JP2004168619A - ガラス又は陶磁器の絵付け用組成物、及びこれを用いた絵付け方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】パール調が失われない程度の焼成温度で絵付け可能であり、耐摩耗性に優れたガラス又は陶磁器のパール調絵付け技術の提供。
【解決手段】(A)ホウ酸系化合物、(B)パール系顔料、及び(C)分散媒体を含有してなるガラス又は陶磁器の絵付け用組成物。(A)ホウ酸系化合物を含有するトップコート用組成物。これら組成物を使用した、絵付け方法、絵付け転写シート、絵付けシート、ガラス及び陶磁器。
【選択図】なし
【解決手段】(A)ホウ酸系化合物、(B)パール系顔料、及び(C)分散媒体を含有してなるガラス又は陶磁器の絵付け用組成物。(A)ホウ酸系化合物を含有するトップコート用組成物。これら組成物を使用した、絵付け方法、絵付け転写シート、絵付けシート、ガラス及び陶磁器。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス又は陶磁器にパール調の色彩を絵付けする技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス、陶磁器等の表面に高級感を与える装飾として、パール調の絵付けが行われている。パール調の絵付けでは、パール系顔料を使用することが一般的で、現在では、鱗片状の雲母を酸化チタンでコーティングしたものが主として使用されている。また、雲母を酸化鉄でコーティングしたものは、金色を示すパール系顔料として使用されている。
【0003】
パール系顔料をガラス、陶磁器等に絵付けする場合、鉛入りガラスフリットにパール系顔料を分散し、焼成して絵付けする方法が行われている。しかしながら、この方法では、絵付け部のパール調の鮮やかさが不十分であり、また絵付け部が簡単にはがれるため耐摩耗性も不十分であり、従って食器用には適さないものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、パール調が失われない程度の焼成温度で絵付け可能であり、絵付け部の耐摩耗性及びパール系の色調に優れたガラス又は陶磁器のパール調絵付け技術の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意検討を重ねた結果、ホウ酸系化合物及びパール系顔料を含有する組成物がパール系顔料のパール調が失われない程度の焼成温度でガラス化し、ガラス又は陶磁器にパール調の絵付けができること、並びに該組成物を使用すると耐摩耗性に優れた絵付け部を作成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の絵付け用組成物、トップコート用組成物、絵付け方法、絵付け転写シート、絵付けシート、ガラス及び陶磁器に関する。
【0007】
項1.
(A)ホウ酸系化合物、
(B)パール系顔料、及び
(C)分散媒体
を含有してなるガラス又は陶磁器の絵付け用組成物。
【0008】
項2.(A)成分と(B)成分の合計重量に対する、(A)成分の配合量が50〜99重量%であり、(B)成分の配合量が1〜50重量%である項1に記載の絵付け用組成物。
【0009】
項3.(C)成分が、(A)成分と(B)成分の合計重量を100重量部として、30〜2000重量部である項1又は2に記載の絵付け用組成物。
【0010】
項4.(A)成分がホウ酸、無水ホウ酸及びホウ酸系ガラスフリットからなる群から選択される少なくとも1種のホウ酸系化合物である項1〜3のいずれかに記載の絵付け用組成物。
【0011】
項5.(B)成分が酸化金属でコーティングされた雲母である項1〜4のいずれかに記載の絵付け用組成物。
【0012】
項6.(C)成分がポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂及びポリイソプレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有する項1〜5のいずれかに記載の絵付け用組成物。
【0013】
項7.
(A)ホウ酸系化合物、
(B)パール系顔料、
(C)分散媒体、及び
(D)二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物
を含有してなるガラス又は陶磁器の絵付け用組成物。
【0014】
項8.
(A)ホウ酸系化合物
を含有し、
任意成分として
(C)分散媒体、及び
(D)二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物
を含有してなるガラス又は陶磁器のトップコート用組成物。
【0015】
項9.
(A)ホウ酸系化合物、及び
(C)分散媒体
を含有し、
任意成分として
(D)二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物
を含有してなるガラス又は陶磁器のトップコート用組成物。
【0016】
項10.トップコート用組成物おいて(A)成分配合量が1〜90重量%、(C)成分配合量が10〜99重量%であり、(D)成分配合量が(A)成分の0〜5重量%である項9に記載のトップコート用組成物。
【0017】
項11.転写シートに絵付け用転写層を有し、該転写層が項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物を含む絵付け転写シート。
【0018】
項12.転写シート、絵付け用転写層及びトップコート層をこの順に有し、該転写層が項1〜7のいずれかに記載の組成物を含み、該トップコート層が項8〜10のいずれかに記載のトップコート用組成物を含む絵付け転写シート。
【0019】
項13.アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層を最外層に有する項11又は12に記載の絵付け転写シート。
【0020】
項14.離型紙及び絵付け用印刷層を有し、該印刷層が項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物を含む絵付けシート。
【0021】
項15.離型紙、絵付け用印刷層及びトップコート層をこの順に有し、該印刷層が項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物を含み、該トップコート層が項8〜10のいずれかに記載のトップコート用組成物を含む絵付けシート。
【0022】
項16.アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層を最外層に有する項14又は15に記載の絵付けシート。
【0023】
項17.ガラス又は陶磁器に対する絵付け方法であって、項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けする工程、及び該組成物が絵付けされたガラス又は陶磁器を該組成物中の(A)成分がガラス化する温度以上で焼成する工程を含む絵付け方法。
【0024】
項18.ガラス又は陶磁器に対する絵付け方法であって、請求項11〜13のいずれかに記載の絵付け転写シートを用いてガラス又は陶磁器に絵付けする工程、及び該組成物が絵付けされたガラス又は陶磁器を該組成物中の(A)成分がガラス化する温度以上で焼成する工程を含む絵付け方法。
【0025】
項19.ガラス又は陶磁器に対する絵付け方法であって、請求項14〜15のいずれかに記載の絵付けシートを用いてガラス又は陶磁器に絵付けする工程、及び該組成物が絵付けされたガラス又は陶磁器を該組成物中の(A)成分がガラス化する温度以上で焼成する工程を含む絵付け方法。
【0026】
項20.項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けする工程が、該組成物をノンインパクト印刷でガラス又は陶磁器に印刷する工程を含むことを特徴とする項17に記載の絵付け方法。
【0027】
項21.ホウ酸系ガラスの内部又は表面にパール系顔料が分散してなる絵付け部を有するガラス又は陶磁器。
【0028】
項22.ガラス又は陶磁器が、食器、タイル、装飾品、花瓶、壺、土鍋、結晶化ガラス製の鍋及び電子レンジのターンテーブルからなる群から選択される少なくとも1種である項21に記載のガラス又は陶磁器。
【0029】
項23.さらに、絵付け部上に、項8〜10のいずれかに記載のトップコート用組成物を焼成して得られたトップコート層を含む項21に記載のガラス又は陶磁器。
【0030】
項24.項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けし、該ガラス又は陶磁器を該組成物中の(A)成分がガラス化する温度以上で焼成することにより得ることのできる絵付けされたガラス又は陶磁器。
【0031】
項25.項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物、項8〜10のいずれかに記載のトップコート用組成物、項11〜13の絵付け転写シート及び項14〜16の絵付けシートからなる群から選択される少なくとも1種を用いて絵付けされた絵付け部を有するガラス又は陶磁器。
【0032】
【発明の実施の形態】
本明細書において、絵付けとは、絵付け対象(ガラス、陶磁器)に対し、パール調の色彩を有する模様(文字、線図、絵、記号等)を付与することを意味し、絵付け対象の全面または一定の範囲に同一のパール調の色彩を付与することを包含する。
【0033】
(1)絵付け用組成物
本発明の絵付け用組成物は、
(A)ホウ酸系化合物、
(B)パール系顔料、及び
(C)分散媒体
を含有してなることを特徴とする。
【0034】
本発明の絵付け用組成物は、上記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を混合することによって調製できる。
【0035】
また、本発明の絵付け用組成物の粘度は、ガラス又は陶磁器への絵付け方法等に応じて適宜選択すればよく、主として(C)成分の種類、配合量等を調整することにより所望の粘度とすることができる。例えば、絵付け方法がスクリーン印刷の場合であれば比較的粘度の高いものが好ましく、インクジェット印刷の場合であれば比較的粘度の低いものが好ましい。
【0036】
以下、本発明の絵付け用組成物の構成成分について説明する。
【0037】
(2)(A)成分:ホウ酸系化合物
本発明の絵付け用組成物はホウ酸系化合物を含有し、該ホウ酸系化合物が焼成されて形成されるホウ酸系ガラスによってパール系顔料をガラス又は陶磁器に定着させる。ホウ酸系化合物は、焼成によりガラス化するホウ素含有化合物であり、その例としては、ホウ酸(オルトホウ酸)、メタホウ酸、無水ホウ酸、テトラオキソ二ホウ酸、ペルオキソホウ酸、フルオロホウ酸、リン酸ホウ素、これらの塩(ホウ砂など)及びホウ酸系ガラスフリットが挙げられる。ホウ酸系化合物は、1種単独で又2種以上混合して使用しても良い。上記塩としては、Na、Ca、Ba、Mn、Fe、Ni、希土類、Al、In、Tl塩等が例示される。また、ホウ酸系ガラスフリットは、上記のホウ酸系化合物をガラス化して得られるフリットをいう。 好ましいホウ酸系化合物は、ホウ酸、無水ホウ酸、ホウ酸系ガラスフリットであり、より好ましホウ酸系化合物は、ホウ酸、無水ホウ酸である。
【0038】
(A)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計重量に対し、通常40〜99重量%であり、50〜99重量%が好ましく、60〜95重量%がより好ましく、70〜90重量%がより一層好ましく、75〜85重量%が最も好ましい。
【0039】
ホウ酸系化合物は、平均粒子径(超音波減衰法)が0.01〜200μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜100μm、より一層好ましくは0.1〜100μmである。上記粒子径のホウ酸系化合物は、ホウ酸系化合物を公知の粉砕方法によって粉砕することにより得られる。例えば、ホウ酸又は無水ホウ酸は、ボールミル等で粉砕することによって、上記粒子径のホウ酸又は無水ホウ酸が得られる。粉砕にボールミルを使用する場合、セラミックス製ボールを有するボールミルが好ましい。
【0040】
また、ホウ酸系化合物の粉砕時には、二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を少量添加することが、ホウ酸系化合物の凝集を防止するため好ましい。なお、本明細書において、二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を(D)成分と称することがある。
【0041】
また、ホウ酸系化合物の粉砕時には、少量の溶剤を添加しても良い。溶剤の添加により粒子の飛散を抑制できる。溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素又は脂肪族炭化水素が例示される。
【0042】
(3)(D)成分:二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム
(D)成分の添加により、(A)成分の凝集を防止することができる。従って、(A)成分が凝集しない場合には必須ではない。(D)成分は平均粒子径が5〜50nmであることが好ましく、7〜40nmであることがさらに好ましい。
【0043】
また、(D)成分を配合するとガラス化する温度が上昇することがある。好ましい(D)成分の配合量は(A)成分に対して、0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%、より好ましくは0.01〜3重量%である。
【0044】
(4)(B)成分:パール系顔料
パール系顔料は、顔料の反射光が干渉をおこして真珠光沢、虹彩色等の光沢を呈するものが好ましい。このようなパール系顔料は、非常に薄い板状の透明な結晶粒子からなるものが多く、例えば、天然又は合成の雲母、魚鱗箔、塩基性炭酸鉛、オキシ塩化ビスマスなどが挙げられる。雲母は、白雲母系、黒雲母系、脆雲母系、加水白雲母系、加水黒雲母系に大別されるが、いずれもパール系顔料に包含される。また、黒雲母系の一種に金雲母が存在するがこれもパール系顔料に包含される。
【0045】
好ましいのは天然又は合成の雲母であり、より好ましいのは酸化金属でコーティングされた雲母であり、より一層好ましいのは酸化チタン及び/又は酸化鉄でコーティングされた雲母であり、最も好ましいのは酸化チタンでコーティングされた雲母である。これらの雲母は市販され、容易に入手できる。また、酸化チタンでコーティングされた雲母は、例えば、雲母フレークをチタン塩の酸性溶液に分散し、加熱して加水分解し、表面に酸化チタン水和物を析出させ、これを焼成して作成することもできる。
【0046】
好ましいパール系顔料の具体的な例としては、図1〜図4に示したENGELHARD CORPORATION製(宝通商販売)のパール系顔料が挙げられる。これらのうちでも、Mearlin Micro Brass、Mearlin super Brass、Mearlin Majestic Gold、Mearlin Mayan Gold、Mearlin Aztec Goldが特に好ましい。
【0047】
(B)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計重量に対し、通常1〜60重量%であり、1〜50重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましく、10〜30重量%がより一層好ましく、15〜25重量%が最も好ましい。
【0048】
(5)(C)成分:分散媒体
(C)成分は、その中で(B)成分が分散するとともに、(A)成分及び(B)成分を絵付け対象であるガラス又は陶磁器へ絵付け可能な状態とするものであれば特に制限されない。従って、ガラス又は陶磁器への絵付け方法に応じて適した分散媒体を選択することができる。また、(C)成分は、焼成により分解し、絵付け部に(C)成分の炭化物が残らないものが、絵付け部の美観を損なわないため好ましい。
【0049】
(C)成分としては、有機化合物が良い。例えば、油、樹脂、粘度調整剤等が例示され、必要に応じてこれらを適宜組み合わせて使用できる。
【0050】
油としては、あまに油、ひまし油、大豆油等の植物油、脱水ひまし油、マレイン化油等の合成油等が例示される。
【0051】
樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリイソプレン系樹脂、石油系樹脂、ロジン、フェノール系樹脂、変性アルキド樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレン変性マレイン酸樹脂、カゼイン、セラック、セルロース誘導体等が例示される。
【0052】
粘度調整剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール等の2価アルコール、グリセリン等の多価アルコール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラクロロエチレン、トリクロロエタン、臭化メチル等のハロゲン化物、水等が例示される。
【0053】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化プロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルエーテルなどが例示される。
【0054】
アクリル系樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリルアミドなどが例示される。
【0055】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどが例示される。
【0056】
石油系樹脂としては、ポリシクロペンタジエン等が例示される。
【0057】
ロジンとしては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等が例示される。
【0058】
フェノール系樹脂としては、100%フェノール樹脂、ノボラック型、レゾール型、変性フェノール樹脂等が使用できる。
【0059】
変性アルキド樹脂としては、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール変性アルキド樹脂、スチレン化アルキド樹脂、エポキシ変性アルキド樹脂、シリコーン変性アルキド樹脂等が例示される。
【0060】
セルロース誘導体としては、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース等が例示される。
【0061】
本発明の絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けする工程がスクリーン印刷を包含する場合、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリイソプレン系樹脂が好ましく、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂がより好ましく、ポリオレフィン系樹脂がより一層好ましい。絵付け工程がインクジェット印刷を包含する場合には、水、アルコール、多価アルコールを単独又は混合して使用することが好ましい。他の絵付け工程においても任意に適した(C)成分を選択し使用することができる。
【0062】
上記の樹脂の分子量は、炭化物の残存を考慮すると、分子量は低い方が好ましい。しかし、分子量が小さすぎると塗膜形成性が低下するおそれがある。好ましくは、数平均分子量(GPC法)が1000〜100万、より好ましくは3000〜30万、より一層好ましくは5000〜10万である。
【0063】
(C)成分の配合量は塗膜形成性、絵付け方法、炭化物の残存などを考慮して適宜設定可能であるが、(A)成分と(B)成分の合計重量を100重量部として、30〜2000重量部であることが好ましく、50〜1000重量部であることがより好ましい。例えばスクリーン印刷では、(A)成分と(B)成分の合計重量を100重量部として、50〜200重量部が特に好ましく、ノンインパクト印刷では、100〜2000重量部が特に好ましい。
【0064】
(6)添加剤
本発明の絵付け用組成物には、絵付け部の耐摩耗性及びパール系の色調が不十分にならない範囲において添加剤を加えても良い。
【0065】
例えば、顔料、ガラス形成物質、可塑剤、界面活性剤、乾燥剤、硬化剤、レベリング剤などが挙げられ、本発明の絵付け用組成物に対し50重量%未満の範囲が好ましく、より好ましくは20重量%以下、より一層好ましくは10重量%以下である。特にガラス形成物質は、焼成後に形成されるガラスにおいて、そのガラス化した酸化物の総重量がB2O3の重量より少なくなければならない。
【0066】
ガラス形成物質としては、珪砂(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、水酸化アルミニウム(Al2O3 ・3H2O)、ソーダ長石(ablite、Na2O・Al2O3・6SiO2)、カリ長石(microcline、K2O・Al2O3・6SiO2)、灰長石(anorthite、CaO・Al2O3・2SiO2)、霞石閃長石(nepheline syanite、K2O・3Na2O・4Al2O3・9SiO2)、カオリン(kaolin、Al2O3・2SiO2・2H2O)、レピドライト(lepidolite、LiF・KF・Al2O3・3SiO2)、ペタライト(petalite、Li2O・Al2O3・8SiO2)、スポジュメン(spodumen、Li2O・Al2O3・4SiO2)、ボウ硝(Na2SO4・10H2O)、ソーダ灰(Na2CO3)、炭酸バリウム、硫酸バリウム、消石灰(Ca(OH2))、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、蛍石(CaF)、鉛丹(Pb3O4)、リサージ(PbO)、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト(MgCO3・CaCO3)、硝酸カリウム、炭酸カリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、第二リン酸ソーダ(Na2HPO4・12H2O)、亜鉛華(ZnO)、生石灰(CaO)等が例示される。
【0067】
顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポン(ZnSとBaSO4の共沈混合物)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、鉛白(2PbCO3・Pb(OH)2)、酸化アンチモン(Sb2O3)、黒色酸化鉄(Fe3O4、FeO・Fe2O3)、モリブデンレッド、鉛丹(Pb3O4)、クロムイエロー(PbCrO4)、黄色酸化鉄(FeO(OH)、Fe2O3・H2O)、チタンイエロー(TiO2−NiO−Sb2O5、TiO2−Cr2O3−Sb2O5)、酸化クロム(Cr2O3)、チタンコバルトグリーン(TiO2−CoO−NiO−ZnO)、コバルトグリーン(ZnO−CoO)、コバルトクロムグリーン(CoCr2O4)、ビリジアン(Cr2O(OH)4)、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトアルミブルー(CoAl2O4)、コバルトアルミクロムブルー(Co(Al, Cr)2O4)、コバルトクロムグリーン(Co(Cr・Al)2O4)、セルリアンブルー(Co2SnO4)、コバルト亜鉛シリカブルー((Co, Zn)2SiO4)、マンガンバイオレット(NH4MnP2O7)、コバルトバイオレットディープ(Co3(PO4)2)、コバルトバイオレットライト(CoLiPO4)、マンガンピンク、クロムアルミナグリーン、クロムグリーン、べんがら(Fe2O3)、クロムチタンイエロー、バナジウムスズイエロー、アンチモンスズ灰味青、ライラック、バナジウムジルコニウムイエロー、コバルト亜鉛アルミブルー((Co, Zn)Al2O4)、クロムアルミナピンク((Zn, Co)O・(Cr, Fe)2O3)、アンチモンイエロー(PbO、Sb2O3)、コバルトシリカブルー(Co2SiO4)、ニッケルグリーン(2(Ni, Zn)・SiO2)、クロムスズピンク、ビクトリアグリーン(3CaO・Cr2O3・3SiO2)、バナジウムブルー、プラセオジムイエロー、コーラルレッド等の無機顔料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホワイトカーボン(ケイ酸、ケイ酸カルシウム、含水ケイ酸アルミニウム等)、アルミナホワイト、水酸化アルミニウム、カオリンクレー、ベントナイト等の体質顔料等の黒色顔料、アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛末、ステンレス粉、ニッケル粉、金粉、銀粉等の金属粉顔料、マンガンピンク、クロムアルミナグリーン、クロムグリーン、べんがら(Fe2O3)、クロムチタンイエロー、バナジウムスズイエロー、アンチモンスズ灰味青、ライラック、バナジウムジルコニウムイエロー、コバルト亜鉛アルミブルー((Co, Zn)Al2O4)、クロムアルミナピンク((Zn, Co)O・(Cr, Fe)2O3)、アンチモンイエロー(PbO、Sb2O3)、コバルトシリカブルー(Co2SiO4)、ニッケルグリーン(2(Ni, Zn)・SiO2)、クロムスズピンク、ビクトリアグリーン(3CaO・Cr2O3・3SiO2)、バナジウムブルー、プラセオジムイエロー、コーラルレッド等の焼成顔料が例示される。
【0068】
(7)トップコート用組成物
本発明のトップコート用組成物は、
(A)ホウ酸系化合物
を含有し、
任意成分として
(C)分散媒体、及び
(D)二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物
を含有してなることを特徴とする。
【0069】
本発明のトップコート用組成物は、本発明の絵付け用組成物上に適用されて、本発明の絵付け用組成物と同時に焼成されて、絵付け部上に透明なトップコート層を形成する。また、本発明の絵付け用組成物を焼成することにより形成された絵付け部上に本発明のトップコート用組成物が適用され、次いで焼成されることによって、絵付け部上に透明なトップコート層を形成しても良い。
【0070】
トップコート用組成物は、トップコート用組成物の絵付け部上への適用作業を容易にするため、 (C)成分を含有することが好ましい。
【0071】
トップコート層が覆う対象は本発明の絵付け用組成物により形成された絵付け部が密着性の点で好ましいが、他の組成物による絵付け部であっても良い。
【0072】
(D)成分の二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を添加することにより、(A)成分の凝集を防止することが好ましい。
【0073】
本発明のトップコート用組成物の各成分の詳細は、本発明の絵付け用組成物の各成分の上記説明と同様である。
【0074】
(8)絵付け転写シート
本発明の絵付け転写シートは、転写シート及び絵付け用転写層を有し、該転写層が本発明の絵付け用組成物を含むことを特徴とする。
【0075】
また、必要に応じて転写シートと絵付け用転写層との間に、無機顔料(パール系顔料、焼成顔料など)を含有した組成物からなる背景層を1層又は複数層設けることができる。また、必要に応じて、絵付け用転写層上にトップコート層を設けることができる。さらに、転写の作業性向上のため、絵付け用転写層又はトップコート層上にアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層を設けることが好ましい。即ち、本発明の絵付け用転写シートは、転写シート、必要に応じて背景層、絵付け用転写層、必要に応じてトップコート層、必要に応じてアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層の順に積層された構成を有する。
【0076】
転写シートは支持体と水溶性粘着剤からなる。支持体としては、紙、熱可塑性樹脂などで構成されるシートが例示される。水溶性粘着剤は、絵付け用転写層又は背景層をガラス又は陶磁器へ接着する役割を果たす。水溶性粘着剤としては、デンプン、デキストリン、ポリビニルアルコールなどが例示される。
【0077】
絵付け用転写層は本発明の絵付け用組成物からなる。また絵付け用転写層は2層以上設けることができる。2層以上設けた場合、1層だけの場合と比較して、使用者に対し、より複雑なパール系色調の視覚的効果を与えることが可能となる。絵付け用転写層は、インクジェット印刷等のノンインパクト印刷、ハンドペイント、刷毛塗り、スタンプ、スプレー、ゴムロールによる帯状印刷、スクリーン印刷、浸漬等の公知の方法で転写シート又は背景層上に適用される。適用後は乾燥させることにより絵付け用組成物のガラス又は陶磁器への絵付けがより強固なものとなる。
【0078】
背景層用の組成物は、(A)成分、(C)成分及び無機顔料((B)成分に相当し、焼成顔料、パール系顔料が含まれる)を含有した組成物であり、その比率は、絵付け用の組成物と同一である。背景層は絵付け用転写層と同様な方法で転写シート上に適用される。背景層は無機顔料及び/又はパール系顔料による焼成後に色彩を帯びる。このため、背景層を設けた場合には、その上の絵付け層による単なるパール系顔料による色彩のみの場合と比べて、使用者に対し、重厚感のある色彩、鮮やかな色彩等のより複雑な視覚的効果を与える場合がある。例えば、一般的には、背景層を黒色とすると、パール系の色彩により重厚感を与えることができ、背景色を白色とすると、パール系の色彩により鮮やかさを与えることができる。
【0079】
トップコート層は、絵付け用転写層が焼成されて形成する絵付け部を保護する目的で使用される。このため、焼成後にできる限り透明であることが好ましい。好ましいのは本発明のトップコート用組成物である。トップコート用組成物は、本発明の絵付け用組成物を適用する方法と同様な方法で、絵付け用転写層上に適用される。トップコート用組成物を絵付け用転写層上に適用後は揮発性成分を乾燥させ、密着性を向上させることが好ましい。
【0080】
絵付け転写シートを水に浸すと、水溶性粘着剤が粘着性を示すようになる。この絵付け転写シートから転写シートの支持体のみを分離し、水溶性粘着剤層をガラス又は陶磁器に貼り付け、必要に応じて水溶性粘着剤を除去し、乾燥させて、絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に固定させる。
【0081】
また、絵付け転写シートから転写シートを分離して得られる、水溶性粘着剤、必要に応じて背景層、絵付け用転写層、必要に応じてトップコート層を有する積層体は、ガラス又は陶磁器に貼り付ける際に、破損することがあるため、絵付け用転写層又はトップコート層上の最外層に、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層を設けると積層体の強度が向上し、作業性が向上する。保護層に含まれる。
【0082】
(9)絵付けシート
本発明の絵付けシートは、離型紙及び絵付け用印刷層を有し、該印刷層が本発明の絵付け用組成物を含むことを特徴とする。
【0083】
また、必要に応じて離型紙と絵付け用印刷層との間に、無機顔料を含有した組成物からなる背景層を1層又は複数層設けることができる。また、必要に応じて、絵付け用印刷層上にトップコート層を設けることができる。さらに、転写の作業性向上のため、絵付け用印刷層又はトップコート層上にアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層を設けることが好ましい。即ち、本発明の絵付けシートは、離型紙、必要に応じて背景層、絵付け用印刷層、必要に応じてトップコート層、必要に応じてアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層の順に積層された構成を有する。
【0084】
絵付け用印刷層は本発明の絵付け用組成物からなる。また絵付け用印刷層は2層以上設けることができる。2層以上設けた場合、1層だけの場合と比較して、使用者に対し、より複雑なパール系色調の視覚的効果を与えることが可能となる。絵付け用印刷層は、インクジェット印刷等のノンインパクト印刷、ハンドペイント、刷毛塗り、スタンプ、スプレー、ゴムロールによる帯状印刷、スクリーン印刷、浸漬等の公知の方法で離型紙又は背景層上に適用される。適用後は乾燥させることにより絵付け用組成物のガラス又は陶磁器への絵付けがより強固なものとなる。
【0085】
背景層用の組成物は、上記と同様である。
【0086】
背景層は絵付け用印刷層と同様な方法で離型紙上に適用される。背景層は無機顔料及び/又はパール系顔料による焼成後に色彩を帯びる。このため、背景層を設けた場合には、その上の絵付け層による単なるパール系顔料による色彩のみの場合と比べて、使用者に対し、重厚感のある色彩、鮮やかな色彩等のより複雑な視覚的効果を与える場合がある。例えば、一般的には、背景層を黒色とすると、パール系の色彩により重厚感を与えることができ、背景色を白色とすると、パール系の色彩により鮮やかさを与えることができる。
【0087】
トップコート層は、絵付け用印刷層が焼成されて形成する絵付け部を保護する目的で使用される。このため、焼成後にできる限り透明であることが好ましい。好ましいのは本発明のトップコート用組成物である。トップコート用組成物は、本発明の絵付け用組成物を適用する方法と同様な方法で、絵付け用印刷層上に適用される。トップコート用組成物を絵付け用印刷層上に適用後は揮発性成分を乾燥させ、密着性を向上させることが好ましい。
【0088】
また、絵付けシートはから離型紙を分離して得られる、必要に応じて背景層、絵付け用印刷層、必要に応じてトップコート層を有する積層体は、ガラス又は陶磁器に貼り付ける際に、破損することがあるため、絵付け用印刷層又はトップコート層上の最外層に、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層を設けると積層体の強度が向上し、作業性が向上する。
【0089】
(10)絵付け方法
本発明の絵付け方法は、ガラス又は陶磁器に対する絵付け方法であって、本発明の絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けする工程、及び該組成物が絵付けされたガラス又は陶磁器を該組成物中の(A)成分がガラス化する温度以上で焼成する工程を含むことを特徴とする。
【0090】
本発明の絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けする方法は、絵付けに使用される一般の適用方法が使用できる。例えば、インクジェット印刷等のノンインパクト印刷、ハンドペイント、刷毛塗り、スタンプ、スプレー、ゴムロールによる帯状印刷、転写シートによる転写、離型紙を使用した絵付けシートによる絵付け、スクリーン印刷法による直接印刷、浸漬などが挙げられる。好ましくは、絵付け転写シートによる転写、インクジェット印刷、離型紙を使用した絵付けシートによる絵付けである。
【0091】
絵付け工程では、通常、絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けした後、絵付け部分を必要に応じて乾燥させ、(C)成分の揮発性成分を揮発させる。
【0092】
次に、絵付けされたガラス又は陶磁器を焼成し、ホウ酸系ガラスによりパール系顔料をガラス又は陶磁器に定着させる。焼成温度は、絵付け用組成物中の(A)成分がガラス化する温度以上が好ましい。より好ましくは、(A)成分がガラス化する温度以上からパール系顔料が所望の色調を維持できる温度、より一層好ましくは、650〜900℃、最も好ましくは700〜800℃である。焼成温度が高すぎるとパール調の色彩が得られないことがある。
【0093】
また、焼成時には300℃から750℃までは急速に昇温することが好ましい。300℃から750℃まで温度が上昇する時間は好ましくは15分以内、より好ましくは5分以内である。なお、300℃までは急速に昇温しても緩やかに昇温しても良い。緩やかに昇温する場合、絵付け部上に本発明のトップコート用組成物を焼成して得られるトップコート層を設けることが好ましい。このような焼成工程を経て、ガラス又は陶磁器にパール調の色彩を有する絵付け部が形成される。
【0094】
(11)絵付け対象のガラス又は陶磁器
本発明において絵付けの対象となるガラス又は陶磁器としては、特に限定されないが、例えば食器(皿、カップ等)、タイル、装飾品、花瓶、壺、土鍋、結晶化ガラス製の鍋、電子レンジのターンテーブル等が例示できる。好ましいのは食器である。陶磁器は表面がガラス質のものが良く、素焼き後、うわぐすり等のガラス質を塗って焼成した陶磁器が例示される。
【0095】
(12)絵付けされたガラス又は陶磁器
本発明の絵付け部を有するガラス又は陶磁器は、ホウ酸系ガラスの内部又は表面にパール系顔料が分散してなる絵付け部を有することを特徴とする。
【0096】
また、本発明の絵付け部を有するガラス又は陶磁器は、絵付け部上に、さらに、本発明のトップコート用組成物を焼成して得られたトップコート層を含むことを特徴とする。
【0097】
また、本発明の絵付けされたガラス又は陶磁器は、本発明の絵付け用組成物、本発明のトップコート用組成物、本発明の絵付け転写シート及び本発明の絵付けシートからなる群から選択される少なくとも1種を用いて絵付けされた絵付け部を有することを特徴とする。
【0098】
ガラス又は陶磁器の製品例としては、食器、タイル、装飾品、花瓶、壺、土鍋、結晶化ガラス製の鍋及び電子レンジのターンテーブル等が挙げられる。
【0099】
絵付け部の厚さは適宜選択できる。例えば、食器の場合、絵付け部が厚いのは一般的に好まれないが、美術品や嗜好品などでは絵付け部を厚くすることにより立体感が出て好まれる場合もある。また、本発明の絵付け用組成物をガラスまたは陶磁器に適用する方法がスクリーン印刷である場合には焼成前の絵付け部の厚さは1〜200μmが好ましく、スクリーン印刷以外である場合には、焼成前の絵付け部の厚さは1〜1000μmが好ましい。なお、焼成後の絵付け部の厚さは、焼成前に比べると(C)成分が分解除去された分だけ厚みが減少する。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、パール系の色調が鮮やかで、耐摩耗性に優れた絵付け部を有するガラス又は陶磁器が得られる。また、沸騰水や食器洗い条件でも優れた堅牢性を示し、電子レンジでも使用可能な、パール調の色彩を有するガラス又は陶磁器を得ることもできる。
【0101】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例において、(A)成分のホウ酸、無水ホウ酸としては日本電工社製のものを用いた。また、(B)成分のパール系顔料としては、ENGELHARD CORPORATION製のGOLDEN BRONZE 9240Aを使用し、(C)成分の分散媒体としては、共栄社化学社製のアクリル系樹脂であるオリコックスKC−1700Pを使用し、粘度調整剤としてはキシレンを使用し、(D)成分の二酸化ケイ素としては、日本アエロジル社製のアエロジルOX50(平均粒子径12nm(透過型電子顕微鏡による粒子径測定法))を使用し、保護層用のアクリル系樹脂としては、互応化学工業(株)製のLO−SPRAY−Rを使用した。
【0102】
実施例1
ホウ酸を振動ミル(BM−3型粉砕機(中央化工機社製)で平均粒子径1μmに調整した。このホウ酸90g、6〜90μmの粒子径を有するパール系顔料30g、分散媒体のアクリル系樹脂60g及びキシレン160gを混合し、プロペラ羽ね付きかき混ぜ機により400rpmで30分間かき混ぜた後、ビーズミル分散機(LMZ−2:アジサワ社製)により3000rpmで2時間分散を行い、グラインドゲージで平均粒子径10μm以下の分散であることを確認した後、キシレンで粘度を調整し、150メッシュのふるいでろ過し、絵付け用組成物を作製した。
【0103】
つぎに、このようにして製作した絵付け用組成物を、水溶性粘着剤(デキストリン)を有する転写シート上に200メッシュのスクリーン印刷により印刷し、80℃で10分間乾燥した。得られた絵付け用転写層上に保護層用樹脂をバーコーターで塗装した後、80℃で10分間乾燥し、絵付け層を有する転写シートを作製した。
【0104】
絵付け層を有する転写シートから支持体を剥ぎ取り、陶磁器製の皿に付着せしめた後、700℃で30分間焼成し、パール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0105】
実施例2
焼成条件を800℃で30分間と変更した以外は実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0106】
実施例3
スクリーン印刷後の乾燥条件を常温乾燥に変更した以外は実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0107】
実施例4
スクリーン印刷後の乾燥条件及び保護層用樹脂塗装後の乾燥条件を常温乾燥に変更した以外は実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0108】
実施例5
実施例1と同様にして絵付け用組成物を作製した。つぎに、絵付け用組成物を、水溶性粘着剤(デキストリン)を有する転写シート上に200メッシュのスクリーン印刷により印刷し、80℃で30分間乾燥した。得られた絵付け用転写層上にトップコート用組成物を200メッシュのスクリーン印刷により塗装し、80℃で30分間乾燥した。さらにその上に保護層用樹脂をバーコーターで塗装した後、80℃で30分間乾燥し、絵付け層を有する転写シートを作製した。
【0109】
絵付け層を有する転写シートから支持体を剥ぎ取り、陶磁器製皿に付着せしめた後、800℃で30分間焼成し、パール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0110】
実施例6
実施例1のホウ酸90gに代えて、ホウ酸に対して1重量%の二酸化ケイ素を添加して、振動ミルBM−3型で粉砕加工した平均粒子径1μmのホウ酸及び二酸化ケイ素混合物90gを使用した以外は実施例1と同様にして絵付け用組成物を作製した。
【0111】
この絵付け用組成物を使用し、保護層用樹脂塗装後の乾燥条件を100℃で10分間、焼成条件を800℃で90分間と変更した以外は実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0112】
実施例7
二酸化ケイ素の添加量を3重量%とし、焼成条件を700℃で30分間と変更した以外は実施例6と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0113】
実施例8
ホウ酸に対して1重量%の二酸化ケイ素を添加し、BM−3型振動ミルで平均粒子径1μmに調整した。このホウ酸及び二酸化ケイ素の混合物35g、分散媒体21g及びキシレン44gを混合し、プロペラ羽ね付きかき混ぜ機により400rpmで30分間かき混ぜた後、ビーズミル分散機LMZ−2により3000rpmで2時間分散を行い、グラインドゲージで平均粒子径10μm以下の分散であることを確認した後、キシレンで粘度を調整し、150メッシュのふるいでろ過し、トップコート用組成物を作製した。
【0114】
つぎに、このようにして製作したトップコート用組成物を、水溶性粘着剤(デキストリン)を有する転写シート上に200メッシュのスクリーン印刷により印刷し、常温乾燥した。得られた絵付け用転写層上に保護層用樹脂をバーコーターで塗装した後、100℃で10分間乾燥し、絵付け層を有する転写シートを作製した。
【0115】
絵付け層を有する転写シートから支持体を剥ぎ取り、陶磁器製皿に付着せしめた後、800℃で30分間焼成し、パール調の色彩が鮮やかなホウ酸ガラスクリヤー層を有する陶磁器製皿を得た。
【0116】
実施例9
実施例1の絵付け用組成物340g及び実施例8のトップコート用組成物100gをプロペラ羽根付きかきまぜ機によりかき混ぜて、絵付け用組成物を作製した。この絵付け用組成物を使用して、実施例1と同様にして転写シートを作製し、次いで、実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0117】
実施例10
焼成条件を800℃で30分間に変更した以外は実施例9と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな陶磁器製皿を得た。
【0118】
実施例11
実施例9と同様にして絵付け用組成物を作製した。つぎに、このようにして製作した絵付け用組成物を、水溶性粘着剤(デキストリン)を有する転写シート上に200メッシュのスクリーン印刷により印刷し、80℃で10分間乾燥した。得られた絵付け用転写層上に実施例8で作製したトップコート用組成物を200メッシュのスクリーン印刷により印刷し、80℃で10分間乾燥した。さらにその上に保護層用樹脂をバーコーターで塗装した後、80℃で10分間乾燥し、絵付け層を有する転写シートを作製した。
【0119】
絵付け層を有する転写シートから支持体を剥ぎ取り、陶磁器製皿に付着せしめた後、800℃で30分間焼成し、パール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0120】
実施例12
絵付け用転写層上にトップコート用組成物を印刷し、乾燥する工程を省略した以外は実施例11と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0121】
実施例13
平均粒子径1μmのホウ酸に代えて平均粒子径10μmのホウ酸を使用した以外は実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0122】
実施例14
ホウ酸に代えて無水ホウ酸を使用した以外は実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0123】
実施例15
実施例1のホウ酸90gに代えて、無水ホウ酸に対して1重量%の二酸化ケイ素を添加して、振動ミルBM−3型で粉砕加工した平均粒子径1μmの無水ホウ酸及び二酸化ケイ素混合物90gを使用した以外は実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け用組成物を作製した。
【0124】
実施例16
実施例1で作製した絵付け用組成物と実施例14の絵付け用組成物を1:1(重量比)の割合で混合し、340gの絵付け用組成物を作製した。この絵付け用組成物を使用して、実施例1と同様にして絵付け層を有する転写シートを作製し、次いで実施例1と同様に転写及び焼成して、パール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0125】
実施例17
実施例15の絵付け用組成物340g及び実施例8のトップコート用組成物100gをプロペラ羽根付きかきまぜ機によりかき混ぜて、絵付け用組成物を作製した。この絵付け用組成物を使用して、実施例1と同様にして絵付け層を有する転写シートを作製した。次いで、焼成条件を800℃で30分間に変更した以外は実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0126】
実施例1〜17の実験条件を表1に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
試験例
実施例1〜17で得られた陶磁器製皿を用いて下記要領で耐沸騰水試験、食器洗い洗浄試験、耐磨耗性、耐擦傷試験、電子レンシスパーク試験を行った。試験結果を表2に示す。
耐沸騰水試験、
陶磁器製皿の試験片を沸騰水中に10日間連続で浸漬放置した後、取り出し自然放置し1時間後の外観を評価した。
◎:外観上全く異常がない
○:極微量であるが変色した
×:変色又は剥離した
食器洗い洗浄試験
下記洗浄条件で洗浄及び乾燥を100サイクル行った後の外観を評価した。
食器洗い機:ナショナル食器洗い乾燥機(NP−40SX−1)
洗浄剤:弱アルカリの専用洗浄剤
洗浄温度:80℃×30分を1サイクル
◎:外観上全く異常がない
○:極微量であるが変色した
×:変色又は剥離した
耐磨耗性試験
接触面が2cm×2cmある脱脂綿に浸したクレンザー(サンキョウクリームクレンザー :三協油脂株式会社)を用いて、1kgの加重をかけ30回擦った後の試験片の磨耗性を評価した。
◎:外観上全く摩耗しない
×:外観上摩耗傷が見られる
耐擦傷試験
NTカッターナイフにより傷つき性を評価した。
◎:外観上全く摩耗しない
×:外観上摩耗傷が見られる
電子レンジスパーク試験
電子レンシレンジ : ナショナル NE−S22F 600WH
放置時間 : 2分
◎:スパークが発生しない
○:極微量であるがスパークが発生した
×:スパークが発生した
【0129】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】パール系顔料の具体的な名称の一覧表である。
【図2】パール系顔料の具体的な名称の一覧表である。
【図3】パール系顔料の具体的な名称の一覧表である。
【図4】パール系顔料の具体的な名称の一覧表である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガラス又は陶磁器にパール調の色彩を絵付けする技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス、陶磁器等の表面に高級感を与える装飾として、パール調の絵付けが行われている。パール調の絵付けでは、パール系顔料を使用することが一般的で、現在では、鱗片状の雲母を酸化チタンでコーティングしたものが主として使用されている。また、雲母を酸化鉄でコーティングしたものは、金色を示すパール系顔料として使用されている。
【0003】
パール系顔料をガラス、陶磁器等に絵付けする場合、鉛入りガラスフリットにパール系顔料を分散し、焼成して絵付けする方法が行われている。しかしながら、この方法では、絵付け部のパール調の鮮やかさが不十分であり、また絵付け部が簡単にはがれるため耐摩耗性も不十分であり、従って食器用には適さないものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、パール調が失われない程度の焼成温度で絵付け可能であり、絵付け部の耐摩耗性及びパール系の色調に優れたガラス又は陶磁器のパール調絵付け技術の提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来技術の問題点に鑑み鋭意検討を重ねた結果、ホウ酸系化合物及びパール系顔料を含有する組成物がパール系顔料のパール調が失われない程度の焼成温度でガラス化し、ガラス又は陶磁器にパール調の絵付けができること、並びに該組成物を使用すると耐摩耗性に優れた絵付け部を作成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の絵付け用組成物、トップコート用組成物、絵付け方法、絵付け転写シート、絵付けシート、ガラス及び陶磁器に関する。
【0007】
項1.
(A)ホウ酸系化合物、
(B)パール系顔料、及び
(C)分散媒体
を含有してなるガラス又は陶磁器の絵付け用組成物。
【0008】
項2.(A)成分と(B)成分の合計重量に対する、(A)成分の配合量が50〜99重量%であり、(B)成分の配合量が1〜50重量%である項1に記載の絵付け用組成物。
【0009】
項3.(C)成分が、(A)成分と(B)成分の合計重量を100重量部として、30〜2000重量部である項1又は2に記載の絵付け用組成物。
【0010】
項4.(A)成分がホウ酸、無水ホウ酸及びホウ酸系ガラスフリットからなる群から選択される少なくとも1種のホウ酸系化合物である項1〜3のいずれかに記載の絵付け用組成物。
【0011】
項5.(B)成分が酸化金属でコーティングされた雲母である項1〜4のいずれかに記載の絵付け用組成物。
【0012】
項6.(C)成分がポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂及びポリイソプレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有する項1〜5のいずれかに記載の絵付け用組成物。
【0013】
項7.
(A)ホウ酸系化合物、
(B)パール系顔料、
(C)分散媒体、及び
(D)二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物
を含有してなるガラス又は陶磁器の絵付け用組成物。
【0014】
項8.
(A)ホウ酸系化合物
を含有し、
任意成分として
(C)分散媒体、及び
(D)二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物
を含有してなるガラス又は陶磁器のトップコート用組成物。
【0015】
項9.
(A)ホウ酸系化合物、及び
(C)分散媒体
を含有し、
任意成分として
(D)二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物
を含有してなるガラス又は陶磁器のトップコート用組成物。
【0016】
項10.トップコート用組成物おいて(A)成分配合量が1〜90重量%、(C)成分配合量が10〜99重量%であり、(D)成分配合量が(A)成分の0〜5重量%である項9に記載のトップコート用組成物。
【0017】
項11.転写シートに絵付け用転写層を有し、該転写層が項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物を含む絵付け転写シート。
【0018】
項12.転写シート、絵付け用転写層及びトップコート層をこの順に有し、該転写層が項1〜7のいずれかに記載の組成物を含み、該トップコート層が項8〜10のいずれかに記載のトップコート用組成物を含む絵付け転写シート。
【0019】
項13.アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層を最外層に有する項11又は12に記載の絵付け転写シート。
【0020】
項14.離型紙及び絵付け用印刷層を有し、該印刷層が項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物を含む絵付けシート。
【0021】
項15.離型紙、絵付け用印刷層及びトップコート層をこの順に有し、該印刷層が項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物を含み、該トップコート層が項8〜10のいずれかに記載のトップコート用組成物を含む絵付けシート。
【0022】
項16.アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層を最外層に有する項14又は15に記載の絵付けシート。
【0023】
項17.ガラス又は陶磁器に対する絵付け方法であって、項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けする工程、及び該組成物が絵付けされたガラス又は陶磁器を該組成物中の(A)成分がガラス化する温度以上で焼成する工程を含む絵付け方法。
【0024】
項18.ガラス又は陶磁器に対する絵付け方法であって、請求項11〜13のいずれかに記載の絵付け転写シートを用いてガラス又は陶磁器に絵付けする工程、及び該組成物が絵付けされたガラス又は陶磁器を該組成物中の(A)成分がガラス化する温度以上で焼成する工程を含む絵付け方法。
【0025】
項19.ガラス又は陶磁器に対する絵付け方法であって、請求項14〜15のいずれかに記載の絵付けシートを用いてガラス又は陶磁器に絵付けする工程、及び該組成物が絵付けされたガラス又は陶磁器を該組成物中の(A)成分がガラス化する温度以上で焼成する工程を含む絵付け方法。
【0026】
項20.項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けする工程が、該組成物をノンインパクト印刷でガラス又は陶磁器に印刷する工程を含むことを特徴とする項17に記載の絵付け方法。
【0027】
項21.ホウ酸系ガラスの内部又は表面にパール系顔料が分散してなる絵付け部を有するガラス又は陶磁器。
【0028】
項22.ガラス又は陶磁器が、食器、タイル、装飾品、花瓶、壺、土鍋、結晶化ガラス製の鍋及び電子レンジのターンテーブルからなる群から選択される少なくとも1種である項21に記載のガラス又は陶磁器。
【0029】
項23.さらに、絵付け部上に、項8〜10のいずれかに記載のトップコート用組成物を焼成して得られたトップコート層を含む項21に記載のガラス又は陶磁器。
【0030】
項24.項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けし、該ガラス又は陶磁器を該組成物中の(A)成分がガラス化する温度以上で焼成することにより得ることのできる絵付けされたガラス又は陶磁器。
【0031】
項25.項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物、項8〜10のいずれかに記載のトップコート用組成物、項11〜13の絵付け転写シート及び項14〜16の絵付けシートからなる群から選択される少なくとも1種を用いて絵付けされた絵付け部を有するガラス又は陶磁器。
【0032】
【発明の実施の形態】
本明細書において、絵付けとは、絵付け対象(ガラス、陶磁器)に対し、パール調の色彩を有する模様(文字、線図、絵、記号等)を付与することを意味し、絵付け対象の全面または一定の範囲に同一のパール調の色彩を付与することを包含する。
【0033】
(1)絵付け用組成物
本発明の絵付け用組成物は、
(A)ホウ酸系化合物、
(B)パール系顔料、及び
(C)分散媒体
を含有してなることを特徴とする。
【0034】
本発明の絵付け用組成物は、上記の(A)成分、(B)成分及び(C)成分を混合することによって調製できる。
【0035】
また、本発明の絵付け用組成物の粘度は、ガラス又は陶磁器への絵付け方法等に応じて適宜選択すればよく、主として(C)成分の種類、配合量等を調整することにより所望の粘度とすることができる。例えば、絵付け方法がスクリーン印刷の場合であれば比較的粘度の高いものが好ましく、インクジェット印刷の場合であれば比較的粘度の低いものが好ましい。
【0036】
以下、本発明の絵付け用組成物の構成成分について説明する。
【0037】
(2)(A)成分:ホウ酸系化合物
本発明の絵付け用組成物はホウ酸系化合物を含有し、該ホウ酸系化合物が焼成されて形成されるホウ酸系ガラスによってパール系顔料をガラス又は陶磁器に定着させる。ホウ酸系化合物は、焼成によりガラス化するホウ素含有化合物であり、その例としては、ホウ酸(オルトホウ酸)、メタホウ酸、無水ホウ酸、テトラオキソ二ホウ酸、ペルオキソホウ酸、フルオロホウ酸、リン酸ホウ素、これらの塩(ホウ砂など)及びホウ酸系ガラスフリットが挙げられる。ホウ酸系化合物は、1種単独で又2種以上混合して使用しても良い。上記塩としては、Na、Ca、Ba、Mn、Fe、Ni、希土類、Al、In、Tl塩等が例示される。また、ホウ酸系ガラスフリットは、上記のホウ酸系化合物をガラス化して得られるフリットをいう。 好ましいホウ酸系化合物は、ホウ酸、無水ホウ酸、ホウ酸系ガラスフリットであり、より好ましホウ酸系化合物は、ホウ酸、無水ホウ酸である。
【0038】
(A)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計重量に対し、通常40〜99重量%であり、50〜99重量%が好ましく、60〜95重量%がより好ましく、70〜90重量%がより一層好ましく、75〜85重量%が最も好ましい。
【0039】
ホウ酸系化合物は、平均粒子径(超音波減衰法)が0.01〜200μmであることが好ましく、より好ましくは0.05〜100μm、より一層好ましくは0.1〜100μmである。上記粒子径のホウ酸系化合物は、ホウ酸系化合物を公知の粉砕方法によって粉砕することにより得られる。例えば、ホウ酸又は無水ホウ酸は、ボールミル等で粉砕することによって、上記粒子径のホウ酸又は無水ホウ酸が得られる。粉砕にボールミルを使用する場合、セラミックス製ボールを有するボールミルが好ましい。
【0040】
また、ホウ酸系化合物の粉砕時には、二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を少量添加することが、ホウ酸系化合物の凝集を防止するため好ましい。なお、本明細書において、二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を(D)成分と称することがある。
【0041】
また、ホウ酸系化合物の粉砕時には、少量の溶剤を添加しても良い。溶剤の添加により粒子の飛散を抑制できる。溶剤としては、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素又は脂肪族炭化水素が例示される。
【0042】
(3)(D)成分:二酸化ケイ素、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム
(D)成分の添加により、(A)成分の凝集を防止することができる。従って、(A)成分が凝集しない場合には必須ではない。(D)成分は平均粒子径が5〜50nmであることが好ましく、7〜40nmであることがさらに好ましい。
【0043】
また、(D)成分を配合するとガラス化する温度が上昇することがある。好ましい(D)成分の配合量は(A)成分に対して、0〜5重量%、好ましくは0〜3重量%、より好ましくは0.01〜3重量%である。
【0044】
(4)(B)成分:パール系顔料
パール系顔料は、顔料の反射光が干渉をおこして真珠光沢、虹彩色等の光沢を呈するものが好ましい。このようなパール系顔料は、非常に薄い板状の透明な結晶粒子からなるものが多く、例えば、天然又は合成の雲母、魚鱗箔、塩基性炭酸鉛、オキシ塩化ビスマスなどが挙げられる。雲母は、白雲母系、黒雲母系、脆雲母系、加水白雲母系、加水黒雲母系に大別されるが、いずれもパール系顔料に包含される。また、黒雲母系の一種に金雲母が存在するがこれもパール系顔料に包含される。
【0045】
好ましいのは天然又は合成の雲母であり、より好ましいのは酸化金属でコーティングされた雲母であり、より一層好ましいのは酸化チタン及び/又は酸化鉄でコーティングされた雲母であり、最も好ましいのは酸化チタンでコーティングされた雲母である。これらの雲母は市販され、容易に入手できる。また、酸化チタンでコーティングされた雲母は、例えば、雲母フレークをチタン塩の酸性溶液に分散し、加熱して加水分解し、表面に酸化チタン水和物を析出させ、これを焼成して作成することもできる。
【0046】
好ましいパール系顔料の具体的な例としては、図1〜図4に示したENGELHARD CORPORATION製(宝通商販売)のパール系顔料が挙げられる。これらのうちでも、Mearlin Micro Brass、Mearlin super Brass、Mearlin Majestic Gold、Mearlin Mayan Gold、Mearlin Aztec Goldが特に好ましい。
【0047】
(B)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分の合計重量に対し、通常1〜60重量%であり、1〜50重量%が好ましく、5〜40重量%がより好ましく、10〜30重量%がより一層好ましく、15〜25重量%が最も好ましい。
【0048】
(5)(C)成分:分散媒体
(C)成分は、その中で(B)成分が分散するとともに、(A)成分及び(B)成分を絵付け対象であるガラス又は陶磁器へ絵付け可能な状態とするものであれば特に制限されない。従って、ガラス又は陶磁器への絵付け方法に応じて適した分散媒体を選択することができる。また、(C)成分は、焼成により分解し、絵付け部に(C)成分の炭化物が残らないものが、絵付け部の美観を損なわないため好ましい。
【0049】
(C)成分としては、有機化合物が良い。例えば、油、樹脂、粘度調整剤等が例示され、必要に応じてこれらを適宜組み合わせて使用できる。
【0050】
油としては、あまに油、ひまし油、大豆油等の植物油、脱水ひまし油、マレイン化油等の合成油等が例示される。
【0051】
樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリイソプレン系樹脂、石油系樹脂、ロジン、フェノール系樹脂、変性アルキド樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、スチレン変性マレイン酸樹脂、カゼイン、セラック、セルロース誘導体等が例示される。
【0052】
粘度調整剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール等の2価アルコール、グリセリン等の多価アルコール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル類、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラクロロエチレン、トリクロロエタン、臭化メチル等のハロゲン化物、水等が例示される。
【0053】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化プロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルエーテルなどが例示される。
【0054】
アクリル系樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリルアミドなどが例示される。
【0055】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどが例示される。
【0056】
石油系樹脂としては、ポリシクロペンタジエン等が例示される。
【0057】
ロジンとしては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等が例示される。
【0058】
フェノール系樹脂としては、100%フェノール樹脂、ノボラック型、レゾール型、変性フェノール樹脂等が使用できる。
【0059】
変性アルキド樹脂としては、ロジン変性アルキド樹脂、フェノール変性アルキド樹脂、スチレン化アルキド樹脂、エポキシ変性アルキド樹脂、シリコーン変性アルキド樹脂等が例示される。
【0060】
セルロース誘導体としては、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース等が例示される。
【0061】
本発明の絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けする工程がスクリーン印刷を包含する場合、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリイソプレン系樹脂が好ましく、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂がより好ましく、ポリオレフィン系樹脂がより一層好ましい。絵付け工程がインクジェット印刷を包含する場合には、水、アルコール、多価アルコールを単独又は混合して使用することが好ましい。他の絵付け工程においても任意に適した(C)成分を選択し使用することができる。
【0062】
上記の樹脂の分子量は、炭化物の残存を考慮すると、分子量は低い方が好ましい。しかし、分子量が小さすぎると塗膜形成性が低下するおそれがある。好ましくは、数平均分子量(GPC法)が1000〜100万、より好ましくは3000〜30万、より一層好ましくは5000〜10万である。
【0063】
(C)成分の配合量は塗膜形成性、絵付け方法、炭化物の残存などを考慮して適宜設定可能であるが、(A)成分と(B)成分の合計重量を100重量部として、30〜2000重量部であることが好ましく、50〜1000重量部であることがより好ましい。例えばスクリーン印刷では、(A)成分と(B)成分の合計重量を100重量部として、50〜200重量部が特に好ましく、ノンインパクト印刷では、100〜2000重量部が特に好ましい。
【0064】
(6)添加剤
本発明の絵付け用組成物には、絵付け部の耐摩耗性及びパール系の色調が不十分にならない範囲において添加剤を加えても良い。
【0065】
例えば、顔料、ガラス形成物質、可塑剤、界面活性剤、乾燥剤、硬化剤、レベリング剤などが挙げられ、本発明の絵付け用組成物に対し50重量%未満の範囲が好ましく、より好ましくは20重量%以下、より一層好ましくは10重量%以下である。特にガラス形成物質は、焼成後に形成されるガラスにおいて、そのガラス化した酸化物の総重量がB2O3の重量より少なくなければならない。
【0066】
ガラス形成物質としては、珪砂(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、水酸化アルミニウム(Al2O3 ・3H2O)、ソーダ長石(ablite、Na2O・Al2O3・6SiO2)、カリ長石(microcline、K2O・Al2O3・6SiO2)、灰長石(anorthite、CaO・Al2O3・2SiO2)、霞石閃長石(nepheline syanite、K2O・3Na2O・4Al2O3・9SiO2)、カオリン(kaolin、Al2O3・2SiO2・2H2O)、レピドライト(lepidolite、LiF・KF・Al2O3・3SiO2)、ペタライト(petalite、Li2O・Al2O3・8SiO2)、スポジュメン(spodumen、Li2O・Al2O3・4SiO2)、ボウ硝(Na2SO4・10H2O)、ソーダ灰(Na2CO3)、炭酸バリウム、硫酸バリウム、消石灰(Ca(OH2))、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、蛍石(CaF)、鉛丹(Pb3O4)、リサージ(PbO)、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト(MgCO3・CaCO3)、硝酸カリウム、炭酸カリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、第二リン酸ソーダ(Na2HPO4・12H2O)、亜鉛華(ZnO)、生石灰(CaO)等が例示される。
【0067】
顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポン(ZnSとBaSO4の共沈混合物)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、鉛白(2PbCO3・Pb(OH)2)、酸化アンチモン(Sb2O3)、黒色酸化鉄(Fe3O4、FeO・Fe2O3)、モリブデンレッド、鉛丹(Pb3O4)、クロムイエロー(PbCrO4)、黄色酸化鉄(FeO(OH)、Fe2O3・H2O)、チタンイエロー(TiO2−NiO−Sb2O5、TiO2−Cr2O3−Sb2O5)、酸化クロム(Cr2O3)、チタンコバルトグリーン(TiO2−CoO−NiO−ZnO)、コバルトグリーン(ZnO−CoO)、コバルトクロムグリーン(CoCr2O4)、ビリジアン(Cr2O(OH)4)、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトアルミブルー(CoAl2O4)、コバルトアルミクロムブルー(Co(Al, Cr)2O4)、コバルトクロムグリーン(Co(Cr・Al)2O4)、セルリアンブルー(Co2SnO4)、コバルト亜鉛シリカブルー((Co, Zn)2SiO4)、マンガンバイオレット(NH4MnP2O7)、コバルトバイオレットディープ(Co3(PO4)2)、コバルトバイオレットライト(CoLiPO4)、マンガンピンク、クロムアルミナグリーン、クロムグリーン、べんがら(Fe2O3)、クロムチタンイエロー、バナジウムスズイエロー、アンチモンスズ灰味青、ライラック、バナジウムジルコニウムイエロー、コバルト亜鉛アルミブルー((Co, Zn)Al2O4)、クロムアルミナピンク((Zn, Co)O・(Cr, Fe)2O3)、アンチモンイエロー(PbO、Sb2O3)、コバルトシリカブルー(Co2SiO4)、ニッケルグリーン(2(Ni, Zn)・SiO2)、クロムスズピンク、ビクトリアグリーン(3CaO・Cr2O3・3SiO2)、バナジウムブルー、プラセオジムイエロー、コーラルレッド等の無機顔料、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ホワイトカーボン(ケイ酸、ケイ酸カルシウム、含水ケイ酸アルミニウム等)、アルミナホワイト、水酸化アルミニウム、カオリンクレー、ベントナイト等の体質顔料等の黒色顔料、アルミニウム粉、ブロンズ粉、亜鉛末、ステンレス粉、ニッケル粉、金粉、銀粉等の金属粉顔料、マンガンピンク、クロムアルミナグリーン、クロムグリーン、べんがら(Fe2O3)、クロムチタンイエロー、バナジウムスズイエロー、アンチモンスズ灰味青、ライラック、バナジウムジルコニウムイエロー、コバルト亜鉛アルミブルー((Co, Zn)Al2O4)、クロムアルミナピンク((Zn, Co)O・(Cr, Fe)2O3)、アンチモンイエロー(PbO、Sb2O3)、コバルトシリカブルー(Co2SiO4)、ニッケルグリーン(2(Ni, Zn)・SiO2)、クロムスズピンク、ビクトリアグリーン(3CaO・Cr2O3・3SiO2)、バナジウムブルー、プラセオジムイエロー、コーラルレッド等の焼成顔料が例示される。
【0068】
(7)トップコート用組成物
本発明のトップコート用組成物は、
(A)ホウ酸系化合物
を含有し、
任意成分として
(C)分散媒体、及び
(D)二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物
を含有してなることを特徴とする。
【0069】
本発明のトップコート用組成物は、本発明の絵付け用組成物上に適用されて、本発明の絵付け用組成物と同時に焼成されて、絵付け部上に透明なトップコート層を形成する。また、本発明の絵付け用組成物を焼成することにより形成された絵付け部上に本発明のトップコート用組成物が適用され、次いで焼成されることによって、絵付け部上に透明なトップコート層を形成しても良い。
【0070】
トップコート用組成物は、トップコート用組成物の絵付け部上への適用作業を容易にするため、 (C)成分を含有することが好ましい。
【0071】
トップコート層が覆う対象は本発明の絵付け用組成物により形成された絵付け部が密着性の点で好ましいが、他の組成物による絵付け部であっても良い。
【0072】
(D)成分の二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を添加することにより、(A)成分の凝集を防止することが好ましい。
【0073】
本発明のトップコート用組成物の各成分の詳細は、本発明の絵付け用組成物の各成分の上記説明と同様である。
【0074】
(8)絵付け転写シート
本発明の絵付け転写シートは、転写シート及び絵付け用転写層を有し、該転写層が本発明の絵付け用組成物を含むことを特徴とする。
【0075】
また、必要に応じて転写シートと絵付け用転写層との間に、無機顔料(パール系顔料、焼成顔料など)を含有した組成物からなる背景層を1層又は複数層設けることができる。また、必要に応じて、絵付け用転写層上にトップコート層を設けることができる。さらに、転写の作業性向上のため、絵付け用転写層又はトップコート層上にアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層を設けることが好ましい。即ち、本発明の絵付け用転写シートは、転写シート、必要に応じて背景層、絵付け用転写層、必要に応じてトップコート層、必要に応じてアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層の順に積層された構成を有する。
【0076】
転写シートは支持体と水溶性粘着剤からなる。支持体としては、紙、熱可塑性樹脂などで構成されるシートが例示される。水溶性粘着剤は、絵付け用転写層又は背景層をガラス又は陶磁器へ接着する役割を果たす。水溶性粘着剤としては、デンプン、デキストリン、ポリビニルアルコールなどが例示される。
【0077】
絵付け用転写層は本発明の絵付け用組成物からなる。また絵付け用転写層は2層以上設けることができる。2層以上設けた場合、1層だけの場合と比較して、使用者に対し、より複雑なパール系色調の視覚的効果を与えることが可能となる。絵付け用転写層は、インクジェット印刷等のノンインパクト印刷、ハンドペイント、刷毛塗り、スタンプ、スプレー、ゴムロールによる帯状印刷、スクリーン印刷、浸漬等の公知の方法で転写シート又は背景層上に適用される。適用後は乾燥させることにより絵付け用組成物のガラス又は陶磁器への絵付けがより強固なものとなる。
【0078】
背景層用の組成物は、(A)成分、(C)成分及び無機顔料((B)成分に相当し、焼成顔料、パール系顔料が含まれる)を含有した組成物であり、その比率は、絵付け用の組成物と同一である。背景層は絵付け用転写層と同様な方法で転写シート上に適用される。背景層は無機顔料及び/又はパール系顔料による焼成後に色彩を帯びる。このため、背景層を設けた場合には、その上の絵付け層による単なるパール系顔料による色彩のみの場合と比べて、使用者に対し、重厚感のある色彩、鮮やかな色彩等のより複雑な視覚的効果を与える場合がある。例えば、一般的には、背景層を黒色とすると、パール系の色彩により重厚感を与えることができ、背景色を白色とすると、パール系の色彩により鮮やかさを与えることができる。
【0079】
トップコート層は、絵付け用転写層が焼成されて形成する絵付け部を保護する目的で使用される。このため、焼成後にできる限り透明であることが好ましい。好ましいのは本発明のトップコート用組成物である。トップコート用組成物は、本発明の絵付け用組成物を適用する方法と同様な方法で、絵付け用転写層上に適用される。トップコート用組成物を絵付け用転写層上に適用後は揮発性成分を乾燥させ、密着性を向上させることが好ましい。
【0080】
絵付け転写シートを水に浸すと、水溶性粘着剤が粘着性を示すようになる。この絵付け転写シートから転写シートの支持体のみを分離し、水溶性粘着剤層をガラス又は陶磁器に貼り付け、必要に応じて水溶性粘着剤を除去し、乾燥させて、絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に固定させる。
【0081】
また、絵付け転写シートから転写シートを分離して得られる、水溶性粘着剤、必要に応じて背景層、絵付け用転写層、必要に応じてトップコート層を有する積層体は、ガラス又は陶磁器に貼り付ける際に、破損することがあるため、絵付け用転写層又はトップコート層上の最外層に、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層を設けると積層体の強度が向上し、作業性が向上する。保護層に含まれる。
【0082】
(9)絵付けシート
本発明の絵付けシートは、離型紙及び絵付け用印刷層を有し、該印刷層が本発明の絵付け用組成物を含むことを特徴とする。
【0083】
また、必要に応じて離型紙と絵付け用印刷層との間に、無機顔料を含有した組成物からなる背景層を1層又は複数層設けることができる。また、必要に応じて、絵付け用印刷層上にトップコート層を設けることができる。さらに、転写の作業性向上のため、絵付け用印刷層又はトップコート層上にアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層を設けることが好ましい。即ち、本発明の絵付けシートは、離型紙、必要に応じて背景層、絵付け用印刷層、必要に応じてトップコート層、必要に応じてアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層の順に積層された構成を有する。
【0084】
絵付け用印刷層は本発明の絵付け用組成物からなる。また絵付け用印刷層は2層以上設けることができる。2層以上設けた場合、1層だけの場合と比較して、使用者に対し、より複雑なパール系色調の視覚的効果を与えることが可能となる。絵付け用印刷層は、インクジェット印刷等のノンインパクト印刷、ハンドペイント、刷毛塗り、スタンプ、スプレー、ゴムロールによる帯状印刷、スクリーン印刷、浸漬等の公知の方法で離型紙又は背景層上に適用される。適用後は乾燥させることにより絵付け用組成物のガラス又は陶磁器への絵付けがより強固なものとなる。
【0085】
背景層用の組成物は、上記と同様である。
【0086】
背景層は絵付け用印刷層と同様な方法で離型紙上に適用される。背景層は無機顔料及び/又はパール系顔料による焼成後に色彩を帯びる。このため、背景層を設けた場合には、その上の絵付け層による単なるパール系顔料による色彩のみの場合と比べて、使用者に対し、重厚感のある色彩、鮮やかな色彩等のより複雑な視覚的効果を与える場合がある。例えば、一般的には、背景層を黒色とすると、パール系の色彩により重厚感を与えることができ、背景色を白色とすると、パール系の色彩により鮮やかさを与えることができる。
【0087】
トップコート層は、絵付け用印刷層が焼成されて形成する絵付け部を保護する目的で使用される。このため、焼成後にできる限り透明であることが好ましい。好ましいのは本発明のトップコート用組成物である。トップコート用組成物は、本発明の絵付け用組成物を適用する方法と同様な方法で、絵付け用印刷層上に適用される。トップコート用組成物を絵付け用印刷層上に適用後は揮発性成分を乾燥させ、密着性を向上させることが好ましい。
【0088】
また、絵付けシートはから離型紙を分離して得られる、必要に応じて背景層、絵付け用印刷層、必要に応じてトップコート層を有する積層体は、ガラス又は陶磁器に貼り付ける際に、破損することがあるため、絵付け用印刷層又はトップコート層上の最外層に、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層を設けると積層体の強度が向上し、作業性が向上する。
【0089】
(10)絵付け方法
本発明の絵付け方法は、ガラス又は陶磁器に対する絵付け方法であって、本発明の絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けする工程、及び該組成物が絵付けされたガラス又は陶磁器を該組成物中の(A)成分がガラス化する温度以上で焼成する工程を含むことを特徴とする。
【0090】
本発明の絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けする方法は、絵付けに使用される一般の適用方法が使用できる。例えば、インクジェット印刷等のノンインパクト印刷、ハンドペイント、刷毛塗り、スタンプ、スプレー、ゴムロールによる帯状印刷、転写シートによる転写、離型紙を使用した絵付けシートによる絵付け、スクリーン印刷法による直接印刷、浸漬などが挙げられる。好ましくは、絵付け転写シートによる転写、インクジェット印刷、離型紙を使用した絵付けシートによる絵付けである。
【0091】
絵付け工程では、通常、絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けした後、絵付け部分を必要に応じて乾燥させ、(C)成分の揮発性成分を揮発させる。
【0092】
次に、絵付けされたガラス又は陶磁器を焼成し、ホウ酸系ガラスによりパール系顔料をガラス又は陶磁器に定着させる。焼成温度は、絵付け用組成物中の(A)成分がガラス化する温度以上が好ましい。より好ましくは、(A)成分がガラス化する温度以上からパール系顔料が所望の色調を維持できる温度、より一層好ましくは、650〜900℃、最も好ましくは700〜800℃である。焼成温度が高すぎるとパール調の色彩が得られないことがある。
【0093】
また、焼成時には300℃から750℃までは急速に昇温することが好ましい。300℃から750℃まで温度が上昇する時間は好ましくは15分以内、より好ましくは5分以内である。なお、300℃までは急速に昇温しても緩やかに昇温しても良い。緩やかに昇温する場合、絵付け部上に本発明のトップコート用組成物を焼成して得られるトップコート層を設けることが好ましい。このような焼成工程を経て、ガラス又は陶磁器にパール調の色彩を有する絵付け部が形成される。
【0094】
(11)絵付け対象のガラス又は陶磁器
本発明において絵付けの対象となるガラス又は陶磁器としては、特に限定されないが、例えば食器(皿、カップ等)、タイル、装飾品、花瓶、壺、土鍋、結晶化ガラス製の鍋、電子レンジのターンテーブル等が例示できる。好ましいのは食器である。陶磁器は表面がガラス質のものが良く、素焼き後、うわぐすり等のガラス質を塗って焼成した陶磁器が例示される。
【0095】
(12)絵付けされたガラス又は陶磁器
本発明の絵付け部を有するガラス又は陶磁器は、ホウ酸系ガラスの内部又は表面にパール系顔料が分散してなる絵付け部を有することを特徴とする。
【0096】
また、本発明の絵付け部を有するガラス又は陶磁器は、絵付け部上に、さらに、本発明のトップコート用組成物を焼成して得られたトップコート層を含むことを特徴とする。
【0097】
また、本発明の絵付けされたガラス又は陶磁器は、本発明の絵付け用組成物、本発明のトップコート用組成物、本発明の絵付け転写シート及び本発明の絵付けシートからなる群から選択される少なくとも1種を用いて絵付けされた絵付け部を有することを特徴とする。
【0098】
ガラス又は陶磁器の製品例としては、食器、タイル、装飾品、花瓶、壺、土鍋、結晶化ガラス製の鍋及び電子レンジのターンテーブル等が挙げられる。
【0099】
絵付け部の厚さは適宜選択できる。例えば、食器の場合、絵付け部が厚いのは一般的に好まれないが、美術品や嗜好品などでは絵付け部を厚くすることにより立体感が出て好まれる場合もある。また、本発明の絵付け用組成物をガラスまたは陶磁器に適用する方法がスクリーン印刷である場合には焼成前の絵付け部の厚さは1〜200μmが好ましく、スクリーン印刷以外である場合には、焼成前の絵付け部の厚さは1〜1000μmが好ましい。なお、焼成後の絵付け部の厚さは、焼成前に比べると(C)成分が分解除去された分だけ厚みが減少する。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、パール系の色調が鮮やかで、耐摩耗性に優れた絵付け部を有するガラス又は陶磁器が得られる。また、沸騰水や食器洗い条件でも優れた堅牢性を示し、電子レンジでも使用可能な、パール調の色彩を有するガラス又は陶磁器を得ることもできる。
【0101】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例において、(A)成分のホウ酸、無水ホウ酸としては日本電工社製のものを用いた。また、(B)成分のパール系顔料としては、ENGELHARD CORPORATION製のGOLDEN BRONZE 9240Aを使用し、(C)成分の分散媒体としては、共栄社化学社製のアクリル系樹脂であるオリコックスKC−1700Pを使用し、粘度調整剤としてはキシレンを使用し、(D)成分の二酸化ケイ素としては、日本アエロジル社製のアエロジルOX50(平均粒子径12nm(透過型電子顕微鏡による粒子径測定法))を使用し、保護層用のアクリル系樹脂としては、互応化学工業(株)製のLO−SPRAY−Rを使用した。
【0102】
実施例1
ホウ酸を振動ミル(BM−3型粉砕機(中央化工機社製)で平均粒子径1μmに調整した。このホウ酸90g、6〜90μmの粒子径を有するパール系顔料30g、分散媒体のアクリル系樹脂60g及びキシレン160gを混合し、プロペラ羽ね付きかき混ぜ機により400rpmで30分間かき混ぜた後、ビーズミル分散機(LMZ−2:アジサワ社製)により3000rpmで2時間分散を行い、グラインドゲージで平均粒子径10μm以下の分散であることを確認した後、キシレンで粘度を調整し、150メッシュのふるいでろ過し、絵付け用組成物を作製した。
【0103】
つぎに、このようにして製作した絵付け用組成物を、水溶性粘着剤(デキストリン)を有する転写シート上に200メッシュのスクリーン印刷により印刷し、80℃で10分間乾燥した。得られた絵付け用転写層上に保護層用樹脂をバーコーターで塗装した後、80℃で10分間乾燥し、絵付け層を有する転写シートを作製した。
【0104】
絵付け層を有する転写シートから支持体を剥ぎ取り、陶磁器製の皿に付着せしめた後、700℃で30分間焼成し、パール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0105】
実施例2
焼成条件を800℃で30分間と変更した以外は実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0106】
実施例3
スクリーン印刷後の乾燥条件を常温乾燥に変更した以外は実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0107】
実施例4
スクリーン印刷後の乾燥条件及び保護層用樹脂塗装後の乾燥条件を常温乾燥に変更した以外は実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0108】
実施例5
実施例1と同様にして絵付け用組成物を作製した。つぎに、絵付け用組成物を、水溶性粘着剤(デキストリン)を有する転写シート上に200メッシュのスクリーン印刷により印刷し、80℃で30分間乾燥した。得られた絵付け用転写層上にトップコート用組成物を200メッシュのスクリーン印刷により塗装し、80℃で30分間乾燥した。さらにその上に保護層用樹脂をバーコーターで塗装した後、80℃で30分間乾燥し、絵付け層を有する転写シートを作製した。
【0109】
絵付け層を有する転写シートから支持体を剥ぎ取り、陶磁器製皿に付着せしめた後、800℃で30分間焼成し、パール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0110】
実施例6
実施例1のホウ酸90gに代えて、ホウ酸に対して1重量%の二酸化ケイ素を添加して、振動ミルBM−3型で粉砕加工した平均粒子径1μmのホウ酸及び二酸化ケイ素混合物90gを使用した以外は実施例1と同様にして絵付け用組成物を作製した。
【0111】
この絵付け用組成物を使用し、保護層用樹脂塗装後の乾燥条件を100℃で10分間、焼成条件を800℃で90分間と変更した以外は実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0112】
実施例7
二酸化ケイ素の添加量を3重量%とし、焼成条件を700℃で30分間と変更した以外は実施例6と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0113】
実施例8
ホウ酸に対して1重量%の二酸化ケイ素を添加し、BM−3型振動ミルで平均粒子径1μmに調整した。このホウ酸及び二酸化ケイ素の混合物35g、分散媒体21g及びキシレン44gを混合し、プロペラ羽ね付きかき混ぜ機により400rpmで30分間かき混ぜた後、ビーズミル分散機LMZ−2により3000rpmで2時間分散を行い、グラインドゲージで平均粒子径10μm以下の分散であることを確認した後、キシレンで粘度を調整し、150メッシュのふるいでろ過し、トップコート用組成物を作製した。
【0114】
つぎに、このようにして製作したトップコート用組成物を、水溶性粘着剤(デキストリン)を有する転写シート上に200メッシュのスクリーン印刷により印刷し、常温乾燥した。得られた絵付け用転写層上に保護層用樹脂をバーコーターで塗装した後、100℃で10分間乾燥し、絵付け層を有する転写シートを作製した。
【0115】
絵付け層を有する転写シートから支持体を剥ぎ取り、陶磁器製皿に付着せしめた後、800℃で30分間焼成し、パール調の色彩が鮮やかなホウ酸ガラスクリヤー層を有する陶磁器製皿を得た。
【0116】
実施例9
実施例1の絵付け用組成物340g及び実施例8のトップコート用組成物100gをプロペラ羽根付きかきまぜ機によりかき混ぜて、絵付け用組成物を作製した。この絵付け用組成物を使用して、実施例1と同様にして転写シートを作製し、次いで、実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0117】
実施例10
焼成条件を800℃で30分間に変更した以外は実施例9と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな陶磁器製皿を得た。
【0118】
実施例11
実施例9と同様にして絵付け用組成物を作製した。つぎに、このようにして製作した絵付け用組成物を、水溶性粘着剤(デキストリン)を有する転写シート上に200メッシュのスクリーン印刷により印刷し、80℃で10分間乾燥した。得られた絵付け用転写層上に実施例8で作製したトップコート用組成物を200メッシュのスクリーン印刷により印刷し、80℃で10分間乾燥した。さらにその上に保護層用樹脂をバーコーターで塗装した後、80℃で10分間乾燥し、絵付け層を有する転写シートを作製した。
【0119】
絵付け層を有する転写シートから支持体を剥ぎ取り、陶磁器製皿に付着せしめた後、800℃で30分間焼成し、パール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0120】
実施例12
絵付け用転写層上にトップコート用組成物を印刷し、乾燥する工程を省略した以外は実施例11と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0121】
実施例13
平均粒子径1μmのホウ酸に代えて平均粒子径10μmのホウ酸を使用した以外は実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0122】
実施例14
ホウ酸に代えて無水ホウ酸を使用した以外は実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0123】
実施例15
実施例1のホウ酸90gに代えて、無水ホウ酸に対して1重量%の二酸化ケイ素を添加して、振動ミルBM−3型で粉砕加工した平均粒子径1μmの無水ホウ酸及び二酸化ケイ素混合物90gを使用した以外は実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け用組成物を作製した。
【0124】
実施例16
実施例1で作製した絵付け用組成物と実施例14の絵付け用組成物を1:1(重量比)の割合で混合し、340gの絵付け用組成物を作製した。この絵付け用組成物を使用して、実施例1と同様にして絵付け層を有する転写シートを作製し、次いで実施例1と同様に転写及び焼成して、パール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0125】
実施例17
実施例15の絵付け用組成物340g及び実施例8のトップコート用組成物100gをプロペラ羽根付きかきまぜ機によりかき混ぜて、絵付け用組成物を作製した。この絵付け用組成物を使用して、実施例1と同様にして絵付け層を有する転写シートを作製した。次いで、焼成条件を800℃で30分間に変更した以外は実施例1と同様にしてパール調の色彩が鮮やかな絵付け部を有する陶磁器製皿を得た。
【0126】
実施例1〜17の実験条件を表1に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
試験例
実施例1〜17で得られた陶磁器製皿を用いて下記要領で耐沸騰水試験、食器洗い洗浄試験、耐磨耗性、耐擦傷試験、電子レンシスパーク試験を行った。試験結果を表2に示す。
耐沸騰水試験、
陶磁器製皿の試験片を沸騰水中に10日間連続で浸漬放置した後、取り出し自然放置し1時間後の外観を評価した。
◎:外観上全く異常がない
○:極微量であるが変色した
×:変色又は剥離した
食器洗い洗浄試験
下記洗浄条件で洗浄及び乾燥を100サイクル行った後の外観を評価した。
食器洗い機:ナショナル食器洗い乾燥機(NP−40SX−1)
洗浄剤:弱アルカリの専用洗浄剤
洗浄温度:80℃×30分を1サイクル
◎:外観上全く異常がない
○:極微量であるが変色した
×:変色又は剥離した
耐磨耗性試験
接触面が2cm×2cmある脱脂綿に浸したクレンザー(サンキョウクリームクレンザー :三協油脂株式会社)を用いて、1kgの加重をかけ30回擦った後の試験片の磨耗性を評価した。
◎:外観上全く摩耗しない
×:外観上摩耗傷が見られる
耐擦傷試験
NTカッターナイフにより傷つき性を評価した。
◎:外観上全く摩耗しない
×:外観上摩耗傷が見られる
電子レンジスパーク試験
電子レンシレンジ : ナショナル NE−S22F 600WH
放置時間 : 2分
◎:スパークが発生しない
○:極微量であるがスパークが発生した
×:スパークが発生した
【0129】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】パール系顔料の具体的な名称の一覧表である。
【図2】パール系顔料の具体的な名称の一覧表である。
【図3】パール系顔料の具体的な名称の一覧表である。
【図4】パール系顔料の具体的な名称の一覧表である。
Claims (25)
- (A)ホウ酸系化合物、
(B)パール系顔料、及び
(C)分散媒体
を含有してなるガラス又は陶磁器の絵付け用組成物。 - (A)成分と(B)成分の合計重量に対する、(A)成分の配合量が50〜99重量%であり、(B)成分の配合量が1〜50重量%である請求項1に記載の絵付け用組成物。
- (C)成分が、(A)成分と(B)成分の合計重量を100重量部として、30〜2000重量部である請求項1又は2に記載の絵付け用組成物。
- (A)成分がホウ酸、無水ホウ酸及びホウ酸系ガラスフリットからなる群から選択される少なくとも1種のホウ酸系化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の絵付け用組成物。
- (B)成分が酸化金属でコーティングされた雲母である請求項1〜4のいずれかに記載の絵付け用組成物。
- (C)成分がポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂及びポリイソプレン系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の絵付け用組成物。
- (A)ホウ酸系化合物、
(B)パール系顔料、
(C)分散媒体、及び
(D)二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物
を含有してなるガラス又は陶磁器の絵付け用組成物。 - (A)ホウ酸系化合物
を含有し、
任意成分として
(C)分散媒体、及び
(D)二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物
を含有してなるガラス又は陶磁器のトップコート用組成物。 - (A)ホウ酸系化合物、及び
(C)分散媒体
を含有し、
任意成分として
(D)二酸化ケイ素、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種の化合物
を含有してなるガラス又は陶磁器のトップコート用組成物。 - トップコート用組成物おいて(A)成分配合量が1〜90重量%、(C)成分配合量が10〜99重量%であり、(D)成分配合量が(A)成分の0〜5重量%である請求項9に記載のトップコート用組成物。
- 転写シートに絵付け用転写層を有し、該転写層が請求項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物を含む絵付け転写シート。
- 転写シート、絵付け用転写層及びトップコート層をこの順に有し、該転写層が請求項1〜7のいずれかに記載の組成物を含み、該トップコート層が請求項8〜10のいずれかに記載のトップコート用組成物を含む絵付け転写シート。
- アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層を最外層に有する請求項11又は12に記載の絵付け転写シート。
- 離型紙及び絵付け用印刷層を有し、該印刷層が請求項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物を含む絵付けシート。
- 離型紙、絵付け用印刷層及びトップコート層をこの順に有し、該印刷層が請求項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物を含み、該トップコート層が請求項8〜10のいずれかに記載のトップコート用組成物を含む絵付けシート。
- アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂またはラッカー(セルロース誘導体を塗膜形成要素としたペイント)を含む保護層を最外層に有する請求項14又は15に記載の絵付けシート。
- ガラス又は陶磁器に対する絵付け方法であって、請求項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けする工程、及び該組成物が絵付けされたガラス又は陶磁器を該組成物中の(A)成分がガラス化する温度以上で焼成する工程を含む絵付け方法。
- ガラス又は陶磁器に対する絵付け方法であって、請求項11〜13のいずれかに記載の絵付け転写シートを用いてガラス又は陶磁器に絵付けする工程、及び該組成物が絵付けされたガラス又は陶磁器を該組成物中の(A)成分がガラス化する温度以上で焼成する工程を含む絵付け方法。
- ガラス又は陶磁器に対する絵付け方法であって、請求項14〜15のいずれかに記載の絵付けシートを用いてガラス又は陶磁器に絵付けする工程、及び該組成物が絵付けされたガラス又は陶磁器を該組成物中の(A)成分がガラス化する温度以上で焼成する工程を含む絵付け方法。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けする工程が、該組成物をノンインパクト印刷でガラス又は陶磁器に印刷する工程を含むことを特徴とする請求項17に記載の絵付け方法。
- ホウ酸系ガラスの内部又は表面にパール系顔料が分散してなる絵付け部を有するガラス又は陶磁器。
- ガラス又は陶磁器が、食器、タイル、装飾品、花瓶、壺、土鍋、結晶化ガラス製の鍋及び電子レンジのターンテーブルからなる群から選択される少なくとも1種である請求項21に記載のガラス又は陶磁器。
- さらに、絵付け部上に、請求項8〜10のいずれかに記載のトップコート用組成物を焼成して得られたトップコート層を含む請求項21に記載のガラス又は陶磁器。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物をガラス又は陶磁器に絵付けし、該ガラス又は陶磁器を該組成物中の(A)成分がガラス化する温度以上で焼成することにより得ることのできる絵付けされたガラス又は陶磁器。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の絵付け用組成物、請求項8〜10のいずれかに記載のトップコート用組成物、請求項11〜13の絵付け転写シート及び請求項14〜16の絵付けシートからなる群から選択される少なくとも1種を用いて絵付けされた絵付け部を有するガラス又は陶磁器。
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- 2002-11-21 JP JP2002338383A patent/JP2004168619A/ja active Pending
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