JP2004161936A - 洗浄用溶剤 - Google Patents
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Abstract
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗浄用溶剤に関し、より詳しくは自動車、鉄道車両、航空機、台所設備、家庭用設備などの金属材料面、プラスチック材料面及びこれらに施された塗装面に付着した油性汚れや水性汚れを洗浄除去するための洗浄用溶剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、油性汚れを洗浄除去するために種々の技術が提案されている。例えば電気・電子部品、精密機械、自動車部品、その他金属材料などの表面に付着した油性汚れの洗浄除去には、非洗浄物を侵食しないなどの理由によりハロゲン系溶剤が広い分野で使用されていた。また、ハロゲン系溶剤に代わる洗浄剤として炭素数1〜7のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪族炭化水素などを主体とした溶剤も提案されている。さらに、各種の塗装工程においては、従来からキシレン、トルエン、酢酸エステルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、エーテル類、又はこれらの配合物であるシンナー類が、被洗浄物表面の洗浄、塗料の希釈、塗装機器・器具・設備の洗浄剤として使用されてきた。
【0003】
しかしながら、ハロゲン系溶剤は環境への蓄積、生態系への悪影響などの問題があることが知られている。また、短鎖アルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル類には、洗浄力が不十分であり、引火点が低く、塗膜の損傷やゴム・プラスチックの損傷を招くという問題があり、脂肪族炭化水素系溶剤においても洗浄力が不十分であり、臭気が強いという問題があった。
【0004】
さらに、シンナー類は油性汚れの除去には好適な溶剤ではあるが、水性汚れを全く除去できず、しかも正常な塗膜自身をも損傷・剥離・膨れ・艶消してしまうという問題があり、さらに、揮発性有機物質(VOC)規制により作業環境に制約があり、引火点がきわめて低いために火気に対して十分な注意が必要であるという点においても問題を有していることが知られている。
【0005】
一方、関連する技術として、特開平2−269799号公報(特許文献1)には、末端に炭素数6以上の炭化水素基を有するポリオキシアルキレン系エーテル型非イオン界面活性剤と末端に炭素数6以上の炭化水素基を有するポリエチレンオキサイドのリン酸エステルとからなる界面活性剤組成物が記載されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明において使用されているリン酸エステルは、末端の炭化水素基の炭素数が6以上のものであり、それ自体は洗浄用溶剤として機能するものではなく、専ら界面活性剤として機能するものであった。また、同文献に記載の発明において使用されているポリオキシアルキレン系エーテルも、末端の炭化水素基の炭素数が6以上のものであり、それ自体は洗浄用溶剤として機能するものではなく、専ら界面活性剤として機能するものであった。そのため、特許文献1に記載のリン酸エステルのみ或いはポリオキシアルキレン系エーテルのみでは十分な洗浄作用を奏するものではなく、被洗浄物の塗装面などの損傷防止という点においても十分なものではなかった。また、同文献に記載のリン酸エステル溶剤とポリオキシアルキレン系エーテルとを混合したもの(界面活性剤組成物)であってもそれ自体では十分な洗浄作用を奏するものではなく、溶剤として多量の水などと混合して用いる必要があったが、その場合であっても油性及び水性汚れの双方に対する十分な洗浄作用と塗装面に対する十分な損傷防止性とをバランスよく高水準に達成できるものではなかった。
【0007】
また、特開平9−143495号公報(特許文献2)には、水溶性グリコールエーテル30〜70重量%、非水溶性パラフィン系炭化水素10〜30重量%、水4〜20重量%、並びにポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル型アニオン界面活性剤又はポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル型アニオン界面活性剤5〜20重量%からなる洗浄剤組成物が記載されている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に記載の発明において使用されているリン酸エステルはいずれも専ら界面活性剤として機能するものであり、すなわち同文献に実質的に記載されているリン酸エステルはいずれも末端の炭化水素基の炭素数が8以上のものであり、それ自体は洗浄用溶剤として機能するものではなかった。そのため、特許文献2に記載のリン酸エステルのみでは十分な洗浄作用を奏するものではなく、被洗浄物の塗装面などの損傷防止という点においても十分なものではなかった。また、同文献に記載の界面活性剤としてのリン酸エステルは、洗浄剤として用いるためには前記複数の溶剤と混合して用いる必要があったが、その場合であっても油性及び水性汚れの双方に対する十分な洗浄作用と塗装面に対する十分な損傷防止性とをバランスよく高水準に達成できるものではなかった。
【0009】
【特許文献1】
特開平2−269799号公報
【特許文献2】
特開平9−143495号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みなされたものであり、引火点が高く、環境や人体に対する安全性にも優れており被洗浄物の塗装面などの損傷を十分に防止しつつ、油性汚れ及び水性汚れの双方の汚れに対して優れた洗浄除去性能を有する洗浄用溶剤を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、末端に炭素数が4以下の短鎖長の炭化水素基を有する特定のリン酸トリエステル化合物は、それ自体で油性汚れ及び水性汚れの双方に対して優れた洗浄作用を有する溶剤として機能し、引火点も高く、被洗浄物の塗装面などの損傷も十分に防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記一般式(1):
【0013】
【化3】
【0014】
[式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数2〜4のアルケニル基、Aは炭素数2〜3のアルキレン基、Bは炭素数2〜3のアルキレン基、aは0〜10の整数、bは1〜30の整数、xは1又は2、をそれぞれ示す。]
で表されるリン酸トリエステル化合物のうちの少なくとも1種、好ましくは下記一般式(2):
【0015】
【化4】
【0016】
[式中、nは1〜4の整数、aは0〜2の整数、bは1〜4の整数、xは1又は2、をそれぞれ示す。]
で表されるリン酸トリエステル化合物のうちの少なくとも1種、を含有することを特徴とする洗浄用溶剤を提供する。
【0017】
また、本発明の洗浄用溶剤は、上記xが1であるリン酸トリエステル化合物と上記xが2であるリン酸トリエステル化合物とを含有することが好ましい。
【0018】
さらに、本発明の洗浄用溶剤は、下記一般式(3):
R2O(DO)nH (3)
[式中、R2は炭素数1〜4の1価の炭化水素基、Dは炭素数2〜4のアルキレン基、nは2〜4の整数、をそれぞれ示す。]
で表されるポリアルキレングリコールモノエーテル化合物を含有していてもよい。
【0019】
さらにまた、本発明の洗浄用溶剤は水を含有していてもよく、その場合の水の含有量は洗浄用溶剤の全質量を基準として1〜20質量%とすることが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0021】
本発明の洗浄用溶剤は、下記一般式(1)で表されるリン酸トリエステル化合物のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0022】
【化5】
【0023】
一般式(1)において、R1は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数2〜4のアルケニル基を表す。R1の炭素数が5以上となると、それ自体が優れた洗浄作用を有する洗浄用溶剤として機能しなくなる。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基又はn−ブチル基の直鎖アルキル基が好ましく、メチル基又はn−ブチル基がより好ましい。炭素数2〜4のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、イソプロペニル基などを挙げることができる。
【0024】
また、A及びBは炭素数2〜3のアルキレン基を表し、エチレン基又はプロピレン基を例示できる。A及びBの炭素数が4以上の場合は、合成面では反応性が悪く、機能性面では疎水性が強く、水性汚れの除去には適さないものとなる。なお、A及びBは、同一であっても、異なっていても良い。
【0025】
前記一般式中のaが10を超えると、親水性が悪く、油性汚れの除去には適さないものとなることから、aは0〜10の整数を表す。なお、aが0の場合には、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数2〜4のアルケニル基がリン原子に直接エーテル結合しているリン酸トリエステル化合物であり、aが1〜10の場合には、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数2〜4のアルケニル基がエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを介してリン原子に結合しているリン酸トリエステル化合物である。また、aが2〜10の場合のオキシアルキレン基(OA基)は、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基の単独、二種の混合のいずれであっても良く、二種の混合の場合には、それぞれの基はブロックに結合していても、ランダムに結合していても良い。なお、aが3以上であると、粘度が高くなる傾向にあることから、0〜2であることが好ましい。
【0026】
前記一般式中のbが30を超えると、粘度が非常に高くなることから、bは1〜30の整数を表し、1〜10の整数であることが好ましく、1〜4の整数であることがより好ましい。なお、オキシアルキレン基(BO基)の数は、用途、機能に応じて好適なHLB値になるよう適宜選択することが好ましい。
【0027】
前記一般式中のxが0であると、親水性が強く、油性汚れの除去には適さないものとなり、他方、xが3であると、親水性の汚れを除去するには適さないものとなることから、xは1又は2を表す。
【0028】
また、本発明の洗浄用溶剤として用いられるリン酸トリエステル化合物は、xが1であるリン酸トリエステル化合物とxが2であるリン酸トリエステル化合物との双方を含有すると、配合のバランスを変えることにより、親水性と疎水性の汚れを好適に除去できるものとなる傾向にあることから好ましい。この場合、xが1であるリン酸トリエステル化合物とxが2であるリン酸トリエステル化合物との含有比率は特に制限はないが、前者:後者=7:3〜3:7(モル比)であることが好ましく、約1:1(モル比)であることが特に好ましい。なお、xが2である場合のリン酸トリエステル化合物の場合、二つの[R1(OA)aO]基は、同一であっても、異なっていても良い。
【0029】
本発明に係るリン酸トリエステル化合物は前述の通りであり、中でも下記一般式(2)で表されるものが好適である。なお、式中、nは1〜4の整数を示し、a、b及びxは前記定義と同義である。
【0030】
【化6】
【0031】
次に、本発明に係るリン酸トリエステル化合物の好適な合成方法について説明する。上記一般式(1)で表されるリン酸トリエステル化合物の合成方法に特に制限はないが、例えば、下記の合成方法により上記リン酸トリエステル化合物を得ることができる。
【0032】
先ず、R1OH(R1は前記定義と同義である。)で表されるアルコール又はR1(OA)aOH(R1、A及びaは前記定義と同義である。)で表される(ポリ)アルキレングリコールモノエーテルに五酸化二リンを反応せしめて酸性リン酸エステル化合物を得る。反応生成物は、下記一般式(4)で表されるリン酸モノエステル及び下記一般式(5)で表されるリン酸ジエステルの混合物として得られるのが一般的であり、例えば、メタノール3モルに五酸化二リン1モルを反応せしめることにより、リン酸モノメチルエステルとリン酸ジエステルとの割合がほぼ1:1である混合物として得られる。なお、反応条件によっては、下記一般式(6)で表されるリン酸トリエステルが副生成することがあり、かかるリン酸トリエステルを含有していても構わないが、その含有量は、5モル%以下であることが好ましい。
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
次いで、上記一般式(4)及び/又は上記一般式(5)で表される酸性リン酸エステル化合物に、触媒として例えばトリフェニルホスフィンを加えた後、酸性リン酸エステル化合物のヒドロキシル基1個当たり1モルのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを付加することにより、上記一般式(1)で表される本発明に係るリン酸トリエステル化合物が得られる。さらに、触媒として例えば水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムを加え、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドをさらに付加することによって、ヒドロキシル基1個に対してエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドが2モル以上付加したリン酸トリエステル化合物を得ることもできる。
【0037】
さらに詳しく上記リン酸トリエステル化合物の合成方法を説明すると、上記一般式(4)で表されるリン酸モノエステル1モルに対して、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを2モル以上反応させ、一方、上記一般式(5)で表されるリン酸ジエステル1モルに対して、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを1モル以上反応させることにより、本発明に好適なリン酸トリエステルが得られる。
【0038】
上記一般式(1)で表されるリン酸トリエステル化合物を合成する際の、上記一般式(4)及び上記一般式(5)で表される酸性リン酸エステル化合物に付加されるエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドの付加モル数は、ヒドロキシル基1個当たり1〜30モルであることが好ましく、一般式(4)のリン酸モノエステルの場合には合計で2〜30モルであることが好ましく、用途、機能に応じて好適なHLB値になるよう適宜選択することが好ましい。
【0039】
本発明に係るリン酸トリエステルは、それ自体が油性汚れと水性汚れの双方に対して優れた洗浄作用を有する洗浄用溶剤として機能する。したがって、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルや炭化水素系の溶媒などと併用しなくてもそれ自体で高い洗浄作用を有している。そして、本発明に係るリン酸トリエステルは蒸気圧が低く引火点も高いことから、本発明の洗浄用溶剤は引火点が高く、環境や人体に対する安全性に優れており、溶剤による被洗浄物の塗装面やゴム・プラスチックの損傷などを十分に防止しつつ洗浄することができる。また、本発明に係るリン酸トリエステルを他の溶媒と併用する場合であっても、他の溶媒の配合割合は従来の洗浄剤と比べて少なくて良いため、正常な塗膜を損傷する問題を十分に防止しつつ、油性汚れと水性汚れの双方を除去することができる。
【0040】
本発明の洗浄用溶剤は、上記一般式(1)で表されるリン酸トリエステル化合物単独からなるものでもよいが、かかるリン酸トリエステル化合物に加えて、下記一般式(3)で表されるポリアルキレングリコールモノエーテル化合物を含むことができる。
R2O(DO)nH (3)
【0041】
なお、式中、R2は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を示し、アルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基又はイソブチル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基又はn−プロピル基であることが特に好ましい。Dは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基であることが好ましく、エチレン基又はプロピレン基であることが特に好ましい。nは2〜4の整数を示し、2であることが好ましい。なお、複数存在するDは、同一であっても、異なっていても良い。
【0042】
上記一般式(3)で表されるポリアルキレングリコールモノエーテル化合物は、炭素数1〜4の低級アルコールの少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキサイドを2〜4モル付加して得られる化合物である。例えば、1種のアルコールに1種のアルキレンオキサイドを付加した化合物、1種のアルコールに2種以上のアルキレンオキサイドを付加した化合物、2種以上のアルコールに1種のアルキレンオキサイドを付加した化合物、2種以上のアルコールに2種以上のアルキレンオキサイドを付加した化合物などが挙げられる。この様なポリアルキレングリコールモノエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、ジブチレングリコールモノメチルエーテル、ジブチレングリコールモノエチルエーテル、ジブチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジブチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジブチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジブチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジブチレングリコールモノアリルエーテル、メチルオキシエチレンオキシプロパノール、エチルオキシエチレンオキシプロパノール、n−プロピルオキシエチレンオキシプロパノール、イソプロピルオキシエチレンオキシプロパノール、n−ブチルオキシエチレンオキシプロパノール、イソブチルオキシエチレンオキシプロパノール、アリルオキシエチレンオキシプロパノール、メチルオキシプロピレンオキシエタノール、エチルオキシプロピレンオキシエタノール、n−プロピルオキシプロピレンオキシエタノール、イソプロピルオキシプロピレンオキシエタノール、n−ブチルオキシプロピレンオキシエタノール、イソブチルオキシプロピレンオキシエタノール、アリルオキシプロピレンオキシエタノールなどを挙げることができる。
【0043】
これらのポリアルキレングリコールモノエーテル化合物は、エチレングリコールモノメチルエーテルやプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの従来より洗浄溶剤として使用されているセロソルブ類、或いはシンナー類などに比べて、はるかに毒性や蒸気圧が低く、引火点が高いことから、作業環境の改善や安全対策に適している。これらのポリアルキレングリコールモノエーテル化合物のうち、引火点が高いこと、洗浄対象物の洗浄性、正常な塗膜の損傷がないこと、毒性が低いこと、適度な乾燥性をもつこと、リン酸トリエステル化合物など他の配合成分との相溶性がよいことなどを考慮して、引火点が60℃以上であるジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテルなどを好適に用いることができる。
【0044】
本発明の洗浄用溶剤における上記一般式(1)で表されるリン酸トリエステル化合物と上記一般式(3)で表されるポリアルキレングリコールモノエーテル化合物との配合割合は、洗浄対象物、洗浄条件などにより、適宜配合量を選択することが好ましい。例えば、非水系の洗浄剤として使用する場合には、リン酸トリエステル化合物5〜95質量部とポリアルキレングリコールモノエーテル化合物95〜5質量部とを配合することが好ましく、リン酸トリエステル化合物50〜95質量部とポリアルキレングリコールモノエーテル化合物5〜50質量部とを配合することがより好ましい。このような配合組成においても引火点が60℃以上であることが好ましく、各種の法規を考慮した場合には、70℃以上であることがより好ましい。
【0045】
また、本発明の洗浄用溶剤は、1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%の水をさらに含有していてもよい。このように水を含有した洗浄用溶剤とすることによって、油性汚れの洗浄性を低下させずに、水性汚れの洗浄性をより向上させることができる傾向にある。なお、水の配合割合は、洗浄対象物及び洗浄条件などにより上記範囲内で適宜選択することが好ましい。
【0046】
本発明の洗浄用溶剤が、上記一般式(1)で表されるリン酸トリエステル化合物と上記一般式(3)で表されるポリアルキレングリコールモノエーテルと水とを含有する場合には、例えば、リン酸トリエステル化合物5〜95質量部とポリアルキレングリコールモノエーテル化合物95〜5質量部との配合物を、洗浄対象物及び洗浄条件などにより上記範囲内の適量の水に上記配合物を希釈して使用するのが好ましく、特に、リン酸トリエステル化合物50〜95質量部とポリアルキレングリコールモノエーテル化合物50〜5質量部との配合物を、洗浄対象物及び洗浄条件などにより上記範囲内の適量の水に上記配合物を希釈して使用するのがより好ましい。
【0047】
なお、本発明の洗浄用溶剤においては、洗浄対象物及び洗浄条件などに応じてさらに界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、従来公知のアニオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤が挙げられ、非イオン性界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸塩などの硫酸エステル塩型界面活性剤、ジオクチルスルホコハク酸塩などのスルホン酸塩型界面活性剤、モノラウリルリン酸エステル塩やジラウリルリン酸エステル塩などのリン酸エステル塩型界面活性剤などが挙げられ、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO重合度:10〜20)、ソフタノール系界面活性剤(商品名、日本触媒(株)製)などが挙げられる。なお、このような界面活性剤の含有量は、洗浄用溶剤中2質量%以下であることが好ましい。
【0048】
さらに、本発明の洗浄用溶剤は、洗浄用溶媒に一般的に使用される従来公知の他の成分(例えば、炭化水素系溶剤)を含有していてよい。なお、このような他の成分の含有量は、洗浄用溶剤中10質量%以下であることが好ましい。
【0049】
【実施例】
以下、本発明の実施例についてさらに詳細な説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
反応容器にメタノール3モルを入れ、その中に30℃以下で五酸化二リン1モルを加え、添加終了後50℃で4時間反応せしめて、リン酸モノメチルエステルとリン酸ジメチルエステルとの混合物(モル比=1:1)を得た。この混合物にトリフェニルホスフィン0.5ミリモルを加えた後、130℃でエチレンオキサイド3.5モルを導入し、表1に表す構造を有する酸価0のリン酸トリエステル化合物(リン酸トリエステル化合物1)のみからなる洗浄用溶剤を得た。
【0051】
(実施例2)
反応容器にn−ブタノール3モルを入れ、その中に30℃以下で五酸化二リン1モルを加え、添加終了後80℃で4時間反応せしめて、リン酸モノ(n−ブチル)エステルとリン酸ジ(n−ブチル)エステルとの混合物(モル比=1:1)を得た。この混合物にトリフェニルホスフィン0.5ミリモルを加えた後、130℃でエチレンオキサイド3.5モルを導入し、表1に表す構造を有する酸価0のリン酸トリエステル化合物(リン酸トリエステル化合物2)のみからなる洗浄用溶剤を得た。
【0052】
(実施例3)
反応容器にブチルセロソルブ3モルを入れ、その中に30℃以下で五酸化二リン1モルを加え、添加終了後80℃で4時間反応せしめて、リン酸モノブトキシエチルエステルとリン酸ジブトキシエチルエステルとの混合物(モル比=1:1)を得た。この混合物にトリフェニルホスフィン0.5ミリモルを加えた後、130℃でエチレンオキサイド3.5モルを導入し、表1に表す構造を有する酸価0のリン酸トリエステル化合物(リン酸トリエステル化合物3)のみからなる洗浄用溶剤を得た。
【0053】
(実施例4)
実施例1で得られたリン酸トリエステル化合物(リン酸トリエステル化合物1)90質量部に対して水10質量部を加えて、水系の洗浄用溶剤を得た。
【0054】
(実施例5)
実施例1で得られたリン酸トリエステル化合物(リン酸トリエステル化合物1)70質量部に対してジプロピレングリコールモノメチルエーテル30質量部を加えて、非水系の洗浄用溶剤を得た。
【0055】
(実施例6)
実施例2で得られたリン酸トリエステル化合物(リン酸トリエステル化合物2)40質量部に対してジプロピレングリコールモノメチルエーテル60部を加えて、非水系の洗浄用溶剤を得た。
【0056】
(実施例7)
実施例6で得られた非水系の洗浄用溶剤90質量部に対して水10質量部を加えて、水系の洗浄用溶剤を得た。
【0057】
(比較例1)
ラッカーシンナー溶剤(大伸化学(株)製、510ラッカーシンナー)をそのまま洗浄用溶剤として使用した。
【0058】
(比較例2)
反応容器に2−エチルヘキサノール3モルを入れ、その中に30℃以下で五酸化二リン1モルを加え、添加終了後80℃で4時間反応せしめて、リン酸モノ(2−エテルヘキシル)エステルとリン酸ジ(2−エテルヘキシル)エステルとの混合物(モル比1:1)を得た。この混合物にトリフェニルホスフィン0.5ミリモルを加えた後、130℃でエチレンオキサイド3.5モルを導入し、酸価0のリン酸トリエステル化合物を得た。
【0059】
さらに、水酸化ナトリウム1ミリモルを加え、130℃でエチレンオキサイド7モルを導入して、表1に表す構造を有するリン酸トリエステル化合物(リン酸トリエステル化合物4)のみからなる洗浄用溶剤を得た。
【0060】
(比較例3)
比較例2で得られたリン酸トリエステル化合物(リン酸トリエステル化合物4)50質量部に対してジプロピレングリコールモノメチルエーテル50質量部を加えて、非水系の洗浄用溶剤を得た。
【0061】
【表1】
【0062】
(洗浄性の評価)
(1)汚れテストパネルの作製
ステンレスパネルを表面研磨した後、トルエンとアセトンで脱脂洗浄して、乾燥させた。自動車用に使用される赤色アクリル塗料(日本油脂BASFコーティングス(株)製、ベルコートNo.6000)を使用し、フィルムコーター(PL−1210 FILMCOATER:TESTER SANGYO CO.,Ltd製)を使用して上記ステンレスパネルを塗装した。なお、塗装膜厚は30〜50μmとした。塗装後、140℃で20分間乾燥し、テスト用塗装パネルを作製した。
【0063】
次いで、テスト用塗装パネルに、下記の油性及び水性汚れ成分をフィルムコーター(PL−1210 FILMCOATER:TESTER SANGYO CO.,Ltd製)を使用して均一に塗布(使用コートバー:26μm、スピード目盛り:2)し、80℃で30分間乾燥して、汚れテストパネルを作製した。
【0064】
なお、油性汚れ成分としては、グリース(万能グリース リチウム石鹸基グリース:エーゼット(株)製)とエクソールD−40(エクソン化学(株)製)を1:1に配合し、その中にカーボンを0.1質量%添加して均一に混合したものを用いた。一方、水性汚れ成分としては、トマトジュースと卵を1:1に配合し、その中にカーボンを0.1質量%添加して均一に混合したものを用いた。
【0065】
(2)洗浄方法
500mLのガラスビーカーに実施例1〜7及び比較例1〜3で得られた洗浄用溶剤を300mL入れ、この中に汚れテストパネルを浸漬し、150rpmで5分間撹拌した。その後、取り出して、80℃で30分間乾燥した。
【0066】
(3)評価方法
洗浄したテストパネルの汚れの除去度合いを、下記の基準に従い目視で評価した。得られた結果を表2及び3に示す。
◎:汚れが100%除去されている;
○:汚れの除去度合いが95%以上100%未満である;
△:汚れの除去度合いが50%以上95%未満である;
×:汚れの除去度合いが、50%未満である。
【0067】
(塗膜剥離性の評価)
洗浄性の評価を行ったテストパネルの塗膜剥離及び塗膜表面の膨潤(艶の度合い)を、下記の基準に従い目視で評価した。得られた結果を表2及び3に示す。
○:剥離がなく艶も維持されている;
△:剥離はないが艶を失っている;
×:剥離している。
【0068】
(塗装工具の洗浄性の評価)
(1)試料の作製
ステンレス製ナット(内径10mm×長さ100mm)を、トルエンとアセトンで脱脂洗浄し乾燥させた。自動車用に使用される赤色アクリル塗料液(日本油脂BASFコーティングス(株)製、ベルコートNo.6000)に、このナットを浸漬した後、取り出して10分間風乾し、これを試験試料とした。
【0069】
(2)洗浄方法
上記試験試料を実施例1〜7及び比較例1〜3で得られた洗浄用溶剤50mLに浸漬し、150rpmで10分間洗浄用溶剤を撹拌した。その後、取り出し風乾した。
【0070】
(3)評価方法
洗浄した試験試料からの塗料の脱落性を、以下の基準に従い目視で評価した。得られた結果を表2及び3に示す。
◎:汚れが100%除去されている;
○:汚れの除去度合いが95%以上100%未満である;
△:汚れの除去度合いが50%以上95%未満である;
×:汚れの除去度合いが50%未満である。
【0071】
(引火点の評価)
JIS K 2265(1996)に記載の「原油及び石油製品 引火点試験方法」に準じて引火点を測定した。測定結果を表2及び3に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
表2及び3に示した結果から明らかなように、実施例1〜3の末端に炭素数が4以下の短鎖長の炭化水素基を有するリン酸トリエステル化合物は、それ自体で洗浄用溶剤として機能し、被洗浄物の塗装面などを痛めずに高い洗浄性と高い引火点を有することが確認された。また、実施例5及び6のポリオキシアルキレンアルキルエーテルをさらに含有する洗浄用溶剤も、被洗浄物の塗装面などを痛めずに高い洗浄性と高い引火点を有することが確認された。さらに、実施例4及び7の水をさらに含有する水系の洗浄用溶剤は、上記特性に加え、水性汚れに対しても極めて優れた洗浄性を有することが確認された。
【0075】
一方、比較例1のラッカーからなる洗浄用溶剤は、実施例1〜7の洗浄用溶剤と比較して水性汚れに対する洗浄性や塗膜剥離性に問題があることが確認された。また、炭素数の大きな2−エチルヘキシル基を有する比較例2のリン酸トリエステルからなる洗浄用溶剤も同様に、実施例1〜7の洗浄用溶剤と比較して水性汚れに対する洗浄性や塗膜剥離性の問題点に加えて塗装工具に対する洗浄性に対しても問題があることが確認された。さらに、比較例3のリン酸トリエステルとポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる洗浄用溶剤も水性汚れの除去性や塗装工具洗浄性に劣り、油性汚れの除去性にもやや問題があることが確認された。
【0076】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、引火点が高く、環境や人体に対する安全性にも優れており被洗浄物の塗装面などの損傷を十分に防止しつつ、油性汚れ及び水性汚れの双方の汚れに対して優れた洗浄除去性能を有する洗浄用溶剤を提供することが可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、洗浄用溶剤に関し、より詳しくは自動車、鉄道車両、航空機、台所設備、家庭用設備などの金属材料面、プラスチック材料面及びこれらに施された塗装面に付着した油性汚れや水性汚れを洗浄除去するための洗浄用溶剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、油性汚れを洗浄除去するために種々の技術が提案されている。例えば電気・電子部品、精密機械、自動車部品、その他金属材料などの表面に付着した油性汚れの洗浄除去には、非洗浄物を侵食しないなどの理由によりハロゲン系溶剤が広い分野で使用されていた。また、ハロゲン系溶剤に代わる洗浄剤として炭素数1〜7のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪族炭化水素などを主体とした溶剤も提案されている。さらに、各種の塗装工程においては、従来からキシレン、トルエン、酢酸エステルなどのエステル類、アセトンなどのケトン類、エーテル類、又はこれらの配合物であるシンナー類が、被洗浄物表面の洗浄、塗料の希釈、塗装機器・器具・設備の洗浄剤として使用されてきた。
【0003】
しかしながら、ハロゲン系溶剤は環境への蓄積、生態系への悪影響などの問題があることが知られている。また、短鎖アルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル類には、洗浄力が不十分であり、引火点が低く、塗膜の損傷やゴム・プラスチックの損傷を招くという問題があり、脂肪族炭化水素系溶剤においても洗浄力が不十分であり、臭気が強いという問題があった。
【0004】
さらに、シンナー類は油性汚れの除去には好適な溶剤ではあるが、水性汚れを全く除去できず、しかも正常な塗膜自身をも損傷・剥離・膨れ・艶消してしまうという問題があり、さらに、揮発性有機物質(VOC)規制により作業環境に制約があり、引火点がきわめて低いために火気に対して十分な注意が必要であるという点においても問題を有していることが知られている。
【0005】
一方、関連する技術として、特開平2−269799号公報(特許文献1)には、末端に炭素数6以上の炭化水素基を有するポリオキシアルキレン系エーテル型非イオン界面活性剤と末端に炭素数6以上の炭化水素基を有するポリエチレンオキサイドのリン酸エステルとからなる界面活性剤組成物が記載されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の発明において使用されているリン酸エステルは、末端の炭化水素基の炭素数が6以上のものであり、それ自体は洗浄用溶剤として機能するものではなく、専ら界面活性剤として機能するものであった。また、同文献に記載の発明において使用されているポリオキシアルキレン系エーテルも、末端の炭化水素基の炭素数が6以上のものであり、それ自体は洗浄用溶剤として機能するものではなく、専ら界面活性剤として機能するものであった。そのため、特許文献1に記載のリン酸エステルのみ或いはポリオキシアルキレン系エーテルのみでは十分な洗浄作用を奏するものではなく、被洗浄物の塗装面などの損傷防止という点においても十分なものではなかった。また、同文献に記載のリン酸エステル溶剤とポリオキシアルキレン系エーテルとを混合したもの(界面活性剤組成物)であってもそれ自体では十分な洗浄作用を奏するものではなく、溶剤として多量の水などと混合して用いる必要があったが、その場合であっても油性及び水性汚れの双方に対する十分な洗浄作用と塗装面に対する十分な損傷防止性とをバランスよく高水準に達成できるものではなかった。
【0007】
また、特開平9−143495号公報(特許文献2)には、水溶性グリコールエーテル30〜70重量%、非水溶性パラフィン系炭化水素10〜30重量%、水4〜20重量%、並びにポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル型アニオン界面活性剤又はポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル型アニオン界面活性剤5〜20重量%からなる洗浄剤組成物が記載されている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に記載の発明において使用されているリン酸エステルはいずれも専ら界面活性剤として機能するものであり、すなわち同文献に実質的に記載されているリン酸エステルはいずれも末端の炭化水素基の炭素数が8以上のものであり、それ自体は洗浄用溶剤として機能するものではなかった。そのため、特許文献2に記載のリン酸エステルのみでは十分な洗浄作用を奏するものではなく、被洗浄物の塗装面などの損傷防止という点においても十分なものではなかった。また、同文献に記載の界面活性剤としてのリン酸エステルは、洗浄剤として用いるためには前記複数の溶剤と混合して用いる必要があったが、その場合であっても油性及び水性汚れの双方に対する十分な洗浄作用と塗装面に対する十分な損傷防止性とをバランスよく高水準に達成できるものではなかった。
【0009】
【特許文献1】
特開平2−269799号公報
【特許文献2】
特開平9−143495号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みなされたものであり、引火点が高く、環境や人体に対する安全性にも優れており被洗浄物の塗装面などの損傷を十分に防止しつつ、油性汚れ及び水性汚れの双方の汚れに対して優れた洗浄除去性能を有する洗浄用溶剤を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、末端に炭素数が4以下の短鎖長の炭化水素基を有する特定のリン酸トリエステル化合物は、それ自体で油性汚れ及び水性汚れの双方に対して優れた洗浄作用を有する溶剤として機能し、引火点も高く、被洗浄物の塗装面などの損傷も十分に防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記一般式(1):
【0013】
【化3】
【0014】
[式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数2〜4のアルケニル基、Aは炭素数2〜3のアルキレン基、Bは炭素数2〜3のアルキレン基、aは0〜10の整数、bは1〜30の整数、xは1又は2、をそれぞれ示す。]
で表されるリン酸トリエステル化合物のうちの少なくとも1種、好ましくは下記一般式(2):
【0015】
【化4】
【0016】
[式中、nは1〜4の整数、aは0〜2の整数、bは1〜4の整数、xは1又は2、をそれぞれ示す。]
で表されるリン酸トリエステル化合物のうちの少なくとも1種、を含有することを特徴とする洗浄用溶剤を提供する。
【0017】
また、本発明の洗浄用溶剤は、上記xが1であるリン酸トリエステル化合物と上記xが2であるリン酸トリエステル化合物とを含有することが好ましい。
【0018】
さらに、本発明の洗浄用溶剤は、下記一般式(3):
R2O(DO)nH (3)
[式中、R2は炭素数1〜4の1価の炭化水素基、Dは炭素数2〜4のアルキレン基、nは2〜4の整数、をそれぞれ示す。]
で表されるポリアルキレングリコールモノエーテル化合物を含有していてもよい。
【0019】
さらにまた、本発明の洗浄用溶剤は水を含有していてもよく、その場合の水の含有量は洗浄用溶剤の全質量を基準として1〜20質量%とすることが好ましい。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0021】
本発明の洗浄用溶剤は、下記一般式(1)で表されるリン酸トリエステル化合物のうちの少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0022】
【化5】
【0023】
一般式(1)において、R1は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数2〜4のアルケニル基を表す。R1の炭素数が5以上となると、それ自体が優れた洗浄作用を有する洗浄用溶剤として機能しなくなる。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基などが挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基又はn−ブチル基の直鎖アルキル基が好ましく、メチル基又はn−ブチル基がより好ましい。炭素数2〜4のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、イソプロペニル基などを挙げることができる。
【0024】
また、A及びBは炭素数2〜3のアルキレン基を表し、エチレン基又はプロピレン基を例示できる。A及びBの炭素数が4以上の場合は、合成面では反応性が悪く、機能性面では疎水性が強く、水性汚れの除去には適さないものとなる。なお、A及びBは、同一であっても、異なっていても良い。
【0025】
前記一般式中のaが10を超えると、親水性が悪く、油性汚れの除去には適さないものとなることから、aは0〜10の整数を表す。なお、aが0の場合には、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数2〜4のアルケニル基がリン原子に直接エーテル結合しているリン酸トリエステル化合物であり、aが1〜10の場合には、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数2〜4のアルケニル基がエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを介してリン原子に結合しているリン酸トリエステル化合物である。また、aが2〜10の場合のオキシアルキレン基(OA基)は、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基の単独、二種の混合のいずれであっても良く、二種の混合の場合には、それぞれの基はブロックに結合していても、ランダムに結合していても良い。なお、aが3以上であると、粘度が高くなる傾向にあることから、0〜2であることが好ましい。
【0026】
前記一般式中のbが30を超えると、粘度が非常に高くなることから、bは1〜30の整数を表し、1〜10の整数であることが好ましく、1〜4の整数であることがより好ましい。なお、オキシアルキレン基(BO基)の数は、用途、機能に応じて好適なHLB値になるよう適宜選択することが好ましい。
【0027】
前記一般式中のxが0であると、親水性が強く、油性汚れの除去には適さないものとなり、他方、xが3であると、親水性の汚れを除去するには適さないものとなることから、xは1又は2を表す。
【0028】
また、本発明の洗浄用溶剤として用いられるリン酸トリエステル化合物は、xが1であるリン酸トリエステル化合物とxが2であるリン酸トリエステル化合物との双方を含有すると、配合のバランスを変えることにより、親水性と疎水性の汚れを好適に除去できるものとなる傾向にあることから好ましい。この場合、xが1であるリン酸トリエステル化合物とxが2であるリン酸トリエステル化合物との含有比率は特に制限はないが、前者:後者=7:3〜3:7(モル比)であることが好ましく、約1:1(モル比)であることが特に好ましい。なお、xが2である場合のリン酸トリエステル化合物の場合、二つの[R1(OA)aO]基は、同一であっても、異なっていても良い。
【0029】
本発明に係るリン酸トリエステル化合物は前述の通りであり、中でも下記一般式(2)で表されるものが好適である。なお、式中、nは1〜4の整数を示し、a、b及びxは前記定義と同義である。
【0030】
【化6】
【0031】
次に、本発明に係るリン酸トリエステル化合物の好適な合成方法について説明する。上記一般式(1)で表されるリン酸トリエステル化合物の合成方法に特に制限はないが、例えば、下記の合成方法により上記リン酸トリエステル化合物を得ることができる。
【0032】
先ず、R1OH(R1は前記定義と同義である。)で表されるアルコール又はR1(OA)aOH(R1、A及びaは前記定義と同義である。)で表される(ポリ)アルキレングリコールモノエーテルに五酸化二リンを反応せしめて酸性リン酸エステル化合物を得る。反応生成物は、下記一般式(4)で表されるリン酸モノエステル及び下記一般式(5)で表されるリン酸ジエステルの混合物として得られるのが一般的であり、例えば、メタノール3モルに五酸化二リン1モルを反応せしめることにより、リン酸モノメチルエステルとリン酸ジエステルとの割合がほぼ1:1である混合物として得られる。なお、反応条件によっては、下記一般式(6)で表されるリン酸トリエステルが副生成することがあり、かかるリン酸トリエステルを含有していても構わないが、その含有量は、5モル%以下であることが好ましい。
【0033】
【化7】
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
次いで、上記一般式(4)及び/又は上記一般式(5)で表される酸性リン酸エステル化合物に、触媒として例えばトリフェニルホスフィンを加えた後、酸性リン酸エステル化合物のヒドロキシル基1個当たり1モルのエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを付加することにより、上記一般式(1)で表される本発明に係るリン酸トリエステル化合物が得られる。さらに、触媒として例えば水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムを加え、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドをさらに付加することによって、ヒドロキシル基1個に対してエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドが2モル以上付加したリン酸トリエステル化合物を得ることもできる。
【0037】
さらに詳しく上記リン酸トリエステル化合物の合成方法を説明すると、上記一般式(4)で表されるリン酸モノエステル1モルに対して、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを2モル以上反応させ、一方、上記一般式(5)で表されるリン酸ジエステル1モルに対して、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドを1モル以上反応させることにより、本発明に好適なリン酸トリエステルが得られる。
【0038】
上記一般式(1)で表されるリン酸トリエステル化合物を合成する際の、上記一般式(4)及び上記一般式(5)で表される酸性リン酸エステル化合物に付加されるエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドの付加モル数は、ヒドロキシル基1個当たり1〜30モルであることが好ましく、一般式(4)のリン酸モノエステルの場合には合計で2〜30モルであることが好ましく、用途、機能に応じて好適なHLB値になるよう適宜選択することが好ましい。
【0039】
本発明に係るリン酸トリエステルは、それ自体が油性汚れと水性汚れの双方に対して優れた洗浄作用を有する洗浄用溶剤として機能する。したがって、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルや炭化水素系の溶媒などと併用しなくてもそれ自体で高い洗浄作用を有している。そして、本発明に係るリン酸トリエステルは蒸気圧が低く引火点も高いことから、本発明の洗浄用溶剤は引火点が高く、環境や人体に対する安全性に優れており、溶剤による被洗浄物の塗装面やゴム・プラスチックの損傷などを十分に防止しつつ洗浄することができる。また、本発明に係るリン酸トリエステルを他の溶媒と併用する場合であっても、他の溶媒の配合割合は従来の洗浄剤と比べて少なくて良いため、正常な塗膜を損傷する問題を十分に防止しつつ、油性汚れと水性汚れの双方を除去することができる。
【0040】
本発明の洗浄用溶剤は、上記一般式(1)で表されるリン酸トリエステル化合物単独からなるものでもよいが、かかるリン酸トリエステル化合物に加えて、下記一般式(3)で表されるポリアルキレングリコールモノエーテル化合物を含むことができる。
R2O(DO)nH (3)
【0041】
なお、式中、R2は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を示し、アルキル基であることが好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基又はイソブチル基であることがより好ましく、メチル基、エチル基又はn−プロピル基であることが特に好ましい。Dは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基であることが好ましく、エチレン基又はプロピレン基であることが特に好ましい。nは2〜4の整数を示し、2であることが好ましい。なお、複数存在するDは、同一であっても、異なっていても良い。
【0042】
上記一般式(3)で表されるポリアルキレングリコールモノエーテル化合物は、炭素数1〜4の低級アルコールの少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドから選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキサイドを2〜4モル付加して得られる化合物である。例えば、1種のアルコールに1種のアルキレンオキサイドを付加した化合物、1種のアルコールに2種以上のアルキレンオキサイドを付加した化合物、2種以上のアルコールに1種のアルキレンオキサイドを付加した化合物、2種以上のアルコールに2種以上のアルキレンオキサイドを付加した化合物などが挙げられる。この様なポリアルキレングリコールモノエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、ジブチレングリコールモノメチルエーテル、ジブチレングリコールモノエチルエーテル、ジブチレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジブチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジブチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジブチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジブチレングリコールモノアリルエーテル、メチルオキシエチレンオキシプロパノール、エチルオキシエチレンオキシプロパノール、n−プロピルオキシエチレンオキシプロパノール、イソプロピルオキシエチレンオキシプロパノール、n−ブチルオキシエチレンオキシプロパノール、イソブチルオキシエチレンオキシプロパノール、アリルオキシエチレンオキシプロパノール、メチルオキシプロピレンオキシエタノール、エチルオキシプロピレンオキシエタノール、n−プロピルオキシプロピレンオキシエタノール、イソプロピルオキシプロピレンオキシエタノール、n−ブチルオキシプロピレンオキシエタノール、イソブチルオキシプロピレンオキシエタノール、アリルオキシプロピレンオキシエタノールなどを挙げることができる。
【0043】
これらのポリアルキレングリコールモノエーテル化合物は、エチレングリコールモノメチルエーテルやプロピレングリコールモノメチルエーテルなどの従来より洗浄溶剤として使用されているセロソルブ類、或いはシンナー類などに比べて、はるかに毒性や蒸気圧が低く、引火点が高いことから、作業環境の改善や安全対策に適している。これらのポリアルキレングリコールモノエーテル化合物のうち、引火点が高いこと、洗浄対象物の洗浄性、正常な塗膜の損傷がないこと、毒性が低いこと、適度な乾燥性をもつこと、リン酸トリエステル化合物など他の配合成分との相溶性がよいことなどを考慮して、引火点が60℃以上であるジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテルなどを好適に用いることができる。
【0044】
本発明の洗浄用溶剤における上記一般式(1)で表されるリン酸トリエステル化合物と上記一般式(3)で表されるポリアルキレングリコールモノエーテル化合物との配合割合は、洗浄対象物、洗浄条件などにより、適宜配合量を選択することが好ましい。例えば、非水系の洗浄剤として使用する場合には、リン酸トリエステル化合物5〜95質量部とポリアルキレングリコールモノエーテル化合物95〜5質量部とを配合することが好ましく、リン酸トリエステル化合物50〜95質量部とポリアルキレングリコールモノエーテル化合物5〜50質量部とを配合することがより好ましい。このような配合組成においても引火点が60℃以上であることが好ましく、各種の法規を考慮した場合には、70℃以上であることがより好ましい。
【0045】
また、本発明の洗浄用溶剤は、1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%の水をさらに含有していてもよい。このように水を含有した洗浄用溶剤とすることによって、油性汚れの洗浄性を低下させずに、水性汚れの洗浄性をより向上させることができる傾向にある。なお、水の配合割合は、洗浄対象物及び洗浄条件などにより上記範囲内で適宜選択することが好ましい。
【0046】
本発明の洗浄用溶剤が、上記一般式(1)で表されるリン酸トリエステル化合物と上記一般式(3)で表されるポリアルキレングリコールモノエーテルと水とを含有する場合には、例えば、リン酸トリエステル化合物5〜95質量部とポリアルキレングリコールモノエーテル化合物95〜5質量部との配合物を、洗浄対象物及び洗浄条件などにより上記範囲内の適量の水に上記配合物を希釈して使用するのが好ましく、特に、リン酸トリエステル化合物50〜95質量部とポリアルキレングリコールモノエーテル化合物50〜5質量部との配合物を、洗浄対象物及び洗浄条件などにより上記範囲内の適量の水に上記配合物を希釈して使用するのがより好ましい。
【0047】
なお、本発明の洗浄用溶剤においては、洗浄対象物及び洗浄条件などに応じてさらに界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、従来公知のアニオン性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤が挙げられ、非イオン性界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸塩などの硫酸エステル塩型界面活性剤、ジオクチルスルホコハク酸塩などのスルホン酸塩型界面活性剤、モノラウリルリン酸エステル塩やジラウリルリン酸エステル塩などのリン酸エステル塩型界面活性剤などが挙げられ、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO重合度:10〜20)、ソフタノール系界面活性剤(商品名、日本触媒(株)製)などが挙げられる。なお、このような界面活性剤の含有量は、洗浄用溶剤中2質量%以下であることが好ましい。
【0048】
さらに、本発明の洗浄用溶剤は、洗浄用溶媒に一般的に使用される従来公知の他の成分(例えば、炭化水素系溶剤)を含有していてよい。なお、このような他の成分の含有量は、洗浄用溶剤中10質量%以下であることが好ましい。
【0049】
【実施例】
以下、本発明の実施例についてさらに詳細な説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
反応容器にメタノール3モルを入れ、その中に30℃以下で五酸化二リン1モルを加え、添加終了後50℃で4時間反応せしめて、リン酸モノメチルエステルとリン酸ジメチルエステルとの混合物(モル比=1:1)を得た。この混合物にトリフェニルホスフィン0.5ミリモルを加えた後、130℃でエチレンオキサイド3.5モルを導入し、表1に表す構造を有する酸価0のリン酸トリエステル化合物(リン酸トリエステル化合物1)のみからなる洗浄用溶剤を得た。
【0051】
(実施例2)
反応容器にn−ブタノール3モルを入れ、その中に30℃以下で五酸化二リン1モルを加え、添加終了後80℃で4時間反応せしめて、リン酸モノ(n−ブチル)エステルとリン酸ジ(n−ブチル)エステルとの混合物(モル比=1:1)を得た。この混合物にトリフェニルホスフィン0.5ミリモルを加えた後、130℃でエチレンオキサイド3.5モルを導入し、表1に表す構造を有する酸価0のリン酸トリエステル化合物(リン酸トリエステル化合物2)のみからなる洗浄用溶剤を得た。
【0052】
(実施例3)
反応容器にブチルセロソルブ3モルを入れ、その中に30℃以下で五酸化二リン1モルを加え、添加終了後80℃で4時間反応せしめて、リン酸モノブトキシエチルエステルとリン酸ジブトキシエチルエステルとの混合物(モル比=1:1)を得た。この混合物にトリフェニルホスフィン0.5ミリモルを加えた後、130℃でエチレンオキサイド3.5モルを導入し、表1に表す構造を有する酸価0のリン酸トリエステル化合物(リン酸トリエステル化合物3)のみからなる洗浄用溶剤を得た。
【0053】
(実施例4)
実施例1で得られたリン酸トリエステル化合物(リン酸トリエステル化合物1)90質量部に対して水10質量部を加えて、水系の洗浄用溶剤を得た。
【0054】
(実施例5)
実施例1で得られたリン酸トリエステル化合物(リン酸トリエステル化合物1)70質量部に対してジプロピレングリコールモノメチルエーテル30質量部を加えて、非水系の洗浄用溶剤を得た。
【0055】
(実施例6)
実施例2で得られたリン酸トリエステル化合物(リン酸トリエステル化合物2)40質量部に対してジプロピレングリコールモノメチルエーテル60部を加えて、非水系の洗浄用溶剤を得た。
【0056】
(実施例7)
実施例6で得られた非水系の洗浄用溶剤90質量部に対して水10質量部を加えて、水系の洗浄用溶剤を得た。
【0057】
(比較例1)
ラッカーシンナー溶剤(大伸化学(株)製、510ラッカーシンナー)をそのまま洗浄用溶剤として使用した。
【0058】
(比較例2)
反応容器に2−エチルヘキサノール3モルを入れ、その中に30℃以下で五酸化二リン1モルを加え、添加終了後80℃で4時間反応せしめて、リン酸モノ(2−エテルヘキシル)エステルとリン酸ジ(2−エテルヘキシル)エステルとの混合物(モル比1:1)を得た。この混合物にトリフェニルホスフィン0.5ミリモルを加えた後、130℃でエチレンオキサイド3.5モルを導入し、酸価0のリン酸トリエステル化合物を得た。
【0059】
さらに、水酸化ナトリウム1ミリモルを加え、130℃でエチレンオキサイド7モルを導入して、表1に表す構造を有するリン酸トリエステル化合物(リン酸トリエステル化合物4)のみからなる洗浄用溶剤を得た。
【0060】
(比較例3)
比較例2で得られたリン酸トリエステル化合物(リン酸トリエステル化合物4)50質量部に対してジプロピレングリコールモノメチルエーテル50質量部を加えて、非水系の洗浄用溶剤を得た。
【0061】
【表1】
【0062】
(洗浄性の評価)
(1)汚れテストパネルの作製
ステンレスパネルを表面研磨した後、トルエンとアセトンで脱脂洗浄して、乾燥させた。自動車用に使用される赤色アクリル塗料(日本油脂BASFコーティングス(株)製、ベルコートNo.6000)を使用し、フィルムコーター(PL−1210 FILMCOATER:TESTER SANGYO CO.,Ltd製)を使用して上記ステンレスパネルを塗装した。なお、塗装膜厚は30〜50μmとした。塗装後、140℃で20分間乾燥し、テスト用塗装パネルを作製した。
【0063】
次いで、テスト用塗装パネルに、下記の油性及び水性汚れ成分をフィルムコーター(PL−1210 FILMCOATER:TESTER SANGYO CO.,Ltd製)を使用して均一に塗布(使用コートバー:26μm、スピード目盛り:2)し、80℃で30分間乾燥して、汚れテストパネルを作製した。
【0064】
なお、油性汚れ成分としては、グリース(万能グリース リチウム石鹸基グリース:エーゼット(株)製)とエクソールD−40(エクソン化学(株)製)を1:1に配合し、その中にカーボンを0.1質量%添加して均一に混合したものを用いた。一方、水性汚れ成分としては、トマトジュースと卵を1:1に配合し、その中にカーボンを0.1質量%添加して均一に混合したものを用いた。
【0065】
(2)洗浄方法
500mLのガラスビーカーに実施例1〜7及び比較例1〜3で得られた洗浄用溶剤を300mL入れ、この中に汚れテストパネルを浸漬し、150rpmで5分間撹拌した。その後、取り出して、80℃で30分間乾燥した。
【0066】
(3)評価方法
洗浄したテストパネルの汚れの除去度合いを、下記の基準に従い目視で評価した。得られた結果を表2及び3に示す。
◎:汚れが100%除去されている;
○:汚れの除去度合いが95%以上100%未満である;
△:汚れの除去度合いが50%以上95%未満である;
×:汚れの除去度合いが、50%未満である。
【0067】
(塗膜剥離性の評価)
洗浄性の評価を行ったテストパネルの塗膜剥離及び塗膜表面の膨潤(艶の度合い)を、下記の基準に従い目視で評価した。得られた結果を表2及び3に示す。
○:剥離がなく艶も維持されている;
△:剥離はないが艶を失っている;
×:剥離している。
【0068】
(塗装工具の洗浄性の評価)
(1)試料の作製
ステンレス製ナット(内径10mm×長さ100mm)を、トルエンとアセトンで脱脂洗浄し乾燥させた。自動車用に使用される赤色アクリル塗料液(日本油脂BASFコーティングス(株)製、ベルコートNo.6000)に、このナットを浸漬した後、取り出して10分間風乾し、これを試験試料とした。
【0069】
(2)洗浄方法
上記試験試料を実施例1〜7及び比較例1〜3で得られた洗浄用溶剤50mLに浸漬し、150rpmで10分間洗浄用溶剤を撹拌した。その後、取り出し風乾した。
【0070】
(3)評価方法
洗浄した試験試料からの塗料の脱落性を、以下の基準に従い目視で評価した。得られた結果を表2及び3に示す。
◎:汚れが100%除去されている;
○:汚れの除去度合いが95%以上100%未満である;
△:汚れの除去度合いが50%以上95%未満である;
×:汚れの除去度合いが50%未満である。
【0071】
(引火点の評価)
JIS K 2265(1996)に記載の「原油及び石油製品 引火点試験方法」に準じて引火点を測定した。測定結果を表2及び3に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
表2及び3に示した結果から明らかなように、実施例1〜3の末端に炭素数が4以下の短鎖長の炭化水素基を有するリン酸トリエステル化合物は、それ自体で洗浄用溶剤として機能し、被洗浄物の塗装面などを痛めずに高い洗浄性と高い引火点を有することが確認された。また、実施例5及び6のポリオキシアルキレンアルキルエーテルをさらに含有する洗浄用溶剤も、被洗浄物の塗装面などを痛めずに高い洗浄性と高い引火点を有することが確認された。さらに、実施例4及び7の水をさらに含有する水系の洗浄用溶剤は、上記特性に加え、水性汚れに対しても極めて優れた洗浄性を有することが確認された。
【0075】
一方、比較例1のラッカーからなる洗浄用溶剤は、実施例1〜7の洗浄用溶剤と比較して水性汚れに対する洗浄性や塗膜剥離性に問題があることが確認された。また、炭素数の大きな2−エチルヘキシル基を有する比較例2のリン酸トリエステルからなる洗浄用溶剤も同様に、実施例1〜7の洗浄用溶剤と比較して水性汚れに対する洗浄性や塗膜剥離性の問題点に加えて塗装工具に対する洗浄性に対しても問題があることが確認された。さらに、比較例3のリン酸トリエステルとポリオキシアルキレンアルキルエーテルからなる洗浄用溶剤も水性汚れの除去性や塗装工具洗浄性に劣り、油性汚れの除去性にもやや問題があることが確認された。
【0076】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、引火点が高く、環境や人体に対する安全性にも優れており被洗浄物の塗装面などの損傷を十分に防止しつつ、油性汚れ及び水性汚れの双方の汚れに対して優れた洗浄除去性能を有する洗浄用溶剤を提供することが可能となる。
Claims (5)
- 前記xが1であるリン酸トリエステル化合物と前記xが2であるリン酸トリエステル化合物とを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄用溶剤。
- 下記一般式(3)で表されるポリアルキレングリコールモノエーテル化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の洗浄用溶剤。
R2O(DO)nH (3)
[式中、R2は炭素数1〜4の1価の炭化水素基、Dは炭素数2〜4のアルキレン基、nは2〜4の整数、をそれぞれ示す。] - 水をさらに含有し、前記水の含有量が洗浄用溶剤の全質量を基準として1〜20質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の洗浄用溶剤。
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2002
- 2002-11-14 JP JP2002331162A patent/JP2004161936A/ja active Pending
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