、壁体20との間に略半球形の空気層70を形成する。本実施例の仕切り板50は、壁体20に平行に互いに間隔A’を置いて積層された複数の略円形の板材51aと、各円形の板材51aに対して垂直に立設され、半球形の空気層70を略2等分する略半円形の板材51bとから構成されている。従って、本実施例において、半球形の空気層70内には、半円形の板材51bを底面として略水平方向に開口を有する複数の空間71(以下、「吸音セル71」という)が形成される。
【0036】
ここで、各板材51aの間隔A’及び吸音セル71の深さH’は、上述の第1実施例における吸音セル71の開口幅A及び吸音セル71内の音波の伝播経路Rと同一の観点からそれぞれ決定される。また、半円形の板材51bは、上述の第1実施例における吸音セル71の開口幅Aと同一の観点から、例えば半球形の空気層70を略4等分するように2個配設されてもよく、或いは、同様に3個以上配設されてもよい。
【0037】
本実施例においても、上述の第1実施例と同様に、各吸音セル71には半円形の板材51bを反射面として定在波が形成され、各吸音セル71を覆う吸音材60の全表面積を利用した効果的な吸音が実現される。また、吸音材60は、半球形の殻状の形態を有するので、吸音装置10の設置面積に比して吸音材60の表面積が大きく、吸音装置10の設置面積当たりの吸音性能を高めることができる。
【0038】
特に本実施例においては、積層構造の各層の吸音セル71は、他の層の吸音セル71とは異なる深さH’を有しているので、上述の吸音原理(図3参照)から理解できるように、比較的広い周波数域の音に対して効果的な吸音を実現することができる。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0040】
特に、上述の第1及び第2実施例の仕切り板50の複数の板材51の配設方法に関しては、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。例えば、隣接する2つの板材51のなす各中心角は、必ずしもすべて略同一である必要はなく、吸音装置の設置場所周辺の音場に応じて、互いに異なる値であってもよい。同様に、放射状に延在する複数の板材51の起点O(図1参照)は、必ずしも吸音装置の幅方向の中心付近にある必要はなく、吸音装置の設置場所周辺の音場に応じて、吸音装置の幅方向の中心から偏心した位置にあってもよい。
【0041】
また、仕切り板50の起点O(図1参照)付近の形状に関して、仕切り板50は、図7に示すように、各吸音セル71の底部を画成する反射材52を更に備えてもよい。これにより、吸音装置10の高さHが増加するものの、吸音セル71内に上述の音波の伝播経路Rを明確に規定することができる。
【0042】
また、上述した第2実施例では、反射材61a,61bが吸音材60a,60bの裏側の設けられていたが、対応する部分の吸音材60a,60bを吸音層と反射層とからなる積層構造に構成することも可能である。
【0043】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したようなものであるから、以下に記載されるような効果を奏する。請求項1に係る発明によれば、放射状に画成された吸音セルの開口を略半円状の断面の吸音材で覆うことによって、吸音材の全領域で効率的な吸音が実現され、吸遮音構造体の設置面積当たりの吸音性能を高めることができる。また、請求項2に係る発明によれば、限られた設置面積の有効な利用を図ることができると共に、特定の吸音セルの開口を反射材で覆うことによって、個々の吸遮音構造体の吸音性能を足し合わせて得られる以上に効果的な吸遮音構造体アレイとしての吸音性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による吸遮音構造を備えた吸音装置の第1実施例を示す斜視図である。
【図2】本実施例の吸音装置の設置状態を示す断面図である。
【図3】本発明による吸遮音構造の吸音原理の説明図である。
【図4】比較説明のための吸音装置アレイの断面図である。
【図5】本発明の第2実施例として示す吸音装置アレイの断面図である。
【図6】本発明の第3実施例に係る吸音装置の断面図である。
【図7】代替実施例の吸遮音構造を示す断面図である。
【符号の説明】
10 吸音装置
20 壁体
50 仕切り板
52 仕切り板の板材
60 吸音材
61a,61b 反射材
70 空気層
71 吸音セル
Claims (3)
- 壁体に設ける吸遮音構造体であって、
断面が略半円状の吸音材と、
前記吸音材と前記壁体とが形成する断面が略半円状の空間を断面視にて放射状に仕切る複数の板材とを備えることを特徴とする、吸遮音構造体。 - 断面が略半円状の吸音材と、前記吸音材と前記壁体とが形成する断面が略半円状の空間を断面が略扇形の複数の扇形空間へと仕切る仕切り板とを備える吸遮音構造体が、複数個互いに隣接して壁体に配列された吸遮音構造体アレイであって、
前記複数の吸遮音構造体の扇形空間のうち、前記壁体に隣接し且つ開口が互いに対向する対の扇形空間が、前記吸音材の前記壁体側に設けた反射材により覆われていることを特徴とする、吸遮音構造体アレイ。 - 壁体に設ける吸遮音構造体であって、
壁体に対して略垂直に立設された略半円形の板材と、
前記略半円形の板材に対して略垂直を成すように設けられる、前記略半円形の板材との交線を直径とする略円形の板材と、
前記各板材の外周縁と接するような略半球の殻形態を有する吸音材とを備えることを特徴とする、吸遮音構造体。
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JP2012237990A (ja) * | 2011-04-27 | 2012-12-06 | Ihi Infrastructure Systems Co Ltd | 消音システム |
CN109102788A (zh) * | 2018-10-28 | 2018-12-28 | 扬州新扬通风设备有限公司 | 一种内圆外方的矩阵式消声器 |
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2002
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