JP2004169809A - 伝動ベルトの振れ防止装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ラジエータファン駆動装置1において、クランクプーリ4とファンプーリ5とに亘って架け渡されたファンベルト6の緩み側スパンS1に対向して振れ防止装置9を配設する。この振れ防止装置9は、回転自在に支持され且つファンベルト6に大きな振れが発生していない状態ではこのファンベルト6に接触しない位置に配設された一対の回転子93,93を備えている。ファンベルト6に大きな振れが発生した際、ファンベルト6は回転子93,93に接触し、それ以上の振れ量で振れることが阻止され、ファンベルト6がプーリ4,5から外れてしまうことは回避される。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファンベルト等に代表される伝動ベルトの振れを防止するための装置に係る。特に、本発明は、伝動ベルトの共振による振れ(ばたつき)を確実に抑制するための改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば産業機械用や自動車用のエンジンにおけるラジエータファンの駆動装置としては、例えば下記の特許文献1に開示されているように、クランク軸に取り付けられた駆動側プーリと、ラジエータファンに取り付けられた従動側プーリとにファンベルトが架け渡されて構成され、エンジンの運転に伴うクランク軸の回転駆動力がファンベルトを経てラジエータファンに伝達されるようになっている。
【0003】
ところで、このファンベルトにあっては、ベルト走行中に共振点に達すると大きな振れが生じてしまい、場合によってはプーリから外れてしまう虞があった。
【0004】
特に、近年、エンジン性能向上のために補機類が増加するなど、トルク変動が増大する傾向にあり、このトルク変動に同期してファンベルトが大きく振れ、プーリから外れてしまう可能性がある。
【0005】
この不具合を回避するために、従来では以下の手段が一般に採用されている。
(1)プーリに対するベルトの位置ずれを強制的に阻止するために、プーリ外周面に形成されているベルト溝の両端に堰(フランジ)を設けておき、この堰によってベルトがプーリ軸心方向へずれないようにしている(下記特許文献2参照)。
(2)ベルト張力を調整するためのテンションプーリを配設し、このテンションプーリによってベルト表面を常時押さえ込むことでベルトの振れを防止している(下記特許文献3参照)。
(3)プーリ間のベルトスパンにアイドラを接触させておき、上記テンションプーリの場合と同様にベルトの振れを防止している(下記特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−186550号公報
【特許文献2】
特開平9−242849号公報
【特許文献3】
特開平8−166057号公報
【特許文献4】
特開平11−324698号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した各解決手段では、ファンベルトの振れを防止するための部材である、堰(フランジ)、テンションプーリ、アイドラはファンベルトに常時接触しており、このため、ベルトの走行抵抗が大きく、動力損失を招くものであった。
【0008】
加えて、上記(1)の手段では、ファンベルトの共振現象が著しく大きくなった場合、ベルトが堰を乗り越えてしまってファンベルトがプーリから外れてしまう可能性を残している。また、ファンベルトに大きな振れが生じている状態が長時間継続されてしまった場合には、このファンベルトの劣化が著しくなり、早期に切断してしまうといった不具合もある。
【0009】
また、上記(2),(3)の手段では、比較的大きなベルト張力がテンションプーリやアイドラに作用することになるため、これらの取り付け部及び軸受け部に高い強度が要求されることになる。特に、駆動馬力の大きな補機類を駆動するものにあっては、この取り付け部及び軸受け部にもかなり高い強度が必要とされる。その結果、特殊な軸受け構造を採用したり、軸受けの交換頻度が多くなったりしてコストの高騰を招いてしまうことになる。
【0010】
以上の不具合は、ラジエータファンの駆動装置に限らず、エンジンの各種補機類(冷却水ポンプ、オルタネータ等)の駆動装置においても同様に生じるものである。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、プーリ間に架け渡された伝動ベルトの走行抵抗を大きくすることなしに、ベルトがプーリから外れてしまうといった現象を確実に阻止することが可能な振れ防止装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
−発明の概要−
上記の目的を達成するために、本発明では、伝動ベルトに近接した位置に振れ防止部材を配設している。この振れ防止部材の配設位置としては、通常状態(伝動ベルトに大きな振れが発生していない状態)では伝動ベルトに接触せず、伝動ベルトに大きな振れが発生する状態のときにのみ伝動ベルトの外面に接触する位置に設定されている。これにより、上記通常状態では、伝動ベルトの走行抵抗を低減することができ、伝動ベルトに大きな振れが発生する状態では、伝動ベルトの振れ量を抑制することができるようにしている。
【0013】
−解決手段−
具体的には、複数のプーリ間に架け渡された伝動ベルトの振れを防止するための振れ防止装置を前提とする。この振れ防止装置において、伝動ベルトが非走行状態にあるときにその伝動ベルトとの間に所定間隔を存する位置に配設され、伝動ベルトの走行に伴ってその伝動ベルトに所定量以上の振れが発生したときには伝動ベルトに接触してこの振れを抑制する振れ防止部材を備えさせている。
【0014】
この特定事項により、伝動ベルト走行中において共振点または共振点付近に達していないときには、その伝動ベルトには振れが発生していないかまたは発生していたとしてもその振れ量は僅かである。この状態では、伝動ベルトは振れ防止部材には接触しない。このため、伝動ベルトの走行抵抗は低く抑えられており動力損失は僅かである。
【0015】
そして、伝動ベルトの走行が共振点または共振点付近に達すると、その伝動ベルトには大きな振れが発生し、その外面が振れ防止部材に接触する。この接触により伝動ベルトは振れが抑制され、それ以上の振れ量で振れることはない。つまり、振れ防止部材の配設位置によってその箇所での伝動ベルトの最大振れ量は規制されることになる。このため、この振れ防止部材の配設位置まで伝動ベルトが振れたとしても伝動ベルトがプーリから外れないような位置にこの振れ防止部材の配設位置を予め設定しておけば、伝動ベルトの走行が共振点に達したとしても伝動ベルトがプーリから外れてしまうことはない。
【0016】
上記振れ防止部材の好ましい配設位置として以下の位置が掲げられる。つまり、伝動ベルトのプーリ間スパンのうち一部のスパンを張り側スパンとし、他の一部のスパンを緩み側スパンとしたときに、上記振れ防止部材を緩み側スパンに対向して配設するものである。また、この振れ防止部材を、伝動ベルトのプーリ間スパンの長手方向の略中間位置に配設するものである。
【0017】
伝動ベルトがプーリから外れる際の外れ開始位置は、伝動ベルトの緩み側スパンである。このため、振れ防止部材は、少なくともこの緩み側スパンに対向して配設しておくことが好ましい。尚、張り側スパンに対向して配設した場合には、この張り側スパンに発生する振れを抑制することが可能であるが、伝動ベルトの緩み側スパンと張り側スパンとのそれぞれの振れ量を比較した場合、一般的には緩み側スパンの振れ量の方が大きい。このため、本発明を実機に適用する場合、振れ防止部材を一箇所にのみ配設するのであれば緩み側スパンに対向して配設し、振れ防止部材を二箇所以上に配設するのであれば緩み側スパンに対向する位置と張り側スパンに対向する位置とに配設することになる。
【0018】
また、伝動ベルトのプーリ間スパンの長手方向の何れの位置に振れ防止部材を配設するのが最も好ましいかを考えた場合、このプーリ間スパンの長手方向の略中間位置に配設すれば、このプーリ間スパンの略全体に亘って伝動ベルトの振れを抑制する効果を得ることができるため、この位置が最も好ましい。また、伝動ベルトがプーリから外れる際の外れ開始位置は、伝動ベルトの緩み側スパンであって、且つ従動側プーリの近傍であることが多い。このため、この従動側プーリの近傍に振れ防止部材を配設するようにしてもよい。
【0019】
次に、振れ防止部材のより具体的な構成について説明する。先ず、振れ防止部材は、伝動ベルトの走行方向に沿って回転自在な回転体で構成されている。また、この回転体は、その回転軸方向で分割されて複数の回転子により構成されており、個々の回転子が互いに独立して回転自在に支持されている。そして、プーリ間に複数本の伝動ベルトが架け渡されている場合には、回転体を構成する複数の回転子は、各伝動ベルトに個別に対向する位置に配設されていることが好ましい。
【0020】
上述した如く、振れ防止部材は、伝動ベルトの走行方向に沿って回転自在な回転体で構成されているため、伝動ベルトの振れ量が大きくなって回転体に接触した場合には、その接触力によって回転体は伝動ベルトの走行方向に沿って回転する。この回転により、伝動ベルトは振れ防止部材に摺動せず、伝動ベルトが振れ防止部材に接触することによる抵抗力は緩和され、この伝動ベルトの走行抵抗が著しく高くなってしまうといったことはない。また、回転体を回転軸方向で分割して複数の回転子により構成した場合には、伝動ベルトが片当たりしたり複数の伝動ベルトのうちの一部が回転体に接触した場合に回転する回転子は、伝動ベルトが接触した回転子のみとなる。このため、回転する物体の慣性を低くして回転を容易にし、伝動ベルトが振れ防止部材に接触することによる抵抗力を大幅に緩和することができる。
【0021】
更に、振れ防止部材において伝動ベルトが接触する面に、この伝動ベルトとの間での摩擦力を低減させる表面処理を施した場合には、上記接触による伝動ベルトの走行抵抗をいっそう低く抑えることができ、動力損失の更なる削減を図ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、発電機用エンジンにおけるラジエータファン駆動装置に本発明を適用した場合について説明する。
【0023】
−ラジエータファン駆動装置の全体構成の説明−
図1は本実施形態におけるラジエータファン駆動装置1の正面図(ラジエータファン2を仮想線で示している)、図2は図1におけるII−II線に沿った断面図(ラジエータファン2の取り付け部分を断面で示している)、図3は図1におけるIII−III線に沿った断面図である。
【0024】
これら図に示すように、ラジエータファン駆動装置1は、エンジン3(図2及び図3では仮想線で示している)から延びるクランク軸31に取り付けられた駆動側プーリとしてのクランクプーリ4と、ラジエータファン2に取り付けられた従動側プーリとしてのファンプーリ5とに亘ってファンベルト6,6,6(Vリブドベルトにより構成されている)が架け渡されて構成されている。つまり、エンジン3の運転に伴うクランク軸31の回転駆動力がファンベルト6,6,6を経てラジエータファン2に伝達されるようになっている。以下、ラジエータファン駆動装置1の各部の構成について詳しく説明する。
【0025】
上記クランクプーリ4は、クランク軸31の先端部に、このクランク軸31と回転一体に取り付けられている。また、このクランクプーリ4の外周面には、上記ファンベルト6,6,6が掛けられるファンベルト用V溝、ウォータポンプ7を駆動するためのベルト71,71が掛けられるウォータポンプ用V溝、オルタネータ8を駆動するためのベルト81が掛けられるオルタネータ用V溝がそれぞれ形成されている。
【0026】
ファンベルト用V溝は、3個のV溝が併設されて成る。つまり、本ラジエータファン駆動装置1では3本のファンベルト6,6,6が併設され、これらがクランクプーリ4のファンベルト用V溝にそれぞれ掛けられている。
【0027】
また、ウォータポンプ用V溝は2個のV溝で成り、オルタネータ用V溝は1個のV溝で成っている。つまり、ウォータポンプ用のベルト71,71(Vベルトにより構成されている)は2本併設され、これらがウォータポンプ用V溝にそれぞれ掛けられている。更に、オルタネータ用のベルト81(Vベルトにより構成されている)は1本のみが設けられ、これがオルタネータ用V溝に掛けられている。
【0028】
一方、ファンプーリ5は、図2に示すように、ラジエータファン2が回転一体に取り付けられている。また、このファンプーリ5には、上記ファンベルト6,6,6が掛けられるファンベルト用V溝が形成されている。このファンベルト用V溝も3個のV溝が併設されて成っており、上記3本のファンベルト6,6,6が掛けられている。
【0029】
同様に、ウォータポンプ7に設けられたプーリ72にはベルト71,71が、オルタネータ8に設けられたプーリ82にはベルト81がそれぞれ掛けられている(図1参照)。
【0030】
このような構成により、エンジン3が駆動すると、クランク軸31の回転に伴ってクランクプーリ4が図1における時計回り方向に回転し、その回転駆動力は各ベルト6,71,81によって各補機類に伝達される。つまり、クランク軸31の回転駆動力により、ラジエータファン2、ウォータポンプ7、オルタネータ8がそれぞれ駆動するようになっている。このとき、ファンベルト6は図1中左側のスパンS1が緩み側スパンとなり、図1中右側のスパンS2が張り側スパンとなる。尚、上記ウォータポンプ用のベルト71の内面にはテンションプーリ73が当接されており、このベルト71に所定のテンションが付与されている。
【0031】
−振れ防止装置9の説明−
次に、本形態の特徴とする装置である振れ防止装置9について説明する。この振れ防止装置9は、上記クランクプーリ4とファンプーリ5とに亘って架け渡されたファンベルト6の共振現象による振れを抑制するための装置であって、図1に示すように、ウォータポンプ7の上端フランジ74に移動不能にボルト止めされている。以下、この振れ防止装置9の構成について説明する。
【0032】
図4は、この振れ防止装置9を示しており、図4(a)は一部を破断した平面図、図4(b)は正面図、図4(c)は側面図である。
【0033】
これら図に示すように、振れ防止装置9は、ベースプレート91、回転子支持パイプ92、振れ防止部材としての一対の回転子93,93を備えている。
【0034】
ベースプレート91は、金属製板材が曲げ加工されて形成されており、水平板部91aと、この水平板部91aの両側から上方に立ち上がるフランジ部91b,91bとを備えている。
【0035】
水平板部91aの両側(図4(a)における左右両側)には、この振れ防止装置9をウォータポンプ7の上端フランジ74にボルト止めするための長孔91c,91cが形成されている。
【0036】
また、このベースプレート91のフランジ部91b,91bの先端(図4(c)における右端)近傍位置には水平方向(図4(b)の左右方向)に貫通する貫通孔91d,91dがそれぞれ形成されている。
【0037】
回転子支持パイプ92は、上記各フランジ部91b,91bの先端同士の間に配設されており、上記貫通孔91d,91dに亘って挿通されたボルト部材94が内部に挿通されている。つまり、このボルト部材94は、一方のフランジ部91bの貫通孔91d、回転子支持パイプ92の内部、他方のフランジ部91bの貫通孔91dに亘って挿通され、その先端にナット94aが螺着されている。これにより、回転子支持パイプ92を一対のフランジ部91b,91bの間で位置決めしている。
【0038】
各回転子93,93は、金属製のローラ部材で構成されており、それぞれが一対のベアリング93a,93aを介して回転子支持パイプ92に対して回転自在に支持されている。つまり、各回転子93,93は、回転子支持パイプ92の軸心を回転中心として回転自在に支持されている。
【0039】
そして、本形態の最も特徴とするところは、この振れ防止装置9の配設位置、つまり、各回転子93,93の配設位置にある。上述した如く、この振れ防止装置9は、ベースプレート91の水平部91aに形成されている長孔91c,91cにボルトB,Bが挿通されて、ウォータポンプ7の上端フランジ74にボルト止めにより固定されている。これにより、図1及び図3に示すように、各回転子93,93は、その軸心方向が、クランクプーリ4の回転中心軸及びファンプーリ5の回転中心軸と平行で、且つファンベルト6の緩み側スパンS1の背面に対して小間隙を存した位置に配置される。これにより、通常状態(ファンベルト6に大きな振れが発生していない状態)ではこのファンベルト6に接触せず、ファンベルト6に大きな振れが発生する状態ではこのファンベルト6の背面に接触する位置に設定されていることになる。
【0040】
具体的に、この各回転子93,93と停止状態にあるファンベルト6の背面との間隔寸法は数mm程度に設定されている。この値は特に限定されるものではないが、共振現象によって振れが発生したファンベルト6がファンプーリ5やクランクプーリ4から外れてしまう前に、このファンベルト6の背面が回転子93,93に接触し、それ以上の振れを生じさせないような間隔寸法に設定しておく必要がある。
【0041】
尚、上述した如く、ベースプレート91の水平板部91aには長孔91c,91cが形成されているため、ベースプレート91は、ウォータポンプ7の上端フランジ74に対するボルト止め位置を微調整することが可能であり、これによって上記間隔寸法を最適値に調整することが可能となっている。
【0042】
このようにファンベルト6の背面に対して小間隙を存した位置に振れ防止装置9を配設したため、以下に述べる作用が得られる。
【0043】
つまり、ファンベルト6の停止中(エンジン3の停止中)、ファンベルト6の走行中において共振点または共振点付近に達していないときには、そのファンベルト6には振れが発生していないかまたは発生していたとしてもその振れ量は僅かである。この状態では、ファンベルト6は振れ防止部材9の回転子93,93には接触しない。このため、ファンベルト6の走行抵抗は低く抑えられており動力損失が僅かな運転状態が実現できる。
【0044】
一方、ファンベルト6の走行が共振点または共振点付近に達すると、そのファンベルト6には大きな振れが発生し、その外面が振れ防止部材9の回転子93,93に接触する。この接触によりファンベルト6は振れが抑制され、それ以上の振れ量で振れることがなくなる。つまり、回転子93,93が配設されていることによってその箇所でのファンベルト6の最大振れ量は規制されることになる。このため、この振れ防止部材9の配設位置(回転子93,93の配設位置)までファンベルト6が振れたとしてもファンベルト6がファンプーリ5やクランクプーリ4から外れないような位置にこの振れ防止部材9の配設位置を予め設定しておけば、ファンベルト6の走行が共振点に達したとしてもファンベルト6がプーリ4,5から外れてしまうことは回避できる。
【0045】
その結果、ファンベルト6の走行抵抗をできる限り低く抑えながらも、ファンベルト6がファンプーリ5やクランクプーリ4から外れてしまうことを確実に回避することができ、ラジエータ駆動装置1の信頼性の向上を図ることができる。
【0046】
また、ファンベルト6に大きな振れが生じている状態が長時間継続されしまうといった状況を回避できるので、ファンベルト6の劣化を遅延させることができ、その長寿命化(例えば従来のものに比べて3倍の長寿命化)を図ることもできる。これにより、ファンベルト6の交換頻度が低減でき、メンテナンス作業の簡素化及びランニングコストの低廉化を図ることができる。
【0047】
加えて、振れ防止装置9にはファンベルト6が接触したときにのみその張力が作用するため、ウォータポンプ7の上端フランジ74に対する振れ防止装置9の取り付け強度や回転子93,93の軸受け部の強度としては高い強度は要求されない。このため、比較的簡素な構成でファンベルト6のプーリ4,5からの外れを回避することができる。
【0048】
また、このようにファンベルト6の振れを抑制してファンベルト6がプーリ4,5から外れてしまうことを回避できるので、各プーリ4,5には、従来技術にあっては必要とされていたベルト溝両端の堰(フランジ)が必要なくなる。図5(a)は本形態に係るクランクプーリ4のベルト溝41周辺部の断面図であり、図5(b)は本形態に係るファンプーリ5のベルト溝51周辺部の断面図である。尚、各図では、従来技術で必要とされていた堰Dを仮想線で示している。このように本形態の構成では、ベルト溝の両端の堰が必要ないため、各プーリ4,5の加工を容易に行うことができる。
【0049】
また、本形態では、回転子93,93がファンベルト6の緩み側スパンS1に対向するように振れ防止装置9を配設している。このため、特にファンベルト6がファンプーリ5から外れる際の外れ開始位置となりやすい緩み側スパンS1の振れ量を抑えることができて有効である。
【0050】
また、本形態では、回転子93,93がファンベルト6のプーリ間スパンの長手方向の略中間位置(クランクプーリ4とファンプーリ5の軸心間の略中央位置)に対向するように振れ防止装置9を配設している。これによれば、プーリ間スパンの略全体に亘ってファンベルト6の振れを抑制する効果を得ることができて有効である。
【0051】
更に、本形態では、ファンベルト6の走行方向に沿って互いに独立して回転自在な複数の回転子93,93を備えさせている。このため、ファンベルト6の振れ量が大きくなって回転子93,93に接触した場合には、その接触力によって回転子93,93はファンベルト6の走行方向に沿って回転する。この回転により、ファンベルト6は回転子93,93に摺動せず、ファンベルト6が回転子93,93に接触することによる抵抗力は緩和され、このファンベルト6の走行抵抗が著しく高くなってしまうといったことはない。また、ファンベルト6が片当たりしたり複数のファンベルト6のうちの一部が何れかの回転子93,93に接触した場合に回転する回転子93は、ファンベルト6が接触した回転子93のみとなる。このため、回転する物体(回転子93)の慣性を低くして回転を容易にし、ファンベルト6が回転子93に接触することによる抵抗力を大幅に緩和することができる。
【0052】
−実験例−
次に、回転子93,93と停止状態にあるファンベルト6の背面との間隔寸法を設定する際の最適値を求めるための実験例について説明する。本実験例では、上記間隔寸法を1mm、3mm、10mmとした場合のそれぞれについてのファンベルト6の最大振れ量を測定することにより行った。具体的には、クランクプーリ4とファンプーリ5との軸間距離が400mmであって、ファンベルト6に共振現象が発生する回転数が1500rpmのラジエータファン駆動装置に本発明を適用した場合について行った。
【0053】
その結果、上記間隔寸法を1mmとした場合のファンベルト6の最大振れ量(最大振れ位置はファンプーリ5の近傍)は約6mm、間隔寸法を3mmとした場合のファンベルト6の最大振れ量は約8mm、間隔寸法を10mmとした場合のファンベルト6の最大振れ量は約10mmであった。この実験結果から、上記間隔寸法を小さくするほどファンベルト6の最大振れ量は小さくなり、プーリからの外れは発生しにくくなることが判る。しかしながら、この間隔寸法を小さくした場合、ファンベルト6に僅かでも振れが発生した場合には、このファンベルト6が回転子93に接触し、若干の動力損失が生じてしまう。このため、動力損失がある程度大きくなることを許容でき且つファンベルト6がプーリから外れることを確実に回避したい場合には、この間隔寸法をできるだけ小さくしておくといった設計を行うことが望ましい。
【0054】
−その他の実施形態−
本発明は、上述した実施形態に限らず以下に述べる構成を採用することも可能である。
【0055】
先ず、上述した実施形態では、ファンベルト6,6,6が3本適用されているのに対し、回転子93,93を2個設けていた。それに代えて、回転子93を、各ファンベルト6に個別に対向する位置に配設してもよい。つまり、図6に示すように、ファンベルト6,6,6が3本適用されているものに対して、回転子93,93,93も各ファンベルト6,6,6に個別に対向するように3個設ける構成である。また、ファンベルト6及び回転子93の配設個数は特に限定されるものではなく、任意に設定可能である。例えば、ファンベルト6が複数本適用されているものに対して、回転子を1個のみ設ける構成であってもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、ファンベルト6のプーリ間スパンの長手方向の略中間位置に回転子93,93が対向するように振れ防止装置9を配設していた。これに限らず、プーリ間スパンにおいてファンプーリ5の近傍位置に振れ防止装置9を配設してもよい。その理由は、ファンベルト6がプーリ4,5から外れる際の外れ開始位置は、ファンベルト6の緩み側スパンS1であって、且つ従動側プーリ(ファンプーリ5)の近傍であることが多い。このため、このファンプーリ5の近傍に回転子93,93が対向するように振れ防止装置9を配設することにより、ファンベルト6がファンプーリ5から外れてしまうことを確実に回避することができる。
【0057】
更に、上記実施形態では、ファンベルト6の緩み側スパンS1に回転子93,93が対向するように振れ防止装置9を配設していた。これに限らず、回転子93,93が張り側スパンS2に対向するように振れ防止装置9を配設してもよい。これによれば、この張り側スパンS2に発生する振れを抑制することが可能である。ファンベルト6の緩み側スパンS1と張り側スパンS2とのそれぞれの振れ量を比較した場合、一般的には緩み側スパンS1の振れ量の方が大きい。このため、本発明を実機に適用する場合、振れ防止装置9を一箇所にのみ配設するのであれば緩み側スパンS1に対向して配設し、振れ防止装置9を二箇所以上に配設するのであれば緩み側スパンS1に対向する位置と張り側スパンS2に対向する位置とにそれぞれ配設することになる。
【0058】
尚、上述した実施形態では、発電機用エンジンにおけるラジエータファン駆動装置に本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、その他の補機類の駆動に使用される伝動ベルトに対して適用したり、自動車用エンジンその他のエンジンに対して適用することも可能である。
【0059】
更に、上述した実施形態では、振れ防止装置9に回転子93,93を備えさせ、この回転子93,93にファンベルト6を接触させることでその振れ量を抑制していた。本発明はこれに限らず、振れ防止装置9に非回転体を備えさせ、これにファンベルト6を接触させることでその振れ量を抑制するようにしてもよい。ここでいう非回転体とは板状部材や回転しない円筒状部材等が掲げられる。この場合、非回転体にファンベルト6が接触した際の摩擦力を低減するために、この非回転体の表面に低摩擦化を図るための表面処理を施しておくことが好ましい。この表面処理は、上記回転子93,93の外周面に施してもよい。
【0060】
【発明の効果】
以上のように、本発明では、伝動ベルトに大きな振れが発生していない状態では伝動ベルトに接触せず、伝動ベルトに大きな振れが発生する状態のときにのみ伝動ベルトの外面に接触する位置に振れ防止部材を配設している。これにより、上記通常状態では、伝動ベルトの走行抵抗を低減することができ、伝動ベルトに大きな振れが発生する状態では、伝動ベルトの振れ量を抑制することができるようにしている。このため、伝動ベルトの走行抵抗をできる限り低く抑えながらも、伝動ベルトがプーリから外れてしまうことを確実に回避することができ、伝動ベルトを使用する駆動装置の信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るラジエータファン駆動装置の正面図である。
【図2】図1におけるII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1におけるIII−III線に沿った断面図である。
【図4】振れ防止装置を示す図であり、(a)は一部を破断した平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図5】(a)はクランクプーリのベルト溝周辺部の断面図であり、(b)はファンプーリのベルト溝周辺部の断面図である。
【図6】回転子を各ファンベルトに個別に対向する位置に配設した場合の図2相当図である。
【符号の説明】
4 クランクプーリ
5 ファンプーリ
6 ファンベルト
9 振れ防止装置
93 回転子(振れ防止部材)
Claims (7)
- 複数のプーリ間に架け渡された伝動ベルトの振れを防止するための振れ防止装置であって、
上記伝動ベルトが非走行状態にあるときにその伝動ベルトとの間に所定間隔を存する位置に配設され、伝動ベルトの走行に伴ってその伝動ベルトに所定量以上の振れが発生したときには伝動ベルトに接触してこの振れを抑制する振れ防止部材を備えていることを特徴とする伝動ベルトの振れ防止装置。 - 請求項1記載の伝動ベルトの振れ防止装置において、
伝動ベルトのプーリ間スパンのうち一部のスパンは張り側スパンであり、他の一部のスパンは緩み側スパンであって、
振れ防止部材は、緩み側スパンに対向して配設されていることを特徴とする伝動ベルトの振れ防止装置。 - 請求項1または2記載の伝動ベルトの振れ防止装置において、
振れ防止部材は、伝動ベルトのプーリ間スパンの長手方向の略中間位置に配設されていることを特徴とする伝動ベルトの振れ防止装置。 - 請求項1、2または3記載の伝動ベルトの振れ防止装置において、
振れ防止部材は、伝動ベルトの走行方向に沿って回転自在な回転体で構成されていることを特徴とする伝動ベルトの振れ防止装置。 - 請求項4記載の伝動ベルトの振れ防止装置において、
回転体は、その回転軸方向で分割されて複数の回転子により構成されており、個々の回転子が互いに独立して回転自在に支持されていることを特徴とする伝動ベルトの振れ防止装置。 - 請求項5記載の伝動ベルトの振れ防止装置において、
プーリ間には複数本の伝動ベルトが架け渡されており、
回転体を構成する複数の回転子は、各伝動ベルトに個別に対向する位置に配設されていることを特徴とする伝動ベルトの振れ防止装置。 - 請求項1〜6のうち何れか一つに記載の伝動ベルトの振れ防止装置において、
振れ防止部材において伝動ベルトが接触する面には、この伝動ベルトとの間での摩擦力を低減させる表面処理が施されていることを特徴とする伝動ベルトの振れ防止装置。
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KR101278145B1 (ko) * | 2011-02-02 | 2013-06-27 | 가부시끼가이샤 다쓰노 | 급유 유닛 |
JP2020105962A (ja) * | 2018-12-27 | 2020-07-09 | 株式会社クボタ | 作業車 |
US11472081B2 (en) | 2019-07-19 | 2022-10-18 | Fanuc Corporation | Drive mechanism for injection molding machine |
-
2002
- 2002-11-20 JP JP2002336030A patent/JP2004169809A/ja active Pending
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