JP2004168617A - 多層筒状炭素構造体及びその製造方法ならびに電子装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】形態を改良された多層カーボンナノチューブを提供すること。
【解決手段】実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体において、最外層の円筒体が、カーボンナノチューブに由来するものであり、かつ少なくとも1個の内層円筒体が、2種類もしくはそれ以上の、カーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料の反応に由来するものであり、前記最外層の円筒体とは異なる形態を有しているように構成する。
【選択図】 図2
【解決手段】実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体において、最外層の円筒体が、カーボンナノチューブに由来するものであり、かつ少なくとも1個の内層円筒体が、2種類もしくはそれ以上の、カーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料の反応に由来するものであり、前記最外層の円筒体とは異なる形態を有しているように構成する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層筒状炭素構造体に関し、さらに詳しく述べると、多層カーボンナノチューブとその製造方法に関する。本発明はまた、かかる多層カーボンナノチューブを配線等に使用した電子装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知の通り、フラーレンの発見から約15年、そしてカーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも記す)の発見から約10年を経過したところであるが、これらのナノカーボンの進歩には目覚しいものがあり、すでに多くの研究成果が報告されている。
【0003】
概説すると、フラーレンやCNTは、一般的に、レーザーアブレーション(レーザー蒸発)法、アーク放電法又は化学的気相成長法(CVD法)によって製造されているが、それぞれに一長一短がある。また、CNTには、炭素の円筒体が1層だけの単層ナノチューブと、2層以上の炭素の円筒体から構成された多層ナノチューブとがある。一般に多層ナノチューブの方が製造しやすいので、各社あるいは各研究機関が、いろいろなタイプの多層ナノチューブを開発し、報告している。多層ナノチューブの一例が、図1に模式的に示す2層ナノチューブである。2層ナノチューブ110は、内層のナノチューブ111と、それを取り囲んだ外層のナノチューブ112とからなる。かかる2層ナノチューブ110の直径は、通常、約2〜5nmのオーダーである。また、図では示されていないが、内層及び外層のナノチューブ111及び112は、それぞれ、6角形の網目をもったシート(グラファイトシート)を円筒形に丸めたような形態を有している。2層ナノチューブ及びその他の多層CNTは、導電性、機械的強度などにおいて特異的な性質を示すので、バイオテクノロジー、エレクトロニクス、医療、診断、エネルギーなどの分野において利用価値が大である(非特許文献1を参照されたい)。
【0004】
従来の多層CNTは、しかし、図1の模式図からも理解されるように、外層及び内層のナノチューブがそれぞれ長手方向において同じ直径を有している。これは、多層CNTの製造方法に大きな理由があるものと理解されるが、もしも円筒体の形態を変更できれば、多層CNTの利用価値を一段と高めることができるであろう。
【0005】
【非特許文献1】
篠原久典、「量産技術の本質はなにか」、日経サイエンス、2002年8月、26〜31頁。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、したがって、多層カーボンナノチューブ(CNT)において、その形態を改良し、その利用範囲を拡大し、かつ利用価値を一段と高めることにある。
【0007】
また、本発明の目的は、改良された形態を有するCNTの有利な製造方法を提供することにある。
【0008】
さらに、本発明の目的は、本発明の多層CNTを組み込んだ高性能な電子装置を提供することにある。
【0009】
本発明の上記したような目的やその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その1つの面において、実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体において、
最外層の円筒体が、カーボンナノチューブに由来するものであり、かつ
その円筒体の内部に収納された少なくとも1個の内層円筒体が、2種類もしくはそれ以上の、カーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料の反応に由来するものであり、前記最外層の円筒体とは異なる形態を有していることを特徴とする多層筒状炭素構造体にある。
【0011】
また、本発明は、そのもう1つの面において、実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体を製造する方法において、
最外層の円筒体をカーボンナノチューブから形成し、かつ
その最外層の円筒体の内部に収納された少なくとも1個の内層円筒体を、2種類もしくはそれ以上のカーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料から、前記最外層の円筒体とは異なる形態で形成することを特徴とする多層筒状炭素構造体の製造方法にある。
【0012】
さらに、本発明は、そのもう1つの面において、実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体を1構成要素として有する電子装置において、
前記炭素構造体の最外層の円筒体が、カーボンナノチューブに由来するものであり、かつ
その円筒体の内部に収納された少なくとも1個の内層円筒体が、2種類もしくはそれ以上の、カーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料の反応に由来するものであり、前記最外層の円筒体とは異なる形態を有していることを特徴とする電子装置にある。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明による多層円筒状炭素構造体は、本発明の範囲内でいろいろな炭素構造体を包含できるけれども、典型的には、多層カーボンナノチューブ(多層CNT)であり、以下においてもこれを中心に説明する。また、以下、本発明の好ましい実施の形態を添付の図面を参照しながら説明が、本発明は、図示のような2層CNTに限定されるものではなく、その他の構造の2層CNTや3層以上の多層CNTにも有利に適用できることは言うまでもない。
【0014】
本発明の多層CNTは、それぞれが実質的に炭素のみからなる、2個もしくはそれ以上の円筒体(チューブ)から構成される。これらの円筒体は、同心円状に配置され、したがって、1つの外側の円筒体(外層もしくは最外層の円筒体)の中に、1個もしくはそれ以上の円筒体(内層円筒体)が入れ子状に挿入されたような構成を有する。なお、かかる多層CNTは非常に微細であり、その直径は、ナノメートルのオーダー、通常、50nm以下、好ましくは約1〜5nmの範囲、さらに好ましくは約1〜3nmの範囲である。必要ならば、1nmを下回る直径も可能である。
【0015】
本発明の多層CNTにおいて、その外側を構成する外層円筒体は、カーボンナノチューブからなる。このカーボンナノチューブは、かかる多層CNTの製造のために予め調製されたものである。すなわち、このカーボンナノチューブは、本発明の多層CNTの製造途中で形成されたものではない。ここで外層円筒体の形成に使用されるカーボンナノチューブは、特に限定されるものではなく、レーザーアブレーション法、アーク放電法、CVD法などの常用の技法に従って製造することができる。カーボンナノチューブの種類やサイズは、目的とする多層CNTの構成やその他の要件の応じて任意に変更することができる。
【0016】
本発明に従うと、カーボンナノチューブからなる外層円筒体の内部に、少なくとも1個の内層円筒体が収納される。内層円筒体は、基本的には、外層円筒体のカーボンナノチューブと同様な構成を有しているけれども、外層円筒体のように長手方向にほぼ一定の直径を有するカーボンナノチューブであってはならず、外層円筒体とは異なる形態を有することが必要である。適当な形態としては、内層円筒体が、その一部に直径を異にする部分(狭窄部分;換言すると、外層円筒体の内壁からの距離が大きくなった部分)を有する形態、そのような狭窄部分が繰り返されている形態、分岐した部分を有する形態、そのような分岐部分が繰り返されている形態、長手方向に連続的に直径が変化する部分を有する形態などを挙げることができる。このような本発明に特有な形態を多層CNTの内層円筒体に導入した結果、得られる多層CNTにおいて、いままで予想できなかったことであるが、
(1)外層円筒体と内層円筒体間の電気的絶縁性が高まる、
(2)内層円筒体の一部に電荷の閉じ込め領域ができる、
(3)内層円筒体のバンドキャップが周期的に変化することで、超格子としての量子効果が起こる、
(4)内層円筒体に多層のエネルギー障壁ができることで、共鳴トンネル効果の如き量子効果が起こる、
(5)内層円筒体内に電荷を加速もしくは減速するための電界を作ることができる、
などの注目すべき作用効果を具現することができ、よって、多層CNTの用途を大幅に広げることができ、利用価値も一段と高めることができる。
【0017】
外層円筒体とは異なる形態を有する内層円筒体は、本発明に従うと、2種類もしくはそれ以上の、カーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料を相互に反応させることによって形成することができる。すなわち、原料として使用する炭素材料の種類及び量、反応条件などを任意に変更することによって、目的とする形態をもった内層円筒体を形成することができる。
【0018】
内層円筒体の形成に使用する炭素材料は、目的とする内層円筒体が得られる限りにおいて特に限定されるものではないけれども、取り扱い性や円筒体の形成性などを考慮した場合、フラーレンもしくはカーボンナノチューブが好適である。すなわち、例えば2種類もしくはそれ以上のフラーレンを相互に反応させることによって内層円筒体を有利に形成することができる。特に、2種類以上の大きさあるいはその他の特性の異なるフラーレンを相互に反応させることによって内層円筒体を有利に形成することができる。また、このフラーレンどうしの相互反応は、本発明に従うと、外層円筒体に使用されるカーボンナノチューブの内部で実施するのがとりわけ有利である。内層円筒体の品質を高くできるからである。
【0019】
本発明の実施に使用するフラーレンは、置換もしくは非置換のいずれであってもよい。適当なフラーレンの例は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、C60、C70、C76、C78、C84、C60/C13、C60(OH)n、C60(H)n、C60F36、フラーレン誘導体(金属内包フラーレン)などを包含する。
【0020】
本発明の多層CNTにおいて、外層円筒体の内部に収納される内層円筒体の数は、特に限定されるものではなく、通常、1〜100個の範囲である。製造技術がさらに進歩すれば、さらに多層のCNTも提供できるであろう。
【0021】
図2は、本発明による多層CNTの好ましい1形態を模式的に示した断面図である。多層CNT10は、2層構造体であり、内側の炭素質円筒体(内層チューブ)1と、内層チューブ1の外周を取り囲む外側の炭素質円筒体(外層チューブ)2とからなる。内層チューブ1及び外層チューブ2は、内層チューブ1において本発明に従いその長手方向の形態に変化をもたせたという相違点があるが、基本的にはどちらのチューブもカーボンナノチューブからなる。なお、ある部分に形態変化をもたせるには、その部分に6員環以外の構造を含めることで、達成できる。
【0022】
ここで、本発明に使用し得るカーボンナノチューブについて説明する。
【0023】
カーボンナノチューブは、その独特の特性から最近注目を浴びている新しい炭素系材料である。カーボンナノチューブは、炭素原子がsp2という最も強い結合で6員環状に組み上げられたグラファイトシートを筒状に丸めた構造を持ち、チューブの先端は5員環を含むいくつかの6員環で閉じられている。チューブの直径はサブナノメートルのオーダーまで微細化でき、最小で0.4nmである。チューブの長さは、現在のところ数mmに達するものまで製作可能である。
【0024】
カーボンナノチューブには、金属的な性質を示すための条件を満たすバンド構造を取るものと、半導体的(半金属的)な性質を示すための条件を満たすバンド構造を取るものがある。カーボンナノチューブが金属的性質を示すか半導体的性質を示すかには、カーボンナノチューブのカイラリティ(チューブのねじれ方、あるいはグラファイトシートの巻き方)が関与している。図4(a)は、金属的性質を示すナノチューブのカイラリティ(アームチェア型と呼ばれる)を示しており、図4(b)は、半導体的性質を示すもの(ジグザグ型と呼ばれる)を示している。また、図4(c)に示した構造はカイラル型として知られるものであり、この場合には、条件により金属的性質を示すことと半導体的性質を示すことがある。カーボンナノチューブのカイラリティは、その製作方法や製作条件などに左右される。
【0025】
カーボンナノチューブは、その構造が自己組織化によってできあがることから、1本のチューブの径は通常一定である。しかし、本発明の場合、上記したように、チューブの中に別のチューブが入った多層ナノチューブを提供するものであるが、内層チューブは、従来の多層ナノチューブと異なって、径が一定でないことに特徴がある。径のサイズに変化を持たせることで、特有の作用効果を得ることができるからである。
【0026】
また、それぞれのカーボンナノチューブが異なるカイラリティを示すことを利用して、内側のチューブが半導体的性質を有し、外側のチューブが金属的性質を有する多層構造体を提供することもできる。
【0027】
さらに、カーボンナノチューブは、上述のようにカイラリティによって電気伝導率が半導体的にも金属的にもなること以外に、ダイヤモンド以上の熱伝導率や、電流密度が1平方センチメートル当たり106アンペアまで流せること、ヤング率が高いこと、水素などの吸蔵効率が高い可能性があること、機械的な強度が大であることなど、数多くの魅力的な物性を備えている。
【0028】
再び図2を参照して説明すると、内層チューブ1は、図示されるように、その長手方向の途中に、狭窄部Aを有している。すなわち、内層チューブ1は、その一部において直径が変化している。また、この内層チューブ1において、狭窄部Aの外壁と外層チューブ2の内壁との間には、大きな間隙g2が存在している。さらに、狭窄部Aは、それに隣接して通常の径をもった拡径部Bを有している。拡径部Bにおいて、その外壁と外層チューブ2の間の間隙g1は、間隙g2に比較してかなり小さくなっている。この構造を拡張することで、1本のナノチューブにおいて、長手方向に…BABABA…の如く、直径の変化領域が周期的に存在する2層CNTを作ることができる。
【0029】
図2では、内層チューブ1において狭窄部Aの両側に拡径部Bを配置した例を示した。この例では、例えば、狭窄部A及び拡径部Bの長さを、それぞれ、所望に応じて任意に変更することができる。もちろん、それぞれの部分の径も、任意に変更可能である。また、狭窄部A及び拡径部Bのそれぞれのカイラリティの違いを利用して金属と半導体を連ねることも可能である。さらに、図示しないけれども、本発明の多層CNTでは、内層チューブをいろいろに変更することができる。例えば、図示の例で採用されている狭窄部A及び拡径部Bの他に、追加の部分、例えば中間的な径をもった中間径部Cを設けることもできる。中間径部Cを設けることによって、多層CNTをさらに多様化することができる。例えば、狭窄部A、拡径部B及び中間径部Cの周期パターンについてみると、…ABCABCABC…、…AABCAABCAABC…、…ABCCABCCABCC…などのように、所望とする効果などに応じていろいろな組み合わせを採用することができる。
【0030】
また、本発明の多層CNTでは、その内層チューブをその一部において分岐させてもよく、また、その分岐領域が周期的に存在しているように構成してもよい。
【0031】
さらに、上記のような分岐形態の一変形例として、図3に示すように、内層チューブ1を中実とし、その一部において中空の領域(キャビティ)11を配置した2層CNT10を提供することができる。中空領域11を設けることで、内層チューブ1をチューブ1a及び1bに分岐させ、分岐領域に特有な効果を得ることができる。なお、図示の例では、内層チューブ1において分岐領域Aの両側に中実領域Bが設けられているが、配置パターンは、追加の領域の存在も含めて、任意に変更可能である。
【0032】
本発明はまた、上述のような多層CNTの新規な製造方法にある。本発明による多層CNTの製造方法は、特に、
(1)外層チューブをカーボンナノチューブから形成すること、
(2)外層チューブの内部に挿入された1個もしくはそれ以上の内層チューブにおいて、その少なくとも1個を、2種類もしくはそれ以上の炭素材料から形成すること、及び
(3)内層チューブを、上記したように、外層チューブとは異なる形態で形成すること、
を特徴とする。
【0033】
本発明方法は特に、外層チューブを構成すべきカーボンナノチューブの内部で2種類もしくはそれ以上の炭素材料を反応させることによって内層チューブを形成することで、有利に実施できる。また、このようにして内層チューブを形成する場合、2種類以上の大きさの異なるフラーレンを炭素材料として使用するのが有利であるが、短いカーボンナノチューブを用いることもできる。
【0034】
例えば、図2の2層CNT10において、その内層チューブ1は、小型のフラーレンと大型のフラーレンを、外層チューブ2を形成するためのカーボンナノチューブの内部で相互に反応させることによって、有利に形成することができる。すなわち、内層チューブ1は、図5に順を追って示すようにして有利に形成することができる。
工程A:
外層チューブ形成のためのカーボンナノチューブ2を用意する。
工程B:
カーボンナノチューブ2の所定の領域に、狭窄部を形成するための小型のフラーレン21を選択的に挿入する。
工程C:
カーボンナノチューブ2の空き領域(フラーレン21を有しない領域)に、拡径部を形成するための大型のフラーレン22を充填する。
工程D:
カーボンナノチューブ2の内部に小型のフラーレン21と大型のフラーレン22を充填した後、所定の条件下で反応させる。図示のように、図2の2層CNT10を正確な形状及びサイズで得ることができる。
【0035】
図3の2層CNT10も、基本的には、図5の方法と同様な手順で有利に製造することができる。但し、この2層CNT10の場合、図6(A)に示すように、小型フラーレン21に代えて微小型フラーレン23を2列(2回り)で配置することが必要である。カーボンナノチューブ2の内部にフラーレン22及び23を予め定められたパターンで配置し、反応させると、図6(B)に示すように、図3の2層CNT10を正確な形状及びサイズで得ることができる。もちろん、図示の例では2分岐タイプの2層CNTを製造しているが、使用するフラーレンの種類やサイズ、配置パターンなどを変更することによって、3分岐タイプもしくはそれ以上の多分岐タイプの2層CNTも製造できる。
【0036】
本発明による多層CNTの製造方法は、いろいろな製造装置を使用して有利に実施することができる。本発明者らは、このたび、本発明方法の特異性に鑑みて、特殊な構成の反応器の使用が本発明の実施に有用であることを見出した。本発明者らが有用性を見出した反応器は、カーボンナノチューブや炭素材料、好ましくはフラーレンをそれぞれ別個に充填する反応管を本発明方法の実施に必要な数だけ備えるとともに、それぞれの反応管が、互いに連通可能でありかつ開閉可能なシャッター機構を備える多分岐型反応器である。
【0037】
図7は、本発明の実施に好適な多分岐型反応器の好ましい一例を示した斜視図である。図示されているのは、図2の2層CNT10の製造に好適な4分岐型反応器30である。4分岐型反応器30は、その中央反応室35から4本の反応管31、32、33及び34が分岐しており、また、反応管31、32、33及び34は、それぞれ、シャッター機構41、42、43及び44を装備している。それぞれのシャッター機構は、反応の手順に従って開閉可能である。反応管31には、外層チューブ形成のための両端もしくは片端の開かれたカーボンナノチューブ(CNT)25が収容され、反応管32には、内層チューブ形成のための比較的に小型の第1のフラーレン21が収容され、また、反応管33には、内層チューブ形成のための比較的に大型の第2のフラーレン22が収容される。
【0038】
図7に示す4分岐型反応器30を使用して、図2の2層CNT10を例えば図8に順を追って示す手順で有利に製造することができる。
工程(1):
4本の反応管31、32、33及び34をそれぞれシャッター41、42、43及び44で閉じた状態から、シャッター42のみを開放する。よって、反応管32に入れておいた小型フラーレン21が中央反応室35の方向に昇華によって流出する。しかし、シャッター41、43及び44は閉じられているので、フラーレン21が大型フラーレン22やカーボンナノチューブ(CNT)25と反応することはない。
工程(2):
シャッター42を閉じた後、シャッター41を開放する。シャッター41内のCNT25が中央反応室35の方向に流出し、小型フラーレン21と混合する。先に図5(B)を参照して説明したように、内部に小型フラーレン21が挿入されたCNT25が得られる。
工程(3):
シャッター41を閉じ、シャッター41、42、43及び44のすべてが閉じた状態とする。この状態のまま、小型フラーレン21が挿入されたCNT25を相互に反応させる。
工程(4):
シャッター44を開け、未反応の小型フラーレン21を系外に放出する。
工程(5):
再びシャッター44を閉じる。図示しないが、小型フラーレン21が挿入されたCNT25が中央反応室35の内部に充満した状態となる。
工程(6):
シャッター41、42、43及び44を閉じた状態から、シャッター43のみを開放する。よって、反応管33に入れておいた大型フラーレン22が中央反応室35の方向に流出する。小型フラーレン21が挿入されたCNT25と大型フラーレン22が混合した状態が得られる。
工程(7):
シャッター43を閉じると、先に図5(C)を参照して説明したように、内部に小型フラーレン21及び大型フラーレン22が規則的に挿入されたCNT25が得られる。この状態のまま、小型フラーレン21及び大型フラーレン22をCNT25と相互に反応させる。目的とする2層CNTが中央反応器35内に生成する。
工程(8):
シャッター44を開放し、生成した2層CNTを中央反応器35から取り出す。
【0039】
本発明は、さらに、本発明の多層CNTを1構成要素としてそのまま、あるいは加工して備えた電子装置にある。ここで、「電子装置」とは、広義で使用されており、LSI、VLSI等の各種の機能素子を組み込んだ半導体装置、回路基板、電界放射電子源、燃料電池などを包含する。同様に、「構成要素」も広義で使用されており、本発明の多層CNTがその機能を発揮できる各種の要素、例えば、チャンネル、ゲート、配線、ビア、量子ドット、電子放出源、吸蔵媒体、プローブ探針などを包含する。これらの構成要素は、電子装置に単独で組み込まれていてもよく、2種類以上の構成要素が組み合わせて組み込まれていてもよい。
【0040】
本発明の電子装置の典型例は、半導体装置である。本発明の多層CNTは、公知のいろいろなタイプの半導体装置のなかに、チャンネル、ゲートなどとして有利に組み込んで使用することができる。例えば、本発明の半導体装置は、多層CNTが内層チューブと外層チューブの2層構造を有していて、内層チューブが半導体的性質を有し、かつ外層チューブが金属的性質を有し、内層チューブの電気伝導度を外層チューブに印加する電圧により制御するように構成された半導体装置であることができる。
【0041】
より具体的に言えば、この半導体装置は、内層チューブが半導体的性質を有し、外層チューブが金属的性質を有する多層CNTと、外層チューブをはさんで相対する側でそれぞれ内層チューブと接続する導電体と、外層チューブに電圧を印加する手段とを有することを特徴とする半導体装置である。
【0042】
図9は、かかる半導体装置の好ましい1実施形態を模式的に示した断面図である。半導体装置50は、多層CNT52を含み、これは内層チューブ54と外層チューブ56から構成され、内層チューブ54は半導体的性質を有し、外層チューブ56は金属的性質を有する。内層チューブ54と外層チューブ56のそれぞれは、同じ性質(半導体的性質又は金属的性質)のチューブを複数含む多層構造を備えることもできる。これらのチューブは、それぞれ、図4に例示したように炭素元素の編み目構造体により形成されているが、簡略化のために単純な円筒状として表されている。
【0043】
図9の半導体装置50は更に、内層チューブ54の先端54a、54bに接続する導電体58、60と、外層チューブ56に電圧を印加する手段62を備える。この半導体装置50では、半導体的性質を示す内層チューブ54と金属的性質を示す外層チューブ56とが半導体−金属接合を形成しており、従って内層チューブ54がトランジスタのチャネルとして働き、そして外層チューブ56がゲートとして働くことができる。この場合、例えば導電体58から、半導体的性質の内層チューブ54を通って導電体60へと流れる電流を、外部から電圧印加手段62により印加される電圧に応じて制御することができる。内層チューブ54の先端54a、54bは、図9では外層チューブ56の両端56a、56bから伸び出しているが、導電体58、60と接合するのにそれらの導電体が金属的性質の外層チューブ56と接触しない限りは、外層チューブの両端56a、56bと同じ面に位置しても差し支えない。
【0044】
図9の半導体装置50においては、チャネルに相当する内層チューブ54をゲートに相当する外層チューブ56が取り囲んでおり、いわゆる「サラウンドゲート構造」になっていることが分かる。この半導体装置50では、外側のナノチューブ56に正の電圧を加えることで内側のナノチューブ54内の正孔密度が減少して、チャネルを流れる電流が減少する。そしてこの構造は、ゲートから延びる電気力線がチャネルの外に逃げだすことがないことから、ショートチャネル効果の抑制に特に有効であり、良好なオフ特性をもたらすことができる。ここで、ナノチューブ54には図示のように狭窄部があり、そこにナノチューブ56があることから、ナノチューブ54とナノチューブ56の間隔が拡がっていて、電気的な絶縁性が高い。
【0045】
導電体58、60は、内層チューブ54と電気的に接続することができる限り、どのような材料のものでもよい。例えば、プローブ状に加工した金属でよく、あるいは金属的性質を示すカーボンナノチューブでもよい。内層チューブ54との接続の仕方も、図9に示したような内層ューブの先端54a、54bと導電体58、60の先端どうしの接合に限らない。例えば、外層チューブ56の両端56a、56bの外側に伸び出して露出された内層チューブ14の側面に導電体18、20を接続してもよい。また、多層CNTの外層チューブを分断し、分断した外層チューブのうちのゲートとして働くものに直接接触しないものを、導電体58、60として用いることも可能である。
【0046】
外層チューブ56に電圧を印加する手段62は、一般に導電体でよい。この電圧印加手段62は、図9に模式的に示したように外層チューブ56に直接つないでもよく、あるいは外層チューブ56と電圧印加手段62との間に挿入した絶縁物(図示せず)を介して外層チューブ56に電圧を印加するようにしてもよい。
【0047】
次に、本発明による半導体装置のもう1つの好ましい実施の形態を説明する。図10(A)の平面図及び図10(B)の断面図に示すように、この半導体装置は、多層CNT72のうちの2箇所に、電気的性質の外層チューブがなく半導体的性質の内層チューブ74だけが存在する部分があり、それによりこの半導体装置は、ソース領域S、ドレイン領域D、及びチャネル領域Cに電気的に絶縁・分離されている。ソース領域Sでは、金属的性質の外層チューブ76Sにオーム性電極としてのソース電極78がオーミック接続しており、ドレイン領域Dでは、やはり外層チューブ76Dにオーム性電極としてのドレイン電極80がオーミック接続している。一方、チャネル領域Cにおいては、金属的性質の外層チューブ76Cに整流性電極としてのゲート電極82が接続(この接続自体はオーミック接続)して、それによりゲートを構成しており、そしてこのゲートと内層チューブ76Cとの整流性の接触によりチャネル領域Cの内層チューブ74を通過する電流を制御している。このように、この半導体装置もサラウンドゲート構造になっており、従ってやはり良好なオフ特性を有する。また、この半導体装置は、金属と半導体とのショットキー接合をゲートに用いる電界効果トランジスタに相当するものであり、そのため特に、高周波動作用の半導体装置として利用するのに好適である。ここで、ナノチューブ74には図示のように狭窄部があり、そこにナノチューブ76があることから、ナノチューブ74とナノチューブ76の間隔が拡がっていて、電気的な絶縁性が高い。
【0048】
ソース電極78、ドレイン電極80は、一般に、低コンタクト抵抗を得るためにNi、Ti、Pt、Pt−Au合金などの金属材料から形成することができる。一方、ゲート電極82は、AlやW等の金属材料、又は多結晶シリコンなどから形成することができる。ソース電極78、ドレイン電極80、及びゲート電極82は、図10(A)及び図10(B)においてはCNT72の外層チューブ76S、76D、76Cの側面の全長と接触するように描かれているが、それらの一部と接触するようにすることもできる。
【0049】
図10(B)に示すように、CNT32は一般に任意の絶縁体層84上に配置される。絶縁体層84は絶縁材料の単一基板であってもよく、あるいは別の材料の基板86上に設けた絶縁材料層であってもよい。また、伝導率の低い半導体層でもよい。
【0050】
本発明の半導体装置のさらにもう1つの好ましい実施の形態を、図10(B)と同様の断面図である図11を参照して説明する。
【0051】
図示の半導体装置では、ゲート電極82とチャネル領域Cの外層チューブ76Cとの間、及びゲート電極82の側面に沿って、絶縁体92が配置されている。この相違点を除けば、図示の半導体装置は、図10(A)及び図10(B)で説明したものと同様である。この構造の半導体装置では、ソース−ゲート間、ゲート−ドレイン間に絶縁体92が挿入されることから、ゲート容量を低下させることができる。そのため、この半導体装置は高速スイッチング動作、高集積用に特に好適である。
【0052】
本発明の半導体装置のさらにもう1つの好ましい実施の形態を、図12(A)の平面図及び図12(B)の断面図に示す。先に説明したいずれの実施の形態でも、CNT32の長手方向軸は基板86の面と平行であったのに対し、これから説明する形態では、CNTの長手方向軸は基板面に対して垂直になっている。すなわち、図示の形態の半導体装置は、いわゆる縦型半導体装置である。
【0053】
図12(A)及び図12(B)において、下方のソース電極92と上方のドレイン電極94との間に、複数のCNT96が垂直方向に配列されている。これらのCNT96は、先に説明した多層構造のものであり、金属的性質の外層チューブ98は2箇所で切断・分離されて、半導体的性質の内層チューブ100を露出させている。中央の外層チューブの残された部分(チャネル領域に相当する)に隣接して、ゲート電極102が配置されている。ここで、ナノチューブ100には図示のように狭窄部があり、そこにナノチューブ98があることから、ナノチューブ100とナノチューブ98の間隔が拡がっていて、電気的な絶縁性が高い。図示されたそのほかの部分は、いずれも絶縁材料で形成されている。なお、図に示した半導体装置ではCNT96とゲート電極102との間に絶縁材料が存在しているが、ゲート電極102は、多層構造のCNTの外層チューブと接触することもできる。
【0054】
図12(A)及び図12(B)に示した半導体装置には、多層構造のCNT96が複数含まれていて、図12(A)に模式的に示したバンドル(束)106を形成している。この半導体装置における多層構造のCNTは、1本であってもよいが、図に示したように複数のチューブのバンドルを利用することによって、バンドル由来の特別な利点を得ることができる。CNTのバンドルを有する半導体装置では、チャネル部分の複数の多層CNTのバンドルでも、外側の金属的性質のナノチューブ98が残されているため、ゲートの電位はこれら金属面が互いに接触することで等電位に維持されている。通常チャネルの直径を太くするとしきい値電圧が高くなってしまうが、この半導体装置では、各チューブごとにゲート(金属的性質の外層チューブ)が巻きついているため、内層チューブの直径にバラツキがなければ、しきい値電圧はチューブ本数によらず変化しないという特長がある。従って、チャネルとなるナノチューブを複数本束ねることによって、より多くの電流を流せるようになり、電流駆動能力が更に高くなる。
【0055】
以上、本発明を特にその好ましい実施の形態について説明した。これらの好ましい実施の形態を整理すると、次の通りである。
【0056】
(付記1)実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体において、
最外層の円筒体が、カーボンナノチューブに由来するものであり、かつ
その円筒体の内部に収納された少なくとも1個の内層円筒体が、2種類もしくはそれ以上の、カーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料の反応に由来するものであり、前記最外層の円筒体とは異なる形態を有していることを特徴とする多層筒状炭素構造体。
【0057】
(付記2)前記内層円筒体が、前記カーボンナノチューブの内部で2種類もしくはそれ以上の炭素材料を反応させることによって形成されたものであることを特徴とする付記1に記載の多層筒状炭素構造体。
【0058】
(付記3)前記内層円筒体の形成に用いられた炭素材料が、2種類以上の大きさの異なるフラーレンからなることを特徴とする付記1又は2に記載の多層筒状炭素構造体。
【0059】
(付記4)前記内層円筒体が、その一部において直径が変化していることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の多層筒状炭素構造体。
【0060】
(付記5)前記内層円筒体において、直径の変化領域が周期的に存在していることを特徴とする付記4に記載の多層筒状炭素構造体。
【0061】
(付記6)前記内層円筒体が、その一部において分岐していることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の多層筒状炭素構造体。
【0062】
(付記7)前記内層円筒体において、分岐領域が周期的に存在していることを特徴とする付記6に記載の多層筒状炭素構造体。
【0063】
(付記8)前記内層円筒体が、中実であり、その一部において中空の領域を有していることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の多層筒状炭素構造体。
【0064】
(付記9)前記内層円筒体において、中空領域が周期的に存在していることを特徴とする付記8に記載の多層筒状炭素構造体。
【0065】
(付記10)多層カーボンナノチューブの形態をとることを特徴とする付記1〜9のいずれか1項に記載の多層筒状炭素構造体。
【0066】
(付記11)実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体を製造する方法において、
最外層の円筒体をカーボンナノチューブから形成し、かつ
その最外層の円筒体の内部に収納された少なくとも1個の内層円筒体を、2種類もしくはそれ以上のカーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料から、前記最外層の円筒体とは異なる形態で形成することを特徴とする多層筒状炭素構造体の製造方法。
【0067】
(付記12)前記内層円筒体を、前記カーボンナノチューブの内部で2種類もしくはそれ以上の炭素材料を反応させることによって形成することを特徴とする付記11に記載の多層筒状炭素構造体の製造方法。
【0068】
(付記13)前記内層円筒体の形成において、2種類以上の大きさの異なるフラーレンを前記炭素材料として使用することを特徴とする付記11又は12に記載の多層筒状炭素構造体の製造方法。
【0069】
(付記14)前記カーボンナノチューブ又は前記炭素材料を充填する複数個の反応管を備えるとともに、それぞれの反応管が、互いに連通可能でありかつ開閉可能なシャッター機構を備える多分岐型反応器を使用することを特徴とする付記11〜13のいずれか1項に記載の多層筒状炭素構造体の製造方法。
【0070】
(付記15)多層カーボンナノチューブを製造することを特徴とする付記11〜14のいずれか1項に記載の多層筒状炭素構造体の製造方法。
【0071】
(付記16)実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体を1構成要素として有する電子装置において、
前記炭素構造体の最外層の円筒体が、カーボンナノチューブに由来するものであり、かつ
その円筒体の内部に収納された少なくとも1個の内層円筒体が、2種類もしくはそれ以上の、カーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料の反応に由来するものであり、前記最外層の円筒体とは異なる形態を有していることを特徴とする電子装置。
【0072】
(付記17)前記内層円筒体が、前記カーボンナノチューブの内部で2種類もしくはそれ以上の炭素材料を反応させることによって形成されたものであることを特徴とする付記16に記載の電子装置。
【0073】
(付記18)前記内層円筒体の形成に用いられた炭素材料が、2種類以上の大きさの異なるフラーレンからなることを特徴とする付記16又は17に記載の電子装置。
【0074】
(付記19)前記内層円筒体が、その一部において直径が変化していることを特徴とする付記16〜18のいずれか1項に記載の電子装置。
【0075】
(付記20)前記内層円筒体において、直径の変化領域が周期的に存在していることを特徴とする付記19に記載の電子装置。
【0076】
(付記21)前記内層円筒体が、その一部において分岐していることを特徴とする付記16〜18のいずれか1項に記載の電子装置。
【0077】
(付記22)前記内層円筒体において、分岐領域が周期的に存在していることを特徴とする付記21に記載の電子装置。
【0078】
(付記23)前記内層円筒体が、中実であり、その一部において中空の領域を有していることを特徴とする付記16〜18のいずれか1項に記載の電子装置。
【0079】
(付記24)前記内層円筒体において、中空領域が周期的に存在していることを特徴とする付記23に記載の電子装置。
【0080】
(付記25)前記炭素構造体が多層カーボンナノチューブであることを特徴とする付記16〜24のいずれか1項に記載の電子装置。
【0081】
(付記26)前記構成要素が、チャンネル、ゲート、配線、ビア、量子ドット、電子放出源、吸蔵媒体及びプローブ探針からなる群から選ばれた一員であり、当該電子装置に単独もしくは組み合わせて組み込まれていることを特徴とする付記16〜25のいずれか1項に記載の電子装置。
【0082】
(付記27)前記炭素構造体が、内層円筒体が半導体的性質を有し、かつ外層円筒体が金属的性質を有する2層構造体であり、前記内層円筒体の電気伝導度を前記外層円筒体に印加する電圧により制御するように構成された半導体装置であることを特徴とする付記16〜26のいずれか1項に記載の電子装置。
【0083】
(付記28)前記半導体装置が、前記内層円筒体が半導体的性質を有し、かつ外層円筒体が金属的性質を有する2層構造体と、内層円筒体の外層円筒体をはさんで相対する側にそれぞれ接続する導電体と、外層円筒体に電圧を印加する手段とを有することを特徴とする、付記27に記載の電子装置。
【0084】
(付記29)前記外層円筒体が分断なしの連続構造体であり、かつ前記内層円筒体が分断なしの連続構造体である、付記27又は28に記載の電子装置。
【0085】
(付記30)前記外層円筒体が分断された不連続の構造体であり、かつ前記内層円筒体が分断なしの連続構造体である、付記27又は28に記載の電子装置。
【0086】
(付記31)前記外層円筒体に整流性電極が直接接触している、付記29に記載の電子装置。
【0087】
(付記32)前記外層円筒体に整流性電極が絶縁材料を介し間接的に接触している、付記29に記載の電子装置。
【0088】
(付記33)前記外層円筒体が1箇所で分断され、分断された各外層円筒体に整流性電極が直接接触している、付記30に記載の電子装置。
【0089】
(付記34)前記外層円筒体が1箇所で分断され、分断された各外層円筒体に整流性電極が絶縁材料を介し間接的に接触している、付記30に記載の電子装置。
【0090】
(付記35)前記外層円筒体が2箇所以上で分断され、分断された両端部の外層円筒体にはオーム性電極がそれぞれ接触し、かつ分断された中間の外層円筒体には整流性電極が接触している、付記30に記載の電子装置。
【0091】
(付記36)前記整流性電極が前記外層円筒体に直接接触している、付記35に記載の電子装置。
【0092】
(付記37)前記整流性電極が前記外層円筒体に絶縁材料を介し間接的に接触している、付記35に記載の電子装置。
【0093】
(付記38)前記整流性電極の前記分断された両端部の外層円筒体に面する側面に絶縁材料の側壁が設けられている、付記37に記載の電子装置。
【0094】
(付記39)前記整流性電極の接触する連続の外層円筒体の長さが電子の平均自由行程以下である、付記31〜38のいずれか1項に記載の電子装置。
【0095】
(付記40)前記2層構造体の長手方向軸が、それが配置される基板面と平行である、付記27〜39のいずれか1項に記載の電子装置。
【0096】
(付記41)前記2層構造体の長手方向軸が、それが配置される基板面に対して垂直である、付記27〜39のいずれか1項に記載の電子装置。
【0097】
(付記42)前記2層構造体を複数含み、それらが外層円筒体どうしの接触によりバンドルを形成している、付記27〜41のいずれか1項に記載の電子装置。
【0098】
(付記43)前記2層構造体が複数のカーボンナノチューブから形成されている、付記27〜42のいずれか1項に記載の電子装置。
【0099】
【発明の効果】
以上に詳細に説明したように、本発明によれば、多層カーボンナノチューブにおいて、その内層チューブの直径を途中で自由に変化させたり、内層チューブを分岐させたりすることができるので、導電性、機械的強度、バンドギャップなどを任意に制御することができ、よって、高性能な電子装置やその他のデバイスを提供することができる。また、多層カーボンナノチューブは、単純な構造の製造装置を使用して、容易にかつ歩留まりよく製造することができる。
【0100】
また、したがって、本発明の多層カーボンナノチューブは、その特異的に優れた特性を生かして、バイオテクノロジー、エレクトロニクス、医療、診断、エネルギーなどの幅広い分野において有利に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の多層カーボンナノチューブを模式的に示した斜視図である。
【図2】本発明による多層カーボンナノチューブの好ましい1形態を示した断面図である。
【図3】本発明による多層カーボンナノチューブのもう1つの好ましい形態を示した断面図である。
【図4】本発明による多層カーボンナノチューブの最外層を構成するカーボンナノチューブの典型的な形態を模式的に示した斜視図である。
【図5】図2に示した多層カーボンナノチューブの形成原理を模式的に示した断面図である。
【図6】図3に示した多層カーボンナノチューブの形成原理を模式的に示した断面図である。
【図7】本発明による多層カーボンナノチューブの製造に用いられる装置の好ましい一例を模式的に示した斜視図である。
【図8】図7の製造装置を使用して図2の多層カーボンナノチューブを製造する工程を、順を追って示した断面図である。
【図9】本発明による半導体装置の好ましい1形態を示した模式図である。
【図10】本発明による半導体装置のもう1つの好ましい形態を示した断面図である。
【図11】本発明による半導体装置のさらにもう1つの好ましい形態を示した断面図である。
【図12】本発明による半導体装置のさらにもう1つの好ましい形態を示した断面図である。
【符号の説明】
1…内層チューブ
2…外層チューブ
10…多層カーボンナノチューブ
11…中空領域
21…小型フラーレン
22…大型フラーレン
23…微小型フラーレン
25…カーボンナノチューブ
30…4分岐型反応器
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層筒状炭素構造体に関し、さらに詳しく述べると、多層カーボンナノチューブとその製造方法に関する。本発明はまた、かかる多層カーボンナノチューブを配線等に使用した電子装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知の通り、フラーレンの発見から約15年、そしてカーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも記す)の発見から約10年を経過したところであるが、これらのナノカーボンの進歩には目覚しいものがあり、すでに多くの研究成果が報告されている。
【0003】
概説すると、フラーレンやCNTは、一般的に、レーザーアブレーション(レーザー蒸発)法、アーク放電法又は化学的気相成長法(CVD法)によって製造されているが、それぞれに一長一短がある。また、CNTには、炭素の円筒体が1層だけの単層ナノチューブと、2層以上の炭素の円筒体から構成された多層ナノチューブとがある。一般に多層ナノチューブの方が製造しやすいので、各社あるいは各研究機関が、いろいろなタイプの多層ナノチューブを開発し、報告している。多層ナノチューブの一例が、図1に模式的に示す2層ナノチューブである。2層ナノチューブ110は、内層のナノチューブ111と、それを取り囲んだ外層のナノチューブ112とからなる。かかる2層ナノチューブ110の直径は、通常、約2〜5nmのオーダーである。また、図では示されていないが、内層及び外層のナノチューブ111及び112は、それぞれ、6角形の網目をもったシート(グラファイトシート)を円筒形に丸めたような形態を有している。2層ナノチューブ及びその他の多層CNTは、導電性、機械的強度などにおいて特異的な性質を示すので、バイオテクノロジー、エレクトロニクス、医療、診断、エネルギーなどの分野において利用価値が大である(非特許文献1を参照されたい)。
【0004】
従来の多層CNTは、しかし、図1の模式図からも理解されるように、外層及び内層のナノチューブがそれぞれ長手方向において同じ直径を有している。これは、多層CNTの製造方法に大きな理由があるものと理解されるが、もしも円筒体の形態を変更できれば、多層CNTの利用価値を一段と高めることができるであろう。
【0005】
【非特許文献1】
篠原久典、「量産技術の本質はなにか」、日経サイエンス、2002年8月、26〜31頁。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、したがって、多層カーボンナノチューブ(CNT)において、その形態を改良し、その利用範囲を拡大し、かつ利用価値を一段と高めることにある。
【0007】
また、本発明の目的は、改良された形態を有するCNTの有利な製造方法を提供することにある。
【0008】
さらに、本発明の目的は、本発明の多層CNTを組み込んだ高性能な電子装置を提供することにある。
【0009】
本発明の上記したような目的やその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解することができるであろう。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、その1つの面において、実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体において、
最外層の円筒体が、カーボンナノチューブに由来するものであり、かつ
その円筒体の内部に収納された少なくとも1個の内層円筒体が、2種類もしくはそれ以上の、カーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料の反応に由来するものであり、前記最外層の円筒体とは異なる形態を有していることを特徴とする多層筒状炭素構造体にある。
【0011】
また、本発明は、そのもう1つの面において、実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体を製造する方法において、
最外層の円筒体をカーボンナノチューブから形成し、かつ
その最外層の円筒体の内部に収納された少なくとも1個の内層円筒体を、2種類もしくはそれ以上のカーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料から、前記最外層の円筒体とは異なる形態で形成することを特徴とする多層筒状炭素構造体の製造方法にある。
【0012】
さらに、本発明は、そのもう1つの面において、実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体を1構成要素として有する電子装置において、
前記炭素構造体の最外層の円筒体が、カーボンナノチューブに由来するものであり、かつ
その円筒体の内部に収納された少なくとも1個の内層円筒体が、2種類もしくはそれ以上の、カーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料の反応に由来するものであり、前記最外層の円筒体とは異なる形態を有していることを特徴とする電子装置にある。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明による多層円筒状炭素構造体は、本発明の範囲内でいろいろな炭素構造体を包含できるけれども、典型的には、多層カーボンナノチューブ(多層CNT)であり、以下においてもこれを中心に説明する。また、以下、本発明の好ましい実施の形態を添付の図面を参照しながら説明が、本発明は、図示のような2層CNTに限定されるものではなく、その他の構造の2層CNTや3層以上の多層CNTにも有利に適用できることは言うまでもない。
【0014】
本発明の多層CNTは、それぞれが実質的に炭素のみからなる、2個もしくはそれ以上の円筒体(チューブ)から構成される。これらの円筒体は、同心円状に配置され、したがって、1つの外側の円筒体(外層もしくは最外層の円筒体)の中に、1個もしくはそれ以上の円筒体(内層円筒体)が入れ子状に挿入されたような構成を有する。なお、かかる多層CNTは非常に微細であり、その直径は、ナノメートルのオーダー、通常、50nm以下、好ましくは約1〜5nmの範囲、さらに好ましくは約1〜3nmの範囲である。必要ならば、1nmを下回る直径も可能である。
【0015】
本発明の多層CNTにおいて、その外側を構成する外層円筒体は、カーボンナノチューブからなる。このカーボンナノチューブは、かかる多層CNTの製造のために予め調製されたものである。すなわち、このカーボンナノチューブは、本発明の多層CNTの製造途中で形成されたものではない。ここで外層円筒体の形成に使用されるカーボンナノチューブは、特に限定されるものではなく、レーザーアブレーション法、アーク放電法、CVD法などの常用の技法に従って製造することができる。カーボンナノチューブの種類やサイズは、目的とする多層CNTの構成やその他の要件の応じて任意に変更することができる。
【0016】
本発明に従うと、カーボンナノチューブからなる外層円筒体の内部に、少なくとも1個の内層円筒体が収納される。内層円筒体は、基本的には、外層円筒体のカーボンナノチューブと同様な構成を有しているけれども、外層円筒体のように長手方向にほぼ一定の直径を有するカーボンナノチューブであってはならず、外層円筒体とは異なる形態を有することが必要である。適当な形態としては、内層円筒体が、その一部に直径を異にする部分(狭窄部分;換言すると、外層円筒体の内壁からの距離が大きくなった部分)を有する形態、そのような狭窄部分が繰り返されている形態、分岐した部分を有する形態、そのような分岐部分が繰り返されている形態、長手方向に連続的に直径が変化する部分を有する形態などを挙げることができる。このような本発明に特有な形態を多層CNTの内層円筒体に導入した結果、得られる多層CNTにおいて、いままで予想できなかったことであるが、
(1)外層円筒体と内層円筒体間の電気的絶縁性が高まる、
(2)内層円筒体の一部に電荷の閉じ込め領域ができる、
(3)内層円筒体のバンドキャップが周期的に変化することで、超格子としての量子効果が起こる、
(4)内層円筒体に多層のエネルギー障壁ができることで、共鳴トンネル効果の如き量子効果が起こる、
(5)内層円筒体内に電荷を加速もしくは減速するための電界を作ることができる、
などの注目すべき作用効果を具現することができ、よって、多層CNTの用途を大幅に広げることができ、利用価値も一段と高めることができる。
【0017】
外層円筒体とは異なる形態を有する内層円筒体は、本発明に従うと、2種類もしくはそれ以上の、カーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料を相互に反応させることによって形成することができる。すなわち、原料として使用する炭素材料の種類及び量、反応条件などを任意に変更することによって、目的とする形態をもった内層円筒体を形成することができる。
【0018】
内層円筒体の形成に使用する炭素材料は、目的とする内層円筒体が得られる限りにおいて特に限定されるものではないけれども、取り扱い性や円筒体の形成性などを考慮した場合、フラーレンもしくはカーボンナノチューブが好適である。すなわち、例えば2種類もしくはそれ以上のフラーレンを相互に反応させることによって内層円筒体を有利に形成することができる。特に、2種類以上の大きさあるいはその他の特性の異なるフラーレンを相互に反応させることによって内層円筒体を有利に形成することができる。また、このフラーレンどうしの相互反応は、本発明に従うと、外層円筒体に使用されるカーボンナノチューブの内部で実施するのがとりわけ有利である。内層円筒体の品質を高くできるからである。
【0019】
本発明の実施に使用するフラーレンは、置換もしくは非置換のいずれであってもよい。適当なフラーレンの例は、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、C60、C70、C76、C78、C84、C60/C13、C60(OH)n、C60(H)n、C60F36、フラーレン誘導体(金属内包フラーレン)などを包含する。
【0020】
本発明の多層CNTにおいて、外層円筒体の内部に収納される内層円筒体の数は、特に限定されるものではなく、通常、1〜100個の範囲である。製造技術がさらに進歩すれば、さらに多層のCNTも提供できるであろう。
【0021】
図2は、本発明による多層CNTの好ましい1形態を模式的に示した断面図である。多層CNT10は、2層構造体であり、内側の炭素質円筒体(内層チューブ)1と、内層チューブ1の外周を取り囲む外側の炭素質円筒体(外層チューブ)2とからなる。内層チューブ1及び外層チューブ2は、内層チューブ1において本発明に従いその長手方向の形態に変化をもたせたという相違点があるが、基本的にはどちらのチューブもカーボンナノチューブからなる。なお、ある部分に形態変化をもたせるには、その部分に6員環以外の構造を含めることで、達成できる。
【0022】
ここで、本発明に使用し得るカーボンナノチューブについて説明する。
【0023】
カーボンナノチューブは、その独特の特性から最近注目を浴びている新しい炭素系材料である。カーボンナノチューブは、炭素原子がsp2という最も強い結合で6員環状に組み上げられたグラファイトシートを筒状に丸めた構造を持ち、チューブの先端は5員環を含むいくつかの6員環で閉じられている。チューブの直径はサブナノメートルのオーダーまで微細化でき、最小で0.4nmである。チューブの長さは、現在のところ数mmに達するものまで製作可能である。
【0024】
カーボンナノチューブには、金属的な性質を示すための条件を満たすバンド構造を取るものと、半導体的(半金属的)な性質を示すための条件を満たすバンド構造を取るものがある。カーボンナノチューブが金属的性質を示すか半導体的性質を示すかには、カーボンナノチューブのカイラリティ(チューブのねじれ方、あるいはグラファイトシートの巻き方)が関与している。図4(a)は、金属的性質を示すナノチューブのカイラリティ(アームチェア型と呼ばれる)を示しており、図4(b)は、半導体的性質を示すもの(ジグザグ型と呼ばれる)を示している。また、図4(c)に示した構造はカイラル型として知られるものであり、この場合には、条件により金属的性質を示すことと半導体的性質を示すことがある。カーボンナノチューブのカイラリティは、その製作方法や製作条件などに左右される。
【0025】
カーボンナノチューブは、その構造が自己組織化によってできあがることから、1本のチューブの径は通常一定である。しかし、本発明の場合、上記したように、チューブの中に別のチューブが入った多層ナノチューブを提供するものであるが、内層チューブは、従来の多層ナノチューブと異なって、径が一定でないことに特徴がある。径のサイズに変化を持たせることで、特有の作用効果を得ることができるからである。
【0026】
また、それぞれのカーボンナノチューブが異なるカイラリティを示すことを利用して、内側のチューブが半導体的性質を有し、外側のチューブが金属的性質を有する多層構造体を提供することもできる。
【0027】
さらに、カーボンナノチューブは、上述のようにカイラリティによって電気伝導率が半導体的にも金属的にもなること以外に、ダイヤモンド以上の熱伝導率や、電流密度が1平方センチメートル当たり106アンペアまで流せること、ヤング率が高いこと、水素などの吸蔵効率が高い可能性があること、機械的な強度が大であることなど、数多くの魅力的な物性を備えている。
【0028】
再び図2を参照して説明すると、内層チューブ1は、図示されるように、その長手方向の途中に、狭窄部Aを有している。すなわち、内層チューブ1は、その一部において直径が変化している。また、この内層チューブ1において、狭窄部Aの外壁と外層チューブ2の内壁との間には、大きな間隙g2が存在している。さらに、狭窄部Aは、それに隣接して通常の径をもった拡径部Bを有している。拡径部Bにおいて、その外壁と外層チューブ2の間の間隙g1は、間隙g2に比較してかなり小さくなっている。この構造を拡張することで、1本のナノチューブにおいて、長手方向に…BABABA…の如く、直径の変化領域が周期的に存在する2層CNTを作ることができる。
【0029】
図2では、内層チューブ1において狭窄部Aの両側に拡径部Bを配置した例を示した。この例では、例えば、狭窄部A及び拡径部Bの長さを、それぞれ、所望に応じて任意に変更することができる。もちろん、それぞれの部分の径も、任意に変更可能である。また、狭窄部A及び拡径部Bのそれぞれのカイラリティの違いを利用して金属と半導体を連ねることも可能である。さらに、図示しないけれども、本発明の多層CNTでは、内層チューブをいろいろに変更することができる。例えば、図示の例で採用されている狭窄部A及び拡径部Bの他に、追加の部分、例えば中間的な径をもった中間径部Cを設けることもできる。中間径部Cを設けることによって、多層CNTをさらに多様化することができる。例えば、狭窄部A、拡径部B及び中間径部Cの周期パターンについてみると、…ABCABCABC…、…AABCAABCAABC…、…ABCCABCCABCC…などのように、所望とする効果などに応じていろいろな組み合わせを採用することができる。
【0030】
また、本発明の多層CNTでは、その内層チューブをその一部において分岐させてもよく、また、その分岐領域が周期的に存在しているように構成してもよい。
【0031】
さらに、上記のような分岐形態の一変形例として、図3に示すように、内層チューブ1を中実とし、その一部において中空の領域(キャビティ)11を配置した2層CNT10を提供することができる。中空領域11を設けることで、内層チューブ1をチューブ1a及び1bに分岐させ、分岐領域に特有な効果を得ることができる。なお、図示の例では、内層チューブ1において分岐領域Aの両側に中実領域Bが設けられているが、配置パターンは、追加の領域の存在も含めて、任意に変更可能である。
【0032】
本発明はまた、上述のような多層CNTの新規な製造方法にある。本発明による多層CNTの製造方法は、特に、
(1)外層チューブをカーボンナノチューブから形成すること、
(2)外層チューブの内部に挿入された1個もしくはそれ以上の内層チューブにおいて、その少なくとも1個を、2種類もしくはそれ以上の炭素材料から形成すること、及び
(3)内層チューブを、上記したように、外層チューブとは異なる形態で形成すること、
を特徴とする。
【0033】
本発明方法は特に、外層チューブを構成すべきカーボンナノチューブの内部で2種類もしくはそれ以上の炭素材料を反応させることによって内層チューブを形成することで、有利に実施できる。また、このようにして内層チューブを形成する場合、2種類以上の大きさの異なるフラーレンを炭素材料として使用するのが有利であるが、短いカーボンナノチューブを用いることもできる。
【0034】
例えば、図2の2層CNT10において、その内層チューブ1は、小型のフラーレンと大型のフラーレンを、外層チューブ2を形成するためのカーボンナノチューブの内部で相互に反応させることによって、有利に形成することができる。すなわち、内層チューブ1は、図5に順を追って示すようにして有利に形成することができる。
工程A:
外層チューブ形成のためのカーボンナノチューブ2を用意する。
工程B:
カーボンナノチューブ2の所定の領域に、狭窄部を形成するための小型のフラーレン21を選択的に挿入する。
工程C:
カーボンナノチューブ2の空き領域(フラーレン21を有しない領域)に、拡径部を形成するための大型のフラーレン22を充填する。
工程D:
カーボンナノチューブ2の内部に小型のフラーレン21と大型のフラーレン22を充填した後、所定の条件下で反応させる。図示のように、図2の2層CNT10を正確な形状及びサイズで得ることができる。
【0035】
図3の2層CNT10も、基本的には、図5の方法と同様な手順で有利に製造することができる。但し、この2層CNT10の場合、図6(A)に示すように、小型フラーレン21に代えて微小型フラーレン23を2列(2回り)で配置することが必要である。カーボンナノチューブ2の内部にフラーレン22及び23を予め定められたパターンで配置し、反応させると、図6(B)に示すように、図3の2層CNT10を正確な形状及びサイズで得ることができる。もちろん、図示の例では2分岐タイプの2層CNTを製造しているが、使用するフラーレンの種類やサイズ、配置パターンなどを変更することによって、3分岐タイプもしくはそれ以上の多分岐タイプの2層CNTも製造できる。
【0036】
本発明による多層CNTの製造方法は、いろいろな製造装置を使用して有利に実施することができる。本発明者らは、このたび、本発明方法の特異性に鑑みて、特殊な構成の反応器の使用が本発明の実施に有用であることを見出した。本発明者らが有用性を見出した反応器は、カーボンナノチューブや炭素材料、好ましくはフラーレンをそれぞれ別個に充填する反応管を本発明方法の実施に必要な数だけ備えるとともに、それぞれの反応管が、互いに連通可能でありかつ開閉可能なシャッター機構を備える多分岐型反応器である。
【0037】
図7は、本発明の実施に好適な多分岐型反応器の好ましい一例を示した斜視図である。図示されているのは、図2の2層CNT10の製造に好適な4分岐型反応器30である。4分岐型反応器30は、その中央反応室35から4本の反応管31、32、33及び34が分岐しており、また、反応管31、32、33及び34は、それぞれ、シャッター機構41、42、43及び44を装備している。それぞれのシャッター機構は、反応の手順に従って開閉可能である。反応管31には、外層チューブ形成のための両端もしくは片端の開かれたカーボンナノチューブ(CNT)25が収容され、反応管32には、内層チューブ形成のための比較的に小型の第1のフラーレン21が収容され、また、反応管33には、内層チューブ形成のための比較的に大型の第2のフラーレン22が収容される。
【0038】
図7に示す4分岐型反応器30を使用して、図2の2層CNT10を例えば図8に順を追って示す手順で有利に製造することができる。
工程(1):
4本の反応管31、32、33及び34をそれぞれシャッター41、42、43及び44で閉じた状態から、シャッター42のみを開放する。よって、反応管32に入れておいた小型フラーレン21が中央反応室35の方向に昇華によって流出する。しかし、シャッター41、43及び44は閉じられているので、フラーレン21が大型フラーレン22やカーボンナノチューブ(CNT)25と反応することはない。
工程(2):
シャッター42を閉じた後、シャッター41を開放する。シャッター41内のCNT25が中央反応室35の方向に流出し、小型フラーレン21と混合する。先に図5(B)を参照して説明したように、内部に小型フラーレン21が挿入されたCNT25が得られる。
工程(3):
シャッター41を閉じ、シャッター41、42、43及び44のすべてが閉じた状態とする。この状態のまま、小型フラーレン21が挿入されたCNT25を相互に反応させる。
工程(4):
シャッター44を開け、未反応の小型フラーレン21を系外に放出する。
工程(5):
再びシャッター44を閉じる。図示しないが、小型フラーレン21が挿入されたCNT25が中央反応室35の内部に充満した状態となる。
工程(6):
シャッター41、42、43及び44を閉じた状態から、シャッター43のみを開放する。よって、反応管33に入れておいた大型フラーレン22が中央反応室35の方向に流出する。小型フラーレン21が挿入されたCNT25と大型フラーレン22が混合した状態が得られる。
工程(7):
シャッター43を閉じると、先に図5(C)を参照して説明したように、内部に小型フラーレン21及び大型フラーレン22が規則的に挿入されたCNT25が得られる。この状態のまま、小型フラーレン21及び大型フラーレン22をCNT25と相互に反応させる。目的とする2層CNTが中央反応器35内に生成する。
工程(8):
シャッター44を開放し、生成した2層CNTを中央反応器35から取り出す。
【0039】
本発明は、さらに、本発明の多層CNTを1構成要素としてそのまま、あるいは加工して備えた電子装置にある。ここで、「電子装置」とは、広義で使用されており、LSI、VLSI等の各種の機能素子を組み込んだ半導体装置、回路基板、電界放射電子源、燃料電池などを包含する。同様に、「構成要素」も広義で使用されており、本発明の多層CNTがその機能を発揮できる各種の要素、例えば、チャンネル、ゲート、配線、ビア、量子ドット、電子放出源、吸蔵媒体、プローブ探針などを包含する。これらの構成要素は、電子装置に単独で組み込まれていてもよく、2種類以上の構成要素が組み合わせて組み込まれていてもよい。
【0040】
本発明の電子装置の典型例は、半導体装置である。本発明の多層CNTは、公知のいろいろなタイプの半導体装置のなかに、チャンネル、ゲートなどとして有利に組み込んで使用することができる。例えば、本発明の半導体装置は、多層CNTが内層チューブと外層チューブの2層構造を有していて、内層チューブが半導体的性質を有し、かつ外層チューブが金属的性質を有し、内層チューブの電気伝導度を外層チューブに印加する電圧により制御するように構成された半導体装置であることができる。
【0041】
より具体的に言えば、この半導体装置は、内層チューブが半導体的性質を有し、外層チューブが金属的性質を有する多層CNTと、外層チューブをはさんで相対する側でそれぞれ内層チューブと接続する導電体と、外層チューブに電圧を印加する手段とを有することを特徴とする半導体装置である。
【0042】
図9は、かかる半導体装置の好ましい1実施形態を模式的に示した断面図である。半導体装置50は、多層CNT52を含み、これは内層チューブ54と外層チューブ56から構成され、内層チューブ54は半導体的性質を有し、外層チューブ56は金属的性質を有する。内層チューブ54と外層チューブ56のそれぞれは、同じ性質(半導体的性質又は金属的性質)のチューブを複数含む多層構造を備えることもできる。これらのチューブは、それぞれ、図4に例示したように炭素元素の編み目構造体により形成されているが、簡略化のために単純な円筒状として表されている。
【0043】
図9の半導体装置50は更に、内層チューブ54の先端54a、54bに接続する導電体58、60と、外層チューブ56に電圧を印加する手段62を備える。この半導体装置50では、半導体的性質を示す内層チューブ54と金属的性質を示す外層チューブ56とが半導体−金属接合を形成しており、従って内層チューブ54がトランジスタのチャネルとして働き、そして外層チューブ56がゲートとして働くことができる。この場合、例えば導電体58から、半導体的性質の内層チューブ54を通って導電体60へと流れる電流を、外部から電圧印加手段62により印加される電圧に応じて制御することができる。内層チューブ54の先端54a、54bは、図9では外層チューブ56の両端56a、56bから伸び出しているが、導電体58、60と接合するのにそれらの導電体が金属的性質の外層チューブ56と接触しない限りは、外層チューブの両端56a、56bと同じ面に位置しても差し支えない。
【0044】
図9の半導体装置50においては、チャネルに相当する内層チューブ54をゲートに相当する外層チューブ56が取り囲んでおり、いわゆる「サラウンドゲート構造」になっていることが分かる。この半導体装置50では、外側のナノチューブ56に正の電圧を加えることで内側のナノチューブ54内の正孔密度が減少して、チャネルを流れる電流が減少する。そしてこの構造は、ゲートから延びる電気力線がチャネルの外に逃げだすことがないことから、ショートチャネル効果の抑制に特に有効であり、良好なオフ特性をもたらすことができる。ここで、ナノチューブ54には図示のように狭窄部があり、そこにナノチューブ56があることから、ナノチューブ54とナノチューブ56の間隔が拡がっていて、電気的な絶縁性が高い。
【0045】
導電体58、60は、内層チューブ54と電気的に接続することができる限り、どのような材料のものでもよい。例えば、プローブ状に加工した金属でよく、あるいは金属的性質を示すカーボンナノチューブでもよい。内層チューブ54との接続の仕方も、図9に示したような内層ューブの先端54a、54bと導電体58、60の先端どうしの接合に限らない。例えば、外層チューブ56の両端56a、56bの外側に伸び出して露出された内層チューブ14の側面に導電体18、20を接続してもよい。また、多層CNTの外層チューブを分断し、分断した外層チューブのうちのゲートとして働くものに直接接触しないものを、導電体58、60として用いることも可能である。
【0046】
外層チューブ56に電圧を印加する手段62は、一般に導電体でよい。この電圧印加手段62は、図9に模式的に示したように外層チューブ56に直接つないでもよく、あるいは外層チューブ56と電圧印加手段62との間に挿入した絶縁物(図示せず)を介して外層チューブ56に電圧を印加するようにしてもよい。
【0047】
次に、本発明による半導体装置のもう1つの好ましい実施の形態を説明する。図10(A)の平面図及び図10(B)の断面図に示すように、この半導体装置は、多層CNT72のうちの2箇所に、電気的性質の外層チューブがなく半導体的性質の内層チューブ74だけが存在する部分があり、それによりこの半導体装置は、ソース領域S、ドレイン領域D、及びチャネル領域Cに電気的に絶縁・分離されている。ソース領域Sでは、金属的性質の外層チューブ76Sにオーム性電極としてのソース電極78がオーミック接続しており、ドレイン領域Dでは、やはり外層チューブ76Dにオーム性電極としてのドレイン電極80がオーミック接続している。一方、チャネル領域Cにおいては、金属的性質の外層チューブ76Cに整流性電極としてのゲート電極82が接続(この接続自体はオーミック接続)して、それによりゲートを構成しており、そしてこのゲートと内層チューブ76Cとの整流性の接触によりチャネル領域Cの内層チューブ74を通過する電流を制御している。このように、この半導体装置もサラウンドゲート構造になっており、従ってやはり良好なオフ特性を有する。また、この半導体装置は、金属と半導体とのショットキー接合をゲートに用いる電界効果トランジスタに相当するものであり、そのため特に、高周波動作用の半導体装置として利用するのに好適である。ここで、ナノチューブ74には図示のように狭窄部があり、そこにナノチューブ76があることから、ナノチューブ74とナノチューブ76の間隔が拡がっていて、電気的な絶縁性が高い。
【0048】
ソース電極78、ドレイン電極80は、一般に、低コンタクト抵抗を得るためにNi、Ti、Pt、Pt−Au合金などの金属材料から形成することができる。一方、ゲート電極82は、AlやW等の金属材料、又は多結晶シリコンなどから形成することができる。ソース電極78、ドレイン電極80、及びゲート電極82は、図10(A)及び図10(B)においてはCNT72の外層チューブ76S、76D、76Cの側面の全長と接触するように描かれているが、それらの一部と接触するようにすることもできる。
【0049】
図10(B)に示すように、CNT32は一般に任意の絶縁体層84上に配置される。絶縁体層84は絶縁材料の単一基板であってもよく、あるいは別の材料の基板86上に設けた絶縁材料層であってもよい。また、伝導率の低い半導体層でもよい。
【0050】
本発明の半導体装置のさらにもう1つの好ましい実施の形態を、図10(B)と同様の断面図である図11を参照して説明する。
【0051】
図示の半導体装置では、ゲート電極82とチャネル領域Cの外層チューブ76Cとの間、及びゲート電極82の側面に沿って、絶縁体92が配置されている。この相違点を除けば、図示の半導体装置は、図10(A)及び図10(B)で説明したものと同様である。この構造の半導体装置では、ソース−ゲート間、ゲート−ドレイン間に絶縁体92が挿入されることから、ゲート容量を低下させることができる。そのため、この半導体装置は高速スイッチング動作、高集積用に特に好適である。
【0052】
本発明の半導体装置のさらにもう1つの好ましい実施の形態を、図12(A)の平面図及び図12(B)の断面図に示す。先に説明したいずれの実施の形態でも、CNT32の長手方向軸は基板86の面と平行であったのに対し、これから説明する形態では、CNTの長手方向軸は基板面に対して垂直になっている。すなわち、図示の形態の半導体装置は、いわゆる縦型半導体装置である。
【0053】
図12(A)及び図12(B)において、下方のソース電極92と上方のドレイン電極94との間に、複数のCNT96が垂直方向に配列されている。これらのCNT96は、先に説明した多層構造のものであり、金属的性質の外層チューブ98は2箇所で切断・分離されて、半導体的性質の内層チューブ100を露出させている。中央の外層チューブの残された部分(チャネル領域に相当する)に隣接して、ゲート電極102が配置されている。ここで、ナノチューブ100には図示のように狭窄部があり、そこにナノチューブ98があることから、ナノチューブ100とナノチューブ98の間隔が拡がっていて、電気的な絶縁性が高い。図示されたそのほかの部分は、いずれも絶縁材料で形成されている。なお、図に示した半導体装置ではCNT96とゲート電極102との間に絶縁材料が存在しているが、ゲート電極102は、多層構造のCNTの外層チューブと接触することもできる。
【0054】
図12(A)及び図12(B)に示した半導体装置には、多層構造のCNT96が複数含まれていて、図12(A)に模式的に示したバンドル(束)106を形成している。この半導体装置における多層構造のCNTは、1本であってもよいが、図に示したように複数のチューブのバンドルを利用することによって、バンドル由来の特別な利点を得ることができる。CNTのバンドルを有する半導体装置では、チャネル部分の複数の多層CNTのバンドルでも、外側の金属的性質のナノチューブ98が残されているため、ゲートの電位はこれら金属面が互いに接触することで等電位に維持されている。通常チャネルの直径を太くするとしきい値電圧が高くなってしまうが、この半導体装置では、各チューブごとにゲート(金属的性質の外層チューブ)が巻きついているため、内層チューブの直径にバラツキがなければ、しきい値電圧はチューブ本数によらず変化しないという特長がある。従って、チャネルとなるナノチューブを複数本束ねることによって、より多くの電流を流せるようになり、電流駆動能力が更に高くなる。
【0055】
以上、本発明を特にその好ましい実施の形態について説明した。これらの好ましい実施の形態を整理すると、次の通りである。
【0056】
(付記1)実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体において、
最外層の円筒体が、カーボンナノチューブに由来するものであり、かつ
その円筒体の内部に収納された少なくとも1個の内層円筒体が、2種類もしくはそれ以上の、カーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料の反応に由来するものであり、前記最外層の円筒体とは異なる形態を有していることを特徴とする多層筒状炭素構造体。
【0057】
(付記2)前記内層円筒体が、前記カーボンナノチューブの内部で2種類もしくはそれ以上の炭素材料を反応させることによって形成されたものであることを特徴とする付記1に記載の多層筒状炭素構造体。
【0058】
(付記3)前記内層円筒体の形成に用いられた炭素材料が、2種類以上の大きさの異なるフラーレンからなることを特徴とする付記1又は2に記載の多層筒状炭素構造体。
【0059】
(付記4)前記内層円筒体が、その一部において直径が変化していることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の多層筒状炭素構造体。
【0060】
(付記5)前記内層円筒体において、直径の変化領域が周期的に存在していることを特徴とする付記4に記載の多層筒状炭素構造体。
【0061】
(付記6)前記内層円筒体が、その一部において分岐していることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の多層筒状炭素構造体。
【0062】
(付記7)前記内層円筒体において、分岐領域が周期的に存在していることを特徴とする付記6に記載の多層筒状炭素構造体。
【0063】
(付記8)前記内層円筒体が、中実であり、その一部において中空の領域を有していることを特徴とする付記1〜3のいずれか1項に記載の多層筒状炭素構造体。
【0064】
(付記9)前記内層円筒体において、中空領域が周期的に存在していることを特徴とする付記8に記載の多層筒状炭素構造体。
【0065】
(付記10)多層カーボンナノチューブの形態をとることを特徴とする付記1〜9のいずれか1項に記載の多層筒状炭素構造体。
【0066】
(付記11)実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体を製造する方法において、
最外層の円筒体をカーボンナノチューブから形成し、かつ
その最外層の円筒体の内部に収納された少なくとも1個の内層円筒体を、2種類もしくはそれ以上のカーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料から、前記最外層の円筒体とは異なる形態で形成することを特徴とする多層筒状炭素構造体の製造方法。
【0067】
(付記12)前記内層円筒体を、前記カーボンナノチューブの内部で2種類もしくはそれ以上の炭素材料を反応させることによって形成することを特徴とする付記11に記載の多層筒状炭素構造体の製造方法。
【0068】
(付記13)前記内層円筒体の形成において、2種類以上の大きさの異なるフラーレンを前記炭素材料として使用することを特徴とする付記11又は12に記載の多層筒状炭素構造体の製造方法。
【0069】
(付記14)前記カーボンナノチューブ又は前記炭素材料を充填する複数個の反応管を備えるとともに、それぞれの反応管が、互いに連通可能でありかつ開閉可能なシャッター機構を備える多分岐型反応器を使用することを特徴とする付記11〜13のいずれか1項に記載の多層筒状炭素構造体の製造方法。
【0070】
(付記15)多層カーボンナノチューブを製造することを特徴とする付記11〜14のいずれか1項に記載の多層筒状炭素構造体の製造方法。
【0071】
(付記16)実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体を1構成要素として有する電子装置において、
前記炭素構造体の最外層の円筒体が、カーボンナノチューブに由来するものであり、かつ
その円筒体の内部に収納された少なくとも1個の内層円筒体が、2種類もしくはそれ以上の、カーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料の反応に由来するものであり、前記最外層の円筒体とは異なる形態を有していることを特徴とする電子装置。
【0072】
(付記17)前記内層円筒体が、前記カーボンナノチューブの内部で2種類もしくはそれ以上の炭素材料を反応させることによって形成されたものであることを特徴とする付記16に記載の電子装置。
【0073】
(付記18)前記内層円筒体の形成に用いられた炭素材料が、2種類以上の大きさの異なるフラーレンからなることを特徴とする付記16又は17に記載の電子装置。
【0074】
(付記19)前記内層円筒体が、その一部において直径が変化していることを特徴とする付記16〜18のいずれか1項に記載の電子装置。
【0075】
(付記20)前記内層円筒体において、直径の変化領域が周期的に存在していることを特徴とする付記19に記載の電子装置。
【0076】
(付記21)前記内層円筒体が、その一部において分岐していることを特徴とする付記16〜18のいずれか1項に記載の電子装置。
【0077】
(付記22)前記内層円筒体において、分岐領域が周期的に存在していることを特徴とする付記21に記載の電子装置。
【0078】
(付記23)前記内層円筒体が、中実であり、その一部において中空の領域を有していることを特徴とする付記16〜18のいずれか1項に記載の電子装置。
【0079】
(付記24)前記内層円筒体において、中空領域が周期的に存在していることを特徴とする付記23に記載の電子装置。
【0080】
(付記25)前記炭素構造体が多層カーボンナノチューブであることを特徴とする付記16〜24のいずれか1項に記載の電子装置。
【0081】
(付記26)前記構成要素が、チャンネル、ゲート、配線、ビア、量子ドット、電子放出源、吸蔵媒体及びプローブ探針からなる群から選ばれた一員であり、当該電子装置に単独もしくは組み合わせて組み込まれていることを特徴とする付記16〜25のいずれか1項に記載の電子装置。
【0082】
(付記27)前記炭素構造体が、内層円筒体が半導体的性質を有し、かつ外層円筒体が金属的性質を有する2層構造体であり、前記内層円筒体の電気伝導度を前記外層円筒体に印加する電圧により制御するように構成された半導体装置であることを特徴とする付記16〜26のいずれか1項に記載の電子装置。
【0083】
(付記28)前記半導体装置が、前記内層円筒体が半導体的性質を有し、かつ外層円筒体が金属的性質を有する2層構造体と、内層円筒体の外層円筒体をはさんで相対する側にそれぞれ接続する導電体と、外層円筒体に電圧を印加する手段とを有することを特徴とする、付記27に記載の電子装置。
【0084】
(付記29)前記外層円筒体が分断なしの連続構造体であり、かつ前記内層円筒体が分断なしの連続構造体である、付記27又は28に記載の電子装置。
【0085】
(付記30)前記外層円筒体が分断された不連続の構造体であり、かつ前記内層円筒体が分断なしの連続構造体である、付記27又は28に記載の電子装置。
【0086】
(付記31)前記外層円筒体に整流性電極が直接接触している、付記29に記載の電子装置。
【0087】
(付記32)前記外層円筒体に整流性電極が絶縁材料を介し間接的に接触している、付記29に記載の電子装置。
【0088】
(付記33)前記外層円筒体が1箇所で分断され、分断された各外層円筒体に整流性電極が直接接触している、付記30に記載の電子装置。
【0089】
(付記34)前記外層円筒体が1箇所で分断され、分断された各外層円筒体に整流性電極が絶縁材料を介し間接的に接触している、付記30に記載の電子装置。
【0090】
(付記35)前記外層円筒体が2箇所以上で分断され、分断された両端部の外層円筒体にはオーム性電極がそれぞれ接触し、かつ分断された中間の外層円筒体には整流性電極が接触している、付記30に記載の電子装置。
【0091】
(付記36)前記整流性電極が前記外層円筒体に直接接触している、付記35に記載の電子装置。
【0092】
(付記37)前記整流性電極が前記外層円筒体に絶縁材料を介し間接的に接触している、付記35に記載の電子装置。
【0093】
(付記38)前記整流性電極の前記分断された両端部の外層円筒体に面する側面に絶縁材料の側壁が設けられている、付記37に記載の電子装置。
【0094】
(付記39)前記整流性電極の接触する連続の外層円筒体の長さが電子の平均自由行程以下である、付記31〜38のいずれか1項に記載の電子装置。
【0095】
(付記40)前記2層構造体の長手方向軸が、それが配置される基板面と平行である、付記27〜39のいずれか1項に記載の電子装置。
【0096】
(付記41)前記2層構造体の長手方向軸が、それが配置される基板面に対して垂直である、付記27〜39のいずれか1項に記載の電子装置。
【0097】
(付記42)前記2層構造体を複数含み、それらが外層円筒体どうしの接触によりバンドルを形成している、付記27〜41のいずれか1項に記載の電子装置。
【0098】
(付記43)前記2層構造体が複数のカーボンナノチューブから形成されている、付記27〜42のいずれか1項に記載の電子装置。
【0099】
【発明の効果】
以上に詳細に説明したように、本発明によれば、多層カーボンナノチューブにおいて、その内層チューブの直径を途中で自由に変化させたり、内層チューブを分岐させたりすることができるので、導電性、機械的強度、バンドギャップなどを任意に制御することができ、よって、高性能な電子装置やその他のデバイスを提供することができる。また、多層カーボンナノチューブは、単純な構造の製造装置を使用して、容易にかつ歩留まりよく製造することができる。
【0100】
また、したがって、本発明の多層カーボンナノチューブは、その特異的に優れた特性を生かして、バイオテクノロジー、エレクトロニクス、医療、診断、エネルギーなどの幅広い分野において有利に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の多層カーボンナノチューブを模式的に示した斜視図である。
【図2】本発明による多層カーボンナノチューブの好ましい1形態を示した断面図である。
【図3】本発明による多層カーボンナノチューブのもう1つの好ましい形態を示した断面図である。
【図4】本発明による多層カーボンナノチューブの最外層を構成するカーボンナノチューブの典型的な形態を模式的に示した斜視図である。
【図5】図2に示した多層カーボンナノチューブの形成原理を模式的に示した断面図である。
【図6】図3に示した多層カーボンナノチューブの形成原理を模式的に示した断面図である。
【図7】本発明による多層カーボンナノチューブの製造に用いられる装置の好ましい一例を模式的に示した斜視図である。
【図8】図7の製造装置を使用して図2の多層カーボンナノチューブを製造する工程を、順を追って示した断面図である。
【図9】本発明による半導体装置の好ましい1形態を示した模式図である。
【図10】本発明による半導体装置のもう1つの好ましい形態を示した断面図である。
【図11】本発明による半導体装置のさらにもう1つの好ましい形態を示した断面図である。
【図12】本発明による半導体装置のさらにもう1つの好ましい形態を示した断面図である。
【符号の説明】
1…内層チューブ
2…外層チューブ
10…多層カーボンナノチューブ
11…中空領域
21…小型フラーレン
22…大型フラーレン
23…微小型フラーレン
25…カーボンナノチューブ
30…4分岐型反応器
Claims (10)
- 実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体において、
最外層の円筒体が、カーボンナノチューブに由来するものであり、かつ
その円筒体の内部に収納された少なくとも1個の内層円筒体が、2種類もしくはそれ以上の、カーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料の反応に由来するものであり、前記最外層の円筒体とは異なる形態を有していることを特徴とする多層筒状炭素構造体。 - 前記内層円筒体の形成に用いられた炭素材料が、2種類以上の大きさの異なるフラーレンからなることを特徴とする請求項1に記載の多層筒状炭素構造体。
- 前記内層円筒体が、その一部において直径が変化していることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層筒状炭素構造体。
- 前記内層円筒体が、その一部において分岐していることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層筒状炭素構造体。
- 実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体を製造する方法において、
最外層の円筒体をカーボンナノチューブから形成し、かつ
その最外層の円筒体の内部に収納された少なくとも1個の内層円筒体を、2種類もしくはそれ以上の、カーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料から、前記最外層の円筒体とは異なる形態で形成することを特徴とする多層筒状炭素構造体の製造方法。 - 前記内層円筒体を、前記カーボンナノチューブの内部で2種類もしくはそれ以上の炭素材料を反応させることによって形成することを特徴とする請求項5に記載の多層筒状炭素構造体の製造方法。
- 前記内層円筒体の形成において、2種類以上の大きさの異なるフラーレンを前記炭素材料として使用することを特徴とする請求項5又は6に記載の多層筒状炭素構造体の製造方法。
- 前記カーボンナノチューブ又は前記炭素材料を充填する複数個の反応管を備えるとともに、それぞれの反応管が、互いに連通可能でありかつ開閉可能なシャッター機構を備える多分岐型反応器を使用することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の多層筒状炭素構造体の製造方法。
- 実質的に炭素のみからなる2個もしくはそれ以上の円筒体が同心円状に配置された多層筒状炭素構造体を1構成要素として有する電子装置において、
前記炭素構造体の最外層の円筒体が、カーボンナノチューブに由来するものであり、かつ
その円筒体の内部に収納された少なくとも1個の内層円筒体が、2種類もしくはそれ以上の、カーボンナノチューブもしくはそれ以外の炭素材料の反応に由来するものであり、前記最外層の円筒体とは異なる形態を有していることを特徴とする電子装置。 - 前記構成要素が、チャンネル、ゲート、配線、ビア、量子ドット、電子放出源、吸蔵媒体及びプローブ探針からなる群から選ばれた一員であり、当該電子装置に単独もしくは組み合わせて組み込まれていることを特徴とする請求項9に記載の電子装置。
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JP2002338288A JP2004168617A (ja) | 2002-11-21 | 2002-11-21 | 多層筒状炭素構造体及びその製造方法ならびに電子装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002338288A Withdrawn JP2004168617A (ja) | 2002-11-21 | 2002-11-21 | 多層筒状炭素構造体及びその製造方法ならびに電子装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006032477A (ja) * | 2004-07-13 | 2006-02-02 | Sharp Corp | 素子、集積回路及びそれらの製造方法 |
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-
2002
- 2002-11-21 JP JP2002338288A patent/JP2004168617A/ja not_active Withdrawn
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006032477A (ja) * | 2004-07-13 | 2006-02-02 | Sharp Corp | 素子、集積回路及びそれらの製造方法 |
JP4488815B2 (ja) * | 2004-07-13 | 2010-06-23 | シャープ株式会社 | 素子、集積回路及びそれらの製造方法 |
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