JP2004167014A - 腰痛予防マット - Google Patents

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Abstract

【課題】マット上に寝たときに起立時のような自然な姿勢が得られ、また特定部位への圧力集中を予防することができ、したがって腰の骨や筋肉に負担がかからず腰痛を効果的に予防・軽減できる、新規な腰痛予防マットを提供すること。
【解決手段】発泡マット素材10、11の受圧方向中間に、シート状のゲルの少なくとも片面にウレタンフィルム等の弾性フィルムを積層させた沈み込み防止層20を設けて構成される。上層の発泡マット素材10の反発弾性は、下層の発泡マット素材11よりも小さいことが好ましい。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、腰痛予防マットに関する。さらに詳しくは、ベッド等に載置して使用され、その上に健常者やお年寄りなどの患者が寝ることで、腰痛の発生を予防し、もしくは腰痛の症状を軽減するための、腰痛予防マットの技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
腰痛は、今や国民病とも呼ばれるほどの代表的な疾病であり、従来は老化現象の一つとして高齢者の間でよく見られたが、最近では、高齢者や寝たきりの患者だけでなく健常者である若年層においてもこの傾向が指摘されている。この腰痛は、放っておくと歩行に障害が出たり、内臓の病気を引き起こす可能性があるため、腰痛を予防、治療することは切実な課題となっている。
【0003】
上記腰痛の原因としては、内臓疾患やストレス等が挙げられるが、その中でも、姿勢が最も大きく影響している。すなわち、姿勢が悪いことによって、腰椎の湾曲が強くなり、腰の筋肉や骨に過度の負担がかかって腰痛を引き起こすことになる。したがって、腰痛を予防・軽減するためには、普段の生活で姿勢を良くし腰に負担をかけないことが肝要であり、一日の時間のうち多くの割合を占める睡眠時においてもまた同様である。特に、柔らかいベッドを用いた場合には、肩や足よりも重い体幹(胴の部分)がベッドの中央部を窪ませ、腰が沈み込んで腰痛を引き起こすことになる。他方、硬いベッドを用いた場合には、腰の沈み込みを抑制できるものの、逆に腰が浮き上がる状態となり、自然な姿勢が得られない。また、ベッドと接触する特定部位に圧力が集中し、血行不良を招きやすいという問題がある。したがって、寝たきり状態の患者にとっては、床擦れないしは褥瘡を誘発する危険性が高くなる。よって、ベッドは腰の沈み込みを抑制し、かといって浮き上がりもしない自然な姿勢を維持でき、かつ特定部位に圧力集中しない、体圧分散の良いものが望まれている。
【0004】
ところで、本出願人は、寝たきり状態の高齢者等、ベッド上で一定姿勢を長時間継続する場合に起こる、褥瘡(床擦れ)の問題に注目し、これを予防するための褥瘡予防用マットを既に提案している(特許文献1参照)。この褥瘡予防用マットは、ウレタンフォーム等の発泡マット素材の受圧断面方向中間に、シリコーンゲル素材からなる受圧適化部を形成したものであり、これによれば、発泡マット単体のものに比べて、全体としていわゆる「コシ」を与え、仰臥位での好適な姿勢を維持しつつ、褥瘡の多発部位である仙骨部位等への過度の圧力集中を予防することができる。
上記の発明は、特定部位への圧力集中を予防するためにマット全体をある程度軟らかくせざるを得ず、受圧適化部にシリコーンゲル素材を用いているとはいえ、特に腰痛を予防する観点から見た場合には、腰の沈み込みをより抑制する等、改良する余地があった。
【0005】
なお、上述のように、シリコーンゲル等を組み合わせて体圧を分散させる技術として、他に(特許文献2)、(特許文献3)等を挙げることができるが、いずれの発明も腰痛予防の観点からなされたものではなく、効果において不十分であった。
【0006】
また、特に寝たきり状態の高齢者等にとっては、マット等に付着した褥瘡由来菌を除菌してその増殖を防ぎ、清潔を保つことも大切であり、さらに細菌、雑菌が繁殖すると、臭いを発生する場合があるため、その臭いを効果的に脱臭できることも望まれていた。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−78757号公報
【特許文献2】
特開2002−58710号公報
【特許文献3】
特開平9−271424号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記従来の状況に鑑み、マット上に寝たときに起立時のような自然な姿勢が得られ、また特定部位への圧力集中を予防することができ、したがって腰の骨や筋肉に負担がかからず腰痛を効果的に予防・軽減できる、新規な腰痛予防マットを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、抗菌性、及び脱臭性に優れ、患者を清潔に保つことができる腰痛予防マットを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の腰痛予防マットは、請求項1として、発泡マット素材を備え、前記発泡マット素材の受圧方向中間に、シート状のゲルの少なくとも片面に弾性フィルムが積層した姿勢適化層を設けたことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、患者が寝たときに、発泡マット素材が厚み方向に変形して体を支えると同時に、シート状のゲルが面方向に伸張変形しかつ弾性フィルムがシート状のゲルの過度の伸張変形を抑制することにより、特に腰の過度の沈み込みを防止し、仰臥時において自然な姿勢が得られる。また、発泡マット素材とともにシート状のゲルが厚み方向に変形することにより、床擦れないし褥瘡を誘発するような特定部位への過度の圧力集中を防ぐことができる。なお、ここで弾性フィルムとは、面方向に変形しかつ弾性を有するフィルム状の薄い素材をいい、したがって一般的な樹脂フィルムのみならず、ゴムシートや、伸縮性のある布等も含む概念である。
【0012】
また、請求項2は、請求項1記載の腰痛予防マットにおいて、発泡マット素材が、姿勢適化層を挟んで複数積層され、前記姿勢適化層より上層の発泡マット素材の反発弾性が、下層の発泡マット素材よりも小さいことを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、腰痛予防マットが、複数の発泡マット素材と、姿勢適化層とを組み合わせて構成される。そして、上層の反発弾性を下層よりも小さくしたため、体圧を分散する作用を維持しつつ、全体としては患者を正しい姿勢に保ち、腰を自然な位置に落ち着かせる。
【0014】
また、請求項3は、請求項2記載の腰痛予防マットにおいて、上層の発泡マット素材の反発弾性が、3〜20%であることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、身体が上層のマット層に沈み込むことにより体圧を分散しつつ、腰の過度の沈み込みを防止する観点から、上層の発泡マット素材の反発弾性の値が最適化される。
【0016】
また、請求項4は、請求項1〜3のいずれか記載の腰痛予防マットにおいて、弾性フィルムの面方向のバネ定数が、シート状のゲルの面方向のバネ定数よりも大きいことを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、姿勢適化層を構成するシート状のゲル及び弾性フィルムの面方向のバネ定数のバランスにより、シート状のゲルの面方向の伸張変形を適度に抑制し、特に腰の過度の沈み込みを防止する。
【0018】
また、請求項5は、請求項1〜4のいずれか記載の腰痛予防マットにおいて、シート状のゲルが、アスカーC型硬度50以下かつ針入度(JIS K−2207)250以下のシリコーンゲルであることを特徴とする。
【0019】
また、請求項6は、請求項1〜5のいずれか記載の腰痛予防マットにおいて、弾性フィルムが、硬度(JIS K−6301)JIS A15〜90のウレタンフィルムであることを特徴とする。
【0020】
上記請求項5及び6に係る構成によれば、シート状のゲル、及び弾性フィルムの最適な形態が特定される。これらは、体圧が加わると変形し、元に戻ろうとする弾性力でそれ以上の腰の沈み込みを効果的に防止する。
【0021】
また、請求項7は、請求項1〜6のいずれか記載の腰痛予防マットにおいて、腰痛予防マットの体長方向の両側に、他の部位よりも硬度の低い発泡マット素材を備えたことを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、患者の頭部及び足の部分が、比較的軟らかいマット素材で支えられるため、腰の沈み込みが抑制され、体が安定し、ベッドから起き上がる際にも腰に負担がかからない。
【0023】
また、請求項8は、請求項7記載の腰痛予防マットにおいて、硬度の低い発泡マット素材を備えた部位では、受圧方向に沿って各部材が一体化されていることを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、腰痛予防マット全体を折り畳んだり、あるいは逆に広げたりする際に、全体の一体性が確保され、取扱性が向上する。
【0025】
また、請求項9は、請求項7又は8記載の腰痛予防マットにおいて、硬度の低い発泡マット素材と他の部位の発泡マット素材との隣接面が傾斜していることを特徴とする。
【0026】
上記構成によれば、患者にとって、硬い発泡マット素材から軟らかい発泡マット素材への変化が連続しているように体感され、心地良さが向上する。
【0027】
さらに、請求項10は、請求項1〜9のいずれか記載の腰痛予防マットの受圧面に、カテキンを付着させた通気性のシートを組み合わせたことを特徴とする。
【0028】
上記構成によれば、カテキンが、発泡マット素材の表面や、あるいは患者の皮膚近傍で繁殖する細菌を効果的に除菌し、脱臭する。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の実施の形態(1)を、図1及び図2に基づいて説明する。図1の腰痛予防マット1は、複数のウレタンフォームの発泡マット素材10、11を備えており、それらの発泡マット素材10、11の受圧方向中間に、姿勢適化層20を設けて概略構成されている。この腰痛予防マット1は、一般的にベッドや畳、床等の上に載置され、その上に患者が寝ることで使用されるものである。
【0030】
上記の姿勢適化層20は、図2の断面図で示すように、シート状のゲル21の片面に弾性フィルム22を積層させている。腰痛予防マット1の上に患者が寝ると、ウレタンフォームの発泡マット素材10に体が沈み込み、接触面積が大きくなって体圧が分散される。そして、ある程度以上沈み込むと、シート状のゲル21、及び弾性フィルム22が、主に面方向(厚み方向にも若干変形する)に変形し、その弾性力で体を支え、腰の過度の沈み込みを防止する。特に、本発明では、シート状のゲルに対し面方向のバネ定数の大きい弾性フィルム22を積層させたことにより、シート状のゲル21の面方向の伸張変形が抑制されるため、シート状のゲル21を単独で用いるのに比べて沈み込みがより抑制され、腰が正しい位置に安定して、腰痛を効果的に防止することができる。
【0031】
発泡マット素材10、11を構成するポリウレタンフォームは、従来知られたものを適宜選択して用いることができる。具体的には、ジイソシアネートとポリオールより作られる発泡体で、比較的小さい反発弾性と遅い変形戻り性を有する軟質フォームが好適に用いられる。なお、ここで反発弾性とは、JIS K−6403に定められており、鋼球を試料に落としたときの反発距離から求められる。また、発泡マット素材10の上面は、図2のように平板状で良いが、必要に応じて凸凹状等の形状にすることもできる。
【0032】
また、図2のように、複数の発泡マット素材10、11を用いて姿勢適化層20を挟むように積層させる場合は、上層の発泡マット素材10の反発弾性を、下層の発泡マット素材11のそれよりも小さくすることが好ましい。具体的には、上層の発泡マット素材10の反発弾性を3〜20%、下層の発泡マット素材11の反発弾性を30〜80%程度することが最適である。このようにすると、上層の発泡マット素材10が体を柔らかく受け止めて体圧を分散しつつ、下層の発泡マット素材11が姿勢適化層を支持するため、全体としてはコシがでて、患者を正しい姿勢に安定させることができる。
【0033】
発泡マット素材10、11の厚さは、特に限定されるものではなく、発泡マット素材自体の反発弾性等に応じて適宜設定することができる。一般的には、腰痛予防マット1全体の厚さが50〜200mm程度になるよう設定することが適当である。
【0034】
シート状のゲル21としては、体圧によって変形し、張力を示すものであれば用いることができる。例えば、シリコーンゲルのシート等が適用可能であり、その中でも、アスカー硬度(C型)50以下かつ針入度(JIS K−2207)が250以下のシリコーンゲルは特に好適に用いられる。このようなシリコーンゲルの具体例として、ジェルテック社製のαGEL(アルファゲル:登録商標)を挙げることができる。
【0035】
シート状のゲル21の厚さは、発泡マット素材10、11の材質や厚み、弾性フィルム22の種類等によって異なり特に限定されるものではないが、一般的には0.5〜5mm程度とすることが適当である。また、患者の肩や膝に相当する部分のように、体圧値が小さい箇所ではシート状のゲル21の厚さを薄くする等、受圧状態に応じて各部位の厚さを変化させることもできる。
【0036】
弾性フィルム22としては、バネ定数がシート状のゲル21より大きく、体圧によって変形しかつ弾性を有する素材であれば適用可能である。具体例として、各種の樹脂フィルムや、ゴムシート、あるいはスパンデックス等の布を挙げることができる。その中でも、硬度(JIS K−6301)JIS A15〜90のウレタンフィルムは、上記シート状のゲル21と相まって体圧を柔らかく支えるため特に好適に用いられる。なお、上記スパンデックスとは、ポリウレタンに、ポリエステルやナイロンを混合して紡糸した繊維から得られる伸縮性に富んだ布である。
【0037】
また、弾性フィルム22の厚さは、弾性フィルム自体の材質、硬度や、発泡マット素材10、11の反発弾性、厚さ、及びシート状のゲル21の硬度、厚さ等に応じて適宜設定することができる。一般的には、図2のようにシート状ゲル21の片面に弾性フィルム22を積層させる場合には、30〜500μm程度とすることが好ましい。
【0038】
シート状のゲル21と弾性フィルム22とを積層させるにあたっては、一般的な方法により行うことができる。例えば、シート状のゲル21に対し接着剤を介して弾性フィルム22を貼着したり、あるいは弾性フィルム22上でゲルをシート状に硬化させて一体成形する方法等を適宜採用することができる。
接着剤を介して貼着する場合には、必要に応じてシート状のゲル21の表面にプライマーを塗布・乾燥してから行うことができる。プライマー及び接着剤の種類としては、シート状のゲル21及び弾性フィルム22の材質を考慮して、接着状態が良好となるものを適宜選択することができる。例えば、シリコーンゲルのシートとウレタンフィルムとを接着する場合には、プライマーとしてPR−700(商品名;アルテコ社製)、接着剤として工業用瞬間接着剤のEE、E50、V2(商品名;アルテコ社製)、アロンアルファ(商品名;東亜合成化学社製、登録商標)等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
また、一体成形する場合には、例えば、弾性フィルム22上に必要に応じて各種プライマーを塗布し、その上にさらに未硬化のゲル原料を流して所定の厚さとし、加温して硬化させることにより得ることができる。
【0039】
さらに、姿勢適化層20を上下の発泡マット素材10、11で挟み込むことで位置を固定する場合には、シート状のゲル21と弾性フィルム22とは必ずしも接着させず、重ねただけの状態とすることもできる。
【0040】
そして、上記の各部材を組み合わせて腰痛予防マット1を構成するに際しては、発泡マット素材10と発泡マット素材11とを、各部材の配置がずれないように接着や両面テープで貼付等して一体化することができる。その際には、腰痛予防マット1の周縁部、すなわち図2における発泡マット素材10と発泡マット素材11とが直接に接している部位で接着させても良いし、あるいは姿勢適化層20に貫通孔を形成し、この貫通孔において発泡マット素材10と発泡マット素材11とを接着しても良い。
【0041】
また、この実施の形態(1)では、姿勢適化層20は、図1に示すように発泡マット素材の受圧面の中央付近に設けられているが、これに限定されず、例えば発泡マット素材の受圧面の全面にわたって設けることもできるし、あるいは短冊状にした複数の姿勢適化層を、発泡マット素材10と発泡マット素材11との間に並べて配置しても良い。また、発泡マット素材の腰部の受圧面のみに姿勢適化層を設けても良い。
【0042】
なお、図2では、弾性フィルム22をシート状のゲル21の片面のみに積層させているが、両面に積層させることもできる。
【0043】
さらに、この実施の形態(1)では、2層の発泡マット素材10、11の間に姿勢適化層20を配置しているが、これに限定されず、発泡マット素材は3層以上から構成することもできる。その場合、姿勢適化層は、上層と中間層との間や、下層と中間層との間に挟み込むことができる。また、複数の発泡マット素材から構成せずに、単一の発泡マット素材の受圧方向中間に姿勢適化層を埋め込んでも良い。
【0044】
以上の腰痛予防マット1は、必要に応じてカバーシートやシーツを敷く等して用いても良い。
【0045】
次に、本発明の実施の形態(2)について説明する。図3の腰痛予防マット1は、シート状のゲル21及び弾性フィルム22からなる姿勢適化層20を、複数の発泡マット素材10、12で上下から挟み込むようにして構成している。そして、下層の発泡マット素材12は、さらに3つの部分に分かれ、すなわち腰痛予防マット1の体長方向(図の矢印方向)の両側に、比較的硬度の低い発泡マット素材12A、12Cと、内側にそれよりも硬度の高い(硬い)発泡マット素材12Bとが備えられている。
この腰痛予防マット1に患者が寝た場合には、頭部及び足の部分が、軟らかい発泡マット素材12A、12Cで支えられるため、腰の沈み込みを抑制するのに非常に有効である。
【0046】
体長方向の両側に配置する発泡マット素材12A、12Cの硬度は、各部材の配置の仕方や厚み等によって異なり、特に限定されないが、図3のような積層構造の場合には、例えば両側の軟らかい発泡マット素材12A、12Cはアスカー硬度(F型)を5〜100程度とし、内側の発泡マット素材12Bはアスカー硬度(F型)を100〜200程度とすることが好ましい。
【0047】
図3の腰痛予防マット1では、硬度の低い発泡マット素材12A、12Cが、姿勢適化層20よりも下層に位置しているが、これに限定されず、例えば体長方向の両側に、上下にわたる軟らかい発泡マット素材を組み合わせることもできる。また、硬い発泡マット素材を内側に設けるのに加えて、例えば腰痛予防マットの最下層全体に別の硬い発泡マット素材の層を組み合わせる等しても良い。
【0048】
また、図3において、軟らかい発泡マット素材12A、12Cを備えた部位では、受圧方向に沿って、各部材、すなわち上層の発泡マット素材10、姿勢適化層20、及び下層の軟らかい発泡マット素材12A、12Cを相互に一体化することが好ましい。このようにすると、腰痛予防マット1全体を折り畳んで収納したり、あるいは逆に広げたりする際に、各部材の配置がずれたりせず、取扱性が良くなる。
一体化するに際しては、接着剤を介して接着する等、適宜手段を採用することができる。
【0049】
続いて、本発明の実施の形態(3)を図4に基づき説明する。図4の腰痛予防マット1は、シート状のゲル21の両面に弾性フィルム22を積層させた姿勢適化層20を、複数の発泡マット素材10、13で挟み込むようにして構成され、さらに、下層の発泡マット素材13は、上記実施の形態(2)と同様に、3つの部材から構成され、腰痛予防マット1の体長方向の両側に、他の部位よりも硬度の低い発泡マット素材13A、13Cが備えられている。
そして、この実施の形態では、硬度の低い発泡マット素材13A、13Cと、内側の比較的硬い発泡マット素材13Bとの隣接面Sを傾斜させている。このようにすると、腰痛予防マット1の上に患者が寝た場合に、頭部及び足の下に位置する軟らかい発泡マット素材13A、13Cから、内側の硬い発泡マット素材13Bへの変化が急激にならず、連続しているように体感されるため、より心地良い感じを与えることができる。
【0050】
隣接面Sの傾斜する方向は、図4の場合に限定されず、逆方向、すなわち内側の発泡マット素材13Bが下方へ向かって広がるように構成しても良いことは無論である。また、隣接面Sを、側面から見て例えば’くの字形’になるようにしても良い。
発泡マット素材の硬度等、その他の構成については上記実施の形態(2)の場合に準ずる。
【0051】
次に、本発明の実施の形態(4)を図5に示す。図5の腰痛予防マット1は、ウレタンフォームの発泡マット素材10、11の間に、シート状のゲル21の両面に弾性フィルム22を積層させた姿勢適化層20を挟み込み、さらに、受圧面(発泡マット素材10の上面)に、カテキンを付着させた通気性のシート30を組み合わせたことを特徴としている。カテキンにより、高い抗菌性、及び脱臭性が得られるため、褥瘡由来菌等が効果的に除菌され、上に寝る患者を常に清潔に保つことができる。
【0052】
通気性のシート30としては、一般的な織布、不織布を適宜選択して用いることができる。具体的には、東レ製のフィールドセンサー(登録商標)等を挙げることができる。また、ラッセル編み等の立体編みのシートも使用可能である。
【0053】
カテキンとしては、茶葉等の植物から抽出したもの等が用いられる。特に、茶飲料を製造する過程で生ずる茶殻は原料として好適である。茶殻は、緑茶や紅茶、ウーロン茶等を製造するときに大量に発生し、現在は産業廃棄物として処分されているが、本発明により、その有効利用を図ることができる。また、茶殻は、抗菌性・脱臭性を有するカテキンを6000〜8000mg/100gも含有し、その他にも、ビタミンE(20〜30mg/100g)、β−カロチン(10〜20mg/100g)、遊離酸(50〜100mg/100g)、食物繊維(3500〜4500mg/100g)等の有用な成分を含んでいるため、患者の体に接触しても何ら支障はなく、場合によっては皮膚から上記成分を吸収させることも可能である。
【0054】
カテキンを通気性のシート30に付着させるに際しては、種々の手段を用いることができる、例えば、織布やガーゼを茶の抽出液に浸漬する方法、織布やガーゼに対して茶の抽出液を塗布する方法、あるいは茶の微粉末を混合した原料を紡糸して得た繊維から織布等を製造する方法等を挙げることができる。その際のカテキンの付着量は、得られる抗菌性を考慮して適宜設定することができる。
【0055】
また、通気性のシート30として、カテキンを含む原料を抄造して得られた紙を用いることもできる。この紙は、従来の紙の製法に準じて製造することができ、例えば、各種パルプ、こうぞ、みつまた等の紙原料に、細砕した茶を混合し、必要に応じて着色剤、繊維、サイズ剤等を配合し、丸網抄紙機、長網抄紙機等の各種抄紙機や、手漉きによる抄造によって製造することができる。さらに、通常の通気性を有する紙を、茶の抽出液に浸漬して染めたり、紙の表面に茶の抽出液を塗布する等して製造しても良い。なお、これらのカテキンを付着させた紙は、肌触り等を良くするため、必要に応じて、さらに織布等と組み合わせることができる。
【0056】
また、通気性のシート30は、少なくとも受圧面を覆っていれば良いが、腰痛予防マット1の外周面の全体を被覆しても良い。
その他の、発泡マット素材10、11、シート状のゲル21、及び弾性フィルム22等についての具体的な構成は、上記実施の形態(1)に準ずる。
【0057】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
(実施例1)
ウレタンフォーム(ブリヂストン社製)の発泡マット素材、シリコーンゲル(ジェルテック社製αGEL(登録商標))、及びウレタンフィルム(日本マタイ社製エスマーURS)を用いて目的の腰痛予防マットを作製した。
具体的には、まず、シリコーンゲル(長さ700mm×幅100mm×厚さ2mm)の片面に、厚さ100μmのウレタンフィルムを貼着し、姿勢適化層を作製した。貼着する際は、まずシリコーンゲルの表面にプライマー(アルテコ社製PR−700)を塗布した後、室温で15分程度乾燥させ、さらにシアノアクリレート系接着剤(アルテコ社製の工業用瞬間接着剤EE)を用いて、ウレタンフィルムを貼着した。
なお、シリコーンゲルは、アスカー硬度(C型)が25であった。また、ウレタンフィルムの諸特性を表1に示す。
【0058】
【表1】
Figure 2004167014
【0059】
続いて、反発弾性の異なる3層の発泡マット素材(長さ1950mm×幅970mm)を積層させ、図6に示すように、上層の発泡マット素材と中間の発泡マット素材との間(図6では便宜的に中間の発泡マット素材14のみを表示する)に、短冊状の上記姿勢適化層20を12枚、50mm間隔で配置して挟み込み、目的の腰痛予防マット1を作製した。
各層の厚さを、下記比較例1の場合と併せて表2に示す。また、各発泡マット素材の諸特性を表3に示す。なお、表3中、PUはポリウレタンフォームを表している。
【0060】
(比較例1〜2)
ウレタンフィルムを用いずに、シリコーンゲルのみを発泡マット素材で挟み込んだ以外は、上記実施例1と同様にして比較例1に係るマットを作製した。積層構造、及び各発泡マット素材の諸特性を、表2及び表3にそれぞれ示す。
また、比較例2として、一般にクッション性が硬く腰痛予防効果があるといわれている、厚さ85mmのポリエステル繊維製の市販マットを用いた。
【0061】
【表2】
Figure 2004167014
【表3】
Figure 2004167014
【0062】
次に、上記実施例1、及び比較例1〜2に係るマットに対し、人体がマットを押圧する局部的なモデルとして、腰部の形状を模した加圧子の上におもりを載せ、7〜22kgまで5kg刻みに荷重を変化させたときの加圧子の沈み込み量、及び加圧子中央部の圧力を測定した。沈み込み量を表4、及び図7に、また圧力を表5、及び図8に示す。
測定結果から、実施例1に係る腰痛予防マットは、比較例1に比べて、沈み込み量が小さく、比較例2と比べて、沈み込み量が大きいことがわかる。これにより、実施例1に係る腰痛予防マットは、特に腰部が沈み込まず、浮き上がらず、自然な姿勢が得られることにより、腰痛の予防・軽減に有効であることが示唆された。また、圧力の測定結果では、実施例1と比較例1は同程度の柔らかさを有し、身体の特定部位への圧力集中を防ぐことができるといえる。比較例2の場合は、圧力値が高いため特定部位への圧力集中により、寝たきりの患者が使用する場合、床擦れないし褥瘡を誘発する可能性が高いといえる。
【0063】
【表4】
Figure 2004167014
【表5】
Figure 2004167014
【0064】
次に、マット上に被験者(身長160cm、体重62kg、34歳、男性)に仰向けで寝てもらい、そのときの仙骨部における体圧値、及び接触面積を測定した。測定には、ニッタ製BIG MATを用いた。その結果を、表6に示す。
表6に示すように、実施例1に係る腰痛予防マットは、仰臥姿勢で一番圧力が集中する仙骨部位への圧力集中がなく、褥瘡予防の観点からも好ましいものである。したがって上述の腰痛予防の効果とあいまって、高齢者の介護用マットとしても好適に用いることができる。
【0065】
【表6】
Figure 2004167014
【0066】
【発明の効果】
以上、本発明の腰痛予防マットは、発泡マット素材中に、シート状のゲルと弾性フィルムとを積層させた姿勢適化層を設けたため、患者が寝たときに腰が沈み込み過ぎず、したがって腰痛を好適に予防もしくは軽減することができる。
【0067】
また、カテキンを付着させた通気性のシートを組み合わせた場合には、優れた抗菌性、及び脱臭性を得ることができ、患者を清潔に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態(1)に係る腰痛予防マットを示す斜視図である。
【図2】実施の形態(1)に係る腰痛予防マットの断面図である。
【図3】実施の形態(2)に係る腰痛予防マットの断面図である。
【図4】実施の形態(3)に係る腰痛予防マットの断面図である。
【図5】実施の形態(4)に係る腰痛予防マットの断面図である。
【図6】実施例における姿勢適化層の配置状態を示す図である。
【図7】実施例の測定結果を示すグラフである。
【図8】実施例の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 腰痛予防マット
10 発泡マット素材
11 発泡マット素材
12、12A、12B、12C 発泡マット素材
13、13A、13B、13C 発泡マット素材
20 姿勢適化層
21 シート状のゲル
22 弾性フィルム
30 通気性のシート
S 隣接面

Claims (10)

  1. 発泡マット素材の受圧方向中間に、シート状のゲルの少なくとも片面に弾性フィルムが積層した姿勢適化層を設けてなる腰痛予防マット。
  2. 請求項1記載の腰痛予防マットにおいて、発泡マット素材が、姿勢適化層を挟んで複数積層され、前記姿勢適化層より上層の発泡マット素材の反発弾性が、下層の発泡マット素材よりも小さいことを特徴とする腰痛予防マット。
  3. 請求項2記載の腰痛予防マットにおいて、上層の発泡マット素材の反発弾性が、3〜20%であることを特徴とする腰痛予防マット。
  4. 請求項1〜3のいずれか記載の腰痛予防マットにおいて、弾性フィルムの面方向のバネ定数が、シート状のゲルの面方向のバネ定数よりも大きいことを特徴とする腰痛予防マット。
  5. 請求項1〜4のいずれか記載の腰痛予防マットにおいて、シート状のゲルが、アスカーC型硬度50以下かつ針入度(JIS K−2207)250以下のシリコーンゲルであることを特徴とする腰痛予防マット。
  6. 請求項1〜5のいずれか記載の腰痛予防マットにおいて、弾性フィルムが、硬度(JIS K−6301)JIS A15〜90のウレタンフィルムであることを特徴とする腰痛予防マット。
  7. 請求項1〜6のいずれか記載の腰痛予防マットにおいて、腰痛予防マットの体長方向の両側に、他の部位よりも硬度の低い発泡マット素材を備えたことを特徴とする腰痛予防マット。
  8. 請求項7記載の腰痛予防マットにおいて、硬度の低い発泡マット素材を備えた部位では、受圧方向に沿って各部材が一体化されていることを特徴とする腰痛予防マット。
  9. 請求項7又は8記載の腰痛予防マットにおいて、硬度の低い発泡マット素材と他の部位の発泡マット素材との隣接面が傾斜していることを特徴とする腰痛予防マット。
  10. 請求項1〜9のいずれか記載の腰痛予防マットの受圧面に、カテキンを付着させた通気性のシートを組み合わせたことを特徴とする腰痛予防マット。
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