JP2004165025A - テープ状絶縁材、絶縁物品および絶縁材用水分散型アクリル系粘着剤 - Google Patents
テープ状絶縁材、絶縁物品および絶縁材用水分散型アクリル系粘着剤 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】絶縁基材の片面または両面に水系粘着剤層を設けたテープ状絶縁材であって、絶縁特性の良好な粘着剤層を有するものを提供すること。
【解決手段】絶縁基材の片面または両面に粘着剤層を設けたテープ状絶縁材において、前記粘着剤層が、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を、乳化剤の存在下で乳化重合して得られた重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成されたものであり、かつ水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率が4重量%以下であることを特徴とするテープ状絶縁材。
【選択図】 なし
【解決手段】絶縁基材の片面または両面に粘着剤層を設けたテープ状絶縁材において、前記粘着剤層が、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を、乳化剤の存在下で乳化重合して得られた重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成されたものであり、かつ水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率が4重量%以下であることを特徴とするテープ状絶縁材。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、テープ状絶縁材および当該テープ状絶縁物が貼合されている絶縁物品に関する。また本発明は、テープ状絶縁材の粘着剤層を形成しうる、絶縁材用水分散型アクリル系粘着剤に関する。本発明のテープ状絶縁材は、トランス、コイル等の電気部品、電子部品等の層間絶縁や外面絶縁に使用されこれら物品を絶縁物品とする。
【0002】
【従来の技術】
従来、テープ状絶縁材に使用される粘着剤としては、絶縁特性に優れるアクリル系又はゴム系の溶剤型粘着剤が使用されていた。かかるテープ状絶縁材に使用される粘着剤にも、一般の粘着剤の場合と同様に、環境保護、省資源、安全衛生等に対する社会的な要請と規制強化から、脱溶剤が重要な課題となっており、溶剤型粘着剤に代わるものが要望されている。前記溶剤型粘着剤に代わる粘着剤としては、汎用性や応用展開の可能性から、ホットメルト型や硬化型の粘着剤よりも、水系粘着剤が優位であると考えられている。
【0003】
しかしながら、水系粘着剤である水分散型の天然ゴムラテックスまたは合成ゴムラテックスは、水溶性であるイオン性乳化剤を非常に多く含有していることから絶縁特性の低下が問題であった。一方、アクリル系の水分散型粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を乳化剤存在下に重合して得られる重合体エマルションを含むものである。当該重合体は、被着体への接着力を向上させるために、または得られる重合体を後架橋するための架橋点を導入するために、さらには粘着剤の凝集力を高めるために、上記主成分と共重合可能な官能基含有単量体やその他の改質用単量体が添加されている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照。)。しかし、従来知られているアクリル系水分散型粘着剤は加湿条件下に絶縁特性が低下する問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−128543号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平6−145623号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、絶縁基材の片面または両面に水系粘着剤層を設けたテープ状絶縁材であって、絶縁特性の良好な粘着剤層を有するものを提供することを目的とする。また本発明は、テープ状絶縁物が貼合されている絶縁物品を提供することを目的とする。さらには本発明は、絶縁特性の良好な水系粘着剤層を形成しうる絶縁材用水分散型アクリル系粘着剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、テープ状絶縁材の水系粘着剤層を形成する水系粘着剤として以下に示すものを用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、絶縁基材の片面または両面に粘着剤層を設けたテープ状絶縁材において、
前記粘着剤層が、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を、乳化剤の存在下で乳化重合して得られた重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成されたものであり、
かつ水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率が4重量%以下であることを特徴とするテープ状絶縁材、に関する。
【0009】
上記本発明では、水系粘着剤として水分散型アクリル系粘着剤を用いており、天然ゴムラテックスまたは合成ゴムラテツクス粘着剤のようにイオン性乳化剤を多量に含有することによる絶縁特性の低下がない。また水分散型アクリル系粘着剤は、重合体エマルションから製造される。この重合体エマルションは、通常、イオンを含有する乳化剤やイオンを含有する開始剤を含んでいる。このため加湿条件下では、水分散型アクリル系粘着剤が水分を吸収すると絶縁特性が低下する。そこで本発明では、水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率を4重量%以下に調整することにより、加湿条件下においても絶縁特性を満足させている。前記吸水率は少ないほど好ましく、3.5重量%以下、さらには3重量%以下となるものがより好ましい。吸水率が4重量%を超えると加湿条件下で電圧を印加した場合に、陽極または陰極に水溶性成分が移動してしまい絶縁特性が低下してしまう。前記吸水率は、詳しくは、実施例に記載の方法により算出される値である。なお、テープ状絶縁材はJIS C−2338に規定される電食係数が0.98以上の絶縁特性を有することが好ましい。前記電食係数は0. 99以上であるのがより好ましい
【0010】
また本発明は、前記テープ状絶縁物が貼合されていることを特徴とする絶縁物品、に関する。
【0011】
さらに本発明は、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を、乳化剤の存在下で乳化重合して得られた重合体エマルションを含有する絶縁材用水分散型アクリル系粘着剤であって、
前記水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率が4重量%以下であることを特徴とする絶縁材用水分散型アクリル系粘着剤、に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のテープ状絶縁材において粘着剤層を形成する水分散型アクリル系粘着剤は、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を、乳化剤の存在下に乳化重合することにより得られる重合体エマルションを含有してなる。
【0013】
アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸またはメタクリル酸と炭素数が4〜12のアルコールとのエステルであって、具体的には、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニルなどがあげられ、これらの中からその1種または2種以上が用いられる。これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単量体の主成分として、単量体中、50重量%以上、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90〜99.5重量%の割合で用いられる。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合が少ないと、良好な接着性の粘着剤が得られにくい。
【0014】
前記単量体中には、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのほかに、被着体への接着力を向上させるために、または得られる重合体を後架橋するための架橋点を導入するために、さらには粘着剤の凝集力を高めるために、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な官能基含有単量体やその他の改質用単量体を適量使用してもよい。これら官能基含有単量体等は、前記アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの合計で単量体混合物として合計100重量%になるように用いられる。通常、50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは0.5〜10重量%の割合で用いられる。
【0015】
官能基含有単量体としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルなどのアミノ基含有単量体、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのグリシジル基含有単量体、(メタ)アクリル酸プロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸プロピルジメトキシシラン、(メタ)アクリル酸プロピルトリエトキシシランなどの多官能アルコキシシラン、(メタ)アクリロニトリル、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピロリドンなどがあげられる。これら官能基含有単量体は、その1種を単独でまたは2種以上を混合して使用できる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な官能基含有単量体としては、カルボキシル基含有単量体が好ましい。カルボキシル基含有単量体のなかでも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0016】
得られる水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率を4重量%以下にするためには、官能基含有単量体の使用量が適宜に調整される。官能基含有単量体としてアクリル酸を使用する場合には、前記アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体100重量部中、アクリル酸を5重量部以下、好ましくは4重量部以下、特に好ましくは3重量部以下とするのがよい。なお、アクリル酸の使用量は1重量部以上とするのが好ましい。官能基含有単量体としてメタクリル酸を使用する場合には、前記アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体100重量部中、メタクリル酸を10重量部以下、好ましくは8重量部以下、特に好ましくは5重量部以下とするのがよい。なお、メタクリル酸の使用量は1重量部以上とするのが好ましい。
【0017】
その他の改質用単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピルなどのアルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどのアルキル基の炭素数が13〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエンなどがあげられる。また、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の二つ以上の重合性官能基を有するものがあげられる。これら改質用単量体もその1種を単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
【0018】
乳化剤としては、乳化重合において用いられるアニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤を特に制限なく使用できる。たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。また、アニオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤のいずれの場合にも、乳化剤中にプロペニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などの反応性官能基を導入したラジカル重合性乳化剤を用いるのが好ましい。ラジカル重合性乳化剤は、たとえば、特開平4−50204号公報、特開平4−53802号公報に記載されている。
【0019】
前記乳化剤の使用量は、特に制限されないが、イオン性乳化剤を多量に含有することによる絶縁特性の低下を抑えるため、前記アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体100重量部に対して、0.3〜5重量部程度とするのが好ましい。乳化剤の使用量が多くなると、得られる重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成される粘着剤層に含まれる水溶性成分量が多くなり、絶縁特性が低下する傾向があるため、乳化剤の使用量は、3重量部以下、さらには2重量以下とするのが好ましい。すなわち、乳化剤量が5重量部を超えると、得られる重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率が4重量%を超えてしまい、絶縁特性が低下する。乳化剤の使用量は好ましくは0.5〜3重量部、特に好ましくは0.7〜2重量部である。
【0020】
前記単量体の乳化重合は、前記乳化剤の存在下、適宜の重合開始剤を用いて、常法により行い、アクリル系重合体の水分散液を調製する。乳化重合は、一般的な一括重合、連続滴下重合、分割滴下重合などにより行う。重合温度は30〜90℃程度で行うことができる。
【0021】
重合開始剤としては、たとえば、2 ,2 ′−アゾビスイソブチロニトリル、2 ,2 ′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2 ′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパ−オキサイドなどの過酸化物系や、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムなどのレドツクス系開始剤などがあげられる。また、乳化重合にあたっては、得られる共重合体の分子量の調整のために、必要に応じて、メルカプタン類などに代表される適宜の連鎖移動剤を使用してもよい。
【0022】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤は、上記重合体エマルションを主剤成分とし、これに必要により、架橋剤を含有させることができる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などの一般に用いられているものを使用できる。これら架橋剤は、官能基含有単量体を用いることにより重合体中に導入した官能基と反応して架橋する効果以外に、重合体エマルションまたは共重合体エマルションに含まれるホモポリマー等(たとえば、官能基含有単量体としてカルボキシル基含有単量体を用いた場合には、乳化重合時に、乳化剤のミセル中でカルボキシル基含有単量体が共重合し難く、水中でカルボキシル基含有単量体のホモポリマーまたはホモポリマーに近い共重合ポリマーが得られる)と反応することで水溶性成分の減少効果があり、使用するのが好ましい。
【0023】
架橋剤の使用量は、特に制限されないが、通常、共重合体中に導入した官能基:架橋剤の官能基の当量比で、1:0〜0.5程度、好ましくは1:0.001〜0.3の範囲になるようにするのが好ましい。
【0024】
さらに本発明の水分散型アクリル系粘着剤には、粘着付与成分やその他の各種の添加剤を配合できる。粘着付与成分としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、キシレン系樹脂、エラストマーなどがあげられる。
【0025】
本発明のテープ状絶縁材は、絶縁基材の片面に、前記水分散型アクリル系粘着剤により、粘着剤層を形成したものである。水分散型アクリル系粘着剤の調製にあたっては、その乾燥物の吸水率が4重量%以下になるように調整する。すなわち、水分散型アクリル系粘着剤の調製にあたっては、単量体の主成分であるアルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有単量体や、他の官能基含有単量体や改質用単量体の種類や添加量、乳化剤の種類や添加量、さらには得られる共重合体に加える架橋剤の種類や添加量を適切に調整する。
【0026】
絶縁基材は、特に限定されず、例えばポリエステル、ポリプロピレンなどのプラスチックフィルム、紙、不織布などの他、耐熱性のあるポリイミド、ポリアミド、ポリアセテートなどの単体またはこれらの複合基材、また場合によりこれらの基材にエポキシ樹脂などを含浸させたものなどがあげられる。
【0027】
上記粘着剤層の形成は、上記水分散型アクリル系粘着剤を、絶縁基材上に直接塗布し乾燥することにより形成することもでき、セパレータ上に上記同様に形成した層を絶縁基材上に転写してもよい。本発明のテープ状絶縁材は、絶縁基材の片面または両面に粘着剤層をそれぞれ単層または複数層設けてシート状やテープ状の形態として得られる。
【0028】
本発明のテープ状絶縁材は、各種電子部品用に好適に用いられ、電子部品類に接着されて電子部品類を構成する。かかる電子部品類は特に限定されないが、例えば、トランスの層間絶縁、外装絶縁などがあげられる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下、部は重量部を意味する。
【0030】
実施例1
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、水30部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、撹拌下に1時間窒素置換した。ここにアクリル酸n−ブチル95部、メタクリル酸5部および乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム(第一工業製薬(株)の商品名「ハイテノールN−17」,以下「N−17」と略す)1.5部(固形分換算)を水70部で乳化したものを70℃で3時間かけて滴下し、さらに70℃で2時間熟成を行った。その後、室温まで冷却し、10重量%アンモニア水によりpH8に調整して、共重合体エマルション(水分散型アクリル系粘着剤)を得た。
【0031】
つぎに、この水分散型アクリル系粘着剤を、ポリエステルフィルム(25μm厚)の片面に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布して、130℃で3分間乾燥し、テープ状絶縁材を作製した。
【0032】
実施例2
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、水30部および2 ,2 ′−アゾビス(2 −アミジノプロパン)ジヒドロクロライド0 .2部を仕込み、撹拌下に1時間窒素置換した。ここにアクリル酸n−ブチル98部、アクリル酸2部および乳化剤として「N−17」1 .5 部(固形分換算)を水70部で乳化したものを60℃で3時間かけて滴下し、60℃で2時間熟成を行った。その後、室温まで冷却し、10重量%アンモニア水によりpH8に調整して、共重合体エマルション(水分散型アクリル系粘着剤)を得た。
【0033】
つぎに、この水分散型アクリル系粘着剤を、ポリエステルフィルム(25μm厚)の片面に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布して、130℃で3分間乾燥し、テープ状絶縁材を作製した。
【0034】
実施例3
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、水30部および過硫酸アンモニウム0 .3部を仕込み、撹拌下に1時間窒素置換した。ここに2−エチルヘキシルアクリレート95部、メタクリル酸5部、乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(第一工業製薬(株)の商品名「ハイテノールLA−16」,以下「LA−16」と略す)1.5部(固形分換算)を水70部で乳化したものを70℃で3時間かけて滴下し、70℃で2時間熟成を行った。その後、室温まで冷却し、10重量%アンモニア水によりpH8に調整して、共重合体エマルションを得た。
【0035】
この共重合体エマルションに、その固形分(水分散系共重合体)100部に対し、オキサゾリン基を含有する水溶性架橋剤として(株)日本触媒の商品名「エポクロスWS−700」(オキサゾリン基当量:220g・solid/eq.)0 .1部(固形分換算)を混合して、水分散型アクリル系粘着剤とした。
【0036】
つぎに、この水分散型アクリル系粘着剤を、ポリエステルフィルム(25μm厚)の片面に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布して、130℃で3分間乾燥し、テープ状絶縁材を作製した。
【0037】
比較例1
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、水30部および2 ,2 ′−アゾビス(2 −アミジノプロパン)ジヒドロクロライド0.2部を仕込み、撹拌下に1時間窒素置換した。ここにアクリル酸n−ブチル92部、アクリル酸8部、乳化剤として「N−17」1 .5 部(固形分換算)を水70部で乳化したものを60℃で3時間かけて滴下し、60℃で2時間熟成を行った。その後、室温まで冷却し、10重量%アンモニア水によりpH8に調整して、共重合体エマルション(水分散型アクリル系粘着剤)を得た。
【0038】
つぎに、この水分散型アクリル系粘着剤を、ポリエステルフィルム(25μm厚)の片面に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布して、130℃で3分間乾燥し、テープ状絶縁材を作製した。
【0039】
比較例2
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、水30部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、撹拌下1時間窒素置換した。ここに2−エチルヘキシルアクリレート95部、アクリル酸6部および乳化剤として「LA−16」1.5部(固形分換算)を水70部で乳化したものを70℃で3時間かけて滴下し、70℃で2時間熟成を行った。その後、室温まで冷却し、10重量%アンモニア水によりpH8に調整して、共重合体エマルション(水分散型アクリル系粘着剤)を得た。
【0040】
この共重合体エマルションに、その固形分(水分散系共重合体)100部に対し、オキサゾリン基を含有する水溶性架橋剤として(株)日本触媒の商品名「エポクロスWS−700」(オキサゾリン基当量:220g・solid/eq.)0 .1部(固形分換算)を混合して、水分散型アクリル系粘着剤とした。
【0041】
つぎに、この水分散型アクリル系粘着剤を、ポリエステルフィルム(25μm厚)の片面に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布して、130℃で3分間乾燥し、テープ状絶縁材を作製した。
【0042】
以上の実施例1〜3および比較例1〜2で得られた水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率および各テープ状絶縁材の電食係数(絶縁特性)、接着力を測定した。結果を表1に示す。
【0043】
<吸水率>
水分散型アクリル系粘着剤を130℃で1時間の条件下で乾燥し、さらに23℃、相対湿度50%の条件下で48時間保管した後、初期質量(w1)を測定した。その後、60℃、相対湿度95%の加湿条件下で72時間保管し、加湿後の質量(w2)を測定した。上記のw1とw2とを下記の式に当てはめ吸水率を算出した。
吸水率(重量%)={(w2−w1)/w1}×100。
【0044】
<電食係数(絶縁特性)>
電気絶縁用ポリエステルフィルム粘着テープの試験方法が記載されているJIS C−2338に準じて電食係数を測定した。
【0045】
<接着力>
JIS Z−0237に準じてステンレス板にテープ状絶縁材を貼合わせ、剥離力(180度ピール,剥離速度300mm/分)を測定した。
【0046】
【表1】
表1に示す通り、実施例のテープ状絶縁材は、水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率が4重量%以下である。またJIS C−2338で規定される電食係数が0.98以上となっており、本発明のテープ状絶縁材の電食係数が良好であり絶縁特性に優れていることが認められる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、テープ状絶縁材および当該テープ状絶縁物が貼合されている絶縁物品に関する。また本発明は、テープ状絶縁材の粘着剤層を形成しうる、絶縁材用水分散型アクリル系粘着剤に関する。本発明のテープ状絶縁材は、トランス、コイル等の電気部品、電子部品等の層間絶縁や外面絶縁に使用されこれら物品を絶縁物品とする。
【0002】
【従来の技術】
従来、テープ状絶縁材に使用される粘着剤としては、絶縁特性に優れるアクリル系又はゴム系の溶剤型粘着剤が使用されていた。かかるテープ状絶縁材に使用される粘着剤にも、一般の粘着剤の場合と同様に、環境保護、省資源、安全衛生等に対する社会的な要請と規制強化から、脱溶剤が重要な課題となっており、溶剤型粘着剤に代わるものが要望されている。前記溶剤型粘着剤に代わる粘着剤としては、汎用性や応用展開の可能性から、ホットメルト型や硬化型の粘着剤よりも、水系粘着剤が優位であると考えられている。
【0003】
しかしながら、水系粘着剤である水分散型の天然ゴムラテックスまたは合成ゴムラテックスは、水溶性であるイオン性乳化剤を非常に多く含有していることから絶縁特性の低下が問題であった。一方、アクリル系の水分散型粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を乳化剤存在下に重合して得られる重合体エマルションを含むものである。当該重合体は、被着体への接着力を向上させるために、または得られる重合体を後架橋するための架橋点を導入するために、さらには粘着剤の凝集力を高めるために、上記主成分と共重合可能な官能基含有単量体やその他の改質用単量体が添加されている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照。)。しかし、従来知られているアクリル系水分散型粘着剤は加湿条件下に絶縁特性が低下する問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平6−128543号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平6−145623号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、絶縁基材の片面または両面に水系粘着剤層を設けたテープ状絶縁材であって、絶縁特性の良好な粘着剤層を有するものを提供することを目的とする。また本発明は、テープ状絶縁物が貼合されている絶縁物品を提供することを目的とする。さらには本発明は、絶縁特性の良好な水系粘着剤層を形成しうる絶縁材用水分散型アクリル系粘着剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、テープ状絶縁材の水系粘着剤層を形成する水系粘着剤として以下に示すものを用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、絶縁基材の片面または両面に粘着剤層を設けたテープ状絶縁材において、
前記粘着剤層が、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を、乳化剤の存在下で乳化重合して得られた重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成されたものであり、
かつ水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率が4重量%以下であることを特徴とするテープ状絶縁材、に関する。
【0009】
上記本発明では、水系粘着剤として水分散型アクリル系粘着剤を用いており、天然ゴムラテックスまたは合成ゴムラテツクス粘着剤のようにイオン性乳化剤を多量に含有することによる絶縁特性の低下がない。また水分散型アクリル系粘着剤は、重合体エマルションから製造される。この重合体エマルションは、通常、イオンを含有する乳化剤やイオンを含有する開始剤を含んでいる。このため加湿条件下では、水分散型アクリル系粘着剤が水分を吸収すると絶縁特性が低下する。そこで本発明では、水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率を4重量%以下に調整することにより、加湿条件下においても絶縁特性を満足させている。前記吸水率は少ないほど好ましく、3.5重量%以下、さらには3重量%以下となるものがより好ましい。吸水率が4重量%を超えると加湿条件下で電圧を印加した場合に、陽極または陰極に水溶性成分が移動してしまい絶縁特性が低下してしまう。前記吸水率は、詳しくは、実施例に記載の方法により算出される値である。なお、テープ状絶縁材はJIS C−2338に規定される電食係数が0.98以上の絶縁特性を有することが好ましい。前記電食係数は0. 99以上であるのがより好ましい
【0010】
また本発明は、前記テープ状絶縁物が貼合されていることを特徴とする絶縁物品、に関する。
【0011】
さらに本発明は、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を、乳化剤の存在下で乳化重合して得られた重合体エマルションを含有する絶縁材用水分散型アクリル系粘着剤であって、
前記水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率が4重量%以下であることを特徴とする絶縁材用水分散型アクリル系粘着剤、に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のテープ状絶縁材において粘着剤層を形成する水分散型アクリル系粘着剤は、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を、乳化剤の存在下に乳化重合することにより得られる重合体エマルションを含有してなる。
【0013】
アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸またはメタクリル酸と炭素数が4〜12のアルコールとのエステルであって、具体的には、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボロニルなどがあげられ、これらの中からその1種または2種以上が用いられる。これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単量体の主成分として、単量体中、50重量%以上、好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90〜99.5重量%の割合で用いられる。前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合が少ないと、良好な接着性の粘着剤が得られにくい。
【0014】
前記単量体中には、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルのほかに、被着体への接着力を向上させるために、または得られる重合体を後架橋するための架橋点を導入するために、さらには粘着剤の凝集力を高めるために、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な官能基含有単量体やその他の改質用単量体を適量使用してもよい。これら官能基含有単量体等は、前記アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの合計で単量体混合物として合計100重量%になるように用いられる。通常、50重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは0.5〜10重量%の割合で用いられる。
【0015】
官能基含有単量体としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有単量体、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体、(メタ)アクリル酸2−(N,N−ジメチルアミノ)エチルなどのアミノ基含有単量体、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのグリシジル基含有単量体、(メタ)アクリル酸プロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸プロピルジメトキシシラン、(メタ)アクリル酸プロピルトリエトキシシランなどの多官能アルコキシシラン、(メタ)アクリロニトリル、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピロリドンなどがあげられる。これら官能基含有単量体は、その1種を単独でまたは2種以上を混合して使用できる。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な官能基含有単量体としては、カルボキシル基含有単量体が好ましい。カルボキシル基含有単量体のなかでも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
【0016】
得られる水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率を4重量%以下にするためには、官能基含有単量体の使用量が適宜に調整される。官能基含有単量体としてアクリル酸を使用する場合には、前記アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体100重量部中、アクリル酸を5重量部以下、好ましくは4重量部以下、特に好ましくは3重量部以下とするのがよい。なお、アクリル酸の使用量は1重量部以上とするのが好ましい。官能基含有単量体としてメタクリル酸を使用する場合には、前記アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体100重量部中、メタクリル酸を10重量部以下、好ましくは8重量部以下、特に好ましくは5重量部以下とするのがよい。なお、メタクリル酸の使用量は1重量部以上とするのが好ましい。
【0017】
その他の改質用単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピルなどのアルキル基の炭素数が1〜3の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどのアルキル基の炭素数が13〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエンなどがあげられる。また、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の二つ以上の重合性官能基を有するものがあげられる。これら改質用単量体もその1種を単独でまたは2種以上を混合して使用できる。
【0018】
乳化剤としては、乳化重合において用いられるアニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤を特に制限なく使用できる。たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。また、アニオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤のいずれの場合にも、乳化剤中にプロペニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などの反応性官能基を導入したラジカル重合性乳化剤を用いるのが好ましい。ラジカル重合性乳化剤は、たとえば、特開平4−50204号公報、特開平4−53802号公報に記載されている。
【0019】
前記乳化剤の使用量は、特に制限されないが、イオン性乳化剤を多量に含有することによる絶縁特性の低下を抑えるため、前記アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体100重量部に対して、0.3〜5重量部程度とするのが好ましい。乳化剤の使用量が多くなると、得られる重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成される粘着剤層に含まれる水溶性成分量が多くなり、絶縁特性が低下する傾向があるため、乳化剤の使用量は、3重量部以下、さらには2重量以下とするのが好ましい。すなわち、乳化剤量が5重量部を超えると、得られる重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率が4重量%を超えてしまい、絶縁特性が低下する。乳化剤の使用量は好ましくは0.5〜3重量部、特に好ましくは0.7〜2重量部である。
【0020】
前記単量体の乳化重合は、前記乳化剤の存在下、適宜の重合開始剤を用いて、常法により行い、アクリル系重合体の水分散液を調製する。乳化重合は、一般的な一括重合、連続滴下重合、分割滴下重合などにより行う。重合温度は30〜90℃程度で行うことができる。
【0021】
重合開始剤としては、たとえば、2 ,2 ′−アゾビスイソブチロニトリル、2 ,2 ′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2 ′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパ−オキサイドなどの過酸化物系や、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムなどのレドツクス系開始剤などがあげられる。また、乳化重合にあたっては、得られる共重合体の分子量の調整のために、必要に応じて、メルカプタン類などに代表される適宜の連鎖移動剤を使用してもよい。
【0022】
本発明の水分散型アクリル系粘着剤は、上記重合体エマルションを主剤成分とし、これに必要により、架橋剤を含有させることができる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などの一般に用いられているものを使用できる。これら架橋剤は、官能基含有単量体を用いることにより重合体中に導入した官能基と反応して架橋する効果以外に、重合体エマルションまたは共重合体エマルションに含まれるホモポリマー等(たとえば、官能基含有単量体としてカルボキシル基含有単量体を用いた場合には、乳化重合時に、乳化剤のミセル中でカルボキシル基含有単量体が共重合し難く、水中でカルボキシル基含有単量体のホモポリマーまたはホモポリマーに近い共重合ポリマーが得られる)と反応することで水溶性成分の減少効果があり、使用するのが好ましい。
【0023】
架橋剤の使用量は、特に制限されないが、通常、共重合体中に導入した官能基:架橋剤の官能基の当量比で、1:0〜0.5程度、好ましくは1:0.001〜0.3の範囲になるようにするのが好ましい。
【0024】
さらに本発明の水分散型アクリル系粘着剤には、粘着付与成分やその他の各種の添加剤を配合できる。粘着付与成分としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、キシレン系樹脂、エラストマーなどがあげられる。
【0025】
本発明のテープ状絶縁材は、絶縁基材の片面に、前記水分散型アクリル系粘着剤により、粘着剤層を形成したものである。水分散型アクリル系粘着剤の調製にあたっては、その乾燥物の吸水率が4重量%以下になるように調整する。すなわち、水分散型アクリル系粘着剤の調製にあたっては、単量体の主成分であるアルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有単量体や、他の官能基含有単量体や改質用単量体の種類や添加量、乳化剤の種類や添加量、さらには得られる共重合体に加える架橋剤の種類や添加量を適切に調整する。
【0026】
絶縁基材は、特に限定されず、例えばポリエステル、ポリプロピレンなどのプラスチックフィルム、紙、不織布などの他、耐熱性のあるポリイミド、ポリアミド、ポリアセテートなどの単体またはこれらの複合基材、また場合によりこれらの基材にエポキシ樹脂などを含浸させたものなどがあげられる。
【0027】
上記粘着剤層の形成は、上記水分散型アクリル系粘着剤を、絶縁基材上に直接塗布し乾燥することにより形成することもでき、セパレータ上に上記同様に形成した層を絶縁基材上に転写してもよい。本発明のテープ状絶縁材は、絶縁基材の片面または両面に粘着剤層をそれぞれ単層または複数層設けてシート状やテープ状の形態として得られる。
【0028】
本発明のテープ状絶縁材は、各種電子部品用に好適に用いられ、電子部品類に接着されて電子部品類を構成する。かかる電子部品類は特に限定されないが、例えば、トランスの層間絶縁、外装絶縁などがあげられる。
【0029】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下、部は重量部を意味する。
【0030】
実施例1
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、水30部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、撹拌下に1時間窒素置換した。ここにアクリル酸n−ブチル95部、メタクリル酸5部および乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸アンモニウム(第一工業製薬(株)の商品名「ハイテノールN−17」,以下「N−17」と略す)1.5部(固形分換算)を水70部で乳化したものを70℃で3時間かけて滴下し、さらに70℃で2時間熟成を行った。その後、室温まで冷却し、10重量%アンモニア水によりpH8に調整して、共重合体エマルション(水分散型アクリル系粘着剤)を得た。
【0031】
つぎに、この水分散型アクリル系粘着剤を、ポリエステルフィルム(25μm厚)の片面に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布して、130℃で3分間乾燥し、テープ状絶縁材を作製した。
【0032】
実施例2
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、水30部および2 ,2 ′−アゾビス(2 −アミジノプロパン)ジヒドロクロライド0 .2部を仕込み、撹拌下に1時間窒素置換した。ここにアクリル酸n−ブチル98部、アクリル酸2部および乳化剤として「N−17」1 .5 部(固形分換算)を水70部で乳化したものを60℃で3時間かけて滴下し、60℃で2時間熟成を行った。その後、室温まで冷却し、10重量%アンモニア水によりpH8に調整して、共重合体エマルション(水分散型アクリル系粘着剤)を得た。
【0033】
つぎに、この水分散型アクリル系粘着剤を、ポリエステルフィルム(25μm厚)の片面に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布して、130℃で3分間乾燥し、テープ状絶縁材を作製した。
【0034】
実施例3
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、水30部および過硫酸アンモニウム0 .3部を仕込み、撹拌下に1時間窒素置換した。ここに2−エチルヘキシルアクリレート95部、メタクリル酸5部、乳化剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム(第一工業製薬(株)の商品名「ハイテノールLA−16」,以下「LA−16」と略す)1.5部(固形分換算)を水70部で乳化したものを70℃で3時間かけて滴下し、70℃で2時間熟成を行った。その後、室温まで冷却し、10重量%アンモニア水によりpH8に調整して、共重合体エマルションを得た。
【0035】
この共重合体エマルションに、その固形分(水分散系共重合体)100部に対し、オキサゾリン基を含有する水溶性架橋剤として(株)日本触媒の商品名「エポクロスWS−700」(オキサゾリン基当量:220g・solid/eq.)0 .1部(固形分換算)を混合して、水分散型アクリル系粘着剤とした。
【0036】
つぎに、この水分散型アクリル系粘着剤を、ポリエステルフィルム(25μm厚)の片面に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布して、130℃で3分間乾燥し、テープ状絶縁材を作製した。
【0037】
比較例1
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、水30部および2 ,2 ′−アゾビス(2 −アミジノプロパン)ジヒドロクロライド0.2部を仕込み、撹拌下に1時間窒素置換した。ここにアクリル酸n−ブチル92部、アクリル酸8部、乳化剤として「N−17」1 .5 部(固形分換算)を水70部で乳化したものを60℃で3時間かけて滴下し、60℃で2時間熟成を行った。その後、室温まで冷却し、10重量%アンモニア水によりpH8に調整して、共重合体エマルション(水分散型アクリル系粘着剤)を得た。
【0038】
つぎに、この水分散型アクリル系粘着剤を、ポリエステルフィルム(25μm厚)の片面に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布して、130℃で3分間乾燥し、テープ状絶縁材を作製した。
【0039】
比較例2
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器に、水30部および過硫酸アンモニウム0.3部を仕込み、撹拌下1時間窒素置換した。ここに2−エチルヘキシルアクリレート95部、アクリル酸6部および乳化剤として「LA−16」1.5部(固形分換算)を水70部で乳化したものを70℃で3時間かけて滴下し、70℃で2時間熟成を行った。その後、室温まで冷却し、10重量%アンモニア水によりpH8に調整して、共重合体エマルション(水分散型アクリル系粘着剤)を得た。
【0040】
この共重合体エマルションに、その固形分(水分散系共重合体)100部に対し、オキサゾリン基を含有する水溶性架橋剤として(株)日本触媒の商品名「エポクロスWS−700」(オキサゾリン基当量:220g・solid/eq.)0 .1部(固形分換算)を混合して、水分散型アクリル系粘着剤とした。
【0041】
つぎに、この水分散型アクリル系粘着剤を、ポリエステルフィルム(25μm厚)の片面に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布して、130℃で3分間乾燥し、テープ状絶縁材を作製した。
【0042】
以上の実施例1〜3および比較例1〜2で得られた水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率および各テープ状絶縁材の電食係数(絶縁特性)、接着力を測定した。結果を表1に示す。
【0043】
<吸水率>
水分散型アクリル系粘着剤を130℃で1時間の条件下で乾燥し、さらに23℃、相対湿度50%の条件下で48時間保管した後、初期質量(w1)を測定した。その後、60℃、相対湿度95%の加湿条件下で72時間保管し、加湿後の質量(w2)を測定した。上記のw1とw2とを下記の式に当てはめ吸水率を算出した。
吸水率(重量%)={(w2−w1)/w1}×100。
【0044】
<電食係数(絶縁特性)>
電気絶縁用ポリエステルフィルム粘着テープの試験方法が記載されているJIS C−2338に準じて電食係数を測定した。
【0045】
<接着力>
JIS Z−0237に準じてステンレス板にテープ状絶縁材を貼合わせ、剥離力(180度ピール,剥離速度300mm/分)を測定した。
【0046】
【表1】
表1に示す通り、実施例のテープ状絶縁材は、水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率が4重量%以下である。またJIS C−2338で規定される電食係数が0.98以上となっており、本発明のテープ状絶縁材の電食係数が良好であり絶縁特性に優れていることが認められる。
Claims (3)
- 絶縁基材の片面または両面に粘着剤層を設けたテープ状絶縁材において、
前記粘着剤層が、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を、乳化剤の存在下で乳化重合して得られた重合体エマルションを含有する水分散型アクリル系粘着剤により形成されたものであり、
かつ水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率が4重量%以下であることを特徴とするテープ状絶縁材。 - 請求項1記載のテープ状絶縁物が貼合されていることを特徴とする絶縁物品。
- アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とする単量体を、乳化剤の存在下で乳化重合して得られた重合体エマルションを含有する絶縁材用水分散型アクリル系粘着剤であって、
前記水分散型アクリル系粘着剤の乾燥物の吸水率が4重量%以下であることを特徴とする絶縁材用水分散型アクリル系粘着剤。
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