JP2004169885A - 湿式クラッチの冷却装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】湿式クラッチにおいて、クラッチカバー内に冷却油を効率よく供給することができる技術を提供する。
【解決手段】動力遮断用のレリーズベアリング33を摺動可能に支持するスライドガイド22の筒孔内に、外周面に給油溝41が形成された円筒体42を嵌入して固定する。給油管44から給油溝41に送り込まれた冷却用のオイルを、吹き出し口43からダイヤフラムスプリング19の開口部19bを経てクラッチカバー14内に吹き付け、該クラッチカバー14内に収容されるクラッチディスク18およびプレッシャープレート17を冷却する構成とした。レリーズベアリング33の内周面は、吹き出し口43から吹き付けられたオイルが周辺に飛散するのを抑え、クラッチカバー14内に導く案内面として作用する。
【選択図】 図2
【解決手段】動力遮断用のレリーズベアリング33を摺動可能に支持するスライドガイド22の筒孔内に、外周面に給油溝41が形成された円筒体42を嵌入して固定する。給油管44から給油溝41に送り込まれた冷却用のオイルを、吹き出し口43からダイヤフラムスプリング19の開口部19bを経てクラッチカバー14内に吹き付け、該クラッチカバー14内に収容されるクラッチディスク18およびプレッシャープレート17を冷却する構成とした。レリーズベアリング33の内周面は、吹き出し口43から吹き付けられたオイルが周辺に飛散するのを抑え、クラッチカバー14内に導く案内面として作用する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばフォークリフトのような産業車両において、内燃機関と手動変速機との間に配置され、内燃機関と手動変速機との間での動力の断続を行うために備えられる湿式クラッチに関し、詳しくはクラッチの摩擦発熱部位を冷却する冷却技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
フライホイールと、該フライホイールに固着されたクラッチカバーとによって形成される空間内に、クラッチディスクやプレシャープレートが収容されている従来の湿式クラッチには、クラッチカバーの外側でかつクラッチハウジング内に給油ノズルを配置し、その給油ノズルから冷却油をクラッチカバー内に向かって吹き付けることで、クラッチディスクおよび該クラッチディスクに加圧されるプレシャープレートやフライホイール等の摩擦発熱部位を冷却するようにした冷却装置が備えられている(例えば、特許文献1参照。)。
冷却油を給油ノズルによってクラッチカバー内に吹き付ける従来のノズル式冷却装置は、クラッチスプリングにコイルスプリングを用いたコイルスプリング式クラッチに適用されており、これは、クラッチカバーに形成された円形の開口部内周面と、レリーズベアリング外周面との間に形成される環状隙間を通して冷却油をクラッチカバーに向かって吹き付ける構成である。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−89000号公報(段落番号(0007)、図1参照)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のノズル式冷却装置の場合、給油ノズルから吹き付けられた冷却油が霧状化して放散する可能性があり、放散したときは、環状隙間を通過する油量が減少してクラッチカバー内への給油率が低下する。この霧状化現象は冷却油の油温が上昇するに伴い顕著になる。また、給油ノズルから吹き付けられる冷却油の勢いが弱い場合にも、環状隙間の通過量が減少してクラッチカバー内への給油率(到達率)が低下することになるため、ノズルからの噴出圧力を高める方策が必要になる。さらには、クラッチスプリングにダイヤフラムスプリングを用いたダイヤフラムスプリング式クラッチの場合は、ダイヤフラムスプリングがクラッチカバーの開口部を塞ぐ形で配置されること、そしてダイヤフラムスプリングを構成するために周方向に所定間隔で配置される板バネ間の隙間が狭いこと、しかもその隙間が回転すること、等の理由によって板バネ間の隙間から冷却油をクラッチカバー内に吹き付けることが実質的に困難であり、ダイヤフラムスプリング式クラッチには適用できなかった。
【0005】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、湿式クラッチにおいて、クラッチカバー内に冷却油を効率よく供給することができる技術を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明に係る湿式クラッチの冷却装置は、特許請求の範囲の請求項1〜4に記載の通りに構成される。また、本発明に係る湿式クラッチの冷却方法は、請求項5に記載の通りである。なお、これら各請求項に係る発明は、クラッチディスクおよびプレシャープレートが収容されたクラッチカバー内に向かって冷却油を吹き付ける吹き出し口を備えている湿式クラッチの冷却装置において、クラッチカバー内に冷却油を効率よく供給することができるようにした技術である。
【0007】
請求項1に記載の湿式クラッチの冷却装置では、吹き出し口は、クラッチの動力遮断用として配置されるレリーズベアリングの内周側に設けられている。冷却油が吹き出し口からクラッチカバー内に向かって吹き付けられるとき、冷却油が外側へ飛散あるいは流出することをレリーズベアリングの内周面によって抑えられる。すなわち、レリーズベアリングの内周面は、冷却油をクラッチカバー内に導く案内面として作用する。このため、請求項1の発明によれば、冷却油が霧状化してもあるいは吹き付け力が弱くても冷却油を効率よくクラッチカバー内に導入することが可能となり、クラッチディスク等の冷却性能を向上できる。
また、レリーズベアリングの内周側に冷却油の吹き出し口を設けたことにより、クラッチスプリングにコイルスプリングを用いたコイルスプリング式クラッチは勿論のこと、ダイヤフラムスプリングを用いたダイヤフラムスプリング式クラッチを湿式クラッチとして使用することが可能になる。また、従来のノズル式冷却装置のように、クラッチハウジング内に冷却油の吹き付けノズルの配置スペースを確保する必要がなくなる。
【0008】
この場合、請求項2に記載に記載したように、冷却油供給通路は、レリーズベアリングの内周側に配置される筒状部材に形成されていることが好ましい。一般に、レリーズベアリングの内周には、該レリーズベアリングを摺動可能に支持する筒状のスライドガイドが配置され、そのスライドガイド内をエンジン側の動力を変速機側に伝達するインプットシャフトが貫通している。したがって、これら既設の筒状部材を利用してあるいは別の筒状部材を追加設定して冷却油供給通路を構成することができる。
【0009】
また、請求項3に記載したように、冷却油供給通路は、互いに嵌合する筒状部材の嵌合面の一方または双方に形成された溝によって形成することが好ましい。このような構成を採用したときは、筒状部材に溝加工を施すことで、冷却油供給通路を簡単に形成することができる。
【0010】
また、請求項4に記載の湿式クラッチの冷却装置では、レリーズベアリングを摺動可能に支持するスライドガイドの筒孔内に筒体を嵌入固定し、その筒体とスライドガイドとの嵌合面間に冷却油供給通路を形成したことを特徴としている。このような構成によれば、筒体を追加することで、大幅な設計変更を伴うことなく冷却油供給通路を簡単に構成することができる。
【0011】
請求項5の発明に記載の湿式クラッチの冷却方法によれば、クラッチカバー内に冷却油を効率よく供給することが可能な冷却方法を提供することができる。これにより、クラッチディスク等の冷却性能を向上できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る湿式クラッチの冷却装置を図1〜図5に基づいて説明する。本実施の形態は、フォークリフトのような産業車両に用いられるダイヤフラムスプリング式の湿式クラッチに適用したものである。図1は本実施の形態に係る冷却装置を備えたダイヤフラムスプリング式の湿式クラッチを示す縦断面図であり、図2は図1のII−II線断面図であり、図3は図2のIII−III線断面図であり、図4は冷却油供給通路の構成部材である円筒体を示す斜視図であり、図5はダイヤフラムスプリングを示す正面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態に係る湿式クラッチ10は、クラッチスプリングにダイヤフラムスプリングを用いたダイヤフラムスプリング式であり、内燃機関と手動変速機との間に配置され、内燃機関のクランクシャフト1から手動変速機のインプットシャフト2へ伝達される動力を断続するために用いられる。湿式クラッチ10のクラッチハウジング11は、一方(前側)が内燃機関のクランクケース(図示省略)に接合され、他方(後側)が変速機のミッションケース3に接合される。また、クラッチハウジング11は、上部にサービス作業用の開口11aを有しており、この開口11aは通常時にはアッパカバー12によって塞がれている。
クラッチハウジング11内において、クランクシャフト1の端部には、フライホイール13が固着されており、このフライホイール13にクラッチカバー14が周方向の複数箇所を取付ボルト15で固着されている。また、フライホイール13のカバー取付面には、周方向の複数箇所に位置決め用としてのノックピン16が突設され、このノックピン16にクラッチカバー14に設けた貫通孔が嵌合されている。
【0014】
フライホイール13とクラッチカバー14とによって形成される空間Sには、クラッチディスク18およびプレッシャープレート17が収容されている。クラッチカバー14には、プレッシャープレート17を介してクラッチディスク18をフライホイール13に押し付けるためのクラッチスプリングとしてダイヤフラムスプリング19が備えられている。また、クラッチカバー14は、中央部に円形の開口部14aを有している。
ダイヤフラムスプリング19は、径方向の中間部位をスプリングリテーナ20で保持された状態で外周部分がプレッシャープレート17に当接している。ダイヤフラムスプリング19は、図5に示すように、複数枚の板バネ19aを周方向に所定間隔Cを置いて配置することで全体として円盤状をなすように形成されており、各板バネ19aの内周側がクラッチカバー14の開口部14a側に延びるとともに、内周中央部に円形の開口部19bを形成している。
【0015】
クラッチディスク18のボス部18aは、インプットシャフト2にスプライン嵌合されており、インプットシャフト2に対し周方向には固定され、軸方向には摺動可能とされている。インプットシャフト2は、クランクシャフト1と同心的に配置されており、フライホイール13側のフロントベアリング21およびミッションケース3側のリヤベアリング(図示省略)によって回転可能に支持されている。
上記のように、クラッチディスク18は、常にはダイヤフラムスプリング19によってプレッシャープレート17を介してフライホイール13に押し付けられており、この状態が湿式クラッチ10の接続状態であり、クランクシャフト1の駆動力は、フライホイール13からクラッチカバー14およびクラッチディスク18を経てインプットシャフト2に伝達される。上記のフライホイール13、クラッチカバー14、クラッチディスク18、ダイヤフラムスプリング19、プレッシャープレート17等により動力伝達部が構成されている。
【0016】
また、湿式クラッチ10には、クラッチペダル(図示省略)の足踏み操作によって動力伝達部の動力伝達を遮断する(クラッチを切る)ためのクラッチレリーズ機構30が備えられている。図1にはクラッチレリーズ機構30を構成する構成部材のうちのクラッチレリーズハブ31が示され、その他の構成部材であるクラッチレリーズフォークやクラッチレリーズシリンダ等については図示が省略されている。
クラッチレリーズハブ31は、インプットシャフト2と同心的に配置された円筒形のスライドガイド22の外周に軸方向に摺動可能にかつ回転可能に取り付けられている。スライドガイド22は、ミッションケース3側にボルト23で固定され、インプットシャフト2に対しては適宜隙間を置いて遊嵌されている。すなわち、インプットシャフト2は、スライドガイド22を貫通してミッションケース3側に延びている。クラッチレリーズハブ31は、スライドガイド22に摺動可能に嵌合する摺動ハブ32と、該摺動ハブ32の軸方向の前端部に回転可能に組み付けられたレリーズベアリング33とから構成されている。レリーズベアリング33の軸方向の一端面は、ダイヤフラムスプリング19の開口部19bの周縁部分に当接し、摺動ハブ32とダイヤフラムスプリング19との相対回転差を吸収する。なお、図5にはダイヤフラムスプリング19に対するレリーズベアリング33の当接位置が2点鎖線で示されている。
【0017】
そして、クラッチレリーズハブ31は、クラッチペダルの足踏み操作に伴い作動されるクラッチレリーズシリンダからクラッチレリーズフォークを介してダイヤフラムスプリング側に向かって移動(前進)され、レリーズベアリング33によってダイヤフラムスプリング19の内周側を加圧する。このため、ダイヤフラムスプリング19は、スプリングリテーナ20による保持部を支点として外周側がクラッチディスク18から離れる方向へ変位し、フライホイール13に対するクラッチディスク18の押し付けが解除される。このようにして湿式クラッチ10の動力伝達が遮断されることになる。すなわち、クラッチレリーズハブ31は、クラッチペダル操作に基づき前進してクラッチを切る。
【0018】
次に、上述のように構成されたダイヤフラムスプリング式の湿式クラッチ10において、動力伝達の断続作用に基づき発熱を伴う摩擦発熱部材としての、クラッチディスク18、プレッシャープレート17およびフライホイール13を冷却するために設けられる冷却装置40を図2〜図4に基づいて説明する。この冷却装置40は、冷却油としてのオイルをクラッチカバー14内に供給する給油溝41を主体に構成されている。給油溝41は、図4に示すような鍔付き円筒体42の外周面に形成されており、円筒体42をスライドガイド22の筒孔内に嵌入固定することでオイルの流通路を構成する。給油溝41は、円筒体42の軸方向に沿ってクラッチカバー14側に延びる左右(もしくは上下)2本の細溝41aと、両細溝41aを相互に連通させるための鍔42a側に形成された周方向に延びる連絡溝41bとから形成されている。そして、両細溝41aの他端がクラッチレリーズハブ31におけるレリーズベアリング33の内周側に開口され、この開口により吹き出し口43が構成されている。円筒体42の外周面は、給油溝41を除いた全面がスライドガイド22の内周面に接触され、また鍔42aがスライドガイド22の鍔部に接触されている。このことにより、オイルは給油溝41によって導かれ、吹き出し口43からクラッチカバー14側に吹き出される。上記の円筒体42およびスライドガイド22が本発明でいう筒状部材に対応し、給油溝41が本発明でいう冷却油供給通路に対応する。
【0019】
円筒体42は、例えば鉄管または鋼管等の金属管からなり、プレス加工で所定形状に加工される。なお、スライドガイド22には、クラッチディスク18を交換する際に、インプットシャフト2をミッションケース3側へスライドさせる作業を行うための作業孔22aが形成されている。この作業孔22aを通して行われる上記のインプットシャフト2のスライド作業を可能とするするために、円筒体42には、作業孔22aに対応する位置に同程度の大きさの切欠き42bが形成されている。
【0020】
スライドガイド22にはオイルの給油管44が接続されており、この給油管44を経て給油溝41の連絡溝41bに冷却用のオイルが導入されるようになっている。なお、湿式クラッチの冷却に用いられるオイルは、フォークリフトの場合、荷役作業用油圧アクチュエータの駆動に用いられる作動油であり、作動油タンクから油圧ポンプで汲み上げられ、所定の経路を経た後、給油管44へ送り込まれるようになっている。
【0021】
本実施の形態に係る冷却装置40は、上記のように構成したものである。給油管44から送り込まれたオイルは、給油溝41の連絡溝41bに流入後、細溝41aを通って吹き出し口43から吹き出される(図2参照)。
吹き出し口43はレリーズベアリング33の内周面に対して平行に開口されている。そして、レリーズベアリング33は、ダイヤフラムスプリング19の開口部19bの周縁部に当接されている。このため、吹き出し口43から吹き出されたオイルは、レリーズベアリング33の内周面で囲まれる空間を経てダイヤフラムスプリング19の開口部19bからクラッチカバー14内に供給される。すなわち、レリーズベアリング33の内周面は、吹き出し口43から吹き出されたオイルをクラッチカバー14内に導く案内面として作用することになる。このため、オイルが霧状化してもあるいは吹き出し力が弱くてもオイルを効率よくクラッチカバー14内に導入することができる。
【0022】
上記のようにして、クラッチカバー14内に供給されたオイルは、クラッチディスク18、プレッシャープレート17、フライホイール13等の、クラッチカバー14内に収容された各収容部材を冷却する。そして、クラッチカバー14内のオイルは、図示はしないが、該クラッチカバー14に外周面部に形成された孔あるいはスリットからクラッチハウジング11内へ流出してハウジング底に集められる。なお、クラッチハウジング11内のオイルは、例えばクラッチカバー14やフライホイール13の回転により掻き揚げて該クラッチカバー14に形成された排出口を経て作動油タンクへ戻したり、あるいはエジェクタにより汲み上げられて作動油タンクに戻される。
【0023】
また、本実施の形態では、レリーズベアリング33の内周側に冷却油の吹き出し口43を設けたことにより、ダイヤフラムスプリング19を用いたダイヤフラムスプリング式のクラッチ10を湿式クラッチとして使用することが可能になる。また、給油溝41を備えた円筒体42を追加することで冷却装置40を構成しているため、既存の部材に変更を加える必要が無い。さらには、従来のノズル式冷却装置のように、クラッチハウジング内に冷却油の吹き付けノズルの設置スペースを確保する必要がなくなる。
【0024】
次に、本発明の冷却装置40に関する他の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、変更箇所およびそれに関連する部位の説明に止め、図示されたその他の部材については同一符号を付して説明を省略する。図6〜図8に示す他の実施形態は、スライドガイド22の筒孔内に円筒体42が嵌入固定された嵌め合い構造において、嵌合面におけるスライドガイド22の内周面側に給油溝45を形成したものである。
冷却油供給通路としての給油溝45は、2本の軸方向に延びる細溝45aと、両細溝45aを互いに連通する径方向に延びる連絡溝45bとから形成されている。そして細溝45aの端部がレリーズベアリング33側に開口され、この開口により吹き出し口43が構成されている。また、連絡溝45bには給油管44が連通されている。この場合、給油溝45は、前述した実施の形態で説明した作業孔22a(図1参照)に連通しないように形成される。一方、スライドガイド22の筒孔内に嵌入固定される鍔42a付き円筒体42は、図8に示すように、溝を有しない円筒形状に形成されている。そして、スライドガイド22の内周面は、給油溝45を除いた全面が円筒体42の外周面に接触されている。なお、その他については、前述した実施の形態と同様に構成される。
【0025】
上記のように構成された他の実施形態によれば、前述した実施の形態と同様に、オイルを効率よくクラッチカバー14内に導入することができる。また、スライドガイド22は、一般に鋳鉄製あるいはアルミ製の鋳造製品である。したがって、スライドガイド22の成形時に給油溝45を同時に製作することができるため、製作性の面で有利である。
【0026】
フォークリフトに搭載される湿式クラッチ10の場合、前述したように、スライドガイド22には、クラッチディスク18の交換に際してインプットシャフト2をミッションケース3側へ入れ込むための作業孔22a(図1参照)を備えているが、図9に示す他の実施形態では、この作業孔を塞いでスライドガイド22の筒孔内周面とインプットシャフト2の外周面との円形空間をオイルの流通路46としたものである。そして、筒孔のミッションケース3側をシール材47によって塞ぎ、レリーズベアリング33側を開口し、この開口により吹き出し口43を構成している。上記の流通路46が本発明でいう冷却油供給通路に対応する。また、流通路46には給油管44が連通されている。したがって、上記のように構成された他の実施形態によれば、前述した実施の形態と同様、オイルを効率よくクラッチカバー14内に導入することができるとともに、円筒体42を廃止して部品点数を増加することなく、冷却油の流通路46を構成することができる。
なお、自動車の場合には、手動変速機やクラッチ等を車体から取り外した状態でクラッチディスクの交換を行うのが一般的である。このため、上述したようなスライドガイド22に作業孔を有しない構造でも成立する。
【0027】
図10に示す他の実施形態は、スライドガイド22に断面円形の給油孔48を軸方向に沿って設けるとともに、該給油孔48の端具をレリーズベアリング33側に開口したものであり、この開口により吹き出し口43が構成されている。上記の給油孔48が本発明でいう冷却油供給通路に対応する。また、給油孔48には給油管44が連通されている。したがって、この実施形態によれば、給油孔48を経てオイルをレリーズベアリング33の内周面で囲まれる空間およびダイヤフラムスプリング19の開口部19bを経てクラッチカバー14内に給油することができる。また、円筒体42が不要となるため、部品点数を増加することなく、オイルの供給通路を構成することができる。
【0028】
また、図11に示す他の実施形態は、クラッチレリーズハブ31の摺動ハブ32とスライドガイド22の摺動面において、摺動ハブ32の内周面に給油溝49を形成したものである。給油溝49は、軸方向に延びる複数本の細溝49aと、細溝49aを相互に連通する環状の連絡溝49bとから形成されており、そして、細溝49aの端部がレリーズベアリング33側に開口され、この開口により吹き出し口43が構成されている。また、摺動ハブ32にはオイルを連絡溝49bに送り込む給油管44が取り付けられている。したがって、この実施の形態においても、上述した実施の形態と同様に、給油溝49を経てオイルをレリーズベアリング33の内周面で囲まれる空間およびダイヤフラムスプリング19の開口部19bを経てクラッチカバー14内に給油することができる。なお、摺動ハブ32は、クラッチ操作時にスライドガイド22に沿って軸方向に摺動する。このため、摺動ハブ32に取り付けられる給油管44としては、可撓性のものを用いることが好ましい。
【0029】
また、図12に示す他の実施形態は、スライドガイド22とインプットシャフト2との間の隙間に噴射用のパイプ44aを配置し、そのパイプ44aに給油管44を接続することでオイルの供給通路を構成したものである。そして、パイプ44aの一端をレリーズベアリング33側に開口させ、その開口によって吹き出し口43を構成している。したがって、このような実施形態によってもオイルをクラッチカバー14内に効率良く供給することができる。
【0030】
なお、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。
例えば、上述した実施の形態では、クラッチスプリングにダイヤフラムスプリングを用いたダイヤフラムスプリング式の湿式クラッチに適用した場合で説明しているが、この形式に限らずコイルスプリングを利用したコイルスプリング式の湿式クラッチに適用できることは勿論である。
また、スライドガイド22内に円筒体42が嵌入固定される構造において、給油溝は嵌合面のいずれか一方に限らず双方に形成してもよい。また、図11に示した他の実施形態において、給油溝はスライドガイド22側に設けてもよいし、スライドガイド22側と摺動ハブ32側との双方に設けてもよい。
【0031】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、湿式クラッチにおいて、クラッチカバー内に冷却油を効率よく供給することが可能な技術を提供することができる。これにより、クラッチカバー内に収容されるクラッチディスクやプレッシャープレート等の摩擦発熱部材の冷却効果を高めて耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る冷却装置を備えたダイヤフラムスプリング式の湿式クラッチを示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】冷却油供給通路の構成部材である円筒体を示す斜視図である。
【図5】ダイヤフラムスプリングを示す正面図である
【図6】他の実施の形態を示す断面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】冷却油供給通路の構成部材である円筒体を示す斜視図である。
【図9】他の実施の形態を示す縦断面図である。
【図10】他の実施の形態を示す縦断面図である。
【図11】他の実施の形態を示す縦断面図である。
【図12】他の実施の形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10…湿式クラッチ
13…フライホイール
14…クラッチカバー
14a…開口部
17…プレッシャープレート
18…クラッチディスク
19…ダイヤフラムスプリング
31…クラッチレリーズハブ
37…レリーズベアリング
40…冷却装置
41…給油溝(冷却油供給通路)
41a…細溝
41b…連絡溝
42…円筒体
43…吹き出し口
44…給油管
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばフォークリフトのような産業車両において、内燃機関と手動変速機との間に配置され、内燃機関と手動変速機との間での動力の断続を行うために備えられる湿式クラッチに関し、詳しくはクラッチの摩擦発熱部位を冷却する冷却技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
フライホイールと、該フライホイールに固着されたクラッチカバーとによって形成される空間内に、クラッチディスクやプレシャープレートが収容されている従来の湿式クラッチには、クラッチカバーの外側でかつクラッチハウジング内に給油ノズルを配置し、その給油ノズルから冷却油をクラッチカバー内に向かって吹き付けることで、クラッチディスクおよび該クラッチディスクに加圧されるプレシャープレートやフライホイール等の摩擦発熱部位を冷却するようにした冷却装置が備えられている(例えば、特許文献1参照。)。
冷却油を給油ノズルによってクラッチカバー内に吹き付ける従来のノズル式冷却装置は、クラッチスプリングにコイルスプリングを用いたコイルスプリング式クラッチに適用されており、これは、クラッチカバーに形成された円形の開口部内周面と、レリーズベアリング外周面との間に形成される環状隙間を通して冷却油をクラッチカバーに向かって吹き付ける構成である。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−89000号公報(段落番号(0007)、図1参照)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のノズル式冷却装置の場合、給油ノズルから吹き付けられた冷却油が霧状化して放散する可能性があり、放散したときは、環状隙間を通過する油量が減少してクラッチカバー内への給油率が低下する。この霧状化現象は冷却油の油温が上昇するに伴い顕著になる。また、給油ノズルから吹き付けられる冷却油の勢いが弱い場合にも、環状隙間の通過量が減少してクラッチカバー内への給油率(到達率)が低下することになるため、ノズルからの噴出圧力を高める方策が必要になる。さらには、クラッチスプリングにダイヤフラムスプリングを用いたダイヤフラムスプリング式クラッチの場合は、ダイヤフラムスプリングがクラッチカバーの開口部を塞ぐ形で配置されること、そしてダイヤフラムスプリングを構成するために周方向に所定間隔で配置される板バネ間の隙間が狭いこと、しかもその隙間が回転すること、等の理由によって板バネ間の隙間から冷却油をクラッチカバー内に吹き付けることが実質的に困難であり、ダイヤフラムスプリング式クラッチには適用できなかった。
【0005】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、湿式クラッチにおいて、クラッチカバー内に冷却油を効率よく供給することができる技術を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本発明に係る湿式クラッチの冷却装置は、特許請求の範囲の請求項1〜4に記載の通りに構成される。また、本発明に係る湿式クラッチの冷却方法は、請求項5に記載の通りである。なお、これら各請求項に係る発明は、クラッチディスクおよびプレシャープレートが収容されたクラッチカバー内に向かって冷却油を吹き付ける吹き出し口を備えている湿式クラッチの冷却装置において、クラッチカバー内に冷却油を効率よく供給することができるようにした技術である。
【0007】
請求項1に記載の湿式クラッチの冷却装置では、吹き出し口は、クラッチの動力遮断用として配置されるレリーズベアリングの内周側に設けられている。冷却油が吹き出し口からクラッチカバー内に向かって吹き付けられるとき、冷却油が外側へ飛散あるいは流出することをレリーズベアリングの内周面によって抑えられる。すなわち、レリーズベアリングの内周面は、冷却油をクラッチカバー内に導く案内面として作用する。このため、請求項1の発明によれば、冷却油が霧状化してもあるいは吹き付け力が弱くても冷却油を効率よくクラッチカバー内に導入することが可能となり、クラッチディスク等の冷却性能を向上できる。
また、レリーズベアリングの内周側に冷却油の吹き出し口を設けたことにより、クラッチスプリングにコイルスプリングを用いたコイルスプリング式クラッチは勿論のこと、ダイヤフラムスプリングを用いたダイヤフラムスプリング式クラッチを湿式クラッチとして使用することが可能になる。また、従来のノズル式冷却装置のように、クラッチハウジング内に冷却油の吹き付けノズルの配置スペースを確保する必要がなくなる。
【0008】
この場合、請求項2に記載に記載したように、冷却油供給通路は、レリーズベアリングの内周側に配置される筒状部材に形成されていることが好ましい。一般に、レリーズベアリングの内周には、該レリーズベアリングを摺動可能に支持する筒状のスライドガイドが配置され、そのスライドガイド内をエンジン側の動力を変速機側に伝達するインプットシャフトが貫通している。したがって、これら既設の筒状部材を利用してあるいは別の筒状部材を追加設定して冷却油供給通路を構成することができる。
【0009】
また、請求項3に記載したように、冷却油供給通路は、互いに嵌合する筒状部材の嵌合面の一方または双方に形成された溝によって形成することが好ましい。このような構成を採用したときは、筒状部材に溝加工を施すことで、冷却油供給通路を簡単に形成することができる。
【0010】
また、請求項4に記載の湿式クラッチの冷却装置では、レリーズベアリングを摺動可能に支持するスライドガイドの筒孔内に筒体を嵌入固定し、その筒体とスライドガイドとの嵌合面間に冷却油供給通路を形成したことを特徴としている。このような構成によれば、筒体を追加することで、大幅な設計変更を伴うことなく冷却油供給通路を簡単に構成することができる。
【0011】
請求項5の発明に記載の湿式クラッチの冷却方法によれば、クラッチカバー内に冷却油を効率よく供給することが可能な冷却方法を提供することができる。これにより、クラッチディスク等の冷却性能を向上できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る湿式クラッチの冷却装置を図1〜図5に基づいて説明する。本実施の形態は、フォークリフトのような産業車両に用いられるダイヤフラムスプリング式の湿式クラッチに適用したものである。図1は本実施の形態に係る冷却装置を備えたダイヤフラムスプリング式の湿式クラッチを示す縦断面図であり、図2は図1のII−II線断面図であり、図3は図2のIII−III線断面図であり、図4は冷却油供給通路の構成部材である円筒体を示す斜視図であり、図5はダイヤフラムスプリングを示す正面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施の形態に係る湿式クラッチ10は、クラッチスプリングにダイヤフラムスプリングを用いたダイヤフラムスプリング式であり、内燃機関と手動変速機との間に配置され、内燃機関のクランクシャフト1から手動変速機のインプットシャフト2へ伝達される動力を断続するために用いられる。湿式クラッチ10のクラッチハウジング11は、一方(前側)が内燃機関のクランクケース(図示省略)に接合され、他方(後側)が変速機のミッションケース3に接合される。また、クラッチハウジング11は、上部にサービス作業用の開口11aを有しており、この開口11aは通常時にはアッパカバー12によって塞がれている。
クラッチハウジング11内において、クランクシャフト1の端部には、フライホイール13が固着されており、このフライホイール13にクラッチカバー14が周方向の複数箇所を取付ボルト15で固着されている。また、フライホイール13のカバー取付面には、周方向の複数箇所に位置決め用としてのノックピン16が突設され、このノックピン16にクラッチカバー14に設けた貫通孔が嵌合されている。
【0014】
フライホイール13とクラッチカバー14とによって形成される空間Sには、クラッチディスク18およびプレッシャープレート17が収容されている。クラッチカバー14には、プレッシャープレート17を介してクラッチディスク18をフライホイール13に押し付けるためのクラッチスプリングとしてダイヤフラムスプリング19が備えられている。また、クラッチカバー14は、中央部に円形の開口部14aを有している。
ダイヤフラムスプリング19は、径方向の中間部位をスプリングリテーナ20で保持された状態で外周部分がプレッシャープレート17に当接している。ダイヤフラムスプリング19は、図5に示すように、複数枚の板バネ19aを周方向に所定間隔Cを置いて配置することで全体として円盤状をなすように形成されており、各板バネ19aの内周側がクラッチカバー14の開口部14a側に延びるとともに、内周中央部に円形の開口部19bを形成している。
【0015】
クラッチディスク18のボス部18aは、インプットシャフト2にスプライン嵌合されており、インプットシャフト2に対し周方向には固定され、軸方向には摺動可能とされている。インプットシャフト2は、クランクシャフト1と同心的に配置されており、フライホイール13側のフロントベアリング21およびミッションケース3側のリヤベアリング(図示省略)によって回転可能に支持されている。
上記のように、クラッチディスク18は、常にはダイヤフラムスプリング19によってプレッシャープレート17を介してフライホイール13に押し付けられており、この状態が湿式クラッチ10の接続状態であり、クランクシャフト1の駆動力は、フライホイール13からクラッチカバー14およびクラッチディスク18を経てインプットシャフト2に伝達される。上記のフライホイール13、クラッチカバー14、クラッチディスク18、ダイヤフラムスプリング19、プレッシャープレート17等により動力伝達部が構成されている。
【0016】
また、湿式クラッチ10には、クラッチペダル(図示省略)の足踏み操作によって動力伝達部の動力伝達を遮断する(クラッチを切る)ためのクラッチレリーズ機構30が備えられている。図1にはクラッチレリーズ機構30を構成する構成部材のうちのクラッチレリーズハブ31が示され、その他の構成部材であるクラッチレリーズフォークやクラッチレリーズシリンダ等については図示が省略されている。
クラッチレリーズハブ31は、インプットシャフト2と同心的に配置された円筒形のスライドガイド22の外周に軸方向に摺動可能にかつ回転可能に取り付けられている。スライドガイド22は、ミッションケース3側にボルト23で固定され、インプットシャフト2に対しては適宜隙間を置いて遊嵌されている。すなわち、インプットシャフト2は、スライドガイド22を貫通してミッションケース3側に延びている。クラッチレリーズハブ31は、スライドガイド22に摺動可能に嵌合する摺動ハブ32と、該摺動ハブ32の軸方向の前端部に回転可能に組み付けられたレリーズベアリング33とから構成されている。レリーズベアリング33の軸方向の一端面は、ダイヤフラムスプリング19の開口部19bの周縁部分に当接し、摺動ハブ32とダイヤフラムスプリング19との相対回転差を吸収する。なお、図5にはダイヤフラムスプリング19に対するレリーズベアリング33の当接位置が2点鎖線で示されている。
【0017】
そして、クラッチレリーズハブ31は、クラッチペダルの足踏み操作に伴い作動されるクラッチレリーズシリンダからクラッチレリーズフォークを介してダイヤフラムスプリング側に向かって移動(前進)され、レリーズベアリング33によってダイヤフラムスプリング19の内周側を加圧する。このため、ダイヤフラムスプリング19は、スプリングリテーナ20による保持部を支点として外周側がクラッチディスク18から離れる方向へ変位し、フライホイール13に対するクラッチディスク18の押し付けが解除される。このようにして湿式クラッチ10の動力伝達が遮断されることになる。すなわち、クラッチレリーズハブ31は、クラッチペダル操作に基づき前進してクラッチを切る。
【0018】
次に、上述のように構成されたダイヤフラムスプリング式の湿式クラッチ10において、動力伝達の断続作用に基づき発熱を伴う摩擦発熱部材としての、クラッチディスク18、プレッシャープレート17およびフライホイール13を冷却するために設けられる冷却装置40を図2〜図4に基づいて説明する。この冷却装置40は、冷却油としてのオイルをクラッチカバー14内に供給する給油溝41を主体に構成されている。給油溝41は、図4に示すような鍔付き円筒体42の外周面に形成されており、円筒体42をスライドガイド22の筒孔内に嵌入固定することでオイルの流通路を構成する。給油溝41は、円筒体42の軸方向に沿ってクラッチカバー14側に延びる左右(もしくは上下)2本の細溝41aと、両細溝41aを相互に連通させるための鍔42a側に形成された周方向に延びる連絡溝41bとから形成されている。そして、両細溝41aの他端がクラッチレリーズハブ31におけるレリーズベアリング33の内周側に開口され、この開口により吹き出し口43が構成されている。円筒体42の外周面は、給油溝41を除いた全面がスライドガイド22の内周面に接触され、また鍔42aがスライドガイド22の鍔部に接触されている。このことにより、オイルは給油溝41によって導かれ、吹き出し口43からクラッチカバー14側に吹き出される。上記の円筒体42およびスライドガイド22が本発明でいう筒状部材に対応し、給油溝41が本発明でいう冷却油供給通路に対応する。
【0019】
円筒体42は、例えば鉄管または鋼管等の金属管からなり、プレス加工で所定形状に加工される。なお、スライドガイド22には、クラッチディスク18を交換する際に、インプットシャフト2をミッションケース3側へスライドさせる作業を行うための作業孔22aが形成されている。この作業孔22aを通して行われる上記のインプットシャフト2のスライド作業を可能とするするために、円筒体42には、作業孔22aに対応する位置に同程度の大きさの切欠き42bが形成されている。
【0020】
スライドガイド22にはオイルの給油管44が接続されており、この給油管44を経て給油溝41の連絡溝41bに冷却用のオイルが導入されるようになっている。なお、湿式クラッチの冷却に用いられるオイルは、フォークリフトの場合、荷役作業用油圧アクチュエータの駆動に用いられる作動油であり、作動油タンクから油圧ポンプで汲み上げられ、所定の経路を経た後、給油管44へ送り込まれるようになっている。
【0021】
本実施の形態に係る冷却装置40は、上記のように構成したものである。給油管44から送り込まれたオイルは、給油溝41の連絡溝41bに流入後、細溝41aを通って吹き出し口43から吹き出される(図2参照)。
吹き出し口43はレリーズベアリング33の内周面に対して平行に開口されている。そして、レリーズベアリング33は、ダイヤフラムスプリング19の開口部19bの周縁部に当接されている。このため、吹き出し口43から吹き出されたオイルは、レリーズベアリング33の内周面で囲まれる空間を経てダイヤフラムスプリング19の開口部19bからクラッチカバー14内に供給される。すなわち、レリーズベアリング33の内周面は、吹き出し口43から吹き出されたオイルをクラッチカバー14内に導く案内面として作用することになる。このため、オイルが霧状化してもあるいは吹き出し力が弱くてもオイルを効率よくクラッチカバー14内に導入することができる。
【0022】
上記のようにして、クラッチカバー14内に供給されたオイルは、クラッチディスク18、プレッシャープレート17、フライホイール13等の、クラッチカバー14内に収容された各収容部材を冷却する。そして、クラッチカバー14内のオイルは、図示はしないが、該クラッチカバー14に外周面部に形成された孔あるいはスリットからクラッチハウジング11内へ流出してハウジング底に集められる。なお、クラッチハウジング11内のオイルは、例えばクラッチカバー14やフライホイール13の回転により掻き揚げて該クラッチカバー14に形成された排出口を経て作動油タンクへ戻したり、あるいはエジェクタにより汲み上げられて作動油タンクに戻される。
【0023】
また、本実施の形態では、レリーズベアリング33の内周側に冷却油の吹き出し口43を設けたことにより、ダイヤフラムスプリング19を用いたダイヤフラムスプリング式のクラッチ10を湿式クラッチとして使用することが可能になる。また、給油溝41を備えた円筒体42を追加することで冷却装置40を構成しているため、既存の部材に変更を加える必要が無い。さらには、従来のノズル式冷却装置のように、クラッチハウジング内に冷却油の吹き付けノズルの設置スペースを確保する必要がなくなる。
【0024】
次に、本発明の冷却装置40に関する他の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、変更箇所およびそれに関連する部位の説明に止め、図示されたその他の部材については同一符号を付して説明を省略する。図6〜図8に示す他の実施形態は、スライドガイド22の筒孔内に円筒体42が嵌入固定された嵌め合い構造において、嵌合面におけるスライドガイド22の内周面側に給油溝45を形成したものである。
冷却油供給通路としての給油溝45は、2本の軸方向に延びる細溝45aと、両細溝45aを互いに連通する径方向に延びる連絡溝45bとから形成されている。そして細溝45aの端部がレリーズベアリング33側に開口され、この開口により吹き出し口43が構成されている。また、連絡溝45bには給油管44が連通されている。この場合、給油溝45は、前述した実施の形態で説明した作業孔22a(図1参照)に連通しないように形成される。一方、スライドガイド22の筒孔内に嵌入固定される鍔42a付き円筒体42は、図8に示すように、溝を有しない円筒形状に形成されている。そして、スライドガイド22の内周面は、給油溝45を除いた全面が円筒体42の外周面に接触されている。なお、その他については、前述した実施の形態と同様に構成される。
【0025】
上記のように構成された他の実施形態によれば、前述した実施の形態と同様に、オイルを効率よくクラッチカバー14内に導入することができる。また、スライドガイド22は、一般に鋳鉄製あるいはアルミ製の鋳造製品である。したがって、スライドガイド22の成形時に給油溝45を同時に製作することができるため、製作性の面で有利である。
【0026】
フォークリフトに搭載される湿式クラッチ10の場合、前述したように、スライドガイド22には、クラッチディスク18の交換に際してインプットシャフト2をミッションケース3側へ入れ込むための作業孔22a(図1参照)を備えているが、図9に示す他の実施形態では、この作業孔を塞いでスライドガイド22の筒孔内周面とインプットシャフト2の外周面との円形空間をオイルの流通路46としたものである。そして、筒孔のミッションケース3側をシール材47によって塞ぎ、レリーズベアリング33側を開口し、この開口により吹き出し口43を構成している。上記の流通路46が本発明でいう冷却油供給通路に対応する。また、流通路46には給油管44が連通されている。したがって、上記のように構成された他の実施形態によれば、前述した実施の形態と同様、オイルを効率よくクラッチカバー14内に導入することができるとともに、円筒体42を廃止して部品点数を増加することなく、冷却油の流通路46を構成することができる。
なお、自動車の場合には、手動変速機やクラッチ等を車体から取り外した状態でクラッチディスクの交換を行うのが一般的である。このため、上述したようなスライドガイド22に作業孔を有しない構造でも成立する。
【0027】
図10に示す他の実施形態は、スライドガイド22に断面円形の給油孔48を軸方向に沿って設けるとともに、該給油孔48の端具をレリーズベアリング33側に開口したものであり、この開口により吹き出し口43が構成されている。上記の給油孔48が本発明でいう冷却油供給通路に対応する。また、給油孔48には給油管44が連通されている。したがって、この実施形態によれば、給油孔48を経てオイルをレリーズベアリング33の内周面で囲まれる空間およびダイヤフラムスプリング19の開口部19bを経てクラッチカバー14内に給油することができる。また、円筒体42が不要となるため、部品点数を増加することなく、オイルの供給通路を構成することができる。
【0028】
また、図11に示す他の実施形態は、クラッチレリーズハブ31の摺動ハブ32とスライドガイド22の摺動面において、摺動ハブ32の内周面に給油溝49を形成したものである。給油溝49は、軸方向に延びる複数本の細溝49aと、細溝49aを相互に連通する環状の連絡溝49bとから形成されており、そして、細溝49aの端部がレリーズベアリング33側に開口され、この開口により吹き出し口43が構成されている。また、摺動ハブ32にはオイルを連絡溝49bに送り込む給油管44が取り付けられている。したがって、この実施の形態においても、上述した実施の形態と同様に、給油溝49を経てオイルをレリーズベアリング33の内周面で囲まれる空間およびダイヤフラムスプリング19の開口部19bを経てクラッチカバー14内に給油することができる。なお、摺動ハブ32は、クラッチ操作時にスライドガイド22に沿って軸方向に摺動する。このため、摺動ハブ32に取り付けられる給油管44としては、可撓性のものを用いることが好ましい。
【0029】
また、図12に示す他の実施形態は、スライドガイド22とインプットシャフト2との間の隙間に噴射用のパイプ44aを配置し、そのパイプ44aに給油管44を接続することでオイルの供給通路を構成したものである。そして、パイプ44aの一端をレリーズベアリング33側に開口させ、その開口によって吹き出し口43を構成している。したがって、このような実施形態によってもオイルをクラッチカバー14内に効率良く供給することができる。
【0030】
なお、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。
例えば、上述した実施の形態では、クラッチスプリングにダイヤフラムスプリングを用いたダイヤフラムスプリング式の湿式クラッチに適用した場合で説明しているが、この形式に限らずコイルスプリングを利用したコイルスプリング式の湿式クラッチに適用できることは勿論である。
また、スライドガイド22内に円筒体42が嵌入固定される構造において、給油溝は嵌合面のいずれか一方に限らず双方に形成してもよい。また、図11に示した他の実施形態において、給油溝はスライドガイド22側に設けてもよいし、スライドガイド22側と摺動ハブ32側との双方に設けてもよい。
【0031】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、湿式クラッチにおいて、クラッチカバー内に冷却油を効率よく供給することが可能な技術を提供することができる。これにより、クラッチカバー内に収容されるクラッチディスクやプレッシャープレート等の摩擦発熱部材の冷却効果を高めて耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態に係る冷却装置を備えたダイヤフラムスプリング式の湿式クラッチを示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】冷却油供給通路の構成部材である円筒体を示す斜視図である。
【図5】ダイヤフラムスプリングを示す正面図である
【図6】他の実施の形態を示す断面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】冷却油供給通路の構成部材である円筒体を示す斜視図である。
【図9】他の実施の形態を示す縦断面図である。
【図10】他の実施の形態を示す縦断面図である。
【図11】他の実施の形態を示す縦断面図である。
【図12】他の実施の形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10…湿式クラッチ
13…フライホイール
14…クラッチカバー
14a…開口部
17…プレッシャープレート
18…クラッチディスク
19…ダイヤフラムスプリング
31…クラッチレリーズハブ
37…レリーズベアリング
40…冷却装置
41…給油溝(冷却油供給通路)
41a…細溝
41b…連絡溝
42…円筒体
43…吹き出し口
44…給油管
Claims (5)
- クラッチディスクおよびプレッシャープレートが収容されたクラッチカバー内に冷却油を吹き付ける吹き出し口を備えている湿式クラッチの冷却装置であって、
前記吹き出し口は、クラッチの動力遮断用として配置されるレリーズベアリングの内周側に設けられていることを特徴とする湿式クラッチの冷却装置。 - 請求項1に記載の湿式クラッチの冷却装置であって、前記吹き出し口に冷却油を導く冷却油供給通路が、前記レリーズベアリングの内周側に配置された筒状部材に形成されていることを特徴とする湿式クラッチの冷却装置。
- 請求項2に記載の湿式クラッチの冷却装置であって、前記冷却油供給通路は、互いに嵌合する筒状部材の嵌合面の一方または双方に形成された給油溝によって形成されていることを特徴とする湿式クラッチの冷却装置。
- 請求項2または3に記載の湿式クラッチの冷却装置であって、前記冷却油供給通路は、前記レリーズベアリングを摺動可能に支持する筒状のスライドガイドと、該スライドガイドの筒孔内に嵌入された筒体との嵌合面間に形成されていることを特徴とする湿式クラッチの冷却装置。
- クラッチディスクおよびプレッシャープレートが収容されたクラッチカバー内に向かって冷却油を吹き付ける吹き出し口を備えている湿式クラッチの冷却方法であって、
前記吹き出し口は、クラッチの動力遮断用として配置されるレリーズベアリングの内周側に設けられており、この吹き出し口から前記クラッチカバー内に冷却油を吹き付けることにより前記クラッチディスクおよびプレッシャープレートを冷却することを特徴とする湿式クラッチの冷却方法。
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Cited By (2)
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CN104895948B (zh) * | 2015-04-02 | 2017-06-30 | 遵义宏港机械有限公司 | 一种自降温膜片弹簧离合器 |
-
2002
- 2002-11-22 JP JP2002339514A patent/JP2004169885A/ja active Pending
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WO2010029573A3 (en) * | 2008-08-11 | 2010-05-06 | Deere & Company | Integrated wet clutch and damper assembly for a transmission and oil management system thereof |
CN104895948B (zh) * | 2015-04-02 | 2017-06-30 | 遵义宏港机械有限公司 | 一种自降温膜片弹簧离合器 |
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