JP2004169203A - 高白色度漂白クラフトパルプの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】難蒸解性かつ難漂白性のユーカリ材のみから成るチップ、あるいは該ユーカリ材チップが配合されたチップを、アルカリ性水溶液含浸工程−温度50〜95℃、保持時間5〜90分間の保持工程−アルカリ抽出液の抽出、洗浄工程−カッパー価14〜22の未晒しパルプを製造する蒸解工程−白色度84%以上の漂白パルプを製造するTCF漂白あるいはECF漂白から成る一連の処理を施すことにより、高白色度の漂白クラフトパルプを製造できる。
Description
【発明の属する技術分野】
難蒸解性かつ難漂白性のユーカリ属(Eucalyptus)の材から高白色度の漂白クラフトパルプを製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ユーカリ材や南方材が広葉樹クラフトパルプの主要原料になってきている。このユーカリ材は種類が多く、樹種、樹齢、産地などの違いにより、その蒸解性や漂白性が異なっている。ユーカリ材はashタイプとblood woodタイプに大別され、ashタイプは抽出成分量が少ないのでパルプ材として工業的に利用する場合には比較的問題がないとされている。一方、blood woodタイプでは酸性の抽出成分に起因する様々な問題が発生するので、その軽減策が必要である。
【0003】
ユーカリ材には、キノと称されるポリフェノール類およびエラグ酸などの酸性の抽出成分が含まれている。キノ成分は縮合型タンニンを主成分とする樹木分泌物であり、淡黄色から濃紅色にいたる色調を持ち、樹種により特徴を異にしている。エラグ酸は木材中に遊離の状態でも存在するが、没食子酸とエラグ酸から形成されるエラグタンニン酸の形で主に存在する。このエラグタンニン酸は蒸解中に加水分解されて、エラグ酸になる。エラグ酸は強い酸性を示すと同時にアルカリ性条件下で容易に酸化され、キノン型となりパルプセルロースに強く吸着し、パルプ白色度に悪影響を及ぼす。更に、高温、高圧下では、そのフェノール性のために重合しやすく、粘着性物質となる。
【0004】
ユーカリ材に含まれる前記の酸性の抽出成分は、その含有量が多ければパルプ収率を低下させる。また、クラフト蒸解のアルカリ性薬剤を消費する。この消費は、リグニンの溶出によるアルカリ消費よりも反応が速いため、未晒しパルプの高カッパー価(換言すれば、白色度の低下)の問題を引き起こし、後続の漂白工程の負荷を増大させ、漂白薬品の使用量増加あるいは漂白パルプの白色度低下も引き起こす。また、ウォッシャーやディフューザーなどで抽出成分由来のスケールが発生したり、濃縮黒液の粘度が著しく上昇し真空蒸発が不良になることで、回収ボイラーでの黒液の燃焼性が悪化するなどの問題を引き起こす。
【0005】
以上のような難蒸解性の材の種々な問題は古くから認識され、その対策が検討されている。蒸解性や漂白性の改善を目的とした技術としては、例えば、アルカリ蒸解の場合、リグニン、炭水化物がアルカリを消費するが、酸性抽出成分はこれらより迅速にアルカリと反応するので、酸性抽出成分を黒液中の残アルカリとまず反応させ、次いで白液を添加して蒸解を行う二段蒸解法が考案されている(非特許文献1参照。)。また、ユーカリ材の熱水抽出により同一カッパー価で比較して、クラフトパルプの白色度が向上し、活性アルカリ添加量を削減できること、およびパルプ収率と塩素消費量には差がないことが報告されている(非特許文献2参照。)。また、ユーカリ材に含まれる酸性抽出成分はアルカリ条件下の酸素による酸化処理で容易に淡色化すること、および黒液の燃焼性を改善できることが明らかなことから、クラフト蒸解に先立つアルカリ酸化前処理により、パルプの白色度が改善できることが記載されている(非特許文献3参照。)。また、キノ物質を含む木材のアルカリ蒸解によるパルプ製造法に関し、特にキノ物質を含む木材チップを、30℃以上でアルカリリグニンの溶出温度以下でアルカリ性蒸解液で予め処理しキノ物質を滲出し、次いで蒸解を行うパルプ製造法が示されている(特許文献1参照。)。また、ユーカリチップから滲出する多量の滲出液の酸性度を合理的に中和して対金属腐食性を低減するとともにチップの蒸解性の向上と蒸解薬品および漂白薬品の節減を目的として、ユーカリチップにアルカリ性溶液を噴霧し、対チップ0.3〜1.5重量%となるように前記アルカリを付着させた後、少なくとも2週間堆積する方法が示されている(特許文献2参照。)。また、ユーカリ材チップのようなアルカリ可溶性抽出成分の多い木材チップの蒸解に際し、アルカリ可溶性抽出成分を最も効果的有利に抽出することを目的として、木材チップを、該木材の平均厚さの20〜50%間隙を有し、対向して互いに反対方向に、かつ周速比1:1.1〜1.5で回転する2本の金属ロール間に通した後、アルカリ蒸解する方法が示されている(特許文献3参照。)。
【0006】
パルプ蒸解後の黒液の濃縮性、燃焼性を改善する技術としては、例えば、ユーカリ材のような南方材等、ポリフェノール類あるいはタンニン類等を多く含む材のクラフトパルプ廃液の溶存物質の5〜35%を必要量の加圧空気等により酸化分解し、クラフト法における薬品回収を可能とする技術が開示されている(特許文献4参照。)。また、ユーカリ材を主体としたパルプ蒸解液を濃縮、燃焼して得られる緑液を苛性化して蒸解液を再生する処理工程において、濃縮前の希廃液に緑液又は緑液を苛性化して得られる白液を添加、混合し、空気酸化した後、あるいは空気酸化後ある程度濃縮した後、苛性ソーダを添加して廃液のpHを高め、次いで所定濃度まで濃縮してから燃焼する方法が示されている(特許文献5参照。)。
【0007】
【非特許文献1】
Sloman,A.R.,Appita,14(2),57(1960)
【非特許文献2】
Nelson,P.F.,et al.,Appita,24(2),101(1970)
【非特許文献3】
Hemingway,R.W.et al.,Appita,25(6),445(1972)
【特許文献1】
特公昭47−24162号公報
【特許文献2】
特開昭53−134903号公報
【特許文献3】
特許第1506085号明細書
【特許文献4】
特公昭48−42242号公報
【特許文献5】
特許第1021680号明細書
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明が解決しようとする課題は、高白色度の漂白クラフトパルプの製造において、難蒸解性かつ難漂白性であるユーカリ材あるいは該ユーカリ材が配合された材の蒸解性と漂白性を改善し、高白色度のTCFあるいはECF漂白パルプを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
難蒸解性かつ難漂白性のユーカリ材のみから成るチップ、あるいは該ユーカリ材チップが配合されたチップに、次の工程から成る一連の処理を施すことにより、高白色度の漂白クラフトパルプを製造できる。
(a)木材チップにアルカリ性水溶液を含浸させる工程
(b)前記アルカリ性水溶液を含浸させた木材チップを5〜90分間かつ温度50〜95℃で保持する工程
(c)前記(b)工程の後、アルカリ抽出液を抜き取り、木材チップを洗浄する工程
(d)前記アルカリ抽出後に得られた木材チップをクラフト蒸解し、カッパー価14〜22の未晒しパルプを製造する工程
(e)前記(d)工程で得られた未晒しパルプをTCF漂白あるいはECF漂白し、ハンター白色度84%以上の高白色度の漂白パルプを製造する工程
【0010】
【発明の実施の形態】
本願発明の処理対象である難蒸解性かつ難漂白性のユーカリ材は、1%アルカリ抽出前後の72%硫酸不溶分(クラーソンリグニン)の差で4%以上のものと定義される。このユーカリ材は単独樹種品でも良いし、該定義のユーカリ材のみから成る2樹種以上の混合品でも良い。また、該定義のユーカリ材と、蒸解性および漂白性が通常レベル〜易レベルである他のユーカリ属あるいは他の科・属の広葉樹材との混合品であるが、この混合品の状態で該定義内に入る難蒸解性かつ難漂白性の混合材も処理対象とすることができ、該混合材は海外のチップ積出しの段階での混合材でも良いし、国内のパルプ工場のチップヤードから連続蒸解釜への払い出しの段階での混合材でも良い。
【0011】
難蒸解性かつ難漂白性のユーカリ材に含まれる酸性の抽出成分量は樹齢、産地(換言すれば生育環境)などで異なるので具体的な樹種を特定することは難しい面があるが、フトモモ科ユーカリ属に関しては、キノ成分を多く含む樹種としては、Eucalyptus(以下、E.と略す) calophylla、E. citriodora、E. diversicolor、E.globulus、E.grandis、E. gummifera、、E. marginata、E.nesophila、E.nitensなどの老齢木、エラグタンニン酸を多く含む樹種としては、E.amygdalina、E.camaldulensis、E.delegatensis、E. gigantea、E. muelleriana、E. obliqua、E.regnans、E. sieberiana、E. viminalisなどの老齢木、ロイコアントシアニジンを多く含む樹種としては、E. camaldulensis、E. marginataなどの老齢木を挙げることができる。
【0012】
難蒸解性かつ難漂白性の木材チップにアルカリ性水溶液を含浸させる工程では、粗大なチップとチップダストを除去しサイズを整えたチップを処理する。このアルカリ性水溶液含浸工程は、チップスクリーニング工程以降、蒸解工程の間の任意な箇所に設置することができるが、アルカリ性水溶液の含浸を良くするためにスチーミングベッセル以降が望ましい。アルカリ性薬剤としては水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを使用できるが、水酸化ナトリウムが好適である。
【0013】
該含浸処理が木材チップをアルカリ性水溶液に浸漬する方法の場合には、木材チップを含浸容器に入れ、アルカリ性水溶液を添加し、チップにアルカリ性水溶液を含浸させる。この際、含浸を良くする目的で減圧下で行うことが好ましい。アルカリ性薬剤のチップ(絶乾)に対する添加率は1.0〜10.0固形分重量%が好ましく、1.0〜5.0固形分重量%が更に好ましい。アルカリ性水溶液(容積)/チップ容積の液比は4.0〜10.0が好ましく、4.0〜6.0が更に好ましい。アルカリ性水溶液の固形分濃度は、前記の添加率と液比を満足するように予め濃度調整する。
【0014】
該含浸処理は、木材チップを圧縮し、圧縮した状態または圧解放後にアルカリ水溶液を含浸させる方法でも実施することができる。この場合のアルカリ性薬剤のチップ(絶乾)に対する添加率は1.0〜10.0固形分重量%が好ましく、1.0〜5.0固形分重量%が更に好ましい。この圧縮に用いる装置としては、木材チップを十分に圧縮できるものであれば良く、特に制限はないが、アンドリッツ(Andritz)社のインプレサファイナー(impresssfiner)や、バルメット(Valmet)社のプレックススクリュウー(Prex screw)を挙げることが出来る。圧縮比は2:1以上が好ましく、4:1以上が更に好ましい。
【0015】
次いで、アルカリ性水溶液を含浸させた木材チップを、保持容器内で加温下、所定時間保持し、この間、酸性の抽出成分をアルカリ性水溶液で抽出・中和する。温度は50〜95℃が好ましく、50〜80℃がより好ましく、50〜75℃が更に好ましい。保持時間は温度にも左右されるが、5〜90分間が好ましく、30〜60分間が更に好ましい。保持終了時の終pHは、8.0〜10.0とすることが好ましい。
【0016】
次いで、アルカリ性水溶液で抽出・中和後の液を除去し、チップを十分に水で洗浄する。不十分な洗浄では、後続の蒸解工程へ影響が出る。
【0017】
洗浄後のチップは蒸解工程へ送られ、通常の条件(活性アルカリ添加量、硫化度、液比、最高温度、保持時間、Hファクターなど)でクラフト蒸解に供する。また、MCC、EMCC、ITC、Lo−solidなどの修正クラフト法の蒸解に供しても良い。また、1ベッセル液相型、1ベッセル液相/気相型、2ベッセル液相/気相型、2ベッセル液相型などの蒸解型式なども特に限定はない。すなわち、本願のアルカリ性水溶液を含浸し、これを保持する工程は、従来の蒸解液の浸透処理を目的とした装置や部位とは別個に設置されるものである。蒸解を終えた未晒しパルプは蒸解液を抽出後、ディフュージョンウォッシャーなどの装置で洗浄する。洗浄後の未晒しパルプのカッパー価は14〜22にすることが好ましい。15〜18が更に好ましい。
【0018】
次いで、所定のカッパー価の未晒しパルプをTCF漂白あるいはECF漂白で漂白処理を行う。TCF漂白、ECF漂白は公知のシーケンスで行えば良く、特に限定はない。具体的には、TCF漂白シーケンスとしては、Z−E−P、Z−E/O−P、E/OP−POなどが挙げられ、ECF漂白シーケンスとしては、D−E−D、D−E/O−D、E/O−D、E−O−D、Z−Dなどが挙げられる。本願発明の処理対象である難蒸解性かつ難漂白性の材は、通常の蒸解条件かつ通常のTCF、ECF漂白シーケンスでは、ハンター白色度84%以上の漂白パルプを得ることが困難であるが、本願発明の前記(a)〜(d)工程の処理により、ハンター白色度84%以上の高白色度の漂白パルプを容易の製造できる。
【0019】
【実施例】
次に実施例に基づき、本願発明を更に詳細に説明するが、本願発明はこれらに
限定されるものではない。
【実施例1】と
【比較例1】でクラフト蒸解性を比較
し、
【実施例2】と
【比較例2】で二酸化塩素によるECF(D−ECFと略す)漂白性を比較した。
【0020】
下記のチップを実施例、比較例に供した。
1.チップの産地、樹種
日本製紙株式会社のチップヤードからユーカリのチップを採取した。1%アルカリ抽出前後の72%硫酸不溶分の差は4.5%であった。
2.チップサイズの調整
前記チップをジャイロシフタを用いて篩い分け、粗大チップとチップダストを除去し、9.5〜25.4mmφのチップとした。このチップを以下の実施例、比較例で使用した。
【0021】
【実施例1】
前記のチップサイズを調整したチップに、真空下で水酸化ナトリウム水溶液を15分間浸透させた後、下記に示す条件で2.4L容回転型オートクレーブを用いてアルカリ抽出を行った。アルカリ抽出物量は約3%であり、抽出前、浸透後、抽出後におけるアルカリ抽出液のpHは、それぞれ12.9、12.7、9.3であった。抽出処理後チップを十分に水洗し、下記に示す条件で、2.4L容回転型オートクレーブを用いてクラフト蒸解を行った。蒸解終了後、蒸解液を抽出し、残有効アルカリ濃度とpHを測定した。パルプは十分に洗浄後、フラットスクリーンで粕を除去し、精選収率、粕率、総収率を求め、カッパー価とハンター白色度を測定した。結果を表1に示す。
アルカリ抽出条件:チップ300g(絶乾)、水酸化ナトリウム添加量2.0%、液比5.0L/kg、最高温度80℃、保持時間60分間、昇温時間30分間
クラフト蒸解条件:チップ300g(絶乾)、活性アルカリ添加量12〜17%、硫化度25%、液比2.5L/kg、最高温度160℃、保持時間94分間、Hファクター830
【0022】
【比較例1】
前記のチップサイズを調整したチップを、前記の条件で、2.4L容回転型オートクレーブを用いてクラフト蒸解を行った。以下、実施例1と同様な処理と測定を行った。結果を表1に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
表1の結果から、活性アルカリ添加量とカッパー価の関係を図1に示し、カッパー価とパルプ総収率の関係を図2に示し、カッパー価と白色度の関係を図3に示した。
【0025】
【図1】
【0026】
【図2】
【0027】
【図3】
【0028】
図1の結果から、比較例1では活性アルカリ添加量が15%以下になると急激にカッパー価が上昇し、難蒸解性を示すのに対し、実施例のアルカリ抽出処理した場合は、易蒸解性となり、活性アルカリ添加量の削減が可能である。図2の結果から、同一カッパー価で比較した場合、実施例1と比較例1で収率の差は認められない。図3の結果から、同一カッパー価における白色度はアルカリ抽出することで約2〜4%向上する。
【0029】
【実施例2】
実施例1で製造したカッパー価15.0のクラフト蒸解後のパルプを、酸素脱リグニンした後、ECF漂白としてD0(初段二酸化塩素)−E/P(過酸化水素を併用したアルカリ処理)−D1(2段目二酸化塩素)のシーケンスで漂白処理した。これを実施例2−1とした。実施例1で製造したカッパー価17.1のクラフト蒸解後のパルプを同様に処理した。これを実施例2−2とした。酸素脱リグニン、D0、E/P、D1の反応条件は下記の通り。酸素脱リグニンは、Quantum high intensity mini mixerを用いて行い、反応後、パルプを十分に洗浄し、次の漂白に供した。漂白はすべてプラスチックパックにパルプスラリー(パルプ濃度10%)を入れてウォーターバス中で行った。漂白後、パルプ濃度1.5%まで清水で希釈し、搾水を用いて数回洗浄した。続く漂白段では前段の搾水を用いてパルプ濃度15%とした後、パルプ濃度が10%となるように漂白薬品を所定量添加して漂白した。但し、D0段に限り、前段の酸素脱リグニンの排水は持ち込んでいない。酸素脱リグニン後P後のKN価と白色度を表2に、D0後、E/P後のKN価と白色度を表3に、また、D1後の白色度の結果を表4と図4に示す。
酸素脱リグニン:パルプ濃度10%、水酸化ナトリウム添加量2.0%、反応時間60分間、反応温度96℃、酸素初期圧6.0kg/cm2
D0:パルプ濃度10%、二酸化塩素添加量4.0kg/ADTP、反応温度60℃、反応時間20分間
E/P:パルプ濃度10%、水酸化ナトリウム添加量6.0kg/ADTP、過酸化水素添加量3.6kg/ADTP、反応温度70℃、反応時間75分間
D1:パルプ濃度10%、二酸化塩素添加量1.0,3.0,5.0kg/ADTP、反応温度70℃、反応時間150分間
【0030】
【比較例2】
比較例1で製造したカッパー価15.6のクラフト蒸解後のパルプを使用した以外は実施例2と同様に酸素脱リグニンと漂白を行った。これを比較例2−1とした。比較例1で製造したカッパー価19.6のクラフト蒸解後のパルプを使用した以外は実施例2と同様に酸素脱リグニンと漂白を行った。これを比較例2−2とした。酸素脱リグニン後P後のKN価と白色度を表2に、D0後、E/P後のKN価と白色度を表3に、また、D1後の白色度の結果を表4と図4に示す。
【0031】
【表2】
【0032】
表2の結果から、比較例2は実施例2に比較してΔカッパー価は大きいにもかかわらず、Δ白色度は両者でほとんど差が認められない。このことから、比較例2の未晒しパルプ中には、白色度にはほとんど寄与せず、過マンガン酸カリウムを無駄に消費する化合物が存在していることがわかる。この化合物はキノ、エラグ酸などの酸性の抽出成分と考えられる。また、酸素脱リグニン後のカッパー価がほぼ同等(実施例2−2のカッパー価9.3と比較例2−2のカッパー価9.6の比較)でも、白色度は5.3%という顕著な差があることから、比較例2の未晒しパルプ中には強い着色構造が存在すると考えられる。
【0033】
【表3】
【0034】
表3に示す結果のD0段後のパルプのΔカッパー価とΔ白色度について実施例2と比較例2を比較すると、比較例2の場合、Δカッパー価が実施例2と同じレベルでもΔ白色度が高いことから、過マンガン酸カリウムの消費が同じレベルでも強く着色した構造が比較例2のパルプ中に存在すると考えられる。
【0035】
【表4】
【0036】
【図4】
【0037】
表4および図4の結果から、二酸化塩素添加量3.0kg/ADTPにおけるD−ECF漂白性は実施例2−1が最も優れ、次いで実施例2−2、比較例2−1、比較例2−2の順であり、酸性の抽出成分をアルカリ抽出した未晒しパルプのほうがD−ECF漂白性が優れていることがわかる。また、比較例2−2では二酸化塩素添加量5.0kg/ADTPでも84%の白色度を得られなかった。
【0038】
【発明の効果】
難蒸解性かつ難漂白性のユーカリ材チップあるいは該ユーカリ材が配合されたチップを、アルカリ性水溶液含浸工程−温度50〜95℃、保持時間5〜90分間の保持工程−アルカリ抽出液の抽出、洗浄工程−カッパー価14〜22の未晒しパルプを製造する蒸解工程−白色度84%以上の漂白パルプを製造するTCF漂白あるいはECF漂白から成る一連の処理を施すことにより、難蒸解性かつ難漂白性であるユーカリ材から高白色度のTCFあるいはECF漂白パルプを製造でき、森林資源の有効活用を促進できる。
Claims (4)
- 難蒸解性かつ難漂白性のユーカリ属(Eucalyptus)の材、あるいは該材が配合された材から高白色度の漂白クラフトパルプを製造する方法であって、
(a)木材チップにアルカリ性水溶液を含浸させる工程
(b)前記アルカリ性水溶液を含浸させた木材チップを5〜90分間かつ温度50〜95℃で保持する工程
(c)前記(b)工程の後、アルカリ抽出液を抜き取り、木材チップを洗浄する工程
(d)前記アルカリ抽出後に得られた木材チップをクラフト蒸解し、カッパー価14〜22の未晒しパルプを製造する工程
(e)前記(d)工程で得られた未晒しパルプをTCF漂白あるいはECF漂白し、ハンター白色度84%以上の高白色度の漂白パルプを製造する工程
から成る一連の工程を経て処理されることを特徴とする高白色度の漂白クラフトパルプの製造方法。 - 難蒸解性かつ難漂白性のユーカリ属(Eucalyptus)の材が、1%アルカリ抽出前後の72%硫酸不溶分の差で4%以上であることを特徴とする請求項1に記載の高白色度の漂白クラフトパルプの製造方法。
- 木材チップをアルカリ性水溶液で含浸し保持する工程において、該処理が木材チップをアルカリ性水溶液に浸漬する方法で行われ、液比が4.0〜10.0および/または終pHが8.0〜10.0であることを特徴とする請求項1または2に記載の高白色度の漂白クラフトパルプの製造方法。
- 木材チップをアルカリ性水溶液で含浸する工程において、該処理が、木材チップを圧縮し、圧縮した状態または圧解放後にアルカリ性水溶液を含浸させる方法で行われることを特徴とする請求項1または2に記載の高白色度の漂白クラフトパルプの製造方法。
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