JP2004166894A - 放射線治療装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】放射線治療装置1は、アイソセンタ10を中心に所定の半径の軌道に沿って放射線発生装置2を移動させるガイド3と、アイソセンタ10を通る傾倒軸12を中心にこのガイド3を回転させる支持部材4と、放射線発生装置2が出射するX線Rの放射線軸Aと同軸の照射軸Eに光軸Bが合わされたレーザ発振器5を備える。照射軸Eを横切って配置されたレーザ強度分析器6は、レーザ光線Lを検出する。解析装置7は、レーザ強度分布と放射線発生装置2の位置の情報を基に、ずれ量を判定する。制御装置8は、このずれ量をもとに、放射線発生装置2の位置を補正する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、出射する放射線が1点で交わるアイソセンタを中心に放射線発生装置を球状面に沿って移動させ、アイソセンタ及びその近傍に配置される照射対象に放射線を照射する放射線治療装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば医療分野において、放射線治療に用いられる放射線治療装置は、放射線の照射対象となる病巣に対して所定の線量を浴びせるとともに、非照射対象部位への被爆線量を抑えるために、多方位から放射線を照射する必要がある。
【0003】
放射線治療装置は、放射線を発生させる放射線発生装置と、この放射線発生装置から出射される放射線が照射対象を多方位から通過するように放射線発生装置を位置決めする位置決め装置とを備えている。
【0004】
水平軸を中心に回転するガントリを位置決め装置として備える放射線治療装置がある。放射線発生装置は、ガントリの中に組み込まれ、ガントリの回転縁端殻回転中心に向けて放射線を出射する。ガントリは、任意の回転角度に位置決めされて出射される放射線が水平軸線上の1点で交差するように設計されているので、この放射線治療装置は、アイソセントリック型と称される。放射線治療の対象者となる患者は、寝台に寝かされて照射対象の病巣がアイソセンタに位置するように寝台ごと移動される。
【0005】
また、多数の可動軸を有した多軸マニピュレータを位置決め装置として備える放射線治療装置がある。この放射線治療装置は、多軸マニピュレータの先端に取付けられた放射線発生装置を任意の方位に位置決めして放射線を出射することができる。つまり、照射対象の病巣が放射線照射範囲内にある場合、寝台に寝かされた患者を動かすことなく、この放射線治療装置は、所望する方位から照射対象の病巣に放射線を照射することができる。したがって、出射する放射線が特定の1点で交差しないので、この放射線治療装置は、ノンアイソセントリック型と称される。
【0006】
放射線治療において、照射対象を中心とする放射線量の分布を把握するために、放射線の照射方向、照射時間、照射範囲などについて、治療前に綿密な治療計画が立てられる。この治療計画を基に、放射線の入射位置、照射対象の深度など、照射対象に対して放射線発生装置を位置決めするためのマーキングが患者の皮膚表面上に行われる。放射線発生装置は、放射線の出射口の近傍または出射口の内側に照準用のランプを備えている。放射線照射時における照射対象の位置決めは、照準用のランプによって投光または投影された照準をマーキングに合せることで行なわれる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アイソセントリック型の放射線治療装置の場合、ガントリは、片持ち支持されているので、水平軸を中心に回転する場合、回転位置によって異なる撓みが発生する。そのため、この撓みを回転角度ごとに実測し、実測値に基づいて機械位置設定の補正が行なわれる。
【0008】
ところで、放射線治療において、放射線に対して感受性の高い非照射対象部位が照射対象の近傍にある場合、これを避けて放射線を照射しなければならない。したがって、出射される放射線は、アイソセンタに位置決めされる照射対象を正確に透過するだけでなく、透過するときの方位角も重要である。
【0009】
つまり、アイソセントリック型の放射線治療装置の場合、ガントリに起因する撓みの補正は、ガントリの回転角度の補正のみならず、アイソセンタそのものの位置補正も行なわなければならない。つまり、わずかでは有るが患者を乗せた寝台も動かさなければならない。そして、このわずかな動きが、患者に不快感を与える。
【0010】
また、ノンアイソセントリック型の放射線治療装置の場合、多軸マニピュレータは、ガントリと同様に、放射線発生装置を片持ち支持するので、照射角度ごとに異なる撓みが発生する。この放射線治療装置は、照射範囲内に位置決めされた照射対象に対して、所望する方位に放射線発生装置を位置決めすることができる。したがって、照射対象を動かさずに済むように装置の撓みを補正することができる。しかし、多軸マニピュレータは、照射角度が同じ場合であっても、姿勢が異なることによって、撓みの大きさも異なる。このため、照射角度、及びそのときの姿勢ごとに撓みの実測と装置の補正を行なわなければならない。
【0011】
これら撓みの実測、及び装置の補正などのメンテナンス作業には、時間がかかる。したがって、放射線治療装置の信頼性を補償するために、メンテナンスを頻繁に行なうと、放射線治療装置の稼働率が低下する。
【0012】
また、病巣の早期発見及び早期治療が望まれるようになり、診断用の検査装置の検出精度が向上するにつれて、より小さな病巣も治療対象として検出できるようになってきている。この検査装置によって発見された小さな病巣に対して放射線治療装置を適用する場合、患者に対する不必要な放射線量を軽減するために、放射線の照射野を小さく絞ることが必須である。そして、放射線治療装置は、放射線治療に先立って立てられる治療計画に基づいて、再現性よく放射線を照射できなければならない。
【0013】
しかしながら、照準が放射線の出射口を通して照明によって投影または投光される場合、小さな照射野に相当する範囲を照らすことが難しい。また、放射線が出射される方向と同軸上に照準が投影されない場合、照射対象との相対的な距離が変化すると、照射方向や照射位置が照射対象からずれる場合がある。さらに、照準と放射線の照射野との位置を合せる較正は、目視確認によって行なわれるので、精度に限界がある。したがって、照射野に対して精度のよい位置決めは、期待できない。
【0014】
そこで、本発明は、出射される放射線がアイソセンタを所望される角度で通るように放射線発生装置の向きを容易に較正することができる放射線治療装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る放射線治療装置は、放射線を出射する放射線発生装置と、出射される放射線が1点で交差するようにアイソセンタを中心に放射線発生装置を所定の半径の軌道に沿って移動させるガイドと、軌道が形成する平面と平行にアイソセンタを通る傾倒軸を中心にガイドを回転させる支持部材と、放射線発生装置とともに移動して放射線が出射される方向の放射線軸と同軸の照射軸に光路調整手段によって光軸が合わされたレーザ光線を出射するレーザ発振器と、照射軸を横切って配置されるレーザ強度分析器と、レーザ強度分析器で検出したレーザ光線の情報をと放射線発生装置の位置情報とを関連付ける解析装置と、解析装置が出力する情報に基づいて放射線発生装置を移動させてアイソセンタに照射軸を合せる制御装置とを備える。
【0016】
また、照射軸をアイソセンタに合せるために、互いに交差する2つの回動軸で放射線発生装置を枢支してガイドに沿って移動する可動部材を備える。放射線発生装置とレーザ発振器の相対位置を変えることなく放射線軸と光軸を同軸に合せるために、光軸調整手段は、独立して動く少なくとも2つの反射面を有する。
【0017】
照射軸がアイソセンタを通るように位置決めされていることを確認するために、レーザ強度分析器の検出面は、アイソセンタを通る位置に設ける。また、照射軸が所望する照射方向であることを確認するために、アイソセンタを通る位置から放射線発生装置に近づく方向及び離れる方向にレーザ強度分析器の検出面を移動させる。また、レーザ強度分析器の検出面をアイソセンタに位置決めする検出器位置決め装置を備える。
【0018】
この検出器位置決め装置は、アイソセンタを中心に放射線発生装置がガイドに沿って移動する方向とガイドが傾動軸を中心に回転する方向とに、レーザ強度分析器を回動させる駆動機構を備える。または、検出器位置決め装置は、ガイドに固定されてアイソセンタを中心に放射線発生装置がガイドに沿って移動する方向にレーザ強度分析器を回動させる駆動機構を備える。
【0019】
また、放射線軸と光軸とをより正確に合せるために、レーザ強度分析器と置換えられて配置される放射線検出器と、照射軸上に配置される放射線検出器の検出面またはレーザ強度分析器の検出面を監視するカメラと、カメラで取得した情報と放射線検出器で検出した放射線の情報とレーザ強度分析器で検出したレーザ光線の情報とを関連付けるアライメント装置とを備える。
【0020】
この場合、放射線検出器の検出面は、アイソセンタを通る位置に設けられる。そして、アイソセンタを通る位置から放射線発生装置に近づく方向及び離れる方向に放射線検出器の検出面を移動する。また、検出器位置決め装置は、レーザ強度分析器と置換えられる放射線検出器の検出面をアイソセンタに位置決めする。
【0021】
アイソセンタに対する放射線発生装置の位置と照射軸の方向をより正確に設定するために、アイソセンタで交差する少なくとも2つの位置決め用のレーザ光線と、アイソセンタを観測するレーザードップラ計と、レーザードップラ計で観測された情報を基にアイソセンタに対する放射線発生装置の照射軸の通過方向を判定する解析装置とを備える。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明に係る第1の実施形態の放射線治療装置1について、図1から図3を参照して説明する。図1に示す放射線治療装置1は、放射線発生装置2とガイド3と支持部材4とレーザ発振器5とレーザ強度分析器6と解析装置7と制御装置8とを備える。
【0023】
放射線発生装置2は、治療用の放射線として、X線Rを出射する。放射線発生装置2は、ガイド3に沿って移動する可動部材9に設けられた互いに交差する2つの回動軸C,Dによって枢支されている。回動軸C,Dは、X線Rの出射方向と互いに直交するように配置される。回動軸Cは、放射線発生装置2を矢印U方向に傾け、回動軸Dは、放射線発生装置2を矢印V方向に傾ける。これにより、放射線発生装置2は、いわゆる首振り動作をする。
【0024】
ガイド3は、円弧状に形成されており、アイソセンタ10を通る回転軸11を中心に、放射線発生装置2を搭載した可動部材9を所定の半径の軌道に沿って移動させる。アイソセンタ10は、可動部材9をガイド3に沿って移動させる場合、放射線発生装置2から出射されたX線Rが1点で交差する点である。
【0025】
支持部材4は、傾倒軸12を中心にガイド3を回転させる。本実施形態の放射線治療装置1の傾倒軸12は、水平に配置されているので、ガイド3は、いわゆるΩ形に配置される。傾倒軸12は、可動部材9の回転中心である回転軸11とアイソセンタ10において交差する。この場合、回転軸11と傾倒軸12とは、放射線発生装置1の位置決め制御の都合上、互いに直交するように配置されることが好ましい。支持部材4は、アイソセンタ10から傾倒軸12に沿って両側に配置され、床に固定される。また、支持部材4がガイド3を枢支する少なくとも一方に、ガイド3を傾倒させる駆動装置として、サーボモータ4aを備える。
【0026】
ガイド3は、アイソセンタ10から偏心して配置されている。そこで、重心の位置を傾倒軸12上に配置してサーボモータ4aの負荷を軽減するために、カウンターウェイトを取付けてもよい。放射線発生装置2は、ガイド3に沿って回転軸11を中心に移動する可動部材9に取付けられるとともに、ガイド3が傾倒軸12を中心に回転することで、アイソセンタ10を中心とする球面に沿って移動する。したがって、制御装置8は、極座標を使うと、放射線発生装置2の位置を制御しやすい。
【0027】
レーザ発振器5は、図2に示すように、放射線発生装置2の内部に取付けられている。レーザ発振器5から出射されたレーザ光線Lは、光軸調整手段である2つのベンドミラー13a,13bによって反射され、X線Rの照射野の中心である放射線軸Aと同軸の照射軸Eに光軸Bが合せられる。ベンドミラー13a,13bを2つ備えることで、レーザ発振器5を動かすことなく、各ベンドミラー13a,13bの向きを変えるだけで、レーザ光線Lの光軸Bを照射軸Eと同軸に合せることができる。
【0028】
レーザ強度分析器6は、照射軸Eを横切って配置され、レーザ光線Lの強度分布を検出する。レーザ強度分析器6の検出面6aは、アイソセンタ10を通る位置に配置される。また、レーザ強度分析器6は、床に固定された検出器位置決め装置14に取付けられている。
【0029】
検出器位置決め装置14は、アイソセンタ10を中心に放射線発生装置2がガイド3に沿って移動する方向とガイド3が傾倒軸12を中心に回転する方向とに、検出面6aを回動させる駆動機構15を備えている。また、検出器位置決め装置14は、照射軸Eに合わされたレーザ光線Lの光軸Bの向きを検出するために、アイソセンタ10から放射線発生装置2に対して近づく方向及び遠ざかる方向に検出面6aを移動させる。なお、レーザ強度分析器6は、検出面に対して垂直にレーザ光線Lを受けなくても、検出したレーザ光線Lの強度分布のピークを元に、レーザ光線Lの光軸を求めることができる。
【0030】
解析装置7は、ガイド3、支持部材4、回動部材9に接続されて各可動部に設けられるロータリエンコーダやリニアスケールなどから得られる信号を基に、アイソセンタ10に対する放射線発生装置2の方位角を算出する。また、解析装置7は、検出器位置決め装置14及びレーザ強度分析器6に接続されている。そして、レーザ強度分析器6で検出されたレーザ光線Lの情報と、放射線発生装置2の位置とを関連付ける。
【0031】
制御装置8は、放射線発生装置2を位置決めするガイド3、支持部材4、可動部材9の駆動装置及び解析装置7に接続されている。制御装置8は、解析装置7から出力される情報に基づいて、放射線発生装置2の位置に対する照射軸Eの補正量を決定し、照射位置及び照射角度の補正に必要なガイド3、支持部材4、及び可動部材9の駆動装置を制御する。そして、位置情報が補正された後、制御装置8は、この補正された位置情報を基に、ガイド3、支持部材4、可動部材9を制御する。
【0032】
また、放射線治療装置1は、放射線軸Aと光軸Bとが同軸であることを確認するために、放射線検出器16とカメラ17とアライメント装置18とを備える。放射線検出器16は、放射線発生装置2から出射されるX線Rの線量の分布を検出する。放射線検出器16は、レーザ強度分析器6と置換えられて検出器位置決め装置14に取付けられる。放射線検出器16の検出面16aは、レーザ強度分析器6の検出面6aと同様に、アイソセンタ10を通る位置に配置される。
【0033】
カメラ17は、アイソセンタ10に対して相対的に位置決めされており、検出器位置決め装置14に取付けられるレーザ強度分析器6の検出面6aまたは放射線検出器16の検出面16aを監視する。アライメント装置18は、カメラ17で映されたレーザ強度分析器6と放射線検出器16の相対的な位置を基に、レーザ強度分析器6が検出するレーザ光線Lの情報と放射線検出器16が検出するX線Rの情報を関連付ける。なお、カメラ17の代わりに、検出器位置決め装置14にレーザ強度分析器6と放射線検出器16とのそれぞれに共通する合せピンなどを設けてもよい。
【0034】
次に、放射線軸Aと光軸Bのアライメント方法の一例について図3を参照して説明する。なお、図3において、レーザ強度分析器6、放射線検出器16、カメラ17、アライメント装置18は、省略している。
【0035】
X線Rの放射線軸Aに沿って放射線発生装置2から離れる方向に、少なくとも2地点、本実施形態では、図3に示すように、3地点でX線Rの照射野とレーザ光線Lとをそれぞれ放射線検出器16とレーザ強度分析器6とで検出する。検出された情報は、アライメント装置18で解析され、それぞれの中心位置が決められる。
【0036】
放射線発生装置2に近い側から順に、近点P1、中間点P2、遠点P3とする。なお、中間点P2をアイソセンタ10に設定すると、照射軸Eをアイソセンタ10に合せやすい。各地点におけるX線Rとレーザ光線Lの中心は、それぞれ、A1,A2,A3,B1,B2,B3とする。放射線軸Aと光軸Bは、図3に示すように立体交差しているだけで接していない場合が考えられる。
【0037】
そこで、まず、近点P1におけるX線の中心A1とレーザ光線Lの中心B1とのずれを計測し、修正する。近点P1において現れるずれは、ベンドミラー13aまたはベンドミラー13bで補正する。近点P1において、A1とB1とを一致させることで、放射線軸Aと光軸Bとが交わる。次に、中間点P2及び遠点P3におけるX線Rの中心A2,A3とレーザ光線Lの中心B2,B3のずれをそれぞれ計測する。A2とB2、A3とB3のずれは、近点P1から中間点P2までの距離、及び近点P1から遠点P3までの距離に比例する。つまり、ベンドミラー13aと放射線軸Aとが交わる点を通って近点P1と平行な面において、近点P1からベンドミラー13aまでの距離に比例するずれが同様に生じているはずである。
【0038】
したがって、次に、中間点P2におけるA2とB2のずれ及び遠点P3におけるA3とB3のずれの比率を基に、ベンドミラー13aにおける放射線軸Aと光軸Bとのずれをベンドミラー13bで修正する。近点P1において、中心A1とB1とが再びずれるが、A1とB1、A2とB2、A3とB3のそれぞれのずれは、ベンドミラー13aから各地点までの距離に比例するはずである。
【0039】
そこで、近点P1、中間点P2、遠点P3における放射線軸Aと光軸Bとのずれを再度確認し、これを基に、ベンドミラー13aを調節することで、X線Rの放射線軸Aとレーザ光線Lの光軸Bとを一致させることができる。
【0040】
なお、上述の方法は、アライメントの一例であるので、他の手順による方法で放射線軸Aと光軸Bを同軸に調節してもよい。遠点P3は、放射線発生装置2を使用する場合におけるX線Rの照射距離よりもできるだけ遠くに設定すると誤差を小さくすることができる。
【0041】
このように、放射線検出器16とレーザ強度分析器6によって検出された情報を基にアライメント装置18で放射線軸Aと光軸Bの中心をそれぞれ求めることによってずれを補正するので、放射線軸Aと光軸Bとを、作業員の技量や主観などに左右されることなく、容易に同軸に合せることができる。また、同軸度の再現性に優れている。
【0042】
以上のように構成された放射線治療装置1は、レーザ発振器5とレーザ強度分析器6と解析装置7と制御装置8とを使用して、放射線発生装置2が出射するX線Rをアイソセンタに較正する。アイソセンタ10を所望する方位から通過するように、放射線発生装置2から出射されるX線Rの照射野の中心となる照射軸Eを合せる方法について説明する。
【0043】
アイソセンタ10に対して任意の方位角にガイド3と支持部材4によって位置決めされた放射線発生装置2からレーザ光線Lをアイソセンタ10に配置されたレーザ強度分析器6に向けて出射する。レーザ強度分析器6は、アイソセンタ10から放射線発生装置2に対して近づく方向及び離れる方向に検出面6aを移動させ、それぞれの位置で、レーザ光線Lを検出する。レーザ強度分析器6で検出された情報を基に、解析装置7でアイソセンタ10に対するレーザ光線Lの中心位置と、検出面6aを移動させることで検出したレーザ光線Lの光軸Bの向きとを判定する。解析装置7で求められたアイソセンタ10に対するレーザ光線Lの中心位置と光軸Bの向きとを基に、制御装置8は、ガイド3、支持部材4、可動部材9を制御し、放射線発生装置2を所望する位置に補正する。そして、放射線発生装置2の位置を変えて同様の作業を繰り返す。検出器位置決め装置14は、ガイド3や支持部材4と独立して床に設置されている。アイソセンタ10は、多方位から照射したX線Rが一点で交差する点であるので、検出面6aを固定した状態で放射線発生装置2のみを移動させ、レーザ光線Lを出射することで、アイソセンタ10を容易に判定することができる。
【0044】
放射線治療装置1は、X線Rの照射位置及び照射角度の較正にレーザ光線Lとこれを検出するレーザ強度分析器6を用いるので、放射線発生装置2の照射軸Eを精度よくかつ容易に較正することができる。また、レーザ光線Lの強度分布のピークを解析装置7で判定することで、レーザ光線Lの中心、すなわち照射軸Eの中心を決定するので、再現性に優れている。そして、放射線治療装置1は、解析装置7から出力された情報を基に、放射線発生装置2の位置及び照射角度を自動的に補正することができる。なお、放射線治療装置1は、解析装置7によって判定されたずれ量を基に、ガイド3、支持部材4、可動部材9の設定値を作業者によって変更されてもよい。
【0045】
放射線発生装置2は、互いに交差する2つの回動軸C,Dに枢支されているので、解析装置7で判定されたずれ量を正確に補正することができる。アイソセンタ10を通る位置にレーザ強度分析器6の検出面6aを配置することで、アイソセンタ10におけるずれ量を実測値として知ることができるので、設定値を変更する場合などに有効である。
【0046】
また、アイソセンタ10を通る位置から放射線発生装置2に対して近づく方向及び離れる方向に検出面6aを移動することで、アイソセンタ10において照射軸Eが所望する方位からずれていないか容易に確認することができる。
【0047】
さらに、放射線治療装置1は、レーザ光線LをX線Rと同軸に出射するので、このレーザ光線Lを使い、患者に対して治療計画に基づくシミュレーションを行なうことができる。また、放射線治療装置1の照射軸Eの較正を行なう場合、作業員は、X線Rを出射することなく較正することができるので、不要な線量を浴びる心配がない。
【0048】
この放射線治療装置1は、別途設けられる寝台50によって、放射線治療の対象となる患者Pの放射線照射対象部位である患部をアイソセンタ10に配置する。寝台50は、患者Pを寝かせるスライドボード51と、患者Pを乗せたままこのスライドボード51を放射線治療装置1の放射線照射範囲内に移動する駆動装置52を備えている。レーザ強度分析器6または放射線検出器16を搭載した検出器位置決め装置14は、放射線発生装置2の照射軸Eがアイソセンタ10を所望する方位角で通過するように較正したり、放射線軸と光軸とを同軸に較正したりするために使用され、放射線治療中には使用されない。したがって、寝台50のスライドボード51が放射線治療装置1の放射線照射範囲内に配置される場合、検出器位置決め装置14は、患者P、スライドボード51などと干渉しない位置に移動される。この場合、検出器位置決め装置14は、設置されていた床から外してしまってもよいし、寝台50と制御装置8でリンクさせて、スライドボート51と干渉しない下方へ退避するように設けてもよい。
【0049】
本発明にかかる第2の実施形態の放射線治療装置21について、図4を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図4に示す放射線治療装置21は、ガイド3に固定される検出器位置決め装置22を備える。照射軸Eを横切るように、レーザ強度分析器6は、この検出器位置決め装置22に配置され、アイソセンタ10から放射線発生装置2に対して近づく方向及び遠ざかる方向に検出面6aを移動させることができる。検出器位置決め装置22は、放射線発生装置2がガイド3に沿って移動する方向にレーザ強度分析器6の検出面6aを傾けることができる。検出器位置決め装置22は、ガイド3に取付けられているので、ガイド3が傾倒軸12を中心に回転することに対して、検出面6aを傾ける機構が不要である。
【0051】
本発明に係る第3の実施形態の放射線治療装置31について、図5を参照して説明する。なお、第1及び第2の実施形態と同じ構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
図5に示す放射線治療装置31は、円弧状のガイド3の両端に固定された検出器位置決め装置32を備えている。検出器位置決め装置32は、レーザ強度分析器6の検出面6aが照射軸Eを横切るようにレーザ強度分析器6を保持している。また、検出器位置決め装置32は、放射線発生装置2がガイド3に沿って移動する方向にレーザ強度分析器6の検出面6aを傾けることができるとともに、照射軸Eに沿ってアイソセンタ10から放射線発生装置2に対して近づく方向及び離れる方向に検出面6aを移動させることができる。
【0053】
第2の実施形態の放射線治療装置21における検出器位置決め装置22に対して、第3の実施形態の放射線治療装置31における検出器位置決め装置32は、ガイド3の両端に固定されているので、放射線発生装置2がガイド3に沿って移動することに対して干渉しない。
【0054】
本発明に係る第4の実施形態の放射線治療装置41について、図6及び図7を参照して説明する。なお、第1から第3の実施形態と同じ構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図6に示す放射線治療装置41は、アイソセンタ10で交差する位置決め用のレーザ光線G1,G2を出射するレーザ発振器42a,42bと、アイソセンタ10を観測するレーザードップラ計43と、解析装置44とを備える。また、図示しないが、第1の実施形態で説明したように、放射線軸Aと光軸Bとを同軸に調整するために必要となる放射線検出器16、検出器位置決め装置14、アライメント装置18、カメラ17などを別途備えてもよい。
【0056】
レーザ発振器42a,42bは、図6に示すように、出射するレーザ光線G1,G2がアイソセンタ10を通るように治療室Tの任意の位置に配置される。なお、レーザ発振器42a,42bは、出射するレーザ光線G1,G2がアイソセンタ10で交差するように配置されればよいので、その都度、治療室T内に設置されてもよいし、恒久的に壁などに埋設されていてもよい。また、レーザ光線G1,G2は、1つのレーザ発振器から出射されるレーザ光線をアイソセンタ10で交差するようにベンドミラーなどによって反射させて造られてもよい。
【0057】
レーザ光線G1,G2は、アイソセンタ10で交差すると、干渉縞を造る。干渉縞のできる方向及び縞の間隔は、レーザ光線G1,G2の交差する角度及び波長によって決まる。レーザードップラ計43は、アイソセンタ10に造られる干渉縞を観測できる位置に配置されていれば、どの位置に配置されていてもよい。
【0058】
図6に示す放射線治療装置41のガイド3は、傾倒軸12が垂直方向に配置されているので、いわゆるC形に形成されている。なお、他の実施形態のように、Ω形であってもよい。傾倒軸12を垂直方向に配置していることで、重力によってガイドや可動部材に生じる撓みは、ガイド3が傾倒軸12を中心に回転するので、ある回転角度について較正を行なえば、その補正値を他の回転角度についても流用することができる。ただし、傾倒軸12について偏心及び回転位置決め精度は、別途較正する必要がある。
【0059】
以上のように構成された放射線治療装置41において、図7に示すように放射線発生装置2から出射されるX線Rと同軸に調整されたレーザ発振器5のレーザ光線Lをアイソセンタ10に合せる。レーザ光線Lがアイソセンタ10を通ると、レーザ光線G1,G2による干渉縞以外に新たな干渉縞が形成される。レーザ光線Lによって造られる干渉縞の方向及び間隔をレーザードップラ計43で観測する。この情報を基に解析装置44は、アイソセンタ10に対する照射軸Eの照射角度が判定される。また、解析装置44は、ガイド3、支持部材4、可動材9の駆動部分にそれぞれ設けられるロータリエンコーダや、リニアスケールなどの信号を基に、照射軸Eの位置及び方向のずれ量を判定する。制御装置8は、解析装置44から出力された、放射線発生装置2の位置ずれ及び回転方向のずれ量を基に、ガイド3、支持部材4、可動部材9を制御し、アイソセンタ10に対して放射線発生装置2を所望する方位の位置に較正する。
【0060】
放射線治療装置41は、放射線発生装置2の照射軸Eの位置や方向のずれ量の判定に、レーザ光線G1,G2,Lが互いに交差することによって生じる干渉縞を利用する。したがって、レーザ光線G1,G2,Lの波長に応じた細かいずれ量も判定することができる。また、放射線治療装置41は、解析装置44で判定されたずれ量を基に、制御装置8で自動的にこのずれを補正するので、再現性に優れた較正をすることができる。
【0061】
【発明の効果】
本発明に係る放射線治療装置によれば、放射線発生装置から出射される放射線の放射線軸と同軸の照射軸に光軸が合わされたレーザ発振器を備える。照射軸を横切る位置に配置されるレーザ強度分析器で、レーザ発振器から出射されるレーザ光線の強度分布を検出する。解析装置は、放射線発生装置の位置情報とレーザ強度分析器で検出されたレーザ光線の強度分布の情報を関連付けることで、放射線発生装置の設定位置からのずれ量を判定する。制御装置は、解析装置が出力するずれ量に関する情報を基に、アイソセンタに対する放射線発生装置の位置及び照射軸の角度を補正する。このように、ずれ量は、解析装置によって判定され、制御装置によって自動的に較正される。したがって、本発明に係る放射線治療装置は、出射される放射線がアイソセンタを所望される角度で通るように放射線発生装置の向きを容易に較正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る第1の実施形態の放射線治療装置を示す斜視図。
【図2】図1の放射線治療装置の放射線発生装置と検出器位置決め装置との位置関係を示す斜視図。
【図3】図1の放射線発生装置から出射される放射線の放射線軸とレーザ発振器から出射されるレーザ光線の光軸とがずれた状態を示す斜視図。
【図4】本発明に係る第2の実施形態の放射線治療装置を示す斜視図。
【図5】本発明に係る第3の実施形態の放射線治療装置を示す斜視図。
【図6】本発明に係る第4の実施形態の放射線治療装置を示す斜視図。
【図7】図6の放射線発生装置とレーザ位置決め装置との関係を示す斜視図。
【符号の説明】
1,21,31,41…放射線治療装置
2…放射線発生装置
3…ガイド
4…支持部材
5…レーザ発振器
6…レーザ強度分析器
6a…検出面
7,44…解析装置
8…制御装置
9…可動部材
10…アイソセンタ
12…傾動軸
13a,13b…ベンドミラー(光軸調整手段)
14,22,32…検出器位置決め装置
15…駆動機構
16…放射線検出器
16a…検出面
17…カメラ
18…アライメント装置
43…レーザードップラ計
A…放射線軸
B…光軸
C,D…回動軸
E…照射軸
G1,G2,L…レーザ光線
R…X線(放射線)
Claims (13)
- 放射線を出射する放射線発生装置と、
出射される放射線が1点で交差するようにアイソセンタを中心に前記放射線発生装置を所定の半径の軌道に沿って移動させるガイドと、
前記軌道が形成する平面と平行に前記アイソセンタを通る傾倒軸を中心に前記ガイドを回転させる支持部材と、
前記放射線発生装置とともに移動して放射線が出射される方向の放射線軸と同軸の照射軸に光路調整手段によって光軸が合わされたレーザ光線を出射するレーザ発振器と、
前記照射軸を横切って配置されるレーザ強度分析器と、
このレーザ強度分析器で検出したレーザ光線の情報と放射線発生装置の位置情報とを関連付ける解析装置と、
この解析装置が出力する情報に基づいて前記放射線発生装置を移動させて前記アイソセンタに前記照射軸を合せる制御装置とを備えることを特徴とする放射線治療装置。 - 互いに交差する2つの回動軸で前記放射線発生装置を枢支して前記ガイドに沿って移動する可動部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の放射線治療装置。
- 前記光路調整手段は、独立して動く少なくとも2つの反射面を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線治療装置。
- 前記レーザ強度分析器の検出面は、アイソセンタを通る位置に設けることを特徴とする請求項1から請求項3の内のいずれか1項に記載の放射線治療装置。
- 前記レーザ強度分析器の検出面は、アイソセンタを通る位置から前記放射線発生装置に近づく方向及び離れる方向に移動することを特徴とする請求項4に記載の放射線治療装置。
- 前記レーザ強度分析器の検出面をアイソセンタに位置決めする検出器位置決め装置を備えることを特徴とする請求項1から請求項5の内のいずれか1項に記載の放射線治療装置。
- 前記検出器位置決め装置は、前記アイソセンタを中心に前記放射線発生装置が前記ガイドに沿って移動する方向と前記ガイドが傾動軸を中心に回転する方向とに、前記レーザ強度分析器を回動させる駆動機構を備えることを特徴とする請求項6に記載の放射線治療装置。
- 前記検出器位置決め装置は、前記ガイドに固定されて前記アイソセンタを中心に前記放射線発生装置が前記ガイドに沿って移動する方向に前記レーザ強度分析器を回動させる駆動機構を備えることを特徴とする請求項6に記載の放射線治療装置。
- 前記レーザ強度分析器と置換えられて配置される放射線検出器と、
前記照射軸上に配置される前記放射線検出器の検出面または前記レーザ強度分析器の検出面を監視するカメラと、
前記カメラで取得した情報と放射線検出器で検出した放射線の情報とレーザ強度分析器で検出したレーザ光線の情報とを関連付けるアライメント装置とを備えることを特徴とする請求項1から請求項8の内のいずれか1項に記載の放射線治療装置。 - 前記放射線検出器の検出面は、アイソセンタを通る位置に設けられることを特徴とする請求項9に記載の放射線治療装置。
- 前記放射線検出器の検出面は、アイソセンタを通る位置から前記放射線発生装置に近づく方向及び離れる方向に移動可能であることを特徴とする請求項10に記載の放射線治療装置。
- 前記検出器位置決め装置は、前記レーザ強度分析器と置換えられる前記放射線検出器の検出面をアイソセンタに位置決めすることを特徴とする請求項9から請求項11の内のいずれか1項に記載の放射線治療装置。
- 前記アイソセンタで交差する少なくとも2つの位置決め用のレーザ光線と、
前記アイソセンタを観測するレーザードップラ計と、
前記レーザードップラ計で観測された情報を基に前記アイソセンタに対する前記放射線発生装置の照射軸の通過方向を判定する解析装置とを備えることを特徴とする請求項1から請求項12の内のいずれか1項に記載の放射線治療装置。
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2002
- 2002-11-19 JP JP2002335268A patent/JP2004166894A/ja active Pending
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