JP2004170136A - 水素センサ - Google Patents
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Abstract
【課題】被測定ガスをクヌーセン拡散させることにより水素濃度を安定して検出でき、全体を小型化できると共に、熱衝撃抵抗等を向上できるようにする。
【解決手段】水素センサの検出素子21は、ヒータ部22の外周側に曲面印刷等の手段を用いて形成された多孔質層27、内側電極29,30、固体電解質層28、外側電極31,32、ガス拡散層33および緻密層34からなり、全体として円形のロッド状をなす構造とする。そして、直流電源37からの電圧印加を切換スイッチ38の開成により停止したときに、ガス拡散層33内を開口端33A側から矢示B方向に拡散してくる被測定ガス中の可燃性ガスを、外側電極32の近傍で酸化反応させ、このときに水素ガスを酸化するために電極32,30間を流れるポンプ電流Ip1を電流検出器40により検出する。
【選択図】 図2
【解決手段】水素センサの検出素子21は、ヒータ部22の外周側に曲面印刷等の手段を用いて形成された多孔質層27、内側電極29,30、固体電解質層28、外側電極31,32、ガス拡散層33および緻密層34からなり、全体として円形のロッド状をなす構造とする。そして、直流電源37からの電圧印加を切換スイッチ38の開成により停止したときに、ガス拡散層33内を開口端33A側から矢示B方向に拡散してくる被測定ガス中の可燃性ガスを、外側電極32の近傍で酸化反応させ、このときに水素ガスを酸化するために電極32,30間を流れるポンプ電流Ip1を電流検出器40により検出する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば被測定ガス中に含まれる水素ガスの濃度を検出するのに好適に用いられる水素センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電気自動車やハイブリット車に用いられる蓄電池または燃料電池の分野では、電池室内に可燃性の水素ガスが発生するため、このような水素ガスの濃度を水素センサを用いて検出するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−5881号公報
【0004】
この種の従来技術による水素センサは、被測定ガスが内部に分子拡散してくるガス拡散室と、基準となる大気が導入される酸素基準室と、前記ガス拡散室の酸素分圧を測定する第1の酸素検知セルと、該第1の酸素検知セルの出力に基づき前記ガス拡散室の酸素分圧を制御する第1の酸素ポンプセルとを備えた酸素イオン伝導性の固体電解質からなるプレート型のセンサ素子構造を有している。
【0005】
そして、従来技術の水素センサは、前記被測定ガスが内部に分子拡散してくるガス拡散室側に、被測定ガス中の可燃性ガスを酸化処理する第2の酸素ポンプセルと第2の酸素検知セルとを設け、第2の酸素ポンプセルを断続駆動させたときに前記第1の酸素ポンプセルから出力されるポンピング電流を水素濃度の検出信号として検出する構成としたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術による水素センサは、被測定ガスがガス拡散室に分子拡散する場合を前提としているので、被測定ガス中の水素濃度を測定する第1の酸素ポンプセル、第1の酸素検知セルと、ガス拡散室の酸素濃度を増減する第2の酸素ポンプセル、第2の酸素検知セルとの間隔を大きくする必要が生じ、プレート型のセンサ素子構造をもった水素センサ全体を小型化して、コンパクトに形成するのが難しいという問題がある。
【0007】
また、水素センサ全体が大型化するために、固体電解質を活性化するヒータの発熱量を大きくしなければならず、エネルギ効率が悪いばかりでなく、熱衝撃抵抗が小さくなり、水蒸気や水等に接触したときの熱衝撃で素子が損傷、破損され易いという問題がある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、被測定ガスをクヌーセン拡散させることにより水素濃度を安定して検出することができ、全体を小型化できると共に、熱衝撃抵抗等を向上でき、耐久性、寿命を高めることができるようにした水素センサを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明による水素センサは、細長いロッド状に形成され、外部からの通電によって発熱するヒータ部と、該ヒータ部の外周側に設けられ、内部を大気中の酸素が透過可能となった多孔質層と、該多孔質層を覆って前記ヒータ部の外周側に設けられ、前記ヒータ部からの熱により活性化される酸素イオン伝導性の固体電解質層と、該固体電解質層と多孔質層との間に設けられ、該固体電解質層の内周側で互いに離間した第1,第2の電極と、前記固体電解質層の外周側に互いに離間して設けられ、該第1,第2の電極との間で前記固体電解質層を挟む第3,第4の電極と、該第3,第4の電極を覆って前記固体電解質層の外周側に設けられ、水素を含んだ被測定ガスを内部にクヌーセン拡散させるガス拡散層と、前記第1の電極と第3の電極との間に設けられ、予め決められた電圧を該第1の電極と第3の電極との間に断続的に印加する電圧印加手段と、前記第2の電極と第4の電極との間に設けられ、該電圧印加手段による断続的な電圧印加の間に前記第2の電極と第4の電極との間に発生する電気信号を水素濃度信号として検出する信号検出手段とにより構成している。
【0010】
このように構成することにより、まず、電圧印加手段を用いて第1の電極と第3の電極との間に電圧を印加している状態では、ガス拡散層内にクヌーセン拡散してくる被測定ガスは、例えば水素、一酸化炭素等の可燃性ガスが第3の電極周囲で接触分解反応により支配的に酸化されるので、このときの可燃性ガスが第4の電極周囲に達することはほとんどなくなる。しかし、前記電圧印加手段による第1の電極と第3の電極との間への電圧印加を中断すると、ガス拡散層内をクヌーセン拡散してくる可燃性ガスは、第3の電極周囲で酸化(接触分解反応)されることなく第4の電極周囲に達し、該第4の電極周囲での接触分解反応により酸化される。
【0011】
そして、ガス拡散層内をクヌーセン拡散してくる各可燃性ガスはそれぞれ異なる拡散定数を有し、例えば可燃性ガスのうち水素が最初に第4の電極周囲に到達し、その後にほぼ一定の拡散遅れ時間をもって一酸化炭素が第4の電極周囲に達することになる。このため、固体電解質層を挟んだ第2の電極と第4の電極との間に流れるポンプ電流は、第4の電極周囲で水素のみを酸化するときと、その後に一酸化炭素を含めて酸化するときとで異なる特性を有し、このときのポンプ電流の特性または電圧特性から信号検出手段により水素濃度を検出することができる。
【0012】
特に、この場合のガス拡散層は、被測定ガスを内部でクヌーセン拡散させることにより、従来技術による分子拡散の場合と比較して水素と一酸化炭素との拡散時間差(拡散遅れ時間)を長くすることができ、この拡散遅れ時間を活用して前記信号検出手段は水素濃度を安定して高精度に検出することができる。
【0013】
また、ヒータ部の外周側に形成した多孔質層は、大気中の酸素を固体電解質層の内周側(第1,第2の電極側)に供給し続けるので、前述の如くガス拡散層内に拡散してくる被測定ガス中の可燃性ガスを酸化するのに必要な酸素を安定して確保でき、被測定ガス中に酸素がほとんど含まれていない場合でも、被測定ガス中の水素濃度を検出することができる。
【0014】
そして、水素センサの製造時には、細長いロッド形状をなすヒータ部の外周側に曲面印刷等の手段を用いて多孔質層、第1,第2の電極、固体電解質層、第3,第4の電極およびガス拡散層等を形成でき、水素センサ全体を円形のロッド状をなす構造とすることができる。この結果、ヒータ部を小径に形成した場合でも、固体電解質層に対するヒータ部の伝熱面積を大きくでき、該ヒータ部からの熱を固体電解質層等に効率的に伝熱することができる。これにより、センサ全体を小型化できると共に、外部の水蒸気や水等に接触する可能性を減じて熱衝撃抵抗等を向上でき、耐久性、寿命を高めることができる。
【0015】
一方、請求項2の発明による水素センサは、細長いロッド状に形成され、外部からの通電によって発熱するヒータ部と、該ヒータ部の外周側に設けられ、水素を含んだ被測定ガスを内部にクヌーセン拡散させるガス拡散層と、該ガス拡散層の外周側に設けられ、前記ヒータ部からの熱により活性化される酸素イオン伝導性の固体電解質層と、該固体電解質層とガス拡散層との間に設けられ、該固体電解質層の内周側で互いに離間した第1,第2の電極と、前記固体電解質層の外周側に互いに離間して設けられ、該第1,第2の電極との間で前記固体電解質層を挟む第3,第4の電極と、前記第1の電極と第3の電極との間に設けられ、予め決められた電圧を該第1の電極と第3の電極との間に断続的に印加する電圧印加手段と、前記第2の電極と第4の電極との間に設けられ、該電圧印加手段による断続的な電圧印加の間に前記第2の電極と第4の電極との間に発生する電気信号を水素濃度信号として検出する信号検出手段とにより構成している。
【0016】
これにより、細長いロッド形状をなすヒータ部の外周側に曲面印刷等の手段を用いてガス拡散層、第1,第2の電極、固体電解質層、第3,第4の電極等を形成でき、請求項1の発明とほぼ同様の作用効果を得ることができる。しかし、この場合には、ヒータ部の外周側にガス拡散層を形成しているので、例えばヒータ部側から大気等を導入する必要がなくなり、ヒータ部を含めてセンサ全体の製造工程、構造等を簡素化することができる。
【0017】
また、この場合には被測定ガス中に含まれる水蒸気等を第3,第4の電極周囲で接触分解反応させて固体電解質層の外側から内側へと酸素イオンを輸送でき、内側のガス拡散層内にクヌーセン拡散してくる被測定ガスに対し、可燃性ガスを酸化するために必要な酸素を供給することができる。そして、この場合にあっても電圧印加手段による電圧印加を中断したときに、拡散遅れ時間を利用して信号検出手段により被測定ガス中の水素濃度を安定して検出することができる。
【0018】
また、固体電解質層や各電極等のいずれかが万一破損された場合には、前述した酸素イオンの輸送が失効して、ガス拡散層側への酸素供給が絶たれることになるので、ガス拡散層内に酸素が漏れるような事態をなくすことができ、安全性を確保することができる。
【0019】
さらに、請求項3の発明によると、信号検出手段は、第2の電極と第4の電極との間に電圧を印加する直流電源と、第2の電極と第4の電極との間を流れる電流を水素濃度信号として選択的に検出する電流検出器とにより構成している。
【0020】
これにより、電圧印加手段による第1の電極と第3の電極との間への電圧印加を中断したときにも、直流電源から第2の電極と第4の電極との間に電圧を印加して第2または第4の電極周囲での接触分解反応を促進することができる。そして、この状態でガス拡散層内をクヌーセン拡散してくる可燃性ガスは、第1または第3の電極周囲で酸化されることなく、第2または第4の電極周囲に到達して酸化され、このときに第2の電極と第4の電極との間を流れるポンプ電流を電流検出器により水素濃度信号として選択的に検出することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態による水素センサを、水素濃度検出装置に適用した場合を例に挙げ、添付図面の図1ないし図9に従って詳細に説明する。
【0022】
ここで、図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は水素濃度検出装置のケーシングで、該ケーシング1は、軸方向の一側外周に取付部としてのおねじ部2Aが形成された段付筒状のホルダ2と、該ホルダ2の軸方向他側に一体的に固着された有底筒状のキャップ3と、該キャップ3内に同軸に配設され、後述のシールキャップ10とホルダ2との間に位置決めされたガイド筒4とにより構成されている。
【0023】
また、ケーシング1の構成部品であるホルダ2、キャップ3およびガイド筒4は、例えばステンレス鋼等の金属材料を用いて形成されている。そして、ケーシング1は、例えば燃料電池の検出対象部(図示せず)内に後述の検出素子21を突出状態で取付けるために、ホルダ2のおねじ部2Aが前記検出対象部等に螺着されるものである。
【0024】
5はケーシング1のホルダ2内に金属製のシールリング6を介して取付けられた絶縁支持体を示し、該絶縁支持体5は、例えば酸化アルミニウム(Al2O3 )等のセラミックス材料により筒状に形成され、その内周側には検出素子21が無機接着剤等を用いて固着されている。そして、絶縁支持体5は、ケーシング1内に検出素子21を位置決めすると共に、検出素子21をケーシング1に対して電気的、熱的に絶縁状態に保持するものである。
【0025】
7,8はケーシング1のガイド筒4内に設けられた絶縁筒体を示し、該絶縁筒体7,8は、酸化アルミニウム(以下、アルミナという)等のセラミックス材料により筒状に形成され、後述の各コンタクトプレート13,14等をケーシング1に対して絶縁状態に保持するものである。
【0026】
9はケーシング1内に位置して絶縁支持体5と絶縁筒体7との間に設けられた弾性部材としてのスプリングで、該スプリング9は、絶縁支持体5をホルダ2側に向けて常時付勢し、ケーシング1に外部から作用する振動や衝撃等が検出素子21に直接伝わるのを防止するものである。
【0027】
10はキャップ3の軸方向他側を閉塞したシールキャップを示し、該シールキャップ10は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性を有する樹脂材料によって段付き筒状に形成され、ケーシング1内に絶縁筒体7,8等をスプリング9を介して位置決めしている。
【0028】
また、シールキャップ10には、検出用のリード線11,11,…と、ヒータ用のリード線12,12(一方のみ図示)とが挿通されている。そして、これらの各リード線11,12は、絶縁筒体8内でそれぞれ検出用のコンタクトプレート13,13,…と、ヒータ用のコンタクトプレート14,14とにそれぞれ個別に接続されている。
【0029】
15はケーシング1のホルダ2に設けられたプロテクタで、該プロテクタ15は、例えば耐熱性の高い金属板等を用いて有蓋筒状に形成されている。そして、プロテクタ15は、後述する検出素子21の軸方向一側部分を外側から覆うように基端側がホルダ2に取付けられ、先端(蓋部)側がホルダ2から軸方向に突出して設けられている。
【0030】
また、プロテクタ15の筒部側には、被測定ガスの流通を許す複数の窓部15A,15A,…が形成されている。そして、これらの窓部15Aは、前記検出対象部内を流れる被測定ガスを検出素子21の一側(先端側)周囲に向け、例えば図2中の矢示B方向等に導くものである。
【0031】
次に、21は水素濃度検出装置のケーシング1に設けられ、水素センサの主要部を構成する検出素子で、該検出素子21は、ケーシング1のホルダ2内に絶縁支持体5を介して取付けられ、先端側がホルダ2から軸方向に突出している。そして、検出素子21は、図2に示す如く後述のヒータ部22、多孔質層27、固体電解質層28、ガス拡散層33および緻密層34等によって構成されるものである。
【0032】
22は細長いロッド状に形成された心棒部となるヒータ部で、該ヒータ部22は図2に示す如く、例えばアルミナ(Al2O3 )に微量の酸化珪素(Si O2)、酸化マグネシウム(Mg O)を添加したアルミナ系セラミックス材料により小径の中空ロッド状に形成されたヒータコアとしてのコアパイプ23と、ヒータパターン24および絶縁性のヒータ被覆層25とにより構成されている。
【0033】
そして、ヒータパターン24は、図2に示すようにコアパイプ23の外周面に曲面印刷等の手段を用いて形成され、コアパイプ23の軸方向の一側(先端側)から軸方向の他側(基端側)に向けて延びる一対のリード線部(図示せず)等を有している。
【0034】
また、ヒータ被覆層25は、ヒータパターン24をリード線部と一緒に径方向外側から保護するために、例えばアルミナに微量の酸化珪素、酸化マグネシウムを添加したセラミックス材料をコアパイプ23の外周側に厚膜印刷することにより形成されている。
【0035】
ここで、コアパイプ23は前記アルミナ系セラミックス材料を射出成形することにより、例えば外形寸法が約3〜3.5mmで、長さ寸法が約40〜60mmとなる円筒状ロッドとして形成され、コアパイプ23の内周側は軸方向に貫通して延びる軸穴23Aとなっている。また、コアパイプ23には複数個の径方向穴23Bが形成され、これらの径方向穴23Bは軸穴23Aと連通している。
【0036】
そして、これらの軸穴23Aおよび各径方向穴23Bは、ヒータ被覆層25に形成した複数の径方向穴25Aと共にヒータ部22の大気導入路を構成し、ケーシング1内の大気を図2中の矢示A方向に後述の多孔質層27側に向けて流通させるものである。また、軸穴23A等はコアパイプ23の容積を減少させることによって、コアパイプ23の熱容量を小さくする熱容量低減穴としても機能するものである。
【0037】
一方、ヒータパターン24は、例えば5重量%のアルミナ(Al2O3 )を混合した白金(Pt )等の発熱性導体材料からなり、その膜厚は焼成後の状態で10〜15μm程度に形成される。また、ヒータパターン24は、そのリード線部がコアパイプ23の基端側で図1に示すようにヒータ用の各コンタクトプレート14に接続されるものである。
【0038】
そして、ヒータパターン24は、後述のヒータ電源41からヒータ用の各リード線12、各コンタクトプレート14等を介して給電されることにより、ヒータ部22を発熱させ、例えば600〜800℃の範囲内でほぼ一定の温度に保持されるものである。
【0039】
26はコアパイプ23に設けられた栓部で、該栓部26は、コアパイプ23と同様にアルミナ系のセラミックス材料を用いて形成され、例えば図2に示す如くコアパイプ23の先端側から軸穴23Aに嵌合されて軸穴23Aを閉塞するものである。なお、コアパイプ23の軸穴23Aは、後述の多孔質層27、固体電解質層28、ガス拡散層33、緻密層34等を曲面印刷するときに芯出し穴としても用いられるものである。
【0040】
このため、栓部26は、固体電解質層28、ガス拡散層33、緻密層34等の曲面印刷が完了した段階で、これらを焼成する前にコアパイプ23の軸穴23A内に軸方向一側(先端側)から嵌合して設けられ、その後にコアパイプ23等と一緒に焼成されるものである。
【0041】
27はヒータ部22のヒータ被覆層25外周側に曲面印刷等の手段を用いて形成された多孔質層を示し、この多孔質層27は、例えばアルミナとジルコニア(Zr O2 )とからなる複合酸化物の粉体に、空孔形成剤としてのカーボン粉、エチルセルロース等を20〜50体積%程度添加してペースト状物を調整し、このペースト状物をヒータ被覆層25の外周側に厚膜印刷することにより環状に形成されるものである。
【0042】
この場合、多孔質層27の素材としてはジルコニアを必ずしも用いる必要はなく、例えばアルミナからなる複合酸化物の粉体にカーボン粉、エチルセルロース等を添加する構成としてもよい。そして、これらのカーボン粉、エチルセルロース等は、検出素子21全体を焼成するときに空孔形成剤として焼き飛ばされ、これにより多孔質層27は、内部に連続気泡(連続空孔)を有した多孔質環状体として形成される。
【0043】
そして、多孔質層27は、例えば20〜50μm程度の厚さを有し、ヒータ部22内の大気導入路となる軸穴23A、各径方向穴23B,25Aを通じて図2中の矢示A方向に導かれる大気中の酸素を透過させつつ、この酸素を後述の内側電極29,30に向けて供給するものである。
【0044】
28は多孔質層27を外側から覆うようにヒータ部22の外周側に曲面印刷等の手段を用いて形成された酸素イオン伝導性の固体電解質層で、該固体電解質層28は、例えば92%モルのジルコニア(Zr O2 )の粉体に対して、8%モルのイットリア(Y2 O3 )の粉体を混合して所謂イットリア安定化ジルコニア(YSZ)からなるペースト状物を調整した後、このペースト状物を図2に示す如くヒータ被覆層25の外周側に厚膜印刷することにより環状に形成されている。
【0045】
この場合、固体電解質層28の素材となる前記粉体は、例えば平均粒径0.8μm以下に形成される。そして、固体電解質層28は、例えば25〜50μm程度の厚さを有し、後述の電極29,31間、電極30,32間で酸素イオンを輸送させるものである。これにより、固体電解質層28は、後述する水素濃度の検出信号を図3に例示するポンプ電流(mA)として発生させる。
【0046】
29,30は多孔質層27と固体電解質層28との間に位置して固体電解質層28の内周面に設けられた第1,第2の電極としての内側電極で、該内側電極29,30は、例えば白金、パラジウム、ロジウム等の粉体に対し、数重量%のイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の粉体を混合してペースト状物を調整した後、このペースト状物を図2に示す如く多孔質層27の外周側に曲面印刷することにより形成され、それぞれのリード線部(図示せず)はヒータ部22の基端側に向けて伸長するものである。
【0047】
そして、内側電極29,30は、前記白金、パラジウム、ロジウムとイットリア安定化ジルコニアからなる触媒活性の高いサーメットとして形成され、いわゆる三相界面が多く存在することにより、後述の化1式等による接触分解反応(電極反応)を小さな抵抗をもって発生させるものである。
【0048】
ここで、内側電極29,30は、固体電解質層28の長さ方向(ヒータ部22および検出素子21の軸方向)で互いに離間し、一方の内側電極29は他方の内側電極30よりも大なる電極面積をもって形成されている。そして、内側電極29は、固定電解質層28の軸方向一側(後述するガス拡散層33の開口端33A側)寄りに配置され、後述する外側電極31との間で固体電解質層28を径方向から挟む構成となっている。
【0049】
また、内側電極30は、固定電解質層28の軸方向他側(後述するガス拡散層33の閉塞端33B側)寄りに配置され、後述する外側電極32との間で固体電解質層28を径方向から挟んでいる。そして、内側電極30と外側電極32とは、固定電解質層28等と共に後述する第1の酸素ポンプ部35を構成し、内側電極29と外側電極31とは、固定電解質層28等と共に後述する第2の酸素ポンプ部36を構成するものである。
【0050】
31,32は固体電解質層28の外周面に形成された第3,第4の電極となる外側電極で、該外側電極31,32は、内側電極29,30と同様の材料からなるペースト状物を、所定の印刷パターンで固体電解質層28の外周面に曲面印刷することによって形成され、そのリード線部(図示せず)はヒータ部22の基端側に向けて伸長するものである。
【0051】
ここで、外側電極31,32は、固体電解質層28の軸方向で互いに離間し、一方の外側電極31は他方の外側電極32よりも大なる電極面積をもって形成されている。そして、外側電極31は、固体電解質層28を内側電極29との間で径方向両側から挟むように配置され、外側電極32は、固体電解質層28を内側電極30との間で径方向両側から挟むように配置されているものである。
【0052】
また、外側電極31,32は、後述するガス拡散層33との関係では図2中の矢示B方向に拡散する被測定ガスに対し、外側電極31が外側電極32よりも上流側(開口端33A側)となる位置に配置され、外側電極32がより下流側(閉塞端33B側)となる位置に配置されているものである。
【0053】
33は固体電解質層28を外側電極31,32と共に外側から覆うガス拡散層で、該ガス拡散層33は、例えばアルミナとジルコニアの粉体(例えば、平均粒径0.3〜0.8μm)からなるペースト状物を、図2に示す如く固体電解質層28(外側電極31,32)の外周側に厚膜印刷することにより、例えば10〜50μm程度の厚さをもって環状に形成されるものである。
【0054】
この場合に、ガス拡散層33の素材としてはジルコニアを必ずしも用いる必要はなく、例えばアルミナからなる複合酸化物を用いて形成してよい。そして、ガス拡散層33は、検出素子21全体を焼成したときに多孔質構造(気孔率5〜30%)をなして形成され、その平均細孔径は、例えば100〜1000Å(オングストローム)程度に設定される。
【0055】
また、ガス拡散層33は、図2に示すように一側が後述の緻密層34等で覆われることのない開口端33Aとなり、他側は緻密層34の奥所側に位置する閉塞端33Bとなっている。そして、ガス拡散層33は、開口端33A側を除いて緻密層34により外側から覆われ、外部の被測定ガスは、図2中に示す矢示B方向から開口端33Aを介してガス拡散層33内に流入するものである。
【0056】
これにより、ガス拡散層33は、外部の被測定ガスを図2中の矢示B方向にクヌーセン拡散させつつ、外側電極31,32の表面側に供給し、被測定ガス中の可燃性ガス(例えば、水素、一酸化炭素、メタン、ブタン等)を外側電極31,32の表面側で後述の如く酸化させるものである。
【0057】
34はガス拡散層33の外周側に設けられた緻密層で、該緻密層34は、例えばアルミナの粉体に微量の酸化珪素、酸化マグネシウム(マグネシア)の粉体を添加してペースト状物を調整し、このペースト状物をガス拡散層33、固体電解質層28の外周側に厚膜印刷することにより図2に示す如く段付筒状に形成され、その膜厚は20〜50μm程度となっている。
【0058】
この場合、緻密層34の素材となる前記粉体は、例えば平均粒径0.3〜0.5μm程度に形成される。そして、緻密層34は、ガス拡散層33等に比較して緻密な多孔質構造をなすことにより、被測定ガス中に含まれる亜硫酸ガス(SOx )、シリコンガス(接着剤等から空気中に揮散した有機ガス)等のように分子量の大きいガスが被毒物となってガス拡散層33、固体電解質層28内に侵入するのを抑えるものである。
【0059】
35は固体電解質層28と電極30,32等とにより構成される第1の酸素ポンプ部で、該第1の酸素ポンプ部35は、後述の直流電源39等を含んで構成され、ガス拡散層33の閉塞端33B寄りの位置で固体電解質層28を挟んだ内側電極30と外側電極32との間に流れるポンプ電流Ip1(図3参照)を、水素濃度を測定するために後述の電流検出器40を用いて検出させる機能を有するものである。
【0060】
36は固体電解質層28と電極29,31等とにより構成される第2の酸素ポンプ部で、該第2の酸素ポンプ部36は、後述の直流電源37等を含んで構成され、ガス拡散層33内の酸素分圧を後述の如く制御する機能を有しているものである。
【0061】
37は内側電極29と外側電極31との間に設けられ、切換スイッチ38と共に電圧印加手段を構成する直流電源で、該直流電源37は、切換スイッチ38と共に内側電極29と外側電極31との間にリード線11等を介して接続されている。そして、切換スイッチ38は、直流電源37からの電圧(ポンプ電流Ip2)を図3中に示す後述の特性線42の如く断続的に印加し、切換スイッチ38の閉成時にポンプ電流Ip2は、外側電極31から内側電極29に向けて供給される。
【0062】
即ち、図2に示すガス拡散層33の開口端33A寄りの位置で固体電解質層28を挟んだ内側電極29と外側電極31との間には、直流電源37を通じてポンプ電流Ip2(図3参照)が供給されると、被測定ガス中の可燃性ガスを酸化するための酸素がガス拡散層33側に発生する。
【0063】
そして、直流電源37からは図4中に例示するように、例えば0.27V(270mV)以上の電極間電圧を内側電極29と外側電極31との間に印加することにより、ガス拡散層33内における酸素分圧は、10− 6atm(例えば、0.1Pa)以上の圧力に制御されるものである。
【0064】
このとき、被測定ガス中の可燃性ガスは、第2の酸素ポンプ部36を構成する外側電極31の近傍で支配的に酸化され、後述の化2,化3式等による接触分解反応が行われる。この結果、第1の酸素ポンプ部35を構成する外側電極32の近傍では、ガス拡散層33の奥所(閉塞端33B)側に可燃性ガスがほとんど存在しないために、化2,化3式等による接触分解反応が行われることはない。
【0065】
一方、切換スイッチ38を開成して直流電源37からの電圧印加(ポンプ電流Ip2の通電)を停止したときには、外側電極31の表面側でのガス拡散層33に対する酸素供給(発生)が中断される。このため、ガス拡散層33内を開口端33A側から矢示B方向に拡散して行く被測定ガス中の可燃性ガスは、外側電極31の位置を酸化されることなく通過し、ガス拡散層33の奥所(閉塞端33B)側へと拡散する。
【0066】
そして、ガス拡散層33の閉塞端33B側に達した可燃性ガスは、第1の酸素ポンプ部35を構成する外側電極32の近傍で、化2,化3式等による接触分解反応が行われ、このときに水素ガスを酸化するために電極32,30間を流れるポンプ電流Ip1は、後述の電流検出器40を用いて検出されるものである。
【0067】
39は内側電極30と外側電極32との間に設けられた直流電源、40は該直流電源39と共に信号検出手段を構成する電流検出器で、該電流検出器40は、図2に示す如く直流電源39と共に内側電極30と外側電極32との間にリード線11等を介して接続されている。
【0068】
この場合、直流電源39は、例えば270mV(0.27V)以上の電圧を常時印加し、ガス拡散層33側の酸素分圧を、10− 6atm(0.1Pa)以上の圧力に制御する。そして、電流検出器40は、固体電解質層28を介して電極30,32間に流れるポンプ電流Ip1を、図3中に示す後述の特性線43の如く水素濃度の検出信号として選択的に検出するものである。
【0069】
41は前記電源37,39等と共にケーシング1の外部に設けられるヒータ電源で、該ヒータ電源41は、図2に示すようにリード線12等を介してヒータパターン24に接続されるものである。そして、ヒータ電源41は、ヒータ部22のヒータパターン24に電圧を印加することにより、例えば600〜800℃の範囲内で一定の発熱温度にヒータ部22を維持させるものである。
【0070】
本実施の形態による水素濃度検出装置は上述の如き構成を有するもので、次に検出素子21の製造方法について説明する。
【0071】
まず、ヒータ部22を製造するときには、アルミナ系のセラミックス材料からコアパイプ23を中空の円筒状ロッドとして射出成形し、この状態でコアパイプ23を仮焼成する。この場合、軸穴23Aはコアパイプ23の熱容量を小さくするために可能な限り大きな穴径をもって形成するのがよい。
【0072】
次に、チャック等の支持軸をコアパイプ23の両端側に軸穴23A等を介して係合させ、コアパイプ23を回転させつつ、白金等の発熱性導体材料からなるヒータパターン24をコアパイプ23の外周面に曲面印刷する。そして、その後にヒータパターン24を径方向外側から覆うようにして、コアパイプ23の外周側にヒータ被覆層25を形成する。これによって、コアパイプ23、ヒータパターン24およびヒータ被覆層25からなるヒータ部22を形成する。
【0073】
次に、例えばアルミナとカーボン粉等からなるペースト状物を、ヒータ被覆層25の外周面に塗布するように曲面印刷して多孔質層27を形成し、ヒータ部22の径方向穴25A等を多孔質層27によって外側から覆うようにする。
【0074】
そして、多孔質層27の形成に続いて内側電極29,30を曲面印刷等の手段で形成し、これらの多孔質層27、内側電極29,30を外側から覆うように、例えばジルコニアとイットリアからなるペースト状物を、ヒータ被覆層25および多孔質層27の外周面に塗布するように曲面印刷して酸素イオン伝導性の固体電解質層28を形成する。
【0075】
そして、その後は固体電解質層28の外周面に外側電極31,32を形成し、これらの外側電極31,32は、内側電極29,30との間で固体電解質層28を径方向両側から挟むように配置する。
【0076】
次に、固体電解質層28の外周側には、外側電極31,32を外側から覆うように、例えばアルミナ等の複合酸化物からなるペースト状物を曲面印刷することによりガス拡散層33を形成する。そして、ガス拡散層33等の外周側には緻密層34を形成する。
【0077】
次に、前述の如く形成したコアパイプ23、ヒータパターン24、ヒータ被覆層25、多孔質層27、固体電解質層28、電極29,30,31,32、ガス拡散層33および緻密層34からなる検出素子21の成形品を、高温度下で焼成してこれらを一体的に焼結させる。なお、図2に示した栓部26は、焼成工程の前にコアパイプ23の軸穴23A内に嵌合して設けられ、その後にコアパイプ23等と一緒に焼成される。
【0078】
かくして、このように検出素子21を製造した後には、該検出素子21を水素濃度検出装置のケーシング1内に図1に示す如く収納し、各リード線部をそれぞれのコンタクトプレート13,14にばね性をもって当接させ、これらを電気的に接続することによって当該水素濃度検出装置(水素センサ)を完成させる。
【0079】
次に、当該水素センサによる水素濃度の検出動作について説明するに、まず、水素濃度検出装置のケーシング1は、ホルダ2のおねじ部2Aを介して燃料電池の検出対象部等に螺着され、検出素子21の先端側を検出対象部内へと突出させた状態で固定される。
【0080】
そして、検出対象部内の被測定ガスが検出素子21の周囲にプロテクタ15を介して導入されると、この被測定ガスの一部(例えば、水素、一酸化炭素等)が、図2中の矢示B方向でガス拡散層33内へと取込まれ、該ガス拡散層33を通じてクヌーセン拡散されつつ、例えば外側電極31,32の表面に達する。
【0081】
また、ケーシング1内の大気は、ヒータ部22内の大気導入路(軸穴23A、各径方向穴23B,25A)を通じて図2中の矢示A方向に導かれることにより、多孔質層27は、この大気中の酸素を一定分圧として透過させつつ、内側電極29,30に向けて供給する。
【0082】
そして、この状態でヒータ電源41からヒータパターン24に給電を行ってヒータ部22により検出素子21全体を加熱すると、固体電解質層28が活性化される。そして、外側電極31,32等は被測定ガス中の可燃性ガスを酸化可能な温度(例えば、750℃程度の温度)に保持される。
【0083】
また、第1の酸素ポンプ部35側では、直流電源39により電極30,32間に電圧を印加し、第2の酸素ポンプ部36側では、直流電源37から切換スイッチ38を介して電極29,31間に電圧を断続的に印加する。
【0084】
これにより、カソード側の内側電極29,30とアノード側の外側電極31,32との間では、後述の化1〜3式等に示す接触分解反応が行われる。このとき直流電源37,39からの電圧(例えば、図4中に示す0.27V)によって、ガス拡散層33内の酸素分圧は、内部をクヌーセン拡散してくる被測定ガス中の可燃性ガスを酸化するに必要な圧力、例えば0.1Pa(パスカル)以上の圧力に制御されるものである。
【0085】
即ち、ヒータ部22の大気導入路(軸穴23A、各径方向穴23B,25A)を通じて図2中の矢示A方向に導かれる大気中の酸素は、多孔質層27を透過しつつ、内側電極29,30に向けて供給されるので、内側電極29,30と外側電極31,32との間にそれぞれ電圧を印加した状態では、カソード側の内側電極29,30において、下記の化1による電気化学的な接触分解反応が行われ、このときの酸素に電子が付与されて酸素イオンが発生する。
【0086】
【化1】
O2 +4e → 2O2−
但し、O2 :酸素分子
e :電子
O2−:酸素イオン
【0087】
また、アノード側の外側電極31,32においては、下記の化2,化3式による電気化学的な接触分解反応が行われ、ガス拡散層33内をクヌーセン拡散してくる被測定ガス中の可燃性ガスは、例えば水素(H2 )がこのときの酸素イオン(O2−)と結合して水分子(H2 O)と電子(e)とに分解される。また、一酸化炭素(CO)は、酸素イオンと結合して二酸化炭素(CO2 )と電子とに分解される。
【0088】
【化2】
H2 +O2− → H2 O+2e
【0089】
【化3】
CO+O2− → CO2 +2e
【0090】
この場合、固体電解質層28と電極30,32等とにより構成される第1の酸素ポンプ部35は、電極29,31側の第2の酸素ポンプ部36よりもガス拡散層33の閉塞端33B側となる奥所(下流側)に配置され、電極29,31の方が電極30,32よりも大なる電極面積に形成されている。
【0091】
このため、第2の酸素ポンプ部36側で直流電源37から電極29,31間に電圧を印加し続ける限り(図3中の時間T1 まで)、被測定ガス中の可燃性ガスは、第2の酸素ポンプ部36を構成する外側電極31の近傍において支配的に酸化され、前述した化2,化3式による接触分解反応が行われる。
【0092】
そして、第1の酸素ポンプ部35を構成する外側電極32の近傍では、ガス拡散層33の奥所(閉塞端33B)側に可燃性ガスがほとんど存在しないために、化2,化3式等による接触分解反応は実質的に行われず、この間の外側電極32は、第2の酸素ポンプ部36側で直流電源37からの電圧印加が後述の如く中断されるのを待機することになる。
【0093】
ところで、ガス拡散層33内を開口端33Aから閉塞端33B側へとクヌーセン拡散する被測定ガスは、下記の数1式で示すクヌーセン拡散定数Dxkを有し、例えば水素、一酸化炭素等の可燃性ガスは、このクヌーセン拡散定数Dxkに対応した速度でガス拡散層33内を拡散するものである。
【0094】
【数1】
Dxk=(2d/3)×{(2×R×T)/(π×Mx)}1/2
但し、d:ガス拡散層の平均細孔径
R:気体定数(8.315J/K・mol )
T:絶対温度
Mx:被測定ガスの分子量
【0095】
そして、ヒータ部22の発熱温度を750℃とし、ガス拡散層33の平均細孔径を1000Åに設定した場合、水素(H2)、水(H2O)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、ブタン(C4H10)は、酸素(O2)に対する拡散定数の比率が図5に示す特性となり、例えば水素(H2)の比率が4.02であるのに対し、一酸化炭素(CO)の比率は、1.07となる。
【0096】
このため、水素および一酸化炭素を含んだ可燃性ガスがガス拡散層33内をクヌーセン拡散する場合に、後述の拡散遅れ時間Td1(例えば、4.62m秒)をもって一酸化炭素は、水素よりも遅くクヌーセン拡散するものである。
【0097】
そして、この拡散遅れ時間Td1を活用することにより、被測定ガス中の水素濃度を一酸化炭素に邪魔されることなく、検出することが可能となる。しかし、例えば第2の酸素ポンプ部36側で直流電源37から電極29,31間に電圧を印加し続ける限り、拡散遅れ時間Td1の基準点を設定することができず、水素濃度の検出が難しくなる。
【0098】
そこで、本実施の形態では、第2の酸素ポンプ部36側に切換スイッチ38を設け、該切換スイッチ38を予め決められた時間毎に開,閉成することにより、直流電源37からの電圧を電極29,31間に断続的に印加する構成としているものである。即ち、図3に例示する特性線42のように時間T1 までは、切換スイッチ38を閉成し、直流電源37からの電圧(ポンプ電流Ip2)を外側電極31から内側電極29に向けて供給する。
【0099】
そして、時間T1 〜T2 までは切換スイッチ38を開成し、直流電源37からの電圧(ポンプ電流Ip2)供給を中断させ、時間T2 では再び切換スイッチ38を閉成して直流電源37からの電圧印加を行い、このように切換スイッチ38の開,閉成を繰返すことにより、第2の酸素ポンプ部36側での電圧印加を断続的に行う構成としている。
【0100】
このため、図3に示す特性線43の如く、時間T1 を基準点として第1の酸素ポンプ部35側でポンプ電流Ip1を発生することができ、水素の拡散遅れ時間Td0から一酸化炭素の拡散遅れ時間Td1までのポンプ電流Ip1の特性(図3中に示す時間Td0〜Td1の特性線部43B)を、被測定ガス中の水素濃度に対応した信号として検出できるものである。
【0101】
即ち、第2の酸素ポンプ部36側で切換スイッチ38を開成し、直流電源37からの電圧印加(ポンプ電流Ip2の通電)を停止したときには、外側電極31からガス拡散層33に向けた酸素供給(発生)が中断される。この結果、ガス拡散層33内を開口端33A側から矢示B方向に拡散して行く被測定ガス中の可燃性ガスは、外側電極31の位置を酸化されることなく通過し、ガス拡散層33の奥所(閉塞端33B)側へと拡散する。
【0102】
そして、ガス拡散層33の奥所側に達した水素、一酸化炭素等の可燃性ガスは、第1の酸素ポンプ部35を構成する外側電極32の近傍で、前記化2,化3式による接触分解反応が行われ、このときに水素、一酸化炭素を酸化するために電極32,30間を流れるポンプ電流Ip1は、図3中の特性線43に示す如く変化し、これを電流検出器40により検出することができる。
【0103】
この場合、電流検出器40で検出されるポンプ電流Ip1は、図3中の特性線43の如く時間T1 までは、特性線部43Aとして示すように低い電流値に抑えられ、基準点となる時間T1 から水素の拡散遅れ時間Td0を過ぎた時点で、特性線部43Bとして示すように一酸化炭素の拡散遅れ時間Td1まで増大する。
【0104】
そして、一酸化炭素の拡散遅れ時間Td1を過ぎた後には、特性線部43Cで示すように、水素によるポンプ電流Ip1(H2)に一酸化炭素によるポンプ電流Ip1(CO)が加算されてポンプ電流Ip1はさらに増大し続ける。
【0105】
次に、その後の時間T2 において第2の酸素ポンプ部36側で切換スイッチ38を再び閉成し、直流電源37からの電圧(ポンプ電流Ip2)を内側電極29と外側電極31との間に印加すると、酸素の拡散遅れ時間Td2を経過した時点において、外側電極31の周囲で化2,化3式による接触分解反応(酸化反応)が再開される。
【0106】
このため、ガス拡散層33内をクヌーセン拡散する被測定ガスは、可燃性ガスが第2の酸素ポンプ部36を構成する外側電極31の近傍で支配的に酸化されることになり、第1の酸素ポンプ部35を構成する外側電極32の近傍には、可燃性ガスが到達しなくなって前記化2,化3式による酸化反応が急激に失われる。
【0107】
これにより、第1の酸素ポンプ部35側では、電極32,30間を流れるポンプ電流Ip1が、図3中に示す特性線部43Dの如く急激に低下し、第2の酸素ポンプ部36側で直流電源37からの電圧印加が、前述した時間T1 のように再び中断されるのを待機する。
【0108】
かくして、本実施の形態によれば、前述した検出動作を繰返すことにより、第1の酸素ポンプ部35側で電流検出器40を用いて、ポンプ電流Ip1の変化を図3中の特性線43の如く検出でき、特に、特性線部43Bの電流値から被測定ガス中の水素濃度を、他の可燃性ガスに邪魔されることなく正確に検出することができる。
【0109】
そして、図3中に示す特性線部43Bの電流値を拡散遅れ時間Td0〜Td1にわたって積分した場合でも、被測定ガス中の水素濃度を測定することができる。また、前述の検出動作を複数回にわたって繰返すことにより、例えば特性線部43Bに相当する電流値の平均値(複数回分の平均値)等から水素濃度を算定することもでき、被測定ガス中の水素濃度を安定して検出することができる。
【0110】
また、この場合のポンプ電流Ip1は、直流電源37からの電圧に対し図4に示す特性線44〜47の如く表され、被測定ガス中の水素濃度が10%のときには特性線44で示す関係となる。また、被測定ガス中の水素濃度が20%のときには特性線45で示す関係となり、水素濃度が30%のときには特性線46で示す関係となる。そして、被測定ガス中の水素濃度が40%のときには特性線47で示す関係となる。
【0111】
一方、従来技術のように、ガス拡散層内で被測定ガスを分子拡散させて水素濃度の検出を行う場合には、一酸化炭素の拡散遅れ時間Td1が、例えば0.69m秒程度と非常に短くなる。
【0112】
これに対し、本実施の形態にあっては、水素および一酸化炭素を含んだ可燃性ガスをガス拡散層33内でクヌーセン拡散させるため、一酸化炭素の拡散遅れ時間Td1を、例えば4.62m秒程度まで長く取ることができ、水素濃度の検出時間を拡大して検出精度等を高めることができる。
【0113】
そして、被測定ガスのクヌーセン拡散が支配的となるガス拡散層33を採用することにより、検出素子21の体積を小さくでき、検出素子21の小型化を図ることができる。
【0114】
また、本実施の形態によれば、細長いロッド形状をなすヒータ部22の外周側に曲面印刷等の手段を用いて多孔質層27、内側電極29,30、固体電解質層28、外側電極31,32、ガス拡散層33および緻密層34を形成でき、水素濃度の検出素子21全体を円形のロッド状をなす構造とすることができる。
【0115】
このため、ヒータ部22を小径に形成した場合でも、固体電解質層28に対するヒータ部22の伝熱面積を大きくでき、該ヒータ部22からの熱を固体電解質層28等に効率的に伝熱することができる。そして、内側電極29,30および外側電極31,32は、従来技術によるプレート型のセンサに比較して、より小さな体積で電極面積を広くすることができ、これによっても水素濃度の検出精度を向上できる。
【0116】
また、水素濃度の検出素子21全体を小型化できるため、検出素子21が外部の水蒸気や水等に接触する可能性を減らすことができ、これによって検出素子21の熱衝撃抵抗等を確実に向上できると共に、耐久性、寿命を高めることができる。
【0117】
また、ヒータ部22の外周側に形成した多孔質層27は、大気中の酸素を固体電解質層28の内周側に内側電極29,30に向けて供給し続ける構成としているため、ガス拡散層33内に拡散してくる被測定ガス中の可燃性ガスを酸化するのに必要な酸素を、各電極29〜32等の周囲に安定して確保でき、被測定ガス中に酸素がほとんど含まれていない場合でも、被測定ガス中の水素濃度を安定して検出することができる。
【0118】
そして、ガス拡散層33の外周側には緻密層34を設けることにより、被測定ガス中に含まれる被毒物(例えば、亜硫酸ガス、シリコンガス)等が、ガス拡散層33に侵入して目詰まり等を起こすのを抑えることができ、被毒物による検出素子21の水素センサとしての特性劣化を長期にわたって防ぐことができる。
【0119】
従って、本実施の形態によれば、被測定ガス中に一酸化炭素等の可燃性ガスが存在する場合でも、検出素子21により被測定ガス中の水素のみを選択して検出でき、水素濃度の検出精度を高めることができると共に、水素センサとしての信頼性を確実に向上することができる。
【0120】
また、固体電解質層28を挟んで外側電極31,32と共に酸素ポンプ部35,36を構成する内側電極29,30は、多孔質層27を透過してくる大気により一定の酸素分圧に保たれた状態で酸素を吸着することになるので、被測定ガスが酸素を含まない条件、例えば水素濃度が40%以上となる燃料電池の改質ガス中においても、検出素子21を用いて水素濃度を高精度に検出できる。
【0121】
次に、図6および図7は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ヒータ部の外周側にガス拡散層を設け、該ガス拡散層を固体電解質層により径方向外側から覆う構成としたことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0122】
図中、51は本実施の形態よる水素センサの検出素子で、該検出素子51は、後述のヒータ部52、ガス拡散層56、固体電解質層57、内側電極58,59および外側電極60,61等により構成されるものである。
【0123】
52は細長いロッド状に形成されたヒータ部で、該ヒータ部52は、第1の実施の形態で述べたヒータ部22とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合のヒータ部52は、中実のヒータコア53、ヒータパターン54およびヒータ被覆層55により構成され、大気導入路等が廃止されている。
【0124】
56はヒータ部52の外周側に設けられたガス拡散層を示し、該ガス拡散層56は、第1の実施の形態で述べたガス拡散層33とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合のガス拡散層56は、ヒータ被覆層55の外周側に曲面印刷等の手段を用いて形成されている。
【0125】
また、ガス拡散層56は、長さ方向(軸方向)の一側が後述の固体電解質層57で覆われることのない開口端56Aとなり、他側は固体電解質層57の奥所側に位置する閉塞端56Bとなっている。そして、ガス拡散層56は、開口端56A側を除いて固体電解質層57により外側から覆われ、外部の被測定ガスは、図6中に示す矢示D方向から開口端56Aを介してガス拡散層56内に流入するものである。
【0126】
これにより、ガス拡散層56は、外部の被測定ガスを図6中の矢示D方向にクヌーセン拡散させつつ、後述する内側電極58,59の表面側に供給し、被測定ガス中の可燃性ガス(例えば、水素、一酸化炭素、メタン、ブタン等)を内側電極58,59の表面側で前述した化2,化3式の如く酸化させるものである。
【0127】
57はガス拡散層56を外側から覆うようにヒータ部52の外周側に曲面印刷等の手段を用いて形成された酸素イオン伝導性の固体電解質層で、該固体電解質層57は、第1の実施の形態で述べた固体電解質層28とほぼ同様に構成されている。
【0128】
58,59はガス拡散層56と固体電解質層57との間に位置して固体電解質層57の内周面に設けられた第1,第2の電極としての内側電極で、該内側電極58,59は、第1の実施の形態で述べた内側電極29,30とほぼ同様に構成されものである。そして、内側電極58,59は、固体電解質層57の長さ方向(ヒータ部52および検出素子51の軸方向)で互いに離間し、一方の内側電極58は他方の内側電極59よりも大なる電極面積をもって形成されている。
【0129】
また、内側電極58は、固定電解質層57の軸方向一側(ガス拡散層56の開口端56A側)寄りに配置され、後述する外側電極60との間で固体電解質層57を径方向から挟む構成となっている。また、内側電極59は、固定電解質層57の軸方向他側(ガス拡散層56の閉塞端56B側)寄りに配置され、後述する外側電極61との間で固体電解質層57を径方向から挟んでいる。
【0130】
そして、内側電極59と外側電極61とは、固定電解質層57等と共に後述する第1の酸素ポンプ部62を構成し、内側電極58と外側電極60とは、固定電解質層57等と共に後述する第2の酸素ポンプ部63を構成するものである。
【0131】
60,61は固体電解質層57の外周面に形成された第3,第4の電極となる外側電極で、該外側電極60,61は、第1の実施の形態で述べた外側電極31,32と同様に構成されている。しかし、この場合の外側電極60,61は、その周囲を固体電解質層57と共に多孔質の保護層(図示せず)によって覆われ、外部のダスト等から保護されるものである。
【0132】
また、外側電極60,61は、固体電解質層57の軸方向で互いに離間し、一方の外側電極60は他方の外側電極61よりも大なる電極面積をもって形成されている。そして、外側電極60は、固体電解質層57を内側電極58との間で径方向両側から挟むように配置され、外側電極61は、固体電解質層57を内側電極59との間で径方向両側から挟むように配置されているものである。
【0133】
ここで、外側電極60,61は、外部の被測定ガス(水蒸気を多く含む)が図6中の矢示C方向から供給されると、下記の化4による電気化学的な接触分解反応を行い、被測定ガス中の水蒸気(水分子)に電子を付与して酸素イオンと水素を発生させる。
【0134】
【化4】
H2 O+2e → O2− +H2
但し、H2 O:水分子
e :電子
O2−:酸素イオン
H2 :水素分子
【0135】
また、被測定ガス中に二酸化炭素が含まれている場合には、外側電極60,61の表面側で下記の化5による電気化学的な接触分解反応が行われ、被測定ガス中の二酸化炭素(CO2)に電子が付与されて酸素イオンと一酸化炭素が発生される。
【0136】
【化5】
CO2 +2e → O2− +CO
【0137】
そして、このときの酸素イオンは、固体電解質層57中の酸素欠陥を介して外側電極60,61側から内側電極58,59に向けて輸送される。また、内側電極58,59においては、前述した化2,3式による電気化学的な接触分解反応が行われ、被測定ガス中の水素、一酸化炭素がそれぞれ酸化されるものである。
【0138】
62は固体電解質層57と電極59,61等とにより構成される第1の酸素ポンプ部で、該第1の酸素ポンプ部62は、第1の実施の形態で述べた第1の酸素ポンプ部35とほぼ同様の機能を有し、後述の直流電源66等を含んで構成されるものである。
【0139】
そして、第1の酸素ポンプ部62は、ガス拡散層56の閉塞端56B寄りの位置で固体電解質層57を挟んだ内側電極59と外側電極61との間に流れるポンプ電流Ip1を、水素濃度を測定するために後述の電流検出器67を用いて検出させる機能を有するものである。
【0140】
63は固体電解質層57と電極58,60等とにより構成される第2の酸素ポンプ部で、該第2の酸素ポンプ部63は、後述の直流電源64等を含んで構成され、第1の実施の形態で述べた第2の酸素ポンプ部36とほぼ同様に、ガス拡散層56内の酸素分圧を制御する機能を有しているものである。
【0141】
64は内側電極58と外側電極60との間に設けられ、切換スイッチ65と共に電圧印加手段を構成する直流電源で、該直流電源64は、切換スイッチ65と共に内側電極58と外側電極60との間にリード線11等を介して接続されている。
【0142】
そして、切換スイッチ65は、第1の実施の形態で述べた切換スイッチ38と同様に、直流電源64からの電圧(ポンプ電流Ip2)を図3中に例示した特性線42の如く断続的に印加し、切換スイッチ65の閉成時には、ポンプ電流Ip2が内側電極58から外側電極60に向けて供給されるものである。
【0143】
即ち、ガス拡散層56の開口端56A寄りの位置で固体電解質層57を挟んだ内側電極58と外側電極60との間には、直流電源64を通じてポンプ電流Ip2が供給されると、被測定ガス中の可燃性ガスを酸化するための酸素がガス拡散層56側に発生する。
【0144】
そして、直流電源64からは図7中に例示するように、例えば0.7V(700mV)以上の電極間電圧を内側電極58と外側電極60との間に印加することにより、ガス拡散層56内における酸素分圧は、10− 6atm(例えば、0.1Pa)以上の圧力に制御されるものである。このとき、被測定ガス中の可燃性ガスは、第2の酸素ポンプ部63を構成する内側電極58の近傍で支配的に酸化され、前述した化2,化3式等による酸化(接触分解)反応が行われる。
【0145】
この結果、第1の酸素ポンプ部62を構成する内側電極59の近傍では、ガス拡散層56の奥所(閉塞端56B)側に可燃性ガスがほとんど存在しないために、化2,化3式等による酸化(接触分解)反応が行われることはない。
【0146】
一方、切換スイッチ65を開成して直流電源64からの電圧印加(ポンプ電流Ip2の通電)を停止したときには、内側電極58の表面側でのガス拡散層56に対する酸素供給(発生)が中断される。このため、ガス拡散層56内を開口端56A側から矢示D方向に拡散して行く被測定ガス中の可燃性ガスは、内側電極58の位置を酸化されることなく通過し、ガス拡散層56の奥所(閉塞端56B)側へと拡散する。
【0147】
そして、ガス拡散層56の閉塞端56B側に達した可燃性ガスは、第1の酸素ポンプ部62を構成する内側電極59の近傍で、化2,化3式等による接触分解反応が行われ、このときに水素ガスを酸化するために電極59,61間を流れるポンプ電流Ip1は、後述の電流検出器67を用いて検出されるものである。
【0148】
66は内側電極59と外側電極61との間に設けられた直流電源、67は該直流電源66と共に信号検出手段を構成する電流検出器で、該電流検出器67は、図6に示す如く直流電源66と共に内側電極59と外側電極61との間にリード線11等を介して接続されている。
【0149】
この場合、直流電源66は、例えば700mV(0.7V)以上の電圧を常時印加し、ガス拡散層56側の酸素分圧を、10− 6atm(0.1Pa)以上の圧力に制御する。そして、電流検出器67は、固体電解質層57を介して電極59,61間に流れるポンプ電流Ip1を、図3中に例示した特性線43の如く水素濃度の検出信号として選択的に検出するものである。
【0150】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、直流電源64による電圧印加を切換スイッチ65で中断したときに、一酸化炭素の拡散遅れ時間Td1(図3参照)を利用して電流検出器67により被測定ガス中の水素濃度を安定して検出することができ、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0151】
そして、この場合のポンプ電流Ip1は、直流電源64からの電圧に対し図7に示す特性線68〜71のように表されるものである。即ち、ポンプ電流Ip1は、被測定ガス中の水素濃度が10%のときに特性線68で示す関係となり、被測定ガス中の水素濃度が20%のときには特性線69で示す関係となる。また、水素濃度が30%のときには特性線70で示す関係となり、被測定ガス中の水素濃度が40%のときには特性線71で示す関係となるものである。
【0152】
また、本実施の形態では、ヒータ部52の外周側にガス拡散層56を形成し、外側電極60,61側から内側電極58,59に向けて固体電解質層57内で酸素イオンを輸送させる構成としたので、例えばヒータ部52側から大気等を導入する必要がなくなり、ヒータ52部を含めて検出素子51全体の製造工程、構造等を簡素化することができる。
【0153】
そして、検出素子51の小型化をさらに促進することが可能となり、ヒータ部52からの熱を固体電解質層57等に効率的に伝え、熱効率、エネルギ効率等を確実に向上することができる。
【0154】
また、この場合には、被測定ガス中に含まれる水蒸気を前述した化4式の如く外側電極60,61の周囲で接触分解反応させて固体電解質層57の径方向外側から内側へと酸素イオンを輸送でき、内側のガス拡散層56内にクヌーセン拡散してくる被測定ガスに対し、可燃性ガスを酸化するために必要な酸素を供給することができる。
【0155】
さらに、固体電解質層57や各電極58〜61等のいずれかが万一破損された場合には、前述した酸素イオンの輸送が失効して、ガス拡散層56側への酸素供給が絶たれることになるので、ガス拡散層56内に酸素が漏れるような事態をなくすことができ、安全性を確保することができる。
【0156】
次に、図8および図9は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、第2の電極と第4の電極との間に設ける信号検出手段を電圧検出器等を用いて構成したことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0157】
図中、81は本実施の形態よる水素センサの検出素子で、該検出素子81は、第1の実施の形態で述べた検出素子21と同様に、ヒータ部22、多孔質層27、固体電解質層28、内側電極29,30、外側電極31,32、ガス拡散層33および緻密層34等により構成されている。
【0158】
82は信号検出手段を構成する電圧検出器で、該電圧検出器82は、第1の実施の形態で述べた直流電源39、電流検出器40に替えて用いられ、図8に示す如く内側電極30と外側電極32との間にリード線11等を介して接続され、電極30,32間の電圧を検出するものである。
【0159】
即ち、第1の酸素ポンプ部35側では、固体電解質層28の内側(多孔質層27)と外側(ガス拡散層33)との間に酸素濃度差(酸素分圧差)が生じると、これに従って電極30,32間に固体電解質層28を介した起電力が発生する。そして、電圧検出器82は、このときの起電力である出力電圧Vs を、図9中に例示した特性線83の如く水素濃度の検出信号として選択的に検出する。
【0160】
この場合、電圧検出器82で検出される出力電圧Vs は、図9中の特性線83の如く時間T1 までは、特性線部83Aとして示す如く低い電圧値に抑えられ、基準点となる時間T1 から水素の拡散遅れ時間Td0を過ぎた時点で、特性線部83Bとして示すように一酸化炭素の拡散遅れ時間Td1まで増大する。
【0161】
そして、一酸化炭素の拡散遅れ時間Td1を過ぎた後には、特性線部83Cで示すように、水素による出力電圧Vs (H2)に一酸化炭素による出力電圧Vs (CO)が加算されて出力電圧Vs はさらに増大し続ける。
【0162】
次に、その後の時間T2 において第2の酸素ポンプ部36側で切換スイッチ38を再び閉成し、直流電源37からの電圧(ポンプ電流Ip2)を内側電極29と外側電極31との間に印加すると、酸素の拡散遅れ時間Td2を経過した時点において、第1の実施の形態でも述べた通り外側電極31の周囲で化2,化3式による接触分解反応(酸化反応)が再開される。
【0163】
このため、ガス拡散層33内をクヌーセン拡散する被測定ガスは、可燃性ガスが第2の酸素ポンプ部36を構成する外側電極31の近傍で支配的に酸化されることになり、第1の酸素ポンプ部35を構成する外側電極32の近傍には、可燃性ガスが到達しなくなって前記化2,化3式による酸化反応が急激に失われる。
【0164】
これにより、第1の酸素ポンプ部35側では、電極30,32間に生じる出力電圧Vs が、図9中に示す特性線部83Dの如く急激に低下し、第2の酸素ポンプ部36側で直流電源37からの電圧印加が、前述した時間T1 のように再び中断されるのを待機する。
【0165】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様に、第1の酸素ポンプ部35側に設けた電圧検出器82により、出力電圧Vs の変化を図9中の特性線83の如く検出でき、特に、特性線部83Bの電圧値から被測定ガス中の水素濃度を、他の可燃性ガスに邪魔されることなく正確に検出することができる。
【0166】
そして、図9中に示す特性線部83Bの電圧値を拡散遅れ時間Td0〜Td1にわたって積分した場合でも、被測定ガス中の水素濃度を測定することができる。また、前述の検出動作を複数回にわたって繰返すことにより、例えば特性線部83Bに相当する電圧値の平均値(複数回分の平均値)等から水素濃度を算定することもでき、被測定ガス中の水素濃度を安定して検出することができる。
【0167】
なお、前記第2の実施の形態では、直流電源66と電流検出器67を用いて信号検出手段を構成するものとして説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば第3の実施の形態で述べた電圧検出器82を用いて、図6中に示す電極59,61間に固体電解質層57を介して発生する起電力を、被測定ガス中の水素濃度に対応した出力電圧として検出するようにしてもよい。
【0168】
また、第1の実施の形態では、ヒータ部22内に軸穴23A、径方向穴23B,25A等からなる大気導入路を形成するものとして説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図2に示す多孔質層27をヒータ部22の軸方向に長く延ばして形成し、大気中の酸素をヒータ部22の外周に沿って前記多孔質層内を流通させる構成としてもよい。
【0169】
次に、上記各実施の形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下にその効果と共に記載する。
【0170】
(1).請求項1に記載の水素センサにおいて、前記ガス拡散層の外周側には緻密層を形成する構成としてなる水素センサ。この場合には、ガス拡散層の外周側に設けた緻密層により、被測定ガス中に含まれる被毒物(例えば、亜硫酸ガス、シリコンガス等)がガス拡散層に侵入して目詰まり等を起こすのを抑えることができ、被毒物によるセンサの特性劣化を長期にわたり防止できる。
【0171】
(2).請求項1または2に記載の水素センサにおいて、前記信号検出手段は、前記第2の電極と第4の電極との間に固体電解質層を介して発生する起電力を検出する電圧検出器により構成してなる水素センサ。
【0172】
これにより、固体電解質層の内,外に生じる酸素濃度差(酸素分圧差)に従って第2の電極と第4の電極との間に発生する起電力を、被測定ガス中の水素濃度に対応した信号として検出でき、信号検出手段の構成を簡素化することができる。
【0173】
(3).請求項1,2または3に記載の水素センサにおいて、前記第1,第3の電極は、ガス拡散層内をクヌーセン拡散してくる被測定ガスの流れに対し前記第2,第4の電極よりも上流側となる位置に配置してなる水素センサ。
【0174】
これにより、電圧印加手段で第1の電極と第3の電極との間に電圧を印加しているときには、ガス拡散層内をクヌーセン拡散してくる被測定ガス中の水素等からなる可燃性ガスを、上流側に位置する第1または第3の電極側で支配的に酸化することができ、下流側となる第2または第4の電極側に到達する可燃性ガスの量を減じることができる。
【0175】
(4).請求項1,2または3に記載の水素センサにおいて、前記第1,第3の電極は、前記第2,第4の電極よりも大なる電極面積をもって形成してなる水素センサ。
【0176】
これにより、電圧印加手段で第1の電極と第3の電極との間に電圧を印加しているときには、ガス拡散層内をクヌーセン拡散してくる被測定ガス中の水素等からなる可燃性ガスを、電極面積の大きい第1または第3の電極側で支配的に酸化することができ、電極面積が小さい第2または第4の電極側に到達する可燃性ガスの量を減じることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による水素センサが適用された水素濃度検出装置を示す縦断面図である。
【図2】図1中の検出素子を拡大して示す縦断面図である。
【図3】第1,第2の酸素ポンプ部におけるポンプ電流の特性を示す特性線図である。
【図4】酸素ポンプ部における電極間電圧とポンプ電流との関係を示す特性線図である。
【図5】被測定ガスのクヌーセン拡散定数を酸素の拡散定数に対する比率で示す特性線図である。
【図6】第2の実施の形態による水素濃度の検出素子を示す縦断面図である。
【図7】図6中の酸素ポンプ部における電極間電圧とポンプ電流との関係を示す特性線図である。
【図8】第3の実施の形態による水素濃度の検出素子を示す縦断面図である。
【図9】図8中の第1,第2の酸素ポンプ部におけるポンプ電流、出力電圧の特性を示す特性線図である。
【符号の説明】
1 ケーシング
11,12 リード線
13,14 コンタクトプレート
21,51,81 検出素子(水素センサ)
22,52 ヒータ部
23 コアパイプ
23A 軸穴(大気導入路)
23B,25A 径方向穴(大気導入路)
24,54 ヒータパターン
25,55 ヒータ被覆層
27 多孔質層
28,57 固体電解質層
29,58 内側電極(第1の電極)
30,59 内側電極(第2の電極)
31,60 外側電極(第3の電極)
32,61 外側電極(第4の電極)
33,56 ガス拡散層
34 緻密層
35,62 第1の酸素ポンプ部
36,63 第2の酸素ポンプ部
37,64 直流電源(電圧印加手段)
38,65 切換スイッチ(電圧印加手段)
39,66 直流電源(信号検出手段)
40,67 電流検出器(信号検出手段)
41 ヒータ電源
53 ヒータコア
82 電圧検出器(信号検出手段)
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば被測定ガス中に含まれる水素ガスの濃度を検出するのに好適に用いられる水素センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電気自動車やハイブリット車に用いられる蓄電池または燃料電池の分野では、電池室内に可燃性の水素ガスが発生するため、このような水素ガスの濃度を水素センサを用いて検出するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−5881号公報
【0004】
この種の従来技術による水素センサは、被測定ガスが内部に分子拡散してくるガス拡散室と、基準となる大気が導入される酸素基準室と、前記ガス拡散室の酸素分圧を測定する第1の酸素検知セルと、該第1の酸素検知セルの出力に基づき前記ガス拡散室の酸素分圧を制御する第1の酸素ポンプセルとを備えた酸素イオン伝導性の固体電解質からなるプレート型のセンサ素子構造を有している。
【0005】
そして、従来技術の水素センサは、前記被測定ガスが内部に分子拡散してくるガス拡散室側に、被測定ガス中の可燃性ガスを酸化処理する第2の酸素ポンプセルと第2の酸素検知セルとを設け、第2の酸素ポンプセルを断続駆動させたときに前記第1の酸素ポンプセルから出力されるポンピング電流を水素濃度の検出信号として検出する構成としたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した従来技術による水素センサは、被測定ガスがガス拡散室に分子拡散する場合を前提としているので、被測定ガス中の水素濃度を測定する第1の酸素ポンプセル、第1の酸素検知セルと、ガス拡散室の酸素濃度を増減する第2の酸素ポンプセル、第2の酸素検知セルとの間隔を大きくする必要が生じ、プレート型のセンサ素子構造をもった水素センサ全体を小型化して、コンパクトに形成するのが難しいという問題がある。
【0007】
また、水素センサ全体が大型化するために、固体電解質を活性化するヒータの発熱量を大きくしなければならず、エネルギ効率が悪いばかりでなく、熱衝撃抵抗が小さくなり、水蒸気や水等に接触したときの熱衝撃で素子が損傷、破損され易いという問題がある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、被測定ガスをクヌーセン拡散させることにより水素濃度を安定して検出することができ、全体を小型化できると共に、熱衝撃抵抗等を向上でき、耐久性、寿命を高めることができるようにした水素センサを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明による水素センサは、細長いロッド状に形成され、外部からの通電によって発熱するヒータ部と、該ヒータ部の外周側に設けられ、内部を大気中の酸素が透過可能となった多孔質層と、該多孔質層を覆って前記ヒータ部の外周側に設けられ、前記ヒータ部からの熱により活性化される酸素イオン伝導性の固体電解質層と、該固体電解質層と多孔質層との間に設けられ、該固体電解質層の内周側で互いに離間した第1,第2の電極と、前記固体電解質層の外周側に互いに離間して設けられ、該第1,第2の電極との間で前記固体電解質層を挟む第3,第4の電極と、該第3,第4の電極を覆って前記固体電解質層の外周側に設けられ、水素を含んだ被測定ガスを内部にクヌーセン拡散させるガス拡散層と、前記第1の電極と第3の電極との間に設けられ、予め決められた電圧を該第1の電極と第3の電極との間に断続的に印加する電圧印加手段と、前記第2の電極と第4の電極との間に設けられ、該電圧印加手段による断続的な電圧印加の間に前記第2の電極と第4の電極との間に発生する電気信号を水素濃度信号として検出する信号検出手段とにより構成している。
【0010】
このように構成することにより、まず、電圧印加手段を用いて第1の電極と第3の電極との間に電圧を印加している状態では、ガス拡散層内にクヌーセン拡散してくる被測定ガスは、例えば水素、一酸化炭素等の可燃性ガスが第3の電極周囲で接触分解反応により支配的に酸化されるので、このときの可燃性ガスが第4の電極周囲に達することはほとんどなくなる。しかし、前記電圧印加手段による第1の電極と第3の電極との間への電圧印加を中断すると、ガス拡散層内をクヌーセン拡散してくる可燃性ガスは、第3の電極周囲で酸化(接触分解反応)されることなく第4の電極周囲に達し、該第4の電極周囲での接触分解反応により酸化される。
【0011】
そして、ガス拡散層内をクヌーセン拡散してくる各可燃性ガスはそれぞれ異なる拡散定数を有し、例えば可燃性ガスのうち水素が最初に第4の電極周囲に到達し、その後にほぼ一定の拡散遅れ時間をもって一酸化炭素が第4の電極周囲に達することになる。このため、固体電解質層を挟んだ第2の電極と第4の電極との間に流れるポンプ電流は、第4の電極周囲で水素のみを酸化するときと、その後に一酸化炭素を含めて酸化するときとで異なる特性を有し、このときのポンプ電流の特性または電圧特性から信号検出手段により水素濃度を検出することができる。
【0012】
特に、この場合のガス拡散層は、被測定ガスを内部でクヌーセン拡散させることにより、従来技術による分子拡散の場合と比較して水素と一酸化炭素との拡散時間差(拡散遅れ時間)を長くすることができ、この拡散遅れ時間を活用して前記信号検出手段は水素濃度を安定して高精度に検出することができる。
【0013】
また、ヒータ部の外周側に形成した多孔質層は、大気中の酸素を固体電解質層の内周側(第1,第2の電極側)に供給し続けるので、前述の如くガス拡散層内に拡散してくる被測定ガス中の可燃性ガスを酸化するのに必要な酸素を安定して確保でき、被測定ガス中に酸素がほとんど含まれていない場合でも、被測定ガス中の水素濃度を検出することができる。
【0014】
そして、水素センサの製造時には、細長いロッド形状をなすヒータ部の外周側に曲面印刷等の手段を用いて多孔質層、第1,第2の電極、固体電解質層、第3,第4の電極およびガス拡散層等を形成でき、水素センサ全体を円形のロッド状をなす構造とすることができる。この結果、ヒータ部を小径に形成した場合でも、固体電解質層に対するヒータ部の伝熱面積を大きくでき、該ヒータ部からの熱を固体電解質層等に効率的に伝熱することができる。これにより、センサ全体を小型化できると共に、外部の水蒸気や水等に接触する可能性を減じて熱衝撃抵抗等を向上でき、耐久性、寿命を高めることができる。
【0015】
一方、請求項2の発明による水素センサは、細長いロッド状に形成され、外部からの通電によって発熱するヒータ部と、該ヒータ部の外周側に設けられ、水素を含んだ被測定ガスを内部にクヌーセン拡散させるガス拡散層と、該ガス拡散層の外周側に設けられ、前記ヒータ部からの熱により活性化される酸素イオン伝導性の固体電解質層と、該固体電解質層とガス拡散層との間に設けられ、該固体電解質層の内周側で互いに離間した第1,第2の電極と、前記固体電解質層の外周側に互いに離間して設けられ、該第1,第2の電極との間で前記固体電解質層を挟む第3,第4の電極と、前記第1の電極と第3の電極との間に設けられ、予め決められた電圧を該第1の電極と第3の電極との間に断続的に印加する電圧印加手段と、前記第2の電極と第4の電極との間に設けられ、該電圧印加手段による断続的な電圧印加の間に前記第2の電極と第4の電極との間に発生する電気信号を水素濃度信号として検出する信号検出手段とにより構成している。
【0016】
これにより、細長いロッド形状をなすヒータ部の外周側に曲面印刷等の手段を用いてガス拡散層、第1,第2の電極、固体電解質層、第3,第4の電極等を形成でき、請求項1の発明とほぼ同様の作用効果を得ることができる。しかし、この場合には、ヒータ部の外周側にガス拡散層を形成しているので、例えばヒータ部側から大気等を導入する必要がなくなり、ヒータ部を含めてセンサ全体の製造工程、構造等を簡素化することができる。
【0017】
また、この場合には被測定ガス中に含まれる水蒸気等を第3,第4の電極周囲で接触分解反応させて固体電解質層の外側から内側へと酸素イオンを輸送でき、内側のガス拡散層内にクヌーセン拡散してくる被測定ガスに対し、可燃性ガスを酸化するために必要な酸素を供給することができる。そして、この場合にあっても電圧印加手段による電圧印加を中断したときに、拡散遅れ時間を利用して信号検出手段により被測定ガス中の水素濃度を安定して検出することができる。
【0018】
また、固体電解質層や各電極等のいずれかが万一破損された場合には、前述した酸素イオンの輸送が失効して、ガス拡散層側への酸素供給が絶たれることになるので、ガス拡散層内に酸素が漏れるような事態をなくすことができ、安全性を確保することができる。
【0019】
さらに、請求項3の発明によると、信号検出手段は、第2の電極と第4の電極との間に電圧を印加する直流電源と、第2の電極と第4の電極との間を流れる電流を水素濃度信号として選択的に検出する電流検出器とにより構成している。
【0020】
これにより、電圧印加手段による第1の電極と第3の電極との間への電圧印加を中断したときにも、直流電源から第2の電極と第4の電極との間に電圧を印加して第2または第4の電極周囲での接触分解反応を促進することができる。そして、この状態でガス拡散層内をクヌーセン拡散してくる可燃性ガスは、第1または第3の電極周囲で酸化されることなく、第2または第4の電極周囲に到達して酸化され、このときに第2の電極と第4の電極との間を流れるポンプ電流を電流検出器により水素濃度信号として選択的に検出することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態による水素センサを、水素濃度検出装置に適用した場合を例に挙げ、添付図面の図1ないし図9に従って詳細に説明する。
【0022】
ここで、図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は水素濃度検出装置のケーシングで、該ケーシング1は、軸方向の一側外周に取付部としてのおねじ部2Aが形成された段付筒状のホルダ2と、該ホルダ2の軸方向他側に一体的に固着された有底筒状のキャップ3と、該キャップ3内に同軸に配設され、後述のシールキャップ10とホルダ2との間に位置決めされたガイド筒4とにより構成されている。
【0023】
また、ケーシング1の構成部品であるホルダ2、キャップ3およびガイド筒4は、例えばステンレス鋼等の金属材料を用いて形成されている。そして、ケーシング1は、例えば燃料電池の検出対象部(図示せず)内に後述の検出素子21を突出状態で取付けるために、ホルダ2のおねじ部2Aが前記検出対象部等に螺着されるものである。
【0024】
5はケーシング1のホルダ2内に金属製のシールリング6を介して取付けられた絶縁支持体を示し、該絶縁支持体5は、例えば酸化アルミニウム(Al2O3 )等のセラミックス材料により筒状に形成され、その内周側には検出素子21が無機接着剤等を用いて固着されている。そして、絶縁支持体5は、ケーシング1内に検出素子21を位置決めすると共に、検出素子21をケーシング1に対して電気的、熱的に絶縁状態に保持するものである。
【0025】
7,8はケーシング1のガイド筒4内に設けられた絶縁筒体を示し、該絶縁筒体7,8は、酸化アルミニウム(以下、アルミナという)等のセラミックス材料により筒状に形成され、後述の各コンタクトプレート13,14等をケーシング1に対して絶縁状態に保持するものである。
【0026】
9はケーシング1内に位置して絶縁支持体5と絶縁筒体7との間に設けられた弾性部材としてのスプリングで、該スプリング9は、絶縁支持体5をホルダ2側に向けて常時付勢し、ケーシング1に外部から作用する振動や衝撃等が検出素子21に直接伝わるのを防止するものである。
【0027】
10はキャップ3の軸方向他側を閉塞したシールキャップを示し、該シールキャップ10は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の耐熱性を有する樹脂材料によって段付き筒状に形成され、ケーシング1内に絶縁筒体7,8等をスプリング9を介して位置決めしている。
【0028】
また、シールキャップ10には、検出用のリード線11,11,…と、ヒータ用のリード線12,12(一方のみ図示)とが挿通されている。そして、これらの各リード線11,12は、絶縁筒体8内でそれぞれ検出用のコンタクトプレート13,13,…と、ヒータ用のコンタクトプレート14,14とにそれぞれ個別に接続されている。
【0029】
15はケーシング1のホルダ2に設けられたプロテクタで、該プロテクタ15は、例えば耐熱性の高い金属板等を用いて有蓋筒状に形成されている。そして、プロテクタ15は、後述する検出素子21の軸方向一側部分を外側から覆うように基端側がホルダ2に取付けられ、先端(蓋部)側がホルダ2から軸方向に突出して設けられている。
【0030】
また、プロテクタ15の筒部側には、被測定ガスの流通を許す複数の窓部15A,15A,…が形成されている。そして、これらの窓部15Aは、前記検出対象部内を流れる被測定ガスを検出素子21の一側(先端側)周囲に向け、例えば図2中の矢示B方向等に導くものである。
【0031】
次に、21は水素濃度検出装置のケーシング1に設けられ、水素センサの主要部を構成する検出素子で、該検出素子21は、ケーシング1のホルダ2内に絶縁支持体5を介して取付けられ、先端側がホルダ2から軸方向に突出している。そして、検出素子21は、図2に示す如く後述のヒータ部22、多孔質層27、固体電解質層28、ガス拡散層33および緻密層34等によって構成されるものである。
【0032】
22は細長いロッド状に形成された心棒部となるヒータ部で、該ヒータ部22は図2に示す如く、例えばアルミナ(Al2O3 )に微量の酸化珪素(Si O2)、酸化マグネシウム(Mg O)を添加したアルミナ系セラミックス材料により小径の中空ロッド状に形成されたヒータコアとしてのコアパイプ23と、ヒータパターン24および絶縁性のヒータ被覆層25とにより構成されている。
【0033】
そして、ヒータパターン24は、図2に示すようにコアパイプ23の外周面に曲面印刷等の手段を用いて形成され、コアパイプ23の軸方向の一側(先端側)から軸方向の他側(基端側)に向けて延びる一対のリード線部(図示せず)等を有している。
【0034】
また、ヒータ被覆層25は、ヒータパターン24をリード線部と一緒に径方向外側から保護するために、例えばアルミナに微量の酸化珪素、酸化マグネシウムを添加したセラミックス材料をコアパイプ23の外周側に厚膜印刷することにより形成されている。
【0035】
ここで、コアパイプ23は前記アルミナ系セラミックス材料を射出成形することにより、例えば外形寸法が約3〜3.5mmで、長さ寸法が約40〜60mmとなる円筒状ロッドとして形成され、コアパイプ23の内周側は軸方向に貫通して延びる軸穴23Aとなっている。また、コアパイプ23には複数個の径方向穴23Bが形成され、これらの径方向穴23Bは軸穴23Aと連通している。
【0036】
そして、これらの軸穴23Aおよび各径方向穴23Bは、ヒータ被覆層25に形成した複数の径方向穴25Aと共にヒータ部22の大気導入路を構成し、ケーシング1内の大気を図2中の矢示A方向に後述の多孔質層27側に向けて流通させるものである。また、軸穴23A等はコアパイプ23の容積を減少させることによって、コアパイプ23の熱容量を小さくする熱容量低減穴としても機能するものである。
【0037】
一方、ヒータパターン24は、例えば5重量%のアルミナ(Al2O3 )を混合した白金(Pt )等の発熱性導体材料からなり、その膜厚は焼成後の状態で10〜15μm程度に形成される。また、ヒータパターン24は、そのリード線部がコアパイプ23の基端側で図1に示すようにヒータ用の各コンタクトプレート14に接続されるものである。
【0038】
そして、ヒータパターン24は、後述のヒータ電源41からヒータ用の各リード線12、各コンタクトプレート14等を介して給電されることにより、ヒータ部22を発熱させ、例えば600〜800℃の範囲内でほぼ一定の温度に保持されるものである。
【0039】
26はコアパイプ23に設けられた栓部で、該栓部26は、コアパイプ23と同様にアルミナ系のセラミックス材料を用いて形成され、例えば図2に示す如くコアパイプ23の先端側から軸穴23Aに嵌合されて軸穴23Aを閉塞するものである。なお、コアパイプ23の軸穴23Aは、後述の多孔質層27、固体電解質層28、ガス拡散層33、緻密層34等を曲面印刷するときに芯出し穴としても用いられるものである。
【0040】
このため、栓部26は、固体電解質層28、ガス拡散層33、緻密層34等の曲面印刷が完了した段階で、これらを焼成する前にコアパイプ23の軸穴23A内に軸方向一側(先端側)から嵌合して設けられ、その後にコアパイプ23等と一緒に焼成されるものである。
【0041】
27はヒータ部22のヒータ被覆層25外周側に曲面印刷等の手段を用いて形成された多孔質層を示し、この多孔質層27は、例えばアルミナとジルコニア(Zr O2 )とからなる複合酸化物の粉体に、空孔形成剤としてのカーボン粉、エチルセルロース等を20〜50体積%程度添加してペースト状物を調整し、このペースト状物をヒータ被覆層25の外周側に厚膜印刷することにより環状に形成されるものである。
【0042】
この場合、多孔質層27の素材としてはジルコニアを必ずしも用いる必要はなく、例えばアルミナからなる複合酸化物の粉体にカーボン粉、エチルセルロース等を添加する構成としてもよい。そして、これらのカーボン粉、エチルセルロース等は、検出素子21全体を焼成するときに空孔形成剤として焼き飛ばされ、これにより多孔質層27は、内部に連続気泡(連続空孔)を有した多孔質環状体として形成される。
【0043】
そして、多孔質層27は、例えば20〜50μm程度の厚さを有し、ヒータ部22内の大気導入路となる軸穴23A、各径方向穴23B,25Aを通じて図2中の矢示A方向に導かれる大気中の酸素を透過させつつ、この酸素を後述の内側電極29,30に向けて供給するものである。
【0044】
28は多孔質層27を外側から覆うようにヒータ部22の外周側に曲面印刷等の手段を用いて形成された酸素イオン伝導性の固体電解質層で、該固体電解質層28は、例えば92%モルのジルコニア(Zr O2 )の粉体に対して、8%モルのイットリア(Y2 O3 )の粉体を混合して所謂イットリア安定化ジルコニア(YSZ)からなるペースト状物を調整した後、このペースト状物を図2に示す如くヒータ被覆層25の外周側に厚膜印刷することにより環状に形成されている。
【0045】
この場合、固体電解質層28の素材となる前記粉体は、例えば平均粒径0.8μm以下に形成される。そして、固体電解質層28は、例えば25〜50μm程度の厚さを有し、後述の電極29,31間、電極30,32間で酸素イオンを輸送させるものである。これにより、固体電解質層28は、後述する水素濃度の検出信号を図3に例示するポンプ電流(mA)として発生させる。
【0046】
29,30は多孔質層27と固体電解質層28との間に位置して固体電解質層28の内周面に設けられた第1,第2の電極としての内側電極で、該内側電極29,30は、例えば白金、パラジウム、ロジウム等の粉体に対し、数重量%のイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の粉体を混合してペースト状物を調整した後、このペースト状物を図2に示す如く多孔質層27の外周側に曲面印刷することにより形成され、それぞれのリード線部(図示せず)はヒータ部22の基端側に向けて伸長するものである。
【0047】
そして、内側電極29,30は、前記白金、パラジウム、ロジウムとイットリア安定化ジルコニアからなる触媒活性の高いサーメットとして形成され、いわゆる三相界面が多く存在することにより、後述の化1式等による接触分解反応(電極反応)を小さな抵抗をもって発生させるものである。
【0048】
ここで、内側電極29,30は、固体電解質層28の長さ方向(ヒータ部22および検出素子21の軸方向)で互いに離間し、一方の内側電極29は他方の内側電極30よりも大なる電極面積をもって形成されている。そして、内側電極29は、固定電解質層28の軸方向一側(後述するガス拡散層33の開口端33A側)寄りに配置され、後述する外側電極31との間で固体電解質層28を径方向から挟む構成となっている。
【0049】
また、内側電極30は、固定電解質層28の軸方向他側(後述するガス拡散層33の閉塞端33B側)寄りに配置され、後述する外側電極32との間で固体電解質層28を径方向から挟んでいる。そして、内側電極30と外側電極32とは、固定電解質層28等と共に後述する第1の酸素ポンプ部35を構成し、内側電極29と外側電極31とは、固定電解質層28等と共に後述する第2の酸素ポンプ部36を構成するものである。
【0050】
31,32は固体電解質層28の外周面に形成された第3,第4の電極となる外側電極で、該外側電極31,32は、内側電極29,30と同様の材料からなるペースト状物を、所定の印刷パターンで固体電解質層28の外周面に曲面印刷することによって形成され、そのリード線部(図示せず)はヒータ部22の基端側に向けて伸長するものである。
【0051】
ここで、外側電極31,32は、固体電解質層28の軸方向で互いに離間し、一方の外側電極31は他方の外側電極32よりも大なる電極面積をもって形成されている。そして、外側電極31は、固体電解質層28を内側電極29との間で径方向両側から挟むように配置され、外側電極32は、固体電解質層28を内側電極30との間で径方向両側から挟むように配置されているものである。
【0052】
また、外側電極31,32は、後述するガス拡散層33との関係では図2中の矢示B方向に拡散する被測定ガスに対し、外側電極31が外側電極32よりも上流側(開口端33A側)となる位置に配置され、外側電極32がより下流側(閉塞端33B側)となる位置に配置されているものである。
【0053】
33は固体電解質層28を外側電極31,32と共に外側から覆うガス拡散層で、該ガス拡散層33は、例えばアルミナとジルコニアの粉体(例えば、平均粒径0.3〜0.8μm)からなるペースト状物を、図2に示す如く固体電解質層28(外側電極31,32)の外周側に厚膜印刷することにより、例えば10〜50μm程度の厚さをもって環状に形成されるものである。
【0054】
この場合に、ガス拡散層33の素材としてはジルコニアを必ずしも用いる必要はなく、例えばアルミナからなる複合酸化物を用いて形成してよい。そして、ガス拡散層33は、検出素子21全体を焼成したときに多孔質構造(気孔率5〜30%)をなして形成され、その平均細孔径は、例えば100〜1000Å(オングストローム)程度に設定される。
【0055】
また、ガス拡散層33は、図2に示すように一側が後述の緻密層34等で覆われることのない開口端33Aとなり、他側は緻密層34の奥所側に位置する閉塞端33Bとなっている。そして、ガス拡散層33は、開口端33A側を除いて緻密層34により外側から覆われ、外部の被測定ガスは、図2中に示す矢示B方向から開口端33Aを介してガス拡散層33内に流入するものである。
【0056】
これにより、ガス拡散層33は、外部の被測定ガスを図2中の矢示B方向にクヌーセン拡散させつつ、外側電極31,32の表面側に供給し、被測定ガス中の可燃性ガス(例えば、水素、一酸化炭素、メタン、ブタン等)を外側電極31,32の表面側で後述の如く酸化させるものである。
【0057】
34はガス拡散層33の外周側に設けられた緻密層で、該緻密層34は、例えばアルミナの粉体に微量の酸化珪素、酸化マグネシウム(マグネシア)の粉体を添加してペースト状物を調整し、このペースト状物をガス拡散層33、固体電解質層28の外周側に厚膜印刷することにより図2に示す如く段付筒状に形成され、その膜厚は20〜50μm程度となっている。
【0058】
この場合、緻密層34の素材となる前記粉体は、例えば平均粒径0.3〜0.5μm程度に形成される。そして、緻密層34は、ガス拡散層33等に比較して緻密な多孔質構造をなすことにより、被測定ガス中に含まれる亜硫酸ガス(SOx )、シリコンガス(接着剤等から空気中に揮散した有機ガス)等のように分子量の大きいガスが被毒物となってガス拡散層33、固体電解質層28内に侵入するのを抑えるものである。
【0059】
35は固体電解質層28と電極30,32等とにより構成される第1の酸素ポンプ部で、該第1の酸素ポンプ部35は、後述の直流電源39等を含んで構成され、ガス拡散層33の閉塞端33B寄りの位置で固体電解質層28を挟んだ内側電極30と外側電極32との間に流れるポンプ電流Ip1(図3参照)を、水素濃度を測定するために後述の電流検出器40を用いて検出させる機能を有するものである。
【0060】
36は固体電解質層28と電極29,31等とにより構成される第2の酸素ポンプ部で、該第2の酸素ポンプ部36は、後述の直流電源37等を含んで構成され、ガス拡散層33内の酸素分圧を後述の如く制御する機能を有しているものである。
【0061】
37は内側電極29と外側電極31との間に設けられ、切換スイッチ38と共に電圧印加手段を構成する直流電源で、該直流電源37は、切換スイッチ38と共に内側電極29と外側電極31との間にリード線11等を介して接続されている。そして、切換スイッチ38は、直流電源37からの電圧(ポンプ電流Ip2)を図3中に示す後述の特性線42の如く断続的に印加し、切換スイッチ38の閉成時にポンプ電流Ip2は、外側電極31から内側電極29に向けて供給される。
【0062】
即ち、図2に示すガス拡散層33の開口端33A寄りの位置で固体電解質層28を挟んだ内側電極29と外側電極31との間には、直流電源37を通じてポンプ電流Ip2(図3参照)が供給されると、被測定ガス中の可燃性ガスを酸化するための酸素がガス拡散層33側に発生する。
【0063】
そして、直流電源37からは図4中に例示するように、例えば0.27V(270mV)以上の電極間電圧を内側電極29と外側電極31との間に印加することにより、ガス拡散層33内における酸素分圧は、10− 6atm(例えば、0.1Pa)以上の圧力に制御されるものである。
【0064】
このとき、被測定ガス中の可燃性ガスは、第2の酸素ポンプ部36を構成する外側電極31の近傍で支配的に酸化され、後述の化2,化3式等による接触分解反応が行われる。この結果、第1の酸素ポンプ部35を構成する外側電極32の近傍では、ガス拡散層33の奥所(閉塞端33B)側に可燃性ガスがほとんど存在しないために、化2,化3式等による接触分解反応が行われることはない。
【0065】
一方、切換スイッチ38を開成して直流電源37からの電圧印加(ポンプ電流Ip2の通電)を停止したときには、外側電極31の表面側でのガス拡散層33に対する酸素供給(発生)が中断される。このため、ガス拡散層33内を開口端33A側から矢示B方向に拡散して行く被測定ガス中の可燃性ガスは、外側電極31の位置を酸化されることなく通過し、ガス拡散層33の奥所(閉塞端33B)側へと拡散する。
【0066】
そして、ガス拡散層33の閉塞端33B側に達した可燃性ガスは、第1の酸素ポンプ部35を構成する外側電極32の近傍で、化2,化3式等による接触分解反応が行われ、このときに水素ガスを酸化するために電極32,30間を流れるポンプ電流Ip1は、後述の電流検出器40を用いて検出されるものである。
【0067】
39は内側電極30と外側電極32との間に設けられた直流電源、40は該直流電源39と共に信号検出手段を構成する電流検出器で、該電流検出器40は、図2に示す如く直流電源39と共に内側電極30と外側電極32との間にリード線11等を介して接続されている。
【0068】
この場合、直流電源39は、例えば270mV(0.27V)以上の電圧を常時印加し、ガス拡散層33側の酸素分圧を、10− 6atm(0.1Pa)以上の圧力に制御する。そして、電流検出器40は、固体電解質層28を介して電極30,32間に流れるポンプ電流Ip1を、図3中に示す後述の特性線43の如く水素濃度の検出信号として選択的に検出するものである。
【0069】
41は前記電源37,39等と共にケーシング1の外部に設けられるヒータ電源で、該ヒータ電源41は、図2に示すようにリード線12等を介してヒータパターン24に接続されるものである。そして、ヒータ電源41は、ヒータ部22のヒータパターン24に電圧を印加することにより、例えば600〜800℃の範囲内で一定の発熱温度にヒータ部22を維持させるものである。
【0070】
本実施の形態による水素濃度検出装置は上述の如き構成を有するもので、次に検出素子21の製造方法について説明する。
【0071】
まず、ヒータ部22を製造するときには、アルミナ系のセラミックス材料からコアパイプ23を中空の円筒状ロッドとして射出成形し、この状態でコアパイプ23を仮焼成する。この場合、軸穴23Aはコアパイプ23の熱容量を小さくするために可能な限り大きな穴径をもって形成するのがよい。
【0072】
次に、チャック等の支持軸をコアパイプ23の両端側に軸穴23A等を介して係合させ、コアパイプ23を回転させつつ、白金等の発熱性導体材料からなるヒータパターン24をコアパイプ23の外周面に曲面印刷する。そして、その後にヒータパターン24を径方向外側から覆うようにして、コアパイプ23の外周側にヒータ被覆層25を形成する。これによって、コアパイプ23、ヒータパターン24およびヒータ被覆層25からなるヒータ部22を形成する。
【0073】
次に、例えばアルミナとカーボン粉等からなるペースト状物を、ヒータ被覆層25の外周面に塗布するように曲面印刷して多孔質層27を形成し、ヒータ部22の径方向穴25A等を多孔質層27によって外側から覆うようにする。
【0074】
そして、多孔質層27の形成に続いて内側電極29,30を曲面印刷等の手段で形成し、これらの多孔質層27、内側電極29,30を外側から覆うように、例えばジルコニアとイットリアからなるペースト状物を、ヒータ被覆層25および多孔質層27の外周面に塗布するように曲面印刷して酸素イオン伝導性の固体電解質層28を形成する。
【0075】
そして、その後は固体電解質層28の外周面に外側電極31,32を形成し、これらの外側電極31,32は、内側電極29,30との間で固体電解質層28を径方向両側から挟むように配置する。
【0076】
次に、固体電解質層28の外周側には、外側電極31,32を外側から覆うように、例えばアルミナ等の複合酸化物からなるペースト状物を曲面印刷することによりガス拡散層33を形成する。そして、ガス拡散層33等の外周側には緻密層34を形成する。
【0077】
次に、前述の如く形成したコアパイプ23、ヒータパターン24、ヒータ被覆層25、多孔質層27、固体電解質層28、電極29,30,31,32、ガス拡散層33および緻密層34からなる検出素子21の成形品を、高温度下で焼成してこれらを一体的に焼結させる。なお、図2に示した栓部26は、焼成工程の前にコアパイプ23の軸穴23A内に嵌合して設けられ、その後にコアパイプ23等と一緒に焼成される。
【0078】
かくして、このように検出素子21を製造した後には、該検出素子21を水素濃度検出装置のケーシング1内に図1に示す如く収納し、各リード線部をそれぞれのコンタクトプレート13,14にばね性をもって当接させ、これらを電気的に接続することによって当該水素濃度検出装置(水素センサ)を完成させる。
【0079】
次に、当該水素センサによる水素濃度の検出動作について説明するに、まず、水素濃度検出装置のケーシング1は、ホルダ2のおねじ部2Aを介して燃料電池の検出対象部等に螺着され、検出素子21の先端側を検出対象部内へと突出させた状態で固定される。
【0080】
そして、検出対象部内の被測定ガスが検出素子21の周囲にプロテクタ15を介して導入されると、この被測定ガスの一部(例えば、水素、一酸化炭素等)が、図2中の矢示B方向でガス拡散層33内へと取込まれ、該ガス拡散層33を通じてクヌーセン拡散されつつ、例えば外側電極31,32の表面に達する。
【0081】
また、ケーシング1内の大気は、ヒータ部22内の大気導入路(軸穴23A、各径方向穴23B,25A)を通じて図2中の矢示A方向に導かれることにより、多孔質層27は、この大気中の酸素を一定分圧として透過させつつ、内側電極29,30に向けて供給する。
【0082】
そして、この状態でヒータ電源41からヒータパターン24に給電を行ってヒータ部22により検出素子21全体を加熱すると、固体電解質層28が活性化される。そして、外側電極31,32等は被測定ガス中の可燃性ガスを酸化可能な温度(例えば、750℃程度の温度)に保持される。
【0083】
また、第1の酸素ポンプ部35側では、直流電源39により電極30,32間に電圧を印加し、第2の酸素ポンプ部36側では、直流電源37から切換スイッチ38を介して電極29,31間に電圧を断続的に印加する。
【0084】
これにより、カソード側の内側電極29,30とアノード側の外側電極31,32との間では、後述の化1〜3式等に示す接触分解反応が行われる。このとき直流電源37,39からの電圧(例えば、図4中に示す0.27V)によって、ガス拡散層33内の酸素分圧は、内部をクヌーセン拡散してくる被測定ガス中の可燃性ガスを酸化するに必要な圧力、例えば0.1Pa(パスカル)以上の圧力に制御されるものである。
【0085】
即ち、ヒータ部22の大気導入路(軸穴23A、各径方向穴23B,25A)を通じて図2中の矢示A方向に導かれる大気中の酸素は、多孔質層27を透過しつつ、内側電極29,30に向けて供給されるので、内側電極29,30と外側電極31,32との間にそれぞれ電圧を印加した状態では、カソード側の内側電極29,30において、下記の化1による電気化学的な接触分解反応が行われ、このときの酸素に電子が付与されて酸素イオンが発生する。
【0086】
【化1】
O2 +4e → 2O2−
但し、O2 :酸素分子
e :電子
O2−:酸素イオン
【0087】
また、アノード側の外側電極31,32においては、下記の化2,化3式による電気化学的な接触分解反応が行われ、ガス拡散層33内をクヌーセン拡散してくる被測定ガス中の可燃性ガスは、例えば水素(H2 )がこのときの酸素イオン(O2−)と結合して水分子(H2 O)と電子(e)とに分解される。また、一酸化炭素(CO)は、酸素イオンと結合して二酸化炭素(CO2 )と電子とに分解される。
【0088】
【化2】
H2 +O2− → H2 O+2e
【0089】
【化3】
CO+O2− → CO2 +2e
【0090】
この場合、固体電解質層28と電極30,32等とにより構成される第1の酸素ポンプ部35は、電極29,31側の第2の酸素ポンプ部36よりもガス拡散層33の閉塞端33B側となる奥所(下流側)に配置され、電極29,31の方が電極30,32よりも大なる電極面積に形成されている。
【0091】
このため、第2の酸素ポンプ部36側で直流電源37から電極29,31間に電圧を印加し続ける限り(図3中の時間T1 まで)、被測定ガス中の可燃性ガスは、第2の酸素ポンプ部36を構成する外側電極31の近傍において支配的に酸化され、前述した化2,化3式による接触分解反応が行われる。
【0092】
そして、第1の酸素ポンプ部35を構成する外側電極32の近傍では、ガス拡散層33の奥所(閉塞端33B)側に可燃性ガスがほとんど存在しないために、化2,化3式等による接触分解反応は実質的に行われず、この間の外側電極32は、第2の酸素ポンプ部36側で直流電源37からの電圧印加が後述の如く中断されるのを待機することになる。
【0093】
ところで、ガス拡散層33内を開口端33Aから閉塞端33B側へとクヌーセン拡散する被測定ガスは、下記の数1式で示すクヌーセン拡散定数Dxkを有し、例えば水素、一酸化炭素等の可燃性ガスは、このクヌーセン拡散定数Dxkに対応した速度でガス拡散層33内を拡散するものである。
【0094】
【数1】
Dxk=(2d/3)×{(2×R×T)/(π×Mx)}1/2
但し、d:ガス拡散層の平均細孔径
R:気体定数(8.315J/K・mol )
T:絶対温度
Mx:被測定ガスの分子量
【0095】
そして、ヒータ部22の発熱温度を750℃とし、ガス拡散層33の平均細孔径を1000Åに設定した場合、水素(H2)、水(H2O)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、ブタン(C4H10)は、酸素(O2)に対する拡散定数の比率が図5に示す特性となり、例えば水素(H2)の比率が4.02であるのに対し、一酸化炭素(CO)の比率は、1.07となる。
【0096】
このため、水素および一酸化炭素を含んだ可燃性ガスがガス拡散層33内をクヌーセン拡散する場合に、後述の拡散遅れ時間Td1(例えば、4.62m秒)をもって一酸化炭素は、水素よりも遅くクヌーセン拡散するものである。
【0097】
そして、この拡散遅れ時間Td1を活用することにより、被測定ガス中の水素濃度を一酸化炭素に邪魔されることなく、検出することが可能となる。しかし、例えば第2の酸素ポンプ部36側で直流電源37から電極29,31間に電圧を印加し続ける限り、拡散遅れ時間Td1の基準点を設定することができず、水素濃度の検出が難しくなる。
【0098】
そこで、本実施の形態では、第2の酸素ポンプ部36側に切換スイッチ38を設け、該切換スイッチ38を予め決められた時間毎に開,閉成することにより、直流電源37からの電圧を電極29,31間に断続的に印加する構成としているものである。即ち、図3に例示する特性線42のように時間T1 までは、切換スイッチ38を閉成し、直流電源37からの電圧(ポンプ電流Ip2)を外側電極31から内側電極29に向けて供給する。
【0099】
そして、時間T1 〜T2 までは切換スイッチ38を開成し、直流電源37からの電圧(ポンプ電流Ip2)供給を中断させ、時間T2 では再び切換スイッチ38を閉成して直流電源37からの電圧印加を行い、このように切換スイッチ38の開,閉成を繰返すことにより、第2の酸素ポンプ部36側での電圧印加を断続的に行う構成としている。
【0100】
このため、図3に示す特性線43の如く、時間T1 を基準点として第1の酸素ポンプ部35側でポンプ電流Ip1を発生することができ、水素の拡散遅れ時間Td0から一酸化炭素の拡散遅れ時間Td1までのポンプ電流Ip1の特性(図3中に示す時間Td0〜Td1の特性線部43B)を、被測定ガス中の水素濃度に対応した信号として検出できるものである。
【0101】
即ち、第2の酸素ポンプ部36側で切換スイッチ38を開成し、直流電源37からの電圧印加(ポンプ電流Ip2の通電)を停止したときには、外側電極31からガス拡散層33に向けた酸素供給(発生)が中断される。この結果、ガス拡散層33内を開口端33A側から矢示B方向に拡散して行く被測定ガス中の可燃性ガスは、外側電極31の位置を酸化されることなく通過し、ガス拡散層33の奥所(閉塞端33B)側へと拡散する。
【0102】
そして、ガス拡散層33の奥所側に達した水素、一酸化炭素等の可燃性ガスは、第1の酸素ポンプ部35を構成する外側電極32の近傍で、前記化2,化3式による接触分解反応が行われ、このときに水素、一酸化炭素を酸化するために電極32,30間を流れるポンプ電流Ip1は、図3中の特性線43に示す如く変化し、これを電流検出器40により検出することができる。
【0103】
この場合、電流検出器40で検出されるポンプ電流Ip1は、図3中の特性線43の如く時間T1 までは、特性線部43Aとして示すように低い電流値に抑えられ、基準点となる時間T1 から水素の拡散遅れ時間Td0を過ぎた時点で、特性線部43Bとして示すように一酸化炭素の拡散遅れ時間Td1まで増大する。
【0104】
そして、一酸化炭素の拡散遅れ時間Td1を過ぎた後には、特性線部43Cで示すように、水素によるポンプ電流Ip1(H2)に一酸化炭素によるポンプ電流Ip1(CO)が加算されてポンプ電流Ip1はさらに増大し続ける。
【0105】
次に、その後の時間T2 において第2の酸素ポンプ部36側で切換スイッチ38を再び閉成し、直流電源37からの電圧(ポンプ電流Ip2)を内側電極29と外側電極31との間に印加すると、酸素の拡散遅れ時間Td2を経過した時点において、外側電極31の周囲で化2,化3式による接触分解反応(酸化反応)が再開される。
【0106】
このため、ガス拡散層33内をクヌーセン拡散する被測定ガスは、可燃性ガスが第2の酸素ポンプ部36を構成する外側電極31の近傍で支配的に酸化されることになり、第1の酸素ポンプ部35を構成する外側電極32の近傍には、可燃性ガスが到達しなくなって前記化2,化3式による酸化反応が急激に失われる。
【0107】
これにより、第1の酸素ポンプ部35側では、電極32,30間を流れるポンプ電流Ip1が、図3中に示す特性線部43Dの如く急激に低下し、第2の酸素ポンプ部36側で直流電源37からの電圧印加が、前述した時間T1 のように再び中断されるのを待機する。
【0108】
かくして、本実施の形態によれば、前述した検出動作を繰返すことにより、第1の酸素ポンプ部35側で電流検出器40を用いて、ポンプ電流Ip1の変化を図3中の特性線43の如く検出でき、特に、特性線部43Bの電流値から被測定ガス中の水素濃度を、他の可燃性ガスに邪魔されることなく正確に検出することができる。
【0109】
そして、図3中に示す特性線部43Bの電流値を拡散遅れ時間Td0〜Td1にわたって積分した場合でも、被測定ガス中の水素濃度を測定することができる。また、前述の検出動作を複数回にわたって繰返すことにより、例えば特性線部43Bに相当する電流値の平均値(複数回分の平均値)等から水素濃度を算定することもでき、被測定ガス中の水素濃度を安定して検出することができる。
【0110】
また、この場合のポンプ電流Ip1は、直流電源37からの電圧に対し図4に示す特性線44〜47の如く表され、被測定ガス中の水素濃度が10%のときには特性線44で示す関係となる。また、被測定ガス中の水素濃度が20%のときには特性線45で示す関係となり、水素濃度が30%のときには特性線46で示す関係となる。そして、被測定ガス中の水素濃度が40%のときには特性線47で示す関係となる。
【0111】
一方、従来技術のように、ガス拡散層内で被測定ガスを分子拡散させて水素濃度の検出を行う場合には、一酸化炭素の拡散遅れ時間Td1が、例えば0.69m秒程度と非常に短くなる。
【0112】
これに対し、本実施の形態にあっては、水素および一酸化炭素を含んだ可燃性ガスをガス拡散層33内でクヌーセン拡散させるため、一酸化炭素の拡散遅れ時間Td1を、例えば4.62m秒程度まで長く取ることができ、水素濃度の検出時間を拡大して検出精度等を高めることができる。
【0113】
そして、被測定ガスのクヌーセン拡散が支配的となるガス拡散層33を採用することにより、検出素子21の体積を小さくでき、検出素子21の小型化を図ることができる。
【0114】
また、本実施の形態によれば、細長いロッド形状をなすヒータ部22の外周側に曲面印刷等の手段を用いて多孔質層27、内側電極29,30、固体電解質層28、外側電極31,32、ガス拡散層33および緻密層34を形成でき、水素濃度の検出素子21全体を円形のロッド状をなす構造とすることができる。
【0115】
このため、ヒータ部22を小径に形成した場合でも、固体電解質層28に対するヒータ部22の伝熱面積を大きくでき、該ヒータ部22からの熱を固体電解質層28等に効率的に伝熱することができる。そして、内側電極29,30および外側電極31,32は、従来技術によるプレート型のセンサに比較して、より小さな体積で電極面積を広くすることができ、これによっても水素濃度の検出精度を向上できる。
【0116】
また、水素濃度の検出素子21全体を小型化できるため、検出素子21が外部の水蒸気や水等に接触する可能性を減らすことができ、これによって検出素子21の熱衝撃抵抗等を確実に向上できると共に、耐久性、寿命を高めることができる。
【0117】
また、ヒータ部22の外周側に形成した多孔質層27は、大気中の酸素を固体電解質層28の内周側に内側電極29,30に向けて供給し続ける構成としているため、ガス拡散層33内に拡散してくる被測定ガス中の可燃性ガスを酸化するのに必要な酸素を、各電極29〜32等の周囲に安定して確保でき、被測定ガス中に酸素がほとんど含まれていない場合でも、被測定ガス中の水素濃度を安定して検出することができる。
【0118】
そして、ガス拡散層33の外周側には緻密層34を設けることにより、被測定ガス中に含まれる被毒物(例えば、亜硫酸ガス、シリコンガス)等が、ガス拡散層33に侵入して目詰まり等を起こすのを抑えることができ、被毒物による検出素子21の水素センサとしての特性劣化を長期にわたって防ぐことができる。
【0119】
従って、本実施の形態によれば、被測定ガス中に一酸化炭素等の可燃性ガスが存在する場合でも、検出素子21により被測定ガス中の水素のみを選択して検出でき、水素濃度の検出精度を高めることができると共に、水素センサとしての信頼性を確実に向上することができる。
【0120】
また、固体電解質層28を挟んで外側電極31,32と共に酸素ポンプ部35,36を構成する内側電極29,30は、多孔質層27を透過してくる大気により一定の酸素分圧に保たれた状態で酸素を吸着することになるので、被測定ガスが酸素を含まない条件、例えば水素濃度が40%以上となる燃料電池の改質ガス中においても、検出素子21を用いて水素濃度を高精度に検出できる。
【0121】
次に、図6および図7は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、ヒータ部の外周側にガス拡散層を設け、該ガス拡散層を固体電解質層により径方向外側から覆う構成としたことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0122】
図中、51は本実施の形態よる水素センサの検出素子で、該検出素子51は、後述のヒータ部52、ガス拡散層56、固体電解質層57、内側電極58,59および外側電極60,61等により構成されるものである。
【0123】
52は細長いロッド状に形成されたヒータ部で、該ヒータ部52は、第1の実施の形態で述べたヒータ部22とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合のヒータ部52は、中実のヒータコア53、ヒータパターン54およびヒータ被覆層55により構成され、大気導入路等が廃止されている。
【0124】
56はヒータ部52の外周側に設けられたガス拡散層を示し、該ガス拡散層56は、第1の実施の形態で述べたガス拡散層33とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合のガス拡散層56は、ヒータ被覆層55の外周側に曲面印刷等の手段を用いて形成されている。
【0125】
また、ガス拡散層56は、長さ方向(軸方向)の一側が後述の固体電解質層57で覆われることのない開口端56Aとなり、他側は固体電解質層57の奥所側に位置する閉塞端56Bとなっている。そして、ガス拡散層56は、開口端56A側を除いて固体電解質層57により外側から覆われ、外部の被測定ガスは、図6中に示す矢示D方向から開口端56Aを介してガス拡散層56内に流入するものである。
【0126】
これにより、ガス拡散層56は、外部の被測定ガスを図6中の矢示D方向にクヌーセン拡散させつつ、後述する内側電極58,59の表面側に供給し、被測定ガス中の可燃性ガス(例えば、水素、一酸化炭素、メタン、ブタン等)を内側電極58,59の表面側で前述した化2,化3式の如く酸化させるものである。
【0127】
57はガス拡散層56を外側から覆うようにヒータ部52の外周側に曲面印刷等の手段を用いて形成された酸素イオン伝導性の固体電解質層で、該固体電解質層57は、第1の実施の形態で述べた固体電解質層28とほぼ同様に構成されている。
【0128】
58,59はガス拡散層56と固体電解質層57との間に位置して固体電解質層57の内周面に設けられた第1,第2の電極としての内側電極で、該内側電極58,59は、第1の実施の形態で述べた内側電極29,30とほぼ同様に構成されものである。そして、内側電極58,59は、固体電解質層57の長さ方向(ヒータ部52および検出素子51の軸方向)で互いに離間し、一方の内側電極58は他方の内側電極59よりも大なる電極面積をもって形成されている。
【0129】
また、内側電極58は、固定電解質層57の軸方向一側(ガス拡散層56の開口端56A側)寄りに配置され、後述する外側電極60との間で固体電解質層57を径方向から挟む構成となっている。また、内側電極59は、固定電解質層57の軸方向他側(ガス拡散層56の閉塞端56B側)寄りに配置され、後述する外側電極61との間で固体電解質層57を径方向から挟んでいる。
【0130】
そして、内側電極59と外側電極61とは、固定電解質層57等と共に後述する第1の酸素ポンプ部62を構成し、内側電極58と外側電極60とは、固定電解質層57等と共に後述する第2の酸素ポンプ部63を構成するものである。
【0131】
60,61は固体電解質層57の外周面に形成された第3,第4の電極となる外側電極で、該外側電極60,61は、第1の実施の形態で述べた外側電極31,32と同様に構成されている。しかし、この場合の外側電極60,61は、その周囲を固体電解質層57と共に多孔質の保護層(図示せず)によって覆われ、外部のダスト等から保護されるものである。
【0132】
また、外側電極60,61は、固体電解質層57の軸方向で互いに離間し、一方の外側電極60は他方の外側電極61よりも大なる電極面積をもって形成されている。そして、外側電極60は、固体電解質層57を内側電極58との間で径方向両側から挟むように配置され、外側電極61は、固体電解質層57を内側電極59との間で径方向両側から挟むように配置されているものである。
【0133】
ここで、外側電極60,61は、外部の被測定ガス(水蒸気を多く含む)が図6中の矢示C方向から供給されると、下記の化4による電気化学的な接触分解反応を行い、被測定ガス中の水蒸気(水分子)に電子を付与して酸素イオンと水素を発生させる。
【0134】
【化4】
H2 O+2e → O2− +H2
但し、H2 O:水分子
e :電子
O2−:酸素イオン
H2 :水素分子
【0135】
また、被測定ガス中に二酸化炭素が含まれている場合には、外側電極60,61の表面側で下記の化5による電気化学的な接触分解反応が行われ、被測定ガス中の二酸化炭素(CO2)に電子が付与されて酸素イオンと一酸化炭素が発生される。
【0136】
【化5】
CO2 +2e → O2− +CO
【0137】
そして、このときの酸素イオンは、固体電解質層57中の酸素欠陥を介して外側電極60,61側から内側電極58,59に向けて輸送される。また、内側電極58,59においては、前述した化2,3式による電気化学的な接触分解反応が行われ、被測定ガス中の水素、一酸化炭素がそれぞれ酸化されるものである。
【0138】
62は固体電解質層57と電極59,61等とにより構成される第1の酸素ポンプ部で、該第1の酸素ポンプ部62は、第1の実施の形態で述べた第1の酸素ポンプ部35とほぼ同様の機能を有し、後述の直流電源66等を含んで構成されるものである。
【0139】
そして、第1の酸素ポンプ部62は、ガス拡散層56の閉塞端56B寄りの位置で固体電解質層57を挟んだ内側電極59と外側電極61との間に流れるポンプ電流Ip1を、水素濃度を測定するために後述の電流検出器67を用いて検出させる機能を有するものである。
【0140】
63は固体電解質層57と電極58,60等とにより構成される第2の酸素ポンプ部で、該第2の酸素ポンプ部63は、後述の直流電源64等を含んで構成され、第1の実施の形態で述べた第2の酸素ポンプ部36とほぼ同様に、ガス拡散層56内の酸素分圧を制御する機能を有しているものである。
【0141】
64は内側電極58と外側電極60との間に設けられ、切換スイッチ65と共に電圧印加手段を構成する直流電源で、該直流電源64は、切換スイッチ65と共に内側電極58と外側電極60との間にリード線11等を介して接続されている。
【0142】
そして、切換スイッチ65は、第1の実施の形態で述べた切換スイッチ38と同様に、直流電源64からの電圧(ポンプ電流Ip2)を図3中に例示した特性線42の如く断続的に印加し、切換スイッチ65の閉成時には、ポンプ電流Ip2が内側電極58から外側電極60に向けて供給されるものである。
【0143】
即ち、ガス拡散層56の開口端56A寄りの位置で固体電解質層57を挟んだ内側電極58と外側電極60との間には、直流電源64を通じてポンプ電流Ip2が供給されると、被測定ガス中の可燃性ガスを酸化するための酸素がガス拡散層56側に発生する。
【0144】
そして、直流電源64からは図7中に例示するように、例えば0.7V(700mV)以上の電極間電圧を内側電極58と外側電極60との間に印加することにより、ガス拡散層56内における酸素分圧は、10− 6atm(例えば、0.1Pa)以上の圧力に制御されるものである。このとき、被測定ガス中の可燃性ガスは、第2の酸素ポンプ部63を構成する内側電極58の近傍で支配的に酸化され、前述した化2,化3式等による酸化(接触分解)反応が行われる。
【0145】
この結果、第1の酸素ポンプ部62を構成する内側電極59の近傍では、ガス拡散層56の奥所(閉塞端56B)側に可燃性ガスがほとんど存在しないために、化2,化3式等による酸化(接触分解)反応が行われることはない。
【0146】
一方、切換スイッチ65を開成して直流電源64からの電圧印加(ポンプ電流Ip2の通電)を停止したときには、内側電極58の表面側でのガス拡散層56に対する酸素供給(発生)が中断される。このため、ガス拡散層56内を開口端56A側から矢示D方向に拡散して行く被測定ガス中の可燃性ガスは、内側電極58の位置を酸化されることなく通過し、ガス拡散層56の奥所(閉塞端56B)側へと拡散する。
【0147】
そして、ガス拡散層56の閉塞端56B側に達した可燃性ガスは、第1の酸素ポンプ部62を構成する内側電極59の近傍で、化2,化3式等による接触分解反応が行われ、このときに水素ガスを酸化するために電極59,61間を流れるポンプ電流Ip1は、後述の電流検出器67を用いて検出されるものである。
【0148】
66は内側電極59と外側電極61との間に設けられた直流電源、67は該直流電源66と共に信号検出手段を構成する電流検出器で、該電流検出器67は、図6に示す如く直流電源66と共に内側電極59と外側電極61との間にリード線11等を介して接続されている。
【0149】
この場合、直流電源66は、例えば700mV(0.7V)以上の電圧を常時印加し、ガス拡散層56側の酸素分圧を、10− 6atm(0.1Pa)以上の圧力に制御する。そして、電流検出器67は、固体電解質層57を介して電極59,61間に流れるポンプ電流Ip1を、図3中に例示した特性線43の如く水素濃度の検出信号として選択的に検出するものである。
【0150】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、直流電源64による電圧印加を切換スイッチ65で中断したときに、一酸化炭素の拡散遅れ時間Td1(図3参照)を利用して電流検出器67により被測定ガス中の水素濃度を安定して検出することができ、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0151】
そして、この場合のポンプ電流Ip1は、直流電源64からの電圧に対し図7に示す特性線68〜71のように表されるものである。即ち、ポンプ電流Ip1は、被測定ガス中の水素濃度が10%のときに特性線68で示す関係となり、被測定ガス中の水素濃度が20%のときには特性線69で示す関係となる。また、水素濃度が30%のときには特性線70で示す関係となり、被測定ガス中の水素濃度が40%のときには特性線71で示す関係となるものである。
【0152】
また、本実施の形態では、ヒータ部52の外周側にガス拡散層56を形成し、外側電極60,61側から内側電極58,59に向けて固体電解質層57内で酸素イオンを輸送させる構成としたので、例えばヒータ部52側から大気等を導入する必要がなくなり、ヒータ52部を含めて検出素子51全体の製造工程、構造等を簡素化することができる。
【0153】
そして、検出素子51の小型化をさらに促進することが可能となり、ヒータ部52からの熱を固体電解質層57等に効率的に伝え、熱効率、エネルギ効率等を確実に向上することができる。
【0154】
また、この場合には、被測定ガス中に含まれる水蒸気を前述した化4式の如く外側電極60,61の周囲で接触分解反応させて固体電解質層57の径方向外側から内側へと酸素イオンを輸送でき、内側のガス拡散層56内にクヌーセン拡散してくる被測定ガスに対し、可燃性ガスを酸化するために必要な酸素を供給することができる。
【0155】
さらに、固体電解質層57や各電極58〜61等のいずれかが万一破損された場合には、前述した酸素イオンの輸送が失効して、ガス拡散層56側への酸素供給が絶たれることになるので、ガス拡散層56内に酸素が漏れるような事態をなくすことができ、安全性を確保することができる。
【0156】
次に、図8および図9は本発明の第3の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、第2の電極と第4の電極との間に設ける信号検出手段を電圧検出器等を用いて構成したことにある。なお、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0157】
図中、81は本実施の形態よる水素センサの検出素子で、該検出素子81は、第1の実施の形態で述べた検出素子21と同様に、ヒータ部22、多孔質層27、固体電解質層28、内側電極29,30、外側電極31,32、ガス拡散層33および緻密層34等により構成されている。
【0158】
82は信号検出手段を構成する電圧検出器で、該電圧検出器82は、第1の実施の形態で述べた直流電源39、電流検出器40に替えて用いられ、図8に示す如く内側電極30と外側電極32との間にリード線11等を介して接続され、電極30,32間の電圧を検出するものである。
【0159】
即ち、第1の酸素ポンプ部35側では、固体電解質層28の内側(多孔質層27)と外側(ガス拡散層33)との間に酸素濃度差(酸素分圧差)が生じると、これに従って電極30,32間に固体電解質層28を介した起電力が発生する。そして、電圧検出器82は、このときの起電力である出力電圧Vs を、図9中に例示した特性線83の如く水素濃度の検出信号として選択的に検出する。
【0160】
この場合、電圧検出器82で検出される出力電圧Vs は、図9中の特性線83の如く時間T1 までは、特性線部83Aとして示す如く低い電圧値に抑えられ、基準点となる時間T1 から水素の拡散遅れ時間Td0を過ぎた時点で、特性線部83Bとして示すように一酸化炭素の拡散遅れ時間Td1まで増大する。
【0161】
そして、一酸化炭素の拡散遅れ時間Td1を過ぎた後には、特性線部83Cで示すように、水素による出力電圧Vs (H2)に一酸化炭素による出力電圧Vs (CO)が加算されて出力電圧Vs はさらに増大し続ける。
【0162】
次に、その後の時間T2 において第2の酸素ポンプ部36側で切換スイッチ38を再び閉成し、直流電源37からの電圧(ポンプ電流Ip2)を内側電極29と外側電極31との間に印加すると、酸素の拡散遅れ時間Td2を経過した時点において、第1の実施の形態でも述べた通り外側電極31の周囲で化2,化3式による接触分解反応(酸化反応)が再開される。
【0163】
このため、ガス拡散層33内をクヌーセン拡散する被測定ガスは、可燃性ガスが第2の酸素ポンプ部36を構成する外側電極31の近傍で支配的に酸化されることになり、第1の酸素ポンプ部35を構成する外側電極32の近傍には、可燃性ガスが到達しなくなって前記化2,化3式による酸化反応が急激に失われる。
【0164】
これにより、第1の酸素ポンプ部35側では、電極30,32間に生じる出力電圧Vs が、図9中に示す特性線部83Dの如く急激に低下し、第2の酸素ポンプ部36側で直流電源37からの電圧印加が、前述した時間T1 のように再び中断されるのを待機する。
【0165】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様に、第1の酸素ポンプ部35側に設けた電圧検出器82により、出力電圧Vs の変化を図9中の特性線83の如く検出でき、特に、特性線部83Bの電圧値から被測定ガス中の水素濃度を、他の可燃性ガスに邪魔されることなく正確に検出することができる。
【0166】
そして、図9中に示す特性線部83Bの電圧値を拡散遅れ時間Td0〜Td1にわたって積分した場合でも、被測定ガス中の水素濃度を測定することができる。また、前述の検出動作を複数回にわたって繰返すことにより、例えば特性線部83Bに相当する電圧値の平均値(複数回分の平均値)等から水素濃度を算定することもでき、被測定ガス中の水素濃度を安定して検出することができる。
【0167】
なお、前記第2の実施の形態では、直流電源66と電流検出器67を用いて信号検出手段を構成するものとして説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば第3の実施の形態で述べた電圧検出器82を用いて、図6中に示す電極59,61間に固体電解質層57を介して発生する起電力を、被測定ガス中の水素濃度に対応した出力電圧として検出するようにしてもよい。
【0168】
また、第1の実施の形態では、ヒータ部22内に軸穴23A、径方向穴23B,25A等からなる大気導入路を形成するものとして説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図2に示す多孔質層27をヒータ部22の軸方向に長く延ばして形成し、大気中の酸素をヒータ部22の外周に沿って前記多孔質層内を流通させる構成としてもよい。
【0169】
次に、上記各実施の形態から把握し得る請求項以外の技術的思想について、以下にその効果と共に記載する。
【0170】
(1).請求項1に記載の水素センサにおいて、前記ガス拡散層の外周側には緻密層を形成する構成としてなる水素センサ。この場合には、ガス拡散層の外周側に設けた緻密層により、被測定ガス中に含まれる被毒物(例えば、亜硫酸ガス、シリコンガス等)がガス拡散層に侵入して目詰まり等を起こすのを抑えることができ、被毒物によるセンサの特性劣化を長期にわたり防止できる。
【0171】
(2).請求項1または2に記載の水素センサにおいて、前記信号検出手段は、前記第2の電極と第4の電極との間に固体電解質層を介して発生する起電力を検出する電圧検出器により構成してなる水素センサ。
【0172】
これにより、固体電解質層の内,外に生じる酸素濃度差(酸素分圧差)に従って第2の電極と第4の電極との間に発生する起電力を、被測定ガス中の水素濃度に対応した信号として検出でき、信号検出手段の構成を簡素化することができる。
【0173】
(3).請求項1,2または3に記載の水素センサにおいて、前記第1,第3の電極は、ガス拡散層内をクヌーセン拡散してくる被測定ガスの流れに対し前記第2,第4の電極よりも上流側となる位置に配置してなる水素センサ。
【0174】
これにより、電圧印加手段で第1の電極と第3の電極との間に電圧を印加しているときには、ガス拡散層内をクヌーセン拡散してくる被測定ガス中の水素等からなる可燃性ガスを、上流側に位置する第1または第3の電極側で支配的に酸化することができ、下流側となる第2または第4の電極側に到達する可燃性ガスの量を減じることができる。
【0175】
(4).請求項1,2または3に記載の水素センサにおいて、前記第1,第3の電極は、前記第2,第4の電極よりも大なる電極面積をもって形成してなる水素センサ。
【0176】
これにより、電圧印加手段で第1の電極と第3の電極との間に電圧を印加しているときには、ガス拡散層内をクヌーセン拡散してくる被測定ガス中の水素等からなる可燃性ガスを、電極面積の大きい第1または第3の電極側で支配的に酸化することができ、電極面積が小さい第2または第4の電極側に到達する可燃性ガスの量を減じることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による水素センサが適用された水素濃度検出装置を示す縦断面図である。
【図2】図1中の検出素子を拡大して示す縦断面図である。
【図3】第1,第2の酸素ポンプ部におけるポンプ電流の特性を示す特性線図である。
【図4】酸素ポンプ部における電極間電圧とポンプ電流との関係を示す特性線図である。
【図5】被測定ガスのクヌーセン拡散定数を酸素の拡散定数に対する比率で示す特性線図である。
【図6】第2の実施の形態による水素濃度の検出素子を示す縦断面図である。
【図7】図6中の酸素ポンプ部における電極間電圧とポンプ電流との関係を示す特性線図である。
【図8】第3の実施の形態による水素濃度の検出素子を示す縦断面図である。
【図9】図8中の第1,第2の酸素ポンプ部におけるポンプ電流、出力電圧の特性を示す特性線図である。
【符号の説明】
1 ケーシング
11,12 リード線
13,14 コンタクトプレート
21,51,81 検出素子(水素センサ)
22,52 ヒータ部
23 コアパイプ
23A 軸穴(大気導入路)
23B,25A 径方向穴(大気導入路)
24,54 ヒータパターン
25,55 ヒータ被覆層
27 多孔質層
28,57 固体電解質層
29,58 内側電極(第1の電極)
30,59 内側電極(第2の電極)
31,60 外側電極(第3の電極)
32,61 外側電極(第4の電極)
33,56 ガス拡散層
34 緻密層
35,62 第1の酸素ポンプ部
36,63 第2の酸素ポンプ部
37,64 直流電源(電圧印加手段)
38,65 切換スイッチ(電圧印加手段)
39,66 直流電源(信号検出手段)
40,67 電流検出器(信号検出手段)
41 ヒータ電源
53 ヒータコア
82 電圧検出器(信号検出手段)
Claims (3)
- 細長いロッド状に形成され、外部からの通電によって発熱するヒータ部と、
該ヒータ部の外周側に設けられ、内部を大気中の酸素が透過可能となった多孔質層と、
該多孔質層を覆って前記ヒータ部の外周側に設けられ、前記ヒータ部からの熱により活性化される酸素イオン伝導性の固体電解質層と、
該固体電解質層と多孔質層との間に設けられ、該固体電解質層の内周側で互いに離間した第1,第2の電極と、
前記固体電解質層の外周側に互いに離間して設けられ、該第1,第2の電極との間で前記固体電解質層を挟む第3,第4の電極と、
該第3,第4の電極を覆って前記固体電解質層の外周側に設けられ、水素を含んだ被測定ガスを内部にクヌーセン拡散させるガス拡散層と、
前記第1の電極と第3の電極との間に設けられ、予め決められた電圧を該第1の電極と第3の電極との間に断続的に印加する電圧印加手段と、
前記第2の電極と第4の電極との間に設けられ、該電圧印加手段による断続的な電圧印加の間に前記第2の電極と第4の電極との間に発生する電気信号を水素濃度信号として検出する信号検出手段とにより構成してなる水素センサ。 - 細長いロッド状に形成され、外部からの通電によって発熱するヒータ部と、
該ヒータ部の外周側に設けられ、水素を含んだ被測定ガスを内部にクヌーセン拡散させるガス拡散層と、
該ガス拡散層の外周側に設けられ、前記ヒータ部からの熱により活性化される酸素イオン伝導性の固体電解質層と、
該固体電解質層とガス拡散層との間に設けられ、該固体電解質層の内周側で互いに離間した第1,第2の電極と、
前記固体電解質層の外周側に互いに離間して設けられ、該第1,第2の電極との間で前記固体電解質層を挟む第3,第4の電極と、
前記第1の電極と第3の電極との間に設けられ、予め決められた電圧を該第1の電極と第3の電極との間に断続的に印加する電圧印加手段と、
前記第2の電極と第4の電極との間に設けられ、該電圧印加手段による断続的な電圧印加の間に前記第2の電極と第4の電極との間に発生する電気信号を水素濃度信号として検出する信号検出手段とにより構成してなる水素センサ。 - 前記信号検出手段は、前記第2の電極と第4の電極との間に電圧を印加する直流電源と、前記第2の電極と第4の電極との間を流れる電流を水素濃度信号として選択的に検出する電流検出器とにより構成してなる請求項1または2に記載の水素センサ。
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