JP2004162867A - 燃料用樹脂チューブ - Google Patents

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正樹 小池
Naoki Kawashima
直樹 川島
Mitsutaka Kondo
充隆 近藤
Kazunari Watanabe
一成 渡辺
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【課題】静電気の帯電の防止や可撓性などの要求を満たすとともに安価な燃料用樹脂チューブを提供する。
【解決手段】燃料用樹脂チューブ10は、高密度ポリエチレンから形成され該高密度ポリエチレンに導電性を付与するための導電材料を含有した第1樹脂材料からなる内層20と、内層20上に積層され、高密度ポリエチレンを有する第2樹脂材料から形成された外層22と、を備えている。内層の肉厚は、0.01mm以上であり、外層の肉厚は、内層の肉厚の5〜200倍であり、記第1樹脂材料は、面抵抗値で10〜1010Ωとなるように導電材料が添加されている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、燃料タンク内に配置される燃料ポンプに使用される燃料用樹脂チューブに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の燃料用樹脂チューブは、燃料タンク内に配置された燃料ポンプに接続され、燃料タンク内の燃料をエンジンに供給するために使用されている。こうした燃料用樹脂チューブには、燃料が流れた際に摩擦抵抗により静電気が発生する。静電気の帯電は、放射状に微少な亀裂やピンホールの発生の起因となるために、これを防止することが求められている。また、燃料タンクは、内圧の変動により膨張収縮する。燃料用樹脂チューブは、このような膨張収縮に伴う形状変化を吸収するために、伸縮性および可撓性を必要としている。
【0003】
このような燃料用樹脂チューブとして、例えば、特開平11−246757号公報(特許文献1参照。)、特開2000−201849号公報(特許文献2参照)が知られている。前者の燃料用樹脂チューブは、導電性のポリアミド(PA11,PA12)からなる内層と、非導電性のポリアミド(PA11,12)からなる外層とを積層することにより構成されている。また、後者の燃料用樹脂チューブは、導電性フッ素樹脂からなる内層と、フッ素樹脂からなる外層とを積層することにより構成されている。
【特許文献1】
特開平11−246757号号公報
【特許文献2】
特開2000−201849号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述の公報の技術では、導電性のポリアミドやフッ素樹脂は、高価であり、コストの低減が求められていた。
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題を解決するものであり、静電気の帯電の防止や可撓性などの要求を満たすとともに安価な燃料用樹脂チューブを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記課題を解決するためになされた本発明は、
中密度または高密度ポリエチレンから形成され、該中密度または高密度ポリエチレンに導電性を付与するための導電材料を含有した第1樹脂材料からなる内層と、
上記内層上に積層され、中密度または高密度ポリエチレンを有する第2樹脂材料から形成された外層と、
を備え、
上記内層の肉厚は、0.01mm以上であり、上記外層の肉厚は、上記内層の肉厚の5〜200倍であり、
上記第1樹脂材料は、面抵抗値で10〜1010Ωとなるように導電材料が添加されていること、を特徴とする。
【0007】
本発明にかかる燃料用樹脂チューブでは、燃料を流す流路を有する内層に、外層が積層されることにより構成されている。内層および外層は、中密度または高密度ポリエチレンからなる第1および第2樹脂材料から形成されているので、従来の技術で説明したポリアミドやフッ素樹脂を用いた場合より、コストダウンを実現することができる。
【0008】
また、内層は、面抵抗値で10〜1010Ωとなるように導電材料が添加されているので、燃料が流れたときに静電気の帯電を防止する。これは、1010Ωより抵抗値が大きいと、静電気の帯電防止の効果が得られないからであり、一方、10Ωを越えると、樹脂チューブの性質が金属に近づき、放電を生じ易いからである。
【0009】
上記内層の肉厚は、0.01mm以上であり、上記外層の肉厚は、上記内層の肉厚の5〜200倍にすることにより、燃料用樹脂チューブとしての可撓性の条件を満たすことができる。すなわち、内層の肉厚が0.01mmを満たさない場合には、導電性を付与するだけの導電材料を混入すると、内層内の導電材料の密度が大きくなりすぎて、外層との密着性能が低下するからである。内層の肉厚は、好ましくは0.05mm以上である。
【0010】
一方、外層の肉厚が上述の範囲以下であると、燃料用樹脂チューブの所定以上の機械的強度が得られないからであり、一方、燃料用樹脂チューブが厚くなりすぎると、可撓性が損なわれ、燃料タンクの膨張収縮に対応できないからである。外層の肉厚は、内層の肉厚に対して3〜10倍であることが好ましい。
【0011】
また、本発明の好適な態様として、内層を構成する第1樹脂材料の曲げ弾性率は、800〜2000MPaである。これは、導電材料としてのカーボンを混入すると、曲げ弾性率が高くなることから、導電率などを考慮して定める。上記第2樹脂材料の曲げ弾性率は、600〜1200MPaをとることができる。曲げ弾性率は、耐圧性および可撓性などの要素を考慮して定められており、つまり、600MPaを下回ると、耐圧性が損なわれるからであり、一方、1200MPaを越えると可撓性が損なわれるからである。
【0012】
上述の可撓性の条件を満たす燃料用樹脂チューブは、燃料タンク内に配置された燃料ポンプに接続され、該燃料タンク内の燃料を供給するために使用された場合において、蛇腹部を備えることにより、燃料タンクの収縮膨張に伴う形状変化に対応することができる。
【0013】
ここで、高密度ポリエチレン(HDPE)とは、金属酸化物、アルキルアルミニウムなどを触媒として、常圧またはわずかな加圧下で重合したポリエチレンで密度0.941〜0.965のもの、中密度ポリエチレン(MDPE)とは、ほぼ同様な方法で密度0.926〜0.940のものをいう。なお、低密度ポリエチレン(LDPE)は、酸素を触媒として1000気圧以上の高圧で重合したポリエチレンであり、密度は0.910〜0.925のものをいう。
【0014】
導電材料として、導電性ウイスカ、導電性カーボンまたは導電性グラファイト粉末のうち1つまたは複数を組み合わせて用いることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の好適な実施例について説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施例にかかる燃料用樹脂チューブを示す断面図である。燃料用樹脂チューブ10は、自動車の燃料タンク内に配置された燃料ポンプに使用されるものであり、耐燃料透過性、可撓性および導電性を有し、以下の構成を有する。
【0017】
燃料用樹脂チューブ10は、蛇腹部12と、この蛇腹部12の両端に接続された接続部14とを有し、これらの全長にわたって、流路20aを構成する内層20と、内層20上に積層された外層22とを備えている。燃料用樹脂チューブ10は、2つの樹脂材料を準備し、共押出機により押し出し、コルゲータ機構を用いることにより製造することができる。すなわち、押出機により2層の樹脂を押し出した後に、蛇腹部12に倣った成形面を有する成形ユニットをループ状に搬送して賦形することにより、蛇腹部12を有する燃料用樹脂チューブ10を製造することができる。
【0018】
次に、燃料用樹脂チューブ10の各層について詳細に説明する。
内層20は、導電性を与えるための層であり、高密度ポリエチレンに導電材料としてカーボンを添加してなる第1樹脂材料から形成されている。導電性カーボンは、面抵抗値で10〜1010Ωとなる導電性を有するように添加されており、特に好ましい範囲が10〜10Ωである。面抵抗値が大きいと、つまり、導電率が小さいと、静電気の帯電防止性能が得られないからであり、一方、導電率が大きすぎると、燃料用樹脂チューブ10からスパークを生じるおそれがあるから、上述の範囲であることが好ましい。なお、この値は、燃料系回路に使用する場合の抵抗体の規格(米国SEA規格)を満たしている。
【0019】
上述の導電率を得るには、導電性カーボンの添加量は、5〜12重量%であることが好ましい。これは、5重量%を下回ると、上述の導電率が得られないからであり、一方、12重量%を越えると、飽和して導電率を高めることができないだけでなく、外層22との密着性が低下して剥離しやすいからである。ここで、導電性カーボンとして、を用いることができ、また、導電性カーボンの代わりに導電ウイスカを用いることができる。
【0020】
一方、外層22は、内層20と同じ高密度ポリエチレンから形成され、導電材料を添加しない非導電材料(第2樹脂材料)から形成されている。
【0021】
図2は燃料用樹脂チューブ10の寸法などを説明する説明図である。本発明の範囲に適合する好適な燃料用樹脂チューブ10の寸法の一例として、燃料用樹脂チューブ10の流路20aの内径D1は、φ6〜8mmであり、内層20の肉厚は、0.1mmである。外層22の肉厚T2は、内層20の肉厚の9倍である0.9mmである。内層20の曲げ弾性率は、1100MPaであり、外層22の曲げ弾性率は、700MPaである。高密度ポリエチレンの曲げ弾性率は、同じ原材料を用いた場合には、導電性カーボンの添加および分散剤などの添加により調製することができる。したがって、内層20は、導電性カーボンを添加しているから、外層22よりも曲げ弾性率が大きい値になっている。
【0022】
上記実施例の燃料用樹脂チューブ10により、以下の作用効果を得ることができる。
【0023】
(1) 上記燃料用樹脂チューブ10では、内層20および外層22は、高密度ポリエチレンからなる第1および第2樹脂材料から形成されているので、従来の技術で説明したポリアミドやフッ素樹脂を用いた場合より、コストダウンを実現することができる。
【0024】
(2) 内層20は、面抵抗値で10〜1010Ωとなるように導電材料が添加されているので、燃料が流れたときに静電気の帯電を防止することができる。
【0025】
(3) 内層20の肉厚は、0.01mm以上であり、上記外層22の肉厚は、上記内層20の肉厚の5〜200倍にすることにより、つまり、曲げ弾性率の大きい内層20を薄くするとともに、曲げ弾性率の小さい外層22を厚くすることにより、燃料用樹脂チューブ10としての可撓性の条件を好適に満たすことができる。しかも、蛇腹部12での伸縮および曲げにより燃料タンクの膨張収縮に対応することができる。
【0026】
(4) 燃料用樹脂チューブは、2層となるように共押出成形することにより、容易に成形することができる。
【0027】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0028】
(1) 上記実施例では、燃料タンクに使用する蛇腹ホースに使用したが、これに限らず、所定の可撓性を有するように肉厚や曲げ弾性率を調製して直管のチューブに使用してもよい。
【0029】
(2) 上記実施例では、蛇腹部を燃料用樹脂チューブのほぼ全長にわたって設けたが、適用部位に応じて一部に設けてもよく、また、燃料タンク内に配置するほか、燃料タンクの外部に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例にかかる燃料用樹脂チューブを示す断面図である。
【図2】燃料用樹脂チューブの寸法などを説明する説明図である。
【符号の説明】
10...燃料用樹脂チューブ
12...蛇腹部
14...接続部
20...内層
20a...流路
22...外層

Claims (4)

  1. 中密度または高密度ポリエチレンから形成され、該中密度または高密度ポリエチレンに導電性を付与するための導電材料を含有した第1樹脂材料からなる内層と、
    上記内層上に積層され、中密度または高密度ポリエチレンを有する第2樹脂材料から形成された外層と、
    を備え、
    上記内層の肉厚は、0.01mm以上であり、上記外層の肉厚は、上記内層の肉厚の5〜200倍であり、
    上記第1樹脂材料は、面抵抗値で10〜1010Ωとなるように導電材料が添加されていること、
    を特徴とする燃料用樹脂チューブ。
  2. 請求項1の燃料用樹脂チューブにおいて、
    上記第1樹脂材料の曲げ弾性率は、800〜2000MPaであり、上記第2樹脂材料の曲げ弾性率は、600〜1200MPaである燃料用樹脂チューブ。
  3. 請求項1または請求項2に記載の燃料用樹脂チューブにおいて、
    上記導電材料は、5〜12重量%のカーボンである燃料用樹脂チューブ。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の燃料用樹脂チューブにおいて、
    燃料タンク内に配置された燃料ポンプに接続され、該燃料タンク内の燃料を供給するために使用され、燃料タンクの収縮膨張に伴って伸縮するように形成された蛇腹部を有する燃料用樹脂チューブ。
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