JP2004166358A - 共振電流抑制方式 - Google Patents

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Abstract

【課題】半導体電力変換装置の直流回路において、コンデンサとインダクタンス成分による共振電流を抑制する。
【解決手段】直流回路に可飽和リアクトルを設置し、共振電流が発生した場合に可飽和リアクトルを非飽和状態にして、可飽和リアクトルをリアクトルとして機能させることで、共振電流の抑制を図る。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体素子を用いた電力変換装置の制御方法に係り、詳しくは電力変換装置の直流部における直流電流に起因し、インダクタンス成分とコンデンサにより決まる共振電流の抑制方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図10に電力変換装置の一例を示す。図10の電力変換装置は、電力系統1の交流電力を変圧器2を介して電力変換器3によって一旦直流電力に変換し、電力変換器6で再度交流電力に変換することで、電力系統8に電力を送電する電力変換装置である。また、これと逆の動作を行うことにより、電力系統8の交流電力を電力系統1に送電することも可能である。
図11に電力変換器3と電力変換器6の具体的構成例を示す。これらの電力変換器は自己消弧型半導体素子9a〜9fとダイオード10a〜10fとコンデンサ4、5により構成され、半導体素子をスイッチングさせることで交流電力を直流電力に変換したり、直流電力を交流電力に変換する。
【0003】
電力変換器3と電力変換器6との間には、電力変換器3と6とを接続する配線だけでなく、通常フィルタとしてのリアクトルが設けられる。このため、上記コンデンサ4、5や配線やリアクトルのインダクタンス分により、数式1の共振周波数fを持つ共振回路が形成されることになる。
【0004】
【数1】
Figure 2004166358
この共振回路の共振周波数成分を有した電流が流れると、コンデンサ4、5に過大な電流が流れることになる。この結果、コンデンサ他の機器の損傷を引き起こす恐れがある。このため、この共振電流を抑制するには、抵抗を挿入することが考えられていた。一般にLC直列回路に対し、抵抗Rを直列に接続した場合に共振電流が小さくなることは周知である(例えば非特許文献1参照)。このことから、従来では図12、図13に示されるようにインダクタンス11に直列に、あるいはコンデンサ4、5にそれぞれ直列に共振電流抑制抵抗12を接続することが考えられていた。
【0005】
【非特許文献1】
東京電機大学編「電気工学基礎シリーズ 交流理論」、第3版、東京電機大学出版局、1993年2月20日、p54−55
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
インダクタンス11に直列に抵抗12を接続する場合、電力変換器3又は6で変換された直流電流が流れ、この電流値は電力変換装置の電流容量に等しいことから抵抗12の許容電力値を(電力変換装置の電流容量)^2×(抵抗値)以上のものにする必要があるため、結果電力変換装置が大きくせざるを得ず、コスト高の要因になるという問題があった。
また、コンデンサ4、5に直列にそれぞれ抵抗12を接続する場合、抵抗12に内在するインダクタンス成分によりコンデンサ4、5と自己消弧半導体素子9a〜9fとの配線インダクタンスが大きくなり、半導体素子のターンオフ時の跳ね上り電圧が高くなってしまうことから、電力変換器としての所望の容量が得られなくなるので、スナバコンデンサを大きくする等しなくてはならず、結果電力変換装置が大きくなるとともにコスト高となる。
【0007】
ターンオフ時の跳ね上り電圧について説明するために電力変換器1相分の構成例を図14に示す。この回路において、半導体素子と並列に、ターンオフ時の跳ね上り電圧を抑制するために抵抗20、コンデンサ21で構成されたスナバ回路が設けられている。ターンオフ時の跳ね上り電圧Vcepは一般に数式2で求められる。
【0008】
【数2】
Figure 2004166358
なお、数式2における諸量は以下のとおりである。
I:ターンオフ電流値
C:コンデンサ21の容量値
Ed:直流電圧値
L:22のインダクタンス値
数式2から、22のインダクタンス値が大きくなると、跳ね上り電圧Vcepが大きくなることが分かる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような課題を鑑み、本発明においては、コンデンサとインダクタンス成分によって発生する共振電流に対し、可飽和リアクトルと直流電源とを設け、この可飽和リアクトルがリアクトルとして動作させるようにして、共振電流を抑制することを考えた。
具体的には、半導体素子を用いた半導体電力変換装置を制御するにあたり、半導体電力変換装置の直流部に可飽和リアクトル1次側を接続し、通常時は可飽和リアクトルをこの可飽和リアクトル2次側に接続された直流電源により飽和状態としておき、直流部のコンデンサとインダクタンス成分によって決まる共振電流が流れた場合、可飽和リアクトルを非飽和状態となるようにし、リアクトルとして動作させることにより共振電流を抑制する。
【0010】
また、前記直流電源に加え、電流検出器と、該電流検出器にて検出した電流を直流分と交流分に分離することが可能なフィルタと、を備え、フィルタで分離された直流分に応じた電流にて可飽和リアクトルの通電電流を制御し、共振電流を抑制するようにしてもよい。
また、直流電源に代えて磁石を備え、この磁石により可飽和リアクトル通電電流を制御してもよいし、直流電源と磁石とを兼用して、この磁石と直流電源とにより、可飽和リアクトルの通電電流を制御しても良い。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1に本発明に第1の実施形態を示す。図1は、電力変換装置の直流回路に可飽和リアクトル13、14の1次側を接続し、2次側に直流電源15を接続した構成としている。この回路において、可飽和リアクトル13、14は直流電源15からの電流によって飽和状態となっており、電力変換器3から電力変換器6へ、又はこの逆(電力変換器6から電力変換器3へ)に流れる直流電流には影響しない。ここで、コンデンサ4、5とインダクタンス11によって決まる共振電流が流れると、直流電流に重畳して電流値が大きくなることになる。この時点で、可飽和リアクトル13又は14は飽和状態から非飽和状態となり、可飽和リアクトル13又は14のリアクトル成分及びこの可飽和リアクトルに内在する抵抗成分により共振電流を抑制する。
【0012】
つまり、可飽和リアクトルの磁化特性を図2のようにし、可飽和リアクトル13、14の磁界の強さをHA、HBとする。この特性において、主電流=0%の場合の可飽和リアクトル13、14の磁界の強さをHA2、HB2に、主電流=100%の場合(電力変換器3から6に流れる場合)の可飽和リアクトル13、14の強さをHA1、HB1に、また、主電流=−100%の場合(電力変換器6から3に流れる場合)の可飽和リアクトル13、14の磁界の強さをHA3、HB3となるように、直流電源15の電流値を決める。ここで、必ずしもHA1、HB1は100%、HA3、HB3は−100%でなく機器の許容範囲内であればよい(例えば120%、150%等)。
【0013】
上記のような特性を有する可飽和リアクトル13、14は、共振電流が流れず、電力変換器3と6との間の主電流が流れるとすると、図3のようにHAはHA1とHA3との間、またHBはHB1とHB3との間の磁界の強さとなるので、可飽和リアクトル13、14は飽和した状態となっている。次に電力変換器3から6に主電流が流れている状態で共振電流が流れ、この共振電流が主電流に重畳されることで電流値が大きくなると、可飽和リアクトル13の磁界の強さが減じて非飽和領域に入り、リアクトルとして動作することになる。また、電力変換器6から3に主電流が流れている状態で共振電流が流れ、この共振電流が主電流に重畳されることで電流値が大きくなると、可飽和リアクトル14の磁界の強さが減じて非飽和領域に入り、リアクトルとして動作することになる。このため、共振電流が流れることで非飽和となった可飽和リアクトル13、又は14はリアクトルとして動作し、このインダクタンス成分と可飽和リアクトルに内在する抵抗成分とにより共振電流を抑制することになる。
可飽和リアクトル13、14の2次側の直流電源は1次と2次の巻き数比を変えることでいくらでも小容量の直流電源をつくることがでできるから、小型で安価な構成にて電力変換器の直流回路に発生する共振電流を抑制できることになる。
【0014】
図5に本発明の第2の実施形態を示す。図5は、電力変換装置の直流回路に可飽和リアクトル13、14の1次側を接続し、2次側に可変直流電源16を接続した構成としている。この回路は、電流検出器17で直流回路電流を検出し、フィルタ19にて直流電流分と交流電流分(共振電流)に分離演算する。そして、この直流電流分を電流指令として可変直流電源16に与えることで、可飽和リアクトル13、14の特性を図6のように変えることができる。図6の特性は、(a)主電流=Id1(例えば60%)の時、(b)主電流=Id2(例えば30%)の時のように直流回路電流の直流電流分によって特性を変えることを示している。
【0015】
第1の実施形態では共振電流が流れることで固定の電流値以上となると可飽和リアクトルが非飽和となり共振電流を抑制していたが、この第2の実施形態では、その時点で流れている直流電流分より大きな電流が流れた場合に共振電流が流れていることを判別できることになり、より確実に共振電流の発生を検知し、共振電流の抑制を行うことができる。
図7に本発明の第3の実施形態を示す。図7は、電力変換装置の直流回路に磁石17、18を接続した可飽和リアクトル13、14を接続した構成としている。この回路において、可飽和リアクトル13、14は磁石17、18の磁束によって飽和状態となっており、電力変換器3から電力変換器6又は電力変換器6から電力変換器3へ流れる直流電流には影響しない。ここで、コンデンサ4、5とインダクタンス11によって共振電流が発生し、この共振電流が直流電流に重畳されて電流値が大きくなる。この時点で、可飽和リアクトル13又は14は飽和状態から非飽和状態となり、可飽和リアクトル13又は14のリアクトル成分と可飽和リアクトルに内在する抵抗成分とにより共振電流を抑制する。
【0016】
すなわち、この実施形態においては、直流電源の代わりに磁石を用いることで図2乃至図4の特性を得ることができる。
図8に本発明の第4の実施形態を示す。図8は、電力変換装置の直流回路に磁石17、18を接続した可飽和リアクトル13、14に直流電源15を接続した構成としている。この回路において、可飽和リアクトル13、14は磁石17、18と直流電源15の磁束によって飽和状態となっており、電力変換器3から電力変換器6又は電力変換器6から電力変換器3へ流れる直流電流には影響しない。ここで、コンデンサ4、5とインダクタンス11によって共振電流が発生し、この共振電流に重畳されて電流値が大きくなる。この時点で、可飽和リアクトル13又は14は飽和状態から非飽和状態となり、可飽和リアクトル13又は14のリアクトル成分と可飽和リアクトルに内在する抵抗成分とにより共振電流が抑制される。
【0017】
つまり、本実施形態においては、直流電源と磁石とを兼用することにより図2乃至図4の特性を得ることができる。磁石で決まる磁界の強さを電力変換器3、6の直流電流定格に合わせることが困難である場合、直流電源で決まる磁界の強さを加算することで、可飽和リアクトル13、14の特性を図2乃至図4のような特性に調整することができる。
図9に本発明の第5の実施形態を示す。図9は、電力変換装置の直流回路に磁石17、18を接続した可飽和リアクトル13、14に可変直流電源16を接続した構成としている。この回路は、電流検出器17で直流回路電流を検出し、フィルタ19にて直流電流分と交流電流分(共振電流)に分離演算する。そして、この直流電流分を電流指令として可変直流電源16に与えることで、可飽和リアクトル13、14の特性を図6のように変えることができる。
【0018】
このことにより、第4の実施形態では共振電流が流れることで固定の電流値以上となると可飽和リアクトルが非飽和となり共振電流を抑制していたが、この第5の実施形態では、その時点で流れている直流電流分より大きな電流が流れた場合に共振電流が流れていることを判別できることになり、より確実に共振電流の発生を検知し、共振電流の抑制を行うことができる。
すなわち、本実施形態では直流電源と磁石を用いることで、図6の特性を得ることができることになる。磁石で決まる磁界の強さを電力変換器3、6の直流電流定格に合わせるのが困難である場合、直流電源で決まる磁界の強さを加算することで可飽和リアクトル13、14の特性を図6のような特性に調整することができる。
【0019】
【発明の効果】
以上のように、電力変換装置の直流回路において、コンデンサとインダクタンス成分によって発生する共振電流を、可飽和リアクトルを非飽和状態として、リアクトルとして動作させることにより抑制した。このため、共振電流の抑制のために抵抗を別途設置する必要が無くなり、結果電力変換装置の容量増大を必要としないですむ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す回路図である。
【図2】本発明に使用する可飽和リアクトルの磁化特性を示す回路図である。
【図3】本発明に使用する可飽和リアクトルの磁化特性を示す回路図である。
【図4】本発明に使用する可飽和リアクトルの磁化特性を示す回路図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示す回路図である。
【図6】本発明に使用する可飽和リアクトルの磁化特性を示す回路図である。
【図7】本発明の第3の実施形態を示す回路図である。
【図8】本発明の第4の実施形態を示す回路図である。
【図9】本発明の第5の実施形態を示す回路図である。
【図10】従来技術を示す回路図である。
【図11】従来技術を示す回路図である。
【図12】従来技術を示す回路図である。
【図13】従来技術を示す回路図である。
【図14】従来技術を示す回路図である。
【符号の説明】
1、8 電力系統
2、7 変圧器
3、6 電力変換器
4、5、21 コンデンサ
9a〜9f 自己消弧半導体素子
10a〜10f ダイオード
11、22 インダクタンス
12、20 抵抗
13、14 可飽和リアクトル
15 直流電源
16 可変直流電源
17、18 磁石
19 フィルタ

Claims (4)

  1. 半導体素子を用いた半導体電力変換装置を制御するにあたって、半導体電力変換装置の直流部に可飽和リアクトル1次側を接続し、通常時は可飽和リアクトルをこの可飽和リアクトル2次側に接続された直流電源により飽和状態としておき、直流部のコンデンサとインダクタンス成分によって決まる共振電流が流れた場合、可飽和リアクトルを非飽和状態にし、リアクトルとして動作させることにより共振電流を抑制することを特徴とする半導体電力変換装置の共振電流抑制方法。
  2. 前記直流部に電流検出器と、該電流検出器にて検出した電流を直流分と交流分に分離することが可能なフィルタと、を備え、フィルタで分離された直流分に応じて直流電源に流す電流を制御することを特徴とする請求項1に記載の半導体電力変換装置の共振電流抑制方法。
  3. 前記直流電源に代えて磁石を用いたことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体電力変換装置の共振電流抑制方法。
  4. 前記直流電源と磁石を兼用したことを特徴とする請求項1または2に記載の半導体電力変換装置の共振電流抑制方法。
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