JP2004169003A - 複合イオン交換膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】 耐膨潤性が高く、機械的強度とイオン伝導性とに優れる複合イオン交換膜を提供する。
【解決手段】 イオン交換樹脂組成物と、膜を貫通する連続した空隙を有する支持体膜と、を備える複合イオン交換膜であって、前記支持体膜は、前記空隙中に前記イオン交換樹脂組成物を含浸する支持体膜であり、前記イオン交換樹脂組成物は、特定の化学構造を有する化合物と、芳香族ジハロゲン化合物と、ビスフェノール化合物と、をアルカリ金属の炭酸塩および/または重炭酸塩と混合し、これらの混合物を有機溶媒中で重合させて得られる芳香族ポリエーテルおよび/またはその誘導体を主成分とするイオン交換樹脂を含有するイオン交換樹脂組成物である、複合イオン交換膜。
【選択図】 図1

Description

本発明は、複合イオン交換膜に関する。さらに詳しくは、本発明は、機械的強度とイオン伝導性とに優れる複合イオン交換膜に関する。
近年、エネルギー効率や環境性に優れた新しい発電技術が注目を集めている。中でも高分子固体電解質膜を使用した固体高分子形燃料電池はエネルギー密度が高く、また、他の方式の燃料電池に比べて運転温度が低いため起動、停止が容易であるなどの特徴を有するため、電気自動車や分散発電などの電源装置としての開発が進んできている。また、同じく高分子固体電解質膜を使用し、燃料としてメタノールを直接供給する直接メタノール型燃料電池も携帯機器の電源などの用途に向けた開発が進んでいる。
高分子固体電解質膜には、通常、プロトン伝導性のイオン交換樹脂を含む膜が使用される。高分子固体電解質膜にはプロトン伝導性以外にも、燃料の水素やメタノールなどの透過を防ぐ燃料透過抑止性や機械的強度などの特性が必要である。このような高分子固体電解質膜としては、たとえば米国デュポン社製ナフィオン(登録商標)に代表されるようなスルホン酸基を導入したパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含む膜が知られている。
しかしながら、パーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含む膜は100℃以上では軟化するため、この膜を用いた燃料電池では運転温度が80℃以下に制限されていた。運転温度が上がると、エネルギー効率、装置の小型化、触媒活性の向上など、さまざまな利点があるため、耐熱性の高分子固体電解質膜が検討されてきた。
その中の一つにスルホン酸基を導入したポリスルホンを含む膜がある(たとえば、非特許文献1参照)。ポリスルホンは高い耐熱性を有し、かつ有機溶媒に可溶であるなど加工性に優れることから、高分子固体電解質膜の原料として適している。しかし、通常ポリスルホンは、濃硫酸や無水硫酸などのスルホン化剤によってスルホン酸基を導入するが、この方法ではスルホン化反応の制御が困難であった。そのため、所望のスルホン化度に調節できなかったり、不均一なスルホン化や副反応によって、ゲル化などの問題を起こす場合があった。
そこで、既存のポリマーをスルホン化するのではなく、スルホン酸基を有するモノマーを重合して、スルホン化ポリマーを合成し高分子固体電解質として利用することが検討されてきた(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。これらのスルホン化ポリマーは、スルホン化度の調節が容易にでき、均一な溶液が得やすいため優れている。
ここで、高分子固体電解質をイオン交換膜として用いる場合、特に燃料電池のプロトン交換膜として用いる場合には、膜のイオン伝導性が高いほど性能が良くなる。そのため、膜中のスルホン酸基濃度を大きくすれば、イオン伝導性は大きくなる。しかしながら、上記のスルホン化ポリマーの中でもスルホン化度が大きいものは膨潤が著しくなるため、燃料電池のプロトン交換膜として使用した場合に、ガスのクロスオーバー、クロスリーク、電極の剥離、破損などの問題が生じる傾向がある。
そのため何らかの方法で膜の補強を行うことが検討されている。スルホン化モノマーから重合したスルホン化ポリマーと類似の構造の非スルホン化ポリマーとをブレンドすることで補強することが行なわれている(たとえば、特許文献3参照)。しかしながら、スルホン化ポリマーと非スルホン化ポリマーとは極性が大きく異なるため相溶しにくく、均一な膜が得られないという欠点があった。
また、スルホン化ポリマーの補強を多孔質の支持体膜で行なうことも提案されている(たとえば、特許文献4参照)。しかしながら、スルホン化ポリマーとしては、既存のポリマーのスルホン化物のみが挙げられており、より優れた高分子電解質であるスルホン化モノマーから重合したスルホン化ポリマーを用いた例は、この文献には記載されていない。また、この文献に記載されている支持体は膜の空隙率が小さいために、複合膜化するとイオン伝導性が低下するという欠点があった。
特開平5−1149号公報 米国特許出願公開第2002/0091225号明細書 特開平5−4031号公報 国際公開第00/22684号パンフレット エフ ルフラノ(F. Lufrano)他3名著、「スルホネイテッド ポリスルホン アズ プロマイジング メンブランズ フォー ポリマー エレクトロライト フュエル セルズ」(Sulfonated Polysulfone as Promising Membranes for Polymer Electrolyte Fuel Cells)、ジャーナル オブ アプライド ポリマー サイエンス(Journal of AppLied Polymer Science)、(米国)、ジョン ワイリー アンド サンズ インク(John Wiley & Sons, Inc.)、2000年、77号、p.1250−1257
上記の現状に基づき、本発明の主要な課題は、耐膨潤性が高く、機械的強度とイオン伝導性とに優れる複合イオン交換膜を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するためには、スルホン化モノマーから重合されて得られるスルホン化ポリスルホンを含有するイオン交換樹脂組成物と、多孔質の支持体膜とを備える複合イオン交換膜を用いればよいとの着想を得、そのような複合イオン交換膜の中から、燃料電池における高分子固体電解質膜として好適な特性を有するものを見出すべく、鋭意研究開発を行った。
その結果、本発明者らは、特定の原料を重合して得られる芳香族ポリエーテルおよび/またはその誘導体を含有するイオン交換樹脂組成物を、膜を貫通する連続した空隙を有する支持体膜に含浸することにより、耐膨潤性が高く、機械的強度とイオン伝導性とに優れる複合イオン交換膜を得られることを見出した。
また、本発明者らは、上記の芳香族ポリエーテルおよび/またはその誘導体が特定の化学構造を有する場合には、さらに複合イオン交換膜の性能が向上することを明らかにした。そして、本発明者らは、上記の複合イオン交換膜を特定の構造にすることによって、さらに複合イオン交換膜の性能が向上することを明らかにし、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明の複合イオン交換膜は、イオン交換樹脂組成物と、膜を貫通する連続した空隙を有する支持体膜と、を備える複合イオン交換膜であって、この支持体膜は、この空隙中にこのイオン交換樹脂組成物を含浸する支持体膜であり、このイオン交換樹脂組成物は、化学式1で表される化合物と、芳香族ジハロゲン化合物と、ビスフェノール化合物とを主成分とするモノマー成分を、アルカリ金属の炭酸塩および/または重炭酸塩と混合し、これらの混合物を有機溶媒中で重合させて得られる芳香族ポリエーテルおよび/またはその誘導体を主成分とするイオン交換樹脂を含有するイオン交換樹脂組成物である、複合イオン交換膜である。
Figure 2004169003
(なお、化学式1において、Qは−S(=O)2−基または−C(=O)−基を表わす。XはH,Li,Na,K原子のいずれかを表わす。YはF,Cl,Br,I原子のいずれかを表わす。)
あるいは、本発明の複合イオン交換膜は、イオン交換樹脂組成物と、膜を貫通する連続した空隙を有する支持体膜と、を備える複合イオン交換膜であって、この支持体膜は、この空隙中にこのイオン交換樹脂組成物を含浸する支持体膜であり、このイオン交換樹脂組成物は、化学式2Aと化学式2Bとで表される結合単位をそれぞれ化学式2A:化学式2B=n:mの比率で含有するイオン交換樹脂を含有するイオン交換樹脂組成物である、複合イオン交換膜である。
Figure 2004169003
(なお、化学式2Aおよび化学式2Bにおいて、ZはH,Li,Na,K,脂肪族または芳香族アミン由来のカチオンのいずれかを表わす。ArおよびArはそれぞれ独立して1種類以上の二価の有機基を表わす。Arは電子吸引性基を有する芳香環を含む1種類以上の二価の有機基を表わす。nは1〜1000の範囲の整数を、mは0〜1000の範囲の整数を、それぞれ表わす。)
ここで、このArは、化学式3、化学式4、化学式5で表される結合単位からなる群より選ばれる1種類以上の結合単位であることが好ましい。
Figure 2004169003
(なお、化学式3、化学式4、化学式5において、Aは他の結合単位との結合部位を表わす。)
また、このArおよびこのArは、化学式6および化学式7で表される結合単位よりそれぞれ独立して選ばれる1種類以上の結合単位であることが望ましい。
Figure 2004169003
(なお、化学式6および化学式7において、Aは他の結合単位との結合部位を表わす。)
さらに、このArおよびこのArは、いずれもこの化学式6で表される結合単位であり、このArは、この化学式3で表される結合単位であり、このnおよびこのmは、数式1を満たす1〜1000の範囲の整数であることがさらに好ましい。
0.2≦n/(n+m)≦0.8 (数式1)
あるいは、このArおよびこのArは、いずれもこの化学式6で表される結合単位であり、このArは、この化学式4で表される結合単位であり、このnおよびこのmは、数式2を満たす1〜1000の範囲の整数であってもよい。
0.2≦n/(n+m)≦0.8 (数式2)
または、このArおよびこのArは、いずれもこの化学式7で表される結合単位であり、このArは、この化学式3で表される結合単位であり、このnおよびこのmは、数式3を満たす1〜1000の範囲の整数であってもよい。
0.3≦n/(n+m)≦0.7 (数式3)
そして、本発明の複合イオン交換膜は、このイオン交換樹脂組成物からなる表面層をこの支持体膜の両面に備えることが好ましい。また、この表面層のそれぞれの厚みは、1〜50μmの範囲であり、かつこの複合イオン交換膜の全厚みの半分を超えない範囲であることが望ましい。さらに、この支持体膜の少なくとも一方の面の開孔率は、40〜95%の範囲にあることが推奨される。
そして、この支持体膜は、ポリベンザゾール系ポリマーを材質として含むことが好ましい。また、この支持体膜は、このポリベンザゾール系ポリマーを0.5〜2質量%の範囲の含有率で含む等方性溶液を膜状に成型し、成型されたこの溶液を凝固させてこの支持体膜を得ることにより得られる支持体膜であることが望ましい。
上記の結果より、本発明の複合イオン交換膜は、耐膨潤性が高く、機械的強度とイオン伝導性とに優れる複合イオン交換膜である。
そのため、本発明の複合イオン交換膜は、固体高分子形燃料電池の高分子固体電解質膜として好適に利用することができる。
<複合イオン交換膜>
本発明の複合イオン交換膜は、イオン交換樹脂組成物と、膜を貫通する連続した空隙を有する支持体膜とを備える複合イオン交換膜であって、この支持体膜は、この空隙中にこのイオン交換樹脂組成物を含浸する支持体膜であり、このイオン交換樹脂組成物は、化学式1で表される化合物と、芳香族ジハロゲン化合物と、ビスフェノール化合物とを主成分とするモノマー成分を、アルカリ金属の炭酸塩および/または重炭酸塩と混合し、これらの混合物を有機高極性溶媒中で重合させて得られる芳香族ポリエーテルおよび/またはその誘導体を主成分とするイオン交換樹脂を含有するイオン交換樹脂組成物である、複合イオン交換膜である。
Figure 2004169003
(なお、化学式1において、Qは−S(=O)−基または−C(=O)−基を表わす。XはH,Li,Na,K原子のいずれかを表わす。YはF,Cl,Br,I原子のいずれかを表わす。)
ここで、上記の化学式1の化合物は、たとえば、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンなどの化合物を発煙硫酸などで加熱してスルホン化することにより得ることができる。
また、上記の化学式1におけるQは、−S(=O)−基であることが、モノマーおよびポリマーの溶解性が向上するため好ましい。さらに、上記の化学式1におけるYは、FまたはClであることが、反応性が高くなるため好ましい。そして、上記の化学式1におけるXは、H原子ではないほうが好ましく、Na、K原子であることが好ましい。
ここで、上記の化学式1で表される化合物として好ましい例を化学式8A〜化学式8Dおよび化学式9A〜化学式9D(それぞれ複数の化学式を含む)として示す。
Figure 2004169003
Figure 2004169003
本発明における芳香族ジハロゲン化合物は、少なくとも1つの芳香族環と、芳香族環に結合した少なくとも二つのハロゲン原子とを有する化合物を指す。かかる芳香族ジハロゲン化合物としては、ハロゲン原子が結合しているのと同一の芳香環に電子吸引性基が結合しているものが好ましく、ハロゲン原子に対してオルト位もしくはパラ位に結合しているものがより好ましい。さらに、電子吸引性基としては、たとえば、スルホン基、スルホニル基、カルボニル基、フォスフィンオキシド基、ニトロ基、シアノ基などを挙げることができる。そして、ハロゲン原子はFまたはCl原子が好ましい。また、二つ以上のハロゲン原子は同一の芳香環に結合していても、別の芳香環に結合していてもよい。
ここで、上記の芳香族ジハロゲン化合物の好ましい例として、化学式10A〜化学式10Iに表される化学構造の化合物が挙げられる。
Figure 2004169003
なお、化学式10Cの化合物は、二つ以上のハロゲン原子を有しているが、実質的に重合反応に寄与するハロゲン原子は二つであるため、他の芳香族ジハロゲン化合物と同様に、ポリマー合成に好適に用いることができる。
本発明における芳香族ジハロゲン化合物は、上記の化学式10A〜化学式10Iに表される化合物の中でも、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリルが特に好ましく、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリルが最も好ましい。
そして、上記のビスフェノール化合物とは、芳香環に結合した水酸基(フェノール性水酸基)を2個有する化学構造の化合物を表わす。
ここで、上記のビスフェノール化合物の好ましい例として、化学式11A〜化学式11Pに表される化学構造の化合物を挙げる。
Figure 2004169003
また、上記のビスフェノール化合物としては、化学式11A〜化学式11Pに表される化学構造の化合物の中でも、4,4’−ビフェノール、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレンが特に好ましく、4,4’−ビフェノールが最も好ましい。
<イオン交換樹脂の製造方法>
そして、本発明に用いるイオン交換樹脂の主成分である芳香族ポリエーテルおよび/またはその誘導体は、上記の化学式1で表される化合物と、芳香族ジハロゲン化合物と、ビスフェノール化合物とを主成分とするモノマー成分を、アルカリ金属の炭酸塩および/または重炭酸塩とを混合し、有機溶媒中で加熱して重合反応を生じさせることにより得られる。
ここで、上記の有機溶媒としては、高極性有機溶媒である、たとえば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホンアミドなどの非プロトン性極性溶媒を好適に用いることができる。また、これらの溶媒の中でも、沸点が高いN−メチル−2−ピロリドン、スルホランなどが、反応温度を高くして反応速度を大きくできるため特に好ましい。
上記のアルカリ金属の炭酸塩および/または重炭酸塩としては、たとえば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどが好ましい。
また、上記の化学式1で表される化合物は吸湿しやすいため、前もって乾燥しておくことが好ましい。さらに、上記のビスフェノール化合物とアルカリ金属の炭酸塩および/または重炭酸塩との反応で生成する水は、副反応の原因となるため、原料モノマーとの間の反応が起こるより前に系外に取り除くことが好ましい。ここで、系内の脱水は、トルエン、ベンゼン、クロロベンゼンなどとの共沸、水素化カルシウム、無水硫酸ナトリウム、モレキュラーシーブなどの脱水剤による吸着など、公知の任意の方法を用いることができる。
さらに、上記の重合反応の温度は、150℃以上であることが好ましく、特に180℃以上であればより好ましい。また、この温度は、300℃以下であることが好ましく、特に250℃以下であればより好ましい。この温度が150℃未満の場合には、重合度が十分に上がらない傾向があり、この温度が300℃を超えると、架橋や分解などの副反応が著しくなるという傾向がある。
そして、上記の重合反応の時間は、3時間以上であることが好ましく、特に5時間以上であればより好ましい。また、この時間は、50時間以下であることが好ましく、特に30時間以下であればより好ましい。この時間が3時間未満の場合には、ポリマーの重合度や回収率が低下するという傾向があり、この時間が50時間を超えると、架橋や分解などの副反応により目的の特性を有するポリマーを得ることが困難になるという傾向がある。
また、上記の重合反応は、窒素などの不活性ガス雰囲気中で行なうことが好ましい。
そして、上記の方法で重合反応を行なって芳香族ポリエーテルおよび/またはその誘導体を得た場合、この芳香族ポリエーテルおよび/またはその誘導体を主成分とするイオン交換樹脂は、単離してから本発明の複合イオン交換膜の材質の一部として用いてもよいし、あるいは溶液中に溶解あるいは分散した状態で、そのまま支持体膜中に含浸させて、本発明の複合イオン交換膜を製造してもよい。
ここで、上記の重合反応で得られた芳香族ポリエーテルおよび/またはその誘導体を主成分とするイオン交換樹脂の単離は、公知の任意の方法で行なうことができるが、たとえば、水、メタノール、エタノール、アセトンなど、およびこれらの混合溶媒中で再沈して単離することが一般的である。
また、上記のイオン交換樹脂を再沈して単離する前に、重合溶液を濾過してあらかじめ無機塩などを除いてもよい。そして、再沈して単離されたイオン交換樹脂は、熱水中で処理するなどして、溶媒、オリゴマー、残留したモノマー、無機塩などの不純物を除くことができる。さらに、再沈して単離されたイオン交換樹脂は、硫酸、塩酸などで処理して、スルホン酸基をアルカリ金属塩から酸へ変換しておくこともできる。これらの操作の後、再沈して単離されたイオン交換樹脂は、濾過し、乾燥することにより再沈溶媒を取除いて単離することができる。
<イオン交換樹脂組成物の支持体膜中への含浸>
上記のようにして単離されたイオン交換樹脂を、有機溶媒に溶解して溶液とした上で、支持体膜中に含浸させることにより、支持体膜と、単離されたイオン交換樹脂を含有するイオン交換樹脂組成物とを複合化して、本発明の複合イオン交換膜を得ることができる。
ここで、上記の有機溶媒としては、たとえば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホンアミドなどを好適に用いることができる。また、これらの有機溶媒の中でも、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどが特に好ましい。
また、上記のようにして得られたイオン交換樹脂を含有するイオン交換樹脂組成物を支持体膜中に含浸させる際には、イオン交換樹脂の重合溶液をそのまま支持体膜中に含浸させることもできる。その際、イオン交換樹脂が溶解または分散した重合溶液を濾過や遠心沈降することによって、イオン交換樹脂が溶解または分散した重合溶液から無機塩などを除いておいてもよい。
また、この場合、イオン交換樹脂が溶解または分散した重合溶液に、適宜N−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルムアミド、スルホラン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホンアミドなどの良溶媒を追加して、この重合溶液中のイオン交換樹脂の濃度を調整しておいてもよい。
ここで、支持体膜と上記のイオン交換樹脂組成物との複合化は、支持体膜にイオン交換樹脂を溶解または分散した溶液を含浸した後、溶媒を除去することにより行なうことができる。イオン交換樹脂を溶解または分散した溶液は、重合溶液をそのまま用いてもよいし、単離したイオン交換樹脂を再度、溶媒に溶解または分散した溶液を用いてもよい。
上記のイオン交換樹脂のスルホン酸基は、酸型であってもよいが、溶媒の分解を抑制するためにはアルカリ金属などとの塩であることが好ましい。
上記のイオン交換樹脂を溶解または分散した溶液中における、イオン交換樹脂の濃度は、5wt%以上であることが好ましく、特に10wt%以上であればより好ましい。また、この濃度は、50wt%以下であることが好ましく、特に40wt%以下であればより好ましい。このイオン交換樹脂の濃度が5wt%未満の場合には、本発明の複合イオン交換膜中のイオン交換樹脂の含有率が少なくなるためにイオン伝導性が低下する傾向があり、この濃度が50wt%を超えると、イオン交換樹脂を溶解または分散した溶液の粘度が増大して取扱いが困難になる傾向がある。
また、上記のイオン交換樹脂を溶解または分散した溶液は、溶液の濁りやゲル化が生じない範囲で、水やアルコールなどの非溶媒を含んでいてもよい。
ここで、支持体膜が上記のイオン交換樹脂を溶解または分散した溶液と相溶しない溶媒を含んでいる場合には、含浸する前に支持膜中の溶媒を、イオン交換樹脂溶液と同一の溶媒に置換しておくことが好ましい。なお、溶媒の置換の過程で、一度に置換することが困難な場合には、それぞれの溶媒の混合比率の異なる混合溶媒に浸漬するなどして、段階的に置換してもよい。
また、支持体膜を上記のイオン交換樹脂を溶解または分散した溶液に含浸する場合、含浸の時間、温度、浴比などは、特に限定されず、支持体膜の形状、大きさ、空隙率、開孔率など、あるいは上記のイオン交換樹脂の化学構造、分子量など、あるいは上記のイオン交換樹脂を溶解または分散した溶液の濃度、粘度などの条件に応じて、それぞれ適した条件を用いることができる。
さらに、上記のイオン交換樹脂を溶解または分散した溶液を含浸した支持体膜から溶媒を除去するための乾燥方法は、特に限定されず、熱風、赤外線、減圧など公知の任意の方法で行なうことができる。
そして、本発明の複合イオン交換膜に備わるイオン交換樹脂組成物に含有されるイオン交換樹脂中のスルホン酸基が塩になっている場合には、この複合イオン交換膜を酸で処理してスルホン酸基を酸型に変換しておくこともできる。なお、本発明の複合イオン交換膜を燃料電池のプロトン交換膜として用いる場合には、酸型で用いることが好ましい。
この場合、上記のイオン交換樹脂中のスルホン酸基酸型への変換に用いる酸としては、たとえば、0.1〜10mol/Lの濃度の硫酸、塩酸、過塩素酸などの強酸の溶液を挙げることができる。
ここで、上記のイオン交換樹脂中のスルホン酸基酸型への変換の処理の際には、本発明の複合イオン交換膜を加熱してもよい。また、この酸処理の後は、本発明の複合イオン交換膜を水や熱水で充分洗浄して、遊離の強酸が複合イオン交換膜中に残存しないようにすることが好ましい。ここで、洗浄した本発明の複合イオン交換膜を乾燥する場合には、枠に固定して行なう方が好ましい。
<イオン交換樹脂の化学構造>
本発明に用いるイオン交換樹脂は、化学式2Aと化学式2Bとで表される結合単位をそれぞれ化学式2A:化学式2B=n:mの比率で含有する化学構造を有するイオン交換樹脂として表わすこともできる。
Figure 2004169003
(なお、化学式2Aおよび化学式2Bにおいて、ZはH,Li,Na,K,脂肪族または芳香族アミン由来のカチオンのいずれかを表わす。ArおよびArはそれぞれ独立して1種類以上の二価の有機基を表わす。Arは電子吸引性基を有する芳香環を含む1種類以上の二価の有機基を表わす。nは1〜1000の範囲の整数を、mは0〜1000の範囲の整数を、それぞれ表わす。)
ここで、上記の化学式2Aと化学式2Bとにおけるnおよびmは、1〜1000の範囲の整数であるが、0.2≦n/(n+m)≦0.9の数式を満たす範囲の整数であることが好ましい。
ここで、本発明の複合イオン交換膜を、燃料電池のプロトン交換膜(水素を燃料とするような固体高分子形燃料電池の高分子固体電解質膜)として用いる場合には、化学式2AにおけるZはH原子であることが好ましい。また、本発明の複合イオン交換膜を、メタノールを燃料として用いる直接メタノール型燃料電池の高分子固体電解質膜として用いる場合には、化学式2AにおけるZはH原子であることが好ましい。
また、上記の化学式2Bにおいて、Arは電子吸引性基を有する二価の有機基を表わす。さらに、Arは電子吸引性基を有する二価の有機基の中でも、電子吸引性基が結合した芳香族基であることが好ましい。
そして、電子吸引性基としては、たとえば、スルホン基、スルホニル基、カルボニル基、フォスフィンオキシド基、ニトロ基、シアノ基などを挙げることができる。さらに、電子吸引性基は、エーテル結合の酸素原子に対して芳香族基のオルト位またはパラ位に結合していることが好ましい。
ここで、Arの例としては化学式12A〜化学式12Eに表される化学構造の結合単位を挙げることができる。
Figure 2004169003
(なお、化学式12A〜化学式12Eにおいて、Aは他の結合単位との結合部位を表わす。)
なお、これらの化学構造の結合単位の中でも、化学式3〜化学式5で表される化学構造の結合単位がより好ましく、さらに化学式3または化学式4で表される化学構造の結合単位が特に好ましく、化学式4で表される化学構造の結合単位が最も好ましい。
Figure 2004169003
(なお、化学式3、化学式4、化学式5において、Aは他の結合単位との結合部位を表わす。)
また、上記のArおよびArは、それぞれ二価の有機基を表わす。その例として、上記の化学式11A〜化学式11Pにおいてビスフェノール化合物として例示した化合物から2つの水酸基を除いた化学構造の結合単位を挙げることができる。
ここで、Ar1とAr3とは、同一であっても異なっていてもよい。また、ArとArとのそれぞれが、違った2種類以上の結合単位からなっていてもよい。
上記のArおよびArの中でも、化学式6および化学式7で表される化学構造の結合単位が特に好ましく、化学式6で表される化学構造の結合単位が最も好ましい。
Figure 2004169003
(なお、化学式6および化学式7において、Aは他の結合単位との結合部位を表わす。)
ここで、本発明に用いるイオン交換樹脂は、化学式2Aと化学式2Bとで表される結合単位をそれぞれ化学式2A:化学式2B=n:mの比率で含有する化学構造を有するイオン交換樹脂であって、さらにArおよびArがいずれも化学式6の化学構造の結合単位であり、Arが化学式3で表される化学構造の結合単位であり、n、mが数式1を満たす1〜1000の範囲の整数であれば、より一層好ましい。
0.2≦n/(n+m)≦0.8 (数式1)
あるいは、本発明に用いるイオン交換樹脂は、化学式2Aと化学式2Bとで表される結合単位をそれぞれ化学式2A:化学式2B=n:mの比率で含有する化学構造を有するイオン交換樹脂であって、ArおよびArがいずれも化学式6で表される化学構造の結合単位であり、Arが化学式4で表される化学構造の結合単位であり、n、mが数式2を満たす1〜1000の範囲の整数であっても、より一層好ましい。
0.2≦n/(n+m)≦0.8 (数式2)
また、本発明に用いるイオン交換樹脂は、化学式2Aと化学式2Bとで表される結合単位をそれぞれ化学式2A:化学式2B=n:mの比率で含有する化学構造を有するイオン交換樹脂であって、ArおよびArがいずれも化学式7で表される化学構造の結合単位であり、Arが化学式3で表される化学構造の結合単位であり、n、mが数式3を満たす1〜1000の範囲の整数であっても、より一層好ましい。
0.3≦n/(n+m)≦0.7 (数式3)
数式1〜3におけるn/(n+m)が大きくなるとイオン伝導性が向上するが、同時に水による膨潤性が大きくなり膜の形態安定性が損なわれる傾向が出てくる。また、数式1〜3におけるn/(n+m)が小さくなると、イオン伝導性は低下するもののメタノールの透過性が小さくなる傾向がある。水素を燃料とする固体高分子形燃料電池では、n/(n+m)が大きくて高いイオン伝導性を示す膜が適している。また、メタノールを燃料とする直接メタノール型燃料電池では通常メタノールを水溶液として用いるため、n/(n+m)が小さくて水による膨潤とメタノール透過性が少ない膜が適している。
本発明に用いるイオン交換樹脂は、化学式2Aと化学式2Bとで表される結合単位をそれぞれ化学式2A:化学式2B=n:mの比率で含有する化学構造を有するイオン交換樹脂であって、さらにArおよびArがいずれも化学式6の化学構造の結合単位であり、Arが化学式3で表される化学構造の結合単位であり、n、mが数式4を満たす1〜1000の範囲の整数であれば、水素を燃料とするような固体高分子形燃料電池の高分子固体電解質膜として用いる場合により一層好ましい。
0.5≦n/(n+m)≦0.7 (数式4)
あるいは、本発明に用いるイオン交換樹脂は、化学式2Aと化学式2Bとで表される結合単位をそれぞれ化学式2A:化学式2B=n:mの比率で含有する化学構造を有するイオン交換樹脂であって、Ar1およびAr3がいずれも化学式6で表される化学構造の結合単位であり、Ar2が化学式4で表される化学構造の結合単位であり、n、mが数式5を満たす1〜1000の範囲の整数であれば、水素を燃料とするような固体高分子形燃料電池の高分子固体電解質膜として用いる場合により一層好ましい。
0.4≦n/(n+m)≦0.8 (数式5)
また、本発明に用いるイオン交換樹脂は、化学式2Aと化学式2Bとで表される結合単位をそれぞれ化学式2A:化学式2B=n:mの比率で含有する化学構造を有するイオン交換樹脂であって、ArおよびArがいずれも化学式7で表される化学構造の結合単位であり、Arが化学式3で表される化学構造の結合単位であり、n、mが数式6を満たす1〜1000の範囲の整数であっても、より一層好ましい。
0.4≦n/(n+m)≦0.6 (数式6)
本発明に用いるイオン交換樹脂は、化学式2Aと化学式2Bとで表される結合単位をそれぞれ化学式2A:化学式2B=n:mの比率で含有する化学構造を有するイオン交換樹脂であって、さらにArおよびArがいずれも化学式6の化学構造の結合単位であり、Arが化学式3で表される化学構造の結合単位であり、n、mが数式7を満たす1〜1000の範囲の整数であれば、メタノールを燃料として用いる直接メタノール型燃料電池の高分子固体電解質膜として用いる場合により一層好ましい。
0.2≦n/(n+m)≦0.5 (数式7)
あるいは、本発明に用いるイオン交換樹脂は、化学式2Aと化学式2Bとで表される結合単位をそれぞれ化学式2A:化学式2B=n:mの比率で含有する化学構造を有するイオン交換樹脂であって、ArおよびArがいずれも化学式6で表される化学構造の結合単位であり、Arが化学式4で表される化学構造の結合単位であり、n、mが数式8を満たす1〜1000の範囲の整数であれば、メタノールを燃料として用いる直接メタノール型燃料電池の高分子固体電解質膜として用いる場合により一層好ましい。
0.2≦n/(n+m)≦0.5 (数式8)
また、本発明に用いるイオン交換樹脂は、化学式2Aと化学式2Bとで表される結合単位をそれぞれ化学式2A:化学式2B=n:mの比率で含有する化学構造を有するイオン交換樹脂であって、Ar1およびAr3がいずれも化学式7で表される化学構造の結合単位であり、Arが化学式3で表される化学構造の結合単位であり、n、mが数式9を満たす1〜1000の範囲の整数であれば、メタノールを燃料として用いる直接メタノール型燃料電池の高分子固体電解質膜として用いる場合により一層好ましい。
0.3≦n/(n+m)≦0.5 (数式9)
燃料電池において、固体高分子形燃料電池であれば加湿された燃料ガスや酸化ガスに含まれる水分や、反応で生成する水によって、直接メタノール型燃料電池であれば燃料として供給するメタノール水溶液中の水によって、それぞれイオン交換膜は膨潤する。イオン交換膜の膨潤性が大きいと、膜の破損や電極のはがれなどが起こりやすくなるため好ましくない。以上に挙げた本発明におけるイオン交換樹脂の好ましい構造の中でも、ArおよびArがいずれも化学式6で表される化学構造の結合単位であり、Arが化学式4で表される化学構造の結合単位である構造のものが、水による膨潤性がより小さいので、特に好ましい構造である。その中でも、n、mが数式5を満たすものは固体高分子形燃料電池のイオン交換膜として適しており、n、mが数式8を満たすものは直接メタノール型燃料電池のイオン交換膜として適している。
<イオン交換樹脂の特性>
本発明の複合イオン交換膜に用いるイオン交換樹脂の分子量は、1,000以上であることが好ましく、特に5,000以上であればより好ましい。また、この分子量は、1,000,000以下であることが好ましく、特に500,000以下であれば、物性と加工性のバランスが取れるためにより好ましい。この分子量が1,000未満の場合には、膜の形成が困難になったり、膜の膨潤性や水溶性が大きくなってしまう傾向があり、この分子量が1,000,000を超えると、溶液粘度が非常に大きくなるため取扱いが困難になるという傾向がある。
ここで、本発明に用いるイオン交換樹脂の重合度は、後述する方法で測定される対数粘度で表わすこともできる。すなわち、本発明に用いるイオン交換樹脂を0.25g/dlのN−メチル−2−ピロリドン溶液に溶解した場合の30℃における対数粘度は、0.1以上であることが好ましく、特に0.4以上であることがより好ましい。また、この対数粘度は、2.0以下であることが好ましく、特に1.5以下であることがより好ましい。
この対数粘度が0.1未満の場合には、膜の形成が困難になったり、膜の膨潤性や水溶性が大きくなってしまう傾向があり、この対数粘度が2.0を超えると、溶液粘度が非常に大きくなるため取扱いが困難になるという傾向がある。
<支持体膜>
本発明の複合イオン交換膜に用いる支持体膜は、膜を貫通する連続した空隙を有する多孔性の支持体膜である必要がある。膜を貫通する連続した空隙内にイオン交換樹脂組成物が含浸されていなければ、良好なイオン伝導性を得ることができないからである。
ここで、本発明の支持体膜の空隙率は90体積%以上であることが好ましく、特に95体積%以上であることがより好ましい。そして、この空隙率は、当然に100体積%以下であり、99体積%以下であることが好ましい。
この空隙率が95体積%未満の場合には、イオン交換樹脂組成物を支持体膜に含浸させた場合の本発明の複合イオン交換膜中に含まれるイオン交換樹脂の含有率が小さくなってイオン伝導性が低下する傾向がある。また、この空隙率が99体積%を超えると、支持体膜や複合膜の強度が低下するという傾向がある。
本発明の支持体膜は、少なくとも一方の面の開孔率が40%以上であることが好ましく、特に50%以上であることがより好ましく、さらに60%以上であれば最も好ましい。また、この開孔率は、当然に100%以下であるが、95%以下であることが好ましい。
この開孔率が40%未満である場合には、支持体膜中にイオン交換樹脂組成物を含浸させる際に、支持体膜の空隙内部にイオン交換樹脂が含浸されにくくなるため、イオン伝導性が低下する場合がある。また、この開孔率が95%を超えると、支持体膜や複合膜の強度が低下するという傾向がある。
本発明に用いる支持体を形成する材質としては、特に限定されず、たとえば、ポリエチレン系、ポリプロピレン系などのポリマーを含むポリオレフィン系樹脂多孔質膜、ポリテトラフルオロエチレン系などのポリマーを含むフッ素系樹脂多孔質膜、ポリイミド系ポリマーを含むポリイミド系樹脂多孔質膜、ポリアミド系ポリマーを含むポリアミド系樹脂多孔質膜、セルロース系ポリマーを含むセルロース系樹脂系多孔質膜、ポリベンザゾール系ポリマーを含むポリベンザゾール系樹脂多孔質膜が挙げられる。
なお、これらの材質の中でも、ポリベンザゾール系ポリマーを含むポリベンザゾール系樹脂多孔質膜が、耐熱性、強度に優れ、薄膜化が可能であるため、本発明に用いる支持体膜を形成する材質として特に好ましい。
ここで、本発明に用いる支持体膜がポリベンザゾール系ポリマーを含むポリベンザゾール系樹脂多孔質膜を材質とする場合には、本発明に用いる支持体膜は、このポリベンザゾール系ポリマーを0.5〜2質量%の範囲の含有率で含む等方性溶液を膜状に成型し、成型されたこの溶液を凝固させてこの支持体膜を得ることにより得られる支持体膜であることが好ましい。
また、このようなポリベンザゾール系ポリマーを材質として含む支持体膜は、ポリベンザゾール系ポリマーを含む溶液から製膜され、貧溶媒と接触させて凝固させられることにより得られた膜を洗浄することにより得られる。
ここで、上記のポリベンザゾール系ポリマーを含む溶液が光学異方性を示す溶液である場合には、イオン交換樹脂を大量に含浸できるような、空隙率の大きな連続した空隙を有する多孔質のポリベンザゾール系ポリマーを材質として含む膜が得られない場合があるため、ポリベンザゾール系ポリマーを含む溶液としては、等方性の溶液を用いることが好ましい。
本発明における支持体膜として使用されるポリベンザゾール系ポリマーとは、ポリマー鎖中にオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環を含む構造のポリマーをいい、下記一般式で表される繰り返し単位をポリマー鎖中に含むものをいう。
Figure 2004169003
ここで、U,U,Uは、芳香族単位を示し、各種脂肪族基、芳香族基、ハロゲン基、水酸基、ニトロ基、シアノ基、トリフルオロメチル基等の置換基を有していても良い。これら芳香族単位は、ベンゼン環などの単環系単位、ナフタレン、アントラセン、ピレンなどの縮合環系単位、それらの芳香族単位が2個以上任意の結合を介してつながった多環系芳香族単位でも良い。また、芳香族単位におけるNおよびBの位置はベンザゾール環を形成できる配置であれば特に限定されるものではない。さらに、これらは炭化水素系芳香族単位だけでなく、芳香環内にN,O,S等を含んだヘテロ環系芳香族単位でも良い。BはO,S,NHを示す。
上記Uは、下記一般式で表されるものが好ましい。
Figure 2004169003
ここで、T、TはCHまたはNを示し、Tは直接結合、−O−,−S−,−SO−,−C(CH−,−C(CF−,−CO−を示す。
は、下記一般式で表されるものが好ましい。
Figure 2004169003
ここで、Wは−O−,−S−,−SO−,−C(CH−,−C(CF−,−CO−を示す。
は、下記一般式で表されるものが好ましい。
Figure 2004169003
これらポリベンザゾール系ポリマーは、上述の繰り返し単位を有するホモポリマーであっても良いが、上記構造単位を組み合わせたランダム、交互あるいはブロック共重合体であっても良く、例えば米国特許出願公開第2002/0091225号明細書、米国特許第4703103号、米国特許第4533692号、米国特許第4533724号、米国特許第4533693号、米国特許第4539567号、米国特許第4578432号等に記載されたものなども例示される。
また、本発明に用いるポリベンザゾール系ポリマーに含まれる結合単位としては、特に限定するものではないが、たとえば、ライオトロピック液晶ポリマーを形成し得る結合単位から選択されることが好ましい。
これらライオトロピック液晶ポリマーを形成し得る結合単位を含むポリベンザゾール系構成単位の具体例としては、下記構造式で表すものを例示することができる。
Figure 2004169003
Figure 2004169003
Figure 2004169003
Figure 2004169003
Figure 2004169003
Figure 2004169003
Figure 2004169003
さらに、これらポリベンザゾール系構成単位だけでなく、他のポリマー構成単位とのランダム、交互あるいはブロック共重合体であっても良い。この時、他のポリマー構成単位としては耐熱性に優れた芳香族系ポリマー構成単位から選ばれることが好ましい。具体的には、ポリイミド系構成単位、ポリアミド系構成単位、ポリアミドイミド系構成単位、ポリオキシジアゾール系構成単位、ポリアゾメチン系構成単位、ポリベンザゾールイミド系構成単位、ポリエーテルケトン系構成単位、ポリエーテルスルホン系構成単位などを挙げることができる。
ポリイミド系構成単位の例としては、下記一般式で表されるものが挙げられる。
Figure 2004169003
ここで、Uは四価の芳香族単位で表されるが、下記構造で表されるものが好ましい。
Figure 2004169003
また、Uは二価の芳香族単位であり、下記構造で表されるものが好ましい。ここで示される芳香環上には、メチル基、メトキシ基、ハロゲン基、トリフルオロメチル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基等の各種置換基が存在していても良い。
Figure 2004169003
これらポリイミド系構成単位の具体例としては、下記構造式で表すものを例示することができる。
Figure 2004169003
Figure 2004169003
ポリアミド系構成単位の例としては、下記構造式で表されるのもが挙げられる。
Figure 2004169003
ここで、U,U,Uはそれぞれ独立に下記構造から選ばれるものが好ましい。ここで示される芳香環上には、メチル基、メトキシ基、ハロゲン基、トリフルオロメチル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基等の各種置換基が存在していても良い。
Figure 2004169003
これらポリアミド系構成単位の具体例としては、下記構造式で表すものを例示することができる。
Figure 2004169003
ポリアミドイミド系構成単位の例としては、下記構造で表されるものが挙げられる。
Figure 2004169003
ここで、Uは上記Uの具体例として示される構造から選ばれるものが好ましい。
これらポリアミドイミド構成単位の具体例としては、下記構造式で表すものを例示することができる。
Figure 2004169003
ポリオキシジアゾール系構成単位の例としては、下記構造式で表されるものが挙げられる。
Figure 2004169003
ここで、U10は上記Uの具体例として示される構造から選ばれるものが好ましい。
これらポリオキシジアゾール系構成単位の具体例としては、下記構造式で表すものを例示することができる。
Figure 2004169003
ポリアゾメチン系構成単位の例としては、下記構造で表されるものが挙げられる。
Figure 2004169003
ここで、U11,U12は、上記Uの具体例として示される構造から選ばれるものが好ましい。
これらポリアゾメチン系構成単位の具体例としては、下記構造式で表すものを例示することができる。
Figure 2004169003
ポリベンザゾールイミド系構成単位の例としては、下記構造式で表されるものが挙げられる。
Figure 2004169003
ここで、U13、U14は上記Uの具体例として示される構造から選ばれるものが好ましい。
これらポリベンザゾールイミド系構成単位の具体例としては、下記構造式で表すものを例示することができる。
Figure 2004169003
ポリエーテルケトン系構成単位、ポリエーテルスルホン系構成単位は、一般に芳香族ユニットをエーテル結合とともにケトン結合やスルホン結合で連結した構造を有するものであり、下記構造式から選択される構造成分を含む。
Figure 2004169003
ここで、U15〜U23はそれぞれ独立に下記構造で表されるものが好ましい。ここで示される芳香環上には、メチル基、メトキシ基、ハロゲン基、トリフルオロメチル基、水酸基、ニトロ基、シアノ基等の各種置換基が存在していても良い。
Figure 2004169003
これらポリエーテルケトン系構成単位の具体例としては、下記構造式で表すものを例示することができる。
Figure 2004169003
これらポリベンザゾール系ポリマー構成単位と共に共重合できる芳香族ポリマー構成単位は、厳密にポリマー鎖内の繰り返し単位を指しているのではなく、ポリマー主鎖中にポリベンザゾール系構成単位と共に存在できる構成単位を示しているものである。これら共重合できる芳香族ポリマー構成単位は一種だけでなく二種以上を組み合わせて共重合することもできる。このような共重合体を合成するには、ポリベンザゾール系ポリマー構成単位からなるユニット末端にアミノ基、カルボキシル基、水酸基、ハロゲン基等を導入して、これらの芳香族系ポリマーの合成における反応成分として重合しても良いし、これらの芳香族系ポリマー構成単位を含むユニット末端にカルボキシル基を導入してポリベンザゾール系ポリマーの合成における反応成分として重合しても良い。
ここで、本発明に用いるポリベンザゾール系ポリマーは、上記のような結合単位をポリ燐酸溶媒中で縮合重合させることにより得られる。
そして、本発明に用いるポリベンザゾール系ポリマーの重合度は極限粘度で表され、この極限粘度は、15dL/g以上であることが好ましく、特に20dL/g以上であることがより好ましい。また、この極限粘度は、35dL/g以下であることが好ましく、特に26dL/g以下であることがより好ましい。
この極限粘度が15dL/g未満の場合には、ポリベンザゾール系ポリマーを材質として得られる支持体膜の強度が低くなる傾向があり、この極限粘度が35dL/gを超えると、等方性の溶液が得られるポリベンザゾール系ポリマー溶液中のポリベンザゾール系ポリマーの濃度範囲が限られ、等方性の条件での支持体膜の製膜が困難となる場合がある。
また、本発明に用いるポリベンザゾール系ポリマーを含む溶液からの支持体膜の製膜方法としては、ドクターブレードなどを用いて、このポリマー溶液を基板上にキャスティングする流延法と呼ばれる製膜方法のほかにも、直線状スリットダイからこのポリマー溶液を押出す方法や、円周状スリットダイからこのポリマー溶液をブロー押出しする方法、二枚の基体に挟んだこのポリマー溶液をローラーでプレスするサンドイッチ法、スピンコート法など、このポリマー溶液を膜状に成型するあらゆる方法が使用できる。
そして、これらの製膜方法の中でも、本発明に用いる支持体膜の目的に適した特に好ましい製膜方法は、流延法、サンドイッチ法である。流延法の基板やサンドイッチ法の基体には、ガラス板や金属板、樹脂フィルムなどの他、凝固時の支持体膜の空隙構造を制御することなどの目的で、種々の多孔質材料を基板、基体として好ましく用いることができる。
また、本発明で用いるポリベンザゾール系ポリマーの溶液は、均一でかつ空隙率の大きな支持体膜を得るためには、等方性条件の組成で支持体膜に製膜することが重要である。
そのため、本発明に用いるポリベンザゾール系ポリマーの溶液中のポリベンザゾール系ポリマーの濃度は、0.5%以上であることが好ましく、特に0.8%以上であることがより好ましい。また、この濃度は、2%以下であることが好ましく、特に1.5%以下であることがより好ましい。
この濃度が0.5%未満の場合には、ポリベンザゾール系ポリマーの溶液の粘度が小さくなり、適用できる製膜方法が限られ、得られる支持体膜の強度が小さくなる場合がある。また、この濃度が2%を超えると、空隙率の大きな支持体膜が得にくい場合や、ポリベンザゾール系ポリマーのポリマー組成や重合度によっては、ポリベンザゾール系ポリマーの溶液が異方性を示す場合がある。
そして、本発明に用いるポリベンザゾール系ポリマーの溶液の濃度を上記で示したような範囲に調整するには、次に示すような方法をとる事ができる。すなわち、重合反応により得られたポリベンザゾール系ポリマーの溶液から一旦ポリベンザゾール系ポリマーの固体を分離し、再度溶媒を加えて溶解することで濃度調整を行なう方法などが具体例として挙げられる。
さらには、ポリ燐酸中で縮合重合反応により得られた状態のポリベンザゾール系ポリマーの溶液から、ポリベンザゾール系ポリマーの固体を分離することなく、そのポリベンザゾール系ポリマーの溶液に溶媒を加えて希釈し、濃度調整を行なう方法なども挙げられる。あるいは、ポリベンザゾール系ポリマーの重合組成を調整することで、上記濃度範囲のポリベンザゾール系ポリマーの溶液を直接得る方法なども挙げられる。
ここで、本発明に用いるポリベンザゾール系ポリマーの溶液の濃度調整に用いるのに好ましい溶媒としては、たとえば、メタンスルホン酸、ジメチル硫酸、ポリ燐酸、硫酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられ、あるいはこれらの溶媒を組み合わせた混合溶媒を用いることもできる。これらの中でも、メタンスルホン酸、ポリリン酸が特に好ましい。
本発明に用いる支持体膜の多孔質構造を実現する手段としては、たとえば、製膜された等方性のポリベンザゾール系ポリマーの溶液を、貧溶媒と接触させて凝固させる方法を用いる。この貧溶媒は、ポリベンザゾール系ポリマーの溶液の溶媒と混和できる溶媒であることが好ましく、液相状態であっても気相状態であってもよい。さらに、気相状態の貧溶媒による凝固と液相状態の貧溶媒による凝固を組合わせる方法も好ましく用いることができる。
ここで、上記の凝固に用いる貧溶媒としては、水、酸水溶液、無機塩水溶液の他、アルコール類、グリコール類、グリセリンなどの有機溶媒などを利用することができる。ただし、使用するポリベンザゾール系ポリマーの溶液との組合せによっては、支持体膜の表面開孔率や空隙率が小さくなったり、支持体膜の内部に不連続な空洞ができたりするなどの問題が生じる場合があるため、凝固に用いる貧溶媒の選択には特に注意が必要である。
また、本発明における等方性のポリベンザゾール系ポリマーの溶液の凝固においては、水蒸気、メタンスルホン酸水溶液、リン酸水溶液、グリセリン水溶液の他、塩化マグネシウム水溶液などの無機塩水溶液などの中から貧溶媒を選択し、さらに凝固条件を選択することにより、支持体膜の表面および内部の構造、空隙率を制御することができる。
これらの中でも、特に好ましい凝固の手段は、水蒸気と接触させて凝固する方法や、凝固の初期において水蒸気に短時間接触させた後に水に接触させて凝固する方法、およびメタンスルホン酸水溶液に接触させて凝固する方法などである。
そして、ポリベンザゾール系ポリマーの溶液の凝固が進むと、支持体膜は収縮しようとする。そのため、凝固が進行する間は、支持体膜の不均一な収縮によるシワの発生などを抑制する目的で、テンターや固定枠を用いる場合もある。また、ガラス板などの基板上に成型したポリベンザゾール系ポリマーの溶液を凝固する場合には、基板面の粗さを制御することで、基板上での支持体膜の収縮を制御する場合もある。
さらに、上記のようにして凝固された支持体膜は、残留する溶媒によるポリベンザゾール系ポリマーの分解の促進や、複合イオン交換膜の材質として使用する際に残留溶媒が流出するなどの問題を避ける目的で、十分に洗浄することが望ましい。この洗浄は、支持体膜を洗浄液に浸漬することで行なうことができる。特に好ましい洗浄液は水である。水による洗浄は、支持体膜を水中に浸漬したときの洗液のpHが5〜8の範囲になるまで行なうことが好ましく、pHが6.5〜7.5の範囲になるまで行なうことがさらに好ましい。
そして、上記に述べた特定の濃度範囲のポリベンザゾール系ポリマーの等方性溶液を用い、上記に述べたような方法から選ばれた適当な凝固手段を用いることにより、本発明に用いる支持体膜の目的に最も適した構造を有するポリベンザゾール系ポリマーを材質とする支持体膜が得られる。すなわち、支持体膜の少なくとも一方の表面に適当な開孔率の開孔部を持つ連続した空隙を有する多孔質の支持体膜である。この支持体膜は、ポリベンザゾール系ポリマーのフィブリル状繊維から形成される立体網目構造からなり、三次元的に連続した空隙を有する。
<複合イオン交換膜の製造方法>
上述のような方法で得られたポリベンザゾール系ポリマーを材質とする多孔質の支持体膜にイオン交換樹脂組成物を含浸させ、複合イオン交換膜を得る方法について説明する。
すなわち、この支持体膜を乾燥させずに、イオン交換樹脂組成物を含む溶液に浸漬し、この支持体膜の内部の液をイオン交換樹脂組成物を含む溶液に置換してから乾燥させる方法により、複合イオン交換膜を得る方法について説明する。
なお、この支持体膜内部の液がイオン交換樹脂組成物を含む溶液の溶媒組成と異なる場合には、その溶媒組成にあわせてあらかじめ内部の液を置換しておく方法を採る場合もある。
ここで、等方性のポリベンザゾール系ポリマーの溶液から得られる多孔質の支持体膜は、乾燥により支持体膜の空隙内部の液体の体積が減少するのにしたがって、空隙構造が収縮するため、支持体膜の見かけの体積が大幅に減少するという特徴を有する。
そのため、この支持体膜の内部にイオン交換樹脂組成物を含浸することなく金属の枠などに固定して面方向の収縮を制限して乾燥させた場合には、収縮は膜厚方向に起こり、この支持体膜における乾燥後の見かけの膜厚は、乾燥前の膜厚の0.5〜10%の範囲になることが通常である。
なお、本発明に用いる支持体膜以外の多孔質支持体膜、たとえば、延伸ポリテトラフルオロエチレンポリマーを材質とする多孔質膜からなる支持体膜ではこのような大幅な収縮は起こらない。
本発明に用いる支持体膜のこのような特徴により、この支持体膜の空隙内部の液をイオン交換樹脂組成物を含む溶液に置換してから乾燥させた場合には、空隙内部に含浸されたこのイオン交換樹脂組成物を含む溶液の溶媒が蒸発して、このイオン交換樹脂組成物を含む溶液の体積が減少するにつれて、この支持体膜も収縮する。そのため、この支持体膜の内部の空隙が析出したイオン交換樹脂組成物によって満たされた、緻密な複合イオン交換膜の構造を容易に得ることができる。この複合イオン交換膜の構造によって、本発明の複合イオン交換膜は、優れた寸法安定性と機械強度を示すことになる。
そして、上記に記述したイオン交換樹脂組成物を含む溶液の溶媒は、ポリベンザゾール系ポリマーを材質とする支持体膜を溶解、分解あるいは極端に膨潤させず、かつイオン交換樹脂組成物を溶解できる溶媒の中から選ぶことができる。
ただし、イオン交換樹脂組成物を含む溶液を支持体膜に含浸させた後に、溶媒を除去してイオン交換樹脂組成物を析出させるためには、溶媒は加熱や減圧などの手段を用いて蒸発させるなどして除去することができるものであることが好ましい。
このような溶媒としては、たとえば、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの非プロトン性極性溶媒や、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、アセトンやメチルエチルケトンなどの極性溶媒、クレゾールなどのフェノール類、水、およびこれらの混合溶媒などを挙げることができる。
本発明に用いる支持体膜は、ポリベンザゾール系ポリマーを材質とする支持体膜である場合には、高い耐熱性を有する。そのため、100℃程度の温度からクリープを生じるポリテトラフルオロエチレン製の支持体膜を用いる従来公知の複合イオン交換膜の作製では使用できない、高沸点の溶媒を含むイオン交換樹脂組成物の溶液を使用して複合イオン交換膜を作製できる。このことからも、本発明に用いる支持体膜は、多くの種類のイオン交換樹脂組成物が選択できるという観点から優れた特徴を有するといえる。
なお、本発明に用いるイオン交換樹脂組成物の溶液中のイオン交換樹脂の濃度は、特に限定されるものではないが、1質量%以上であることが好ましく、特に10質量%以上であることがより好ましい。また、この濃度は、50質量%以下であることが好ましく、特に40質量%以下であることがより好ましい。この濃度が1質量%未満の場合には、複合膜中のイオン交換樹脂含有量が低下するという傾向があり、この濃度が50質量%を超えると、複合膜中で複合層の厚みが占める割合が低下して補強効果が小さくなったり、複合膜の膜厚が大きくなりすぎて発電性能が低下したり、支持体膜へのイオン交換樹脂溶液の含浸が不完全になって複合膜中に空隙が生じやすくなるという傾向がある。
さらに、本発明の複合イオン交換膜に占めるイオン交換樹脂の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、特に80質量%以上であることがより好ましい。また、この含有率は当然に100質量%未満であるが、99質量%以下であることが好ましい。この含有率が50質量%未満の場合には、複合イオン交換膜の導電抵抗が大きくなったり、複合イオン交換膜の保水性が低下したりして、十分な発電性能が得られないため好ましくない傾向がある。また、この含有率が99質量%を超えると、複合膜の強度や耐膨潤性が低下するという傾向がある。
<複合イオン交換膜の構造>
本発明の複合イオン交換膜の厚みは、10μm以上であることが好ましく、特に20μm以上であることがより好ましい。また、この厚みは、500μm以下であることが好ましく、特に100μm以下であることがより好ましい。この厚みが10μm未満の場合には、燃料のクロスオーバーなどが大きくなるという問題が生じやすくなる。また、この厚みが500μmを超えると、複合イオン交換膜の導電抵抗が増大する傾向がある。
本発明の複合イオン交換膜の厚みは、支持体膜を作製する際に支持体膜を形成するポリベンザゾール系ポリマーの溶液の濃度やクリアランスを調整したり、イオン交換樹脂組成物を含む溶液の濃度を調整することによって、制御することができる。
また、本発明の複合イオン交換膜は、上記のイオン交換樹脂組成物からなる表面層を上記の支持体膜の両面に備えることが好ましい。
すなわち、本発明の複合イオン交換膜は、図1に示すように、支持体膜とイオン交換樹脂組成物とを備える複合層2を挟む形で、この複合層2の両面に支持体膜を含まないイオン交換樹脂組成物からなる表面層1,3を有しているとさらに優れた特性を示す。このような構造を有することにより、本発明の複合イオン交換膜は、高い機械的強度を有し、かつ表面に電極層を形成させた場合の電極層との密着性に優れるという優れた特性を有することとなるためである。
ここで、この表面層のそれぞれの厚みは、1μm以上であることが好ましく、特に2μm以上であることがより好ましい。また、この厚みは、50μm以下であることが好ましく、特に30μm以下であることがより好ましい。さらに、この厚みは、複合イオン交換膜の全厚みの半分を超えないことが好ましい。
この厚みが1μm未満の場合には、電極層との密着性が低下し、イオン伝導性が低下する場合がある。またこの厚みが50μmを超えるか、あるいは複合イオン交換膜の全厚みの半分を超える場合には、複合層による補強の効果が複合イオン交換膜の最外表面まで及ばず、複合イオン交換膜が吸湿した場合に表面層のみが大きく膨潤して表面層が複合層から剥離する場合がある。
また、本発明の複合イオン交換膜においては、機械的強度やイオン伝導性、表面に形成される架橋イオン交換樹脂組成物層の耐剥離性などの特性をさらに向上させる目的で、複合イオン交換膜を適当な条件で熱処理する方法も好ましく用いることができる。
また、本発明の複合イオン交換膜においては、表面に形成されるイオン交換樹脂組成物の表面層の厚みを調整するために、この複合イオン交換膜をさらにイオン交換樹脂組成物を含む溶液に浸漬してもよい。さらに、本発明の複合イオン交換膜においては、この複合イオン交換膜にイオン交換樹脂組成物を含む溶液を塗布したりしてから乾燥することにより、イオン交換樹脂組成物の層の付着量を増加させてもよい。
あるいは、本発明の複合イオン交換膜においては、この複合イオン交換膜をイオン交換樹脂組成物を含む溶液に浸漬した後に、支持体膜の表面に付着したイオン交換樹脂組成物を含む溶液の一部を、スクレーパー、エアナイフ、ローラーなどで掻落としたり、ろ紙やスポンジのような溶液吸収性のある材料で吸収したりすることにより、イオン交換樹脂組成物の層の付着量を減少させたりする方法も用いることができる。
さらには、本発明の複合イオン交換膜においては、熱プレスをかけることによりイオン交換樹脂組成物の層の密着性をさらに向上させるなどの方法を併せて用いることもできる。
そして、このような構造を有する、本発明の複合イオン交換膜は、高いイオン伝導性を有しながら、機械的強度に優れる。また、その特性を生かして、本発明の複合イオン交換膜は、固体高分子形燃料電池の高分子固体電解質膜として利用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<イオン交換樹脂の合成>
まず、本発明の実施例および比較例に用いるイオン交換樹脂を、下記の合成例のようにして合成した。
(i)合成例1
まず、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸ソーダ12.28g(25.0mmol)、4,4’−クロロジフェニルスルホン7.18g(25.0mmol)、4,4’−ビフェノール9.31g(50.0mmol)、炭酸カリウム7.95g(57.5mmol)、N−メチル−2−ピロリドン100ml、トルエン15mlを、窒素導入管、攪拌翼、ディーンスタークトラップ、温度計を取り付けた200ml枝付きフラスコに入れ、オイルバス中で攪拌しつつ窒素気流下で加熱した。
次いで、トルエンとの共沸による脱水を140℃で行なった後、トルエンを全て留去した。その後、200℃に昇温し、15時間加熱した。続いて、室温まで冷却した溶液を2000mlの純水に注ぎイオン交換樹脂を再沈させた。そして、濾過したイオン交換樹脂は50℃で減圧乾燥して、合成例1のイオン交換樹脂を得た。
(ii)合成例2〜12
モノマーの種類およびモル比を表1に示すように変えた点以外は、合成例1と同様にして、合成例2〜12のイオン交換樹脂を合成した。なお、イオン交換樹脂の収率および対数粘度の測定結果を表1に併せて示す。
Figure 2004169003
(iii)比較合成例1
まず、ポリフェニルスルホン(アルドリッチ社製、商品名Polyphenylsulfone)10gを、100gの濃硫酸に溶解した。次いで、5℃の冷水浴中で30%発煙硫酸4ml(SO3として0.03mol)を滴下し、3時間反応させた。その後、反応溶液を水に注いで再沈し、遊離の酸が洗浄液にpH試験紙で検出できなくなるまで水で洗浄し、濾過した後、50℃で減圧乾燥して、比較合成例1のスルホン化ポリフェニルスルホンを得た。なお、収率は90%であった。
<実施例1>
まず、ポリ燐酸中に極限粘度25dL/gのポリパラフェニレンシスベンゾビスオキサゾールポリマーを14質量%含んだドープに、メタンスルホン酸を加えて希釈し、ポリパラフェニレンシスベンゾビスオキサゾール濃度1質量%の等方性溶液を調製した。
次いで、この溶液を、90℃に加熱したガラス板上にクリアランス300μmのアプリケータを用いて製膜速度5mm/秒で製膜した。このようにしてガラス板上に製膜したドープ膜をそのまま25℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽中に置いて1時間凝固し、生成した膜を洗液がpH7±0.5を示すまで水洗を行って支持体膜を作成した。
続いて、作成した支持体膜は両面に開孔部を持つ連続した空孔を有する多孔質の膜であることを原子間力顕微鏡による表面形態観察および、透過型電子顕微鏡による断面形態観察により確認した。なお、観察による測定の結果、支持体膜の開孔率は69%、空隙率は98%だった。
その後、この支持体膜を水中でステンレス製のフレームに固定し、ジメチルアセトアミド(DMAc)25%水溶液、DMAc50%水溶液、DMAc75%水溶液の順にそれぞれ1時間ずつ浸漬した後、最終的にDMAcに浸漬して支持体膜に含まれる溶媒を水からDMAcに置換した。
そして、合成例1で重合反応により作製したイオン交換樹脂10gを40gのDMAcとともに3日間攪拌してイオン交換樹脂を含む溶液を作成した。次いで、上記の支持体膜をこのイオン交換樹脂を含む溶液に25℃で15時間浸漬した後溶液から取出し、膜の内部に含浸および膜表面に付着したイオン交換樹脂を含む溶液中の溶媒を熱風により揮発させ乾燥させた。
さらに、乾燥させた膜は120℃で一晩減圧乾燥を行なった。その後、膜を80℃の1mol/L硫酸で1時間処理してスルホン酸基を酸型に変換し、さらに酸が検出できなくなるまで水で洗浄し、実施例1の複合イオン交換膜を得た。
<実施例2〜12>
複合イオン交換膜の材質となるイオン交換樹脂を、表2に示す合成例のイオン交換樹脂に変更した点以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜12の複合イオン交換膜を作製した。
Figure 2004169003
<比較例1>
比較例1においては、実施例1〜12とは異なり、合成例1で合成したイオン交換樹脂を複合膜化せず、単独で膜を作製した。
すなわち、まず、合成例1のイオン交換樹脂0.8gを、3.2gのジメチルアセトアミドに溶解した溶液を、300μmの厚みでガラス板上にキャストし、70℃で3日間減圧乾燥した。
次いで、ガラス板から膜を剥離した後、膜を60℃の1mol/L硫酸で1時間処理してスルホン酸基を酸型に変換し、さらに酸が検出できなくなるまで水で洗浄した。そして、洗浄した膜を風乾し、比較例1のイオン交換膜を得た。
<比較例2〜12>
イオン交換膜の材質となるイオン交換樹脂を、表2に示す合成例のイオン交換樹脂に変更した点以外は、比較例1と同様にして、比較例2〜12の複合イオン交換膜を作製した。
<比較例13>
比較合成例1で重合反応により作製したスルホン化ポリフェニルスルホンを用いた他は、実施例1と同様にして、複合イオン交換膜を作製した。比較合成例のイオン交換樹脂の溶液は粘度が高く、ややゲル的な挙動を示した。
<各種測定方法および評価方法>
本発明の実施例および比較例においては、各種測定方法および評価方法は以下の方法に従って行なった。これらの測定方法および評価方法の結果得られた各種測定結果および評価結果を、表1および表2に示す。
(i)極限粘度の測定方法
支持体膜を形成するポリマーについて、メタンスルホン酸を溶媒として、0.5g/Lの濃度に調整したポリマー溶液の粘度をウベローデ型粘度計を用いて25℃恒温槽中で測定し、極限粘度を算出した。
(ii)支持体膜の表面開孔率の測定方法
支持体膜の表面開孔率は次の方法により測定した。
まず、水洗した支持体膜内部の水をエタノールに置換、さらに酢酸イソアミルに十分置換した後、(株)日立製作所製、臨界点乾燥装置(HCP−1)を用いて、CO2臨界点乾燥を施した。
次いで、このようにして臨界点乾燥した支持体膜に、厚さ150オングストロームの白金コートを施し、(株)日立製作所製、SEM(S−800)を用いて加速電圧10kV、試料傾斜角度30度で、走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行った。
続いて、図2で示すように、撮影した支持体膜の表面の撮影倍率1万倍の走査型電子顕微鏡写真上で、5μm角に相当する視野を選び、膜の最外表面に相当するポリマー部分を白、それ以外の部分を黒に色分けした後、イメージスキャナーを用いて画像をコンピューターに取り込み、米国Scion社製の画像解析ソフトである、Scion Imageを用いて、画像のヒストグラムから画像中の黒部分が占める比率を測定した。なお、図2において、符号4は支持体膜のフィブリルを示し、符号5は空隙を示す。
そして、上記の操作を一つのサンプルに対して各3回行い、その平均値を計算して、支持体膜の表面開孔率とした。
(iii)支持体膜の空隙率の測定方法
支持体膜の空隙率は次の方法により測定した。
まず、含水状態の支持体膜の重量と、絶乾状態の支持体膜の重量と、の差から求められた水の重量を、水の密度で除して、膜内の空隙を満たす水の体積Vw[mL]を得た。
次いで、Vwと含水状態の膜の体積Vm[mL]から以下の計算により支持体膜の空隙率を求めた。
支持体膜の空隙率[%]=Vw/Vm×100
(iv)複合イオン交換膜を構成する各層の厚さの測定方法
複合イオン交換膜を構成する複合層の厚さ、およびこの複合層を挟む形で複合層の両面に形成された支持体膜を含まないイオン交換樹脂組成物からなる表面層の厚さは、下記のようにして測定した。
まず、幅300μm×長さ5mmに切り出した複合イオン交換膜片を、ルベアック812(ナカライテスク(株)製)/ルベアックNMA(ナカライテスク(株)製)/DMP30(TAAB製)=100/89/4の組成とした樹脂で包埋し、60℃で12時間硬化させて試料ブロックを作製した。
次いで、ウルトラミクロトーム(LKB製、2088ULTROTOME V )を用いて、平滑な断面が露出するようブロックの先端をダイヤモンドナイフ(住友電気工業(株)製、SK2045)で切削した。
続いて、このようにして露出させた複合イオン交換膜の断面を光学顕微鏡で写真撮影し、既知の長さのスケールを同倍率で撮影したものと比較することで各層の厚みを測定した。
支持体膜の空隙率が大きい場合などで、少なくとも一方の面の表面層とその内側の複合層とが明確な界面を形成せずに、界面付近の構造が連続的に変化している場合があるが、その場合は光学顕微鏡で連続的な構造の変化が確認できる部分のうち、複合イオン交換膜の外表面に最も近い部分を複合層の最外表面として、そこから複合イオン交換膜の外表面までの距離を表面層の厚みとした。
(v)イオン伝導性の測定方法
まず、自作測定用プローブ(テフロン(登録商標)製)上で、短冊状複合イオン交換膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、80℃95%RHの恒温、恒湿オーブン((株)ナガノ科学機械製作所製、LH−20−01)中に試料を保持し、白金線間の10KHzにおける交流インピーダンスをSOLARTRON社製、1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。
その際、極間距離を変化させて測定し、極間距離と抵抗測定値をプロットした勾配から、以下の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルしたイオン伝導率を算出した。
イオン伝導率[S/cm]=1/膜幅[cm]×膜厚[cm]×抵抗極間勾配[Ω/cm]
(vi)イオン交換樹脂の対数粘度の測定方法
イオン交換樹脂を、ポリマー濃度0.25g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドン溶液に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。
(vii)複合イオン交換膜のイオン交換当量の測定方法
まず、複合イオン交換膜100mgを、0.01NのNaOH水溶液50mlに浸漬し、25℃で一晩攪拌した。その後、0.05NのHCl水溶液で中和滴定した。中和滴定には、平沼産業(株)製、電位差滴定装置COMTITE−980を用いた。イオン交換当量は下記式で計算して求めた。
イオン交換当量[meq/g]=(10−滴定量[ml])/2
(viii)複合イオン交換膜のイオン交換樹脂(ICP)含有率の測定方法
複合イオン交換膜のイオン交換樹脂含有率は以下の方法により測定した。
まず、110℃で6時間真空乾燥させた複合イオン交換膜の目付けDc[g/m2]を測定した。次いで、複合イオン交換膜の作製に用いたのと同じ製造条件の支持体膜を、イオン交換樹脂組成物を複合化させずに乾燥させて乾燥支持体膜の目付けDs[g/m2]を測定した。そして、これらの値から、以下の計算により複合イオン交換膜のイオン交換樹脂含有率を求めた。
イオン交換樹脂含有率[質量%]=(Dc−Ds)/Dc×100
(ix)複合イオン交換膜の膨潤性の評価方法
複合イオン交換膜の膨潤性は以下のようにして測定した。
まず、複合イオン交換膜を80℃の熱水中で3時間処理したのち、取出してすぐに複合イオン交換膜の膜厚を測定した。熱水処理前の複合イオン交換膜の膜厚に対する変化率(%)を複合イオン交換膜の膨潤性とした。
(x)メタノール透過性の測定
二つのガラス水槽を、サンプルを隔膜として連結し、片方の水槽に5Mのメタノール水溶液、もう片方に蒸留水をそれぞれ入れ、蒸留水を入れた側のメタノール濃度を適当な時間ごとに定量した。メタノールの定量はガスクロマトグラフィー法で行い、あらかじめ所定の濃度のメタノール溶液を注入したときのピーク面積から作成した検量線を用いてメタノール濃度を算出した。得られたメタノール濃度を経過時間に対してプロットしたときの傾きから、以下の式によりメタノール透過速度を求めた。
メタノール透過速度(mmol・m−2・sec−1)=プロットの傾き(mmol/sec)÷サンプル面積(m
これらの測定結果および評価結果から分かるように、比較例1〜12のイオン交換樹脂を単独の材質とするイオン交換膜は、イオン伝導性自体は良好であるものの膨潤が著しいため、燃料電池の高分子固体電解質膜として好適に用いることは困難である。
また、比較例13の複合イオン交換膜は、膨潤自体は抑制されているものの、複合化が不良であり、イオン伝導性も低くなってしまっていたため、やはり燃料電池の高分子固体電解質膜として好適に用いることは困難である。
一方で、実施例1〜12の複合イオン交換膜は、イオン伝導性が良好であるとともに、複合化の点でも良好であり、さらに膨潤についても抑制されているため、燃料電池の高分子固体電解質膜として好適に用いることができる、優れた特性を有する複合イオン交換膜であることが明らかとなった。また、実施例1〜12の複合イオン交換膜は、対応するイオン交換樹脂のみからなるイオン交換膜である比較例13に比べてイオン伝導性がほとんど低下せずにメタノール透過性が小さくなっている。中でもイオン交換容量の小さい実施例4、10〜12の複合イオン交換膜は、メタノール透過性が特に小さいため、直接メタノール型燃料電池の高分子固体電解質膜として好適に用いることができる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の複合イオン交換膜の一例の断面構造の概略を示す模式図である。 本発明に用いる支持体膜の一例を、イオン交換樹脂組成物との複合化前に臨界点乾燥して、その表面を走査型電子顕微鏡で観察した像の写真を写した図である。
符号の説明
1,3 表面層、2 複合層、4 支持体膜のフィブリル、5 空隙。

Claims (12)

  1. イオン交換樹脂組成物と、膜を貫通する連続した空隙を有する支持体膜とを備える複合イオン交換膜であって、
    前記支持体膜は、前記空隙中に前記イオン交換樹脂組成物を含浸する支持体膜であり、前記イオン交換樹脂組成物は、化学式1で表される化合物と、芳香族ジハロゲン化合物と、ビスフェノール化合物とを主成分とするモノマー成分を、アルカリ金属の炭酸塩および/または重炭酸塩と混合し、これらの混合物を有機溶媒中で重合させて得られる芳香族ポリエーテルおよび/またはその誘導体を主成分とするイオン交換樹脂を含有するイオン交換樹脂組成物である、複合イオン交換膜。
    Figure 2004169003
    (なお、化学式1において、Qは−S(=O)−基または−C(=O)−基を表わす。XはH,Li,Na,K原子のいずれかを表わす。YはF,Cl,Br,I原子のいずれかを表わす。)
  2. イオン交換樹脂組成物と、膜を貫通する連続した空隙を有する支持体膜とを備える複合イオン交換膜であって、
    前記支持体膜は、前記空隙中に前記イオン交換樹脂組成物を含浸する支持体膜であり、前記イオン交換樹脂組成物は、化学式2Aと化学式2Bとで表される結合単位をそれぞれ化学式2A:化学式2B=n:mの比率で含有するイオン交換樹脂を含有するイオン交換樹脂組成物である、複合イオン交換膜。
    Figure 2004169003
    (なお、化学式2Aおよび化学式2Bにおいて、ZはH,Li,Na,K,脂肪族または芳香族アミン由来のカチオンのいずれかを表わす。ArおよびArはそれぞれ独立して1種類以上の二価の有機基を表わす。Arは電子吸引性基を有する芳香環を含む1種類以上の二価の有機基を表わす。nは1〜1000の範囲の整数を、mは0〜1000の範囲の整数を、それぞれ表わす。)
  3. 前記Arは、化学式3、化学式4、化学式5で表される結合単位からなる群より選ばれる1種類以上の結合単位である、請求項2に記載の複合イオン交換膜。
    Figure 2004169003
    (なお、化学式3〜化学式5において、Aは他の結合単位との結合部位を表わす。)
  4. 前記Arおよび前記Arは、化学式6および化学式7で表される結合単位よりそれぞれ独立して選ばれる1種類以上の結合単位である、請求項2または3に記載の複合イオン交換膜。
    Figure 2004169003
    (なお、化学式6および化学式7において、Aは他の結合単位との結合部位を表わす。)
  5. 前記Arおよび前記Arは、いずれも前記化学式6で表される結合単位であり、前記Arは、前記化学式3で表される結合単位であり、前記nおよび前記mは、数式1を満たす1〜1000の範囲の整数である、請求項2に記載の複合イオン交換膜。
    0.2≦n/(n+m)≦0.8 (数式1)
  6. 前記Arおよび前記Arは、いずれも前記化学式6で表される結合単位であり、前記Arは、前記化学式4で表される結合単位であり、前記nおよび前記mは、数式2を満たす1〜1000の範囲の整数である、請求項2に記載の複合イオン交換膜。
    0.2≦n/(n+m)≦0.8 (数式2)
  7. 前記Arおよび前記Arは、いずれも前記化学式7で表される結合単位であり、前記Arは、前記化学式3で表される結合単位であり、前記nおよび前記mは、数式3を満たす1〜1000の範囲の整数である、請求項2に記載の複合イオン交換膜。
    0.3≦n/(n+m)≦0.7 (数式3)
  8. 前記イオン交換樹脂組成物からなる表面層を前記支持体膜の両面に備える、請求項1〜7のいずれかに記載の複合イオン交換膜。
  9. 前記表面層のそれぞれの厚みは、1〜50μmの範囲であり、かつ前記複合イオン交換膜の全厚みの半分を超えない範囲である、請求項8に記載の複合イオン交換膜。
  10. 前記支持体膜の少なくとも一方の面の開孔率は、40〜95%の範囲にある、請求項8または9に記載の複合イオン交換膜。
  11. 前記支持体膜は、ポリベンザゾール系ポリマーを材質として含む、請求項8〜10のいずれかに記載の複合イオン交換膜。
  12. 前記支持体膜は、前記ポリベンザゾール系ポリマーを0.5〜2質量%の範囲の含有率で含む等方性溶液を膜状に成型し、成型された前記溶液を凝固させて前記支持体膜を得ることにより得られる支持体膜である、請求項11に記載の複合イオン交換膜。
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